蒼天紳士チャンピオン作品別感想

錻力のアーチスト
Vol.52 〜 Vol.78


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 各巻感想

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連載中分

錻力のアーチスト 7巻


Vol.52 スケール  (2014年 44号)


甲子園に向けて一丸となるチーム。
誰も彼もが熱い。そんな桐湘の空気に溶け込もうとしない安保先輩。ようやくその心情が明らかになりそうであります。

甲子園ってそんなに大事かよ。何が何でも目指さなきゃいけねーモンか?

安保先輩のその言葉に、目指すのは当然だろと答える之路さん。
確かに目指す目的とし掲げるものとしては妥当ですわな。だが安保先輩に言わせれば行ったところで何になるって話だ。

甲子園に行けばプロになれるってわけでもねえ。
之路、宇城、頭木。お前ら将来野球でメシ食っていけると思ってんのかよ。
全てを懸けてまで目指す価値なんて無え。少しは現実見ろ

冷静といえば冷静な安保先輩の言葉。
熱くなっている面々の中で一人冷静。なるほど溶け込みにくいわけですな。
上の3人に述べるのは同じ3年生であるからかな?
清作に関していえば、野球で食っていきたいと本当に思っているし、そうなれる可能性がある。
なので今回のような言葉で煽る部分には向いていない。その分、割って入られることもなさそうですけどね。

1、2年達が見守る中、感情を爆発させる安保先輩。
昔からああなのかというと・・・どうやら違った様子。

桐湘に入ったばかりの頃の安保先輩は燃えていた。どこかのクソ天然のように四番打者希望とか言ったりしていた。ほほう・・・!!
先輩たちが全力出してもそれを上回って四番になってやるなどと考えていたらしい。
うーむ、熱いねぇ。そしてこの頃は随分とスリムだったんだねぇ。

之路、宇城、頭木の3名は当初パッとせず、1年目はベンチにも入れなかったらしい。
そんな中、三番を打っている安保先輩。見事なものでる。
しかしその頃の桐湘の力では夏の県大会2回戦までしか行けなかった様子。おやおや。

新チームになったら俺が四番だ。3年も同学年の之路たちもアテにならねえ。俺の力で桐湘を甲子園に導くんだ・・・!!

そんなことを考えていた安保先輩の前に現れたのが弐織敏。
港南の弐織義壱の弟であり、自分が飛ばしたことのない距離を易々と飛ばす男。こいつは・・・スケールが違う。

初めて自転車に乗れた時、自分の足で走る以上のスピードに興奮した
けど、あっという間に車に追い抜かれて2度と追いつけなかったあの時の感覚に似てる。
モノが違う。それまでの高揚感が一瞬で冷めた。かなわねえもんはかなわねえ。
神奈川の王者港南学院にはきっと弐織敏みたいな奴がゴロゴロいる。そんなチームに勝てるわけねえんだ。
もし甲子園に行けたとしても全国には更に上がいるかもしれない。
努力じゃどうにもならないことがある。1度立ち止まってよく考えろ。
なのに前しか見えねえ之路たちバカ共は才能も無えくせに、はるか遠くの天才共の背中に追いつこうと走って走って走りまくってやがる。
あきらめろ。何かを全力でやる程自分の限界が見えてくる。転んだ時の傷もデカイ。
あきらめちまえよ

早々に悟ってしまった様子の安保先輩。怠惰により、すっかり今の体つきになってしまいました。
そして迎えた高校3年目。今年入ってきたのは四番希望を叫ぶ天然。
シニアでホームラン量産したクソチートであるが、腰を痛めてエリート街道から一度落ちた男である。

お前挫折したんだろ。散々痛い目見たんじゃないのかよ。
・・・なのに、なのに何でまだ前、向き続けられるんだよ

諦めろと言っても諦めようとしない。
そんな連中に、ようやくその質問を投げかける安保先輩。
それに対し之路さん。皆ただやりたいことをやってるだけだと答える。

安保、お前の言う通り選ばれた人間しか、力を評価された人間しかプロにはなれない。
けど甲子園を目指すのは自分で選んだこと。
自分たちだけの意志で切り拓けるかもしれない道だから、皆前を向いて進み続けられるんだ
――でも本当はもっと単純に1試合でも多く全力で野球がやりたいだけだよ。お前だってそうだろ?

それがまあ正直なところでしょうね。
真っ直ぐ前を見て走り続けている。立ち止まって遠くを見ることもせず、ただ目の前の道を切り拓いて進む。
うーむ、さすがに之路拓人の名が示す通りのいい言葉であります。
安保先輩も諦めを口にしながら野球部を辞めることは無い。怠惰でいながらも練習に顔を出している。
それはやはりまだ昔の熱が消えきっていないからであろうし、之路さんたちもそれに期待しているのでしょうね。

・・・フン。物わかりの悪い奴らだ。どうやったって越えられねえ壁ってのは確実にあるんだよ。

やはり一度ひねくれてしまうと簡単には元には戻れないか。
でもほんの少しの間でしたが、安保先輩も清作の言葉に動かされた時があったんですよね。
もう少しきっかけがあれば・・・夏までにはまだ時間があるが、肉体的なことを考えると早めの覚醒に期待したいところです。

さて、カメラは保土ヶ谷へ。港南対蔡理の試合が始まろうとしています。
1回表は蔡理の攻撃。そして一番打者はサードの金崎。
ふむ、桃ちゃんへの想いは蘇っているようですな金崎。
あのにゃあらー状態を見ても想い続けることができているわけか。その想いは本物だ!叶うかは微妙だが頑張ってくれ。

初回からトバしていけと言われる穂村。
そのように言われなくても張り切るつもりの様子。

右打者には内角エグって〜〜♪ハラワタ切り開いて〜〜♪

さすがに切れ味鋭い穂村の変化球。これはまた綺麗なモツがまろびでましたな。ドパッ。
いやもちろんイメージですよ。イメージイメージ。いつものことさ。

1、2番は連続3球三振。そして三番の杉山は左打者。

左打者には〜〜このカーブで〜〜♪その首刈っ切るぜ〜〜♪

相変わらずの見事な首落としカーブ。うーむ、とことん切り裂かないと気が済まない男なんですなぁ。
舐めた態度であるが、さすがに國尾さんと並んで関東屈指の左腕と呼ばれるだけのことはあるか。
だが投げ合いならば蔡理とて負けてはいない。この裏では燃える男、蛮堂がマウンドに立つ。

俺は今この瞬間に、愛の炎を燃やし全力を尽くすのみ・・・!!

弐織義壱を始めとした強力な港南打線。
しかし桐湘との試合以降燃え上がっている蛮堂。これならば期待できるか・・・!?
まあ、打たれたら打たれたで桃ちゃんがにゃあらーしてくれるかなとか期待はできるわけですが・・・
とにもかくにも楽しみな試合であります。



Vol.53 気の毒  (2014年 45号)


3人で終わらせられた1回表の蔡理。
続いては1回の裏。港南の再強打線の出番である。
四番の弐織義壱は別格だが、それ以外の面々も凄い。1試合平均8点以上は恐るべしである。
されど今の燃える蛮堂であるならばどうか。
桃ちゃんは元に戻ったけど、蛮堂は相変わらずな感じですなぁ。

1番打者はライトの上根敦士。長打力も足もある上にミート力は港南でもナンバーワンの選手。
だが、その上根であっても当てられないほど球が走ってる蛮堂。
ストレートが来ると分かっていたのに当てられない。これは大変なことですな。
港南の連中の顔色も変わったように感じる。

王者・港南を倒そうというのだ・・・全力を尽くさねば成し遂げられんことは百も承知!!

慢心も油断もない。最初から全力投球の蛮堂。
それを手強しと見たのか、いきなりセーフティバントに切り替える上根。しかし惜しくもアウト。
うーむ、バントした手が痺れるとか相変わらずの剛球。弐織が押し負けそうになるだけのことはありますわ。

たったの一球で最強の港南打線を本気にさせた様子の蛮堂。さすがである。
これは港南も硬軟織り交ぜた攻めをしないといけませんわな。港南だけに硬軟織り交ぜて・・・

それはさておき、二番はセカンドの園部。一言で言うならイケメンメガネ
ファンの騒ぎっぷりも合わせて喜多さんのような風情がありますな。
イケメン嫌いの蔡理の宮野の反応も同様である。って穂村も宮野と似た反応かよ。

万雷の歓声など無くとも俺には桃ちゃん1人の声があれば十分。いや、それこそが天啓にも似た至高の声!!

実に相変わらずの蛮堂であります。実際その通りなのだろうが凄い。
その迫力も相まってか、短くバットを持ったにも関わらず詰まらせられる園部。
フラフラと上がったファールフライを気合を入れてキャッチする宮野。
イケメンに対する恨みを晴らす為ならば壁にぶつかることも厭わない。見事な精神ですな。こりゃモテないなとは思わせられるけども。

気ィ合いそうじゃん、あのライト。次の打席手加減してやろうかな。

そんなことを考える穂村。
宮野と比べるとそんなに悪いツラしてるわけではないが・・・モテないことは共通してるってことかね?
どちらかというと穂村の場合は態度に問題がありそうですな。野球強豪高校のエースなんてモテそうな立ち位置なのに・・・

さて、港南の三番は池田ホセマリア。ホセー!!
立派な体格でありますし、蛮堂とも互角のパワー勝負が出来そうに思われる。

だが!俺の体は桃ちゃんの補食によりつくり上げられた2人の愛の結晶!!
全身の細胞に!体中を駆け巡る血液に!桃ちゃんの愛が宿るこの肉体が負けるはずがない!!

相変わらずの豪快な語りっぷり。さすがの蛮堂。
しかしその蛮堂の球を捕らえて前へと返すホセマリア。義壱を倒すのは俺だ!!と内心で息巻いている。
なるほど。ホセも愛を誓い合った者がいたため打てたというわけですか・・・いやいや。
というか蛮堂、お前もまだ愛を誓い合ってたりはしないでしょうが。何勝手にステップアップしてるんだ!?

ともあれ、ホセの打球は伸びが足りずにセンターフライ。オノーレ
やはり内心で思うぐらいでは愛の示し方が足りないということだろうか。
清作と似たような意識の仕方してるんだし、次の打席では大々的に告白しながら打つとかしないとですな。

見事に3人で終わらせた蛮堂。弐織義壱との戦いは次の回にお預けとなる。
弐織義壱を睨むためによそ見しながら歩き、ベンチに落下する蛮堂。何やってるんだろうねこの男は。
これで本当に桃ちゃんがケガでもしたらまともにピッチングできずに終わるところでしたよ!!

それはさておき、2回表。蔡理は四番の蓬莱が登場する。
港南の捕手である橘主将もさすがにこの蓬莱は今までの他の打者とは違うと述べる。
しかし、どうにも自分に自信があるためか、見くびっている様子の穂村。
例え弐織義壱並の打者だとしても軽くサバいてやるよとか考えている。大した自信だなぁ、ホント。

右打者の蓬莱に対して投げるのは腹を切り裂くためのインコース。
桐湘と戦った時、喜多さんの内角をエグる球を打ち損じた経験のある蓬莱。だが同じミスはしないと考えている。

それに自分からグイグイくるコには曖昧な態度をとらずにキチンと応えるのが男ってもんだろ!!

そう述べ、見事に穂村の球を捕らえる蓬莱。
先制ホームランにより蔡理が1点を先行する形となりました。

穂村。俺は女の子が好きなんだ。男にナメまわされて喜ぶ趣味は無いぜ

何ともカッコ良い蓬莱。
野球してる最中に出る言葉ではないが、その言葉自体はカッコイイ。やってのけたこともカッコイイ。
合わせてみると何だか変な感じでありますが・・・まあ、蓬莱だし。仕方ないね。うん。

ナメた態度を取っていた穂村であったが、さすがにこれには舌も引っこまざるを得ない。
さてさてここから崩れるのかどうか。エースの資質が問われそうですな。



Vol.54 冗談  (2014年 46号)


蓬莱の一打で先制する蔡理。さすがである。
打たれた穂村は飄々とした様子・・・に見えるが、内心はやはり穏やかではない。

蓬莱サン・・・アンタ桐湘の左投手・喜多にインコース攻められた時はショートゴロだっただろ。
なのに何で俺の球スタンドまで運べるんだよ。
港南のエースの俺が桐湘の2番手投手より下だってのか。冗談キツイね・・・!

まあ、蓬莱は別にインコースが苦手ってわけでもないですしねぇ。
あの時はブラチラ覗き見に気付かれて気まずかっただけですし。
そんな脳内展開が繰り広げられてたなんて外から見て分かるわけはないか。

さて、五番の蛮堂が登場。
蛮堂も右打者であるので、穂村は今度こそハラワタぶちまけさせてやると張り切っている。
確かに筋肉の付きまくっている蛮堂にインコースは厳しいかもしれませんな。
腕を畳んでのコンパクトな振りが要求されそうですし。

しかしその筋肉の厚さのためか、穂村の球で切り裂かれても内臓までは達していない様子である。
ならばもっと深くエグって斬り伏せてやるよと穂村。ホームラン打たれたばかりなのに強気だなぁ。

――いや。アイツは強気なんじゃない。まわりの全員をナメてるんだ
喜多は少なくとも男をナメるようなヘキは無かったぜ。

ヘキって。性癖ってことですか?蓬莱らしい表現というか何というか。
穂村がやたらと舌を出すのは誰でも彼でもナメてやるぜという意志表示だったということでしょうか。
そうだとしたらヘキとか言われても仕方がない気もしますな。

それはさておき、2球目。再度のインコースに身体を開きながら対応する蛮堂。

俺の懐には――桃ちゃん以外入ることはできん!!
桃ちゃああん!!!

そう吠えて打ち、桃ちゃんの叫びを送れば打球はフェンスを越えて行く。
うーむ、打ってからのアフター桃ちゃんとかそういうのもありなのか!!
フェンス越えてるからいいものの、叫んで走らずにいるからなぁ。場合によっては怒られそうな行為だ。

何にしても2連続ホームランの蔡理。さすがの主力2人ですな。
さすがの穂村もこの連打は堪えた様子。舌が引っこんでいる。
ああ、あんな意味わかんねー人に打たれるなんてという想いもありましたか。それは思うわな。うん。

連打を浴びた穂村。しかし港南の選手は誰もマウンドに行かない。
嫌われている可能性も無くはないが、港南のエースならば自力で立ち直れということなんでしょうな。
そして、捕手の橘主将は好きに投げさせるつもりは無くなった様子。
インコース一辺倒で勝てるほど甘い相手じゃありませんわなぁ。

とはいえ、蓬莱、蛮堂以降の打線はやはり多少の見劣りがある蔡理打線。
その後は快音なく2回表の攻撃終了となりました。まあ2点取れただけでも大きいかな。

いつも他校の試合をただ観戦してたわけじゃない。
打者のクセや苦手な球を直に見て切り刻み方をイメージしてたんだ。なのに・・・何が足りない。

やけに他の試合を見に来る奴だと思ったら、そんなことしてたんですな。
蓬莱にしてもそうだが、強い選手は脳内に何か特別な世界を持っていたりするものなのだろうか。

それはさておき、2回裏の港南の攻撃。
打席に立つのは・・・四番・弐織義壱!!

早く追いつくために歓声を上げる応援団。
しかしこの男が打席に向かっただけでその声は止まる。表情が・・・スタジアムの空気が凍りつく
ううむ、威圧感だけでここまでの効果を及ぼす辺り、さすがの怪物ですなぁ。
間近にいないといけない捕手の山脇くんも大変だ。太ってるだけに寒いのは得意か!?

並の投手ならば弐織義壱と対峙しただけで凍りつく。
しかしこの蛮堂は並ではない。己の発する熱でその威圧感を溶かして見せる。

弐織義壱。キサマ放つ凍てつく程の重圧も、桃ちゃんの愛の炎をこの身に宿す俺を凍りつかせることはできん
今ここで引導を渡してくれる!!

その言葉と共に放つは燃えるストレート。
弐織義壱用に身に付けた落ちる球・スプリットであるが、やはり気合を込めて投げる時は全力のストレートですわなぁ。

それでこそ蛮堂

弐織義壱も認める蛮堂の矜持。
だが、そのバッティングは燃え上がる蛮堂の球をも凍りつかせ・・・打ち砕く!!

俺の渾身のストレートを打ち砕くとは・・・それでこそ――弐織義壱・・・!!

見事に蛮堂の初球をスタンドに放り込む弐織義壱。
それでもギリギリフェンス越えな感じがするのはさすがの蛮堂の球と言ったところでしょうか。
お互いがお互いをそれでこそと認める両者の対決。何だか良いですな。
蛮堂も弟である弐織敏と戦って、そういう方面での成長も果たしたように思えます。

相手が強敵であることは認める。が、やはり打たれれば悔しいし、沈みもする。
その蛮堂の様子を見て何か気付いたかのように笑う穂村。

義壱サン・・蛮堂サンの最大の武器を真っ向から打ち砕いた。
相手の最大限の力を上回ってこその王者ってことか。
――なら俺も今まで以上に強行ガン攻め。自分の武器押しつけまくって皆殺しにしてやる・・・!!

逆境に立たされたのに、逆に前へと進む意志を見せる穂村。
まあこれで沈んでしまうようでは港南のエースは名乗れませんわなぁ。
この意識の変化でどこまで蓬莱たちを押さえることが出来るものか・・・楽しみです。



Vol.55 変化  (2014年 47号)


弐織義壱のホームランで1点を返す港南。
しかし後続は続かず、1点止まりとなった。さすがに蛮堂。簡単には崩れないか。
未だリードされた状態で3回のマウンドに上がる穂村。大丈夫だろうかとブルペンの八子ッチに心配されていたりする。

立ち直ってもらわなきゃ困るぜ八子。3年の俺を差し置いて港南のエースナンバー背負ってんだからな。

そう述べるのは先輩。2年の穂村がエースなんだし、そういう人もやっぱりいますわな。
ちなみに本心では穂村のことを全く心配していない八子ッチ。
むしろ崩れてもらった方が自分にチャンスが回って来るとか考えている様子。おやおや。相変わらずなことで。

しかし八子ッチには残念ながら、2回裏の味方の攻撃を見て自力で立ち直っている様子の穂村。
蔡理の攻撃は九番の須長。小技の巧い打者であるが、その小技を出す暇も与えられない。

蛮堂サンが1球でウチの打線を本気にさせたなら俺はその上を行く。
1球で相手を戦意喪失させてやる

その言葉通りの強気なインコース攻め。
首だけではなく手首まで纏めて落とすほどに切れ味が増しております。ぬぅ。

殺してやるからサッサと立て

厳しいコースのボールに倒れ込んだ須長。それを見下す穂村。
うーむ、舌を引っ込めて来ましたねぇ。
ナメてかかるのではなく、切り刻む狂気の方を前に出すようになってきたか。こりゃ雰囲気違いますわ。

その後は手が出せず、見逃し三振の須長。
続いて打順は一番に帰り、金崎。
右打者にホームラン2本打たれているからインコースは投げにくいはずと読むが、強気に戻った穂村にその考えは通用しない。
どんどん相手を斬り刻むためにインコースを攻める穂村。
モツがまろびでた上に寸断されたりと、やはり切断力が増してますなぁ。

続いては二番の宮野。1回の裏で園部のファールフライを捕ったこともあり、港南の女子からはブーイングが飛ぶ。
こりゃ女子は皆俺に冷たいとか言い出しても仕方がありませんわ。
そんな宮野に親近感を抱いていた穂村でありますが・・・

気ィ変わったから死んどけ!!

酷い扱いで三振に終わる宮野でありました。おやおや。

すっかり立ち直った穂村。この後も全員ブッ殺してやると息巻いている。厄介な男ですなぁ。
蓬莱や蛮堂は敏感にその穂村の変化を敏感に感じている。この先はわずかなスキが命取りとなるだろう。

――だが、俺と桃ちゃんの愛は不変!故に無敵!!

スキを見せるも何もなさそうな蛮堂。さすがというべきでしょうかね?

その迫力で三回裏も3人で終わらせる蛮堂。
どうやら港南も打順1巡して一番の上根さんまで行っていた様子。
その上根さん。穂村の勢いを止めずに早く投げさせるために今の打席を捨てた疑惑があるようだが・・・はてさて?

それはさておき、四回の裏。迎えるのは蔡理の三・四・五番のクリーンアップ。
穂村としてみれば正念場・・・であるが、狂気を前面に出した今となっては楽しみでしょうがない様子である。ううむ。

マウンド上の穂村先輩・・・まるで義壱先輩が打席にいる時のような威圧感だ

ブルペンで見ている八子ッチも戦慄する穂村のプレッシャー。
その威力によってか三番の杉山も3球三振である。ううむ。
しかしこの次に迎えるのは強打差者である蓬莱。穂村としてはリベンジの相手である。

・・・見える。見える・・・集中すればする程・・・俺のエモノがハッキリ視える・・・!!
どこ切り裂いてやろう。どこえぐり取ってやろう。
どの血管どの筋肉どの臓器をズタズタにバラバラに撒き散らしてやろうか蓬莱サン・・・!!

目を充血させてそんなことを考える穂村。
随分と危なくなったものだ。いやまあ、前から切り刻むのは好きだったから変わりはしないのか。

全身をナメまわすように見ているな。"何か"に目覚めたか
けどな、男に品定めされるのは気分のいいものじゃないぜ。

蓬莱が目覚めるとかいいだすと何か別のものを指してるように聞こえていかんですな。

それはさておき、1ボール2ストライクと追い込んだ後の決め球はやはりのストレート。
かと思いきや、蓬莱のバットを掻い潜るような変化を見せる。ほう、ツーシームか。
さすがに曲者の穂村。真っ向勝負というらしさよりも、直前で避けるというらしさで来ましたか。
これまでの打者には使ってこなかったツーシーム。全ては蓬莱を打ち取るための布石であったと。ほほう・・・

チーム丸ごと舌の上で転がして、跡形残らない程全力でナメ尽くしてやるよ・・・!!

蓬莱を三振に仕留めるとは、かなりの覚醒を遂げた様子の穂村。
こうなってくると蔡理も追加点を取るのは厳しいか?
いや、蓬莱もそう来ると分かっているならば二度はやられないでしょうが・・・
なんにせよ、穂村が崩れることはまだまだなさそうであります。残念だったな八子ッチ!!



Vol.56 重圧  (2014年 48号)


蔡理と港南が接戦を演じている中、桐湘は合同練習中。
やあ、相変わらず國尾さんは積極的ですなぁ。ハッハッハ。練習中位は控えましょうや。

スコア上ではリードしている蔡理。
しかし蓬莱が2度目の打席で三振に切って取られるなど不穏な空気が漂いだしてきました。
さて、ここでこの試合その蓬莱に続いてホームランを打っている蛮堂での打席でありますが・・・

蔡理のメンバーでウチと張り合えるのは蓬莱サンと蛮堂サンの2人だけ。それ以外は怖いねえ。
四番とエース。この回で一気に息の根を止めてやるよ

覚醒した穂村の目には蛮堂の姿が、中身に至るまでよく見えている。
その事実による心理的な優位感からか、翻弄するような投球を行う穂村。
インコース一辺倒ではなく、アウトコースやインハイなど織り交ぜての投球。
相手の思考回路までよく見えると述べるだけあり、なかなか面白い投げ方をしてきますなぁ。

弐織義壱にホームランを打たれたことをまだ引きずってる様子の蛮堂。
だが、投手としても打者としても桃ちゃんに相応しい男であるために、ここで死すわけにはいかない。
その想いでバットを振るが・・・なかなか上手くはいかない。
穂村のボールを捕らえることは出来ず、三振に終わるのでありました。ぬう。

蔡理のクリーンアップを3三振に切って取る穂村。
ふむ、この活躍は確かにカッコいいと言えなくはないですな。ええ!?ってそこまで驚くことか!?

何にしてもエースのピッチングで勢い付いた港南。厄介なことになってきました。
さて、四回裏の港南の攻撃は二番の園部から。
この回は確実に四番の弐織義壱に打順が回る。
穂村の覚醒を促し、それでいて気持ちよく四番に回すために凡退したのではと思われる上根さんでありますが・・・さてさて。

先の回の攻撃を見る限り、これ以上の追加点は簡単ではない。
となればもう失点は許されない。どうにか抑えなければならない。
少なくとも弐織義壱の前にランナーを出すことはないようにしたいですわな。

逆に港南としてはランナーを溜めて四番に繋ぎたい。
なので蛮堂の重い球に必死で喰らい付く園部。9球も粘り、フルカウントを迎える。
力で抑えに来れば力んだ分ボール球になる可能性が高い。
園部は四球も考慮に入れるが・・・ベンチの上根さんは打撃を指示。
なるほど。ランナーを出したくない蔡理としては四球が怖い。
ならば力で抑えるよりコントロール重視で球威を落とす方の可能性が高いわけであるか。
その辺りの洞察力はさすがの上根さんってことなんですかね?地味だけど厄介そうな人だ。

というわけで、園部の打撃は見事にレフト前ヒット。私のレフト前ヒットであります。相変わらずなんなんだそれは。
ちょっと穂村に傾きそうだった子もあっさり覆る園部の活躍。
そりゃ穂村も覚醒顔のまま愚痴りたくなるってものである。ハハハ。

散々粘られてのヒット。これは厳しい。
そこで畳みかけるように現れるのは三番の池田ホセマリア。
おっと、そういえば蛮堂はセットアップはそれほど得意じゃないんでしたな。
そこを見越してのことか、初球から盗塁を決めてくる園部。
山脇くんの送球が高かったこともあり、見事に盗塁を決められてしまう。
うーむ、さすがに弐織義壱の重圧を間近で受け続けた山脇くん。疲労は誰よりも激しいか。やけに可愛い顔になっておるわ。

これはマズイと感じる桃ちゃん。
カチカチとペンを鳴らし始めました。これは・・・来る合図か・・・!?
ともかくチームに集中を呼びかける桃ちゃん。ここ一番が大事というのがよく分かっておりますな。
そんなマネージャーを厄介と思ったのか、穂村が動く。ホセに蔡理ベンチを見るように言い出したのだ。
見させて何が起こるのかと思ったら・・・いきなりのホセマリアウィンク。バチン。
うーむ、これはビビル。ビクッとする。
その一部始終の流れを見ていた蛮堂が思いっきりぶつけにいくのも仕方のないことと思われる。オノーレ。
大事な場面だってのに何を笑わせに来てるんだよ!!ある意味良くやった蛮堂!!

とはいえ集中と言ってるそばからランナーを出させてしまう蛮堂にお怒りの桃ちゃん。机に手をかける。おぉ・・・

にゃあ

らーと続けて机をひっくり返そうとした桃ちゃん。
しかしここで打席に立とうとしたのは弐織義壱。
その巻き起こすプレッシャーはまるでブリザード。
あの桃ちゃんが重圧に押され、机を持ち上げたままの態勢で凍りつかされてしまうという・・・!!

桃ちゃん。凍えているのか。俺との愛の炎をその身に宿しているはずの桃ちゃんが・・・
・・・弐織義壱。やはりキサマを討ち取らねば2人の行く末に暖かな未来は訪れんようだな・・・!!

桃ちゃんが愛の炎を宿しているかはさておき、ついに全身を燃え上がらせる状態に入った蛮堂。
勝負を決めに来た弐織のブリザードにも対抗できるほどの熱量であります。
この勝負は試合を決める大事な場面となりそうですが・・・さてさてどうなりますか。

それにしてもまさかのにゃあらーキャンセル。まさかそんなことが・・・!!
しかし動作途中だったからキャンセルできたのかもしれない。
完全ににゃあらーモードに入った桃ちゃんの熱量は蛮堂に勝るとも劣らないはずですからねぇ。
次の打席までには完全なにゃあらーモードに入っておいた方がいいでしょうな。うん。



Vol.57 一目ボレ  (2014年 49号)


1点差、ランナー一、二塁。迎えるのは四番の弐織義壱。
ホームランが出れば4対2と逆転。試合が決まる可能性のある場面。
ここが勝負所と今まで以上のプレッシャーを放ってくる弐織義壱。これは怖い。

ならばと全身を燃え上がらせる蛮堂。
桃ちゃんですら圧倒させられる弐織義壱の迫力を押し返すことが出来るのか・・・

桃ちゃん・・・キミを脅かす者は俺が全て焼き払ってみせる

蛮堂、気迫の一球。
その威力はあの弐織義壱の手からバットを吹き飛ばす程である。なんと・・・!!
場合によってはこれで凡打に仕留めることが出来たかもしれないのか。凄いな。
しかし、ゴフウとかグフウウとかうめき声ヤバイ。

マネージャーの手綱がないから闘争本能ムキ出しと述べる穂村。
通常桃ちゃんならそうかもしれないけど、にゃあらーモードの場合は桃ちゃんもイケイケになるからその限りではなさそうですぞ?

それはさておき、手強い相手に笑みを浮かべる弐織義壱。
上根さんに言わせれば、自分に全力で向かってきてくれる蛮堂とのやり合いが楽しいらしい。
そりゃまあ、並の投手なら威圧されてガチガチになるか、勝負を避けるかのどちらかでしょうからねぇ。
強くなりすぎると次に悩むのは対戦相手。
向かって来る意志とそれだけの実力を兼ね備えた相手が欲しくなってくるものである。

その両方を兼ね備えている蛮堂。
2球目も渾身の一球を放ち、前には飛ばさせない。ファールにより、カウントはツーストライクと追い込むこととなった。

追い込んだのは凄いが、今度はバットを吹き飛ばされることのない弐織義壱。
しかし蛮堂の球の熱量は弐織義壱の冷気をも上回っているようであり・・・相変わらず何の漫画の描写何だか。

冷静になっちゃう前に、勝負の3球目。
ではなく、スプリットで1球様子を見ようとする山脇くん。
見送ってボールでも良いし、空振りしてくれれば儲けもの。カウント有利だからこそ出来る駆け引きでありますな。

口惜しいがストレートでは決着がつかんか・・・
ならばキサマを仕留めるために身につけたスプリットを必殺の意気で投げ込む。
俺と桃ちゃんの愛の炎にこの身を焼かれ――冥界へ去れ、弐織義壱!!

冥界って。何者だよ弐織義壱。
というツッコミはさておき、この3球目は微動だにせずに待つ弐織義壱。
ここは見送りか。そう思ったところで蓬莱が視線を後方へと向かわせる。
どこを見ているのか・・・と思った瞬間、ライトスタンドに叩き込まれる打球。な・・・何!?

打った、というか動いた気配すらなかった。
なのに気づいたらバットは振りぬかれており、打球はスタンドに入っていたという。何だそれは・・・!!
あまりのスイングの鋭さで目に留まることもなかったというのか?瞬きしてるうちにって感じだぞ、本当に。
穂村も気付かなかったこの打撃。気付けた蓬莱はさすがというべきであろうか・・・

今のが弐織義壱の本気のスイング・・・
特別なことは何もしていない。ただ真芯で球をとらえただけだ。
恐ろしく速く、周りを置き去りにするほどのスピードで
意識がとぶような一瞬の出来事。まるで一目ボレだな。アレで落ちない球(コ)はいないだろう・・・

特別なことはしていないと言っても、そのスイングスピードの凄まじさはやはり驚愕すべきものでありましょう。
これが本気の弐織義壱・・・やはり格が違うということなのか・・・恐ろしい。

ホームランが決まり、弐織義壱が打席から離れたことでようやく圧力から解放される桃ちゃん。
その打席の間ずっと机を持ちあげたままの態勢でいたってのも凄いな。

形勢が一気に港南に傾いた感じのあるこの試合。
一方、その港南打倒に意欲を燃やす桐湘。合同練習もそろそろ終わりそうな頃合いである。

自由練習ということなのか、清作はずっと國尾さんと対戦している。
やはり一番強い相手と闘えるのが一番の練習でしょうからねぇ。國尾さんも清作相手なら喜んで投げてくれそうな様子。
いや、ケガしてた之路さんが主審を務めてくれるのも大きいのか?

拓人君に僕の投球を真正面から見つめられるなんて、こんなに嬉しいことはないんだから

うん、やっぱりそうでしたか。
もう隠す気ねーんだなとか考える児島センパイであるが、最初から隠してる様子はなかったような・・・
でもそういう話は練習中位は控えて頂きたいものでありますなぁ。部活でラブコメ禁止じゃ!!

國尾さんは弐織義壱と関東大会などで対戦経験がある。
その國尾さんに、自分とはどんな所が違いますかと問う清作。
それに対する答えは、キミのほうが可愛いとのこと。オイ。

國尾「けど見た限りではお尻は弐織義壱の方が上だね
清作「やっぱケツ大事スか・・・!

まあ野球選手のお尻は凄いと言いますからねぇ。
走り込みなどで強靭な足腰を鍛えることでバッティングにも強みが増すってことでしょうか。
しかし國尾さんが言うとどうしてもそういう意味で聞こえなくて困ってしまう。まあ、それはさておき・・・

けど、今みたいな所かな。キミに足りないのは。
打者でも投手でも自分のリズムに引き込んだ方が優位に立てる。弐織義壱や蛮堂なんかはそのいい例だと思うよ。
チームの戦い方もきっと同じで、それぞれの役割をこなしながら試合のリズムを掴んだ方が有利になる。
でも個々の力は桐湘より港南の方が上。総合力で劣ってる今のままじゃ勝てない。
全員が走力・守備力・打撃力・お尻をバランス良くパワーアップするのは難しい。
それなら1人1人が自分の長所で何か1つだけでも神奈川のナンバーワンにならないときっと港南は倒せないよ。

ほほう。さすがは國尾さん良いことを言いますなぁ。
何か1つの長所で上回る。大事なことでありますな。
総合力で敵わないのならば、それらを最大限に活かしてどうにかするしかありますまい。
そんな良いこと言いながらツッコミ所を真面目な顔で含めてくるのもまた國尾さんである。
いや確かに野球選手にとってお尻は重要かもしれませんが・・・この人は本当、さすがとしか言いようがないな。

目指すべき方向性は示唆された。
さてさて、それぞれはどのような成長を考えるのだろうか。期待であります。



Vol.58 取り柄  (2014年 50号)


1人1人が何かのスペシャリストにならなければ港南には勝てない
國尾さんのその言葉に感じ入り、動き出す桐湘の面々。
分かりやすい長所の持ち主である児島センパイは足の速さを磨こうとする。
また普段から自分の長所を探している喜多さんもすぐに動き出す。この辺りはさすがですな。
コントロールと投球術を磨くために左薙と練習。お互い得るところは大きそうだ。わぱッ。

これが長所だと判断付きかねている人もとりあえずは動くのが肝要である。
それが分かっている宇城さんや頭木さん。
一方、伊奈や栗原くんは立ち止まってオロオロしてしまっている。
ふーむ、普段から自分の取り柄を考えておくのは大事ってことですなぁ。

柊「豪徳のイングリッシュのエキスパートは・・・
弐織「時間のムダだ。髪切れバカ野郎」

長所と個性はまた別問題だと思うのですよ。というかそっち伸ばすなら豪徳より栄春の選手とやりなさいな。

オチもついたところで個別の練習開始。
弐織はやはり筋力強化でありますか。今の状態でも蛮堂に押されたりしてましたしなぁ。

清作の取り柄はホームラン。その通りだけど何というか漠然としてますな。
その清作のスイングはやはり弐織義壱に似ているとのこと。
しかし、それはいいスイングをしている時に限られる様子。

あ、あのサ。さっきからスイングの軌道がバラバラなんだけど、清作の理想のスイングってどんなだべ・・・どんなの?

わざわざ言い直す篠武。練習による汗なんだろうけど、話しかけるのに緊張しての汗と見ても違和感ないなぁ。
そしてその言葉は清作にヒントを与えることとなったらしく、感謝の言葉をもらう清作。赤くなって笑顔を見せる篠武
うむ・・・何というか・・・うむ。スゲェ萌えキャラで困るな篠武。

篠武のおかげで闇雲に振っててもダメと気付いた清作。弐識に相談しに行く。
弐織としては喜んでアドバイス・・・なんてことはしないものの、大事なことは語ってくれる感じであります。さすが。

・・・何も考えずにただ数こなしてるだけじゃ兄キには敵わねえよ。
・・・クチにするのもムカツク話だけどよ、中学ん時な――

回想。その日はひどい雨でシニアの練習も中止になろうかという天気であった。
部屋で筋トレでもするかと考える弐織。真っ当ですな。
一方、兄の弐織義壱はこのどしゃ降りの中、外でバットを振っている。
何でもどんな天候、どんなグラウンド状態でも自分のスイングをするための練習なのだそうな。
野球は悪天候だと中止もあるスポーツなのに・・・何ともストイックなことですな。

しかしその結果、カゼを引いて体調を崩す弐織義壱。おやおや。
であるにも関わらず、フラフラなまま素振りをしていたりする。
常に体調が万全の状態で試合に出られるとは限らないとのことであるが・・・ううむ、凄まじい。
これでちゃんとスイングも疎かにせずに普段通りにやっているのだからなぁ。

天才打者だなんてもてはやされても本人は気にしてねえのと同じように、どんな状況だろうと関係無え。
理想のスイングをイメージしてそれを自分の体に叩き込んで無意識のうちに実践してる証拠だ
スイングは無意識で、意識を球だけに集中させてるから打てるんだよ。
テメーみたいに打席に入る度に打ち方アレコレ悩んでちゃ話にならねえ。

なるほど。これは良いアドバイスですな。
確かに清作は毎度悩んでいる。せっかく理想的な打ち方が出来ている時があるのに活かせないでいる。
そう、過去にも何度か出して見せた理想のスイング。それは・・・

やっぱ、この音がする時だ・・・!

音という明確な指標がある。ならばそれが常に出せるように体に叩き込むべきでありましょうな。
そしてそのスイングはやはり弐織義壱のものに似ているらしい。
これを常に出せるようになれば相当な力となるはずであるが・・・

――ただ兄キはその音で1日1000回スイングしてたけどな。まぐれのテメーと違って。

やはりたまたま出せるぐらいでは体に叩き込んだとは言えないわけか・・・
清作とは2年上。となれば1日1000スイング×2年分で73万もの開きがあると言えるわけだ。
その差を夏の大会までの2か月ちょっとで埋めるには1日あたり1万428.5714回。分かりやすく省略すると1日1万回は必要となる。
さすがにこの回数は無理がある。起きてる間ずっと素振りしてなきゃいけない量だ。
それはそうと、清作の呟きに応えてさらりと計算してくれる左薙がいい感じであるな。良いパートナーだ?

やる気を高める清作だが、同じ量をこなしたからって超えられるとは限らないと弐織。

誰かのマネをしてたらナンバーワンにはなれねえだろ。自分は自分なんだからな。
俺は俺のやり方で兄キを超えてやる。テメーだってそうだろ、クソ天然

それもまた大事なことでありますな。
マネをして追いつくことは出来ても追い越すことはできないし、一工夫でも入れられたら追いつくことも難しくなる。
それについては清作も思わないではない様子。

けど今は少しでも自信だとか確信だとか、自分の中で揺るがないものが欲しい
今のままじゃダメなんだ。俺より上の奴が沢山いるって思い知らされたから。
ここから少しでも前に進むためにボケッとしてられねえ。迷わずに胸はって打席に立てるように・・・!!

確かにまずはそれが大事なのかもしれませんね。
國尾さんもそういう所が弐織義壱とは異なると言っていた。
まずは自分の中に確固たるものを築き上げる。それが大事であります。
悩みながらも打てる辺りはさすがの才能と言えなくはないが・・・ここからはそれだけでは通用しないでしょうしね。

清作の頑張りが周りに伝染すれば桐湘全体の熱さが増すこととなる。
この調子で夏の大会までにレベルアップを図っていって欲しいものであります。

桐湘が頑張っている頃、蔡理と港南の試合は回を進め・・・
結局、2対7という大きな差で港南の勝利となりました。
序盤こそ善戦したものの、終わってみればこの点差か・・・
やはり穂村が覚醒したのは大きかった感じですなぁ。であるのについで呼ばわりされる穂村。これは腐っても仕方がない!!

打倒・港南の道は険しい。蔡理も更なるパワーアップを図る必要がありそうですな。
あれから桃ちゃんはずっと沈んだままだったのだろうか?
やはり溜め込んでいたにゃあらー力を桐湘戦で開放してしまったのがよくなかったのだろうか。
夏までには途中キャンセルもされないぐらいのにゃあらー力を身につけて頂きたいものであります。
いやいや、他の選手たちの頑張りにも期待はしてますけどね。うん。



Vol.59 当然  (2014年 51号)


打倒・港南に向けて1秒も無駄にはできないと素振りする清作。
その心意気は良い。良いのだが、さすがに電車の中で素振りは危険すぎる
アオリにも絶対に真似しないでください!!と書かれる危険行為だ。誰がするものか!!

というわけで、次の駅についたところで1人たたき出される清作。何やってるんだか。

合同練習は終了し、これからはまた自分の高校1校での練習となる。
課題を見つけてそれに向けて邁進するのは正しい。けど時と場所は考えようって話でありますよ。うん。

しかしそういう時と場所を弁えない男は何も1人だけではなかった。
港南相手に7失点を喫した蛮堂。
居ても立っても居られず・・・電車の中で走り込みを行っている。うーむ、エキセントリック
本来は保土ヶ谷から自宅まで走って帰るとか言い出したらしいが、どうにか電車に乗せたらしい。
だが電車に乗っても収まるわけはなく、ご覧の有り様であると。うーむ。さすがというか何というか。

桃ちゃんの言うことも聞かず、走り回る蛮堂。
蛮堂の体重で吊革懸垂とかしたら電車の吊革では持ちそうにないなぁ。というかバーがヤバイ。
しかし桃ちゃんはやっぱりヒロインですなぁ。敵校の選手であっても登場しただけで顔を明るくしたりしてる。
桐湘にも確かに女子マネが2人いるのだが・・・本当、対比される時ぐらいしか出番がないなぁ。
ここにいるってことは合同練習にも参加してたんだろうけど・・・
男子校の練習に参加したはずなのにさっぱり騒がれない女子マネってのもある意味凄いな。

走り回っていた蛮堂は蓬莱と山脇くんに静止される。どすこい!
蓬莱は制服姿だと妙に若く見えるというか、何とは無く違和感を覚えるなぁ。そういえば高校生だったなと・・・

決勝の弐織義壱は蛮堂からホームラン2本に三塁打の5打点という成績。
最期の打席は何とかホームランにはさせなかったようだが、完敗といって間違いない内容ですなぁ。
これは悔しくて居ても立っても居られなくなるわ。でも電車の中で走り回るなよと。

弐織敏。兄義壱に伝えておけ。関東大会でこの雪辱を果たすとな・・・!!

あれだけ打ち込まれても消沈せず炎が燃え上がったままというのはある意味凄い。
この不屈の闘志。尽きぬ炎が蛮堂の強みであるか。これぐらいの熱量が無いと弐織義壱と闘い続けることはできませんわな。

蛮堂から2本のホームラン。この情報は弐織にとっても重い話である。
果たして今以上に筋力をつけただけで兄と同じように、それ以上に打つことができるのだろうか・・・

何か足りねえモノが確実にあるはずだ。兄キにはあって俺には無いモノが。
それに気付けない限り兄キを。港南を倒せねえ・・・!

というわけで、帰宅した弐織は録画しておいた決勝戦のチェックを行う。
・・・行おうとしたのだが、先に見ていたのは弐織義壱。
寮にいるはずなのに何故ここに・・・?弟が録画していたのを知っていたのか?
ともかく、集中してビデオをチェックする弐織義壱。
優勝は当然のことだなどと述べてはいるが、自分たちの勝つ姿を見て楽しんでいるとかそういう気配は見えない。

コイツにとってはどんな投手が相手だろうがホームラン打つのが当然のことなんだろう。
港南の四番に座るのも当然・・・
やっぱ才能の差ってヤツかよ。

歯噛みする弐織。腕力ならば絶対に負けないのだが・・・才能の差は如何ともし難いのだろうか。
しかし、どうもその考え方は正解ではなかった様子。
弐織義壱が行っているのはチームメイトのスイングチェック。
自身の打席を見て誇ったりはしない。他の打者のチェックに余念がない様子である。

こんな奴らが港南の四番を狙っている。気が抜けないな

そのようなことを呟いている弐織義壱。
これを聞けば弐織も考え違いをしていたことに気づかざるを得ない。

"当然"だなんて何一つ思っちゃいねえんじゃねえのか・・・?
港南の四番に座ることもホームランを打つことも・・・
常勝を義務づけられてる港南の四番・・・味方から周囲からも相当なプレッシャーをかけられているはず。
しかもそれを1年の時からずっと。その中で結果を出し続けるなんてどんだけハート強ェんだ。
兄キが打席に立つ時のあの張りつめた空気は自分を追い込むために自分自身に向けたものか
"次"があるなんて考えもしてねえ。1打席ごとに自分の存在を懸けている証だ。

そのことにようやく気付いた弐織。
兄の存在が大きいことは分かっていたが、より深く分かるようになった。
これは成長であると言えますな。気づきながらも委縮することは無く、エモノと認識してヨダレを零し始めましたし。

今はまだこのエモノに歯が立たねえ。
夏までにもっと自分を追い込まねえと、兄キを超えられねえ・・・!!

ヨダレを零しまくる弐織。
そんなヨダレもこの兄にかかれば凍らせて髭のようにすることができる・・・!!
何だかラーメン零しているように見えなくもないですな。いや、そういう話ではない。
床に零したヨダレぐらい拭いておけよとも思うが、そういう話でもない。

いつからだ。桐湘で四番打つのが当然だと思うようになったのは。うぬぼれやがって。バカか俺は。
才能・技術・精神力・・・力以外の全てが兄キより劣ってる。
何かが足りないんじゃねえ。足りないモンだらけだ
もどかしくてムカツいて仕方ねえのに笑いが止まらねえのは、最高のエモノを見つけたおかげだ。
腹が減って仕方がねえ。蛮堂も蓬莱もドイツもコイツも喰い散らかしてやりてえ。
もっと飢えろ。もっと求めろ。もっと、もっと、もっと、もっと・・・!!

一心不乱にバットを振る弐織。
そして翌朝、出した答えを久澄監督に告げる。

夏の大会までの練習試合で結果を出せなかったら、四番から外してください

兄が自分自身を追い込んでいるのならば、自分も最低限それぐらいはしないといけないって話ですな。
おあつらえ向きに今の桐湘には四番を狙っているクソ天然もいる。
精神力を鍛えるためにもそういう行為は大事という話ですわな。
今の立場に甘んじることなく結果を出す。その意識でどこまで変わることが出来るのか。注目したいところであります。



Vol.60 返上  (2014年 52号)


闘志燃え立つセンターカラー!!
弐識の四番返上発言を受けて未来の四番打者たちの集合絵でありますな。
いや、まさか安保先輩がカラーを飾る日が来ようとは・・・次は単行本表紙ですな!!

それはさておき、弐織の四番返上発言は衝撃をもって迎えられる。
まあ自分を追い込むためのものであり、簡単に譲る気はなさそうですけどね。
とはいえこれをチャンスと捉える者も桐湘の中にはいた。
この機会に四番を打ちたいと思う者が・・・ぜ、全員かよ!!

野球やってりゃエースと四番は誰でも憧れるでしょ!
チームでナンバーワンの打者ってことスからね!!野球の華!!

この意識の高さはある意味凄いと言えなくはない。
しかし縁の下の力持ちという存在も野球には必要だと思うのだが・・・
その役割を任されそうな二番打者の柊からして目立ちたがりだからどうにもならんか。

その辺りの役割を担っている頭木さんも手を上げている。
そういう役割も必要だが、やはり狙えるならば狙ってみたいということでしょうか。熱いぜ。
伊奈や栗原くんもちゃんと主張していて良い良い。之路さん、さすがにエースとの両取りは野心的すぎる。そして・・・

安保先輩もヤル気なのか・・・!

まさかの安保先輩!!
夢を見るなといいながらも野球を続けている安保先輩。
もしも四番になることが出来たとしたら考え方も昔のような熱さになるのだろうか・・・

それにしても四番はどうやって決めるのだろうか?
明確な数値で決めるのか、誰もが納得する存在になったことで決めるのか。
他薦の数とかで決めるのが公平な気はしますな。全員自分に入れたりしたらアレですが。

蔡理に敗れたこと、その蔡理が港南に敗れたこと。
それらの事実が自分たちはまだまだだと思い知らせてくれる。
最期の舞台になる3年生にとっては何としても勝ち残りたい夏の大会。そのためには考えなければいけないこともある。

何かを変えなきゃ、変わろうとしなきゃダメってことか・・・

直球一筋でやってきた之路さん。その之路さんが変化球のことを考えている
道を曲げてしまうと考えるのではなく、変化しながらもストライクを決めに行くと考えられれば。ってとこですかな。
前向きに変化して行って欲しいところであります。
でも頭木さんの変化は本当にそれでいいのか?別に無理して現代語話さなくても・・・かしこまったぜ

3年生に限らず今の野球部の士気は高い。というか殺気立っている。
あの安保先輩がコーラではなく水を飲んでたりするぐらいですからねぇ。何というヤル気のあらわれ・・・!!
春になる頃にはスリムになってるかもしれませんなぁ。いやさすがにそれはないな。

打撃練習で飛ばしまくる清作。投げてるもみあげの特徴的な先輩も大変ですな。

それはさておき、弐織と喜多さんの対決。
打撃練習ではあるが、エース投手になるためのアピールもしたい喜多さん。全力の組み立てで来ておりましょう。
その喜多さんの球を2球を連続で見逃す弐織。
勝負を決める前の球や失投をホームランにしても投手にダメージは残らないとの判断だそうな。ほう・・・

――ムカツクけどよ、兄キが蛮堂から打った2本のホームランはどっちも勝負球を完璧にとらえていた
2対0とリードされた状態での追撃の一発。そしてカウント0−2と追い込まれてからの逆転スリーランで蛮堂を打ち砕いた。
重圧のかかる場面でエースの決め球をホームランにするのが四番だ!!
俺なりの打撃で四番狙ってる奴ら全員ねじ伏せてやる!!

確かに打ってほしい場面で打ってくれるのが四番って感じですよね。
勝負所の弐織義壱のプレッシャーは凄く、桃ちゃんのにゃあらーを止めるほどであった。
あれぐらいの勝負強さが今後四番には求められていくって話ですな。
いやしかし、それにしても打撃音でぐらっと来てる喜多さんはやたらと色気があって困りますな。

フェンス上段直撃を連発する清作も凄いが、弐織は追い込まれてからそのフェンスを越えてのホームラン。
さすがの貫録といったところですかねぇ。清作の超えようとする壁は高いですな。
それにしてもフェンスの向こうに住んでる人は災難であるなぁ・・・瓦の弁償してもらえるのだろうか?

練習試合で見るべきは力以外の部分かもしれない。そのように考える久澄監督。
さてさて、チームに信を置かれる四番は一体誰となりますか。
というか練習試合でありますか。どことやるのだろうか?知ったところかまだ見ぬ強豪か。
夏の大会のことも考えると戦力を図られないために県外の相手とやるのも良さそうでありますが・・・どうなんでしょうね。



錻力のアーチスト 8巻


Vol.61 再編  (2015年 1号)


四番の座を勝ち取るためにテンション上がってる選手たち。
あの安保先輩ですらグラウンドを歩いて・・・いや、ギリ走っている!!ドスドス。

清作は本当に1日1万回の素振りを行おうとしているみたいですねぇ。
考え事してて順番がずれるとか落語みたいなことやっているが、ちゃんと正確に数を数えられているか心配ではある。
まあ、単純に数だけこなせばいいわけではないし、自分が納得できるかどうかが大事か。

さて、桐湘は日曜日に麻生西と練習試合を行うこととなる。
麻生西。去年の県大会準優勝校。
春季大会では左薙のいる栄春に負けているチームである。
それだけ聞くとそんなに強くなさそうだが、どうやらそれには理由があったらしい。
春季大会ではエースである3年の永源晶が投げていなかったのだそうな。
去年の県大会、麻生西が決勝まで勝ち進めたのはこの永源投手の力によるところが大きいらしい。ほう。

永源はその大会で肘を痛め、以降治療に専念していたらしい。
春季大会はそのために出なかったのでしょうが、夏に出てくるのであればそろそろ調整のためにも練習試合に出てくるかもしれない。
なるほど。もしかしたら、その永源とやれる可能性もあるわけですな。

それならホームラン打ちまくって四番もぎ取ってやる!!

意識の高い清作。確かにこの練習試合は絶好のアピールチャンスになりそうですわなぁ。

というわけで、早速その練習試合当日。
麻生西の平賀監督は桐湘をカモ扱いする気満々の様子。
去年の大会の結果はさておき、春季大会の結果を見れば簡単にカモれるか分かりそうなものですがなぁ・・・
監督がこの様子だと選手の方も期待はできない。かというとそうでもない様子。

麻生西は部員が70人を超えていますから普段A〜Dの4チームに分けて練習しています。
練習試合の前日に総あたりで紅白戦を行って1番成績の良いチームが対外試合に出られるという仕組みなんですよ。

そのように述べる平賀監督。ふーむ、変わった方式ですなぁ。
部員数が多いのは分かるけど、その4チームの中から選りすぐったりはしないのか。
同じ学校の野球部の中で息の合い方が違うチームが出来そうな感じでありますが・・・果たして上手いやり方なのかどうなのか。

ちなみに今日の出場メンバーは・・・紅白戦3試合完封。エースの永源晶率いるチームです。

ふむ。投手は別枠って話でもないんですな。
となるとやはりこの永源がいるチームが一番の主力として編成されている可能性が高そうだ。
まあ、その永源がケガで出ていない間は他のチームに負けて春季大会に出られないぐらいの戦力のようですが。

ともあれ、永源の球を早速見る機会が訪れました。
球威に押されてキャッチャーのミットが外に流れている。
いや、流れる要素はそれだけではない。どうやらストレートが不規則に変化しているらしい。
打者の手元で動くムービングボール。捕るのも打つのも苦労しそうな球が永源の特徴。
さらには落差のある変化球。このジグザグな感じはまさに雷のイメージでございますな。本人も触れれば感電しそうにピリピリしてる。

俺は自分以外の誰にも期待しちゃいない。自分の投球をするだけだ

何ともエゴイスティックな性格。
投手はある程度強気でないといけないが、この性格はチームプレイではいかがなものでありましょうか。
それにしても蛮堂の炎属性や弐織義壱の氷属性に続いて雷属性と来ましたか。
優れた野球選手は大自然の力も宿して当然ってことなんですかねぇ。凄いね野球。

何はともあれ、ケガはすっかり良くなり、充電満タンの様子の永源。
平賀監督は口先ではケガ明けなのでお手柔らかになんて述べておりますが・・・まあ、安心して頂きたい。
そういうこととか気にせずに思いっきり全力でやろうとするのが桐湘の連中でありますからして。ハハハ。

四番を勝ち取るために必死になっている桐湘の面々。殺気立ってるなぁ。
それを受けて、これまでとは大きく打順が変わりました。この試合の打順は以下の通り。

一番 ファースト 安保
二番 サード 弐織
三番 センター 清作
四番 ライト 児島
五番 ショート 柊
六番 ピッチャー 之路
七番 セカンド 伊奈
八番 キャッチャー 宇城
九番 レフト 頭木

清作以外は全員違う打順となりました。これは一体どういう基準で選ばれたんだ・・・?
というか地味に伊奈がスタメンに入っていて驚く。バッティングはそれなりに評価されてるってことでしょうかねぇ。

四番の適性審査を兼ねたこの試合。
果たして誰が一番活躍するのか・・・楽しみです。



Vol.62 基準  (2015年 2+3号)


四番適性審査を兼ねた練習試合がスタート。
麻生西の永源は地元で随分と人気があるようで、観客が集まっている。
今年の夏こそは全国に連れて行ってくれるという期待があるんでしょうな。

麻生西の監督も永源には期待している様子。
春の大会で栄春に負けたため、夏はノーシードで勝ち上がらなくてはならない。
そのため5月の今、一旦ピークに持って行き、6月に課題を修正して7月の県大会本番にのぞむのだそうな。
ふーむ。今日の桐湘との練習試合はそのピークに持って行けているかどうかの確認というわけでありますか。
気分よくカモれればよいんでしょうが・・・さてさてどうなりますかね。

麻生西にとって大事な練習試合。しかしそれは桐湘にしても同じこと。
四番を決める大事な試合・・・けれども、四番を選ぶ基準とは結局何なのだろうか。
チャンスに打つこと。チームを勢いづけられること。四番に求められることは多い。
その中で久澄監督が考える決して欠かせない要素の1つが・・・先の結果にとらわれず打撃に集中すること
四番の話を聞きたがっている他の選手と違い、自分が打つ相手に見入っている弐織と清作。
やはりこういう姿勢が四番打者には必要ってことなんですかねぇ。

ともあれ試合開始。
まずは桐湘の攻撃。一番打者は安保先輩であります。
いや、一番打者ではあるのだが、その意識はまた違ったもの。四番打者のものとなっている。
それは打席に立つ前に久澄監督に言われたことに起因する。

皆さん。9回裏同点で1アウト一・三塁の場面を想定して打席に入ってください。もちろん自分が四番打者のつもりで

なるほど。適性を見る為にも状況が毎打席あるかのように仕立てあげる必要があるわけですな。
一打サヨナラのその状況で安保先輩はどのようなバッティングを見せるのか。

俺と弐織と清作を一・二・三番に並べたのはこの3人の打撃を多く見るため。つまり3人の中から四番選ぶってことだろ。
設定の状況的には1点取ればサヨナラ勝ち。最悪なのはひっかけて内野ゴロ併殺。
外野フライで十分!!

クレバーに状況を分析し、最適解を導き出す安保先輩。
さすがに賢さという意味ならば桐湘でも一番と思われる人である。
しかし状況は理解していても体が付いて行かず、三振に終わってしまう。うーむ、残念。

続いて二番の弐織。
弐織は安保先輩が外野フライ狙いだったのに気付いている。たしかにそれで十分というのも理解している。

――けど、相手は麻生西のエース永源晶。
そんな上等なエモノを齧ったくらいで満足できるかよ。噛みちぎって貪り尽くしてやる!!

実に弐織らしい考えた方でありますな。桐湘の四番らしいともいえる。
その意識で勝負に挑めば良かったのかもしれないが・・・頭をよぎるのは兄のこと。
兄ならば相手の勝負球を打ち砕くはずだと考えてしまう。

もっと自分を追い込め。ギリギリまで。カウント3−2まで・・・

てなことを考えていたらストライク3つで見逃し三振となってしまう弐織。オイ。
自分を追い込むのなら2ストライクで十分だったでしょうに。何をやっているのやら。
兄のことを考えないようにしてきたのを反省したようだが、今度は考え過ぎるようになってるみたいですなぁ。
兄と比較することで自身を過小評価してしまう
登場時の自信に満ちた弐織からは考えられないことですが、それが弱点でありましたとはなぁ・・・

さて、続いて三番の清作。
1年にして春季大会でホームラン2本打ったことで注目を浴びている様子。
しかしその頭の中は絶賛混乱中だったりする。

9回裏1アウト一・二塁・・・アレ・・・?一・三塁だっけ?
つーかランナー誰設定なんだ?俺の前に出塁してんなら安保先輩と弐織先輩ってことでいいのか!?
正直安保先輩の足だと犠牲フライじゃホームに戻れそうにない
――てことはやっぱ・・・練習通りのスイング。あの音で――ホームラン狙ってやる!!

妙なこと考えてしまっているが、まあ結果オーライといえなくはないか。
考えてみれば確かにランナーの足は重要かもしれませんな。
ホームランならばその辺りは考えなくて楽なのも間違いないでしょう。
別に外野の間を割るようなヒットでもいいんでしょうけどね。

ともあれ、この打席はセンターフライ。
捕らえたかと思ったが、手元で僅かに動いたことで芯には入りきらなかったようだ。
それでも外野の奥深くまで飛ばした清作。想定通りであれば見事にサヨナラ勝ちを決める一打であったわけだ。

四番としての打撃。今のところ清作君が一歩リード・・・

という評価は受けるけど、天然の酷さも見せつける清作。
天然に試合状況をイメージして打席に立てというのは無理があったか!!
結果という意味では頼りになるかもしれないが、こういうところは頼れないのが清作の弱みですなぁ。うーむ。
まあ今更天然が治るとも思えないし・・・それ以上の技術を持ってもらうとしましょうか。

清作のスイングは大分弐織義壱に近付いている様子。
一打席、一振りのことなのに相手の永源はそのように感じたそうな。
このまま素振りを続ければ、もっと近づくことはできそうですが・・・どうなりますか。
そして超えるためのもう一工夫が夏までに間に合うのかどうか。その点も気になりますなぁ。



Vol.63 女房  (2015年 4+5号)


1回表の桐湘の攻撃は三者凡退。
どんな相手でも関係ないと言っていた永源であるが、春季大会ベスト8のわりには歯ごたえがないとのこと。
まあ、他の2人はまだしも弐織は考え過ぎてしまってましたしねぇ。無駄に。

永源は港南の穂村や蔡理の蛮堂に比肩しうる実力を持っている。それは間違いない。
次にマウンドに立つことになる之路さんもその実力は感じ取ったようだ。
球のキレや球種の多さにコントロールの良さ。どれも之路さんにはないものである。

あれが去年の夏神奈川県大会の決勝まで勝ち進んだエースの投球。

このところ凄いピッチャーがたて続けに出ているためか、之路さんが気弱になっているように思える。
久澄監督としては、この練習試合は四番の選考だけではなく之路さんの進歩も考えている様子。
はてさて、その狙い通りとなりますかどうか。

俺が永源に勝てるものがあるとしたら・・・
――たった1つ。この・・・ストレート!!

やはり持ち味は鍛えぬいてきたストレートでありますか。
しかし速度に絞って鍛えてきただけにコントロールは甘い。
ただ速いだけではこの先抑えることは難しい。やはり課題は山積みのようですなぁ。

とはいえ、麻生西一番の氏春はライトフライ。速度だけではなく勢いはさすがのものか。
打ち取った当たりでありましたが、初スタメンの伊那の飛びだしによりエラーが発生。出塁を許してしまう。

続いて二番の荘士。
二番打者らしく小技が効きそうな打者である。
之路さんにストレートしかないことを見抜いており、狙いすましてのバッティング。うーむ、やるものだ。

さて、三番の八起。体格と言い牙のように突き出た歯といい、バットが鬼の棍棒に見えてしまいますぜ。

初球ファールにこそなったものの、打球は真後ろに飛ぶ。タイミングは合っている証拠だ。
少し高さがずれれば芯を食ってホームランとなっていたかもしれない危うい状況。厳しい。

というわけで宇城さん。タイムを取ってマウンドに。
之路さんに向けてハッキリと物申す。そもそもストレート1本で通用するわけがない。蛮堂ならともかくな、と。

挑発的な言動でシリアスなムードを作り上げる宇城さん。
しかしそこから言葉を続ける。

永源くらいの力があれば自分の理想だけを求めてエゴを通した投球ができる。
けどお前にそれ程の力が無いことは自分でもわかっているはずだろ。だから捕手がいるんだ。
1人でナンバーワンになれないなら2人で。バッテリーでなればいい。
忘れるなよ之路。お前の恋人は國尾なんだろうが、女房は俺だ

突然の宇城さんの発言!!
いやまあ、捕手は投手に対しての恋女房とは確かに言いますけどねぇ。
比較にわざわざ國尾さんを出しているせいで何ともややこしいというか何というか。
恋人発言も何かの比喩でありましょうか?その辺り特に否定しない之路さんも・・・うむ、まあ、良し!!

変な風にテンション上がりそうな流れとなったがそれはさておき。
宇城さんも之路さん同様、このままではいけないと思っているようですな。
捕手らしくもっと指示を出して行こうと考えている様子。

ブサイクでも打たれてもいい。変化球投げろ

その宇城さんの指示に従い、ほぼ変化しないスライダーを投げる。
しかしそのわずかな変化であっても芯を外させることはできる。
芯を食わない当たりをしてしまったことで、迷いの生じる八起。また変化球が来るのではないか・・・と。

今さら器用に変化球投げろとは言わない。チラつかせるだけでいい。
組み立て次第でお前のストレートはナンバーワンになれる!!
最速は目指せなくても最高のストレートを目指せばいい

緩急をつけるのは大事であります。
緩やかなボールがあるからこそ、速いストレートも生きるというもの。
ただひたすらに何か1つを信じることは時に自分の成長を止めてしまう。久澄監督の言葉は重いですなぁ。
時には立ち止まったり変化をつけることも成長には大事ってことでありますな。いい感じだ。

之路さんだけではなく、宇城さんと合わせてバッテリーでの成長を目指す。よい感じです。
これは本大会でも期待が持てそうですなぁ。
さて、そうなれば後は打撃による援護が行えるかどうかでありますが・・・四番の選考。どうなりますか。



Vol.64 アテ  (2015年 6号)


バッテリーで最高のストレートを作り上げようとしている2人。
組み立てに変化球を混ぜたとしても。あくまでメインはストレート!!
その気合を忘れずにいれば、麻生西の四番であっても凡打に打ち取ることができるわけです。おぉ。

しかし次の五番相手に力み過ぎてのワイルドピッチ。1点を与えてしまう之路さんでありました。
うーむ、惜しいけどこの調子ならこの先は抑えていけそうな感じではありますな。
久澄監督もせっかくなのでもっと色々試してみてくださいと述べる。
そうですな。せっかくの練習試合。試すのならば今の内でありましょう。

さて、2回表。今回は四番の児島センパイ。
いつも通りの先頭打者ではあるが、監督のお題は頭にいれてバッティングを行う。
四番打者を意識しての打撃・・・であるが、結果はドン詰まりのサードゴロ。
自身は得意の足でセーフになったが、これではサードランナーは返せませんわな。やはり四番には向かない感じか。

続いての打者は柊。こちらも想定は同じ。
ランナー三塁であるならばパスボールはできないと考える柊。つまり、落ちる変化球はノットカミング――

来るはずがないと思い込んでいた落ちる球。それがやってきてしまう。そりゃそうだ。
自分の想定は本当のものじゃないし、永源の方は想定されてることすら知らないわけですしねぇ。
この思い込み方はある意味清作に近いものがあるぞ。それでいいのか柊!!
まあ、それでもしっかり合わせて打ってしまう辺りは大したものでありますけどね。
ランナーに当たらなければいい当たりになっていたかもしれない。

次の之路さんは見逃し三振。
確かに打席でよく見たかったのでしょうが、よく見過ぎである。集中しすぎ!!

七番の伊奈は普通に三振。スタメンではあるがなかなか目立てませんなぁ。

さて、2回裏の麻生西の攻撃。
先の回では力み過ぎてワイルドピッチになった之路さん。
今回は力を抜いて・・・みたら糸目のままでありました。抜きすぎだ!!ってそこで判断できちゃうのかよ!!
相変わらず不器用と言うか何と言うか・・・之路さんらしいといえば之路さんらしいですなぁ。

そういった感じで上手く行かないのか、5回までで5失点。これは厳しい。
対して攻撃の方もシチュエーションに気を取られ過ぎているのか無得点の状態。
うーむ、好きなようにされてしまってますなぁ。これはいかん。
このままじゃ麻生西の監督の思惑通りカモにされてしまって終わりとなってしまうわい。

こうなりゃもう四番とかどーでもいい。設定無視して打ったらァ!!

児島センパイの言葉を受け、自身のバッティングを開始。
まずは九番の頭木さん。
こだわるべきは四番の座より眼前の勝負
己の打撃をすることが肝要という精神で見ごとなセンター返しを見せてくれる。
うーむ、この辺りはさすがの職人っぷりですなぁ。
しかし真っ先にこういう行動が出来る辺り、さすがではあるが四番向きではない感じですな。

四番にはある程度自分本位な部分も求められると思われる。
それだけの自信と実績。それらを兼ね合わせて信頼されるのが四番という存在と思われる。
続く安保先輩はその辺りが分かっているのか、四番らしい打撃を行おうとする・・・のだが、実績の方が伴わない。ブフゥ。

ならばと続くのは弐織。
ランナーも出ている状態だし、ここはデカイ当たりに期待したい。
ベンチの仲間たちもここぞとばかりに声援を送る。ふむ、この期待感はさすがというべきか。
どうでもいいがガラの悪い応援だな。サングラスカチ割ったれ!!って。

ともあれ、この2打席ヒットの無い弐織。
1打席目の見逃しはさておき、2打席目も変化球を合わせられずに三振となっている。
ではこの3打席目はどうか。永源も弐織の苦手なところは察していそうな感じ。
腕をコンパクトに畳まないといけない内角の低目。膝元辺り。そこを狙ってくる永源。であったが・・・

さすがに集中した弐織は凄い。きっちり苦手そうなコースも捉えてのツーベースヒット。
とはいえさすがにスタンドまで放り込むことは出来なかった様子。
弐織義壱ならば確実にスタンド送りだったろうと考えると・・・やはりまだまだな感じですかねぇ。

それでも弐織が打つことでチームは盛り上がっている。
やはりこの雰囲気を生み出せるのが四番という存在なのでしょうか。
これは清作も負けていられない。ランナーもたまっていることだし、一発大きいのをかまして欲しいところであります。打とうぜ!!



Vol.65 仕方無い  (2015年 7号)


1アウト、ランナー二、三塁。
四番をアピールする場所としては絶好の場面。
どうにか永源の完封を防ぎたいところでもある。

――けど、弐織先輩の二塁打見た後なんだ。それ以上のものを打ちたい気持ちが抑えられない。ホームラン狙ってやる・・・!!

監督の想定はさておき、現状大差で負けているのは確かである。
その辺も考えるとホームランを狙うのは間違いではないかもしれませんな。四番らしい意識とも言える。

さて、清作のスイングに弐織義壱を感じる永源。
結構俺様系のキャラであるが、やはり弐織義壱に打たれたことは心に残っている様子。ピリッとしてるねぇ。

因縁の相手に向けるが如く、これまで以上の速度でのストレートを放つ永源。
突然のスピードアップに手が出ない清作。うーむ、厄介な相手だ。
キャッチャーのミスでボールになったりはしているが、そこにつけいるのは難しいか・・・
でもこうしてみるとやはり捕手も重要ですなぁ。蛮堂の球を受けられる山脇くんは重要と言うことですな。

清作の例のスイング。立派な音を立てている。
にもかかわらず永源のストレートを捉えることが出来ない。
スイングスピードはかなりのもののはずなのに、それでも振り遅れるのか・・・

これが麻生西のエースの力か。けどコイツを打たなきゃ四番にもなれないし甲子園にも行けないってことだろ・・・
だったら今ここで息の根止めてやる!!

物騒なことを考えながらのスイング。まあ普段通りと言えば普段通りなのだが。
しかしそのバットを空を切る。ストレートを続けて、最後には落ちる変化球。
イナズマのような鋭さの変化を捕らえきれずに・・・三振となりました。ううむ・・・!!

決め球があること、ストレートが続いて振り遅れていたこと。
それらを想定せずにただ打とうとしたのが敗因って感じですかねぇ。
弐織のように考え過ぎるのも問題だが、考えずに打てるような相手ではないということか。うーむ。

悔しい清作にベンチからは励ましの声。あの球投げられたら仕方ないとのこと。
しかしそう言われた清作は思う。

弐織先輩が同じ結果でも皆はそう言うか・・・?もっとベンチが暗くなるんじゃねえのかな・・・?
俺なら打ち取られても当然と思われてんのか。
弐織先輩程の期待感や信頼みたいなものが俺には無いってことか・・・?

期待感は間違いなくあると思うけど、それはやってくれるかもしれないという期待感ですからねぇ。
打ってくれるはずという信頼はまだ築けてない感じがしますね。
やはり四番に必要なのはその辺りな気がします。チーム全体を盛り上げる存在は重要です。

結局試合は7対0の完敗。
うーむ、之路さんも二巡目は捉えだされている感じか。最高のストレートを模索するのも大変そうですな。
永源は結局最後まで投げたのだろうか?さすがに永源以外の投手に0点に抑えられるとは思わないが。

試合が終わったので改めて四番希望者に挙手を求める久澄監督。
結果、手を挙げたのは弐織と安保先輩の2人だけ。
適材適所を理解したのはいいことであるがまだ来年以降という将来もある伊奈などは頑張って欲しかったですなぁ。
たかが1試合打てなかったくらいであきらめるなら最初から手を挙げんじゃねぇとの安保先輩の言葉は実に正しい。

ちなみに清作はトンボで素振りしてるので挙手してない。
相変わらず人の話を聞かないクソ天然だぜ。これが強みでもあるのだろうが、多少は足並み揃えましょうよ。

麻生西からも桐湘でスイングが1番鋭かったとの評価を受ける清作。けどそれだけでは打てない。

打撃の技術は合っても打撃論に裏打ちされたものでなければ宝の持ち腐れだ

そのように述べる永源。
清作も素振りを続けているのに結果が出ないことで、これだけではダメなのだと気付きだす。
打撃論。その意味で言うならば神奈川で1番得体の知れない奴はちょうど今関東大会初戦を戦っている頃であるそうな。
それが誰かと言えば・・・そう、蓬莱。何考えてるか表情から読めない蓬莱。分かっても何考えてんだコイツと言えちゃう蓬莱である。

関東大会初戦。東京代表校の放つナックルボールを捕らえてみせる蓬莱。

ナックルボール。激しく揺れるその軌道・・・まるで胸の大きなコがとび跳ねているかのようなダイナミズム・・・!
俺の目は釘付けだぜ!!

なるほど。そういう発想で来ましたか。
結果が伴っているとはいえ、本当にこの男の脳内は凄いことになってますなぁ。得体が知れない。
そんな蓬莱の打撃に何かヒントはないかと考える清作。
確かに神奈川を代表する弐織義壱と蓬莱の打撃を両方組み込めれば凄いことになるだろうが・・・それはどうなんだ!?
女の子に興味がないというかちょっと女性不信気味な清作に蓬莱の打撃論を取り入れることはできるのだろうか?
いや別に女の子に変換する必要は無いのか。好みであれば別に性別は・・・いや、なんか・・・いや。

ともかくこの組み合わせでの話の展開は楽しみでございます。



Vol.66 イメトレ  (2015年 8号)


いきなりの左薙家の朝。囚人服っぽい寝巻が異様に似合うな左薙。
それにしてもおはよう母の言い回しが何というか・・・言いそうでまず言わないだろう台詞なのがいかにもらしい。

清作「よお。左薙」
左薙「やあ。清作」

朝起きたら自分の家でクソ天然が朝飯を食べていた。これは驚く。驚かざるを得ない。わぱあ!?
寝起きの気怠さも吹き飛ぶ出来事。
左薙の父母にしてみれば息子が友達を連れて来てくれたのだから朝食ぐらい御馳走しない取ってことでありましょうか。
連れてきたのではなく勝手に上がって来たんですけどね。更に別に友達じゃないとか言い出しましたけどね。わぱあ!?
この驚き方は左薙家に代々伝わるものなのだろうか。どうなのだろうか。

清作の友達の定義はどこからになるのか。
ともかく、どうやら左薙に関東大会の会場までの道案内をさせるためにやってきたらしい清作。
そのついでにご飯を食べさせてもらえるのは人徳というか何というか。

麻生西の永源の球を打つことができなかった。
蓬莱ならばホームランを打てたのではないかと考え、蔡理の試合を見たがっている清作。
関東大会は千葉でやっているので見に行くとなると学校をサボるハメになる。
授業のことについてはまあ今更な感じはあるが・・・朝練サボって平気なのかね清作。平気じゃなさそうだな・・・!!
まあ色々と図々しいクソ天然なので1度キツくシメられた方がいいとは思いますがね。1度じゃ治らないだろうけど。

さて、今日の蔡理の相手は埼玉1位の浦花部。甲子園出場常連の強豪校である。
しかしそのような相手であっても相変わらずな蛮堂。まあ簡単にブレるような男じゃないか。

蛮堂に触発されて興奮しながら素振りをする清作。まあ空いてるみたいだからいいけどさ・・・

ともあれ蓬莱の打席。
蓬莱はスイングスピードがズバ抜けて速いわけでもないし、パワーだって弐織ほどあるわけではない。
しかし何を狙っているか読みづらいしスキを見逃さない集中力がある。対戦する投手は神経使うだろうねと左薙。
ふむ、投手側の視点での特徴の味方というのも参考になりますな。
そういう相手の場合、キメ球を使って早目にケリをつけたくなるわけであるが・・・

焦った方が負けだぜ。野球も恋もな・・・!!

本当にこの男の脳内は相変わらず過ぎてもう頼もしさすら感じてしまう。
相手のキメ球であるシンカーを初見でしっかり捉えてホームランにしてしまう蓬莱。
うーむ、この集中力は確かに凄い。その部分だけ見ると見習いたくなるのも分からなくはない。脳内を知らないのは幸せなことだ。

蓬莱サンのこともっと知りてえ

鼻息を荒げる清作。この子のこういう態度も相変わらずですなぁ。そりゃ左薙も変な意味じゃないよねとツッコミたくなる。

見事なホームランを放った蓬莱であるが、2打席目以降は勝負を避けられてしまう。おやおや。
そして連投の疲れがあったためか打たれる蛮堂。結果3対2で敗れる蔡理。
うーむ、やはり蔡理の弱点は投手層の薄さか。蛮堂だけでどうにかなるほど甘くはないわけですなぁ。

この程度で音を上げる程ヤワな体では夏を勝ち切れん!神奈川まで走って帰る!!

桃ちゃんに勝利を捧げられず、気を遣わせてしまった蛮堂。
その行為がむしろ気を遣わせることになりそうなのであるが・・・まあ、いつもの蛮堂の行為ですし今更な感じか。

蛮堂のことはさておき、目的である蓬莱に近付く清作。
そしてストレートに尋ねる。打つ時何考えてんスか、と。

知りたいならついてこい。今日は不完全燃焼だったからな。イメージトレーニングが必要だ

そのように語る蓬莱。イメトレの内容とは・・・街を歩く女の子を眺めること。ああ・・・やっぱり!!
そして好みの女の子を選別する蓬莱。やはりストライクゾーンというものがあるんですな。
いや、そんなこといきなりされても清作たちには何が何だかさっぱり分かりませんて!!

清作雄。お前はどんなのがタイプだ

質問を投げる蓬莱。この質問は確実に女の子についてのことだと思われる。
けどそんなことを頭にない清作。野球として考えると考えたことはないとのこと。
まあ言い換えるならば得意な球、待ちたい球とかがないってことになるんですかね。

来るもの拒まずで手当たり次第に手を出してちゃ自分を追いつめるハメになるぜ。
いくら俺でもストライクゾーンはそこまで広く取らない。
まずは状況や雰囲気を見て狙いを絞ることから始める。そのためには相手をよく観察した上で自分から仕掛けていくんだ。

何だかよく分からない講座になりつつある。
が、野球に置き換えればまだ分からなくはない。自分から仕掛ける・・・打者優位な状況をつくる。
そのような想定をしてみるのであるが・・・狙い通りにはいかない。

狙い以外のモノに目移りすることもあるだろう。つられて思わず手を出してしまうこともあるかもしれない。
だが、あきらめなければチャンスは必ず来る。相手が自分と同じ気持ちになった瞬間・・・その一瞬を逃すな

蓬莱の言葉に従いイメトレを行う清作であるが・・・

蓬莱「どうだ。オチたか?」
清作「・・・ハイ。けど、うまくとらえられなかったッス・・・」
左薙(この会話成立してるのかな?)

思いっきりすれ違ってる気がするが、何となくアドバイスにはなっている不思議な会話。
それにしてもこの空間では左薙は本当にツッコミをしているしかなさそうな感じですなぁ。
登場時は奇行が目立つキャラだったのに、今ではすっかりツッコミ役に・・・!!天然には敵わないってことですかねぇ。

それにしても随分恋愛巧者っぽいことを語る蓬莱であるが、打撃はさておき本物の恋愛は上手く行っているのだろうか?
そっちに関しては理論倒れな気配がとてもするのでありますが・・・まあいいか!!



Vol.67 芯  (2015年 9号)


イメトレを終えて体を動かすために河川敷へとやってくる3人。
こういうところで野球をするってのはいかにもな感じですが、実際にはまだ目撃したことないですなぁ。

それにしても蓬莱。随分と気さくというか、意外に優しい対応をしてくれている。
本人曰く蛮堂ほどお人好しではないが、弐織敏にシメられる覚悟で朝練サボって千葉まで来た奴をタダで追い返したりはしないとのこと。

ヤベェ!!

指摘されるまでまるで想定して無かった様子の清作。まあ、そうだろうな。
でも瞬時に仕方ねえかで済ませてしまうあたりさすがというか何というか・・・
このぐらいの切り替えができなければクソ天然はやっていられないってことか。

ともかく、左薙がキャッチャーとなり、蓬莱がピッチャーを務める。
距離を取りながら、打つ時は何かイメージしてるか?と清作に尋ねる蓬莱。
その答えはやはり心臓ブッ叩いてる感じという物。うむ、やっぱり荒っぽいですよねぇ。
確かにその荒っぽいというところでは弐織敏と似ているし、桐湘のスタイルには合っているのかもしれない。

だけど港南の四番、弐織義壱の場合は――打つ瞬間じゃなくて打席に入る前から・・・
その存在感で相手に重圧をかけることで自分に優位な状況をつくり出している

ふむ。確かにその通りでありますな。
にゃあらーまでキャンセルするぐらいですし、優位な状況を作り出す力に長けているのは間違いありますまい。
そしてそう述べる蓬莱もまた相手に重圧をかけていると分析する左薙。
確かに考えていることが良く分からない相手ってのは不気味ですよね。今だって何してるかよく分からないし。
ちなみによく分からないのは天然の清作も同様だが、それはプレッシャーとはまた違うらしい。そうかー。

心臓をブッ叩くイメージの清作であるが、アウトコースギリギリの球となると真芯で叩くイメージはし辛いらしい。
ふーむ、やはり苦手なコースというのもちゃんとあるんですな。

さて、ここで蓬莱の考えに思いを巡らせる清作。
球を人にたとえるという独特の方式に気付きつつはあるようだが、よくは分からない感じの様子。そりゃそうだ。
でもとりあえずやってみる清作。インハイの速球を弐織先輩だと思って全力でブッ叩く!!

金属バットで思いっきり弐織の顔面を捉える清作。何とも生々しい!!
けど直後に反撃をしてくる弐織のイメージ。うーむ、さすがにバットの一撃程度で倒せる男ではないか・・・!!
ていうか、いや。そのイメージの仕方はどんなもんだろうか。ブッ叩くことに捕らわれすぎだ!!
相手が強い分、力み過ぎてしっかりしたスイングにならなかったみたいですしねぇ。

考えてみれば対戦相手はほとんど年上なんだ。中学生の頃みたいにやってても通用しないってことか・・・
なら一度全部捨てる。それでどんな投手のどんな球が来ても、ブレないように自分の中に一本芯を通す
さっきまでとは真逆のイメージ・・・ブッ叩くんじゃなくてもっと柔らかく球に触れるように。
バットじゃなくて腕を振り抜くってのはどうだ

そのような意識でスイングして見たところ・・・見事にホームラン性の当たりをしてみせる清作。
本人は打った気がしない。全然手応えはなかったと言っているが、結果はこの通りである。ほほう・・・

オトした手応えが無い・・・か。ホレるんじゃなくてホレさせた方が勝ちってことだ

何を言っているんだろうか相変わらずこの男は。
さすがの清作もこれは反応のしようがない様子。
頭では、まるで春季大会で蛮堂が弐織義壱に2本目のホームランを打たれた時のような感覚と言っていてくれているというのに。
口に出している言葉よりも頭で思っていることの方がまともなのはどうなのよ蓬莱。

何にしても今までとは違う感覚を掴んだ様子の清作。いいことだ。
元々弐織にも肩の力を抜けと言われてきたわけですし、このスタイルが適切であるのかもしれませんな。
なまじ弐織敏という憧れに近い意識を持つ相手が側にいるせいでなかなか力みが抜けずにいた様子でありましたが、これで変わるかな?

スイングの仕方もそうだけど、やはり大事なのは一本芯を通すというその姿勢ですな。
そこから放たれる重圧は左薙も蓬莱も感じていたように思われる。
打つ前から自分優位の状況を作り出す。本人は意識してないようだが、これが試合でも出来れば大きいですなぁ。

それまでの荒っぽいスイングとは違うソフトなタッチ。1年であれ程のテクニックをもっているとはな。
あなどれない奴だ。清作雄・・・

遠くに飛んでいった球を取りに行かせるために清作を川に突き落としながらそう考える蓬莱。
これはとんでもないヤツにアドバイスしてしまったかもしれませんね。
しかしこの場で川に入れなくても、球の近くまで走っていけばほとんど濡れずに済みそうな感じだったのだが・・・
そこできっちり泳ぎ出す辺りさすがの清作か。さすがのアレか。

何はともあれ、清作は大きく前進できた様子。朝練サボった甲斐がありましたな。
それによって四番の座を手に入れることができるのか・・・注目であります。



Vol.68 鳥肌  (2015年 10号)


蓬莱との練習で新たな打つ方のコツを掴んだ清作。
その結果、練習試合で打ちまくってる1年として有名になりつつある様子。ほほう。

蓬莱サンとの練習でつかんだ感覚――球をブッ叩くんじゃなくて、触れるように振り抜く――!!

素振りの成果か、音だけは常にベストの状態が出せるようになりつつある清作。
しかしそれだけでは上手く打てない。
上手く打つために掴んだコツ。それを実践していかなければいけない。
バットじゃなくて腕を振り抜く!!
ちゃんとできれば結果は出る。のだが、どうも毎回忘れてしまっている様子の清作。天然故仕方なしと言ったところか。だが・・・

クソ天然。蓬莱から何を教わったかは知らねえが、スイングの質が変わったか・・・?
今までは力で飛ばすタイプじゃないくせに力んでブッ叩くことが多かったせいでスイングがぎこちなかったが、
今は自分に合ったスイングをしてやがる。
感覚ってのは技術と違って人に教わって変えられるもんじゃねえはずだ。
それをやってのけるのがクソ天然ってところか・・・

散々弐織から力を抜けと言われているのに実践できずにいた清作。
しかし自身による気付きがあればそれも変えることができるって話でしょうか。
それを促すようにした蓬莱は凄い・・・というか、言ってることが訳わからないから自分で気付くことになったというのが適切か。

見事な成長を果たした清作。
しかし四番を打つにはまだ力不足だぜと述べる弐織。見事にホームランで結果を出して見せる。おぉ。

どうやら麻生西との練習以降は元の打順に戻した様子。
清作は三番で弐織は四番か。安保先輩は五番か?頭木さんは何番を打っているのだろうか。

夏の大会まであと一月。仕上がりは上々と言った様子。
となればそろそろ四番を誰にするかハッキリしておかないといけない。
安保先輩はさておき、清作も弐織も調子は良い。さてどちらとなりますか・・・

弐識のことは誰よりも認めている清作。
しかしだからこそ負けたくないという気持ちを抱いている。
スゴイ打者だからこそ尚更負けたくない。その負けん気の強さは大事ですなぁ。

そんな清作に安保先輩から一言。今日お前が打てたのは打順のおかげでもあるんだぞ、と。

一番の児島が出塁して二番の柊がチャンスを広げる。
相手バッテリーはランナーを背負った状態で四番の弐織と勝負したくねえ。だからまず三番のお前を打ち取ることを考える。
お前は弐識より軽く見られてる。勝負されてるから打ててんだ。

なるほど。面白い話ですな。打順の大切さがよく分かる話でもある。
実際、去年の桐湘にもそれは言える。
去年、弐織は1年で四番を打ち、五番を安保先輩。三番を当時3年の小来雄先輩というゴッツイ人が打っていた。
対戦する投手のほとんどは1年の弐織をナメており、三番五番を避けてまで弐織を打ち取ろうとしたらしい。

勝負された分、去年は打つチャンスがあったんだ。今のお前はそれと同じだ。
だが弐織が去年と同じように打てるとは限らねえ。今年は露骨に勝負を避けられることもあんだろう。

なるほど。先の試合で蓬莱が1打席目以降はまともに勝負させてもらえなかったりしましたものねぇ。
四番だけが打ててもそれだけではチームの勝利には繋がらないということか。

たしかに四番は重要だ。けどな、それはよく打つ三番と五番がいてこそなんだよ

うむ、安保先輩は実にいいことを言う。
本人は美味しいとこがいただけりゃいいとのことで四番ではなく五番でも良しとしている様子。
ふうむ、その意識はいいですなぁ。四番でなければ活躍できないなんてことはないはずですしね。

とはいえやっぱり四番で勝負したいという想いは根強い清作。自分がどれだけやれるのか確かめたいという想いが強い。
しかしその点では弐織も同じである。突如現れ、譲る気はないと述べる弐織。
そして清作の胸ぐらを掴みながらこう述べる。

よく聞けよクソ天然。俺は四番をゆずらねえ。けど勝負を避けられるのは気にくわねえ。
テメーが打ちまくれば相手バッテリーは俺と勝負せざるをえなくなる。
俺はテメーを軽くなか見ちゃいねえ。俺が四番らしくいるためにはお前の力が必要だ

ほう。お前の力が必要だと来ましたか!!
これはこれは熱い気持ちを吐き出していただきましたな。告白していただきましたな。
こりゃあ安保先輩も聞いてるこっちが恥ずかしいとか言ってしまいますわ。
清作も思わず返事してしまいそうになる。うーむ、よい流れでありますな。熱い。

必要とされるってこんなに嬉しいものなのか
体中が熱いのに鳥肌が立ってる。まるで熱にうかされてるみたいだ。
野球のことしか頭にない弐織先輩の言葉だから信用できる。
こんな気持ちで打席に立ったら気分良いだろうな。チーム全体から求められて打席に立つ四番ってのはそれ以上に・・・
四番っていうのはきっと自分で希望するもんじゃなくって、皆から望まれるようなバッターが四番なんだ。
今はまだかなわなくても、やっぱりあきらめきれない!!

嬉しそうな顔で素振りをする清作。いい感じだねぇ。
春に蔡理に負けた時に気付いた、誰かに期待されないことの辛さ。
今はそれとは反対に、誰かから必要とされることの喜びを知った。うむ、着実に成長しておりますな。
しかし期待が大きければ大きいほどプレッシャーとなったりもするのだが・・・その辺りを理解するのはまだ先のことかな。

四番の件は一先ず決着。今年は弐織で決定でありますな。
話がついたところで景気づけのために円陣を組もうと集まってくる桐湘の面々。ゾロゾロ。
帰ったと思いきや、何かありそうだとすぐに集まってくるこの面々。息が合っているというべきなのだろうか。
前はその息の合った円陣に加わることのできなかった安保先輩。しかし今回は違う・・・!!

甲子園行くぞ!おお!!

安保先輩が安保先輩らしさを失うこと無くチームに溶け込むことができた。
清作や之路さんの言葉に動かされた部分は確かにあるが、この溶け込み方は実に良い。
不自然に変わること無く、それでいて不協和音となる部分は確かに減っていっている。
夏の大会を前にしてチームの雰囲気も一丸となったように思えます。良かった良かった・・・!!

次回は組み合わせが早くも決定するとのこと。
熱い夏の大会が始まろうとしているわけですな・・・楽しみだ!!



Vol.69 抽選  (2015年 11号)


いよいよ夏の大会。その運命を決める抽選会!!
あまりクジ運のない之路さんであるが、どこを引いてくるのか・・・

結果は2回戦で麻生西と当たる場所。
つい最近練習試合で完敗したばかりの相手とは・・・さすが!!
強い相手とやれることで逆に燃える奴らもいるようですが、頼もしいというか何というか。
でも逆に考えるなら、之路さんの体力が落ちる前に勝負できるという考え方も出来るわけで。相手の方も同じこと言えるわけか。

その麻生西。結構俺様系のキャラと思える永源であるが、大きく相手を見くびることはしない感じでしょうか。
慢心のないピッチングをされると厄介そうですなぁ。

栄春は港南と同じブロック。これはさすがに勝ち抜くのは絶望的。
とはいっても利口に立ち回るよりはやるからには勝つという気持ちを持っていたりする栄春の面々。
その心意気は良しと言ったところでありましょう。どんな左薙でも愛するわけではないのですな!!

蔡理が目指すのはもちろん甲子園。
この夏こそ港南を破って出場する。そのために一段と燃えている蛮堂。夏が近づくのに熱さも増して大変だ。

組み合わせが決まったということは、俺と桃ちゃんの婚前旅行の日程が決まったということ
行き先は当然甲子園!!邪魔立てする輩は焼き払ってくれるわ!!

どこまでもマイペースと言うか己の道を行くというか。絶好調ですな蛮堂。
しかしうむ、ポニテの桃ちゃんはまた可愛いですな。うむうむ。

蛮堂とは逆に暑い夏には有難そうな存在である弐織義壱。
いやまあ、実際に対戦してる連中にしてみればたまったもんじゃないんでしょうけどね。
神奈川には色々と濃い選手が、学校があるものだが、やはりこの弐織義壱がいる限りは港南が甲子園最有力か。

というわけで、月日は流れて7月。
横浜スタジアムに集まる高校生たち。
大和北高等学校の主将、関中理の選手宣誓により、ついに夏の大会が始まることとなりました。
3年生たちにとっては泣いても笑ってもこれが最後の大会。
悔いの残らないよう頑張らないといけませんな。

弐織義壱!キサマを討ち取るのは、この俺だ!!

これだけ大勢選手がいるにも関わらず目立ちまくってる蛮堂。
筋肉がつきすぎてその腕を拡げた姿勢でないと歩けなかったりするのだろうか?ドスドス。いや走る時は普通に走ってたな。
ちなみに蛮堂が投げる日はマネージャーへの愛の炎で神奈川の気温が5度上がるらしい。
冬なら有難いが、夏は本当にたまったものじゃない存在ですな蛮堂・・・常に弐織義壱と同じ日に試合してもらわないといかん。

3年生にしてみれば総括となる夏の大会。
1年生の清作の場合はまだ桐湘に入って3か月しかたっていない。
だが、あっという間ではあったものの、記憶に残る3か月間であった。

入部早々先輩たちに力の差を見せつけられて。けど県内にはもっとスゲェ人がいて。
悔しい思いもしたけど。それでも――
今までは打席の中だけでしか野球が楽しくなかったのに、今は守備しててもベンチで声出してても、
ただ素振りしてるだけでもゲロ吐いててもいちいち楽しい。
そんなふうに思えるのはきっとここにいるからだ。まだたった3か月でも桐湘にいるから俺は今の俺になれたんだ
1日でも早く、1日でも長くこの気持ちを感じていたい。

本当、清作は桐湘に入っていい成長が出来たと思える。
中学校時代と比べてよっぽどイキイキしてるし楽しそう。仲間といることの大切さが分かったのは何よりであります。

さて、夏の大会に合わせて背番号更新。
清作は春の21番から1桁台の8番に躍進。おぉ。しかしやっぱりポジションはセンターなんですな。
一度ファーストに入ってたし、内野手になる可能性もあるかと思ったが。まあそこはよいか。

ああクソッ・・・早く試合がしてえ!!気持ちが膨らんでハチ切れそうだ。今ある力の全部をぶつけたい!!

何とも可愛いことを考えている清作。さすがですな。
そのひたむきさ故に、目標とした素振りの回数を達成したことにすら気付いていないという。
2か月で素振り73万回・・・本当に達成したというのに・・・!!
電車の中でも観客席でも素振りしていた甲斐がありましたなぁ。実に迷惑だった!!

ともあれ、次回から本格的に夏の大会が始まります。
初戦の相手は麻生西。今回は決まった打順であるし、永源を打ち崩せるかもしれないが・・・さてさてどうなりますか。
ハチ切れそうな想いを全力でぶつけよう!!



錻力のアーチスト 9巻


Vol.70 3年  (2015年 12号)


いよいよ始まる夏の大会。初戦の相手は麻生西。
春の大会でシードを勝ち取った桐湘であるが、観客の予想は麻生西有利というもの。
先の練習試合の結果まで知れ渡っているならそう考えられても仕方がないですかなぁ。

ともあれ、負けたら終わりの高校野球。絶対勝つ!!その意識で全ての試合に臨むしかありますまい。
そのテンションが達しすぎたのか、いきなり吠え出す清作。ワッツハプン!?いかがいたした。

清作「いや、何か。抑えきれなくて・・・!」
頭木「さもありなん

さらりと同意を返す頭木さん。
頭木さんもこう見えて昂っているってことなんですかね。

先の練習試合のこともあり、桐湘をナメてかかる麻生西。
かと思いきや、さすがに3年生たちにそのような油断はない様子。
相手が誰でもナメてかかるな。その気持ちを持って向かって来るとしたならば・・・やはり強敵ですなぁ。

さて、試合開始。先攻は麻生西となります。
打席に立つのは一番サードの氏晴。相変わらずデカイ人であります。
それに対する桐湘の先発はエースの之路さん。
練習試合では7点も取られたわけであるが、今回はどうなるか。

震えが止まらない・・・3年の俺にとっては最後の夏の大会・・・
去年は今の清作みたいに気持ちが高ぶってマウンドに上がるのがただただ楽しかったのに。緊張感がケタ違いだ
こんな中で永源は初戦を1安打完封したのか・・・

さすがの之路さんも最後の大会は意識してしまうみたいですなぁ。
元々繊細なところがあるけど、気合で押し込んできた人ですしねぇ・・・
だから、今回も気合で押し込むことにします。負けられない!!

エースナバーを背負って先発のマウンドを任されているんだ。
ここからは誰にも1度も――負けられないんだ。

気合を、想いを乗せて放つ第一球は・・・地面に叩きつけてのボール。
力が入りすぎて上手く投げられなかったみたいですな・・・固くなりすぎだ!!
安保先輩並にズ太ければいいのになと考える柊。それは精神的な意味なのか肉体的な意味での発言なのか。
何にしても不器用な之路さん。気持ちの切り替えというのもきっかけがないと上手くいかなさそうな雰囲気がある。
なので、そういう投手の気持ちをどうにかしてやるのも捕手の仕事となります。

拾った球を、投手のように思いっきり之路さん目がけて投げつける宇城さん。
立った状態で、普通のグローブで受けるにはなかなか厳しい球である。

しっかり腕を振れ之路。せめてホームベースまでは届けろ

なかなかのナイスボールを放つ宇城さん。
ふむ、これも不器用ながらの励まし――というか、喝入れでありましょうかね。

無口で無愛想なくせに何かあったら一方的に言いたいこと言いやがって。
お前は――本当に良い女房だバカ野郎!!

独特のやり方ではありますが、之路さんには効果満点だったようですな。見事に気持ちを切り替えさせることに成功した様子である。
うーむ、之路さんは國尾さんといい宇城さんといい・・・良い恋人と女房に恵まれておりますなぁ。これも人徳、か?

勢い付いた之路さん。氏晴をストレートで空振り三振に仕留める。いい感じだ。
そして二番の荘子に対してはいきなりスライダー。
ストレート一本で来ると見せかけての変化球に対応できない荘子。ナメてかかるからそうなるのですよ。フフン。

ツーアウトとなったところで三番の八起登場。
相変わらず鬼のような感じのキャラであるが、単純なパワーキャラってわけではなさそうですな。
大振りせず、しっかりとした打法でのセンター返しを狙ってくる。
その狙いは良かったが、足元の難しい球をキャッチする之路さん。
宇城さんのガチ返球のおかげで突然の早い球に耐性が出来てたって話ですかね。いいアシストだ。

緊張なんかで今までの2年間を無駄にするわけにはいかない。良い言葉です。

さて、之路さんの活躍により1回の表は3人で終わらせることに成功した。
今度は桐湘の攻撃。ここで先制点を取ることが出来ればかなり有利になるが・・・さてさてどうなりますか。
この間の練習試合とは違うってところを見せてあげないといけませんわな。



Vol.71 主力  (2015年 13号)


1回表、麻生西の攻撃を3者凡退に仕留める之路さん。ナイスピッチング。
さて、次は攻撃の番である。あの永源から得点できるかどうか。
練習試合の時とは違う完全な打順で臨む桐湘。今度こそ力を見せてやらねばなりませんな。

まずは一番打者の児島センパイ。
足の速さは練習試合でも知れ渡っているため内野陣は警戒態勢。
とはいえ永源の球はバントするのも簡単ではないように思える。油断もないようだし厄介な相手ですなこのカタブツ色メガネ

セオリーなら一塁までの送球距離が長い三塁方向へ転がすけど、初球の反応を見る限りファーストの方が動きがトロい。
アイツに捕らせんのがベストだべ!

しっかりと作戦を考え、バントを決める児島センパイ。
狙い通りにセーフティバントでの出塁に成功するのはさすがと言えましょう。
何も考えずにただバントするだけではなく、相手の守備の動きも計算に入れる。これが夏の大会に向けて強化した結果でありますか。

ランナーとなり、更に永源をかき回そうと大胆なリードを取る児島センパイ。
いつのまにやら柊とのコンビプレーの形が出来ている感じでありますな。
児島だからチャイルドアイランドか・・・普段はさすがに長すぎるからコジにしているのだろうか。

牽制も上手い永源。その永源相手に大胆なリードを取る児島センパイ。
さすがに盗塁は厳しそうであるが・・・そうでもしなければ送りバントもキツイ。キツイから――走らなきゃいけねーんだべ!!

初球から仕掛ける児島センパイ。それを見越していたように一球外す麻生西のバッテリー。むむ。

児島(俺だけだったらムダ死にするかもしんねーけどな)
柊(ギャンブルにはさせない!)

想いを同じくする2人。
同年代であり、似たような道を歩んできたのがこの両名。
足やバットコントロールなど特技は違えども思うことは同じである。

主軸になれなくても主力になってみせる!!

それぞれがそれぞれの道を模索する。一番となる道を考える。國尾さんも言ってましたが大事なことです。
長打力、四番として主軸になるのは弐織がいる。となれば他の道をひた走るのが正解でありましょう。うむ。
少し前まで四番打ちたいとか言ってた気もするが、まあそれはそれ。

さて、ボールを外されてしまった児島センパイ。
しかし様子見で半端に外したため、バットが届く範囲内である。
バットコントロールに優れた柊。当てるだけなら誰よりも上手い。
そして当てさえすれば、どれだけ麻生西の内野が前進守備を敷いていても確実に二塁に進むことができる!!
うむ、それぞれの特色を活かした見事な作戦でありますな。熱い。ウィ、ディドイット!!

初回から熱い流れで仕掛ける桐湘。さっそく得点圏にランナーを進めることに成功。
そしてクリーンナップ。まずは三番の清作からだ!!

一番の児島先輩が出塁して二番の柊先輩がチャンスを広げる。安保先輩の言ってた通りだ・・・

となればもちろん自分と勝負しに来るはずである。
さてさて清作はリベンジ達成となるかどうか。
新しい打法を身につけ、成長の度合いは誰よりも大きい清作でありますが、その成果をすぐに出せるかどうか。注目です。



Vol.72 イメージ  (2015年 14号)


1回裏ワンアウトランナー二塁。
先制点のチャンスに三番の清作。初球から狙っていくが・・・残念ながらファール。
しかし練習試合の時はストレートに空振りをしていたのだが、今回は当てることが出来ている。
手元で微妙に変化するクセ球を何とか修正すればいけそうな感じでありますな。

――とでも思っているか。清作雄。
積極的に振ってくるのを見越して初球のストレートはあえてスピードを落とした
2球目はさっきと同じコースからボールになる変化球に手を出させて早々に打ち取る!!

打ち気に逸る清作を見越しての組み立て。
初球こそが最大のチャンスだったわけだが、それを捉えられなかった感じでしょうか。
しかしその永源の誘いに乗って振り回したりはしない清作。おっと、落ち着いてますな。

まずは狙いを絞ることから始める。そのように蓬莱に言われたことを思い出す清作。
基本的に教わったことは素直に学ぶ子なんですよね。すぐ忘れちゃうだけで。
ともあれ思い出したのならばそれをしっかり力にできる奴でもある。
狙いは落ちる変化球。練習試合で空振りしてるから自信を持って投げてくるはず。沈む瞬間をとらえてやる!!

てなことを考えていたらど真ん中のストレートを見逃す羽目になった清作。
うーむ、相変わらず考えが裏目に出る子だなぁ。
確かに狙いの球が最後までこなかったらどうするのかという部分はある。
その場合は諦めるか、狙いを正確にするようしっかり考えるかなのでしょうが・・・どちらも清作には合わなさそうだ。

とはいえ狙いを絞らずに打てるような投手ではない。
やはり落ちる球に絞って・・・逃さないようにする。
腕とバットがつながって1つになってるイメージで球をつかまえに行って振り抜く・・・!

清作のその意志に引きずられたのか、永源。全力で仕留めにかかろうとする。
となれば決め球と思える落ちる球が来るか・・・!!

球の軌道とはまるで違う低いところを振る清作。落ちなければ盛大な空振りとなるところだ。
しかし球はイメージ通りの軌道を描いて落ちてくる。清作のバットに吸い込まれるように・・・
いや、清作のバットの軌道の・・・更に下へと落ちていく!!

かなり下を振っていたはずなのにそれをも超える落差。
練習試合の時よりも落ち方が鋭くなっている・・・なんて球だ。
清作のイメージは完璧であったが、所詮それは2か月前の永源の球であったらしい。
清作がひたすらバットを振ってスイングを鋭くしたのと同じように、永源もまた自分の武器を磨き抜いている
厳しい話であるが・・・初回でこの決め球を引き出せたのは大きいと言える。
この試合中にイメージを修正して打てるようにしたいところですな。

さて、四番の弐織。永源の決め球も見れたことだし、どうにか打って欲しい。
とはいえ一塁が空いているので歩かせられるという可能性もあったのだが・・・永源は勝負するつもりの様子。上等だ!

勘違いするなよ弐織敏。お前を甘く見て勝負を選んだわけじゃない。
目の前の打者を打ち取るために全力を尽くす。それが投手の。エースの。俺の――最後のこの夏にかける決意だ!!

さすがに最後の大会にかける熱意は凄まじい。
練習試合の時でも凄かったのに、そこに決意と熱意が加わる。これはヤバイ相手である。
その勢いがあれば速球で弐織を空振り三振に仕留めることもできるという。おぉ・・・

先制点のチャンスであったが、まさかの清作と弐織が連続三振に仕留められる。
さすがは去年の準優勝投手・・・これで流れは麻生西へと行きそうな感じであります。厄介な・・・
どうにか向こうに行った流れを引き戻したいところでありますな。



Vol.73 エゴ  (2015年 15号)


清作、弐織が三振に切って取られた1回の裏。
それを目撃しての2回表。之路さんにはプレッシャーがかかる場面でありますな。
そして麻生西の四番は練習試合に出ていなかった崑野。
打ちそうな雰囲気であるが、力み過ぎた之路さんによりフォアボールで歩かされることとなる。おやおや。

元々コントロールの良くない之路さんであるが、これだけ連続で入らないのはおかしい。
というわけで早速声をかける宇城さん。

平塚は七夕祭りが有名だと知っているか。
不甲斐ない投球をしていると、お前の彦星が曇るぞ

彦星・・・國尾さんのことでありますか。ってそっちが彦星になるのか!?
いやまて。確かその後で之路さん、彦星と彦星だとか言ってましたよね。
となればこの七夕には彦星しかいないことになる。彦星と彦星(恋人)と彦星(女房)。
この夏の大三角形が平塚の名物であるわけですか・・・!!平塚在住の方々スミマセン。

彦星の件はさておき、宇城さんの気遣いで落ち着いた之路さん。どうにかストライクが入るようになる。ッし!
しかしそんな之路さんにダメ出しをするのは永源。

之路拓人・・・まわりに煽られないと本来の力が出せないのか?
投手の一挙手一投足その全てを全員が見ているんだぞ。1人で立ち直れないなら、お前はマウンドにふさわしくない

非常にストイックなことを考えている永源。
捕手に対して厳しいことを言ったり俺様な感じに見えたが、それはエースとしての責任感の強さの表れだったわけですな。
傲慢なように見えるがそれは決して相手を侮ったりする類のものではない。
ううむ、なかなかに厄介な相手でありますよ。本当に。

さて、続く五番が送りバントで崑野を二塁に進塁させる。
ワンアウトで得点圏にランナーがいるこの状態。先の回の永源と似ている。

ウチとは打順も違うし俺1人で永源と張り合う気も無いが――目の前の打者に全力を尽くす気持ちは同じだ!!

その意識を持って六番を三振に仕留める之路さん。ナイスボール之路(ディスウェイ)主将!
さりげない柊の独自英訳。永源はロングソースになるらしい。そうか。

ともあれ続く七番は永源。九番ではなく中途半端な位置にいるようだが、打撃センスはそこそこなのだろうか。
目立った成績は残していないようだが、俺が決めるという意識は高い。

それというのも去年の大会の記憶が残っているためである。
甲子園を狙い、後は港南学院を倒すのみ。それも2点差であと2回を抑えるだけというところまで頑張った永源。
しかし肘に違和感を抱えた状態で迎えるのは弐織義壱。
その状態で抑えられる相手ではなく・・・ソロホームランを許してしまう。
しかし永源の後悔はここで無理して投げたことではない。最後まで投げ切れずにマウンドを渡してしまったことにあった。

任せろ・・・だと。ブルペンでの投球練習の大半をワインドアップで投げていた人に任せられるはずないだろ。
港南相手ならランナーを背負ってセットポジションで投げる状況の方が多いはず。
アウトカウントやランナーはどこにいてボールカウントは・・・?ちゃんと展開をイメージして準備していたのか・・・?

永源のその危惧は当たり、9回裏に逆転を許してしまう麻生西。うーむ。

3年の・・・最後の夏にあんな姿をさらすくらいなら、他の何を犠牲にしても1人で勝つ力を身につける。
俺はただ、今より強く堅く太く深く自分を貫く力が欲しいだけだ。
自分以外の誰かにマウンドをゆずって後悔しないように、最後までマウンドに立ち続けるために。
誰かに勝利を託す奴にはなりたくないんだ
それをエゴだと呼ぶのなら好きにしろ。何と言われようと俺は自分の力で――勝ちたいんだ!!

チームスポーツの中では確かに永源の考え方はエゴと言えるかもしれない。
しかしストイックなその姿勢はチームの勝利に貢献するものとも言える。
エースや四番ってのはある程度傲慢で勢いがある者の方が向いてる気がしますしね。

たとえ1人でもチームを引っぱるのがエースだろう。孤独を力に変えられない奴はマウンドに立つな・・・!

恐るべし永源の主張。
そしてその意識の高さを表すように自らのバットでタイムリーを放つ。
この1点は桐湘にしてみればかなり重い。どうにかして永源から1点を返さなければいけないわけだが・・・簡単ではないぞ。
永源の主張を打ち破るほどの力を見せて行かないといけませんな。主張には主張で対抗だ!!



Vol.74 全神経  (2015年 16号)


エース自らが放つ先制の二塁打。この1点はでかい。
1点あれば勝ったも同然との声が上がる。悔しいが打てていないのだから仕方がない。

救いとしては之路さんがめげていないところですかね。
國尾さんのネタでイジられなくても大丈夫らしい。宇城さん、どれだけネタをストックしてるんだろう。

永源に打たれたことで尚更――負けたくない気持ちが強くなった!!

手痛い1点であるが、それでも1点で済んだのは僥倖。
荘子は1点あれば勝てるなんて思っているようだが、そうは行きますかってんだ。
毎回同じような怒られ方してるなこの子。ひきしめろ。

とはいえさすがの永源。
2回裏の五、六、七番を3連続三振に切ってとる。うーむ、厄介な。
ますますギアが上がってきた感じがしますなぁ。

永源が凄いのならば俺もと燃える之路さん。
野手の好プレーもあり、3回4回を無失点に抑える。
こうなってくるとますます2回の1点が重くなってきますなぁ。

桐湘のヒットは初回の児島のバントヒットのみと厳しい状況。練習試合のことを思い起こされる。
しかし失点はあの時より少ない。7対0で負けたあの時とは違う。
4回の裏は二番の柊からという好打順。どうにかしたい回であります。

久澄監督の指示は狙いを絞ってコンパクトに振ってのシングルヒット
大きな当たりよりもまずは出塁することが大事という話ですな。
ストレートは速くフォークも凄い。なのでカウントを取りにくるカーブを狙いましょうとのこと。ふむ。

・・・フォーク狙いじゃダメッスか!?

わざわざ難しい球を打ちたがる清作。まあ一番強くイメージしてるのはそれでしょうしなぁ。
打てるものならば打ってもいいだろうけど、難しいですわな。

監督の指示は的確であるが、的確であるだけにそう来ると読みやすい。
永源は2巡目に入ってからカーブを減らし、スライダーを混ぜる投球に変更する。
うーむ、事前準備が大事と述べるだけあり、計算しておりますなぁ。
多彩なボールを投げ分けられるからの組み立て。やはり凄い投手である。

結局狙ったカーブはこず、柊、清作の2人は三振。うーむ。そして迎えるのは四番の弐織。

弐織敏・・・練習試合ではヒザ元の球をレフトオーバーの二塁打にしたな・・・
飛ばす力はあるしあの体格の割に変化球を捌くのが上手い。
それでも兄の弐織義壱や蔡理の蓬莱程の実績を残せていないのは何かが足りないからか・・・
足りない・・・いや――多すぎるんだな。むしろ

弐識にもカーブを投げることのない配当でカウント0−2に追い込む永源。ガッデーム。
追い込まれた弐織。ここで先程の監督の言葉を思い出す。四番なら四番らしい打撃をしてくださいという言葉を。
チームのため、誰かのためというのは時として責任逃れの言葉になってしまいますからねという言葉を。

――そうだ・・・之路主将や永源はエースとして目の前の打者を打ち取ることに全力を尽くしている。
それなら俺は四番として目の前の当主をブチのめすことだけに全力を尽くしてやる。
俺自身がクソ天然にいつも言ってることだ。ゴチャゴチャ考え点じゃねー。
四番としての責任や期待は背負うもんじゃねぇ。自分の心の中にブチ込め。
そんで余計なモンは全て削ぎ落とせ。今この瞬間は俺と永源の2人だけだ
あの時と・・・練習試合の時とは違う。四番なら四番らしく――
何が来ようと永源の球をスタンドに叩き込む。そのことだけに全神経を集中しろ・・・!!

余計なモノを削ぎ落とした結果、バット以外は服もスパイクもなくなりました。全裸だ!!
そして自分と永源だけということで永源も似たような状況にされえつぃまいます。全裸だ!!
背景とかも余分なものなので削ぎ落とされる。
なるほどなー。そういう考えであれば相手を巻き込むほどの全裸空間が出来上がっても仕方ないですわなー。恐ろしい。
弐織と対比されているからか、やけに永源細く見えますなぁ。

意識が変わり空気が変わり恐るべき空間を生み出す弐織。
このまま次回も全裸空間は継続することになるのだろうか・・・恐ろしい!!



Vol.75 喰らいつく  (2015年 17号)


ツーアウトランナー無し、カウント0−2。
普通なら1球外して様子を見る場面だが、3球勝負を仕掛けてくる永源。そしてそれを見破る弐織。全裸で

正面から俺に向かってきやがって。上等だテメー。何度も空振りさせられてたまるか・・・!!

打ち気マンマンの弐織。
その弐織に対し、勝負球であるフォークを投げる永源。
変化の鋭さはまるで球が消えたかと思えるほど。普通の選手ならばそう思えたことでありましょう。

俺の外眼筋、目ん玉を全速で動かして球を追え。喰らいついて離すな!!

動体視力の上昇に欠かせない眼筋。
簡単に鍛えられる部分ではないがさすがに弐織。筋肉繋がりであればどこでもマッチョなわけですな!!
鋭い永源の変化球にもしっかりついていく。落ちる球に合わせて視線が・・・体勢が沈む。

ブッ倒れそうでも踏んばれ。体を支えろ。そのための筋肉だろ。
最短距離で最速で腕をブン回せ。筋肉が悲鳴あげようが知るかバカ野郎!!
そんなヤワな体じゃねえだろ。自分を信じろ
この体とその中にブチ込んだ四番としての想いがあれば――打てる!!

相当無理矢理な体勢で救い上げるように捕らえる弐織。
普通ならば体を痛めるだけでまともに飛ばせそうにない構えである。
それだというのに、倒れ込みながらスタンドまで運ぶそのパワー。
相変わらず捕手も審判もぐわんぐわんいわせているそのパワー。見事なものだ・・・!!

永源の決め球を見事に打ってみせた弐織。これぞ四番の一撃!!
これには桐湘のベンチは大盛り上がり。スゲェ!!
逆に打たれた麻生西の方の動揺は大きい。
実際永源がホームランを打たれたのを見るのは去年の夏の決勝で弐織義壱に打たれたヤツ以外に記憶にないという。
しかもその時は肘が万全ではなかったという理由があったのだが、今回は・・・

勝負を左右する大事な一本を打つ。これぞ四番の仕事。四番の活躍でありますな。見事だ。
しかしそれで崩れてしまうほどヤワな永源ではなかったりする。
油断していたわけでもマグレでもない。打たれたのは俺の方が劣っていたからだと考える。

もっと研ぎ澄ませ。感覚を。神経を。誰も何も寄せつけないほどに!!

どうにもこうにもストイックな永源。
さすがに自力で立ち直れない奴にマウンドは相応しくないなどと言い切るだけのことはある。
その立ち直りの早さにより、続く五番の安保先輩は三振。攻め崩すことは出来ませんでした。むう。

とはいえ同点に追いつけたのは大きい。桐湘としては息を吹き返した感じである。
そして仲間が点を取ってくれるのであれば、より一層奮闘しようと頑張れる之路さん。

永源・・・頼もしいだろウチの四番は。1人で何でもできてしまうお前にはわからないかもしれないけどな。
ここは・・・マウンドは孤独な場所じゃない。皆の声やプレーが俺を更に奮い立たせてくれる。
「しっかり投げろよテメー」と、強く熱く背中を押されてる。
マウンドに集められる全てを力に変える。それが――チームを背負うエースだ!!

ようやく之路さんも永源に対して胸を張って相対できるような考え方を身につけることが出来たみたいですな。
エースの有り様は異なれど、それによって生み出される結果はどちらも大きい。
大切なのは自分に合った有り様を信じて投げ抜くことでありますな。
それを忘れなければ宇城さんに毎度のように煽られることもありますまい。うむ。

仲間の想いの強さに比例して調子を上げる之路さん。
微妙にヘマしたりするのも想いの強さで力んでいるからなのかどうなのか。
何というかすっかり抜けた感じのキャラが定着しつつありますなぁ之路さん。どうしてこうなったのやら!!



Vol.76 立場  (2015年 18号)


回は進んで8回裏の終盤。
1対1のまま互いに追加点はなく、延長の可能性も見え始めてきた。
ここまで来ると桐湘の強さも、春季大会ベスト8という結果もマグレではないと認識される。
嬉しいことではあるが、それに満足しててはいけませんわな。

永源の球威は8回になっても衰えを知らない。
怪我によるブランクがあるが、その間くさることなくトレーニングを積んできた結果である。
本当、この人はどこまでもストイックですなぁ。

さて、さすがの麻生西の監督もここまで1点しか取れてない現実から之路さんのことを認めだしてきている。
たまにポカをやらかすせいで力が測りづらいってのは素直な感想ですなぁ。

ともかく1点。1点でいいから取りに行きたい麻生西。
1点勝ち越せば後は永源が仕留めてくれる。その絶対的な信頼が見える。

というわけで9回表の麻生西の攻撃。打順は一番の氏晴から。
この氏晴も3年生であり、ここで終われないという想いはやはり大きい。
そして最後になる夏の大会に永源が間に合ってくれたことを嬉しく思っている。

永源と一緒に3年の最後の夏の大会を戦えることがたまらなく頼もしかった。
2回戦で。こんな所で・・・つまづいてられるか!!

想いを込めたバッティングが三塁線を襲う。
強烈な打球。これを体で止める弐織。さすがの筋肉だ。
氏晴必死のスライディングも実らず・・・アウト!!惜しい所でありましたな。

続くは二番の荘子。
3年生たちと違い、どうにも相手を軽視するクセがある。
永源としてもそういうクセを嗜めるために試合中にわざと荘子のところに打たせたりしている。
そうやって鍛えられた成果を、その力をまだ出し切っていない。このままじゃ終われない!!

想いは強かったが、それでもやはり3年の最後の夏にかける想いには及ばない。
之路さんの気合の入った球を打つことが出来ず、三振。ツーアウトとなった。

しかし続く三番の八起は3年生。氏晴と同じく永源のために、このチームで戦い続けるためにという想いは強い。
何としても1点を取るという信念で打席に立つ。
その気持ちが実ったのか、長打ではないもののレスト前ヒット。
勝ち越しのランナーとして出塁に成功する。うーむ、さすがにしぶとい・・・

そして迎えるのは同じく3年の崑野。
永源にハデなガッツポーズをとらせてやるよと息巻いている。
さてさて、ここをしのぎきることができるだろうか・・・

やはり3年生の最後の夏にかける想いはどの高校も同じようですなぁ。
麻生西も当初は永源に頼ったワンマンチームの印象でしたが、そうでない感じが見えてきました。
相手校が熱いのはいい。いいのだが・・・見ていて怖くはある。果たしてどうなることか。



Vol.77 ガッツポーズ  (2015年 19号)


9回表。後1人というところでランナーを出してしまう桐湘。
野球はツーアウトからという格言もあるし、気が抜けない。
そして迎えるのは四番の崑野。かなり気合が入っている。

一塁ランナー八起は見るからに足が遅そうな感じであるし、よほど深い所に飛ばさないとホームには還れない。
その辺りも踏まえ、二塁に行かれると厄介なため、崑野を歩かせることはない。
どうにか仕留めてしまいたいところであります。

ここまで2打数ノーヒット四球ひとつ。これを3年最後の試合にしてたまるか・・・!

之路さんが3年生最後の試合にしないために燃えているのと同様、相手の3年生も燃えている。
向こうの四番こと弐織がホームランを打っていることも影響している様子。

――なのに永源のヤロウ俺になにも言いやがらねえ。
不甲斐無えってキレてんのか、そんなもんだって呆れてんのか。わかりづれえんだよ。
それでも・・・八起がヒットで出塁した時――
ここで1点取ってその裏お前が相手を3人で抑えて勝つのが理想だよな。
見てろよ永源。もっとハデなガッツポーズをとらせてやる!!

確かに八起が出塁した時、拳を握っていた永源。
1人で何とかするという何とかしてみせるという意識はあるが、それでも仲間を全く頼っていないわけではないんですな。
一番の目的は勝つことであり、永源はそれを誰よりも認識している。
そんな永源を喜ばせるためにも打つ崑野。
安保先輩の頭を超え、ライト線ギリギリをボールが駆け抜けていく。狙い通りの深い球だ。

必死で走る八起。
進塁を迷う三塁コーチに対し、回せと指示する永源。おぉ・・・

はじめから止まる気は無い!!
1点あれば勝てる!!こんな所で最後の夏を終わらせない!!
もっと前へ。もっと先へ。もっと上へ――進み続けるんだ!!

再び頭からベースへ突っ込んでいく八起。
クロスプレーも制し・・・1点をもぎ取る。
むう、見事に持って行かれてしまいましたなぁ・・・
派手というほどではないが、永源もハッキリ分かるガッツポーズを見せている。
他の選手が走った八起を応援する中、一人打った崑野に向けてガッツポーズを見せる永源
それだけで十分と言う顔になっちゃう崑野。むう、いい雰囲気出しおって・・・
相手校なのにこうも熱い雰囲気を見せられるとなぁ。応援したくなってきていかんなぁ。

取られたくない虎の子の1点を取られてしまった之路さん。
崩れて追加点を取られる可能性もあったが、何とか持ち直す。
とはいえやはりここでの失点は厳しいですなぁ・・・之路さんもベンチに戻り、仲間に詫びる。

詫びるより、打たれたことを悔しがれ

微妙に五七五になってる感じで頭木さんが答える。
まだ試合は終わっていない。大会は終わっていない。
ここで詫びるよりも次に繋がるように悔しがるのが大事ってことでありますな。さすがだぜヘッドウッドシニア!!

というわけで、何とかこの9回裏で1点は取らないといけない。
四回にホームランを打っている弐織は場合によっては歩かされる可能性もある。
そうさせないためにも前の打者が出塁し、歩かせたら二塁――スコアリングポジションに進まれるというシチュエーションを作りたい。

しかし二番の柊は三振。バットコントロールに長けている柊でもカットして粘ることも出来ない。
ううむ、鍛え上げた体力を如何なく発揮してる感じでありますなぁ。
さて、次はここまで3三振の清作であるが・・・

何とかしないと終わっちまう・・・皆で戦うのが最後になっちまう・・・!

チームで戦うことの意味を、楽しさを教えてくれた桐湘の先輩達。
その先輩達と一緒に戦えるのはこの大会までである。
この試合で終わりにしたくない。その想いは3年生並に高い清作。ならばここ一番、期待したいところでありますがどうなるか。
一発は出ないにしても、三振で終わるわけにはいきませんわな。うむ。



Vol.78 それすら  (2015年 20号)


あとアウト2つで負けが決まる土壇場の状況。
ここで打順が回ってきた清作。どうにかして出塁しなければいけない・・・!!

必ず出塁しなければいけない場面。
これまでのように思い切りのいいスイングはできないはずと考える麻生西の面々。
実際清作も終わらせない、終わらせたくないという思いは強い。

もっと永源サンと対戦してえ!!

そっちの気持ちが強かったか。
さすがに最後まで弐織と四番争いをした男である。いい度胸だ。
縮こまることなく初球からフルスイングをする清作。当たりさえすればいけそうなのだが・・・

2か月前の練習試合で完璧に打ち取られたのが悔しくて、
この大会の組み合わせが決まってからずっと永源サンの球を打つことだけ考えてきたんだ。
このまま終わらせられるか。

そう思いつつもカウント1ボール2ストライクと追いこまれる清作。
投手有利のカウントでランナーもいない。決め球のフォークを投げられると厳しい状況。
いや、だからこそそのフォークを待つには絶好と言えなくもない。

土壇場の状態。にも拘らず笑みを見せる清作。
その清作を見て珍しく苛立ちを見せる永源。勝負の場で気を緩めるのは気にくわないとのこと。相変わらずストイックなことで。

誘いに乗ってやる程お人好しじゃないが、挑まれた勝負から逃げる程ヤワでもない

エースとしての信念からか、真っ向勝負に出る永源。
一方、清作としては別に挑発していたつもりはなかったりする。この辺りがさすがのクソ天然っぷりですな。

今の球手が出ねぇ。やっぱスゲェな永源サン。
9回でも球威落ちねえし之路主将と違ってコントロール乱れねえし球種多いしポカもやらかさねえ

何故か念入りに之路さんをディスる清作。まあ、言われても仕方がない部分は多いか。

打ちたい。打って認められたい。
弐織先輩やチームの皆にじゃなくて――この人に。永源サンに俺の力を認めさせてやる!
俺には弐織先輩ほどのパワーは無いし、蓬莱サンほど柔軟に球をとらえることはできない。
今の俺にあるのはスイングのスピード。それをもっと上げるんだ。
練習の成果を出しても打てないなら今この瞬間に今までの自分を超えろ。
理想のスイングはこの音がする時・・・それすら超えていけ!!

今までその音が出る理想のスイングで素振りを続けてきた。目標の数を達成してきた。
しかし今、その理想をも超えるスイング――音が消えるほどのスイングをしてみせる清作。
これが弐織の言っていた、弐織義壱のマネではなく、それを超えるスイングという奴か・・・!!

弐織の時のように体を折り曲げ、掬うようにフォークを捕らえる清作。
掬い上げすぎた感じではあるが、センター前に落ちる見事な打ち返しで出塁。
見事に1年にして永源のフォークを打つことに成功したわけであります。やったな!!

どースか永源サン!

鼻息荒く認めてもらおうとする清作。さすがの天然っぷりですなぁ。

さて、同点のランナーが出たところで四番の弐織。
さすがにホームランを打たれたこともあり、意識してしまう永源。兄の弐織義壱のことも思い出してしまう。
結果、コントロールを乱して歩かせてしまう永源。おやおや。

そんな永源のいるマウンドに集まる麻生西の選手たち。
これまではピリピリした雰囲気で寄せつけずにいた永源であるが、この時ばかりは受け入れている感じがします。
落ち着きを取戻し、後2人を仕留めようという感じでしょうか。
うーむ、そうなると弐織が歩かされてしまったのはなかなか厳しい・・・

だがしかし!ここで迎えるのは五番の安保先輩。安保シニアである!!
何となく敵味方共に侮られている感じはある安保先輩であるが、この土壇場だからこそやってくれると信じている。
ついに見せ場が来たのだと信じていますよ安保先輩・・・!!!



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