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鮫島、最後の十五日
第26話 〜 第43話


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連載中分

鮫島、最後の十五日 4巻


第26話:三日目「鮫島-舞ノ島」@  (2015年 27号)


今回から三日目の取組。
鯉太郎の相手は巨漢の舞ノ島
元々力士としては小さい鯉太郎であるが、これはいつもよりも小さく見える。
椿の横に座る少年も顔を蒼くしております。誰だ君は?

何やら鯉太郎と約束をしているという少年。
ふうむ、野球少年ならばホームラン打ってくれたら手術を受けるみたいな約束がありえそうな感じですが。似たようなものか?
いずれにしても鯉太郎の取組を生で見るのはこれからに大きな影響を与えそうでございますな。

さて、ここで回想。九月場所の3週間前のこと。
空流部屋全員が泥だらけになりながら稽古に励んでいる。川さんすらドロドロだ。
そんな稽古の様子をこっそりのぞいているメガネの少年が1人。
もちろん覗かれていることには気づいている鯉太郎たち。捕まえて部屋に連行・・・招待することとなりました。

ここで新弟子2人の紹介。ヤンキーっぽい豆助にどこの国から来られたか不明な目丸手。いやメガンテってお前。
一体誰が名前をつけたのか非常に気になる。
それはそうと、椿。少年を赤面させるだけのオーラを身につけるようになったとは・・・成長したものだなぁ。
そういうのは昔はマコ姉の役割だったわけだが・・・これも恋をしたせいですかな?ホッホッホ。

それはさておき、空流部屋に招待されたメガネの少年こと、あかね。
少年に床上手さんは色々と刺激が強いかもしれませんが・・・まあ、いい人ですんで。うん。

相撲部屋は客と関取が先に食べる。その風習は空流部屋でも変わらない。
だからこそ関取以下の力士は強くなろうとも思うのでしょうし、こういう伝統にも理由がある。
とはいえ、客としては微妙に気になってしまいそうな感じですな。

学校をサボっている様子のあかね。何やら色々とあるみたいですな。
両親はというと夜遅くまで家を空けているらしい。
うーむ、ご飯を食べて温かくて美味しい!とか言っちゃうのはなぁ・・・普段いつも冷や飯ばかりということなんだよなぁ・・・

何やら鯉太郎になついた様子のあかね。部屋で一緒に昼寝をする。
ここで鯉太郎の個人部屋が公開されるが、特に何もない部屋。あるのは相撲の雑誌ぐらいという。
まあ鯉太郎が相撲以外の何に興味を持つのかって話ですし、こういう部屋になるのは必然か。
個人部屋と言っても本当に寝るだけの部屋って感じですなぁ。体を伸ばして眠れるだけ良いって話か。

寝るのも仕事!!一般社会じゃ通用しないとは言うが、決められたことをやるのはどちらにしても同じである。
むしろ一般社会でも昼寝の時間を設けてくれれば作業の効率化にも繋がる可能性が・・・閑話休題。

傷だらけの鯉太郎の体を見て、何でアナタはお相撲さんやってるんですか?と尋ねるあかね。
確かに体格を考えればとても向いているとは思えませんよね。
将来のことに不安はないのかとも尋ねられるが、それに対して鯉太郎は何でもないことのように答える。

好きで選んだこの道だ・・・今を必死で生きねー奴に未来は近付いてこねーだろ・・・

実際に必死に未来を切り開いている鯉太郎の言葉は重い。
しかしその重さがまだ実感できないあかね。ふむ、ならば鯉太郎の凄さを、生き様を見てもらうしかありますまい。
子供は子供で色々と抱えていて大変なのでしょうが、頭でっかちになるよりは短い少年時代を楽しむことが大事と思われます。
少年と約束した鯉太郎がどのような取組を見せるのか。楽しみでありますな。



第27話:三日目「鮫島-舞ノ島」A  (2015年 28号)


今日も泥だらけになりながら激しい稽古を行う空流部屋。
頭を押さえられた時の鯉太郎の叫びが何とも苦しそうである。ア゙ーア゙ー。

覗き見をする必要はなくなり、正式に間近で稽古の様子を見ているアカネ。
相撲自体には興味ないけれど、どう見ても向いてない体で頑張る鯉太郎には興味津々な様子。
正直というか何というか、どうにも口の悪いアカネであるが、素直じゃないってことですかねぇ。

そういう言葉を選ばない姿勢によってか学校では孤立しているアカネ。
勉強は出来るが運動は出来ない。確かに小学生だといじめられる原因の一つにはなりえる。
のだが、今回はアカネの物の言いようがどうにも悪くてなぁ・・・子供らしくない態度は反感買いますわな。
とはいえ暴力を振るったりするのが許されるわけではないですけどね。難しいものである。

将来笑うのは僕の方であると語るアカネ。
確かにその可能性は高そうだが、本気でそう信じているのであればここに毎日通ったりはしていないでしょうな。
アカネの考えを聞き、それを否定しない鯉太郎。人の人生に口を出せるほど偉くないし余裕もないからとのこと。

でもよ・・・必死こいてる奴を笑う奴に大した奴はいねーんだよ

それこそ鯉太郎の持論でありますわな。
アカネにしても鯉太郎ほど必死に頑張ってる奴を見たことはありますまい。
だからこそ口では否定してもどうにも惹かれてしまっているのでありましょうなぁ・・・
しかし、基本的に素直じゃないのでそういうことを言われると怒ってしまうアカネ。こういうところはまだまだ子供ね。
これだから筋肉バカは!!と大切なことなので2回繰り返して帰っていく。あらあら。

鯉太郎もガキの頃は友達なんていなかった。
アカネとは立ち位置も考え方もまるで違うけど、放っておけないものがあるのは確かってことなんですな。
いやしかし、鯉太郎も随分と大人になったものですなぁ・・・兄弟子になり、関取になり、大人としての貫録が身に付きつつある。

そんなことがあってから、九月場所の幕開けまでアカネは空流部屋に顔を出すことはなかった。
しかしどうにも勉強に身が入らない状態のアカネ。
頑張るにしても環境が整わないと厳しいですわなぁ。
そんなアカネの目に飛び込んでくるのは、宝玉光に快勝してみせた鯉太郎の取組。
テレビでそれを見て、居ても立っても居られずに空流部屋に向かうアカネ。
むう・・・鯉太郎。宝玉光には快勝したと思ったが、やはりノーダメージというわけにはいかなかったか・・・
どうにも不穏な描写がされてしまうなぁ・・・

それはそうと、久しぶりにアカネの顔を見た鯉太郎。やたらと顔を輝かせている。
久しぶりに会えたことの嬉しさもありましょうが、相手を不安がらせないために明るい顔を見せているとも取れる。ううむ。
とはいえ、覚悟のほどを語るのには相手が誰であろうと変わらない。
15日もある場所だが、そんな先のことは知らないと鯉太郎は述べる。

一番一番に己の全部をくれてやる・・・それが俺の相撲だ

そうじゃないと勝てないからなと笑顔で語る鯉太郎。
正直常人には理解しがたい生き様であります。理解しがたいからこそ、やってのける人物に憧れるわけでありますわなぁ・・・

教えてやるよ。俺が相撲を取る意味を・・・

鯉太郎からチケットを貰い、取組を見に来るアカネ。
こうして三日目の取組が始まるわけでありますな。うーむ、こいつは負けられないぜ!!
しかし舞ノ島は角界でもトップクラスの巨漢力士なんですなぁ。
名前の似ている現実世界の舞の海は小兵力士として有名でしたが・・・何か対比するものがあるのだろうか?

ともあれこれで取組前の準備は整った。後は生き様を見せるだけでありますな。いつも通りに全力で!!



第28話:三日目「鮫島-舞ノ島」B  (2015年 29号)


三日目。舞ノ島との取組開始。
舞ノ島は西前頭十枚目であり、東前頭十四枚目の鯉太郎とはほとんど番付は変わらない。
とはいえその体格は物凄い差がある。そしてどうやら人気についても差がある様子。

チッ・・・コイツとやる時はいつもコレだ・・・俺への声援なんて聞こえやしねぇ・・・

舞ノ島も別に人気がないわけじゃないんでしょうが、鯉太郎は人気ありますからねぇ。
小柄な力士が大きな力士を倒すというのはやはり盛り上がるものでありましょう。
昔は嫌われ者だった鯉太郎が今では一身に声援を受ける身になるとはなぁ・・・もう悪ガキのままでいる必要はないんだなぁ。

とはいえ小さいというだけで人気が得られるわけではない。
その取組が。戦い方こそが人々を魅了するのである。
そして取組相手である舞ノ島にも笑みが浮かぶ。

そんな甘い相手じゃねーんだよ。コイツは・・・

番付が近いだけに何回か取組があった様子の舞ノ島。だからこそヤバさはよく分かっているという感じか。
それでいて思わず笑みを浮かべてしまう。気迫の鯉太郎とぶつかることの楽しさも感じているってことでしょうか。

ともあれ取組開始!!
巨漢に対して頭から真っ向勝負を仕掛ける鯉太郎。そこに変化の色など見えようはずもない。
となれば舞ノ島だって負けてはいられない。鯉太郎のブチカマシの威力を味わいながらも前に出る。激突する。

どこまでもバカ正直に前に出る鯉太郎。そのひたむきさがお客に支持されてしまう。
それはそうでしょうな。一番でボロボロになってしまうような取組を続けるなんて、普通は誰も出来ないに決まっている・・・

君が言うように本当にアイツはバカだから。誰が相手でも・・・どんなにボロボロになっても。
デビューから一度だって引いたことはないのよ・・・

それによって苦労してきたのは間違いない。
それでもその道を愚直に突き進み、今この場にいる。
読者としてもその姿をずっと見てきたわけでありますし、だからこそ応援しなければという気になるってものであります。
初見のアカネにもその気持ちが伝わるといいですなぁ。

さて、舞ノ島の懐に飛びこむ鯉太郎。
と思いきやこれは舞ノ島の誘い。懐にわざと飛びこませ、捕まえようという作戦だった様子。
体格の差による懐の深さで勝負に出たわけですな。
鯉太郎の両腕を抱え上げて上げようとする・・・が、上がらない!!

閂はそもそもヒジを極める、言わば関節技・・・
鮫島は極められる刹那・・・腕を深く入れそれを防いだ・・・

年を取ってもその眼力は衰えを知らない虎城親方。何が起きたのか瞬時に見抜いた様子。
そこに加えてきちんとした解説力を持っているわけですし、今の虎城親方に死角はない・・・!!

というのはさておき、関節は極められなかったものの強引に吊りにかかる舞ノ島。
そうはさせじと堪えつつ、引きつけて舞ノ島の腰を浮かしにかかる鯉太郎。
がっぷり組んでの両者一歩も動かない膠着状態となりました。

鯉太郎はね・・・初めからこんな声援があった訳じゃないのよ・・・むしろ敵だらけの嫌われ者だったの・・・
十両に上がった時だって周りの人間は否定する方が多かったわ。ケンカ相撲で品がないとか、あの体じゃ関取では通用しないとか・・・
でも・・・そんな雑音を気にもとめず、人の何倍も傷ついていく体で人の何倍も必死に稽古したの・・・
何よりも誰よりも大好きな相撲で勝つために・・・

必死で生きる人間の姿を目の当たりにするアカネ。
これは多感な少年の心に大きな影響を残しそうでありますなぁ。
あとはこれでスッキリと勝ってくれればよいわけですが・・・期待していますぞ!!



第29話:三日目「鮫島-舞ノ島」C  (2015年 30号)


土俵は生き様。その生き様を全力で示す鯉太郎。
その姿に歓声が飛ぶのは当然と言えますが・・・アカネとしてはそれも一過性のモノでしかないと思えてしまう。
それは自身が経験して良く分かっていることだから・・・

勉強の出来るアカネは最初は両親にもクラスメイトにも褒められ、良い扱いを受けていた。
しかしそれに慣れると水準が上の方で固定され、保っているだけでは称賛を得ることはできなくなってしまう。悩ましい話ですな・・・
いやまあ、両親についてはその点が悩ましいのは分かる。
けど、友達に関してはアカネ自身が天狗になっちゃってたのが原因なような・・・

ソレが当たり前になったら誰も見向きもしなくなる
努力してその水準を保っているのに、保つだけでは評価されない。それは辛い話である。
しかし同じく辛い思いをしているはずの鯉太郎は周りの評価など気にしていない。
今の水準を保つなどではなく、更に上へ上へと目指しているからでありましょうか。
いや、それ以上に鯉太郎の性格によるものでありましょうな。

頑張りや努力なんてひけらかすものじゃないもの・・・
君だって分かるはずよ・・・ずっと鯉太郎を見てたんなら・・・

同じく、いやもっと長い間鯉太郎のことを見てきた椿ならではの言葉でありますな。
そしてそのずっと見てきた信頼は、簡単なことでは揺らがない。
舞ノ島が強引に鯉太郎の体を吊り上げに行っても揺らぐことはない。
逆に日の浅いアカネの方は鯉太郎の頑張りを見ているだけに・・・声を上げる。鮫島さーん!!

その声に応えるかのように歯を食いしばり、力を込める鯉太郎。
より深く腰を落とし、まわしを持つ手に力を込め、背中の筋肉に力を込める!!
その結果・・・自分より遥かに大きな舞ノ島の体を逆に持ち上げる鯉太郎!!
そして右足を踏み込み、体を左方向へと傾ける。
その勢いで持ち上げられた舞ノ島の体は鯉太郎より先に土俵へ・・・背中から叩きつけられることとなる!!

よもや鯉太郎がここまで体格に勝る相手に力技を決めようとは!!
これは観客も騒然である。アカネも叫ばずにはいられないようで・・・ほほほ。

舞ノ島は攻めが雑過ぎましたな・・・強引に吊りにいって腰が伸びてしまった・・・
その結果鮫島に全体重を握られてしまった・・・力技に見えてテコの原理もしっかり利いてますよ。

冷静に、しかし笑顔でそう解説する虎城親方。さすがですなぁ。
とはいえあの体格差を覆すには並々ならぬ足腰の強さが必要でしょうしねぇ。さすがは空流部屋と言ったところか。

きっと伝わるのよ・・・懸命な生き方って・・・

椿の言う通り、鯉太郎の熱い戦いはアカネに届いたようである。良かった良かった。
しかし鯉太郎の生き様はやはりリスクを伴う。
信頼を寄せながらも常に不安を抱えて見守らなければならない椿としては・・・あまりオススメできないでしょうなぁ。そりゃあ。

兎にも角にも3日目も勝利を収めた鯉太郎。
次号は3日目完結編。ここまではいい感じで進めて来ましたが、最後で怖い話が出たりしないか・・・少し不安です。



第30話:三日目「鮫島-舞ノ島」D  (2015年 31号)


三日目、快勝を果たし部屋へと戻ってくる鯉太郎。
その鯉太郎を笑顔で迎えるのはアカネ。お、いい笑顔ですね。鯉太郎も嬉しそうだ。

そんな鯉太郎をメシ食いながら出迎えるのは飛天翔。
どうやら引退後も普通に遊びに来ている様子。うん、そういう関係はいいですぞ。嬉しい。
まだ髷結ったままなんだなと思ったが断髪式は場所後になるだろうし、そりゃそうか。

鯉太郎にとってアカネは友達。であるならば飛天翔にとっても友達と言うことになる。

うーむ、気持ちのいい大人でありますなぁ。そりゃアカネも可愛い顔して照れますわ。年下の兄貴分が出来た豆助は・・・ドンマイ!

それはそうと、今日は更に別の客が来ていたりする。
何と田ノ中部屋の3人。人手が足りなくて大変だろうからと仁王さんがわざわざ夕食に誘ったらしい。ほほう。
しかし昨日までは仇敵としてやりあっていた間柄。宝玉光が来るとどうにもピリピリした空気になるのは避けられない。
田ノ中親方も寺井くんも頑張って諫めてはいるのだが・・・

鯉太郎もその争いに参加し、戦いは激化ムード。
部外者である飛天翔に至っては止めるどころか面白がってやれやれーってな感じである。野蛮人め!!
まあ、さすがにこの関取の群れにあっては寺井くんが止めに入るのは無理ってもんでしょうな。
止められるとしたら猛獣のような関取を力尽くで黙らせられる人物・・・そう。怪獣のような仁王さんだ!!

チャンコは楽しく食え。バカヤローどもが

仁王さんの鉄拳制裁でまず空流部屋の面々が撃沈。
更に容赦なく宝玉光にも向けられる鉄拳。親方としては他の部屋の力士であっても示しをつけないと思うのは当然ですわな。
しかし自分で穴開けておいて躱した相手のせいにしてしまう辺りはさすがというか何というか。
でもその迫力の甲斐あって大人しくなる宝玉光でありました。ハッハッハ。

引退して数年経ち、実際の本場所に出ていないにも関わらず未だ空流で最強を誇っている仁王さん。すげえな。
確かに今でも綱取り行けるんじゃないかと思えてしまう。しかし白水さんの顔の凹み方もすげえな。
そして甘やかして育てられたばかりにすっかり打たれ弱くなっている宝玉光もすごい。
沁みついた傲慢キャラが捨てきれず、大きな口を叩いてしまうのだが反撃に合って涙するヘタレ萌えキャラ。
あの大暴れしていた宝玉光がまさか、作品内で1日ぐらいしか経過してないのに大変身しちゃうとはなぁ・・・すげえな!!

碌でもない大人の攻防はさておき、アカネにとっては大きな戦いが待っている。
一応家の方に連絡をと考えた椿により父親と電話で会話。
父親は学校の方から学校や塾に行っていないことについて聞いており、それを問いただす。
問いただされたアカネはそれについて言い訳することもなく、ただこう述べる。
もっともっと勉強するよ。周りが気にならないくらいにもっと夢中で、と。

将来何になりたいかなんてまだ分からないけど・・・今はまず目の前にある出来ることを一生懸命にやろうと思うんだ・・・
いつかカッコイイ男になりたいから・・・

いい顔でそう述べるアカネ。電話越しにも何か変わったということが感じられたのか、父親も追及するようなことはしない。
ふむ、仕事で放任になってしまっているとはいえ、この父親も息子のことをちゃんと思っているようですなぁ。いいことだ。
アカネの決断は相撲取りとはまた違う道でありますが、今を一生懸命にやっていくという大事なことは鯉太郎と変わらない。
それを忘れずに突き通していられればカッコイイ男にはなれますよ。きっとね。

というわけで、笑顔で迎えられる三日目の食事。いいですねぇ。
宝玉光がずっと膝抱えて泣いたままになってるけど、まあそれはそれで。ハッハッハ。

何か不吉な終わり方するのではと身構えていた三日目完結回でしたが、今までにないほどに爽やかな終わり方で素晴らしい!!
対戦相手である舞ノ島の影は薄くなってしまいましたが、話としては非常に良い感じでありました。
この調子で四日目以降も不安になることなく行って欲しいものでありますが・・・さてどうなりますか。



第31話:四日目「鮫島-巨桜丸」@  (2015年 32号)


近年大型化が進む大相撲界。
その中にあっても特にでかい。とにかくでかいと言われる力士がいる。
189cm167kgの鶴留が小さく見える規格外の巨体。
角界最重量278kgの新入幕・巨桜丸丈治!!この男が鯉太郎の四日目の相手だ!!

日本人最重量の大森海でも240kg。作中で20kg増やしたという発言はあったがそれでも届かない巨桜丸の巨体。恐ろしい。
それにしても何やら怖い笑顔でありますが、何でありましょうか・・・

屈託のない笑顔と明るい性格で人気急上昇の力士。
しかし実力も折り紙付き。入門から11場所で入幕を果たしているという。そりゃすごい。
太れること、大きくなれることはやはり角界では大きな才能であると分かる。

巨桜丸の所属は寒河江部屋。親方もスマイル推奨のニコニコ型であります。
ふむ。笑顔は大事でありますが・・・笑ったまま向かってこられるのは凄く怖いなぁ。
笑顔のまま土俵から突き落とされる鶴留の心境はいかに。

終始笑顔の巨桜丸。
しかし立ち去り際に呟くゴメンナサイ・・・は非常に気になるところ。
笑顔が怖くはあるが、本人の気性は穏やかな様子。気は優しくて力持ちって奴でしょうか。
しかしその優しさは勝負の場では自らを傷つけかねないわけだが・・・さてさて?

さて、鯉太郎。どうやら三日目の舞ノ島との取組で足を少し痛めた様子。
ブチブチ言ってたのにそれだけで済むのはむしろ驚きである。
しかしうーむ。やはり幕内では楽な戦いってのはないわけか・・・どんどん満身創痍に近付いていくなぁ・・・
でもまあ、頭にダメージが入るよりはマシと考えましょう。後ろ向きではありますが。

サモアの怪人と称される巨桜丸。
笑顔ではあるが、鯉太郎から見るとあまり楽しそうには見えないとのこと。
ふむ、鯉太郎も土俵ではよく笑いますからねぇ。悪そうな笑顔であるが怖い笑顔とは言えないのは鯉太郎の人徳か。

さて、優しい巨漢といえば空流部屋にも存在する。大吉だ。
大分様になってきた様子ではあるが、相手のことを気遣う優しさは失われていない。いいことだ。
しかし場所での結果は2戦全敗。よくないことだ。キラキラした顔で言うな!!

今では空流部屋の稽古にもちゃんとついてこれるようになっている大吉。それだけでも凄い。
その成果を活かせば本番で勝つのも難しくはないはずなのだが・・・やはり性格の問題か。

ならお前も潰す気で行けよ・・・じゃねーと失礼だろーが・・・相手にも土俵にも・・・

真剣に全力でぶつかり合うのが礼儀。鯉太郎らしい考え方であります。
とはいえそれは昔から何をするにも真剣一直線だった鯉太郎だからこそ言える話でもある。
何をしても勝ちたいと思う人間がいれば、そこまで勝ちに執着していない人間もいる。
気の抜けた相手に勝つ勝利を喜べない人間もいれば喜ぶ人間もいる。
相撲を心から楽しんでいる鯉太郎と、どこか無理している感じのある巨桜丸。この戦いはどのような結果となるのか。
大吉にも影響を及ぼしそうだが・・・どうでしょうかねぇ。
これだけ長く鯉太郎と一緒に居るのに考え方が変わってないとなると大吉はこのままで行きそうな気もしますが・・・さてはて。



第32話:四日目「鮫島-巨桜丸」A  (2015年 33号)


鯉太郎が幕内力士として頑張っている中、あの人はどうしているのだろうか。
そういう風に気になっていた人の一人であるマコ姉についての答えが出ました。
なんとアナウンサーになっていたとは・・・こりゃ驚きだ。
新人だが既に人気アナウンサーと評判であるらしい。ほほう。
TVや新聞などは鯉太郎絡みの件でいい感情持ってないかなと思ったのだが・・・
逆にだからこそ味方できるようにと考えたのだろうか?

それはさておき、マコ姉の取材先は本日の鯉太郎の取組相手である寒河江部屋。
インタビューには寒河江親方と巨桜丸関が登場であります。

寒河江部屋のコンセプトはスマイル。活気がありながらも他の部屋とは放つ雰囲気が違っていたりする。
ふむ、確かに相撲部屋のしきたりは厳しい。体育会系の中でも相当な厳しさであります。
兄弟子の世話や部屋の仕事など、ただ自分を鍛えて相撲をとっていればいいってわけじゃありませんからなぁ・・・
寒河江親方も何度その厳しさにスカしたか分からないと述べる。

ですから私が親方になってから古い悪習は廃止したんです。部屋の仕事は番付に関係なく分担制。上下関係もなし。
辛い時こそスマイル!スマイル!これが私の指導方針なんです!

ふーむ。割と現代にはあったやり方なのではなかろうか。
空流部屋の方針に慣れきった白水さんたちは微妙そうな顔をしてますが・・・いや、常松は一考の価値ありそうな表情か?
それはさておき、この話に感銘を受けるのがマコ姉。素敵です!!
って仁王さんへの個人的な愚痴が先行しておりますぞ。相変わらず気が置けない仲というか何というか。ハッハッハ。

しかしその指導方針ではなかなか弟子が育たなかったという寒河江親方。
そんな時、数多ある部屋の誘いを蹴って寒河江部屋に来てくれたのがこの巨桜丸ことジョージ。
笑顔でいても強くなれることをジョージが証明してくれたのだと寒河江親方は語る。嬉しそうですねぇ。

ジョージは語る。この部屋の皆優しくって大好きだと。この部屋に入って本当に良かったと。

ダカラ負ケレナイヨ・・・僕ガ勝テバ皆ハッピーネ・・・

大好きな部屋の皆の為にも勝つ。その意気込みは良いですな。
個人の信念も大事でありますが、支えてくれる仲間がいるってのは大きい。

さて、本日の取組相手である鯉太郎について。
ジョージ曰く、体が小さくていつも傷だらけでとても可哀想な力士とのこと。
ふうむ。恵まれた体躯の持ち主からするとそういう感想になってしまうか・・・
素直な気持ちを述べているのでしょうが、言われた方としてみれば侮辱と受け取っても仕方がない話ですな。

ジョージのヤッツケルネ発言に反応してピクピクしちゃうのは鯉太郎だけではない。
というか鯉太郎以上に激しく反応しているのはすぐ側で聞かされたマコ姉。

鯉太郎を・・・ナメんじゃないわよ!

笑顔ながらもめっちゃキレちゃってるマコ姉でありました。ハッハッハ。
マイクでグリグリされてるジョージもさぞ怖かったでありましょう。合掌。
人気女子アナの思わぬ素顔と言うことで逆に話題になるかもしれないが、さてさてどうなんでしょうかねぇ。

それはそうとマコ姉。空流の親方として仁王の名前を出してますな。
仁王さんが空流親方を継いで現在の空流親方になってしまったので呼び名をどうしようかと少し悩んでいましたが・・・
うむ、今後も仁王さんという呼び方でよさそうですな。

キレちゃったマコ姉もどうにか冷静になった様子で謝罪。
その際に鯉太郎のことを評価したことについてジョージは気になっている様子。鮫島関はそんなに強いのですか?と。

強いですよ・・・心配になるくらい・・・

その言葉を聞いて満面の笑みを浮かべるジョージ
ふうむ。土俵での怖い笑顔と違って本当に嬉しそうな顔である。
弱くて図らずも叩き潰してしまうような相手ではなく、謝る必要もないくらい強い相手であれば嬉しいってことだろうか?

さて、土俵入り。本日四日目前半の注目の取組と目されているのが鯉太郎とジョージの一番。
一際小さく見える力士と一際大きく見える力士の一戦。注目を得るには充分でありますわな。しかし・・・

まさかアイツがスカすなんて・・・

土俵入りに姿を見せないジョージこと巨桜丸。これは一体どうしたことか。
うーむ。直前のあの笑顔を見る限りでは鯉太郎との取組を楽しみにしてそうな感じだったんですがねぇ・・・?
それとも強い相手であるならば遠慮なくスカせるよ。ハッピーね!って笑顔だったのだろうか。それは嫌だなぁ。
鯉太郎としては不服かもしれないが、不戦勝はかなり有難い。
しかし物語的にはやはりそういうことにはならないんでしょうなぁ。ここからどう話が展開されるのか。注目です。



第33話:四日目「鮫島-巨桜丸」B  (2015年 34号)


いつも笑顔の人気者。それが巨桜丸。
大きな体に優しい笑顔。何も知らない人からすれば心もすごく大きく思える。
寛大という意味でならまあそれは当てはまらなくもないのだが・・・

ハワイ。オアフ島。
子供の頃から人一倍、いや三倍体が大きかったという巨桜丸ことジョージ。
この見た目のおかげで初対面の相手にはいつも恐れられていたという。ただそれは最初だけのこと・・・
体は大きいがそれに反してハートが小さすぎたのである。

リトルジョージ。これが一際大きい僕のアダ名だった・・・
この大きな体に見合ったパフォーマンスを期待されても僕にはソレを動かすハートが無かったんだ・・・
子供の頃から体が大きくなればなるほど・・・そう・・・まるで反比例するように僕の世界は小さくなっていった・・・
もう・・・消えてなくなりそうだった・・・

なまじ体が大きいと相手を傷つけまいと気が弱くなることはあったりする。
とはいえジョージの場合はそれ以上に自分が傷つくことにも気弱な様子で。小心者ということなんですなぁ。
見た目がこれであるからこそ中身と反対であった場合はイジられやすく・・・辛い人生であったことは想像に難くない。

そんなわけですっかりやさぐれた感じになっているジョージ。こりゃ怖い。
顔付きが暗黒面に落ちた田上さんみたいになっている。これは初見の相手はビビリますわ。

そんなジョージをスカウトするのは日本でオアフ島初のスモウレスラーとなった島の大スター久陽山
そのスターに日本で世界を変えるんだと誘われる。

この体に期待されるのは正直辟易していた・・・ただこの時は衝動的に、僕は誰も知らない場所へ逃げたかっただけだったんだ・・・
この時はそう思ってた・・・

久陽山に連れられやってきたのは虎城部屋
まわしをつけて多数の親方たちの前に披露されるジョージ。
ほう。久陽山は十文字部屋の預かりでありますか。ここにいる親方衆は次元一門の者たちということでありますな。

ここでも外見だけの物扱い・・・その様相はまるで次元一門の親方総出の品定め会だった・・・

怯えるジョージには気を留めず一番取らせてみる虎城親方。相手は何と田上さん!?
一体何年前の話のことであるのか、とにかく田上さんの登場であります。テンション上がるなぁ。
しかしいきなり幕下力士をぶつけるとは、ジョージの力は素人レベルではないと見抜いたのだろうか?

だが力の素質があったとしても肝っ玉は素人以下のジョージ。
うーん。確かにこれではこの世界でやっていけないと判断されて仕方がないですわな。
そんなジョージを寒河江部屋に引き取らせる虎城親方。
ふむ。これは寒河江親方なら育てられるという判断なのか、単に厄介者を押し付けただけなのか・・・
綺麗になった後の虎城親方かなる前の虎城親方かで判断が別れそうですなぁ。

泣きじゃくるジョージに笑顔で話しかける寒河江親方。

OKジョージ・・・大丈夫・・・君は大丈夫!

情けない姿を見せたジョージに対し、包み込むような笑顔を見せ、話しかけてくれる寒河江親方。
その姿を見て、ジョージはようやく自分の気持ちに気づくことが出来た様子。

そう・・・僕はここに逃げて来たんじゃないって・・・
僕はここに変われるきっかけを探しに来たんだ・・・
この人となら・・・僕の小さな世界が大きくなっていける気がしたんだ・・・

大きな体に小さなハート。
そのジョージが寒河江部屋のスマイルを身につけ巨桜丸となる。
恵まれた体躯があるとはいえ、幕内まで上がったわけですし、立派に変わることが出来たってわけですかねぇ。
でも今のジョージは取組をスカそうとしている。変われたのか変わりきっていなかったのか・・・次回が気になるところですな。



第34話:四日目「鮫島-巨桜丸」C  (2015年 35号)


出会いを果たし、寒河江部屋に入ったジョージ。
しかし生来のビビリはなかなか解消できるものではない様子。
もうすぐデビューというのにまともにぶつかることもできないのでは・・・ううむ。

だが、そんなジョージを優しく励ましてくれる寒河江親方。
そして部屋の皆も厳しく当たらず親身に接してくれる。
そんな寒河江部屋を好きになるのに時間はかからなかったというジョージ。いい話ですなぁ。

恐怖なんて笑顔で吹き飛ばしちゃえと述べる寒河江親方。スマイルスマイル!
その言葉に従い・・・とにかく笑って見せるジョージ。ニコッ。

「大丈夫」は魔法の言葉。笑顔で恐怖を押し込めろ!!
土俵を選んだのは僕自身・・・小さな世界から一歩踏み出したのは僕自身・・・僕は大丈夫!!

寒河江親方の言葉を心に刻み、思いっきり両腕を付き出せば・・・そこには初めてと思われる勝利の感触が待っていた。

そして真っ黒で息が詰まるほど小さかった僕の世界は鮮やかに色づき広がり始めたんだ・・・

喜びの涙を流すジョージ。それを笑顔で迎え入れる寒河江部屋の皆さん。
うむ、勝利はネズミを虎に変えるとも言いますしね。
こういった感覚を味わったのであれば勝負の世界でもやっていけるかもしれない。
そのように思えるほどの快進撃。幕下に入ったころには一目置かれる存在となっていたジョージでありました。
今更ながら悔しそうにしている十文字親方でありますが、虎城親方の言う通り、貴方のところじゃこうはいかなかったでしょうな。
その辺りをしっかり把握している辺り、やはり虎城親方は分かって寒河江部屋に預けたのでありましょうか?
何にしてもジョージにとって寒河江部屋との出会いは運命的なものだったようですな。

嬉しかった・・・僕が勝つと皆スマイルになることが・・・
僕のスマイルで皆がスマイルになることがたまらなく嬉しかった・・・
初めてこの体に生まれてよかったと思えた・・・僕はハッピーだった・・・
ただ・・・土俵はそう簡単な所ではなかったんだ・・・

ぎこちない笑みだったのがいつしか満面のスマイルに変わっていたジョージ。
しかし勝負の世界とは勝つ者もいれば負ける者もいる世界である。
負けられないという強烈な想いをぶつけてくる相手には・・・気圧されますわなぁ。さすがに。

いつもの土俵は逃げ場のない檻のように感じたというジョージ。
笑顔なんて作る余裕がないほど、相手の覚悟に恐怖を感じていた。
うーむ。笑顔で押し込めていた恐怖が再び顔を出してしまった感じでありますな。
こうなると一気に押し潰されてしまうだけになりそう・・・と思ったが、ジョージの抱えてきた闇もまた根深い。

また戻るのか・・・?あの窮屈な世界に・・・・・・嫌だ・・・
失くすのか・・・?やっと手に入れた居場所を・・・嫌だ・・・
いつもと同じだろ・・・期待を裏切るのなんて・・・なぁ・・・リトルジョージ。
嫌だ!!!

浴びせられる覚悟の恐怖を上回るほどの恐怖。
やっと得た新天地を失う恐怖はジョージに再び笑顔という仮面を纏わせることとなった様子。
そして体さえ動けばその素質は圧倒的なものでありまして・・・うわぁ、エグイ倒し方・・・

魔法の言葉の「大丈夫」を笑顔で唱えるジョージ。しかしその目は笑えていない
ううむ、精神的にかなりギリギリに追い込まれている感じでありますなぁ・・・
それでも騙し騙し幕内まで上がってきたわけでありましょうが、今回相手するのは負けない覚悟を最大にぶつけてくる鯉太郎。
ギリギリな状況のジョージがスカしてしまうのも無理はないってことでありましょうか。

ジョージが鯉太郎との取組で何かを得る流れとなるのでしょうか。
鯉太郎としてはそれでいい力士が生まれるのならば嬉しく思うかもしれないが・・・またボロボロになっちゃいそうで怖いなぁ・・・
なるべく傷つかず。それでいて熱い取組を期待したいものです。



鮫島、最後の十五日 5巻


第35話:四日目「鮫島-巨桜丸」D  (2015年 36+37号)


部屋の皆に喜んでもらいたい。自分の居場所を失いたくない。
そういった思いで、やりすぎなほどにやってしまうジョージ。
恐れの気持ちがそうさせてしまったんでしょうなぁ。相手の喜多錦さんは不運でありました。
この駄目押しによって相撲が取れなくなってしまったとしたらどうなるのか・・・
喜多錦さんの弟弟子にそれを指摘され真っ青になるジョージ。辛い。

ゴメンナサイ・・・

さすがに笑顔を作り続けることも出来なくなってしまうジョージでありました。
そして追い打ちをかけるように、喜多錦さんはしばらくして引退したとのこと。ううむ・・・

痛烈に感じた。何かを背負い土俵に上がっている覚悟・・・それを剥き出しでぶつけられる恐怖・・・
上に行けば行くほど全身で向かってくる剥き出しの覚悟は強烈さを増し、
恐怖で潰されそうな精神を・・・スマイルでガードする・・・
壊したくなかった・・・皆のスマイルを失いたくなかった・・・
相手の想いを・・・必死な覚悟を・・・潰して手に入れるスマイル・・・
非情。その覚悟の無い者は生き残ってはいけない世界・・・

肉体はこの上ない素質に恵まれているジョージ。
しかしその心は勝負の世界で生きていくにはどうにも厳しいものでありました。
少し前までの宝玉光のように慢心し、真剣勝負をバカにする者もいれば、このように覚悟が定まらないまま幕内になる力士もいる。
角界も色々でありますなぁ・・・もっと早い段階でジョージも鯉太郎たちと当たっていれば・・・

しかしジョージが入幕を決めた時の寒河江親方は本当に嬉しそうで、涙まで流している。
ジョージのおかげで自分の考えは間違っていないと胸を張ることが出来るようになれたわけだ。
そう、楽しんで・・・笑顔で相撲は強くなれるんだと。その考えを自信を持って言えるようになったんだと・・・

僕の手に入れたスマイルを・・・居場所を守るために・・・期待に応えるために・・・
僕は上手に笑えていただろうか・・・

鯉太郎があまり楽しそうに見えないと見抜いていたように、分かる人には分かってしまうジョージの作り笑い。
押し潰されそうな心を覆い隠すための笑顔も永久には続かないものである。
どうやらこの新入幕の四日目にして・・・完全に効果が切れてしまったみたいですなぁ。

大丈夫・・・利カナイ・・・スマイル・・・利カナイ・・・
ダメネ・・・ダメ・・・モウ・・・笑エナイ・・・怖イ・・・

トイレの個室を目一杯埋めて震えるジョージ。
やっぱり籠るにはトイレが一番ですな。寒河江部屋の連中も真っ先にそこを探しなさいよ。
そしてそのジョージの横の個室には同じくみっちりと埋めている男の姿が・・・

わっかるな〜〜〜その気持ち・・・

ここで登場の大吉。うむ、ジョージの心を理解するのはやはりこの男でありましたか!!
しかし大吉はジョージとは違い勝つことは出来ずにおり、土俵への恐怖を感じながらもそのことの悔しさの方を感じている様子。
いや、悔しさというよりは不甲斐なさか。心配してくれる鯉太郎に合わせる顔がない。その思いが強い様子。

応えたいんだ・・・鯉太郎さんの想いに・・・喜んで欲しいんだ・・・鯉太郎さんに

何も出来ないどーしよもーないただのデブの自分に初めから期待してくれた相手。
ジョージからすれば寒河江親方のような人である。うむ、共感を抱く相手でありますなぁ。
しかしジョージの悩みなど大吉から言わせてもらえれば余裕ある悩みとのこと。おやおや。
まあ、勝ちたいのに勝てないという悩みを抱いているところに勝っても心が痛いとか言われましてもなぁ。

前に大吉が負けても気にしていないように見せていたのはそう振る舞っていただけってことなんですな。
鯉太郎に心配をかけさせたくない。不甲斐ない自分のことで心を煩わせたくない。そういう想いがあったのでしょう。
そんな気遣いより勝つことが一番なのでしょうが・・・それで勝てるならば悩みなどないわけで。ううむ。

ともかく大吉先生のジョージへの語り。期待であります。



第36話:四日目「鮫島-巨桜丸」E  (2015年 38号)


負ければ部屋の皆が悲しむ。勝っても相手を傷つける。
どちらであっても平穏は訪れない。土俵は残酷である。勝負の世界とは残酷である。
しかしそんなジョージの言葉は大吉に言わせれば余裕のある発言にしか聞こえない。甘いんだよ!!

どこの取的だか知らんが、よーく聞け後輩!!
分かってねーんだよお前さんは!!そんなもんは優しさでも何でもない!ただの傲慢さだ!!
何が一番大切なのか、よーく考えてみんかい!!

姿が見えないこともあり、気が大きくなってる大吉。さすがに関取相手にこんなことは言えませんわな。
しかしだからこそ、本気で言いたいことが言える。
大吉自身にとっての一番大切なこと。ずっとずっと付き合って支えてくれていた鯉太郎・・・
自分の取組だけでも大変でしょうに、それでも弟弟子のことを常に心配してくれている兄弟子。

分かってる・・・まだまだ足りないんだ・・・
僕にはハートが・・・もっともっともっと・・・勝ちたいって思いが・・・
誇れる体が・・・僕にはあるのに・・・

苦悩を口にする大吉。入門当時は自身の体を誇れるようなものとは思っていなかったのに・・・成長したなぁ。
自分を信じろ、空流の稽古を信じろという鯉太郎の言葉が身に沁みてきたわけですな。

勝ちたい・・・相手が何を背負ってよーが・・・何を考えていよーが、どうでもいい・・・
怨まれよーが、何て思われよーがどーでもいい・・・
それが強さなのか分からないけど・・・あのひとだけは裏切りたくないんだ・・・

なるべく軽く振る舞うようにしていたが、大吉の中には既に何としても勝ちたいという思いは生まれていた様子。
それも全ては鯉太郎にこれ以上心配をかけさせたくないという想いから。
なるほど。大吉は一番大切なものが何か分かっているってことですな。
翻って、ジョージにとって一番大切なものとは何なのか。それは考えるまでもない。部屋の皆の笑顔・・・

大吉の言葉で目が覚めたジョージ。
その皆の笑顔があるからこそ、自分はここまで来れた。
自身のスマイルは弱い心を隠す仮面となり果てていたが、皆のスマイルは温かな希望として胸に焼き付いていたわけだ。

大吉にとっての鯉太郎。ジョージにあたるのは寒河江親方。
自分を認め、信じてくれた。居場所をくれて、強さをくれた。小さな世界を大きく広げてくれた恩人。
その恩に報いることが大切であると、ようやくジョージにも理解できた様子であります。ほほう・・・

姿勢としては良い。勝負に挑むものの気概、報恩の姿勢。望ましいものであります。
しかし何というか・・・覚醒したジョージは凄く怖い!!!
スマイルを外したギャップに加えてのこの気迫の表情。ううむ・・・
ジョージの覚醒そのものは喜ばしいのですが、よりにもよって鯉太郎との戦いの直前ってのがなぁ。
火を付けてしまったのが大吉というのは皮肉な気もします。
まあ、当の鯉太郎にしてみればこうやって全力で当たってきてくれる相手の方が嬉しかったりするんでしょうけどね。

さて、一度スカしたジョージだが、取組前には戻ってきた。
そんなジョージを心配し、もうボクらのためにムリするなと述べる寒河江親方。
さすがに親方はジョージがムリしてスマイルを作ってたことに気づいていたわけですな。

君は優しい奴だから、ボクらのために頑張ってくれていたのは分かってたんだ・・・
楽しんで・・・自分のために相撲を取って・・・

どこまでもジョージのことを気遣ってくれる寒河江親方。
そんな親方にだからこそ、恩を返したい気持ちになれる。
気弱だったジョージが自分のために相撲を取るとしたら・・・それはやはり皆の笑顔を勝ち取るために、でありましょうな。

大丈夫・・・モウ大丈夫ネ・・・
僕ハモウ・・・リトルジョージジャナイネ・・・

自分に言い聞かせるだけの言葉だった大丈夫。
それが今では相手を安心させるための言葉となっている。
後は本当に言葉通りに大丈夫になったということを皆に見せるだけでありますが・・・さて、そこは上手く行くかどうか。

次回からはいよいよ火の付いたジョージとの取組。
生半可な相手ではないですが・・・無事に取り終えて欲しいものであります。



第37話:四日目「鮫島-巨桜丸」F  (2015年 39号)


いよいよ始まる鯉太郎とジョージの取組。
ジョージの得意のパターンは立ち合い強烈な諸手突きを顔面に決めること
喰らえば間違いなく一発で脳が揺れる。そこを一気に突き押して決めてくるのだそうな。

やっかいなのはあの体で瞬発力もあるってところです・・・
突きをかいくぐりまわしを取る・・・持久戦で勝負です。

分析した結果を鯉太郎に伝える常松。頼りになりますな。
実際の取組だと上手くその通りに運ばなかったり、それはデータにない!とか言っちゃうけど、まあ最初は頼りになるよ。うん。

さて、今日も自分の取組で負けた大吉。鯉太郎にどんな顔で会えば分からない様子。悩ましいですな。
そんな鯉太郎について他所の部屋の力士。もっと楽な勝ち方があんだろと嘲笑する。まあ、そういう奴もいますわな。
空流がガチバカ集団であることは否定できないし、鯉太郎はその中でも特に飛びぬけている。
それ自体は否定できないことであるが・・・嘲笑される覚えはない。大吉だって怒る!!

とっ・・・取り消せよ・・・アホって言ったこと取り消せよ!!

上の階級である幕下相手。しかし鯉太郎をバカにされたのであれば引くことは出来ない。
うーむ、大吉も変わったものだ。

アホは君たちだろ!!楽に勝てないだろ!!相撲は楽に勝てないだろ!!
でも逃げないんだ!ボロボロになっても前へ前へ出るんだ!!お前らごときが鯉太郎さんを笑うな!!!

良い感じの気迫を見せる大吉。彼もまた空流の力士になったんですなぁ。
まあ、このアホたちは陰口たたくぐらいの連中なので、鯉太郎を目にしたらコソコソと立ち去るしかない。しょうもないねぇ。
それよりも大吉の今日の取組についてである。

前に出たんだろ・・・だから引き技で負けた・・・
それでいい・・・俺はお前に下がる相撲は教えてねーからよ。
自信持ってけ。自分の相撲に。お前は・・・大丈夫だ・・・!

負けて合わす顔のないと思っていた大吉。
でも勝敗以上に大事なことは自分の相撲に自信を持ちぶつかること。それが出来ているなら鯉太郎も満足してくれる。
いつか引き技も喰らわないぐらいに成長すれば、そこからは勝ち星もついてくるって話ですさね。
そしてジョージも救われた魔法の言葉。お前は大丈夫。大吉もこれを頂くこととなりました。
今後の大吉はこの言葉を胸に頑張っていくことになるんでしょうな。これは涙しますわ・・・

次は勝ちます・・・絶対に勝ちます!!負けるハズがないっス!鯉太郎さんから教わった相撲は最強っスから!!

泣きながらようやく笑顔を見せることができるようになった大吉。
うむ、実にいい兄弟弟子の関係でありますなぁ。眩しい。

さて、花道を歩く鯉太郎とジョージ。
せっかく笑顔になった大吉だが、さっき火を付けた相手が今回の鯉太郎の相手と知って仰天。ハッハッハ。

大吉の言葉のおかげで笑顔ではなくなったジョージ。
それは鯉太郎に言わせれば少しはいい顔になったというものだったりする。
うむ、大吉よ。胸を張っていいぞ。鯉太郎は喜んでくれている!!

それはいいのだが、さすがに幕内最重量との対決は鯉太郎もただじゃ済まなさそうで怖いんですなぁ。
まだ四日目何だし、どうにか大きなケガなく乗り切って頂きたい。



第38話:四日目「鮫島-巨桜丸」G  (2015年 40号)


角界最重量278kgと向かい合う小兵の鯉太郎。
押し潰されたらそれこそ圧死するのではないかと思えるほどの体格差である。
虎城親方もまともにいったら勝ち目はないと述べる。それをどう経験差で埋めるのか・・・
考えてみると先輩力士として戦う側になってる鯉太郎というのも珍しいんですなぁ。

もう迷いはない・・・皆の笑顔のためだけに・・・僕は戦う・・・
あなたには悪いけど・・・この一戦は土俵で戦っていくための決意表明・・・
見てて・・・皆・・・僕の覚悟を・・・

仮面の笑顔は消え、今は勝負に挑む一人の力士としての覚悟の顔を見せているジョージ。
これには寒河江部屋の仲間達も観客も驚きで見守るしかない。
そんな覚悟の表情を作り出す原因となった大吉は・・・ハハハ焦ってる焦ってる。
とはいえそこまで思い悩むこともありますまい。石川だってそう言ってくれる。あれ石川?チッス!
引退してフットワークが軽くなったというか、取組に出なくていい分、顔を出す機会が増えた感じですねぇ。

ともあれ石川は述べる。今さら相手のでかさにビビるような鯉太郎ではないと。
自身も含め、ずっとデケー相手とやってきたわけだし、どんなんが来よーが微動だにしねーよ、とのこと。なるほどね。

その発言の通り揺るがない・・・というか、むしろ笑みを浮かべる鯉太郎
覚悟の眼差しなのに笑み。その表情はジョージを惑わせる。
怖さを散らす仮面としての笑顔ではない。この味わいがジョージにも分かるようになるといいのですが・・・

ともかくいよいよ立ち合い!!
常松の予想通り、得意の諸手突きから入るジョージ。
これが決まると危険だが・・・両腕をかち上げ、下から弾き飛ばす鯉太郎。
そしてすかさず懐に入り込み、まわしを取ろうとする・・・が。

ズドッと鈍い音を立ててジョージの片腕で弾き飛ばされる鯉太郎。
まあ、肩で受けたのでダメージはそれほどではありますまい。
しかし懐にはそう簡単には入れない印象ですが・・・どうなるのか。
何とか投げに持って行ける形に早く入りたいところでありますな。



第39話:四日目「鮫島-巨桜丸」H  (2015年 41号)


最重量の張り手をその身に受ける鯉太郎。
肩で受け止めても体が軋むのを感じる。コレがまともに入ったら・・・終わる・・・

そういった認識をしておきながら、むしろ昂って笑顔を見せる鯉太郎。
うーむ、ある意味悪癖と言えるかもしれませんなぁ。そんなんだからボロボロになる・・・

さあ・・・どうする・・・どうやって・・・コレをブチやぶる・・・

とはいえこの圧倒的なまでの体格差。
相対する鯉太郎には本当に壁のように見えている。
コレをブチ破るためには多少の無理は仕方のないことなのかもしれません。

マワシを取りに行くにも懐が深すぎる。距離を取れば長いリーチの大砲がドンピシャで飛んでくる。
だからといって攻めあぐねているとどんどん張ってくるジョージ。
腕の伸びた完全な張りではないものの、この巨体から繰り出される攻撃は鯉太郎の体にダメージを蓄積される。
更に驚嘆すべきはこの巨体でありながらの瞬発力。回り込むにも隙が無い・・・!!

さすがに大物新人と呼ばれるだけの実力を兼ね備えているジョージ。
それに対し鯉太郎。張り手を弾いて逆にジョージへ突き押しを敢行する!!

よもやのジョージに対しての押し相撲!!
確かに相手の張りをいなすことができるのならそれも可能かもしれませんが・・・

ジョージの張りを弾きながら逆の手で張りを行う鯉太郎。
見事な技術でありますが、その弾く一動作により一撃の重さが拡散されてしまう。
これではこの巨体を沈めるぐらいの重い張りは打てませんわなぁ・・・

ならばどうするか。それは全て鯉太郎の笑みが語ってくれる。
弾いて打つのがダメならば・・・弾かずに踏み込んで打つ!!
もちろんジョージの張りを受けることになるが、それは覚悟の上という話だ。なんともはや・・・

とはいえ前に突進したことでジョージの張りは伸びきっておらず威力は不十分。
それに対し鯉太郎の張りは全身を乗せた完全なもの。ジョージの巨体を揺るがすに十分である。
が、そんな不完全な張りでも頭部に受けては無事ではいられない。
うーむ。やはり体格差の不利はなかなか覆せないものでありますなぁ。
というか頭部のダメージは・・・心配にさせられる。とにかく心配にさせられる。ううむ。



第40話:四日目「鮫島-巨桜丸」I  (2015年 42号)


鯉太郎とジョージ。同時に張りが頭部に炸裂し、グラつく。
相打ちのように思われたが、打ち勝ったのは鯉太郎。一瞬フラついたもののすぐに気を取り戻している。
まあ、それはジョージの方も同じようですけどね。278kgがモロに返ってくるカウンターを浴びたからって一撃では沈まない。

だが、一撃で沈まなければ何度も叩き込めばいいだけの話。
確実に効いた攻撃であるし、もう一度と繰り返す鯉太郎。
踏み込むタイミングが僅かでもズレれば逆に一撃で沈められるというのによくやる・・・

まともじゃやってらんねーんだよ・・・俺らみてーな体の足りねー奴は・・・

相撲に選ばれていないと述べた石川の言葉は重い。
体が足りないならば技術と心でそれを補うしかないってことでありましょうか。
しかしその覚悟は確実に体を蝕むわけでして・・・頭で受けているのが怖いなぁ。

ともあれこの攻撃は確実にジョージに効いている。
体が小さくいつも傷だらけのとても可哀想な力士。それが取組前に抱いていた鯉太郎のイメージだった。
しかしそれはまさに甘い考え。今までにない心の強さというものに触れるジョージ。これが土俵・・・沈むのは・・・僕・・・

嫌だ!

これまでの、笑顔で恐怖を押し殺していたジョージならばここで沈んでいたかもしれない。
だが、今のジョージは違う。恐怖に抗おうとしている。
その必死さからか、さっきまでとは違う、下から突き上げるような張りへと軌道を変化させるジョージ。
これには鯉太郎もタイミングが合わず・・・胴体にまともに喰らう!!

・・・・・・!?息が・・・

胴体なので意識が飛ぶことは無いが、肺が押し上げられて息が詰まり、動きが止まる鯉太郎。
その棒立ちの状態で今度こそ頭部に飛んでくるジョージの張り!!
ううむ、マズイ形となってきましたぞ・・・更にここぞとばかりに突きまくるジョージ。
ガードしていてもこの体格差。ダメージは蓄積していくだろうし、いつかは突き破られる。マズイ。

引っぱられましたな・・・巨桜丸は出会ってなかったんです・・・あそこまで己を剥き出しにする相手に・・・
ここまでは巨桜丸が強過ぎたと言えばそれまでだが、相手との差から余裕が生まれ取組に優しさが垣間見えていた・・・
非情さとは・・・必死さから生まれるものです

ジョージが相手を気遣ってしまってたのはやはり取組での余裕があるからなんですよね。
大吉が余裕あるじゃんと言っていたのはその点でありましょう。
負けられないという思い。その必死さから非情さは生まれる。なるほど。虎城親方は本当、いい解説をするようになった。

鯉太郎の強さがジョージの強さを引き出し、苦戦へと繋げる結果となっている。
皮肉な話だが、相手に全力を出させてしまうのも鯉太郎の相撲スタイルですからねぇ・・・
人気が出るに決まっている戦い方ですが・・・体のことを考えると本当に不安になってたまらない。怖いですわ。



第41話:四日目「鮫島-巨桜丸」J  (2015年 43号)


遂にジョージの張りをまともに受けてしまう鯉太郎。肺が押し上げられる・・・
が、それでも息を漏らすまいと噛みしめる。

息を漏らすな。覚悟が逃げる・・・
覚悟が逃げれば意識が消える・・・
来い・・・来い・・・来い!!

覚悟さえ決めていればジョージの張りを頭部で受けても耐えることが出来る。
プロレスラーみたいな考え方ですが、力士も耐久力は凄いらしいですからねぇ。

直撃が決まったのに倒れないどころか笑みを崩さない鯉太郎。
その鯉太郎の笑顔に恐れを抱きながら必死にラッシュを行うジョージ。必死さが表れてますな。

何なんだ・・・この人・・・一体・・・何なんだ・・・
入ってるのに・・・今までは皆一撃入れば沈んでたのに・・・
なぜ沈まない・・・なぜ崩れない・・・なぜ・・・引かない・・・
もういいよ・・・もういい・・・土俵で死ぬ気か・・・
やめてくれ・・・僕はそんなこと望んでなんていない・・・

優位に立ったことで必死さが薄れ、非情さも消えかけているジョージ。
それはすなわち油断に繋がっているわけで・・・鯉太郎に前に出てのカウンターを許す結果となる。
優しさは美徳ですが、この場でのそれは慢心とも言えますわな。
ようやくジョージもこのカウンターで鯉太郎の心構えが理解できた様子。鯉太郎は死のうとしているわけではない。

違う・・・この人は・・・僕を・・・殺す気だ・・・

向こうが殺す気で来るならこっちも殺す気で行く。
でなければ相手に失礼と考えるのが鯉太郎の信条ですからねぇ。

ダメだ・・・迷うな・・・全部の力を使わないと全部の力で潰される・・・迷うな・・・

一方的になりかけた流れを押し返す鯉太郎。
ジョージも甘さを捨て、迷いを捨てて迎え撃つ。両者の意地の壮絶なぶつかり合い。
とはいえさすがにこの体格差で正面からの打ち合いは無謀もいいところ。
馬力が違いすぎる。いや、ジョージの強さは馬力だけではない。激しく動いても芯がブレない。足腰の強さが感じられる。
とかく甘いと言われる寒河江部屋であるが、稽古はしっかりとしているわけですな。
ストレスのたまる上下関係などを排しつつも稽古はちゃんとしている。うむ・・・いい部屋じゃないですか・・・

意地や根性だけで倒せる相手ではないぞ・・・鮫島鯉太郎・・・

やはり色々と鯉太郎に注目している虎城親方。いい雰囲気だ。
それはいいのだが・・・鯉太郎へのダメージ描写がやたらに克明で凄い不安になってくる。
この勝負を制したとしても無事に済むかどうか・・・
回りも不安に思う鯉太郎の取組。だが本人の意志はとにかく凄まじいの一言。

まだだ・・・まだ足りない・・・もっと籠めろ・・・体の底から・・・力を・・・
この男を・・・沈める力を!
籠めろ・・・全部をくれてやる・・・

鯉太郎の渾身の張り。カウンターを狙ったそれは・・・諸手の張りに変えたジョージの前にタイミングが合わず撃沈!!
と思わせて土俵際。開いた左手でジョージのまわしを掴む鯉太郎。
あれだけ派手な撃ちあいをしておきながら、本当の狙いは左下手を取ることだったとは・・・!!
意地や根性でどうにかなる相手ではない。全部をくれてやるからには今まで身につけた全部を披露しなければならない。
となれば得意の左下手に持ち込むのは自明の理ってことでありましょうな。

ジョージがどれだけ投げに対応できるのか。
それは分かりませんが、決着は近そうな気がします。



第42話:四日目「鮫島-巨桜丸」K  (2015年 44号)


取った!得意の左下手・・・!!
土俵際であるし、さんざん張られてのダメージは確実にある。
だが、この形に持って行けたのはとにかく大きい。

こんなモノと力任せに振りほどこうとするジョージ。だがそれは簡単ではない。重い・・・

ダメだ・・・この人は見た目と違う・・・ダメだ・・・ダメだ・・・

改めて鯉太郎の覚悟の重さに慄くジョージ。
覚悟を、非情さを身につけたとしても、それを常時纏ってきた人間には直ぐに追いつけるはずもないですわな。
さて、ここで虎城親方の解説。

相撲は己の型に入れるかどうかが勝負の要・・・
上で通用する人間は必ず己の型を持ち、その型は己の力を十二分に発揮する・・・

上位陣の闘いはいかに自分が得意な型に持ち込むか、相手の得意な型に持ち込ませないかという闘いになるわけですな。
幕下時期でも王虎に腕を抱えられるとマズかったし、ああいうやりとりになったりするんでしょうな。
しかし今でも王虎は小手投げを乱用しているのだろうか。気になる。

王虎のことはさておき、今はこの取組。
いよいよ下手投げを行う鯉太郎。
今までほとんどまわしを取られたこともないはずのジョージ。こらえることができるかどうか。

ゴメンね・・・全力でやった。力全部出したよ・・・それでもこの人には勝てなかった・・・
勝ちたかった・・・みんなのため・・・みんなのた・・・

みんなのために勝つ。そのために偽りの笑顔を捨てて土俵に立つ覚悟を決めたジョージ。
だが、ここに来てようやくみんなのためだけではないことに気付いた様子。

違う・・・自分のためだ・・・
世界を変えるため土俵を選んだのは僕だ・・・
ここで諦めたらきっと何も変わらない・・・僕はずっと・・・リトルジョージのままだ・・・
諦めない。諦めない。諦めない。諦めない。
僕はもう、自分を諦めない!!

誰かのために戦う。立派な覚悟ですが、それだけでは自分を見失い、いつか潰れてしまうこととなる。
それが自分のため、自分の戦う意義であると気付けたならば・・・ジョージは大丈夫。これからは本当に大丈夫でありましょう。

僕ハ・・・僕ハ・・・巨桜丸丈治ダ!!

リトルジョージではない。巨桜丸丈治として土俵でやっていく。
その覚悟で鯉太郎の投げをこらえ、逆に押し潰そうとするジョージ。
よい感じである。が・・・ここで鯉太郎。かつて吽形さんが見せた切り返しを行う・・・!!
前に投げると見せ、体重を後ろに預けているジョージの膝を刈り、後ろへと倒す。
仏壇返しが相手の戻る力を利用しての投げである以上、これはその応用で行える感じでしょうか。

倒れるジョージ。その目に映るのは爽やかな笑みの鯉太郎。
相手を殺す気でかかる凄絶な笑みではなく、全力を出し切った相手に向けての感謝の笑みか。
それを見たジョージの顔に浮かぶのは本当に爽やかな笑顔。おぉ・・・

激闘は決着。本当のいいスマイルを手に入れたジョージでありました。
覚悟、非情さ、戦う意味、スマイル。
これらをこの一番で一気に手に入れたジョージ。
これからは迷うことなく力士としてやっていくことができるのではないでしょうか。
いい取組でした。



第43話:四日目「鮫島-巨桜丸」L  (2015年 45号)


切り返しが決まり、248kgの巨体が宙に浮く。
見事な技術。これぞ柔よく剛を制すか。
体こそ足りなくても技術と心で補ってみせる。それを証明した一番とも言えますな。
しかしこの切り返し後の2人の姿が何だかセクシーに思えていけませんなぁ。

オウ・・・楽しかったな・・・

ボロボロになりながらもそう述べる鯉太郎。
ともすれば勝者だからこそ言えるセリフともとれそうですが、本当にそう思ったのだから仕方がありますまい。
ジョージも鯉太郎がどんな気持ちで土俵で笑顔を見せていたのか分かったことでありましょう。

さて、この一戦を振り返っての虎城親方の解説。
この勝負は逆転ではなく明らかな経験の差によるものとのこと。
押し相撲と見せかけての得意の左下手。
あれだけ打ちあった後に実は・・・という流れ。それがあってこそ決まった切り返しというわけですか。なるほど。

この一番はきっと彼の相撲人生において大きな糧となるでしょう・・・
これからですよ・・・あの体に経験が加われば怖いものはないでしょう・・・

虎城親方もジョージのことは高く評価している様子。
自分の一門の力士だからってことではなく、大相撲全体を見て有望な力士を評価しているんでしょうな。
昔の虎城親方からは考えられないことで・・・いいですなぁ。非常に。

笑顔こそなかったものの、今日のジョージの熱い取組は観客たちに歓声を上げさせる。
負けても温かく迎えてくれる人達はいる。必死な想いが、全力の態度が見ている人にも伝わったのだ。
もちろんそれは寒河江親方を始め、部屋の皆にも言えることである。
うむ。いい部屋ですなぁ・・・ジョージもこれからは心から相撲を楽しめるようになることでしょう。
それでこそ寒河江親方の言う、楽しむ相撲を体現できることとなるわけですな。

ジョージは取組相手である鯉太郎について語る。
彼の笑顔は本当に怖かった。でも彼が連れて行ってくれた土俵はとても楽しかったと。ほほう。
しかし彼の笑顔は寒河江部屋の目指す笑顔とは別物のような気がするとのこと。

彼ノ笑顔ハ寂シイネ・・・

怖さもあれば爽やかさもある。だけどそこに共通してあるのは寂しさか。
相撲を誰よりも愛しながら、その体は相撲から愛されたものではない。
いつ終えることになるかもしれない土俵での戦い。
今日それが最後になろうとも全力を出しつくそうとする。そこから浮かぶ笑顔は・・・やっぱり寂しいと感じちゃいますわなぁ。

さて、戻ってきた鯉太郎に自分が相手を焚きつけてしまったと謝罪する大吉。
しかしそれに対し感謝で返す鯉太郎。最高に嬉しかったとのこと。やはりそう言いますか。

アイツは全力で俺を潰しにきた・・・俺も全力で潰しにいった・・・
有り得ねえ程の力をぶつけられて、絶対に負けたくねえって心底思ってんのに・・・
おかしいよな・・・笑っちまうんだよ・・・
俺はここで終わりでもいいって・・・

そんなことを笑顔で言ってしまう鯉太郎。
この笑顔が寂しくなくて何だと言うのか・・・!!
まだ四日目だというのに縁起でもないことを言わないで頂きたい。
しかし取組後に耐え切れずに吐くとか・・・どこまでボロボロになっているのか・・・

涙しながら最後まで支えますからと述べる大吉。
うむ。改めて大吉の心に大きなものを残すことが出来たみたいですな。
それは良かったが、負けたのに綺麗な笑顔に包まれた寒河江部屋と、勝ったのに消沈気味な空流部屋のこの対比は・・・
未だ四日目というのに、これはどうなってしまうのだろうか。
あまり無茶せずに休場も視野に入れて欲しいものであります。

最後の十五日とはいえ、一場所連続で十五日とは限らない!!
休場を挟み、次回からは次の場所の五日目から再開って可能性も充分有り得る!!
いやほんと、無事でいて欲しいのでありますよ・・・




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