×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

蒼天紳士チャンピオン作品別感想

真・餓狼伝
第四十七話 〜 最新話


真・餓狼伝決行感想目次に戻る   作品別INDEXに戻る   週刊少年チャンピオン感想TOPに戻る

 各巻感想

1巻 2巻 3巻  4巻 5巻



第四十七話/父の覚悟  (2014年 15号)


証頂者として選出された丹波文吉。
そしてやってきてしまった出陣の儀の日。
このままでは文吉が送り出されることになってしまうわけだが・・・そうはさせじと決意を固める父親の姿がここにあった。
久右衛門は水鵺に告げる。私、丹波久右衛門が「証」の任への挑戦を望みます、と。

もう遅いと告げようとする水鵺もいたが、水鵺たちの中央に座す御語様と呼ばれる人物は久右衛門の申し出を承諾する。
一族の代表としてより強き者が取って代わる。願ったりであると。
久右衛門は文吉にとって父でありまた師でもある。挑戦の資格は十分といえましょう。
自分で師であると口にするときに赤面しちゃってるあたりが久右衛門らしいところでありますが。

文吉の強さは実際戦った猫目や梟の両名が証明してくれる。
その技量・度胸ともに一族随一の強さ。決してまぐれや偶然にて勝てる相手ではないと。

そして親子間の戦いであっても馴れ合ったり水鵺たちを謀ったりするのは許されないとのこと。
ふむ、真剣勝負できっちりと文吉を上回って見せなければ納得させることはできないってことですね。
それは分かるが猫を潰すことはないんじゃなかろうか・・・何をするねん。
潰したように見せて、猫に血が噴き出るくらい手痛い反撃を受けたって話なのかもしれないけどさ。

それはさておき、ここで文吉が登場。
どうやら文吉は証頂者としての話は一切聞かされていない様子。
この間の水鵺たちの戦いも奉納試合の一環であると説明されていたようだ。
そしてこれから親子での戦いも奉納試合として行われるのだと説明する久右衛門。そう、真剣勝負である。

同じ道場の者同士が試合う。それはまだ分かるがさすがに親父と真剣勝負はないと言い出す文吉。そりゃそうだ。
武才がない親父殿であるが、それ以上に大切に思っている相手と真剣勝負なんてあり得ない。
そのように考えている文吉。もちろん久右衛門も同じ考えでありましょう。この話が持ち込まれさえしなければ・・・

父の鉄拳が最愛の息子の顔面に叩き込まれる
あまりの激しさに吹き飛ぶ文吉。
ああ、左目の下の傷はこの時についたものだったんですな。これは忘れられない傷となりそうだ・・・

鉄拳を食らわした後、自分の頭を柱に打ち付ける久右衛門。そして文吉に向けて一生で一度の真剣勝負じゃと叫ぶ。
その気迫が、追い詰められた者の心の叫びが通じたのか、ようやく文吉も勝負を受ける気になってくれました。

・・・こん時俺はさ、親父の気持ちなんてこれっぽっちも分かんなくてさ・・・

何とも悲しい戦いが始まろうとしています。
普通に考えたら久右衛門に勝ち目は薄い。が、やはり戦いに臨む際のモチベーションが段違いに思える両者。
文吉のためにも何としても負けるわけにはいかない久右衛門である。
ついにその理合いを極めた男が武へと昇華させる日が来たという流れになるのかどうか・・・注目です。



第四十八話/心  (2014年 16号)


・・・この戦いがただの奉納試合じゃないことくらい、俺にでも分かってたよ・・・
・・・この食い入るような目・・・耳。そして何より親父の鬼気迫る覚悟!
気が付くと俺も全身全霊かけて親父を"仕留め"に行っていた――

さすがに周りの水鵺の異様さ、久右衛門との真剣勝負など異常な事態では奉納試合と言われて納得できるはずもないですわな。
しかし久右衛門のただならぬ様子を見ればこの戦いを疎かにしちゃいけないのは分かる。
だから真剣に戦う。それが愛する肉親であろうと・・・

我が最愛の息子、文吉。
この一族でお前より武人として上まわる者などおらぬ・・・
ましてやワシなど足元にも及ばぬ。
ただ・・・不謹慎やもしれぬが・・・ワシは・・・ワシは実は・・・
前々からこうして・・・お前と真剣勝負をしたかったのかもしれん
そうしてお前の成長を、この身に深く・・・深く刻み込みたかった――のかもしれん。
じゃが、ワシの負けはすなわち文吉の・・・死!
今、負けられるわけが無い

悲壮な覚悟で挑む久右衛門。
しかしやはり文吉と正面から立ち向かえるだけの強さがあるわけではない。
むしろここまで打ち合って持たせているだけでも大したものと言えるかもしれない。
武術の解析や合理のことに関してなら天才的でありましょうが、それを自らの体で示すのはまた別の話である。
年齢の問題もあるし、さすがに久右衛門が急激なパワーアップをするという展開はなかったか・・・

じゃが、こんなワシでもお前に負けぬものがある。
それは、絶対に放さぬ・・・力!!

そう述べて文吉の襟を掴みながら後ろに倒れる。巴投げか!?
と思いきや投げることはできず、馬乗りの状態にされてしまう久右衛門。おや。
寝技の体勢に入ってしまうと久右衛門はさらに不利になる。文吉は寝技も相当得意ですからねぇ。
首を極められ、親父の負けだと宣言される。
だが、この接近した状況に持ち込むことこそが久右衛門の作戦であった。
そう、久右衛門の負けぬものとは・・・絶対に放さぬ力。そして――

絶対にお前を放さぬという――お前を守る心じゃ!

両腕を広げ、渾身の力で文吉を抱きしめる久右衛門。
愛しておるぞ文吉と呟き、抱きしめる。
愛情の深さがそのまま抱きしめる力となり、威力を高めている様子。これは凄い。
この悲痛な父の想いが勝負の決め手となるのだろうか?決着は早そうでありますなぁ。



第四十九話/父の愛  (2014年 17号)


馬乗り状態となり、絞め技に移行する文吉。
しかしその文吉を力いっぱい抱きしめる久右衛門。これが父の愛じゃ!!

ただ力いっぱい抱きしめるだけでとても技と呼べるものではない。
しかしこの無茶苦茶な技に込められた情熱はそこらの半端な技では及びもつかない威力がある。
文吉が床に手をつき、無理やり引き剥がそうとしても離れない。
ここは絞めを継続するべきでありましたな。判断ミスだ。

文吉・・・ワシはぼっこれ故、とうの昔に技も力もお前に負けておる。
じゃが"握力"というものは年がいっても衰えぬものじゃ。
そして、お前を守る気持ちは誰にも負けん

より力強く抱きしめる久右衛門。背中がメキャッと言っておりますよ。これは握力によるものだけなのかどうか・・・
ともかく、久右衛門に締め付けられ、意識が遠くなる文吉。
それ故か、昔の――赤子の頃を思い出す。
父の腕に抱かれて眠っていたあの頃のことを思い出す。

赤子の頃だけではない。父である久右衛門は事あるごとに抱きしめ、慈しんでくれた。
その丸く大きな手で抱きしめ包んでくれたのである。
そのことを今更に思い起こす文吉。

我が息子、文吉。愛しておるぞ
・・・お前を死なせるものか。

父の愛は偉大である。ついに文吉を気絶させ、この勝負を決めてしまうのであった。
これにより証頂者として認められる久右衛門。
しかしそれは文吉に代わり負ければ死が待っている戦いに臨むということである。嗚呼・・・

旅支度を終えた久右衛門は未だに眠っている文吉の姿を見つめている。
ぐるりと回り、最愛の息子の全身をしっかりと目に焼き付けようとする。これが最後の別れといわんばかりに・・・

父の愛情の真意を文吉はまだ知らない
これで父が帰らぬ人となったのならば。それが講道館との戦いによる結果であったならば――
憎むようになるのも無理はないのかもしれませんなぁ。
ついに嘉納治五郎が登場することとなるのか。どのような戦いを見ることとなるのか・・・必見です。



第五十話/勝の目  (2014年 18号)


賑わう町の声。その中でもこの男の周りはより大きな声が響いている。
どうやら人気者であるらしいこの男。名は勝海舟という。おぉ・・・勝先生だ!!
西郷隆盛と会談し江戸城を無血開城させた政治家として有名な方でありますな。

その勝先生の後ろを歩いているデカイ人物。どうやら外国の方らしいが何者だろうか。
ブドー楽しみ。サイキョー欲しいとか男の子らしいことを考えているようですが・・・

外国の大男を連れて勝先生がやってきたのは講道館。
そこには鬼と呼ばれる横山作次郎や前田光世といった面々。そして主である嘉納治五郎の姿があった。
講道館は半ズボン系の道着なんですな。

勝海舟は嘉納治五郎の父・治郎作からの付き合いがあり、治五郎とは旧知の中で治五郎に多大な影響を与えた人物の一人である。
そういった付き合いもあり、講道館に足を運んだ勝先生。
もちろんその要件は後ろの大男――アメリカ大使の息子であるクリス・バーナードのお守りである。

全米レスリングのチャンピオンにしてカルフォルニア州ヘヴィ級のボクシングチャンピオンでもあるというクリス。
なるほど。最強の名を欲するだけあって結構な実績の持ち主でありますな。
そして次に制する相手として日本の武道。それも最強である講道館に挑もうとしているわけであると。
穏やかに済ませるなら講道館のデモンストレーションを見せるだけで済むが・・・そうはいかないでしょうな。
横山さんも見抜いている通り、あれは道場破りの目である。
同じような目で横山さんも睨んでいた気はするがそこはまあ、似たような性格ってことで。

嘉納治五郎としてはとりあえず穏便に済ませる提案をする。
武道は人と争うためのものではない。そう告げる。
が、クリスはここにいるサルどもを全員K.O.して帰る。正当防衛ならいいじゃねえかと挑発してくる。
ふうむ、やはり日本人を侮っている感じでありますな。こりゃ横山さんや前田光世ならずとも熱くなるわ。

というわけで、熱くなりそうになった2人を制して自分が戦うと申し出る嘉納治五郎。
曰く、君たちは加減を知りませんから。とのこと。
ふーむ、これはいい戦いを見せてくれそうな気がしますね。
無作法な異国人に身の程と言うものを叩き込んでいただきたいものである!!



第五十一話/嘉納治五郎の柔道  (2014年 20号)


・・・知っている。知っている。知っている。
JIGOROUはボクシングを知っている

道場破りのように挑んでくる巨体の異国人クリス。
ボクシングとレスリングの使い手であり、相当な戦力を有しているはずなのだが早速焦りを見せているようですな。
それもそのはず。柔道の投げを警戒していればいいかと思いきや、見事なボクシングのディフェンスを見せる嘉納治五郎。
反撃のジャブも決めて見せたりする。ああ、これは確かに知ってますわ。

ならばと同じく得意のレスリングで勝負しようとするクリス。
タックルで倒してしまえば・・・と思うが、そのタックルに対し、ブリッジを決めての投げを放ってくる。この投げは・・・!!

そ・・・そればかりでなく、JIGOROUはレスリングも熟知している

まさにレスリングの投げである。キレイに決まりましたな。Oh!

柔道マスターと聞いていたJIGOROUだが、驚いたことにその実、JIGOROUはハイレベルな総合格闘家だった

嘉納治五郎の懐に入り、払い腰のような投げ技に入るクリス。
わざわざ相手の得意分野で挑むとは追い込まれてのことか?
まあ、自身は上半身裸の状態だし、柔道相手ならば遅れは取らないという目算もあったのだろう。
が、襟や袖を取らなければ投げられないというわけではない。
相手の腹のあたりで両腕をクラッチし、抱え込んでヘソに力を込めて・・・後ろへと投げ、叩きつける!!
これは・・・バックドロップ!?いや、柔術の「裏投げ」である。
今日使われているレスリングのバックドロップはこの裏投げがルーツであるという。ほほう。

嘉納治五郎は国内の格闘技だけではなく、海外の格闘技の研鑽にも余念がなかったという。
うーむ、さすがは日本人初のIOC(国際オリンピック委員会)委員となった人である。半端じゃない。

見事に強さを見せつけてくれた嘉納治五郎。
クリスも勝海舟の預かりであるからかあまり酷い目には合わずに済んでよかったですね。
加減を知らない横山さんが相手してたらどれほどの目に合っていたことやら・・・

さて、その勝先生が引き上げる際に嘉納治五郎に述べることがある。それは"丹水流"について。
嘉納治五郎も知らない、幕府の高官だけに伝えられている話。
太古の昔から"丹水流"は八十年に一度、その時代時代の最強流派に命を懸けて挑戦してくるという話だ。
ふむ。半信半疑ながらもちゃんと丹水の名は広まっているようですな・・・

その丹水を名乗る男が嘉納治五郎の留守中に講道館を訪れる。
鬼と呼ばれた横山さんが警戒なく道場へと通す人物。とにかく人のいい田舎の御仁と称される人物
間違いありませんな・・・丹波久右衛門だ!!

・・・丹水流丹波久右衛門。立ち合いが所望です

やはりこの対決となってしまいましたか。
証頂者としてこの時代の最強である嘉納治五郎に挑む丹波久右衛門。
将来のことを考えると勝ち目はないと思えるが・・・どうなるのか。
息子の命は救われたし、自身はどうなってもとか久右衛門は考えていそうだが・・・生きて帰ってほしいものだが・・・ううむ。



第五十二話/弱き者  (2014年 21+22号)


この明治の世。最強流派はどこかと聞かれたらやはり上げられるのは講道館
勝海舟もそう考え、八十年に一度、その時節の最強流派に命懸けで挑戦してくる"丹水流"の存在を嘉納治五郎に示唆している。

天下の講道館にはそれはもう凄い数の道場破りが姿を現したという。
その経験からか、横山さんはその顔つき、風貌を見れば相手が道場破りかどうか直ぐ分かるそうな。

じゃから・・・あの御仁がよもや・・・と耳を疑ったわい。
・・・嘉納先生も同じじゃと思う。なんとも不思議な魅力を持った方じゃったよ丹波・・・

鬼の横山と呼ばれた男の顔もほころぶほどの魅力がある。その男の存在は別の意味で稀有と言えよう。

丹波久右衛門という御方に深く興味がわきました

嘉納治五郎もまたそのように語る。
そして――どうやらその久右衛門との戦いは省略されることとなった様子。
これまでの過去の回想は終了し、舞台は文吉と前田光世が戦っていた時間へと戻る。
そして文吉が今現れたのは講道館。待っていたのは道着に着替えた嘉納治五郎。

・・・そろそろ来る頃だろうと思っていました。丹波文吉君。

前田光世との戦いの傷は癒えた。万全の状態で姿を現す丹波文吉。
いきなり嘉納治五郎に襲い掛かったりはせずに、まず伝えるべきことを伝える。

・・・親父、死んだよ。近くの神社でさ、腹切って果てた
あんたと勝負した後にね。もう二年も前だけど。
・・・ここに辿り着くまで二年もかかっちまった。

久右衛門の死に驚いた様子はない嘉納治五郎。まあ文吉のことも知ってたし、そのことは知ってたんでしょうな。
それにしても切腹とは・・・親友の黒岡喜八と同じ死に方ではあるんだよな。
そういえばそういう選択を迫られることになるとか言われてたっけ。やはり敗北の責を問われたということか。ううむ・・・

読者としても久右衛門の死は悲しい。
しかし息子である文吉の悲しみと怒りはその比ではあるまい。
この二年の間に水鵺の奴らをぶちのめし、父親の死の原因を知った様子の文吉。
あの親子の戦いにそのような意味が込められていたと、この時初めて知ったんでしょうなぁ・・・

今頃丹水の奴等、俺を血眼で捜してるんだろうな
・・・いや、むしろ泳がされてんのかもな。俺が、あんたの首を取るまで。

丹水本家。そして証頂者という位置まで登り詰めた文吉。しかし今や丹水自身と相容れぬ関係になっていそうである。
本家の人間であり、父親から受け継いだ丹水の名を棄てることはないだろうけど・・・複雑な立場ですなぁ。

考えてみりゃ――傍迷惑な話だよな。
こっちの都合で勝手に勝負挑まれて。負けたら死ぬって。何だそれって話だよ。
親父が死んだのはこっちの掟だ。あんたにゃ何の責任もねぇ
だけど・・・親父の遺体を見たよ。
親父の全身は腫れて痣だらけだった。数か所骨折もあった。あれは打撃でできた痣じゃ決してない。
あれは投げられてできた痣だ。それも何度も何度も・・・
講道館嘉納治五郎。あんた程の人なら親父と組み合った瞬間に親父の力量・・・その"弱さ"を見抜いた筈だ。
講道館は・・・嘉納治五郎は"弱い"者をああまで痛めつけて己の強さを証明するのか
それがお前等のやり方なのか!?

なるほど。この話の流れで文吉が講道館を――嘉納治五郎を恨むのはお門違いではないかと思ったら、そういうことですか。
直接的な原因である水鵺の連中は既に潰している。
そして講道館のやり口に納得がいかず喧嘩を売ったわけですな。
前田光世と正々堂々の戦いをしたことで講道館への怒りは薄れているかもしれないが、嘉納治五郎本人となるとまた違う。
そしてこのように問われた嘉納治五郎はこんな言葉を返してくる。

・・・そーですね。私は、あんなに"弱い"人と闘ったことは今までありませんでした

もちろん嘉納治五郎は久右衛門の弱さに気づいていた。
それでも容赦なく叩き伏せたのは命懸けで挑んでくる相手への礼儀というものでありましょうか?
生半可に痛めつけても諦めるとは思えないですしねぇ。
でも、締め落とすなり何なりで早めに勝負をつけることもできた気はするのですが・・・
丹波久右衛門という存在に深く興味をいだいてしまったが故の過ちだろうか?気になるところです。



第五十三話/違和感  (2014年 23号)


父を愚弄され怒り猛る文吉。
感情のままに嘉納治五郎の顔面に掌底を叩き込む。
が、その袖を掴まれ、一気に投げられ叩きつけられる。さすがに鋭い。

しかし一度の投げで止まる文吉でもない。
すぐに起き上り、突きや蹴りなどを織り交ぜたラッシュを仕掛ける。
幾度かは有効打も入るのだが、その隙を縫って投げを放ってくる嘉納治五郎。
どのぐらいの時間そういった攻防が続いたのか・・・双方息を荒げ、ボロボロになっている。
しかし、闘いが進むにつれて文吉の方にはある違和感を感じるようになってきていた。

・・・嘉納は国内外の格闘技に精通した武道家だ。
中でも当て身技を重視しており、自身その稽古を深く行っていると聞く
・・・その嘉納が、まったく打ち返してこない・・・
そればかりか、まったく極めに来ない・・・
・・・ただただ俺を見下ろすだけ

打つことも決めることもなく、ただ投げるだけで文吉と互角に戦って見せる嘉納治五郎。これはスゴイ。
いや、確かにその腕前は凄いが、文吉が感じたのはそれだけではない。
組み、見下ろす。その姿はどこか懐かしさを感じるものであった・・・

・・・そうか・・・そうだったんだ。
・・・俺は、絶対この人には勝てねえ・・・

理解し、涙する文吉。さて、これは一体どういうことでしょうか。
嘉納治五郎に父の姿を見たのだろうか?
それとも嘉納治五郎が父へ敬意を払っていたことを感じ取ったのだろうか?
久右衛門は何度も投げられた跡があったという。今の文吉と同じような戦いをされたのでありましょう。
それに気づき、何かを感じたようであるが・・・ふうむ。どういうことでしょうかな。

何にしても思ったよりも早く嘉納治五郎と、講道館と和解できそうな雰囲気になってきました。
和解が成った場合、文吉は今後どう生きていくのか。気になるところであります。



第五十四話/あの目  (2014年 24号)


この人には絶対に勝てない。
そう悟った文吉。それでも泣きながら突進し、攻撃を繰り出す。うわあぁあぁ!!

・・・俺が感じたあの違和感は、嘉納治五郎が俺の"打"に対して打ち返してこない・・・事でも、
ぶん投げられた後に・・・嘉納が極めに来ない・・・事でもなかった。
・・・この目だ。
・・・この目。この目は親父と同じ目だ

やはりそうでありましたか。
あの文吉が涙するとなれば父親の久右衛門絡みのことしかないと思っていました。
嘉納治五郎のその目は、いつだってどこだって息子を励まし続けてくれた親父と同じ目。

がんばれ。文吉君
何度でも立ち上がってくるんだ。文吉君。
がんばれ。文吉君。がんばれ。

ついには嘉納治五郎の後ろに久右衛門の姿が重なり出す。おぉ・・・

・・・こんな、こんな目をした人に・・・俺が勝てるワケがない・・・

せっかくがんばれと言い続けてもらったところ悪いが、戦意喪失してしまった様子の文吉。
まあ、これは仕方がないところでありますわな。
親父の敵討ちという悲しい動機での戦い。
その相手から親父の姿を感じ取ってしまったのでは戦うためのモチベーションは保てない。
失ってしまったその目を再び見ることができたわけだし、涙するのも無理はないでしょう。

というわけで、闘いは終わり、客人として奥で嘉納治五郎と話をすることとなった文吉。
ここで嘉納治五郎は改めて久右衛門と立ち合ったときのことを話し出す。
やはり久右衛門と組み合った時、失礼ながらも「この方は弱い」と感じたそうな。まあそれは当然ですわな。

ですが同時に感じたのです。久右衛門殿の強い意志を
・・・そこで大いなる疑問が生じました。
自惚れさせて頂くなら、我が講道館柔道は天下一と謳われています。
その当主である私に、余程刺客には似つかわしくない久右衛門殿が何故挑戦してきたのか?
その内に秘めたる強い意志は何であるのか?
君の父上に尋ねてみましたが、口を閉ざしたまま・・・
それならば、二・三度も投げればその痛みに耐えかね口を開くであろうと私はタカをくくっていました。
・・・ところが三度投げても話すどころか久右衛門殿は私に立ち向かってきたのです。

命を賭して挑んでいる久右衛門。そのぐらいで折れるわけにはいきませんわな。
しかし理由を説明しないのはどういった考えだろうか。
勝手に命を懸ける丹水の掟に巻き込んだりしないようにしようという配慮からであろうか。久右衛門らしくはありますがはてさて。

・・・そこで私は久右衛門殿にこう宣言しました。
私はあなたが理由を言うまで投げ技のみで迎えます

投げ技一本に絞ったのは久右衛門の意志がどれ程強いのか確かめるためだったそうな。
それこそ打撃技や絞め技ならば、一瞬で気絶させてしまうこともあったでしょう。
しかし投げ技ならば、頭から落ちるようなことでもなければそうはならない。意志を確かめるには最適である。
嘉納治五郎にしても十発以内で久右衛門の心を折る自信はあったそうな。

・・・ところが、十発以上受けても君の父上は立ち上がってきたのです
・・・驚愕でした。

必死に、諦めることなく挑み続ける。
死を覚悟して出向いた久右衛門であるが、やはり生きて帰り、息子と過ごしたいという想いは強かったんでしょうなぁ。
しかしその想いは叶わず・・・ううむ、泣ける。

いきなり戦いが省略されたと思ったら、回想終了してからまた回想に入るという流れで補完されるとは。
まあ、結末自体は事前に分かってはいましたし、こういう構成も面白いものですな。
まだまだ久右衛門の姿を見ることができる。それが何よりであります。



第五十五話/待っておれよ  (2014年 25号)


嘉納治五郎が語る2年前の久右衛門との戦い。
何故講道館に挑んでくるのか。その問いに答えない久右衛門に対し、"投げ"のみで迎えると嘉納治五郎は述べる。

文吉君も知っての通り、"投げ"というものは技の速さで倍増する遠心力。
そして体を落とす角度。投げ手の体を相手に預けるか否かでまるで威力が違ってきます。
私の投げに何度も立ち上がってくる久右衛門殿に、私は"相手を壊す投げ"を用いました
屈強な柔術家でもこの投げを五・六本も受ければ気を絶します。
果たして久右衛門殿は十本・・・二十本以上もこの投げを喰らいながら、またしても立ち上がってきたのです

それはまさに執念という他ありませんな。
相対してすぐに分かる、この相手には負けないという想い。
しかしながら、この相手を屈服させることができない現実。これはさすがの嘉納治五郎も戸惑うしかない。

"投げの講道館"・・・と称されています。
私は"投げ"に関して研鑽に研鑽を重ねてきました。
私程、投げに精通した者はいない・・・と自負しています。
初めは久右衛門殿の意志を確かめる為の投げでしたが――
いつの間にか、なぜ効かぬ?そんな筈はないといった不安と焦りにかられた投げに変わっていきました

研鑽を重ね、築き上げてきた自負。
その積み重ねが高ければ高いほど、計り知れない相手と出会った時の驚愕は大きい。
嘉納治五郎は身に付けたありとあらゆる技をかけていったが、その度事に久右衛門は立ち上がる。
時には口元に笑みを浮かべながら

・・・きっと闘いの中で意識が途絶えた時間があったのではないでしょうか。
いったいどの様な幻影を見ておられたのか・・・

久右衛門が見る幻影。それはもちろん愛息子である文吉のこと。
幼い頃の文吉に武術を教え、その才能と頑張り屋なところに頬を緩ませる久右衛門。
稽古で疲れていながら父の身体を気遣い、腰をもんでくれる優しい文吉の姿にも嬉しそうな様子を見せる。
まあ、時には憎まれ口を叩いたりすることもあるんですが・・・それもまた可愛いと思えている久右衛門。フフフフフ。

嘉納治五郎が投げても投げても久右衛門は起き上がる。
その脳裏に浮かんでいるのは文吉と過ごした楽しい日々。
やがて、このような相手と闘い続けることに嘉納治五郎は得体の知れない恐怖を覚え始めたという。無理もない。

負けて・・・たまるか・・・
勝って・・・文吉の元に・・・帰るんじゃ

やはり久右衛門が必死な理由はそれでありますよね。
息子の命を守るために代わりに出向いてきた。
が、それでも出来得るならば生きて帰りたい。息子とこれからも一緒に生きていきたい。
その強い想いが、何よりも強い想いがここまでの根性を生み出しているのである。父の愛は本当に深い。

決して一人にはさせぬからな。待っておれよ――文吉ィ〜〜〜

この意志を真っ向から浴びせかけらる嘉納治五郎にしてみればたまったものではない。
夜中の道場に一人でこんな相手と闘っているのだから、そのうちこの世の戦いなのかも怪しくなっちゃうのではなかろうか。

得体の知れない恐怖に囚われる嘉納治五郎。
ついに、投げのみで迎え撃つという自身の誓いを破ってしまう。
奇声をあげながら、噛みつき、殴りつけ、そして締める。な・・・なぜ噛む。
締めるにしても一応道着を掴んでの締めを行っている辺りは武道家らしいですな。噛んだりしちゃってるけど。

・・・私は逃げたのです。
私はあなたの父上が怖くて、"投げ"のみで応じることから――逃げたのです

よもや久右衛門がここまで嘉納治五郎を精神的に追い込んでいたとは。
そういう部分では勝ちということにして、自害の免除とか計らってくれれば良かったのになぁ・・・

父の偉大な愛を感じながら、次号最終回!!
うーむ。講道館と和解した後の文吉はどうするのかと思ったら、ここで終わってしまうのか・・・
そのまま武者修行の旅に出かけて、将来前田光世との再戦を行ったりするのだろうか?
どのような最終回を迎えることとなるのか。注目したいと思います。



最終話/餓狼の約束  (2014年 26号)


二年越しに知らされたあの戦いの真実。
嘉納治五郎の口から、あの時の久右衛門はどのように戦ったのかをつぶさに教えられる。

・・・先程私はあんなに弱い人と闘ったことはない・・・と言いましたが、それは技術面だけの話です。
講道館は今や日本一の格闘集団です。その日本一を誇る集団の代表である私が確信をもって言わせて頂きます。
私の生涯一番の強敵は丹波久右衛門氏であったと

明治最高名の武人・嘉納治五郎かの口から語られる・・・光の言葉!
このアオリは決して大仰なものではありますまい。
少なくともそう言われた文吉にしてみれば光の言葉という他ありますまい。感極まっていい顔になっておりますわ・・・

私はこれまでの経緯を知りませんでした。
ですがこの手紙で全てを知りました。久右衛門殿から頂いた手紙です
・・・丁寧すぎる位の私への謝辞と、君への想いが綴ってあります。
何より君が人の道から外れた時、正して欲しいと嘆願されています。
・・・不思議な事に、この手紙は久右衛門殿が亡くなってから二年後に私の元に届きました。
・・・きっと、私や講道館に迷惑がかからぬようにと彼の配慮だったのでしょう。
そして時を同じくして君が私の前に現れた。まるでこの日が来るのを予想していたかのように・・・

ふむ。嘉納治五郎はやはり文吉のことを既に知っていたのですな。
だからこそ講道館の門下生が襲われても荒事にはせず、前田光世に任せることにしたと。
しかしあの前田光世と互角の勝負をするとまでは予想したのだろうか?期待はしていたかもしれませんね。
文吉が立派になって自分の目の前に現れたことを嬉しく思っているようですし。

・・・手紙の後半。久右衛門殿の君への想いが記されています。一人でゆっくり読みなさい。
・・・それから。前田光世君が昨日、海を渡りました

船に乗り、海外へと武者修行の旅に出る前田光世。
ここからその名を轟かせていくことになるわけですな。
そしてその前田光世から言伝を承っているとのこと。その内容は――

丹波。待っているぞ

ふむ。日本という舞台ではなく、世界で揉まれて成長して再び戦おうということでしょうか。
お互いが認める好敵手。この言伝には再戦の約束の意味がありそうです。

私も賛成です。
・・・君も男なら・・・あの丹波久右衛門の息子なら。
広い世界で丹波久右衛門流を闘わせてみてはいかがですか

丹水流ではなく、丹波久右衛門流と来ましたか。
今後の文吉が丹水を名乗るかどうかは気になってましたが、これで道が示された感じとなりましたな。

さて、久右衛門の記した手紙を読む文吉。

・・・息子文吉が先生の目の前に現れたとしたなら、文吉は丹水流のこの一連の経緯を全て知ったという事なのでしょう。
愚息故、講道館の皆さんや嘉納先生に多大な迷惑をお掛けすると思います。申し訳ございません。

さすがに文吉の行動は予想されていたようですな。
まああれだけ慕っていた父親を失ったのだし、暴挙に走るのも分からなくはないですわな。
真実を知ってしまうとそれも後悔することしきりな感じでありますが。

私は嘉納先生の「敵」と言うにはあまりにも無様です。
私は先生との闘いの後、高熱を発し、その場に倒れてしまいました。
その私を三日三晩先生は寝ずの看病をして下さいました
その時私は決めたのです。この方ならと。迷惑を承知で息子を、文吉を託そうと

なるほど。既に嘉納治五郎は久右衛門から文吉のことを託されていたわけですか。
そりゃ久右衛門と同じ目をして頑張りなさいと語り掛けてくるわけですわ。
あれは託された父親としての眼差しでもあったわけですか。

しかしこの、オジサンを寝ずの看病をするオジサンというシーンは・・・いわゆる萌えシーンって奴ですかな!?
看病されているのが久右衛門なこともあり、それで通じなくもないのが怖い。

・・・一人息子文吉にも申し訳ない気持ちでいっぱいです。
独りぼっちにして申し訳ない。寂しい思いをさせて申し訳ない。こんな弱い父親で申し訳ない。
・・・ですがそれ以上に文吉が私の元に生まれて来てくれたことに感謝しております。
文吉の存在は私にとって無上の喜びでした
文吉は私の希望でした。夢でした。光でした。命でした。
武を始める事に反対しました。ですが息子との稽古の時が何よりの喜びでした。
出稽古の旅もいい思い出です。旅先で出会った方々の幸せを願います。
我が一族の交流戦で優勝してくれた文吉。駄目な私に成り代わり本家の威信を取り戻してくれました。
息子、文吉と過ごした日々のどれもこれもが私には掛け替えのない宝物です。
不思議です。私は死ぬことに対して少しも恐れはありません。
・・・ただ文吉に会えぬと思うと悲しく、切なく、苦しいのです。
先生。来世という物があるのであれば、また私は文吉に会えるのでしょうか。それまで暫しの別れです。
・・・最後に文吉にはこれだけお伝えください。
文吉。愛しておるぞ

最後の言葉が綴られなくてもたっぷりと感じられる父親の愛情。
改めてそれを感じた文吉は久右衛門がいるであろう天国を仰ぎ見る。

ああ・・・またいつか・・・それまで親父。俺、腕磨いておくから・・・

父親の仇を討つために復讐をと考えた文吉。
しかし真実を知った今はようやく穏やかな気持ちになれた様子である。
これで久右衛門も安心して休めることでありましょう。
寂しくはあるでしょうが、また出会えるその時までは心安らかにいて欲しいものであります。

と、ここで時間は激しく飛ぶ。
1話で前田光世は回想の世界に入り、明治の世での物語となっていた。
途中、さらに文吉の回想が入ったりしていたが、ついにこの最初の時間に戻ってくる時がやってきた。

講道館か

笑顔で前田光世にそう語り掛ける男。右目の下には見覚えのある傷がある。
もちろん前田光世はそれが誰であるかはすぐに理解する。
そして声の掛け方が、あの戦いの日の流れであることも理解し、すぐに合わせてくる。
何度もその日のことを思い出していたんでしょうなぁ・・・お互いに。

文吉「丹波文吉」
前田「前田光世」
文吉「立ち合いが所望」
前田「願ってもないこと」

こうして餓狼の約束は果たされ・・・そして真・餓狼伝。完結でございます

手紙の最後からずっとキラキラとした輝きの中で終了。
うーむ、なんという輝きに満ちた最終回であることか・・・
いや、本当にキレイに終わったという感じはありますけどね。

もう少し読みたい気持ちはあるけど、久右衛門の件が片付いた以上、物語としては区切りと言っていいですしねぇ。
前田光世との約束も果たしたということで、正にキレイな終わり方と言えます。

夢枕獏先生、野部優美先生の次回作に期待しております!!有難うございました!!




  真・餓狼伝感想目次に戻る


  作品別INDEXに戻る


  週刊少年チャンピオン感想TOPに戻る



HPのTOPに戻る