蒼天紳士チャンピオン作品別感想

ハリガネサービス
第25話 〜 50話


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連載中分

ハリガネサービス 4巻


第25話・ハリガネサービス  (2014年 51号)


鯨川さんのスパイクは止められず、上手く他の奴をブロックにかけても三河に拾われる。
うーむ、これはまさに八方塞がりな状態ですな。
松方が必死に考えた攻略法もあっさり塞がれるようでは何とも・・・大船先輩も心折れかけてますわ。

コレが・・・本来の実力差で、1月の新人戦の善戦は・・・何かの間違いだったっつーのかよ・・・!!

古川先生の思い通りの流れになってきました。
まあ、実際1月の新人戦ではその鯨川さんも三河もいなかったわけですからねぇ。
まるで別のチーム相手にしてたようなものだし、これが本来の実力差と思っていいんじゃないでしょうか。悲しいけど。

とはいえ、まだ諦めてしまうには早い。
少なくとも山縣先生は座して終わるつもりはない様子。
ここに来て・・・このタイミングで・・・ついに下平くんの投入だ!!
ちなみに代わるのは大船先輩。おやおや、ネガティブな気分が良くなかったですかな?

下平くんの投入は味方からも意外な表情で迎えられる。間白もビックリだ。
ただ金田と野々原さんは笑顔だったりする。さすがの2人と言えましょうか。
先輩たちとは別の意味での驚きを見せているのも1人いる。松方だ。

バカな・・・下平はこれから切り札になってくカードだぞ・・・
それをこんな練習試合で桐城に見せるなんて・・・山縣先生は何を・・・

やはり松方も温存を考えておりましたか。策士らしい考え方ですわな。私もそう思ってたぐらいですし。
とはいえ当の下平くんは緊張の面持ち。というか萎縮した感じですな。
練習して上手くなっていつかとか思ってたらいきなりの機会が飛んできちゃったわけですからねぇ。そりゃ怖くもなるか。
そんな下平くんに話しかける山縣先生。

・・・あの時も丁度こんな点差だったな。

そう、それは中学最後の試合の時の話。
あの時も相手のマッチポイントからピンチサーバーで出たのでしたな。
下平くんは何本か粘ったとか言ってるがあわや逆転かという状況まで追い込んでおいてその認識は・・・!!相手が可哀想になる。
まあ結局負けたことには変わりないっちゃぁそうなんですが。

結局チームを勝たせることはできませんでした・・・
ケガした僕に、折角皆がチャンスをくれたのに・・・
いつも僕は・・・勝つことができないんです・・・

そのように述べる下平くん。勝ってこなかった者の意見でありますな。
しかし当人の見方はどうであれ、見た者に衝撃を与える展開だったのは間違いない。山縣先生もその衝撃を受けた1人である。
その為、山縣先生は述べる。あの日お前は負けていない、と。

お前のサーブは最後の一球まで相手を崩していた。
誰が見ても終わった試合でお前だけが本気で勝とうとしていた。
常識的に考えればあの点差はひっくり返らん。少なくとも俺がバレーに携わった30年、そんな試合は見ていない。
だが俺はお前と会うまでサーブで狙ってあんなプレーができるとは思いもしなかった。
お前はあの日、俺のサーブの常識を超えたんだ。
お前なら勝てる!こんどこそ勝ってこい!!
常識の先に何があるのか。俺に見せてくれ。

珍しく笑顔を浮かべてみせる山縣先生。相変わらず怖いけどいい笑顔だ。
というか山縣先生がこれだけ熱く、長く語るのは初めてかもしれない。
うーむ、やっぱりそういう熱い気持ちを持っている人だったんですなぁ。いい感じだ。

というわけで、ついにコートに入る下平くん。嬉しそうに出迎える金田。好きですなぁー。
松方にしてみれば、どうにかそのサーブ力は秘密にしておきたい。ところだったのだが・・・

まあ・・・そうだな。この状況から試合をひっくり返せるとしたらお前しかいないな。
お前がサーブであのリベロのレシーブを崩して、アイツらのサーカスバレーを始められなくしてくれ!!

そのように言いだす松方。
本来ならば練習試合で本気サーブは見せるなと言おうとしたのだろうが・・・下平くんの目に圧されちゃったようですな。
いや、どうやらそれだけではない・・・?

なんだかアイツは・・・俺たちにすらまだ底を見せてないような気がしてな

松方が受けた感じ。それはどのようなものだったのか。言葉にはおそらく表し難い。
でもきっとそれは本当のことではなかろうか。つまり、今度こそ本気の下平くんが見られるかもしれないと・・・!!

嬉しい・・・な・・・こんなに誰かに期待されたの、生まれて初めてかもしれない・・・
あの人を崩せばいいんだよね。

金田とのサーブの時も遠慮はあった下平くん。最終的には勝ちを譲るような感じでしたしね。
しかし今回は違う。勝つことこそ望まれている。崩すことを望まれている。
ならばその期待に全力で応えねばなりますまい・・・!!

サーブの構えに入る下平くん。五十嵐先輩も驚くほどに顔つきが引き締まっている。
この表情を見せられたら・・・黙って見守るしかないでしょうな。黙ってみていてください。凄いことが起きるでしょうから。

右手首から先を固定。イメージするのは・・・ハリガネ!!!

ここでタイトルでもあるハリガネ!ハリガネで固定してのサーブ・・・ハリガネサービスが現れた!!
やはりタイトルコールは盛り上がる。ここで持ってくるかという驚き!!
そしてそれと共に放たれるサーブは・・・ゆるっ!

ポーンと放たれたサーブは緩い軌道で相手のコートに。というかそのままいけばアウトである。
さすがにアウトのボールを無理して拾う三河でもない。近付きはするが静観の構え。
だが近付いたことでおかしな様子も見て取れる。
そのサーブのボールは縫い目が全く動いておらず・・・その結果、空気抵抗で軌道が変化してコート内に落ちる。

不気味かつ静かに下平くんのサーブが決まった。
っていやいや・・・まさか本当にブレ球サーブをコントロールできるというのか・・・!?
不規則な変化になるから打ち手もどこに行くか予想できないかと思いきや・・・いやはや。
あまりにギリギリすぎて線審が見逃してしまうんじゃないかと思えるこのサーブ。
しばらくはマグレと考えてくれるかもしれないが・・・さてさて何球目ぐらいで空気が変わりますかな?楽しみです。



第26話・異変  (2014年 52号)


完全に外れたと思ったサーブが軌道を変えてギリギリ入る。
間近で目撃した三河の驚きは誰よりも大きそうですな。

まずは静かに1本目のサービスエース。ナイッサァアァ!!
派手に喜びを示す金田。相変わらず素直で良い子であります。
先輩たちも喜びを示してはくれますが、もうチョイ安全に入れてこうなとのお言葉。
まあ下平くんの精度を知らなければギリギリは怖いですしね。狙ってやったとはそもそも思ってないだろうけど。

無回転サーブを自在に操りコートの隅に決めてみせる下平くん。
ネットインだけでも化物じみた技だというのに、他にも技を持ってそうな感じですなぁ。
しかしその身につけた技術のおかげで祝福されるというのは喜ばしいことであります。

去年の夏以来かも・・・こんな風にコートの輪の中にいるの・・・
やっぱり皆で1点1点を喜びあうの、すごくいいな!
あの人が取れないサーブを打ち続ければコートに居続けられる・・・!

そのように考えて放つのは2回目の無回転サーブ。
ポーンと上がる一見するとただの緩い球。
しかし正面に回ったはずの三河の横へと軌道を大きく変化する。
一度変化したのを見て正面に回ったはずなのにこれは・・・厳しい!!

何なんだアイツのサーブ・・・まさかマジで狙って完全無回転打ってやがるのか!?
だったら深い位置に構えて変化が終わるのを待ってから取るだけだ。来いや!

対応しようとする三河。しかし深い位置に構えるという変化は下平くんの狙いも変化することになる。
そう。深い位置からは届かない・・・ネットインサーブ!!
見事に決まり、3本連続のサービスエースとなりました。よっしゃよっしゃ。
それにしてもほっとした感じのケイちゃん可愛いですなぁ。

流れが悪いのを感じて初めてのタイムアウトを取る桐城の古川先生。
勢いを立つため、という感じの表情ではありませんな。まだ侮ったままでありますかな?

このセットに勝つためにはあと14連続で得点しなければいけない。
気が遠くなる数だが、上手くしたらそれだけ長い時間コートでバレーができる。
そうとなればやるしかないって話ですわな・・・!!

さて、桐城はここで三河を一旦外す。おや?

2、3年。三河に頼りすぎ
運悪くネットインしたら取れなくても仕方ないの?あんな1年の素人同然のサーブに3点もやってはずかしくないの?
しっかりやらんかい。

厳しいけどまあその通りの言葉ですわな。
深い位置についた三河はさておき、他の面々ならネットにかかったボールを拾えたかもしれないわけですし。
基本的に三河が拾うスタイルではあるがそういったイレギュラーにも対応はしないといけない。
その辺を考えて一旦三河を外すという判断に出たのでしょうが・・・これはどうなりますかね。

さて、見事にネットインサーブを決めた下平くん。
家守先輩は事前に松方からネットインサーブを狙って行えることは聞いていた。
けど、やはり本番で決められるまでは信じられなかった様子。
うーむ、2対2マッチの時も連続で決めていたはずなんですがなぁ。全てマグレと思われていたのか?
まあ確かに狙ってやるなんて人間技じゃないしなぁ。すぐに信じられなくても仕方がないか。

だがその考えは間違いだったとすぐに気付くことになる。
松方たちもそう思ったのか特に反論はせずに流す。この後の展開を見れば信じざるを得なくなるでしょうからねぇ。

山縣先生や松方たち以外の敵味方の中でいち早く下平くんのサーブの危険性に気づいたのは三河。
アイツのサーブおかしいんスよ!!と主張する。
それが示す通り、無回転サーブで4本目のサービスエースを決める下平くん。
この勢いは一体どこまで行くのか。今度こそ逆転を決めてしまうのか・・・楽しみです!!



第27話・naked  (2015年 1号)


カッコイイ下平くんのセンターカラー!!
ハリガネ巻いてのイメージ図はなかなかカラー映えしますな。

さて、その下平くんのサーブが次々と決まり、敵味方共に唖然呆然。
マネージャーの百合草さん曰く、こんなスコア表見たことないぞとのこと。そりゃそうよ。

ついに5点差にまで詰め寄る下平くん。
様々なサーブを駆使し、ネットインも3回決めている。
そのあまりにもいいタイミングで入る様子と、何よりもその表情。
マグレではなく狙ってやったのだと分かる表情により、さすがの大船先輩も信じざるを得ない様子だ。ワハハ。

三河を下げている現状、このまま点を入れられ続けることになりそうな桐城。
しかし古川先生は三河を投入しない。

もーちょっと見させろ。何なの彼・・・

どうやら下平くんのサーブに見入っている古川先生。
ふーむ。この反応は予想外でしたな。もっと慌てたりするのかと思いましたが。
まあ、この人も良い人材を収集してた人ですし、優れた技術の選手に目を奪われるのも自然なことでありますかな?

どうにかして下平くんのサーブを止めたい桐城。
考えた結果、導き出したのは鯨川さんを除く5人でのレシーブ。
コートに均等にバラけ、自分のレシーブエリアを定めて対処しようという話ですな。
自分たちのコンビバレーのスタイルを封印してのこの選択。
とはいえ鯨川さんのアタックは分かっていても止められないわけですし、賢い選択と言える。

どうしよう。落とせる所ない

さすがの下平くんもこのフォーメーションは厳しい様子。
まあ普通はサービスエースなんてそうそう決まるわけではないですしねぇ。

だけど僕は、サーブを決め続けなきゃコートにいられない!!

諦めない下平くん。
今回のサーブはコートから随分離れてのサーブ。
普通に考えればボールを前に投げ、助走をつけてのジャンプサーブが来ると予想される。
しかし下平くんに限ってはジャンプサーブはない。これは・・・ロングサーブ!!
遠くから低弾道で放たれるサーブ。
ネットを掠めたそのサーブを受けきることができず、コート外に弾いてしまう海太。
空太にほっぺをぎゅーってされてる様子が可愛い。ぎゅー。

コートから離れた位置から打つことでより地面と平行な軌道で打てる。
上下動せずに向かってくるボールは距離感が測りにくいとのこと。
今までのサーブで目が慣れて来たと思った所にこれですか・・・とんでもないなぁ。
当たり前の様に距離が伸びても問題なくネットすれすれを狙う下平くん。いや、本当にとんでもない。
まさか距離に関係なく今まで見せた全種のサーブを打てるというのだろうか・・・いや打てそうな気がするぞ・・・

古川先生としてももう少し見たい気持ちが強い。
が、このままだと本当に逆転されかねない。
というわけでようやく再投入される三河。
監督の許可を得て喜んでかっとんでいくのでありました。裸足で。ぺたぺた。

手の入れ方も合わせてどこぞのガキ大将みたいな感じになっている三河。
とはいえこれで身軽になったとのこと。

これでコートのどこに打たれても追いつける

そのように述べる三河でありますが、ふむ。バレーは裸足でもルール上は問題ないんですな。
体育館の床だと冷たそうですが、踏ん張りは強化できるものかどうなのか。
何にせよ身軽になって走り出しが早くなることには違いない。のかな?

少なくとも下平くんは嫌な予感を感じたりしている。あの人に触らせちゃダメだ!と。
金田といい、リベロってのはこういうシチュエーションで燃えちゃうもんなんですかねぇ。

今度こそ皆で勝つんだ!!

途中からずっと下平くんだけの活躍になってる気がしないでもないが、当人はこのような考えでいる。
その辺りの意識は仲間内で共有されるものなのかどうか。
気にはなるけど、それは勝った後で考えることですな。

本日4度目のネットインサーブ。
リベロに触らせないためにはこれが一番いいという判断でしょうか。
しかしそのサーブに猛然と突っ込んでいく三河。
ネットにボールが当たるのを見てから突っ込んだわけであるが・・・これに間に合わせてしまう!!
うーむ。伊達にデカイ図体しているわけではないってことですな。
このリーチの長さによるフォロー範囲の広さこそ三河の真骨頂!!

やはり三河に触れさせてはいけなかった。ついに上げられる下平くんのサーブ。
とはいえ上げられたから終わりってわけではない。
皆で勝つという言葉の通り、ここからは他の選手たちが活躍する場面のはずである。
まずは鯨川さんのアタックを防いで・・・ううむ、そこから厳しい感じだな!!



第28話・幕  (2015年 2+3号)


逆転も見えてきた連続サービスエース。
しかし三河の再投入により・・・ついにネットインサーブが上げられた!!
指先で触れたぐらいの状態であるが、それでも上げられるのが凄い。

そこまで高くは上がらなかったが、膝を付いた状態でトスを上げる。こっちのトスはちゃんとネットの上まで上がっている。
となれば、ここでのアタックは・・・巨砲、鯨川堂山!!
分かっていても止められないスパイクが豊瀬に襲い掛かる!!

間白のブロックを突き破り、ボールは真っ直ぐ下平くんの所に向かっていく。
真正面。レシーブできないことはないが・・・受け止められる気はしない。
それでも上げなければ試合は終わってしまう。
怯えながらも受け止めようとする下平くん。であったが・・・横から割って入る者がいた・・・金田だ!!

下平くんに代わって身体の正面でレシーブする金田。
本来ならばそれで上げることができても、威力を殺しきることはできないはずである。
が、体ごとぶっ飛ばされることでエネルギーを殺し、上げたボールが天井に当たることを防いだ。
こ、これは。このブサイクなやり方は・・・

家守が昨日やった得意技じゃねぇか!!

見た目はともあれいいレシーブだった。
余り他のプレーには興味なさそうだった金田でありましたが、ちゃんと見ていたんですなぁ。
そしてちゃんといい技術は自分のものに取り入れる。
謙虚ともいえるし恐ろしいともいえる姿勢であります。
何にしてもちゃんと見ててくれたと知って嬉しそうにしてる家守先輩。いい感じですな。

さて、金田が意地を見せた。となれば松方や間白も負けてはいられない。この1本、絶対取る!!
トスを上げる前に間白の名を呼ぶ松方。
真っ向勝負の構えであろうか・・・いや、これは2人のフェイント。
跳ぶと見せかけての1人時間差であります!!
ブロックが跳んだのを見て、横への移動。松方を通り過ぎた所まで移動してのアタック!!であるが・・・まだブロックする者がいた。

間白ぁ。中学の頃から進歩ねえな!!
あの頃も同じポジションの俺が勝負ふっかけると、まず小手先の技術でかわすことを考えた。
勝負度胸の無え貧弱野郎が!!

間白のことをよく知る鮫島先輩がここに来て立ち塞がる。
技術でかわすのは大事なことであるが・・・ここ一番での気持ちで負けるのはいけない。
その意識の差によるものか、間白のスパイクは止められる。
ポーンと軽く上がったボール。
定位置に守っていれば普通に上げられるボールであるが、バックは皆ブロックフォローのため前に出てきてしまっている。あらら。

必死に跳びついてそのボールを拾おうとする下平くん。
しかし・・・跳べない。ここに来て、このタイミングでトラウマが発症してしまった様子である。
うーむ、やっぱりこういう精神的なのはなかなか克服できないものですなぁ。よろしくない。
その結果、ボールは豊瀬のコートに落ち、勝負を決める最後の得点が入ってしまう。おやおや・・・

下平くんのサーブに金田のレシーブ。
このまま松方のトスと間白のスパイクで1年活躍の流れとなるかと思ったら・・・甘くはなかったですなぁ。
サーブという強烈な武器を見せつけた下平くん。
しかし跳べないという弱点。文字通りアキレス腱も発覚してしまった下平くん。
この後の部活内の扱いはどのようなものとなりますでしょうか・・・
弱点という意味では間白の勝負度胸についても言及されそうな気はしますけど、さてさてどうなりますか。

下平くんのおかげでそれなりの点差には詰め寄ったが、それ以外では完敗といっていい内容の豊瀬。
このまま成長が無ければインターハイ本戦出場なんて夢のまた夢となりそうですが・・・ううむ。
山縣先生の指導に期待したいところであります。



第29話・再見!  (2015年 4+5号)


勝敗を決するボールは無情にもコートイン。
喜ぶ鮫島先輩。ふうむ、他の面々の様子を見る限り、かなり辛い状態だったみたいですなぁ。
やっぱり下平くんのサービスエース連発は受ける方に多大な精神的消耗を強いるようだ。
勝負を決める時ではなく、中盤で投入してみると面白いかもしれませんな。

さて、跳ぶことができず倒れ込んだ下平くん。
事情を知らない人たちからすると今ので怪我でもしたのではないかと不安になる。
けど、実のところはそれよりもっと深刻。
中学時代のケガの後遺症――それも心意的な後遺症によって跳べない。それを部員に暴露せざるを得なくなる。うーむ、厳しい。
まあ隠し通していい話でもないですけどね。

こんな状態ではいけないのは下平くん自身が誰よりも理解している。
しかしトラウマというのは普段の意識とは違うところに根差すものですからねぇ・・・厄介極まる。
不甲斐ない足を蔑みつつ、その足も僕自身だと認めてしまう下平くん。

僕・・・コートに立つ資格あるのかな・・・

何とも悲しいことを考える下平くん。まあ今のままではいけませんわな。
とはいえ落ち込んでいるばかりでもいけないのは間違いない。
せっかく味方だけではなく敵である三河までケガしてないか心配してやってきてくれたというのに。
しかも、問題ないなら早く次のセットやろーぜとか言い出したりしてくれるというのに。

お前のサーブ、メチャすげーなっ!
最後の1本こそ取ったけどよぅ、あんなにサービスエース取られちゃリベロとして負けだーな。
勝ち逃げなんて許さねーぞ。次は最初っから出ろな!!

そのように述べる三河。
本来ならば2セット連敗で豊瀬の負けなのだが、練習試合だしそんなの関係ないとのこと。
この意見は三河のみならず、他の面々も同意している様子。
下平くんのサーブでへたっているかと思ったが、さすがに強豪。ブザマなゲームで終われないという意識が強いか。

三河の言葉により、サーブを決めてコートに立っている間は楽しかったと思い出すことができる下平くん。
ふむ。資格云々を考えるよりも、まずはその辺りの気持ちを自覚することが大切でしょうな。
いやしかし、三河はいい笑顔を見せてくれる。いい子だ。

早く遊ぼーぜ!!

満面の笑顔の三河でありますが、古川先生はその提案を却下する。あらら。

・・・11連続失点。こんな醜態晒してまだ楽しいゲームがやれると思った?
桐城まで走ろっか?

おう、怒ってる怒ってる。
まあ下平くんのサーブがいかに凄くても、ほぼ全員でレシーブしててこれではなぁ。
最初の5〜6点までなら油断の延長でまだ許されたかもしれないが、これはさすがに許されまい。
・・・という建前もあるが、実のところこれ以上戦力分析をされたくないという想いがある様子の古川先生。

それにコイツらはトーナメント勝ち上がって来ちゃうかもしれんし

完全に侮って練習試合を申し込んできた桐城。
確かに去年までならそうだったかもしれない。
しかし下平くんを始めとした1年生たちの思わぬ活躍を見せられ、警戒することとなった様子である。
登場時は名門にあぐらをかいた感じの監督かとも思ったのだが・・・結構キャラ立ってきましたなぁ古川先生。

というわけで練習試合終了であります。
最後に敵味方観客全てに強烈な印象を与えた下平くん。
しかし跳べないという欠点もまた強烈である。

どんなにサーブが凄かろーが、てめーみたいな爆弾抱えてチームを心中させるわけにはいかねぇ。
俺は絶対お前を認めねーぞ

頑なな大船先輩。まあチームの為を想ってのセリフとしては分からないでもない。
やはりこの人が一番の難物でありますかなぁ。

整列からの礼。ありがとうございました!!
なんだかんだでいい勝負に持ち込めた気がする練習試合。観客からも拍手が飛んでおります。
そして何より、ケイちゃん。すっかり見入っていたらしく、可愛い顔して拍手してくれております。
見守る百合草さんも満足そう。これはマネージャー獲得なったか・・・?

整列後にネット越しに握手。
間白も意識が変わりつつあるようですな。
逃げ腰ではなく、正面から相手を突破する速さを身につけようと考えている様子。いい傾向だ。
倉光と松方の因縁は続くのかどうか。泣かしてやるとか言われましても。成長には期待したい。
下平くんと三河の因縁はしっかり残りそうですな。今度対戦した時はどうなるか。楽しみです。

というわけですっかり遅くなった時間にバスに乗って帰る桐城の面々。
結局走って帰らされるようなことはありませんでしたか。
いや、実はバスの中で走らされてるとか・・・さすがにそんなエキセントリックなことはやらないか。

見送る下平くん。脳裏に浮かぶのは大船先輩の言葉。

大船先輩の言うとおりだ。もう二度とあんな形でチームに迷惑をかけちゃいけない。
克服してやる。100%跳べるようにならなきゃ!!

練習試合でその力を公開してしまうのはどうかと思ったが、結果的にはやってよかったと思えますな。
チームに力を見せ、自身は弱点と向き合う機会を得ることが出来た。
ここから試合に向けての課題が明確に見えたのはいい傾向と思えます。

それはそうと、ページをめくったらいきなりの事故
前のページで下平くんが語った直後なだけに飛び出したのかと焦ったが、どうやら別人だったらしい。
バスを片手で止めている・・・ように見えるこの構図。
単に急ブレーキが間に合ったのか、本当に止めたのか。
いずれにせよ気になるのはそのカバンの文字。駿天堂学院。東京1位の学校の男がこのタイミングで現れるとは・・・!?
一体何者なのか。何をしに現れたのか。本当にバスを片手で止めたのか。気になる点が多いぜ!!



第30話・羽  (2015年 6号)


飛びだすバスの前に突然立ちはだかる少年。危ないことこの上ない。
バスに触れた手の絵を見る限り、止まってから手を当てたわけでもなさそうだし・・・本当、危なすぎるぜ!!

この危ない少年は駿天堂学院のカバンを背負っている。
となればもちろん東京選抜メンバーであった間白たちも知る人物。
やけに可愛い顔したこの少年の名は・・・羽座川扇
去年の駿天堂学院中等部と中学東京選抜正リベロの羽座川扇である!!

読み切りの時からは随分様子の変わった羽座川扇。
あちらは熱血的な感じがあったが、こっちは何だろう。ぽややんとした感じになっておりますなぁ。
その羽座川扇を轢きそうになった古川先生。口にした通り寿命の縮んだ想いでありましょうなぁ。お察しします。

ぶつかるクルマの前には出ませんよー

笑顔でそう述べる羽座川扇。どこまで本気で口にしているのか・・・
何となくこれ以上言っても無駄っぽいなという感じは与えてくれる。厄介そうな子だ。

それはさておき、どうやら古川先生に用事があるらしい扇くん。用件は・・・

ウチとれんしゅーじあいしましょー

ひらがなで軽い調子で言っているが、これは大きな申し出であります。
本来予選地区の強豪高校同士は練習試合しないはず。
事実、古川先生が桐城の監督になって30年、駿天堂とは一度も練習試合はしていないのだから・・・30年もやってるのかこの人。

今年の代は今までと違うってのか!?

突然の申し出に動揺している様子の古川先生。無理もあるまい。
そこに出てくるのは三河。同じリベロとしては扇くんのことは気になるでしょうなぁ。
中学生にして全日本の合宿に参加するような男であるし、気にならないはずもない。
だからといっていきなりボールを投げつけるのはどうなのだろうか。カバン背負ったままの相手に。
いや・・・そんな状態であっても問題としないのがやはり凄みと言えるのかな・・・?
実際、三河の投げたボールを綺麗にレシーブしてみせる扇くん。これは・・・羽?羽が見えた・・・!?

――音が無え。ボールのエネルギーも音も全部吸い込まれちまったみてーに・・・

羽毛が衝撃を吸収したかのようなレシーブということでしょうか。
身体は確かに引いて衝撃を殺している感じでありますが、どうすれば音まで殺してしまえるというのか・・・
何にしてもこれは面白い。三河も俄然やる気になる。

俺は三河群!!お前を倒して日本一のリベロになる男だ!!

ようやくフルネームが出た三河。パッと見だと名前かどうか分からなくなりそうですな。
しかし三河のやる気とは裏腹に、この練習試合の申し出を断る古川先生。練習試合で倒しても勝ちにはならないと述べて。

インターハイ予選決勝でお会いしましょう。先生にはそうお伝えください。

そのように述べる古川先生。
ふむ、つまり豊瀬は倒す前提で話しているわけでありますな。舐められている!?
と豊瀬の面々は憤っているが、桐城としては駿天堂に舐められるわけにはいかないし、この態度は妥当でありますわな。

この申し出、断られる可能性が高いのは先方も理解していたはず。
しかも電話で済む内容にわざわざ彼を使いによこしてきた。
こりゃああからさまな挑発!!!今年は自分達の方が上だという示威行為!!!
コケにしてくれっちゃってまあ・・・吐いた唾、飲まんとけや?

口にこそしないまでも悔しさをぶつけたがっている様子の古川先生。
こういう言葉似合うなぁ・・・実際に口にはしたりしないんだろうけど・・・似合うなぁ。

返事を受け取ったので帰ろうとする扇くん。
その背中に声をかけるのは・・・下平くん。おや、知り合いだったのか?

下平くんの昔の呼び名はシモヘー。まあ、そうなるわな。呼びやすいし。
小学生の地域のバレークラブで2人は一緒だったという。
しかしそのシモヘーの名を聞いて頭を抱える扇くん。
何やら事故の記憶らしきものがフラッシュバックしているようでありますが・・・?

お前なんかしらない。ぼくのあたまいたくしないで

下平くんにとってはバレーを始めるきっかけになった人である羽座川扇。
しかしその扇くんは下平くんのことを知らないと述べている。
うーむ、記憶喪失か何かでありましょうか?事故とか関係してそうな感じですなぁ。
その事故に下平くんが関わっていた・・・のなら下平くんが知らないはずはないか。ううむ?

大型車両との事故がありそうな感じですが、その割に大型車両の前に平気で飛びだしてくる扇くん。
なんだろう、誰かを事故から救えなかったトラウマでもあったりするのだろうか。
その結果、車の前に飛びだして止めるクセがつくようになったとか・・・いや、危なすぎるなコレは!!
衝撃を殺すレシーブの技術があればバスだって止められる!!いやさすがにそれは行き過ぎ行き過ぎ。

なんとも不思議な感じの羽座川扇。その扇くんと知り合いだった下平くん。
さてさてここからどのような展開となりますか・・・気になるところですな。



第31話・糾弾  (2015年 7号)


あの頃、おーぎ君は皆のヒーローだった。
あんな風に僕もなりたかった

小学生の頃のことを思い返す下平くん。
しかしその扇くんにお前なんか知らないとか言われてしまいまして・・・うーむ、悩ましいですなぁ。夢に見るまでか。

悩ましいのは分かるけど寝過ごしてしまうのはよろしくない。
学校はさておき、朝練は全く間に合わないほどの大遅刻。
うーん、サボリみたいな感じになっちゃいましたなぁ。お兄さんがっかりだよ。

遅刻のマイナスはさておき、1年たちには下平くんに聞きたいことがある様子。
間白としては扇くんとの関係を知りたい感じ。
しかし松方はそれよりも優先して尋ねたいことがあった。それは・・・

下平。お前がアキレス腱切ったの、どっちの脚だ?

そのように尋ねる松方。切ったのは右足ですな。
脚自体は治っているけど、切った瞬間のことがフラッシュバックして右足が棒のように硬直してしまうのである。
そう答えると、怪我したのが右足で良かったと述べる松方。ほう?それはどういう理屈だろうか。

疑問が解消しないまま昼休み。
下平くんの教室にお客さんがやってくる。
クラスメイトの男子が羨むようなお客さん。誰かと思えばケイちゃんじゃないですか。そりゃ羨みますわ!!
ひらひらと手を振るケイちゃんは実に可愛い。

やはりマネージャーを引き受けることとなったケイちゃん。良かったですなぁ。
そのケイちゃんの案内により柔道場へ向かう1年生たち。ふむ、バレー部のミーティングですか。
先の練習試合の結果を受けて山縣先生からお言葉があるみたいですな。

昨日の練習試合の結果が示す通り、我々の力は桐城高校に大きく劣る。
お前達が変わらずインターハイ出場を目指すのなら、2か月後の予選準決勝で彼らを破らなくてはならん。
だがたった2か月でこの地力の差を覆すのは不可能だろう

ハッキリとそう述べる山縣先生。そりゃ常識で考えたらそうですわな。
相手が足踏みしてるならともかく、向こうは向こうで対駿天堂に燃えている。
それに豊瀬のことも決して侮れない相手だと認識してくるでありましょうからねぇ。
しかし山縣先生の言葉には続きがある。

自分のプレーを振り返った時、何一つ桐城に通用するものはなかったか?そんなことはないハズだ。
お前達は選ばねばならん。これから2か月、自分の何を伸ばし、何を切り捨てるか。
自分の得意なコトだけを磨きぬけ。出来ないことは仲間に負担してもらえ
役割分担を明確にして各個人の得意な土俵で勝負できれば総合力で勝る相手にも勝利できる。

ふむ、さすがに良いことを言いますな山縣先生。
チームスポーツなのだから短所は仲間が補えばいい。それらを補い合えるチームワークも必要となるわけですな。
そんなチームワークに関わる大事な話として大船先輩から山縣先生に向けて質問。

先生は今後も下平を試合に出すおつもりですか?

言いにくいことをさっくりと述べる大船先輩。
確かに先の試合では重大な弱点を披露してしまっていた。
いざという時に跳べなくなるのでは爆弾を抱えて試合をしているようなものである。
果たしてそのような選手を出していいものか。不安に思うのは無理もない。
山縣先生はそのことについてはお前たちが話し合って決めなさいとのこと。ほう?

じゃあ決を取るっス。下平が出てもいいと思う方は手ぇ上げてください。

その言葉に下平くんと大船先輩を除く部員全員の手が上がる。おやおや。
後衛なら別に跳べなくてもいいという判断なわけですな。
先の試合の最後のようなのはそうそう起きないという考えもありそうだ。だがそれはつまり――

・・・じゃあ、言い方変えるっス。ピンチサーバーとしてじゃなくレギュラーとしてだったら?

この質問には一転して手が上がらない。
まあ五十嵐先輩の言うようにピンチサーバーとしてなら後衛にいるだけだしそこまで問題はない。
しかしローテーションに入るとなるとそうはいかない。レギュラーとしては厳しくなる。当然の判断ですな。
だが、そんな中、この男だけは手を上げる。松方だ!!

下平が100%スパイク打てれば文句ないんですよね?と述べる松方。
その表情には自信が見受けられる。ふむ、何か策がある感じですな。
練習試合のおかげで存在感と作戦に関しての信頼感が出てきた松方。期待したい。
下平くんにしても、レギュラーとしてスパイクをガンガン決めるようになりたいという想いは強かったりする様子。

だって僕はずっとずっとそんな風になりたかったんだから!!
もしも僕にあんな風になれる可能性があるなら、何だってやってやる!!!

過去の扇くんの姿は憧れの姿。
自分もそのようになりたいという想いが今も下平くんの中には存在している。
いい感じに前向きになってきた下平くん。レギュラーへの道が見えてきたか!?

それにしても扇くん。昔はスパイクを決めていたというが今はリベロなんですよね。
下平くんとしてはその辺りの変化はどう思ってる部分なのだろうか。
まあその辺を考え出すとまた寝坊するかもしれないし・・・ほどほどにしておこう!!



第32話・STAND BY  (2015年 8号)


コートに立ちたい!その意志を示す下平くん。
その様子に一度は手を挙げずにいた間白、金田の両名も手を挙げる。
松方の策とやらは分からないが、もしも下平くんが跳べるようになったのならレギュラーで使わない手はない。
逆に大船先輩のこの投票はそれを露わにしてしまったとも言えますなぁ。

放課後の練習で跳べるって証明してみせますよ

頼もしい松方の言葉。
しかし放課後、松方を始めとした3人の姿が見当たらない。

どうやらあのあと教室に戻らずそのままどこかに行ってしまった様子。
ふうむ、下平くんを跳ばせるには下準備がいるってことなんですかね・・・?

仕方がないので一人で部活に向かいネットの準備をする下平くん。キョロキョロ。
真っ先に現れたのは大船先輩。他の1年がいないことを憤りつつもネットを張る手伝いをしてくれる。
ちゃんとネットを張らないと部活にならないとはいえ、こういう面はいいですなぁ。
何かと1年に対してキツく当たる大船先輩であるが、誰よりも縦社会を重んじている故の行動なんでしょうなぁ・・・
しかしこうしてみるといい腕の筋肉してますな。ナイスマッチョ。

ネット張りについてはさておき、スパイクの件については容赦ない。
これも大船先輩なりのチームに対する想いの発露なのでしょうが・・・ううむ。
そして飛べる方法の答えを聞かされておらずまごつく下平くんにこう述べる。

まだわかんねーのかよ・・・無えんだよ、んな方法は。
あの場じゃ、あーでも言わなきゃお前を使わない流れになりそーだったから大見得切っただけで。
ひっこみつかなくなったからいまこーしてバックれてんだろ。

この現状を見たら見捨てられたかのように思われても仕方がない。
実際は下準備に手間取って遅れてしまっただけみたいですけどね。危ない危ない。
そんなに時間をかけて何をしてるのかと思ったら買い物でしたか。アキレス腱用サポーター
ものにもよるが2000〜4000円ぐらいはする品でありますな。
3人で分担すればそこまで高くはないかもしれないが・・・まあ物入りな高校生には高い買い物かな。
金の工面に手こずって遅くなったのかもしれませんなぁ。

ともかくこれがあれば再びアキレス腱が壊れることはない。
とはいえそれだけでトラウマを克服できるかというとそれは難しい。

だから何度でも跳び損なえ。何度でも失敗しろ。できるまで俺らが付き合ってやるから

いい笑顔を見せる3人。いやあ、いい奴らだ・・・!!
怪我の再発さえないのなら後は心の問題。それならば支えてくれる人達がいるというのは心強い。
こうまでされては頑張る他ありませんやね!!

というわけで早速下平くんが跳べることを証明することとなりました。
松方の指示は昨日の試合の間白の最後のスパイクを思い出せというもの。
それはセッターの後ろを駆け抜け、助走をつけて左脚で踏み切る片脚跳び!!移動攻撃だ!!
なるほど。これならば左脚でも十分な高さが跳べるわけですな。
その場で跳ぶのではなく加速を利用すれば利き足でなくても跳べると。

移動攻撃はアタッカーがセッターの視界から消えるから合わせるのが難しい。
さすがの松方でも一度も合わせたことのない相手に合わせるのは無理があったみたいですな。予想より跳んだみたいだし。
うーむ、この辺りの身体能力はちゃんとあるみたいですな下平くん。割と有望か?

驚くほど見事にスパイクには失敗したが、跳べることは証明できた。
思った以上の高さがあったし、タイミングさえ合えばスパイクも問題ないでしょう。威力は未知数ですけどね。

インハイ予選までの2か月でこのヘタクソを人並みにはできないですが、この片脚跳びとブロックだけに絞って鍛え上げて。
2か月でコイツを使えるミドルブロッカーにしてみせます!!

おっと、ここでミドルブロッカーか!!
確かにそこは先輩たちの個性も薄そうな所だなとは思ってました。なるほどなー。
その発言に対し、高代先輩と久場先輩ナメてんのか!!と憤る大船先輩。相変わらず先輩大好きですなぁ、この人は。
でもそんなこと言ってもじゃあどこを狙えばいいのよと。
リベロやセッターなんて無理だろうし、オポジットも厳しかろう。
となるとスパイカーかMBになるわけだが・・・どっちを選んでも怒られそうだからなぁ。

何はともあれ下平くんの目指す道は定まった。
レギュラーとしてコートに立てるかもしれない。その想いでどこまで成長できるのか楽しみですな。
しかしこうなるとどのポジションもレギュラー争いが熾烈になりそうですなぁ・・・どうなることか。



第33話・積年  (2015年 9号)


背がヒョロ長かった僕と高代っちゃんは自然とMBに収まっていた。
ポジションも中学東京選抜と被らなかったし、最後の試合まで一緒にコートに立ってるんだろうとそう思っていた。

そのように述懐する久場先輩。
そこにまさかの下平くん参戦とはねぇ。安心していたのがいきなりの緊張感。
うーむ、何というかタイミングが悪かった感じはありますかな。
入部当時にMBを目指すとでもいえば、選抜メンバーでもないし、警戒されることはなかったはず。
しかしあのサーブを見せた後では普通に警戒されるようになっちゃいますわなぁ・・・ベンチに入れておくには勿体ないもの。

さて、下平くんが跳べることを証明し、3年生に宣戦布告をしたところで監督登場。チワース!
今日の監督はスーツではなくポロシャツ姿であります。半袖だから腕の凄さがよく分かるぜ。ごっついごっつい。
そんな監督が選手の名前を呼ぶ。

野々原。大船。久場。高代。間白。松方。リベロに金田
ポジションに入れ。残りの者は反対のコートに。

ほう。これは・・・今名前を呼ばれた者がレギュラーとして決定したということでありましょうか?
昨日の練習試合で活躍した面々が残ったと考えれば妥当なところでありましょうか。
五十嵐先輩としては悔しいけど仕方がない。でも悔しいという感じか。ううむ、挽回の機会はあるのかなぁ。

今日は先生が直々にボールを打ってくれます。
うーむ、その丸太のような腕に違わず凄い重い球が飛んでくるみたいですなぁ。これはいい経験になる。
このぐらいのボールを上げられなくては桐城には勝てないって話ですわいな。

さて、MBを目指す下平くん。頑張ってブロックをしようとしているが、まるで追いついていない。
高さが足りないというか、トスに合わせて跳ぶのが遅いので間に合ってない感じですな。
そんな下平くんに監督からアドバイス。ネットから1歩下がってみろとのこと。

――アレ?1歩下がっただけなのに、さっきまでより相手コートがよく見える!

ふむ。さすがに山縣先生。的確なアドバイスでありますな。
視野を狭くしていたのが問題ならば、それを拡げて上げればいい。まずは追いつくことが大事という話であります。

MBのレギュラーを目指して頑張ろうとしている下平くん。
その様子を感じ取った久場先輩。

本気で僕らの場所を奪う気か・・・
3年間ずっと一緒にやってきたんだ。あと2か月ちょっとくらい、一緒にやり切らせてくれよ!

そのような想いを抱く久場先輩。うーむ、ウェットですなぁ。
チームの強化を望むよりもこれまで一緒にやってきた仲間のことを優先する。
まあ、高校生の部活動としてはその考え方は大きく間違ってるとは言い難いかな?プロならともかくさ。
でも上を目指す意識があるのなら、その考えは持ち続けていいものかどうか。

さて、そんな久場先輩と高代先輩にブロックを教えてもらえないかと頭を下げる下平くん。
高代先輩は快く引き受けてくれるのだが、残り少ない時間を自分のために使わないで後悔しない?と久場先輩。

・・・言いたいことわかるけどさ・・・やっぱ、頑張ってる後輩は可愛いよ

そのように述べる高代先輩。うん、下平くんは可愛いですよね。いや限定する必要は無いか。
でもこれまでMBの後輩はいなかったみたいだし、指導する側に回れたという嬉しさは確かにあると思うのです。
自身のレギュラーの座を脅かす。その考えに囚われなければ久場先輩も可愛い後輩が出来たと思えたんでしょうがねぇ・・・

・・・そっか。最後まで一緒にコートに立ちたいなんて思ってるのは僕だけか

すれ違う想い。強烈な仲間意識を抱いていたわけでありますが、それが一方通行だったかもしれない。
ここに来てその可能性に気付かされるというのは何とも・・・何ともはやですなぁ。

混沌とするレギュラー争い。
今年で最後の3年生の人数が多いだけになかなか難しい話であります。
とはいえ3年生だからという理由だけでレギュラーを譲れるほど我の弱い1年生たちではない。
どこまで当人たちが納得した形に収まるのか・・・怖いけれども見物でありますな。



ハリガネサービス 5巻


第34話・転向?  (2015年 10号)


MBでレギュラーを獲得する。
その意気で練習に臨む下平くんであるが・・・どうにもアタックが上手く行っていない。
そりゃ一朝一夕でどうにかなるわけではないが、どうやら空中での体の使い方から分かっていない様子である。ううむ。
そんな下平くんに山縣先生から一言。

下平。今日からハンドボール部に行け

いきなりの宣言。いや冗談にしか聞こえない内容であるが・・・冗談じゃ、ないんですよね。
さすがに転部させられるようなことはなかろうが、説明が足りてないと不安になりますよねぇ。困ったものだ。

ハンドボール部も実際人数不足で紅白戦が出来るぐらいの数も居なかった様子。
ある意味下平くんの参加は渡りに船の部分がありますのかね。

さて、下平くんが教えを請うのは少し小さめのタケウチ君。
ぶっきらぼうな感じであるが、悪い子ではない感じがします。
そんなタケウチ君に、顧問にかってに他の部に貸し出されて馬鹿馬鹿しくないのかと尋ねられる下平くん。
まあ、普通はなんでやねんって思いますよね。それは仕方がない。
しかし練習しているうちに気付く。ハンドボールとバレーには共通する部分があることに。
となればハンドボールからバレーに活かせる何かがあるのではないか。そのように考える下平くんでありました。ほほう。

・・・気にいらねえな。ハンドボールはハンドボールで楽しめよ!!絶対バレーより面白えぞ!!

自信を持ってそう述べるタケウチ君。
ふむ、タケウチ君もハンドボールが大好きなんですなぁ。
しかしそうとも限らないんじゃないかなと返す下平くんの笑みが何か・・・怖い
その笑顔で言い負かした・・・というわけではなさそうな様子。
ふーむ、チームプレイか。タケウチ君はどうやら今のハンドボール部で問題を抱えてしまっているようですな。

小学校の頃からハンドボールをやっていたタケウチ君。
入部早々Aチームの先輩達をブチ抜いてゴールを決めまくった為に不興を買った様子。
その結果、背が低いという理由でBチームに入れられることとなったそうな。おやおや・・・

なんというか部活の嫌なところを垣間見た感じでありますな。いや、よくある話なんでしょうけども。
大船先輩は厳しいことを言うが、何だかんだでチームのことは考えている。
そういったものとは違う、単なる偏狭なプライドだけでチームメイトを蔑ろにする。これはどう考えてもおかしい。

そんな先輩達がレギュラーならやっつけて、こっちがAチームになっちゃえばいいんだよ!!

なかなか激しいことを述べる下平くん。
まあ、自身も先輩からレギュラーの座を奪おうとしているのだし、これぐらいは言えないといかんか。

そのような口を叩きながら、見事にシュートで結果を出して見せる下平くん。
タケウチ君との即席コンビプレーであるが、見事にはまりましたな。
ハンドボールの方が小さくて打ちにくそうな感じはあるが、ネットが無い分楽だったりしたのだろうか。

ともあれ、ハンドボールのジャンプシュートが今練習しているワンレッグスパイクにそっくりであると気付く下平くん。嬉しそう。
そのような嬉しそうな姿を見ているとハンドボール部に勧誘したりは出来ないなと思ってしまうタケウチ君。
うーむ、なんだか切ないですなぁ。せっかく仲良くなれそうな相手とお互い出会えたかもしれませんのに・・・
ヒントを掴んだ下平くんは良かったが、タケウチ君の今後がとても気になります。
いい具合にハンドボール部も変革されるといいのだが・・・うーむ。



第35話・活路  (2015年 11号)


ハンドボール部に出向中の下平くん。
そちらの練習は終わったようだが、体育館の灯りはまだ点いている。バレー部はまだ練習を続けているのだ。
それを気にしている様子の下平くんを送り出してくれるタケウチ君。いい子ですな。

先生指導の練習は終わり、残りは自主練習となる。
大船先輩曰く、今日は上腕筋の日とのこと。マッチョは鍛えるのも計画的でなくてはなりませんか。

トレーニングルームに向かう大船先輩。
しかし同じく筋肉仲間である五十嵐先輩は筋トレをパスする。おや・・・

鯨川見たろ。俺が2か月筋トレしたとこで、アイツのパワーに勝てるわけないじゃねぇか。時間の無駄だろ?

何とも諦観の漂う発言をしてくれる五十嵐先輩。これはよろしくない。
とはいえ何も考えずにいつも通りにしていればいいとも思えない。
パワーじゃ勝負にならないのだから何か別の方法を探すしかないのだが・・・それが見つかるかどうか・・・
それを探すためにもまずは体を動かしたい。
そう思う五十嵐先輩であったが、松方曰く。山縣先生から五十嵐先輩だけにはトスを上げるなと言われたとのこと。
スパイクが打ちたければ自分でトスを上げろ・・・だそうな。なんだそりゃ。

先生の中じゃスパイカーとしての俺はもう終わってるってのか?冗談じゃねぇ。

言われた通り、自分でボールを投げて自分でスパイクを打つ五十嵐先輩であるが、上手く行くはずもない。これは苛立つ。
どうすりゃいいんだよ・・・と悩みたくもなる。が、山縣先生の言葉には続きがあった。

五十嵐が安定してコースを狙えるようになってきたら、少しずつネットから離れた位置から打ってみろと言っておけ

ふむ。何やら山縣先生には考えがあるようですな。
自分でボールを上げて打つことで何かを掴むことが出来るのかもしれない。
山縣先生の言葉は突き放してのものではなく、道を示すためのものだったわけですなぁ・・・!!
それならそうと、本人に言ってくれればいいものを・・・勘違いしちゃうでしょう、これじゃあさ!!

まだ終わっちゃいねえ!先生は俺のスパイクにまだ何かの可能性を見てる!
それがどんなものなのかはまだわかんねーけど、今はバカみたいにソレを信じたい。
だって俺はウィングスパイカーだ!!

良い感じに前向きになれたみたいですね五十嵐先輩。良かった良かった。
こういう面を見るとやはり山縣先生は名将っぽい感じがありますなぁ。非常に口下手ではあるけども。

さて、ブロック練習を始めようとしていた下平くんのところに近付いて来るのは野々原さん。
なんといきなり頭を下げて、サーブのコツを教えて欲しいと来ました。ぺこり。

どーやってあんな精度出してるんだ?何かコツがあるんじゃないのか?

確かにそれは気になりますわな。
しかし先輩にして主将が、教わるために頭まで下げてくるとは・・・野々原さんは本当、独特な感じだなぁ。

というわけで、下平くんのサーブ講座。
さすがにこれは皆興味津々。野々原さんだけじゃなく皆集まってきた感じであります。
まあ、サーブはリベロ以外皆が打つ可能性ありますからねぇ。身につけられるなら身につけたいと思うものでありましょう。
しかし自分はブロックの技術を教えることを拒否しておきながらさらりと聞きに来てる久場先輩は・・・いい度胸だ!!

無回転サーブは打つとき手首から先が動かないのが大事なんですが、
僕はハリガネでガチガチに固定されてるイメージでボールを打ってます

とりあえず心構えから入る下平くん。実際大事みたいですけどね。
しかし固定しただけで精度が身につくわけではない。やはり繰り返しによる反復練習で体に染み込ませることが必要か。

高代先輩曰く、野々原さんがバレーを始めたのは高校からであるとのこと。
最初は経験者だった周りに聞いたりしてたのだが、わからないことがあれば先生にも物怖じせずにガンガン聞いていく。
その結果、もの凄いスピードで上手くなっていったのだそうな。

いつからか野々原の「教えて!」が始まるとなんとなく皆周りに集まるようになって、
こんな風にプチバレー講習会が始まるようになったんだ。

面白い話でありますな。こうやって部全体の技術が底上げされるのであれば、それは望ましいことである。
そんな中、一人輪の中から外れて筋トレを行っているのは大船先輩。
大船先輩も先の練習試合で鯨川のパワーにやられたことは忘れたわけではない。

アイツを止めるには生半可な鍛え方じゃダメだ!!
五十嵐先輩がやらないなら、俺が鯨川を止める!!

こちらはこちらで、我を通しながらも勝つことを考えている様子。
それでいて、隣に五十嵐先輩がいないことを寂しがったりしている。うーむ。

部員みんなが強くなるために切磋琢磨している。
これまで並んで歩いていたものたちが道を違えることはあるものの、皆前を向いていることに違いはない。
この空気であれば、もっともっと強くなれそうな気はしますやね。頑張れ!!



第36話・覚悟  (2015年 12号)


中間考査前ということで一週間の部活停止。
やはり学生の本分は勉強。どこの学校も変わりませんな。

そんなテスト期間も含め、桐城戦から1か月が経過。
部活で体育館は使えないが、トレーニングルームの使用は許可されている様子。
今日も鍛える大船先輩。しかしあの日から五十嵐先輩は一度もここを訪れることはなかったようで・・・おやおや。

そんなタイミングで姿を現すのは下平くん。
一人で来ちゃったものだから、大船先輩と2人だけの状態であります。おやおや。

ここで大船先輩の回想。あれは1年前、大船先輩が入部した時のことである。
大船勇、184cmの70km。身長は結構なものであるが、体重は若干軽い感じでありますな。
ちなみに当時の3年、キャプテンである富永朔太郎さんとポジションは被っていた様子。ほほう・・・

当時はかなり天狗になっていた様子の大船先輩。
表面上はさておき、内心は先輩であろうが見下していたりする。ダメな感じだ。
そんな大船先輩に、もっと肉をつけておけと語る五十嵐先輩。この頃はタオル黒かったんですな。そんなところで差別化!?

ともかく、大船先輩が入ってきた年に山縣先生が就任。ヤクザちゃう。
しかし就任の挨拶がいきなり明日から1か月間体育館練習ナシだとは・・・ヤクザな教育方針ですな!!

外コートでの荒地でのレシーブ。確かにこれはすべりこみたくない。
というか、本当。この先生は口下手というか何というか・・・

しかし1か月後、その練習の成果は目に見えて現れる。
なるべく外で滑り込みたくないため、なるべく落下地点まで足を動かすようになる。
おかげで前だったらすぐフライングレシーブしてた球にも足を動かして跳ばずに上げるから守備範囲が広がったのだという。
なるほどねぇ。一目でその辺りの弱点を見抜き、改善させたというわけでありますか。
やはり山縣先生・・・ガチで凄い人でありますな。ただのヤクザではない。

そんなこんなであっという間にインターハイ予選の日。
ウィングスパイカーとして選ばれるのは、大船、五十嵐の両名。キャプテンである富永さんは外されてしまう。おやおや。
3年間最後の大会で1年生にレギュラーを取られる。これは厳しい。
それでも笑って激励できる富永さんは懐が深いのかどうなのか。その場で帰るのは論外と思いますけどね。

その日、豊瀬高校は5年ぶりにIH予選初日のリーグ戦を突破した

喜びに沸き返る部員たち。
5年ぶりということは、3年生の先輩にしてみれば正に初勝利だったわけですな。それは嬉しかろう。
出場の機会がなかった感じの富永さんも涙を流して喜んでいる。

しかしインターハイ予選の2日目。
ウィングスパイカーの一角である大船先輩。どうやら背中を痛めた様子。精彩を欠いている。
だが、それを隠してコートに立ち続け・・・結果、スパイクを決めることができずに敗退。
この年の豊瀬の3年達の最後の試合が終わることとなったのでした・・・ううむ。

さすがに山縣先生は痛めていることに気付いた様子。
しかしそれでも、勝つためにはどうしても大船先輩のスパイクが必要だったという。
控えの富永さんに頭を下げる山縣先生
育ち切っていない選手で勝利を掴むにはこういう非情さも求められるということでしょうか。指揮官は大変だ。

最後の大会に試合に出ることが出来なかった富永さん。しかしそれでも、もっと優先したいことがあった。

勝ちたかったんだよぅ
3年間楽しくバレーできりゃいーやって、勝ち負け意識した練習やってこなかった。
でも山縣先生が来て、練習きつくてゲロも吐いたけど、3年間で初めて初日を勝ち抜いて、勝つっていいもんだと思ったよ!!
都合のいい妄想もしたよ。このまま勝ち進んでいったらさ、平凡な俺にも一生自慢できるような思い出ができるんじゃないかって!!

涙を流す富永さん。表情がちょっと怖いが、その言葉は正に涙なしには聞けない。

今日試合に出れなかったのは3年間漫然とした練習しかしてこなかったツケだ。
本気でやるバレーがこんなに楽しいなら、もっと早く本気でやればよかった。
もっと早く山縣先生に会っていたら、お前にだって負けずにコートの上で終われたんだ!

何とも泣ける話である。
惜しむらくは、富永さんはそれを認識していたが大船先輩は認識できていなかったこと。
どれほどの想いを背負ってコートに立っていたのか分かっていなかったこと。
遅まきながらもそれに気付くこととなった大船先輩。翌日から心を入れかえ、五十嵐先輩の言うように体を作ることに。

・・・もしお前がレギュラーになったとして。
想像してみろ。もしお前がまた最後の1点で飛び損なったら、お前のせいで先輩たちの高校バレーは終わるんだ。
それでもお前、コートに立てるか

ふむ。怪我のことを隠し、その結果ミスで失点して負ける。
細部の違いはあれど、これは確かに大船先輩が経験したことでありますなぁ。
練習試合だったからまだしも、これが3年生たちの最後の試合だったとしたら・・・
それは先輩たちにとっても下平くん自身にとっても辛いこととなるでしょう。
それを認識させること、覚悟させることは経験した先輩の大事な仕事である。経験者の言葉は重いということですな。うむ。

自身が色々と経験したからこそ今の言動がある。
態度も1年前とは大幅に変わった大船先輩。
となれば、下平くんが意志を見せればまた別の変化が見られるかもしれませんなぁ。
いい方向へと変わっていってくれることに期待したい。そのためにも下平くんにはここでハッキリした意志を見せて貰わないとね。



第37話・成果  (2015年 13号)


学生であるのだから部活と同じく勉強も大事。
というわけで試験に臨む下平くん。
それはいいのだが、この先生やたらとふくよかというか何というか・・・インパクトあるなぁ。

前回のラストから時間が飛んでいるようだが、大船先輩の問いかけに下平くんは答えることが出来なかったのだろうか?
回答は持ち帰りって感じですかね?ふーむ。

試験が終わって解放感に浸る間白。踏むぞ。
この調子だと赤点による追試が普通にありそうでいかんですなぁ。

下平くんが通うハンドボール部は紅白戦が熱中して全体的に練習に力が入っているらしい。ほう。
負けたくないという気持ちがいい方向に働いているようですな。これはいい情報だ。
しかしそのタイミングでバレー部も紅白戦。下平くんはハンドボール部に向かうことはなくなりました。
下平くんがいないとハンドボール部は紅白戦に人数が足りなくなるのではなかろうか・・・上手く行かんものですな。

まあ、人数不足と言う意味ではバレー部も同じ。
なのでフルメンバーに足りていないBチームには山縣先生が入ることとなる。ほう。

桐城戦から1か月半。何を掴んだか見せてみろ。
今日の出来を見て、2週間後のインターハイ本戦のレギュラーを決める

自主練習の結果が問われる紅白戦というわけですな。
しかしBチームは山縣先生を含めても1人足りない状態なのか。
まあ山縣先生なら2人分の働きぐらいできるでしょう。多分。

ちなみにBチームのローテーションは固定。サーブは常に山縣先生が入れるとのこと。
下平くんがサーブ入れちゃうと全体の成果を見る練習にならない可能性もあるし、仕方がないですかね。

山縣先生のサーブを受けて速攻を決めるAチーム。
速度の速いAクイックで跳んだ高代先輩。
それと同じタイミングで合わせてみる間白。これは面白い。
速いことの鋭さもさりながら、同じタイミングで打つとなるとどっちが打つかブロッカーは迷うこととなるわけだ。

さて、点数を得たAチームのサーブ。
綺麗なレシーブでそれを返す山縣先生。
何というか綺麗すぎて面白い。描いてないのに擬音がぽよんと鳴っているかのように思えるほど綺麗なレシーブだ。ぽよん。

それはそうと、今度はBチームの攻撃。
家守先輩から五十嵐先輩に。
五十嵐先輩に対して3枚のブロックが跳ぶわけであるが・・・それを躱してアタックを決めてみせる!!うおし!!
金田も取れないぐらいエグイところを決めてみせる五十嵐先輩。なかなかの精度だ。

この1月半・・・五十嵐先輩は先生の指示でネットから遠い位置からのスパイクだけを打ち続けていた。
ブロックから離れるほど打てるコースは広くなる。
五十嵐先輩は長距離から精密に狙い打てるスパイカーになったんだ

パワーではなく精密さを磨くことにしたわけですな。なるほど。
山縣先生のアドバイスもさすがですが、それを信じてしっかり鍛え上げる五十嵐先輩もさすがである。
そんな五十嵐先輩の活躍を嬉しそうに思っているのは大船先輩。
筋トレには現れず寂しく思っていたようですが、活躍してくれるのはやはり嬉しいようですな。この先輩好きめ。

下平くんも1月半練習してきた片脚跳びをアピールしたい。
が、家守先輩とのトスが合わずに不発。
うーむ、後ろに上げるトスですしなぁ。息が合ってないと難しいものでありますわなぁ。

こうなると高代先輩直伝のブロックでアピールするしかない・・・って高代先輩怖ッ。見下ろし気味になるとはいえ怖ッ!!

その高代先輩に対しブロックを決めようと思ったが果たせない下平くん。
Aクイックの位置に踏み込んだのにCクイック――セッターの後ろへと跳ぶ高代先輩。トリッキーな感じですなぁ。
しかしブロッカーはそういう動きも想定しておかなければいけないらしい。

そーいえばこれはまだ教えてなかったね。
やっぱり1か月は短すぎるね。もっと教えてあげたかったけど、MBに必要な技術の半分も教えてあげれなかった
でも大丈夫。引退まできっちり教えてあげるから。後継者を育てるのも先輩の勤めだからね。
ベンチから僕のプレーを見てよく学ぶんだよ。

そりゃまあ、1か月で技術の全てを吸収されたのでは立つ瀬がありませんわな。その通りだ。
特にMBはスパイクもブロックもこなさなければいけないわけだし、色々と覚えることが多そうである。
イヤミなように聞こえなくはないが、高代先輩の言うことは正しい。
むしろ2か月で使えるようにするという松方の言葉の方がちょっと甘かった感じがしますな。

しかしサーブもスパイクもブロックもアピールできないのでは八方塞がりである。
下平くんがレギュラーを勝ち取る可能性はどこにあるのか・・・ううむ、苦難の道ですなぁ。



第38話・道化  (2015年 14号)


高代先輩にブロックを教わる下平くん。
シャツを加えて上目遣いに見てごらんとか文章だけ切りだすと何だか卑猥である。可愛いねぇとか言っちゃうし。
それはそうと高代先輩の流し目は妙に色気がある気がしないでもない。

そんな高代先輩に嬉しそうに駆け寄るのは久場先輩。
下平くんに対しての指導の考え方で距離を置いている感じでありましたが・・・

なんだよその安心したよーな顔。下平に教えたら僕がポジション取られちゃうと思ったの?
1月ちょっとでモノにできるほど俺達のMBってポジションは甘くないだろう?

年月を積み重ねてきた者の自負。
高代先輩の考えを知り、安心した様子の久場先輩でありました。思ったよりも平和的に解決しましたな。
とはいえ素直な下平くん。自身が教わる立場にあるということは自覚している。この試合でも勉強させてもらう。
何とか吸収できるものは吸収していかないとですなぁ・・・

しばらくゲームが進むうちにAチームとBチームで点差がつき始める。
それは仕方がない。何しろBチームは上げる所が実質五十嵐先輩一人となっている。
その先輩もスパイクを決めるのには苦労している。松方の作戦でブロックを減らしてレシーバーを増やされたからだ。
ブロックから離れてコースを狙えるようにしたのなら、ブロックそのものの枚数を減らせばいいわけか・・・納得だが嫌らしい。

こういうところでMBのスパイクが使えないのは厳しい。散らす効果も見込めないわけですからねぇ。
得点を封じられて厳しいBチーム。と、ここで家守先輩から山縣先生に提案。

僕・・・セッター辞めちゃダメですかね・・・
僕じゃどーやったって松方みたいなトスは上げられませんし・・・

そのように述べる家守先輩。しかしどうやら諦めてしまったわけではない様子。
なるほど。家守先輩の代わりに山縣先生がトスを上げるのか。
そして家守先輩は・・・スパイクに参加する!!

バックトスも綺麗に決めてみせる山縣先生。さすがである。
そして家守先輩のスパイクは・・・指先で相手のブロッカーの指に当てるという猪口才なもの。
当てて落ちてきたボールを拾い、再び攻撃。そして再度のぺちょんアタック。これはイラつく。イラッ。

まるで決める気がないようなプレー。
しかし3連続で家守先輩のスパイク。
今度プッシュしてきたら叩き落そうと考える大船先輩であるが・・・その突き出た腕を狙われる!!
うーむ、相手ブロッカーの腕に当てて決めるスパイクとは実に嫌らしい。
そして得点を決めてからが家守先輩の本骨頂。いえええい!!
コートを走り回るヒコーキパフォーマンス。まるでサッカーで点を入れた時のようなアピールである。下ちゃんどーんっ☆。

どうだ。僕の相手は疲れるだろ

自信満々にそんなことを言う家守先輩。いやはや全くその通りですな。
しかしこれは狙ってやっていることだったりする。

だって僕のトスじゃ松方ちゃんに勝てっこないし。だから思ったんだ。僕はスタメンじゃなくていいやって。
だけど、もし相手に厄介なプレイヤーがいてそいつを疲れさせたかったら僕を出してくれ。
プレーとムードで盛り下げて、ヘロヘロ骨抜き腰抜けにしてやる。
チームの役にたてるのなら僕はどこまでだっていやらしくなってやる!!

なるほど。これもまたチームの役に立つ一つの形というわけでありますな。
自分の特性を活かし、自分にしか出来ない方法でチームに貢献する。
こういうことを自ら進んでできる家守先輩は間違いなく格好いい。
侮っていたあの間白ですら素直に格好いいと思ってしまうぐらいですからねぇ。
でも顔がセクハラなので警告が出されます。イエローカードです。仕方がないね!!セクハラはいかんよ!!

何はともあれ家守先輩が攻撃に参加したことで囮が出来上がることとなった。
となれば家守先輩のブロックに付く分レシーバーの数が減る。五十嵐先輩も空いた隙間にスパイクを叩き込めるというものである。
家守先輩に触発されたか、スパイクを決めてドラミングを始める五十嵐先輩。ドコドコドコドコ。ゴリラー。
相手のムードを下げ、それでいて自分たちのムードを上げる。家守先輩の働きは結構大きいですな!!

Bチームも侮れない。となればレギュラーを狙う間白たちは黙っていられない。
そろそろ彼らの練習の成果も披露されるようでありますな。
白熱するレギュラー争い。一番アピールできるのは誰なのか・・・注目です。



第39話・小さな矜持  (2015年 15号)


家守先輩が攻撃に加わったことで自由さが増し、調子づく五十嵐先輩。
Aチームとの点差もジリジリ迫っておりいい感じだ。
逆にAチームはどうにかしないといけない場面。
特にノッてる五十嵐先輩とのレギュラー争いに燃えている間白としてはぐずぐずしていられない。

俺の持ってる全部でここは勝ちにいく!!

多少先輩達を侮っていた感のある間白だが、もうそんな気配はありますまい。
この2か月で身につけた全てを出し切ってレギュラーとなるためのアピールとするのだ。

ここでちょっと前、2週間前の回想。
下平くんにA速攻の練習を持ちかける松方。MBにはA速攻は必須技能だという。
中央からの速い攻撃を相手に意識させることでサイドからの攻撃も通りやすくなるのだそうな。なるほどね。

特に間白みたいなチビで貧弱なスパイカーはなるべくフリーで打たせてやらないと・・・

間白はパワーで勝負するタイプじゃないですし、ブロックがいっぱい付かれると厳しいですわな。
そのためにも下平くんがMBとして立派に囮役を務める必要があるわけだ。
しかしこのA速攻の場合だと片脚跳びにならない気がするんだがどうなんだろうか。
まあ両足跳びの練習もしといた方がいいとは思いますけどね。

さて、クイックのタイミングで跳ぶ下平くん。
その下平くんを飛び越して間白へトスする松方。ほう。
間白が言うには相手のブロッカーを騙すには本気で打ちに行かないとダメなんだよとのこと。
なるほど。スパイクを打ちに行ったはずなのにセッターに騙されたと思うぐらいでないといけないわけですか。
そしてその回想の通り、この試合でも本気で打ちに行ったはずの久場先輩を飛び越えて間白に繋ぎ・・・決める!!

後ろから跳んできた間白の速さに驚く面々。金田がいい顔してる。
これはバッククイック。後衛の選手が前衛の速攻と同じタイミングでバックアタックを打つ高等技術。
セッターの目の前で打つAクイックでもアタッカーとの呼吸が完璧に合わないと綺麗に決まらない。
それを後ろから跳んでくる仲間に合わせる。セッターとしても高い技量とコンビの息の合い方が求められる技術だ。

凄いけれどもパワー派の大船先輩に言わせればちょこざいな技。
まあそう言われてもね。間白には大船先輩のような高さはないし、五十嵐先輩のようなパワーは無い。
まともにぶつかったら中堅校のブロッカーにも競り負ける。

だから、俺は逃げるんスよ
どんなチームが相手でも、どんなブロッカーが相手でも。このスピードと小手先で全部かわしきってやる・・・!!
チビでもアタッカーで活躍できるって証明してやりますよ。

自身の伸ばすべきところを理解している間白。
鮫島先輩に煽られた時は負けん気を発揮していた感じではありましたが・・・
精神的には逃げず、物理的にかわしてどうにかするという感じでありましょうか。
かわしながらも前へ進む。逃げるとは言っているけど前へ向かう為に逃げる。そういう闘い方もありでしょうな。

それぞれの特徴をアピールし、打ちあいになってきたこの試合。白熱してますなぁ。
そんな中、ブロックを振り回されている下平くん。これについにキレちゃう猫田先輩。おやおや。
とはいえ猫田先輩も別にブロックに成功しろと言っているわけではない。
シャットアウトできなくてもちゃんと食らい付いていってコースを限定できれば後衛がレシーブ出来るようになる。

バレーのディフェンスってのは、レシーバーとブロッカーの共同作業なんだよ!!

ふむ。いいこと言いますな猫田先輩。そこは頭に入れておかないといけないところだ。チームスポーツなのだから。
とはいえMBを学び始めたばかりの下平くんとしては難しい。どうしても囮の動きに翻弄されてしまう。
そんな下平くんに山縣先生から一言。

下平。戦う相手を間違えとりゃあせんか。MBの敵は相手のMBではない。相手のセッターだ

確かに起点となるのはトスを上げるセッターである。
ならばそこを観察し、上げる先を読むのがMBの戦い方となるわけでありますな。
ちなみに上げるだけじゃなくセッターがツーアタックを決める場合もあるのでそれも警戒しないといけない。
うーん、こうしてみると本当にMBってのは考えること、やることの多いポジションですなぁ。大変だ。
今の内に沢山学んで身につけておかないとですな。



第40話・感謝  (2015年 16号)


IH予選を目前にし、選手たちがそれぞれに切磋琢磨している。
ポジションが被る選手がいないためちょっと目立たなくなってる野々原さんが寂しい。
MBとしてはこれも警戒しないといけないので大変ですなぁ。覚えること多い多い。

カットが乱れて難しい体勢からでも速攻を使う松方&間白ペア。
見事なものであるが、その凄さはしっかり理解している下平くん。ブロックで食らいついて見せる。
その結果、サーブの方向が限定され・・・猫田先輩も惜しいところまで行けるようになる。むう、届かないか。

点は取られたものの、今のはなかなかいい形でした。松方も少し警戒を始めている様子。

下平くんは松方のことを凄いセッターと褒めている。自分の予測なんて全部お見通しみたいに裏をかかれて、と。
それは裏をかかれているといよりは思考を先導されている部分が大きそうですな。
まだまだフェイントとかに引っかかりまくってそうですし。
山縣先生も予測は駆け引きの半分でしかないと述べる。

ただ相手の思考を推測していては戦いでは後手を踏むことになる。
お前が松方を騙せ

これは結構な無茶振り。けどそれをやるのもMBの勤めである。

さて、Bチーム。五十嵐先輩のスパイク。それを見事に受けてみせる間白。
体全体を使った家守先輩のようなレシーブ。間白も格好の良さよりも大事なものが見えてきたようですな。

ここからAチームはどう来るか。間白の即効か、裏の高代先輩か・・・裏だ!!
間白を囮にしたプレー。これはフリーで打てる。
かと思いきや、そこに飛びだしてくる下平くん。ばっ。
どうやらこれは山縣先生の狙い通りであるらしい。

MBの敵がセッターであるように、セッターの敵もまたMBだ。
お前が松方を見てトスと予測しようとするように、松方もまたお前を観察している。
バカのふりをしてトス直前に間白に目線をやってみろ

なるほど。松方はその視線のフェイントに騙されたわけでありますな。
考えを予測するだけではなく、考えを先導する。これもまたテクニックである。やったぜ。

ブロックに飛んでいるのは下平くん1枚。残りの面々はレシーブの構え。これならば打つスペースはありますまい。
となれば高代先輩が狙うのは下平くん。ブロックを弾き飛ばして相手コートに落とさせるのが狙いの強打。
跳んでいるうちにこの辺りの判断が瞬時にできるのはさすがですなぁ。

高代先輩は言っていた。1月ちょっとでモノにできるほどMBってポジションは甘くないと。
モノにならないとわかってる人間に教える時間はもしかしたら時間の無駄なのかもしれない。

だけど高代先輩は、いつだって本当に丁寧に教えてくれた!!
3年間で最後の大会前の貴重な時間を、僕なんかの為に!!
高代先輩が割いてくれたあの時間をムダなものにしない為には、今このブロックで負けちゃダメだ!!
折れるな。曲がるな!!ハリガネ!!!

よもやここでハリガネが出てくるとは!!
なるほど。固定するという意味ではこういう場面がまさにピッタリな話でありましたな。
そうか、最初かMBとして活躍することも含めてのタイトルであったわけでありますか・・・いや、これは驚いた!!

意志の力によるものか、見事に高代先輩のスパイクをブロックしてみせる下平くん。
ううむ、この試合中に驚くほどの成長を見せておりますなぁ。
ハリガネのように折れず曲がらずのブロック。これは強力なアピールとなりそうです。
ジャンプもなかなか高いし、これはいいMBになれるのではないでしょうか。
サーブの時は相手の思考を読んでしっかり使い分けているわけですし、読み合いも意外と得意そうですしねぇ。
うむ、下平くんのレギュラーの可能性も出てきたのではないでしょうか。楽しみだ。



第41話・笑顔  (2015年 17号)


遂にブロックに初成功する下平くん。
この試合が始まったころはついていくことすら出来てなかったのにねぇ。急成長だ。
まあ、これも高代先輩による地道な教育があってのこそでありますがね。

しかし手を固定するという特質がここまでブロックで生きてくるとは。
これならば鯨川さんのスパイクにも対抗できるか。いやさすがにそこまでは・・・?

止められた高代先輩。しかしそこで折れる人でもない。
こういう手段もあるんだぜと空中で体をねじってのターン打ちを披露する。
いいですねぇ。自身のアピールにもなるし、下平くんにそういうのもあると見せている。いい先輩だ。

俄然勢いづく両チーム。
それぞれがそれぞれの持ち味を発揮し出した。そりゃケイちゃんもみんな楽しそうと述べますわ。実際に楽しそうだ。
そしてついにこの瞬間がやってくる。

家守先輩ではできなかったバックトス。しかし山縣先生がセッターとなった今ならば出来る。
練習してきた片脚跳びのスパイク。それを決める時が来たのだ。

僕は幸せものだ。
サーブくらいしか能がなくて、肝心な時に跳び損なうダメな僕を、こんなに信じて応援してくれる人達がいる!!
これまで一人じゃできなかったことも、皆が力を貸してくれるから。こんどはできる!!!

見事に跳び、見事にスパイクを成功させた下平くん。
その下平くんを祝福するBチームの皆。いやあ、いい光景だ。

あぁ、そうか。僕はやっとスパイク決められたんだ

小さい頃からそうやってスパイクを決めるのが夢だった下平くん。
アキレス腱を切ってからは特に断念せざるを得なかったのでしょうが、ここで夢を叶えることができようとは。
そりゃあもう、満面の笑みも生まれるってものでありますよ。
できれば同じ側のコートで喜びたかったという間白たちの感想もいい感じだ。

僕一人の力じゃきっとできなかった。みんなのおかげで片脚跳びスパイクできるようになったよ!!

ありがとうの言葉と共にそう述べる下平くん。
いやあ、いいですねぇ。爽やかだ。これには金田もにっかりスマイル。気持ちのいいことです。うむうむ。

というわけで試合終了。結果としてはAチームが逃げ切った形となる。
しかしそれよりも気になるのはレギュラー。
オポジットの野々原さんは確定枠なので問題ない。
セッターは松方。まあここは無難ですな。家守先輩は特殊なやり方で頑張ろう!
ウイングスパイカーは大船先輩と間白。五十嵐先輩は残念であったか・・・ううむ。
リベロは金田猫田先輩を相手との相性を見て使うとのこと。猫田先輩の方が相性いいことあるんですかね?
そして運命のミドルブロッカーは久場先輩と・・・下平くん!!

確かにブロックにスパイクにと急成長を遂げていましたが、まさかのレギュラー入り。これは驚いた。
ここから大会までに更に伸びて行くであろう成長性も見込まれたのでしょうか。
ううむ、こうなるとかなり残念そうな高代先輩でありますが・・・久場先輩としてはまた複雑な気持ちになりそうですなぁ。

レギュラーを獲得した1年生たち。
先の試合中は部全体がいい雰囲気となっていましたが、こうなるとどうなるものか。
大会本番に向けて一致団結できるようになっていって欲しいものです。



第42話・8月  (2015年 18号)


遂に勝ち取ったレギュラーの座。
これには下平くん自身もビックリの様子。
しかしここで異議を唱えるのはやはりこの人、大船先輩。
過去の自分の経験から抱く先輩への想い、チームへの想い故に口にしなければならない。いいんスかそれで、と。

確かにこいつのサーブはすげースよ。けど、万全じゃない人間はコートに立つべきじゃない。
次にコイツが跳び損なう時がこの代の終わりになるかもしれないんスよ?

立ち上がりそのように述べる大船先輩に対し・・・下平くんも立ち上がる。

万全の状態ではないと言われるが、右足のケガ自体は完治している。
しかしそのトラウマは克服できておらず、どうやったら治るかの見込みもついていない。
もしかしたらこの先また皆に迷惑をかけることになるかもしれない。

だからせめて・・・勝ちます
サーブと片足跳びスパイクと高代先輩が教えてくれたブロックで。
どんな相手も切り崩して、跳び損なった分も取り返します!!
もちろん僕一人の力で試合に勝つことはできませんけど。
だけどこのチームでなら。こんな凄いメンバーならきっと勝てます!
まだまだ先輩達に教えてもらいたい事たくさんあります。
8月のインターハイ優勝するときまで、僕達にバレーを教えてくれませんか

前向きな想いを口にし出したと思ったら、先輩達も驚くようなことを口にする下平くん。
インターハイの優勝。即ち日本一になると言っているのだ。
インターハイ出場を目標としていた先輩達にしてみればビックリして当然のことでありましょう。
まあ、野々原さんとしてはその目標自体に違和感があったみたいですけどね。

桐城や駿天堂が優勝目指してやってんのに、出場目的の俺達が勝てるのかって。
俺達も出場じゃなく、優勝を目指そうぜ!!

確かにその辺りの志の違いってのは結果に出そうな気がしますよね。
曲がりなりにも結果を出してきている高校なんだし、ここは大きく出ていきましょうや!!

下平くんの思わぬ言葉に大船先輩もまた心を動かされている。

そんなシンプルなことだったか。
1年だとか3年だとか万全だとかそうじゃねーとか関係ねえ。
1年前のあの時、勝っちまえばよかったんだ。
そうすりゃ先輩と一緒にプレーすることだってあったかもしんねーのに

大船先輩の後悔は自分が出場することで先輩の出場の機会を奪い、負けたことにあった。
だが負けなければどうだったか。富永先輩が望んだ勝利を得ることが出来たのならそんな後悔もせずに済んだのではなかろうか。
まあ、あの敗北があったからこそ先輩を大事に思う今の大船先輩が出来上がったわけではありますが。
今度は下平くんの、後輩の言葉を受けて更に新しい大船先輩が出来上がろうとしている様子。

やりましょう。勝ちましょう!!!今度こそ!!!

ともすれば無謀に思える下平くんの言葉であったが、いい感じにチームに浸透していっている。
そこに山縣先生の一言。日本一になるには練習量が足らんな、とのこと。

もしお前達が本気なら、予選開始までの2週間校内で合宿をはる。
かなりきつい練習になるが、やるか?

そのように言われれば返事に迷うこともない。もちろん肯定だ!!
日本一を目指すというモチベーションの向上。
間白たちは既に抱いていたようであるが、その意識を部全体で持つことが出来た。これは大きい。
レギュラー争いでギクシャクしそうだった人間関係も下平くんの一言のおかげで一気に吹っ飛んだ様子。
部全体で一丸となって目標に向かう。その意識を持って合宿に臨む。いいタイミングでありましたなぁ。
チームの絆も深まるでしょうし、一気に強くなるのではないでしょうか。

というわけでわずか1ページちょっとで合宿終了。早ッ!!
日常イベントとか色々出来そうな感じだったのに思い切って飛ばしましたなぁ。
そしてその勢いのままインターハイ東京予選初戦がはじまることとなりました。

豊瀬は1月の新人戦でシード権を獲得しているため、初日のリーグ戦は免除されている。
初戦の相手である私立冬樹高校は無敗でリーグ戦を勝ち上がったようであるが・・・何となく気の抜けた感じがしますな。
豊瀬のシードをたんにくじ運が良かっただけと侮っているようでは・・・
いやそれにしても、何というか。ガラ悪いな豊瀬!!
主に五十嵐先輩と大船先輩のせいな気もするが、何ともガラの悪い雰囲気である。
まあ、ここに山縣先生が混じってないだけマシと考えるべきであるか。

冬樹には下平くんの中学のバレー部同期がいる。
となればもちろん下平くんのサーブのやばさは知っている。
けど、あの凄さは口で言っても到底伝わらないでしょうからねぇ・・・
ただでさえ相手を侮っている冬樹の先輩達には言うだけムダな感じがある。

てなわけで次回からはインターハイ予選が開始となります。
合宿を経て成長した豊瀬の力はどれほどのものか。楽しみでありますな。



ハリガネサービス 6巻


第43話・開戦  (2015年 19号)


いよいよ始まる勝負の時!!
インターハイ・・・高校バレーの頂点を決める夏がはじまる。

というわけで初戦のオーダー。面子はレギュラーとして選ばれた面々・・・と思いきや下平くんは入っていない。あらら。
スタメン出場できないことに対して気落ちする下平くん。
それに対し間白。相変わらず自覚がないと述べる。

このチームがどこまで勝てるかの鍵を握ってるのはお前なんだよ!
こんな初戦ごときでお披露目する必要ないだろ。もっと大事な試合までベンチでどーんと構えとけや。
俺らが日本一になるんだろ?

うむ、間白も先の桐城との練習試合で下平くんの重要性を改めて認識しているようですな。
逆に言うなら、強豪以外は下平くんのサーブ抜きでも勝てるぐらいでなくてはならないわけだ。
まあ、今の豊瀬のレギュラーなら大抵の相手は問題にならないとは思いますけどね。

とはいえ相手の冬樹高校は随分とバレーに力を入れている高校の様子。
2階にはぎっしりと冬樹の応援団がひしめき合っている。
公立校としては予選で部の応援に生徒が駆り出されるようなことはないだろうしなぁ・・・差があるのはやむを得ないか。
その空気でホーム感を得ているのか、どうも態度が横柄なのが気になるな。

まるでスパイクのような高さのジャンプサーブを放つのは冬樹のエース。ブラジルからの留学生、レオナルド=シルバ
予選では1試合に10本のサービスエースを記録しているらしい。
ふうむ、これが冬樹の自信の源というわけですか。留学生頼りというのはどうにも、なぁ。
冬樹高校の監督は日本の高校生にアイツを止められるわけないとか思っているようですが・・・フラグ立てに来てるとしか思えないぞ。
東京3強を崩すという心意気はいいのですが。

そのレオナルドがジャンプサーブをふかし、コート外へ打ち込んでしまう。
それだけならばいいのだが、サーブは一直線にケイちゃんに向かって飛んでいく。危ない!!
この危機に反応したのが下平くん。持っていたボールを打って飛んできたボールを迎撃する。おぉ・・・!!
正面からでも難しかろうに、横から迎撃とか本当にピンポイントで捕えないと出来ない芸当である。
それをしっかりやってのける。下平くんの凄さが改めて分かる場面だ。
逆に凄すぎて狙ってやったなんて信じられない場面とも思われる。常識外れなのは間違いないですからねぇ。
それにしてもへたりこむケイちゃん可愛いですなぁ。お、おぅ。

そういえば冬樹には下平くんのサーブの恐ろしさを知る同期がいましたな。
この子は今狙ってやったのも分かってそうであるが・・・先輩に意見が受け入れられる空気じゃない冬樹。うーむ。

練習は終わり、いよいよ試合開始。
ちなみにマネージャーはベンチに一人しか入れないのでケイちゃんは2階席から応援することとなる
あの冬樹応援一色の中に一人で放り込まれるというのか・・・キツイな!!
まあ、試合が進めばそのうちこの応援団も声が出なくなるんじゃないかと思えますが。

さて、まずは冬樹のサーブ。早速レオナルドのジャンプサーブから。
随分と日本人を侮っている様子のレオナルド。
女も選手もチンチクリンばかりとのこと。その割に手を出したりしてるんですよねぇ。ゲスなことだ。
しかし張り合いがなさすぎるとか考えながら放たれたジャンプサーブは・・・金田に片手で上げられる。欠伸付きで。

高校初の練習試合で桐城の鯨川のスパイク上げた金田だぞ?今さらその程度のスパイクサーブ効くかよ!!

張り合いがなくて退屈そうな金田に変わりドヤ顔を決める間白。これも役割分担だ。
いやしかし、やっぱり金田。決める時は格好いいですなぁ・・・

さて、ネット際に上がったボールを松方がトス。大船先輩に上げる。
最初はエースに上げてくると読んでいた冬樹。ブロッカー2枚の万全の態勢。
が、そのブロックの上を軽々抜けてスパイクを叩き込む大船先輩。
練習の時点でスパイクの打点が高いのは分かってたはずなのにねぇ・・・侮ってちゃんと見てないから。

ワンマンチームは絶対的な存在が揺らげば一気に瓦解すると松方。
ジャンプサーブを止められた時点で揺らいでそうだが、改めて攻撃。スパイクで狙う!!
狙いはしたけど、レシーブ損なって顔面直撃するのはさすがに大船先輩も想定外。
うん、わざとじゃないからしょうがないですよね。そっちも試合前にやらかしてるんだしお互いさまってことで!ザマァ!!

どうやら初戦は苦労することもなさそうな雰囲気。
合宿で強化された豊瀬の力を安心して見守るとしましょう。



第44話・パンチ  (2015年 20号)


強烈なスパイクで失神KO!!
かと思ったらすぐに目が覚めた様子のレオナルド。良かったというべきかどうか。
わざとじゃないけど、とりあえず謝っておくことで相手とは紳士性の違いを出してみる大船先輩。いいね。

さて、無様に倒されて火が付いた様子のレオナルド。
バックアタックで弾き飛ばしてやると意気軒昂。
その前に顔面直撃スパイクを食らいそうになっていたが、今回は避けることに成功した。ヒョッ!?
一発目はわざとじゃなかったかもしれないが、これ実はわざと狙ってないかね大船先輩。
避けられてアウトになるようなスパイク打ったのでは味方に謝らねばなりませんな。
今のところ点が動くたびに頭を下げている大船先輩。らしい話である。

徐々に観客の間にも豊瀬の力が伝わりつつある。
それを更に分からせるために・・・金田が走る!!

相手のサーブは狙ってではない、偶然のネットインサーブ。
普通は出たらラッキーな代物であり、予想してなければ拾うのは困難な代物。
特にバックにいるはずのリベロが拾うようなものではない。
にもかかわらず、凄まじいダッシュで間に合わせる金田。しかも両腕で綺麗に拾ってしまうという。こりゃすごい。

あいにくウチはそのパターンはいっぱい練習してきてるんでね

普通はありえないネットインを常に念頭に置く練習をする豊瀬。
ある意味ムダな気はするが、そういうラッキーを潰せるのは大きいといえるかもしれない。

Bクイックの速さで魅せる間白と松方。
更にブロックの高さで魅せる久場先輩に高代先輩。この辺りの個々の技量の高さはさすがでありますな。
そしてブロックが生きていればコースが限定され、リベロが楽になる。
レオネルドのスパイクが強力といっても鯨川さんほどのものでないのなら、止めるのは難しくないって話ですさね。

エースのスパイクが決まらない以上、冬樹の点は相手のミスを待つぐらいしかない。
結果、1セット目から10点以上離される展開となる。仕方がないですな。ハッハッハ。
しかし、この状況になりながらもエースに頼るしかない監督とチームメイト。だらしないというか何というか。
そうやって1人の力に頼って勝ち進めると思っているようではなぁ。

その頼られたレオナルドはすっかり金田に恐れをなしている様子。おやおや。
アイツに触らせちゃダメだとブロックに弾かせてのブロックアウトを狙う。
が、コート外に飛んだボールにもしっかり追いつき、ボールを殴りつけて上げる金田。
そんな一見乱暴な上げ方であるにも関わらず、ちゃんとネット際のセッターに返るようにしているという。うわぁ。

さすがにアレはマネできんわ・・・
身体のどこに当ててもコントロールできちまう天賦のボール感覚!!

いやはや実に格好いいですなぁ金田。
この活躍っぷりに早くも冬樹の応援団沈黙。あんなやつからどーやったら点取れんだよと来ました。ハッハッハ。
しかし強豪校のリベロはどこもこのクラスみたいですからねぇ。冬樹が強豪校入りするのはまだまだ荷が重いってことですわな。

会場がどよめくプレーをしたのに退屈そうな金田。
普段もっとずっと面白い相手――下平くんと遊んでいる以上、このぐらいの相手では物足りないって話ですわな。うむ。

初戦は余裕ムードの豊瀬。
しかしここまで余裕なら控えの選手も出して上げてよさそうな感じじゃなかろうか。
秘密兵器な下平くんはさておき、五十嵐先輩とかにも活躍の機会が欲しい所でございます。



第45話・朧  (2015年 21+22号)


2セット目も大差で決めつつある豊瀬。
久場先輩はなんだかどんどんイケメンになっていきますなぁ。

俺らがこんな公立校にと未だに言っている冬樹の選手たち。そんな意識だから勝てない。
というか、チームプレーのバレーで、助っ人外国人1人に頼って強豪校の仲間入りしようなんて考えが既に間違ってますわな。

さて、その豊瀬の研究を行っているチームがある。
大船先輩は一年ですっかり高校のエースらしくなったそうな。ほほう。
金田はすっかり退屈モードで、両腕使う気にもならない様子。おやおや、ハッハッハ。
そんな豊瀬の選手たちを見て、個々の技術が去年と比べてケタ違いであり、全く別のチームと考えた方が良いと述べる。

けど・・・あんな雑な繋ぎやってるようじゃ、おれたちには勝てないよ

そう述べるのは坊主頭の選手たちが並ぶ亜細亜第一高校。
うーん、なんだろう。この・・・敗北フラグを丁寧に立てに来てる感じは・・・
フラグの立て方も雑ではなく丁寧にやらないとってことなんでしょうか。どうなんだ。

ともかく、豊瀬はインターハイ初戦を快勝。一人2階で喜ぶケイちゃんが可愛らしい。

さて、次にコートに現れるのは先程研究を行っていた亜細亜第一。
この高校こそ、去年のインターハイ予選で豊瀬が負けた高校である。
特徴はその繋ぎ。難しいボールでも食らいついて拾う、粘り強さが持ち味のチーム。
平均身長169cmで突出した選手もいないのに新人戦でベスト8という結果を残しているという。ほほう。
何であれ、特色の出ているチームというのは強みがあるものですなぁ。

去年の豊瀬もその粘り強さによって最後は自滅に近い形で負けている。
自滅した張本人である大船先輩にとって忘れられない相手でありますな。

ぜってーブッ倒してやる!!アイツらを倒さずに俺らは前に進めねぇ!!

やはり意識している大船先輩。それはそうか。
去年とは比べものにならないぐらいに強くなっている豊瀬。今年は雪辱を晴らしたいところですな。

さて、亜細亜第一の相手は竜泉学園。
うさん臭いグラサンのオッサンが監督を務めるチームである。
そのうさん臭さも相当であるが、それより気になるのはメンバーに中学東京選抜――松方たちの同期がいるということ。
高校ではバレーをやらないと言っていたらしいが・・・ふうむ?

中学東京選抜の控えMB、朧幽哉
その朧のスパイクは亜細亜第一のブロックに触れることなく相手のコートへと落ちる。軽く、すとんと音を立てて。
何度も決まる軽い音。会場に響く軽い音。すとんすとんすとんすとんすとんすとんすとんすとんすとん
結果・・・繋ぎに長けて粘り強さに定評のある亜細亜第一がまさかの完封負け。お、おやおや・・・
朧幽哉・・・選抜で活動した4か月の間、一度もブロックされなかった男というのは伊達ではないということか・・・

2回戦からいきなり強敵がやってきそうな感じである。
同じMBとしては下平くんも気になる存在でありましょうが・・・一体このスパイクはどういう原理なのか。
というか、必ず軽くすとんと落ちるのならブロックの側に拾う人が後ろからくればいいんじゃなかろうか?
そういうことをしても無駄なのだろうか?うーむ、気になる・・・!!

それにしてもアイツらを倒さないと前に進めないとか言ってた大船先輩はどんな気持ちでいるんでしょうか。
第一目標を見失った感じでありますが・・・まあ、最終目標はもっと先ですしね。気持ち切り替えていきましょうや。



第46話・騙り屋  (2015年 23号)


1年前のインターハイ予選。豊瀬高校は最後まで亜細亜第一高校の守りを崩せず敗退した。
あの日から俺はアイツらにリベンジする機会をずっと待っていた。
1年後の今日、ようやくその日が訪れる。はずだった

やっぱり無念の大船先輩の述懐が流れて来ております。
この肩すかし感は大変そうだ。しかし因縁の相手が完封負けとはなぁ。何とも微妙な気分でありましょう。

東京ベスト9常連の亜細亜第一が完封負け。これには観客もざわめく。
同じように大焦りしている五十嵐先輩。動揺が顔に出過ぎだ。
とはいえ、確かにあの朧という男のことは気になる。同じ中学東京選抜である松方たちに話を聞きたいところである。

さて、敗れた亜細亜第一の選手たち。悔しそう。
そんな悲嘆にくれる選手たちの前に現れるのは竜泉のうさんくさい監督。Hello!!
何をしに来たのかと思ったら、亜細亜第一が偵察で撮っていた豊瀬のビデオが欲しいとのこと。
なるほど。確かにもらえるものであれば欲しいですわな。
しかしこのタイミングで要求してくるとは・・・亜細亜第一の選手も監督も怒りだす。が――

もったいねえなあ

そう述べて、語り出す竜泉の監督。
今回敗れた亜細亜第一に代わり、ワレワレが日本一を目指してやるよとのこと。

できるわけないと思うか?だけど可能性はある。そのビデオを貸してくれたら、可能性は少し大きくなる。
このデータで我々が豊瀬に勝てば、それは君達の勝利でもある。
竜泉が勝ち続けるかぎり、君らの夢は終わらねえんだよ

ふむ、確かにスポーツ物では敗者は勝者にこれからを託す展開がよく見受けられます。
しかし健闘したならともかく、渡り合うことも出来なかった相手にそのように言われてもなぁ・・・
感動的なセリフであるのかもしれないが、やっぱり勝者がいうセリフではないし、とにかくうさんくさい!!

そのうさんくさい監督の名前は雨竜。どうやら山縣先生の知り合いらしい。

トルコの五輪代表コーチにまで登りつめたお前が、日本の高校バレーに戻ってきて何をするつもりだ?

どうやらこの雨竜、単にうさんくさいだけの男では無かった様子。
これはなかなかに一筋縄ではいかない相手のようですなぁ・・・
それにしても、このページの絵面だけみてると高校バレーの物語何だかどうなんだか分からなくなってくるな。

さて、昼食をいただきながら朧のことを話す松方。
とはいえ彼等にもわからないことだらけだそうな。

体力測定のほとんどの種目で朧は最下位だった。
俺達があいつの異様さに気づいたのは紅白戦が始まってからだった。
駿天堂学院で固められたAチームと比べて学校もバラバラのBチームはいまいち呼吸が合わず・・・

点差をつけられているBチーム。それでも極端な差でもない感じはしますな。
ともかく、その紅白戦の中で見たこともない奇妙なスタイルを見せる朧。
不思議な動きで相手にブロックされることなくボールを相手コートへと落としていく。ほほう。

だけど・・・どんなに紅白戦で活躍しても朧が公式戦のコートに立つことはなかった。
結局中学東京選抜は駿天堂ありきで、他の学校のメンバーはスパーリングパートナーみたいなものでした

紅白戦を見る限り、松方たちは控えだったとはいえ実力的に劣っていたとかそういう話ばかりではないようですな。
出身の学校名によってコートに立てるかどうかが決まる。これは不服を覚えて当然でありましょう。
高校では駿天堂をブッ倒してやると考えても仕方がない。

というわけで、同じ境遇である朧を同じ高校に誘う松方。しかし首を振る朧。

・・・もういいんだ・・・バレーも・・・結局・・・ここでも見つからなかった・・・

この男は一体何を求めてさすらっているのであろうか。
この発言を聞く限り、バレーは辞めたかのような口ぶりだが、今日ここで再会することとなりました。
うさんくさい監督に見出されたのだろうか?本人はバレーで求める何かを見つけられると考えたのだろうか?

結局朧の謎については全く分からないまま試合に臨むこととなる豊瀬。
このままでは亜細亜第一の二の舞となりかねないが・・・はてさてどうだろう。
山縣先生の観察力に期待したいところです。



第47話・アウトロウズ  (2015年 24号)


山縣先生から提示される次の試合のスターティングオーダー。
見る限りメンバーは前の試合と一緒である。
下平くんもとりあえず温存という形でありましょうか。
まあ、肝心の下平くんが朧相手にビビってる様子でありますしなぁ。様子見も止む無しか。

さて、対戦相手である竜泉。ギリギリまで試合前の練習をしに現れない。
どうやらその時間を使って対戦相手である豊瀬の研究をしている様子。

バレーは経験値のスポーツだ。という言葉がある。
コートの中では状況が一瞬一瞬様々に変化する。
だから小さい頃からプレーしてたくさんの状況を知っていれば、咄嗟に似た状況を思い出して正しく対処できるという考え方だ。
実にナンセンスだ!経験したことない状況に弱いと自ら告白してるようなもんじゃねぇか
事実五輪ではこれまで回転レシーブに始まり、一人時間差、バックアタックと、
誰も見たことの無い戦術を考案したチームが金メダルを獲得している。

そのように述べる竜泉の雨竜監督。
豊瀬はバレー経験値の高い選手が多く、凝り固まったバレー観の外側からの攻撃に脆いとのこと。
ふむ、竜泉はそういった常識の外側にいる者の集まりということだろうか。面妖な感じですな。

その面妖さの極地であると思われるのが朧。
握手した猫田先輩に言わせると、あんな気持ち悪い感触の手、初めて触ったとのこと。
ブンブンしてる猫田先輩が可愛いですな。

さて、始まる不気味な竜泉学園との戦い。
まず警戒するべきなのは朧のスパイク。打たせないためにはサーブで崩していくのが得策。
そう考えて松方がサーブを放ち、相手はレシーブをミスするのだが・・・こぼれた球を足で拾う竜泉のリベロ小林。
確かにルール的に問題ないのだが、それで上手く上げてみせるとは・・・蹴鞠でも嗜んでおられたのですか?

上がった球をスパイクするのは竜泉のWS渚島。
妙な回転をかけたスパイクを打ってきている。打った時に妙な音がしたというが、それはもしや・・・

音の正体は直後の渚島のサーブで分かる。拳で打っていたのだ!!
もちろんそんなところで売ったら素直な軌道になるはずはなく、妙な回転の結果、レシーブを避けるようにボールが曲がっていく。
この曲がり方・・・まるで下平くんのサーブのようである。
ある意味見慣れたものではあろうが、敵に先にやられるとは驚きですなぁ・・・!!

下平くんと同じサーブが打てる。これはヤバイ。
とはいえヤバイ技にも種類がある下平くんとはさすがに違うんでしょうな。
あの打ち方では曲げてコーナーを突くとか器用な芸当が出来るとは思えない。
そもそも金田であれば大きく曲がったところでどうということはないだろうし、基本金田が取ればいいんじゃなかろうか。
何にしても点数が先行されている現状はよろしくない。早く流れを取り戻したいところだ。



第48話・ナックルサービス  (2015年 25号)


ボールが目の前で身体一つぶんズレるサーブ。
下平くん以外にそのようなサーブを狙って打てる者がいるとは・・・
まあ、金田に言わせればずれたとこに腕動かして取ればいいとのことでありますが。実際にやった男の言葉は違うなぁ。

サッカーでは無回転のシュートを打つとき、足の横の硬く出っ張った骨ではじき出すように蹴るという。
下平くんも手首をハリガネのように固定しているし、回転を殺すには硬くて反発力が高い所で打つのがいいわけでありますか。
しかしハリガネサービスならぬナックルサービスとはそのまんまというか何というか。

このサーブに対し手はありますと松方。今回は早めに手を打ってきましたな。
その策に従い、全員が前へと押し出す。コートの後ろの方ががら空きの形となる。ふむ、これはどういう布陣なのか?
見ていれば分かるかと思いきやサーブに失敗する渚島ことカモメ。あいやー。
やっぱり変化は出来ても精度はそんなに高くないんじゃなかろうか。
松方の攻略法が正しかったのか、そもそもどういう攻略法だったのか分からずじまいとなっちゃいました。あほー。あほーっ。

気を取り直して再開。
亜細亜第一のように完封されるようなことはないが、現在の得点は14-8。ジリジリと離されてきている。
竜泉のトリッキーなプレーにペースが乱されて本来の実力の半分も出しきれていないのが原因である様子。
うーむ、この辺りは雨竜監督の思惑通りってところでしょうか。

ならばこの状況で出すのはこの男。異色の技術の集団に引けを取らない異色の技術を持つ男――下平くんの投入だ!!
果たして下平くんの投入で流れを変えることが出来るかどうか。まずは策を与える山縣監督。
むう、どうやらやっぱり朧相手に臆してしまってるようですなぁ、下平くん。

最初から上手くやろうとしなくていい。
サーブとは違う。失敗しても次のチャンスが来る

そのように述べてくれる山縣先生。優しいですなぁ。
期待がかかっているわけですし、是非とも答えて頂きたい。のだが、まずはリラックスして臨んでもらいたいところであります。

が、がが頑張ります。

うむ、やっぱりそう簡単にリラックスはできないか。生まれたての子鹿のように膝が爆笑している下平くん。可愛らしいことですな。

ともかく試合開始。
竜泉のサーブを拾う金田。それに速攻で合わせようとする下平くん。
クイックでのスパイクなんて出来たのか?まあ、トラウマは毎回発動するわけじゃないし、出来ないことはないのか。

しかしこの速攻は打ち損じで失敗。朧のブロックに弾かれて豊瀬のコートにボールは落ちていく。
だが、まるでそうなることを見越していたかのように下に張り付いている豊瀬の面々。
ちょうど見切れてはいるが、大船先輩も含めて全員でフォローに来ている様子である。ほほう。

というわけでもう一回下平くんのスパイク。
これも弾かれて落ちるが、今度も仲間が拾ってくれる。もっかあイ!!

再度下平くんによるスパイク。
今度はブロックを3枚付けて確実に仕留めようとする竜泉。しかしこれは囮。
最初から片脚跳びスパイクを使う前にA速攻を2回行う。そう決めていたのだ。それが山縣先生の作戦だったのだ。
その作戦が功を奏し、ブロックは引きつけられた。
となればがら空きの状態・・・スパイクはもちろん決められる!!

高校の公式戦初登場。初のスパイクを決めてみせる下平くん。嬉しそう。
それと同じくらいに嬉しそうな様子を見せる豊瀬の面々。ツッコミは厳しいが祝福してくれる様子は見て取れるぞ。

・・・すごいな、下平君は。皆、表情が変わった

実力を発揮できず、どうにも戸惑いムードだった豊瀬。
しかし下平くんが入ったことで雰囲気を変えることができた様子。
うーむ、いつの間にかムードメーカー的な役割を担うようになっていたようですなぁ。
そういう役割は大事ですよ、本当に。流れを掴むためには重要であります。

まだまだリードは許しているが、これで流れが変わったかもしれない。
追撃を行い、どうにか1セット目を逆転して終わらせたいところでありますな。



第49話・ニュービーズ  (2015年 26号)


下平くんの投入で雰囲気と共に流れを変えたい豊瀬。
朧のブロックにビビって逃げたりしているが、まあ結果オーライ。
味方ではなくむしろ敵の調子を狂わせている下平くん。なかなか面白い状態ですな。

防御としてはミドルブロッカーという位置にありながら野々原さんや大船先輩ほども跳べていない下平くん。
しかしそれならばそれで、そこに来るだろうと予測してリベロが網を張ることが出来る。こんにちワ!!!
隙があるならばそこで待つ。チームプレイの醍醐味でありますなぁ。

下平くんの移動攻撃と見せての野々原さんのスパイク。
うむ、一つ技を見せることで別の人も動き易くなる。いい流れだ。
おかげで点差もじりじりと縮まり2点差。一気に行けなくもない感じになってきました。
しかし確かに高代先輩の言う通り、活躍していないのにプレーに大きな影響を与えてますな、下平くん。

まあ、あれだよね。皆コートの中で下平よりカッコ悪いプレーするの嫌なんだよね

核心を突く久場先輩。ああ、なるほど・・・
ま、まあ。それはそれで一種のムードメーカーみたいなものですし。うん。

流れを引き寄せられそうな展開。それを見てかタイムアウトを取る竜泉。さすがにいいタイミングで取ってくるなぁ。
竜泉側の評価としても、下平くんは大したことない。けどその1人に翻弄されているという感じ。これは悔しい。
とはいえまだリードしているのは竜泉。落ち着きを取り戻されると厄介だ。

試合再開。全員でサーブレシーブに入った竜泉に対し、セッターにレシーブをさせる間白。
こうすればトスを上げる選手がいなくなるという考えだ。
しかしそこで後ろから走り込んでくるのはリベロの小林。
何と頭でのトスを敢行する。まさか・・・!?いや、なぜわざわざ頭で!?
ああ、ルールでリベロがフロントゾーンでオーバーハンドパスしたボールはスパイク出来ないと決まっているのか。
ならば頭でトスを上げればルール違反にはならないと。なるほどなー。
ルールを知っていれば知っているほど虚を突かれるプレーなわけですな。

今のプレーで違和感の正体に答えを出す松方。
簡単にボールに足を出す。ボールをグーで打つ。更にヘディング・・・

おそらく竜泉学園はバレー初心者集団です。それも、何か別の上級者の

やはりそういう集団でありましたか。これは確かにバレーの常識の外にいる者たちですわなぁ。
しかしリベロの小林がサッカー経験者なのは分かる。あだ名もショーリンですしね。
だが、ボールをグーで打つカモメは一体何の経験者だと言うのだろうか・・・?そんなスポーツあったっけ?
まあ、少なくともバレーとしてはあまりやらないプレーであるし、翻弄されることに違いは無いか。
ううむ、こうしてみるとバレーは反則要素が少ないというか、色々と出来るスポーツ何ですなぁ。



第50話・作られた均衡  (2015年 27号)


竜泉学園はバレー初心者集団!!
朧のような例外はいますが、その大半は初心者、かつ他の何かのエキスパートである様子。
そういった者たちをまとめ上げる雨竜監督。見た目通りの曲者でありますなぁ。
そういえば下平くんもハンドボールの要素を片脚跳びスパイクに取り入れているのか。

シロートだかエキスパートだか知らねえが、こっちのペースで戦えてねえ原因ははっきりしてんな。
俺にボールが集まってねえからだ。もっと俺にトス上げろ。全部決めてやっから。

この場面でいきなりの大言の大船先輩。大船に乗ったつもりでいろってことですかね。ハッハッハ。
まあでも、エースが頼もしいのは大事ですしね。しっかり決めてくれるならそれでも良いさ。

さて、朧のサーブ。
沈みサーブとのことであるが、予想以上の沈み方を見せてきて驚く。
うーむ、松方が前もって知っていなかったら危なかったですなぁ。
朧はサーブコントロールもなかなかのもののようだ。

どうにか拾ったボールを松方。大船先輩へと繋ぐ。
言った通りに見事に決めてみせる大船先輩。
ふむ、こういう正当なパワープレイで押すのがトリッキーな相手には一番なのかもしれませんな。
とはいえリベロが下がっていた状態だし、防御に特化した選手がいたらどうなるか。

それはそうと、松方はやはり朧を一番警戒している
前の亜細亜第一との試合を見れば警戒するのも当然か。
しかし考えてみるとこの試合、ここまで一本も朧にトスが上がっていないという。
それなのに得点はほぼ均衡。うーむ、切り札の下平くんを先に切っている豊瀬としてはこれはよくない展開ですなぁ。
ここは更なる切り札である家守先輩の出番とかそういう話には・・・意外となったりして。

焦る松方であるが、ここで下平くんのサーブの順番が回ってくる。
さあ、公式戦での初サーブ。ここは稼いでおきたいところであります。

狙うは無回転での変化を付けてのコーナー。
普通にコーナーを狙うだけでも難しいのに無回転で変化させて隅を狙ったりするから下平くんのサーブ精度は恐ろしい。
本来ならばこの大幅な変化はついてこられないものなのであるが、このカモメという選手・・・

視界をさえぎるマスクはなし。動きを阻害するプロテクターもなし。
ナックルボール取るより、よっぽど簡単だよなあ?

何と下平くんのサーブがあっさり取られてしまった。まさか!!
まあ、下平くんも相手を分析して隙のあるところを打つタイプですからねぇ。
相手が変化に強いと知らずにいたのが問題でしたな。
それにしてもカモメ。野球の捕手でございましたか・・・野球でボールをグーで打つ・・・?
確かにナックルという球はあるけど、ナックル取れるからサーブでもスパイクでもナックルだとかそんな話!?
色々と疑問が沸いてきますなぁ。



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