蒼天紳士チャンピオン作品別感想

錻力のアーチスト
Vol.25 〜 Vol.51


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 各巻感想

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11巻 

連載中分

錻力のアーチスト 4巻


Vol.25 羽  (2014年 15号)


一塁にランナーがいるというのにワインドアップで投げようとする左薙。
まるで之路さんのようにバッター勝負にこだわって見せている。
冷静な考えとしては、ここは勝負所であり、打たれれば一気に試合を決められてしまうと考えているからといえる。
だけど感情的にも熱くなっているのは否定できなさそうですなぁ。いい傾向だ。

清作「お前の本気の球、センターバックスクリーンに叩きこんでやる!!」
左薙「清作をねじふせればもう1度流れは僕たちのものだ・・・!

気合の籠った左薙の球に押される清作。
打ち損じて一塁側にふわふわと浮かぶボール。おやおや、打ち取られたか?
とも思ったが、フェンスの方まで飛んだおかげでどうにか一塁手に捕られることなくファールで済む。ふう。
左薙にしてみれば残念な結果である。いや、残念な結果であるはずなのだが・・・

・・・アレ?――アウトにならなくて僕、今ホッとした・・・?
いやいや。そんなわけは無い。打ち取れていたはずなんだから。
アウトの形にこだわりなんて無いのに・・・何を望んでるんだ・・・
空振り三振を取ること・・・?それとも、この時間がもっと続くこと・・・?

笑みを浮かべる左薙。おやおや楽しそうじゃないですか。
相対している清作にしてみれば不敵な笑みを浮かべているように見えるのだろうがそういうわけではない。
そう、これは喜んでいるのだ。

自分の能力を冷静に測る。それは自分の限界を知ることでもある。限界を受け入れることは決して諦めと同義じゃない。
その限界値をフルに使って戦ってきたんだ。
けど今僕が望むのはその限界値の少し先。もう少しだけ前に。
思考の糸でからまったマユを脱ぎ捨てて――上を目指して羽ばたくための羽が欲しくなる・・・!!

再び見せた脱衣ポエム!!
長い手足にアンダースローという複雑な構えでの脱衣。うーむ、何という合わせ技か。
こういう綺麗なポエムが出るときは球の調子もいいってものである。今日イチの走った球が放たれる!!しかし・・・

テメーの球に・・・いつまでも付き合ってられるか!!

強烈にホップする左薙の球を見事に捕える清作。
かなり強引な打ち方に見えるが、見事に芯を捉えた様子ですな。うわぱあ。

・・・一緒に勝負を楽しんでると思ってたのに・・・やっぱり天然は何考えてるかよくわからないね・・・
イキそうだなコレは・・・あ。イッちゃった・・・

倒れながら打球の行き先を眺める左薙。ええ、確かにスタンドまでイッちゃいましたね。ええ。それ以外の意味はないですよね?

見事に逆転ツーランを決めて見せる清作。
バックスクリーンの最上段。もう少しで場外まで行くのではないかという飛距離である。

クッソーもう少しで港南の弐織義壱と同じ場外ホームランだったのに。けどウチの弐織先輩は超えたな!!

相変わらずナチュラルに挑発を行う清作。
まあ本人としてみれば素直な気持ちを述べているだけなんでしょうが・・・クソ天然はこれだから!!

そのクソ天然はこの一打でも満足はしておらず、左薙に次は場外まで飛ばしてやるから逃げんじゃねーぞと吠える。
打たれて意気消沈していた左薙もこの天然っぷりには参ったといった感じのようであります。うわぱあ。

限界を超えるために必要なのは才能じゃなくて強烈な向上心・・・今日のところは僕の負けだよ。清作・・・

左薙も大事なものを理解したって感じでありますね。
この試合はさておき、向上心の大切さを学んだ左薙と栄春。夏は手ごわい相手となりそうである。

それはそうと、ホームランを打った清作を出迎える弐織。

弐織サンからお祝いのバックドロップ。ヘルメットかぶっててよかったね・・・

こいつは派手な祝福でありますね。バックドロップはヘソで投げる!!
ヘルメットしてても衝撃は相当なものがあると思うのだが・・・まあ、よしとしましょうか。死にはしないでしょう。たぶん。

全力のぶつかり合いは清作に軍配が上がった。
左薙も言っていたようにこの勝負は試合の流れを左右するものであったと思われる。
となると、次回にはいきなり試合が終了していてもおかしくありませんがどうなりますかな。



Vol.26 愛の炎  (2014年 16号)


バックスクリーン最上段に突き刺さる清作の勝ち越しツーランホームラン。
観客もこの大きな当たりに沸き返る。文句なしの一発だ!!
と思いきや、文句を述べる者が現れました。

バックスクリーンを越すには身体が細すぎる。奴には愛が足りない

あ、愛ですか。いきなり何言ってるんだこいつは。
おにぎり食べながら試合を見ていた男――蛮堂。その隣で静かに観戦している男――蓬莱
この2人の男を呼びに何だか可愛い子が現れる。おや、マネージャーさんですか。
桃ちゃんと呼ばれるマネージャー。ついに可愛い女子マネを擁した高校が現れたぞ・・・!!

この3人が所属しているのが蔡理高校。どうやら次の準々決勝で当たる相手らしい。
蛮堂はこの試合を観戦した結果、両チーム共投手が悪いと言い捨てる。ほう。
そんな蛮堂らに声をかけるのは・・・神奈川の王者、港南学院のエース・穂村。
どうやら昨日投げたのでサイクル的に今日は中日となったらしい。それで1人で偵察でありますか。

ここまで2試合コールド勝ちをしているのは港南学院と蔡理の2校のみ。ふむ、手ごわそうな相手ですな蔡理。

弐織義壱から伝言を預かってきたと言いながら、その内容は「・・・・・・」だったりするという。
らしいといえばらしいがそれは伝言と言えるのか?なので伝えられた蛮堂もこう述べる。

弐織義壱に伝えておけ。言葉にしなければ気持ちは伝わらないとな

その通りかもしれないけど、何だか乙女な感じのするセリフですな。ハハハ。

さて、蔡理の3人は次の試合に備えるために姿を消す。
残った穂村は試合を観戦しているが退屈そうな感じ。
どうやら左薙は勝負から頭を切り替えて味方に守備練習をさせるよう打たせる方向にしているらしい。
ふうむ、この試合は既に決したとみて夏に向けての練習をしているって感じですかね。やっぱりクレバーですなぁ。

こんな展開じゃ俺のエモノの清作も気ィ抜けちまうかもな・・・

なるほど。桐湘というよりも弐織義壱と似たバッティングをする清作がお目当てだったわけですな。
しかし試合が決したのを見て取り、居眠りを始める穂村。起きたころには終わっていたという。そういう飛ばし方か!!
結果は8対3で桐湘の勝利。さすがは之路さん。燃えてからは見事にシャットアウトしたわけですな。
左薙も之路さんに感謝の言葉を述べる。いい経験をさせていただきました、と。
ちなみに弐織は結局4敬遠でほとんど打つことが出来なかった様子。こりゃストレスたまりそうですな。わぱっ。
まあ真っ向勝負は夏にまたってことですやね。

さて、この次の試合の勝者と準々決勝で当たることとなる。
出てくるのは冒頭で観戦していた蛮堂たちのいる蔡理高校。妥当港南学院筆頭にあげられている高校だ。

どうやら左薙は蔡理からスカウトされていたらしい。
ふむ、将来を見越して進学校の栄春に入ったわけだが、やはり左薙は強豪に誘われるだけの才能があったわけですな。
しかし強豪ゆえの驕りか、ずいぶんと桐湘を見下しているようですなぁ。そういう態度はよろしくない。
でも蔡理高校のエースである蛮堂は何だか面白いことを言ってくれる。

相手に踊らされる奴は三流だ。一流のレスラーはホウキが相手でも試合ができる

レスラー?一体何を言い出すのだこの男は。
4敬遠されて活躍できなかった弐織に対する言葉だが、これはちょっと意味が分からないですね。
しかしそれにしてもゴッツイ身体をしていやがる。弐織と比べて遜色ないどころか上回っているのではなかろうか・・・

蛮堂「お前もいずれ俺の愛の力の前にひれ伏すだろう
弐織(・・・こんなこと言う奴だったか?)

どうも去年とはずいぶん様子が違う感じの蛮堂。昔はもっと普通だったんですかね?

蔡理のもう1人の名前ありの選手である蓬莱は清作に話しかける。

もう少しで弐織義壱の場外ホームランに迫るスゲェあたりだったな。正直ビビった

そのようなことを言われて鼻息を荒くする清作。
意外と自分の心に合致するおだてには弱いんだな清作。

さて、蔡理との交流も終えたことだし、帰る前にその試合っぷりを観戦するとしましょう。
柊的に言えば蔡理の実力をハイポイントサイトシーンってところだ。
ちなみに「高みの見物」と言いたかったらしい。適当な英訳過ぎて左薙にツッコまれている!!

というわけで蔡理高校の試合であります。
1回の表は守備に回る蔡理。マウンドに立つのはエースである蛮堂。
去年よりひとまわりデカくなった体で試合前にいきなり吠え出す。桃ちゃん!!と。

キミのつくる補食を食べ続け俺の体は大きくなった!!この体はまさしく愛の結晶!!

ははぁ。それが大きくなった理由ですか。
いい話ではあるが・・・恥ずかしい奴だ。というかマネージャーとしては皆のために作ったものなのであるがなぁ。
穂村からトンチンカンとか言われるような男であるが、まあこの真っ直ぐな気持ちは好感が持てなくもない。

俺は可燃物。キミは酸素。2人をつなぐ野球は点火のエネルギー。燃え上がれ2人の愛の炎!!

何を言っているのかわからないが、とにかくすごい迫力だ!!
恥ずかしげもない愛のポエムにより放たれた剛球熱球。
その凄まじさは相手が振った金属バットを弾き飛ばすほどである。
いや――その金属バットがヘコむほどである。バ、バカな!?

・・・何投げたらハート型にヘコむんだよ・・・イヤ、逆さにして桃型なのか・・・?

そんな分析を行う穂村。ああ、桃ちゃんのことを思って投げたから桃型になると・・・納得した!!いやいや。
ついでに筋肉だけで投げてるくせにと述べる弐織にもツッコミいれておこうか。お前がいうか!!

俺の右腕はキミに捧げる!!桃ちゃーん!!

投げるたびに吠えまくる蛮堂。こりゃ桃ちゃんも恥ずかしくてたまらないでしょうなぁ。
おかげでこちらとしては可愛い照れ顔が見れるってもので、いいぞ。もっとやれ。

叫びはさておき、蛮堂の球は凄まじい。之路さんをも上回る速さかもしれない。
それにその球の衝撃はスタンドまで響くかのような熱気を伴っている。これは清作の打ちたいという気持ちに火をつけるに十分ですな。

しかし蔡理は蛮堂だけのチームではない。
1回裏、蔡理の攻撃。ワンナウト一・二塁の状態で四番の蓬莱に打順が回る。
そこで蓬莱が放ったのは・・・バックスクリーンを越えるスリーランホームラン!!
おやおや、清作にスゲェ当たりだったなとか言っておきながら、自分はその当たりを軽く超えていきやがるとは・・・!!

・・・のヤロォ。見下してやがったのか・・・!

これはこれは。投・打ともに手ごわい相手でありますな。
左薙もその2つを兼ね備えていたわけだが、こちらは2人で分担している感じである。
打ち砕くには倍の労力がいるわけで・・・厄介な話であります。
この蔡理に勝つにはどうすればいいのか。やはり蔡理にあって桐湘に無いものがポイントとなるのではないかと考えられる。
それは何かって?可愛いマネージャーに決まってましょうが!!
次の試合までにマネージャーを獲得して愛の力で負けていないことを示すのが重要なポイントとなるわけだ。間違いない!!



Vol.27 ミート  (2014年 17号)


俺の愛の右腕の前ではキサマら打者などあまりに無力!!
燃え上がれ、俺と桃ちゃんの愛の炎!!この身を焦がす程に!!
桃ちゃぁぁん!この勝利をキミに捧げる!いや、俺の全てを!!

ゲームセットともに激烈に吠える蛮堂。これに対する桃ちゃんの感想は。

ありがとう。でもちょっと・・・だいぶ重いかな・・・

ですよねー。
でもまだ赤くなっているだけマシかもしれない。血の気が引かれているわけではないから大丈夫大丈夫。まだ。

蛮堂のキャラはさておき、試合の方は蔡理が11対0でまさに圧勝。
コントロールデタラメなくせに力だけで打者をねじふせるエースの蛮堂睦。金属バット3本ヘコますなんて尋常ではない。
それに四番の蓬莱豊もまたヤバイ。この試合の成績は4打数4安打。ホームラン2本に打点8。弐織兄並の成績である。
うーむ、さすがにプロが注目していると言われるスラッガーなだけはあるってことか。
次の相手はこの2人が率いる蔡理高校である。手ごわそうだ。

さて、試合と次の対戦相手の観戦を終えて帰途につこうとする桐湘部員達。
その面々を応援してくれるのがOBと父兄の皆さん。お、之路さんの両親がいるじゃないですか。
マウンドにいる時は母親似でそれ以外は父親似か・・・遺伝って恐ろしいですなぁ。
頭木さんのところの家族もすごく気になるぞ・・・目力は遺伝だったのか。

清作のところは父親が来ているわけではない。代わりに見に来ていたクラスメートが声をかけてきてくれる。おやおや。
今回は試合を決めるホームランを打ったし、良かったですな。餌付けしてきた甲斐があったというものだ。
ついでに弐織のバックドロップもカウント2で返したらしい。やるじゃん!!

清作のために応援しに来てくれる人がいると知って感激してくれる児島。
まあ確かに中学の頃は本当に友達ゼロ人間でしたからねぇ。心配されるのも分かる。
天然だと分かっていれば問題ないかもしれないが、付き合うのは色々と大変そうな奴ですわい。

どうやら工ちゃんも見に来てくれていた様子。久々の登場ですが嬉しいですな。

さて、次の対戦相手である蔡理と挨拶を交わしておくこととする。
蛮堂に言わせれば俺と桃ちゃんの愛の力をもってすれば何人にも負けはしない。港南を倒すのは俺たちだ、とのこと。
ふうむ。次はかなり熱い投手戦となりそうですなぁ。
そして清作はスラッガーである蓬莱に対して敵意をむき出しにしている。こちらの対決も楽しみである。
対決になりそうにないのはマネージャーくらいですかね。桃ちゃんの可愛さが圧倒的すぎる。
実はいたけど今までほとんど姿を見せなかった桐湘のマネージャーじゃあそりゃコールド負けですわな。ハハハ。
練習シーンで出てはいたけど、本当にちゃんと女子マネいたんだ・・・

それはさておき、桃ちゃんにスゴいと褒められる之路さんに清作。
それを聞き、桃ちゃんの愛の言葉を受けるのは俺1人で十分だと燃え上がる蛮堂。

之路拓人。キサマは投げ勝ち殺す
清作雄。キサマは打ち取り殺す
愛の欠落したその細い体でこの俺を倒せると思うな。

本当、恥ずかしげもなく愛を語る男である。恐ろしい。
ついでに伊那のボコボコにされ具合も酷過ぎて恐ろしい。桐湘のマネージャーは怖いなぁ。

何にしても清作が細いのは確かである。あんまり食いまくって育ってはこれませんでしたからなぁ。
というわけでOB会長の誘いを受け、野球部や清作のクラスメート全員で焼肉屋に乗り込むこととなる。
食べ盛りな上に試合後で空腹な高校生男子。これは食うぜ。
ミート!ミート!オニオン!ミート!!OB会長の中田さんの話もそっちのけで食いまくる部員たちでありました。
阿保先輩は当然のことながら、頭木さんや之路さんまでガッツいておるわ。

プロレスラーのような食欲を見せる野球部員たち。
だが、よく食う方であり、今のうちに食わねばならないはずの清作は箸が進んでいない。どうやら考え事をしている様子。
そして何故か正面に座っている工ちゃんにこう述べる。

清作「なあ。愛の力ってどう思う?
工「何言ってんの。意味わかんない。キモイんだけど
清作「・・・だよな。けど、あのドラゴン体型の投手は体が愛でできてるらしいんだ。俺はそんなの信じねーんだけど」
工「ゴメン。さっきから話が宇宙すぎてついていけない」

何を話してるんだこいつらは。
凄くかみ合ってないけど普通に会話している気がしないでもないのが不思議な感じである。
天然には素で接するのがいいということなのか!?

楽しい試合間のイベントも挟み、一気に時間は飛んで翌週。
早くも始まる蔡理戦。準々決勝の割に手ごわい相手でありますが、果たしてどうなるのか。桐湘ファイトだ!!



Vol.28 無敵  (2014年 18号)


格上とされる蔡理高校との激闘が幕を開ける!!
桐湘としてもこの試合は正念場。今までとは打順を変えて挑むことにしたようだ。
頭木さんが五番に、安保先輩が七番に回る。
そして空いた三番に清作が入るという打順。一気にクリーンナップ入りとはやりますな清作。
ホームランバッターが続く打順となるが、格上の蔡理相手と言うことを考えると悪くはないわけか。

三番・・・四番に近づいたってことだよな・・・けど、まだだ。四番になるまで満足しねえぞ・・・!

よいギラつき方である。
この試合でいい感じに弐織と四番争いをしてもらいたいものである。

さて、まずは整列。向き直っての挨拶である。
しかしここで質問を投げかけてくる蛮堂。ふむ、之路さんは彼女はいませんのか。そういうことに時間を裂く気はないって感じかな。

ならばキサマはここで散る運命だ。桃ちゃんの愛の補食によってつくられた、この体の前に敗れ去るがいい

相変わらずブレないというか主張の変わらない蛮堂。自分の所の監督からもおかしなこと言ってるとか言われている。
なんせ天然の清作に意味わかんねえこと言ってんじゃねえと言われるぐらいだからなぁ。そりゃ仕方がない。
どうでもいいが最初に挑戦的な言動をしたのは蛮堂の方なのに何故反論した清作が怒られるのか。
蛮堂は注意しても無駄っぽい雰囲気があるからだろうか。確かに無駄な気はするな。納得した。

さて、1回表の攻撃は桐湘側。
いきなりエース蛮堂との戦いが始まるわけでありますな。
蛮堂はこれまでの試合ストレートで打者をねじ伏せており、前に飛んだ打球はほとんど無いという。
うーむ、さすがのドラゴン広背筋。筋肉蛮堂の名は伊達ではないな!!何だその応援。

ともかく一番の児島先輩から挑戦。
早く熱い球ならば普段之路さんの球を見ているし、ビビることはないと考えている様子。
4試合で18打数7安打8盗塁となかなかの成績を残している児島先輩。塁に出すと厄介なバッターと桃ちゃんも言っている。

桃ちゃんが俺にだけ打ちあけてくれた言葉。
それに全身全霊で応えてこその男!!燃え上がる2人の愛の炎は誰にも消せはしない・・・!!

打ちあけてくれたってそんな色っぽい内容じゃありますまいに。まあそれで火がつくなら別にいいさね。
いや、投球にまで火がついているような感じになるのは打者の方が困るか。冗談はその筋肉だけにしとけよ。

俺はキサマら全ての打者を憎む。桃ちゃんの脳細胞をわずらわせる全ての打者をだ。
桃ちゃんの顔を曇らせるものは俺が吹きとばしてやる!!

赤面させるのは曇らせることにはならないって論法ですかね。困らせているのは間違いないと思うけども。
ところで桃ちゃん、やっぱり料理の中にヤバイモンブチ込んでるのかね?どうなのかね?ドーピング検査が必要か!?

児島先輩は見逃し三振。続いて二番の柊。筋肉の相手なら任せておけとのこと。頼もしい。
実際、蛮堂の球を押されつつも三遊間へと飛ばす。
が、ショートの蓬莱が見事な横っ飛びで押さえてしまう。うーむ、さすがに強豪。守備も硬いわ。
しかし桃ちゃんが蓬莱のプレーを褒めた事でさらに火がつく蛮堂。

金輪際キサマの所に打球は飛ばさせんぞ

うん、まあ。その意気はいいんじゃないですかね。うん。

さて、ツーアウトになったところで清作登場。三番だと確実に1回で打順が回ってくるのがいいですなぁ。
そして清作の登場で桐湘の応援が沸き返る。おやおや、人気じゃないですか。
いつも授業中寝てるか腹すかしてるかなだけなのになぁ。
まあやっぱりペット的な愛され方をしてるってことなのかもしれませんね。
普段餌付けをしておき、こういう場面で活躍を楽しむとかそういう。応援席のクラスメートはブリーダーか!?

ともかく筋肉蛮堂との対決である。
連打が難しいならホームランで。俺1人で点を取ってやると考える清作。
一方の蛮堂も桃ちゃんの愛の言葉を受けるのは俺1人だけだと考え、全て俺1人で片づけてやると述べる。
そんな2人の対決。まずは初球のストレート。これを見事に合わせる清作。

愛の筋肉だのウザッてえ。心臓ブッ叩いてやるから・・・一遍死んでこい!!

確実にとらえた手応え。相手の心臓をぶっ叩いて停止させる・・・はずが、止まらない!!

愛は無敵!!

完璧にとらえたはずが、力で押し込まれる清作。
腕が捻れてしまうのはイメージであるが、そう感じるほどの衝撃があった様子。
結果バットを振り切れず、ピッチャーフライに終わってしまいました。おやおや、これは・・・

お前も俺も1人で相手をねじふせようとした。だが勝ったのは俺だ。それは俺が愛のために戦っているからだ

どこまでもブレない主張を続ける男、蛮堂。
しかし肝心の桃ちゃんは段々蛮堂のことを避け始めている感じがしないでもない。ぬあ!!

蛮堂の空回り感はアレだが、この筋肉はやっぱり厄介である。
タイミングを合わせても力で押し込まれる。となると・・・どうすればいいのだ?スイングスピードでどうにかなるのか?
やはりパワーにはパワーで対抗するしかないのだろうか。
次の回の弐織との対決が楽しみであります。

そういえば柊も彼女がいるはずなのに全然触れられていませんなぁ。
実はエアハニーの可能性とかあったりするのか・・・!?まさか!!



Vol.29 筋肉  (2014年 19号)


蛮堂のストレートの前に手も足も出ず、初回は三者凡退に終わる桐湘。
今年の桐湘は攻撃力があり、春季大会では毎試合初回で得点を上げている。
それがたったの5球でスリーアウトとは。これは確かに今までの相手とは違いますわ。

蛮堂「見てくれたか桃ちゃん!2人の愛に誓って奴らに点はやらん!!
桃ちゃん「う・・・うん。とにかくナイスピッチング

引きながらもちゃんと受け答えしてくれる桃ちゃんはやっぱりいい子でありますなぁ。
だから蔡理の中にも桃ちゃんにいいところ見せようとする選手はいる。
けど、蛮堂に睨まれてしまうから怖い。こいつは敵に回したくないわなぁ。

さて、1回の裏。蔡理の攻撃。
エース蛮堂のピッチングをはじめとした守備力もさることながら、得点力もあるチーム。
失点して追いかける展開になるとキツイところ。
だが蛮堂のピッチングが凄かった分、之路さんの闘志にも火が付いた様子。

負けられない。蛮堂には負けるわけにはいかない・・・!
ストレートで負けるわけにはいかないんだ!!

気迫の投球で148キロをたたき出す之路さん。150キロの蛮堂にわずかに劣るがかなりのものである。
予選でこの剛球対決。神奈川はレベルが高いなぁ。

桃ちゃんにいいところを見せようと大ぶりの蔡理一番打者金崎。お生憎の三振であります。
続いて二番の宮野。こいつは冷静に甘いコースの球を叩いてくる。
三遊間を抜けようかという当たりであったが見事に抑える弐織。守備もやるものですな。
しかし一塁への早急に力が入りすぎである。一塁手の安保先輩も大変だな。

・・・フン。動ける筋肉か。見かけ倒しでは無いようだが所詮は愛を知らぬ体・・・

なるほど。蛮堂に見せつけるために力が入っていたわけですか。
しかし愛を知らぬ体とか怪しい表現を使うのは止めていただきたい。

弐織といえば、兄の弐織義壱とは因縁がある蛮堂。
去年の秋季大会。対港南戦。桃ちゃんの前でホームランを打たれた屈辱がある。いや、それ以上に――

桃ちゃんの目を打球に釘付けにし、俺から奪った重罪
あの時俺は誓った。2人の愛を邪魔する"弐織"は断罪すると。
桃ちゃんの愛の補食によってつくられたこの体。もはや誰にも砕かれはしない。

蛮堂にもちゃんと桃ちゃん以外に因縁のあるキャラがいたようで安心した。
いや、結局桃ちゃん絡みの関係であるみたいですがね。

去年のことを思い出していた蛮堂。チェンジになったのにも気づいていない。蔡理も3人で終わったようですな。
物思いに耽る蛮堂を揺り起す桃ちゃん。
その桃ちゃんの手を取り、キミの愛で俺は目ざめたとかのたまう蛮堂。寝ボケんな。
まあ、こいつにしてみれば常に愛にボケているようなもんでしょうからなぁ。
だが、さすがに次の相手が誰であるかは認識している。

"弐織"は根絶やしにしてやる

2回表。やってきました筋肉対決
蛮堂と弐織。果たしてどちらの筋肉が上なのか。打席に向かう弐織に児島先輩たちが声をかける。が――

ナンパなお調子モン。ナルシストバカロン毛。ヤワなクソ天然。一緒にすんじゃねえ。

相変わらずの憎まれ口。ここの2年はやっぱりこうでなくてはね。
さて、パワー対決の始まり。ギチミチと筋肉が唸りを上げている中、蛮堂の第一球。

行くぞ"弐織"。2人の仲を引き裂こうとする者は――俺と桃ちゃんの愛の前に散れ!!

150キロの剛球。それを捉える弐織。
一瞬パワーで押し負けるかと思ったが・・・筋肉が膨れ上がりユニフォームを破り散らすイメージで打球を前へと飛ばす弐織。
イメージですので実際は破れてはいません。念のため。ヘルメットも粉々になったりはしてません。念のため。

打球は前へ・・・と思いきや勢い余って引っぱりすぎて三塁側――蔡理のベンチへと飛び込む。
危うく桃ちゃんに当たるところだったが無事で良かった。さすがに当たってたらシャレにならない。

・・・"弐織"敏。万死に値する

怒りで筋肉が膨れ上がり、胸のボタンがはじけ飛ぶ蛮堂。これはイメージじゃありません。ハンパねぇなホント。

今のところ互角な感じの筋肉対決。
弐織としては兄に負けられないという想いならば蛮堂よりも上という自負はある。
これもある種の兄弟愛ってやつなんですかねぇ。
そう考えれば愛という者を宿した者たちの対決と言えなくはないが・・・ううむ、そういう方向に持ち込むのは躊躇われるなぁ!!



Vol.30 素材  (2014年 20号)


いきなり蛮堂の回想から始まる今回。
2年前の夏――神奈川県予選準決勝のこと。
蛮堂は1年ながらエースとしてマウンドに立っている。しかし今ほどの立派な体格はない。
それでもチームを引っ張る投球で準決勝まで来ているのだから大したものだ。
しかしこの夏が最後の3年生にしてみればここで負けるわけにはいかない。
港南の待つ決勝まであと一歩。甲子園は目前なのだ。

だが疲労でストレートの球威が落ちた蛮堂。
にも関わらず、四番は歩かせてもいい。ストライクゾーンには投げるなよという先輩の言葉を無視て我を貫く。
その結果打たれてしまい、蔡理はサヨナラ負け。ああこりゃあいけませんわ。殴られても仕方がない。
とはいえ打つ方も1点も取れていないんじゃ結局勝てなかったのかもしれませんけどね。

蛮堂・・・どんだけスペック高くてもな、才能だけで勝ち続けられると思うなよ。

先輩に殴られて右目の下に傷をつくる蛮堂。このケガはこの時のものでありましたか。
さてさて、蛮堂にはこの先輩の言葉を聞き入れることが出来るのだろうか?

時は経ち4月。
3年は卒業したが、新3年の中には蛮堂のことを嫌ってる人もいる。
居心地の悪そうな蛮堂は、もう部を辞めるかとまで考えている様子。よくない状況だ。傷もいじりすぎて開いちゃってるし。

学校への道を歩いて戻る蛮堂。その途中、机の上のタッパーに不細工なおにぎりが入っているのを発見する。
昨日やその前もそのおにぎりは存在していたそうだが・・・どうやらこれはマネージャーが作った補食であるらしい。
食べるのもトレーニングという監督の指示で新しく入った1年のマネージャー桃生理沙ちゃんが作ってくれたのだ。
そうかー。桃ちゃんの桃は苗字の方でありましたかー。

蛮堂と話している桃ちゃん。そこに通りがかった蓬莱。サボってる奴の面倒見る必要なんてないと述べる。まあそうですわな。
補食もコメに塩ブッかけて投げときゃいいと述べる。が、これには言葉を返す桃ちゃん。

でも、それだと味気ないじゃないですか。
愛情を込めないとせっかくの素材が台無しになっちゃいます。そう思いません?

蛮堂の傷に絆創膏を貼ってあげながらそう語る桃ちゃん。
まだこの頃はマネージャーになり立てで、補食の技量も可愛さもまだまだといった感じの桃ちゃん。
しかしこういう温かい態度は何にも代えがたい。孤独を感じていた蛮堂にも何かを感じさせる。体中を熱くさせる。

このぬくもり。春のせいか――いや。愛だ!!

血が巡りすぎて体が熱くなり、せっかくの絆創膏を出血で吹き飛ばす蛮堂。しかしその代わりに大切なものを手に入れた様子。

ただ1人俺に微笑んでくれた桃ちゃん。あの瞬間俺は心を入れかえた。いや、心を新しく入れてもらったのかもしれない

その言葉が示す通り、確執のあった先輩に文字通り地に頭を打ち付けて謝罪する蛮堂。ドカドカ。
こうしてチームメイトの信頼も取戻し、押しも押されぬエースとなったわけでありますな。良かったですね。

そして誓った。桃ちゃんの愛を注がれたこの体、この素材。決してムダにはしないと。
そんな桃ちゃんを危険にさらした弐織敏・・・キサマは殺す!!愛の前に屈しろ"弐織"

前回の弐織に続いてイメージでユニフォームをはちきれさせる蛮堂。マッチョはこれだから。
しかしそこまでのイメージを見せておきながら、投げる瞬間、気圧されたように球を地面に叩きつける。
打たれると予感したということだろうか・・・筋肉はより強い筋肉を知るということなのか!?

・・・俺が恐れたというのか・・・?
否!断じて否!!愛に目覚めたこの体が屈するはずが無い!!この腕でキサマを叩き潰してやる。

再度の脱衣イメージ
が、打者である弐織も同じく脱衣イメージでそれに対抗
投球に合わせてのカウンターの拳が蛮堂の顎を捉える・・・・・・!?

このクラスの連中はまずイメージで戦いだすから困る。
実際は服は破れてはおらず、弐織のバットは蛮堂のボールを捉えてセンターバックスクリーンへ向けてボールを飛ばしただけである。
いやまあ、だけも何も野球の試合なんだからこの結果が普通なんだけども。
そしてその打球はもう一伸びが足りず、フェンス間際でキャッチされてしまう。かなり飛ばしはしたが結果はアウトか。

チッ。カチ上げすぎたか・・・

アッパーが強すぎましたかね。確かに蛮堂の顎はいい感じにカチ上がってました。マウンドで蛮堂も膝をついてますわ。

弐織敏。兄の弐織義壱には及ばないと聞いていたが・・・先程のプレッシャーといい、並の打者ではないな。

最初の対決は蛮堂がアウトを取ったものの、筋肉対決的には弐織優勢と言った感じでした。
しかし警戒を強めた蛮堂。次の戦いではどうなるか分かりませんな。第二ラウンドに注目です。

さて、戻ってくる弐織にクソ天然さんから一言。

・・・アイツの球をあそこまで飛ばすなんて。もしかして弐織先輩彼女いるんスか・・・?

俺はそんなこと信じちゃいないとかいいながら、結局愛の力を真に受けだしている清作。純粋な子だ。
しかしこれはいい傾向かもしれない。父親のおかげで女性不信に陥っている清作。
だが強くなるためと分かれば愛もまた必要と考えてくれるかもしれないし、そうなれば恋愛方面の展開も期待できるようになる。
女性不信だけど愛を知りたいなら男に走ればいいじゃないとか言われそうだが。ソッチはあかん!!

桐湘は結局2回表も3者凡退の無得点。
そして迎える2回裏。ここで出てくるのが3試合5ホーマーの四番・蓬莱。
更に打者としても注目の五番・蛮堂が続く。この蔡理の打線は怖いですなぁ。

神奈川では弐織義壱に続いて評価の高いスラッガーである蓬莱。
その佇まいは落ち着いており、弐織のような威圧感も左薙のような不気味さも感じない。
打つ気があるのかどうかも分からないこの感じ。ある意味不気味だ。だが・・・

――何を考えていようと、ストレートでねじふせるだけだ!!

さすがの意識で挑む之路さん。
しかし桐湘の中ではただ一人、センターの清作だけは蓬莱の視線を、意識を感じ取っていた。

センターバックスクリーンだけを意識してんのか・・・!!

その気配を感じ取り、フェンスに向かって走る清作。
蓬莱のバットは之路さんの球を捉えたようだが・・・清作は果たして追いつけるのか?それとも遥か頭上を行ってしまうのか?
これで全然そこまではいかず、センター前に落ちるあたりだったら拍子抜けですが、さすがにそれはなかろう。
四番・蓬莱。この男を押さえるのが蔡理に勝つための一番の関門となりそうですなぁ。



Vol.31 猛獣使い  (2014年 21+22号)


桐湘のエース投手、之路拓人の球は――最速148キロのクセの無いストレート・・・
女のコに例えると、気が強いけど根は真っ直ぐで髪はショート・・・かな?
ストライクゾーンだ。そんなコいたら――手ェ出したくなるだろ!!
俺は男だから・・・な!!

この男はいきなり何を言い出しているのだろうか。な!!じゃねーよ。
しかしその意識で見事に打球を捉えるのだから凄い。
投手、というか投げる球を脳内で擬人化して手を出そうとするとは・・・なかなかレベルの高いことをする。
左薙の球とかどんな女の子になるのか興味深い。手を出しにくい感じのコが出たらどうするつもりだろうか。

バックスクリーンに向けて高々と上がったボール。
しかし何かを予感していた清作は既に後ろに向かって走り始めている。これは追いつくか・・・?

気やすくヒトの上、越えんじゃねえ!!

打球に向かって飛びつくが、惜しくもグラブの先で弾くに留まる。
ボールと清作は共にフェンスに激突。ホームランこそ免れたものの、ツーベースヒットとなりました。
ふうむ。清作が下がっていなければスリーベースの可能性もあったかなぁ。
児島先輩も同じタイミングで打球の傍まで来てたし難しいか?いや、それも清作が事前に下がったからこそか。
結果はオーライなのだが、俺が打たれると思ってたのか!?と之路さんに睨まれる清作。ハハハ。

キャンキャンうるさいあのセンター黙らせるためにバックスクリーン狙ったんだけどな・・・そんなに軽い女じゃないって・・・?

球の軽さ重さはそういうところにかかってきますか。
軽い女もアレだが、重い女呼ばわりされるのもアレですな。投球の擬人化は表現が難しい。

どうやら蓬莱はプレイボーイである様子。アレコレ手を出しているが特定の彼女はいない感じですかね?
その気の多さ故にストライクゾーンが広いということか。分かるような分からんような。
つまりこの男もまた愛の力で戦っているということだろうか。薄く広い愛のようだが効果はあるようですなぁ。

蓬莱と違って桃ちゃん一筋の蛮堂。
とはいえ桃ちゃんは別に蛮堂一人のためにマネージャーをしているわけではない。活躍した選手は平等に労わないといけない。
心を入れかえた蛮堂でも桃ちゃんが関係すると突っ走るようになっちゃうみたいですなぁ。
まだ序盤だし、手堅く蓬莱を三塁に送るために送りバントをお願いしたいところなのだが・・・

桃ちゃんと俺の永遠の愛を誓うチャペルの鐘を打ち鳴らすが如く、満天下に快音を響かせてやる・・・!!
狙いはホームランのみ・・・!!

金属バットをヌンチャクのように振るい、ポーズを決める蛮堂。器用なことを。
それはさておき、蓬莱に対抗してホームラン狙いになってしまっているようだが・・・いいのだろうか?
とりあえず前の回でボタンがはじけとんだままだったから主審に注意される蛮堂。せっかく気合入れてたのにね。

桃ちゃん「蛮堂君。ユニフォーム脱いで」
蛮堂「桃ちゃん!!こんな所で大胆な・・・
桃ちゃん「ボタンつけるだけだから!」

イチイチメンドくせーなコイツは。見ていて退屈しない奴である。
何にせよここでベンチに一度戻ることが出来たのは大きい。桃ちゃんからアドバイスを受けることが出来たのだから。

蛮堂君。ここは確実に送った方がいいんじゃないかな・・・?
蛮堂君の投球なら、1点あれば十分な援護になると思うし・・・
あ。でも之路さんの速球を送りバントするのって難しいのかな・・・

作戦としては桃ちゃんの言う通り送りバントが正しい。
しかし、この最後の言い方は・・・本当にそう思っての発言なのか、蛮堂を発奮させるための発言なのか。
実際蛮堂はこの言葉を受けて、この体が押し負けることなどありえないとやる気になる。

そこまで俺のことを考えてくれたキミの想いを決して無駄にはしない

なんだか知らないがすっかりバントをやる気になっている蛮堂。
送りバントしながら、この身は2人の愛に捧げるとか考える蛮堂。なんて派手な送りバントだ。
ごっつい体してる割にキレイなバントするし。意外と器用な奴だ。

助かったぜ桃ちゃん。蛮堂の奴、桃ちゃんの言うことしか聞かねえから。

逆に言うと桃ちゃんの言うことならほとんどのことは聞いてくれそうな蛮堂である。
弐織に言わせれば桃ちゃんは猛獣使いじゃねーのかということであるが・・・さてさていいように操っているのかどうか。

続いて六番、捕手の山脇。毎食丼メシ5杯を平らげるだけあって立派なふくよかさである。捕手らしい体だ。

ランナーは三塁でワンアウト。外野フライでも得点のチャンスである。
が、そこまで飛ばさせるつもりはない之路さん。気合で押し込もうとする。
が・・・二球目を投げようとしたところで三塁ランナー蓬莱がスタート!!スクイズだ!!

俺は普段蛮堂の球受けてんだ。体はちょっと重いけど・・・目は余裕でついていく。
"桃ちゃんの言う通り"・・・!!

どうやらこのスクイズの指示は桃ちゃんが出したものの様子。
豪打で知られる蔡理が序盤とはいえこうも手堅く点を取りに来るとは。意表を突かれた形になりましたな。
山脇のスクイズが決まり、先制点は蔡理。
さてさて、これは苦しくなってきましたね。どうにか蛮堂の投球から点をもぎ取っていかないといけなくなりました。

力の蛮堂に技の蓬莱。さらに智の桃ちゃんが合わさった感じの蔡理。これは強敵である。
桐湘にも対抗して知恵者が・・・知恵者が・・・ああ、うん。監督に期待しましょう。とりあえず。



Vol.32 アクシデント  (2014年 23号)


スクイズ成功により2回裏、蔡理が1点を先制する。
うーむ、桃ちゃんの作戦指示はなかなかにクレバーで油断なりませんなぁ。

盛り上がる蔡理のベンチ内。ナイスなランとスクイズを決めた蓬莱と山脇は桃ちゃんとハイタッチ。
その度に俺の桃ちゃんと反応する蛮堂。
自分で思うのは自由でありますが、桃ちゃんは皆のマネージャーですからねぇ。すれ違いすれ違い。

さて、先制された桐湘。
スクイズへの警戒を怠ったことで自分を責める之路さんでありました。ふむ、これはよろしくない感じですな。だが・・・

もう1本も打たせない!!

責任感の強さと想いがこもった時の球威の上がり方は凄まじさが之路さんの特徴である。
先制点を許して気落ちするどころか余計に気合を入れて熱の入った投球を行う。
結果、後続は無事に抑え、傷を最小限に留めることに成功しました。
しかしマウンドを降りた後だというのに厳しい顔をしたままの之路さん。うーむ、責任を感じていそうだ。

3回の表。桐湘の攻撃は七番の安保先輩から。
元五番であるが清作が三番に入ったことで調整され今この打順。
にも拘らず、元五番という呼びかけをする清作。このクソ天然はこれだから困る。イラッ

安保先輩は体格が立派なだけにパワーはある方である。
上手く芯を捉えれば蛮堂の球も前に飛ばすことはできるかもしれない。が・・・

心配はいらない桃ちゃん。キミが俺に与えてくれた1点。それは最早2人の間に生まれた新しい命
この身に代えても守ってみせる!!燃え上がれ炎よ。3人の未来を照らす光となれ!!

本当、この男はどこまでもお目出度いというか何というか。
放っておくとどこまでも1人で勝手に盛り上がっていってしまいそうで困る。
しかしそれでちゃんと気合の入ったプレーが出来ているんだからまあ結果オーライというか何というか。

さて、七・八番が倒れて次は九番の之路さん。
ヘタにヒッティングすると投手にとって大事な手をヤラれる可能性がある。
しかし今日の蛮堂は絶好調であり、1人の出塁が勝敗を分ける可能性は十分にあり得る。

打撃は苦手だなんて弱音は吐いていられない。何としても塁に出てやる。

短く持ってくらいつこうとする之路さん。
蛮堂の凄い圧力の球にも逃げずに立ち向かう。結果として当てることには成功したが、球威に押されてファーストゴロ。
それだけならまだ良かったのだが・・・どうやらベースを踏んだ時に左足を挫いた様子。おやおやこれは・・・
マウンドに向かう之路さんの様子を見ていち早くそれに気づいた久澄監督は喜多さんに投球練習をお願いする。おやおやこれは。

3回の裏。蔡理の攻撃は八番から。
立っているだけでも痛みのある足で投球を行うのはかなり厳しい。
それでも気合でこらえて奮闘する之路さん。相変わらず自他共に厳しい人だ。
しかし怪我していることは周りから見ても明らかである。安保先輩ですら気づくのだから間違いなく明らかだ。
夏の本番じゃないんだから無理するなという安保先輩。いつもの言葉だけど、今回ばかりは正しいですわな。

・・・冗談じゃない。
リードされたまま、蛮堂に負けたまま・・・マウンド降りられるか!!

責任感の強さもだが、それ以上に負けず嫌いな之路さんでありました。
その気迫でどうにかこの3回は抑えるが・・・さすがにこれを続けるのは厳しそうだなぁ。
というわけで戻ってきた之路さんに久澄監督はこう述べる。

責任感が強いのは結構ですけど、1人で何とかしようだなんて思い上がらないでください。
それじゃあまるで清作君みたいですよ。

思わぬタイミングで引き合いに出される清作。でも凄く説得力がありますな。まあ、それはさておき。

大丈夫と言うならその言葉信じます。なので之路君も皆を信じて頼ってください。
弱みを見せるのは恥ずかしいことじゃありませんよ。チームなんですから

なかなかいいことを言いますなぁ監督。
選手に無理をさせず、気落ちさせることなく前を向かせる。なかなかのものだ。
之路さんにもこの言葉は響いた様子。きちんと足超痛い、後は頼んだと皆に言えるようになってくれました。超って。

俺たちはチームなんだ。俺1人が蛮堂に勝てなくても桐湘なら勝てる・・・!!

これこそ団体競技の醍醐味でありますわな。
チームを引っ張ってきた主将である之路さん。チームの勝利が自身の勝利と言っても過言ではないはず!!

円陣を組んで新たに気合を入れなおす桐湘。
相変わらず清作がぶっ飛ばされているがそれはご愛嬌。
弐織だけではなく左隣の相手にもぶっ飛ばされてそうな感じだが、左隣にいるのは安保先輩か?イラッとさせられたし仕方がないね。

之路さんの気迫は他の選手にも伝わった。
そして打順は二巡目。一番の児島センパイからの打順となります。
第1打席はビビって見逃し三振となってしまったわけだが、今度はそんな無様を晒すわけにはいかない。

ゴメンよ桃ちゃん。キミの悲しむツラは見たくないけど・・・勝負だからな!!

こいつはこいつで何を言い出すのかって感じですな。ツラ言うな。
まあ口には出してないし自己完結してるからいいんですけど。
でもそんな心の声が聞こえたのかどうか、蛮堂の球は体ギリギリのインコース。避けなければ当たるコースだ。
蛮堂の圧力のある球を体で受けるのはまさに身の竦む思いである。だが・・・

一番打者って損だなオイ。引くわけにいかねえべ!!

防御力の高い背中の筋肉で受け止める児島センパイ。ぎッ。
背骨に直撃するとヤバイところでしたが、上手く受けましたな。良かった良かった。

ようやく初の出塁者が出る。
これで蛮堂もセットアップでの投球になるだろうし、圧力は下がるかもしれない。
ここからの強力な打線で何とか同点にしておきたいところでありますな。



Vol.33 力馬鹿  (2014年 24号)


3回まで出塁者無しのパーフェクトピッチングを行っていた蛮堂。
しかしここで初めてのランナーを出す。
ノーアウトでの貴重なランナー。大事にしたいところでありますな。

次に打席に立つのは二番の柊。ぐりんぐりん。相変わらずの動きだな。
それはさておき、ここからの蛮堂はセットアップでの投球となる。
ワインドアップでフルパワーピッチングとはいかないし、打ち崩すチャンスではある。
それにあの体格ならば小回りも利かないはず。牽制やクイックも苦手と判断してリードを大きくとる児島センパイ。

早ェとこ三塁まで進んでベンチにいる桃ちゃんの側に行かせてもらうべ

煽るよう、蛮堂に聞こえるようにそんなことを言いだす児島センパイ。
その誘いに乗ってか、牽制を行う蛮堂。力いっぱいに。ファーストのグラブを弾き飛ばすぐらいに。加減しろ力馬鹿!!

こうしてみると蔡理キャッチャー山脇は凄いんですな。ずっとこの蛮堂の球を受け続けているわけなのだから。
さすがに毎食丼メシ5杯なだけはある。

ともあれ、これで児島センパイは二塁へ進塁。得点圏へ進めました。
そして更に桃ちゃんの名前を出して蛮堂をイラつかせようとする。見事な煽っていくスタイルだ。
が、ここで割り込んでくるのが蓬莱。蛮堂に集中を促すために膝蹴りを腹に叩き込む。ぬごっふ。

柊は第1打席からお前の球とらえた奴なんだぞ。

確かに。考えてみると二番バッターで早速とらえていたわけですし、凄かったですわなぁ。
蛮堂もようやくこの蓬莱の一撃で冷静になることが出来た様子。
うーむ、上手いこと間を取られてしまいましたな。

自滅を待つのも手かと思ったが、そうはならなさそう。
なのでここは手堅く送りバントを敢行する柊。ほほう。二番バッターらしいこともできるんじゃないですか!!
技術は確実にある人だし、バントもやはり上手いですな。
まあベンチからバントするの初めて見ましたとか言われちゃったりするわけではありますが。

目立ちたがりの柊もチームの勝利のために我を捨てる。
之路さんがケガをして後を託したのが効いてきた感じでありますかね。慕われてますなぁ之路さん。

さて、続いては三番の清作。
脳筋に見せ場をゆずる必要はない。キメてくるんだと柊に胸を叩かれる。
之路さんからも、離れてはいるが拳を突き出しての激励をもらう。
そして弐織からも・・・無言の鉄拳をもらう。加減しろ力馬鹿!!

何はともあれ、ワンアウトでランナー三塁という絶好の得点チャンス。
1打席目は力負けしてピッチャーフライであったが、今回は何としても勝ちたいところ。
児島センパイの足ならばゴロでもホームに突っ込める。外野フライなら問題なく生還するだろう。
しかしランナーが三塁のみとなったので心置きなく振りかぶって投げる蛮堂。
うーむ、やはりワインドアップでのフルパワーピッチングは迫力が違うなぁ。
そりゃランナー二塁のまま長打狙った方が良かったんじゃとか言われるわ。ワッツ!?

周りは蛮堂の球威に押されているようだが、当の清作は別のことが気になっている様子。
之路さんに後を託され、弐織たちに拳で気合を入れられ、その胸には熱いものが宿り出しているようだ。
いや、胸だけではない。その熱は体中に巡っている。

まるで――まるで炎。この気持ちが愛なのか!?

う、うむ?まあ仲間を想う心も愛情の一種と言えなくはないと思うけど・・・回答しづらい問いかけだな。
そもそも清作のその発言は蛮堂が口にする愛に絡んでの言葉だろうし、何とも言いづらいわぁ。

愛の力で蛮堂の球をとらえる清作。凄い打球だが、残念ながらファール。

愛に目覚めたはずなのに何でヒットにならねえ!?蛮堂に勝つにはまだ何か足りねえのか・・・!?

なんだかすっかりと愛を追い始めてしまっている様子の清作。
試合前はそんなの信じていないって工ちゃんに語ってましたのになぁ。
しかも更に自分に足りない物まで考えてしまっているようで・・・アレってまさか・・・

嫌な予感は的中した。いつものように桃ちゃんへの愛を語る蛮堂。その声を制する清作の大声。

桃ちゃんサーン!愛してまーす!!

やっぱりアレってソレかよ!!
赤面してしまうぐらいなら言わなければいいのに。それもデカイ声で。
蛮堂の声をかき消すほどのラブコール。これは桃ちゃんもどん引きだ!!
しかしそれでちゃんと打てるんだからこれは何なんですかねぇ。愛の力なのか気合勝ちということなのか。
とにかく清作の天然っぷりは凄まじいと再認識できました。恐ろしい男よ。

前進守備の内野の頭を超えていこうかという打球。
が、その打球を飛びついてキャッチする蓬莱。
うーむ、この男はやはり厄介ですなぁ。いいところで邪魔をしてくる。

蛮堂「蓬莱キサマ。更にその上をゆく愛を・・・!?
蓬莱「目ェ覚ませバカ」
清作「クソ。俺の愛を・・・
弐織「アタマ沸いてんのかクソ天然」

なんだかどっちもどっちな様相を呈してきましたな。ツッコミ入れる人たちも大変だ。

さて、結局児島センパイを返すことはできずにアウトとなった清作。
ツーアウト、ランナー三塁の状態で迎えるのは四番の弐織。
2R目となる筋肉対決。果たして軍配があがるのはどちらになるのか。また激しい脱衣が見られそうですなぁ。



錻力のアーチスト 5巻


Vol.34 極上  (2014年 25号)


4回表。ツーアウト三塁という状態で四番の弐織。
蛮堂とのパワー対決第2ラウンドであります。

同点なんてセコイことは言わねえ。ホームラン打って逆転してやるよ。来い、蛮堂・・・!!

闘志をむき出しにしている弐織。
蛮堂もまた、"弐織"に負けるわけにはいかない。今、再び桃ちゃんへの愛こそが唯一絶対だと証明する絶好の機会と考えている。
相変わらずおめでたいというかぶれないというか。すっかりこの発言にも慣れてきた感じがありますな。

投手の蛮堂は勝負する気しかないが、周りはもう少し冷静に考えている。
最悪歩かせてもいいからクサイ所をついていくか・・・
捕手の山脇はそう考え、桃ちゃんの意向を伺う。桃ちゃんも同じ考えであるようですな。

どいつもコイツも女の顔色ばかりうかがいやがって
そんなにベンチが恋しけりゃすぐにマウンドからひきずり降ろしてやる。慰めてもらえよ・・・!

これはよい煽りでありますね。
煽りに乗せられた蛮堂はクサイ所どころかど真ん中へのストレートを放ってくる。
弐織は待ってましたとばかりに振るのだが球威に押されたのか前へは飛ばずにバックネットに向かって飛んでいく。
うーむ、挑発には乗りやすいがその分、球の威力も上がっていくわけか・・・厄介な。

之路主将より球のスピード上ですけど、之路主将と同じでストレートしか投げれないスよー!!

ここでクソ天然からのアドバイス。
おい、それだと之路さんディスってることにしかなってないんじゃないか!?
しかも実は蛮堂にはストレート以外の持ち球があるという。これはますます之路さんの立場がない。
まあ、弐織相手にはストレートで圧殺を狙いそうな感じであるが・・・ここで桃ちゃんが声をかけてくる。
ふむ、確かに蛮堂の左目下の傷はストレートでねじ伏せることに拘った結果でありましたな。

この傷はストレートを過信するあまり、2年前の夏、チームを敗退させてしまったことの教訓。
ならばストレートにはこだわらん。キサマの兄"弐織"義壱を血祭りにあげるために会得した秘儀でキサマを屠る
恨むならキサマ血を恨め。"弐織"敏。

さすがに心を入れかえたと言ってるだけあり、2年前の敗退は自分に責任があると考えている様子。
そのような考えを持つに至らせた桃ちゃんはやっぱり凄いというか、扱いが上手いというか。

蛮堂のとっておきの球。
ストレートと思って振った弐織であるが、ボールは手元で沈み空振りとなってしまう。
フォーク・・・ではなく、スプリットでありますか。
フォーク程の落差は無いが、スピードがあって腕の振りもストレートと同じ。厄介な球である。
ふーむ。蛮堂のストレートは決めてかからないと打てなさそうだが、そこで変化してくるのは厳しいですなぁ。
桃ちゃんもこのまま変化球で押すなら勝負するのも悪くないと考えている様子。

ここに来て変化球か。やってくれるぜ。
150キロのストレートにスプリット・・・やっぱテメーは極上のエモノだ。意地でも喰らい付いてやるぜ。

ジュルっとヨダレを垂らしながらそんなことを言いだす弐織。うーむ、野獣系。
相手が手強ければ手強いほど燃え上がる性格なのはスポーツマンとしていい傾向でありますな。

蛮堂は2球続けてスプリットを放つ。
空振り――かと思ったが、膝を落として喰らい付く弐織。
さすがにストレートに比べると球威も速度も落ちますし、反応して合わせることは不可能ではないわけだ。
いやまあ、普通の打者にはまず無理なことだと思いますけどね。さすがの弐織といったところか。

この1球を見て、弐織に勝負を挑むのは危険と判断する桃ちゃん。
特に今は三塁にランナーがいるし、無茶はしたくない場面である。だが・・・

ゴメンよ桃ちゃん。キミの優しさに泥を塗ることになるけど、やはり俺は男なんだ。コイツと勝負がしたい

桃ちゃんに頭を下げる蛮堂。
ほう、これは少し見直しました。完璧に従順というわけではない。蛮堂にもまだ男として譲れない部分があったわけだ。
そして"弐織"の姓にとらわれ、兄と比較した無礼も心の中で詫びる。
どうやらしっかりと弐織敏本人を見据えて戦うつもりになったようですな。

全力で勝負すると決めた。となればここで変化球を投げることはできない。
蛮堂と弐織。パワーとパワー。その決着をつけるに相応しい球は一つ。

全身全霊全筋力のストレート!!

今まで以上の力を込めて放たれる蛮堂のストレート。
だが、こういうエースの決め球を完璧に打つのが四番の仕事である。
弐織のバットは蛮堂の球を捉え、球威に負けることなくひっぱり・・・レフト側のフェンス直撃の二塁打となる!!

さすがに消し飛べオラ!!の言葉ほどの結果ではないが、見事なタイムリーとはなりました。
清作も思わず茫然としてしまうこの対決。うーむ、やはり四番は簡単には勝ち取れなさそうですね。

敗れはしたものの、蛮堂の球は素晴らしいものであった。
蔡理のベンチでも、あの球を打たれたら仕方がないという意見が出ている。

ガン

あ、えっとすみません。仕方がないとかそんなことないですよね。ええ!!
苛立ちを見せての机蹴りでありましょうか桃ちゃんさん。突然はやっぱり怖い。
でも表情を見る限りはまだそんなに変わっている感じはない。
実は足を組み替えようとしたら当たってしまっただけとか。うん、まあ、ないな。

桃ちゃんの勧めを断ってまで勝負を挑み、敗れた蛮堂。
これはひょっとすると自身の愛に疑いを持つような流れになってしまうのだろうか・・・
桃ちゃんさんの態度も含めて色々と気になる流れになってきましたよ・・・!!



Vol.35 武器  (2014年 26号)


4回表、四番弐織のタイムリーで1対1の同点に追いつく桐湘。
蛮堂は今大会初失点となるそうな。さすがにこれだけの球を打てる高校生はそんなにいないですわなぁ。

猛獣使いこと桃ちゃんのサインを無視してストレートを放り、打たれた蛮堂。ショックは大きい。
桃ちゃんの方も何だか苛立っていそうな雰囲気ですな。机を蹴るだけでは収まらないか。

何たる不覚。桃ちゃんが俺に与えてくれた1点を失っただけでなく、桃ちゃん以外の人間に心を動かされてしまうとは・・・

何を言ってるんだこの男は。
毎度のことだけど改めて言わざるを得ない。何を言ってるんだこの男は
まあ、今回の発言は今までとは少し毛色が違うみたいですけどね。

渾身のストレートを打たれたのにもう1度キサマと相対したいと願ってしまう。
俺の心は桃ちゃんに捧げたというのに。クソッ。揺れるな!俺の心!!

本当に何を言い出しているのだろうかこの男は。
まあ、男子たるもの好敵手に巡り合って昂るのは悪い話じゃないと思うのですよ。
それと男女間の恋愛は別物なので混ぜ合わせてはいけない。一途なのは本当困りものであるな!!

揺れる蛮堂。そのためか集中力を欠き、球が緩くなる。
その迷いをギョロリとした目で捉え、一・二塁間を破るヒットを放つ頭木さん。
おぉ、これでこの回2点目。ついに逆転でありますな。いい感じだ。

殊勲者である弐織がベンチに帰還。ハイタッチで出迎える選手たち。
清作もようやくそういうものがあると学んだのか、照れながら手を上げる。普通にしなさいよ。
まあ、おいおい慣れていくことでありましょう。慣れてくれないといつ天然が飛び出すかわからなくて困るしね。

迷いを見せている蛮堂。
しかし、桃ちゃんの悲しそうな顔を見て吹っ切れる。もう2度と心移りはしない!!と。そ、そうか。
崩れるかと思ったら、しっかりと立ち直ってきましたな。
このぐらいの精神的なタフさがなくては一途な恋など出来ないのかもしれませんなぁ。

スリーアウトでベンチへと戻る蔡理ナイン。
他の選手は蛮堂に打たれたことについて気にするなと声をかける。やはり男の子には気持ちが分かってしまうということか。
しかし、肝心の桃ちゃんはやはり機嫌を損ねている様子で・・・ぬぅ・・・

倦怠期はどんなカップルにも訪れる。この試練を乗り越えてこそ絆が深まるというもの

どうやらすっかり立ち直った様子の蛮堂。安定の何を言っているんだ感が戻ってきました。やっぱりタフだなコイツ。

さて、四回裏。蔡理高校の攻撃。
この回から桐湘の投手が之路さんから喜多さんへと代わる。
蔡理の打順は二番から。四番の蓬莱に回る厳しい打順であるが・・・せっかく逆転したことだし、頑張ってほしい。
弐織と気合を入れ合う喜多さん。いい感じに燃えているようですな。

喜多さんが出てくると観客の女子が沸き上がる。
之路さんの時より多いが・・・いやまあ、これは喜多さんが人気なだけでね、之路さんが悪いわけじゃなくてね。たぶんだけど。

チーム一丸で逆転した後、之路主将にたくされたマウンド・・・
この1点リード・・・守りきってみせる!!

気合の入りが違う喜多さん。
その初球はスライダー。球速こそ120キロほどであるが、打ち気に逸った蔡理の打者はこれを引っかけてしまう。
打たせて取るタイプの喜多さんとしては完璧な立ち上がりですな。
打球を処理した柊もノリノリである。イヤァオ!!

何だか之路主将の時よりノビノビしてますね

うん。まあ何故かは言うまでもないですけどね。言ってやるな栗原くん。

さて、続いての三番。こちらはじっくりと見ていく様子ですが、その相手に対しインコースギリギリの球を放る。
ふうむ。球速こそないものの、コントロールは見事なもののようですな。
之路主将と違って丁寧なピッチングってことだ。

お前、清作の天然が伝染ったか・・・?

ザクザクと之路さんを追い詰める栗原くん。
単に喜多さんを褒めているだけなのだろうが・・・これはまさに清作風である。天然の伝染とか怖すぎる!!

左のアンダーというめったに見ない特異性。
それにコントロールの良さと変化球。それらを組み合わせたのが喜多さんの武器である。
之路さんとは色んな意味で対照的であり、二番手投手としてはなかなか面白いと言える。

この回のポイントは四番の蓬莱・・・その前の打者にあえて武器を見せる。

タイミングさえ合えば打てると踏んだ打者に対し、クイックモーションでタイミングをずらす喜多さん。
さらに縦に落ちるカーブで慌てて振ったバットも触れることが出来ずに空を切る。ほほう。なかなかに多芸ですなぁ。

打者が勝手に読みあいを複雑にしてくれれば好都合だ

武器を先に見せるのにも利点はあるってことですね。確かにこれは推測するのが難しい。
が、之路さんに言わせると打者の蓬莱も狙いが非常に読みにくい相手であるらしい。

インコースに食い込むストレートはグイグイくる肉食系の女子。
鋭い曲線を描くスライダーはスタイルのいいモデル系・・・?
ストレートと同じ腕の振りから縦に落ちるカーブはギャップのあるウチのマネージャーか・・・?

さすがに球数が豊富だと女の子の種類も豊富になりますな。
蓬莱は狙いが読みにくというが、まさか真面目な顔してこんなことを考えているとは誰にも分かるまいって感じでしてなぁ。
その気の多い蓬莱はどのように狙い球を絞ってくるのか・・・

蛮堂・・・お前みたいに狙い球を絞りすぎると痛い目見るぞ。一途なだけじゃ他のエモノを見逃すことになる。
せっかく色々披露してくれたけど、男と駆け引きする気は無い

あえて狙い球を絞らずに、来た球を打つ構えでありましょうか。
近付いてきた子は誰でも拒むことなくアプローチをかけるとかそういう発想だろうか。
駆け引き無用。どんな子でもドンと来いってことだろうか。どうなんだ!!?



Vol.36 軟体  (2014年 27号)


四番、見参。
蔡理としては逆転された直後の攻撃で取り戻しておきたいところである。
逆に桐湘としてはこの四番の蓬莱を仕留めて流れを完全に引き寄せたいところ。

俺なら一発狙う

鼻息の荒い清作。
でもまあ、ツーアウトランナー無しだし、清作じゃなくてもここは狙うところでありましょう。

・・・1打席目は之路主将のストレートをあと少しでホームランというあたり・・・
之路主将が力で抑えられなかった相手を俺が打ち取るためには、コントロールと変化球で狙いを外す。

軟投派である喜多さんとしてはそれしかないでしょうな。
しかし果たしてそれが通じる相手かどうか・・・
蓬莱の方はやはり一発を狙っている様子。
先の回で弐織がレフトフェンス直撃のタイムリーツーベースだったことを受けて、自分はレフトフェンス越えを狙うらしい。ふうむ。

やはり喜多さんはコントロールがよく、キッチリと長打になりにくい場所に放っていっている。
球速は無くても見慣れないアンダースローとこのコントロールは結構な武器でありますな。

それに前の打者人には変化球をチラつかせてたが・・・
やっぱ俺は見えそうで見えないくらいがそそられると思うんだよ。見せパンには喰い付かないぜ。

ボール球には手を出さない蓬莱。
それはいいけど、何考えてるんでしょうねコイツは。
蛮堂と蓬莱。性格の違う2人だが、共通していえる部分が1つだけある。
一番言ってやりたいツッコミが――何を言ってるんだコイツは・・・になることだ!!

ともかく、ボール球には手を出さない蓬莱。もっといい球を・・・と考えている。

もっといい女を・・・

蛮堂と違って口には出さないけど、本当こいつも大概でありますな。
やはりこのぐらいの濃さがないとこの世界はやっていけないのか・・・?

それはさておき、カウントは3ボール1ストライク。
そのまま歩かせてもいいのではと思わないでもないが、喜多さんは勝負をかける。
次の1球、決め球のカーブで打ち取る!!そのように考え、自信を持って放つカーブであるが・・・

左のアンダースロー・・・独特なフォームだからもっとクセのある球を期待してたんだけどな・・・
どいつもこいつも素直なイイ球だ!!

クセのある子も素直な子も問題なしってことですか。そうですか。
コースは厳しい内角低めだったというのに、狙い通りレフトフェンス越えのホームランを打つ蓬莱。
うーむ。やはりこの男は厄介ですねぇ。考えていることはさておき、起こされる結果は厄介だ。

一番避けたかったホームランを打たれて消沈する喜多さん。
その喜多さんに対し、俺への当てつけでレストスタンドを狙ったってよと報告する弐織。

遊んでやがるんだアイツは。ホームラン打ったってのにスカシてんのも気に入らねえ。

弐織の言葉を聞き・・・消沈している場合ではなくなった喜多さん。悔しさが表情に出ておりますな。
ここは弐織の言う通り、気持ちを切り替えず、八つ当たりでもいいからその感情を次の蛮堂にぶつけて欲しいものであります。

というわけで、次の打者は五番の蛮堂。

見ていてくれ桃ちゃん!!俺のバットでキミを喜ばせてみせる!!

俺のバットで女の子を喜ばせるとか何ですかそれは。下ネタか貴様!?
これにはさすがにベンチから罵倒が飛ぶ。
前の回はドンマイとか言ってたはずの部員からも失点の責を問う声が改めて飛ぶ。何!?
まあ、これはイカンよね。意識してなかったとしててもこれはイカン。スポーツ中の下ネタは制裁じゃ!!

さて、蛮堂と相対する喜多さん。
喜多さんには蛮堂のような体格や球速は無い。
しかし、体の柔軟さを活かしたアンダースロー。これは蛮堂にはない喜多さん独自の武器である。
そのタイミングの取りづらい投法であれば、蛮堂を手玉に取ることも可能なはずでありましょう。
というか蛮堂は球をよく見ろ。

俺には桃ちゃんしか見えん!!

辞めちまえバカ野郎!!ついにはそんな罵倒が飛ぶ蛮堂。相変わらず突き抜けた男だ。
まあ、桃ちゃんの態度によるショックとかは無さそうで良かったと言うべきなのかどうなのか。

さて、ここで回想に入り出す喜多さん。
野球を始めた頃は左のオーバースローだったという。
けど、左投げというだけでは珍しくもないし、自分より速い球やキレの良い変化球を投げる投手は何人もいた。
走っても打っても平凡。テストも平均値・・・80点は平均値・・・?

どこにいても何をしていても、ずっとその他大勢の中の1人だった。
・・・自分が胸をはれるもの。自分の個性って何だ・・・?

悩む喜多さん。イケメンにだって悩みはあるってことですな。
まあ、確かに周りは個性的な選手が多いですし、自分の個性というのを考えると悩んでしまうのは分かります。
とりあえず柊の個性を真似るのだけはやめておいた方が無難ですな。間違いなく。

上で通用しないなら・・・横。これならどうだ。打たれないか・・・?

オーバースローからサイドスローに変える喜多さん。
しかしこれも通じない様子。まあ、打ってるのが弐織ではあまり参考にはならない気もするが・・・
とはいえ喜多さんも何だかんだで負けず嫌いである。
誰であっても通用するような個性を磨くことを考えている。
その喜多さんの個性とは・・・体の柔らかさ。タコと呼ばれるほどの軟体を駆使したアンダースロー。

無いものは身につけるしかない。他人には真似できない俺だけの武器を。自信を持ってマウンドに立ち続けるために!!

喜多さんもまた熱い人であります。
たゆまぬ努力を続ける桐湘らしい選手と言えますなぁ。
さて、その身に付けた武器は蛮堂に通用するか・・・

愛は全てに勝る!!
今あらたに生まれ出づる、俺と桃ちゃんの第二子の祝砲!!

やはりこの男の何言ってるんだコイツは感は凄まじい。
が。愛の空回り感がどんどんハッキリしてきているせいか、効果は薄かったようだ。
芯をとらえ損ねた当たりは、ライトフライ。見事、喜多さんが抑える形となりました。ッしゃあ!!

普通の投手だと思っていたけど、普通にいい投手か・・・
けどそれが手持ちの武器全部なら、もう"詰み"だぜ。

喜多さんの頑張りは良かったが、蓬莱にしてみればこのぐらいの評価で収まる様子。
うーむ、やはりこの蓬莱をどうにかしないと蔡理に勝つのは難しそうですな。
4回終了で2対2の同点。
之路さんが下がるのは早すぎましたが、ケガでは仕方がない。
攻撃の方は打ち崩す可能性が見えたが、守る方は少し厳しい状態。
となれば、取られる以上に取りまくるしかない・・・?むう、そこまで打ち崩せるかどうか。厳しい戦いになりそうですな。



Vol.37 流し打ち  (2014年 28号)


5回の表、桐湘の攻撃。七番の安保先輩からですが、下位打線ではさすがに厳しそうだ。

2対2・・・俺の不甲斐なさ故接戦になってしまった。
桃ちゃん・・・キミが目を合わせてくれなくても仕方無い・・・
だが愛とは耐えるもの。時が経てばこの苦しみすらキミと同じ時間をわかちあった悦びへと変わるだろう。
1分1秒1球と時を重ねるごとにキミへの燃えるような想いは熱を増すばかりだ。

すっかり元の調子を取り戻した様子の蛮堂。
こいつは毎度お目出度いと言うか何というか。まさに頭の中がお花畑でありますな。

勢いを取り戻した蛮堂によりこの回は3者連続三振で終わる桐湘。
凱旋する蛮堂に対し、顔を伏せていた桃ちゃんが・・・ようやく目を合わせ、ナイスピッチングと褒めてくれる。
おやおや、これは蛮堂盛り上がりますね。
倦怠期というマイナスからのプラスという振り幅効果で嬉しさ倍増だ!!桃ちゃああん!!

いいように転がされやがって。喉裂けちまえバカ野郎。

毎回のように叫んでいるのに確かによく持つ喉だとは思う。
しかし弐織は女性に対して随分と冷静な感じでありますね。興味が薄いのか?
と思いきや、喜多さんへの女性ファンの歓声については面白くなさそうな顔してるし、そういうわけでもないのか。

・・・皆、試合に集中しろよ。

之路さんの一言で背筋が伸びる弐織たち。
うむ、桐湘の方の猛獣使いはひたすら厳しいようだな。まあ、之路さんに桃ちゃんのようなアメを期待されても困りますし。
一応マウンドに上がっていない時はそれなりには優しいはずなんですけどね。少なくとも表面上は。

5回裏の蔡理の攻撃。
こちらも下位打線に入るところなので前の回よりは喜多さんも安心して投げることができる。
その喜多さんのピッチングを観客席で見ているのは・・・左薙伏。

・・・喜多サン、アンダースローだったんですね。
しかも僕より変化球が多彩だ。カーブにフォークにスライダー・・・シンカーも投げてますかね・・・?
是非ともアンダースロー談義をだせていただきたい・・・!
けどアンダースローは体力を使うから、蔡理の強力打線相手にどこまでもつだろう・・・

二人羽織のように制服の上着を被り、背を丸めて観戦している左薙。これは目立つ。
どこにいても浮くなと言われるのも仕方がない。
にしても左薙も顔バレするぐらいに有名となったのか・・・何だか嬉しそうにしているのが可愛く思えるぞ。

5回の裏を無事に抑える喜多さん。
ここまでずっとコールド勝ちをしている蔡理相手に互角の戦いをしている桐湘。なかなかのものである。
さて、こうなってくるとこの後の展開はどちらの投手が先に疲弊するかにかかっていそうです。
アンダースローで体力を使う喜多さんはもとより、蛮堂にも弱点と思われる部分はある。

あのドラゴン体型を通り越したヘビー級ファイターのような筋肉量で全力投球を続けていれば、
いくら「ほぼ覇王」の蛮堂サンと言えど相当体力を消耗するはず・・・

ドラゴン体型とかほぼ覇王とか一体どこの言葉なのだろうか。何となく分かるからいいけどさ。
何にしても球数の増えるこれからが勝負の分かれ目となるようですな。久澄監督もそう考えている様子。

今まではコールド勝ちしているため長いイニングを投げきるスタミナがあるかは未知数ですが、球威が落ちる可能性はあります。
元々コントロールには難のある投手ですから、じっくり待って球数を投げさせていきましょう

省エネで投球する性格でもない蛮堂。球数が増えればそれだけ疲労も激しくなりますわな。
そうと決まればなるべく粘りたい。
6回の表は児島センパイから。ボール球はよく見て、ストライクの球はカットしてファールにし、球数を増やさせる。
うーむ、蛮堂の豪速球をカットし続けるというのも凄いなぁ。手がヤバイことになりそうだ。

児島「来いオラァ!!」
蛮堂「その並々ならぬ気迫。それ程までに桃ちゃんに近づきたいか!!この不埒者が!!

蛮堂に不埒者と呼ばれるというのも・・・
純粋ではあるが、試合中に女の名を叫びまくるのは不届きもいいところではあるまいか。

何にしても、コースギリギリに入った球を見逃した結果、ストライクを取られて三振になる児島センパイ。
審判の裁定によっては出塁の可能性もあったのだが・・・惜しいな。でも役割は果たした感じです。いい粘りだ。

だがやはり愛の力無くして奴は打てないようだな

続く二番の柊はそんなことをのたまう。さすがに彼女持ちの余裕という事か。
この試合でなかなか言及されないから、実はエア彼女なのかと思ってましたが・・・いや、まだその可能性は否定できないか!!

スイッチヒッターである柊は、今回右打席に入る。
一般的には右投手には左打席の方が有利と言われているのだが・・・何か考えがあるのだろうか。

成程。柊サンのパワーでは正面や逆方向に引っぱるより流し打ちの方が蛮堂サンの球をヒットしやすいけど、
左打席で流し打ちすると打球はレフト方向に・・・今日既に2つ好守をしている蓬莱サンのいる方へ飛んでしまう。

そういうことですか。確かに蓬莱のいるところだと少しばかりいい当たりでも捕られる可能性ありますからなぁ。
方向を定められるならば避けた方がいい相手なのは間違いありませんわな。

フロウヒッティング!!

流し打ち・・・の英訳のつもりの柊。
左薙がいると柊の英訳に対するツッコミも適宜入っていい感じだ。
それはさておき、柊にも放たれるスプリット。
弐織との戦いで既に見ているとはいえ、いきなり投げられるとやはり対応は難しい・・・が、上手いことこれを拾う柊。おぉ。

どうにかバットコントロールをして当てたが、打球はセカンドの正面に。
しかし打球が弱い分、捕球するまでには時間がかかる。それまでに走れば間に合うかもしれない!!

当たりの弱さを幸いに走る柊。さらに気迫のヘッドスライディング。
その気迫がいい方向に出たのか、審判の判定はセーフ。見事に出塁できましたなぁ。アイディドイッ!!

柊が出塁したことにより、ワンアウト一塁の状況で三番の清作に打順が回る。
蛮堂はランナーを背負うと崩れるし、球威も落ちる。勝ち越しのチャンスだ。
2打席出塁できていない清作としてはここは何としても打ちたいところであるが・・・どうなるか!!
港南の穂村と八子ッチも観戦に来たことだし、ますます無様な姿は見せられない。頑張れ清作!!天然の力を見せろ!



Vol.38 ゴリゴリ  (2014年 29号)


6回表、2対2でワンアウトランナー一塁。
桐湘チャンスの状態で球場に姿を現すのは王者・港南のエース穂村。それに八子ッチ。
さすがに穂村は有名人であるようで、すぐにその存在は噂される。
アイツ他校の試合見るの好きだよな。ヒマあんなら練習しろよ、と。ごもっともだ!!
いやまあ、投手は他のチームの打者の研究するのも大事ですしさ。ね。

この試合三番に抜擢されている清作。
元チームメイトではあるが、仲が良かったとはいえない2人。
まあシニアの頃の清作はねぇ。今では考えもつかないほど周りから浮いていましたな。
抑えてくれる人、尊敬できる人が出来て清作は変わった。
相変わらずホームラン狙いなのは変わらないが、周りに期待し、周りから期待されるようになっている。いい変化だ。

柊「リピートアフターミー!カモナウ!」
清作「かもなう!

先輩の言葉にも素直に従うクソ天然。言わなくていいんだバカ野郎!!可愛いなオイ。
というか発音自体は棒読みだが、リピートアフターミーは理解できたんですな。
この男は天然なだけでそこまで頭が悪いわけではない・・・はず。バカじゃなくて天然なんですよっと。

ともかく、清作の打席。蓬莱の好守に阻まれたとはいえ、蛮堂の全力の球を打ち返した実績を持っている。

どんな球(コ)が好みだ・・・?

相変わらずこの男はそういう考え方しかできないのだろうか。
口に出さないだけで、蛮堂並にツッコミどころが多い奴で困る。

さて、ぎこちないセットから放つ蛮堂の初球。
全力の球をイメージしていたせいか、振るのが早すぎてファールになってしまう清作。
まあ振り遅れるよりはいいかもしれませんな。これで修正も出来たことでありましょう。

これなら打てると笑みを浮かべる清作。打席であんな顔をするのも見慣れないと言う八子ッチ。
もうシニアの頃の清作の姿とはかけ離れつつあるようですなぁ。
そしてこの笑みを目撃した蛮堂はこんなことを言いだす。

・・・俺と相対することに喜びを感じているのか。
だがキサマの気持ちには応えられん!俺の心は桃ちゃんのものだからだ!!

相変わらずこの男には愛が一種類しか存在しないらしい。
強敵との喜びと男女間の恋愛は一緒くたにはできないというのに・・・
心に占める割合の話をしているということなのかもしれませんが・・・あらぬ誤解を受ける言い回しは止めるんだ!!

それはともかく。蛮堂の2球目は内角低めの厳しい所を突いてくる。
セットの場合、球速は落ちるがコントロールはマシになっているのか、ここに集められると厳しい。

ツーストライクと追い込まれた清作。
バッテリーはここでスプリットでの空振りを狙う。上手い判断ですな。

弐織義壱を仕留めるために身につけた球だが出し惜しみはせん。これ以上の失点は許されんのだ。
全ては俺と桃ちゃんの愛のために!!

いつも通りの調子になっている蛮堂。
だが、清作も蛮堂の言葉で大事なことを思い出したらしい。そう、愛が大事だと言うことを!!大事なこと・・・?
何にしても初見でスプリットを当ててファールにしてみせるのは大したものである。
ホームラン狙いの大振りならば空振り三振も狙えると思ったのでしょうが、アテが外れましたな。

――そうだ。前の打席、桃ちゃんサンの名前を叫んだら打てたんだった。
彼女がいるらしい柊先輩も出塁してる。弐織先輩は否定してたけど、蛮堂の球を打つにはやっぱ愛が必要なんだ!!
――待てよ。けど俺、好きな奴いねーぞ・・・!?そんな俺が蛮堂の球を打てるのか!?

大事なことに気付いた清作。
そこに気付いたのなら、前の打席で好きでもない人への愛を叫んでも打てたことまで気付いて欲しかった。
まあ、一途な想いが力になるってのは確かに無くもない話なんでしょうけども・・・さ。

やっぱ打てねぇ。桃ちゃんサンに対する蛮堂の愛に負けないくらい好きな相手が俺にはいないからだ!

どんどんそっちの方に思考が向かっていく清作。
実際のところ、この速さでインローを厳しく攻められればそれだけで打つのは難しい筈なんですよね。
インローを完璧にすくいあげられるのは一握りの天才だけと左薙も言っている。
その天才に該当するのは弐織義壱や蓬莱・・・

天才と言う意味ならアイツもそうですよ。穂村先輩。

そのように述べるのは八子ッチ。
ふむ、何だかんだで八子ッチは清作が凄い奴であることは認めているんですな。
だからこそ脅威と感じて追い落とすようなことをしたわけですし。
それにまあ、天才と何とかは紙一重といいますしなぁ。うん。

俺の好きな奴・・・ベンチにいるわけねえか。
スタンド・・・クラスメイトだ。アイツ名前なんだっけ・・・?
・・・どっちにしろ違うな。何とも思わねぇもんな・・・ヤベェ。このままじゃ蛮堂の球を打てねえ。

工ちゃん、可愛く描かれているというのにそんな扱いですか。
まあ、それほど恋愛に結びつくイベントをこなしたわけでもないですし、仕方がないのかもしれませんが・・・うーむ。

余計なことをゴチャゴチャ考えている清作。その背中に弐織の声が響く。
相変わらず打席に立つと今まで聞いていたアドバイスとか頭から抜けちゃうんですなぁ、このクソ天然は。

そう言えば桐湘入ってから弐織先輩にシゴかれた記憶しかねえ・・・
俺の頭ん中は弐織先輩で一杯だ。もしかしてこれが愛なのか!?

ああ・・・何となくそんな気はしてたが、やっぱりそこに行き着くのか。
まあ確かにそういう感じになるのが愛なのかもしれないけど・・・いやだから男女間の恋愛とは別だと・・・別で、いいんだよね?

弐織先輩・・・!!愛してまーす!!

俺の気持ちをぶつけるんだ!!とか考えながらそう叫ぶ清作。オヤオヤ。
これに対する弐織の答えは一言である。死ねバカ。ですよねー。

何にしてもそれでちゃんとライト線ギリギリのヒットになるんだから困るというか何というか。
清作がやっぱこの気持ちが愛なんだなと確信し出しているのが怖い。
まあ、愛の形は人それぞれですしねぇ・・・

蛮堂「むう・・・俺の想像を超える愛の形とその力。恐るべき打者だ・・・」
蓬莱(成程な。ゴリゴリのハードな男が好みなら、蛮堂の球はモロタイプだろう)

何だか知らないが蔡理の2人に愛の形を許容されてしまったぞ!!
さすがに恋愛に関しては含蓄があるということか。いやそれで納得してしまっていいのか・・・!?

愛についてはさておき、あの厳しい球をきっちり打ったことで港南の2人は高く評価されている。

桐湘に行ってキャラが変わったように見えてましたけど、本質はそのまま。天然で天才ですよアイツは

まさにその部分はそのまま何ですよね。
清作本人が大きく変わったと言うより、周りの環境が良くなったのでいい風に変化したと考えるのがいいんでしょうな。
後輩キャラとなることで輝くタイプとは面白い。

さて、ワンアウトランナー一・三塁という絶好の場面で四番の弐織登場。
蛮堂としても意識せざるを得ない相手。
しかしこのピンチの場面で素直に勝負させる桃ちゃんではない。
前の打席でも勝負に夢中になってしまった蛮堂でありますしね。

というわけで、蔡理の選手交代。
投手の蛮堂がライトに行き・・・代わってマウンドに立つのはショートの蓬莱
なんとまあ。こいつピッチャーも出来るのかよ。
まさかこれが本来のポジションとか言わないだろうな・・・

蓬莱は厄介な奴だと思ってましたが、よもやここまでやってくるとは。
読みも鋭いし、どんな球を放ってくるかわからない。
やはりこの男を倒さなければ蔡理には勝てないか・・・大事な場面となりそうでありますな。



Vol.39 マネージャー  (2014年 30号)


ワンアウトランナー一・三塁で四番の弐織。
桐湘としてはチャンスの場面であるが、ここで予想外の選手交代。
まさか蓬莱がマウンドに立つとは・・・
弐織のためだけのワンポイントリリーフといった感じでしょうが、これはどうなのだろうか。
確かにストレートもスプリットも打たれ、ランナーを背負った状態の蛮堂が相手するのは厳しいでしょうが・・・

先刻の借りを返したかった蛮堂も悔しそうである。
さらにライトに移動になったことで桃ちゃんから遠く離れた場所に配置されることとなってしまった。悲しかろう。

桃ちゃん・・・たとえ遠く離れても何億光年も彼方の星の光が夜空を彩るようにキミの輝きは俺を・・・

駄目だ。少し距離が開いたぐらいでどうこうなる男ではなかった!!
どこまでもへこたれない男である。

さて、蛮堂の代わりにマウンドに立った蓬莱。制球の良さが印象にあるとは頭木先輩の言葉。
なるほど。蛮堂だと言うこと聞かないから扱いやすい蓬莱に代えたというわけですか桃ちゃん。
そうだとなるとこの勝負は桃ちゃんとの読み合いにもなるわけですな。

アチコチ男転がすと後で痛い目見るぜ

クールにそう述べる弐織。なかなかカッコイイですな。
桃ちゃんとしてはさすがに1失点は仕方ないと思っている場面。
最高の結果は内野ゴロにしての併殺でしょうが、せめて外野フライまでにはしたいとの考えの様子。さてさてどうなりますか。

桃ちゃんのリードに従っての蓬莱の初球はインハイにストレート。
球速は大したことがないが、コントロールは良い。
狙ったところに投げてくれるのなら桃ちゃんも扱いやすそうですな。見習え蛮堂ー!

2球目はアウトコースのボールゾーンにゆるいカーブ。
これは目線を絞らせないように、内と外に速い球と遅い球を交互に放る。セオリー通りの攻め方って奴だ。
なので3球目もアウトローにボール球であったならば、続いての4球目はインハイに速球が来るはずである。
その弐織の読み通り、インハイへのストレート。これをファールにする弐織。カウントは2−2となった。

セオリー通りなのもいいが、さすがにそれだと読まれやすい。
せっかくリリーフしてもこれじゃ打たれますよと八子っち。
それに対しての穂村。蛮堂サンが打たれないことが重要なんじゃないかとのこと。
なるほどね。割とすぐに立ち直ったけど、蛮堂も正面からぶつかって弐織に再度負けることがあれば引きずりそうですからなぁ。
そういう意味では蓬莱ならば打たれても引きずることはなさそうである。都合がよいわけだ。

――けど、配球が読めていたなら今の球、打てたんじゃないかな・・・?

疑問に思う左薙。
ふむ。どうやら弐織も先の蛮堂との戦いに比べると盛り上がりに欠けている様子でありますな。
気合の入った相手でないと打つ方も盛り上がりに欠けるということだろうか。
だが、おかげで頭が冷えて冷静なバッティングができるようになっている弐織。
柊には脳筋呼ばわりされているが、クソ天然とは違って結構頭も使うのですぜ。

5球目はアウトローのボール球。これでフルカウントとなりました。

次でキメてやるよ蓬莱・・・いや、マネージャー

勝負の6球目。
セオリー通りであればアウトコースにボール球の変化球。
見逃せばフォアボール。ひかっけさせて内野ゴロ狙いってところでありましょう。
だが・・・ここであえてそのセオリーを破ってくるのが桃ちゃんである。
読みやすい配球と思わせておいて、勝負所で裏をかいてくる。桃ちゃんらしい配球だ。しかし――

悪ィなマネージャー。アンタが一筋縄じゃいかないのはよくわかってんだ。
俺まで転がされる気は無えよ!!

見事にその配球を読んでいた様子の弐織。
インハイの厳しい所を器用に捉える。強気な女(タマ)が好みか・・・いや、そんなこと言ってる場合でもなかろう蓬莱。
ともかく弐織のバットが轟音を鳴らし、ベンチの桃ちゃんをもぐらつかせる。あら何だかいい表情。
久しぶりだから油断したのか、耳を抑え忘れていた柊にもダメージが言っているが、三塁ランナーだしまあいいか。

打球は右中間の長打コース。フラフラになりながらもホームに辿り着く柊。
ここまでは予想通りだが、一塁ランナーの清作もホームへと還ってくる。バックホーム!!
右中間の深いところ。いいところに飛んでいるが、そこにはポジションの代わった蛮堂がいる。強烈なバックホームが来そうだ。

やはり俺でなければ弐織は打ち取れんか!だが、2点はやらん!!

レーザービームというか、彗星のようなバックホームが飛んでくる。
コースもキャッチャー正面のストライク返球。クロスプレーにはなるが、これならアウトに出来る。
そう思ったのだが・・・何故かボールが手元で沈む。

何で今・・・スプリットを!?

弐織を意識するあまり思わずスプリットを投げてしまった蛮堂。それでホームまで届くってどういうことなのか!!
というか急速に劣るスプリットでギリギリならば、ストレートなら余裕で間に合ったんじゃなかろうか・・・
制御がつかなくて暴投してた可能性はありますけどね。

何にしても弐織のタイムリーで一気に2点を勝ち越した桐湘。これは大きい。
逆に蔡理・・・いや桃ちゃんとしてはこの2失点は痛すぎる。1失点は覚悟していたのにこの結果は想定外。
その想定外の結果を受けて・・・ついに桃ちゃんが本性を現した!!

にゃあらー!何やってんだテメーらァ!!
バカ返球すんな蛮堂!!後逸すんな!そもそも打たれんな!!

怒りのちゃぶ台返しが炸裂しました。おやおやこれは。ハッハッハ。
でも弐識の言う通り、これはこれで可愛気があるというか・・・普通に可愛い!!
叫び声がイカしてることもあり、これはなかなか・・・
そりゃ蔡理のキャッチャーこと山脇もゾクゾクしちゃうものである。いや、するな!!

まあ山脇はよく桃ちゃんから指示を受ける立場でありましたからねぇ。
本性も理解しており、むしろこの姿の方がイイと常々思っていたのかもしれない。いや知らんけども。

次号は桃ちゃん劇場開幕!?とのことだが、どうなるのか。
蛮堂はこの桃ちゃんの姿を目にしてどのような態度を取るのか。非常に気になります。
しかし打たれた責任という意味ではリードをしていた桃ちゃんにも立派にありそうな感じなのですが・・・
いやまあ、それを言ってもどうにもならない気がしますので自重しますです。ハイ。



Vol.40 青春  (2014年 31号)


予想外の被害に憤慨する桃ちゃん。ついにその本性を露わにする。

2点も取られてんじゃねー!!ポンコツかテメーら!!
蓬莱マウンド降りろ!蛮堂サッサと戻ってこい!!

どうしたんだよと声をかけてくるベンチの選手に対し、にゃあらー!!と一喝して黙らせ、そう叫ぶ桃ちゃん。
先輩であろうが誰であろうが関係ないって勢いだ。
まあ、蓬莱が弐織へのワンポイントリリーフなのは元々の想定なのでいいんですが、この勢いは・・・

桃ちゃんサンの勢いに、桐湘ベンチの方も戸惑っている様子。そりゃそうだ。
容赦のない桃ちゃんの怒声に怯える蔡理の選手たち。
ああ、いや。一人不純なことを考えてる奴がいましたな。
山脇くん、ゾクゾクしたり俺も桃ちゃんに怒鳴られたいとか・・・こっちも本性を露わにしつつあるようですな!!

これ以上失点したら、2度とマウンドに上げないから。わかった?

蛮堂を睨みつける桃ちゃん。おやおや。
喝を入れるのは大事であるが、蛮堂にとってこれは戸惑いを受けることにしかならなさそうでありますなぁ。
案の定、桃ちゃんの変貌に戸惑っているようであります。

桃ちゃん・・・可憐なキミはどこへ行ってしまったんだ
今のキミが本当のキミの姿だと言うのか!?
わからない。俺にはキミがわからない・・・!!

元々勢いで押しまくるのが蛮堂のピッチングスタイル。
その原動力は桃ちゃんへの愛だったわけですが、そこが揺らぐとやはり厳しいようですなぁ。
制球もままならず、五番の頭木さんを歩かせてしまい、桃ちゃん憤慨。にゃあらー!!ジタバタした感じが可愛い。

ワンアウト一・二塁とピンチの続く蔡理。
居ても立っても居られず、私が投げるとか言い出す桃ちゃん。落ち着け!にゃあらー!
うーむ、女性である以上、自分で何とかしたいと思っても出来ないというイラつきはあるんでしょうなぁ。
言動を聞いてる限り、誰よりも勝利の為に一生懸命に思えますしね、桃ちゃん。

情けねー投球すんな!テメーそれでも蔡理のエースか!!

吠えるだけではなく、蛮堂に向けてそのように叫ぶ桃ちゃん。
蛮堂はそれを聞き・・・何だか知らないが目の覚めた感じになる。
失点に絡むミスをした上、ピンチを更に広げてしまったこの俺をまだ応援してくれるのか、と。そう受け取ったか!!

腕をふりあげるその姿はドラクロワの描いた、旗を振りかざし民衆を導く自由の女神の様に勇ましく。
皆を鼓舞するその声はきっとジャンヌ=ダルクに匹敵することだろう・・・
俺は何と愚かなのだ。その素晴らしさに気付けない上にうろたえてしまうとは

桃ちゃんの変貌っぷりに動揺をしていた蛮堂。しかしここで・・・意識が塗り替わる。

全てを受け入れるのが、愛!!

塗り替わったというか、ある意味元に戻っただけな気はしないでもない。
一見すれば変貌したかのように思える桃ちゃんであるが、蛮堂にしてみればそれでも桃ちゃんは桃ちゃんなのである。
それが本性であるならば全てを受け入れようと――その素晴らしさを感じ入ろうと考えた様子。
ああ・・・やっぱりこいつはタフだよ。ちょっと揺らぎはするけど、結局ここに戻ってくる男なんだよ!
ある意味格好いいと言わざるをえないですわ、こりゃ。

セットポジションだと言うのに凄い球速を出す蛮堂。
あっという間に六番・七番を三振に切って取り、ピンチを乗り切る。
そして初心に帰ったかのような桃ちゃああん!!の叫び。
それに答えるかのようにベンチから響くのは、桃ちゃんのナイスピッチ蛮堂ー!!という叫び。

蛮堂「桃ちゃああん!!
桃ちゃん「蛮堂おおお!!

お互いの名前を叫ぶ男女。やあ、青春だなぁ。左薙も赤面するほどに青春ですなぁ。
まあ桃ちゃんの方は健闘を称えての叫びな気はしますが。
でもこの空気は良い。何だか知らないが実に良い。応援したくなる空気だ。
これまでの一方通行だった蛮堂の叫びとは違い、共鳴して叫びが響いている。カップルとして応援したくなってくる!!

2点リードされてピンチだったはずなのに、何故か勢いを得ている蔡理。
むしろ勢いづくはずの桐湘が気圧されている感じであります。さすがの桃ちゃんサンの影響力か。
その桃ちゃんに呑まれずにいる弐織も大したものである。

6回終わって4対2。
蔡理の打順は九番から。一番以降は喜多さんと2巡目の対戦になる。大事な回だ。
本性を露わにした桃ちゃん。もう大人しくしていることもないので、円陣を組んで声を張り上げる。
一度打席に立ったことで、喜多さんの球は大分研究されている様子。ヤバそうですな。
桃ちゃんのアドバイスもやはり的確ですし、厄介な感じだ。相手のベストピッチをイメージする必要はない、か。

たしかに完璧な球(コ)なんてこの世にいないしな

このタイミングでその発言はどうなのだ蓬莱。
まあ当てつけではないのだろうが・・・というか蓬莱は実際の女性よりも球について語ることが多い感じがして怪しいわ。

蓬莱。キサマの目は節穴か。ここにいるだろう

そのように述べる蛮堂。そうか、本性を見てもそう言えるのであれば、蓬莱としても返す言葉はありますまい。

浮き上がる軌道の球の中心を叩くのは難しいから、低めの球に狙いを絞れ!!
タイミングをずらすためにゆっくり投げてきても、逆にクイックで投げてきても惑わされんじゃねーぞ!
ボールのリリースにあわせて動け!
今まで散々強打でコールド勝ちしてきただろーが!普段の力出せばもっと点取れるだろ!
逆転にゃあらー!!

らあ!!と円陣を締めくくる蔡理。
言葉こそ荒っぽいが、内容は的確であり、チームメイトの力を認めている部分も見受けられる。
桃ちゃんは腹黒的に本性を秘めていたと言うよりは、単に猫を被っていただけって感じがしますな。
本当はこういう熱血路線の子なんでありましょう。
だから一過性の怒りで終わらない。これが素なのだから、ずっと叫び続けられるって話だ。にゃあらー!!

認められている部分もある。
のだが、それを理解するよりも蔡理の選手としては桃ちゃんの変貌に戸惑っている選手が多い様子。
まあ蛮堂の様に受け入れてしまえる人は稀でありましょうわな。山脇くんの方は・・・まだいそうな気がするな!

打順は九番の須長から。彼は前から桃ちゃんのことを怪しいとは思っていた様子。
怖い部分はあるのだろうと思っていただろうが、まさか熱血系とは思わなかったですなぁ。
喜多さんとは初対決ではあったのだが、桃ちゃんの気迫に押されて見事に出塁する。ナイスバッティング!

続けて打順は一番に戻ってサードの金崎。
2点差だし、まずは一点返すために確実に送っていこうとする。

送りバントなんて考えてんじゃねーだろーな!強攻に決まってんだろ!!

おやおや。冷静なスクイズを指示していた桃ちゃんとは思えない発言でありますな。
まあ、喜多さん相手に蔡理の打線なら可能と考えての発言かもしれませんがね。
いい風に解釈すれば、弱きは禁物。押せ押せでいけと言っていると取れる。当事者たちには難しい解釈の仕方かもですが。

桃ちゃんにいいとこ見せたくてがんばってたのに、お前らのせいでメチャクチャだ。
俺の桃ちゃんを返してくれ!!

金崎としてはそういう認識でありますか。いやまあ、割と正常なのかもしれませんね。
しかしこれは何だか面白い。蔡理の中でも桃ちゃんの豹変は色々な捉え方をされている様子。
返してくれという人もいれば、これぞ完璧という人もおり、怒鳴って欲しいと考える人もいる。最後は試合に集中しろ!!

ともかく、金崎は進塁打を放ち、ワンアウト二塁。
進塁打では納得してくれない様子の桃ちゃん。怖いですなぁ。
その怖さに押され、どうにか出塁を果たす二・三番。ワンアウト満塁と蔡理としては同点、更には逆転のチャンスとなる。
ここで迎えるのが四番。そう四番の・・・

桃ちゃん「私だにゃあらー!!
蛮堂「桃ちゃん!!何と勇ましいその姿!!

がぽっとヘルメットを被って桃ちゃん出陣。勇ましい。そんなバカな!!
色々と昂りすぎであります。

まあ、ここは桃ちゃんが出る場面でもありますまい。
何せ迎えたのは蓬莱の打席。
桃ちゃんのことは事前に気付いていただけに動揺も少ない蓬莱。かなり危険な相手でありますが、喜多さんは凌げるのだろうか。

と。言いはしましたが・・・うーむ、試合展開もまあ気になるのですが・・・
今回は桃ちゃん劇場の名にふさわしい大立ち回りのおかげで試合の展開があまり気にならない!!
というかむしろ蔡理の側の視点で見てしまいそうになっている。これはイカン。
最初のページから最後のページに至るまで見事な立ち回り。疾走感。素晴らしい回でありました。
桃ちゃんも当然凄いのだが、ここに蛮堂が加わることで更にえらいことになっている感じ。
共鳴する叫びや、最後の称賛など蛮堂の要素が合わさることによってより魅力的に見える気がします。
うーむ、当初は上手くいきそうもない2人に見えたのだが・・・いつの間にお似合いな2人に・・・!?

桃ちゃんが単なる腹黒で、ぎゃふんとやられるだけのキャラじゃなかったのが良かったですな。
おかげで大盛り上がりであります。下手すると主人公チームを食いかねないってのが問題点でありますが・・・
清作も桃ちゃんを見習って吠えるしかないかな!?桐湘でも巻き起こせ、にゃあらー旋風!!



Vol.41 鼓動  (2014年 32号)


ワンアウト満塁で迎える打者は四番の蓬莱。
桐湘としては、喜多さんとしては絶体絶命の状況である。下手すれば満塁ホームランもあり得る。
なんせ蓬莱は神奈川最強クラスのバッターですからねぇ・・・
変態性でもトップクラスであるのは間違いない。

前の対決でホームランを打たれたことを引きずっている様子の喜多さん。
勝負どころだというのに少し飲まれている感じがしていけませんな。
おかげで初球は力み過ぎてコースが甘くなってしまう。危ない・・・が、どうにかファールで済みました。ふう。

桃ちゃん「何やってんだ蓬莱!打てないなら私と代われ!!」
蛮堂「安心してくれ桃ちゃん!次には俺が控えている故!
桃ちゃん「にゃあらー蛮堂、今日ノーヒットだろ!

緊張感のある対決の中、この2人は前回のままのノリである。さすがというか何というか。

ストレートがシュート回転する悪いクセが出ているという喜多さん。
コントロールが肝の投手なのに、冷静さを欠いて力が入っていては厳しいですなぁ。
蛮堂や之路さんのような投手なら力は入りすぎるぐらいでいいってもんなんでしょうが。

満塁弾を打たれたら逆転されて6対4。もしそうなったら逆転できるかどうか・・・
それを気にしてかボールが先行する。
相手の打ち損じを期待する消極的ともいえるピッチング・・・うーむ、意識で負けているのでは厳しいなぁ。
蓬莱は選球眼がいいというか、球に対するこだわりが強いからゾーン外はなかなか振らないでしょうね。

何でも手を出す程、俺は軽い男じゃないぜ。俺が今待ってるのはまれにシュート回転して甘く入るストレート。
優等生が見せるわずかなスキ。ブラチラみたいなものなんだ。
押し出し四球なんてお互い望んじゃないだろ。来いよブラチラ

相変わらずこの男は真面目な顔して何を考えているのか。来いよじゃねーよ。
球に対するこだわりの強さは間違いなく感じられますけど・・・うーむ!

蓬莱が変態なのはもう理解しているのでそれはいい。問題はその変態と対峙している喜多さんである。

こんなにプレッシャーがかかる場面で俺が投げきれるのか。押し潰されそうだ・・・!

2年生であり2番手投手である喜多さん。
プレッシャーを跳ね除けるにはまだ経験が足りない感じでしょうか。
之路さんならこんな場面どう考えるか・・・

テメー喜多ふざけんな。代われるなら今すぐ代われ。投げたい!勝負したい!!打ち取りたい!!!

先輩との練習試合では打ちのめされていた之路さんでしたが、それから随分と成長した。
この闘志は裏目に出ることもあるけど、頼もしいものではありますな。
そんな之路さんの意志を感じ、疑問を投げかける喜多さん。

之路主将・・・ストレートだけで蓬莱と勝負するなんて無謀じゃないんですか・・・!?
蛮堂の豪速球を前にテンションが上がる弐織や清作もどうかしてる・・・
怖くないのか皆。どうしたらそんなに強気になれる!?
ビビらない強さが欲しい。逃げない強さが欲しい。なのにクソッ!うるさいなこの鼓動!!

緊張しすぎてずっと鼓動が強くなっている喜多さん。
それを止めるには――力ずくで止めるには・・・参港になる方法を取っている人がそういえばいましたね・・・

之路主将・・・今は少しだけでもその強さに近付きたい

さっきまでとはマウンドの立ち位置を変えて放つ勝負球。
宇城さんは四球で追い出しでも打たれて大量失点よりはいいと外に逃げる変化球を要求。しかしそれに首を振る喜多さん。

力むななんて無理な話だ。俺は今マウンドに――
鼓動が高鳴るくらい自分が望んだ場所に立っているんだから

力むのも鼓動が強いのも捉え方次第。前向きに考えようと思えばそうなるわけだ。
無理に押さえつけるのではなく、それを受け入れて投げる喜多さん。
常に独自の個性を追い求めてきたしなやかな強さを感じられます。
しかしそこで放つのはインコースへのストレート。蓬莱にとっては待ち球である。

シュート回転。来たなブラチラ。
――いや、想像より際どい胸元・・・

思ったよりも開けっ広げな感じに驚いたのか、あの蓬莱が打ち損じてのショートゴロ。
三塁ランナーもこの結果は意外だったのか出遅れてアウトとなる。おやおや。
自分はどうにか一塁セーフになったものの、結果としては痛いものとなりましたな。桃ちゃんもお怒りだ。にゃあらー!

――ブラチラ覗き込んでるのがバレたか・・・?気マズイな・・・

さすがに蓬莱の頭の中を理解している人はそういないと思いますので、そういう気遣いは不要と思われます。
もう慣れたはずなのに、この男がおかしなことを言うたびにツッコミたくなるから困るぜ。

それはさておき、今の投球に関して之路さんから解説が入ります。

・・・三塁側に立ち位置をずらした分、シュート回転してもインコースに厳しく入る。
自分の弱みを逆に利用したのか・・・!

きちんと理解していれば弱みは特性へと変わるってわけですな。
蓬莱の言っていた際どい胸元というのはこういうところに掛かっていたわけか。
追い込まれはしたものの、これは見事な勝利であります。
相手の打ち損じによるラッキーではない。勝つ意志によってもぎ取った見事な勝利だ。素晴らしい!

そして五番の蛮堂。桃ちゃんの期待に応えられるのはこの世に俺1人と豪語する。

何度でも言おう。愛は無敵だと!!

そう叫んで打つが、蓬莱と同じく胸元に入ってくるインコースに詰まらされてセンターフライに終わりました。ぬおッ!?
結局蔡理は満塁のチャンスを活かせず。
蓬莱、蛮堂といった主力が倒れるという流れとしては厳しい結果となりました。おやおや。
その流れを継いでか、以後も得点を上げられない蔡理。
一方、桐湘も追加点は上げられない。蛮堂に更なる力が宿った以上、打つのは難しいってことでしょうか。
その蛮堂の球でデッドボール喰らってる柊のダメージが心配だ!

8回表が終わって4対2。桐湘の逃げ切りも見えてきたが、ここで蔡理は一番からの好打順。
桐湘としては何としても抑えたい回であります。
一気に迎えた緊迫の終盤戦。共に気合は十分であるし、どちらがチャンスをものとするか・・・
桃ちゃんのテンションは相変わらずだし、今度こそ危ない気がしますね。踏ん張れるかどうか。注目です。



Vol.42 過信  (2014年 33号)


8回裏、2点を追う蔡理。
打順は一番からの好打順。ここで追いついておきたいところでありましょう。
逆に桐湘としてはこの回でランナーを出して四番の蓬莱に回すのは避けたい。
なんとか打者3人で抑えたい所であります。

あと2イニングあれば逆転できる、どんな形でもいいから出塁しろと桃ちゃん。
そして逐一、桃ちゃんの言う通り!!と合いの手のような同意をする蛮堂。うるせーよ。にゃあらー!!

逆転できれば次の回は必ず俺が桐湘を0点に抑えてみせる!!

うるさくはあるが、蛮堂のこの言葉には信頼できるものがある。
蔡理の選手たちもそれを感じ取った様子。

後ろにつなげば蓬莱と蛮堂がいる。あの2人なら何かやってくれそうな気がする・・・!
そのためには先頭打者の俺が何としても出塁してやる!!

意識を高める1番バッターの金崎。
フルカウントで8球も投げさせる健闘を見せる。
桃ちゃんが怖いという正直な想いはありますが、頑張ってますなぁ。
結局三振に終わったものの、この粘りは評価できる。桃ちゃんもナイス金崎と声を掛けてくれます。
頑張ったのは評価するけど、三振したことは許さないんだからねって感じの表情が良い。
これには俺の桃ちゃんを返してくれとか言ってた金崎も赤面せざるを得ない。
ふむ。また一人桃ちゃんの本当の姿の方に傾倒するものが現れた・・・のか?

続いて二番の宮野。
モテる男は嫌いと語る彼の――モテない男の意地。結果は初球ファールフライでアウト。
所詮そんな意地では碌な活躍はできないってことですよ。うん。
せっかく金崎が球数投げさせて疲れさせたのにこれは酷い。そりゃ桃ちゃんも怒るさ。

ナイスピッチングの喜多さん。このままいけば本当に3人で抑えられそうである。
野手たちも好投する喜多さんに声をかける。メガネッ・・・喜多先輩!!と。メガネ呼ばわりかよクソ天然め!!

三番の杉山。ここで切りたいところであるのだが、喜多さんの意識は次の蓬莱に向いてしまっている様子。
警戒すべき相手なのは間違いないけど、目の前の相手を疎かにしてはいけませんな。

絶対後ろにつなぐ。来い・・・来い!!

打ち気満々な杉山。と見せかけて、放つのはまさかのセーフティバント。

左投手なら三塁方向へ転がせば一塁への送球が逆モーションになる
左利きなら内野手の経験も少ないはず。フィールディングも上手くはねえだろ!?

なるほど。なかなか考えておりますな。
こういった技巧的な部分も交えられるとちゃんと野球漫画であると思えます。
いや普段は思えていなかったとかそういうことは・・・まあ、正直なくもなかったり・・・

ともかく、杉山の奇策は成功。見事にセーフとなりました。にゃあらああ!!
蔡理としてみれば好機。桐湘にしてみれば絶体絶命。ランナーを出しての四番・蓬莱の出番である。
一発が出れば同点のこの場面。さてどうするか・・・

歩かせちまえよ。蓬莱より蛮堂の方が打ち取りやすいだろ。

客の期待に応えてやる必要なんか無え、と安保先輩のお言葉。
相変わらずやる気に欠けている感じ。だけどこの場面ではそれも正論に思える。

ブラチラを待つのはもうやめた。さっきと同じ手は通用しないぜ。

考えていることはさておき、怖い打者である蓬莱。蛮堂も打撃力はあるが、喜多さんの球にはタイミングが合っていない様子。
それを考えれば蓬莱を敬遠して蛮堂で勝負するのは選択肢としてはアリである。

ただ、之路からマウンドを託されたのはお前だ。どうしたい?

問いかける宇城さん。ふむ。やはりこういうことは実際に勝負する投手が決めることでありますわな。
ベンチの之路さんがマウンドに立っていたらどうしたか。おそらく迷うことなく勝負に出たでありましょうな。

桃ちゃん「勝負しろコラー!逃げんのかー!!
蛮堂「桃ちゃんの言う通り!!

桃ちゃんのヤジが入りました。
別にそれに刺激されたわけではないだろうが、勝負を決心する喜多さん。
そう決めたからには頑張らないといけない。安保先輩を見返すためにも、頑張れ喜多さん。

桃ちゃん「勝負だと!?にゃあらあナメてんのかコラー!打ってやれ蓬莱!!
蛮堂「桃ちゃんの言う通り!!

どっちにしろ叫ぶ桃ちゃんでありました。そしてどっちにしても同意する蛮堂。本当に何なんだこいつらは!!
イエスマン蛮堂という新しい形が出来上がってしまったようである。この試合で蔡理は色々変化してますなぁ。

左薙は、敬遠したら弐織サンにシメられるのかな?とか考えているが、まあそんなことはありますまい。
それが必要だと考えたのなら、そういう判断も弐織は許容すると思われる。
まあ之路さんの場合は許容しながらもシメてしまいそうな気がしますけどね。うむ。

歩かせる気はないか。勝利以上に重要なことなんて無いのに。自分たちのスタイルにこだわりすぎると痛い目見るぜ。

怖いことを言いだす穂村。港南のエースは何を予感するのか。

ともかく、蓬莱との勝負。
丁寧な投球に戻った喜多さん。前の打席と同じ手段が通用するとは思っていないようですな。

自分をわきまえてるな。控え目で節度のあるコは好きだぜ・・・
そんな球(コ)の前じゃあ俺も素直にならなきゃな・・・!!

外の球を逆らわずに流し打ち。
華麗なバッティングを見せる蓬莱。
だけど相手に合わせて優しくし過ぎたせいか、ライト前に落ちるヒット止まりでありました。
ふむ。蓬莱でこの結果は少し勿体ない感じがしますな。
本人の言うようにもっと強引にアプローチするべきでしたか。いや、いいから野球用語で語れよと。

ツーアウト一・二塁とピンチは広がったが、傷としては最小限で済んだ。一息つく喜多さん。しかし・・・

蛮堂サン抑えられる保証なんてどこにも無いのに
それが過信なんだよ。チーム全体のな。

球だけではなく、ついに全身まで燃え上がるようになった蛮堂。こえーよ。
いや確かに、この蛮堂の気迫は今まで以上のものである。甘く見ることはできませんなぁ・・・

しかし穂村。蓬莱を歩かせても結局は同じ状態で蛮堂を迎えることになるんじゃないかね?
ああ、なんなら蛮堂も歩かせてしまえばいいわけか。
そうすれば次はあのキャッチャー山脇くんである。
桃ちゃんに罵倒されたいと考える山脇くんがチャンスで打順を迎える。
そこで結局ランナー残塁とかで終わったら、山脇くんは盛大な罵倒をされることでありましょう。
山脇くんも嬉しいし、桐湘も嬉しい。なるほどさすがは港南のエース。これが最善と言いたいわけですな・・・分かります!!



錻力のアーチスト 6巻


Vol.43 バケモン  (2014年 34号)


灼熱巻頭カラー!!蛮堂も真っ赤に燃え上がっております。

"愛"と"プライド"がその男に業火を纏わす――ほとぼしる紅蓮の炎を鎮火せよ!!

見開きの左半分だけ見るとアオリも含めて野球漫画とは全く思えないから困る。

さて、8回裏4対2でツーアウトランナー一・二塁。
一打同点、逆転のチャンスで打席に立つのは五番の蛮堂。
気迫を漲らせ全身燃え上がる蛮堂であるが、それを前にして逆転のランナーになるので歩かせるわけにはいかないと考える喜多さん。


うーむ、この考え方は確かに前回の穂村が言うように過信であるかもしれませんな。

僕なら絶対勝負しない。敬遠・・・いや、警察に通報する

左薙もこのように言っています。うむ、それは全く持ってごもっともな意見ですな!
通報されても警察も困るでしょうけどね。遠巻きにして鎮火を待つしかなくなる!!

・・・ああなった蛮堂には手がつけられない。何言って焚きつけた・・・?マネージャー。

前の桃ちゃんであれば確かに焚きつけたりすることもあったろうが、今の桃ちゃんはそういうことは頭になさそうだ。
蛮堂に対しても変わらず強い調子で声をかけている。と思いきや、反応しない蛮堂に対し――

返事しろ蛮堂!打ったらデートでも何でもするから!!

おや、表情と合わせて何だか焦燥感がありますね。
あの蛮堂に無視されるのは桃ちゃんとしても堪えるのでありましょうか。
実際蛮堂の耳に桃ちゃんの声は届いている。しかし反応しないのは今のままでは顔向けできないと蛮堂が考えているからである。

恥ずべきはこの俺の不甲斐なさ。投球では弐織に打たれ、打撃では喜多にことごとく打ち取られた。
今の俺は桃ちゃんに相応しい男なのか・・・否!!

その証拠に俺を見る桃ちゃんの顔は曇っていると語る蛮堂。

状況わかってんのか!聞けよにゃあらー!!

確かに曇ってはいるけど、どちらかというと指示を受け付けなくなったことに対する不安の部分が大きくないですかね?
この重要な場面で予想外の動きをされると桃ちゃんとしても困るようですな。
しかしデートでも何でもするからとはまた凄いお言葉であるなぁ。蛮堂ならそんなに危ないことにもなるまいが。

かくなる上は俺自らが桃ちゃんと俺の未来を照らし出す光になるまで・・・!!

物凄い気迫を漲らせる蛮堂。
スタジアムを凍りつかせる弐織義壱とは真逆の方向性である。立っているだけで桐湘ナインは汗が噴き出してくる。
そんな蛮堂に対して果敢に挑む喜多さん。
初球は打ち気を逸らすかのような緩いカーブ。
ストライクコースに入る球ではあったが、蛮堂はこれを見送る。ほう。
今までは何にでも出を出してきたというのに、この反応の無さは不気味だ。

2球目はアウトコースに外す喜多さん。落差のある変化球。狙おうとすると引っかける可能性が高い球だ。
蓬莱はそのコには手を出すなよと考え、桃ちゃんも手を出すなと叫ぶ。
いや手を出すとかいってもそういう意味ではないが。蓬莱用語が挟まるとややこしくなってかなわん。

桃ちゃん。いつもありがとう。
マネージャーという大役をこなしながら笑顔を絶やさないキミが好きだ。
キミが側にいてくれるだけで俺は――誰より強く前に進めるのだから!!
やはり俺にはキミしか見えない!!

久しぶりに桃ちゃんの可憐な頃の笑顔を見た気がします。可愛い。
そこから随分と変わったが、その姿も今の姿も全て桃ちゃんであると受け入れて燃え上がる蛮堂。誠実な男だ。

燃え盛れ!俺と桃ちゃんの永遠の愛の炎!!

沈む喜多さんの球をしっかりミートする蛮堂。
全身に纏う炎がバットを通じてボールへと燃え広がり・・・
炎を纏った打球は凄い勢いでバックスクリーンを直撃する!!

おやおや。これは。やはり打たれることとなってしまいましたか・・・!!
それにしても思わず立ち上がった時の桃ちゃんの絵のアングルはなんだかいい感じでしたな。行けー!!

見事な逆転スリーラン。これには蛮堂吠える。桃ちゃああん!と。
そして桃ちゃんもこの叫びに応える。蛮堂――!!と。うむ、相変わらずいい息の合い方だ・・・

・・・走れ蛮堂ー!!

大魔神のように胸を張り、肩をいからせてドスドスとベースを回る蛮堂。
まあ、ホームラン打ったのだから走らなければいけない理由は無いのだが・・・何か面白いな!!

打たれてはいけない場面で豪快に打たれてしまった喜多さん。おやおや、愕然とした表情だ。
けれどもこれでゲームセットというわけではない。まだ桐湘の攻撃は残っているのである。
事実蛮堂の力を見て嬉しそうにしてしまっている弐織。打席に立つ前からヨダレダラダラだ。

悪ィな喜多。上ッツラだけで慰める気は無えからな。俺は今蛮堂と対戦したくてたまらねえ・・・!!

正直な感想を抱いている弐織。
そしてセンターの清作も蛮堂の凄い打球を見て思わず震えと共に笑みを浮かべてしまっている。
逆転されたことの痛さはあるが、凄いバッターを見つけて争いたいと思う気持ちはそれ以上のものがあるようですなぁ。

後続はしっかり抑えて、どうにか1点差で切り抜けた喜多さん。
しかし逆転を許した以上、この9回で得点できなければ負けが決まってしまう。
あとは最終回をキッチリ抑えるだけだからねと蛮堂を送り出す桃ちゃん。
蛮堂はその桃ちゃんの手を握り、いつもありがとうと感謝の言葉を述べる。
ほう・・・先の逆転弾で顔向けできる男になったと思えたようですな。真剣な眼差しで正面から見据えております。

勝ってから言え

蛮堂の手を振り払い、そう述べる桃ちゃん。なんとも硬派な!!
しかし逆に考えるならば、勝利さえすればこういった言葉も受け入れてくれるということではあるまいか。
これも桃ちゃんのデレと見ることができそうな気はしますが・・・はてさて!

2人の恋の行方も気になるが、桐湘としても負けるわけにはいかない。
9回表、桐湘は一番児島から。
1人でもランナーがでれば早くもバーサーカーモードに入ってる弐織に回るわけでありますが・・・どうなるか。

蛮堂・・・テメーはたしかにバケモンだけどな、ウチにもいるんだぜ。しかも2匹

そのように考える児島センパイ。
どうやらもう1人は清作のことを示しているようですな。
その考えはいいのだが、打席でその考えは既に自分が打つのは諦めてるように思えなくもないですぞ。
そういった意識によるものなのか、全く触れることも出来ずに三振に終わる児島センパイ。
蛮堂がスタミナ不足なのはガセかよ?とか言ってますが、それは推測であって本当にそうだとは誰も言ってませんわなぁ。
まあ、蛮堂は体力よりもメンタル部分のスタミナが左右する感じでありますから・・・今が最高潮になるわけですな。厄介な。

児島センパイに続いて柊も三振。
バットコントロールが上手く、初打席で蛮堂の球に当てて見せた柊までカスリもしないとは・・・
今の蛮堂の球はこれまでで最高のものとなっている様子である。

さあ、最後の打者となりそうな場面で登場するのは三番の清作。
1年生としてはプレッシャーがかかる場面であるはずだが、清作にはそういった意識は無さそうだ。
クソ天然だからということもあるが、蛮堂と全力で勝負したいという想いが強い様子。
しかし味方ベンチからは弐織に回せとの声。ホームランを打ちたい清作としては不満でありましょうが・・・

おいクソ天然。器用につなごうなんてできもしねえこと考えんじゃねえ。一発狙う気持ちで行ってこい。

やはり弐織はよく分かっておりますな。いい先輩だ。
ランナーをためるための縮こまった打撃をするよりはノビノビ打たせた方がいいですわな。

・・・弐織敏にまわすまでもない。
1秒でも早く、桃ちゃんに心からの感謝の言葉を伝えるために――キサマを葬る!

弐織と勝負したいという想いよりも勝利に貪欲になっている様子の蛮堂。これは桃ちゃんも安心ですな。
勝利に貪欲というか、勝利の先に見据えているものがあるというか、勝利は結果的にオマケというか。まあとにかくやる気十分だ。

しかしその蛮堂の球にくらいつく清作。
前の2人がカスリもしなかったのに、ファールを連続している。ほほう。今回はラブコールは無いのかな?
左薙も期待しているようですが、残念ながら無さそうな雰囲気でございます。

今までは愛の力とか何とか相手に合わせて自分を見失ってた
いつも通り肩の力抜いてスイングすればいいんだ。
けど、もっと大事なことを思い出した。どんな気持ちで打席に立ってたかを。
蛮堂にも、蓬莱にも、弐織先輩にも負けたくない。
その負けたくないって気持ちだけは、誰にも負けねえ
俺がナンバーワンのバッターだ。今は自分の力だけを信じる!!

まさに色々と方向性を見失っていた清作。
このまま愛を見出す方向に向かっていったらどうしようかとも思ったが、その心配はなさそうですな。
ようやく自分のバッティングを取戻し、心臓をブッ叩くことにも成功する。
敏感にそのバッティングの凄さを感じ取ってセンターをバックさせる蓬莱。
さすがであるが、今回の清作のバッティングはその蓬莱の予想をも上回るものであった様子。
うーむ、打球の威力だけ見れば先の蛮堂の打撃をも上回りそうだなぁ。

ライナーでセンターフェンス直撃。
もう少し角度がついていれば入っていたかもしれませんなぁ。
余りに打球が早すぎてシングルヒット止まりとなる清作。
しかしこれで弐織の前にランナーが出ることとなったわけであります。

蛮堂「・・・やはり決着はキサマとつけねばならんか。弐織敏・・・!
弐織「喰らい尽くしてやるよ。蛮堂・・・!!

抑えられたらゲームセットという場面で逆転ランナーが出塁。そして最後の戦い。
二大怪獣大決戦の幕が今切って落とされようとしている・・・!!
巻頭カラーに続いて野球漫画何だかどうなのか分からなくなってきたぞ!!

いやはや・・・しかし、大変な盛り上がりを見せている蔡理戦。
蛮堂が試合開始前の調子を保っている・・・いや、むしろ上がり調子になっているとは予想もしませんでした。
果たして燃え上がる蛮堂を喰らい尽くすことが出来るのか・・・!?
筋肉対決最終ラウンド・・・楽しみでございます!!



Vol.44 食べ頃  (2014年 35号)


1点差の9回。ツーアウトまで追い込まれたが、どうにか清作は出塁できた。
この状態で迎えるのが四番の弐織敏。
桐湘にしてみれば一発が出れば逆転。蔡理にしてみれば押さえればゲームセットの場面。
まさに最後の勝負に相応しい緊張感が球場を支配しております。桃ちゃんも緊張の表情だ。

いい具合に燃えてんな蛮堂・・・!食べ頃だぜ・・・!!

ふむ。肉はよく焼く派でありますか。
燃えてるのは肉というよりもマウンドとかの方になりそうですけどね!
打席に立ってからずっと燃え上がりっ放しの蛮堂。マウンド大炎上だ!!
ピッチャーが炎上とか意味合い的には凄く悪いように聞こえるが気にしてはいけない!!

さて、盛り上がって来たところではありますが、塁は空いているのだし歩かせる可能性はあります。
逆転のランナーを出してしまうのは怖い所であるが、今の弐織に真っ向から当たるかどうか。桃ちゃんの判断は・・・?

・・・皆を支えるのがマネージャーの役目なのに、私が弱気になってどうする。
その意気だ、攻めろ蛮堂!四番打ち取ってやれにゃあらー!!

一瞬歩かせることを考えたが、蛮堂の勇姿を見て思い直す桃ちゃん。おやおや何だかいい感じじゃないですか。
この桃ちゃんの発言により、ナインの心も勝負の一つにまとまる。
ウチのエースが負けるわけが無い。ねじ伏せろ!!
あの蓬莱までもが叫ぶ。おぉ・・・蔡理が蛮堂に続いて熱く熱く纏まっていっているぞ・・・!!
最後の最後。9回に来てこれとは。恐ろしい相手である。

前に女子である桃ちゃんにはこういう勝負に臨みたくなる熱さは分からないかなとも書いたが、やはり本来の桃ちゃんは違うね。
蛮堂の心意気を理解し、その剛腕を信頼している。うーむ、実にいい感じだ!!

鳴り響く祝福の歌・・・皆に祝われた俺と桃ちゃんの未来は誰にも邪魔させん。散るがいい弐織敏!!

ただでさえ意識が高まっているところに、ナインの声援を受けている蛮堂。
セットアップの不利なんてどこ吹く風と言わんばかりの速度のストレートを投げてくる。
これにはさすがの弐織も空振り。桃ちゃんも両腕を突き出して喜びを露わにする。にゃああッらあ!!お、新作の叫びですね。

上等・・・!!

ベンチの児島センパイもビビる蛮堂のストレート。
しかしこの弐織にしてみれば味が深みを増したと言ったところでしょうか。相変わらずヨダレが止まらないぜ。ボタボタ。

それでこそ弐織敏だ。ならば俺もより一層・・・燃えるというもの!!

第2球。今度はバットに当てる弐織。しかしファール。
空振りにこそならなかったものの、これでカウントは追い込まれた形となりました。
さらにその打法が力による引っぱりであることを危惧する左薙たち。
自分のスタイルに拘りすぎるのは良くないというが・・・それを言うなら蛮堂にしても同じことが言えますしねぇ。

蛮堂・・・我が強ぇのはお互い様だ
テメーがストレート投げ込んでくるなら俺も自分のスイング貫いた上で、完膚無きまでに打ち砕いてやる!!

熱くなっておりますねぇ。
この熱さは一塁にいる清作にも伝わっている。

こんなの初めてだ・・・ヒトの打席で熱くなるなんて・・・

やっぱり清作は弐織に多大な影響を受けているようですなぁ。
そりゃ俺の頭の中は弐織先輩のことで一杯だとか言い出すわ。

それはさておき、試合を決めることになるかもしれない最後の1球。
スプリットを投げれば打ち取れると考える山脇くんであるが、それには首を振る蛮堂。
やはり最後はストレートで決めなければいけませんか。
まあ、弐織ならばそのスプリットにも合わせてきそうだし、それならば最高のストレートを放った方がよいでしょうな。

蛮堂「沈め弐織敏!!
弐織「消し飛べ蛮堂!!

互いの渾身の力が激突。
弐織は見事に蛮堂のボールを捕らえるが・・・勢いに押されて右手がバットから離れる。打ち取った!?
と・・・思わせておいて、残る左手一本で長打を放つ弐織。うーむ、この男もやはりバケモノか。

打球はあわやホームランの当たり。
フェンスの最上段に弾かれてグラウンドへ落ちてくる。
が、バウンドの方向が妙な方になったため、処理にもたつくレフト。
それを確認した清作は三塁コーチの静止を振り切って同点のホームを狙う。

弐織先輩のヒット・・・ムダにしたくない!!

何とも可愛いことを言いだす男である。
まあ次の頭木先輩が打てるかどうかはわからないし、ここで勝負するのも悪くはない。
何せキャッチャーの山脇くんが先ほどの弐織の打撃音で朦朧としたままでありますからして。ええっ!?

ホームはガラ空き。かと思いきや、カバーに蛮堂が向かっている。
蛮堂も同じように打撃音でグラついていたが、さすがにもう復帰しているか。
グラついていなければバックホームのカバーのためにもうホーム側にいたんでしょうけどねぇ。

ともかく、これでクロスプレーになりそうな感じ。
蛮堂の巨体とのクロスプレー。果たして清作は無事に同点にすることができるのだろうか!?
まあ・・・ここで追いついても同点止まりですしねぇ。
場合によってはここで敗退。夏の本番にかけるという展開もありそうですが・・・さてはて。
逆に同点に追いついた場合、逆転まで持ち込めるのか?という疑問がある。まさかの安保先輩活躍のターン!?気になります。

しかし弐織の打球音、近くのキャッチャーは被害でかいんじゃないかと当初から思ってましたが、やっぱりそうなりますわな。
ランナーやベンチの面々とは違って耳を防げないし、大変なことになる。
審判も油断してたらフラついたりしちゃうんじゃないだろうか。
ハッ。クロスプレーになったけど審判もフラフラしていて判定できないとかいう結果になったらどうしよう!!
それは本当にどうしようもなくなりそうだからさすがにないか。うん。



Vol.45 中途半端  (2014年 36+37号)


弐織のヒットを無駄にしたくない。
その想いで、コーチャーが止めるのも聞かずに本塁へと突撃する清作。
判断としては決して悪くない。
だがアウトかセーフかはギリギリといった感じ。
蛮堂とのクロスプレーの結果・・・残念ながら届かずアウト。桐湘の敗北となりました。おやおや・・・

にゃあらー!!

勝利の雄叫びはやはりコレですわな。
喜びと共にベンチを駆けだしてくる桃ちゃん。可愛い。
打たれはしたものの、最後のクロスプレーを制したこともあり、真っ先に蛮堂のもとに名前を呼びながら駆け寄ってくる。
これは蛮堂も嬉しい。大きく胸を開いて迎え入れようとする。桃ちゃーん!!
その空いたボディに連打を叩き込む桃ちゃん。にゃあらー!!ドスドス。
あの鍛え上げた蛮堂のボディであっても怯むこの攻撃。さすがは桃ちゃんと言わざるを得ませんな。ハハハ。
しかし山脇くん、俺も腹パンされたいじゃねーよ。正直な奴だ。

一通り殴り終え、蓬莱に声を掛けられたところでようやく我に返る桃ちゃん。
浮かれるのは当然ですが、まずは整列からですものね。
うーむ、久しぶりに赤面しているところを見た気がしますぞ。

勝利に沸き返る蔡理。
それとは対照的に沈み込んでいるのは清作。
倒れ込んだまま起き上ることが出来ずにいる。決して土を食べているわけではない。左薙じゃあるまいし。

悔しさに浸っている清作。それをつまみ上げて起こすのが弐織。
ああ、そういえば前にも言ってましたな。テメーが倒れても片手でラクにつまみあげてやると。
その言葉通りにしてくれる弐織。やはり良い先輩である。

整列と挨拶を終え、試合終了。
接戦であったこともあり、互いの健闘を称え合う。スポーツマンらしいよい光景だ。
之路さんとしても次は最後まで蛮堂と投げ合いたいところでありましょう。
しかし第2投手である喜多さんとしてもこのままでは終われない想いはありそうだ。投手たちの発展に期待したいところですね。
それにしても蓬莱。いい球(コ)と遊べて楽しかったが、もっと上玉じゃないと俺は堕ちないとは・・・球と上玉を掛けているのか!?
なるほどー。そういう連想から考えれば蓬莱の球を女の子に見立てる手法は間違いでも・・・ないわきゃないな、うん。

桃ちゃんも試合が終わったことで元に戻った様子。
しかし本性を見せてしまった以上、なかなか周りの反応は昔のようにはならないでしょうなぁ。
まあ、別に本性見せた状態でも可愛いからいいんですけどね。
山脇くんも「おこ」のままでもいいのにと残念がっております。どこまでも正直な奴よ・・・
でも最初からその状態より、ギャップがある方が楽しい気がしますけどね。一粒で二度美味しい的な。

この勢いで打倒港南を叫ぶ蔡理。
一方敗れた桐湘には挑戦する権利はない。だが、まだこれは春の大会である。まだ夏がある。
落ち込む清作に対し、よくやったよと声をかける之路さんたち。
確かに弐織の言う通り、桐湘らしく攻めの意識を見せての結果でしたしねぇ。攻める気にはなれませんわな。
どうでもいいが栗原君の天然度合いがヤバイ方向に進んでいる気がする。清作の悪い部分が染み込んでいっているぞ!!

観客からも次の夏の大会に期待しての声援がかかる。
この声に応えるためにも、もっと実力をつけなければいけない。のだが――

何言われても言葉がすり抜けていく。穴開いたみたいだ・・・

これまでに感じたことのない気持ちに翻弄されている清作。
八子ッチはそれが周りを受け入れず、自身の敗北だけに酔っていると捉えているようですが、実はかなり違う。

あと少しだったのに。
あと一歩でセーフだった。打球の行方なんて確認せずに弐織先輩を信じて走ればよかった。
次の頭木先輩が打つのを信じて止まればよかった。
どっちもできない上、1人で試合を決められない俺はクソ中途半端だ。
俺の力を皆に認めて欲しかったのに、皆の力を信じきれてなかった。
自分1人が負けた時とは比べものにならない。俺のせいで皆が負けた。それがこんなに悔しいなんて・・・!!

自責の念に苛まれる清作。
中学時代のチームプレイにまるで向いていなかった頃とは別人のようだ・・・!!
いい先輩たちに恵まれたということでしょうね。
このまま素直な気持ちで育っていって欲しいところです。

さて、周りは気にするなというけれども清作自身は立ち直ることができるのだろうか。
責任取って坊主になるというステロタイプな行動もあるが、本当に児島センパイの言う通り、柊の髪型にしてきたらどうしよう!!
それはそれで面白いから一度は見てみたいが、それ以降は簡便な気がしますな。
早い段階で立ち直り、次へ向けて意識を高めて欲しいものです。



Vol.46 戯れ言  (2014年 38号)


春の県大会は準々決勝で敗れることとなった桐湘。
しかし強豪の蔡理と惜しい試合をしたことで校内からは評価されている様子。
だが清作の最後の走りはやはり暴走として認識されているようですなぁ・・・まあコーチャーも止めてたわけだしそうなるか。
けど、そのせいで負けたと言われるのも納得いかないところですけどね。

ヘコんで練習に出ないのではないかと思われた清作だが、そこまでウィークなタマじゃなかった様子。
きちんとサードコーチャーにも謝罪(アポロジャイズ)を済ませたらしい。ほう。
しかしどうやらまだ謝罪を済ませていない相手がいる様子。
走りながら頭木さんのことをガン見しており・・・そのままコースアウトする。ガシャン。暴走グセでもついたか。

自分のせいで頭木先輩の打席潰しちまったと思ってんだろ。
チャンスで打席がまわってこねえ悔しさはクソ天然でもわかってるはずだ。2人共バッターだからな。

ふむ。自分の身になって考えてみればよくわかるということですな。
だから清作も打順をまわせなかったことを謝らなければと思うわけでありますが・・・

けど何て言って謝ればいいんだ?頭木先輩が蛮堂の球打てないかもって心のどこかで思ってたくせに・・・

謝罪したいという想いはあるのに、余計なことを考えてしまう清作。
純粋であるが故にこういうことに戸惑ってしまうみたいですなぁ。まあようするにまだガキということなんでしょうけど。

さて、暴走したという認識をされている清作だが、その活躍も知れ渡っている。
そしていつも腹をすかしているという話も知れ渡っているのか、いつも以上に食料が支給されている。おやおや。
まあ、清作にしてみればそれどころではない。どうやって謝ればいいのか悩んでいるところであるわけですが・・・

皆アンタのために持ってきてくれたのに、それどころじゃねーとかふざけんな。
少しはヒトの気持ちも考えたら?

相変わらずハッキリと苦言を呈する子ですな工ちゃん。
しかし相変わらず清作とは微妙にカミ合わない。それでも何だか会話してる感じになってるのが何か面白い。

小さい頃にヒネくれだしてからずっと清作は誰かに謝ったりしたことはなかったんでしょうな。
シニアの頃は自分が打てば勝っていた。けど昨日は打てなかったから負けたんじゃない。まわりを信じなかったせいで負けたのだ。

清作「・・・なあ。どうすれば人を信じられると思う?
工「知らない。マジ無理。キモイ。やめて

愛について相談されたり、信じる心について相談されたり、工ちゃんも大変ですな。
噛み合わない夫婦漫才みたいな感じになっていて・・・これはこれで何だか良しだ!!

さて、ここで回想。
実は敗れた後、蛮堂たちと会っていた清作。
泣いた後が見て取れる清作の姿を笑う選手がいれば、それに対して怒りを見せる蛮堂。あらカッコイイ。
すっかり大人しい状態に戻った桃ちゃんたちと別れ、一人残った蛮堂は清作に対し語り出す。

俺もかつて自分の力しか信じられずチームを敗退させた過去がある。
そんな俺に手を差しのべてくれたのが桃ちゃんだったが・・・まずは自分の過ちを認め、正さねばならん。
頭蓋骨が陥没するまで土下座するのもよいだろう。だが謝って済むものでないなら自分自身を変えなければならない。
自分の力を誰かに認めてほしければお前もその誰かの力を認めることだ。俺が桃ちゃんへの愛のためそうしたように。
つまり、それ程桃ちゃんは偉大なのだ

凄くいいこと言ってるのに結論はそれですか。いや非常に蛮堂らしいですけどね。
おかげで清作もやはり愛の力はスゴイということなのかという結論に向かいかけている。おやおや。
まあ、男女間の愛はさておき、チーム間での親愛とかそういうのを高めるのは有りなんじゃないですかね。変な意味でなくてさ。
しかし蛮堂は本当カッコイイ感じになりましたなぁ。
いや初登場時と結局方向性は変わってないのだが、あれだけあって変わらずにいるのがまず凄い。尊敬していいぐらいだ!!

さて、昼休み。授業中ずっと眠っていたから弁当にも手をつけていない清作。
まあそれどころじゃないんですけどね。どう謝ればいいのか分からないが、とにかく謝らなければと必死な様子だ。

というわけで、ギョロ・・・頭木さんを探す清作。
学食には安保先輩しかいない。イメージ的にはバッチリだが剣道場にはさすがにいないと思う。
野球選手であるのだからいるとすれば・・・やはりグラウンドでありましょう。

バタバタと校内を走り回るおかげでチームメイトから注目を浴びている清作。
その清作はようやく頭木先輩を見つけ・・・勢いよく頭を下げる。
何といえばいいのか分からないのであればもう素直に言うしかないと覚悟を決めたみたいですな。

頭木先輩の打撃信じられずにサーセンした!!
9回の蛮堂の球、打てないんじゃないかと思って・・・

そこまで正直に述べてしまうのはどうかと思わないでもないが・・・さすがのクソ天然というべきか。
そんな清作に対し、こちらとて元々キサマの力など信用していない。お互い様だと返す頭木さん。おやおや・・・?
この返しは清作にかなり響いた様子。
人の気持ちを察せられない清作であったが、こういう言葉を受ければ分かる。
信用されないってこんな気分だったのかと・・・あの時、ネクストバッターズサークルで・・・

面をあげろ清作。戯れ言

清作が顔を上げると、舌を出しながらそう述べる頭木さんの姿があった。あら、お茶目な。

蛮堂の球を打てる1年などそうはおるまい。お主の活躍がなければ接戦にならなかった。
肝要なのは1人では勝てないと身をもって知ったこと
今のままでは力不足。精進しなければならないと誰もが悟ったこと。
1人1人が成長する限り桐湘は強くなれるはず。夏が待ち遠しいな。

うーむ。実にいいことを言いますなぁ頭木さん。
やはり野球はチームのスポーツですものねぇ。仲間を信じるのはやはり大事でありますよ。
そしてそのことを仲間にきちんと伝えるのもまた大事なことであります。
それを果たした頭木さんはやはり主将・・・あ、主将は之路さんでしたっけ・・・あっ。

まあ、この一連の謝罪劇はチーム一同が見守っていた。おかげで熱い気持ちを共有することが出来た様子。

誰の気持ちもムダにしない。蛮堂が桃ちゃんサンを心底信じきってるみたいに・・・
俺もみんなを暑苦しいくらいに信じてみせる

良いことでありますな。蛮堂くらいに暑苦しくなるのはどうかと思うが・・・まあ、その心意気は良し。
なので皆が用意した弁当もムダにせずに食べなければいけませんわな。ハハハ。
結局工ちゃんとの関係を勘ぐられて殴られることとなった清作。
まあ高校球児が恋愛に現を抜かすのはねぇ・・・いや純愛ならそれも良しである。うん。

さて、ここで監督が登場。
次の土日に西東京の豪徳学園と合同練習をすることに決まったらしい。ほう。
他県の高校との合同練習。それはまた違った刺激を受けそうな気がしますな。楽しみだ。
夏の大会はベンチ入りできる人数が春より少ないので頑張ってこういう場面でアピールしないといけない。なるほどねぇ。

どんな試合でも絶対に勝つ。甲子園に行くためには負けるわけにはいかないからな

円陣を組んで気合を入れる桐湘。負けてなお団結力は高まったようで良かった良かった。
次の夏こそは本番。負けられない戦いに向けて今は力を付けなければならない。
安保先輩だけ姿を見せてないのは・・・まあ、うん。安保先輩だし仕方がないよね。うん。



Vol.47 合同練習  (2014年 39号)


春季大会に敗北した桐湘。
勝利した蔡理は打倒港南に向けて横浜翔西と戦っている。
まあ、今のノっている蛮堂であれば決勝までは問題なく勝ち上がるでしょうな。
端から見てる分には面白いが、実際に投げ合うとなると疲れそうですね穂村。
何だかんだでこいつはツッコミ系のようだし。そりゃ蛮堂さんの行動に逐一ツッコむのは大変だろうさ!!

さて、同じ日に桐湘は合同練習を行おうとしている。
土日泊まりでじっくり行うこの合同練習。
夏の大会メンバー20人に入るためにも、今後の課題を見つめなおすためにもしっかりこなさないといけない。

清作としては独りよがりなプレーをしない、誰の気持ちもムダにしないという課題がある。
それは確かに大事だけど、すぐに身に付くようなものではないでしょうな。
まずはメンバーとしてしっかり確定されるように頑張るのが先決でありましょう。
先輩たちも1年生の清作に負けてられるかと必死になってるようですからねぇ。うむ、いい燃え方だ。

さて、合同練習の相手である豪徳は西東京で毎年ベスト4に残るくらいの強豪校
春季大会ではシード権を取った後、夏に照準を合わせるためにすぐ負けたそうな。
なるほど、それでこの時期に合同練習が出来るわけですな。

豪徳の仙馬監督は久澄監督の高校時代の恩師であるらしい。その縁でこの練習も受けてもらえたとのこと。ほほう。
どうやら久澄監督は高校野球経験者だったようですな。
クソ天然はただの飾りと思ってたとか言っているけど、お前を試合に抜擢してくれたのも監督なんだからな!!

まあ、そういった暴言はさておくとしましょう。
何せこれからもっと凄いことが起きるのだから。之路さんのお尻が撫でられるのだから。ビクッ!

大殿筋がひと回り大きくなってる。走り込みの成果が出たのかな。
1年振りに会うなんてまるで織姫と彦星みたいだね。拓人君

一体何を言っているんだこの男は。いや一体何をやった・・・?いや、言ってることもやってることもとんでもねぇ!!
というかどっちが織姫という設定で喋っているんだ?そりゃ彦星と彦星だろと言い返したくもなる。
でもそれを言うと男心が読めないとか言われてしまう。いや、そんなこと言われましても。

それはさておき、この國尾利万さんの言うことによれば去年、豪徳との練習試合で15対0の大差をつけられて敗れた様子。
男心が読めないから打たれる・・・か。
何ですか?國尾さんも愛がパワーな信念とかあるんですか?蓬莱と似たような考え持ってそうで気になるぜ。

妖しい目つきの國尾さんは1年で蛮堂の球を打った清作を注視する。
清作の腕を取り、意外に細いねとか気さくに語り掛けるが、その力は相当なものである様子。

固くなって。カワイイな

力は相当なものであるようだが、言動が既に半端なく相当なものなので霞む霞む。
いやこれでも港南のエース穂村と並んで関東を代表する左腕なんですけどね。これでも。
清作の腕には握られた跡が残ってるくらいですし、その握力はハンパじゃない。

國尾サン・・・

思わずリスペクトの呟きを漏らす清作。
迫られた直後にそれでは目覚めたとか言われても仕方がねーべ。先の試合では愛の告白までしてるぐらいだしなぁ。

ソッチの道に揺れそうになっている清作。危うい。
一方の國尾さんは自他共に認めそうなソッチの人である様子。
男子校だからわざわざ豪徳に入ったという噂もあるらしく・・・色々やらかしてそうですなぁ。

それはさておき、豪徳にはもう1人気になる選手がいる。
坊主頭でやたらと目つきが鋭い1年生の篠武。そのバットの振りは鋭い。
いや、注目すべきは遠く離れた清作の背中を切り裂くようなイメージを与えたことでありましょうか。
この世界のバッターならばこれぐらいのイメージは生み出さないとやっていけませんからなぁ・・・強敵そうな感じだ!!

この篠武は越境入学でわざわざ豪徳にやってきたらしい。
ふうむ。わざわざ男子校にか・・・いや、さすがに國尾さんと同じ趣味ってことはあるまいが・・・いや・・・いや。

わぱ!?

不意を打ってまさかの左薙登場。何で栄春がいるんだよ!?というか胸を隠すな、顔を赤らめるな!!
相変わらずツッコミ所の多い奴で困るなぁ、左薙伏。

どうやら栄春を含めての3校合同練習であるらしい。
最初は桐湘に申し込んだが、豪徳との練習が決まっていたので仙馬監督に無理をきいていただいたとのこと。
うーむ、1校迎えるのも2校迎えるのも同じということか。
まあそれはいいのだが、左薙の喜多さんに向ける眼差しはどういう意味が込められているのだろうか。
確かにアンダースロー談義をしたいとは言っていたが、この眼差しは・・・?
何というか、豪徳って危険なところですよね。國尾さんのエネルギーで妖しい空間になってそうな気がする!!

まあともかく、始まりました3校の合同練習。
挨拶の場面を見る限り、國尾さんとは別にキャプテンがいる感じですな。
というかさすがに強豪校。選手の数が多い多い。100人近くいそうな感じだ。
さらに練習の内容も細分化されているらしく、選手の中にはひたすら打ちまくる特別強化選手がいるそうな。ほほう。
例の篠武はその打撃の強化選手の1人か・・・
蛮堂の球を1年で打った清作をライバル視するのは当然の流れでありますかねぇ。

清作の暴走グセは気になるところだが、この合同練習はまた粒よりなキャラが揃ったものであります。
蔡理という濃い面々は一時離脱したものの、早速勝るとも劣らない連中が投下される・・・恐ろしい!!
どのような練習試合となりますのか。実に楽しみでございます。



Vol.48 矯正  (2014年 40号)


ヒートアップする合同練習!!
弐織と清作の2人も気合が入っている。
蛮堂から何回か打ちはしたものの結局ホームランは出せなかった。
夏で当たることがあったら今度こそブッ倒してやると意気混んでる感じですな。頼もしい。

蔡理の蛮堂から長打を打ったということで豪徳の選手からも注目される2人。
そんな中、蛮堂のことを知らない様子の妙な髪型の投手が1人。何だそれ。ボールみたいな頭してボール持ちやがって。
と書いてはなぶさ。変わった名前ですがちゃんと変換できますな。ふむ。

それはそうと、歯列矯正が目立つ豪徳学園の1年生、篠武喜輔
3時間近くブッ通しでスイングしているのに軸がブレていない。相当なバッターであることが伺える。
左薙の情報によると、春季東京大会2試合で8打点。ホームラン2本で打率7割2分7厘。
北海道出身で歯列矯正は中学の頃からとのこと。ほう、遠い所からいらしたんですなぁ。って詳しすぎるな左薙。

歯のことはどうでもいいけど、メチャクチャ打ってるじゃないかと驚く清作。
しかし実はどうでもいい話ではない。
歯列矯正中ってことは歯をくいしばれない
歯を食いしばれないってことは力で打っているわけではないってことだ。

清作と同じタイプなんじゃない・・・?

ふむ。それはつまり神奈川最強のバッターである弐織義壱とも同じタイプであるわけか。
これはなかなか侮れない相手のようですなぁ。
しかし見た目のインパクト以外の意味で歯列矯正を用いて来る描写は初めて見ました。上手いなぁ。

さて、合同練習は練習試合の時間に移行しようとしている。
豪徳は普段試合に出られない1・2年を中心にチームを組むことを考えているそうな。
ふむ。では桐湘と栄春はどうするか・・・いや、栄春は既に練習だけでバテきっており、練習試合など行えない様子。おやおや。

そんな栄春はさておき、ブルペンの方では國尾さんの投球練習中。
どうやらずいぶん気合が入ってる様子の國尾さん。そんなに之路さんに会えたのが嬉しいというのか・・・!!

本来は技巧派であった國尾さんだが、この1年でストレート勝負できる程に球速も上がっているそうな。
どのぐらい凄いかというと、弐織、清作の両者が打ちたいと渇望するほどに凄い。分かりやすいな!!

清作雄君か。1年なのに物怖じしないね。後でかわいがってあげようかな>

それは一体どういう意味でのかわいがりなのか・・・いや、うん。あまり考えないようにしましょう。

昼の休憩。相変わらず必死にかっ込むように食べる桐湘部員たち。落ち着けよ。
まあそれはさておき、午後からは練習試合である。
仙馬監督と相談した結果、1・2年生を中心とした桐湘と栄春の合同チームで5イニングまでの勝負ということになったらしい。
ほほう。栄春と合同。つまり左薙が桐湘に加わる形となるわけですか!他の栄春の選手は動けないでしょうしね。
しかし動けなくても左薙へのラブコールだけは怠らない。調子のいいというか何というか。

というわけで、練習試合開始。
まずは桐湘・栄春チームの攻撃から。
豪徳のピッチャーは冒頭に出てきたボール頭の1年生、英仁
春季大会8イニング登板して自責点1と結構な数字。
であるのだが、今の桐湘打線を抑えるだけの力が果たしてあるものかどうか・・・

一番の児島センパイは足を活かすためにゴロを叩きつけ、思う様に俊足を見せつける。

夏服の桃ちゃんに会うまで立ち止まるわけにはいかねーんだ!!待ってろ桃ちゃーん!!

まさか蛮堂も桃ちゃん自身も出てこないのにまだ桃ちゃーんを聞くこととなるとは・・・そのヒロイン力は凄まじいばかりよ!!
そりゃ5巻の帯にも敵校女子マネヒロイン化・・・!?とか書かれますわ。にゃあらー!!

続いて二番の柊。逆方向(オポジットサイド)に強打(パワーヒッティング)。
長打ではないものの、最初から蛮堂の球を当てていけていた柊。さすがでございますな。英訳はいろいろ間違いだらけだが。

そして三番は栄春から左薙。
ノーアウト一・二塁の場面だが送るとか細かいことは考えず強打で行くのが桐湘の野球。
まあ左薙にバントさせるのも勿体ない話ですわな。

1年で四番投手なんだってな。けどそれも栄春だからの話だ。
テメーくらいの力じゃ豪徳では試合に出られすらしないぜ

確かに栄春だからこその四番投手かもしれないが、左薙相手にその発言はどうしたものか。
案の定あっさり打たれている英。セカンドとセンターの間に器用に落とす左薙。相変わらず器用なことだ。

そして満塁の状態で四番の弐織が登場。
大口叩く英もさすがに弐織の圧力は受けている様子ですなぁ。
しかし名門豪徳の先発を任された矜持は捨てきれずにいる様子。これ以上打たれてたまるか!!

誰だテメーは。引っ込めバカ野郎!!

そんな矜持もあっという間に吹き飛ばされることとなってしまいました。
バックスクリーンを直撃する弐織の満塁ホームランで一挙に4点を先制。
名門の豪徳とはいえ、1年生ピッチャーではこんなもんですかねぇ。
まあ、桐湘はここ最近でかなり打撃力がついてきたようですし、仕方のないことでありますか。

というわけで、早くもピッチャー交代。國尾さんがマウンドに立つ。
3年生だが、1・2年が中心というだけで3年が出ちゃいけないルールではないわけか。ふむ。

・・・それじゃ、お望み通りかわいがってあげるよ。雄君

早速之路さんのように名前呼びされることとなった清作。ずいぶん気に入られてしまったようですな!!
まあ、清作は名前をあまり呼ばれず、忘れられやすい感じだったのでこれはこれで良いのではないかと。
それはさておき、國尾さんの実力はどれ程のものでありましょうか。注目です。



Vol.49 釘付け  (2014年 41号)


早くも登場の國尾さん。まあ5回までの勝負だし、出し惜しみすることもないか。
栄春の子らは、いきなり3年がリリーフなんて汚いぞーなどとヤジを飛ばしてますが。元気じゃねーかお前ら。

弐織敏が満塁ホームラン打った直後・・・キミも1発狙いたいとことかな。清作雄君。
――でも拓人君の前で恥ずかしい投球はできないからね。本気で行くよ。

流し目を送られてビクッとする之路さんが何だか可愛い。
それはそうと、國尾さんの本気の投球。
さすがに関東屈指の左腕と呼ばれるだけあり、構えだけでも只者ではないことが伺える。
うん、多分伺えたからこそ清作や左薙が頬を赤らめているのだと思う。いや、だとしても赤らめるな!!

ともかく、國尾さんの初球はアウトコースギリギリのストライク。
その投法は腕を投げるギリギリまで後ろに保つ、タイミングの取りづらいもの。
相当の肩関節の柔らかさと筋力がなければできない投法である。ふーむ、さすがですなぁ。

難しい投げ方をしながらコントロールも抜群。
2球目は初球と同じコースなのに外に逃げるスライダーを投げてくる。さすがの技巧派・・・

蛮堂サンの球を打つ程ストレートに強くても、國尾サンみたいな技巧派投手は苦手なのかな
おまけに左対左というのも清作には不利・・・

そのような分析をする左薙であったが、左投げはさておき貴方も技巧派投手なのに打たれてたでしょ?
ふむ、ひょっとすると自分のことはまだ未熟と謙遜しての意見であるかもしれないな。
それに何しでかすかわからないのが清作だともちゃんと理解している様子である。

とはいえ、2球で追い込まれてしまった清作。
次またアウトコースを攻められたら手が出ない。インコース寄りの球に狙いを絞って振り抜くと決めて待つ。

シメは僕の決め球でキミを落とす

その落とすはどういう意味で、いやまあ漢字が堕とすとかじゃないですしね。邪推はいかんですよね。うん。
それは置いておいて、勝負の3球目は清作の待っていたインコース。
しかしこれまでの速球とは違う遅い球。タイミングを外すチェンジアップだ!!これが國尾さんの決め球か。
速球と同じようなフォームで遅い球を投げられるのだとしたら、なかなか厄介ですなぁ。

完全にタイミングを外されてグラつく清作。
速球に合わせて振ろうとしていたバット。これは止まら・・・止めた!?いや、スイングの途中で腕を引き戻した!?
そして再度バットを振り、膝元に来ていたボールを捕らえる・・・!!

結果は惜しくもセンターフライ。下半身を崩されて腕だけのスイングになったために飛距離が足りなかった様子。
いやでも、もう少し横に逸れていたらセンターも捕れなかったのではないかと思われますなこれは。

まさか、逆に僕の目を釘付けにするなんてね・・・

清作としてはしてやられた感じであるが、観ていた方としてはむしろ驚かされた様子。
うーむ、この反応の格差が天然クソエリートと呼ばれる所以でありますなぁ。最近エリートつかなくなったけど。

けど僕を打てないようじゃ、港南のエース穂村も打てないかもよ

そのように述べてくれる國尾さん。
ふむ、確かに穂村も國尾さんと同じく関東屈指の左腕であり、技巧派。
夏までにしっかり打ち崩せるようにしておかないといけませんわなぁ。いいこと教えてくれるぜ國尾さん。

さて、続く桐湘の六・七番は連続三振となる。キレてます國尾サン!!
まあ宇城さんや頭木さんが出てないとなるともう桐湘で活躍できそうな選手はいませんわなぁ。
あ、そういえば栗原君はさておき伊那はどうしたんだ・・・?

それはさておき、1回表終了。いきなりの4点差となりました。
それを覆したい豪徳。先頭打者はいきなりの歯列矯正男、篠武希輔。
國尾さんにスポーツマンらしくケツを叩かれての出陣。
いや、確かに描写としてはよくあるのだが、この叩き方は凄く怪しい感じが・・・國尾さんは前科があるだけに凄く怪しい。
だが、その激励に怯むこともなく、笑顔で返す篠武。何ですかその反応?え?
やっぱり北海道からわざわざ東京の男子校に入るだけあってこの子もソッチ系なの?どうなの?

まあ、置いておいて。
篠武はさすがに数字を残してるだけあり、ムードのあるバッターである。名のある面々も緊張した様子。
それに対するのは喜多さん。喜多さんもコントロールが良く、変化球が多彩な技巧派投手である。
奇しくも技巧派投手同士の投げ合い。
そして左薙は篠武の打ち方は清作に似ていると評していた。
ふうむ、そう聞くと清作としては自身と対比して考えてしまいそうですな。注目の打席ですわ。

喜多さんの第一球はアウトコースへのストライク。
篠武はこれを空振りするのだが、そのスイングは寒気がするような鋭さを伴っている。
ベンチまで風切り音がするとは・・・さすがというべきでしょうな。

なまら・・・良い球

北海道出身なだけに訛ってる様子ですな。
しかし喜多さん、蓬莱に続いて連続で良い球言われちゃってますなぁ。うーむ。まだまだ工夫が足りないか。
ならばと2球目に投げるのは・・・國尾さんの決め球であるチェンジアップ!!
左薙も実は投げ方を知らなかったチェンジアップ。これを持っている辺り、喜多さんの工夫っぷりはさすがであります。
清作が打ち取られたのと同じように、篠武の体勢を崩すことも成功する。だが――

故郷のグラウンドは――雪でぐずついた足下。踏んばるのは慣れっこだ。
限られた練習時間。1球に対する執着心は誰にも負けない。
真っ白な雪景色の中に浮かぶ球の赤い縫い目が何故かいつも血の流れに見えた。
絶つ!!

清作と同じようにタイミングを外され、体勢を崩された篠武。
しかしそこで清作と同じように腕を戻してのスイング・・・いや、清作とは違い、踏んばって下半身を安定させている!!
そのおかげもあり、清作よりも飛ばしてのソロホームランを叩き込む篠武。
うーむ、同じタイプではありますが、これは明確な差でありますな。
ふむ。清作にしてみればこの合同練習は色々と刺激を受けるいい場になった感じでありましょうか。
果たしてこの試合の内に篠武と並ぶことができるのかどうか・・・楽しみです。

それにしても篠武の打法は球を心臓に見立てる清作にやはり近いものがありますね。
心臓ブッ叩いて止める清作に対し、血の流れを打ち砕いて絶つ篠武。激しいな、オイ。
ポエムを挟んだりする余裕があったりする分、やはり現時点では篠武の方が上と言わざるを得ませんなぁ。うむ。



Vol.50 約束  (2014年 42号)


一気に回の進む練習試合。快音を響かせる桐湘・栄春チーム。
いい感じに点を取っていっていると思ったら・・・

何で投手が國尾じゃねーんだ。ふざけんな。バカ野郎!!

どうやらまた投手が國尾さんから英に戻っている様子。おやおや。
清作は対戦できたのに、自分は戦えない弐織。こりゃ気を悪くしても仕方がないな。
結果として、初回の満塁ホームランに続いて2本目は3ランの7打点という凄い成績にはなりましたが。

去年は豪徳が15対0で勝ったというのに、今年は桐湘の方が11対3という凄い差をつけている。
お互い1・2年が出場ということで、総合力だとどうなるか分からない。
けど、このままだと来年以降の豪徳は危なそうな感じですな。英も頑張って成長しないと。

最後まで振り切る。走り切る。1つ1つのプレーに力を出しつくしているな・・・
気持ちが成長すればその心に追いつこうと技術も伸びる
自分自身にも対戦相手にも挑戦することをやめない限り前に進めるということかな・・・

桐湘の急成長の秘訣を見て取った様子の仙馬監督。
ふむ、豪徳としてもこの合同練習は得るところが大きそうですな。
強豪が忘れがちなこういう気持ちを一緒に練習することで感じ取れるわけですな。

・・・桐湘。今年は本気で甲子園狙えるかもね・・・

嬉しいことを言ってくれますな國尾さん。
しかし豪徳の1年にも凄い奴はいますな。
篠武希輔。ホームランと二塁打含めて3打数3安打。
しかも甘い球にはあえて手を出さず、難しい球を打っていた様子。ほほう・・・
投手はともかく、こういう怖い打者がいる辺り、まだまだ豪徳も侮れませんわな。

この後は3年生同士で練習試合。
これは・・・之路さんは投げられないし、打線の主力もほとんど抜けてるしで、桐湘に勝ち目はなさそうですな。
なので詳しい描写はされずに省略。結果も未発表であります。酷いことになってそうだな。

練習試合を終え、そこから学んだことを念頭に入れて練習。
それらを終えて、グラウンドの整備をしたところで3校合同練習の1日目が終了となる。
うーむ、朝9時から夜7時までミッチリ。見事な強化合宿でありますね。これは力が付くわ。
豪徳に至ってはここで更に自主練をしてたりするそうですが・・・ううむ。
まあ、明日もあることですし、桐湘と栄春は入浴して早めに休む必要がありますよね・・・

自主練って言っても1時間くらいだけどね。

2校の会話に、先に入浴していた國尾さんが妙にポーズの決まった感じで応えてきてくれます。
っていやいや、宿舎別棟なのに何でいるんですか國尾さん!!
そんなに之路さんのことが好きなんでしょうか。
だとしてもそのなんだ・・・もう少し人目を忍ぶとかそういう気遣いを・・・
蛮堂のように叫ばないだけマシと考えるべきだろうか。

明日は神奈川の春季大会決勝。港南対蔡理が行われる。
穂村と蛮堂のエース対決。そして弐織義壱と蓬莱の四番対決。なかなか面白そうですな。
今の蛮堂はノリに乗っている状態だが、果たして弐織義壱を押さえることは出来るのだろうか・・・さてさて?

それはさておき。入浴後、夜に2人で待ち合わせをする國尾さんと之路さん
お、逢引ですか?いや、國尾さんが混じるとこの手のボケはシャレにならないからいかんな。

実際行うのは2人揃っての走り込み。
やはり投手に体力は必要ですし、強靭な足腰を作るには走るのが一番なわけですな。
ちなみに去年もこの2人は一緒に走っていたらしい。
國尾さんが言うには暗闇の中を走ってると集中力が増すのだそうな。ほう。
そのロードワークに出ようとしている國尾さんに、自ら一緒に走っていいかと申し出た去年の之路さん。
ふむ、この頃の國尾さんはまだ之路さんへの好意は薄かった感じですな。
むしろその時のロードワークと語り合いで好感を持ったといったところでしょうか。

國尾さんは1年の夏に甲子園を経験しているという。
まあベンチ入りしたというだけで投げてはいないみたいですけどね。

甲子園のマウンドで投げてみたかったけど、投げたらきっと打たれただろうな。
まるで夢の中にいるみたいにフワフワしてたからね。
いや・・・本当に"夢の中"にいたのかもしれない。けど次は戦うために甲子園に行くんだ

甲子園出場の強豪チームでありながら、この意識の高さ。
これは之路さんに与える影響も大きそうですな。
そしてまた、之路さんの熱さもいい感じに受け取っている國尾さん。ほほう。

去年は國尾さんの走りについていけなかった之路さんだが、この1年の成果か、今年は並走できている。
國尾さんが加減しているわけではないのは間違いない。
僕が拓人君の気持ちに全力で応えないわけない。そのように言われたら疑うことも出来ませんわな。

之路「・・・國尾。約束覚えてるか。"甲子園で投げ合う"。俺も全力で応えてみせる
國尾「当然。約束を破るようじゃ恋人失格だ

之路さんの熱い言葉に笑顔で返す國尾さん。
うん、いい約束だ。いい約束なんだが、さらっと恋人発言とかされましても・・・その・・・なんだ?困る。
しかもツッコミのセリフもなく場面転換するものだから更に困る。
この言葉に対する之路さんの反応は読者の判断に委ねるということか。委ねていいのか!?

それはさておき、宿舎の方では清作が一人でバットを振っている。
いや、左薙も付き合ってはくれているみたいですけどね。懐中電灯で遊ぶな。

しかしどうやら清作、今日の練習試合で見た篠武のバッティングが気になっているようですな。
わざわざ難しい球を打っていたように見えた。
そのことを左薙に問うと、どうやら正解だった様子。
まあ清作がそれに気付いてたことにビックリしたとか言われちゃいましたが。いい顔しやがって・・・!!

甘い球ならいつでも打てるってことでしょ。実戦では難しい球打たなきゃいけない状況の方が多いだろうし・・・
普段から自分を追い込んで打席に立ってるんだ。春季大会打率7割超えも納得だよ

やはり普段からの意識の高さが結果に表れているということでしょうか。
むしろその結果が出ているからこそ、次の段階に進むためには追い込む必要があるということか。

凄い打者である篠武。
その篠武もまた夜にバットを振っている。
そのスイングは昼間よりも更に速い・・・何なんだよコイツ!?

清作と左薙、そして篠武。各校の凄い1年が揃い踏み。
さてさて何か起きるのでしょうか・・・?



Vol.51 なまり  (2014年 43号)


闇夜を切り裂くような篠武のスイング。
まとめてぶった切られた2人はその篠武へと近づいていく。こんばんは篠武君。その懐中電灯の当て方はやめなさい左薙。

間近で見る篠武。その体はあまり太くはない。
清作と同じく、パワーで打球を飛ばすタイプじゃないのが見て取れる。
しかし、清作が気にかかるのは昼間よりも鋭いスイングという部分。
まさか練習試合は手を抜いていたというのか?コッチ見てニヤついていやがったし・・・

そんなんじゃない。同じ1年の打者が気になったのと、東京はわや暑くて昼間は思い通りのスイングができなかっただけだ。

そのように答える篠武。
ちなみにわやとは北海道の方言で「ひどい」とかの意味。
ほほう。北海道なまりですか。と聞く方は普通に受け入れたのだが・・・

・・・ああ!恥ずかしい!!なまりが恥ずかしいからあまり喋らないようにしてたのに・・・!!

突然真っ赤になり、点描トーンをまき散らす篠武。何だいきなり!!
そんなになまってはいないけど、意識して標準語喋るようにしてるってことですかねぇ。
何にしてもそんなことを気にする2人でもない。
越境入学する程の力があることは練習試合で見せられたし、出身がどこであろうと関係ないって話だ。

そのように述べると嬉しそうにニコニコし出す篠武。何か可愛いぞオイ
黙って笑顔でいるだけだとどうしても怖いけど、人となりと知ってしまうと笑顔の意味が随分変わって見える。
うーむ、やっぱり怖い顔ってのは損する部分があるんだなぁと思わされますなぁ・・・
いや、その落差を活かしたギャップ萌えという長所もあるか・・・?

篠武を褒める清作。そんな清作に対し、キミも凄かった、國尾先輩の決め球を初対戦でミートするなんてと述べる篠武。
ふむ、そのように褒められると照れてしまいますな。赤くなる清作。ほんとお前はちょくちょく目覚めるよな。

それに初対面で話しかけてくれたのは國尾先輩とキミたちだけだ。

顔が怖いとやっぱり損するって話ですね。分かります。
天然はそういうところで恐れ気がないから助かる。

篠武は高校生になる前、中学生の時点で一度豪徳の練習を見学に来ている。
その時の篠武は豪徳の選手たちの上手さに気圧されていたらしい。
こんな所で僕の力が通用するんだろうか・・・
もし入部できたとしても寮に入ることになったらやっぱり上下関係とか厳しいんだべか・・・と。

そんな悩む篠武のお尻をいきなり掴んでくるのが國尾さん。オイ。いきなり何をするか。

練習見ただけで怖じ気づくんならやめとけば?日本中どこでだって野球はできるんだし。

別の意味で怖がらせはしたものの、篠武の気後れした様子を正確に読み取った國尾さん。さすがである。
しかしその物言いはどうなのだろうか。篠武の力では豪徳でプレーするのは無理と・・・?

――いや。どこで野球やってても目指す場所は甲子園1つなんだ。
迷ってるなら誰と一緒に目指したいかで選べばいいんじゃない?
ただ、キミくらい良いお尻してる奴はウチにもあまりいないよ。

そう述べて去っていく國尾さん。
篠武はどうやらこの國尾さんの言葉に背中を押され、豪徳に入る決心をしたらしい。
そんな國尾さんに恩返しがしたい、一緒に甲子園に行けるチャンスは今年だけだから絶対に力になってみせると述べる。ほほう。
健気なことを述べる篠武に対し、清作は考える。誰かと一緒にか。自分にとっては――

弐織先輩・・・?あの人2年だから今年が最後ってわけでもねえな・・・

之路さんや頭木さんといった面々は3年生だが、特別に1人あげるならって候補には入れられないか。
その辺り清作は真面目というか純粋というか。形だけじゃなく、真剣に想おうとする子でありますなぁ。

・・・誰のためとかよくわかんねえし、そもそも自分のためなんだけどよ。
とにかく打ちまくればその分皆で甲子園に近づけるってことだろ
そんで甲子園であたったら、お前より飛ばしてやるよ。

なまらいい音するスイングを行い、笑顔でそう述べる清作。
ふうむ、之路さんが國尾さんと投げ合う約束をしたように、清作と篠武の間にも何か芽生えた感じがありますな。変な意味でなく。
強打者同士、甲子園で戦うことを期待する。よい関係となれそうな気がしますな。うむ。

そんな風に話している3人のところにロードワークを終えた國尾さんと之路さんがやってくる。
その姿を見て、改めて3年生にとっては最後の夏であるのだし、絶対に今年甲子園に行くんだと思いを新たにする清作。
良い話ですねぇ。そんな中、皆で一緒にシャワー浴びる?とか言い出す國尾さん。爽やかだけど謹んで辞退したい申し出だ!!

さて、翌日。保土ヶ谷は神奈川新聞スタジアム。
この日は13:00から春季大会の決勝、港南対蔡理が行われる。
桐湘の面々としては気になる試合。どうやら詳しく描かれるようで読者としても楽しみですな。
そして蛮堂としては弐織義壱に積年の恨みを晴らすチャンスである。

俺と桃ちゃんの愛の力でキサマをねじ伏せてやる。ここ保土ヶ谷がキサマの墓場となるだろう・・・!

相変わらず闘志と桃ちゃん愛でバッチバチの蛮堂。
桃ちゃんの方は激おこ状態から普段の省エネモードになっている様子だけど、試合中にまたなったりするのかな?楽しみだ。

さすがに強豪の港南。全校生徒が応援に駆け付けている様子。
その数の多さに圧倒されそうになる蔡理の選手たちだが、蓬莱は数だけ多くても意味が無い。奴らは肝心なことを忘れていると指摘。

チアリーダーの最大の魅力は太モモやアンダースコートじゃなく、ワキだ!
生憎だが長袖のアンダーを着ていてはオレの心を乱すことはできないぜ。

急に何言ってんだコイツは。
蛮堂はもう慣れた部分もあるが、蓬莱の何言ってるんだ感の引き出しはやっぱり凄い。
長いこと一緒にやってそうなチームメイトでも思わずツッコむぐらいだからなぁ・・・恐ろしい男よ。
両校が整列している時でもその目線は上の方を向いている。乱されはしないが物色はするってか?余裕あるなぁ!!

球を見立てるだけではなく、ちゃんと現実の女の子に対しても性癖を持っていた蓬莱。
地味に安心したようなそうでもないような。
性癖といえば、國尾さんはお尻の良さで好みのタイプを判断しているのだろうか。
やはり強者ともなるとそういう拘りがなくてはいけないのだろうか・・・いや、これはキャラ性の部分での強者だな。

それはそれとして、合同練習を行っている桐湘の方では安保先輩が不穏な動きを見せている。
アツ苦しいほどに熱血している之路さんたちに対し、何か一言ある様子。
さてさてこの安保先輩の感情の爆発は何を意味するのか?
甲子園出場にはこの人の強化もなくてはならなさそうでありますが・・・どうなりますかねぇ。



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