×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

蒼天紳士チャンピオン作品別感想

真・餓狼伝
第一話 〜 第二十五話


真・餓狼伝感想目次に戻る   作品別INDEXに戻る   週刊少年チャンピオン感想TOPに戻る

 各巻感想

1巻 2巻 3巻  4巻 5巻

連載中分


真・餓狼伝 1巻


第一話/日本人  (2012年 11号)


純粋格闘大河ロマンが新連載スタート!!
原作の夢枕獏先生、初の書き下ろしコミック原作!!
その原作が、生粋の格闘漫画家である野部優美先生の作画によって描かれます!!

侍の時代はとうに終焉し、武は廃れた。
学問の徒こそが輝きを放つ時代――"明治"
だが皮肉にも、この変革の世こそが――真に餓狼なる男たちを生んだ!!

物語は大正三年(1914年)のブラジル・ペレン市にて男たちの会話から始まる。
雄大な大河・アマゾンを臨むこのブラジルの地のカフェで歓談している男たち。
質問しているのはガスタオン・グレイシー
質問されているのは二千試合闘って一度も負けたことがないと言われている男――コンデ・コマ、前田光世である!!

いきなりの前田光世の登場に慄く。
そしてガスタオンとの会話でこれまでの戦績が少しではあるが語られていく。
ハッケン・シュミットとはイギリスで。
フランク・ゴッチとはアメリカで野試合を行ったという。
セントラルパークの両端からお互い歩き出して、出会った所で闘うという約束で。
うーむ、これが世に言う前田光世方式か!!
時間等を定めるのではなく、出会ったその時と場所が死合う空間となる。緊張感溢れた決戦方法だ。

シュミット、ゴッチ。どちらも当時世界最強と言われたレスラーである。残念ながら闘いの詳細を記した文献は残されていない。
それゆえなのか、質問しているガスタオンの態度が微妙に半信半疑なように見えて仕方がない。実は疑ってるっしょ?

そんな歓談をしている最中、近くのテーブルで騒ぎが起きる。カラーリオ!!(クソったれ)
どうやらガルシアという巨漢がギャンブルの負けの取り立てに迫られているらしい。
しかし複数の男たちに囲まれているのにも関わらずガルシアは涼しい表情でミルクをすすっている。
というかそれ以外眼にも耳にも入っていない様子ですな。チュウチュウ。

騒がしいが、とりあえず質問を続けるガスタオン。
前田光世に問う。これまで闘った中で一番強かったのは誰であるか?
やはりそう思えるような相手はいなかったのだろうか?そう述べるガスタオンに前田光世は笑みを受かべ、いましたよと答える。
ほう。それは興味深い話でありますな。二千試合無敗の男が一番強いと思った男とは一体!?
ボクサーか?それともレスラーか?どちらでもない?では何者なのか。

興味深い話なので俄然食いつくガスタオン。
しかし、答えを聞く前にガルシアのテーブルが騒がしくなる。
態度にいらついた借金取りがガルシアを突き飛ばし、ミルクを零したのが契機の様子。
ふむ。先に手を出したのは確かに借金取りの方ですな。だからといってフォークで手を突き刺せしたり殴り飛ばしていいはずもない。
だが刃物を取り出した複数の男たちを恐れることもなく殴り倒してしまうガルシアはなかなかにイカレた奴である。

ミ・・・ミ・・・ミルクーッ!!

大暴れした結果、少し零したミルクとは比べられないぐらいのミルクを失って悲しむガルシア。
うむ、イカレた奴というか、イカレてますな。こいつは。

ガルシアの暴走は周りを巻き込むほどのものとなる。
割れたグラスを投げる。と、それが回転しながらガスタオンの隣に座っていた少年のもとへと飛んでいく。
あわや大惨事。というところでグラスを見事に受け止める前田光世。
片側は割れて尖っており危険だというのに、よくぞ見切って底面で受け止めたものである。これだけでも凄い。
しかし、本当の凄さ、強さを見せつけるのはここからであった。

フォークでテーブルに縫い付けられた借金取りに殴り掛かるガルシア。
そこに横から割って入り、見事な一本背負いを決める前田光世。見事!!
さらに借金取りのフォークを抜いてあげお礼に笑顔を返して見せたりする。これには周りの客も思わず微笑んじゃうぜ。
だが、ガルシアはまだ参ってはいない。今度は完全に前田光世を標的として襲い掛かってくる。

超重量によるタックル。肩に担ぎあげ、そのまま木へぶつけようとするガルシア。
しかし、その木に足を乗せて激突を防ぎ、その体勢のままフロントスリーパーを敢行する前田光世。

ギブアップの声にノーと返し、力づくでフロントスリーパーを振りほどくガルシア。
しかし、すぐに後ろを取り、今度は正式なスリーパーホールドに固める。
ならばと倒れ込んで地面に叩きつけようとするガルシア。
だが、スルスルと横に逃れる前田光世。結果、地面に背を付けたのはガルシア。その上に跨る前田光世という形となった。
この形・・・マウントポジション!!
逃れようとするガルシアはまるで上に山が・・・ブラジルの名所ポン・ヂ・アスーカルが乗っかっているかのような感触を覚える。
なるほど。まさに文字通りマウントってわけですね!!ウソだろ・・・

マウントポジションからガルシアの顔面に拳を叩き付ける。
ガルシアはたまらず下から殴り返そうとするが、その伸びた腕を取られ、腕ひしぎ十字固めの形に持ち込まれてしまう。
うーむ、流れるような仕留め方でありますなぁ。
だが、この体勢になってもまだ諦めないガルシア。落ちていたフォークを拾い、凶器での逆転を図る。
が、そうとくれば手加減もここまでだという話になる。
一気に力を込める前田光世。その結果、ガルシアの右腕の関節はボキィッと破壊されるのであった。

見事にその強さを見せつけた前田光世。夕日を背負って立つその姿は少年の心を揺さぶるのに十分なものであっただろう。
だから少年――カルロス・グレイシーは問う。今のって何?と。

柔道。柔術だよ

笑顔でそう答える前田光世。
ジュージュツを覚えるとボクも強くなれる?教えてくれるという問いにもちろんとも返してくれる。
こうして後の世にグレイシー柔術として知れ渡っていくことになるんですなぁ。

ガルシアがシャツを破いたことにより、前田光世の左の脇腹に傷があることが判明する。
この傷こそ、先ほど話していたこれまでで一番強い男に関係するもの。その男にやられた傷だという。
その相手とは一体誰なのか・・・?

相手は、日本人です。奴の名は・・・

そこまで語ったところで時間は過去、十年前へと飛ぶ。
明治37年(1904年)東京――

講道館の稽古から帰ってくる途中と思われる前田光世。
夜道でその前田光世に声をかけて来る男の姿があった。その男はこう名乗る。

・・・丹波。丹波文吉

明治の東京で丹波文吉と前田光世という餓狼が二人、出会った!!

というところで、真・餓狼伝の一話は終了となります。
ううむ、一話のほぼ全てが前田光世の話で終わってしまっている!!
まあ、語るに足るだけの人物ではあるし仕方がないですかなぁ。

丹波文吉。餓狼伝の主人公である丹波文七と関係があるのだろうか?
何かでは明治に丹波文七が生きていたらどうなるかを表したキャラクターであるという話を見た気がするが・・・
そうなると、血縁者とかではなく、キャライメージの再利用というかそういう話なのだろうか?

ともかく、いきなりの強大な餓狼二人の対決。どのような闘いを見せてくれるのか。楽しみである。



第二話/講道館か  (2012年 12号)


天下の往来で講道館の人間を呼び止める丹波文吉。
相手は講道館の真鍋慎二郎
前回と似たようなシチュエーションではあるが前田光世との闘いの話ではありません。
その闘いになる前の話ですかな?

真鍋慎二郎との闘い。というよりも、天下の講道館との立ち合いを所望している丹波文吉。
ずいぶんな自信でありますな。もちろん真鍋もこれを断るようなことはしない。
なんだかんだで腕に覚えがある連中ですしね。

立ち合い開始。
丹波の奥襟にスキを見つけて掴む真鍋。
いいとことったぜ!って感じの顔をしているが、おそらくそれは誘い。
奥襟を掴んだ真鍋の左腕を抑え込み、関節を決めながら前方へと捻り倒す。
そして腕を完全に極めて・・・折る!!
うむう、容赦のない折り方ですな。真剣勝負らしい話である。

ハッ。ぬるいね。講道館。

折られた腕を抑えてうずくまる相手を見て踵を返す丹波文吉であった。

この丹波の行動は徐々に街中でも噂になってきている。
真鍋初段に続き、田嶋定五郎初段がやられたと茶飲み話で口にする御隠居。
田嶋初段は講道館の中でも名の知れた奴だという。ほう、初段なのに。

なぜ講道館が狙われているのか?事情通な御隠居はその問いに答えてくれます。
道場主、嘉納治五郎
弱冠二十二歳で嘉納流柔術"講道館"を興した。
加納は東京大学を卒業し、東京高等師範学校の校長を務めているそうな。
東京高等師範学校とは現在の筑波大学のことである。
まさに嘉納治五郎、"文武両道の鑑"といえる人物でありますな。武の廃れる明治のこの世に東大を出て道場を開くとは。

人格的にも素晴らしく、嘉納個人は恨みを買う人間ではない。
・・・だがその嘉納が教える講道館"柔道"が強すぎた。
明治19年に開催された警視庁武術試合。
起倒流や揚心流といった様々な流派から名だたる柔術家らが出場した中で、講道館は圧倒的な強さを見せつけた。
その後、講道館の名は全国へと轟き、爆発的にその門下生を増やしていく。
結果、他の流派の道場は衰退。そして廃業・・・
なるほど。これは日本中の道場から恨みを買っている可能性がありますな。
"出る杭は打たれる"ってのが世の常である。

そん通りじゃ。強か所が目の敵にされるのは致し方ないこと。
じゃっどん我が講道館はちょっと打たれて引っ込むような、ヤワな杭ではなかっど。

御隠居の話を耳にして、口を挟んできたのは巨漢の男。
男は話をしていた御隠居達にこのように述べる。

講道館をつけ狙うとるうつけ者・・・丹波文吉。奴に向けて噂を流してほしいんじゃ。
"貴殿の挑戦は、この有馬為介がお受けする"と。

この発言は御隠居達だけではなく、周りの人々全てが耳にすることとなった。
そりゃあ、米俵を3つも抱えた男がこんなことを述べだしたのなら噂にならないはずもないですわな。凄いアピール力だ。
米俵は1つで約60キログラム。つまり約180キロもの重さを担いで平気な顔をしていることとなるのだ!!

180キロ、48貫もの重さを抱えるのは講道館で若手実力一の呼び声も高い男、"鹿児島(かごんま)の勇"有馬為介二段
若手とはいえ、こんな凄そうな男でも二段であるのか。
講道館は奥が深いのか、段位がなかなかあがらないということなのか。

噂は瞬く間に広がったのか、丹波文吉は有馬為介を狙ってやってくる。
有馬としてみれば噂まで流してようやく会えた相手である。嬉しそうに立ち合いに応じてくれます。
だけど、丹波の姿形を見て眉を顰めたりもする。
講道館を狙うような奴だし、熊みたいな奴を想像してたのに、子供のように線の細い男だったのが意外だったのでしょうな。
って講道館は襲った相手の姿形も仲間に伝えずにいるのか・・・?人相描きくらい回そうぜ。

それはさておき。
有馬は丹波に問う。なして講道館ば狙うとる?なんぞ恨みでんあるとか?と。
その問いに対し、アンタらほんと〜〜〜に強いの?みたいな感じ〜〜〜?と返す丹波。軽い調子だなオイ。挑発かね?
その手には乗らぬとばかりに、質問を続ける有馬。
こげな手の込んだコトばせず、正面から正々堂々講道館に挑戦すればよかものをと述べる。

正々堂々?アンタらが?

有馬の言葉に爆笑する丹波。何がそんなにおかしい?

あ〜〜本当に笑かしてくれるぜ。講道館を信用しろとでも?
あの腹黒詐欺師の嘉納治五郎を信用しろと言うのかい?

この言葉はどういう意味が籠っているのだろうか。ただの挑発なのか、それとも・・・?
丹波の意図は分からないが、少なくとも有馬に対しては非常に有効な挑発となった様子。
講道館の修行のお蔭で例え親類縁者の悪口を聞いてもなんとか腹に収めることができるようになっていた有馬。
しかし、嘉納先生の侮辱だけは看過できない。
もはや言葉不要と告げ、立ち合いの開始と成り申す。ちぇすとーッ!!

襟を開けて誘いをかける丹波。
しかしそれには目もくれず、袖と奥襟を掴んで投げをうつ有馬。
見事に背中から叩き付けられる丹波。柔道なら一本になっていたところですな。
しかしこれは実戦。まだ終わらない。倒れ込んだ丹波の上に馬乗りとなる有馬。

丹波〜〜〜貴様、講道館をナメ過ぎだ。ちぇぇえええい!!

高く拳を振り上げ、顔面へと振り下ろそうとする。
が、その拳を横に流す丹波。そうやって上に乗っている相手の体制を横に崩し、下半身を跳ね上げて体を回転させる。
その際、相手が突きに使っていた右腕を確保しておくことを忘れない。
それによって、回転後に自分が上となった際、腕を抑えることができるようになるからだ。
相手の体を横断するようにして右腕を腕がらみに極める丹波。

極まったぜ?降参するか?講道館。

そのように尋ねるが、もちろん屈する講道館ではない。だから折る。音を響かせるようにして。
夜道に鳴り響く骨の折れる音と有馬為介の悲鳴。うーむ、実戦はやはり怖い。

勝負に敗れ、腕を吊った状態で講道館の偉い方々の前に座す有馬。
その前にいるのは4人の講道館の人間。
横山作治郎、六段。
三船久三、二段。
富田常次郎、六段。
そして道場主である嘉納治五郎その人である。

若手実力一と目される有馬まで敗れた。これでは講道館の面子は丸潰れである。
幹部たちは嘉納先生に如何致しましょうかと問う。
それに対し、加納先生。君たちはどうしたいのかね?と問い返す。ふむ、これは全面戦争の形になるか・・・?

前田光世との闘いはどこに挟まるのか、分からない形になってきました。
ともかく、ここから講道館との熾烈な戦いが始まりそうな予感がありますな。
丹波文吉がやけに軽い感じの受け答えをするのが気にかかるが、やはりあれはただのポーズなのかどうなのか。
餓狼と称されるほどの激しさが窺える戦いを早く見たいところですな。



第三話/嘉納治五郎と前田光世  (2012年 13号)


丹波文吉なる"辻投げ"に対し、講道館もついに重い腰を上げる!?
てなアオリだが、辻投げとはまた新しい言葉だな。まあ、確かに切ってるわけじゃないけど。
でも投げてるというよりは追ってますよね。となると辻折りが正解か!?

それはさておき、道場主の嘉納治五郎に丹波と戦う許可を頂くべく門下の高弟たちは声を張り上げる。
それら高弟たち1人1人に静かに声をかける嘉納先生。

横山君。君の天狗投げは天下一品です。あれを屋外で喰らって立てる人間などまずいないでしょう。
三船君。まだ若いのにその成長ぶりには目を見張ります。特に君の"隅落とし"はもはや達人の域です。
富田君の"巴投げ"は妖術のごとく誰をもとらえるでしょう。

それぞれを褒め上げる嘉納先生。しかし、その脳裏には別の男のことが思い浮かんでいる。

時は遡り――回想シーン。

冷え込む朝。嘉納先生は厠で用を足す。さすがに道場主は健康だ。今日も快便でありますな。
だが、突然の大声に厠で盛大にひっくり返る嘉納先生。
その大声は山をも動かしそうな大きさである。実際に厠の看板がずれ、スズメが飛び去っておるわ。

声をかけてきたのは前田・・・前田光世である。
朝早くから何のようかなと思ったら、三日ほど暇をいただきたいと申し出てくる。
朝稽古も終わらぬうちから?と問う嘉納先生に対し、朝稽古はもう終わりましたと答える前田光世。

と言うより、向こう三日分の稽古を済ませて参りましたッ!!

その言葉が示す通り、道場には疲れ切って瀕死の様子門下生たちが死屍累々の有様で倒れていた。
どうやら朝稽古ではなく、昨晩からぶっ通しで朝が明けるまで稽古をしていた様子。無茶しやがる。

・・・丹波文吉ですか。

無茶をする前田光世。その原因が何であるかは嘉納先生も理解している。
丹波文吉と戦おうと考えているのだろうが、その真意はどこにあるのだろうか。
嘉納先生は問う。君は講道館流が好きなのか、それとも闘いそのものが好きなのか
その問いかけには即答できずにいる前田光世。そこで嘉納先生は重ねてこのように声をかける。

前田君。この治五郎の顔、でなくてよい。事を起こす時には自分の弟子・・・仲間の顔を思い出しなさい

その先生の声で思い出す。ぶっ通しの稽古を終えた時のことを。
個人的な理由で無茶苦茶な稽古に付きあってもらった仲間に礼を言う前田光世。それに対し、仲間たちは暖かい言葉をかけてくれる。
ここにいるみんなは前田さんや諸先輩方に憧れている。いくらでも協力します!と。
そのことを思い出した前田光世。笑顔を浮かべて先生のもとを辞す。
講道館の人間として丹波文吉と戦う決意を固めたって感じですかね。
踵を返した時には戦闘態勢が整ったかのうように険しい顔となっています。

このような申し出を既に受けていた嘉納先生。
故に、高弟たちにはこう伝える。ここは前田、前田光世に全てを託します、と。

前田君は強いですから

これが嘉納先生の決断でありましたか。
ふむ、ようやく1話の終了時の2人の餓狼の対決が始まりそうな気配がしてきましたな。
丹波文吉と前田光世。かなり激しい戦いになりそうだが、どのような勝負となるのか・・・楽しみだ!!



第四話/総合格闘技の源流  (2012年 14号)


世界の格闘技の中枢を担う総合格闘技。
平成の世――現在。総合格闘技は独特の進化を遂げている。
が、そのルーツを紐解くと、原点は日本の明治漢の格闘家たちである。中でもその最前線にいたのは・・・
生涯二千試合無敗と言われ、後にブラジルへと渡りグレイシーに柔術を教えることとなる――前田光世である。

明治37年(1904年)前田はとある男の挑戦を受けていた。

僅か二人しかおらぬ空間に満ち足りるのは色濃き獣の芳香
前田光世と丹波文吉。二体の獣が今この時間、この場所で対峙している。

前田光世と対峙した丹波文吉は「笑み」を浮かべていた。
が、その「笑み」とは裏腹に、全身を汗が伝った。

初めてでも感じ取れることがある
日本の仔猪に初めて犬の鳴き声を聞かせても無反応。
ところが猪が一生出会うことはないであろうライオンの鳴き声を聞かせると、大パニックを引き起こすという。

初めてでも感じ取れることがある
・・・丹波文吉の目が、鼻が、舌が、耳が、皮膚が、筋肉が、細胞が、神経が、「この男は強い」と判断した

一方前田は冷静に文吉を観察する。

文吉の年齢は十・・・七、八歳といったところ。
左目の下の傷は切創ではなく裂創。打撃の心得があると見て取れる。
線は細い。力ならば自分の方が上だと判断する。となると速さ主体の闘い方かと想像できる。
拳の厚み・・・拳ダコ・・・体幹・・・重心・・・発声・・・呼吸法・・・足・・・擦り足・・・

まさしく冷静に値踏みを行う前田光世。そんなに見つめられると照れるぜ。

文吉は前田光世をライオンのように感じ取った。
ライオンは得物を狙う際によく観察し、一気に飛びかかってくるという。そういう辺りを考えると確かによく似ていますな。

丹波「アンタは今までの奴らとは違うな」
前田「ほう。お前が辻討ちした俺の仲間と比べてか」

確かに他の連中とは違う。侮ってもいないし憤ってもいない。
冷静に。だが確かな闘いの意志を持ってここに立っている。
とはいえ仲間が5人もやられている。そろそろ理由を聞きたいと述べる前田光世。

・・・・・・丹波久右衛門。知ってるか?

丹波文吉の口から出たこの名前。どうやら文吉の父親のようである。
だが前田光世は聞いたことのない名前であるらしい。
それを聞いて丹波。治五郎は伝えてないのか。親父も浮かばれねーなと口にする。
ふむ、これは・・・やはり前に嘉納治五郎のことを腹黒詐欺師と述べたことに関係しているのだろうか?

気にはなるが、今は口でそれを語る時ではない。耳で聞くのではなく、体で聞く。前田光世はそう答える。

文吉の全身に吹き出していた汗はもう引いていた。
話をしながらじりじりと間合いを詰めていた双方。
もはや一歩踏み込めば手が届くという距離にまでなっている。

丹波「改めて言う」
前田「おう」
丹波「立ち合いが所望
前田「願ってもないこと

双方、獣のような凶暴な笑みを浮かべ、共に掴みかからんと飛び出す。

盛り上がってきたところで次号センターカラー。
野獣2体の熾烈な戦いに期待が高まるぜ!!どんな凄絶な勝負となることであろうか・・・楽しみだ!!



第五話/背負い  (2012年 15号)


丹波文吉VS前田光世。いざ開始めいッッッ!!!

解き放たれたように歩み寄る二匹の餓狼。
下駄のような履物は不要と放り捨て、素足で近づいていく。
そして頭から激突し、お互いに笑みを見せあう両者。

路上の立ち合いは初撃こそ全てである

互いに袖を獲り組み合ったこの状況。初撃を決めた者こそが勝者となる・・・!!

・・・丹波。背負うぜ

なんとここで前田光世による決め技宣言。アンタ何言っちゃってんの?
なんだか穏やかな笑みを浮かべたりしてますが・・・舐めているわけではないみたいですな。
おもしれー。やれるもんならやってみてよ。

丹波のその言葉を受け、つま先立ちになる前田光世。
息を止めて力を込めると、一気に踵を地面に落とし、上体も落とす。
この勢いに丹波の上体も崩されてしまう。わたた。

その崩れた丹波の体に対し、宣言通りの背負いを敢行する前田光世。
腕を取り、身体を入れて、腰を一気に跳ね上げる!!これはまた見事なつま先立ちですな。いやぁあぁああ!!

凄まじい背負いが決まった。
と思いきや、空中で丹波の体が回転する。見事な一回転により、足から着地する丹波文吉。
これにはさすがに前田光世も驚いた表情である。
しかしすぐに気を取り直し、再度組み合って今度は足払いを行う。さあ!!
だが丹波。足をすくわれ体が回転したが、再び空中で体を翻し、足から着地をする。

前田「猫三寸・・・驚いたな。"猫の三寸返り"ができるんだな」
丹波「・・・講道館の四天王の一人、西郷四郎の・・・だろ?」

西郷四郎の得意技。
それは下駄の上から恐ろしく低空でとんぼを切り、寸分違わず下駄に着地、いや下駄を履いてしまう"猫の三寸返り"。
その技を応用して柔道に生かした四郎さんを誰も投げ極めることはできなかったと前田光世は語る。
あたかも三寸の位置から落下する猫が必ず反転して着地するかのごとき伝説の技である。

前田「それを長身のお前がやるとはな・・・たいしたもんだ」
丹波「うわ。褒められちゃった

褒められちゃった。じゃないよ。なんだか呑気な感じだな。
まあ、お互いを認め合っているからこそ出る軽口というものなんでしょうな。
回転で回避されたとはいえ、"投げ予告"したうえで引っこ抜いた前田光世も大したものである。

前田「・・・お前の柔と俺の柔。どっちが上なのか確かめようか」
丹波「あー心得た」

そう口にし、戦闘を再開する2人。
しかし、丹波が仕掛けたのは柔ではなく、当て身。
前田光世の頬を切り裂く鋭い一撃であった。

柔を比べあおうという前田光世に対し実に挑発的な一撃でありますな。
丹波文吉の強さは柔道的なものだけではないということだろうか。
ともあれ、丹波には投げが通じにくいのが分かった。前田光世はどのように攻めていくのだろうか。気になる所である。



第六話/当て身  (2012年 16号)


"投げ――"
講道館柔道が他の柔術諸派と比べ抜きん出ていたのは――"投げ"である
柔道を考案するにあたり、古流柔術からレスリングに至るまであらゆる技を研究した嘉納は言う。
「相手を極めるには先ず投げが必要。投げられざれば負けることなし」

その強力な投げを身につけている前田光世。
だからこそ丹波文吉に対し、柔を比べあおうと声をかけた。
しかし、丹波が放ったのは拳による一撃。当て身!?いや・・・これは・・・!!

距離を開けて体勢を整える前田光世。それに対し、自ら飛びかかる丹波。
左の突き。右の突き。そして弧を描く右の拳。

当たんねー!当たんねー!また!?
クゥ〜〜〜当たんね〜〜〜なら・・・これ――・・・もかわす!?

拳の連撃を見事に回避する前田光世。
ならばと放ったのは蹴り。意表をついての一撃と思われたが、これも見事にかわされてしまう。
だが見事にかわしてはいるものの、さすがに驚愕をかくせない前田光世。
逆に丹波はかわされているわりには嬉しそうな表情である。

本来当て身とは組むために打ち、組んでから突く。すなわち柔のための技術である
しかし丹波文吉が放つ一発一発は相手を沈めるためのものであった。

投げに繋げるための打撃ではなく、それだけで相手を倒そうというもの。
だから足関節を蹴り壊すような危険な蹴りも平気で放つ。
さらに狙うは内股・・・いや、股間だ!!
だがこの蹴りは前田光世に受け止められる。裾を掴まれた!?投げられる!!
と思う間もなく投げられる丹波。しかし、三寸返りでしっかり足から着地する。むう・・・柔道家殺しめ。

コイツ・・・当て身から足関節・・・さらには・・・釣鐘(金的)まで狙ってきやがった・・・

容赦のない攻めを見せる丹波。しかしそれらを凌ぎきる前田光世も凄い。丹波もすげーよと褒め上げている。

講道館にはこーゆーの、ねーって聞いてたけど。

確かに講道館の技の教えにはない。
柔道が基本となっている講道館であるし、当て身はさておき、倒すための突きや蹴りは基本教えてはいないんでしょうな。

だが――講道館には――いろんなコトを教えてくれる「人」はいる!!

なるほど。講道館として打撃は教わっていなくとも、中での修練で身に着けるものはあるという話ですな。
強くなるのであれば打撃対策も当然重要となる。となれば、自らそれを身に着ける部分だって出て来る。
それを示すかのように、前田光世の掌打が丹波の顎を捉える。スパーン!!
見事にカシャッと外れた丹波の顎。投げが効かないなら打撃で弱らせればいいという話になりそうですな。
講道館に打撃はないと油断したな丹波!!

しかし、最後の打撃時に2人の肉体が露わになるイメージ図があるが、丹波思ったよりも細いな・・・!!
こりゃ単純に打ち合ったんじゃ厳しいんじゃなかろうか。
だからこそ躊躇なく急所を狙っていったのであろうが・・・
むしろ丹波こそ投げや関節を積極的に狙っていかないといけない気もする。が、簡単に投げれる相手なはずもないか・・・ふーむ。
優勢だったように見えて一気に劣勢に追い込まれた感じの丹波文吉でありました。さてはてどうなるのか。



第七話/人助け  (2012年 17号)


おー外れとる。外れとる。嘉納先生にはナイショじゃぞ、前田ァ。

複数の男たちがアゴを外されのたうち回る悲痛な状況。
そんな中にあり、呑気な声をあげている男がいる。この男こそ"鬼横山"
講道館で最も当て身に習熟していたという"鬼"と呼ばれた男、横山作次郎六段(後に八段)である!!

文吉と前田光世が戦っている現在から3年前のこと。
前田光世は横山作次郎のいう"人助け"を手伝っている。ふむ、男たちのアゴを外すのが人助けと?

ゆーたじゃろ!!ワシが昔大層お世話になった獏山先生が、最近すこーしお金に困っておられる。
先生は柔を教えとるが、骨接ぎのお医者でもある!!
じゃから、こーして半ヨゴレ共のアゴでも外して"お客"をたんとこさえてやらんと・・・

そういう話でしたか。回りくどくはあるが、まあいいや。
前田光世としてみれば実践を積むいい練習にはなるってところでしょうし。
しかし、横山のように見事にアゴを外すところまでは行けていない様子。これじゃもうかるのは歯医者じゃ!!

いよぉーし。残りふたーり!!!
お前たちの悪事の証拠は握っちょるぞ。憲兵に突き出さないだけでもありがたいと思え。

ああ、そういう意味での半ヨゴレなんですな。思いっきり暴を振るってもいい相手というわけだ。
素手の相手に短刀を持ち出すような奴らだし、遠慮は無用ですわな。

アゴ!アゴアゴ!この近くの骨接ぎは獏山先生の所だけ!
明日、朝一番で獏山先生のトコ大繁盛のウハウハじゃ。がーはっはっはっは〜〜

別にいいけど、それはその後で獏山先生に恨みが向かったりしないんでしょうか?気になる所だ。

前田〜〜コツはのお、腕の振りは小さく素早く。
掌底の腹を素早く返し、アゴを外すんじゃ。

そのように教え、見事に実践してみせる横山作次郎。それを思い起こす現在の前田光世。

あの時の教え。今、使わせて頂きます――こうでしょ横山さん――

コンパクトに振りぬかれた掌底が見事に文吉のアゴを外す。あが――――ッ!!
そして地面をのたうち回る文吉。痛そうですなぁ。
横山作次郎曰く、コレは相手を倒す技ではないが戦意を削ぐにはもってこいの技だとのこと。なるほどね。

しかし、その意に反して文吉は起き上がり、むしろ楽しげにアゴを振り回して見せる。ギャグ漫画みたいな光景だ・・・!!
驚き飛び去る前田光世。その前で文吉は両の拳を歌いながら構えだす。

あーがが♪が〜〜がががが〜〜♪
が〜〜がががが〜〜が♪が〜〜がががが♪
が〜〜ががが♪が〜〜ががが♪
が。が。

最後の2つの「が」のタイミングで一度アゴの関節を両手で叩き外し、そしてすぐさま膝で叩き、しっかりと嵌めなおす。
ふむ、なるほど。ずれたのであれば一度正しい方向にずらし、そして戻すのがいいわけか。何にしても痛そうだ。痛くないのか?

そりゃ痛ーよ。けどよ、この痛みは知ってる
人を眠らせたきゃ、ちゃんと――急所狙わなきゃ。

そう言いながら飛びつき、人中を狙おうとする文吉。なるほど、そこは確かに人体の急所でありますな。
戦意を削ぐような戦いではこの男には通じない。やるなら完全に倒しておかないといけないというわけか・・・

文吉の言によれば、アゴを外されたのは久々であり、この痛みは知っているとのこと。
そこからしても、過酷な修行を経てきたというのが見て取れる。
しかしアゴって外れると癖になるような気がするのだがな・・・楽しんでブラブラしている場合じゃないぞ!!



真・餓狼伝 2巻


第八話/殺意  (2012年 18号)


文吉渾身の拳が前田光世の急所を鋭利に狙う。
強く踏み込んでからの一撃。そこからは相手を殺してでも勝とうという殺意のようなものが伺える。

中高一本拳!

人中などの急所を打ち抜くのに最適な一本拳で攻撃を仕掛ける文吉。
しかしさすがに前田光世。この苛烈な攻撃をかわし受け流しやり過ごす。文吉の殺意の籠った連撃を――

・・・いや違う。丹波に――殺意はない
だが――"そこ"に踏み入らねば勝負は決しない――と、こいつは判断した

一本拳だけではなく、掌底や縦拳など様々な攻撃を繰り出す文吉。
相手を殺すぐらいの意識でなければこの男は倒せない。そう思っているかのような攻撃。

光栄だ

前田光世はその攻撃を受けてむしろそのように感じる。
これほどの男にそこまでしなければ勝てないと思わせたわけでありますからな。ならば・・・

・・・俺も踏み入ろう。"そこ"へ――

素手の人間が一撃で相手の命を奪うことは至難である。
「打」においては余程の体重差、力の差がなくてはまず不可能。
しかも相手は動き、脳内麻薬が放出されてすらいる。だが――

丹波よ。俺は――「柔」だ
相手の体重・重力・遠心力を利用して一撃で殺す技。こいつで――お前を討つ!

打撃で一撃必殺は難しい。だが投げならばどうか。
前田光世の言う通り、相手の体重や重力、遠心力。さらには堅い地面という武器が伴うこととなる。
落とし方によればまさしく一撃で絶命させる力を秘めているのが投げである。

とはいえ、猫の三寸返りを身に着けている文吉。簡単に投げれるはずもない。
だから腰を低く低く落とし、身を翻す間すらなくそうとする前田光世。
身体を捻っても足からの着地などはできない。体を叩き付けられることとなる。
文吉も必死に足を絡めて潰そうとするが、それならばと関節技に移行しようとする前田光世。腕ひしぎだ!!

柔というのならば投げだけではない。関節を極めるのも柔の技術のうちであるし、それにより殺すことも可能である。
さすがに腕を極めて殺すのは難しいだろうが、まあ必ず殺さなければいけないって話ではないしな。

しかし、文吉ももちろんすんなり関節技を極められたりはしない。
首を支えに下半身を持ち上げる。そして回転。首の前に乗せていた前田光世の足を振りほどき、逆に上に乗るような体勢に移行する。

・・・やっぱり強い。前田光世は・・・けどこの漢を前にして、ここまで俺は殺り合えてる。
感謝するぜ。親父・・・

やはり文吉の技や戦闘経験は親父によって身に着けさせられたものだった様子。
嘉納治五郎とも因縁のありそうな文吉の親父とは一体どのような人物であったのか。
次回は回想でその辺りが語られそうな気配。むむ、戦いがようやく攻防という形になってきたというのに・・・!!



第九話/父、久右衛門  (2012年 19号)


1896年(明治29年)福島県の山間部(旧にわき藩)にて田畑を起こす男の姿があった。
この禿頭の男こそ丹波久右衛門。丹波文吉の父親である!!

これが久右衛門でありますか。なんだか人の良さそうなオッサンですな。
それはさておいて、にわき藩とは一体どこなのだろうか。
福島権にはいわき市というところはあるがそのような藩名は聞き覚えがないが・・・まあいいか。

畑作業をしている久右衛門のもとを訪れたのは甥の剣三郎
わざわざ紀州から伯父を訪ねてやってきたらしい。紀州といえば今の和歌山か。それは難儀ですなー。

久右衛門と剣三郎の会話からいくつかの事実が見えて来る。
丹波家は丹水流という流派を伝えており、代々幕府方の指南役だったらしい。
明治の世になって幕府はなくなったため、職にあぶれて土いじりをしているのが現在の久右衛門とのこと。

では、丹水流・・・本家の丹水流は、今?

剣三郎の厳しい表情での問い。そうか、久右衛門は本家の血筋の人間なのか。

にわき藩武芸指南役のお家、我が丹波。祖父も父も5人の兄弟たちも丹水流を極め、無双の武人と呼ばれた。
だが、皆戊辰の戦で死んだ。それぞれの世継ぎと共に一族皆・・・
ただ一人生き残り、本家丹水流を継いだのはワシ「ぼっこれ久右衛門」分家のお前たちも聞き及んでおろう。

ぼっこれとは福島・会津の言葉で「粗悪な」「ぶっ壊れた」の意味。人を中傷する言葉である。
そのような呼ばれ方をされるということはつまり・・・

・・・ワシに武の才は全くもってない

はっきり言い切る久右衛門。がっしりしたいい体格はしているが、武の才は体格だけで決まるものではないしなぁ。
明治の世となりお役御免となり門人も皆離れた。丹水流はもう消え行くのみと覚悟している久右衛門。
後は分家の面々で盛り立てていってほしいと考えている様子。

久右衛門伯父。伯父上には確か跡取りがおられましたな

剣三郎は文吉の話題に水を向ける。久右衛門がダメならばその子に丹水流を学ばせてお家を再興すれば、という考えの様子。
しかし久右衛門はそれは無理だと一顧だにせず。
ぼっこれ久右衛門の子である。武の才などあろうはずもないと諦めているわけですな。
幸い文吉は"学"が好きらしく通わせている尋常小学校では極めて優秀な生徒として知られているそうな。

これからの世は"力"ではなく、"知"の時代だと私は思っておる
従い、私は文吉のこの才を伸ばしてやろうと思っておる。

そのように語る久右衛門であるが、剣三郎はこれを聞いて激昂。何を言っておられる!!

代々!!代々"最強"の称号を守ってきた丹水流ですぞ!!その名の重さをどう思っておられるのですか!?
いくら時代が変わろうと"血を継ぐ"ということはそんなに軽いものではないッ!!

よい言葉でありますな。
受け継ぐというのは大事なことである。世が移り変わろうと伝えていかなければいけないものは確かにあると思える。
だが、自身に才覚がないのは誰よりも一番よく分かっている久右衛門。剣三郎の叫びも空しく響くばかりであった・・・

2年後に丹波の一族で交流会が行われるそうだが、本家は参加せずということになる。
参加しようにも一人の道場生もいない状態でありますからなぁ・・・
というわけで、肩を怒らせながら帰ることとなる剣三郎。
せっかくだからという申し出なので久右衛門が作ったイモは持って帰ることとなりました。イモおいしいです。

これが本家・・・とは。

どうにも諦めきれないのか、久右衛門に本当に武の才がないのか試す剣三郎。
手の平サイズの芋を取り出し、背中を向けている久右衛門に投げつけてみる。
と、避けもせずに後頭部に当てられて痛がる伯父上の姿を見せつけられることとなったわけで・・・こりゃダメだ。

剣三郎とそんな話をした後、作物の卸のために外出する久右衛門。
そこで尋常小学校の先生と出会い挨拶。先生によると文吉は勤勉で優秀な生徒であるとのこと。
きっとこれからの"日本"を背負う"学士"となりましょうぞと褒めてもらえる。それは有難い話だ。
だが、その直後難しい顔をする先生。なにやら問題が発生しているらしい。むむ?

いや実は最近この地に華族の縁者の子供が転校してきましてな。
その子を中心として徒党を組み、文吉君に嫌がらせをしているようで。

なるほど。そりゃ面倒くさい話でありますな。いつの世もそういう問題はなくならないか・・・
華族の子供は一人教室で勉強をしている文吉の頭をめがけて石を投げつけたりしている。
軽い投げ方ではない。当たればかなり痛いことになりそうな投げ方だ。
だが文吉、この石を座ったまま頭を動かしてすんでのところで避ける。後ろから飛んできた石を避けただと・・・!?
そして振り返る文吉の表情に浮かぶのは・・・獰猛な笑み・・・!!

勉強のし過ぎでストレスでも溜まっていたのだろうか。凄く凶悪そうな表情を浮かべている丹波文吉九歳。
父の久右衛門は武の才がないと決めつけていたが、どうしてどうして。
父が出来なかった後頭部への投擲を見事に避けてみせている。これは鳶が鷹を生んだって話ですかね。

丹水流という流派があり、丹波家は代々続く最強の称号の持ち主であると判明した。
父こそ武の才はなかったものの、文吉もまたその最強の名を継ぐ者であったということか。
さて、そうなるとこの久右衛門と嘉納治五郎にどのような因縁が生じることとなるのか。気になる所となってきました。
でもとりあえずは少年文吉の話になりますかね。ここからどのように丹水流の技を学んでいくかの話になりそう。
2年後に行われるという交流会の話も気になる所だ。



第十話/学士の卵  (2012年 20号)


文吉の父である久右衛門と文吉の通う小学校の担任が立ち話。
久右衛門としては文吉の学校での様子が気になるみたいである。親心ですなぁ。

うーんそーですな――たとえば今日でしたら・・・
漢字の正中線、人中、鳩尾、経絡などの「読み方」や「意味」を質問してきましたな。

それは、人体の急所!!
学問の徒というにはあまりに殺伐とした単語ばかりである。
医者志望だとしても人中なんて普通は意識しないっしょ。

他にも"力学"にまで関心があるようで、支点・力点・作用点・・・もう「テコ」を理解します
いやはや九歳にして末恐ろしい・・・

力学。テコの原理。柔術に置いては、特に関節技を決めるのには必要となる概念だ。

まさ・・・か・・・文吉・・・!?

久右衛門の懸念はまさに当たりである。
文吉が家に籠って読んでいた書物。教室に居残ってまで熱心に読みふけっていた書物とは秘伝書。
丹水流秘伝之書と題された書物である。ほほう、これは・・・

そんな文吉にケンカを売ってしまう華族の子息。
取り巻きが数十人たむろする中で文吉に対し丹水流"無双の武"見せてみろよとかのたまってしまう。

・・・本当に、いいの?僕が"武"を・・・使っても

なんだか可愛い様子の少年文吉。
しかしそこから繰り出されるのは紛れもなく無双の武。
柔を使えば相手の少年の体は軽く反転する。
子供相手にはなかなかえぐい落とし方であるな。脳天からいかなかっただけマシではあるが・・・

武道って・・・武道って・・・

実に楽しそうな文吉。
これまで書物だけでしか知らなかった武道の扱いを身を持って体験している。
秘伝とまでされている技術を学び、それがスムーズにできるっていうんだから楽しくないはずがないですわな。

小学校の女子が急いで先生を呼ぶために走っている。
ちょうど先生と一緒にいた久右衛門は女子から話を聞き、急ぎ現場へと駆けつける。

いかん。いかんぞ文吉ッ。丹波の血、鬼神の血は・・・ワシで終わりじゃ――

ボッコレと言われた自分のみが生き残った。それにより丹波という鬼神の血筋は武を捨てることとなる。
そう覚悟していた久右衛門であったが、息子には思いもよらぬ才があったらしい。
駆けつけた久右衛門が見たのは、累々と横たわる少年たちの姿。そしてその中央で気持ちよさそうに空を仰ぐ文吉の姿。

・・・これが丹波の血か・・・

驚愕を隠せない久右衛門でありました。
うーむ、本当に九歳とは思えない技のキレである。まさに末恐ろしい。
果たしてこの才を見た久右衛門は今後文吉をどのように育てようとするのか。
まあ、大きくなった文吉を見る限り、武の道を歩ませるようになったとは思うが・・・
久右衛門と嘉納治五郎の関係や2年後の交流会など色々と楽しみな回想になってきましたな。



第十一話/武の道  (2012年 21+22号)


同級生たちをぶん投げた丹波文吉。
家に帰りて道場で父親からお説教・・・という感じではなさそうですな。

文吉が蔵で丹水流の秘伝書を見つけたのは4年前。それから今までずっと読み続けていたらしい。
勉学に勤しんでいたのは総てこの書を解読するためであったという。
それを知った久右衛門。今は武の世ではない。"武"なぞ絶対に許さんッ!!と諌める。

父上!世の移り変わりなど関わりありません。私がッ!私が強くなりたいのですッ!!

九歳にしてその欲求をはっきりと口に出す丹波文吉。
しかし丹水流はただ強くなるには恐ろしい術といえる。
そのことを説くために久右衛門は自身が実は六人兄弟ではなく七人兄弟であったことを明かす。

・・・ワシのすぐ上の兄、仁右衛門は丹水流の稽古中に命を落としたのじゃ
過去を遡れば一族の幾十人もが死んでいる。
そして技を身に付け"武"の成った兄たちとて銃と砲――あの戦で命を落としたではないか。

"武"を身につけるのに危険が伴うし、身に付けてもそれで戦場に行き命を落とすことにも繋がる。
その結果生き延びたのは"ぼっこれ"と呼ばれた自分だけ。これは大切な息子に武を勧めたくないという気持ちも分かる。しかし――

父上は"ぼっこれ"などではありません!!
父上・・・私がこの4年読み続けたこの丹水流の秘伝書!
これは、この書は父上が書かれたものではありませんか!!

そ、そうだったのか!!
どうやら久右衛門は身体を動かす才には恵まれなかったが、そちらの才能はあったらしい。
久右衛門の部屋にあるのは数多の武芸書や武芸帳。
元々あった丹水流の秘伝書にそれらの新しい情報や知識を加え、独自の秘伝書を作り上げたという。
ふうむ、身体はついてこないものの術理や何が有効なのかという原理なんかは理解していたということか。

私が・・・父上の・・・父上の書いた文字を見間違う筈ありませんから。
・・・私はうれしかったのです。この書を読むことが・・・父上と戯れているようで

愛息子のその言葉に思わず相好を崩す久右衛門。気持ちはわかる。

父上はよくご自分のことを"武の才能がない"とおっしゃられます・・・
・・・もしかしたら本当にそうなのかもしれません。
ですが、父上の"武の知識"は一族の誰よりすぐれています!!!
そんな父上に・・・私はご指導願いたいのです。何卒、何卒お願い致します!!

頭を下げて願う文吉。
父を認めてくれるという気持ちはうれしいが、それでも武は才能が全てというのが久右衛門の考えである。
自分の息子にその武の才があるとはとても信じられない様子。それが武の道を進ませるのに躊躇わせることとなる理由だ。
ならばと文吉、座した状態のままとんぼ返り。低空で一回転しそのまま着地をしてみせる。

秘伝書に西郷四朗の逸話"猫の三寸返り"の件が書かれておりました

書かれていたからとはいえ、この離れ技を見事にやってのけるとは・・・
それに相手が子供とはいえ文吉はあれだけの人数を一人で倒してのけている。

文吉。お前は・・・

武の才。丹波の鬼神の血筋。それを否が応でも感じてしまう久右衛門。
だから述べる。そんなに丹水流を学びたいのならばこのワシと立ち合いなさい、と。丹水流は甘いものではないのだ、と。

いかんぞ文吉。いかんのじゃ。"武"は往々にして男を狂わせる。危険なものじゃ。
文吉・・・お前はワシに倒され、現実を直視するのじゃ

そのように考えて立ち合った久右衛門であるが、現実は全く想定の逆であった。
飛びついてきた文吉にそのまま腕を決められて床に転がされる。飛びつき腕十字!?
九歳の息子にいきなり関節技を極められて降参する久右衛門。だが、事はその一戦だけではない。

・・・その夜、丹水流宗家丹波久右衛門は一子・文吉に――17度極められた

さすがにこの結果を受けては久右衛門も認めざるを得ないですよね。
息子には間違いなく武の才がある。その現実を直視することとなったわけだ。逆に。

・・・ワシの大事な息子、文吉。ワシもお前と一緒に狂うてみようかの・・・

倒れて息を荒くしている久右衛門を見下ろし、心配そうに涙ぐみ文吉。
稽古中に命を落とすこともあるという話を聞いたばかりですし、そりゃあ心配でしょうね。
自身の命よりも自身の技で父を仕留めてしまうのではないかというのを恐れなくてはいけない。これも武の怖いところである。
だけど、なんだかいいですね。この父を心配する子の姿というのは。
武を極めんとする親子というのはどうも不仲というか厳しい関係なのが多いので、こういう関係はなかなか新鮮に見えてよい。

文吉の武の才と久右衛門の武の知識。
これらが合わされば丹水流の宗家はかつての隆盛を取り戻すことができるかもしれない!!
が、その後に待ち構えるのは嘉納治五郎との因縁なんですよね。
一体何があったというのだろうか。腹黒詐欺師呼ばわりされるような何かがあったようであるが・・・?
なかなか気になる展開になってきました。丹波親子の活躍をしばらくは見守っていくことになりますかな。



第十二話/共に積みし夢  (2012年 23号)


「水背負」という鍛錬方法がある。
古くから丹波家に伝わる術で、厚い道着を幾重にも着込み、さらには水を含ませ重量を増した状態で稽古に臨む。
正に水の"枷"を背負わせる鍛錬法である

9歳の文吉にはこの重さのハンデはなかなかに厳しい。
が、それをやらないと教えている久右衛門の方が稽古に付き合えないというのだから仕方がない。
文吉も自分のためになりますからと納得してくれている。いい子だ。

こうして父と子は共に"夢"を積む。やがて実りを見せるその日のために――

いやあ、いい光景だ。微笑ましい。
武術を介して語り合う仲のいい親子の姿というのはなんと輝いて見えることか。

というところでいきなりの回想終了
おっと、思ったよりも早い段階で戻ってきましたね。講道館の、嘉納治五郎との因縁の話はまだお預けか。

父に鍛えられたおかげで前田光世とも互角に戦えるようになったという丹波文吉。
殴り合いによって互いに傷つき、組み合っての激しい投げで共に体力を削る。
投げを放っているのは主に前田光世であるが、文吉が堪えることで同じぐらいに負荷がかかっている様子。
上着も同時に同じ個所が破れているものだから同時に脱ぎ捨てる2人。ううむ、どこまでも互角か・・・!!

・・・なあ前田さん。
・・・俺たちは一体どれ位闘っていたんだろう。
・・・まだ一刻しか経ってないような、もう・・・一刻が過ぎ去ったような・・・
・・・もう眠ってしまいたいような。永遠に闘り合っていたいような。
ああ・・・頭がうまく回んねぇ。

どこまでも互角な打ち合いを続ける2人。
そこに浮かぶ笑みは開始時の獰猛なものとはまた違う爽やかなものも垣間見える。

・・・だけど、これだけは分かる。
残念だけど、俺たちの闘いに――終了りの刻が近いことだけは――!!

死闘を繰り広げる2人の決着もいよいよ近い。
次号は巻頭カラーでその様子が描かれる模様。
果たして勝利するのはどちらなのか。それとも痛み分けという決着を見ることとなるのか?
今後の展開がどうなるかも含めて気になる所でありますな。



第十三話/丹水流奥義  (2012年 24号)


単行本1巻が6月7日に発売
吠えてる文吉が目印である。なんだか今まで本誌の表紙で何度かみたことあるような絵でありますな。

それはさておき、文吉と前田光世の決着の刻が迫っています。
カラーの前田光世はやたらと男前ですなぁ・・・将来は妙なヒゲ生やしたおっちゃんになるのに。

2人が死闘を繰り広げている最中、雲に隠れていた月が姿を現す
キレイな真円を描く月を見上げて再び回想へと至る丹波文吉。
そう、思い描くのは幼き頃の姿。父に丹水流の技の数々を仕込んでもらった日々のことである。

刀を手にしている文吉少年
居合で露を切り払ったり、舞い落ちる木の葉を空中で切り裂いたりしている。
まあ、天才的な素養を見せる文吉でもさすがに即座に全てを身に付けるというわけには行かない様子ですけどね。

竹に藁を巻き、巻藁を作る久右衛門
青竹は骨の硬さ、藁は肉の硬さに似ているため、斬撃の修行には持ってこいと言われています。
しかし、その巻藁を縦に切り裂こうとするというのはどういう特訓なのだろうか。藁の部分に抵抗が薄いような・・・
まあともかく、巻藁を垂直に真っ二つにしようとするが上手くいかない文吉。
久右衛門の指示を受け、無数の巻藁が転がる中、必死な斬撃を繰り返す。
訓練の繰り返しで痛めた手を父親に治療してもらう際の文吉。なんともほっこりする親子の光景ですなぁ・・・

そうして幾ばくかの時は流れ・・・ついに巻藁を両断するほどの斬撃を身に付ける文吉。土台ごと。
その鋭さは中に舞う木の葉を両断できるほどのものだという。ほほう。

・・・学ばなければならぬ。大刀の重さ・・・動き・・・間合い・・・
・・・だが、刀はいらぬ。丹水流は無手を以て也す技じゃ。
これより、丹水流秘奥義を伝授する
「その身を以て刀とす」必勝を期す。その時お前自身が大刀となるのじゃ。
そして、これまで幾度も言ってきたように――雲を割き、月を断つつもりで斬り込むのじゃ

なるほど。月を見て思い出しだのはこの言葉ゆえでありましたか。
ならば、この場面で前田光世に見せるのは間違いなく丹水流の秘奥義。
両者の間を割って入る木の葉を素手で断ち切る鋭さを見せるその一撃は果たして決着の一撃となりえるのか・・・!?

上段から唐竹割りを行うのが秘奥義の型のようであるが・・・ハッ!唐竹割りなだけに竹を用いて修行を!?
というのはさておき、上段から切り裂く形の技な様子だが、前田光世の古傷は脇腹に残っていた。
この一撃でついた傷とはまた違うということだろうか?
それともこの一撃で何故か脇腹に傷が残ることになるのだろうか?
実は鋭い上段からの斬撃は技の一環で、逆の手で下から突き切り裂くまでが奥義の型であるとか・・・?うーむ、気になりますな。



第十四話/丹水流秘奥義  (2012年 25号)


丹水流秘奥義。「南無三宝断月独楽」いくよ

秘奥義の名前を明かし雄叫びをあげて走り出す文吉。
ここから月を断つような斬撃が繰り出されるというのだろうか。
まずは・・・と、跳んだ!!

高く、高く跳躍する文吉。
そして頭の上で合掌。思いっきり逸らしていた背を空中で前に傾け、合掌した手を振り下ろす!!
この斬撃があの巻藁訓練の成果なのか!?

手刀!!防御。
高速で迫りくる斬撃を前に無数の考えが瞬時に前田光世の脳内を駆け巡る。
全体重に遠心力を加算した一撃。早く、高い。両腕で受けたならばその両腕が砕かれるかもしれない。
体中が痛く疲労が感じられる。回避。動け。左?右?半歩後ろにッ!!

間一髪手刀が顔を掠めるぐらいの距離だけ下がって斬撃をやり過ごす前田光世。
そしてすかさず降りてきて無防備な文吉の脇腹に右拳を叩き込もうと前に出る。
が、ここからが断月独楽の本当の姿である――

手刀を交わされた文吉の体はそのまま空中で回転する。
そして前田光世目がけて降ってくるのは・・・足!!

遠心力と体重の乗った右足の踵が前田光世の左脇腹に突き刺さる。
ここに当たるということは、前田光世も回避しようとしたんでしょうな。
しかし一度後ろに下がって前にでようとしたこともあり、避けきれずにもらってしまったと。

バキ!!と骨の折れる音を立てて崩れ落ちる前田光世。
これが丹水流秘奥義――南無三宝断月独楽か・・・

何でもいいが長い名前ですな。断月独楽だけでもいい気はするが、前につける言葉にも何か意味合いがあるのだろうか。
そういえば前回のサブタイトルが「丹水流奥義」で今回は「丹水流秘奥義」となっているのは一体何なのか。
秘奥義とうからには秘密の奥義のはずである。
衆目がないとはいえ、殺すわけでもない相手に見せてしまってよいものなのだろうか。
いや、秘奥義という名前で心理的な揺さぶりをかけている可能性はある。
これを受け切れば相手の勝ちだと思わせることで大きく避けることを防ぐとかそういう。

実際、初見だからこそ通じる奇襲技的な部分が強いと思われる。
警戒していれば飛んだ時点で大きく左右のどちらかに飛び去ればそれで済むわけですからねぇ。
多少横に動いたくらいなら降らす足をずらせばなんとかなろうが、動きを知られてしまっていてはそれも通じない。
というかそもそも最初の手刀を受ける選択肢も出てくる。合掌の手刀って威力的にはそれほどでもなさそうですし。
なるほど。秘密の奥義としているのがよくわかりますな。野試合だからこそ使える技ってわけだ。

親子で紡いだ秘奥義は炸裂した。これでこの勝負は決着という形になるのだろうか?
まだ起き上がる可能性もなくはないと思うが・・・はてさて。



第十五話/断月独楽  (2012年 26号)


両の手を合わせた手刀で先ず疑似攻撃をし、前回転の猫三寸で足のかかとに全体重を乗せ相手の頭部を襲う・・・
これが丹水流秘奥義「南無三方断月独楽」じゃ。
これを頭部に受けて立っていられることは不可能じゃ

久右衛門が文吉に。親が子へと奥義を伝授している。
なるほど。猫三寸が使える文吉の身のこなしゆえの奥義とも言えるわけなんですな。
よほどの跳躍力がないと疑似攻撃を加えつつの回転蹴りなんてできようはずがないですし。

そもそもこの時代、打撃系ではまだ「回し蹴り」さえ存在していない
合戦の戦術は投げや密着からの急所への当て身が主流だったでしょうからねぇ。
ローキックのような技が出てくるにはまだ時間がかかりそうな感じであるか。
そんな時代に回転蹴り。この文吉の放った奇襲技に前田光世は驚愕した。
それでも瞬間的に体を捻り頭部を守ったのは前田の卓越した格闘センスの成せる業だったのであろう。

だが――文吉の放った蹴りにより前田の脇腹は肋骨がヘシ折られ、その一部が皮膚をつき破っていた。
前田自身も気を絶している。文吉の足先が顎の尖端を掠めていたのである。

丹波文吉の完全勝利

文吉も倒れ伏した前田光世を見てそれを確信し、立ち去ろうとする。
が、背中を向けたはずの文吉が驚きの表情と共に振り返る。
そう、そこには――上半身こそ前に傾いだ状態であるが、確かに2本の足で立ち上がっている前田光世の姿があった。

・・・が、しかし。正気は逸したままである前田光世。
文吉は躊躇なく仕留めに行く。それは恐れにも似た確信めいた想いを抱いたからである。

この機を逃してはこの漢には永遠に勝てない――

そう察した文吉は再びダッシュからの跳躍。秘奥義である断月独楽を再び繰り出そうとする。
さすがに朦朧としている相手に疑似攻撃は必要ないので最初からかかとを頭に浴びせるつもりのようだ。
しかしこの判断は果たして正しいのか・・・!?

まあ、焦ったなという感じはありますわな。
秘奥義で仕留めきれなかったのに重ねて2回目。これはどう考えても破られるフラグとしか思えない。
意識の朦朧としている相手なんだし、冷静に後ろに回るなりなんなりした方がよかったですな。
一番いいのは投擲とか、放置して倒れるのを待つとかだろうけどさすがにそれはどうかと思うから除外するとして。

振り下ろした足を掴まれてその勢いのまま投げられたらさすがの文吉も身を捻って逃れることはできなさそうだ。
これは前田光世の逆転勝利の流れか。それとも両者立てずの引き分けという流れか。どうなるか。



第十六話/前田君  (2012年 27号)


ここで仕留めなきゃ、永遠にこの漢には勝てねー!!

完全な決着をつけるべく走り出す文吉。
朦朧としている状態の前田光世ならば既に見せた奥義であっても問題はない。
とにかく威力のある一撃でとどめをさす!!そのように考えたのか、再び断月独楽を放つ。しかし――

・・・田君。前田君。前田君。寝てる場合じゃありませんよ。

前田光世に呼びかけ脳裏に映るその姿は――嘉納先生ーッ!!

嘉納治五郎の姿を思い起こすことで正体を取り戻す前田光世。
しかしその時にはもう体重の乗った踵が振り下ろされようとしていた。

これで最後だ。前田ーッ!!

避ける間はない。腰も落ちているしサイドステップは踏めない。下手に身を逸らせばまたあばらをやられるだけである。
ならばと前田光世が取った方法。それは・・・片腕を捨てること!!
お前に腕一本くれてやると左腕を差し出し、振り下ろされる脚を受け止める。
その考えの通り、脚の一撃は止まったが左腕は折れた。
それを見て勝機と捕える文吉。追撃の拳を叩き込もうとする。
が、ここで前田光世。文吉の振り上げた足の裾を残った右手で掴み、背負いの構えに移行する。

ま・・・まさか・・・いくらアンタでも、釣り手一本で――俺を投げることは、できない。

腰を落とし地面についている左足で踏ん張ることで投げられないようこらえる文吉。
さすがに無理があるか。いや、本当に無理をするのはこれからだ!!

腕の力だけで無理ならば別の部分で補う。
ちょうど顔の前に文吉の右足の裾がやってきている。ならばそれを噛み、歯で支えて首の力も使いながら投げを放つ!!

・・・前田さん。アンタ・・・すごい人だ

物凄い勢いで弧を描き投げられる文吉。
この勢いでは身を捻ったとしてもダメージは免れないのではなかろうか。
そもそもこの執念に文吉自身が感服してしまっているように見受けられる。
これは完全に勝負あったか!?
しかし前田光世のダメージも相当なものでありますしなぁ。やはり痛み分けの引き分けという流れが濃厚でありましょうか。

ある格闘漫画で相手を恐れている時に回転系の技を多用することがあるという描写がありました。
相手を見続けることを恐れ、一度背を向けて視界を切りたくなるという話でしたか。
文吉が思わず秘奥義を連発してしまったのにもこの辺りの意識があるのかもしれない。
奥義という強い技でないと恐れを振り払えないという意識もありそうだ。結果ご覧の有様となったわけであるが――

2人の戦いが終わった後はどうなるんでしょうな。
前田光世は世界へと旅立つこととなるようですが、文吉は講道館との確執を解消できるのか?
嘉納治五郎と丹波久右衛門の間に何があったか次第であるが・・・どういう話になるのか楽しみである。
なんとなく久右衛門のことが気になるというか、作品内で一番気にかかるキャラとなってしまっているので困る。



真・餓狼伝 3巻


第十七話/執念  (2013年 28号)


腕を折られながらも文吉の袴の裾を噛んで投げを放つ前田光世。
さすがに文吉も身を翻してダメージを軽減する間もなく、うつぶせに地面に叩き付けられる。
投げた前田光世も無理矢理すぎたのか激しい前転を行いながら吹き飛んでいく。
どちらかというと投げた側の方が派手な動きになってますな。

先に動いたのは前田光世。
転がって仰向けになってみせるがあばらの調子を考えるともう動けそうにない。
が、文吉は僅かずつであるが動き出している。
うつ伏せに倒れたまま手を前に、身体を前にと少しづつ距離を縮めてきている。

ま・・・まだ来るか丹波ぁ〜〜ッッ!!

前田光世の投げにより鎖骨と肋骨の2、3本が折れた感じの文吉。

けど勝ちてえ
前田さん・・・アンタ本当すげえからな。勝ちてえって心底思ってる・・・

目の前まで張って進み、そして身を起こす文吉。
相手は動けない。だからゆっくりと近づき、マウントの体勢に持ち込むことができる。
いや、またぐだけの力がなのか、相手の足の間に身体を押し込むような形で近づいている。
いわゆるガードポジションの形でありますな。

一撃でいい。一撃入れば・・・沈む
・・・もっとも俺も一撃分の力しか残っちゃいねぇ・・・

残る力を拳に込めて振り下ろす文吉。
その文吉に前田光世は心の中で礼を述べる。ありがとうと。

しかし、そのように述べながら文吉の腕を固める前田光世。
執念が身体を動かしたということだろうか。しかしこの形は一体何の形であるか。
三角締めなら足をもっと上にしないととも思うが、いやこれでもいけるのか?

思わぬ戦いの長引き方をしているが、さすがにこれは決まったのではないかと思われる。
しかしこの戦いが終わったあとは2人とも動けなくなってしまいそうですなぁ。
特に文吉は人に見つかるとマズイ身でありましょうに、倒れたままとなって大丈夫なのだろうか?
まあ、コッソリ戦いを見ているものが戦闘後に回収してくれるんじゃないかと思ってますけどね。
実は前回出てきた嘉納治五郎は前田光世の想像ではなく実際に声をかけていたとかそういう話で。



第十八話/親心  (2013年 29号)


決着をつけると振り下ろされる拳。
その腕を取って三角締めに固める前田光世。

文吉「テメェ。離せ前田ぁ――
前田「死んでも離さんッ

余裕のある時は前田さんと呼んだりするが、さすがにこの状況ではさん付けもできませんわな。

どうにか前田光世の折れた左腕と脇腹を攻めて脱出しようと考える文吉。
しかし左腕は前田光世の太い足が行く手を阻み、届かない。
さらに負傷した脇腹は折れた左腕でしっかりガードしている。
そして文吉の右手はガッチリとひしゃぎ潰されるが如くの勢いで掴まれておりピクリとも動かない。
これはそのうちに首を絞める太い足によって意識も途切れることとなりましょう。まさに万事休すの状況だ!!

薄れてゆく意識の中、唐突にフラッシュバックしたのは、父、久右衛門との稽古。

文吉は久右衛門に三角締めを仕掛けている。
久右衛門は顔を真っ赤にして苦しみながら、息子に対しこれで極まったと思うか?と告げる。ゼエ。ゼー。

ガッチリ入っているので誰も逃げることはできないと述べる文吉少年。
果たしてそうかなと手を伸ばす久右衛門。
その空いた左手が伸びる先は文吉の右目・・・
もちろん息子の目をえぐるようなことはせず、端を押さえるぐらいに留める。
が、ビックリして脚を強く締めてしまう文吉。ち、父上ッ!!父上ーッ!!
まあ、無事に蘇生したみたいでよかったよかった。

気を取り戻した久右衛門は文吉に語る。

喉はこう、顎を轢けば守ることが出来る。
口内であれば、口を閉じれば守れる。
じゃが、目は必死につむっても脆いものじゃ。
いよいよの時には、全ての生物の弱点であり、また鍛えられぬ箇所である目をえぐるのじゃ

まさに空手の強さとも言えるのがこの目つきでありますな。
柔術ではあるが、実践に根差した丹水流としては避けては通れぬ教えでありましょう。

こ・・・これが・・・た・・・丹水流の教えなのじゃ。
だ・・・だからワシャイヤだったんじゃ。こんな殺伐としたものをお前が学ばなければならんのが・・・ヒーン。

泣き出す久右衛門。なんなんですかねぇこの人は。何でこうイチイチ可愛いのか。
これこそお前が選んだ"武"の本質じゃと泣きはらした赤い鼻で言われましてもなぁ。
まあ、ともかく。

・・・まさか、コイツを――使用う日が来るとはな

胆を括った文吉。勝利のためには相手の目をえぐることも厭わぬ狂気もまた必要である。
が、そもそも顔まで手は届くのであろうか?
体格差が大きい久右衛門と文吉だから届いたのであって、身長差はそれほどない前田光世相手に届くものなのか・・・?
まあ、そもそも未来の前田光世は片目じゃないし、えぐるのは失敗するのではないかと。
いや別にえぐる必要はないのか。指を当てるだけでもえぐられると思って解放される可能性はある。
しかしそれで逃れた場合、勝負はどのようなものとなるのだろうか?
双方動けなくなって引き分けか?そういう決着でもいいのではないかと思えなくもないですな。



第十九話/目突き  (2013年 30号)


前田光世の右目に襲い掛かる太い指。
その目突きの恐怖に、思わず技を解いてしまう前田光世。
いや、これは回想での話であり、文吉との死闘で解いたわけじゃありませんがね。

"鬼"横山伝再び。
今度はちゃんと道場の中で稽古をしている2人。
「転び締めが極った」と思ったところ、目を突かれそうになって驚く前田光世の図。ぐああああ。
道場稽古で目突きとは・・・相変わらず"黒い"ですね横山さん

何をゆーとるんじゃ!こーゆー"黒い"技が大事なんじゃぞ!!
稽古や試合にゃ使えんが、命のやりとりの時には効果テキメンじゃ。

実際にそういう命のやりとりという修羅場を潜ってそうな男のいうことは違いますな。
しかしそんな横山作次郎に対し、相手が横山さんだから手ゴコロを加えたんですよと言ってのける前田光世も凄い。

ともかく、既に目突きの危険性というのを熟知している様子の前田光世。
そうとは知らずに目突きを敢行しようとする文吉であるが、はたして。

躊躇せずエグらねば、命を奪られるのはお前じゃぞ。これこそが武の世界

親父の言葉を思い出しながら、足に力を込め、腰を上げて圧し掛かるような体勢へと移行する。
前田光世の身体は丸くなり、顔までの距離は短くなった。これで指も届くようになるというわけだ。
いよいよ目突きを行わんと指を構える文吉。それを見て気付く前田光世。

・・・コイツは知っている。この局面から脱出する唯一の方法を――
・・・俺は光を奪い去られるのか・・・
いっそ全て外して逃れるか・・・?
いや。俺の目がエグられる前に・・・貴様を失神してみせる!!

歯を噛みしめ、覚悟を決める前田光世。
その時、前田の目に映ったのは・・・ああ、月だ。

・・・丹波の言った通り。キレイだ。
これを俺の見る最後の景色には・・・出来んよ・・・
悪いが丹波。エグられる前に貴様を失神すぞ――!!

技を外すのかと思いきや、結局覚悟を新たにしただけだったという。何という思わせぶりな。
しかし文吉も何とかもっと素早く目突きに行くことは出来なかったのだろうか。
これだけゆっくり指を伸ばしていては覚悟を決められるのも仕方がない。
不意をついてさくっとやれば、エグらなくても驚かせることで技を解かせれたかもしれませんのに・・・
まあ、自身が久右衛門とやったときのように、驚かせたことで強く絞められて失神させられるかもしれませんがね!!



第二十話/文吉よ  (2013年 32号)


失神る前に、この技を外させる
エグられるより先にきさまを失神す――!!

目突きと絞めの攻防。
文吉はようやく前田光世の目に指が届きそうなところ。
だったのに、強く絞められて思わず右腕を押さえてしまう文吉。
首が締まるだけでなく、腕も極められているので反射的に動いちゃったのかね。

全身ボロボロで、脇腹の骨がとび出し、腕をへし折られてるのに。
親父・・・嘉納治五郎の弟子ってのは、なんてスゲ―――んだ・・・

前田光世自身だけでなく、嘉納治五郎の弟子がスゴイと認めてしまう文吉。それはいいのか?
過去の確執がどんなものか分からないので、認めてしまうのがいいのかどうか判断がつきかねますな。

再び目までの距離が開いてしまった。
なので前田光世の右わき腹に拳を連続で叩き付ける文吉。
伸ばした前田光世の身体が崩れれば、また覆いかぶさる体勢で目突きが狙えるってわけだ。

のう・・・文吉よ。これが武の世界なのじゃよ文吉よ。
のう・・・文吉よ。やらなければこちらが命を落とす世界なのじゃ。
そんな世界で強き男であるために。やれ!やるのじゃ文吉――

心の中に響く父の声に従い、前田光世の右目に指を突き入れようとする文吉。ズブッ

鈍い音がした。覚悟を決めた様子の前田光世。
しかし、恐る恐る目を開いてみると、まだ見える。目はエグられていない。
そしてその目に映った文吉の表情は、どこか遠くを見た笑顔。

でもなァ。文吉・・・本当に・・・それでいいのか!?

やれと言ったり、本当にそれでいいのか?と言ったり。
文吉の中の久右衛門も意見がまとまっていない様子でありますなぁ。

へへへ。勝手言ってらあ

そりゃ文吉もそう呟くしかない。
そしてついに、前田光世の締めの前に崩れ落ちる文吉でありました。
ついに決着か・・・!!

エグろうとしたが防がれて果たせなかったのではなく、その行為自体ができなかったという文吉。
この時代の武の世界に生きる者としては確かに甘いのかもしれない。
しかしその甘さは嫌いではない。
遺恨となるような取り返しのつかない傷を負わせるよりはこういう決着もいいのではないだろうか。
しかしあのズブッという音は何の音だったんだろう。別のところに刺したのか!?

今後の展開はどうなるのか。
嘉納治五郎との確執について明かされる流れをそろそろ期待したいところですな。



第二十一話/決着  (2013年 33号)


―――決着!
文吉は地に倒れ伏し、前田光世は立っている。まさに決着と言っていい状態である。
しかし勝者となった前田光世はそれを誇るよりも先に疑問を感じる。

・・・なあ、丹波。お前は何故あの時、目をえぐるのを止めた・・・

確かに武の世界に身をおくのであるならば勝利のために目をえぐるのも躊躇うべきではない。
文吉もその教えに従い、非情になろうとした。
が、いざえぐろうとしたところで浮かんできたのは父、久右衛門の顔。
なんというまろやかな尊顔か・・・仏かと見まがうばかりである。
というか、傷だらけの文吉が広大な自然の中で父と座り語る姿はまるであの世の光景である。

前田君は強いか?と呑気に尋ねる久右衛門。
見て分かる通りボロボロの状態。強くないはずがないですわな。鬼だよ。

・・・正直、敵わないよ。あの人には

完全に認めてしまっている文吉。
秘奥義が決まったからこそ互角の状態でいられるが、それを最初から知られていたらどうなったか・・・

この先もう勝つことができないと思わせられる相手。
その相手から勝利をもぎ取りたい。
だが、その目を潰すのは違うと感じている。
口では、あの人はたとえ両目をくり抜かれても技を解くような人じゃないものと言っている。
しかしその本心はさらに別のところにある様子。

文吉は、またいつか前田君と闘いたいのじゃな

なるほどね。その意識か。
またいつか闘いたい。完全な状態の前田光世と闘いたい。
その可能性を潰すようなことはしたくない。そういった思いが目突きの動きを鈍らせていたわけだ。
遺恨が残るような決着にしたくはないという想いもあったのかもしれない。

文吉のその想いを感じ、ならいい。うん、よかったと嬉しそうな表情の久右衛門。
なんだかんだでこの親父殿は息子が修羅の道へと進むのは快く思っていなかったわけですからねぇ。
息子がそういう判断をしてくれたのを嬉しく思っても仕方がありますまい。
まあ、潰せと言ったあとでいいとか言われても勝手な発言になってしまうわけではありますが。まさに勝手言ってらあってことだ。

文吉が何故目突きを止めたのか。
直接理由を聞いたわけではない。が、感じるところのあった前田光世は述べる。

・・・耳には届かんとは思うが。
俺も、お前と同じ気持ちだ

長くはありましたがよい勝負でした。
死闘の果てにお互いがまた闘いたいと思える関係。なかなかあることじゃありませんよね。良い話だ。

次号はお休み。
その次の号ではセンターカラーで新章開始とのこと。
講道館との、嘉納治五郎との遺恨が明らかにされるのでしょうか?楽しみであります。



第二十二話/武人  (2013年 34号)


新章突入、センターカラー!!
といってもとりあえず時間は前田光世との決着直後からとなっている。
勝利はしたものの全身傷だらけのボロボロ状態の前田光世。
足を引きずり帰る所にやってきたのは横山さんをはじめとした講道館の高弟たち。

三船!獏山先生じゃ。たたっ起こして道場に来てもらえ!!

横山さんの声で駆け出す三船久三。
残った横山さんと富田常次郎は前田光世の介抱を行う。
前田光世は丹波文吉と闘ったことを述べ、締め落としましたと告げる。
落とした。つまりは殺してはいないということ。

おう富田!!丹波の息の根止めてこいッ!講道館を狙った奴の末路を教えちゃれ!!

さすが鬼の横山。躊躇いのない発言である。
しかし駆け出そうとした富田を制止する前田光世。止めて、ください。

・・・あいつは、今宵の月のように。
清々しいくらい、実に正々堂々とした武人でした

前田光世と同じように空を見上げる横山、富田の両人。どちらの顔にも笑みが浮かんでいる。
今宵の月の美しさは見ればよく分かる。それに比するというのだからどれだけ清々しいかは想像もできてしまう。
この前田光世がそこまで言うのだから間違いはありますまい。
両者とも闘いの経験は豊富だし、そういう相手と死闘を演じた経験があったりするんでしょうなぁ。

あいつも既にあの場にはいないでしょうという言葉を受け、ならしゃーないかのうと諦める横山さん。
しかしこれだけは聞いておく。勝ったんじゃな。丹波に、と。

・・・いえ。まだ勝負の途中です。
なので、また丹波と闘うまで、俺は誰にも負けません
ただの一敗だってしません。でないとあいつに。二度と会えない気がして。

ほほう。なんとも清々しいことを言う人である。
こうして二千試合無敗のコンデ・コマが誕生することとなるわけなんですな。全ては文吉との再戦のために・・・!!

というわけで、文吉のことは前田光世預かりとなった。
他の講道館の人間に狙われる心配はなくなった様子である。
しかし気になるのはやはり何故文吉が講道館を狙ったのかである。

・・・詳しくは分かりませんが奴の父・・・丹波久右衛門とウチの嘉納治五郎先生との間で何かがあったみたいで・・・

一体何があったのだろうか。
嘉納治五郎は厳しい表情をしている。陰の具合のせいもあり凄く悪そうに見えるが・・・はてさて。

時を遡ること二年。福島県にわき市のとある山中。
文吉は久右衛門に師事することになってから毎日のように体を鍛えている。
がんばれがんばれと逐一声をかけてくれる久右衛門は相変わらず一生懸命なお人である。

我が最愛の息子も今年で齢十五を迎えた。
九歳で始めた丹水流の武であるが、毎日の厳しい稽古を欠かさずこなしている。
六年経った今でも変わらず、水を得た魚のごとく・・・
我が息子ながらほとほと感心するばかりじゃ。

そんな修行の日々を続けたある日。
朝早くから道場の清掃を行い、墓参りに出かける丹波親子。何やら危うげな雰囲気ですな。

文吉・・・武の稽古を始めて六年。お前ももう十五じゃ。そろそろ出稽古でもしてみるか?
・・・むしろ六年修行を積んだ者は出稽古に赴かねばならぬという丹水の掟がある。
「出稽古」とは名ばかりで、その実は「道場破り」じゃ

道場破りと来ましたか。
盛り上がってきたぜとハシャぐ文吉だが、父の久右衛門の沈痛な面持ちを見て声を失う。

・・・またこの地に戻ってこれるとよい・・・のぉ

道場破りとなれば敗れた時どのような目にあうか分かったものではない。
下手をすれば命を取られることだってありましょう。
それこそ目をえぐりとられ、耳をちぎられ道場の強さの喧伝のために生きて恥を晒されることも有り得る。
そんな武の世界に息子をやらねばならぬ父の苦悩。そりゃあ久右衛門も泣きそうになりますわいな。

嘉納治五郎との因縁が生まれるのはこの道場破りの最中であろうか?
どこかの道場破りとの闘いで敗れ、久右衛門が害される形となったのか?うーむ、気になる。
ともかく新章に入ったことでしばらくは丹波親子の活躍が見れそうですな。
文吉が成長し、可愛い感じが減ったのは残念だが、久右衛門の頑張りが多く見られるようになるのは喜ばしい。
丹波親子の頑張りに期待しましょう!!悲劇が確実に起きそうなのがアレですが。



第二十三話/ボッコレ親父  (2013年 35号)


道場破りの旅に出るために地元を後にした丹波親子。
常陸国にて名物のあんこう鍋に舌鼓を打つ。うわうわうわうっめー!!

"霜月あんこう 絵にかいても舐めろ"と言われているだけあり、味も絶品のようですな。むう、美味そうだ!!

既にいくつもの道場を回ってきた2人。
文吉としてみれば思ったよりもあっさりと勝ててしまっており拍子抜けの様子。
久右衛門に言わせれば息子がここまで強いとはさすがに思わなかったといった感じでしょうがね。

道場破りということで、道場の代表と立ち合う文吉。
柔術の看板を出しているだけあり、相手は組み付いてくる。
それを時には投げ、時には締め、時には極めて仕留める文吉。見事。

文吉「けど北内道場ん時はスゴかったよー!!親父の役者ぶりーッッ!!」
久右衛門「・・・いや、こっちは必至じゃったわ・・・」

息子も褒める父親の役者っぷり。
それはある道場で代表を破ったときのこと。
かまわぬから全員で囲み、五体満足では帰すなと言い出すヒゲの道場主。うーむこれは汚い。さすが北内道場。汚い。
まあ、面子にかけて帰せないってのは予想された出来事でありますけどね。

なので久右衛門。落ち着いた態度で懐から卵を取り出す
その先を吸う久右衛門。チュウチュウ。
注目が集まったところで優しげな笑みを浮かべて一言。

あ・・・みなさんも卵でも飲んで落ちつきませんか・・・・・・

うむ、この久右衛門スマイルであれば殺気だった門下生たちも落ち着く。はずがない。
愚弄するかー!!とますます激昂しだしました。
が、本来の狙いはこれ。卵を握り潰し、中に入っていた粉を投げつけて散布する。
その粉末で目にしみ、息ができなくなる門下生たち。
そのスキに手拭いで口元を覆い、走り去る丹波親子。うーむ、見事な逃走劇でありますな。
しかしどうでもいいが、手拭いをしているときの久右衛門、目を見開きすぎでしょう。危ないぞ!!

蕃椒と馬銭じゃよ。調合法や使い方まで丹水流の秘伝書に記してあった

蕃椒とはトウガラシの異称。馬銭はマチン化の薬用植物とのこと。
なるほど、そんなもの散布されてはたまったものではありませんな。

何としても生き延びるのが丹水じゃ。
・・・名門の道場と相対しても余裕をもって勝つことができる。
我が流派の強さを改めて知った思いじゃ。
ま、ワシの様なぼっこれダメ武人には継承できなんじゃがな。

そのように述べる久右衛門。しかし息子の意見はまた違う。
毎日のように稽古を付けてくれている親父。その親父の方がここ何日か俺が対戦した相手より強いかもよと告げる。

それをこれから証明するよと告げて外に出る文吉。
どうやら道場破りの復讐につけ狙ってきた奴らがいたらしい。
5人はいたのだが、既にそのうち4人は文吉によって倒されている。うーむ、強い。
そして残る1人については――師匠、お願いしますと久右衛門に丸投げする。

文吉「大丈夫。俺を信じて」
久右衛門「無理じゃ無理じゃ無理じゃ無理じゃ無理じゃ無理じゃ無理じゃ無理じゃー」

と言ってても始まらない。相手は問答無用に襲い掛かってくる。
貴様を殺して我らの名誉をー!!と殺す気満点。
掴みかかってくる相手に対し腰の引けた様子の久右衛門。
しかし組んだ形はこれまでに覚えがあるものである。
その術理に従い、投げを放てば相手は倒れ、そのまま腕を極める形となる。よおーし!!

ひい・・・文吉ー!!ぶっ、文吉ー!!文吉ー!!ひいいいー!文吉ー。ぶ・・・文吉ー!!

相手の腕を極めながら生きた心地がせずに叫びまくる久右衛門。可愛らしいおっちゃんだ。

・・・親父はぼっこれなんかじゃないさ・・・

嬉しそうな様子の文吉でありました。
いやあ、やっぱりいいなぁこの親子は!!
互いを思い合っているのがよく分かる。微笑ましい。

まあ、文吉を6年もの間鍛え続けてきたわけですからねぇ。久右衛門もそれなりに武が身に付いていて然るべきである。
元々知識は凄かったわけなんですから、後は体がついていきさえすればよい。
息子との稽古で体が馴染むことで、華開いた感じでありますな。いやあ、良い話だ!!

さてはて、この楽しい親子道中はこの先どのような展開を迎えるのか。
嘉納治五郎に出会うまで楽しく過ごせそうでありますが・・・その先が怖いなぁ。



第二十四話/蟷螂  (2013年 36+37号)


丹波親子の道場破り巡りは順調に続く。
さすがに最強を名乗る丹水の武でありますな。それを身につけた文吉の強さは計り知れない。
指導した久右衛門の術理の解明の凄さによるところも大きいでしょうな。

列車にて眠る息子とそれを温かく見守る親父殿
うーむ、本当この親子の姿は心温まるものがありますなぁ。

さて、丹波親子が訪れたのは丹水の分家である甥の剣三郎の道場。
にわき藩から紀州まではるばる道場破りをしながらやって来たわけですね。
途中列車でショートカットせずに行ってたとしたら途中の道場が全て狩られそうで怖い。

大喜びで出迎える剣三郎。本家の復活であるしそりゃあ嬉しいでしょうな。
しかしどうでもいいがこの時の文吉の顔は・・・しおらしくしているということなのか、誰だお前は!!

途中丹波親子が立ち寄った道場の数は実に15。
それだけ回ったというのに五体満足。勝利するだけではなく囲まれたり追われてフクロにされることもなかったというわけだ。
これは大したものと言われて当然でありますな。

さらにこの道場から二里ほど向こうの三善館という道場にも立ち寄り鹿山角之進という師範を下している。
この三善館と剣三郎の道場は犬猿の仲。この地では人気、実力ともに二分している間柄という。

中でも三善の鹿山は相当の実力者。その鹿山を打ち破るとは文吉の腕の程が分かると言うものじゃ。
文吉。来て早々で悪いが、お前の腕前を見せてはくれまいか。

剣三郎の意向により道場生と立ち合う文吉。
もちろんその腕前は素晴らしく、次々と道場生たちを投げ伏せていく。
この才にはさすがに剣三郎も驚きが強くなっているようですな。
自分のところの弟子がやられるのは複雑だが本家に武の才の持ち主が現れたことについての想いも確かにありそうである。

大男が多い道場生。しかしその中に1人、見るからに小さい男がいる。
文吉も細身ではあるがこの男はそれよりも小さく見える。しかしその眼光は鋭く、鼻の上を横に走る傷も迫力がある。
しかしこの小男、他の道場生からイジメられたりしている様子。
柔よく剛を制すなどという言葉はあるが、やはり戦いは体格のある方が有利でありますからなぁ。
まあ、体格で負けてても制している文吉のような例があるわけですが。

小男――京太郎は押さえつけられて蟷螂を無理やり食べさせられそうになっている。
上手いかどうかは知らないが蟷螂は寄生虫がいたりするから怖いですな。

その現場に通りがかる文吉。1日で強さを知らしめた文吉の登場で逃げ去るイジメっ子たち。うわーッ。
京太郎に向けられていた蟷螂は両手の鎌を取られてしまっている。おやおやこれは酷い。
いや、もっと酷いことに、その蟷螂を掴んだ京太郎が頭を食いちぎったりしてしまっている。結局喰うのか!?

鎌を持たぬカマキリほど弱いものはない。だが――鎌さえ持てば・・・

そう言いながら足元の小枝を拾い、電光石火の連続突きで文吉の皮膚を浅く裂く。

丹水の名を賭けて。勝負しろ丹波文吉

廃刀令の時代に剣技を操るものがいるというのか!?
戦場で活躍する丹水の武であれば剣技についても学ぶところがあるのだろう。
その武を持って本家に挑戦しようというのだろうか?

これまでは拍子抜けするほどにトントン拍子で勝ち進んだ文吉だが、今度の相手は同じ丹水である。
しかも武器を扱いそうな相手であるが、果たしてどのように制するのか。うむ、楽しみな流れですな!!



第二十五話/剣士  (2013年 38号)


闇夜の河原で対峙する二人の若者。
丹水の名をかけての闘いが始まろうとしている・・・?

・・・丹波。俺を卑怯者と揶揄するか?
だが俺・・・黒岡京太郎は剣士だ

前回の様子からして剣を扱うのは予想していたが、まさかいきなり真剣とは。
文吉にも好きな武器・防具を使えと言ってはいるが、なんとも危ない奴である。

たとえ銃を使っても俺は一向に構わん。剣で闘えればそれでいい

それは文吉と闘いたいというよりも思いっきり剣を振るいたいと言っているかのように聞こえますな。やはり危ない奴だ。
そんな危ない京太郎に対し、俺は闘うつもりはねーよと述べる文吉。
わざわざ呼び出しに応じたのは自分と闘いたがる理由を知りたかったからである。

京太郎「男が強さを競い合うのに理由が必要か」
文吉「必要だろーよ。俺ら丹水流の同門だぜ?」

なかなか常識的な反応をしますな文吉。
幼少の頃、塾で暴れてた時は文吉も危ない感じのキャラだったのになぁ。成長したということか。
まあそれにいきなり真剣持ち出してくる相手とまともに闘いたくはないですわな。この廃刀令が発せられているご時世に・・・

それだよ。まったく、この国はどーなっちまったんだッ。
我が黒岡家は代々剣士として生きた一族・・・
遙か昔より一族皆一様に体が小さく、どんなに血を掛け合わせても生まれ育つのは小さき体躯の人間ばかり。
・・・ある先祖が丹水流に入門。戦国の世、様々な兵法が混在していたが、やはり丹水も主流は剣術。
・・・ご先祖は丹水から長剣を学んだ。
長剣を手にした黒岡は他の武術と違い、体躯の差など微塵も感じなくなった。
それ故、我が一族は代々皆一心不乱に剣の道に邁進してきた
そしてその時代時代で突出した剣士を輩出してきたのが我が黒岡家だ。

そんな剣のみに生きて来た黒岡家にも廃刀令のお達しがくる。
ふむ。それで剣を振るう場が見当たらなくて困っているという話でありますか?

刀ッ!刀ぁーッ!刀ぁーッ!!
我らは刀が全てなんだよー。分かるか丹波ーッ!!

そう言われましてもな。まあ、気持ちは多少はわからないでもないが・・・

そんな京太郎のもとにやってくるのは馬に乗った憲兵。
夜更けに子供が何をしているのかと誰何してくる。そして京太郎の持つ刀に着目する。
まあ当然帯刀について詰問されますわな。こりゃピンチだ。しっかり抜き身ですしね。

なっ?今じゃこんなボンクラどもだけが刀を持てる時代になっちまった。

挑発を行う京太郎。その挑発にあっさり載せられる憲兵。
馬上にて刀を抜き放ち振るうがあっさりと京太郎に弾かれてしまう。
その弾かれた刀が馬の尻に刺さり馬大暴れ。しかしその馬を一刀で切り倒す京太郎。うーむ、どこまでも危ない奴だ。

挑発されたからといって殺しにかかる憲兵も問題だが、さすがに京太郎のこの行動は危険だ。
普通に捕まることになりはしないかと思うのだが・・・文吉と闘っている場合なのかね?

というところでしばらく休載となる真・餓狼伝。
43号まで休みとなり、再開は44号からとのこと
さてさてどのような展開が繰り広げられますやら・・・期待して待つとしましょう。



第二十六話/武士  (2013年 44号)


連載再開!!武VS剣!!丹波文吉究極のステージへ――!!

てな風なアオリが入り、センターカラーでは組み合う文吉と京太郎の絵が描かれている。
にも関わらず今回の文吉の出番はこれだけだったりするという。えー。
まあ、扉絵だけ登場というのは実に丹波らしいというか何というか。

警察の馬を切り殺した京太郎。どうなるのかと思ったらしっかり捕まっていた。そりゃそうよ。
ひょっとすると冒頭のカラーは文吉が京太郎を押さえた場面なのかもしれない。

ともかく和歌山東警察にて拘束されている京太郎。
目の前にいるのはこの警察署の署長。オノレの命はワシが握っておると恫喝してきている。
しかし京太郎としてはそんな脅し文句とかそんなのはどーだっていい。

侍が存在しねぇ世の中なんて、もううんざりなんだよ。
テメーらは一体何なんだ。どいつもこいつも。判を押したよーにおんなじいーな西洋かぶれ!
何が富国強兵だ。何が殖産興業だ。一体侍魂はどーしちまったんだ。どこ行っちまったんだ!ええーッ!?
もーどーでもいー。斬りたきゃ斬れ。
だが剣の握り方も満足に知らねーヘボ警官に、果たして俺を斬れるかどーか、甚だ疑問だがな。

挑発を行う京太郎。
それに容易く乗る署長。食べていた弁当の箸を投げつけ、さらには自らの手で斬り捨てようとする。
しかしその斬撃を前転で回避する京太郎。
しかも縄だけ斬らせて拘束を解かせるという見事な見切り。そして武器として投げつけられた箸を手にする。

どーせ滅びゆく身。ひと暴れしてやるぜ。

箸1本で襲い掛かってくる警官2人を倒してしまう京太郎。うーむ、本当に武器を持つと強いなぁ。
これは相当な大暴れが出来そうだ。と思いきや、このタイミングで新たな大物が登場する。
まさか警視総監がこのような田舎の警察に・・・!?
公務ではなく私用で現れたという警視総監。もしや京太郎の話を聞きつけてやってきたのであろうか。
その見事な腕前を褒め上げる。

秀れたる剣士ばゆー者は、小枝一本、箸一本持てば、刀にも金棒にも変えよる

自らも箸を拾い、署長たちのヒゲや眼鏡を斬ってみせる警視総監。京太郎も驚くほどの腕前。まさに秀でた剣士だ!!
そんな警視総監が京太郎と刃を交わそうとしている。
どうやら手合せをしてみたくなったようですな。これは京太郎としても望むところでございましょう。
狭い室内なのがアレではあるが、激しく切り結ぶ両者。ちぇーすッ!

さすが丹水の中でも決河の勢いがあった黒岡家じゃのぉ――

京太郎を押すほどの強さを見せる警視総監。しかも黒岡家のことを詳しく知っている様子。
その前身は戊辰戦争で幕府軍と戦い、西南の役では抜刀隊を率い薩摩軍と戦った新政府軍の将であったとのこと。

あん戦には薩摩側に黒岡の・・・黒岡喜八がおったんじゃ。

黒岡喜八。京太郎の父親の名前である。
切り結びの結果は両者当たる手前で寸止めしての引き分けといった感じとなる。やはり強いなぁ京太郎。

さて、剣を置き、落ちついて話の続きを行う警視総監。
西南の戦は激戦だった。ほんなこつ強か男たちが熱か命の火花ば散らしておりもしたとのこと。
その中でも小兵でありながら長い剣を自在に操り武士の誉れを見せつけたのが丹水流の黒岡喜八。
負け戦の中、凄絶に斬り続けるその姿を"武士の鑑"と讃え、敬意を表していたという。

・・・この傷は、おはんの父上に付けられたもんじゃ。強か男じゃった〜〜

警視総監の右肩から左の腹にかけての切り傷。なかなかに盛大な傷でございますね。
この傷を付けた男のことを恨むでもなく、むしろ誉れとまで持ち上げる警視総監。
その息子に会えたことが嬉しい様子でありますな。
しかしその当人である黒岡喜八はもうこの世にはいない。三年前に自ら命を絶ったという

・・・時代が明治へと変わり、侍制が廃止・・・西南の役で敗れ、廃刀令で刀を取られ・・・
父は生きる指針を失い、それで・・・

寂しい話である。歴史の流れ、時代に取り残されず生き残るには仕方がない西洋化であったが、それで死す者もいたということか。
現在警察の長である警視総監は語る。

おいは、今でも一介の侍でいたいと思っておりもんす。
結果的においは多くの仲間の命を犠牲にして侍制度を無くす側に加担してしまいもした。
・・・侍は、生きにくい時代になってしもうた。
・・・じゃっどん。どうか堪えてくいやんせ。
・・・いつか、いつか・・・おはんらの出番、おいが作りもす。必ず作る!!
日本にはッ!侍が必要なんじゃ!!・・・どうか、それまで・・・それまで。堪えて、くいやんせ・・・

涙を流しながら語り、聞く方もまた涙する。
熱き男の言葉に道を外しかけていた少年も真の侍への道を歩めそうな雰囲気。よかったよかった。

文吉との戦いは結局どうなったのかとか色々と気にはなりますが、いいエピソードでありました。
ここから京太郎はどのように変わっていくのか。文吉とはどのように接するのか。
まさか以後はほぼ出番なしなんて流れになったりは・・・可能性もなくはないか。



  真・餓狼伝感想目次に戻る

  真・餓狼伝連載中分に移動

  作品別INDEXに戻る

  週刊少年チャンピオン感想TOPに戻る



HPのTOPに戻る