蒼天紳士チャンピオン作品別感想

ハリガネサービス
第1話 〜 24話


ハリガネサービス感想目次に戻る   作品別INDEXに戻る   週刊少年チャンピオン感想TOPに戻る

 各巻感想

1巻 2巻 3巻  4巻 5巻 6巻  7巻 8巻

連載中分

ハリガネサービス 1巻


第1話・選ばれなかった男たち  (2014年 26号)


新連載、超巨弾62P!!
荒達哉先生の高校バレーボール巨編が堂々連載開始だ!!

スポーツに置いて勝者となるのは一握り。たいていは敗者となる。
それは勝ち負けが定められている以上、逃れようのないことである。
だが中学生の彼らにはまだ先がある。高校でも闘い続ける気があるのならば・・・

みんなが勝者ではなく、みんながコートに立てるわけでもない――それでもあきらめない!!!

というわけで、春。
都立豊瀬高校に入学し、バレー部に入った下平鉋くん。
線が細く、針金細工のようだと先輩たちには囁かれているが、経験者と言うことで注目はされている。
しかし紹介で述べたポジション。ピンチサーバーという言葉で微妙なガッカリ感を与えることとなる。

ピンチサーバーとは、交代で入って一気に流れを変えるようなサーブを打つ、サーブのスペシャリスト
もっともそれはプロや大学などの高いレベルの話。
中高生の部活レベルではレギュラーでない者を試合に参加させる出場機会的な意味合いが強い。

なるほど。ようするにベンチだと認識されるに十分な内容だということか。
173cmは小さくはないが、53kgは確実に軽い。もう少し食わないと体力勝負はきつくないだろうか?そりゃ線も細いわ。

続いて下平くんと同じく新入生の自己紹介が続けて3人行われる。
間白譲治。167cm62kg。中学ではウイングスパイカー。
松方一颯。178cm67kg。中学ではセッター。
金田進。177cm70kg。中学ではリベロ。

この3人の出身中学を聞き、どよめきが起きる。
それもそのはず、3人とも去年の都の中学ベスト4の学校の出身であるのだ。
全員同じ学校ではなく、別々にベスト4の出身者が現れるとは・・・いや、一致しているのはそれだけではない。

彼らは昨年末に行われた中学都道府県対抗戦で東京選抜に選ばれたプレイヤーだ

ほう・・・!!それはまた凄い子たちが都立のバレー部に入ってきたものだ。
経験者が来たらいいなぐらいに思っていた先輩たちにしてみれば驚きもいいところである。
同じ新入生である下平くんも盛大に驚いておりますわ。ハハハ。

さて、挨拶も済んだことで練習開始。
先生からスケジュールのメモを渡されたマネージャーの百合草さんが指示を出してくれます。裾まくりが可愛いな。

まずは基本。2人組になってのパス。
さすがに東京選抜のセッターである松方のパスは凄い。音がまるでしない柔らかなボールタッチ。
この一つをとっても只者ではないのが伺える。
それと比べるのは酷であるが、下平くんのパスは手首に針金でも入ってるのかというほど派手な音を立てている。
線は細いけど柔らかくはないってことですかね。針金という表現は言い得て妙ですな。

――なんてこった・・・
中学では結局3年間ベンチだったけど、高校でこそ頑張ってレギュラー取ろうと思ってたのに。
まさか中学東京選抜のメンバーが同期で入学してくるなんて!!
これから3年間この人たちとポジション争うのか・・・勝てる気しないなあ・・・

初っ端から打ちのめされた様子の下平くん。まあこれは仕方がありませんわな。
とはいえ、3人はポジションバラバラでありますし、競合しない分野で頑張れば可能性はある。
ピンチサーバーということで得意なサーブ。これならちょっとは・・・そう考える下平くん。しかし・・・

下平!先生がお前だけ特別メニューだってよ!

スペシャルメニューと読むと何か凄く聞こえるが、要するに隔離しての個別練習でありますか。
見せ場であるサーブのタイミングでこれとはツイていませんな。
まあ、ここまでパスがお粗末だと危なっかしくてピンチサーバーも任せられないし、仕方がないか。

休憩時間。下平くんを覗く選抜3人組は先輩に質問される。
キミらが豊瀬に来たのは、山縣先生に誘われたからだったりする?と。

この質問に対する返事はノー。普通に一般で入学したとのこと。
しかし山縣先生の存在はデカかったと答える間白。

オレらも去年までは東京3位の桐城に行くつもりだったんスけど・・・
その桐城の試合を見るために今年の1月・・・東京の新人戦決勝大会を見に行ったんです。
驚きましたよ。その桐城相手に公立校の豊瀬が互角に渡り合ってたんですから。

ほとんど無名であった豊瀬。それがいきなり力をつけていることに驚く3人。
しかし、その疑問は豊瀬ベンチに座っている監督の存在により納得のものと変わる。
これまで何度も無名の公立校を全国大会に導いた・・・名将、山縣三郎!!
この人が豊瀬にいるのならば・・・これからの3年間で桐城との力関係は逆転するのではないだろうか。
そう考えた3人は揃って豊瀬高校に入学することを決めたわけでありました。ほうほう。

まっ。ここなら1年からでも試合出れそーってのもあったけど。これは黙っとこ。

やっぱりそういう考えはありますか。
まあ、黙っているだけの理性があるだけよろしい。無用な波風を立たせないのもチーム競技では大切ですよね。

突然の質問であるが、先輩もまさか選抜メンバーが入ってくるとは思わなかったとのこと。
予想外すぎて、ついに先生がポリシー曲げてまでスカウトしてきたのかと思っちゃったと述べる。ほう?

キミらも知ってる通り、あの人は公立校を率いて何度も全国に行ってるらしい。
それだけ指導力のある人がずっと公立校に留まっているのは変だと思わないか?
あの人は指導者が生徒を選ぶようなやり方が嫌いで、スカウトみたいなことは一切やらない人なんだよ

ほう。それはいいポリシーでありますな。
それでちゃんと生徒を育て上げているわけだし、そりゃあ名将と呼ばれるのも分かる。
そんな人のもとに、3人もの選抜メンバーが加わる。これは今年は凄いことになりそうである。
しかし、そんな期待とは置き去りの状態の下平くん。
結局この日は全体の練習に合流することはなかったそうな。あらあら。

コートに一礼して部活終了。
部室で着替えて帰宅・・・かと思いきや、1年は当分の間部室は使えないらしい
狭いから・・・?と思ったら当分の間とか言ってるからそういう話ではないんですな。伝統か!?体育会系らしいなぁ。

朝は7時半から朝練をやっているとのこと。
1年は早めに来てネットを張って準備する。これもまたここでの習わしの様子。
うーむ、選抜メンバーであろうとも特別扱いはしない。それ自体はいいが、外で着替えさせるのはやはり無意味な慣習ですな。
自分の中学時代は本当に部室が狭くて中で5人も着替えられないぐらいのところではありましたが・・・閑話休題。

せっかく鍵をもらったのだし、練習開始前の7時とかに来て遊んでいようと相談する3人。
そういった会話の輪に下平くんが加わることはない。
結局今日は3人と一言も話すことは出来なかったそうな。うーむ、練習だけじゃなくコミュニケーションからも隔離であるか。

それでも翌朝、7時に現れる下平くん。健気ですな。
まあ、ネット張りは人数いた方がいいですしね。

というわけで、朝練前の練習開始。2対2は・・・一人だけ実力が違う人がいるので難しい。
なので下平くんはサーブを入れる役に。
金田がサーブレシーブ。松方がトスをあげて、間白がスパイクという流れの練習。なるほど役割分担が決まってていいですな。

下平くんは慎重にサーブを放つ。開始役である下平くんがミスると後が続きませんし、慎重になるのは当然ですな。
それを金田が拾い、松方がネット上の白帯と平行に飛ぶ早いトスを出す。
それに合わせ、鋭いスパイクを放つ間白。うーむ、さすがの選抜メンバーといったところか。

金田は寸分の狂いもなくセッターの松方に返球を続ける。
そして松方と間白は難しいコンビネーションをまったくミスすることなく合わせていく。
さすがに選抜で一緒にやってただけあり、お互いのことはよくわかってるようですね。
しかし他2人はさておき、金田への評価は少し的が外れている気がする。それは何故かというと・・・

気持ち悪いいイイ!!!

いきなり奇声をあげてボールを天井高くまで打ち上げる金田。なんだぁいきなり!?

アイツのサーブ気持ち悪イ!!!
さっきからボクは1歩も動いてなイ!!それどころか構えた腕すら動かしてなイ!!!
ここまで10球全部、ボールが腕を構えた所に飛んできタ!!!

なんだそりゃ。それは確かに気持ちが悪い。
センチ単位のズレもなく打ち込まれるサーブ。これまで味わったことのない経験でありましょう。
この話を聞き、他の2人はそんなことあるわけないだろうという反応。しかし・・・

え〜と・・・レシーブしやすい方がコンビネーションに繋げやすいかと思ったんだけど・・・
少しくらいバラけた方がよかったかな?

いやいや。普通はバラけるものなんですよ。
確かに確実性を期すためなのか、取りやすさを考えたのか緩いサーブであるが・・・それでもこのズレの無さは異常である。
金田のサーブレシーブを褒めていた下平くんだが、自分の方がよっぽど異常なことしてますよ。

カカッ。何言ってんだオマエ。サーブが逸れたらボクが捕りそこなうとでも思ってんのカ?
本気で打って来いヨ。サーブでポイント奪ってみロ
このコートのとこに落としてもいいゼ。全部上げてやル。選抜のリベロ。ナメるナ。

てな感じで、いきなり金田と下平くんの対決みたいな雰囲気となってしまいました。
他の2人はコートから出る。本当に金田一人でコート全てをカバーするつもりのようだ。

コートの中央付近に陣取っている。普通に考えたらコートの両コーナーに速いサーブを打ち込まれたら回り込むのは難しい。
しかしこの長い腕。本当にコートのどこにでも届いてしまいそうである。
何であれば片方の腕を短くしてもう片方を伸ばすぐらいやってきそうな雰囲気まである。恐ろしい!!

レシーブに対して絶対的な自信がある金田。
その金田がわざと取りやすい球を打たれるなんて耐えがたい屈辱であった様子。プライドというやつですな。
これは下平くんも本気でかからなければまさに失礼というものである。
だから狙う。普通ボールが落ちない場所に落とす!!と。

さっきまでより断然速いサーブを放つ下平くん。さっきまで加減していたのはこれで間違いない。
が、ただ速い球ならば金田は片手でも上げてくる。
低く速く打ち込まれた球であるが、その打ち出しを見た瞬間に金田は走り出している。
そのままいけば拾われる・・・と思いきや、下平くんのサーブはネットに当たり、威力が死んですぐに落下を開始する
下平くんの自軍のコートではなく、金田の守るコートへと落下するボール。
さすがの金田も、一度走り出したのを止めてから再度飛び込むのは難しかったらしく、拾うことはできませんでした。
それでもギリギリ近くまで飛んでいるのはさすがですけどね。

さすがに今のはノーカン!やり直せと抗議が飛ぶ。やっぱりネットインは予想外に過ぎましたかね?
ゴメン。次はやらないから。そう謝る下平くん。い、いや・・・やらないって・・・

狙ってできることじゃねぇだろ・・・?
ネットの真下に落ちるネットインなんて1試合に1球あるかどうか・・・

確かに普通に考えたら出来ることではない。
が、下平くんは続けてのサーブで再びネットインを決めて見せる。これはさすがに驚愕だ。嘘だろ・・・

ボクには・・・サーブくらいしかできないから。
金田くんみたいにレシーブも上手くできないし・・・
松方くんみたいなトスも上げられないし、間白くんみたいなスパイクも打てない。
中学最後の試合もピンチサーバーで出たんだ。
結局2回戦で負けちゃったんだけど、その試合をたまたまこの豊瀬の山縣先生が見てくれてたらしくて。

アレは・・・狙ってやったのか?

どうやらこの試合でもネットインサーブを行っていたらしい下平くん。
そのサーブの凄さは名将と呼ばれる山縣先生をも動かすほどであった様子。ほほう。
まあ、ポリシーもありますし、これでスカウトするような話の流れではなさそうですな。
というか山縣先生は口下手すぎる。ただでさえ外見がヤクザ風味なのに言葉少なではいかんぞな。
練習内容をマネージャーに書いて渡しているのも喋るのが苦手だからとかそういう話か!?

練習を・・・見に・・・来んか?

やっと告げることが出来たのはそんな言葉。
ふむ。スカウトとは違うが誘い掛けではありますな。
結局予備校でいっぱいいっぱいになっちゃって練習は見に行けなかったという下平くん。勿体ないですな。
いや、それよりも今の話は間白たちには衝撃的な内容である。
スカウトのようなことをやらないはずの山縣先生が下平くんに声をかけた。これはどういうことなのか。

山縣先生はオレたち中学東京選抜より、アイツを手元に欲しがったってのか!?

これは・・・どういうことなんでしょうかね。
スカウトというわけではないと山縣先生は主張するでしょうが・・・
少なくとも下平くんはその話を覚えているし、入学の動機になったのは間違いない。
才能のある選手を誘ったわけではないということだろうか?
確かにサーブの技術はすさまじいが、それ以外はまるで駄目な感じである。
そういう磨けば光りそうな人材だからこそ、今光っている宝石よりも魅力に感じたのか。どうなのか。
下平くんの練習の様子を見守っていた感じからするとそのように思えなくはないが・・・

ボクの高校バレーは・・・きっと・・・今日、本当の意味で始まった

誰からも低い評価を受けていそうだった感じの下平くん。それが一転しそうな雰囲気。
さてさて、ここからどのような扱いをされることとなるのでしょうか。
これまではほとんど取り合う気もなさそうだった選抜3人組。
しかしこの異能を見せられれば見る目を変えざるを得ない。それは果たして好ましいものであるかどうか。気になるところですな。

それにしても松方は容姿的に大人しすぎるが、他の2人は色々と特徴的ですな。
金田は言うに及ばず、間白の耳はどうなっているのか。
というか焦ると異様にオッサンくさい顔になるな間白。早くも驚き役になる気でいるのか!?
まあマシラといえば猿の古い呼び名ですし、そういうポジションも止む無しなのかなぁ。
まとめ役に奇声役に驚き役。なかなかバランスがとれていてさすが東京選抜と言わざるを得ませんな!!

それはともかくいい感じのスタートを切った新連載ハリガネサービス。
これからの展開に期待したいところであります!!



第2話・悪あがき  (2014年 27号)


中学最後の試合の後――顔が怖すぎる先生に声をかけられた。
誘われたのはごく普通の公立校、都立豊瀬高校。だけど・・・

誘ってくれたのが名将と呼ばれる山縣先生であったとは知らずにいた下平くん。
その人は東京選抜に選ばれた選手たちもが注目する先生である。
そして山縣先生はスカウトのようなことはやらないという信条があるはずなのだが・・・
東京選抜には声をかけず下平くんには声をかけた。その意図は何でありましょうか。

下平くんはスカウトをされたのではなく、練習を見に来ないかと言われただけだと説明する。
けれども来て欲しい選手にしか言わないですわな。普通に考えたら。
見れ貰うだけ見て貰って満足されても何が何だか分かりませんし。

・・・どーでもいいヨ。スカウトなんてされてよーが・・・いまいが・・・入学しちゃえば全部一緒!

金田に言わせれば過去のことはどうでもいいらしい。
まあ確かにその通りではあるんですけどね。
そこの部分に拘ってイザコザを起こすよりはこういう風に割り切ってくれる方が有難い。

そんなコトより勝負の続きダ
リベロがサーブでポイント取られたまま引き下がれるカ!
さあもう1本打って来いヤ。

過去のことよりも現在のこと。今の勝負が何よりも大事な様子の金田。
こういったプライドの高さもスポーツマンには重要であるかもしれませんな。

というわけで、サーブレシーブ勝負続行。
金田はネットインサーブを警戒して最初の時より前目に陣取る。
とはいえネットインサーブは威力をネットで殺して落とす技。
となればあらかじめ前目にポジションを取っていればレシーブはそう難しくない。
手の内を知られている現状、下平くんはどこを狙うのか・・・

2回目のサーブ。弾道は低い。
再びのネットインサーブかと前へ飛び出す金田。
しかし、サーブはネットを掠めただけで落下はせず、コートの一番奥へと落下する
まさか・・・ネットすれすれの超低弾道サーブでそこまで自在に落とす場所を操れるというのか・・・!?

なんだそりゃ・・・そんなんネットインサーブと混ぜて使われたら肉眼で見分けつかねーだろ・・・

何だか早くも驚き役が板につき始めた間白。順調ですな!!
いやまあ、これは本当に驚愕に値することですけどね。

金田は諦めずにもう1回と要求するが、とりあえず下平くんのサーブが驚異的なのはこの2回でよく分かりました。
が、さすがにこれだけのサーブ力。どうやって身に付けたのかは気になるところ。
下平くんは普通に練習してと言っているが、普通にやっただけでこれほどの技が身に付くかよ!!
ハッキリ言うのであれば異常といえる精度である。どんな練習をしていたのか、気にならないはずはない。
その問いかけを受けて下平くんは口を開く。

ぼくは去年1年間、跳べなかったんだ・・・
中2の2月に・・・アキレス腱切っちゃって・・・

そりゃあまたすごく痛そうな話でありますね。
その場で痛いだけではない。アキレス腱を切るとかなり筋力が落ち、ジャンプ力が戻るのにも時間がかかるという。
元のジャンプ力を取り戻すのには1年はかかる。となれば下平くんの中学バレーは2月の時点で終わっていたと言っても過言ではない。

でも、どうしても諦め切れなくって・・・

跳べないのならばとピンチサーバーとして最後の夏大会を目指したいと言い出す下平くん。
そう決めてからは毎朝早くから練習を開始し、サーブ練習に打ち込んでいたらしい。
うーむ。普通ならばそれだけのケガをして満足にプレーできなくなった時点で辞めているでしょうに・・・
よっぽどバレーが好きなんですなぁ。このひたむきさが下平くんの武器でありますかな。

ボクはひたすらサーブを打っていた。
ジャンプできなくなったボクにできるプレーはサーブだけだったから。
みんながスパイクやブロックを練習してる時はコートの脇で。
ネットを使って練習できたのは朝練だけだったから、みんなより早く来てネットを張って、ひたすら打った。

その中で、サーブでポイントを得るために工夫を考える下平くん。
もっと低く取りづらいサーブ。それを考え、ネット上の白帯を狙うことを思いつく。
そうして5か月後・・・ひたむきに狙い続けた結果、狙った場所へのネットインサーブを決める技術を身に付ける。
うーむ、夏大会に間に合ってるってことだからそうか・・・半年も経たずに身に付けていたのか・・・

というわけで夏季中学バレーボール大会、東京予選。
下平くんの明和中学は清洲橋中学と対戦。
あと1点で明和の敗北が決まるという場面でようやく下平くんにピンチサーバーとしての出番が与えられる。
点差は16点。普通に考えれば中学最後の記念に控えの3年生に打たせてあげるぐらいのものと考えられる。
相手は・・・いや、味方ですらそのように考えていた。実際に下平くんが打ち始めるまでは・・・

早速、相手を前後に揺らしたいという考えからネットインサーブを決める下平くん。
これを皮切りにして・・・13連続サービスエースを決める。ええ!?
さすがにこれはヤバイ。見ていた観客も当然騒ぎ出す。
逆にコートは静まり返っている。やられている相手は一様に勘弁してくれって雰囲気。
味方である明和中のメンバーも、下平くんのサーブの腕を実際に見たのは初めてなのか、度胆を抜かれている様子だ。
実際何というか、集中してる下平くんの様子は少し怖いですしね。

結局15連続サービスエースを決め、あと1点でデュースというところまで追い上げる。
勝利が確定したと思ったところでまさかの追い上げ。清洲橋としては溜まったものじゃありませんな。ハハハ。

しかし、何とかこのギリギリでレシーブに成功する清洲橋。
返すだけで精一杯であったのだが、明和の方は攻撃をブロックされてしまい・・・得点を許す。
既にセットポイントだったこの試合。勝負は終わり、清洲橋の勝利となる。

中学最後の夏が終わった

がっくりと膝をつく下平くん。
しかし精神的な疲労という意味では勝ったはずの清洲橋の方が大きい。
なんとか逃げ切れた。へなへなと座り込み、そのような呟きが漏れたりしている。怖かったでしょうなぁ。

その試合の後、山縣先生と会ったんだ。

なるほど・・・いや、まさかここまで凄い試合をしていたとは思いませんでした。
そりゃあ山縣先生も怖い顔して話しかけてくるってものですよ。いや、怖いのは地顔だろうけど。
そういえば山縣先生の左目は見えなくなっているんだろうか?バレーで失明するようなことってあるのかな?

なんとも凄まじい下平くんの中学最後の試合。
2回戦でのことであり、観客も多くなかったから話題にはならなかったんでしょうが・・・
見ている人がいればそりゃあ東京選抜の存在も霞むようなプレーでしたよ、本当に。

話し終わっタ?

凄い過去話に茫然となっていた間白、松方の2人。
しかしこの男、金田はそれでも変わった様子はない。どこまでもマイペースな男である。

終わったロ?早く次のサーブ打テ。
お前の昔話なんかチョーどーでもいイ。
お前のサーブ。攻略法見つけタ

ほう。あれだけ手玉に取られていたというのに、折れることなく攻略法を探っていたというのですか?
さすがに東京選抜のプライドというやつか。これは面白い。攻略法があるのならば示していただきたいものであります。
ここで示してくれれば更に改良したサーブを下平くんが身に付けることとなるかもしれない。
仲間内で切磋琢磨できるのは大事なことでありますしね。こういうことはしっかりやっておきましょう!!
そろそろ先輩たちが来ちゃわないかが心配ですけどね。



第3話・朝練開始  (2014年 28号)


お前のサーブ。攻略法見つけタ

たったの2回であれだけのサーブの攻略法を見つけたという金田。それは一体どういう方法なのか。
とはいえいつまでも2人だけでコートを占領しているのはいかがなものか。
そろそろ自分たちも驚き役から解放されたいのか、抗議する間白。必死だな。

次で終わル

自信満々な様子の金田。その表情にはニヤニヤ笑いが戻ってきている。
確かに松方の言う通り、下平くんに連続でサーブを奪われていた時は余裕をなくしていた様子だった。それが今は違う。

アイツはそうじゃないだろ。真剣な顔なんて似合わない。
相手が渾身の力で打ったボールをニヤニヤ笑って弾き返すのが金田だろ

それはそれでとても嫌な感じではありますけどね。
飄々としているといえばいいのか・・・やられた方としてはたまらないものがありそうだ。
味方にしてみれば逆にその余裕が頼もしく思えるのかもしれませんけどね。

金田が余裕を取り戻したのは攻略法とやらに自信があるからでしょう。
下平くんはネットの真下に落ちるようなネットインサーブと、ネットインに見せかけた超低弾道サーブを使い分けてくる。
このエグイ2択に対しての攻略法とは一体・・・?
その疑問はすぐに解消されることとなる。

な・・・なんだぁ。金田の奴、コートのエンドラインに立ってんぞ!?
あんな奥で構えてて・・・ネットインサーブ打たれたら取れんのかよ!?

安定の驚き役である間白。旧知の仲である金田の行動に対しても驚き芸を見せてくれる。
そしてすかさずその間白に対し解説を始める松方。く、役割分担が完璧に出来上がってやがるぜ。

あらかじめネットインサーブが来るとわかってたらどうだ?
金田にあれだけ深く構えられて、お前ならコートの奥に打てるか?
金田はエンドラインに構えることで下平が狙える場所をコートの手前に限定したんだ。

なるほど。しかし打つと同時に前にでるのなら、ネットインじゃなかった場合頭の上を越えていくのではなかろうか。
そうさせないための抑止力として金田のプレッシャーが役立ってるってことなんでしょうけどね。
もしネットインサーブじゃないとヤマを張られたならば、それは確実に止められる結果になるわけですし。

アイツの所に打ったらとられる。そう思わせる奴じゃなきゃこの攻略法は成立しない!

金田だからこそ出来る攻略法ってことですな。
さて、このような手段を取られてどうするのか下平くん。
ようやく意を決して打ちだすようだが・・・打った球はさっきまでのネットをかするような弾丸ではない!!

ネットよりも高めに上がった一見平凡に思えるサーブ。しかしその起動が金田から見て極端に左へとブレていく。

無回転のブレ球サーブ!!
無回転で飛ぶサーブは空気抵抗で不規則に変化する。その変化はボールが回転しない程大きくなる。

さすがに精密なサーブに定評のある下平くん。回転を殺すような技術も持っていたわけか。
それでもさすがの金田。瞬時にブレ球の正面に周り、レシーブの体勢に入る。
その状態で飛んでくるボールを見ると・・・ボールの縫い目が動いていないのが分かる。どれだけ無回転なんだ・・・
それであるためか、構えた金田の腕に当たる直前にもう1度曲がり出すボール。何という不規則!!

恐るべしサーブ。であるが、直前で変化したこのボールに金田は右腕一本を動かすことで対処する。
手首近くに当てたボール。これを片腕で絶妙にコントロールし・・・セッターがトスしやすい場所にきっちり返して見せた!!

金田はボールを操る感覚にズバ抜けたものを持っている。
身体のどこかに当てさえすれば正確にコントロールできるんだ

さすがに東京選抜のリベロは違うってことですな。
しかし2回も変化するサーブというのも十分凄い。普通ならば取れない。
下平くんのサーブが規格外であるということが改めて分かる。だけど――

今度は・・・ボクの勝ちだナ

勝ちを宣言し、相手がそれを認めたのを見て満面の笑みを浮かべる金田。むう、いい笑顔見せおって。
プライドは高く、なかなか負けを認めようとしない性格は面倒くさく思えるが、この笑顔では許さざるを得ないな!!

てなわけで、対決が終わったところで先輩方がやってくる。
早めに来た1年だけの朝練はここで終わりとなる様子。結局後半は2人で占有しちゃいましたね。

朝練を開始する中、松方はさっきの下平くんと金田の対決を思い起こしている。
特に最後のサーブ。金田は正面に回り込んでいたから急激なブレ方をしても反応して片手を咄嗟に出すことが出来た。
アレを回り込みにくい両コーナーに打たれてたらどうなってた?

アイツ・・・まさか。またわざと正面に・・・?

ふむ。わざと勝ちを譲るようなことをしたということでしょうか。
それも今度は相手に気付かれないように凄い技を披露しつつ加減しているという高等技術だ。
なるほど。たしかにコレはスポーツマンとしては気持ち悪いと言われても仕方がないかもしれませんなぁ。

ずっと勝ち続けたままでは面倒なことになるので、相手を立たせつつ勝負を終える。
処世術としてはなかなかのものであるが、今後勝負の世界で生きていくのにその性分はどうでることか。
しかし、松方は両コーナーを狙えばというが、ブレ球サーブは不規則すぎてコーナー狙うと外に落ちてしまうのではなかろうか?
そういう意味では正面を狙ったのは問題ない選択に思えるが・・・
よもやブレ球の変化も自在に操れるとかいうのだろうか・・・いやまさか・・・まさか!?恐ろしい話であるなぁ。



第4話・共謀者  (2014年 29号)


高校に入学して1週間。この頃になると人間関係が固まりつつある。
仲良くなれそうな相手を探し、グループを作る期間
この間にどこのグループにも入れないと孤立してしまうことになるわけだが・・・下平くんはしっかりそうなってしまった様子。
中学時代は普通に友達いた感じだったのにねぇ。いやあれも部活の仲間か。

お昼を一人で食べる下平くん。
が、そこに救世主登場。メシ行こーぜと声をかけてくれるのは間白。おやおや。
一緒に食う奴いねーならオレらの教室来りゃよかったじゃねーかと述べる間白。屈託のない奴だ。
引っ込み思案な様子の下平くんにそれが出来るはずもないので来てくれたのは非常に有難いですな。

金田の教室まで移動し、4人で昼食。
四者四様のお弁当。金田は自作の特大おにぎり。中にはおかずがいっぱいだ。
間白は購入したパン食。らしい感じですな。松方は母親作の可愛いお弁当。おやおや愛されてますね。おやおやウフフ。

おにぎりを食べてる最中も投げられた食べ物に喰らい付く金田。
普段から動物のような身のこなしということか。いや身のこなしとかそういう問題じゃないな。

まるで普通の高校1年生のような食事風景。
去年までバレーの中学東京選抜だった男たちと一緒にこんな風に楽しめるとは・・・思いもしなかったことでしょうね。
というか、やっぱり1年生は仲良くなる方向に向かったみたいですね。良かった良かった。
下平くんの力を受け入れるか拒絶するか。どちらに傾くか危惧しておりましたが、いい方向に行ってくれたみたいだ。

逆に1年生の力を危惧しているのは先輩たちの様子。
マネージャーが入らないことを嘆いている百合草さんはさておき、いや割と深刻なのは分かりますけどね。
さておき、活きのいい1年が入るのは嬉しいことであるが、反面レギュラー争いのことを考えるとうかうかしていられなくなる。
3年生の先輩たちはポジションが被らないからまだいいが、問題は2年生。
東京選抜の3人とポジションモロ被りになっている3人がいる
ふむ、1年に厳しく当たってる様に見える短髪の先輩もその一人であるか。

まーなんにしてもよかったじゃん。
一昨年には想像もできなかったけど、3年最後の夏のインターハイ。今年は本大会狙えそうじゃん。

やはり目指すはインターハイか。
山縣先生のおかげで上を行く望みが出て来てますし、1年の補強で更に夢を見るようになるのは自然なことでありますわな。
しかしそうなるとと心配されるのが下平くん。1年であの子だけ同期の活躍をベンチから見てる感じになっちゃうねと。
まあ、先輩たちは下平くんの凄さを知りませんからなぁ。あの練習風景だけ見てたらそう考えても仕方がないか。
むしろこのまま居たたまれずに辞めてしまうんじゃないかと考えている。いや、だがその内の一人は――

でもさ、ちゃんと辞めずに続けたら、アイツすっげー上手くなると思わん?

一体あの練習のどの部分を見てそう判断したのだろうか。
才能を見抜く目を持っての言葉なのかどうか判断がつかないから困る。
でもそういう評価をしてくれる人がいるというのは下平くんとしては有難いことだと思われる。頑張ってほしいですな。

食事を終えたところで下平くんは松方達にどうして公立のこの豊瀬に来たのかを尋ねる。
その答えは前に先輩にしたように、山縣先生がいるから。
あの人の赴任した学校は絶対に強くなる。あの人の作るチームにオレらが加われば駿天堂を倒して全国に行けると述べる。

駿天堂。この10年毎年東京大会を1位で通過して全国大会に出ている強豪である。
その駿天堂をオレらがブっ潰すと意気込む間白。ほほう、なかなか野心的じゃありませんか。好ましい態度だ。
まずは8月のインターハイに向けて、6月の予選までにはレギュラーになろうと考えている。
なるほど。こりゃポジションの被る先輩たちとしては気が気じゃありませんわな。

間白くんたちはできたらいいなで話してない・・・絶対やるって決めてるんだ・・・
それをできると思えるだけの力があるから。ボクなんかとは違う。

思わず小さくなる下平くん。
だが間白は述べる。お前もだぞ下平、と。

お前にもサーブでオレたちの計画に貢献してもらうからな

ふむ。やはり力を認められているようですな。でなければ仲良く接したりはしてないか。
間白は下平くんに対し、ピンチサーバーでいーじゃねーかと述べる。

お前こないだの朝練で誰からサービスエース取ったと思ってんだよ。去年中学東京選抜だった金田進だぞ?
お前ならやれると思ってるから言ってんだ

爽やかにそう述べる間白。ふむ、単なる驚き役ではないようだな。こういうことが言えるのはいい子である。
しかし金田はこういう話をしている際も我関せずに昼寝に歯磨きとマイペースな様子である。洗面所で磨きなさいよ。

ボクも計算に入ってるんだ・・・
あんなに評価してもらえたのは素直にとても嬉しかった。
だけど、結局ボクはまたピンチサーバーなのかな

ふうむ。下平くんがピンチサーバーになったのは怪我で止む無くですからねぇ。
元気になった今でもそれしかできないのか。そう考えてしまうのも無理のないことか。
サーブの時の様にひたむきな練習を他に向ければサーブ以外も上手くなりそうだが・・・どうでしょうなぁ。

さて、本日も部活の時間。
マネージャーが言うには今日は先生がいないらしい。
ふむ。そうなると普段の練習とは違った内容のことが行われそうですな。
ひょっとして紅白戦とかあったりしますかね?
もしそうならば下平くんの力を見せる機会もありそうであるが・・・さてさてどうなるか。楽しみです。



第5話・高校レベル  (2014年 30号)


3年の百合草さんはバレー部唯一のマネージャーである。
実は去年入部してくれそうな子もいたのだが、丁寧に迎えすぎて逆に引かれて逃げられているらしい。
裾のめくり上げなど可愛い感じだが・・・残念な部分もありそうな人ですなぁ。

それはさておき、マネージャーから今日は先生が不在であると聞く。
どうやらキャプテンと一緒にインターハイ予選の抽選に行っているらしい。
おっと、前回下平くんに素質があるんじゃないかと見ていた人ですな。やっぱりこの人がキャプテンだったのか。

さて、先生はいないけれど、練習の指示はいつも通りにメモで与えられている。
それによると今日のメニューはダブルス・・・2対2の対抗戦とのことである。ほう。

勝負は5点先取の総当たり戦。ペアは同じポジションの奴と組めとのこと。
ダブルスに5点先取ってまさにテニスのようでありますな。
それだけでも変則的なのに、同じポジションの2人で組ませるとは一体どういうことなのだろうか。
しかもこの総当たり戦で1位のペアから順番に新しい背番号を選ばせてやるとのこと。
それは・・・実質インターハイのレギュラー決めと言っても過言ではないのではないか!?

先生不在というのに大きな話になったものである。
となればまず大事なのはメンバーの選別。
ポジションごとなので、2人しかいないセッターやリベロはすぐに決まる。
松方が組むのは家守先輩。いきなり松方の尻を揉んできたりするが、これはどういう意図の行動なのだろうか。いい男だからか!?

ウイングスパイカーである間白が組むのは2年にしてこのチームのエース、大船先輩。
かと思いきや、3年にもう一人五十嵐先輩と言うウイングスパイカーがいた様子。ハブられる間白。おやおや。
結局、余ってハミ出た間白がポジションの無い下平くんと組むことになってしまいました。
露骨にハズレ引かされたと評する周囲。まあサーブはさておき他はからきしですからなぁ・・・それも止む無しか。

というわけで、組み分けも終わったので試合開始。
第1試合は五十嵐・大船のウイングスパイカーペアと、間白・下平のウイングスパイカー+その他ペアである。
これは間白としては負けられない戦いとなりましたね。
レギュラーとして試合に出られるウイングスパイカーは2人。
勝ち取るつもりがあるのであれば、ミニゲームであっても譲ることはできない。のだが・・・!!

ジャンプサーブ!!

大船先輩がいきなり飛ばしてくる。
その筋肉を滾らせてのジャンプサーブ。重さは見た目同様に相当あるらしい。
正面でレシーブしたはずの間白であったが、上手く上げることができず、得点を許してしまう。おやおや。

家守先輩曰く、このウイングスパイカーの2人は筋肉大好き。
去年から練習の後とかにも2人して肉体改造に勤しんでいたらしい。
パワーだけなら高校トップクラスにも匹敵すると言われている。ほほう・・・!!

中学東京選抜の間白ですら受けきれないジャンプサーブ。これは厳しい。
なので、間白は下平くんに述べる。あのサーブに触るな、と。

それは勝負を捨てた発言でありましょうか。確かに止めることは難しそうですが・・・
実際、なすすべなく3点を先取される間白・下平ペア。
しかし4点目になるかと思われたジャンプサーブ・・・これが際どくもアウトになる。おっ。

ジャンプサーブは攻めのサーブだ。プロでも3本に1本は外すんだよ

ああ、なるほど。間白の言葉はそこに期待してのものだったわけですな。
期待と言うか、まずそうなるだろうという計算に基づいてのことか。なるほどねぇ。

さあ、ようやくサーブ権が回ってきました。
そしてサーブといえばもちろん下平くんの出番である。
このゲーム、まず最初にサーブから入るわけだし、下平くんを有する間白はかなり有利なのではないだろうか。
相手はスパイカーだし、レシーブは決して得意というわけではない。
となれば連続5点奪取で逆転勝利は普通に有り得るわけですが・・・どうなるか。
先輩たち相手という事で変な温情さえ見せなければいけそうなんですがねぇ。怖い所です。



第6話・枷  (2014年 31号)


相手のサーブ失敗を受けて、間白・下平組の反撃開始。
その反撃の前に、間白は下平くんに述べる。お前ナメられてるぞ、と。

確かに今年の1年は下平くんだけハズレと思われている。これまでの練習を見るだけならそう思われても仕方がない。

でもサーブは違えだろ。
サーブに関してだけはオレもお前を買ってる。
そのサーブで、ハズレなんかじゃないって証明してみせろ!

いいことを言う奴ですなぁ。
そう、得意の武器があるのであればそれを見せない理由は無い。やってしまえ!!
間白がサーブを打たないことに驚く2年生に対し、下平くんの実力を理解している金田はいい笑みを浮かべる。ほほ。

まずは1本目。さっそくのネットインサーブ。
これは相手チームも見ている先輩も偶然の出来事、ただのラッキーだと思っている。
まあそれは当然でしょうな。誰がネットインサーブを狙って出来ると思うものか・・・
松方から聞かされた家守先輩も信じられないといった表情だ。

しかし、3連続でネットインサーブを決められたのでは信じないわけにはいきますまい。いい驚き方してるな家守先輩。

この3連続サービスエースで1年ペアがマッチポイントとなる。さすがに5点先取は早いな。
やはりシステム的に強いサーブを使えるチームが有利となりますか。
ハズレどころか、残り物には福がある的にいいペアが組めましたね間白。

さて、相手の五十嵐・大船ペアは完全にタテの関係となっている。
今のネットイン3本、大船先輩が取り損ねたことになった様子。
2本目まではさておき、3本目はどう見ても五十嵐先輩の前に落ちてるんですけどねぇ。
反論の許されないタテ関係は辛いですなぁ。こりゃもうネットインからの失点は避けたいと思うはずですわ。

あの人絶対前に出てくるぞ。狙ってやれ!!

よい読みをしている間白。
下平くんの武器はネットインとネットギリギリのサーブを切り分けられる点にもある。
相手が前に飛び出してくるのであれば、そのギリギリのサーブで後方を狙うまでというだ。うーむ、厄介!!
しかし五十嵐先輩。何飛び出してんだ!?はないでしょう。ここまでされてネットインがないと思っているのか?

前に突っ込んだところ、頭上を越えていきそうになるサーブ。
長身を活かしてどうにか弾くことはできたが、ボールはネットを超えて相手陣営の・・・コートの外へ。
これは勝った!と確信する間白。それは当然に思える。
が、その大船先輩が弾いたボールをダッシュで拾いにいく五十嵐先輩。そこに間に合うか・・・自陣に戻すか!!
というか、ネットくぐって移動するのってアリなんですな。

五十嵐先輩のフォローにより、どうにか相手コートにボールを送る先輩ペア。
しかしどうにか戻しただけであり、1年達にとってはチャンスボールである。
五十嵐先輩はボールに飛びついて転倒しており、防御に戻れるとは思えない。おやおや。

ファーストタッチは下平くん。なので間白はトスにまわり、下平くんにスパイクを任せる。
もちろん自分で決めたいという想いはあるが、体勢の整っていない今の相手なら下平くんでも十分と判断したようですな。

おいしいとこ譲ってやったんだ。持ってっちまえ!!

やはり間白は気の良いヤツである。
が、その気遣いが窮地を招くこととなる。
間白のトスを受けてスパイクに行こうとした下平くんだが・・・足が地面から離れない。跳び損なった!?
技術的にミスしたとかそういう話ではないですなこれは。

ここで下平くんから衝撃的な事実が明かされる。

・・・ごめん。言わなきゃって・・・思ってたんだけど。
高く跳ぼうと強く踏み込んだ時、たまにアキレス腱切った時のことがフラッシュバックして・・・
思い切り跳べなくなることがあるんだ・・・

それは・・・いや、やっぱり事前に言っておきましょうよ。
サーブ以外は期待されていなさそうだったとはいえ、今回のようなことはあるし、言っておくべきでしたな。
しかしこれはなかなか致命的ですなぁ。仕方がないことではありますが。
この弱点が解消されない限りはピンチサーバー以外での活躍は見込めない。
いや、先のことも問題だが、まずは今このゲームについてである。

五十嵐先輩!!ラストはナイスサーブで決めちゃってください!!

4対4。先に点を取った方が勝ち。
この状況でサーブ権が相手に渡ってしまった。これは絶体絶命に思えるが・・・どうなるのか?
まあ、五十嵐先輩もサーブミスでの敗退は避けたいだろうし、慎重に打ってくるとは思うが・・・

下平くんが跳べないことはまだ相手には知られていない。
なので間白がレシーブに成功し、下平くんがトスを上げられれば可能性はあるが・・・どうなるか。気になるところです。

しかし先輩ペアのタテ関係は気になりますな。
ウイングスパイカーが2人だけだからいいが、ここで間白がレギュラー争いに絡んだらどうなるのか。
大船先輩はエースということだし、五十嵐先輩よりスパイカーとしては上なのかもしれない。
間白がポジションを取るとなると、この2人での争いになるわけですが・・・険悪なことになりそうだなぁ。
まずは勝てるかどうかでありますが、先々のことも気にかかりますぜ。



ハリガネサービス 2巻


第7話・ナイスパス  (2014年 32号)


チャンスから一転して大ピンチ。
4対4で共にマッチポイント。バレーだとこの場合デュースとなり、2点以上離さないと勝利にはならない。
のだが、特にそういうルールは定められていなかったので、マネージャー権限で先に5点取った方の勝ちと定められる。え〜。

んだよー。文句あんのかぁ?
先生とキャプテンのいない今、一番偉いのはマネージャーのアタシだぞ?

そうなのかー。キャプテンよりは偉くないと言う辺りは謙虚だと考えるべきですかね?
まあ、練習の指示をするというポジションには変わりないし、偉いのは間違いないか。

ともかく、この五十嵐先輩のサーブが最後となる。どちらが決めてもそこでゲームセットだ。

2年の大船先輩のジャンプサーブは凄い威力だった。3年の五十嵐先輩も凄そうである。
しかし間白はあの時とは状況が違うと述べる。
このサーブはミスればそこで終わり。まずフルパワーでは打てないだろうとのこと。まあそうでしょうな。

オレはレシーブできると思う。けど、お前は・・・

やはりサーブ以外は信頼の低い下平くん。
まあ、例え上手くレシーブできたとしても、それはまた間白がトスを上げる側になることを意味しちゃいますからねぇ。
そうなるとまた下平くんがスパイクに行くことになり・・・さっきと同じ結果になる可能性がある。うーむ。

・・・下平。お前、セッターポジションに上がれ

考えた結果、自分が確実にレシーブを受けられるようなポジションを取る間白。
しかし金田ならともかく、普通は1人でカバーできるほどコートは狭くない。
少しでもサイドに打たれたら追いつけない。
しかし、このアウトになったら終わりという状況。よほどサーブに自信がなければ真ん中辺りを狙ってくるはずと推測は出来る。
そして真正面ならばレシーブできる。その自信もあっての布陣だ。

上等だよ

サーブを打つ五十嵐先輩からしてみれば挑まれたような形。
ならばそれを粉砕してみせなければいけない。筋肉信仰者らしく・・・パワーで!!

というわけで、放たれるのはジャンプサーブ。狙いは間白の正面。
間白としては計算通りのコースでありましょうが・・・想定外なのはその重さ。
上手くレシーブしたはずが、後ろへと大きく跳ね上がってしまう。
うーむさすがのパワー。しかし打ち損じたら確実にアウトだろうによくもフルパワーで打てたものだ。

どんな時も全力勝負!!それが五十嵐先輩なんだ!!

そのように説明してくれる家守先輩。ふむ、いい脳筋といった感じでしょうか。
3年生だけあり、メンタル面は鍛えられている感じですな。

レシーブに失敗し、終わったと膝をつく間白。
だが、まだボールは生きている!!
先のゲームで五十嵐先輩は完全に決まったと思われたボールを拾っている。ならば下平くんにも・・・!!

もう足を引っ張るだけなんて嫌だ!!かばわれるだけなんてダメだ!!
やっと思い切りバレーできるようになったんだ。
高校でこそボクはレギュラーになるんだ!!

壁際に落ちるボールを片手で拾う下平くん。
ボールに集中しすぎて壁も見えていない感じですな。派手に激突しおったよ。ぐえっ。
だけどその甲斐あってボールは自軍コートへと戻っていく。
いや、コートからは少し外れており、このままではアウトになりそうな位置。
けれども高さはネットよりも少し高いぐらいとスパイクするにはいい高さ。であるならば・・・間白の出番だ!!

下平の奴・・・根性見せやがって・・・!!

横に外れたボールを持ち前の身体能力で素早く追いつき、跳んでみせる間白。
ドンピシャでスパイクの体勢に移行。しかしそこに立ち塞がるのは大船先輩のブロック。
かなり大きな壁であるが・・・守る人数がいない時にうかつに跳ぶと、その上を越された場合に対処が出来なくなる。
間白は指先で押し上げてボールを相手のコートへと入れる。
これによりポイントは間白・下平ペア。5点先取で勝負が決まった形となりました。おお。

ナイスパス

壁にぶつかってうずくまっていた下平くんに声をかける間白。お、いい感じですな。
サーブだけではなく、そういう根性もあるのだと見せることが出来た。
こうやって仲間意識が高まっていくのは非常に良いことだと思います。うむうむ。
先輩たちとは仲間意識よりも対抗意識による隔絶が強くなりそうな気がしないでもないですが。

間白としては派手なスパイクで決めたいという想いもなくはなかったんじゃなかろうか。
でも、優先すべきは勝利。特にこの下平くんが頑張って拾ってくれたボールは無駄にできない。
そういった想いが冷静なフェイントに繋がったように思えます。
スパイカーが脳筋だらけなのも問題だし、こういうクレバーなのもいていいんじゃないですかなー。
ゲームの勝利もあり、レギュラー獲得に一歩前進となったわけですが、その後のゲームはどうなるか。注目ですな。



第8話・やりたくない  (2014年 33号)


金田の長ーい腕で5点目がめくられ、間白・下平ペアの勝利が決まりました。
豊瀬高校最大の得点源である五十嵐・大船ペアに勝った。これはかなり大きい。

次いくぞオラー!!

余韻に浸る間もなく次のゲームが始まるぞオラー。何だかこのシーンのマネージャーが可愛いぜ。

第2試合は以下の組み合わせ。
チームリベロ。猫田瞬(2年)、金田進(1年)
チームミドルブロッカー。久保遥(3年)、高代航平(3年)

これまた図式としては先輩後輩対決。
ゲームはミドルブロッカーペアのサーブから始まる。
まあ、守りを得意とするリベロならばサーブを落とすようなことはありますまい。
・・・と思ったら、レシーブがしたい金田。猫田くんのポジションであろうがお構いなしに取りに来る。
体格差があるので先に入られても弾き飛ばしてボールを拾う。ばいーん

見事にボールはネット際に上がるが、拾う人がいないのではどうにもならない。
そんなことを繰り返して結局3点を先取されるチームリベロ。そりゃ猫田くんも尻尾立てて怒るさ。シャーッ!

俺はセンパイと自分に言い聞かせて抑える猫田くん。
先輩だからと居丈高になるのではなく大人として自重する方に回るとは。
まあ正直相手が相手だし、怒っても暖簾に腕押しな感じは否めませんわな。

次のサーブはしっかり金田が拾う。やはりそのボールコントロールはさすが。
しっかりとネット際に上げ、猫田くんもいいトスを上げる。
最後は金田のスパイク・・・なのだが、そのスパイクを塞ぐのがミドルブロッカーの役目である。
2人がかりで跳ばれてはリベロのスパイクでは簡単には決まらないでしょうなぁ。

さて、スパイクを弾かれた金田。今度はスパイクをやりたくないと言い出した。相変わらず正直な子だ。
とはいえ猫田くんは154cm。とてもスパイクが出来る身長ではない。
それでも後輩の意見を尊重し、スパイクをやりたくないならトスを上げるかと聞くが、レシーブはやるとの返答。おやおや。

・・・アハ!
スパイクやりたくねー、トス上げたくねー。それでどう点取るんだっつーの。
お前・・・たしかにレシーブ上手いけどさ、バカだろ
スパイクがつまんない?そりゃお前が下手だからだろ。フェイントでかわすとか思いつかなかった?
中学東京選抜ってもっとスゲーのかと思ってたけど、お前みたいなバカが入れるんならたいしたことないね!

気を遣っている様子から一転して毒を吐き出すネコちゃん。とてもいい笑顔だ。
まあ金田を相手にする場合は取り繕うよりも正直な気持ちで喋った方がいいのかもしれませんな。

4点先取されたが、ここでようやく相手のサーブミスによりチームリベロに点が入る。
そしてサーブ権交代。しかし、リベロというポジションは本来スパイクもサーブもブロックも禁止されているまさに守りのポジション。
逆に言うと自分では点を取れないポジションである。
そのリベロだけでこのゲームにどうやって勝つのか。確かに間白が言うように、一番勝ちようがないペアに思える。

猫田くんのサーブを拾い、久保先輩のトスから高代先輩のスパイク。
それをブロックしようと跳ぶ猫田くん。さすがにその身長ではほとんどネットから上に出て行かない。ちまっ。
だけど、その手を避けようとして方向性を限定させれば、後ろの金田が拾ってくれるだろうとの考えだ。
ふむ。なかなかに冷静ですな。

スパイクをきっちりと拾う金田。
ここから繋いで・・・の流れになるかと思いきや、レシーブしたボールは相手のコートへと飛んでいく。
そして、アウトになるかと思いきや、コートの隅ギリギリに落ちるボール。ほほう・・・これは・・・

先輩たちは今のはただのラッキーだと思っている様子。
しかし金田は下平くんを指さしながらこう述べる。

狙った所に落とせるの、お前だけじゃなイ

ボールコントロールには定評のある金田であるが、まさかそんな遠くにまで自在に落とせるとは・・・
スパイクはどこに来るかなんてわからないのに、そんなことできるわけないよねと尋ねる下平くん。
今回は正面のボールだったからできたが、横に逸れるボールだったらさすがに難しかったのかもしれない。
まあ、相手のスパイクもそれほど強烈ではないし、金田ならやりかねないとは思うんですけどね。

スパイクが決まらないのならばレシーブだけでどうにかすればいい。
レシーブしかやりたくないという金田らしい戦い方である。

東京選抜の力を見せた金田。
間白も運動力の高さは見せておりますし、こうなってくると松方のハードルがあがってくる感じである。
果たしてこのペアわけのゲーム中に凄さを見せることが出来るのかどうか。
解説役というポジションだけでは生き残れるか分からないぞ!!



第9話・ブ男  (2014年 34号)


金田のスゴ技で得点を重ねたリベロチーム。
だけど、それも続けられるものではなく、あっさりと敗退。
うーむ、さすがの金田も角度つけられると厳しいようですなぁ。

さて、これでまだ試合をしていないのはセッターチームのみとなった。
というわけで1巡して下平・間白ペアが登場。
ウィングスパイカーの先輩方は顔が怖いので後回しだ!!マネージャーの判断だから仕方がないですね。

セッターチームは松方一颯(1年)と家守浩一(2年)。いい名前してるな松方。
しかしセッターは守りも攻撃も厳しそうなペアであるが、このゲームでどれほどの活躍が出来るのでしょうか。
しかも肝心の先行争いで負け、サーブ権を取られてしまう。間白のこの嬉しそうな顔!!くっ!

下平くんならば全てサーブで決めてしまいそう。
だけど、ここは何故か間白が先にサーブを打つことになりました。何か考えがあるのだろうか?

間白が放つのは大船先輩のような豪快ジャンプサーブ。
正面から受けようとする家守先輩であるが、受けきれずに大きく弾いてしまう。うむ、なかなかの威力ですな。

続いてのサーブはどうにか前へと飛ばす家守先輩。
しかし威力を殺しきれず、相手のコートへ。
そのボールを、ジャンプサーブを打った直後なのにネット際まで走って跳び、スパイクを決める間白。
さすが運動神経は抜群なようですな。最近ダークエルフさんとか呼ばれているだけのことはある!!

運動神経は凄いが、五十嵐先輩ほどのパワーは無い。
松方に言わせれば、肩の力抜いて受ければ絶対上げられますよとのこと。
ふむ、よいフォローでありますが、後輩によいフォローされるのは先輩としては悲しく思えたりもしますわな。
それも同じポジションを争うライバル的存在からのフォローだ。素直には喜べない。

もうこれ以上、情けないところは見せられないな!

気を取り直そうとする家守先輩。
が、強いサーブを待ち受けていたところに、軟打。緩いサーブでコート手前側に落とす間白。
家守先輩も頑張って飛びつくが・・・届かない。うーむ、してやられてしまってますなぁ。
何いいように1年にやられてんだよと吠える大船先輩。貴方たちも3連続で1年にサーブ決められてますやん。

アイツ・・・!家守先輩を潰しにきやがった!

さすがに松方には間白の意図が読めた様子。
なるほど。ゲームの勝利を譲る気は無いが、松方のレギュラー入りの援護射撃はきっちりしようという配慮か。
インターハイ予選まで2か月もない。セッターとしては早い内にレギュラーとなって先輩たちと連携を合わせておきたいところだ。

家守先輩には悪いけど、この場でレースを降りてもらうぜ。

そういった間白の思惑は完全にハマリ、大いに落ち込んでいる家守先輩。帰りてぇ〜。
強きなウィングスパイカーの先輩たちとは違い、何となく気弱な感じの家守先輩であります。
うーむ、そう沈み込まれるとなぁ・・・思わず励ましたくなるじゃないですか。
松方もそう思ったので・・・練習前にされた仕返しということで、家守先輩の尻を揉む。もみっ。
意図は分からないでもないが、ゲーム中という注目が集まっている中でよくやったものだな!!

今度からそーいうのは2人きりの時にしてよね

そのような言葉を受ける松方。おやおや、すっかりその気にさせてしまったようですな!おやおや。
2人の今後の関係が楽しみであります。
まあ、それはさておき今はこのゲーム。間白はまだまだ家守先輩を狙うでしょう。
1年坊主に翻弄され、1年坊主にフォローされて、カッコ悪いと考える家守先輩。だけど・・・

カッコ悪いの生まれつきだったわ

おっと、カッコ悪い筈なのに何だかカッコいい気がするぞ家守先輩。
開き直ったというか、落ち着きを取り戻した様子であるが、何か秘策でもあるのでしょうか?
セッターなだけに何となく頭は働きそうな気がしますが・・・
ううむ、どのような反撃を行うのか気になるところであります。



第10話・LET IT GO  (2014年 35号)


中学で東京選抜に選ばれるほどの有望な1年生が3人も入って来た。
しかもそのうちの1人は自分とポジションが被っている。
家守先輩の驚きはかなりのものでありましょう。まあ、それは他のポジションの被る先輩たちにも言える事ですが。

いやでも、こないだまで中学生だったわけだし・・・

そう考えて自分を元気づける家守先輩。
しかし実際に対決してみると中学レベルの高さが分かる。
まあ、この世代の1年差が大きいとはいえ、トップクラスとなると話が違いますわなぁ。

サーブを狙われ、次々と得点を許してしまう家守先輩。
次ミスったら今日からもっか1年なっ!なんてヤジも飛ぶ。これは酷い。
しかし、からかい気味な五十嵐先輩に比べ、大船先輩は何か神妙な表情をしている。ほう・・・?

全体的に舐められ気味の家守先輩であるが、間白は誰よりもハッキリと舐めてかかっている様子。
さすがに先輩に対してあんなの呼ばわりはよろしくない。
しかし、その舐められているはずの家守先輩はいつの間にか気を取り戻しているようだ。

間白く〜〜ん。次あたりは松方ちゃんも狙ってみない?

おっとこれは。面白い発言である。
プライドを捨てた発言ではあるが、揺さぶりをかけるという意味では面白い。
これで本当に松方の方にいくならそれも良いし、侮ってくれるならそれはそれで良し。
どうでもいいが間白はくん付けなのに松方はちゃん付けなのね。セッター2人の距離が急速に近付いている・・・!?

それはさておき、同じ2年である大船先輩は家守先輩をこう評する。

プライドなんかねーよなあ。
バレーもヘタクソだしオレと違って顔もイケてねーし。できるのはブサイクにボールをつなぐことだけだろ?

とりあえず顔のことは言ってやりなさるなと。
まあ、その辺りのことは家守先輩自身ちゃんと理解しているみたいですけどね。

結局、間白は家守先輩を狙ってサーブを放つ。
ジャンプサーブは精度に問題があるが、家守先輩を侮ってコースを狙わず正面へと放り込む間白。

そもそも後輩の前だからってカッコつけよーと思ったボクが・・・バカだった!!

体の正面でレシーブをし、潰れるように後ろへとふっとぶ家守先輩。
凄い体勢であるが、ボールはしっかりネット前のトスを上げやすい位置に飛んでいる。
なるほど。体ごと後ろにぶっとばされることでサーブの勢いを殺したのか。

最初からそーすりゃいーんだよ。何カッコつけてんだか・・・

そう述べるのは猫田先輩。
ふむ。大船先輩にしても猫田先輩にしても、同年代である家守先輩のことをよく理解している感じですな。
ブサイクであるが、ブサイクなりにやれることを理解している。
その辺りをきちんと自覚して戦えるタフさは武器と言えるかもしれませんな。

さて、いいレシーブが来たのだし、ここは松方もいいトスを上げる。
ネットにつめた家守先輩がスパイクしやすい位置へとボールを上げる。
しかし、そのスパイクに対してブロックを試みる間白。
アンタくらいオレ1枚でも・・・などと思っているようだが・・・やはり侮ってますなぁ。

右手が・・・前?
ちょ・・・アンタ・・・左利きかよ!?

右で打ってくると思ってコースを開けてしまっていた間白。
ブロックの甲斐なく、家守先輩にスパイクを決められてしまいました。おやおや。
うーむ、侮りすぎて全くのノーマークにしてしまっていたのが響いた様子ですな。これはイカン。
おかげで彼はバカなのかな?と評価されることになってしまう間白。
松方もまあ、それに関しては否定しない。バカかそうじゃないかと問われると・・・やっぱりねぇって感じか。ハハハ。
まあ、松方も間白の家守先輩に対する扱いに関しては思うところがあったんでしょうな。間白のぐぬぬ顔いただきました!

なんかアレだな。スゲェ敵わないぐらい上手いと思ってたけど、中身はまだまだ中坊だな

気圧されていた様子の家守先輩でありましたが、気を取り直した様子。
自分は自分らしく。ブサイクはブサイクらしく戦えばいいってことですかね。
まあ、変に気取ったりカッコつけたりするよりはその方がむしろカッコいいってことになりますやね。うむ。



第11話・信用なし?  (2014年 36+37号)


気を取り直して反撃を開始する家守先輩。何だかノリノリである。
元々こういう性格だったんでしょうな。
しかし調子に乗られるとそれはそれでイラっとする。大船先輩の言葉はよく分かる。

再び家守先輩のスパイク。今度はブロックするぞと構える間白。
であったが、ここは松方のトスフェイント
トスを出すと見せてそのままツーで相手コートへと放り込む。
さすがにセッター。こういう攻撃は手慣れたものですな。

続いて家守先輩のサーブ。
これを拾う下平くん。うーむ、このペアの弱点はやはりここですな。
下平くんが最初のレシーブに回ると間白のスパイクがなかなか活かせない。
間白がトスに回った場合、下平くんが跳べずにポイントを無駄にする可能性がある。むむ・・・

それを恐れて間白もトスフェイント。ツーでコートに送る。
が、それは読まれていたというか、送り方が甘かった感じでありますな。
松方にレシーブされ、そこから家守先輩のトス。松方のスパイクの流れでセッターチームの追加点となります。
ふうむ、さすがに松方。スパイクも結構行けるみたいですな。
ネット際でトスを上げたり自身で打ち込んだりと使い分けるセッター。やはり花形のポジションでありますかね。

どうやら間白がトスフェイントで来ることは読めていたらしい松方。
さすがに中学東京選抜で一緒にやってきてるだけあり、その辺りの考えは読みやすいか。
まあ間白自身が単純だから読みやすいってのもあるんでしょうけどねぇ。
何にしても頼もしい男である。チュンチュン

随分と仲良くなってきたセッターチーム。
ポジション争いは過酷だけど、こういう絆の深まり方はいい感じがしますな。

さて、続いての家守先輩のサーブ。
これまた下平くんがレシーブするが、今度は長い。
後ろに逸れたボールを無理矢理スパイクする間白であったが、さすがに無理があったようですな。ネットでございます。だっせ!
やけに可愛い顔で嬉しそうな大船先輩はさておき、これでマッチポイント。
後1点決まればセッターチームの勝利である。

頑なに下平くんへトスは上げずにいる間白。
まあ、たまにとはいえ、跳べなくなることがあるってんじゃあしょうがないですわなぁ・・・
しかしそれで選択肢を絞ってしまっている現状では勝つのは厳しい。
松方の読みでは、間白は失敗したプレーをもう1回狙ってくるとのこと。さてさて・・・

セッターチームが相談を行うように、間白も下平くんと相談。
次はうまく繋ごうとしなくていいから、とにかく高くボールを上げろとのこと。ふむ。そして――

お前がボール打ち返すときはジャンプ禁止!確実にパスで返せ

いつトラウマが発症するか分からない現状、ジャンプはなるだけしない方がいいですわな。
克服するにしてもそれはこのゲーム中ではありますまい。

というわけで、言葉に従って大人しく高くボールを上げることに専念する下平くん。
その意識が良かったのか、ボールはネット際。スパイクするにはちょうどいい高さに上がる。
しかしこのツーは当然読まれており、セッター2人掛かりでのブロック。
家守先輩も松方並に跳べるんですなぁ。意外と侮れない人だ。

コースは完全に殺された。無理矢理打って決められるかどうかは分からない。しかし・・・

釣ーれたっ

空中で体を横に回転させ、片手でふわっとボールをトスする間白。これは何だか凄い技術だ。
いや、それにしてもここで間白がトスに回るとは。
なるほど。下平くんへの確実にパスで返せというのは、ジャンプせずに打ち込めというメッセージでもあったわけですか。
ふーむ。やはり間白はいい奴というか何というか。
勝利のために柔軟な考えができる男であるようですな。拘りでペアをないがしろにしないのは好感が持てます。

相変わらず仲が良いところを見せつけてるセッターチーム。ちゅんちゅんちゅんちゅん
それはさておき、4対4の同点。先に決めた方が勝ちの状況。
ここで満を持しての下平くんのサーブ。ここは決めなければなりますまい。

・・・てなところで次号巻頭カラー!!
きっちりと下平くんが決めてくれそうな感じでありますが、さてさてどうなりますか。
味方チームの選手紹介は一通り完了した感じですし、そろそろこのゲームも終わりそうですな。
最終的な結果がどうなるのか・・・楽しみです。



第12話・てっぺん  (2014年 38号)


早くも巻頭カラー&ページ大増。いいスタートダッシュを切っているようで、人気の程が伺えます。
しかし見開きカラーで水着シーンなのに金田が一番目立っている感じなのは・・・まあ止む無しか!!

さて、インターハイの抽選に向かっていた監督とキャプテンが帰ってくる。
果たしてその抽選結果はどのようなものだったのか。山縣先生の表情からは全くと言っていいほど窺い知ることはできない・・・

それはさておき、2人が帰ってくる時には丁度2対2マッチは全ゲーム終了したところでありました。
結果、1位はチームWSの2人。おや?更に2位はチームセッターの2人でありました。おやおや?
以下、3位はチームMB。4位にようやく間白と下平くんのペア。チームリベロは案の定の最下位だそうな。
ふーむ、順調に勝ち星を重ねていくと思われた下平くんたちはその後2連敗だったのか・・・
しかしウイングスパイカーの2人はさておき、セッターの2人が勝ち進むとはねぇ。いや攻撃力を考えると妥当なところなのかな?

ここで回想。前回の続きとなるセッターチームとの戦い。
下平くんのサーブだが、ネットインは読まれやすい。
ので、強めのサーブを打ち、家守先輩のミスを誘う。
が、後ろに逸らしたこのボールを巧く松方がカバー。
そしてスパイクできる高さのボールを、狙ったわけではないがフェイントのような形となったスパイクで決める家守先輩。
うーむ、ここで星を落としたのは厳しかったですなぁ。というか松方は狙ってその高さと位置に上げたのだろうか。
そしてこの2人がミドルブロッカーの先輩たちに負けたのも驚きではある。地味に強い・・・のか?

ともあれ、帰って来た山縣先生は部員たちに一言だけ問う。

・・・楽しかったか?

意図の分かりづらい質問であるが、楽しかったかどうかという意味ならば大半の人が楽しめた様子。
まあ苦労しかせず勝てずにいたリベロの2人には微妙なものであったかもしれませんがね。

それにしてもこの練習にどのような意図があったのか。
間白が考えるように、部のメンバーがどういった人なのかは大体把握することが出来た。
そういった交流を図るためにミニゲームという形を取ったということでしょうか?
人数がいる紅白戦だと個々の力がぼやけがちなので少人数に絞ったということでしょうか?さてはて。

それはさておき、ここでインターハイ予選のトーナメント表が提示される。
左中央付近に豊瀬の名前がありますな。ほほう、シードですか。
まあ去年は結構な成績だったようですし、この扱いも納得といったところでしょうか。

間白たちが真っ先に気にしているのは毎年東京1位の瞬天堂学院。
そことどこで当たるのかが気にかかるのだが・・・この紙にはその名前がない。おや?
何故かと思ったら2枚組のもう1枚にいたからであった。
さすがに東京。出場高校が多すぎて1枚に収まりきらないのか・・・

そのことを残念がる間白たち。
このトーナメント表を見る限り、別の山を勝ち残ったチームとは戦わずに本戦出場が決まる感じなんですかな?
予選で瞬天堂と闘えないことを残念に思っているのかどうなのか・・・さてはて。

しかし瞬天堂と当たらずともこの山にも強豪はいる。
全国屈指の超大型チーム王葉工業。誰が打ってくるかわからないサーカスバレー、豊瀬が新人戦で負けた桐城高校
東京3強のうち瞬天堂以外の2校がこっちの山になっている様子。ふうむ。
順番に当たるなら王葉、桐城の順番か。潰しあいも期待できない以上、全部に破るしかないですわなぁ。

少し気弱になる先輩方であるが、それでも山縣先生が来て成長した自負はある。
たった9か月でその3強の1つである桐城相手に善戦したわけですものねぇ。誇っても問題はなかろう。

あれからオレは3kg筋肉をつけた!!次は絶対勝つ!!
オレらもう1つ2つ勝って喜んでるチームじゃねぇだろ!
狙うのはこの山のてっぺん。インターハイ本戦出場だ!!

ハッキリと言い切る五十嵐先輩。うむ、その意気やよし。
その言葉に勢い付く面々にキャプテンから一言。

今日、抽選会場でさ、桐城に練習試合申し込まれたよ

さらりと凄い発言が飛び出している。
全国区の超名門校とこのタイミングで練習試合をすることになるとは・・・!!しかも明日さっそくかよ!!
その上、山縣先生の話からしてわざわざ向こうが来てくれるらしい。
まあ申し込んだ側なんだから、礼儀的に考えればそれが正解なんでしょうけども・・・

急な話ながらも意気揚々と言った感じの先輩たち。
しかし間白たち3人は何だか浮かない様子である。一体どうしたのだろうか?
確かに今回のゲームの結果ではレギュラーに選ばれるかどうかは分からないが、果たしてそこを気にしているのか。
瞬天堂と予選で戦えなさそうなことを残念がっているのか。
それともインターハイ本戦出場という先輩の志の低さを嘆いているのか。さてさてどういう心境なのでしょうか。気になりますな。



第13話・襲来  (2014年 39号)


桐城高校の名前はボクも知っていた。あの桐城高校と明日戦うんだ・・・!!

東京代表として全国で戦ってきた桐城高校。
下平くんもTVでその勇姿は見たことがある。
その有名校と戦うわけだから、そりゃあ緊張しますよね。
前に惜敗した五十嵐先輩たちは今度こそ絶対勝つぞと勢い込んでおりますが、間白たちは何だか浮かない顔をしている。む?

そういえば間白たちは桐城にいくハズだったのにその話を蹴って豊瀬に来たんだったっけか。
それは確かに気まずい部分はありそうですなぁ。
いや、どうやら浮かない顔をしていたのはそれだけではない様子だ。
練習試合の件どう思うと松方が聞けば、間白はこう答える。

は!?どーもこーもあるかよ!!完璧ナメられてんじゃねーか!!

先輩たちは強豪校にいたことがないからどういうことか分からないんだろうなと述べる松方。
同じく強豪だった覚えのない下平くんは訳が分からず説明を求める。どーいうこと?

普通、強豪校が練習試合を組む時は近県の強豪校と組むんだよ
同じ県内の強豪とは予選トーナメントの上のほうで当たる可能性が高い。
練習試合なんかで手の内明かすのはリスクがデカすぎんだろ。
・・・強豪校が同じ地区の学校と練習試合組むとしたら、そりゃあ・・・手の内を明かしても問題なく勝てる相手だけだ!

なるほどねぇ。これが浮かない顔をしていた理由かー。
せっかく桐城を蹴って将来性を見込んで豊瀬に来たのに、ナメられた上に本当に負けたのでは目も当てられない。
これは確かに間白たちとしてみれば明日は是が非でも勝たなければいけないところであります。

というわけでその日の練習は終わり、一日が経過。
いよいよ練習試合を行う時間がやってきました。
体育館でウォーミングアップを行う面々。何だか知らないがや早くもギャラリーが集まってきている。ザワザワ。
どうやらこの練習試合を言い触らした人がいるみたいですね。うん、野々原キャプテン。あんたか!!

デモンストレーションとして野々原さんは強烈なスパイクを決めてみせる。
間白も感嘆するこのスパイク。ふーむ、野々原さんのポジションはスーパーエースですかな?
他とポジションが被らないとしたらそこしか残っていないか。

さて、でかいバスに乗って桐城高校が登場。
強豪高校のメンバーはどのようなものでありましょうか。
なんとなくチャラそうな奴らがいるのが気にかかるところでありますが・・・?

予選で当たる可能性があるところと組むのはナメられているからだと述べた間白。
しかしさすがに接戦にまで持ち込まれた相手をすぐにナメてくるだろうか?
この練習試合、何か思惑がありそうな気がしますな。桐城のメンバーはベストメンバーではないとか・・・?
そういう意味では豊瀬の方も温存を考えるかもしれない。
手の内を見せないということなら1年生たち、特に下平くんの存在は隠し通される可能性が高そうだ。
さてさて・・・この練習試合。手の内を隠しながらでどう盛り上げてくれるのか。楽しみです。



第14話・暴露  (2014年 40号)


高校に入って4月いっぱいは豊瀬も体験入部期間。
色々な部を体験し、自分に合った部を見つけることとなります。
しかしむしろ部の方からダメ出しされるような子もいたりするわけでして・・・
前回の最後に出てきた可愛い女子、羽柴さんもそんな風にテニス部からダメ出しされた子でありました。おやおや。

既に色々経験した結果、どれもダメだった感じの羽柴さん。歌も料理もダメか。
でも諦めずに何とか前向きでいようとしている。その心意気は買いたいところですな。

さて、そんな羽柴さんが桐城高校のバレー部に勘違いされる前回の場面からの続き。
ふむ、どうやら桐城高校は男子校のようですな。可愛いマネージャーがいるところは羨ましかろう!
それにしても前回勘違いしちゃったこのメガネの男子は先生じゃなくて高校生だったのか・・・!!これは失礼。

案内よろしく頼みます。自分主将やっとる鯨川堂山です。

いい笑顔での挨拶でしたが、実際のマネージャーは遅れてやって来たこの百合草さんの方でありました。
しかし瞬時にこのマネージャー勘違い劇を好機と捉える百合草さん。
無理矢理に羽柴さんのことをウチの期待の新人マネージャーとして取り込んでしまう。おやおや。
うん、でもまあ丁度良かったんじゃないですかな。これもまた道の一つかもしれませんよ羽柴さん。
可愛いマネージャーが増えるのは読者的にも有難いぜ!!

さて、というわけで桐城高校が体育館にやってきました。チワース!!
ここで桐城高校の監督である古川先生が登場。
にこやかに揉み手をする色黒なオッサン。うーん、この笑顔がいかにも胡散臭そうな感じだ!!
実際、山縣先生を持ち上げ、今日は勉強させてもらいますといいつつ内心ではきっちり叩き潰させてもらうと考えている。
ふーむ、やはり甘く見てかかってきているということなのだろうか?
前回接戦まで追い込まれたわけだが、その苦手意識になりそうな所を快勝で塗りつぶそうという意図だろうか?さてはて。

桐城高校には間白の出身である育葉中の先輩が在籍している様子。
鮫島先輩。名前の通り、鮫のような歯を持つ先輩が威圧感も露わに近づいてくる。怖えーな。
間白はご無沙汰してますと頭を下げるが、桐城を蹴って豊瀬に入ったことがどうにも許せない様子の鮫島先輩。

レベル落としてこんな確実にレギュラー取れそうな学校入りやがって。終わってんなマジ

意識の高そうな鮫島先輩としてはそういう逃げの姿勢は許せない様子。
実際のところは将来性を見据えての高校選択であったのだが・・・納得してもらうのは難しいでしょうなぁ。
ついでにいえばまだレギュラーにはなれていなかったりする。
相手が強面で来るならば、こっちも動じない男、大船先輩が前に出て来るぜ!!

中学東京選抜だろーが1年がソッコー試合出れるほどウチのレギュラーはお安くねーんだわ

ふむ。相手にしている時は縦社会に沿って偉そうな先輩でありましたが、味方にするとこれは頼もしい。
威圧するという役目は十分果たせそうなので、先輩方も皆笑顔で見守っておりますわ。ゴゴゴゴゴ。

にらみ合う両者。漂う緊張感。そこに割って入ったのは桐城の1年、倉光
この倉光は中学の埼玉選抜でセッターをやっていたらしい。ほほう。
その倉光のいた埼玉選抜は中学最後の大会である中学都道府県選抜対抗戦で東京選抜に敗れたそうな。ほうほう。
なるほど、それで松方はこの倉光に見覚えがあり、倉光の方も東京選抜のことをよく知っていると。

ま、あくまですごいのは本物の東京選抜のほうだけだったけどさ

ん?本物・・・?それは一体どういうことか?まさか・・・

だってこいつら、全然試合出てませんでしたし
ま、東京は昔から駿天堂中等部でレギュラー固定らしいし、仕方ない仕方ない。

あらあら。これはまた何とも意外な事実が明らかになってしまいましたねぇ。
勿論選抜でベンチだったことは誰にも言っていない。
東京選抜の一員であったことは間違いないし、それはわざわざ言うようなことではないとの判断だったのでしょうが・・・うーむ。

なんか、ごめーんねっ!!キャハハハ!!ハ!ハ!

えらく歪んだ笑みで哄笑する倉光。うーむ、思った通りの嫌な奴でありました!!
主将である鯨川さんが抑えてくれたからどうにかなりましたが・・・うーむ、試合前に大変なことになりましたなぁ。

・・・それでか。桐城来て同じ思いしたくねえから試合出れそうな学校選んだのか・・・腰抜けが・・・

もう相手する気も失せたとばかりに背を向けていく鮫島先輩。
ううむ、これは何ともはやでございますなぁ・・・
でも遅かれ早かれ知られることではありましたし、逆に考えれば本番より前に明かされたのは良かったと言えるかもしれない。
東京選抜という肩書きは確かに大きいが、豊瀬ではそれで優遇されたわけでもない。
今から実力を示し、レギュラーの座を奪い取るという意識に立ち返ることが出来ればよいのだが・・・さてさてどうなりますか。
金田なら普通にそういう意識になれそうだけど、他の2人はナイーブなところありそうでなぁ。うーむ。

しかし実は下平くんも含めて1年生は皆試合に出れない組であったとはなぁ。
むしろ最後の試合で活躍した下平くんの方が燃焼できたと言えるのではなかろうか。
間白が下平くんに優しい感じなのも、どこかに共感する部分があったからだったのかなぁ・・・
それはそうと、選抜で試合に出てないくせに自分たちにはスカウトが来なかったとか言ってたのか・・・?
さすがにそれは今思い返すとどうかと思いますぞ!!

あと、間白たちが打倒駿天堂に燃えているのは中学時代の意趣返しの可能性も出てきましたな。
その駿天堂のメンバーがいたおかげで自分たちは東京選抜として活躍できなかった。
ならば高校で駿天堂を打倒して払拭しよう・・・そんなことを考えていたのかもしれない。
さてさてもしそのような意識でいたとしたのなら・・・勝てるかどうかは分かりませんなぁ・・・
色々と暴露されたことでありますし、ここからは意識を切り替えて頑張っていって欲しいものであります。



第15話・ホアタッ!!  (2014年 41号)


元中学埼玉選抜であるという倉光に過去のことを暴露される元東京選抜組。
実力はあったけど駿天堂中等部じゃないからレギュラーになれなかった・・・ってわけじゃなさそうですな。
それでも打倒駿天堂を目指すぐらいの実力は備えているのでしょうが・・・

いずれにせよ、倉光の発言で試合前から重苦しい空気が出来上がってしまう。
が、それを一気に打ち払い、スターティングオーダーを発表する山縣先生。さすがに落ち着いてらっしゃる。
そしてそのオーダーには下平くんは元より、東京選抜の3人は誰も入っていない。ふむ。
ちなみに野々原さんのポジションはセッターの対角に位置するオポジット。別名スーパーエースであります。やっぱりね。

さて、オーダーに入ってない1年達は線審に入ることとなる。
ふむ。言われてみれば人手が足りないわけだし、試合に出ない人がやるしかないか。
まあ交代すればいいだけだし、試合に参加できないことはないと思うが・・・いや、やっぱり出さないつもりかな?

それはさておき、ここでようやく羽柴さんの紹介が行われることとなる。
フルネームは羽柴恵ちゃん。
名前を今知ったばかりだというのに、新人マネージャーのケイちゃんですと紹介する百合草さん。
色々な意味で強引な子でありますが、まあ男ばかりの部でマネージャーするにはこれぐらいでないといかんのかな。

ついに新しい女子マネが来たと喜ぶ先輩たち。パチパチパチパチ。
可愛い子が参加してくれるのは嬉しいですわな。分かります。
勝手に話が進んで断りづらくなっているケイちゃんでありますが、まあ物は試しと思ってさ。諦めましょう。

さて、いよいよ始まる強豪桐城との練習試合。
どうやら桐城は先の新人戦で接戦にまで追い込まれたことを屈辱と感じている様子。

お客さんの前でぺちゃんこにして、身の程思い知らせてあげなさい

なるほど。予選が始まる前にきっちり叩き潰しておこうと考えての練習試合なわけか。嫌らしいことだ。
でもまあ、桐城の選手としても名誉挽回の機会ではあるし、燃えるところなのも間違いはない。
どうでもいいが、桐城の5番の頭が気になって仕方がないのだが・・・

ちなみに豊瀬の1年だけでは手が足りないので桐城の方からも審判を務める選手が出ている。
海太空太の双子。この2人はツーセッターとして去年活躍していた選手である。ほう?

セッターだけじゃねえよ。あの時のリベロも控え組のなかだ。
何より・・・今年の春高登録選手最重量エース鯨川がベンチに座ったままだ

ちょこんと足を揃えて座り、大きな体を畳んでスコアブックを付ける鯨川さん。なんだか可愛い。
って鯨川さん、新人戦の時は怪我して出てなかったのか!!
うーむ、その辺りの情報を聞くと、豊瀬がいい勝負を出来たのは相手が万全じゃなかったからという可能性が・・・
そうだとしたら、勘違いさせないために潰しにきた桐城の監督の気持ちも分からなくはないなぁ。

新人戦の時の話はさておき、主力組を温存している桐城。
うーむ、やはり戦力はなるべく隠す方向で来ましたか。
そして更にいうなら、このメンバーで十分だと思っているわけでありますか・・・ふうむ。

さて、バレー初心者のケイちゃん、百合草さんから色々教えてもらっています。
選手の中で1人だけ違うユニフォームを着ているのはレシーブ専門のリベロの証。
豊瀬だとちっちゃい猫田先輩のポジションですな。
一方の桐城の方は180後半はあろうかという長身がリベロを務めている。
猫田先輩のいけすかねーが正直な感想でよろしいですな。ハハハ。

ともかく、豊瀬のサービスから試合が開始されます。
まずは一発かましてやろうと五十嵐先輩のジャンピングマッチョサーブ。
一年坊主じゃ相手にならねーよとばかりに放ったサーブであるが・・・

ホアタッ!!

笑顔で正面からそのサーブを受ける桐城の長身リベロ。
軽々と受けたと見せて実は失敗とか・・・そんなことはなさそうな流れですな。
でもまあ、正面からであるならば金田だって止めれそうでありますし、まだ相手の力は計りきれない。
いや、金田クラスのリベロですよと言われた時点で凄くヤバイ気はしますが、ね。

いずれにしても一年坊主主体のメンバーとはいえ侮れない相手の様子。気を引き締めていかないとですな。



ハリガネサービス 3巻


第16話・曲芸師  (2014年 42号)


主力温存の桐城に興ざめと言った様子の五十嵐先輩。
1月の新人戦の敗戦から今日まで、桐城をぶっ飛ばす為に鍛え直したというのに。

1年坊主どもじゃ相手になんねぇぞ!!!

そう思いながらのジャンプサーブ。
鍛え直した筋肉が唸りをあげる。
が、桐城のリベロである三河はこれを余裕綽々といった体で受け止める。ホアタッ!!
うーむ、さすがにでかいだけあって筋肉サーブにも当たり負けしないということだろうか。
間白は吹っ飛ばされていたが・・・まあ、間白は細いしねぇ。パンばかりじゃなく米や肉を食え。

それはさておき、レシーブに成功した桐城の攻撃。
ネットに寄せるアタッカーは3枚。セッターの前に2人と後ろに1人だ。どこから来る!?

セッターの倉光はジャンプトスの構え。
しかしそれだけ姿勢が反っていたのでは後方にトスを送るのはバレバレである。
いや、そのように思わせるのが狙いの構えであったということか・・・!?

トスを上げる寸前、空中でぐにゃあと背中を曲げる倉光。
そして上体が倒れ込んだ状態でトスを前・・・ネット際ではなく、そこより少し自陣寄りの所へと飛ばす。
狙いはオポジットを飛ばしてのバックアタック。寄ってきた3人は全て囮でありましたか。
その狙いは上手くはまり・・・スパイクによってまずは桐城が1点先制の形となる。

なんか人がいっぺんにワラワラっと動いて、次の瞬間にはもうスパーンって・・・
バレーボールって、こんなに速いの!?

ぽかーんと呆気にとられるケイちゃん。
近くでみるとかなりの迫力でありましょうなぁ。

さて、サーブ権が移って試合再開。
桐城の鮫島先輩のサーブを受ける五十嵐先輩。よくそんな受け方で威力を殺せるものだ。
短く上がったボールを家守先輩がトスし、エースである大船先輩に。
しかしこのルートは完全に読まれており、ブロック3枚がかりで止められてしまう。
ふーむ、今のは分かりやすかったですかな。いや・・・それだけではない感じですな。
桐城の選手の声を聴けば、豊瀬メンバーの攻め方は研究されていることが分かる。

新人戦の試合、映像分析させた時のあいつらの苦々しい顔ときたら!
屈辱だよなあ。今日の為にくやしい思いしてこの程度の学校のデータ入れてきたんだ
1セットにつき20点差はつけなきゃね。

主力温存でナメてかかっているのかと思いきや、逆に全力だった様子の桐城。
新人戦なだけに、当時の1年である鮫島先輩たちも試合に出ていたんでしょうな。
その結果、強豪として名高い自分たちが接戦にまで追い込まれる。悔しかったでありましょう。
その払拭のための今日の試合。これは意気込みは並々ではなさそうだ。単純な練習試合にはならなさそうだ・・・!!

データが入れられている以上、劣勢を覆すには1年を投入するのが一番でありましょう。
特に下平くんのデータは誰も持っていないはずである。
が、この練習試合の場面で出してしまっていいものかどうか。山縣先生の判断はいかに・・・?



第17話・目撃者  (2014年 43号)


新人戦でのデータを研究されていた豊瀬レギュラー陣。
その分析をした上で、このメンバーでいけると思われたわけですな。
実際、桐城の監督の言う通り、1セット目は早くも17対4と20点差がつきそうになっている。

データが解析されているだけなら、まだ何とかなる。
しかし厄介なのがこの軟体セッター倉光
ボールがネット際に上がってきているのにじっと豊瀬のコートを見ていたりする。
なんだこの怪しげな表情は。カメラ目線で何をアピールしていやがる。蠱惑的とか言ってあげないんだからね!

というのはさておき、ボールが来る直前で後ろに倒れ込むように状態を逸らし、跳びながらのトスを行う倉光。
体が柔らかいのは確かにそうだが、よくそんな体勢と頭の向きでトスできるものだよ。
あまりのトリッキーさに、どこにトスが行くかわからず翻弄され、得点を防げない豊瀬。おやおや。

1月の新人戦で戦った時はコンビバレーに翻弄されたけど、コイツよりはマシだった!!コイツのトスはまるで曲芸だ!

1セット目からいいようにやられている豊瀬。コラー下むくなー!マネージャーは元気だな。
そして試合に出ていない1年生たちも落ち込んではいない。特に松方はしっかり分析を行っている様子。ほう・・・

1セット目、桐城は24点を取得しセットポイント。対する豊瀬はどうにか5点。
桐城としては20点差をつけたいのでこれ以上は取らせないようにしたいところ。
しかしわざわざ20点差をつけるとコート上で宣言するとは・・・さすがの倉光。意地の悪いことだ。
案の定、暗い雰囲気が漂っている豊瀬。よくない状況ですな・・・

さて、豊瀬のサーブ。
桐城のリベロ、三河はそれを難なく受け、倉光のトスへと繋ぎ、スパイク。
これはどうにかブロックに当たり、ボールを浮かせることが出来た。
こぼれた球を大船先輩がネット付近に上げる。
本来ならここで家守先輩がトスを上げるところでありますが・・・後ろから野々原さんが跳んできた!!

思わず桐城の監督である古川先生も気圧されて黙るスパイク。
これにより、桐城が目指していた20点差を阻止することに成功する。
ほほう。皆が落ち込んでいるかと思ったらこういう人もおられましたか。笑顔が爽やかで眩しいぜ。

一気に明るい雰囲気になる豊瀬。頼りになるキャプテンがいるのは心強いですな。
しかし・・・ここで線審である下平くんが旗を上げる。
どうやら野々原さんが跳んだ時、アタックラインを踏んでいたらしい。あらら。
よく分からないケイちゃんと読者のために解説を行う百合草さん。

コートの中のプレイヤーは前衛と後衛に分かれるんだけど、ネットの下から3mくらいのところに白線あるでしょ?
アレはアタックラインって言って、後衛の人はアタックラインより前のゾーンから跳んでスパイク打っちゃいけないの

ふむ。名前が示す通り、そのためのラインなわけですな。
しかし味方が有利な場面であるというのに正直者ですな下平くん。
おかげで先輩方に睨まれて居たたまれない気分になってますが・・・野々原さんは自分でもちょっと際どかったと認めてしまう。
ほほう。やはりこの人は何だか違う感じがしますな。知らないと突っぱねることも出来たでしょうに。

・・・それじゃあ、正しいジャッジしたやつが可哀想だ

公平な視線も持っている。
いや・・・どうやらそれ以外にも下平くんに注目したい部分が野々原さんにはある様子。

あの瞬間、下平はボールじゃなく、踏み切る俺を見てたのか?それとも・・・

野々原さんが気にしているのは何だろうか。
視野の広さに注目しているのだろうか?
確かにボールを追いつつ、予想外の野々原さんの踏み込みまで見ていたとなると広そうではありますが。さてはて。

それはそうと、今のプレー。
ミスにこそなったが、アタックラインから跳んでネット際のボールを打ったことで桐城の面々にも驚かれている。
前はあそこまで跳んでいなかったそうなので、しっかり成長してきたということでしょうか。さすがです。

アイツだけは注意したほうがいいかもしれないな

敵校にも注目される野々原さん。頼れる。
とはいえ、結局1セット目は20点差をつけられて落としてしまう豊瀬。
自陣に戻ったところで・・・山縣先生からメンバーの交代が告げられる
変わるのは家守、猫田、五十嵐の3名。
ほう、これは・・・いや、というか控えは1年しかいないから東京選抜組が出るに決まっているか。
何にしても、早めの決断を下してきましたな。
この試合の結果がレギュラー入りを左右することになりそうですが、さてはて。
ずっと控えだったと試合前に暴露された恨みを晴らせると良いのですが・・・期待したいところです。



第18話・土俵  (2014年 44号)


第1セットを20点の大差で落とした豊瀬。
桐城にしてみればこれは目論見通り。してやったりという感じだ。
しかし分析したとはいえ、新人戦の時は互角だった2校。
今回これだけの差がついたのはやはり新戦力の加入が大きいということだろうか。
いやでもねぇ。倉光のフリはイラッとするなぁ。

まーこういうのはね。自分で言うことじゃねーっ、つーか

そうですな三河。言ってるも同然じゃないか三河。はっ!!!じゃねーよ。
桐城の1年もなかなか生意気なのが揃っているというか何というか。ここの先輩も大変そうだ。

賑やかな桐城はさておき、豊瀬は重い雰囲気。
そこに選手交代が監督から言い渡される。
温存もあるかと思ったが、ここは東京選抜3名を投入してきましたか。
ふむ、まあこの機会に力を示して見せるのがチームの為にも良さそうですしね。

さて、自分ではなく同じポジションである五十嵐先輩が変わることになった大船先輩。
しかし真っ先に抗議の声を上げたりする辺り、実に仲が良いというか何というか。
だが、その抗議の声は山縣先生の沈黙で押し潰される
いや・・・いや、これは怖い。読者の方も黙ってしまう迫力だ。その後で何だか笑えてしまいましたが。

怯んだ大船先輩に代わり、擁護された五十嵐先輩。代えられて当然のふがいないプレーをしたのは自分だと認める。
ふむ、潔い態度ですな。好感が持てます。
その五十嵐先輩に向けて山縣先生から一言。

相手の土俵で相撲とっちゃいかん

ふむ。この言葉に代えられた理由が込められてそうですな。
多くは語らない山縣先生。理解できるかどうかは五十嵐先輩次第という感じでしょうか。
松方はその言葉の意味を理解してそうな様子ですがね。

さて、コートへと向かう3人。
それを見送る下平くんは何だか悔しそうな様子である。
控えめで勝ちを譲っちゃうようなところもあるが、意外と負けん気も強い子ですなぁ。いい傾向だ。

相変わらず煽りまくる倉光。試合出れて良かったじゃーん?
この手合いにいちいち熱くなっても仕方ないですしね。とりあえず無視。それよりもまず作戦である。

久場先輩。A速攻入ってきてください

エークイック。セッターの真ん前で跳び、上がって来たトスを打つバレーで一番早い攻撃とのこと。
ふむ、ミドルブロッカーである久場先輩を攻撃に加えて意表をつく作戦か?
合わせたことはないけど、トスを上げる松方が調整して合わせるとのこと。マジかーい。

てな打ち合わせ後、2セット目開始。桐城のサーブから。
倉光のサーブを間白が受ける。これは良いレシーブ。トスが上げやすい。
今回レフトの前衛に位置するのは野々原さん。
前のセットの最後での強烈なスパイクが印象的だったためか、野々原さんに釣られるブロッカーたち。

コレなら速攻決まるかも?

そのように考える久場先輩。
しかし1枚ついてこられ、更に松方のトスがやたらと速い。
これは合わせられない・・・と思いきや、その横から遅れて跳んだ間白が合わせて来る。
ほほう・・・さすがにこのコンビは息ピッタリですなぁ。久場先輩は囮に使われたのか!?

幸先よく2セット目は豊瀬が先制。そして松方が皆を集めて意見を述べる。

1セット目、五十嵐先輩と大船先輩のスパイク。ことごとくあのリベロに拾われましたよね。
かなり強打レシーブに自信ある奴みたいです。
あえて去年までの正リベロではなく、1年の見るからに体格のいい目立つリベロを入れた桐城の狙いは――
先輩達をあのリベロの得意なパワー勝負の土俵に引きずりこむことです
豊瀬最大の得点源のお二人が相手の一番守りのカタイ所に注力したらウチの点が伸びなくて当然です。

なるほど。これが山縣先生の言うところの相手の土俵って奴ですか。
大船先輩が言うには、ブロックがアイツのとこしかコースを開けないから仕方がないとのこと。
確かにブロックを避けるならそうなるでしょうが、力で打ち負かそうとしたのは間違いないことですしねぇ。
桐城としてはこのパワーアタックは十分研究して対策を打ってきたという感じか。ならば・・・

この第2セット。速さと作戦で主導権を取ります

試合になって俄然生き生きとしてきた感じの松方。
人数が増えて動かせる人も増えてこそのセッターですものねぇ。
分析力もなかなかのものがあるようだし、これは頼りになりそうな感じです。もうただの解説役とは呼ばせないぜ!!

東京選抜組が加わっての反撃開始。楽しみです。



第19話・念願  (2014年 45号)


5か月前。中学都道府県選抜対抗戦2回戦。北海道選抜対埼玉選抜
試合の様子を見ているのは次にこのチームの勝者と当たる東京選抜。
駿天堂中学の者ではない松方たちは試合に出ることはまずない。
にも拘らず、データ収集に余念のない松方。直接当たらないチームの試合も見ている様子。ふむ。
しかしチームメイトにも無遠慮というか、うざったいのがいそうな感じですな。
こういうのがいたからこその打倒駿天堂なのかもしれない。

強豪の試合を見ることで色々なパターンを頭の中で組み立てる。
いつかそれを活かしてみたいと考える松方。
俺の作戦は・・・トス回しは全国の怪物たち相手にどこまで通用するだろう、と。

――だけど結局、試す機会が訪れることはなかった

松方たちが出ることは最後までなく、東京選抜は優勝を決めた様子。
うーむ、せっかく選抜メンバーに選ばれてもこの扱いではなぁ・・・
鮫島先輩は厳しいこと言ってましたが、やっぱり試合に出られないのはつまらないですよ。
金田辺りも同じこと考えていそうだ。ストレス溜まってそうだなぁ。

そんな回想を経て現在。全国の強豪――埼玉選抜のセッターがいるチームと戦う時が来ました。
先のセットの桐城の戦いを見て対抗策を考える松方。
その作戦とは、全体の足を引っ張っているあるプレイヤーを徹底して狙うというもの。ほう?そのプレイヤーとは・・・?

あのセッターですよ

なんと。埼玉選抜の一人である倉光が弱点であると?それは一体どういうことだろうか。
1セット目はその倉光の予測できないトスのせいでしてやられていた感じでありますが・・・

予測しちゃダメなんですよ。
アイツのプレースタイルはジャンケンの後だしなんです
こちらがアイツのトスを予測して予備動作を起こせば、それを見て無理やり逆をついたトスを上げるんです。
だからこちらが一切動かなければ普通にトスを上げるしかない。上がったのを確認してからブロックに行くんです。

なるほどね。じっとこっちのコートを見ていたのはそういうワケでしたか。単に挑発してたわけじゃないのね。
その無理やりを実行できる柔軟性と判断力が倉光の特質なわけか。

セッター封じの作戦を考え、セッター倉光に対してブロッカー3人がマークする形をとる。
上がったボールに応じてブロックに行く構えですな。
しかしこれだと速攻を使われた時ブロックが間に合うかどうか分からない。
そう危惧して、相手のスパイカーの動きに釣られて飛ぶ大船先輩。おやおや。

大船先輩が飛んだのを見てから、その向こうへとトスを上げる倉光。
なるほど、こうなれば跳んだ大船先輩が邪魔でブロックに行けなくなるわけだ。
その辺りの判断を瞬時にやってのける倉光。厄介なやつである。
おかげでフリーでスパイクが打てる鮫島先輩。
であるのだが・・・判断力が優れているのは倉光だけではない。
倉光がどこに上げるのか、それによってどこに打ち込まれるのか読んだ松方が飛びつきながら必死のレシーブ!!
・・・しかし、これは惜しくも上がりきらずでありました。あらら。

なかなか思ったとおりにはいかないな。

そのようなことを口にしながら、何とも嬉しそうなはにかみ顔を見せる松方。可愛いじゃないか。
こういう強い相手と戦うのが夢だったわけだし、それが叶ったのが嬉しいようですなぁ。ほほほ。

試合になってから俄然と輝きだした松方。今までの目立たなさが嘘のようである。
一人、まだ出場の機会が得られない下平くんは羨ましそうにしている。
ふうむ、相変わらず弱気なようで強気な子である。その強気はスポーツには大事なことと思いますけどね。

それはそうと、松方が輝いてるおかげで金田が目立たなくなっているのが気にかかる。
てっきり金田が飛びついて来たのかと思ったのだがなぁ。ポジションとしても近そうな感じなのに。
そろそろ3人同時に目立ってほしいところでありますが・・・さてさて。



第20話・蓄積と演算  (2014年 46号)


あの瞬間俺の目の前に壁はなく、俺はいつも通りボールを叩きつけた。なのに。
打ってからコートに落ちるまで0.2〜3秒か。反応でどうにかなる時間じゃねえ。
なんでアイツ触れたんだ!?

不気味に思う鮫島先輩。
惜しくも拾うのは間に合わなかったが、動揺させることはできてますな。いい感じだ。

1対1の状態から桐城のサーブ。
これを金田が受け、豊瀬の攻撃。
自分の方でトスを合わせると言っていた松方であるが、さすがに即興ではなかなか合わない様子。仕方ないね。

桐城のリベロ、三河が上げたボールをツーで直接打つかのような構えを見せる倉光。
が、後衛なのでまずスパイクは有り得なかったりします。
打つと見せかけて相手のブロックを跳ばせ、自分は空中でトスを送るという作戦だったわけですな。
そういうことが後出しで出来るってのがやはり厄介である。

今度もまたライトからノーブロックでのスパイク。
であったのだが・・・このスパイクをきっちり正面で受け止める松方!!おぉ・・・!?
松方が拾ったボールを野々原さんが決めて、豊瀬に得点が入りました。ふむ・・・いい感じですな。

1セット目を観察していた松方の分析によれば、桐城の11番は1セット目からコートの奥ばかり狙っていたそうな。
なるほど。そのクセを見抜き、コートの一番奥で待ってみたらドンピシャだったと。
その前の3番――鮫島先輩のスパイクについても分析の結果であったと述べる。
ブロック枚数少ないとき毎回下に叩きつけていたから思いきり前に突っ込んだとのこと。なるほど。よく見ておりますわ。

アナリストっているじゃないスか。
プロの試合なんかでコートの後ろにいてパソコンで試合のデータ集計して分析する。
松方はコートにいながらアレと同じよーなことができるんスよ

そのように述べる間白。ほほう、それはそれは・・・
単に情報を収集するだけではなく、それを瞬時に扱えるデータにしてしまうとはなぁ。
これには大船先輩もぽかんとした表情。ほほ。
言われた松方の方は、そんな大層なものじゃ・・・と謙遜。

昔から試合見ながら攻略法考えるのが好きで、よくノートにスパイク本数やコースをとってたんです。
それを数こなすうちに段々、ノートなくても頭で集計できるようになっただけで

出来るようになった当人にしてみれば自然な推移なので大したことはなく思えるのでしょうな。
下平くんにしてもそうだけど、積み重ねによる超人技は驚きの度合いが大きい。

さて、このアナリスト並のデータ分析に長けた松方が再度作戦を提案する。もう1回トスを見てからブロックに行って欲しい、と。
ふーむ、信じたいところではあるが、果たして見てからのブロックが間に合うものかどうか。

・・・間に合いますよ。
・・・先輩なら、あんなふうにトスを上げるセッターを信頼して最速のタイミングでスパイクに入れますか?

なるほど。それが答えでありますか。
言われてみればこんな奇天烈なトスワークじゃ打つ方だってタイミングが取り難い。
だから桐城のスパイカーは自分のところで調整できるように、少しゆとりをもって助走に入ってきている。

そんなノロマじゃ見てからでも確実に間に合うさ

松方の策は見事にはまる。
ブロッカーが動かなければ倉光は素直にトスを上げるしかない。
そして倉光のせいで速攻が出来ない以上、桐城のスパイカーはブロックの壁があるところを打たないといけなくなると。
なるほどなぁ。これが倉光が足を引っ張っているという言葉の意味でしたか。
大切な攻めのリズムを自分のものにしちゃってるわけですしねぇ。これは良くないわ。

弱点を見抜かれた倉光。
さてさて、ここから挽回する力はあるのだろうか?
場合によってはこのセットで早々に退場ってこともありそうですが、果たして?
今のところセッター対決は完全に松方に軍配が上がっております。
ここで大人しく退場となると試合前にナメた口叩いた分恥ずかしいことになるわけだが・・・まあ、倉光だしいいか!!
因果応報って奴ですわな。



第21話・コートの主役  (2014年 47号)


松方の作戦に従い、倉光の変則トスを封じ込める。
1セット目はこのトスに惑わされて20点差をつけられたわけだが、これで6点目を獲得。
この2セット目で20点差がつくことはなくなった。ふむ。ケイちゃんも嬉しそうな様子で何よりですな。

上手く行く間はこのやり辛いトスにも目をつぶっていた鮫島先輩たち。
その先輩たちに対し、スパイクに入るのが遅いからブロックが間に合ってると言い出す倉光。
変則トスに合わせて遅らせているのにその言い草はよくないですな。
何にせよ倉光自身が早く入ってくれというならそうするとしましょう。
今までのやり方を止めて普通のトスを上げれば流れは変わるはず・・・

トスが・・・合わなかった?

普通のタイミングで上げたトス。これをスパイクしきれない桐城スパイカー。
やっぱりまだ1年の倉光。2、3年のスパイカーと複雑なコンビはまだ練習できていない様子である。
ふーむ、その手のはやっぱり息が合うようになってないといけないわけか。
松方も合わせ損なったりしてるし、セッターだけ優れてても難しいものなんでしょうな。

それならばDクイックのような難しいプレーはせずにもっと簡単に上げておけばいい。のだが・・・

アイツは・・・常に難しいプレーを決めて、自分が主役でいたいのかも・・・

目立つプレースタイルもその考え方が基点としてありそうですな。
キャラ的にもお喋りなそうな感じがありますしねぇ。

倉光に言わせればどいつこいつも使えないから自分がレベルを下げないといけないとのこと。
いかにもプライドの高い人間の考えそうなことですな。

さて、続いての攻防ではきっちりと倉光のトスが決まる。
クイック気味ではあるが、さすがに正面へ上げるトスがずれることはそうないか。
これには遅れて入る豊瀬のブロックも間に合わないわけであるが・・・
普通に来るのならばこの男――金田が拾ってくれる!!

なんだか久しぶりに金田の活躍を見た気がする。
本人もレシーブが出来て凄くいい笑顔でありますなぁ。

そして豊瀬の攻撃。金田のレシーブによりボールはネット際に。それを上げる松方は思う。

チームの主役はスパイカーだ。
セッターが主役になろうとすればきっとスパイカーからの信頼を失ってしまう。
だから点が入った時、誰もお前にハイタッチに行かないんだ

信頼関係ってのはチームスポーツでは非常に大事なものですよね。
独りよがりなプレーで足並みを乱しているようでは輪に入れるはずもない。
今回、見事にスパイクを決めた大船先輩。その大船先輩とハイタッチを行う松方。
大船先輩としてみれば1年たちに対してはまだ認めきれない感情があるようですが・・・
そういう相手であってもプレーで認めさせようとする松方たち。良い姿勢であります。
この試合が終わるころには大船先輩にも認められるようになっているといいですな。

味方が、1年たちが凄いプレーをすればするほど胸を高鳴らせているのは下平くん。
練習して練習して上手くなって、あの輪の中にいれるようになりたい。そのような想いを抱いている。
練習の結果、あれだけのサーブを身に付けた下平くんならば可能性はありそうですね。

さて、一気に5点差が開いた豊瀬と桐城。
その原因はやはり倉光が足を引っ張っていた部分を突かれたことでありましょう。
倉光も随分と憔悴した感じになっているようだが・・・容赦なく追い打ちをかける松方。

随分レベルが低かったんだな。埼玉中学選抜。
お前、東京だったら選抜候補にも残れないよ

見下し目線で煽ってみせる松方。酷いけれども倉光に対してはいい薬と言えるかもしれませんな。
試合前に補欠補欠と煽って来た相手に実力で差を示してみせたわけですし、一言位はあってもいいですわな。

松方の言葉でついに泣き出してしまう倉光
相変わらず表情が崩れるとオッサンっぽい感じになりますな。
まあ人間そうそう綺麗には泣けないものですよ。うん。

こうなってくると倉光の交代は早そうな気がしますな。
頑張ってもこの2セットまででしょうか。
そうなると桐城はレギュラーを出して来そうでありますが・・・ここからが本番ですかな。



第22話・巨鯨  (2014年 48号)


前回に引き続きオッサン顔で泣きじゃくる倉光。えぐっ。ひっく
しかし擬音をつけると妙に可愛く見えてくるから困るぜ。

というわけで、2セット目途中で交代する倉光でありました。泣き出しちゃったのなら仕方無いですよね。
入ってくるのは置鮎空太・海太セッターツインズ
1番2番を背負うレギュラーがついに登場でありますか。ここからが本番ですな。
む、本番だなとは思ったがこの人・・・鯨川さんも出るのか!!

ケガだけは十分気を付けてなと監督に言われながら、今年の春高バレー登録最重量選手である鯨川堂山登場。
うーむ、大エースと言われるだけあり貫禄あるなぁ。まさに鯨か。

さて、交代となった倉光。監督の前でしゃがみこんでいる。

やっぱ、取るなら松方だったかなぁ〜。

そんな嫌味を言われて再度涙を浮かべる倉光。
まあ、自信過剰だった倉光にはいい薬だったかもしれませんな。
先発で出させたのも痛い目を見させるには丁度いいという想いがあったのかもしれない。上手く行けばそれはそれで良しと。

これからは俺のやり方を教えてやる。勝ちたかったら従ってね

倉光の頭を掴んでそんなことを述べる監督こと古川先生。
微妙に怖い笑顔に見えるのが何とも言いがたいな。いい先生なのかそうでないのか・・・
指導者としては見捨てずにきっちり導こうとしているように見えて良い。
その反面、管理体制に組み込もうという意図も見えそうな感じでありますが・・・さてはて。

それはさておき、試合の方。
桐城の主力が加わり、どのような展開となるのか。
まずは豊瀬、野々原さんのサーブ。
鯨川さんを狙ったサーブであるが、三河が横取りする。
これは単に取りたかっただけなのか、鯨川さんに受けさせない意図でもあるのか・・・どうなんだろう。

さておき、早速の鯨川さんのスパイク。
セッターが上げるボールはセンターへのオープントス。
こんな高くゆっくり上げたトスではブロック3枚付けてくれと言ってるようなものである。
案の定、間を抜くことが出来ないほど過密に築かれる豊瀬のブロック。
だが・・・鯨川さんの強烈なスパイクはその壁を容易く粉砕する!!

音と地響きを立てて着地する鯨川さん。
うーむ、筋肉先輩の片割れである大船先輩があっさりと吹き飛ばされるとは・・・恐ろしい。
巨鯨の前には大船であろうと一撃で転覆だって話でしょうか。名前的に相性悪かったな!!

もー。全然わかってないじゃんか。
君が全力出したらケガさせちゃうっつーの

そういう意味でございましたか。そりゃ・・・大事ですわ。
試合前は紳士的なメガネマッチョという感じだったが・・・コートに立つと本当の暴れん坊と化すようですなぁ。怖い怖い。
こんな鯨川さんもケガしてたりするんですよねぇ。左膝を固定している感じが見て取れますし。
暴れすぎて痛めてしまったとかそういう話だろうか?自他共に労わって欲しいものであります。
というか、実際大船先輩は大丈夫なのかね?肩外れてたりとかしないか心配になるぜ。さすがに。



第23話・サーカス  (2014年 49号)


大船先輩のブロックを弾き飛ばすなんて・・・あの人・・・怖い!!!

非常に素直な感想を述べる下平くん。
そりゃデカイ鯨が踊り猛っていたら怖いでしょうさ。

レギュラー投入で再び流れは桐城へ。
稼いでいた得点差も一気に追いつかれてしまう。あぁー。
ううむ、やはり本領を発揮した桐城は厄介なようですな。特にこのツーセッターが厄介である。

こっちは俺が前衛にいる間、前のアタッカー二人しか使えないのに、
あっちは常に双子のどっちか後衛にいる方がトスするから、前3人を全部アタッカーに使える分攻撃が読みづらい!

なるほど。トスならバックからでも行えるし、上げれる人が複数いるってのは利点にもなり得るのですな。
場合によっては豊瀬もツーセッターにする選択肢もあるのではなかろうか?
家守先輩としてはそれも美味しい話かもしれない。

それはさておき、この試合である。
アタッカーが3枚フルに使える上に、鯨川さんのバックアタックも加わってくる。
読めてブロックに行けたとしても、それを吹き飛ばしてくる鯨川さん。
うーむ、動きが読まれている感じならパワーで破ればいいじゃないって話か・・・厄介すぎる。

誰がいつどこから打ってくるかわからない。バックアタックみたいな大技も連発。
だからアイツラのバレーはサーカスバレーって呼ばれてんの。

見る方としてはなかなか軽快で楽しそうなチームでありますな。
相手してたり応援してたりする豊瀬の側にしてみればたまったものではありませんが。

というわけで、一気にワンサイドゲーム。
豊瀬の方は8点で張り付いたように止まっているのに、桐城は勢いに乗って23点目。
これは見ている観客の方も辛くなってくる状態である。
選手たちが下を向くのも仕方がない。元気なマネージャーである百合草さんも意気消沈な様子で・・・厳しい。

作戦でどうにかなる相手じゃないと考える大船先輩。
いやいや、それはさすがにまだ早計じゃないですかね?
というか計算も交えたりしなければ到底どうにかできる相手じゃないって方が正しそうな気が。

ブロックで勝負しましょう

ようやく作戦を思いついた様子の松方。
しかし自身も鯨川さんにブロックを弾き飛ばされているというのに、ブロックで勝負とは・・・?

鯨川以外のやつはなんとかなります。うまくトスさえ誘導できれば・・・

その言葉を機に、作戦開始。
ツーアタックを見せたり、持ち場を空けたりとテンパってるかのような動きを見せる。
そうしてがら空きのレフトに他のブロッカーを誘導するという松方の策。
これはなかなか面白いですな。背中でのサインはいかにもセッターらしい行動だ。
そして、その策は見事に嵌り・・・ブロックに成功する!!

桐城のサーカスバレーには弱点がある。
4人が同時に攻撃する分、ブロックされた時フォローする奴が少なくなるんだ

攻撃的な分、守りに隙があるってわけですな。なるほど。
久しぶりに点を返せそうな雰囲気で得意満面な様子の松方。落ちろ!!とか言っちゃう?

ホ!

フォローする奴は少ない。防げば確実に点が取れる。
そう考えていた松方の思惑を打ち砕くのは、桐城の1年生リベロである三河。
なるほど。広い守備範囲のリベロが1人いればその弱点は克服できる可能性が高かったか・・・
いやこれは厄介だな。本気で死角が見当たらなくなってきましたぞ?
これにめげることなく、第二第三の策を繰り出して欲しいものでありますが・・・どうなりますかなぁ。ううむ。



第24話・キーマン  (2014年 50号)


誰がどこから攻めてくるかわからない桐城のサーカスバレーには弱点がある。
4人のアタッカーをいっぺんに攻撃させるからブロックにかかった時にフォローする奴が少なくなる。
・・・ハズだった

松方の予想を裏切るのは桐城の1年生リベロ、三河。
素晴らしい跳び込みで、綺麗にブロックされたボールを拾ってみせる。
決まったかと思ったらまさかの返し・・・これは惜しい。
しかし三河のスーパープレーには豊瀬の観客からも称賛の声が上がる。

コレコレ!やっぱバレーはスーパーレシーブの瞬間が一番盛り上がるよなぁ!
もーっと俺に期待しちゃっていいんだぜぇ。

背番号アピールする三河。ふむ。思いっきり目立ちたがりな子でありましたか。
その部分に関していえば倉光と同じだけど性格が悪くないので仲間からも称賛とボコリを受けております。チョーシ乗らない。

もっと早く気づくべきだった・・・三河はずっと他のやつの守備範囲のボールまで拾ってた。
三河に広い範囲を守らせることでアタッカーを攻撃に専念させられる。
桐城のキーマンはアイツだ!!

なるほど。前に鯨川さんのレシーブに割り込んでたのは別に鯨川さんに限った話ではなかったのですな。
それにしてもこれは本当、もっと早く気づくべきだったのではなかろうか?
攻撃のパターンばかりに気が行ってて防御パターンの分析が疎かになってたんですかね?
これだけ点差がつくってことは防御がしっかりしてるってことなんだから、そこを着眼すべきでしたわな。

桐城の古川先生も語る。バレーで一番大切なのはレシーブだと。
どんな攻撃も1本目をセッターにきっちり返すことから始まるのだと。

というわけで、半年前の回想。
超一流のリベロの素材である三河。もちろん各高校から誘いの声がかかっていた様子。
しかり桐城に来る前の6校全てが高校ではアタッカーをやることを勧めて来たそうな。
15歳で185cmの長身。恵まれた身体能力。リベロなんて小さい選手に任せてスパイカーになれとのこと。ふむ。

どこの学校のセンセーも俺にアタッカーをやらせようとした。
俺は・・・レシーブが一番好きだからリベロやりてぇだけなのに・・・

だからリベロ以外はやらないと古川先生に述べる三河。
ふうむ、長身に加えてこの考え方。金田に近い感じを受けますなぁ。

そう述べる三河に対し、古川先生。この間の日本代表の合宿について話し出す。
1人、君と同い年の中学生が参加したんだ、と。

羽座川扇。駿天堂学院中等部のリベロ。
近い将来、日本の守りの要になると目されている少年だ。

おっと出てきましたね羽座川。読み切りで活躍していたリベロでありますな。
彼との戦いはまだまだ大分先のことになりそうですが・・・登場に期待したい。
それはさておき、古川先生は中学生にして日本代表候補の羽座川の名前を出しながら、それでも三河にも勝っている部分があると言う。

身長だよ。君は羽座川君より20cm以上大きい。

確かに身長は努力などで覆ることのない大きな要素である。
リベロが身長で勝ったってと述べる三河だが、世界を見てみれば確かに各国代表のリベロは三河以上の長身である。
ふーむ、考えてみれば飛びついたりすることも多いのだし、リーチが武器になることもあるわけであるか。

東京においでよ三河君。君がウチに来れば駿天堂を倒せる。
羽座川扇に勝って日本一のリベロにならないかい?

この上なく魅力的な申し出を行う古川先生。これは堪りませんな。
最初からアタッカーとしての君には興味ないし☆などと言い添えたりもする。星つけんな。
というのはさておき、一流の選手を誘うのならばやりたいことを認めてあげるのも大事ですわなぁ。
それが通じないようであれば倉光のように現実を見せて方向性を変えてあげると。ふむ、なかなかやる感じですなこの人も・・・
まあ、桐城はアタッカーが豊富なのでわざわざコンバートする意味がないってのもあるんでしょうけどね。

サーカスバレーを完成させるのに必要なのは守備範囲の広いリベロ。
その理想を体現した選手がこの三河である。
ブロックに当たって外へと飛び出したボール。それを壁を蹴って取りに行こうとする三河。
二階の観客席の生徒からは間近に見えるほどのところまで跳んでいる・・・ど、どんだけだよ。
惜しくも届かなかったが、このスーパープレーは沸かせるのに十分でありますなぁ。目立ちたがり・・・恐るべし!!

攻めの鯨川と守りの三河の揃った今年の代は桐城史上最強かも・・・

嬉しそうに語る古川先生。
いや、確かにこれはかなり厄介な感じですぞ・・・
完全に付け入る隙のなさそうな桐城。攻略法などあるのだろうか?
と思わされたところで山縣先生が立ち上がる。

下平。交代だ

何と・・・まさかこのタイミングで下平くんが呼ばれるとは!!
この練習試合では温存の方向かと思いましたが、いやこれは意外ですな。
確かに下平くんのサーブならば三河の守りも崩せるかもしれないが・・・
ついにその力を広く知らしめる時が来たのかもしれませんな。期待であります。



  ハリガネサービス感想目次に戻る

  ハリガネサービス連載中分に移動

  作品別INDEXに戻る

  週刊少年チャンピオン感想TOPに戻る



HPのTOPに戻る