蒼天紳士チャンピオン作品別感想

鮫島、最後の十五日
第44話 〜 最新話


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 各巻感想

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第44話:五日目「鮫島-岩の藤」  (2015年 46号)


九月場所五日目。相手は東前頭七枚目、岩の藤!!!
なんとBURST終盤で鯉太郎と幕下優勝を争った岩の藤がここで登場とは。
特徴である額のコブに十字の傷もついて貫禄が・・・シイタケみたいになってるぞオイ。

ともあれ鯉太郎以上にブチカマシを得意としている岩の藤。
体格で恵まれているわけでもないのに捻りを加えたりと工夫の仕方が凄い。
それでずっとやってきているのだから、鯉太郎も見習う部分があるのではないでしょうか。
いや、よく見ると岩の藤も随分体格が良くなってるな。

この両者の対決。となれば当然の如くの真っ向勝負。頭からの激しいぶつかり合い!!
今までなら普段通りの鯉太郎と思う所ですが、頭へのダメージは・・・怖い。

鯉太郎もその辺りが分かっているのかどうなのか。
真っ向勝負で頭をぶつけながら、狙うのは岩の藤のマワシ。
左手で掴めばそこから一気に得意の下手投げで決めてしまう。おぉ・・・五日目はスピード決着でありますな。
勿体なくもあるが無事終わってくれたという喜びもなくはない。
これで無傷の5連勝・・・いや、無傷と言っていいのかこの状態・・・

鯉太郎は8日目以降は休場することが多い
この取り方では毎回のようにボロボロになるし、無理もないか。
しかしそれでも幕内に留まっているということは休場による不戦敗で星を落としても取組で白星を上げていることになるわけだ。

番付だけで計れる男じゃないよ・・・鮫島は・・・

そう語るのは若竹部屋東関脇、天雷凛太郎!!
岩の藤に続いて現れたのはこの男か天雷!!しかも関脇!!うーむ。さすがでありますなぁ。

鯉太郎と取ったことがあればその熱は嫌でも伝わってくる。
その影響で受けた1人が元大関の明王山。大関落ちした後も元気で続けているようで何よりですな。

鯉太郎の世代は黄金世代と呼ばれている。
天雷に王虎。引退した飛天翔こと石川(やまもと)とクセの強い力士が揃っている。
って未だに石川は山本なのか。その辺りの関係はずっと変わらないみたいで何だか嬉しい。ハッハッハ。
しかしまあ年月が経てば色々と変わっていく者もいる。
黄金世代の一人で鯉太郎並のトンパチ。同期の中で一番出世が早く、一番ギラギラしていた男・・・蒼希狼!!

BURSTでは全く出番のなかった蒼希狼がついに再登場!!
やはり出世が早くてBURST時には既に幕内に上がっていたんですな。
だがそんな蒼希狼の様子がおかしい。ギラギラがナリを潜めている・・・?
廊下ですれ違う鯉太郎にも静かにこのようなことを述べだす。

・・・なぜ・・・しがみ付く・・・そんなになってまで・・・みっともねぇ・・・
まぁ・・・俺も一緒か・・・

覇気を失っている様子の蒼希狼。これは確実に何かありましたな。一体何があったというのか・・・
蒼希狼が相撲を取っている理由が理由なだけに何だか嫌な予感がしてならない。
久しぶりの出番を喜ぶ前に不安が先に来てしまうとは・・・ううむ!!



第45話:六日目「鮫島-大山道@」  (2015年 47号)


マンホールチルドレンだった蒼希狼。
それが今では関取になり、立派にやっている。
と思いきや、その証であるマゲに包丁を当てて苦悩しているという・・・
壁には拳を叩きつけた跡が生々しく残り、蒼希狼が深い闇の中にいることを感じさせる。ううむ・・・

その蒼希狼の兄弟子である大山道豊さん。
バチバチの時にもちらりと出ておられましたな。ここでの再登場か。
いやそれどころか鯉太郎の六日目の相手がこの大山道さんでありますか。

大山道さんは蒼希狼に語る。生まれた国は違うのにお前ら2人はよく似てると。

無鉄砲でギラギラしてて・・・誰が相手でも全身全霊で相撲を取って・・・
お前言ってたもんな・・・序二段の頃の鮫島の取組・・・
俺はあそこから始まったって・・・アイツは特別なんだってよ

あの敗戦は色々と蒼希狼にしても己を見つめ直す機会になったようですね。
そこから奮起し、関取にまでなったものの・・・それも既に昔の話である様子。
しかしそれでも。それでもやはり鯉太郎は特別な存在なのか。腐りそうになってもその名を出されると動いてしまう蒼希狼。ほほう。

奮起する。立ち上がる力がなくなってしまったわけではない。
が、その脳裏に強大な力士の影がよぎると恐怖に囚われてしまう様子。
むう、あの蒼希狼に一体何があったというのだろうか?
恐れを知らないトンパチと思われた男に恐怖を叩き込む存在。それは一体・・・

俺にはもう相撲を取る理由がないと述べる蒼希狼。これは深刻。
蒼希狼の相撲を取る理由と言えば同じ境遇にあった仲間達への仕送り。
その理由が失われたということは・・・・・・・・・いやな予感しかしない・・・

さて、空流部屋。
川さんの見事な芸術作品はさておき、明日の相手である大山道と蒼希狼について。
どうやら序二段以来鯉太郎は蒼希狼とやったことがないらしい。
それでも特別な存在である鯉太郎には何かと突っかかっていってたらしい蒼希狼。
小結に上がった時でも鮫島バカ〜〜〜は忘れない。それでこそですな。

しかしその小結も一場所で陥落し、そこからはズルズルのいいとこ無しとのこと。
ふーむ。何とも勿体ない話でありますが・・・そうなるだけの何かがあったんでしょうなぁ。

勿論蒼希狼のそんな状態に心を痛めていないはずの無い山ノ上親方。
兄弟子である大山道さんもその思いは同じである様子。
蒼希狼にとって特別である鯉太郎と自分が取り組むことでもう一度奮起させる。それが兄弟子である自分の役目と語る大山道さん。
ふうむ。直接対決ではなく間接的に影響させる流れとは・・・なかなか珍しい感じですな。
次回は蒼希狼の闇の真相が明らかになるようですが・・・怖い予感しかしないよ、本当。



第46話:六日目「鮫島-大山道A」  (2015年 48号)


ここから過去回想。まだ力士になりたて、序の口だったころの蒼希狼。
100円見つけてやったぜな感じ。そうそう、これが蒼希狼ですよ。

いつも仏頂面で誰にも心を許さないが金に異様な執着を見せる男
山ノ上の他の力士たちからはあまり評判はよくない感じでありました。まあ恥ずかしいというのはわからないでもない。
日本語も出来ないのでコミュニケーションも取りづらいし、孤立するのも仕方がないか・・・
いや、例え喋れたとしても蒼希狼の態度は変わらないかもしれませんがね。

ムカつくんだよテメーらは・・・どいつもこいつもぬるいツラしてヘラヘラしやがって・・・
そのくせ人のことは蔑んだ目で見やがる・・・何の苦労も知らねえ甘ちゃんどもがよ・・・
俺はテメーらとは違うんだ・・・仲間のタメに早くこの世界で成功しないといけねーんだ・・・

願いを叶えるためにはずっとギラギラしていなければいけない。
そのハングリーさは確かに強さに繋がるとは思いますが・・・しかし身近な味方というのも必要なものですよ。

その味方になってくれそうなのが兄弟子の大山道さん。
大地狼の付け人時代にモンゴル語を覚えたこともあり、蒼希狼とも話すことが出来る。大事なことも伝えられる。

この世界は強さが絶対の世界だ。強くなればお前が見たこともない大金だって手に入る・・・
ただ・・・1人じゃ強くはなれねーぞ・・・
もっと部屋の仲間を信じろ・・・兄弟・・・わかるか?少なくとも俺はお前を大事な弟だと思ってるんだぞ。

部屋の家族たちと切磋琢磨することで強くなれる。
非常に大事なことであるのだが、俺の仲間は国で苦しんでるあいつらだけだと述べる蒼希狼。実に頑な。
しかしだからこそか、仲間にお金を送ることが出来た時の蒼希狼の笑顔はとてもいい感じでありまして・・・

待ってろよ・・・こんなもんじゃねーぞ・・・もっともっと上に行ってもっともっと稼ぐからよ!!

見たこともない大金に興奮する仲間のサエハンたち。
しかしこれだけではまだ足りない。仲間達を皆この先もちゃんと腹いっぱい喰わせてやるためにも稼ぎ続けなければならない。
その為には誰にも負けず、上へ上へと行かなければいけない。わけであるが・・・

だがその蒼の前に大きな壁が立ちはだかったんだ・・・
認めたくなかったんだろう・・・いや・・・認める訳にはいかなかったんだ・・・

あの教習所での鯉太郎との戦い。蒼希狼にしてみれば本番の土俵でなくても負けるわけにはいかない想いが強かった。
帰ってからも涙している蒼希狼。この強い感情こそがギラギラの元でありますな。
自分がアイツらの支えになる。守ってやるんだ。
その思いは大きく強い。が、甘い

本当に強くなりたきゃもっと俺を信じて頼れ。もう1人で突っ張るな・・・
デケーもん背負ってんだ。寄り掛かれよ・・・もっと・・・
俺を信じるのはタダだぜ蒼・・・

不器用で純粋でよく泣く危なっかしい弟弟子を放っておけずそう述べる大山道さん。
うむ、果たしたい夢があるのなら、その為には変な意地を張らずに頼れる相手に頼ることも必要でありましょう。
その意地が強さに繋がることもあるが、それだけではどうしても頭打ちになってしまう。
時には仲間を頼る。そんな強さも必要でありましょう。
大山道さんと山ノ上親方。少なくともこの2人は信頼に足る相手でありましょうが・・・さて、蒼希狼の態度はどう変化するか。
楽しみではありますが・・・最終的に悲劇が待ってそうなのが厳しいですなぁ。



第47話:六日目「鮫島-大山道B」  (2015年 49号)


蒼希狼。モンゴルの蒼い空の希望となる狼。そうなることを期待されて親方が付けてくれた四股名。
その意味を説明する大山道さん。果たして孤高の狼の心に響くのかどうか。

部屋の中でも浮いた感じで孤立がちな蒼希狼。
しかしそんな蒼希狼の面倒を積極的に見てくれる大山道さん。
蒼希狼も胸を貸してくれる兄弟子の存在が有難そうですな。稽古中にいい笑顔を見せておりますわ。

日本で暮らしていくためには日本語の習得もしておいた方が何かと便利。
相撲を理解してもっと強くなることもできるってわけですな。
そう聞かされては蒼希狼も頑張るより他ない。勉強は苦手でしょうが、その貪欲さはさすがである。

貪欲――まさに蒼はその言葉そのものだった
小競り合いは絶えなかったものの、その純粋なまでの強さへの貪欲さはすぐに結果となって現れていった・・・

同期の出世頭と言われる蒼希狼。
鯉太郎よりも先に番付を駆け上がり、増えた報酬金はほぼ全てモンゴルの仲間達に仕送りする。
送られるたびに額が増えていくのだから仲間達も驚愕するより他ありますまいて。

貪欲に力と知識を吸収した結果、日本語も理解できるようになってきた蒼希狼。
そんな蒼希狼に教えたいのは感謝という言葉。ありがとうという気持ち。
1人で相撲を取っているのではない。周りに感謝して相撲を取らなくてはいけないという考えであります。
土俵は自分の力が全てと述べる蒼希狼。だがその力がどこから来るものであるか。それを考えれば答えは見いだせるはず。
仲間のためにというのも立派な感謝の気持ちってことなんでしょうさ。それだけ思える絆が育まれていたってことでしょうし。

国の仲間に腹いっぱい食わせてやりたいだけ。
そう述べる蒼希狼の夢はまだまだ小さい。

腹いっぱいどころか、お前ならそいつらのタメのデッカイ家だって建てれるぞ・・・
家どころか・・・勉強出来る学校だって夢じゃない・・・
土俵にはそれだけの金が埋まってるんだ・・・
そしてお前にはそれを手に出来るほどの可能性が詰まってる・・・

ただ食わせるだけではない。衣食住、教育に至るまで不自由なく過ごさせることが出来る。
それだけのことが出来る力が自分にはある。そう言ってくれる兄弟子の存在はとても大きい。いやいい人だわ本当・・・

何でいつもそこまで俺によくしてくれるんだと尋ねる蒼希狼。
大山道さんに言わせれば、親方が連れてきた奴だから。それだけで十分だろとのこと。
もちろんそれもあるんでしょうが、やっぱり放っておけなかったというのが一番の理由じゃないんですかね。
児童養護施設。どうやらそこでも頼れるお兄さんだったらしい大山道さん。身に沁みついた性分という奴でしょうか。

それからはますます蒼の稽古量は増していった・・・
強さだけを求めて・・・ただひたすら・・・貪欲に・・・貪欲に・・・
山ノ上の蒼希狼。その名が轟きだすまで時間はかからなかった・・・

順調に番付を上げていく蒼希狼。ついに十両になろうとしている。
関取になれば今までとは桁が違う金が手に入ることとなる。となれば夢への道も見えてくる。
仲間達だけではなく、自分達みたいなガキをもっともっと守りたい。そのためにお金を貯める。そして・・・

みんなで暮らせるデッケー家と、誰でも平等に勉強できる学校を作りてーんだ・・・

良い笑顔で夢を語る蒼希狼。いいですねぇ。
この意識があれば強くなれるし多くの人を救うことができる。それは喜ばしいことであります。
その気持ちが通じてか、角界一のトンパチ関取蒼希狼が誕生する。ポー!!
ガッツポーズを決める山ノ上親方が何だか可愛い。ハッハッハ。

という感じで今回は夢に向かって順調に進んでいた場面の回想でした。ここまでは良かったわけか。
とはいえモンゴルの仲間達の様子はどうだろうか。段々と金のある暮らしに慣れて来た感じに見受けられる。
金を貯めて家と学校を作りたいという蒼希狼の夢にどこまで共感できたのか・・・気になるところです。



第48話:六日目「鮫島-大山道C」  (2015年 50号)


スピード出世で関取になった蒼希狼。
山ノ上の後援会長から祝いに家具でも買ってやるよと言われるが現金でお願いしますと返す。
身の上と現在仲間に仕送りしている行動を知っている人ならともかく、いきなりこれを言われたら鼻白みそうですなぁ。
付け人も金を使おうとしない蒼希狼に不平を述べている。
別に貯めこんでいるわけではないんですけどね。いや、学校を作るために貯めてもらってはいるのか。

衣食住揃ってんのにこれ以上の贅沢が必要か・・・?不満ばかり言いやがって・・・だからテメーらはダメなんだ。

やはりどうにも甘い考えをしている日本人とは相いれない様子。
まあ鯉太郎のような日本人の方が希少でしょうしねぇ。
そんな甘い考えの奴らに負けてたまるかという気持ちも蒼希狼の強さの一端でありましょう。

十両に上がっても勢いは止まらない蒼希狼。
肘を当てているかのように見えますが、一応前腕部をぶつけているだけなんでしょうな。
とはいえそれをやられる方としてはなかなかキツイものがありましょうが。

新入幕を果たした蒼希狼。スピード出世であるし、注目も高まっている。
が、その注目に対しても別にいい顔したりしないのは蒼希狼らしい。
上手くすれば相撲以外の場面での収入も見込めるでしょうに・・・それだと肝心の相撲力が落ちる可能性もありますが。
この時の言葉は全部ぶっ倒すだけ、何も変わらねぇよとそっけない言葉。
にもかかわらず何故小結に上がった時は鮫島バカ〜〜だったのか・・・質問がピンポイントだから出ちゃったんだろうか。バカー。

さて、そんな蒼希狼の新入幕初日。
さすがに蒼希狼のケンカ相撲は目を付けられている様子。
品格あっての大相撲を教えてやらんとと息巻くのは二条部屋の桐の里。

幕内まで上がればテレビにも映る。モンゴルで蒼希狼の活躍を観戦する仲間達。名実ともにヒーローとなった感じですな。
そうなれば今まで以上に負けるわけにはいかない。
多少荒い感じであろうともとにかく勝つ。そういった気迫が見て取れる。
これは相手を侮ってぶつかろうとした桐の里の方に問題がありましょうな。

土俵の上で光に手を伸ばす蒼希狼。
その輝きはマンホールの中からずっと見ていたもの。いや、それよりも強い輝きが、まるで手に届かんかのような場所に・・・

皆待ってろよ・・・

いい笑顔を見せる蒼希狼。夢に向かって邁進しています。
が、その相手である仲間の一人サエハンは逆に暗い様子でマンホールを見下ろしている。
同じマンホールチルドレンではあるがこの意識の違いはどういう意味があるのか。
凄く暗い予感を感じさせる展開に不安が募ります。小結までは問題なく行くのでしょうが、そこから何があるのか・・・怖い。



第49話:六日目「鮫島-大山道D」  (2015年 51号)


とにかく荒く激しい相撲の蒼希狼。
まるで殴ってるかのように見えるがこれも上腕部をぶつけているんでしょうな。
さすがに土俵上で拳で殴りつけてたらただじゃ済みませんわ。

しかし幕内に上がってまでガッツポーズとはいただけない。そりゃ親方にも殴られるってものである。バカ〜〜〜。

人に愛される力士になりなさい・・・度量の大きな本当の強い力士に・・・

まさに親のように諭す山ノ上親方。
親方の言うことは素直に聞く蒼希狼であるが、度量というものがいまいち理解できないみたいですな。
蒼希狼曰く、鮫島ならば土俵で何をやられようがきっと文句は言わないだろうな、とのこと。
それこそが持ってもらいたい度量であるのだが・・・もう一度対戦でもしないと気付くのは難しいですかねぇ。
しかしやっぱり鯉太郎と相対すると嬉しそうな様子を見せるねぇ。

俺は何を言われようが思われようが金さえ稼げればそれでいいと蒼希狼。
全ては故郷で待つ仲間達の為に。どこまでも初心を忘れない男であるなぁ。

さて、その信じた仲間。一番古い仲間であるサエハン。
蒼希狼の夢である学校づくりのために送られてきたお金を貯めている・・・はずなのだが?
何だか凄く嫌な雰囲気が漂ってきましたね・・・

仲間のことを疑うような真似はしたくない蒼希狼。
まだ足りないというのならもっともっと稼ぐまで。
てなわけで今よりも稼ぐための方法を大山道さんに尋ねる。教えて大山兄!!

平幕でも月に130万と高収入であるが三役になれば169万。大関で234万。横綱なら282万となる。
やはり強くなって上に行くことが稼ぐ道って話ですな。
更に近道を狙うなら優勝。幕内で1千万。これはでかい。
他にも三賞で各200万。平幕が横綱を下す金星を獲れば引退するまで場所ごとに金星×4万。これもでかい。
そして懸賞金。1本につき力士には3万が入るとのこと。取組ごとに入るならなかなかのものとなりますな。これも。

その懸賞金がかかる人気者を狙ってブッ倒せばと蒼希狼。
それより自分が人気者になった方がもっと金は入るでしょうが・・・難しいかな、やっぱり。
人に愛される力士。人気の力士になれればテレビとかにも取り上げられてそっち方面で稼ぐのも不可能ではないのでしょうが・・・
それも蒼希狼の性格では難しいでしょうなぁ。そっちにかまけて相撲が弱くなるのも不本意でしょうし。
それに蒼希狼自身、今の状況は上手く行っているほうだと考えている様子。
日本にいるだけで俺には奇跡みてーなもんだしとのこと。

だから今が逃げねーうちに・・・力尽くでも欲しい物は手にしねーと・・・
狩るか狩られるか・・・死ぬか・・・生きるかだ・・・

確かに山ノ上親方に拾われ、こうして仲間達が不自由ないぐらいまでに稼げるようになったのは奇跡と言えるかもしれない。
相撲取りになるまでの人生を思えば、ゆっくりと伸びるなんて悠長なことは考えられないのも無理はないのかなぁ・・・
自身が金を使うわけでもないからそれによって堕落するようなこともない。
大きな夢も持ってしまったことだし、そこへ向けてどんどんと生き急いでいく。
うーむ。大山道さんが語った言葉が仇になっちゃってる感じでよろしくないなぁ。

そこから蒼の相撲は増々激しさを増していった・・・
そう・・・まるで刹那を燃やす様なその取組は・・・ボロボロになっていく体とは裏腹に・・・
見る者の中に・・・徐々に・・・そして確実に突き刺さっていった・・・

真剣な必死な姿というのはそれだけでも心を打つものですからねぇ。
礼儀も大事だけど、こういうひたむきな姿勢も大事だと思わせてくれる。
ふむ、蒼希狼が人気者になる道もなくはないんじゃなかろうか。そのようにも思えたのだが・・・

きっと早過ぎたんだ・・・何もかもが・・・そのスピードに歯車が噛み合わないほどに・・・

どんどんと生き急ぐ蒼希狼は悩みを抱えた仲間のことに気付くこともなかったということだろうか。
嫌な予感が最高に膨らみつつある状況。さてどうなることか・・・続きが怖いです。




第50話 〜 第68話は後日更新予定



第69話:七日目〜その後A  (2016年 21号)


ついにその姿と名前を露わにした横綱、泡影!!
関脇の頃から途切れることなく29回連続で優勝の大記録
連勝記録も現在61まで伸ばしているという。うーむ、大相撲史上最強と呼ばれるだけのことはありますな。

本日その泡影に対するは新寺部屋の飛天勇。
石川が引退を決めた場所であるし、兄弟子としては花を飾りたいところ。しかしこの相手はさすがに・・・

鯉太郎の隣に立つ、元大横綱の虎城親方。
その虎城親方をして横綱そのものと言わしめる泡影。取組の姿勢はまさに横綱らしい真っ向勝負のガチ相撲。
常に相手にも全力を望み、手を抜くことは一切認めないというスタンスとのこと。
しかしそのスタンスでありながら今までケガ1つしたことがないという事実・・・

よく見ておけ・・・お前がやろうとしている相撲はどういうものなのかを・・・

お互いが全力でぶつかる相撲。それこそ鯉太郎が、火竜が求めた相撲のスタイル。
しかしそのスタイルは自身を大きく擦り減らす結果を伴うもの。のはずであった。
この横綱はそのスタイルを貫きながら不動の位置を築き上げているというのか・・・!!

ぶつかる前の対峙の時点で既に息が上がっている飛天勇。
何を考えているかも分からないぐらいに静かな相手であるが、だからこそプレッシャーも凄かったりするのだろうか。
そんな飛天勇に声をかける仁王さん。かつてはお互いバチバチやってた仲の2人。
とはいえかつての仁王さんは大関に手が届く所まで進んでいたんですよね。
差をつけられてたことについてはどう考えているのだろうか飛天勇。
少なくとも煽られて元気になるぐらいにはやはり意識している感じでありますな。いい感じだ。

見てろ大器。引退したお前に・・・これ以上ねぇデッケー餞別を贈ってやる・・・

戦う準備を整える飛天勇。その構えと共に会場が大きく湧き上がる。
横綱にしてみればこのような観客の声など慣れたもの・・・とも思えるのだが、虎城親方に言わせれば違うとのこと。

人々は横綱に対して心技体・・・常に完璧な聖人君子像を要求してくる・・・
それがどれだけ狂気を孕んだ残酷なことか分かるか?
その期待に・・・その重圧に、その狂気の塊に・・・いつ潰されるかという恐怖・・・
それは人という器では到底収められるものではないのだ・・・
しかしこの横綱は・・・この横綱だけは・・・その器の底が知れん・・・

まさに神か仏か。この横綱はどのような重圧も呑みこみ泡としてしまうのではないか。そのように思えてしまう。
そういった恐れは対峙している飛天勇が一番感じている様子ですが・・・始まる前から消されてしまうわけにもいかない。
土俵に立ったからにはとにかく前へ。恐れを振り払い、とにかく前へ!!
その意識で素晴らしい立ち合いを見せる飛天勇。泡影の胸へ頭からぶちかます。ぶちかましたはずだ、が・・・

え・・・・・・

当たったという手ごたえを感じるや否や、脇に差し込まれた手に上体を倒され・・・体は横へと。堪えることもできずに倒される。
ううむ、これが虎城親方をして相撲そのものと言わせる男の強さか・・・!!
全力で向かって行ってもそれが全く通用しない。いや、全力でなければそもそもぶつかれもしないということなのか。

圧倒的な強さ。しかし鯉太郎たちの目指すスタイルとは何か違うような気もする。
いやスタイルとしては同様なのかもしれないが、あまりにも強すぎて同じようには見えない。
泡影はこれが全力であるのかどうなのか・・・得体の知れない見た目とも相まってとにかくその辺りがよく分からない!!

心技体共に聖人君子とされる横綱像を体現している泡影。
果たして次回は喋る姿を見ることはできるのだろうか。宇宙人っぽいし川さんみたいに無言で過ごしそうな気がしないでもない。
それで横綱として人々の期待に応えられる存在と言えるかは分かりませんが。
下手すれば視線を受けただけでその人は脳内にメッセージを受けたりするのかもしれませんな。恐ろしい!!



第70話:七日目〜その後B  (2016年 22+23号)


かつての大横綱・虎城。
人々に心技体揃ったまさに横綱と誉めそやされる存在。
しかしその心は常に横綱への期待という重圧に押し潰されそうになっていたという。
そんな経験のある横綱が、現在の本物の心技体を揃えた横綱・泡影を見てどのような想いでいるのか・・・
同じように重圧に耐えかねている父親の姿を見て反発心を覚えていた王虎の気持ちなんかも気になるところですな。

相手に全ての力を出させ、それを受けきりそして飲み込む。
確かにお互い全力でというのは鯉太郎の目指す相撲でありますわな。
しかしそれを成すには受けきるだけの大きな力が必要となる。
さらに横綱には加えて観衆の期待、いや幻想が重く伸し掛かる・・・

強大な力があって初めて成立する相撲だ・・・
お前に実力がないとは言ってはおらん・・・だがあの相撲を取るには足らんのだ・・・
お前に期待をしとったと言うのも嘘ではない・・・その太い地力と精神力は目を見張るものがある・・・
心底思うよ・・・あと少し・・・体が追い付いてくれればと・・・

心は満ち、技も身についてきている。しかし体は・・・
虎城親方が鯉太郎に期待するようになったのは間違いない。
だが、だからこそ今のボロボロになってしまっている現実が辛い。
引退を進めるのも、もうその期待をかけ続けるのが辛く思えてしまったからなのかもしれませんな・・・

今さら・・・分かってんだよ。俺が相撲に選ばれてねーってことなんて・・・

それこそ序二段の頃からずっと体格には悩まされてきた鯉太郎。
その頃に比べればずいぶん立派な体格にはなりましたが・・・足りない。
この体で真っ向を貫くスタイルは身を滅ぼすこととなる。が、それでも鯉太郎は止まらない。

一生現役でいられる奴なんていねーんだ・・・遅かれ早かれいずれ終わりは誰にでも必ずくるんだ・・・
何より怖ーのは・・・満足しないで終わっちまうことだ・・・
だから俺は・・・俺の相撲を貫く。誰にも否定はさせねー・・・たとえ相手が・・・神でも・・・

これぞまさに死んで生きられるかの心意気。
実際満足しきれずに終わってしまった父の姿を見ておりますからねぇ。
同じ道をたどることのないよう、悔いの残らないようにしたいという思いが強いのでしょう。
しかし、そう覚悟を決めておきながらも神の依代たる横綱・泡影が前を通り掛かった時・・・引いてしまう。

鯉太郎の気迫をものともしない泡影。その目は一体何を見ているのか。
全てを包み、泡と影としてしまう。その心には深淵が潜んでいるのだろうか。

おもしれー・・・アイツが・・・相撲そのものだってんなら・・・アレを振り向かせりゃいいんだろーが・・・

あくまで引くことの無い鯉太郎。まさに進むは修羅道でありますな。
単純な熱気では泡影には通じそうもありませんが、さてどうするのか・・・
この先に横綱と当たる機会があるのか。それまで五体満足でいられるのか。
情熱が限界を超えてくれることを期待したい。そして限界を超えた後の反動も抑え込んで欲しいものであります。



第71話:八日目「幕内土俵入り」  (2016年 24号)


"神"に挑むは、修羅の道。その道は果たして歩ききれるものであるのかどうか。
情熱の九月場所はいよいよ中日である八日目。ここでここまでの上位陣の紹介も含めた幕内土俵入りが行われる!!

まずは主人公。鮫島鯉太郎
昔とは比べものにならないほど体格は良くなったが、それでも他の力士と比べればソップといって間違いない体。
しかしその体でここまで負けなしの全勝。常に全力の相撲は見る者の心を揺さぶる。
そんな鯉太郎に関して虎城親方も誉める。その相撲に対する純粋さを。それが証拠に鮫島と取った力士の大半は顔付きが変わると。

気付くんでしょうな・・・相撲を好きだという気持ちをあてられて。己の根底にある相撲に対する純粋な気持ちに・・・

ふむ。これは虎城親方も同じ気持ちだったりするんでしょうか。
横綱の重圧。火竜との望まぬ別離。息子とのイザコザもあり、相撲に対して微妙な気持ちを抱くこともあったのではなかろうか。
それが今では落ち着いて理事長を務めるまでになった。それはやはり相撲に対する純粋な気持ちに気付けたからなのかもしれない。

そんな鯉太郎ともう一度取りたい、取ってみたいという力士は多いとのこと。
北里部屋の毘沙門も対戦が楽しみな力士として鯉太郎の名を上げている。笑顔が素敵な人ですが、さてどのような相撲を取るのか。

鯉太郎以外の空流部屋力士も好調。
鯉太郎と同じく7連勝を飾っているのは松明。クールなデータ相撲が特徴。
だけど祝儀の声に反応してみるあたり、やっぱり常松は常松であるなと思わされる。
いやでも、守銭奴キャラに変わりはないのにいい感じに昇華してるようでいいですよ。うん。

そして鯉太郎や松明を引っぱるのは本日横綱との注目の一戦を控えるこの男。
時折格上に対して驚異の強さを見せる意外性の男!小結白水!!
ほう。小結にまで上がっていましたか白水さん!!
この人は常に鯉太郎に背中を見せて前を歩く兄弟子であり続けて来たんでしょうなぁ・・・
序二段の時は追い越されたりもしてたけど、そこから立派な兄弟子に成長した白水さん。横綱との一戦が楽しみである。
まあ、色々と奇行に苦労させられていそうな虎城親方としてはあまりいいコメントはできないようですが。ハハハ。

更に現れる西方の注目力士たち。
右の強さは天下一品!!TVでもお馴染みの人気者!豪腕小結闘海丸!!
全盛期の力は無いもののベテランの巧さは鋭く光る。いぶし銀の関脇、明王山!!
一度は綱取りに王手をかけたものの横綱・泡影の巨大な壁に弾き返された。しかしその力は未だ強大。角界の怪鳥。大関、天鳳!!

ふうむ。天鳳もまだ横綱になれずでありますか。
泡影という存在があったとなると仁王さんが現役でも横綱になるのは困難だったかもしれませんな・・・
そして小結になっていた闘海丸!!相変わらず緊張しいな様子ですが、そんなところも人気なのかもしれない。
可愛い化粧まわしをしたりと人気者の様子が伺えるが、これも同部屋のメガネこと将太のプロデュースによるものか・・・!?

続いて東方の土俵入り。
横綱と同じ禅定部屋力士、横綱譲りの沈着冷静な相撲が持ち味の前頭四枚目、丈影!!
この男が本日八日目の鯉太郎の相手であるとのこと。ほう。
丈影にしてみれば感情を全面に出す鮫島のスタイルは最も認められないものであるとのこと。
ふむ、蒼希狼戦後にも鯉太郎を非難するようなことを言ってましたものねぇ。
それは自分のスタイルと相いれないからなのか、その小さな体で横綱と同じガチ相撲を取ろうとしていることの拒否感なのか・・・

ともあれ続いての人気力士たち。
愚直に叩き上げた決して折れない魂の相撲!!小結、白鯨力!!
時に徹底した非情さで相手を沈める。関脇、百雲!
次の大関はこの男で間違いない。関脇、怪力天雷!!
そして最強横綱の首をまさに虎視眈々と狙う、あの伝説の虎が育て上げた2匹の若虎!!
一人はもちろんこの人、虎城部屋の大関猛虎!!
そしてもう一人はもちろんこの男。横綱・泡影の首に最も近いと言われる力士。
大横綱と謳われた虎城の最高の遺伝子を受け継ぐ男!大関王虎!!

ついにこのタイトルになってから姿を現した王虎と猛虎さん。
猛虎さんは大関にはなってるだろうと予想してましたが、王虎ももうそこまで行っていたとは・・・いや、さすがである。
しかし何だか影を背負ったような感じの王虎であるが、どのような性格になっているのだろうか?
虎城親方の様子を見る限りは昔のような不安を覚える子ではなくなっていると思われますが・・・

懐かしい顔に新しい顔。
この面々が熾烈で残酷な星の潰し合いを行い、そして最強横綱・泡影に挑んでいく。
誰が生き残り、誰が消えるのか・・・九月場所の後半戦。激しいことになりそうです。
いやあ、やっぱり選手全員入場の流れは盛り上がりますなぁ・・・!!ここからも楽しみだ!!



第72話:八日目「鮫島-丈影」@  (2016年 25号)


ずっと知りたかった・・・アナタは何を見ようとしていたのか・・・
今年の初場所・・・今の連勝が始まる前の最後の敗北・・・
そしてあの一戦で、アナタは確かに何かが見えたんだ・・・
あの時アナタの目に何が映っていたのか・・・私はそれを知りたい・・・

八日目の鯉太郎の相手である丈影の述懐。
ふうむ、無敵と思われた横綱でもやはり負ける時はあったわけですな。それは当然か。
その取組がどのようなものだったのか。その取組によって泡影の取組に変化が生じたのか。気になるところです。

さて、その横綱・泡影に本日の結びで挑むことになる白水さん。
支度部屋で石のように固まっております。ハウッ!
昔とは比べられないほど立派になったけど、こういうところはやっぱり白水さんですなぁ。
まあ、結びの一番のプレッシャーは相当なものであるし、仕方がないか。

客の、いや日本中の目が集中する結びの一番。
そんなプレッシャーのかかる状況で目の前にはあの横綱。そりゃ緊張も普段の倍になろうというものである。
小結まで上がっている白水さんは既に何回か泡影との対戦経験があるんですかな?
どうやら自分が何をしたかは緊張で覚えていないみたいですが・・・

緊張ってのはよく分からねーけど、白水さんが言うんならスゲーんだろーなー・・・

そんな白水さんの言葉にそんな感想を述べる鯉太郎。
土俵に上がる前に緊張したり怖くなったりという感情を抱いたことはないらしい。

俺はいつも早く相撲が取りてーってことしかねーけどなー・・・

そう笑顔で述べる鯉太郎。いやはや、この男はこれだから。頼もしくもあるし、危うくもある。
まあ、鯉太郎は前相撲の段階から観客の目に晒されてましたしねぇ。
その後もマスコミの攻勢で世間の厳しい目にも晒されてますし、そういうのには慣れているのかもしれない。
いや、これは純粋に相撲を愛する気持ちのなせる業であるか・・・
というのはさておいて。照れる鯉太郎が可愛くて仕方がないのでありますがコノヤロウ。

ところ変わって東の支度部屋。ここはピリピリした空気が漂っている。
というのもここには横綱が。連勝記録のかかった大事な一番を控えた横綱がいるのだ・・・!!
まあ、泡影自身はそれでそこまでピリついたりはしないかもしれないが、周りの者たちの、禅定部屋の力士たちの緊張は高かろう。
その禅定部屋の力士である丈影。その対面に座り、今場所で俺が横綱を喰ってやると述べるのは・・・王虎!!
ふむ、どうやら既に王虎も何度か泡影に挑み、跳ね返され続けているようですなぁ。
しかし平幕力士の感情の爆発にも理解を示すようになっているとは・・・落ち着いた感じになってるようで何よりです。

しかしそんな王虎に対し、横綱には誰も勝てないと言いだす丈影。

横綱・泡影を倒せるとしたら、私だけですから・・・

さらりとそのようなことを言って見せる丈影。ほほう、言うではありませんか。
同部屋である以上、土俵でそれを証明するのは難しい。
が、そのような言葉が出る以上、丈影の泡影に対する気持ちというのは単純なものではないみたいですな。

それはそうと、王虎である。
今日の相手である鯉太郎に勝てたらその大ボラも耳に入れてやるとのこと。
おやおや、虎城親方に続き、王虎もすっかり鯉太郎を評価するようになっているようで・・・おやおや。
狂える虎と評されていた頃が嘘のようである。これならば虎城親方も安心して見守ることが出来ているでありましょう・・・

さて、ここで日刊トップの山崎さんが登場。今では記者ではなくデスクになっているという。ほほう!

懐かしい顔も現れての八日目。
楽しみな取組となりそうですが、さてさてどうなりますか!



第73話:八日目「鮫島-丈影」A  (2016年 26号)


冒頭から丈影の回想。
入門前、学生時代から相撲を取っており、その実力は高校卒業前からプロに注目されるほどであったという。
そんな沖縄出身の丈影こと比嘉ライアン。へぇ、ハーフだったんだ。目が青いとは気付きませんでしたな。

禅定部屋は親方が来年で定年。
となれば現在の部屋付親方である大曲親方が禅定部屋を受け継ぐことになるとのこと。
それゆえか例年以上に張りきって人材を集めている大曲親方。
高校チャンピオンになった比嘉を連れてきたのも実績となるわけでありますな。

禅定親方は昔横綱にまでなったお人。しかしさすがに年には勝てないのか今では置物状態であるという。
ふうむ。寂しい話でありますが、年はどうにもなりませんわな。
しかしその名前は偉大であるし、大曲親方もその名を継ぐからこそ張りきっているのでしょうな。

さて、ハーフである比嘉に対しての周りの扱いは・・・ふむ。こうなってしまうか、やはり。
口では差別や偏見を悪としながら根本では別種の人間として選り分けてしまう
良くないことだと分かっているのだが・・・この問題は一口でどうこうとは言えませんな。
比嘉も日本人の父を愛し、その父の血が半分流れていることに絶対的な誇りを抱いている。
だからこそそれを選り分けするような連中の態度が気に入らないんでしょうなぁ・・・難しい問題に斬り込んできたものです。

くだらない・・・
俺がこの国の国技と言われる相撲を選択したのは、
この国で育った半分他国の血が流れる私という人間を問答無用に認めさせるため・・・
アイデンティティーを確立させるためだ・・・

取り用によっては寂しいとも前向きとも言える考え方。
それで幸せになれるというのであれば問題ないわけでありますが・・・

しかしそんな比嘉と同期に入門したのはハーフの比嘉よりも異質な存在感を放つ男。
禅定親方が独断でモンゴルから連れてきた男。この男が将来の横綱、泡影か・・・!!

モンゴル人であるはずなのに目が青い。思わずそのことについて問う比嘉。自分が今までそうされてきたことをなぞるように。

過ぎた時に意味があるの?

帰ってきた答えはまた何とも達観した感じの内容である。
ふむ、母は日本人であるのか。そして祖父はロシア人なので片目が青いと。
それどころか遡れば様々な人種の血が入っているとのこと。
ふむ、それは何というか・・・簡単に人種で括れる存在ではありませんな。
比嘉は自分と同じ境遇でありながらその涼しげな目に苛立ちを覚えたようでありますが・・・ううむ。

さて、そんな泡影であるが、実は相撲初心者。
身長はあるが細く、相撲取りに向いた体になるかどうかは分からない。
しかし禅定親方は核心めいたものがあるらしい。
これまで置物と化していたはずなのに、自ら動き、四股について指導する。

力士の四股には意味が2つある・・・1つは基本となる足腰の鍛錬・・・そしてもう1つは・・・
大地の邪気を踏み鎮め、また大地を起こし豊穣をもたらす儀礼。
四股とはもともと醜と書く・・・つまり強大な力で悪鬼を押さえつけ幸せを持たらす・・・
やってみなさい・・・

四股の持つ儀礼的な意味。
それを学んだ泡影の四股が放つ物は。よく見るただの有りふれたはずの四股に感じる異物感は・・・

そう・・・一瞬で・・・この男の、その未完成の四股に・・・魅了されていた・・・

比嘉のみならず、禅定部屋の誰もが感じるその存在感。
ううむ、横綱は入門当時から既に傑物であったということですか。
いやそれにしても・・・ちゃんと喋れたんですなぁ・・・この人・・・
でも口にする言葉は色々と達観してそうな雰囲気でコミュニケーションが難しそうな感じは見受けられる。
そんな達観した存在であるからこそ、虎城親方も潰されそうになった重圧も呑みこむことができているのだろうか?

丈影の回想ではあるが、同時に横綱の過去も見られそうな今回の回想編。なかなか興味深いことになりそうです。



第74話:八日目「鮫島-丈影」B  (2016年 27号)


実は丈影には一度も勝ったことがないという鯉太郎。
背丈はそれほど変わらないのだが、どうにも相性が悪いのでありましょうか。
いや、今やデスクとなった山崎さん曰く、単純に丈影という力士が強いとのこと。
あの力士は三役・・・いや、それ以上にいてもおかしくはないのだ、と。

ここで山崎さんの回想。
スーパールーキーとして前相撲から記者の注目を浴びている丈影こと比嘉。
一方その同期であり同部屋である泡影。注目はされていないのだが・・・その相撲はやはり目を引く。
黒星から始まった横綱の相撲道であるが・・・なんだろうな、これは。
勝った相手の方には余裕は全くなく、負けた泡影はというと純真無垢な笑顔を浮かべている。
相撲の難しさを知って喜んでいたりするのだろうか・・・?

そんな黒星スタートの男に泡影の四股名を譲ると言い出す禅定親方。
かつて横綱を張った時の四股名を譲る。その意味は大きい。それもまだ目が出るかもわからない男に・・・
しかし禅定親方にしてみれば彼しかいないという確信がある様子。

多少でも感度の高い者ならば彼の持つ空気が違うことに気付くはずとのこと。
確かにそれは初めての四股の時にも感じられましたわな。
そしてその空気の違いを誰よりも感じていそうなのに認めようとしない、認められない比嘉。手合わせを申し出る。

まだ四股しか教わっていないという泡影。
それに対し、猛烈な勢いでぶつかる比嘉であったが・・・当たった感触が、ない。

剛より柔・・・柔軟性が綿のように力を吸収する目指すべき1つの型・・・
恐ろしいですよ・・・それを無意識で出来てしまうのですから・・・

これこそが泡影の名を継ぐにふさわしい特性ということでありましょうか。
よもや入門当時から無意識で出来ていたとはなぁ・・・

ブチカマシが効かないならと張りの連打。
しかしこれは前相撲で浴びたのと同じであり・・・泡影にしてみれば新しいものではなかった様子。

ソレは・・・もういい・・・

取組前こそは笑顔を見せていた泡影であったが、興味を失ったような表情を見せ、一気に勝負を決める。
うーむ、全く問題にならないというか、ここまでの差があるのか。
黒星スタートはさておき横綱は最初から横綱としての強さを持っていたということだろうか。恐ろしい。



第75話:八日目「鮫島-丈影」C  (2016年 28号)


入門からストレートに番付を駆け上がる比嘉。
幕下昇進を決めた日、四股名を丈影へと改名する。
ふむ、泡影には倒されたものの、その非凡さは確かなようですな。
だけどそんなスピード出世の丈影よりも人望があるのが泡影。無口なのに何くれと面倒を見たがる人が集まる様子。ほほう。

凄い強さを見せている。かと思いきや先場所もギリギリ勝ち越しなど危うさの見える泡影。
まだまだ戦い方を吸収している時期なのでしょうか?
というか、やはりこの頃から相手の力を引き出して全力で戦うようなやり方をしていたんですな。
丈影も同じような戦い方をしているようだが、こちらは巧さで勝利をもぎとっていると。ふむ。

輝影曰く、泡影には他人がすんなり入れるほどの度量、器があるとのこと。
そんな輝影もかなり泡影には注目している。
曰く、泡影に稽古をつけて強くした。それだけで俺はきっと名が残る力士になる・・・と。
うーむ、関取にそこまで言わせるとは・・・何ともはや。非凡なんて言葉で片付けられる存在ではありませんな、泡影。

稽古場で一度泡影に敗れた丈影。
しかし直接対決以外では勝ち星の数も番付も上回っている。
ふむ。非凡であるが故に泡影の凄さを認めきれず張り合おうとしてしまっているか・・・

幕下に上がってからの丈影。泡影の相手の全力を引き出す戦い方に倣うような取り組みをしだす。
そういう戦い方をしても自分の方が勝ち星をあげられると示したかったのでしょうか。
気迫の中にも巧さが光る相撲から、ただただ相手の攻めを待ち、気迫をぶつける相撲へと変化。
その相撲は客を沸かせることはできるが、番付を上がれば上がるほど勝ちは容易ではなくなり、また怪我も多くなる・・・
ううむ?何だか誰かを彷彿とさせる話ではありませんか?

兄弟子たちの反感を買いながらもとにかく強さを求めた道を行く。
そのストイックさも鯉太郎に近い部分があるが・・・どうも決定的に鯉太郎とは違い、可愛げが足りない様子ですな。
空流の面々の受け入れる心が広かったというのももちろんありましょうが、鯉太郎は時折すごく可愛い弟弟子になるからなぁ・・・

他に鯉太郎と似ていない部分としてはスピード出世か。
そのスタイルを貫きながらも同期の誰よりも早く十両にあがる。大したものだ。
この男もまた怪物と呼ばれるだけの素質を持っていたわけだ。
だが・・・入門時にある程度出来上がっていた体は、それ以上大きくなることを拒んでいた・・・
結果――簡単には十両に通用せず・・・

やはり幕下と十両以上とでは違いが大きいみたいですな。
大きくなりにくい体に苦悩しつつ、それでも全力で正面からぶつかるスタイルは捨てない、か。ううむ・・・
これは、丈影が鯉太郎のスタイルに苦言を呈しているのも、かつての自身を振り返ってのことなのかもしれませんな。

禅定親方にも無理はいけないといわれる丈影。
その才能を活かすには別の取口があると。

前を見なさい・・・君には君の輝ける未来がある

泡影と同じタイミングで同じ部屋になったしまったが故の苦悩。
ここまで駆け上がってこられたのも泡影と同じ場所にいられない、とにかく先に行かないとという焦りが功を奏した結果かもしれない。
しかしそれだけではもう通じない世界にまで来ている、か。

その泡影は段々と体が出来上がりつつある。
丈影のような苦悩の色を見せずに体は出来上がり、技も輝影から一本取るほどに磨かれてきている。

振り返れば、そこに影
常に後ろにつく巨大な影に脅える丈影。
さてさて、ここからどのようにして今の丈影に落ち着くことになるのだろうか?
一度の敗北では泡影の力を認めるところまではいかなかったわけですが・・・
泡影の力を認めること。自身にあった取口を見つけること。
それがこれからの課題となりそうですが、それまでに怪我とかしそうで怖いですなぁ。
やはり相手の全力を引き出す相撲はリスキーですよ。間違いなく。



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