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鮫島、最後の十五日
序章 〜 第15話


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 各巻感想

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連載中分

鮫島、最後の十五日 1巻


序章「先々場所」  (2014年 50号)


佐藤タカヒロ先生が満を持して描くバチバチ幕内編!!
ついにここまで登って来ることが出来たかという思いがあります。
しかしその思いを打ち砕かんばかりに危険なタイトル。そして・・・

俺は相撲に選ばれちゃいない・・・何よりも相撲が好きだったアイツの言葉・・・
そっぽ向かれようが、はじき返されようが、いつもボロボロになっては立ち上がり・・・
もがき・・・抗い・・・挑み続けた・・・何よりも相撲が好きだったアイツの言葉

情熱よ、残酷を超えろ
見開きで倒れながら涙する鯉太郎とそのアオリ。
開始数ページで読む方にも覚悟を迫るかのような圧力を感じさせる・・・うむむむ。

とにもかくにも、今回の話は本編の先々場所――両国国技館での五月場所十二日目から始まる。
バチバチBURSTの頃からどれだけの年月が経過したのだろうか。
鯉太郎が幕内に上がったということは同期を始めとした色々な力士にも変化があったと考えられる。
ですが今回出番があるのは鯉太郎の他はこの人だけ――日本大相撲境界理事長となった虎城親方であります。
おぉ、ついに理事長になれたんですな虎城親方!!
王虎が落ち着いたことで虎城親方本人も余裕が出来たってことでしょうか?そうなら嬉しい話であります。

怖い顔してるけど細かいことに気が付く虎城親方。
その改革のおかげで客の入りも上々の様子。有難いことですな。

さて、いよいよ幕内力士の土俵入り。
ここで王虎や天雷の名前が見受けられる。さすがにこの2名は確実に幕内入りしているか。
いやそれにしても・・・やはり力士はでけぇなぁ・・・子供に怪獣と称されるだけのことはある。

力士を初めて生で見たお客様はただ太っているというイメージの違いに驚くんです。
実物はそんなに軽いものじゃない。そう・・・たとえるなら・・・力士とは巨大な肉の岩山

面白い例えをする虎城親方。
技術を教える時は抽象的なことしか言えないのに、こういうことは上手いんですな。前もって考えておいたのか?
というか考えてみればこの人に解説とかちゃんと務まるのだろうか・・・いや、ある意味面白いからいいのか?

それはさておき、この男の登場で一際大きな歓声が鳴り響く。
巨大な岩山の中にして異質な存在感。
空龍部屋東前頭十枚目、鮫島!!

どうやら幕内に上がっても四股名とかはないらしい。
まあ鮫島という名前は力士っぽい感じはありますけどね。白水とかもそうだけど。
しかし幕内力士の中に入ると本当小さく見えるな・・・

悪たれではあるが人気のある鯉太郎。この感じはやはりかつての火竜を思い起こさせる。
そして成績も立派。前頭でありながら今場所十二日目にしていまだに3敗。
上位との対戦がなかったとは言っても大健闘と言える。
が、虎城親かの言う通り、全身がテーピングだらけのボロボロの状態である。
この場所に限らず、十日目越したあたりでヤマ行って休場することが多いのだそうな。ほほう・・・

鯉太郎もさすがに休場したりするんだなぁ。とか逆の驚き方をしてしまう。
というのはさておき、鯉太郎が注目を浴びているのは観客からばかりではない。
同じ力士たちからも強い視線が飛ぶ。ジロッ。
ソップと言ってもいいやせ型力士である鯉太郎。しかしその相撲は重い。取り組んだ力士は皆その重みを感じている様子である。

毎回対戦相手にケンカを売っているらしい鯉太郎。そりゃ睨まれますわ。
幕内に上がっても悪たれっぷりは変わらない感じですなぁ。ハッハッハ。

しかし角番とはいえ現役の大関である明王山にもケンカを売る鯉太郎。
かつては"牛鬼"と呼ばれ恐れられていた大関も今や40歳。盛りはとうに過ぎたと考えられている人である。
62場所もの時間を大関としてやってきたが、ここで陥落となれば引退が囁かれるのも不思議ではない。
当の本人はその辺りの決断は先延ばしにし、のんびり相撲を取らせてほしいなどと考えているようですが・・・それはいかんな。

オイ・・・オッサン!のんびりだと・・・?バカにしてんのか・・・コラ!
ピクニック気分で土俵に上がってんじゃねーぞ・・・老害が!

この上ないほどにケンカを売ってみせる鯉太郎。さすがというか何というか・・・
人格穏やかと評される明王山も流石にこれは黙ってはいないのではなかろうか。
本日十二日目・・・その大関、明王山と当たることとなる鯉太郎であるが・・・どうなることか。

鯉太郎にとっては初の大関戦。であるにも関わらずいつも通りの喧嘩腰。見ている方が心配になりますわな。
心配といえば、もう歳とか言っていた空龍部屋の後援会長。
何ごともなく元気に鯉太郎の取組を嬉しそうに見守っております。げ、元気なじいちゃんだぜ本当によ・・・
こうなりゃ空流の力士が奇跡の優勝を果たす、いやさ横綱が生まれるまで見届けるって気でいそうな感じがある。

そんな先のコト・・・そんな先のコトなんて・・・アイツの頭にはないわよ。

そう述べるのは椿ちゃん。
もう高校も卒業したんでしょうな。和服を着て後援会の方々と共に見守っております。
まるでおかみさんのような感じではあるが、別に鯉太郎との仲がそこまで進展したわけではない感じ。チッ。

今は心配そうな感じで沈んでいるが、普段はやっぱり元気な椿ちゃん。
明王山関にケンカを売った鯉太郎に怒っております。ああ、普段紳士な人にケンカ売っちゃいかんよね。いかんいかん。
そんなふうに怒る椿ちゃんに対し、好きなんだ・・・の一言で黙らせる鯉太郎。
その後に相撲がと繋げる倒置法を用いての牽制とは・・・やりおるわ。チッ。

16でこの世界に入って・・・その想いはデカくなる一方で・・・
でもよ・・・十両・・・そして幕内で闘うにつれ分かっちまったんだ・・・
俺は相撲に選ばれちゃいない
関取ってのは150kg超えの化物揃いだ。俺はここまで必死に作り上げた体も100kgちょい・・・気を抜けば直ぐに痩せちまう。
太れねえってのは・・・致命的なんだ。
幕内に上がって・・・相撲が楽しくなる一方で・・・土俵に上がる前・・・いつも覚悟するんだ・・・
この体がいつまでもつのか・・・これが・・・最後の土俵かもしれねえって。
だからよ・・・ムカツクだろ・・・その最後の相手が全力じゃなかったら・・・許せねーだろ、そんなの!

対戦相手に毎回ケンカを売っているのはそのためですか。
気持ちは凄く分かるが・・・そのために相手にも全力を強いる戦い方は・・・厳しいな。
それもあって毎場所ボロボロになることになるのだろうが・・・考えを改める奴ではなかろうなぁ。ううむ・・・

立派な体格をしていることもあるが、62場所もの間大関を務め、総合的な力士の期間の長い明王山。
さすがに毎場所全力で当たることはできず、温くなっていた日もあったのでしょう。
そんなぬるま湯に対し、熱湯を浴びせかけようとしている鯉太郎。
ほほう。こうやって毎度相手も熱くしているわけでありますな・・・!!

力は落ちていてもさすがに大関。その威圧感は並ではない。
とはいえそれは鯉太郎にとっては望むところである。全力で来てくれるのならばむしろ有難い!!

全部だ・・・俺に与えられた一生分の力を・・・
これで終わりでもいい・・・俺の全部を相撲に・・・くれてやる!!

悲壮なまでの覚悟。しかし確たるものだと分かってしまう覚悟を秘める鯉太郎。
その気迫は大関の威圧感にも劣らない。むしろ相手の威圧感を大きくさせようとしている感じがある。
虎城親方も、今日の明王山には"牛鬼"と恐れられたあの頃の面影を感じるという。

この山は決して低くはないぞ・・・鮫島鯉太郎

力士のブチカマシの衝撃は軽く1トンを超える。
全盛期の明王山のブチカマシは間違いなく角界随一のものであったという。
その明王山のブチカマシに正面から挑み・・・打ち勝つ鯉太郎!!
小兵ではあるが、鯉太郎のブチカマシは突き抜ける弾丸とまで称される代物である。更に言うならば・・・

こっ・・・このガキ・・・何てもんブチあててくんだ・・・
それは一場所に・・・1つの取組に・・・使うエネルギーの量じゃねーだろ!

大型力士にブチ当たったことで打ち勝った鯉太郎の体にも強烈な負荷がかかっている。
だが、それでも怯むことなく追撃を行おうとする鯉太郎。その姿に・・・明王山からも笑みが漏れる。
穏やかな紳士としての笑みではない。獰猛な・・・"牛鬼"と呼ばれた頃の笑みだ!!

まるで全盛期を彷彿させるかのような押し相撲を行う明王山。
鯉太郎との取組によってかつての熱を取り戻せたみたいですなぁ。いい感じだ。
こうなってくると体格に劣る鯉太郎は厳しい。
ただでさえボロボロの体なのに。強烈な突きを喰らいまくっていては持たない。
が、鯉太郎が鍛えてきたのは突きや押しだけではない。明王山のまわしを取り・・・投げの構えに入る!!

なっ・・・何なんだ・・・コイツの・・・相撲の・・・重さは・・・

左下手に取った鯉太郎。明王山の体を左へと傾ける。
慌てて左足を踏みだし堪える明王山。
その体重移動の瞬間を見逃さず身体を捻って右へと・・・投げる!!

平幕である鮫島鯉太郎が大関である明王山を投げでくだす大一番!!これは歓声も巻き起こりますわ。
思わず虎城親方も笑みを浮かべてしまう見事な取組でしたぞ鯉太郎・・・!!
いや、それにしてもこの仏壇返し。虎城親方にしてみれば空流親方に何度も決められた苦い技であるはず。
にも関わらず、そんなことなど忘れた感じになっている虎城親方。
最初に鯉太郎の紹介が会った時は微妙な顔してたくせになぁ・・・すっかりツンデレ気味になっちゃってまあ。

全力を出して敗れた明王山。こちらはこちらでそれならば悔いなしとなりましょう。ここらが潮時かと考える。しかし・・・

ふざけろよ・・・何が引退だよ・・・こっからだろ"牛鬼"のオッサン?

取組中とは打って変わって幼い感じの目で爽やかにそう述べる鯉太郎。
確かに今回のような取組が出来るなら引退は考えなくてもいいでしょうな。
うーむ、鯉太郎のこれもある意味ツンデレの流れか?ケンカを売っておいてから一変して評価する。やれやれ、敵いませんなぁ。

なぁ・・・小僧・・・そんなやり方じゃあ・・・力士として短命だぞ

清々しい思いはあるが、鯉太郎のことを心配してそう述べる明王山。
まさにそれはその通りでありましょうが・・・それは鯉太郎自身がよく分かってることなんですよね・・・

明王山はこれで今場所は4勝8敗の負け越し。角番であるため、大関陥落が確定した。
取組前は去就に関して記者に問われた際、のんびりしたことを述べておりました。
しかし、鯉太郎によってかつての熱を取り戻した明王山。笑って引退を一蹴する。ガハハハハ。
うーむ、こうやって鯉太郎の熱に充てられる力士が増えて行ったりするんですなぁ。
そりゃ大相撲全体の人気が上がるってものですわ。

大関を感化させるほどのその取組は間違いなくあの日一番の盛り上がりだった・・・
だけどあの時私はその会場の盛り上がりがとても儚く・・・刹那的なものに感じていた。
あの時すでにアイツは。きっとアイツは終わりが近いことを知っていたんだと思う

と、不吉な言葉と共に鮫島、最後の十五日。序章が終了しました。
ここから本当の最後の十五日が始まるわけでありますな・・・ううむ。

物凄い熱量を感じるが、それと同様に寒気のするような覚悟が伝わって来る。
情熱によって残酷な未来を乗り越えることはできるのだろうか?
鯉太郎はどこまで駆け登ることができるのか・・・見守っていくしかありませんな・・・

鯉太郎と同様に、王虎や白水さんといった他の力士の状態も気になる。
十五日という一場所の期間は短いが、それら力士の存在も示されたのならば十分な量となりそうですな。
是非とも色々と知りたいところであります。



第1話:初日「鮫島-飛天翔」@  (2014年 51号)


体格差は競技におけるハンデだけでなく、競技者としてのリスクともなる
他よりも小さな体で大きな力士たちと正面から衝突する。
医者に言わせれば毎日交通事故に遭って無事な人はいませんよとのことだ。それはそうですわな・・・

視界がぼやける。手が震える。短期的な記憶障害。
どうやら診断の結果は慢性外傷性脳症であるとのこと。何だか知らないがとにかく危険そうな感じである。
衝撃による脳震盪の積み重ねが原因か・・・辛い話ですなぁ・・・

という、重いプロローグを挟んでの第1話が開始されます。
前回は序章だったので今回からが第1話。
最期の十五日の初日。九月場所の初日。この日の取組は・・・鮫島 ― 飛天翔

聞き覚えのない名前である飛天翔。しかし直ぐに紹介が入ります。
九月場所の初日から2日前。空流部屋に出稽古にやってきたのは石川・・・西前頭十二枚目の飛天翔(石川)大器である!!
なるほど。石川は関取になって四股名を名乗るようになったわけですな。
兄弟子が飛天勇でしたし、似た名前になるのは必然か。

ところで空流部屋の後ろの方がビルの様になっている。
前に仁王さんが言っていたように稼ぎで建てたのだろうか?
実際今は関取が複数いる状態ですしねぇ。稼ぎも不在時の比ではありますまい。

幕内力士になっても鯉太郎と石川の仲の良さは変わらない。
同期であり似た者同士。似た体格で似たスタイル。互いにライバル視しながら切磋琢磨してきた奴らである。
投げも身につけた鯉太郎と違い、突き押しだけでやっていっている石川と異なる部分もありますけどね。

稽古場には白水さんの姿がある。あ、顎髭・・・まだ特徴を増やす気かこの人は。
腕はもう良さそうだが、今の番付はどうなんだろうか?
髪を戻してないってことは関取にはなってないのかどうなのか。
また隣にいる爽やかな感じの男。これは・・・常松か?髷を結ってるから分かりにくいが・・・爽やかになったものだ。

本場所直前に出稽古にやってきた石川。
何かあったのではないかと椿と一緒に外へと誘い出す。
相変わらずこのベンチは悩み事を話すのにはうってつけの場所であるようですな。

何かあったときは急に鯉太郎のもとを訪れるという石川。実に親友らしい行動である。
前に来た時は女にフられて朝まで泣いていたのだそうな。おやおや。そういう興味もちゃんとあったのね。ハッハッハ。
しかしまたフられたの?とか仲良さげに並んで言い出す2人を見ると石川には同情したくならなくもない。こりゃ酷い!!

というのはさておき、石川は語り出す。俺ら本当よくやってるよな・・・と。

このデカクねぇ体で・・・あのバケモン揃いの幕内で相撲取ってんだぜ・・・
俺もお前も幕下の頃は体格差なんてクソ喰らえって逆にモチベーションになって番付上がって来たけどよ・・・
でも幕内じゃそーもいかねぇ・・・
上に行けば行くほどその体格差ってのは重くのしかかってきて・・・
必死に稽古でその差を埋めようとしても・・・やっぱソレは紛れもない事実で・・・
でもよ・・・折れる訳にはいかねーのよ・・・お前がいたからよ
俺と何ら変わらねー体で・・・いつだって言い訳どころか体格差までひっくり返しちまうような鬼気迫る取組が・・・
お前の相撲があったからよ

今まで思っていたことを口にする石川。
それはまるでもう辞めてしまう人間のもののようであった。

でもよ鮫島・・・本当にココは神か何かに選ばれた人間の棲むトコだよな・・・
運命的にそうなることが決められたような人間の・・・
俺みてーな不良上がりのソップがその末席にでも座れたんだ・・・奇跡みてーなモンなのかもな・・・
上等だろ・・・上等だよ

自分を納得させるかのようにつぶやく石川。
しかしその言葉は到底鯉太郎には納得いくようなものではなかった。

くだらねぇコト言ってんじゃねーぞ。神なんているかバカヤロー
相撲に選ばれてねーのは分かってる・・・俺もお前も・・・それでも相撲を選んだのは自分だ!
運命だ・・・?知るか。しょーもねー・・・
俺は土俵にどんな残酷が降りかかろうが・・・抗うぞ!

辞めたいなら辞めろと言い捨てて立ち去る鯉太郎。
自分は相撲より楽しいことは知らない。お前との取組もその1つだよと付け足して・・・

まあ、鯉太郎ならばそう言うでしょうな。石川もそれは理解している。
相撲より楽しいことは知らない。お前との取組もその1つ。
鯉太郎のその言葉は石川が思っているのと全く同じである。
辞めたいなどと思うはずはない。辞めたくなどない。だが・・・

視界がぼやける・・・手が震える・・・短期的な記憶障害・・・
相撲辞めないと死んじゃいますよ

冒頭で医者に宣告されていたのは石川の方であった。
ううむ。確かに石川も似た体格であるし、投げを使わない分そうなる可能性はでかいか・・・
いや、これは運が悪かったといえるのかもしれない。鯉太郎がなる可能性だって十分あるわけですから・・・

新寺部屋に戻る石川。
また変な性病にでもとか言われてるが・・・前もなった経験あるのか!?
まあ、それはさておき・・・医師の診断はさすがに親方以外には秘密にしてる感じでありますな。
その新寺親方。黙って空流部屋で稽古してきた石川を叱っている。そりゃそうよ。稽古だって危ない状態なんだろうしなぁ。

スンマセン・・・最後に鮫島とやって踏ん切りつけようと思ったんス・・・

やはりそのために出稽古に来たわけですな。
しかしスッキリ引退できるって感じではない。
どうにか踏ん切りをつけようと語ってはみたものの・・・逆にハッパかけられた感じになっちゃいましたものねぇ。

新寺親方は苦しみながらもその体で幕内まで上がったのだから立派だ。胸を張れ!と言ってくれる。
実際幕内がとんでもないところだというのは骨身に沁みたし、その想いは確かにありましょう。
しかし・・・それでも・・・相撲を辞めるとなるとそれはキツイ。相撲が大好きだから・・・

だから・・・怖いんスよ・・・体が壊れちまうことより・・・何より・・・
相撲がなくなったらどうなっちまうのか・・・
これまで俺と同じようにもがき続けた鮫島に会って・・・諦めつけようと思ったけど・・・余計に火がついちまって・・・
何より・・・やっぱアイツとの相撲はクソ楽しくって・・・
まだ・・・俺は・・・まだ俺は・・・もっと・・・もっと俺は相撲を――

涙を流し、まだと叫ぶ石川。
しかしその石川を制し、ハッキリと引退だと告げる新寺親方。
気持ちとして分かる部分はあれども・・・さすがにこれはね。本気で命に係わることであるし、許容は出来ない。
だけど、もし許容できるとすればあと一度。一番だけ。

お前らの枚数からいって・・・まず組まれることはないんだが・・・今場所は休場者が出てな・・・
まぁお前も初日にわずかだが希望があったから踏ん切りがつかなかったんだろ・・・
今場所初日の割だ・・・

そこに書かれているのは、鮫島と飛天翔の名前。
どうにか取れるかもしれない最後の一番をこの男と行える・・・わずかな希望が叶った。

バカヤロー鮫島・・・いるよ・・・神さまは・・・

鯉太郎以上に大きな絶望を与えられることとなった石川。
しかしそれでも、最後の機会を与えられて神に感謝したりしている。
僅かに希望もあったりするからより残酷さが映える感じがしてなりませんなぁ・・・
いや、実際石川にとっては有難いのでありましょうが、それならばもっと相撲を取らせてあげて欲しかった・・・

鯉太郎以外の力士の様子も知りたいとは思ったが、よもやいきなりこんな重い話でやってくるとは思いませんでした。
皆元気にいつまでも現役でって訳にはいかないのは分かるが・・・ううむ・・・
これは一層他の力士たちの様子が気になってしまいますわなぁ。
王虎や天雷は無事なようだが、田上さんや渡部はどうなったのか・・・無事でいて欲しいものであります。



第2話:初日「鮫島-飛天翔」A  (2014年 52号)


九月場所の前日。鯉太郎との一戦を最後として引退の決意を固めた石川こと飛天翔。
となればまずは恩師に挨拶
頭を下げて新寺部屋に紹介してもらった恩師。
おかげで今では大好きと言える相撲に出会うことができた。
そしてスゲーと思える奴に出会うことができた。

覚えてっかな・・・俺が序の口の頃場所見に来てくれたの・・・
あの時俺をボコボコにした相手・・・鮫島鯉太郎。
初めてアイツと会ったのは前相撲の時・・・
当時アイツは綱取り目前で角界を追放された悪タレ大関・火竜の息子ってことで新弟子にして注目されていた。
俺はそれが気に入らなかった。所詮はぬるい坊ちゃんだと思い込んでたんだ。

バチバチの時には描かれていなかったファーストコンタクト。
ヤンチャしていた石川らしく正面から突っかかっていく。

テメーか鮫島ってのは!?ずいぶん騒がれてんじゃねーか!!

そのように舐めてかかった石川であるが、鯉太郎の一睨みで二の句が継げなくなってしまう。おやおや。

ケンカじゃ一度だってビビったことのねぇ俺が、引いちまったんです。たった一ニラミ。その眼光の重さに・・・
アイツにはあの時から何があっても何を言われても土俵で生きるって覚悟がすでにあったんだと思う。
アイツの前じゃ力士としての自分の薄っぺらさが強烈に身に染みて・・・
でもそれを認める訳にはいかなくって・・・
それからはただガムシャラにアイツと張り合ってきたんです。
あの時引いちまったアイツとの差を取り戻すために・・・

似た者同士の意地っ張り。
そのような印象の石川でしたが、実は最初の時点で差が開いていたと感じていたんですなぁ。
でもそれを認めずに張り合ってついていった石川。その意地っ張りな所はやはり似た者同士といえる。

新弟子の頃、先生が俺に本物になれって言ったけど、本物ってのはアイツみてーな奴を言うんだろうなって・・・
そして化物みてーな奴らを相手に、この足りない体で俺がここまで相撲を取れたのは・・・
誰よりもアイツに認められたかったからだと思います

いい顔でそのように述べる飛天翔。恩師もかつての厄介者の生徒が立派になったと嬉しそうだ。
その鯉太郎とは土俵で何度もやりあってきたが、本当に勝ったと思ったことはないとも述べる飛天翔。

明日の九月場所初日を見に来てください。
鮫島と・・・俺の取組を・・・俺の・・・最後の・・・一番を。

覚悟を決めた飛天翔。
そして迎える九月場所。
空流の三人衆と呼ばれる鮫島、白水、常松の3人が揃って場所入りしようとしている。
この3人で空流の三人衆?仁王さんはどうしたんだろうか?
今どのぐらいの番付にいるのか分からないし、気になるところだ。
分からないと言えば白水さんと常松の番付もやはり分からない。三人揃って幕内力士だったりするのだろうか?
そうなると前から懸念していたことではありますが、付き人の数が足りてない感じですなぁ。
稽古が厳しくて人手不足に陥るのが空流部屋の困り所か。

さて、その鯉太郎の場所入りを大股開いた仁王立ちで待ち受ける飛天翔。

テメーか鮫島ってのは!?ずいぶん騒がれてんじゃねーか!!

最期の取組を行う前に最初に出会った時の言葉を口にする飛天翔。
鯉太郎がその出会いを覚えているかは分からないが、いいシチュエーションですなぁ。
何にせよあの時とは違い、飛天翔の言葉を笑顔で受け止める鯉太郎。

オマエからだけは負けねーよ。絶対!

改めて宣戦布告を行う飛天翔。
それは鯉太郎にしてみれば今更な言葉なのでしょうが、言っている飛天翔の方にしてみれば重さが違う。

飛天翔「力残すなよ!!全力でこいよ鮫島!!
鯉太郎「俺の全部をくれてやる

引退を決め、最後の取組となる飛天翔。
鯉太郎には初日であっても全力で来てほしい。
そのように考えての言葉だったのでしょうが・・・それこそ言わずもがなでありましたな。
聞きたかった以上の言葉を貰い、立ち去る鯉太郎の背中を静かに見つめる飛天翔。

思えばその背中を・・・俺はずっと追ってきたんだな・・・
だけどよ、このまま終わるなんてまっぴらごめんだ。
最後に見せてやるよ。相撲に選ばれなかった俺の・・・俺らの相撲を!!

堂々と土俵入りする飛天翔。
いよいよ鮫島最後の十五日、その初日の取組が行われようとしています。
初日から悲しみが大きいことになりそうな取組ですが・・・熱く燃え、かつ無事に終わって欲しいものであります。しかし・・・

俺は・・・この最高の一番の後に・・・アイツの抱えていた残酷を知った・・・

飛天翔の状態は命に係わるほどの重さである。
それで相撲を取れなくなったというだけで十分残酷。
なので鯉太郎の一番で致命的なことになったなんて話には・・・なって欲しくないなぁ・・・
完全燃焼しつつも無事に済ませてほしい。そう願わずにはいられません。



第3話:初日「鮫島-飛天翔」B  (2015年 1号)


枚数からいって初日に当たることのない平幕の鯉太郎と飛天翔。
しかし今場所は休場者があり、奇跡的に組まれることとなった。
飛天翔にしてみれば最後の一番。
鯉太郎はそれを知らないわけだが・・・いずれにしてもいつでも全力で戦うのが鯉太郎ですしね。この戦いもそうなるはずである。

アナウンスでも同期入門でプライベートでは仲の良い2人と語られている。
幕内力士ともなればその辺りの話も色々とTVで取り上げられたりしてるんでしょうなぁ。
しかしプライベートでは仲が良くても、土俵では毎回容赦無しの激しい取組を行っている。
そのバチバチの意地のぶつかり合いは人気の顔合わせとなっている、とのこと。
ふーむ、間違いなく大相撲人気復活の一端を担っている感じでありますな。いいことだ。

というわけで、その人気の意地のぶつかり合いが再び始まります。
立ち合い。鯉太郎のブチカマシと飛天翔の張りが激突する。
常松を一撃で失神させた飛天翔の張り・・・
さすがにその一撃で終わる鯉太郎ではない。肩で受けることでその衝撃に耐える。
とはいえこれで出足を止められ、ブチカマシは不発となったわけであります。
鯉太郎にブチカマシを止め防御に回させる・・・飛天翔の張りの凄さがいかほどか分かる話ですな。

防御に成功してもぶち当たることができなかったため、飛天翔に有利の距離を取られてしまう鯉太郎。
確かにこの距離ならば飛天翔得意の張り手が力一杯飛んできますわなぁ。堪えるしかない時間となるか・・・

飛天翔の突っ張りのヤバェとこはその回転数の速さ・・・
突き手の速さだけでなく引き手の速さがそれを可能にしてる・・・
それに加え上体を起こし突っ張ることでバランスを崩すことなく連続で張りを繰り出せる。
前に出る隙がねぇ・・・

堪えるしかない鯉太郎だが、なかなか辛い様子。
新寺親方も認める飛天翔の押し。幕内の中でも一級品と称されるだけのことはありますなぁ。
しかしもちろんその押しも一朝一夕で身に付いたものではない。

幕内になってからも押し相撲を貫いてきた飛天翔。
体がないから威力を出すために体重を前に乗せて打ってきた。
しかしそれだと上体が前に出た所をハタキ落とされることとなってしまう。
前に乗せても乗せなくてもダメ
その矛盾した問いの中で悩み、あがいて導き出した飛天翔の答え。それは・・・

1日数千回にも及ぶ・・・鉄砲
それは柱にもたれこまない鉄砲。上体は起こしながらしかし体重はしっかりと下半身に乗せた特殊な型・・・
体重を前に乗せた一撃より威力は落ちるが決して軽くはない・・・
何より息つく暇もないほどの圧倒的な手数を手に入れた。
その突きはお前の意地の結晶だ・・・
そしてその突きでそれだけ張られればどんな巨漢だろうと・・・どんなに腹が据わった相手だろうと・・・いずれ上体が浮き上がる!

新寺親方の言う通り、飛天翔の突きの威力に押されて上体が上がる鯉太郎。
慌てて元に戻そうと前のめりになる。その刹那を見逃すことなく・・・

渾身の全体重を乗せた一撃を切る!!

相手が前に出たところにカウンターで突き刺さる無情の一撃。
これは相当な威力でありましょう。
入れば200kg超えであっても沈めるらしい。しかし・・・鯉太郎はこの一撃にも耐えてみせる!!

やっぱお前は・・・どんな力士よりデカくて重てーよ・・・

バチバチにぶつかり合いながら、お互いの顔に浮かぶのは笑み。
実に楽しんでいるのが見て取れます。いい取組だ。
これが最後の取組であるのが残念で仕方がない。
新寺親方としてももっと飛天翔の相撲を見ていたかったのでしょうが・・・こればかりは仕方がない。とはいえやはり惜しい・・・

相変わらずの圧力を持っている飛天翔の突き押し。
しかし相変わらず疲れそうな技である。これを毎日行うのは相当疲労が貯まりそうだ。
無呼吸での連打でしょうし、何度もやるのは脳にダメージがいきそう。ああ、そういう部分も影響しているのか・・・?
とりあえず相撲を取っている間は手の震えなどもなさそうでありますが・・・さてさてここからどうなるのか。
万全の状態のまま戦いきって欲しいものであります。



第4話:初日「鮫島-飛天翔」C  (2015年 2+3号)


自分の距離を確保し、息もつかせぬ猛攻を仕掛ける飛天翔。
これには鯉太郎も我慢するしかない。堪えるしかない。
しかしそれは守り一辺倒というわけではない。

飛天翔に少しでも隙があればすぐに鮫島は懐に飛び込んでマワシを狙うでしょう・・・
つまり鮫島は守りながら攻め続けている・・・飛天翔も攻め続けながら守っている・・・
これは2人の無骨なまでの意地の張り合い・・・意地と意地の殴り合いですよ

そのように解説する虎城親方。
うーむ、指導するのは下手なのに分析力は高いんですよねぇ。
その感じで指導もきちんとした言葉で行えばいいのに・・・何が違うのだろうか。

それはさておき、虎城親方の言葉通り、回転の隙を見つけて懐に飛びこもうとする鯉太郎。
しかしそれに合わせるように下からアッパー気味にアゴをハネ上げる張りが飛んできた!!
そして浮いた頭に、今度は振り下ろしの張り。
そのまま土俵に叩きつけんとばかりの渾身の張りが入った。が・・・

鯉太郎(んなもんか・・・石川!!)
飛天翔(入ってんだろーが・・・鮫島・・・!!)

まともに入ったはずなのに歯を噛み締めて堪える鯉太郎。
並の一撃で倒れる相手じゃないのは分かっているが、並以上の一撃でも仕留められない。
ならばその並以上の一撃を積み重ねていくしかない!!
再び猛攻を開始する飛天翔。耐える鯉太郎。まさに意地と意地の殴り合いですなぁ・・・

まだだ・・・まだ・・・そんなもんじゃ俺は引かねーぞ・・・
全部だ・・・もっと・・・全部ブチ当ててこい石川・・・
テメーの全部を、俺の全部で受けてやる!!
こい石川ぁあ!!

全開の張りを受けながら叫ぶ鯉太郎。
ついに心の中だけではなく、口に出して石川言い出しましたな鯉太郎。四股名変わってますのに。
まあその期間が長かっただけについ昔の名前で叫んでしまうのも分からなくはないか。

上がる・・・肉が・・・血が・・・細胞が・・・噴き上がる。
まだいける・・・まだ出せる・・・コイツがいれば・・・コイツがいたから・・・
もっと・・・もっと・・・俺を・・・乗せろ・・・
乗せろ・・・何も・・・残すな・・・全てを・・・吐き出せ・・・
届け・・・届け・・・これが俺の相撲の・・・最後だ

力が籠り鼻血が噴き出す。息を止めているために苦しそうに喘ぐのを噛み殺す。
まさに全身の力を振り絞って張り続ける飛天翔。
その中でも渾身の張りが決まり、鯉太郎の上体が後ろへと逸れる。
これは・・・決着となる流れだろうか?
鯉太郎が耐えきるのか。飛天翔が押しきるのか。
全開の、最後の意地の張り合い。勝者はどちらか・・・注目せざるを得ません。



第5話:初日「鮫島-飛天翔」D  (2015年 4+5号)


土俵際まで詰まった鯉太郎に炸裂する飛天翔最後の張り。
まさに全身全霊を出し切った張り。であったが・・・鯉太郎は倒れない!!

その鬼気迫る笑顔を見れば、全て出しつくしたはずの飛天翔も動かないわけにはいかない。
最早どちらが先に倒れるかという状態だったはずだが、再び張りを繰り出さんと動き出す。

しかし飛天翔の張りをかいくぐり、懐に飛び込んだ鯉太郎。
今度こそマワシを取ることに成功した。
前傾姿勢で飛びこむように掴んだマワシ。
となれば投げに移るよりも・・・押した方が良い。
全力で一気に、それでも基本に忠実にすり足で押し・・・土俵に出来上がるのは・・・電車道

激闘であったが、最後はこれで締めることとなるとは。ううむ。
しかし決めた後は両者疲労で前から倒れ込んでしまうという有り様。
本当にお互い全てを出し切った戦いだったわけでありますなぁ・・・

最後の意地と意地のぶつかり合い。制したのは鮫島鯉太郎。
この凄まじい相撲に、満員御礼会場が歓声に包まれる。
やあ、本当人気が出るはずですわなぁ。この組み合わせの一番はさ。これがもう見られなくなるのは惜しい・・・

あのどーしようもなかった悪ガキが・・・本物になりおったか

恩師も認める飛天翔の成長。
相撲に出会うことができて、鯉太郎と出会うことができて本当に良かった。

そして飛天翔は最後に。最後に土俵で吠える。
それは全ての力士に向けた言葉。

どうだ・・・この歓声・・・出来るか、オメーらに!!
出来るかここまで!勝てるか俺らに!!
相撲に選ばれちゃいねー俺らに、勝てるか!!!
かかってこい。クソッタレどもがー!!!

敗者であるはずの飛天翔が勝者であるはずの鯉太郎を助け起こし、吠える。
実に威勢のよい感じであるが、鯉太郎に投げかけた言葉は吠えた言葉とはまた異なる。

約束しろ鮫島・・・お前は・・・お前は必ず・・・相撲を振り向かせろよ・・・

吠えた時は俺らにと言っていた。
しかし最早自分に次はない。
だからこそ、お前はと限定した言葉となってしまう。ううむ、残酷な話ですなぁ・・・本当に。

鯉太郎もいつ引退してもおかしくないギリギリの状態で相撲を取り続けている。
飛天翔の言葉は嬉しいが、果たして相撲を振り向かせることができるかどうか・・・
ともかく、次の取組に期待したいところであります。
次も全力で戦うこととなるんでしょうなぁ。大変だが、その道を進むと決めたからには仕方がない。情熱で超えろ!!



第6話:初日「鮫島-飛天翔」E  (2015年 6号)


バチバチの相撲に沸き返る観客たち。
これからも飛天翔の取組に期待しているのがよく分かる。しかし・・・

最後の取組を終え、飛天翔の引退は他の部屋の力士たちにも伝えられることとなる。
鯉太郎には飛天翔の兄弟子である飛天勇関から聞かされることとなりました。
最高の取組後に知る、飛天翔の抱えていた残酷。聞かされた鯉太郎の衝撃はいかばかりか。

しかし飛天勇関は礼を述べる。ありがとうな。お前相手に全てを出し切れたからアイツは止まれたと。

じゃなけりゃあのバカは文字通り死ぬまで土俵に上がり続けただろう・・・ありがとう。

涙で鼻を真っ赤にしながら弟弟子のためにお礼を述べる飛天勇関。
この人もいい兄弟子でありましたなぁ。まだ前頭四枚目と弟弟子たちに詰め寄られてきているのが残念でありますが。

強かったっスよ・・・今までアイツと取ったどの取組よりも・・・今日が一番・・・

石川との過去を思い出しながらそう答える鯉太郎。
教習所からずっとライバルとして親友としてやってきた2人。
土俵だけではなく、私生活でも楽しそうにしていた一面があるようで微笑ましい。
その石川と・・・引退前にもう一度相対する鯉太郎。ここはあくまで笑顔で・・・!!

覚悟の引退であったが泣き濡れ悲嘆に暮れての別れは似つかわしくない。
どこまでも意地っ張りな2人である。悲しみは共にあろうが、それをひた隠すのもまた意地の張り合い。
いやしかし、お互い意識してたのは知ってたけど稽古も含めての勝敗数・・・のみならずジャンケンの勝敗まで覚えてるのかよ。

どこまでも気の合った2人。
途中で抜けることとなった石川であるが、やり残したことはもうないと述べる。

お前に全部ぶつけたからよ。もう土俵には何もねぇ

綺麗な眼をしてそう述べる石川。最後に悔いのない取組が出来て本当に良かったですなぁ。
試合中、試合後に倒れようなこともなくて本当に良かった。養生して欲しいものであります。

立ち去る石川。その背中に任せろ!と一声述べる鯉太郎。
相撲に選ばれなかった2人。その相撲を必ず力尽くで振り向かせて見せる。
鯉太郎のその決意を背中に受け・・・振り返ることなくそのまま立ち去る石川。
改めて言葉を受けなくても鯉太郎ならばきっとやってくれるという信頼があるのでしょうか。

この日、幕内力士飛天翔大器は引退届を提出。それが受理された。

ついに石川の引退が正式に決まった。残った鯉太郎はその分も頑張らなければならない。ならないのだが・・・!!

数多の力士たちが己の全てを賭けて土俵に上がり、数多の力士たちが残酷に散る土俵。
これはその残酷な土俵に1人抗い挑み続けた相撲に選ばれなかったとある力士の一場所の物語である

初日を白星で飾った鯉太郎。
しかし親友の引退。更にその親友と同じように手の震えが見受けられる鯉太郎。
これはやはり同じ脳への衝撃による影響なのだろうか・・・そうであるならば致命的でありますが・・・ううむ。
まあ、実際鯉太郎のスタイルは石川以上に頭部への負担が大きいわけですし、そうなる可能性は高いでしょうが・・・ううむ・・・

とはいえまだそうと決まったわけではない。
石川から熱をもらって思わず身体が震えてしまっただけかもしれない。
その後の鯉太郎の表情がアレですが・・・希望は持っていたいと思います。

希望といえば最後のナレーション。とある力士の最後の物語ではなく一場所の物語とされている。
ふうむ、これはこの場所が最期とは限らないのではなかろうか?
鮫島としての最後の一場所であるならば四股名をこれから変えればいいわけですし・・・希望もなくはないですな!!
そのように考えて行かないと見てられませんよ。本当に。



鮫島、最後の十五日 2巻


第7話:二日目「鮫島-宝玉光」@  (2015年 7号)


今回から二日目の話。とはいえまだ日としては初日という状況であります。
二目目の対戦相手は大海一門田ノ中部屋西前頭十一枚目の宝玉光直也
右の上手を取っての豪快な吊り落としで初日を快勝で飾っている。ふむ、今回初登場のキャラだがどのような人物か。

なぜまだ幕内下位にいるのか不思議と言われる男。
虎城親方に言わせればムラがあるとのこと。
さらにあの体がありながらこんなとこでまごついていてはダメでしょうとのことである。
うーむ、さすがに大横綱の言うことは違うな。この人ならばこんなとことか言っちゃっても問題ない面はある。

ファンにサインをせがまれてしっかり応えている鯉太郎。何だか可愛い
土俵では鬼のような感じなのに降りればこの可愛い様子。そりゃー人気出ますわ。そりゃーそうよ。

さて、ここで空流部屋の面々が登場。
大吉はまだ序二段か。いや白水さんも最初は苦戦してたし、序二段になれてるだけ頑張ってると言えるかな。

そして大吉に常ちゃんと呼ばれているのは常松
どうやらきっちりと幕内に上がっているらしい。というか鯉太郎よりも上の東前頭六枚目につけているという。ほほう。
さらに四股名を松明としたらしい。松明と書いてまつあかり、か。
父親と同じ漢字を名乗りつつ父親と同じ読みにはしない。何とも複雑な常松の心境が見て取れますなぁ。

実際金にどこまで拘っているのかは分からないが、いやそれなりに拘ってはいるのだろうがここでその発言とは。
自分のキャラというものをしっかり理解している常松。これが分析力の高さと言うやつなのか・・・!!

常松はその分析力を活かして対戦相手の研究を行っている。鯉太郎もそのデータには助けられているそうな。
うーむ、常松も空流に欠かせない人物となっているようで何だか嬉しいですなぁ。

そんな常松が金銭抜きにして頭に来ている人物がいる。
鯉太郎の明日の対戦相手である宝玉光のことだ。ほう・・・

帰り道で偶然見かけるのはその宝玉光。
ああ、田ノ中部屋はあの寺井がいる部屋でありましたか。
ふむ、鯉太郎は昔宝玉光の付け人をやっていたことがあるのか。へぇ。
少人数の部屋では同門の部屋から付け人を借りることがあるという。なるほど、そういう仕組みがあるのか。
空流部屋は付け人の数足りないんじゃないかと危惧してましたが・・・なるほどなぁ。借りればよいわけかー。

それはそうと鯉太郎の話題。
宝玉光曰く、あそこのクソ親方は逃げるのだけは上手いとのこと。なんだそりゃ?
随分な物言いであるが、そのような言われ方をされるようなことがあったのだろうか・・・

ついでに宝玉光の口からあの男の名前が出てくる。そう・・・蒼希狼だ!!
BURSTでは全く出番がなかった蒼希狼の存在がここで示唆された!!
しかも王虎と天雷に並ぶ存在として挙げられているという。ほほう・・・これは登場が楽しみですなぁ。

黄金世代と呼ばれる鯉太郎の世代。
しかし石川は引退。鯉太郎も休場を重ねつつ何とかやっている状態である。
ふむ、そう考えると王虎や天雷はもっと上の番付にいそうな感じですな。渡部はどうなったんだろうか・・・

寺井も鯉太郎の同期であるがさすがに幕内には上がれていない。頑張ってはいるんでしょうけどねぇ。
身内であろうが容赦ない宝玉光。寺井に向かって才能ないからさっさと辞めちまえなどと言い放つ。何ともはや・・・
暴力的な兄弟子のようだし、寺井も大変ですなぁ。なのでここは代わりにこの男が怒るしかありますまい。

笑うな寺井・・・
恥ずかしくねーんスか宝玉光関・・・弟弟子が育たねぇのは兄弟子の責任・・・器量の無さでもあるでしょ・・・?
俺は兄弟子に恵まれたからこの体でも幕内で相撲取れてんだ。アンタは・・・ハズレだ

BURSTまではほとんど会話することもなかった寺井。それを庇う鯉太郎。
同期であり同門。出稽古で一緒になったこともあるし、結構関わりは深い感じですし、この関係も不思議はないかな?

その出稽古の場で仁王さんのブチカマシを受けて口にキズを残すこととなった宝玉光。
ははあ、その目立つ傷はその時のものでありますか。因縁ですなぁ。
当時の鯉太郎はボコボコにできたみたいですが、仁王さんとは圧倒的に差があったと。ふむ。

土俵で語るのが空流の流儀。そう語る仁王さんは実に格好いい。
それを受けて、今度は俺にボコボコにされるんだと挑発する鯉太郎。いい喧嘩の売り方ですなぁ。

逃がさねーぞ・・・テメーんトコのあのクソみてーにはな・・・

取組前から因縁で火花をバチバチに散らしている2人。
うーむ、勝敗という面では不安のない相手だが・・・何だか気になるなぁ。誰が逃げたというのだろうか?
幕内版のブタフグと思える宝玉光。すっきり勝ってほしいがその前に色々な話が出てきそう。
BURSTから今に至るまでの話が語られそうで楽しみだが・・・何だか怖くもなってきましたぞ。ううむ。



第8話:二日目「鮫島-宝玉光」A  (2015年 8号)


いきなりの回想。まだ鯉太郎が幕下だった数年前の回想となります。
ああ、やっぱりBURSTの頃から数年経過しているんですな。

当時の仁王さんはまだ幕内に上がったばかりの十両。
しかしその強さは他の十両力士を寄せ付けぬものがあった様子である。
まあ、勇み足の連発で勝ち星は伸びなかったみたいですけどね・・・一場所に3度も勇み足かますアホがおるか!!

このやらかしてしまう辺りが仁王さんらしいといえば仁王さんらしい。
基本が出来てないってことだからさすがに笑って済ませていいものかとは思いますけども。

とはいえ、他者からバカにされるとムッとしてしまうの事実。
声を掛けてきたのは空流部屋と同じ大海一門である田ノ中部屋の親方、田ノ中稔。
言うだけあり、今場所田ノ中部屋の宝玉光は十両優勝を果たしているのだそうな。ほう。

イヤミだけ言って去っていく田ノ中親方。嫌な感じのハゲですな。
例え同じ種類のハゲであっても白水さんは性格のいいハゲですよ!!ていうかいつまで剃ったままでいるんだろうか。

すまねぇな・・・恥かかせちまって・・・

自身の星に関してはまだまだ先があると落ち込まずに前を向いていられる仁王さん。
それでも自分の不甲斐なさで親方が、部屋がバカにされるのは許せない様子である。
たまにこういうしっかりした表情を見せると格好いいと思えるんですよね・・・弟弟子たちもビックリしておるわ。
そんなしおらしい仁王さんの言葉を受けてこう述べる空流親方。

別に俺は鼻が高くなりたくて親方やってんじゃねぇ・・・
相撲はよ、稽古しねぇと強くはなれねぇ・・・だがどんなに必死に稽古しても負けちまうこともある・・・
生きるってのはよ、上手くいかねぇことだらけだ。
器用に生きられればそれにこしたことはねぇ・・・だがそうもいかねぇ奴もいる。
俺はよ・・・お前らのような上手く生きられねぇ奴らの力になりたいだけだ。
空流部屋は・・・不器用な奴らの希望でありてえんだよ

実にいいことを言ってくれる空流親方。
将来有望であるかどうかよりも厄介な奴らを集めてしまっている感じのある空流部屋。
それでいて皆親方には感謝しているように見える。いい育て方をしているのが感じられます。
オヤジと呼ばれるのが実にしっくり来る感じですわ。

そんな言葉を受けたからか、やけに気合が入っている仁王さん。
自らを鍛えるだけではなく、弟弟子に胸を貸しまくっている。それはこのような考えがあったからだ。

白水・・・鯉・・・常・・・お前らは1年以内に関取になれ!俺が引き上げる!!
俺は横綱になる!!

ハッキリとそう述べる仁王さん。おぉ・・・!!
泣いて喜ぶオヤジってのも見物だろ?などと言いだす仁王さん。
いいですねぇ。その意識。悪ガキだからこそ逆に親孝行を口にし出す感じが何とも言えない。
そしてその言葉が口だけではないことは聞かされている弟弟子たちにはよく理解できている。

「俺が引き上げる」という頼もしさ・・・この世界にいて「横綱」という言葉を軽々と出せる豪胆さ・・・
いつもはおちゃらけてる兄弟子の言葉は、俺たち弟弟子を十二分に沸かせた。

実にいい雰囲気の空流部屋。
一方の田ノ中部屋はというと・・・何とも微妙な雰囲気。
稽古もせずにだらけた宝玉光の面倒の方が頑張って稽古している下位力士たちよりも優先される。
いくら実力主義、結果が第一の世界とはいえこれはなぁ・・・そりゃ寺井も何だってんだよと愚痴りたくなる。
それぐらいだったら親方が動けばいいんじゃないかとすら思える。うーむ。

"アタリ"と"ハズレ"の差が凄い。こればっかりは寺井に同情してしまいますわ。
しかしそのアタリである仁王さんは現在どうなっているのだろうか。
回想では格好いいことを言ってくれたわけだし、実際に3人を関取に引き上げたと思われる。さて、その本人は・・・?
何となく嫌なフラグが立っている感じがして怖いですなぁ・・・無事でいて欲しいものですが・・・心配です。



第9話:二日目「鮫島-宝玉光」B  (2015年 9号)


兄弟子の横暴さに我慢できず、相撲を辞める田ノ中部屋の力士。
付け人の仕事で満足な稽古も出来ず、それであの仕打ちではそういう気持ちになるのも止むを得ない。のだが・・・

おい・・・ちょっと待たんか。ウチは力士が足りないんだぞ・・・
お前が辞めたら宝玉光が困るだろ・・・

一体何を言っているのだろうかこの親方は。
余りといえば余りにダメすぎる・・・
意を決して辞めることと、横暴について直訴した結果がこれではなぁ。絶望感しかない。

王虎が入門した頃の虎城親方も似たような雰囲気はあったが、それでもそこには猛虎さんのような存在がいた。
田ノ中部屋には宝玉光以上の存在はいないし、これはもう改善の余地はなさそうですなぁ・・・

さて、回想の更に回想。回想始めから更に2週間前のこと。
田ノ中部屋の親方から空流親方に弟子を貸して欲しいとの電話がかかってくる。
自分のところの弟子が辞めたことで付け人が足りなくなったわけですな。
それで同門の空流部屋から活きのいい若いのを借りたいと。ふむ。

とはいえ宝玉光の横暴さは他の部屋にも知れ渡っている。常松としてはまず行きたくなかろう。
大吉にしても、まず空流以外に行ったらストレスで死にますよと自己申告。
空流も厳しくはあるけど尊敬できる兄弟子たちばかりだから頑張れるってことなんでしょうなぁ。

んじゃ俺が行きますよ

そう答えたのは鯉太郎。もしかしたら少しでもプラスになることがあるかもしれないと考えての返事である。前向きだなぁ。
しかしその結果、宝玉光の夜遊びに付き合わされ、無茶苦茶な酒の飲み方をさせられたりするという・・・ううむ。
どうでもいいけど鯉太郎もプリン食べるんですな。好きなんですな。

夜中遅くまで飲み歩く宝玉光。それに付き合わされる付き人たち。
こんなのでは翌日は稽古になるはずもない。
が、つぶされたにも関わらず普段通りの稽古を行おうと頑張っている鯉太郎。ほほう。
というか付け人になるためには部屋に泊まり込みの形となるんですな。

今日は休めばいいじゃないかという寺井たちの意見に、それで弱くなったらどーすんだよと返す鯉太郎。
うむ、鯉太郎にしてみればそれが何よりおっかないという話でありますな。どこまでもストイックな・・・

逆に宝玉光は稽古に出て来ても胸を貸すどころか四股や鉄砲を数回だけで終わりにしてしまうという。うーむ。

薄い稽古内容・・・付け人としての雑務の多さ・・・毎日のようにある夜の連れ回し・・・
その過酷さにある者は出世を諦め・・・ある者は相撲自体を辞めていき・・・
田ノ中部屋の環境は宝玉光のためだけにしか回っていない劣悪なものだった。
ただ、そんな空気が変わりつつあった・・・
鯉太郎の稽古に対する姿勢は相撲に餓えていた田ノ中の力士たちを引っぱり出していた

ほほう。むしろ鯉太郎の存在が田ノ中部屋にプラスに働くこととなりましたか。
しんどいと思いながらも、次の場所はいけそうな気がする。爽やかな顔でそう語る寺井。いいですねぇ。
だがそんな空気を気に入らずぶち壊そうとするのが他ならぬ宝玉光であった。

兄弟子に1年以内に関取になると約束した鯉太郎。そのためには1分1秒だって無駄にはできない。
そう述べる鯉太郎を嘲笑う宝玉光。鯉太郎のみならず、約束した仁王さんまで罵倒してくるその態度は・・・さすがに我慢ならんな。

なら寝言かどーか試してみるか?カマボコ野郎

ギラついた表情を見せる鯉太郎。さすがの悪ガキでありますな。
しかし、その鯉太郎のマゲに小指を突っ込み・・・右の小指だけで釣り上げてしまう宝玉光。そしてそのまま投げ捨てる。

いくら鯉太郎が小兵であっても100キロは超えている。
その身体を小指一本で投げ捨てるとは・・・腐っても関取ということか。
体格といい、才能だけは凄いものがあると認めざるを得ませんなぁ・・・
だが、そのせっかくの才能を腐らせるような性格。それが通じるほど角界は甘くないはずである。
それを証明していって欲しいものであります。そう願います。



第10話:二日目「鮫島-宝玉光」C  (2015年 10号)


宝玉光の圧倒的な腕力を体験した鯉太郎。
ウソだろ・・・という想いを抱きつつ、嬉々として挑発する。ああ、やっぱり!!

せっかくだからもう少し稽古つけてけよと述べる鯉太郎。
兄弟子ならば弟弟子に稽古つけるのも仕事である。主張としては間違ってはいない。
そして宝玉光に遠慮して何も出来ない、言えないのはおかしいとも主張する。おぉ、言っちゃいましたな。

しっかりしてくださいよ親方・・・弟子は宝玉光だけじゃねーだろ・・・
アンタもテメーのことだけでいっぱいになる位の器なら、せめて弟弟子の邪魔すんじゃねーよ。

部屋の者が言えずにいたことをズバリと言ってのける鯉太郎。
他の部屋から弟子を借りるとこういうこともあるんですなぁ。
この親方からしてみれば都合が悪かろうが、部屋にしてみれば有難い話である。

ともあれ、今の鯉太郎の目的は宝玉光との稽古。
まだ幕下である自分としては上の人間との取組は少しでも経験しておきたい。
そういった想いで一気に突撃。
懐に入り込み、おっつけで腕を殺して一気に押そうとする鯉太郎。
これで怖い右腕の力を封じようとの判断であるが・・・それだけでは無理だった様子。

懐に入った鯉太郎の頭を左腕で抱え、引き崩す。
そして隙間が出来たところで右腕を鯉太郎の胸に当て・・・一気に引きはがす!!
うーむ、瞬時の判断でこれが出来るとは。パワーだけではなくスピードと判断力も凄いと言うことか。

そして一番すごいのはやはりその残虐性
鯉太郎の髪をひっつかみ、部屋の板壁が割れるぐらいの勢いで顔面からブチ当てる宝玉光。
本当に殺す気かよと言いたくなる。これはさすがの親方も血相を変える。
自分の部屋で自分の所の力士が殺人事件なんて冗談じゃないですものねぇ。本当にそのぐらいにしか考えてなさそうで困るわ。

とはいえそれで折れる鯉太郎じゃないというのが怖い所。
これだけの目に遭って起きながらもむしろ嬉々として挑もうとしている。
そんな鯉太郎にもう無理だからやめろと諭す寺井。

持って生まれた資質が違うんだよ・・・腕力だけじゃねぇ・・・スピードも・・・判断力も・・・全てが並じゃないんだ・・・
人の半分以下の稽古量で幕内まで上がっちまうような人だ・・・相手にすればするほど自分がみじめになるだけだぞ・・・
どんなに相撲が好きだろうと・・・どんなに必死に稽古しよーと・・・才能ってのは平等じゃねぇんだ

出世を諦めつつも相撲を続けている寺井の言葉。重い。
才能は平等じゃない。そう述べて諦めるしかない。
けれども相撲は好きだから続けている。何とも悲しい状態である。
そんな寺井にかけるのは相撲に愛された才能は持たされなかった鯉太郎。

バーカ・・・だからたまらねーんじゃねーか・・・
そんな奴らが・・・コイツみてーな化け物がゴロゴロしてんだ。
己の全てをブチ当てても勝てるかどうかも分かんねぇほどの・・・
生まれ持った体・・・生まれ持った才能・・・足りねー部分を手にするために稽古すんだろ・・・

そう述べる鯉太郎。それに対し、努力すればそいつらに勝てるなんて言い切れないと返す寺井であるが・・・

負けるとも言い切れねーだろ

うむ、その純粋なまでのひたむきさ。これが鯉太郎の才能でありますわな。
そこに空流の引くことを知らぬひたむきさが合わされば・・・不可能ではないかもしれない。

とはいえ、今はまだ敵わない。ボロボロにされる鯉太郎。
さらに兄弟子にたてついたということで付け人は早々にクビにされる。
まあその部分はそれで良かったんじゃないですかね。
しかし自分から貸して欲しいと言っておきながら、随分な言い草ですなこの親方も。
本当、親方レベルでどうにもならないのではなぁ・・・部屋の空気を変えるのは難しいか・・・



第11話:二日目「鮫島-宝玉光」D  (2015年 11号)


早々に田ノ中部屋の付け人をクビになった鯉太郎。
ガイにされすぎてまともに歩くことも出来ず、寺井の肩を借りてどうにか空流部屋に帰還。
その鯉太郎を総出で出迎える空流部屋の面々。こりゃ寺井もビビるわ。

鯉太郎はただの稽古、いつもと同じだと述べるが、さすがにそれだけのようにはとても見えない。
そんな鯉太郎を情けないと煽りつつ、次は俺が行ってきますよと述べる常松。静かな怒りがカッコイイ。
もちろん弟弟子をやられたとあっては白水さんも黙ってはいない。
付け人として行くとはとても思えない殺気を放っております。ガルルル。

そんな中、うちの看板背負って行った鯉太郎が不甲斐ない姿を見せて帰ってきたことを嗜める仁王さん。
こういう役割の人も大事でありますわな。それだからこそ寺井も庇うことが出来る。

スゲー男っスよ鮫島は・・・俺なんて怖くて何も言えなかったってのに・・・
何度やられても何度も立ち上がって・・・いくら止めても止めなくって・・・
最終的にサジを投げたのはウチの宝玉光でしたからね・・・

やはりただボコボコにされただけでは無かった様子。
このしつこさはさすがというより他ありませんなぁ。
しかしそれでも、そのしつこさでも一度も宝玉光に土をつけることは出来なかったという。

俺は・・・まだまだ弱え・・・

まだ幕下の時だというのに、幕内力士相手に歯が立たず悔し泣きをしてみせる鯉太郎。
まあねぇ、今は空流の看板を背負って関取になろうって決めているわけですからねぇ。
それを考えればこの結果。まるで歯が立たなかったという結果は仕方がないで済ませられるものではない。

もっと・・・もっと・・・強くなんねーと・・・
これじゃオヤジに・・・何1つ恩を返せねーじゃねーか・・・

仁王さんの言葉に頷いている鯉太郎。自身の出世以上に恩返しと言う目的が強くある様子。
それは白水さんも常松も同じであるんでしょうな。うむ、まだまだこれからだ!!
勇み足王・・・いや、仁王さんもビシビシ鍛えてくれますし、まだまだ成長できますよ!うん。

弟子たちがいい話をしている中、親方は怒りを携えて田ノ中部屋に乗り込んでいた。
今にも殴りかかりそうな様子であったが、田ノ中親方の言い草を聞いているとそんな気も失せる。
田ノ中親方は宝玉光を横綱にだってなれる逸材と、角界の宝と考えているようであるが・・・

確かにお前んとこの宝玉光の素質は認めるよ・・・その素質だけで幕内まで上がったのを見ても分かる・・・
だがこれ以上上へはいけんよ・・・
覚えとけ田ノ中・・・どんなに優れた種であっても、育て方を間違えりゃ花は咲かねぇんだぞ

正しくその通りでありますな。
今のままではその素質も伸びて行くことはありますまい。
実際、長いこと前頭でくすぶってる感じになるみたいですしねぇ。

久しぶりの川さんの活躍と熱い所を見せた空流親方。
BURST時は吽形さんのことを引きずっていたのか、熱い所が見られず残念でしたからねぇ。
今回はこの調子で行って欲しいものであります。

そんな親方を本当に総出で出迎える。というか心配でやってきた空流部屋の面々。
鯉太郎まで大人しく寝ておらず、大吉に背負われたまま駆けつけている。いい運動になってるじゃないか大吉。

もし俺が今の鮫島の立場だったとしても・・・ウチじゃ誰も俺のことなんて気にかけねーだろーな・・・
怖ー奴ばっかだけど・・・スゲーいい部屋だな、鮫島・・・

そのようなことを考える寺井。
うーむ、羨ましいと思うなら寺井も空流の子になっちゃたらどうよ?
まあ、相撲は簡単に部屋を移ることはできない仕組みのようですし、難しいでしょうけども・・・
でも、もし田ノ中部屋が不祥事で潰れるようなことがあれば、弟子は他の部屋に移る可能性もある。
同門であるし、寺井が空流部屋に・・・なんてこともひょっとしたら・・・!?

実際、前に鯉太郎にやらせたような無茶な飲ませ方とか危ないですよね。
あれでもし付け人がヤバイことになったのなら責任問題である。
稼ぎ頭の宝玉光がそれでいなくなれば田ノ中部屋はどうなるか・・・
ふむ、これは鯉太郎との取組後が楽しみかもしれませんなぁ。



第12話:二日目「鮫島-宝玉光」E  (2015年 12号)


回想中ではありますが、前回の回想から時は流れました。
そして誕生したのが空流の関取軍団!!

十両 鮫島鯉太郎
前頭 白水英樹
十両 松明洋一
関脇 仁王剛平

仁王さんの言葉通り、3人共見事に幕内になった様子。
どうやら一番乗りは白水さんだったみたいですな。
骨折でしばらく休場していたはずなのにこの結果はさすがという所か。

そして仁王さんは何と関脇。空流親方の最後の位は小結だったはず。
関脇はその小結より上。親方越えを果たしたわけでありますな仁王さん・・・それだけでも立派だ。

とはいえそこで満足する仁王さんではない。目指すは横綱!!
そして今日の一番はその横綱を目指すには避けて通れない、打ち倒さなければならない相手である。

今・・・頂点に君臨し続け、角界史上最強と言われる横綱・・・
それを打ち倒すと期待されている力士・・・今場所綱取りのかかる大関、天鳳

おお、ついに新寺部屋の大関が登場するわけでありますか。待っていた!!
これは新寺親方も空流親方も注目の一戦でありますわなぁ。

一時の仁王さんは平幕と十両を行ったり来たりしてたりと危ない様子だった。まあ主に勇み足のせいなんでしょうが。
その辺りはどこまで是正できたのかは分からないが、ともあれ関脇にまで登ったのは確かである。
この勢いでいければ大関に土をつけるのも不可能ではないかもしれない。

しかし会場は天鳳の綱取りへの期待で満ちている。
空流部屋だからとかそういう理由ではなく、期待の度合いが違う様子。
うーむ、まあでも、アウェーは慣れているでしょうし、観客の声援で押し潰されるような仁王さんじゃないですよね。うん。

心配すんな!テメーらはしっかり見とけ!!
ちょっくら世界を変えてくるわ

やっぱり仁王さん。決めるところをしっかり決めてくれる。格好いい兄弟子であるなぁ。追いたくなる背中だ。
生活態度とかには色々と述べたい部分もある白水さんであるが、その強さには信頼を置いている。

大丈夫だ・・・あの人ならいける・・・
いつも笑えねー冗談ばっか言ってるけど、笑えねーウソは言わねぇ人だ・・・

空流部屋はいい信頼関係が築かれていますなぁ。
実際、仁王さんの言葉通り鯉太郎たち3人は関取にまで引き上げられている。
となれば信じないわけにはいきますまいて。相手がどれほどの怪物・・・怪人天鳳であろうとも・・・!!

神に今一番近い男、2メートル180キロという巨体の持ち主である天鳳。
単純にその体躯だけでも他の力士を圧倒するものがある。凄いな。
だがそんな天鳳にも怯まず下ネタをぶつける仁王さん。さすがというか何というか。
でもそんな仁王さんを相変わらずオモシロイナ〜で受け止める天鳳も何だか面白い。結構いい人っぽい感じかな。

天鳳もまた仁王さんとの一番を楽しみにしていたらしい。
その馬力からまともに組んでくる相手は仁王さんぐらいしかいないからとのこと。なるほどね。
強すぎる力を受け止めてくれる相手がいる。嬉しいことですわな。
そこで傲慢にならず、そういう相手がいることを喜ぶ辺り、天鳳はやはりなかなかの人物である様子。

嬉しそうにいつも言ってたよ・・・逃げないで戦ってくれるのは、横綱とそして仁王だけだと・・・

怪人天鳳にも認められる仁王さん。
まあ、パワー勝負は仁王さんの土俵ですものね。譲れるはずはないか。
日本人力士でありながらパワーで外人力士を上回る。
その親方の夢のためにも引いてはいられないのである。

そういった想いを乗せてぶつかる仁王さん。
そのブ厚い壁をブチ抜いて見せる・・・その勢いでぶつかるが・・・やはり大関の壁は厚い!!
序盤は劣勢となりそうな仁王さん。そこからどのように巻き返していくのか・・・楽しみな一番であります。



第13話:二日目「鮫島-宝玉光」F  (2015年 13号)


仁王さんの突進を正面から跳ね返す大関の圧倒的パワー。
まだまだ仁王さんはこっからだと信じている鯉太郎であるが・・・その差は歴然であるように見えてしまう。うぬぬ。

落ち込むことはねぇさ・・・綱を取ろうって人間の・・・これが力だ・・・
全てにおいて・・・格が違う

天鳳はただの大関ではない。今場所は綱を狙おうという上り調子の大関だ。
その相手に正面衝突はやはり厳しかったのだろうか。仁王さんの意識が消えかけている。
そこに容赦なく得意の左上手の形で組んでくる天鳳。油断もなさそうである。

寄る天鳳に対し、力なく下がる仁王さん。そんな様子を見ながらも・・・あの仁王さんがと信じられずにいる弟弟子たち。

こんなもんじゃねーだろがい!!押せ・・・押せゴリラー!!

必死に怒鳴る3人。うむ、やはり気持ちの入った声援には力を与える効果があるようですな。
突如力を取り戻した仁王さん。ガップリと組み合って天鳳の寄せを止めてみせる。これには新寺親方もビックリだ。

アハッ・・・ヤッパコイツイイナ〜〜

当の天鳳もビックリはしているがそれ以上に嬉しそうな様子であります。
ふむ、この嬉しさはまだまだ余裕があるという理由もありそうですな。
やはり馬力は1枚上手なのか、構わずに押し始める天鳳。さすがの怪物である。
だが、そんな劣勢な仁王さんの状態を目の当たりにしても冷静に見守っているのは空流親方。

大丈夫・・・行け・・・仁王・・・
信じろ・・・何千・・・何万と・・・踏んだ四股を・・・
足の裏が石の様になるほど続けた摺り足を・・・稽古を・・・
骨格が違うから・・・筋肉が違うから・・・だから日本人は勝てない・・・
人種を理由にして仕方ないと諦めちまう今の風潮が俺は大嫌いなんだ・・・
力で来るなら力で捻じ伏せろ・・・お前ならそれが出来る。
そんなスケールのデカイ日本人力士を・・・俺はお前に夢見てきたんだ

そう、バチバチの初期から。阿形さんの頃からそのような夢を見てきていた空流親方。
その夢が間違いでなかったことを今こそ証明する時が来たのである。
親孝行を果たすためにも・・・弟弟子に立派な姿を見せつける為にも・・・力で負けてはいられない!!

物凄い気迫で押し返す仁王さん。
しかし、天鳳。引いたかと思いきや、そのまま上体を逸らし・・・仁王さんの体を持ち上げる!!
あの状態から・・・あの体勢から・・・なんで吊り上げられるのか・・・
土壇場で信じられない展開を見せる。これがこのクラスの力士の底力という奴なのか・・・

とんでもない力を、技を見せる天鳳。
対してここで仁王さんの頭に浮かぶのはそれとは逆の基本。空流親方の言葉が蘇ってくる。
強くなるためには基本が大事。基本ってのはそれ以上は削ぎ落とせない強さの根本なんだ。

脇を締め・・・股を割って・・・腰を落とす・・・基本の型こそ・・・相撲の神髄だ

一度浮かされたはずなのに、焦ることなく基本の型を取り戻すことで体勢を立て直す仁王さん。
うーむ、これはこれでなかなかの力技でありますなぁ。

磨き抜いた基本。積み重ねてきた稽古。それが今試されている。
空流部屋はいい稽古をしておりますからなぁ。こういうところでこそその結果が発揮されるのでありましょう。

しかし摺り足か。それがしっかり出来ていれば勇み足にはならないはずなのであるが・・・
関取にまでなれたのは摺り足を重ねた結果なのかもしれませんな。もう勇み足王とは呼ばせない!むしろ呼ばれるな!!



第14話:二日目「鮫島-宝玉光」G  (2015年 14号)


力で強引に仁王さんを浮かせた天鳳。
それに対し力で強引に引きつけて戻す仁王さん。
静かだが豪快な力と力の勝負。これは盛り上がる取組です。

土俵中央にて互いに引き付け合いの硬直状態となる。
互角の勝負が出来ているのは凄いが、もう腕の感覚がなくなってきている仁王さん。
それでも・・・弟弟子の声援が聞こえてくるのだ。背中を押してくるのだ。無様なマネはできない。ダサイ背中は見せられない

そろそろオヤジは間違っちゃいねーってことを見せてやんねーといけねーだろ・・・

弟弟子のために、親方の為に。部屋という家族の為に張り切る仁王さん。前へと出る!!
形としては外四つの天鳳の方が不利。低い体勢で押し出されればいつかは腰が浮く。
腰が浮いたのならば決め時である。押し込め・・・!!!

見てるか・・・オヤジ・・・今日は旨い酒呑め・・・

勇み足なども警戒したが、それよりも何よりも相手は怪物でありました。
そのまま押していけそうな体勢だったのに、すぐに投げへと移行してくる天鳳。
これが綱を取ろうとする者の執念。神になろうとする者の執念か。しかし・・・!!

それをも・・・超える

投げられている最中に天鳳の頭を掴み、逆に投げを決める仁王さん。
得意の徳利投げをここで決めてみせるか・・・!!

綱を狙う怪物の天鳳を力で喰って見せた仁王さん。素晴らしい。格好いい。
これこそ空流親方が夢見た外国人力士の力相撲を力で捻じ伏せる日本人力士の姿でありますな・・・

敗れた天鳳としてもここまでやられては仕方がないといった感じであります。爽やかな人ですなぁ。

本当に・・・最高の孝行息子だよ・・・お前は・・・

土俵でガッツポーズは決められないので代わりに空流親方が渾身のガッツポーズ。良い感じですなぁ。
久方ぶりに終わり方も爽やかな取組を見ることが出来た気がします。

この場所、大関・天鳳は仁王戦後波に乗れず綱取りは失敗に終わり、綱取りというその難しさを痛感した・・・
だがこの場所、未来への横綱への希望を抱かせる仁王という1人の日本人力士が現れたのである

普段は不吉な言葉で締めることの多いナレーションも今回は希望に満ちた内容となっている。おぉ。
しかし仁王さんが本当に横綱になれたのかどうかは定かではない。
何となく怪しげな雰囲気が漂っているので早く知りたいところではありますが・・・ううむ。
それにしてもすっかり宝玉光の影も見当たらなくなりましたな。サブタイトルはこれでいいのか!?



第15話:二日目「鮫島-宝玉光」H  (2015年 15号)


回想中であるが、前回から更に時間が経過。
空流部屋では大海一門の連合稽古が行われている。
こういうことは普段面倒くさがる宝玉光であるが、親方に頼み込まれて渋々といった形で出席。
他の弟子を減らすような真似ばかりしてるからこうなるんですわな。

というわけで、しつこい鯉太郎に食い下がられている宝玉光。
鯉太郎のブチカマシに胸を貸し続けていたらそりゃ真っ赤にもなりますわなぁ。

仁王さんは来場所大関取りを狙うところまで来ているらしい。ほう。
そこからがまだ長いとはいえ、横綱への道が見えてきておりますな。

鯉太郎や白水、常松も関取となり、新弟子も増えてきている。
となれば稽古部屋はまだしもあの住み込み部屋ではどうにもならない。
ということもあり、近々増築予定という空流部屋
仁王さんが言ってたでっかいビルを建ててやるという言葉が現実になるわけですな・・・感無量。
しかし貧乏部屋じゃない空流部屋というのも不思議な感じがしたり。

現役の大関を抱える新寺部屋に、大関取りを狙う空流部屋。
大海一門の中でも勢いのある2部屋でありましょう。
それに比べ、同じ大海一門でも肩身の狭そうな田ノ中部屋。
田ノ中親方曰く、うちの宝玉光が本気になればいつだって三役はおろか直ぐに横綱だとのことであるが・・・うーむ。

何度転がされようがしつこく食い下がる鯉太郎。
これだけの数の力士が見ている前で挑発されたのではプライドの高い宝玉光は引くことができない。
となれば思う存分稽古が出来るってものでありますな。うむ。これは稽古だ。寺井の言うような復讐話ではない。
というか、宝玉光にガイにされたのは2年前のことでありますか。ようやく具体的な年月が出て来ましたな・・・!!

2年のうちに関取となった鯉太郎。
しかし宝玉光との距離はまだまだある様子。だが決して屈することはなく前へ出る。

俺はただ知りてーだけだ・・・あれからどの位強くなれた
あの時感じたもって生まれた資質の差をどこまで埋められたのか。

どこまでも純粋に己の力を磨くことを考えている鯉太郎。
それだからこそ、新たな道が開けるものなのかもしれない。
立ち合いの構えが良かったのかどうなのか。ピシッと型に嵌ったような感覚。
それにより、宝玉光のあの巨体をハジキ飛ばすことに成功する鯉太郎。ほほう・・・!!

直後キレた宝玉光に絞め殺されそうになったりはしたが、この稽古で何かを掴めた感じがありますな鯉太郎。
一方、番付的に格下相手にキレちゃった宝玉光。貫目の下がり方はもう誤魔化しようがありませんなぁ。
しかし空流部屋の面々に混じって取り押さえに来ている石川の姿が嬉しい。やっぱりいい奴だ。いい奴だったよ・・・

さて、宝玉光を三下と罵る仁王さん。
どうやらここであの因縁の場面へと繋がることになりそうですな。
疵をつけられ、空流部屋への因縁が生まれて・・・そろそろ回想も終了しそうな雰囲気。
うむう、初日の倍はかかりそうな2日目でありますなぁ。



鮫島、最後の十五日 3巻


第16話:二日目「鮫島-宝玉光」I  (2015年 16号)


仁王VS宝玉光!!
しかし結果は既に明らかにされているため、最初の1コマで決着。ゴン!!
ブチカマシ1発で大量出血の宝玉光でありました。口程にもない。

これほど差があるのかよ・・・平幕と三役ってのは・・・

同じ幕内であっても格の違いというのは産まれる様子。
確かに田ノ中親方の言う通り、素質だけならば宝玉光の方が数段上だった。
碌な稽古もしないで幕内まで言っているのだからそれは窺い知れる。
しかしそこから上も努力なしでいけるほど甘い世界ではない。

大関に手が届こうとしている仁王さんに対し、未だ平幕の宝玉光。
田ノ中親方もすっかりやつれた感じでありますなぁ。ハッハッハ。
しかしそれでももう宝玉光にすがるしかないって感じなのが痛々しい。

次の場所で復讐を誓う宝玉光。それに対し、土俵で語るのが空流の流儀だと答える仁王さん。
普段はおちゃらけているが、決める時は決める兄弟子で本当、頼もしい。

今回も宝玉光にボコボコにされた鯉太郎。
しかし以前とは違い、一度引かせることに成功している。少しずつ強くなっていることが実感できている。いいことです。

仁王さんの大関取りも見えて好調の空流部屋。大関も出れば超一流部屋の仲間入りでございます。ホホホ。
新弟子もどんどん増えていくことになるんでしょうなぁ。
基本的に稽古が厳しい部屋だからどれだけ残るかは分からないけど。

それはそうとその仁王さん。空流親方に呼ばれて稽古場に。
するとそこにいたのは・・・マワシをつけた空流親方の姿が!!おぉう。

さすがに元力士。引退して痩せたとはいえ、なかなかいい身体をしている。
とはいえ仁王さんに胸を貸すだけの力が残っているはずはない。
それでもあのナマイキなボーズがどれほど強くなったのか肌で感じてみたいなどと言われては仁王さんも断れない。
他ならぬ親方が請うのであれば断れない。

まあ、結果は火を見るよりも明らかでしたけどね。吹っ飛ばされて大の字になる空流親方。おやおや。
しかしとても満足そうであります。

デッカイ花咲かせやがって・・・こんな嬉しいことはねーな

言った通り、吽形さんの分も空流を支え、引っ張ってきた仁王さん。
親方の番付を超え、大関取りにまで迫っている仁王さん。
親方を喜ばせるためにという想いは人一倍強い仁王さん。うーむ、良い弟子を持てて親方冥利に尽きますなぁ。

土俵で語るのが力士・・・これは先代から俺が受け継いだ信念だ
大丈夫・・・お前ならきっと大丈夫だ。

先代から受け継いだ意志はしっかりと仁王さんにも受け継がれている。
そして仁王さんの言葉は鯉太郎も口にしている。
こうやって意志が受け継がれていくのを見るのはよいものですねぇ。しかし・・・

新寺親方の話では別れるまでオヤジはずっと上機嫌で呑んでいたらしい・・・
きっとオヤジにとって最高の・・・最高の夜だったんだと思う。
そんな最高の夜を・・・最悪の朝が消したんだ・・・

何となく嫌な予感はしていた。
してはいたけど・・・これは・・・これは本当に受け入れ難い・・・

いや待て。まだそうと決まったわけではない。
飲酒運転した親方が事故っただけかもしれない。
それで誰かを轢いてしまったのだとしたらそれはそれで最悪の朝ではあるが・・・

宝玉光の以前の言葉と合わせると今後の展開が見えて来そうですなぁ。ううむ。



第17話:二日目「鮫島-宝玉光」J  (2015年 17号)


冷たい雨が降りしきる中、行われるのは空流旭の葬儀
ああ・・・やっぱりそうなってしまうのか・・・・・・

家族は勿論、弟子たち部屋の者や関係者、友人たちが涙を流す。
その中には吽形さんの姿もあった。本当に久しぶりの登場だというのにこれでは素直に喜べない・・・

オヤジは・・・あまりにも突然に・・・あまりにも理不尽に・・・俺たちの前から消えたんだ

危険ドラッグによる暴走に巻き込まれての事故死。
これは本当、理不尽と言うしかありますまい。
空流親方の無念もさることながら、残された人たちの悲しみはいかばかりであろうか。

空流には部屋付きの親方がいない為、空流親方がいなくなると同じ一門のどこかに吸収されることとなる。
つまり空流部屋そのものがなくなってしまうわけだ。ううむ・・・
部屋がなくなっても俺らはオヤジの息子だと述べてはいるが、無念さは無くならないでしょうなぁ・・・

どの一門に引き取られるかについては新寺親方が真っ先に手を挙げる。
縁も深いし、新寺親方であれば確かに任せられる感じでありますわな。

さて、本当の父親を亡くしてしまった椿。さすがに打ちひしがれている様子である。
そういった気持ちを理解できるのは、やはり同じく父親を亡くしている鯉太郎でありましょう。
いや、鯉太郎にしてみればこれでオヤジを失うのは2度目となるか。

ガキの頃父親が死んで、俺は1人っきりになっちまって・・・
スゲー悲しかったけど・・・必死に泣くのを堪えて・・・泣いちまったら不安に喰われちまう気がして・・・
1人強がって・・・弱ートコ見られねーように・・・必死でツッパって・・・
今回も・・・やっぱ・・・どうしようもなく辛くて悲しいけど・・・あの時とは違ってて・・・
兄弟子がいて弟弟子がいて・・・オヤジの下で築かれた家族がいる
同じ辛さを分かち合える家族がいる。血は繋がらなくても絶対に揺るがねぇ絆がある。
これからもずっと・・・お前は1人じゃねぇから

父を失った悲しみは大きいが、残してくれたものは大きい。
その絆に支えられることで、椿も元気になってくれるといいですなぁ・・・

悲しみに包まれている空流部屋。朝からずっと引っ切り無しにOB達が姿を見せている。
どれだけ空流親方が慕われていたかが分かるというものです。
そんな空気の中に響き渡る仁王さんの声。オヤジは明るい酒が好きだったろーが!いつまでもしみっタレてんじゃねーぞ!!と。
何やら既に吹っ切れた感じの発言でありますが、切れているのはそこだけではなかった。
姿を見せた仁王さんの頭には・・・髷がないっ!!

力士が髷を落とすということは引退を決意したこととなる。
となればやはり空流部屋を受け継ぐという流れでありましょうか。
大関取りを目前とし、横綱を狙える可能性もあったこのタイミングでの引退。これは無念でありましょう。
しかし仁王さんの表情にそういった無念さは見られない。やけにサッパリした感じで妙に格好良く感じる。
髷を落とすなんて勢いで出来るものでもないし、考えた末の行動なんでしょうなぁ・・・

後ろには吽形さんの姿もある。吽形さんの思いも受け継いで仁王となった以上、辞めるには吽形さんの許可が必要でありましょう。
そういった意味からも納得ずくの行為であることは見て取れます。
久しぶりに揃った阿吽がこういう場であるというのは残念なことでありますが・・・
ともかく、親方となるであろう仁王さんの言葉を待ちたいと思います。



第18話:二日目「鮫島-宝玉光」K  (2015年 18号)


雨の降りしきる中、空流親方の墓石の前で佇む阿吽。
そして仁王さんが懐から取り出すのは鋏。髷を落とす際に用いる鋏である。

文句は言わせねーぞ・・・オヤジ・・・
あっちでゆっくりおかみさんと酒でも呑みながら、安心して見てろ・・・

そう述べ、自らの手で一気に髷を落としてしまう仁王さん
おぉ・・・まさか自分の手で落すとは・・・
まあ、落としてもらえるはずの親方がいなくなった以上、他の誰にも手を入れさせたくないという気持ちは分からないでもない。
でもどうせなら一心同体の仁王の片割れである吽形さんに落としてもらいたかった気はしますなぁ・・・

ヤマ行って引退した、白水さんや鯉太郎も頭の上がらない兄弟子であると説明される吽形さん。
まだ新弟子たちにはヤマに行くという意味が伝わってないのか。
というかそういう言葉が普通に出るマコ姉が染まり切っていると見るべきか。
何はともあれ、その吽形さんにも仁王さんがいきなり髷を落とすのは予想外だった様子。
まあ、決心の方は理解していたみたいですけどね。

俺はこの部屋を継いで親方に・・・空流になる

やはりそう来ましたか。今この部屋で親方になれる資格があるのは確かに仁王さんだけでありますしね。
しかし大関取りを目前に、横綱に向かっての道が見えてきたこのタイミングで引退というのは・・・何とも。
本人はもう納得している。空流親方の為に相撲を取ってきた部分が大きいわけですし、それならばという意識は大きい。
だが、楽しみにしていた弟弟子たちにしてみれば・・・納得は出来ない。
自分達の為に道を誤らせたのではないかという思いも生じてしまう。

相撲好きでしょ!?何より大好きでしょ!?
相撲を・・・大好きな人間が・・・相撲を捨てちゃダメだって・・・

仁王さんに掴みかかりながら涙する鯉太郎。
その涙に空流親方の言葉――空流部屋は不器用な奴らの希望でありたいという言葉が思い出させられる。

バカヤロウ・・・捨てるんじゃねぇ。捨てたくねーんだ・・・
お前の言う通り俺は相撲が大好きだ。力士に誇りを持っている。
だがよ・・・その好きな相撲よりも・・・俺はオメーらが・・・この部屋が・・・大事だ
オヤジの守ったこの場所を・・・お前らアホな弟たちとカワイイ妹の居場所を・・・
これから出会う上手く生きられねぇ奴らの居場所を・・・守らねーとよ・・・
オヤジの続きは俺が受け継ぐ。俺の続きはお前らに託す
守っていこうぜ。オヤジの残した空流部屋を・・・

仁王さんの言葉には感銘させられる。
それは誰よりも空流親方を慕い、空流部屋を想ってきた男の言葉であると実感させられる。
鯉太郎たちも仁王さんがこの重い決断をするということは本当は分かっていた様子。

1人・・・誰よりも狼狽していた仁王さん・・・
あの時に仁王さんはオヤジの跡を継ぐ・・・俺たちを守る覚悟をしてたんだと思う。
俺らは・・・その覚悟に・・・覚悟で応えようと思った

親方を亡くした衝撃は大きい。
しかしそれで燻って空流の灯を消すようなことがあってはならない。
覚悟を決めて空流の意志を受け継いでいく。それがこれからの戦いでありますな。

というわけで、翌日。このことは新聞にも大々的に取り上げられることとなる。
仁王さんも大関取りを目前とした期待の日本人力士でありますし、知名度はそれなりに高い。
その存在が電撃引退して親方襲名である。話題になりますわなぁ、これは。
それにしてもそういう話がある度に新聞にコメントを寄越す猪木は逞しいというか何というか。

相撲協会としては大きな痛手と考えている。そうでしょうな。
しかし新寺親方と理事長である虎城親方が快諾することで仁王さんの空流襲名は問題なく行われることとなりました。ほう。

前までの小物っぽさが残っていた虎城親方の様子はどこへやら。
全責任は俺がとるとまで言ってくれるこの頼もしさ!!
BURSTで息子の王虎共々一皮むけた感じでありますな。嬉しいことです。
この頼もしさならば理事長に就任できたのも頷けるというものです。いいデレ方だ・・・

仁王さんの引退は残念であるが、家族の絆はいっそう強固となった。
ここから良い調子で成長していって欲しいものであります。うむうむ。



第19話:二日目「鮫島-宝玉光」L  (2015年 19号)


亡くなられた空流親方も言っていた新空流部屋がついに完成した。
デカイビルが建ち、もう狭い貧乏部屋とは言わせない風情である。

しかし半分は前の空流部屋が残ったままとなっている
さすがに仁王さんらしい。今までの稽古場を失くしてしまうのは忍びないという想いからか。
空流の歴史を継ぐ者としての心意気の表れと言えましょう。

そういえば空流の名を継いだのだから仁王さんが今は空流親方になるわけなのか。
何というか表現的に紛らわしいですな。上手い言い方はないものか・・・
白水さんや鯉太郎にしても仁王さんを親方と呼ぶのにはまだ慣れが必要な様子。
うむ、確かにオヤジというよりは兄貴分であるし、アニキという表現がしっくりくる。ピンとくる。
と思いきや、よもやのハァちゃんの最上級という意味があったアニキ。角界じゃそんな意味があったのかよ!!

ちょっと意外な話はあったものの、ともかく挨拶回りを行う2人。
新人の親方として各部屋の親方に挨拶をしなければいけないわけですな。
そしてそれは勿論田ノ中部屋にも行われる。同門の部屋だし、まあ当然のことではありますか。

基本的には気弱な田ノ中親方。大関取りを目前にして引退した仁王さんを気遣っている。
とはいえ己の決断に後悔はしていない仁王さん。真っ直ぐに前を見据え、人生にたらればはないと述べる。
うーむ、宝玉光を甘やかした結果、部屋の存続も危ぶまれている田ノ中親方には耳の痛い話ですな。
いや、そもそも己の道を狂わせた親方に対し恨みの一つも述べないことを不思議がっていたりする田ノ中親方。何ともまあ。

弟子との信頼関係を築いて来れなかった田ノ中親方としては仁王さんの気持ちは分からない様子。
そしてその育て方を誤った宝玉光の登場。予想通りというか何というか、仁王さんを煽りだす。
曰く、相撲から逃げただけ。何もしないで手に入る親方株に飛びついただけ、とのこと。
好き放題抜かしてくれますが、未だ幕下下位で燻ってる人間がそれを言ってもなぁ・・・

親方が都合よく死んでくれてまで抜かしだす宝玉光。
これにはキレる。真っ先に鯉太郎が。
そういう感情を爆発させやすい身内がいるからこそ、仁王さんも冷静でいられる様子。
勿論その内心は冷静ではいられないと思いますけどね。

だからこそ言葉を叩きつける。
空流の流儀として、やるのならば土俵の上。そして果たすのは鯉太郎。
今はまだまだ話にならない実力であるが、必ず宝玉光の上を行く。俺がしてみせると仁王さん。

もし・・・コイツが咲かなかったら・・・それは俺の責任だ
その時まで・・・戯言は吐けるだけ吐いとけ・・・

仁王さんの言葉を受けてピキピキとなる宝玉光。
たっぷり煽ったつもりが逆に煽り返されてしまって、実にざまあない状態に。
これで後は心置きなく土俵でブッ飛ばすだけでありますな・・・!!

とはいえ、その決着がつくのはここから3年後のこととなるらしい。
ようやく具体的な年月が提示されましたな!!
鯉太郎が十両になるまでに2年。そしてそこから3年。
最後の十五日の現場所はBURSTから5年以上経過した時点の話となるようである。
それだけの歳月があれば色々と変化もありますわなぁ・・・
まだ登場していない渡部や田上さんといった面々がどうなっているのか。楽しみでもあり、不安でもあり、ですな。



第20話:二日目「鮫島-宝玉光」M  (2015年 20号)


長い回想からようやく現在へと復帰しました。
空流親方が亡くなられてから3年。ようやく宝玉光との対戦の日がやってくるわけであります。
白水さんや常松としてもそろそろアイツはしっかり黙らせないととの意識が高い。やる気だねぇ。

ただ・・・一筋縄ではいかないですよ。言っても長いこと幕内にいる男・・・
ムラがある力士と言われてるが、俺が初めて対戦した時の感想は・・・右上手を取った宝玉光は強い・・・

認めたくはないが、そこは認めざるを得ない様子の常松。
その感想は白水さんも同じであるらしい。実際初顔合わせでは右の上手を取られてズタボロにされたそうな。ふむ。

番付が上だからか、鯉太郎ほど休場しないからか、2人は何回か宝玉光と戦ったことがあるらしい。
その中では勝った取組もあるのだが、初顔合わせ以外は明らかに力を抜いているとのこと。
1度勝ったんだし、本気出せばいつでも勝てるんだぜという気持ちでいるらしい。何というか、セコイ話だなぁ・・・

ただ・・・逆に言ったら、初顔合わせでは本気で向かってくるってことですよ・・・
元仁王の空流部屋・・・それに加えて鯉太郎さんは元付け人・・・宝玉光にとって負けられない取組なのは間違いない。

最初に勝てば勝ち逃げできると考えている鯉太郎。
そこで全力でかかって来るのであれば、そこを叩き潰せばもう言い訳のしようもないという話になる。
どうでもいいが、常松。鯉太郎さんと呼ぶようになってるんですな。ふむ。

何はともあれ、新たに親方となった仁王さんの下、地獄のような稽古を積んできた鯉太郎。
ここで負けたら親方の想いを、覚悟を否定することになってしまうと考えている。

先代からもらった鋼の基礎に・・・現親方が強さの肉付けをしてくれた・・・明日は俺の全部でぶつかる

意識を高め、一丸となって向かおうとする空流部屋。
一方の田ノ中部屋は・・・いつの間にか力士は宝玉光と寺井くんの2人だけとなっていた。おやおや。

三段目で頑張っている寺井くん。同期に触発され、やる気にはなっている。頑張っていただきたい。
そんな姿を見ながら、どうしてこうなったのかを考える田ノ中親方。
雨宮こと宝玉光が入門した時は活気のある部屋だった。
宝玉光自身も綺麗な目をして、素直な若者であったらしい。
しかし田ノ中の光という意味で宝玉光の名を与えられ、親方から特別視されてチヤホヤされた結果・・・その光は濁っていった。

遅ればせながら教育しようとした兄弟子たちを逆にボコボコにする宝玉光。
猛虎さんのように相撲で示すならともかく、拳で返り討ちにする辺り・・・やっぱり力士とは呼べない存在ですなぁ。
才能が凄いのは認めるが、それにあぐらをかいた結果どんどん光が濁っていく。何ともはやである。

鯉太郎との戦いを明日に控えた宝玉光。それなのに呑みに行くなどと言いだす。
付き人の時の鯉太郎も言ってたけど、せめて弟弟子の邪魔だけはしないでくださいよ、本当にさ・・・
意見した寺井くんを殴り倒す宝玉光。
そんな宝玉光に対し、寺井くんは問う。ずっと聞きたいことがあったと。

アンタは何で相撲取ってるんですか・・・!?相撲・・・好きなんですか・・・!?

その問いに関しての返答は、くだらなくて考えたこともないとのこと。ううむ・・・
まあ、普段の態度を見てもねぇ。とても相撲が好きな奴とは思えないですからねぇ。

殴りかかる宝玉光を体を張って止める田ノ中親方。
おっと思ったら、その口から出てくるのは宝玉光の体を心配するもの。

お前にもしものことがあったら終わってしまう・・・田ノ中は終わってしまう・・・

育て方を誤った。その過ちに気付いていないわけではないと思われる田ノ中親方。
しかしもうこうなってしまったら宝玉光に縋るしかないといった様子である。
部屋をダメにした原因を切り捨てることもできず、縋るしかない。これでは到底未来があるようには思えない。

終わってんだよ・・・とっくに・・・

寺井くんの言葉が何とも切ない。
まったくもって寺井くんこそ、どうしてこうなったのかと言いたい立場でありましょうなぁ。
簡単に部屋を移籍することの出来ない角界の決まりの被害を一身に被っている感じである。

鯉太郎が宝玉光をブッ飛ばすことで何かが変わるのだろうか?
変わって欲しいものでありますが・・・どうなることか・・・



第21話:二日目「鮫島-宝玉光」N  (2015年 21+22号)


取組が決まってから長いこと回想を行っておりましたが、ようやく九月場所の二日目。
その分、因縁はしっかり認識できた宝玉光との取組であります。

3年が経過し、大吉や他の新弟子たちも髷が結えている様子。
それら付き人たちと共に現れる空流の三人衆。
昔は空流部屋といえばガラの悪さが特徴であったが、今は普通に人気になっている感じ。いいですなぁ。
いいけど、白水さんの応援の仕方が何だか酷い。まあその髪型は狙ってやってる部分もあるから仕方がないんだけども。

宝玉光対策のためにボロボロになっている関取3人。
鯉太郎に関してはいつものことだろと言われる辺り、さすがというか何というか。
何にしてもその特訓のおかげで宝玉光攻略の糸口が掴めた様子。ほほう。

さて、今日も解説は元横綱・虎城こと虎城親方が務める様子。よろしくー。
この日の序盤の注目は鮫島―宝玉光と述べる虎城親方。

何年も逸材と言われてきた宝玉光ですが・・・定着してるとはいえいまだ幕内下位・・・
ここで鮫島に負けるようではもう上がり目はないでしょうな・・・
そして鮫島も今の宝玉光に負けるようでは、これからの取組もキビシーでしょーな・・・

相変わらず厳しい意見の虎城親方。
いやまあ、宝玉光に関しては本人の言う通り優しいくらいかもしれない。
あれだけの素質と体格に恵まれておきながらこの体たらくではなぁ。
必死にやってるわけでもないってのがまたイカン。

鯉太郎については逆に期待から厳しい意見を述べている感じがする。
まだまだ期待を持って見ていたいでしょうし、虎城親方の想いも受けて鯉太郎には頑張っていただきたい。

言われるまでもなく全力でぶつかる気合の鯉太郎。
現親方である仁王さんにもブッ倒して来ますと宣言。何があっても負けられませんな。

土俵に向かう鯉太郎の前に現れたのは寺井くん。
本来なら宝玉光の世話をしてないといけないはずのだが、もういいんだと述べる。

俺・・・辞めることにしたからよ・・・
これ以上田ノ中なんかにいても仕方ねーしよ・・・

頑張って、堪えて、我慢して続けてきた相撲を辞めるという寺井くん。
宝玉光とは違い、相撲が好きだったからこそ、耐えてやってきたんでありましょうなぁ。
しかしもう未来はない。田ノ中部屋がもう終わってしまっていると実感してしまっている以上・・・続けるのは困難である。

俺も・・・空流だったら。空流部屋だったら・・・お前みたいに関取になれたのかな・・・

泣き言を述べる寺井くんに対し、知らねーよと突き放す鯉太郎。テメーはテメーだろとのこと。

確かに俺は空流だったからここまでこれたのかもしれねぇ・・・だけどいつだって言い訳言ってる余裕はなかったよ。

部屋が悪かったのはその通りですが、空流に入って伸びるかどうかは当人次第でありますわな。
取組前の集中している時に泣き言を聞かされるのもアレですし、突き放した言い方になっちゃうのも仕方がない。
というか、鯉太郎だとこれ以外の言い方は思いつかないか。変な慰め言う子でもないしなぁ。

鮫島・・・俺はお前になりたかったよ・・・

教習所で圧倒されてからずっとそんな気持ちを抱いていたのでしょうか、寺井くん。
同期に憧れを抱くという感覚はどんなものであったことか。
何にしても悲しみを抱えて辞めることになるのは本当に悲しい・・・
いや、まだ正式に辞めたわけではないし、可能性はあるかもしれない。
鯉太郎が宝玉光をブッ倒すことで何かが変わるかもしれない。それを待って欲しいものであるのだが・・・ううむ。

さて、付け人の仕事を放り出されて怒りまくりの宝玉光。
田ノ中親方に対し、テメーの教育がなってねーからだろと当り散らす。どの口で言うのか。
まあ確かに教育がなってないから宝玉光がこうなったわけではありますが。

ともあれ、気合は溢れるほどに漲っている宝玉光。
仁王さんにつけられた傷の借りを弟子の鯉太郎で晴らす気マンマンである。
歪んではいるが、強さは本物。
気合の入り方はどちらも充分であるが、負けられない意識の高さは鯉太郎の方が上といった感じ。
因縁の取組・・・いよいよ始まります。



第22話:二日目「鮫島-宝玉光」O  (2015年 23号)


虎城親方も注目の一番と目する鮫島―宝玉光の取組。
因縁の相手とようやくぶつかれる鯉太郎。
片や宝玉光も、鯉太郎自身はともかく空流部屋――親方となった仁王さんには恨み骨髄。激しい戦いとなりそうだ。

心配そうに様子を伺う田ノ中親方。
その横に並び、あの人は負けませんと語るのは・・・寺井くん。

ここは才能が物言う世界ですから

辞めることを決意し、付き人の仕事も投げだした寺井くん。
しかし宝玉光が負けるとは思っていない様子。
鯉太郎という憧れを抱いた存在が才能に押しつぶされるを見るのに耐えられない。そう思ったのも辞める原因の一つなのだろうか。
逆に考えれば鯉太郎が勝てば引退を取り消す可能性もあるわけかな・・・?

さて、宝玉光対策は万全の鯉太郎。
常松のデータによれば宝玉光が負けた取組はまず立ち合いを制されているとのこと。
逆を言えば勝った取組はほぼ100%と言っていいほど立ち合いを制している。
そして右上手を取られた相手の勝ちはほぼない

左のカチ上げから崩し、相手の重心が左にヨレたところから得意の右上手を取る。これが奴の型・・・必勝パターンです。
まずはブチカマシで立ち合いを制する。勝つためにこれは必須となります

ブチカマシで立ち合いを制する。鯉太郎の得意分野でありますな。
白水さんが言うように、それだけ聞けばいつもと同じように思える。
しかし本気の宝玉光は侮れない。鯉太郎であってもそれは簡単ではない。
ふーむ、この辺りの発言を聞いているとやっぱり常松も成長しているなぁ。憎い相手でも侮りは見せていないか。

ムラのある宝玉光であるが、この取組は本気で向かってくる。
その気迫は虎城親方も驚くほど。うーむ、さすがに才能は抜群のようですなぁ。
しかしその圧力を受けてもなお、いやむしろそれだからこそ笑みを見せる鯉太郎。

それでいい・・・潰す気で来い・・・
3年前はコイツに手も足も出なかった・・・コイツだけは許せねー・・・
でも・・・今はそれより・・・
誓ったあの日から・・・どこまで・・・どれだけ・・・強くなれたのか・・・

それを試してみたい。強くなったことを証明したい。
相手が本気であればそれを強く示すことができるというわけですな。
実に鯉太郎らしい。その様子に笑みを浮かべる虎城親方。相変わらずいいデレを見せてくれる。

さすがにまだまだ現役でもやっていける仁王さん。親方になってからも頻繁に胸を貸している様子。
自身の取組に体力を取っておく必要がない分、より胸を貸して弟子を鍛えることができていたのかもしれませんな。

そんな親方の指導を受けて強くなった鯉太郎。
その立ち合いの雰囲気は本気となった宝玉光をも呑み込む。
気迫で後れを取り、立ち合いも遅れることとなった宝玉光。そこを襲う鯉太郎のブチカマシ!!
激突の瞬間ピシッとはまったこの感覚は3年前の合同稽古で見せた強烈な当たり・・・!!

その強烈な当たりを受けて後ろに吹き飛ぶ宝玉光。
どうやら鯉太郎、3年間でこのブチカマシをものにしていた様子。
あの時ですら怯ませることができたわけですし、成長した今なら吹き飛ばすことも可能ってわけですわな。

しかしそのまま土俵外までってわけにはさすがにいかない。
ならばと追撃のブチカマシを決めようとする鯉太郎。
それに対しハタキ込みを狙う宝玉光。上からハタけば確かにそのまま下に落ちそうでありますが・・・

よし!

予定通りという様子の常松。ここでハタキに来るのもお見通しだったわけですか。
となればその対策も充分でしょうし、しばらくは安心して見ていられれそうですな。
データ通りにハマっているうちに勝負を決めて欲しいところであります。



第23話:二日目「鮫島-宝玉光」P  (2015年 24号)


立ち合いを制した鯉太郎に対しハタキを仕掛ける宝玉光。
しかし背中を叩かれても落ちない鯉太郎。
素早く足を前に差し込むことで無効化したのだ。

読み通りだ・・・立ち合い宝玉光は当たり負けするとかなりの確率で引き技にくる・・・
楽に勝とうとする悪癖・・・突くべきところはその甘さ・・・
懐に入り左を捻じ入れ腕を返し、宝玉光の最大の武器"右"を殺す・・・
あとは一気に・・・持って行く!!

ここまではまさに常松の読み通りの展開。
一気に宝玉光を押し出さんとする鯉太郎!!
押されている宝玉光の構えが何となくスタイリッシュに見えなくもないですな。表情は全くスタイリッシュじゃないが。

ともかく、土俵際まで一気に追い込む鯉太郎。
宝玉光も真っ青な顔をしながら意地でどうにか残す。
これは決まりかとも思ったが、残されたことでまだどうなるか分からなくなってきた。

体格の差ですよ・・・スピードが乗っていれば勢いで持って行けるが、
止まってしまえば体が優り懐も深い宝玉光に流れが移る。

そのように解説する虎城親方。
まさに鯉太郎が一番苦労しているのがその体格差でありますわな。
あの小さな体で押し出すには立ち合いからスピードに乗せて一気に行くしかないわけでして。
こうなってくるとじりじりと押し返されるのも仕方がない。と、思いきや・・・

怖かねーだろ・・・そんな薄っぺらいもん・・・
テメーには先代からもらった・・・オヤジからもらった最高の足腰がある

仁王さんが語り、虎城親方も感心する鯉太郎の足腰。
宝玉光の体格の圧力も押し返し、前に出る!!

強さの根本は基本・・・基本こそ相撲の神髄。
昨日今日で出来る強さじゃねぇ・・・だから空流の相撲は、アイツの相撲は重いんだ。

小さな体からは考えられないほどに重い鯉太郎の相撲。
その正体はこれまでに積み重ねてきた基本の重さにあったわけですな。
決して諦めることなく未来を信じて磨き抜いてきた体。
これこそかつて吽形さんが語っていた三年先の稽古というものでありましょうか。実ったな・・・!!

自身の成長を実感しているのか、苦しそうにしながらも笑みを浮かべる鯉太郎。
それに対し宝玉光。コレは何なんだと信じられない様子。おやおや。

何なんだ・・・コイツ・・・あの鮫島だろ・・・あのクソ弱ー鮫島だろ・・・
分からねぇ・・・何がどーなってる・・・何なんだ。何なんだ・・・

大混乱の宝玉光。一度となくガイにし、侮りきっていた相手に押されている。信じられないのも無理はないか。
その宝玉光の醜態に、いち早く反省の色を見せているのは田ノ中親方。
脳裏に思い浮かぶのは2人の空流親方の言葉。親方としての責任を遅まきながら感じている様子。本当に遅かったよ・・・

沈む田ノ中親方。一方、その隣に立つ寺井くんは納得が行かない様子。

ふざけんなよ。何だそれ・・・何見せんだよ・・・
才能だけが絶対の世界なんだろーが・・・だから俺は辞めるんだぞ・・・
この程度で折れちまうのかよ・・・みっともねー姿を見せんなよ・・・
頼むよ・・・この程度の男に今まで尽くしてきたなんて思わせないでくれ・・・

宝玉光の横暴についていけず、次から次へと部屋から去っていく弟子たち。
借りてきた付け人もすぐに逃げて行ってしまう。
そんな中、直系の弟弟子として最後まで残っていた寺井くん。
お前だけは田ノ中から逃げるなよと語る宝玉光。珍しくその言葉は命令ではなく、頼みにしている感じが出ていたという。

仕方ねーよな・・・どーしよーもねー部屋だし、どーしよーもねー兄弟子だけど・・・家族だから・・・
ムカツクけど・・・やっぱアンタが負けるトコは・・・見たくねーんだ・・・
頼むよ・・・最後まで強さだけは尊敬できる兄弟子でいてくれよ。
頑張れよ・・・アンタは特別な人間なんだろーが!!
頑張れよ!クソッタレー!!

涙ながらに叫ぶ寺井くん。
うーむ、思わぬ方から泣かせに来ましたよ、コレは・・・

相撲部屋と言う家族の姿を描いている二日目。
それは空流部屋だけではなく、田ノ中部屋のことも同様であった様子。
恵まれた家族ばかりではない。どーしよーもない家族も世の中には多くある。
それでも家族の絆を感じ、むかつきながらも負けるなと吠える寺井くん。うーむ、複雑な心境ですなぁ・・・

寺井くんの叫びは宝玉光の耳にも届いていることでしょう。
となれば不肖の兄弟子は今更ながらに何か思ったりもするのだろうか。
精神的に立ち直られると厄介ですが、さてさてどうなりますか。



第24話:二日目「鮫島-宝玉光」Q  (2015年 25号)


やはり寺井くんの叫びは耳に届いていた宝玉光。
特別な人間という言葉で思い出す。自分の右は誰にも負けない特別なものである。そう親方が言ってくれたことを。

前日に寺井くんから問われた質問、何で相撲を取っているのかという質問にはまともに返せなかった。
それはすっかり忘れてしまっていた気持ち。
本当に、最初は親方に褒められるのがただただ嬉しかったのだ
その気持ちもいつしか忘れてしまい・・・

いつもの宝玉光であれば、このまま諦めて土俵を割ったことでありましょう。
しかし敗れたくない相手、認めたくない現状に抗いだす。この動きは常松の想定にない。

ほう・・・やっと殻を破るか宝玉光・・・

さすがにその辺りの見極めは鋭い虎城親方。いい笑みだ。

無理矢理に右を取りに行く宝玉光。
力ならば上でありますし、このままだと取られる可能性が高い。
そして取られてしまった場合、負けの可能性がかなり高くなる。
だが、鯉太郎。その右を取られる寸前に宝玉光の横につく。
そして、右腕を伸ばすために体重を右に傾けていた宝玉光の体をそちらに向けてすくい投げる・・・!!

才能の差で長く痛い目を見せられてきた鯉太郎。
何年も努力し、ついに本場所にて才能の差を埋めてみせることに成功する!!
これには寺井くんも泣きながら笑うしかない。

ハハハ・・・ヒデーなー・・・なんてモン見せんだよ・・・
俺はもう・・・辞めるんだからよ・・・そんなモン・・・見せんなよ・・・

才能が無い者が生きていける世界ではない。そう考えて辞めようとしていた寺井くん。
その寺井くんの目の前で努力が才能の差を覆したことを見せられてしまう。こりゃ厳しい。

終わってみれば一進一退ということはなく、鯉太郎圧勝の流れでありました。
まあ、もちろん楽な相撲ではなく、勝った鯉太郎もかなり疲弊しているわけですが、内容だけ見れば圧勝と言える。
その結果に繋がった理由は虎城親方曰く、稽古の差。部屋の差である。

鮫島は恵まれていたんでしょうな・・・目標となる兄弟子の背中に・・・
そして必死に兄弟子の背中を追い掛けるその背中をまた弟弟子たちが見て育つ・・・
その根本にはしっかりとした土台・・・親方がいる。
空流の先代はこの私でも一目置く見事な親方でした・・・
しっかりと受け継がれ・・・生きていますよ。先代の思いが・・・教えが・・・

すっかり空流部屋に対してデレた様子を見せている虎城親方。
しかし現役時代先代の空流親方が"虎城キラー"と呼ばれていたことを持ち出されるとそっぽ向いたりしている。プイッ。
うーん、見事なツンデレっぷりというか何というか。美しゅうございますなぁ。

実際、今の綺麗な虎城親方になる前から空流部屋のことは認めざるを得なかった感じでしたからねぇ。
白水さんのことも、空流部屋の力士だし足腰はしっかりしているとか言っちゃってましたし。
綺麗になった今となっては、認めることもやぶさかではないって話ですわな。

オウッ・・・これが空流だ。

しっかりと積年の思いを叩きつけた鯉太郎。空流の意地を見せてくれました。
それに対しぐうの音も出ない宝玉光。ただ涙するしかない。そんな姿を見た田ノ中親方は・・・

変わらなけりゃいかんな・・・今度こそ・・・まずは俺が・・・
すまんかったな。寺井・・・すまんかった・・・宝玉光・・・

一番に変わらなければいけなかった親方がようやく目を覚ましてくれた。
宝玉光だけではなく、ちゃんと寺井くんにも詫びている辺り、改心のほどが伺えます。
さて、これは田ノ中の復活の流れとなるのだろうか。寺井くんの明日への希望となるのだろうか。
次回、二日目完結編。いい締め方がされることを期待したい。



第25話:二日目「鮫島-宝玉光」R  (2015年 26号)


勝利した鯉太郎を迎える常松と白水さん。
うむ、確かに常松は焦ってましたな。勝利した時も良かったーって感じに見えました。
まあ、途中までは作戦通りだったのは間違いないんですけどね。空流一丸での勝利だ。
それにしても常松、後ろの髪が妙に長いですな。

笑顔の鯉太郎とは違い、敗れた宝玉光は憔悴した様子。
下手すればブタフグのように壊れてしまいそうな感じに見受けられる。が――

ここからだ宝玉光!!ここから始めよう・・・変わるんだ!

迎えてそのように声をかけるのは田ノ中親方。
鯉太郎を始めとして空流の面々に言われてきたことがようやく身に染みた様子。
そして親方として自分がやらなければいけないこともようやく気付けた様子。

すまんな宝玉光・・・お前が咲かないのは土である俺が腐ってたからだ。
全て・・・俺の責任だ

頭を下げ、宝玉光に詫びる田ノ中親方。
親方の態度としては異例なことでありましょうが、ここまでならば今までとそれ程変わった感じではない。
宝玉光としても親方のそういう態度は見慣れたものでありましょうし、その詫びの言葉もそのまま受け入れる。
鯉太郎に敗れたことが信じられず、逃げ口上を求めていたところに渡りに船だったって感じでしょうか。
しかしそんなことではいつまでも変わらない。
そんな醜態を見せる兄弟子の宝玉光の顔面を・・・寺井くんが殴りつける!!

宝玉光をブッ飛ばし、語り出す寺井くん。俺はもう逃げねぇぞ、と。

相撲部屋は一度入門したら移籍なんて出来ねぇから・・・運がねーって・・・仕方ねーって・・・諦めてたんだ俺は・・・
クソヤローが兄弟子でも・・・頼りねー人間が親でも・・・心の底ではそれが間違いだって分かっていても・・・
親方だけじゃねぇ・・・変える勇気も・・・変わる努力も・・・俺にはなかった・・・
鮫島だったら・・・たとえ田ノ中に入門していたとしても、きっと今の俺みてーな力士にはならなかった。
努力もしてねー人間が吐く言い訳は、ただのクソだ

取組前まではまさしくその言い訳を鯉太郎に吐いていた寺井くん。
どうやらこの取組で気付かされたのは田ノ中親方だけではなかったようですなぁ。
そして寺井くんは宝玉光に手を差し伸べる。稽古しましょう。どこまでも付き合いますから、と。

大丈夫っス・・・今度はその背中、ちゃんと見てますから・・・
兄弟子が道を間違ってんなら、弟弟子の俺が背中を叩いて気付かせますから・・・

涙ながらにそう語る寺井くん。
宝玉光もまた、涙を浮かべながらその手を取る。
ほう、これは思わぬ形で田ノ中部屋が纏まり、前に進むようになった感じでありますな・・・
暫く前までは簡単に移籍などと考えてしまったわけでありますが、こういう立ち直る話になるのもまた良いものですなぁ。
宝玉光も初心を取戻し、必死ささえ身につければまだまだ上に登れる素質は十分にある。
そしてその兄弟子に引っぱられれば寺井くんも上に登れる可能性は十分にある。うむ、これからの田ノ中に期待したい。

というわけで、取組前に行った引退宣言は撤回する寺井くん。
取組前と同じように歩く鯉太郎の前に現れたわけだが、その表情は爽やかなものとなっております。

ここから作るよ。新しい田ノ中部屋を・・・親方と宝玉光関と俺とで・・・
空流に負けない・・・スゲー家族をこっから作ってみせるよ。

笑顔でそう語る寺井くん。その言葉を笑顔で受け止める鯉太郎。
鯉太郎にしてみれば宝玉光はかなり許せない相手であるはずなのだが、その確執は部屋まで持ち込んではいない感じである。
そしてどうやら鯉太郎、あの宝玉光の付け人を今まで続けてきた寺井くんの根性、心の強さには同期として一目置いていたそうな。
ふうむ、いい話だ。いい話だけど、確かに相撲教習所は一緒だけど2人は同期じゃないんですな。
少し違うだけではあるが、寺井くんの方が先に入門している。まあだからって今更態度を変えるのは難しいでしょうけどね。
寺井くんとしても軽口のつもりで言ってそうだし、本気でさん付けしろと言ってるわけではありますまい。きっとね。

現在相撲部屋は約40以上存在する。
力士たちはそこで共に汗を流し・・・笑い・・・泣き・・・苦しみ・・・時には衝突し合い稽古場に足跡を刻む。
そしてその足跡は歴史になり受け継がれ部屋に生き続けていく・・・
血は繋がらなくともそこには確固たる絆で結ばれた"家族"の形が存在するのである

というわけで、二日目はここで終了であります。
過去の話が入ったおかげで長かった!!長かったけど、いい話でありました。
色々な家族の形があるわけですが、なるべくならばどこも上手く行っていて欲しいものです。
数年前は危うそうな感じだった虎城部屋も、親方が綺麗になったおかげもあり、今は雰囲気が改善されているのではないでしょうか?
猛虎さんもいるし、王虎も綺麗になったのであれば、ますます心配はいらない気がします。
まあ、この数年の間にその猛虎さんたちがどうなったのかはまだ語られていないわけでありますが・・・
三日目以降でその辺りも語られるはずなので期待しつつも不安を覚えて待ちたいと思います。



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