蒼天紳士チャンピオン作品別感想

ハンザスカイ
第91話 〜 最終話


作品別INDEXに戻る   週刊少年チャンピオン感想TOPに戻る

 バックナンバー

 第1話 〜 第30話 (2010年 7〜38号)   第31話 〜 第60話 (2010年 39号〜2011年 18号)

 第61話 〜 第90話 (2011年 19号〜2011年 50号)   第91話 〜 最終話 (2011年 51号〜2012年 26号)



第91話・痛ぇけど  (2011年 51号)


自らのふがいなさに怒る半座。
その攻撃はこれまでと違っている。吹越さんの目にはまるで別のものに映っている。
溜めが――ない!

あの吹越さんが読めずにまともに食らう。
一体半座に何があったのか?不思議に思う結城や国島太陽。
ケガをしたからだ。とまではさすがに気付かないか。

攻めだ!
時間内の動き・・・全部攻めに使う!
間合いを測るだの、アイツの動きに合わせるだの、んな余裕はねぇ。ねぇんだよ・・・

足のケガはかなり痛んでいるらしい。
小細工をしたくても出来ずにいるようだ。

再び向き合う2人。吹越さんは、相手の重心を見て動きを察知し、崩そうとする。
バネを作って、まっすぐ突っ込んでくる所を察知して崩せる。
はずなんだけどっ!?

バネが作れねぇ。
みっともねぇケド、倒れ込むようにしか前に出られねえっ!!

これぞまさに怪我の巧妙。
溜めや反動を伴う動きなら、陰陽があり吹越さんは簡単に見破ることが出来る。
今の半座にはそれがない。バネだったはずの前足の力が抜けて緩やかに前進しているんだ。

吹越さんが見切れていない。その様子を観客席の選手たちも感じ取る。
そして、再び。半座の突きが吹越さんを捉える。
今や、半座の足の怪我は猛烈な痛みを伴っている。
だけど、ここで負けたらなァ――もっと痛えんだよ!!

ここにきてポイントを詰める半座に仲間達も大盛り上がりだ。
それとは逆に、観戦していた選手達は半座の力に冷や汗を流しつつある。

オレの技だ・・・

一ノ橋の大将、工藤さんが呟く。
技の出所を悟らせないよう、脱力して倒れこむように突きを極める・・・
間違いない。
半座の奴、無拍子を使っている・・・!

白帯が、無拍子なんて高等奥義を・・・!?
ざわめく観客。まあ、偶然なんですけどね。
そうと知らない観客には、こいつは何者なのか!と慄くに足りる出来事でしょう。
観客だけでなく、対戦相手にもその戦慄は伝わっている。

残り1分で4P差。それが20秒で1P詰められ、さらに6秒でもう1P詰められる。
このままでは、もしかしたら・・・不吉な考えが徳良さんを襲う。

勝たない僕に――意味は無いからね。

吹越さんのあのセリフ。
もし、吹越さんが負けてしまったらどうなってしまうんだろうか。
徳良さんは不安でしょうがないらしい。
だから、ついやめてくれ・・・とか言っちゃいます。
なんというか、どこまで心配性なんでしょうね、徳良さん。いい人ではあるんでしょうけど。
むしろ、こういう荒療治を受けてこそ、吹越さんもみんなと同じ目線に立てるかもしれないのに。

偶然の無拍子により、半座の勝ちの可能性が出てきました。
しかし、吹越さんも持ち技は崩しだけではない。突き技も一流である。
危なくなれば、そちらでのポイント取得に移る可能性もある。はてさてどうなるか。

そういえば、無拍子ならば吹越さんに対抗しうるということは、工藤さんなら勝てるんだろうか?
その考察は面白そうですな。
まあ、最初から使える相手だとわかっているなら、吹越さんもそういう戦い方をするでしょうけど。
今回は突然半座の動きが変わって戸惑っている間にポイントを奪えたという感じですな。

できれば、この後の個人戦で吹越さん対、工藤さんとかそういった対決を見てみたいものですなー。



第92話・乱れる竜  (2011年 52号)


アクシデントによる半座の変化に苦戦する吹越さん。
彼は試合前に言っていた。勝てない僕に意味は無いからね、と。

やめてくれ・・・これ以上・・・これ以上アイツを・・・!

表情を歪めて懇願する徳良さん。
どうやら試合前の言葉を凄く重く捉えているらしい。
本当に負けてしまったら、アイツ壊れてしまう!とか考えているんでしょうか?
仲間思いとは思ってましたが、少々過保護すぎる面が飛び出ちゃった気がしますな。

残り時間は30秒をきった。ポイントは2点差。
リードしている状態でわざわざ無理をすることはない。距離を取る吹越さん。
この行動は賢明だと実力者達は言う。

出所のわかりにくい無拍子と、それに合わせようとする崩し技では相性が悪い。
一足一拳の間合いから外れて、小技で応戦するのが定石である。

なるほど。最初から無拍子が使える相手ならば、そもそも崩し技は使ってないわけですな。

・・・悪いね。最高の時間を過ごせてるけど、それでも勝つことが前提なんだ
そろそろおしまいだよ。

追い込めそうであったが、再び余裕を取り戻す吹越さん。
しかし、その背中に叩きつけられる仲間の声援。

吹越、がんばれー!!

この思いもよらなかった声援に戸惑い動きを止めてしまう吹越さん。
硬直中に半座の突きをうけてしまい、1P差に詰め寄られてしまう。あらら。

何だ、今の。聞き間違いかな。応援された?

凄い戸惑っている吹越さん。
凄く絶妙のタイミングでやらかしてしまった徳良さん。
それでも、常識人の徳良さんとしては、ピンチの仲間には声援を送るものだとしか思えない。

仲間が戦ってるんだぞ!今、俺たちが出来ることは、ひとつだけだろうが!!

徳良さんの激を受けて、要陵メンバー全員が声を張り上げる。

な・・・なんだよ、なんなんだよ・・・
やめろ。やめてくれ!
まるで僕が、弱いみたいじゃないか!

まあ、少なくとも追い込まれてきているのは確かですからねぇ。
しかし、吹越さんもそういうプライドはしっかりとあったんですな。割と意外だ。

応援されて、かえって戸惑いまくる吹越さん。
普段から声援を受けているならともかく、いきなりされたのでは力に変えることもできないか。
精密な攻撃がウリの吹越さんが乱れてしまうと、かなりグデグデになる。
距離もタイミングも無茶苦茶なカウンターをしかけ、もつれて半座と共に倒れこむ。
残り数十秒でこの乱れ方はまずい。
それを感じたわけではないが、半座が笑う。

なんだ・・・アンタ全然一人じゃねぇじゃんかよ・・・

仲間と共に戦う方が強い!それが半座の主張だった。
一人の方が強くなれるからねという吹越さんとは違う、と。
吹越さんが一人じゃないんだと知ったのなら、半座としては主張は達成できたことになる。
やはり一人だから最強なんじゃないんだ、この人にも仲間いたんだ!と思ってるんでしょうな。
まあ、実際のところは、その仲間の声援のおかげで乱れまくっているわけなのだが・・・皮肉だのう。

何を言ってるんだ。僕は一人だ。
誰にも頼らずやってきた。誰とも比べず、ひたすら自分と向き合うことで迷い無く精進してきた。
この歩みは・・・僕の誇りだ。

一人でいいんだよ。強けりゃいいんだよ。こんな応援・・・いらないんだよ!

実際、誰とも比べることなくここまで強くなれたのは凄いことである。
それについては誇ってもいいと思う。
でも、やはり歪んでますなぁ。強ければそれでいいんだと言い出すとは。捻くれて星を睨んだりしていそうだ。

いらないと思ってても、背中に声援が叩きつけられます。

やめろっていってんだろ!
もともとは、お前たちが、僕を一人にしたんじゃないか!

言ってないじゃないですか吹越さん。
この辺りのコミニュケーションの取れなさが大きな問題として顕現しちゃったって感じですな。
思ったことがあれば声を大にして言うべきだったということか。むう、難しい話ですなぁ。

吹越さんの乱れの隙をつき、半座の上段突きが再び入る。
試合終了間際、ついに同点に追いついた!!
これには番場さんも、もの凄い顔で驚いている。まさかここまで健闘するとは!バンビックリ。

圧倒的な実力差があるのであれば、精神的な揺さぶりをかけてその差を埋める。
戦術としては全く間違っていない流れですな。
でも、まさか仲間同士で勝手に揺さぶりかけたりしだすとは思わなかったです。
このまま吹越さんは逆転を許してしまうのだろうか?
それともこのまま引き分けにもつれ込む流れか?
いずれにせよ、残りの時間で応援を受け入れるだけの心情の変化は訪れなさそう・・・
試合後が揉めそうだなぁ。ううむ。

まあ、吹越さんは一度感情を表に出したほうがいいとは思う。愉悦は試合で出してるけど、それ以外も。
試合後、河原で徳良さんと罵りあいながらケンカするぐらいでいいのかもしれない。
感情的になっている吹越さん相手なら徳良さんでも戦える。
そして、夕日を浴びて仲直りという王道展開だ!うわーい、ベタベタ。だが、それがいい。それでいい。



第93話・くらだねぇ  (2012年 1号)


半座の上段突きが吹越さんをとらえ、ついにポイントは五分に。

最初は――正直びびってたよ。
得体の知れねぇモン相手してる気分だったんだよ。
でもアンタ――全然一人じゃねーじゃん。
仲間の声を背にして戦ってんじゃん。俺と――同じじゃん!

確かにシチュエーションは同じかもしれないけど、意味合いは大きく違ったりする。
まあ、部外者の半座にそんなこと分かりようもないでしょうけどね。
普通はピンチのときに声援を受ければ力が湧いたりする展開になるものだが、吹越さんは違う。ややこしい。

僕が・・・勝ててない!?

同点においつかれたことで凄く動揺している吹越さん。
なんだかんだで勝敗にはかなり拘りがあるんですな。

このままじゃ僕は・・・!僕はっ・・・

徳良さんが、負けたら居場所がなくなるんじゃないかと心配していた。
やめてくれ発言はそこから出ていた。
その時は、心配しすぎだろと思ったが、どうも本気でそんな風に吹越さんが思い込んでいそうな気配がしてきたぞ。

苦戦する吹越さんに何かアドバイスはないかと問う。が、そんなものはない。

俺たちが吹越さんにしてやれたことなんて、今まであったかよ・・・

能登はどんどん普通のキャラになっていっている気がするな。
まあ、要陵の先輩2人が濃すぎるからしょうがないのかもしれないけど。

思えばそうだ。俺たち・・・そうやってあの人を、離れた所で見てたんだよな・・・

ようやく、自分達が孤立させてしまっていたことに気付きかける2年生達。
とはいえ、それがどれだけ根深いことかまでは気付けずにいる様子。
せめて声だけでも力になるしかないと声援を送ろうとするが、吹越さんに睨まれる。
これだけ余裕のない吹越さんの顔を見たのは初めてだという能登。ううむ。

勝てない僕に意味はない。

この言葉が思った以上に深い意味を持っていたようだ。
負けそうな状況に重圧を感じている吹越さん。そんなメンタルで大丈夫か?と問いたくはある。

もしアイツが、本気でそう思ってるとしたら。
自分の意味が「勝利」だけだと思ってるとしたら。
今、その意味すらなくなりそうだとしたら・・・

・・・くっだらねぇ!
俺たちのせいかもしれなくても。
・・・お前もお前だぜ。くっだらねぇっ・・・!!

吹越さんは思い起こす。中等部の頃のことを。
どうやら吹越さんと徳良さんはそのころから一緒にやってきた仲だったらしい。
この頃は徳良さんの方が強かったのか、経験が早かったのか、徳良さんだけ黒帯である。

少なくとも俺たちは、勝てなくたって、弱くたって、一緒にやってきたじゃねぇかよ・・・!!

徳良さんが吹越さんを過剰に気にかけるのは、かつて一緒にやってきた仲間だという面があるからか。
しかし、どうしてそんな差がついてしまったのでしょうかねぇ?
徳良さんの面倒見が良すぎて後輩によくしていたから、吹越さんとの距離が広がっちゃったのかしら。
強くなってからは一人で鍛え上げていたのかもしれない吹越さん。
しかし、それまでは一緒にやってきた人がいる。それを思い出して欲しいものである。

それはそうと、中学の頃の吹越さんがやたらと可愛いのだが、なんだこれ。徳良さんに乗っている姿とか。
そして徳良さんは昔から黒かったんですね。でも老けてはいない・・・こともないか。

あと10秒ちょっとである。
勝てていない状況。負けなくても、たとえ引き分けでも吹越さんにとってはNGなんでしょうな。
そんな吹越さんの背中に大声で呼びかける徳良さん。

吹越コラアーッ!
なんてグダグダ晒してんだ。
てめぇなんざとっとと・・・負けちまえ!!

負けても、弱くても!それでもお前は――

突然何を叫びだすのでしょう、このお人は。
負けても弱くても、お前は仲間だ友達だとでも言いたいのでしょうか?
それはわからないでもないが、試合中に言うことであろうか?肝心な部分言ってないし。
この声を受けて吹越さんはどう動くのか。
勝つか負けるか引き分けか。土壇場になってもわからない状況です。

だけど、要陵はどれにしても大変ですよね。
大将がさっさと負けちまえ宣言なんてかましてしまったんですから。
色々と尾を引きそうである。うまいこと片付くのかしら。

あとサブタイトル。くらだねぇとは一体なんでございましょうか?くっらだねぇ。
ここで誤植されると、訂正していいのかどうか迷ってしまうので困るのだが・・・
とりあえずそのまま載せることにしました。単行本では直ってるかな。



第94話・ガチンコ上等  (2012年 2+3号)


天翔ける龍と竜の闘いも終盤。
追いつかれて敗れそうな吹越さんに、負けちまえと暴言を吐く徳良さん。
これには観客もどよめく。
そして、やはりその後の大事なことは言わない徳良さん。
おかげで吹越さんはさらにぐらぐらと揺さぶられている。やめて!もう吹越さんの精神ポイントは0よ!

勝たないと意味がない。負けたら居場所は無い
そんな僕に――負けちまえってどういうことだよ。

その居場所が無くなるというのが勘違いなんですけどねぇ。
徳良さんもそこまでハッキリ言ってくれないから困る。

半座の無拍子。だが届かない。
無拍子は初撃の察知しづらさが武器なのだが、その一発目が届かない。
吹越さんは距離をとって対応している。ケガして動き回れない半座には厳しい状況だ。
それでも苦しみながら前に出て迫る半座。
吹越さんは動揺しまくりで手が出せずにいる。

確かに――半座君は強い。
残り10秒ちょっとで同点から逆転。それくらいやりそうな勢いだよ。
負ける――そしたら僕は――

っておい。ちょっと待て!
負けちまえって言われて、はいそうですねって、負けられるかよ?

密着した状態での吹越さんの突き、交わした半座に対し中段蹴りを見舞い、再びの上段突き。
珍しく二人の方向が左右入れ替わったのでわかりにくかったが、吹越さんのポイントである。
ようやく引き離すことに成功したが、吹越さんらしくない戦い方だ。
国島先生も神妙なような面白い顔で見守っている。

大体――オマエに言われてってのが面白くない!!

揺れながらも手は出すようになった吹越さん。
だけど、精密さはすっかり失われている。だからこそ、半座のカウンターも決まる。
ケガで動けず、無拍子のような殴り方しかできない半座には今の状況は都合がいい。これで再び同点だ。

よくわかんねぇけど――随分近づいてくれたじゃねぇか。
ありがてぇぜ。ガチンコ上等っ!!

くっそおお!!

笑顔を見せる半座に対し、真剣な表情の吹越さん。
要陵の後輩も、吹越さんの雄叫びなんて初めて聞いたと言っている。

――勝ってやる――
勝って――戻る!!

なんだかんだで、勝利への気迫だけは戻ってきているようだ。
頑張れと言われて揺らいで、負けろと言われて揺らいで。
揺れた天秤がだんだん戻っていっているような感じですかねぇ。
徳良さんのショック療法がいい方に働いているといえなくもない。
でも、さすがにこの短い時間で完全に平常の状態に戻すことは無理みたいですね。

勝って戻ると吹越さんは言う。だけど、それは関係ない。

変わろうが、負けようが――吹越は要陵だ

力強く宣言し、後輩たちもはいと答える。
残り5秒。もうどっちに転がってもおかしくない。一つの技が勝敗を分ける状態だ。
両方の応援もここぞと過熱する。
加熱しすぎて、もなかちゃんがやけにエロ可愛いことになっている。加熱してるならしょうがないよね。

引き分けじゃ終われねぇ。この試合――勝つ!!

長かった戦いもようやく終わりを迎えそうですな。
今回の展開で、吹越さんが負ける可能性が凄く出てきました。
負けて帰ったけど、温かく迎えられるという展開でしょうか?
吹越さんがどういう風に受け止めてくれるかが問題となるでしょうな。
大将戦で徳良さんに声援を送る吹越さんとかが見れたらよいんですけどねぇ。



第95話・俺に出来ること  (2012年 4+5号)


残り5秒でポイントは同点。
だが引き分けでは終われない。勝つ!
クライマックスを迎えて両者の闘志と応援の熱も最高潮。
まあ、吹越さんは空回りしている感じがしないではないですが。
試合前の落ち着きを取り戻せてさえいれば・・・難しいでしょうけど。

勝って――戻る!
オマエには言いたいことが沢山あるんだ。
――だから。そこに・・・いろよ。いろよ!

吹越さんの飛び込むような突きを払う半座。
その動きだけで負傷した足が痛む。痛ってぇ。

痛くても――番場は勝った
その勝ちに対する野田の熱意が――俺に気合を入れてくれた。
絶対に外せねぇ一発。
改めて思い知る。この一発に全てを込めて研ぎ澄ます財前の緊張と・・・
重圧!
大将として――全員分の重圧を青柳は背負ってるんだ

・・・凄ぇよ。
こんな凄ぇ奴らの中で、俺に出来ることって何だ?

託された願いはひとつ。勝ってくれ。なら出来ることは決まっている。だろ!?

一撃の距離が決まるところまで近づく両者。
残りは3秒。突きひとつで勝負は決まる。
龍を背負う半座龍之介か
竜を背負う吹越竜之介か
両チームの明暗を分ける先鋒戦の行方は次回に続く。

続くのかい!!
さすがにここで決着かと思ったから、ちょいと驚きでありますよ。
しかし、最後の見開きを見る限りだと、どちらかの拳が決まったという感じはしない。
どちらも当たってないと見るべきか、どちらも当たったと見るべきか。
相打ちなんてあるんですかね?
結局引き分けで終わるという可能性はありますな。
お互い勝って戻ると誓いながらどちらも果たせない。
その無念を引きずりながら、迎えられることで仲間の大切さを知るとかそういう。ありそうだ。



第96話・なにもねぇ  (2012年 6号)


IH決勝戦、先鋒戦がついに決着。
最後に同時に放たれた打ち合いを制したのはどちらか。
仲間が、ライバルたちが半座を見守る。
だが、拳を引いたのは吹越さん。
半座はケガした足をこらえることができず、倒れている。
ここで菅野先生もようやくケガのことに気付いたらしい。
って先生いたのか!?いや、いたに決まってるんだろうけど、姿が見えなかったからさ。

審判から止めの合図が出る。
そして、吹越さんの突きがポイントとして有効であると判定される。
これにより、先鋒戦は青、吹越さんの勝利となるのでありました

正直どっちが勝ってもおかしくない戦いであったと見ていたものたちは称える。
勝負の前、というか始まってしばらくは吹越さんの完勝ムードだったのにねぇ。
両者の健闘を称えて拍手が送られます。

菅野先生は、半座がケガをしていたのに気付かなかったらしい。
無拍子に隠されて気付けなかった。と言ってますが・・・いきなり無拍子を使い出したあたりで気付きましょうよ。
国島先生は動きがおかしいとちゃんと気付いてたっていうのにー。

一方、勝って帰ることができた吹越さん。
こんなに思い通りにならない戦いは初めてだ。強かったと半座を評する。
いや、まあ。思い通りにならなくなった原因は、背後からの声だと思いますよ。
その思い通りに動けなくさせた最大の原因のもとに引き上げる吹越さん。

ともあれ、勝ったぞ。見たか!徳良・・・

はい、見てました。満面の笑みで出迎えようとしています。
どうよこの顔!吹越さんを精神的に揺らがせた元凶なのにこの笑顔!
隣の中堅の子がひきつった感じの笑みだというのに、対照的過ぎる。能登さんもいい笑顔してるけど。

負けちまえとか言われて、見返してやると思った吹越さんだが、こんな笑顔されてはそういう気分にもなれないか。
徳良さんの上げた手に拳を合わせる。
顔を背けてるし、ハイタッチ的なものじゃないけど、まあスルーするよりよっぽどいいですわな。
やはりこの2人は一度ケンカしておくべきでしたね。
そうやって分かり合っておけば、ここまで精神的に揺らぐこともなかったでしょうに。

さて。敗れた半座。野田に次を託す。
そして、穂波嬢に向かって頭を下げる。
勝ってくれという願いを叶えることができなかった。
先鋒の火付け役としての役目は果たせたかもしれないけど、勝てなかったという結果は結果ですからねぇ。
その半座の様子を見た穂波嬢の表情はなんだか気遣わしげである。
最強に勝ってほしいなんて重さを背負わせた負い目が多少はありますのかね。

試合を終えた半座は思う。

何も――ねぇ。
充実も、達成感も。なんもねぇ。ただ汗だけが冷てぇ。

そっか・・・これが――負けか・・・

初の敗北を味わった半座。その胸には虚脱に使い物が押し寄せているように見える。
そして、その半座に続くのは、これまで勝利を味わっていない野田。
負け続けてきた男が、初めて負けた男に何を見せるのか。これは注目の一戦である。

野田は自分が負けた後も精一杯仲間を応援してくれた。
半座もそのことを思い出し、仲間の応援をしてくれるようになると嬉しいですな。
そして、野田の念願の一勝をこの決勝の舞台で!頼むで!



第97話・はらくくる野良犬  (2012年 7号)


敗北の苦みはもういらない。
御門の負け犬・野田ケン太。欲しいものは勝利のみ!

負け犬とか野良犬とかえらい言われようですな、野田君。
まあ、名前が野良犬っぽいからしょうがないのかもしれないですけど。
もっと野良犬っぽく荒々しくなれてたらよかったかもしれないですな。

初の黒星を味わう半座。それを見つめる野田君。

・・・俺さ、一度も言ったことねぇ、一度言ってみてぇセリフがあんだよな。

中堅の南に勝てよと声をかけられる野田。元気よく応える。

任しとけ!!

というわけで、始まりました決勝の次鋒戦。

野田ケン太 1年 174cm、64kg
尾形 礼 2年 173cm、62kg

身長、体重ともにほとんど差はない。あとは技量と精神の差である。
はじめの合図と共にいきなり仕掛けてくる尾形。
上段突きを受けてしまい、まずは1ポイント先制される。
続けて開始。尾形は勢いよく攻め立てる。
これには理由があった。要陵の選手は準決勝の試合を見ている。
つまり、野田がスロースターター。後半爆発型だと見抜いているのだ。

裏を返せば前半はすこぶるモロい。
今のうちにたたみかけて気圧して――心を折るんだ!!

作戦としては非常に正しい。
後半まで持ち込ませず、一気に8点差をつけて終わらせようとする尾形。
しかし、ここで野田の見事な中段突きによるカウンターが決まる。おーカッケェ。

続けて始め。
今度は野田が連打を行う。
なんと、あの野田が・・・序盤から飛ばしている。いや、飛ばせている・・・!

体が温まるまでは激しい動きができないんじゃないかと思われた野田君。
それがいきなりのラッシュを見せている。
凄いじゃないかと褒める穂波嬢。別人を見ているようだと評する番場さん
昔から野田君を知っている2人が驚く動きだ。

一体どういうことだ?と分析を開始する番場さん。そんなにマジに考えなくても。

野田君としては、まさしく背水の陣といった心持ちなのである。
試合前に言ったセリフ。一度言ってみたかったセリフ。任しとけ!

もう嘘はつけねーな・・・

いや、嘘ってなんだよ。元々勝つつもりでココにいるんだっつの!!
負けて、励まされる。あの展開はもう――こりごりなんだよ馬鹿野郎!!

連打から逃れ、スペースが出来たところを狙い打っての前蹴り。
これが見事に決まり、2ポイントの差をつくることに成功する。るあーっ!!

さらに野田の攻勢。頼もしいくらいの猛攻であるが、それを見て不安そうにする菅野先生。
まだ試合は1分半もある。

もつのかしら?

野田がスロースターターなのは、体が温まるまではムリができないようになっているからなのかもしれない。
そんな風に出来ている体をムリに動かしている。
そうなると、後半でそのツケが回ってくるんじゃないかと菅野先生は危惧している。
せっかく野田君が活躍しているというのに、水を差さないでいただきたい。まあ、わかる話だけど。

後半は野田君の根性が試される展開になりそうですな。



第98話・猛犬  (2012年 8号)


負け犬・野田が奮起!!
頑張ってこの屈辱的なアオリから抜け出すのだ!!

負けたくねぇ――慰められる展開は懲りごりなんだよ!!

スロースターターの野田君に対し、先行しようとしていた尾形。
しかし、逆に出端をくじかれる形となってしまった。
予想外の猛ラッシュ。
距離を取っても、どどどどと迫ってくる。なんだか、こう不器用な感じがいいな。

戸惑わせることはできた。このまま押し切る!
なんてことができればよかったんですけどね。そんな甘いワケはない。
攻撃の隙間を縫うようにして上段突きを食らう野田。
ドンマイドンマイ。時間はまだあるぞ。とり返せ!

そう激を飛ばす南であったが、戻ってくる野田君は既にグロッキー状態。ぜーはー。

まだ試合は半ばにも達していないというのに、明らかにガス欠状態になっている。
そりゃそうだ。終了10秒前かというぐらいの勢いで飛ばしているのだもの。当然そうなる。
負けたくないという意識が強すぎて、無茶な攻勢に出すぎてしまったようだ。

へとへとになりながらも、意地で前に出る野田。
しかし、その拳に精彩はない。簡単にカウンターをもらってしまう。
さすがにマズイんじゃないかと気付きだす御門の面々。

あれだけ飛ばしてりゃ誰でもそうなるよ。
まして――顔に出てるよ。この試合展開不慣れだろ?そういうのは倍に疲れるんだぜ。

少し焦らされたケド、オマエのは奇襲じゃねぇ。自爆だ!!

全くでございますな。
負けられない意識が不慣れな戦いに飛び込ませ、自爆しているように見える。
ついに逆転を許してしまう野田。このままではずるずると流れを持っていかれてしまう!

と思いきや、そんなへとへとの状態でも拳を突き出し、再び同点に持ち込む野田。いい根性だ。
これには尾形も驚いている。なんだよ。死にそうなハズだろ!?

死にそうだよバカ!
でもよ、死ぬよか嫌なことがあんだよ。

負けたくねぇ。
まだ1勝もしてねぇんだよ。御門の力にまったくなってねぇんだよ。

お荷物――
・・・言われたことはねぇ。言うような奴、御門にゃいやしねぇ。
言うとしたら――俺しかいねぇだろが!このお荷物野郎!!

誰よりも、その戦績を情けなく思っている野田である。
その悔しさを怒りを自分にぶつけようとする野田。対戦相手が自分に見えているぐらいだ。

甘ったれんじゃねぇぞ。だから弱ぇーんだよ、おめーは!
悔しかったら勝ってみやがれ。
さもなきゃ――死んじまえっ!!

自分自身だからこそ言える罵倒ってやつですね。
この気迫の連激により、ポイントは6対6の同点。
死にそうではあったが、勢いがついたおかげか表情に生気が戻ってきているように見える。

残り30秒。ここからどう転ぶかはまだわからない。

このまま終われるか!勝つのは俺だ!

初の勝利を掴むことができるのか。意地の30秒である。
果たして勝てるのか!?
引き分けで終わるという可能性が凄く出てきた気がしないでもない。
根性振り絞って戦え野田!

しかし、今週を見ると、ちゃんと半座も野田の応援をしておりましたね。
フキダシが描かれてはいないが、声を出している描写はあった。
野田が勝って戻ってきたら、どんな風に思うのだろうか。
逆に勝てずに戻ってきたら、どんな風に出迎えるのだろうか。その辺りも気になりますな。



第99話・牙 届かねど  (2012年 9号)


取られて――取り返して――残り10秒!
勝利の味を知りたくて必死な野田。
よく追いついた!と褒められるが、ちっともよくねえ!
さっきから離されては追いついてまた離される――ちくしょう!
俺がリードしないと・・・!

引き分けでは終われない。とにかく勝ちたい。もちろん負けたくなんてない。
そういった思いを乗せて前に出る野田。
一方の尾形は、気付いた。
相手のペースに巻き込まれていたことに。こんな泥試合・・・いつまでもやってられるか!

前に出た野田に合わせず後ろに下がる尾形。
ここは往なして呼吸を整えてから反撃に移る。そういう考えらしい。

だが、野田からは逃げられていくようにしかみえない。おいっ!?逃げんなよ!!

時間ねぇんだ。勝たなきゃいけねぇんだ。せめて機会くらいくれぇーっ!!

必死で追い込みをかける野田。
だが、そこで主審の止め!の合図。
終わってしまったのか?今回もまた勝てなかったのか・・・?
いや、まだ時間は1秒残っている。終わりではない。
主審が止めたのは、尾形の行動に警告を与えるためだったのだ!

ルールの第8条:禁止行為にはこのような記載がある。
相手に得点を取られないように格闘を避けること、と。
相手に得点の機会を与えないよう、反撃をせずに絶えず後退した場合、忠告または罰則を課す。
後退に限らず、組み合ったり場外に出た場合も禁止行為となるわけですね。
残り時間が10秒未満であった場合、主審は違反者に警告、相手に有効(1ポイント)を与える。

半座が練習試合で峰岸相手に下がり場外に出たときも警告を受けていましたね。
あのときは、1回目は忠告だけだった。
けど、今回は残りが10秒未満であるため、警告をもらい、かつ野田に有効が与えられる。

残り1秒で逆転!
続けてはじめ!の合図の1秒後に、試合終了の構えをみせる主審。
どうでもいいけど、派手な動きだ。ノリノリに見えるぞ主審。

赤の・・・勝ち!!

まさかの決着。よもや最後の最後は警告による勝利だとはねぇ。これは思いつかなかった。
敗れた尾形はかなり悔しそう。そうでしょうね。
逆に勝った野田はなんとも実感が薄い。

俺・・・勝っちゃった・・・?初めて・・・

・・・もちっとマシな勝ち方はなかったのかな。
ガーッて点とったり、ワーッて叫んだり。あんま実感ねぇぞ・・・

微妙な勝ち方になんとも、という表情を見せる野田。しかし、戻ってきたときの歓声が凄い。

野田ー!!!

半座や南、財前さんが野田を叩いて祝福。
観客席にいる番場さんや穂波嬢も大声で勝利を祝福してくれる。でかしたぞー!

気迫勝ちだ。次鋒がお前でよかったぜ。

青柳さんのセリフで野田に笑顔が生まれだす。そして半座のこのセリフ。

野田。すげぇわお前。ありがとな

このセリフを受けて、ようやく満面の笑みを浮かべることが出来た野田。

俺、勝ったよ

初めての勝利。満面の笑みとともに叫ぶ野田。よかったよかった。
それにしても、半座は素直に野田の勝利を喜んでくれてよかったですやねぇ。
自身の敗北に浸ったりしないかという不安があったのですが、それは杞憂だったらしい。
むしろ、自分の負けを取り戻してくれてありがとうと礼を言っている。
だからこそ、野田はより誇らしく思えて笑顔になれたんでしょうなぁ。

さて、次回は100回記念のセンターカラーでございます。
その記念すべき回で、南が初登場!えぇ!?
これはもしや、南が今後キー選手となっていくというフラグでは!?御門のぶってー柱となるのか!?
と見せかけて、怪我で出られない番場さんの想いだけで終わっちゃったりして。ありうる。



第100話・背中  (2012年 10号)


連載100回記念のセンターカラー!
御門陣営全員集合。道着だと全体的に白っぽくなるのが難点ですな。半座の髪色が頼りだ。

そして、10巻が2月8日に発売。
カバーも熱くリニューアル。これはなかなか気合が入っていい表紙。カッコイイ。

さて、本編。
ケガで出れない番場さんに代わり、大会初の出番となる南。

南 昭則 1年 170cm、65kg
弓削 剛 2年 173cm、71kg

体格に大きな差はない。
南は少し痩せている感じがありますけど、ポイント制の空手道としては体重差はそんなに影響ない。
始めの合図と共に前に出てくる弓削。
それに対し、番場さんがカウンター!!ってあれ?

観客席で拳を振るうものだから、ずっこける番場さん。ケガしてるのに何をしているんだ。
試合場では、南が上段突きをうけてポイントを取られていた。

俺なら、先の先でもぐりこんでの中段突きだったが・・・

やはり出れないことに対し、忸怩たる想いがあるようだ。
特に自分が出るはずだったこの中堅戦ではそういった想いが顕著に現れている。

続けて始め。
迫る弓削に端へと追いつめられる南。
ならばと前にでようとするが、それは追いつめるフリ。出端をくじくように横からの上段突きを放つ弓削。
これが決まり、ポイント差は2点に。
差を広げられた南は焦って突っ込むが、泥沼。
中段突きを受けて、3点差に広げられてしまうのであった。

怪我による棄権。それ自体は納得してのんだつもりだ。
それにしても。それにしても――こんなにも歯痒いものか”見てるだけ”とは・・・!

ふがいない戦いを見せる南に対し、肩を震わせる番場さん。
気持ちはわかるけど、声を出してアドバイスとかしましょうよ。
一方の南はそんな番場さんを見てどう思ったのか。とにかく頑張るしかない状況。

確かに、後輩の背中って心もとないよな。

そんな穂波嬢の言葉に対し、誰もそんなことは言ってないと否定する番場さん。
言ってはいないけど・・・態度からはそういった感じが溢れている。

番場さんが震えている間に、さらにポイントを奪われ4点差。
さらに弓削の猛攻。距離を潰しての上段が放たれる。
番場さんの描いた図では、サイドに回るか、その場でしずみこんでの逆突き。
だが、南はそのどちらでもない道を選んだ。踏み込んでの・・・崩し!
そこからの一撃!うるああっ!!

なんと一本。いきなりポイントを1点差にまで縮めました!しゃー!!
これで流れを掴んだかもしれないと勢いづく御門陣営。

いやっ・・・調子づいた所をカウンターで狙うかもしれん。ここは慎重に・・・

という番場さんの想いとは裏腹に、果敢に攻める南。
それが功を奏し、猛攻により場外に追いつめ、弓削は忠告をもらう。
もう一度、同じ展開になれば警告となり、ポイントになる。いい流れだ!

イカすぞ南ー!
流れこっち来てるよー!

応援する御門の1年。イカした奴らだぜ。押せ押せ押せー!勝っちまえ!
この勢いに、ようやく笑顔を見せる番場さん。隣に座る穂波嬢は語る。

――わかるよ。自分が出てる時よりも、見てるだけの時の方がしんどいんだよね。
でもさ。今、戦ってるのは南なんだ。見届けようよ

番場さんの肩に手を置く穂波嬢。あら、なんだかいい感じ。
今回の穂波嬢はヒロインっぽいというわけではないが、なんだかいい感じである。
番場さんが相手だと落ちついて喋れるってことなんだろうか?どうなの?

てな話をしている間に、ポイントを重ねる南。同点だ!

俺は・・・自分でなんとかしなければと思ってた。
自分でなんとかしないと納得いかなかった。
だけど――勝とうが負けようが、信頼して期待して、こうして――仲間の背中を見てるというのも、悪くない

忸怩たる思いは消え、ただ今は期待して後輩の背中を見守るのみ。
そんな風に悟ることができた番場さんでありました。大人になったね。

そして中堅戦は終了。
6対5。おしくも1ポイント差で南は勝利を逃す。おしかった。これで要陵が優勝に王手となった。

スンマセン番場さん・・・!

1年たちはよくやったと励ましながら南を出迎える。
一方の番場さんは観客席から降りてきて南を出迎え・・・

この未熟者が

番場さんの地獄突きが決まったー!!

座れ!中堅のなんたるかをたたきこんでくれる!!

まだ試合中というのに説教が始まっちゃったー!
後輩の背中を見守るぐらいには成長したが、その後のとこまでは知らん!
まあ、優しい仲間が多いことですし、怒ってくれる先輩がいるのもいいことですよね。
本気で怒っているというよりは、本当に説教をしてくれるわ!って感じですし。
なので穂波嬢もやれやれといった感じで息をついております。あらあら。

どんな展開になるかと思ったが、番場さんを絡めて南も程よく活躍したいい回でした。
穂波嬢も可愛く書かれてましたし、100回記念としてはよかったんじゃないでしょうか。
南が御門の柱となる可能性もでてきましたしね。ね?

さて、次回からは財前さんと能登さんの戦いになる。
因縁の対決。なかなかに楽しみな対決である。
能登さんが真の力を見せる展開となるのか?楽しみだ。



第101話・邂逅  (2012年 11号)


因縁の副将戦。財前さんと能登さんの試合が始まります。
まずは回想から。子供のころ、道場で初めて出会う2人。
組手を行う前に、拳をチョンと合わせる。これが能登さん流の挨拶ってやつだ。

親父の仕事で引っ越しばっかでさ、その度、新しい友達作らにゃなんねぇ。だから――
俺流アイサツ。何処でも誰とでも――仲良くなれそうじゃん?

無邪気に語る能登少年と周りを取り囲む少年少女。
おぉ。まるで別の漫画みたいだ。絵柄がやけに違って見える。とくに女の子。

そんな能登少年も大きくなりました。首長くなったなぁ。これは財前さんにも言えることだけど。
髪がアップなせいか、よけいに首の長さが目立つ感じ。

懐かしいな〜〜!覚えてんのかな?俺のこと。
敵意むき出しの目。変わってねぇなあ・・・

忘れているはずはないですわな。財前さんにとって、能登さんは一時期の目指す相手だったような人ですし。
突然いなくなったものだから、しばらく空手を止めてしまったぐらい影響のあった人物だ。
まあ、突然いなくなった側の能登さんはそんなこと知る由もないんでしょうけど。
でも、東嶺大市川の試合を見てたら、思いっきり自分に反応してたんだし、覚えてると気付いてもよさそうなものだけど。

ともかく、能登さんは財前さんのことを覚えている。
無口で・・・いつも一人だった。
・・・のくせ俺にはつっかかってたな。負けず嫌いだったもんなぁ〜〜
俺は覚えてんだぜ。財・・・

楽しそうに回想する能登さん。♪まで飛ばしちゃう。
でも、自分が覚えているからといって相手が覚えているとは限らない。
その可能性に思い至ってしまう。

財前さんは仲間にもみくちゃにされていた。
なんせ御門は王手を受けている最中である。財前さんが負けたら終わりなのだ。
青柳さんも、俺の出番無くしたら承知しねーぞ!と煽っている。

神様仏様隼人様〜〜!

なんだかしっくり来る言い回しっすね。
まあ、ともかく。気合を入れて声を上げる財前さん。
いつも一人だった財前さんも、仲間に取り囲まれるようになりました。

だよな・・・普通そうだよな。
同じトコで、同じ時間過ごして、よろしくやってんだ。
俺のことなんか忘れちまってさ・・・

やはり転校続きの子供ってのは色々と大変なようですなぁ。
各地でお別れ会を開いてもらい、盛大に別れを惜しんでもらえる。
それでいて、別れてからは連絡もなく、繋がりがなくなってしまう。うーむ寂しい。
その都度友達を作り直している能登さんには、昔からの友達がいないわけか。
だからこそ、これまで仲の良かった子たちの写真を壁に飾ったりしている。それがまた寂しくてたまらない。
社交性の高そうな能登さんではあるが、やはり短い期間で人の心に残り続けるのは難しいかぁ。

忘れられてしまっても、それは仕方ないこと。
そんな風に自分に言い聞かせ、気持ちを切り替える能登さん。
さあ、副将戦の始まりだ!しゃっ!!

財前隼人 2年 177cm、68kg
能登良雅 2年 181cm、72kg

結構大きいんですね、能登さん。
隣に徳良さんが並ぶことが多いからあんまり目立たなかっただけなのか。

財前さんがカウンター使いだということもちゃんと覚えている能登さん。
じゃあ――コッチからいかせてもらうぜっ!と開始早々に仕掛けてくる。速っ!!

その能登さんの直進に対し、財前さんはゆっくりと右の拳を突き出してみせる。
これは・・・アイサツだ。能登さん流のアイサツだ!!
子供の頃のことを思い出しながら、能登さんはその拳に自分の拳を合わせる。
が、触れたところで、その拳が払われ、財前さんの裏拳が能登さんの顔面を捕らえる!
まずは1ポイントといったところでしょうか。

へぇ・・・覚えてんのかぁ・・・

相手も自分のことを覚えていてくれた。
そのことを知った能登さんはどんな気持ちでいるのでしょうか。
大きく開いた口は笑顔に見えるが、やはり嬉しいということなんでしょうかね。

にしても、なかなかに手厳しいアイサツである。
思い出を呼び寄せ、合わさせておきながら、それはそれと払って殴る。
勝手にいなくなりやがってという昔からの怒りが乗せられた一撃だったのかもしれない。
それが証拠に、殴られた能登さん。ビリビリと震えています
よく反則とられずに済んだもんだと思いますよ。
打ち抜いてしまわず、かつ強く叩きたかったから裏拳にしたのかな?

ともかく、因縁の勝負は始まったばかり。
対戦している相手同士が話をすることはない。お互い拳で語るしかない。
どんな濃厚なナックルトーキングが繰り広げられるのか。楽しみです。



第102話・昔話  (2012年 12号)


財前さんはあの時のアイサツを覚えていた。
つまり、能登さんのことを覚えていたのだ。それを知った能登さん。

あっは☆そっかぁ〜〜!

凄く嬉しそうな表情だ!♪に続いて、☆が出ちゃったよ!
嬉しそうに飛び跳ねる能登さん。ザッザッ。

そーだったのかよ隼人!便りの一つでも寄越してくれりゃよかったのによ!
――・・・そーゆー奴じゃなかったな。

全くその通り。
でも、そもそも行き先も告げずにいなくなってたじゃないですか。送り先も分からないよ。
まあ、ともかく。
財前さんは口数が少ない。その分、拳に出る奴だった。

じゃあ――拳でさ。昔話といこうぜ!

ザザザっとフェイントを交えながら接近する能登さん。
準決勝でも手こずっていた通り、財前さんは昔からフェイントが苦手であった。
いつも相手の手足ばかり見ていて惑わされたものである。
だが、それは既に克服している!本当にちょっと前に、ですけど。
相手の目を見ることで幻惑に惑うことなく、中段突きを決める財前さん。

じゃ、コレは?

突きの連携を放つ能登さん。しかし、目的は突きによって隠されたラストの蹴り。ブラインド!
傍から見ているとはいえ、真っ先に気付く穂波嬢はやはり凄い。
が、財前さんもこの蹴りを見切り、交わす。

次から次へと、昔と違ぇ。強えっ!!

成長した財前さんの強さに戸惑いを見せる能登さん。
その動揺を見逃さず、攻勢をかける財前さん。

能登良雅とかけまして――全身の痒みに怒りくるう犬の心情とときます
そのココロは――倒すのみ(蚤)!

能登さん相手じゃなくても使えそうな詠みっすね。
それはともかく、財前さんはさらに中段突きを決め、ポイントは3点差に広がる。いい調子だ。
逆に調子が出ていないと言われる能登さん。
徳良さんたちも、雑じゃないか?と心配している。

そっか・・・結局、昔話って昔の話なんだよな。
隼人は・・・もういねぇんだ。コイツは――御門の副将、財前隼人なんだ

足を払われ、体勢を崩す能登さん。
そこに財前さんが追撃をかけようとする。決まれば一本。差は一気に広まる!
が、床に片手をついた状態から、一気に宙を飛ぶ能登さん。
財前さんの肩にかけあがり、その状態のまま、空中で蹴りを放つ!

なんと・・・!?
なんというSFチックな離れ技であることか!あ・・・ありえねぇ!
まあ、蹴り込んだ水月を踏み台にして肩に駆け上がるよりはましであるか。

・・・悪かったよ。昔話はもうナシだ。
お前の知らない俺を――見してやんよ

能登さんの上段蹴りにより、ポイントは3対3の同点となる。
この試合はここからが本番って感じですかね。

蓮城の細野さんと戦ったときは堅実だった能登さん。
しかし、今回の能登さんはなんだか違う。まるで野生児のような動きを見せてくれた。
ひょっとしたら、これが本当の能登さんのスタイルなのかもしれませんな。

しかし、能登さんは財前さんの準決勝の試合を見ていなかったのでしょうか?
あの場にはいたけど、試合内容は見ていなかったとでもいうのだろうか?
目と目があったらミラクルでしょうな技術を身につけた試合だというのに。
それができるようになったのも、能登さんの教えのおかげだったというのに。
いや、能登さんのおかげで――の部分は見ているだけじゃ分からないだろうけど。

拳を交え、お互いの現在を知っていく2人。
試合が終わったら、2人の寂しさも解消できるようになっているとよいですな。



第103話・流れ者  (2012年 13号)


お前の知らない俺を――見してやんよ。

アクロバティックな蹴りを見せた能登さん。
奇天烈な攻めはその1回には留まらなかった。
上段蹴り。交わされることは織り込み済みで、戻すことなく一回転しての裏拳!
最初に財前さんからもらった分ののお返しである。
この能登さんの動きに、番場さんも驚く。

基本に忠実だった準決勝と比べて、なんたる変則!

トリッキーな動きはまだまだ続く。
前に向かって飛んできた!カウンターだ!
と思ったら、いきなり軌道が横にずれる。ずる。ぺたん。
え・・・ええ〜〜!?
御門、蓮城の選手も驚くこの奇妙なステップイン。
斜め方向から潜り込んで、上段突きを決める能登さん。これでポイントは5対3。

正面から来たはずが、急に視界から消えられて混乱する。
更に、正中線の真正面に立たれ、左右どちらの拳で対応すべきか一瞬迷う。
理にはかなってる・・・

変則的ながらも、きちんと理に適った動き。これが能登さんの本領なのか!?

続けて・・・始め!ぽーん。音を立てて跳び上がる能登さん。

おわーっ!?ちょー跳んだ

跳びながら蹴りを放つ。ならばそれにカウンター。
と見せて、蹴りは出さずに身を捻り、財前さんの拳を交わす。
そして、交錯して着地する寸前に、拳を出し切って死に体になっている財前さんの胴に蹴り!
2ポイントが加算され、ポイントは7対3となった。

予測で動く待ち拳と、その予測がつきにくい変則。最悪の相性だ
それにしても何て奴だ。型破りにも程があるッ・・・!

番場さんを始めとして、会場中が驚きっぱなしである。凄ぇな。

ならばと、財前さんも動き出す。ただ待ってカウンターを、とはいかないようですからねぇ。
だが、能登さんの技は攻めだけではない。

色んなコトができるぜ?
色んな道場を転々としてきた。いわゆる、流れ者だからな

財前さんの下半身に等高線のようなものが生まれる。
能登さんには、重心のかかっている部分が見えている。
つまり、どこに力が入っているかわかるから、そこを払えば、バランスを崩させることができる。
これは・・・吹越さんの技じゃないか!

お前にゃ――真似できねぇだろ?

出足を払われ、体勢を崩される財前さん。そこに突きを入れられる。一本だ!
これでポイントは10対3。あっという間に7点差となってしまった!

重心を消しての崩し。この技をもモノにしているとは・・・

すごいな・・・あいつ

吹越さんが感心するような表情で述べている。厄い笑顔でもなく、汗まで流して述べている。
これは相当凄いってことじゃないんですか?

色んな道場を転々としてきたという能登さんだが、流派に拘らず学んできたということでしょうか。
吹越さんの流派は和道流。崩し技を使って見せたのも、この流派の道場で学んだ経験があるからかもしれない。
しかし、色々学んだからといって色々できるとは限らない。
準決勝の基本に忠実な動きと、今回の変則。どちらもできるのが能登さんである。
なんというか、想像以上に凄い人だったようだ。驚くぜ。

各地を転々としてきた能登さんが道着の高校名を掴み、述べる。

今は――ここが気に入ってんだ
もっと――この面子と空手やりてぇんだ。
こいつらをIHにつれていく!

あばよ。財前!

ジクザグに突進し、意識を逆側に振っての後ろ回し蹴り!
決まれば終わりの一撃・・・だが、そういった蹴り技であれば・・・もっと凄いのを受けて来た。
高校からではあるものの、トップクラスの蹴り技を常に練習で受けて来たのだ!

能登さんの後ろまわし蹴りの途中を、足で押さえ込む財前さん。
そして、その押さえ込んだ足でそのまま上段蹴りを叩き込む!これはこれでなかなか大変な話だ。

財前さんの上段蹴りが決まり、一本。ポイントは10対6と縮まった。

そりゃーそうだろ。アイツが普段、誰を相手に稽古してっと思ってやがんだ

青柳さんが言うと説得力ありますなぁ。
その攻撃の圧力は練習であっても鬼気迫るものがあるという。
回想の場面では、財前さんや番場さんだけではなく、穂波嬢まで圧せられている。
む、この場面の穂波嬢はなんだか妙に可愛いっすな。

ともかく、財前さんとて負けられないわけがある。
能登さんが、要陵の仲間をIHにつれていきたいと思うように、財前さんも御門の仲間をつれていきたい。
ポイント差はあるが、まだ試合は50秒くらい残っているはず。まだまだ追い越せる。

しかし、今回は成功したものの、得意のカウンターとは相性の悪い変則な動きが出来る相手である。
財前さんも、何かとっておきの技とかないと、厳しいんじゃないでしょうか。
そう考えると、この能登さんに基本技しか出さないようにさせた細野さんって凄かったんだなぁ・・・
ここはひとつ、細野さんの猛攻を財前さんが使ってみせるとかいう流れはどうでしょう!

細野さんの復権もなったことだし、副将戦は佳境に入りそうですな。



第104話・あいつを変えたモノ  (2012年 14号)


これで決まりだと放った能登さんの蹴り技を押さえての財前さんのカウンター。
蹴りの・・・待ち足とでもいいましょうか。

んなことできんのか、財前!?

できるようになったってことでしょうな。
財前さんも勝負を決めるときは蹴り技が多かったように思える。
コンパクトな手技が持ち味だとなまじ知っていたために能登さんは不覚をとったわけですな。

あんな大足技隠してたなんてっ・・・!

かなり動揺してますね。
その足が踏み込まれただけでハッとしてしまう。
蹴りが伸びてくる!ように見えたのはフェイント。
大足技を見せたおかげで、こういった幻惑にも引っかかってくれるわけだ。
幻惑の蹴りで怯ませておいて、距離をつめての上段突き。
これが決まってポイントは3点差に縮まる。しゃー!いいぞ財前ー!
財前さんの反撃に応援も沸く。大谷さんもハートを飛ばす。相変わらずラブいっすね。

能登さんは気づく。財前さんの蹴りは青柳仕込みだと。
・・・いや・・・ソレだけじゃねーなぁ・・・

過去の回想。
財前さんは女子2人に、拳ダコがあるからという理由で武道場に連れてこられていた。
青柳さんは言う。空手が好きなら来るといい。死ぬほどやれるぜっ。と。
だが、それには付き合わず帰ろうとする財前さん。
空手をやめて数年立ってますでしょうし、簡単に再開ってわけにはいかないんでしょうね。
でも、女子2人に力づくで止められ、入部させられてしまう。ハハハ。
この辺りの顛末をもう少し知りたいところですな。特に大谷さんの心情を。

再開してみれば、やはり財前さん。空手自体は好きなのである。
特に、目標となる相手がいると燃え上がりそうな性格をしている。負けず嫌いなんすよね、基本的に。
青柳さんの足技に翻弄され、吹き飛ばされる財前さん。悔しそうだ。
その隣に、全く同じように吹き飛ばされ、同じように悔しがる番場さんの姿があった。
番場さんとも組手を行う財前さん。
オレも混ぜろやといった感じの青柳さん。
どいつもこいつも負けず嫌いで戦うのが、空手が好きな連中である。
のめりこみすぎて修羅と化す3人。やっぱりこんなときは笑顔の青柳さんが一番怖いっすね。

男子3人での団体戦。1人負ければそこで終了。
そんな状況で勝ち進む3人。最後は蓮城に負けてしまうが、快進撃であった。

一度は空手を止めてしまっていた財前さん。
しかし、今はその拳を振るうことができている。共に振るう仲間を見つけている。
いやはや、なかなかいい感じのサイレント描写ですなぁ。感動する。

回想の間も試合は続き、能登さんの上段突きが決まっている。これでポイントは10対8の2ポイント差。
だが、素早く取り戻す能登さん。やられっぱなしってわけにはいかないですわな。ポイントは11対8。
能登さんは気づいた。財前さんを変えたのは御門の仲間だと。

でもよ、だからって――負けるワケにはいかないっつの・・・!

激しく動いていた能登さんが、いきなりその動きを止める。
腰を落とし、左腕を前に突き出す。あの構えは・・・!蓮城の細野さんを苦しめた技・・・!
準決勝で見せた中段!!

左側面の手足を長く前に突き出している。そのため、的が狭くて懐が深い。
迂闊に突っ込めば逆突きの餌食となる。
実際に迂闊に突っ込みまくって迎撃された細野さんが言うと説得力満点であるな。

あんにゃろう・・・試合をたたむ気だ!

激しく動き回った時間を追え、ここからは確実な迎撃を行う構えなわけか。
ポイントもリードしているわけですし、能登さんの判断は冷静である。
多数の技を使えるのだから、こういった待ち拳スタイルだってできるわけだ。さすがだな。

どうする?財前――

仲間たちの視線を受け、動き出す財前さん。
右足を跳ね上げ、左足で地面を蹴って移動する。器用な構えだ。
その状態で蹴りを放つ、というわけではない。財前さんが狙っていたのは、能登さんの突き出した左足。
左足で地面を蹴って移動した後、右足は能登さんの左膝に着地する。
能登さんの足を踏み台にした!?
これにより、足の長さ分の距離が保たれることになる。
逆突きを打とうとした能登さんだが、財前さんの膝がジャマで届かない。

この試合とかけまして――かけまして――
いーや。思いつかねぇ。勝つ!!

ついに財前さんが詠みを放棄した!!まあ、必要ないといえば必要ないですしね。
というか、なんで詠み人になっちゃったんでしょうね、この人。その辺りの過去も気になる。

ともかく、能登さんの足を踏み台にし、右の前蹴りを放つ財前さん。
深い懐であったが、突き出した足を逆に利用するとは考えましたな。
上段蹴りが決まり1本。これでポイントは11対11の同点である。
勝負が決まりそうだった7ポイント差を埋め、一気に追いついてみせる財前さん。なんて奴だ・・・!
そして、拳で会話をしてみせる青柳さんと財前さん。カッケー。

終盤にきて勝負は振り出しに戻った。
勝負としてみれば、これでもうどちらが勝つかわからない。
団体戦ということと、漫画的展開ということを考えると、財前さんが勝ちそうだが、はてさて。
場合によっては引き分けという線もありそうですから、まだまだ先は読めない。
とはいえ、次かその次くらいには副将戦は終わりそうな流れですな。
最近はよいテンポで試合が進み、引きこまれます。面白い!



第105話・拳で語る馬鹿  (2012年 15号)


7点差を埋めて同点に追いつく財前さん。このまま逆転極めちゃってー!イケるイケる!
残り時間は10秒を切っている。先にポイントを奪ったものが勝ちとなりそうだ。

勝て財前!ぜってーだ。俺に回せ!!

青柳さんからの激も飛ぶ。気合入れて逆転を狙うぜ!
だが、要陵側も声をあげて能登さんを応援する。吹越さんはやはり沈黙してますけどね。
まだまだー!勝てー!
しかし、優勝を目前に7点という大差からの同点劇。ショックは大きいはず。
立ち直ることはできるのか?徳良さんも心配そうな表情。

だが、そこは能登さんである。財前さんの強さにむしろ笑みを浮かべる。

強えっ!!サイコーだぜ。きっちり稽古してたんだな!!
俺の知らねートコで、空手やってたんだな。

嬉しそうに踏み出す能登さん。これには徳良さんも、国島太陽も驚く。

なっげー時間全然会ってねぇ。全然違う時間過ごしてたのに――また俺たち道衣着て戦ってる。
それってサイコーじゃね!?
俺たち――全然違うようで同じだったんだ。
同じ空手馬鹿だったんだ

嬉しそうですね能登さん。昔の知り合いが自分と同じような存在だったというのが嬉しくて仕方ない様子。
友達とか欲しいのに、都合により一箇所に居続けられない能登さん。
そんな能登さんだが、離れた道を歩いていたはずの知り合いが同じ道に交わり出会う。
そういった偶然をこの上なく喜んでいるようだ。よかったよかった。

だが、勝負は勝負。いつか終わりが来るものであるし決着もつけねばならぬものである。
残り5秒。次の一撃で優勝が決まるか、それとも逆王手となるか。

ぼちぼち――終わりにしようぜ。俺の勝ちでさ

再び中段の構えをとる能登さん。やはり最後は一番信頼できる技・・・!
一度は破られたとはいえ、同じ破られ方はしないでしょう。
ならば、細野さんを打ち破った一番頼れる技にすがるのは正しい選択と言える。
しかし、その能登さんに対し財前さん。なんと同じ構えをとってみせる。同じ土俵・・・!?

負けず嫌い

確かに負けず嫌いだけど、ここに来てその行動はさすがにどうなのか
? 突き出す手足の左右が違う鏡合わせの状況。仕掛けたのは財前さん。

ホンット・・・バカだぜ・・・

突進する財前さんの胸に、カウンター気味に能登さんの拳が叩きつけられる。
財前さんの拳は交わされている。極まった!?
審判が手を上げ、ポイントを宣言しようとする。
だが、拳を極めたはずの能登さんの体が崩れる。財前さんが殴られると同時に足を払っていたのだ!
空手道では、当てた後は拳を引き、残心を示さねばポイントとはならない。
審判も今のは有効にはならないと首を振る。
逆に、体を崩れて防御が出来ずにいる能登さんに財前さんの拳が突き刺さる!

極まった!財前さんの上段突きが極まった!副将戦は御門の勝利だ!!

・・・最後の逆突きは・・・俺のが届いてた。
でも引き手をきった残心が安定しないと審判は点を認めない。その残心を――殺された

きっちりと分析する能登さん。さすがですね。
勝負は終わり、負けを認める能登さん。それに対し、笑顔で拳を突き出してみせる財前さん。
始めの挨拶と同じように、拳を突き合わせ挨拶をする2人。

また――戦ろうぜ

言葉を多く交わす必要もない。やはりよい挨拶ですなぁ。
子供のころのリベンジを果たした財前さん。そして御門も逆王手に成功したわけだ。
これまでの試合は全て1ポイント差で経緯していっている。
残るは大将戦。この勝敗で全てが決まるが・・・引き分けだったらどうなるのだろうか?
普通ならば総合ポイントが高いほうが勝ちとなる。
だが、それも同点だった場合どうなるのか。代表者による決勝となるのだろうか?
そうなると、青柳さんと吹越さんの決戦なんて展開もあるかもしれない。
とはいえ、今の吹越さんのメンタルはまだ揺らいでそうだし、どうなるものか。
徳良さんの試合で吹越さんがどういった風に心境を変化させるか楽しみです。

そういえば、能登さんの最後の一撃のとき、吹越さんも審判の判定を気にしていましたな。
なんだかんだで、吹越さんも仲間の戦いを気にするようになったのでしょうか。気になるところです。



第106話・弱いのね  (2012年 16号)


2勝2敗で迎えたIH決勝戦。御門の巨塔、青柳栄治が牙を剥く。俺の出番だ
相変わらず、主人公側の人間なのかどうかわからない凶悪さが見える青柳さん。
地獄大将とのときも、どっちが主人公側だかわからなかったぜ!

勝って戻ってきた財前さんとハイタッチを交わす青柳さん。

ホンット、いい仕事してくれるぜお前ら。
だけど――もっとだ。もっと――

気分がアゲアゲな青柳さん。大舞台での緊張感とかより、楽しみの方が上回っていそうな感じですね。
なんというか、頼りになる大将である。

ここでちょっとした回想。
2年前。まだ青柳さんが1年の頃の話である。
個人戦で優勝を果たした青柳さん。この頃の御門空手道部は1人だけ。
青柳さんが起こした暴力沙汰がもとで、部員がいなくなっていたのだ。

優勝を喜び合う相手もなく、武道場に戻ってくる青柳さん。
手に入れたトロフィーもそこらに投げ出してしまう。あらあら。
せっかく貰ったのにと回収する菅野先生に対し、嬉しくなんかねーっすよと返す青柳さん。

結果出してようやく人並でしょ。俺みてーな前科者は。

微妙に不貞腐れた様子の青柳さん。その様子に、菅野先生は言ってのける。

結構弱いのねっ
そんなに一人が辛い?

挑発ですね。それに容易く乗る青柳さん。若い。
「弱い」って発言は看過できなかったようで、反論してくる。
一人でもきっちり稽古できているし、実際こうやって結果を出している。
しかし、先生に言わせれば、本心か目を背けてつまらなそうに空手やっているようにしか見えないようだ。

小っちゃいのね

挑発しまくりの菅野先生。若い青柳さんには色々と耳に痛い。
とはいえ、頑固な人なので、口で言ってもわかりそうにない。
ならば体でわからせるしかしかないかとジャージを脱ぎだす菅野先生。すとん。
脱いだら、下には空手着が。な・・・なにぃ!?
予想はしていたことだけど、それでも異様にエロイ。
この頃はまだ先生、経産婦じゃなかったんだよなぁ・・・うーむ、エロイ。

しかし、ジャージの下に空手着なんて着れるものなのでしょうか。
着れたとしても普通に着ぶくれしそうなものである。
となれば、答えはひとつ。
ジャージを脱いだ後、空手着に着替えるまでのシーンが割愛されているのだ!
本当は、2ページかけて着替えのシーンが挟まる予定だったのだよ!!
単行本ではきっちりと加筆されているって流れですね。わかります。さすが佐渡川先生!あざとい!買っちゃうよ!

それはさておき。
相手してくれるならばと嬉しそうにつっかかる青柳さん。
しかし、さすがに菅野先生。日本一の国島太陽が恐れる先輩なだけはある。
突っ込んでは崩され、突かれ、蹴られと相手にならない。
汗だくになってしゃがみこむ青柳さん。それと共に弱音を吐いてしまう。

俺ァ強くなきゃいけねーんだ・・・
俺には約束がある。今・・・弱さを認めちまったら、俺ァ戦えねぇ。
気持ちぶちまける仲間もいねぇ。
先生・・・辛ぇよ、コレ・・・

しかし、その弱音を吐くことこそ、先生の望んだことであった。
弱さという心の中の敵を敵と認める
認めた以上、目を背けずそれと戦う。これこそが先生が青柳さんに言いたかったことである。

ここからよ青柳。強さへの――第1歩

個人戦で優勝を果たすぐらいだというのに、ここでようやく第1歩か。
「振り出しに戻る」ってやつですね。やれやれ。
・・・ま、わかりやすいか・・・

第1歩を踏み出し、1人での練習を続ける青柳さん。
2年生になったころ、約束していた相手である番場さんや穂波嬢が御門に入学。空手部に入ってくる。
さらに、大谷さんが入り、財前さんを引き入れ、チーム戦も行えるようになる御門。
そしてさらに1年。今では5人で団体戦に参加できるようになった。マネージャーも加わった・
そして、今。IHで優勝争いをしている。

決戦の舞台に立つ青柳さんに向けて歓声が飛ぶ。青柳先輩ファイトー!

もっとだ――もっと言え。今、何歩目か知らねぇけど。
まだまだ。まだまだまだまだまだまだまだまだ、俺は強くなる!!

さらなる高みを目指し、大将・青柳出陣!

決戦へ向けての回想回といった感じの回でした。
しかし、青柳さんの株があがるというよりも、菅野先生の株があがったような気がしなくもない。
まあ、これはこれでよい。髪を纏めた先生はまたよいですなぁ。
ここまで持ち上げられている様子を見ると、青柳さんが負ける姿が思い浮かばないのだが、どうだろうか。
徳良さんがどれだけ善戦することができるかに注目がよせられる。
まあ、吹越さんが万一応援してくれるようなことがあれば、嬉しすぎて通常の倍強くなりそうですけどね。
そうなってからが本番になりそうな気がする。ともかく、楽しみな一戦だ。



第107話・決戦!  (2012年 17号)


IH予選決勝、大将戦始めッ!!

合図と共に飛び出しぶつかりあう2人の大将。
その激突の余波は見ているもなかちゃんのところにまで及ぶ。
なんだか、こっちまで蹴りが届いた気がしたそうな。

このテの錯覚は――実は珍しくない。
身長160cmに満たない小柄な選手が、構えたとたんに10cm増しで見えるコトも、
全ては選手から生まれる闘志(オーラ)――

ひたむきな声援で闘志は更に大きくなる

両校の勝負をかけた最後の戦いである。そりゃ声援にも熱が入る。
財前さんですら大きく口を開けて叫んでいるように見える。口パクなどではない。たぶん。
しかし、オーラででかく見えるなんてことが実際あったりするんですかねぇ。
経験者である佐渡川先生なら、そういう相手と当たった話もありそうだ。
つまり、オーラで体が数倍に見えたりもするし、髪の一房に大の男を捕まらせて振り回したりもできるわけだ。
凄いねオーラ。相手が小さく見えるってことは私が勝つってことだ!

番場さんが、穂波嬢が、半座が口々に応援する。
IH、頂点への切符――獲って!

勝ってくれ!俺ァ藤木に惚れたケド――アンタにも憧れたんだ――負けるトコなんざ見たかねえっ!!

なかなかいい回想でありますな。
青柳さんは後輩に慕われていますなぁ。それだけの行いをしてきたということなんでしょうけど。
しかし、この穂波嬢は割と可愛くてよいですな。

声援を受けて、先にポイントを得たのは青柳さん。
徳良さんの蹴りを右足で受け流し、体を流したところに左足で胴体に蹴りこむ。
中段蹴り。技ありにて2ポイントの先取だ!おぉーっしゃ!!

もっとだ。もっと騒げお前ら。勝って応えるからよ!!

相変わらず大舞台というか、こういう場面が好きな人ですなぁ。
続けて、始め。
ポイントを先取された徳良さんだが、果敢に攻め込もうとする。
取り返してくれと必死に声援を送る要陵の部員。
だが、ひとりだけ声をあげずにいる者がいた。はい、吹越さんです。

何やってんスか!声小さいっスよ吹越さん!!

おっと、ここで能登さんが吹越さんに声を出すよう求めてきた!
それに釣られてか、昔のこと。徳良さんと一緒に稽古をしてきたことを思い出す吹越さん。

とっ・・・徳良ファイトだー!!

なんと!?
まさかいきなり吹越さんの声援が飛び出してくるとは!?
もっと逡巡するかと思ったのですが、意外と早かった。これは驚き。

そして、思わぬ声援をもらった徳良さん。吹越さんとは違い、戸惑うこともなく力を発揮する。
吹越さんとは逆に嬉しくって動揺するかなとか思ったけど、そういうことはなかったようだ。

柔軟な膝関節を利用した変則の蹴り。
膝から先をぐるんと廻し、フェイントをかけておきながら、まっすぐに突き出してくる。
あまりの予想外の軌道に、さすがの青柳さんも戸惑ってしまったようだ。
徳良さんの中段蹴りが入り、ポイントは2対2の同点になる。
だが、この蹴りを放つ際に、徳良さんの膝がみきんと音を立てている。
かなり無茶な蹴り方だからなぁ・・・試合中にボリンといってしまわないか心配である。
だが、そんなことを気にかけている徳良さんではない。

巨塔は――もう一本あるぜ青柳。折れるもんなら折ってみろ!!

青柳さんとは違う、巨塔。一部では黒バベルなんて呼ばれている徳良さんである。
白黒両巨塔の対決。
洗練された王道千変万化の変則
オーソドックスとトリッキー。そのぶつかり合いは互角!

・・・互角じゃあ・・・駄目なんだよ!!!

ぶつかりあう蹴り。その中を突き破り迫る徳良さん。
トリッキーな足技だけではない。手を出し、青柳さんの頭部を狙う!
これは・・・?
単なる上段突きとは思えない。
振りかぶった徳良さんの手は平手になっていた。インパクトの瞬間がわからないからなんともいえませんが・・・
ひょっとしたら、喉のあたりを抜き手で狙ったのだろうか?
でも、当たった音からしてそういう行動には見えない。
ひょっとしたら、掌底を打ち、頭部を揺らすのが主目的だったのかもしれない。
互角じゃ、駄目。その言葉の意味が次回に明らかになるかもしれませんな。
頭部を揺らされた青柳さんが乱れ、リードを許す展開になるのかも・・・

盛り上がっている大将対決。
なんだかんだで徳良さんはあの伊奈さんを破った実力者である。カツ丼で弱っていたとはいえ、あの伊奈さんをだ。
しかし、膝に爆弾を抱えていそうだし、吹越さんの応援という覚醒要素を早くも使ってしまった。
今後、青柳さんに押されだすことがあったとき、徳良さんに逆転の目があるかどうか。
それはわからないが、なんにしても楽しみな戦いには違いないですな。



第108話・譲らん  (2012年 18号)


互角じゃ――駄目なんだよ!!

その言葉と共に放たれた一撃が青柳さんの頭部を捕らえる。
この一撃は有効となり、ポイントは3対2に。

背刀
手刀をつくり親指側で胸部、側頭部を狙う。後の先で有効的な技。
相手の技を引き込んで密着して巻くように打つから、密着に弱い蹴り技はかっこうの的となるとのこと。

なるほどねぇ。蹴り技に対して有効な手技というわけだ。
ひょっとしたら、徳良さんがちょっとダークな技でも使ったのかと思ったのだがそうではない様子。
徳良さんがいうところの、互角じゃ駄目というのは、足技だけでは互角。それじゃ駄目ということだったようだ。

速い!鋭い!
足技で張り合って勝てる相手じゃねえ。少々面白くないケド――足技は譲るよ
そのかわり――勝ちは譲らん!!

今度は手刀ではなく、拳を青柳さんの頭部に叩き込む徳良さん。有効を得て、ポイントは2点差に開く。均衡が崩れた!

当然だ。手技の方が速く、有効部位に近い

白黒バベル両方の強さを知っている伊奈さん。この戦いを冷静に観察している模様。
徳良さんが青柳さんからリードを奪っても不思議ではないと思っている感じですな。
ただ気になることはあるようだ。

続けて開始。
手技を駆使する徳良さん相手だが、青柳さんはいきなり足技で攻勢をかける。
左、右と蹴りを行い、徳良さんの蹴りを右足で受けてそのまま右足で蹴り込もうとする。
が、それよりも徳良さんの拳の方が速い。再び上段突きをもらいポイントを許してしまう。

ここにきて、伊奈さん以外の観客も気づき始めた様子。
まさか青柳の奴・・・足技だけで!?

マジかよ!?無謀だっ・・・!!

番場さんからも無謀と思われる青柳さんの暴挙。
野田くんも、突きを使って欲しいと思っているようだが・・・

徹底して足技を貫こうとする青柳さん。
直線的な蹴りを放ったかと思えばそれが途中で軌道を変えて回し蹴りとなる。
高等技術だが、それをも交わす徳良さん。さすがに足技は互角と自ら言い出すことはある。

このままでは手技で押し切られてしまうのではないか。不安に思う御門陣営。
だが、青柳さんの蹴り技はさらに冴え渡る。
徳良さんの手技を足で蹴り払い、そのまま胴体に蹴りを入れてしまう。無理矢理な!!
ポイントはこれで5対4。1点差である。

続けて開始。
その合図と共に、ずおおっと足を振り上げる青柳さん。本当に足技に徹底している・・・!!
この行動を見て、半座はある考えに到達した。

なんにも・・・考えてねぇんじゃねーか?

死ぬほど稽古した、一番信用できる技が――ただ出てんじゃねーのかな。

そういうことでありましたか。
能登さんがいうところの、一番信用できる技にすがっているだけだぜってことだったのか!
無謀な拘りとかそういう話ではない。
積み重ねた稽古により一番信用できる攻撃をこそ、大事な場面で用いる。何も間違ってはいない。
その証拠に、青柳さんの上段蹴りが決まり、ポイントは5対7。逆転となる。
これには無謀だとか言ってた番場さんもビックリ!

ホンット。裏切らねぇなぁ〜〜お前は!

やはりここ一番でも強さを見せてくれる青柳さんでありました。
しかし、足が強調されたわけではありますが、これは逆に青柳さんに故障が発生するフラグなのかもしれない?
と思ったが、真鍋さんで似たようなことをやっていますしねぇ。
怪我で倒れたところを攻撃しての終了は二番煎じになる可能性がある。
とはいえ、こうなってくると徳良さんが逆転する目が浮かばなくなってきた感じがある。
このまま徳良さんは押されて負けてしまうのか?
それともまだパワーアップする余地があるのか。注目である。



第109話・ひとつ  (2012年 19号)


青柳さん、まさかの蹴りだけでの逆転。
蹴り技への信頼感がハンパじゃないってことなんでしょうけど、よくやりますわ本当に。

よ――ずいぶんと魅せ場作ってくれたじゃねぇか。俺の番だぜ。
こっからは俺劇場だ

鍛え抜き、磨き抜いた蹴り。これが青柳さんの最も信頼できる武器!
徳良さんは、足技での勝負は完全に諦め手技で迫る。
連打連打。しかし、それは全て青柳さんのブロックの前に弾かれる。
それどころか、突いた手を足で払われ、さらにその足が頭部を狙ってくる。なんて動きだ・・・!!

ならばこちらもと足技を繰り出す徳良さん。
得意の変則蹴り。中段に行くと見せかけて、途中で軌道が変化して上段蹴りになる。
しかし青柳さん。この蹴りを上体を落として避ける。そして、逆に後ろ回し蹴りを徳良さんの頭部に叩き込む!!

なんという攻防であることか・・・
変則蹴りに対処しようとした伊奈さんは翻弄されていた。
しかし青柳さんは、それを上回る動きで対応しようとしているように見受けられる。
それも、考えてそうしてるっていうよりは、自然にそうなっているって感じに見える。
ノリノリになった青柳さんは本当に怖い存在やで。

今の上段蹴りでポイントは5点差に広がる。
そして、そのまま決めちゃってくださいと青柳コールが巻き起こる。

・・・ひとつだ。ひとつになってる・・・
アイツが戦う。その戦いがおれたちをアツくする。そのアツさにアイツは戦いで応えてくれる!!
それをオレたちは――
スゲェ・・・ひとつだ。いや・・・アイツがひとつにしてるんだ

俺も――アイツみたいに――強く!!

半座もそのひとつに加わろうと声を張り上げる。いい光景ですねぇ。
この決勝戦の前、半座は吹越さんを相手するということで、ひとりの力というのを考えさせられることになった。
結論としては、ひとりよりもひとつ。仲間の力を受けてひとつになるのが最適解だったというわけですかね。
少なくとも半座はそういう理解に至ったように見える。

仲間の声援を受けて圧する青柳さん。
だが、徳良さんだって仲間の声援を受けている。
圧され押されそうになる背中に、仲間の。吹越さんの声援が響く。
気迫の前進。青柳さんの前蹴りを交わし、懐に入りながらの背刀!
巻き込むようにして打ち込むその攻撃は青柳さんにも有効なはずである。
しかし、その攻撃が当たる前に、蹴り足を踏み込んで前へと出る青柳さん。
攻撃をしかけていた徳良さんに近づくことで、完全に密着した体勢となる。

蹴り技主体の青柳さんが密着してどうなるのか?
巨塔は相手の侵入を許さないことも含めて名づけられたものである。
この体勢なら手技の方が当然有利。徳良さんが肘を折りたたんでの突きを見舞おうとする。
しかし、青柳さん。密着しながらその身を横にずらす。半身の構えだ。
そしてその右足は徳良さんの思わぬ角度から迫ってきた。
サソリのような曲芸蹴り。とでも言えばいいのだろうか。なんとも形容しづらい蹴りを放つ青柳さん。
密着したとしても、こんな手段で蹴りを決めてくるとは・・・もうさすがと言うしかない。

そして上段蹴りが決まったということで3ポイント追加。5対13。その差は8ポイントとなる。
つまり・・・青柳さんの勝利!御門の優勝だ!!

まさかの青柳さん圧勝。
これまで1ポイント差の接戦が多かった決勝戦なのに、まさかの展開でありましたなぁ。
気分がノリすぎた青柳さんはそこまで強いということなのでしょうか。
逆に、徳良さんが大将勢の中でちょっと劣ると言われると・・・そうなのかもしれませんけどね。
伊奈さんだって朝食がカツ丼でなければ・・・いや、そのネタはもういいか。

団体戦を制した御門でありますが、今後の展開はどうなるのだろうか。
個人戦は行われるのだろうか。全国へ話は発展するのだろうか。注目です。



第110話・王座  (2012年 20号)


県立御門高校・・・優勝!IH出場決定ー!!

この結果に当然のごとく沸き返る御門陣営。
観客席から競技場に飛び出して行く大谷さんたち。
穂波嬢は感極まったような表情をし、番場さんは満足気に佇む。

IHへの出場権をもぎとった青柳さん。まずは先生に勝利の報告。表情だけで、ですけどね。
そして、飛び出してきた部員たちに盛大に出迎えされる。
勢いに押されすぎて、真っ先に飛び出した野田くんや南がぶっ倒れているじゃないですか。ハハハ。
さすがにこの人数で襲い掛かられては青柳さんも転倒するしかないですよね。

さて、勝って帰った青柳さんの向かい側。負けて帰ることになった徳良さん。

・・・まだまだだ。どのへんからかな。目の前の敵に憧れちまった・・・
・・・そりゃあ、勝てねぇぜ。

反省はキッチリできている様子の徳良さん。確かにそれでは勝てませんわな。
しかし、そんな徳良さんを部員たちは温かく出迎えてくれる。

ドンマイ。いい試合だったよ

吹越さんが真っ先に声をかけてきてくれる。
イヤミってわけではないでしょうな。あの応援っぷりからして、本当にそういってくれているのでしょう。
これから先、吹越さんは1人でいることはなくなるのでしょうか?
要陵の今後の状況というのも気になるところですな。
とりあえず、団体戦は終了した。来年は各校が優勝した御門を標的と定めることになる。

御門・・・その王座、ひとまず預けておく。
ただ――長くはないと思え。次は――俺たちが・・・!!

そう言っているのは各校の1、2年たち。来年はこの連中が各校の主軸になるのだ。
さすがに現3年生に比べると小粒な印象があるが、頑張って成長してくれることでしょう。
ところで、見切れているし後ろ向きだが、蓮城に伊奈さんらしき姿が見える気がするんですけど・・・?
他は1、2年の姿しかないのに、伊奈さんはいる。ま、まさか留年・・・?いやいや。

潰されていた青柳さんが起き上がる。重ーい!!
吹っ飛ばされる衝撃でケガの痛みを思い出す半座。嬉しすぎて痛みを忘れていたみたいですな。

なんでだろうなぁ。俺、負けたのに。初めてだ。人の笑顔なのに、こっちまで・・・!!

よい話でありますね。
初めての試合での敗北であったが、そんなことを忘れてしまうような嬉しさがある。
逆にいうと、野田くんも自身の初勝利以上の嬉しさを今感じているのかもしれないですな。
戸惑う半座の体を起こし、整列の後押しをする菅野先生。その背中に呼びかける。

も――素直に喜びなさいよ。仲間でしょっ

やはり、一人ではなくひとつ。それが半座の気づいた答えってことになりそうですな。

あーもう、なんだこりゃ。
足、超痛ぇのに、んな事どうでもいいくらいに――ココが熱い!!

ありがとうございました!!

両校の礼をもって、男子団体組手は幕を閉じる。おめでとう御門!

そしてIH予選は全種目が一気に終了する。
他にも女子の団体組手、男女の個人形、男子の個人組手が行われるが試合内容は割愛される。
なんだか凄く残念ですな。特に男子の個人組手は見たかった・・・!!

ちなみに結果は以下の通り。
男子団体組手――優勝、御門高校
女子団体組手――優勝、蓮城高校
男子個人形――優勝、上条文彦(藤ヶ丘)
女子個人形――優勝、深沢楓(幕張学道)
男子個人組手――優勝、吹越竜之介(要陵)
女子個人組手――優勝、藤木穂波(御門)

さすが吹越さん。しっかり個人組手を制していたようだ。
半座に苦戦したのはメンタル面でのマイナス要素が大きかったからでしょうし、その不安がなければこの結果だ。
青柳さんとの直接対決があったりしたのかなぁとか色々と気になります。うーん、見たかった。

形で名前があがっている藤ヶ丘や幕張学道はベスト8にまで残っている高校。
なんだかんだでそれなりに出来るところが優勝してるってわけですね。

さて、激戦を制した千葉の精鋭たち。
IH――日本全国の強者が待つ舞台へと駒を進めるのであった

おぉ。全国だ!全国編が描かれることになるとは・・・これはまた楽しみでありますな。
しかし、全国までにはどれぐらいの期間があるんでしょうか?
大会に入るまでに、日常生活とか練習風景の話とか少し挟んでいただきたいところであるが・・・
それと、半座と番場さんのケガの完治もどのぐらい先になるのだろうか、それも気になるところ。
半座はまだしも、番場さんは結構重そうな感じだしなぁ。気になります。



第111話・君は燃えているか  (2012年 21号)


IH予選から1か月が経過
御門高校空手道部一同、IHにむかって燃えてます!

さすがにIH出場となると学校側も評価してくれる。
男子団体組手と穂波嬢の名前が大きく貼り出されている。
空手道部のところが貼り紙になっているのは使いまわしだからなんでしょうな。

1か月も経過したおかげで番場さんのケガもすっかりよくなったようだ。
IH本戦がいつ始まるのかはしらないけど、いい感じに仕上げていかないといけませんな。

次の相手は各県を制した強豪どもだ。今まで以上に気合入れろよお前ら!

青柳さんの激のもと声を張り上げ突きを繰り返す一同。
南は一度御門の中堅を勤めたこともあるせいか、すっかり番場さんに目をつけられた様子。
ゆくゆくは番場さんの跡取りになったりするのだろうか・・・できるのであれば、ね。

めらめら――いえ、ごうごう燃えてます!
見てるとなんだか私まで・・・!!

熱くなるものを感じるといった様子のもなかちゃん。
予選で初勝利を収めた野田も頑張っている。本戦ではどれだけの活躍を見せることか。
半座もどうやら怪我はよくなったららしく、御門のメンバーはフル稼働でいけそうですね。

ここで半座と大谷さんの組手が実現
女子の人数が少ないせいもあるけど、空手道部は男女混合で組手するんですな。
そういえば前も穂波嬢が青柳さん蹴ってたりしたなぁ。
崩し技とかもあるし、事故とかあったりしないかとか思わなくもない。
穂波嬢だと強すぎてそういうこともないだろうが、大谷さんなら・・・!!
と思いきや、半座を押している大谷さん。あらら。強い?いや、どうも半座の様子がおかしい。

手足が――重い
おかしいな、オレって――こんなに息切れ早かったっけ?

崩すどころか崩されて突きを決められる半座でありました。あらあら。

稽古終了。1年は掃除をしてから上がることになる。
野田くんは稽古が終わってからもまだ道着姿。どうやら動き足りない様子。さすがのスロースターター。
こんな野田くんに付き合える相手と言ったら半座くらいしかおるまい。
そう思って、半座に組手に付き合ってもらおうとする野田くん。しかし、今日は帰るという半座。おやおや?

どーしちまったんだろ。最近・・・ただ・・・疲れるな・・・

気だるげな様子の半座。その前に現れたのは穂波嬢。
どうやら忘れ物を取りに戻ってきていたようだ。
月明かりの下の穂波嬢はなんだか色気があるように感じなくもない。
というか、初期の頃に比べると足が長くなったような気がしますな。

IHまであと1週間。気合を入れていこうという様子の穂波嬢。
しかし、半座はどうにも暗い表情である。
そういえば最近は動きも重いなと心配する穂波嬢。それに対し半座は尋ねてしまう。

・・・アンタさぁ、「練習が面白くねぇ」って思ったことあるか・・・?

いや、んなこと言ってる場合じゃねえってのはわかってるんだけどよ・・・
前はさ、稽古をするとスカッとしてたんだけど・・・なんか最近しんどいだけでさ。
意味あんのかなぁっ・・・て・・・

俺なりに稽古したつもりだったけど――約束も守れなかった・・・

IH本戦を前にして、どうやら精神的な不調に陥ってしまった半座。
これはまた厄介な話でありますね。
敗北のショックは優勝による感激で吹き飛んだと思ったのだが、根強く残っていたらしい。
昔の穂波嬢であれば、ぶん殴って説教していたところであるが――
なんせ、最強相手に無理な約束をさせてしまったのが他ならぬ穂波嬢ですからねぇ。
これは強くでにくいところがある。果たしてどうするのか。

簡単な精神論でどうにかなるなら不調になんて最初からならないでしょうしねぇ。
下手すると不調なまま本戦に突入することになりかねない。
苦戦するのは悪くないのだが、雰囲気が悪くなるのは勘弁して欲しいところですなぁ。
半座の早い段階での復帰に期待したい。
このままではIH前の日常生活とかが期待できないではないか!
いや、1か月いきなり飛んだ段階でもう描かれることはないんでしょうけど。



第112話・純白のさくら  (2012年 22+23号)


ねえねえ野田くん。逆突きって・・・どうやるのかな?

稽古前の掃除中にいきなりそんな質問を投げかけてくるマネージャーのもなかちゃん。
こうだよっとと放ってみせる野田くん。なんだか和気藹々としてますな。
それはさておき、半座は相変わらず気が入りきらないといった様子。深刻ですな。

燃え尽きた情熱。燃え残る白い倦怠
このアオリはなかなかよい感じ。もやもやとした倦怠感があらわされておりますやね。

今日も体が重く感じられる半座。これじゃダメだとわかっていても、何故か気合が入らない。

みんなギラついてんのに・・・俺だけ空回ってるカンジだ
ちくしょう。IH近ーってのに、俺は・・・!!

空回っているというのは上手い表現ですね。
必死で漕ごうとしているが、チェーンが外れているので前に進んでいない感じ。
この状態だとどれだけ自分が進もうとしても、他人が進ませようとしても進んでいかない。
空回りしてしまっている心をちゃんと嵌めこませないといけないのだ。難しい。

悩みを聞いてしまった穂波嬢は菅野先生に相談する。よい判断ですね。
先生は半座の状態を魔法が解けたのね、と判断する。まほう?

やり始めの頃は稽古量に比例して上達を実感できるから、魔法にかけられたようにのめり込めるケド、
やり続ける中でいつかは伸び悩む時が来る。高原状態(プラトー)っていうのよ
グラフに表すと山に登った後の高原のようだからそう呼ばれているの。
そうなると稽古が、ただただしんどくなる。魔法が解けるのよ。達成感という魔法がね・・・

達成感。これは非常に大切な要素である。
この手ごたえを感じられるから継続できるって部分は確かにある。
目標を向けて進んでいる場合は特にだ。達成感を得られない状況では、
本当にこれでいいのかと迷うこともある。 そうなってくると、本当にしんどくなってしまうんでしょうなぁ。
HP運営も似たようなことがいえる。
見てくれる人やカウントなどが増えるとやる気が出てくるが、それも段々と慣れて来てしまう。
贅沢な話であるとわかっているが、達成感は段々と慣れていってしまうものらしい。贅沢病に近いものか。

菅野先生に言わせれば、これは誰の前にも必ず現れる壁、とのこと。
楽しいことばかりじゃない、つまずくこともあるって――そう思うのはむしろ成長した証拠なんだから、ね。

確かにその通りですね。この悩みもまた成長に必要な話なのかもしれない。
しかし、そのつまずき。それを与えた原因である穂波嬢としては複雑な様子。
結果的にはIH出場はなったわけであるが、あの約束で追い込んでしまったのも事実。
約束があったから奮起できた面もあるが、今引け目に感じてしまっているのが現状。うーむ。

そういえば、穂波嬢はそういう壁にぶつかったことないんでしょうか?
何だか鍛えれば鍛えるほど加速的に強くなっている感じがするから困ります。

今日も野田くんは残って地稽古をしようとする。が、半座は付き合ってくれない。つきあいわりーな。
その背中を見送り、どうしたものかと考える穂波嬢。
その穂波嬢に、お話があるというもなかちゃん。どうした?

翌日の放課後。半座が道場に足を運ぶ。今日も足取りは重い。
扉を開いたところで、何やらテンションの高い穂波嬢が声をかけてくる。
お前に一仕事してもらう。来い!
・・・仕事?

そうだ。こいつの相手をしてほしくてなっ。

と指差す先にいたのは・・・純白の空手着を纏ったもなかちゃん

おすっ

ほう、これはこれは・・・
なるほど。これが純白のさくらってわけですか。キレイだなー。

半座に与えられた仕事とは、もなかちゃんの指導。
教えることは学ぶこと。これも稽古と思え!とのことである。
よろしくお願いします!と気合たっぷりのもなちゃん。
しかし、半座。こんなことしてるヒマあんのかなと迷いを見せている様子。そりゃそうだわな。
どうにも動いてくれない半座に、殴りかかってみるもなかちゃん。

あ゙ぁーいっ!

なんとも可愛い絵じゃないですか。
もなかちゃんの力じゃ全力で殴ってもたいしたことないでしょうし。
そもそもフォームも決まってないから痛くはないはず。ビックリはするだろうけど。

ちゃんと教えてよというもなかちゃんに、まずは座礼を教える半座。

俺が最初に教わったのもコレだからな

そう。番場さんに最初に教わったのがこの座礼である。
指先で三角を作るかんじに手を置き、膝の感覚は拳がひとつ入る程度に開く。
足先は親指の上に親指をのせて――

番場さんに教えられたときのことを思い出しながら話す半座。
さすがに座礼の形はそんなに難しいものではない。もなかちゃんでもすぐにできる。
それはいいけど、その体勢のまま見上げてくるのはなかなか反則のものがある。可愛すぎて参る。
でも、この短い間に足をシビれさせるのはどうかと。血行がよくないのか?

それにしても、もなかちゃん。なんで急にこんなことを言い出したんでしょうか。

急じゃないよ。前から・・・みんな見ていいなぁって思ってたんだ。
横で応援しててますます思った。私も――「そっち」へ行きたいな。
同じコト頑張って、同じコトで喜べたらどんなに気持ちいいかなぁ・・・って。
そしたら――我慢できなくなっちゃった。

そっか。何か懐かしいと思ったら。こいつ・・・俺だ

そう。昔の半座の姿である。
道に迷ったときはスタートに戻ることも大事とよく言われる。
壁にぶつかったのならば、初心を取り戻すことが大事って話ですね。
最初の気持ちを思い起こせた半座。これである程度は空回りが解消されるとよいですな。
見守っていた穂波嬢も笑顔を見せている。うーん、いい話だ。

そんな穂波嬢が表紙となっている単行本11巻が5月8日発売。
なかなか汗をかいた姿が艶っぽくてよいですなぁ。魅力的に感じるぜ!!

それにしても、もなかちゃんが参戦とはねぇ。
教える側としては色々と楽しみがありますよね。いや、成長が楽しみとかそういう意味でダヨ。ホントホント。
それはさておき、御門はこれで女子部員が3人になった。
せっかくだし、今のうちに部員を増やして来年は女子団体も出場できるようにしたいものでありますな。
1人は初見ちゃんに転校してきてもらうとして、もう1人必要ですね。
そして来年は女子団体に大きくスポットが・・・てな展開になっても、私は一向にかまわんッ!!



第113話・俺の中の敵  (2012年 24号)


全国高校空手道大会まであと3日
半座を除く部員は皆IH本戦に向けて気合を増していっている。
どうやら半座はまだ完全にやる気を取り戻せてはいなかった様子。
停滞、焦燥。出口はどこだ。何とも焦る状態でありますな。

ともかく、今はもなかちゃんの指導を行う半座。
自分が習ったことを教えていっているって感じですな。さすがにいきなり中段逆突きを教えたりはしないか。
周りと同じように、正拳突きを行うもなかちゃん。
しかし、その軌道は上げ突きとなっている。
上げ突き。拳を突き出すときに曲線を描いてしまい、腕がまっすぐに突き出せていない状態。
この状態で何かに当ててしまった場合、手首を傷めることになる。
なので、ワキをしめて肘を前に出す拳を回すのは腕がのびた後。これでまっすぐ突くことができる。

なるほどね。ワキをしめろとか、拳は突き出してから回すというのは聞いたことがあります。
でも、実際にやってみないと身につくかどうかはわかりませんな。

半座の指導を受けて頑張るもなかちゃん。
その様子を見て、自分と比べてしまい焦る半座。それに比べて今の俺ときたら・・・

サエねぇ。やる気がでねぇ。なんなんだよコレ・・・!
くっそよくわかんねぇケド、コレが敵だったらブチのめしてやるのにっ・・・!!

かなり焦っている様子の半座。
こればかりは焦ったからと言ってどうにかなるものじゃないですからねぇ。
走り出そうとしても空回ってしまうだけ。まずは歯車を合わせないといけないのだが、それが難しい。

野田くんは半座がそういう悩みを抱えていることには気づいていない様子。
経験の長い野田くんはもうとっくにそういう悩みを乗り越えている段階。
だけど、他の人がそういう悩みを持つのだ、というところまでは気づけないでいる様子。若いですな。
ん。今の表現。逆に言うと気づける菅野先生は若くないことになっちゃう?い、いや・・・そのような意味では・・・決して。

上げ突きについて教えてもらったもなかちゃん。
とはいえ、聞いてすぐにできるわけでもない。
頭では理屈はわかっているが、身体がその通りになってくれない。
それでも一生懸命に繰り返し、どうにか身につけようとする。が、先に身体の方が限界に来ていたようだ。
足がパンパンに張り、がくんと崩れ落ちる。起き上がろうとしても前から倒れちゃう状態だ。可愛い。
しかし、15分もやってないのにこの調子であるか。普段身体を動かしていないのがよくわかりますね。

裸足で動くのは慣れていない。足の裏もまだまだ柔らかい様子。
というわけで、足の裏の皮がむけてしまっています。これは手当てしないといけませんな。
救急箱を取り出す半座。右足の裾をまくり、足を突き出すもなかちゃん。
細っせー足してんな・・・とは半座の言。
うむ、たぶん細いのでしょうけど・・・アップで見せられてもよくわからないじゃないですか。
そこはもう少しわかるように、全体像をこう、だね。

そういう話ではなく。
半座が言いたいのは、もなかちゃんの肉体は戦うとか鍛えるとかそういうのにむいている感じがしないということ。
そのことについてはもなかちゃん自身がよくわかっている。

だからやるんだよね?稽古って

むけた足の皮を治療してもらい、立ち上がろうとするもなかちゃん。この表情と構図が妙に色っぽい。

「いいなぁ」って思っただけで始めたけど、イイことばっかじゃないってこともわかってるよ。
わかってるけど、認めないっ。
確かに・・・私、戦いとかケンカとか全然だと思う。
でも、自分となら。自分の弱い心とならいくらでもケンカしちゃうもんね!

そう言いながら、正拳突きの練習を再開するもなかちゃん。
と、そのうちの一つがぴしっと決まる。上げ突きになっていない、ちゃんとした突きだ!!・・・・・・できたっ!

はは・・・コイツすげえや。心とケンカ・・・か・・・

もなかちゃんの言葉に感心する半座。
そして気づく。自分の中に巣食っている者について。

そっか。じゃあ・・・こいつも――!
今までのどの相手とも違ぇ。俺の中の敵――!

敵――・・・

上等だ。ブチのめしてやるよ!!

これが敵ならばブチのめしてやれるのに。半座はそう考えていた。
そして、その敵とは己の中にも存在しているということに気づくことができた。
ならば決まりだ。その自分の中の敵をブチのめす!これこそがやるべきことだ!

教えられちまったぜ。

もなかちゃんに休憩を勧め、自分は拳をうずうずとうずかせる半座。
どうやら完全に停滞感を吹っ切ることができたみたいですね。
その空気を読み取ったのかどうか、半座の指導は中段。3日ぶりに拳サポをつけての稽古となる。
IHにむけての総仕上げ。試合形式での練習だ。
本番を想定した本気の戦い。とはいえ、さすがに練習でケガするわけにはいかないので無理はしないようにする。
実際に本番でケガした奴が2人もいますからね。これは言っておかないといけない。

というわけで、対戦の組み合わせを決める。
番場(赤) 対 高津(青)
野田(赤) 対 青柳(青)

そして、半座(赤) 対 藤木(青)!

自分の中の倒すべき敵に気づいた半座。
そして、さらに立ちはだかるのは自分以上の強敵!これは盛り上がるシチュエーションだ。
憧れの相手であり、明確な実力差を有している穂波嬢。
この相手に半座はどのように立ち向かうのだろうか。
正直、まだまだ勝てるような気はしないけど、半座も大分成長はした。
多少のポイントは得ることができるかもしれないが、果たしてどうなんでしょうか。注目の一戦ですな。



第114話・なぁ先輩  (2012年 25号)


半座龍之介VS藤木穂波。師弟対決が実現しようとしている!

半座がまだ空手を習ったばかりの未熟な頃にも2人は対決している。
あの時は穂波嬢の圧勝であった。空手を習う前の、ケンカルールでも穂波嬢の圧勝。誰がクソ女だ!!

しかし、あれから半座は強くなった。
穂波嬢にもその精神は認められていっていた。帰れだの不良は大ッ嫌いだの言われたものだが――
私がお前の根性、試してやる!
そう言って、今に至るまで鍛え上げてくれた。
そんな師匠であり、憧れの相手と全力で立ち向かう機会を得た半座。
燻っていた火が燃えるところを見つけた感じで一気に燃え上がる!!

半座龍之介(1年) 168cm、65kg
藤木穂波(2年) 155cm、47kg

男女の違いによる筋肉量の差はある。
さらに、この身長と体重差。ポイント制の空手道でないなら負ける要素は見当たらない!
ように思えるけど、実際は負けてるんだよな。バネとかそういった部分がハンパじゃないのだろうか、穂波嬢。

ともかく、試合開始。
開始と共にいきなりふっかける半座。
飛び込むように上段。さらに中段。連打を行うが、体を反らしかわす穂波嬢。
さらに、流れるように上段蹴りを放って反撃してくる。がつん。
いきなりの穂波嬢の3ポイント選手。

くっそおお!!

ビリビリと震えるほどの咆哮を放つ半座。悔しそうですね。
見た感じ、公式の試合よりも気合が漲っているように見える半座。無理もありますまい。
続けての開始。
今度はフェイントを織り交ぜての攻撃。
気迫の乗ったフェイントは、さすがの穂波嬢をも惑わす。
だが、すんでのところで攻撃はかわされ、逆に上段突きをもらってしまう。これで4ポイント差。
とはいえ、今のは惜しい。藤木も危なかったなと周りの評価。

続いて始め。
今度も積極的に押し込もうとする半座。
いきなりの攻撃ではなく、サイドステップを織り交ぜ、突きをもらわないようにしながら接近する。
この動きにはさすがの穂波嬢もビクッとしたようだ。ビックリしたかい?
表情からしてかなり驚いた様子の穂波嬢。
ついさっきまでやる気の出ない様子だった男が、対戦となったらいきなりいきり立ってつっかけてくる。
そう考えると、穂波嬢が戸惑ってしまうのは当然な気がする。身の危険を感じるくらいだ。

隅へと追い込む半座。あの穂波嬢が追い込まれている・・・!?
だが、ここで穂波嬢の表情が驚きから引き締まったものに変わる。
圧力をかけて接近してくるのであれば、こちらはその勢いを潰しにかかる!
というわけで、足を払って倒し、上から潰すように突きを顔面に叩き込む穂波嬢。らああっ!!
ドンと派手な音を立てているが、大丈夫かね?ちゃんと拳は引いているようだから平気か。
なんせ本気で振りぬくと、コンクリートに拳の型を残すぐらいの威力がある穂波嬢の下突きである。
ケンカであれば死んでいた・・・!?

とはいえ、これは空手道の試合である。ポイントは7点差であるが、まだ負けたわけではない。
素早く起き上がり、審判の合図すら待てずにつっかかる半座。
この気迫。やらなきゃやられるという気迫が藤木を追いつめているんだと番場さんは解説する。
であるならば、ひょっとしたら1ポイントでも取ることができるかもしれないということか?

まるで本番のような勢いでつっかける半座に驚きを隠せない野田。

何言ってんだよ。今、俺は――本番より本気なんだよ!!

そういうことなんでしょうな。
憧れの人に、身につけた全てをぶつけようとしている。本気の本気にならんでどうする。

ま――このくらいが丁度いいんじゃねーの?

青柳さんも認める半座の勢い。それもそうだな、と声援を送り始める部員たち。
行け半座ー!取り戻せー!!
藤木ー!何やってんの、押し返して!!

半座が穂波嬢に転ばされたところで、止めの合図が入る。ゆっくりと起き上がる半座。

俺よォ――今でも一番深く刺さってんだ。アレが――

だってアンタ弱いもん。

なぁ先輩。俺、今どんくらいなのかな。ちったぁ、強くなってんのかな・・・?

疑問を投げかけながら、威を放つ半座。
昔はケンカだけが俺の居場所なんだとか吠えていた男が、一丁前の空手家の顔になっている。
変わったな・・・
その変化を認め、胸を貸そうと吠える穂波嬢。その変化は確かな成長であります。

というわけで、次回、ハンザスカイ最終回!!なにぃ!?

全国編が始まるものと思って油断していたら、その幕間で終了とは・・・その手があったか。
区切りがいいといえば区切りがいいところではあるが、なんとも残念な話でありますな。
試合の連続でマンネリ気味になっていた部分もあった感じはあるし、仕方ないのかもしれないが・・・残念である。
だが、ちょっと待って欲しい。
ハンザスカイは最終回を迎えるが、別視点からの仕切り直しが行われるという可能性はないだろうか。
時間を来年に進めて、新しい主人公の新入生視点から新たに物語が紡がれるとか。
そう考えた場合、更に視点を変えて、女子部員からということもありえるんじゃないだろうか。
つまり、女子主人公による、空手道女子部門編の開始という流れだ!!
なんだったら半座には妹がいたんだよという設定がいきなり湧いてきたということにしてもいい。
これなら主人公が変わってもハンザスカイのままでいられる。うむ、いい考えな気がしてきたぞ!!



最終話・空へ  (2012年 26号)


なぁ先輩――ちったぁ俺、強くなってんのかな・・・?

0対7となったこの戦い。次、穂波嬢が決めたら8点差がつき終わる。
せめて一撃でも決めたい。前の戦いでは結局届かなかった一撃を。

もし俺が少しでもマシになってるのなら。
「強くなりたい」最初にそう思わせてくれたアンタに――届けてぇんだ。

届けてぇ。届・・・届け!!

激しい突きと蹴りの応酬。そのやり取りを切り裂くように放たれたのは、半座の中段突き。
アンタが教えてくれたこと。その全てを拳に込めて・・・!!
叩きつけた拳。それがようやく穂波嬢に届いた!一撃が入ったのだ!!
1ポイントであるが取り返した。これは何とも嬉しい話である。っしゃあーっ!!吠える半座。

くっそ・・・ホントに変わったなぁ・・・

穂波嬢も悔しそうにしながらもどこか嬉しそうな様子であります。
そして決着の時。ポイントを得て勢いづこうとした半座。
その出足を穂波嬢が払い、倒れたところに上段突きを決める。1本となり3ポイント取得。
これにて穂波嬢の勝利が確定したのであります。やっぱり強ぇなぁ。

ちぇっ・・・まだまだ・・・か・・・

倒れながら自分の拳を見つめる半座。
その半座に手を差し伸べる穂波嬢。

キレがあった・・・タイミングも申し分ない。イイ中段突きだったぞっ

そんな穂波嬢の姿を見て、なんとなく納得する半座。
だよな・・・だから俺・・・追いかけられるんだ。もっと上にいてくれなきゃ困るぜ。

俺さ、アンタが――

その強さが――と内心でつけくわえながら、何事か述べる半座。
手を取り立ち上がりながら述べる。
歓声がわきあがっているので、他の連中には聞こえない。けど、穂波嬢にははっきり聞こえたようだ。
何か呆けた様子の穂波嬢。
そして、戻ってきた頃には息が荒く――

やられたっ・・・くそっ。くそっ!!あんなの反則だっ!!
あんな極め方っ・・・

盛大に赤くなっている穂波嬢でありました。
半座め、大体想像できるけど何を言ったのだ!!
まあ、半座自身は、その強さが――の部分を込めての言葉を送ったのでしょうけど、省かれると言われた方は困る。
とはいえ、完全な勘違いってわけでもないってのがなぁ。
偶然ではあるが、半座側には恥ずかしげもなく言えた言葉であり、より破壊力が増しているといったところか。
うーむ、まさしく反則!!穂波嬢の照れ顔も反則!!

いつからか捜し求めていた・・・俺の心に咲く―― 一輪の花
・・・そんなモノは咲いちゃいなかった。
けど――生えてた
未熟な小っちゃい芽だけどよ、太く、高く、強く――伸びていけ!空へ!!

仲間たちの声を背に受け、高く空へと伸び上がる。
そういった希望を乗せて、ハンザスカイ終了であります。

いやぁ、終わってしまいましたね。
全国大会が始まるかと思ったところで、始まらずに終了。なるほど、こういう終わり方もありましたか。
大会の魅せ方は予選でほぼ出尽くした感じはありましたからねぇ。
全国大会本戦の方までいくと蛇足感がどうしてもでてしまったのかもしれません。
そう考えると、これまでの話で、空手道漫画という意味合いでは描きたいものが描ききれたのではないか。
そのように思えたりもします。そうであって欲しいかなとも思っています。

空手道部分はさておき、恋愛要素の部分はもう少し見てみたかった感じはありますね。
最後の穂波嬢の照れ顔がよかっただけに、もっと見てみたかった・・・!!
大谷さんと財前さんの馴れ初めというか、現在の様子など、知りたい部分はありましたし。
試合以外の部分もいろいろと見てみたかった。その点は少々残念でしたなぁ。

ハンザのキャラたちが見れなくなるのは寂しい。が、それはまた新たなキャラクターの出会いと考えることができる。
また、新たな作品との出会いと考えることもできます。
というわけで、佐渡川準先生の次回作を期待してお待ちしております!!


作品別INDEXに戻る   週刊少年チャンピオン感想TOPに戻る

HPのTOPに戻る