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蒼天紳士チャンピオン作品別感想

聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝
シジフォス編 第1話 〜 最新話


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 聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 バックナンバー



シジフォス編 第1話 英雄の弟  (2013年 12月号)


射手座の黄金戦士・シジフォス編開幕!!

物語は聖戦より17年前。まだシジフォスが聖闘士候補生だったころから始まる。
この時期はまだ正式な黄金聖闘士も少なく、聖戦までに候補生を鍛え上げるのが重要と思われる時期。
そんな中、未来の黄金聖闘士である3人が揃って同じ任務についている。
そう、シジフォス、ハスガード、アスプロスの3人だ。

教皇の星見の結果、ある集落で凶行が行われると予見された様子。
そのため候補生の3人が見張りを行い、何か起これば正規任務の聖闘士に伝令を行うように控えているらしい。
うーむ、まあ未来の黄金候補とはいえ正式に聖衣を貰っているわけでもない候補生に無理な任務はさせられないか。

戦闘力として期待されていないようで辛い。そう述べるハスガードたちに対し、そうとは言い切れないと語るアスプロス。

この任務でやってくるのはイリアス様のようですよ

英雄イリアス。最強と言えるほどの力を持った獅子座の黄金聖闘士にしてシジフォスの兄
その任務に抜擢されたことは期待されているということですよと言い出すアスプロス。
ふむ、何だか爽やかな笑顔ですね。この頃のアスプロスはまだ闇も投擲されていない綺麗なアスプロスなのだろうか?
多少シジフォスに対して対抗心みたいなものが見て取れるが、向上心は元から人一倍強かったですしねぇ。

俺も双子座の候補生として。3人、未来の黄金の戦友となれるよう努力しましょう。

グイグイ主張するアスプロス。若さに溢れておりますな。
色々あって年取ってからは皮肉屋な感じになってしまったが、昔はまっすぐな可愛さがある子だったんだなぁ・・・
アスプロス本人も含めて将来の悲劇のことなど知る由もない3人。そのが3人揃って拳を合わせて誓う。

俺たちは必ず黄金聖闘士になる。強く輝かしい12人の戦士の1人に。
その中でも聖人のような佇まいと裏腹に、圧倒的な戦闘力と大地のように雄大な小宇宙を持つ英雄。獅子座のイリアス!!!
その弟というだけで妬まれることも比べられて失望されることもあった。
だけど負けない。俺は必ず兄さんの名に恥じない黄金聖闘士になる!

強く心に誓いを秘めるシジフォス。
しかしそのタイミングで風が変わる。凶兆の予感。
それを感じ取り、崖の上を見上げる3人。
地響きを立ててそこから駆け下りてくるのは、馬蹄を響かせ火矢を構えた野盗・・・いや、神話でいうところのケンタウロスだ!!
半人半馬のケンタウロス。さすがの健脚であるが、だからといってその足で崖を駆け下りるとは無理をする。
鹿が降りれるから馬も平気だと思ったんでしょうか?いやこの崖だと鹿も無理なんじゃないか・・・?

そんな疑問はさておき、ケンタウロスたちは集落に火矢を放つ。
どうやら目的は略奪であるらしい。何だ結局野盗じゃないですか。これが教皇の予見した凶事であるか。

ハスガード「俺はもう我慢ならない!!行くぞシジフォス!!」
シジフォス「おう!」

襲われる人々の姿を見て思わず飛び込んで行こうとする2人。しかしアスプロスはそれを押し留める。
自分たちの任務は伝令でありまだ戦闘許可は貰っていない。
今戦えば命令不服従として罰せられる。そのように主張するアスプロス。おやおや。
命令を守るのは大事なことであるが正義の旗の下に戦う聖闘士が人命を優先しないというのだろうか。

俺には黄金聖闘士になる以上の目的がある!!!
余計な違反で遠回りするつもりはない・・・そのためにはあくまで聖域の命を優先する!!!

アスプロスは教皇となり聖域の体制を変え、弟を救うという目的がある。
確かにその目的のためには命令不服従は行いづらい。
だがしかし、そこでの行動の差がやはり将来の信頼に関わると思うんですよね。
真っ先に突っ込むべきと主張するハスガードが多くの人に慕われているのはそういう面でありますし。

今すぐ救助に向かうべしと主張するハスガード。兄君を待つべきと主張するアスプロス。
確かにシジフォスの行動いかんでは兄であるイリアスにも迷惑がかかることとなる。
そのように述べて短慮はやめろと言うが、シジフォスは止まらない。ハスガードと共に駆け出してしまう。

これでいい!目の前の救けを求める人を放って・・・何が英雄の弟だ・・・!
いや・・・たとえ兄さんの力を借りなくても、救ってみせる・・・!!

シジフォスの拳が空を裂き、ケンタウロスたちを纏めて吹き飛ばす。
うむ、さすがは黄金候補生。正規の聖闘士じゃなくても並の相手ならばそうそう負けることもなさそうだ。

押してる・・・いけるか!?
そうだ。俺はイリアスの弟だから・・・
いける・・・兄さんが来る前にこの任務を終わらせる。
そうしたら、そうしたら皆は俺を認めるだろうか。英雄の弟じゃなくて・・・俺自身を・・・

襲われている人を救いたい。確かに飛び込んだ時はその気持ちで一杯だった。
しかし自分の拳が通用し、任務を果たせると思った時、抱え込んでいた想いに囚われてしまった様子でありますな。
まだ年若く、英雄の弟という何かと比べられる立ち位置にいたのでは仕方のないことであるが・・・
その結果、迂闊な追撃を行い敵の待ち伏せにあってしまう。そこにいたのは・・・冥闘士!!

ちょっと調子に乗りすぎたなァ。糞ジャリ。
アブソーブライフアロー!!!

冥闘士の声と共にケンタウロスたちが矢を放つ。
腕で頭や体を守り、致命傷を防ごうとするシジフォスたちだが、刺さった矢から生気が抜けるような感覚に襲われる。
ふむ、文字通りアブソーブ。生命を吸収する矢ってわけですな。
原理的には自身の小宇宙で相手の小宇宙を中和して消すということらしい。吸収はしてないのか。

それはさておき、どうやらこの冥闘士の目的は大ライオン――イリアスであったらしい。
聖戦前に厄介な存在を消しておこうとケンタウロスたちを引き連れてやって来たようだ。ふむ。
さすがにスケルトンでもなく正規の冥闘士相手に候補生では分が悪い。
踏みつけられ、今にもとどめをさされそうになるシジフォス。だが、そのタイミングで光が走った。

キィンと音が響いたと思う頃には吹き飛ぶケンタウロスの頭。
そして静かに集団の真ん中に姿を現す短髪の男。

遅くなったなシジフォスよ。

そう述べた後、外套を取り払い輝く獅子座の聖衣を見せつけるイリアス。

せめて肉体は大地へ還れ冥闘士・・・ライトニングプラズマーッ!!!

獅子の咆哮。拳が無数の光の線となり、冥闘士とケンタウロスたちを薙ぎ払う。
うーむ、こんな力でよくもまあ聖戦前にイリアスを狙おうだなんて考えたものですなぁ。
本来シジフォスに仕掛けた罠の様に待ち伏せしてアブソーブライフアローを当てる計画だったのかもしれない。
上手くすればイリアスの小宇宙を中和して無力化できたかもしれないという想定だったのだろうが・・・まあ、無理だったでしょうな。

どうやらアスプロスが伝令に赴きイリアスを急いで向かわせてくれていた様子。
アスプロスはシジフォスを抱え起こし、こう述べる。

はっきり言って失望しました。偉大な兄の真似事で英雄気取り。迷惑です

おやおや、はっきり言われてしまいましたね。それはシジフォス当人も思い知っているところだというのに・・・
さらに兄であるイリアスからはこのように告げられる。

・・・風を・・・風を読み違えたな・・・シジフォス

厳しい言葉のように聞こえるが、イリアスのこの言葉はなかなか難しい。
シジフォスが救けを呼ぶ声を無視できずに動いたのは間違いではないと思いたい。
が、その結果少し遅れたら殺されるという状態に陥っていた。
兄としては心配もするだろうし苦言を投げかけねばならんものでありましょう。
そういう気持ちも籠った言葉・・・なのかもしれないが実のところはどうなのか。イリアスの言葉は難解である。

俺は・・・「兄さん」のような・・・

偉大なる英雄である兄の存在はシジフォスにとってもやはり大きなものであるらしい。
そのイリアスの前で弓矢を構え、訓練を行うシジフォス。射手座なだけにやはり弓矢は必須項目であるか。
落ちる木の葉を射抜き、さらに的の中央に当てるシジフォス。
通常ならば称賛される技であるが、イリアスがいうにはまだ風が読めないようだなとのこと。

風と対話しておらん

イリアスの言葉は相変わらず難解である。
究極の第八感にもつながる言葉をかけているのだろうが、まだ黄金聖闘士にもなっていないシジフォスに告げてもなぁ・・・
天才であるレグルスですら幼少の頃から同じように言葉をかけられていても理解するまでは相当な時間を有したというのに。

案の定シジフォス。投げかけられた言葉があの時と同じだったので任務のことは反省していると返す。
そういうことではないのだろうが・・・伝わりませんわな、これじゃ。

というわけでイリアス。シジフォスに眼と弓矢を使わず射ってみよと告げる。
眼を使わないどころか弓矢まで使わないとは・・・完全なイメージのみでやるのか。
ともかく言うとおりにイメージを描いて的に向けて集中しようとするシジフォス。
だが眼を閉じるとどうにも余計なことが浮かんできてしまう様子。
英雄の弟でありながら失望した・・・そのような周りの評価に心を乱されてしまっている。

そんな時に感じたのは・・・獅子の殺意。
いや殺意ではないのかもしれないが矢のように研ぎ澄まされた意識を感じるシジフォス。
思わず眼を開き、兄からの攻撃を防ごうとするシジフォス。しかしイリアスは動いていない。むむ・・・?

謎に思っているところに更なる謎がシジフォスを襲う。
イリアスが放ったと思われる矢が的を射抜いたのだ。
いつの間に・・・イリアスによればそれは光速拳によるものでもサイコキネシスによるものでもないらしい。

ただ風と対話し風の教える通り道。そこの然るべき力を与えただけよ

・・・??
疑問符を浮かべるしかないシジフォス。も、もっとこう分かりやすく・・・

簡単なことだ。少なくとも道を見つけるまではな

そうなのだろうか。むしろその道を見つけることが一番難しいように感じられるのだが・・・
俺はやっぱり兄さんと違うというシジフォスに対し、イリアスはもう少し分かりやすくこう述べてくれる。

射手座の目は常に真実の一点を見出す。それが仲間を導く光となり道となるのだ。
そのためには世界そのものを己とし、雑念で己を見失ってはならん。そうすれば風も大地もお前に従おう。
まずは自然のままでいなさい。そうすればお前は誰より強い聖闘士になれる

それこそが究極の答えなのだろうが・・・難しいですわなぁやはり。
ただでさえ比較されやすく集中しにくい環境にあるというのに・・・
いや、だからこそその中で雑念を振り払うことができれば強さに繋がるわけであるか。

シジフォスが去ったところで咳き込むイリアス。肺を病んでいたということだがこの頃から症状は見られたわけかね。
そんなイリアスに通りがかった動物が話しかける。何っ!?

手を焼いているようですね。貴方の感覚はまともな人間では理解し難い。それこそ動物や木々にでもならねば。

そのように言われるイリアス。全くでありますな。もう少し噛み砕いてもいいのでは?
と思ったがそれではシジフォスの素質を潰してしまうというのがイリアスの答え。うーむ、そういうものであるか。
イリアスは自分になる方法でしか伝えることができないという。
「人」の世界から少し外れていると言われるイリアス。こりゃ理解してもらうのは難儀でありますわ。

安心なさってください。私には見えますよ。貴方の弟君は強い聖闘士になりましょう。
・・・ですが・・・もう一つのお姿も

光り輝く黄金の聖衣を冥闘士の闇に染めたシジフォスの姿。
まさしくこれは未来を予見しているといえますな・・・うむむ、何者であろうかこの巫女のような人物は。
動物の口を借りてイリアスに話しかけているようだが・・・
イリアスの病、天命のことも知っているようだし、どこかの神殿に属しているようだが・・・結構な人物っぽいなぁ。

さて、そのような話をした1年後。
シジフォスも何だかんだで立派に成長している。
そして今日、ついに射手座の聖衣の継承試合を行うこととなりました。
聖域のコロッセオにて行われる継承試合。時間は無制限、見事この男に一矢を報いれば合格となる。
その相手とは黄金聖闘士――魚座のルゴニス!

確かにこの時期ならルゴニス先生は現役でありますわな。若い姿が見られてよい感じである。
さあ、シジフォスは一瞬でもルゴニスの域まで小宇宙を高めることができるのか。
アスプロスやハスガードたちが見守る中、シジフォスはルゴニスへ向けて拳を振るう。が、触れることもできない。

筋は良いな。だがこれでは黄金聖衣に及ばんよ。

ルゴニスが小宇宙を高めた、その圧力だけで吹き飛ばされるシジフォス。さすがにその差は圧倒的である。

感情に惑って先が見えておらん。シジフォスよ、お前は黄金聖衣を手にしてその先何とする?
・・・ただ兄への意地ならばやめておくと良い。無駄死にを増やしたくはない。

確かにルゴニスの言うとおり、偉大なる兄のような聖闘士にならなければいけない。そういう意地はある。
だけど自分は兄とは違う。価値観も見えている世界も違う。それも理解している。

だからこそ俺はその聖衣が必要なのです・・・!
英雄の弟じゃない・・・俺という聖闘士になるために・・・!!

英雄である兄の真似事などと揶揄されるような存在ではない。
そこから独り立ちし、立派な聖闘士となるために必要としている。
ともすれば危うい方向に向かいそうな考えではあるが、兄の模倣をしているよりはよほどマシでありますかな。

その誓いを込めて振るう全身全霊の拳がルゴニスの指を掠める。
ふむ、一応一矢は報いたということになりますかな。というわけで・・・射手座の聖闘士の誕生だァーッ!!!

沸き返る聖域。どうでもいいがやけに人が少ないですな。
立派なコロッセオだというのに人がまばらにしかいないのは何だか勿体ない。
せっかく射手座の黄金聖闘士が生まれた目出度い場面だというのになぁ。

そんな目出度い席でイリアスは教皇にこうお願いをする。

シジフォスのいう聖闘士と迷い。私自ら彼に問い、試してみたいと思うのです。
デルフォイの神託!我が弟の天命を探りたいのです!

おっと出ましたねデルフォイの神託。
ギリシア神話の中にも登場するこの神託。神がかりとなったデルフォイの巫女によって告げられるという。
ふむ、ではやはり途中で出てきた人物がそのデルフォイの巫女であるわけか?そりゃ未来も見通せますわな。

未来の中で闇に堕ちる姿を目撃されたシジフォス。
となればイリアスが弟の見定めを行わなければいけないと考えるのは自然なことでありましょう。
果たしてその問いかけはどのようなものとなるか・・・楽しみです。



シジフォス編 第2話 神託  (2014年 1月号)


見事に射手座の黄金聖闘士となったシジフォス。
しかし兄であるイリアスは不吉な予言を耳にしている。そのため、シジフォスにはある試練が課せられることになる様子。

教皇の間に呼び出されたシジフォスが受ける任務はデルフォイ神殿への使い。
その神殿で聖戦の吉凶を占うデルフォイの書を取ってきて貰いたいと告げられる。
デルフォイの書――デルフォイの巫女の神託を記した、言わば予言書である。
さすがに神々の争いである聖戦の勝敗が分かるほどの力はないが、その予言は大きな影響を与えると教皇は考えている様子。

それが故、その書はデルフォイの守り人たちに固く守られている。
自然と神々の代弁者巫女(ピューティア)たちによってな!!

ふむ。話からしてただのお使いと言うわけにはいかなさそうですな。
まあただのお使いに黄金聖闘士を使うのもどうかと思うし、考えてみれば当然か。

このデルフォイ神殿への使いをシジフォスに任命したのはイリアスが教皇に頼み込んでのこと。
イリアスはこれでデルフォイにて弟は道を見つけるでしょうと語る。彼を強く自由にする。それが私の望みとも。

・・・なるほど・・・では、その肺の影はいつからになる?イリアス。

教皇のマスクを外して問いかけるセージ。さすがにお見通しでありましたか。
人としては難しい領域に踏み込み、それが故にその言葉も難しいものとなっているイリアス。
しかしその心根は無器用な子供の頃と変わらないとセージは語る。
その残り少ない時間も弟のために削ろうとしている。本当、どこまでも無器用な男でありますなぁ・・・

さて、その兄からの無器用な優しさを受けるシジフォス。
聖衣で人前を歩くのはまだまだ慣れていない。
将来的には聖域の誰からも尊敬を受けるぐらいの存在となるのだが、今はまだ新米故かそんな感じではない。
むしろ兄の七光りで聖衣を授かったなどという陰口を叩かれたりしている。
そんな縁故がまかり通るほど生易しい世界じゃありますまいにねぇ。

気落ちするシジフォス。そのシジフォスの背中を叩いて現れるハスガード。それにアスプロス。
あの村での一件で難しい関係になったかと思ったが、アスプロスは普通にシジフォスと接している様子。ほう。
陰口を叩いていた訓練生に対し、彼らは聖衣を勝ち取ることを現実的に考えていない怠惰な奴らですとバッサリ切り捨てる。

アスプロス「才能も努力も常人並では届くはずもないのに!」
シジフォス(相変わらずキツイなァ・・・)

有難い言葉であるが、ここまでハッキリ言われると苦笑せざるを得ない。シジフォスの人の好さが見て取れます。
それはさておき、アスプロスはシジフォスの行き先がデルフォイであると聞き及び、懸念を示す。

・・・気をつけてください・・・神託なんてろくなものじゃありません・・・
絶対の神託なんて人一人の一生だって操れる。他人に決められた未来など俺は絶対に信じない!

ふむ。弟のデフテロスの件でありますかな。
双子座の宿命として別たれた2人。その定められたことが弟の一生を日陰者としてしまっている。許せることではありませんわなぁ。
シジフォスはそのことを知っているのかどうなのか。
それはわからないが、アスプロスの言葉に同意を示す。未来なんて他人から決められたくはない。

俺はお前たちと未来を作りたいよ

まっすぐに述べられるその言葉に思わず赤面するハスガードとアスプロス。おやおや。
こういったことを言えるからシジフォスは人々の心を掴むようになっていくんでしょうなぁ。

・・・おう!俺たちは必ず聖闘士になって追いつくぞ!それまでお前は・・・その未来を進め!

ハスガードのその言葉を背に受けてデルフォイ神殿へと向かうシジフォス。
森へと踏み入ったのだが、そこは濃い霧に覆われている。これもデルフォイ神殿の結界によるものなのだろうか?
その疑問を抱いているところに襲い掛かってくるものたちがいる。
殺気を感じて迎え撃つシジフォス。やってきたのは狼!
群れをなして襲ってくるが、一般人ならさておき聖闘士であるシジフォスには脅威となる敵ではない。
聖衣で風を巻き起こし、撃退する。少し起こした風が強すぎたのか、悲鳴をあげて倒れる狼たち。それを気遣うシジフォス。お優しい。

そんな様子を静かに見つめている姿があった。それは白い狼。その狼からは巨大な小宇宙が感じられる。まるで神の使いのような・・・

お優しい方で安心いたしましたシジフォス様。私はアルケス
聖域よりだいたいの事情は伺っております。この先の私たちの神託を御所望であると・・・

狼の口を借りて言葉を送る。これぞデルフォイの巫女の技でありますな。

私たちは己が魂を自然と一体化させその息吹を感じとれる。
それが故、私たちの言葉は人知を超え未来に触れることもあるのです。その未来には並の人間では耐えられぬ程の真実もある。
貴方は?未来を受け取るだけの強さをお持ちですか?

問いかけを行うアルケス。その問いにシジフォスは力強く答える。

勿論!それが未来へ続いているなら!

よい答えでありますな。それを聞き安心したアルケスは御案内しますので仲間の方といらしてくださいと言う。仲間?
疑問に思ったシジフォスに応えるように姿を現したのは・・・ハスガードとアスプロス!!
送り出してくれたはずの2人が何故ここに。ハスガード曰くまさか追い越しているとは思わなかったぞとのこと。ふむ。
いや、しかし。何故2人が既に黄金聖衣を纏っているのか・・・

実は我々も先日継承試験を終えたのです。この任務へも教皇様より追って協力せよと。

ふむ。有り得ない話ではないが・・・いや、シジフォスが地味に方向音痴で時間をかけていたなら有り得なくはないのか!?
という疑問はさておき、ハスガードのこれで一年前の誓い通りだなという言葉に相好を崩すシジフォス。
確かに。今ここで、あの時の誓い通り全員が黄金聖闘士となって同じ場所に立つことになったわけだ。これは嬉しい。
が――いきなりシジフォスの胸を殴りつけてくる2人。冗談などではない、本気の攻撃だ!!

アスプロス「まだ目先の事象しか見えぬようですね。貴方は一年前の任務の時と何ら変わっていない」
ハスガード「そしてまた誰かを巻き込むのであろうな。弱者と組むのは二度とゴメンだ」

その弱さはいずれ聖戦で枷となる。始末すると述べる2人。
おやおやこれは大変なこととなりましたな。
当然幻影を疑うシジフォス。それに対し2人は肯定も否定もしない。お前の好きなように捉えれば良い。それが真実だとのこと。

疑ったな?俺たちを・・・ならば、それはそのまま真実となろう!!

そう述べてグレートホーンを放つハスガード。吹き飛ぶシジフォス。さらにハスガードは言葉でシジフォスを追いつめる。

ハスガード「無様だぞシジフォス!!イリアス殿ならこのような失態さらさぬ!!」
アスプロス「そのとおり。貴方は誰もがうらやむものを持ちながら、貴方自身の無能のせいでちっとも生かせてはないのだ」

黒い表情でそう続けるアスプロス。こういう表情が実に似合うから困る。

そんな者は聖域に不要。と、言われてるんじゃないかと思っているのでしょう?
それが貴方の「弱さ」だ

鋭い指摘を行うアスプロス。
それが示す通り、濃霧の中から無数のシジフォスが現れる。
彼らが口にするのはシジフォスの内なる声。押し殺そうとしてきた暗い声である。

聖域は雑音と抑圧ばかりだ。遠くへ行きたい。俺でいられる場所に。
消えればいいのに。俺が要らない場所なら。俺か聖域か消えてしまえば・・・

耳を覆いたくなるような暗い考え。
それらを吹き飛ばすべく翼を振るい、風を巻き起こすシジフォス。

ケイロンズスィエラ!!!

巻き起こした風は確かに無数のシジフォスたちを吹き飛ばし、声は消えた。
だがまだハスガードとアスプロスの2人は残り、言葉を浴びせかけてくる。

ハスガード「これがお前の弱さ。これはいずれ歪んで聖域へ仇なす弱さよ」
アスプロス「貴方の弱さは聖戦において災厄を呼ぶ」

これは神託だ。消さねばならぬ

そう述べて2人は大技を放つ体勢に入る。
ハスガードの構えで大地が輝きと共に震え、空に浮かんだアスプロスの構えにより銀河が見える。
こ、これは・・・タイタンズ・ノヴァとギャラクシアンエクスプロージョンの合わせ技!?
大地と空。両方から迫り来る大技の衝突。実現したならばとんでもないロマンになりそうだ・・・!!!

が、そのロマンは残念ながら実現しませんでした。
黄金の風がシジフォスを中心に巻き起こり、2人の構えを崩す。
大きく翼を広げ、舞い散る羽と共に黄金の輝きに包まれるシジフォスはこう述べる。

・・・俺が・・・好きなように捉えた方が・・・信じた方が真実だと言ったな・・・
・・・だったら・・・だったら俺は・・・お前たちの言葉を信じない!!!
あの2人だけはいつも対等でいてくれた・・・任務で失敗しても、黄金聖衣を取っても変わらずに・・・
共に未来を作りたいと言ってくれた・・・!!

ささやかな絆であるかもしれない。だがシジフォスにしてみればそれは戦うには十分といえる絆であった様子。
その想いが自らを支える力となり、黄金の風を巻き起こす力となる。

ケイロンズライトインパルス!!!

シジフォスを中心に巻き起こった黄金の風が2人を襲う。
その威力は2人の姿を霧として消し飛ばす程の威力であった。
ふむ、やはりこれはアルケスによる幻影だったようですな。幻影とはいえダメージはしっかりある。強力な幻影だ・・・
それもそのはず。これはただの空想ではない。シジフォスの心の内を具現化させたものであるというのだ。
まあそうでなければ心を抉るような内心の呟きとかリアルには出せませんわな。

その言葉を聞き動揺するシジフォス。では自分が聖戦で災厄になるというのは・・・?
問いかけるシジフォスにアルケスは神託にございますと返答する。
なんともはや、幻影を振り払ったというのに心休まることありませんなぁ、シジフォス。

その惑いを抱えたまま更に霧の深い場所へと入っていくシジフォス。
ようやくたどり着くデルフォイの神殿。そこでシジフォスが目の当たりにしたのは――黒い射手座の冥衣を纏った自身の姿!!

これが先程の神託。貴方はいずれアテナに弓引く者となりましょう。
その前に貴方は死すべきか生きるべきか。まずはその結果を見ましょう。

そう述べるアルケス。その言葉とともに、浮かび上がっていた黒い射手座のシジフォスが舞い降りてくる。
これは・・・もしや自身と戦えという流れでありましょうか!?
勿論これは自分自身であるし、幻であることは疑いようもない。
だが神託による未来の姿。それに対する迷いがシジフォスには生まれそうな気がする。
果たして乗り越えることができるのか・・・?
そしてここで乗り越えた場合、未来への繋がりはどのようなものとなるのか。うーむ、気になる所ですな。



シジフォス編 第3話 弓と弦  (2014年 2月号)


自身が未来の聖戦の災厄となる。
黒い射手座の冥衣を纏い、血の涙を流す自分と相対することとなったシジフォス。
一体どうしてこんなことに・・・そう思うのは無理もないことでありましょうな。

世界は様々な要因の流れで出来ています。
一陣の風然り一滴の水然り。一人の人間の心もまた要因の一つ。未来とはそれらを積み重ねた結果なのです。
それ故、世界に魂を飛ばせば感じるのです。流動的に変化する事象の中でも最も起こり得る事象。未来の一片を。

そのように説明するアルケスが続けて見せるのは未来のシジフォスが幼い少女の手を引いて歩く姿。
その映像を見せながらアルケスは述べる。これは貴方が聖戦の引き金を引く姿!!と。

貴方はアテナ様の大いなる計画を妨げ、聖戦を開戦させる契機となる
そのためアテナ様は苦しみ同胞は死にます。貴方は苦悩し自ら聖闘士であることを棄て闇に堕ちます。

詳しい説明をしてくれるアルケス。おやおやそこまで教えてしまうのですか。
まあ、どの部分がアテナの計画なのか知らなければ問題はないのかもしれませんが・・・
ともかく、ここまで説明したアルケスは述べる。未来と向き合ってくださいと。そうでなければ神託の書は渡せませんと。

未来の自身の姿とされる黒いシジフォスが弓を構えている。
しかしそんな未来に向き合えるはずがないと目を逸らすシジフォス。だがそこに容赦なく攻撃が飛ぶ。

目を背けるとは余裕だな・・・英雄の弟よ。

この黒いシジフォスもまたシジフォスの精神をえぐるような攻撃をしてくる様子。
一度は偽のアスプロス、ハスガードを吹き散らしたシジフォスであるが、未来のことを聞かされて弱った心にこれは聞く。
黒いシジフォスの言葉に惑わされ、英雄の弟の俺がそんなことになっちゃいけないと考えてしまう。

この期に及んで体裁か・・・?

追い込んでくる黒いシジフォス。確かにそれはある。が、もちろんシジフォスの心にあるのはそれだけではない。

そうだ・・・こんな未来来るはずがない・・・誓ったんだ2人と・・・
この先の未来はハスガード、アスプロスたちと作る!!かき消えよ幻影よ・・・!!
ケイロンズライトインパルス!!!

風を巻き起こしながら拳を打ち込むシジフォス。この一撃で黒いシジフォスも吹き飛ばされる。
これでやっと神託の書へ向かえるようになったのか・・・?聖戦の吉凶を記した書に・・・!!

・・・もしかすればその書には・・・あの冥衣の俺のことも・・・
いや・・・未来は俺たち次第・・・!俺は絶対に間違うわけにはいかない・・・!
ここから先きっと多くの仲間が集ってくる。俺たちは最強の12人の1人として兄さんと共にその先頭に立つ・・・!
それがきっと俺の意味になる・・・!居場所になる・・・!そして・・・

輝かしい英雄になる。そのような夢を抱くシジフォス。
確かにそれが叶えば・・・ずっと欲しかった居場所を得ることが出来、英雄の弟として恥じるようなこともなくなるでしょう。
だが残念ながら・・・そうはならない。
吹き飛ばしたはずの黒いシジフォスが舞い戻りそう告げる。残念だがお前の頼る友らは・・・途中で去る。と。

今いる者が未来もいるなどどうして信じていられる。
皆去る。俺(おまえ)の起こした聖戦の渦へと。俺(おまえ)の未来は大罪人。
ケイロンズダークインパルス!!!

やはり黒いだけありライトではなくダークとなっている様子。
ああ、ライトはそっちの意味だったのか。なぜか軽い方の意味を連想していた・・・なぜか。
ともあれ、黒いシジフォスの放った一撃で吹き飛ばされるシジフォス。さらに言葉による攻撃が突き刺さっていく。

今のお前が望むものは未来に何一つない!
聖域の居場所も!頼りの友も!!兄の信頼も!!!ここで死ぬべきなのだ!!!

辛い未来が、目を背け耳をふさぎたくなるような未来がつきつけられる。
これまでシジフォスが戦ってこられた理由や夢。それらが全て未来ではなくなると言われているのだ。これは・・・厳しい。

俺は。俺は?どうして聖闘士になろうと

改めて疑問に思うシジフォス。
もっと小さい頃。聖闘士候補生になったばかりのころはもっと違う夢があったのかもしれない。
しかし・・・教皇に連れられ、異母兄弟であるイリアスと出会ったとき。
あの日から少しずつズレだした

どうやら・・・小さい頃のシジフォスは聖域の外れに住んでいたころイリアスに助けられたことがあるようだ。

初めて見た圧倒的な守る力。黄金聖闘士。俺の生きる道だと思った。
守りたい。大事な人を。あの人のような力で・・・そして、聖闘士候補生に志願した俺は彼が自分の兄と知らされた。

無邪気に一途に、英雄に憧れ目指そうと思った始めのころ。
しかし英雄の弟となったことでその道は義務が伴うこととなった。
英雄を――イリアスを目標にし、目指すというのは同じなのに、周りが見る目は同じにはならない。
いや、それは周りだけではなく自身の心の持ちようもまるで変わってきてしまうものであったりする。難しい話だ・・・

昔のことを思い返したシジフォス。
どうやらそれにより絶望に堕ちることは回避できたようだ。

・・・死んでたまるか・・・こんなところで・・・
お前が・・・未来の俺が・・・一体どんな絶望をしたのか・・・今の俺には分からない・・・
・・・だが、今の俺にも譲れぬものがある・・・
今の俺の隣にはまだ・・・ハスガードもアスプロスも・・・兄さんもいるのだから・・・!!!
今・・・任務も約束も成さず死ぬことこそが、彼らへの裏切りだ!!!

そう。例え未来にそれらが失われることになったとしても、今その約束を、期待を裏切るわけにはいかない。
そのように述べるシジフォスであるが、黒いシジフォスがその居場所への執着こそがお前を弱くしていったと述べる。

兄への劣等感も。友への依存も。聖域の雑音も全てが俺の原初の罪となった・・・!
消えろ。輝かしい未来などお前にはない。

シジフォスと黒いシジフォス。双方が弓と矢を取り出し、相手へと向ける。これが最後の勝負となりそうだ。

双方動けない・・・チャンスは一度・・・奴の弓を射る瞬間・・・!その瞬間を先にとらえねば・・・
それが見つけられなければ・・・俺は奴のいうように消えるだけ・・・!!・・・どうする?

悩むシジフォス。その時聞こえてきたのはかつてのイリアスの言葉。
目を使わず矢を射る。射手座の心の目は常に真実の一点を見出すという言葉だ。
これは思い出した言葉ではない。幻聴のように、風の音にまぎれる声が聞こえたのだ。

私の言うことが分からぬならそれでも良い。お前の心の一番望む"未来"を見出すのだ。自然のままのな

そのイリアスの言葉に従い・・・目を閉じるシジフォス。
それによって見えるものがある。標的である黒いシジフォス。その体の向こうに伸びるのは・・・一本の道。

道だ。望まぬ未来が立ちふさがってもその先の希望を見出す。
今いる友と、まだ見ぬ仲間と作る未来・・・!!!
・・・見えた。俺の貫くべき一点・・・
・・・俺は居場所を守る・・・たとえハスガードたちが去っても・・・
ハスガードたちの守ったものを・・・新たな同胞らの夢を・・・
俺は俺の大事な人たちの居場所を・・・未来を守れる聖闘士となる!!!

ついにどのような聖闘士となるのか、自身の道を見出したシジフォス。
しかしその者たちを苦しめる未来がこの先待っているのは確かである。もしその通りの未来が来たらどうするのか。

・・・お前になる・・・!・・・その時は・・・!!!
俺はこの命をもって・・・その同胞らに報いよう・・・!!!

覚悟をもって矢を射るシジフォス。その狙いは過たず、黒いシジフォスの胴体を貫いた。

命をもって報いる・・・確かに貴方は個々の人を愛せる方のようですね・・・
人を未来ごと守るその強い思いがあれば貴方は誰より強い聖闘士となりましょう。

最後にアルケスの言葉を伝えて黒いシジフォスは消えていく。どうやら試練は乗り越えることができたようだ。
これで神託の書を手にできる。任務を果たすことができる。
とにかく進まねば・・・そう考えるシジフォスであったが、ここでよく知る存在が傍で見ていることに気付く。
そこに静かに佇んでいたのは・・・兄であるイリアスであった。

・・・お前らしい風をつかんだなシジフォス・・・
そのお前に兄弟として一つ問いを投げたい。聖域を離れないかシジフォス。雑音のない大地の果てへ

兄より投げかけられたこの言葉。これは・・・どういう意味でありましょうか。
確かに雑音の多い聖域から遠ざかりたいという気持ちをシジフォスは持っていた。
だが、この試練により自身の道を見出したばかりのシジフォスにいきなり持ちかけるとは・・・どういう考えなのだろうか。
胸を病んでいるイリアスはその大地の果てへ隠居する未来が待っている。
弟もそこへと誘おうというのだろうか?それとも・・・?うーむ、興味深い問答となりそうですなぁ。



シジフォス編 最終話 約束  (2014年 3月号)


肉体も精神もボロボロになりながら自身の暗い未来に打ち勝ったシジフォス。
しかし、任務完了かと思われたその時に現れたイリアスの言葉は思いもよらないものであった。

聖域を離れないか?シジフォス。
私にはお前が聖域という森の中で悪意の風に惑わされているように見える。
それが故にお前は風や大地の声が聞こえぬのだろう。
ならば、私と共に大地の果てに行こう。私と同じ感覚で世界を見たいのならば

確かに今のシジフォスにとって聖域は心地の良いところではない。
妬みや失望。押しつぶされそうな悪意の風に惑わされてきたのがこれまでのシジフォスである。
もし兄と2人で強くなれたなら。その気持ちは確かに抱いていたものである。だけど・・・

だけど、それは――子供の頃の話・・・!!

今のシジフォスには共に歩み、共に強くなろうとしている仲間がいる。
その者たちから離れ、憧れを追って歩くのは何か違う。それに・・・

もうすぐ聖戦が始まってしまう・・・そんな時に黄金が2人も抜けるわけにはいかない・・・
それに戦力だけじゃない・・・!!英雄の兄さんがいなくなったら皆の士気が下がる!!!

道理を説くシジフォス。しかしそれはイリアスの心を動かすものではない。
まあシジフォスはイリアスの病気のことは知りませんしねぇ。
聖戦時に戦える体でいられるか分からないほど病魔に侵されているとは知る由もない。
だからこそ、これも巫女の幻影。自分を惑わすものと思って攻撃を仕掛けるシジフォス。
しかし、そんなシジフォスに獅子の拳が放たれる。

予測すらできなかった・・・こんな光速拳、幻覚なんかに放てるわけない・・・これは、兄さんの拳・・・!!!

吹き飛びながら確信するシジフォス。
イリアスは吹き飛んだシジフォスを追い、さらに信じられないことを述べだす。

お前ならば分かると思っていた。世界は人の発する雑音に満ちていると。
それは聖域であっても例外ではない。人はそれ故大地を忘れ己すら見失う。
果たして人は保護すべき存在であろうか?
神託のお前を見た。人の世界にいればお前もまた己を見失う。兄としてそんなお前を見るのは忍びない。
私の手で大地に還そう。人の世界を選ぶと言うのならば

森がざわつき始める。
イリアスが攻撃的な小宇宙をまとわせることにより動物どころか森そのものが震えているのだ。

獅子の大鎌(ライトニングクラウン)

レグルスも用いた獅子の大鎌。その名の通り、鎌のように切り裂く技である。
が、その威力。その規模はレグルスが使ったものとは比べ物にならない。
森の全てを震わすかのような衝撃。そして切り裂かれるシジフォスの胸部。このイリアスの力の前には巫女も慄いている様子。

百獣の王はその強大な力故に肉親にすら苦境を強いてしまう。それ以外の愛情表現が分からないまま
私がお手伝いできるのはここまでです。どうか弟君の未来を噛み殺さぬよう・・・イリアス様。

確かに苛烈なイリアスの愛情表現。
軽く放ったかのように見える獅子の大鎌でも射手座の黄金聖衣を裂くほどの威力があるという。とんでもないなぁ。
聖衣の生命自体に傷をつけるという獅子の一撃。早く修復しなくてはいけない・・・
が、今はそれよりもまず生き延びなければいけない。

・・・森全体が兄さんに支配されているのが分かる。
生きて出られる気がしない・・・

まさに狩られる前の獲物といった状態。いや、だがここで大人しく食われるわけにはいかない。

必ず戻る・・・ハスガード・・・アスプロス・・・俺たち・・・約束したよな・・・
3人黄金になって未来を作るって・・・!

その約束に希望を見出すシジフォス。
しかしイリアスはこう述べる。約束は自由を奪うと。

ならば風や森と共にある方がどれだけ自由でいられよう。強くいられよう

確かに自由とはかけ離れている。
約束を違えぬよう強く思えば思うほどその約束に縛られることにはなるかもしれない。だが・・・

・・・それで・・・兄さんは人間をやめるつもりなの・・・?
兄さんに憧れる人や慕う人全部捨てて・・・大地の果てのずっとずっと遠くに行って・・・大地とだけ語って・・・
・・・俺は・・・俺は・・・それだけじゃあ強くなれない・・・!
やっと分かったんだ・・・俺の目指す聖闘士・・・それは結局兄さんとは違う・・・違ったんだ・・・!!
俺は人といたい・・・!誰かといがみ合っても・・・語り合って守り合って共に未来を歩める仲間らと・・・!!!
・・・だから兄さん。俺たちはここでお別れだ・・・!!!

聖域を離れるというイリアスに対し、別れをつげて放つケイロンズライトインパルス。
巻き起こる激しい竜巻がイリアスの体を包んでいく。

兄さん・・・たとえ分かり合えなくても・・・こんな未来欲しくなかった・・・

意志を示すシジフォス。だが・・・それだけではイリアスは納得してくれない。
ケイロンズライトインパルスで巻き起こした風の中を平然と歩むイリアス。

これがそのお前の強さか。
私の心を動かしたければこれ以上の強さを見せよ。お前の天命となるほどの強さを・・・!
私の八つ目の感覚に対して

森が巨大な獅子に変じて襲い掛かってくる光景を見るシジフォス。
まるで幻覚のようであるがそうではない。これはイリアスの小宇宙そのもの・・・!!!

さぁ見せろシジフォス。
私に聞こえる大地の呼び声より雄雄しく。私に見える命の流れより純粋に。さあ。

森の木々が獅子となって襲い掛かってくる。
そのような感覚を覚えながらも前へと進むシジフォス。見据えるは未来。
かつては疎ましいと思った聖域へと帰り、仲間と共に進む未来。

見えた・・・!貫く一点・・・!矢となれ俺の小宇宙よ!!
届け・・・!兄さんへ・・・!!!兄さああああん!!

強さを示すべく、拳を握りしめて兄へと至るシジフォス。
そのシジフォスが見たのは・・・激しく吐血し、口から胸にかけてを己の血で真っ赤に染めた兄の姿であった。

勢いは止めることができず、イリアスを殴るシジフォス。ただその拳は緩められている様子。
それでも、その力の入っていない拳でも大地に倒れ伏すイリアス。
肺病という病魔に侵され、体力を失ったイリアスにはこれが限界であるということか・・・

よくぞ迷いを払い射手座の目をもって私に一矢報いた。これでもはや聖域に思い残すことはない。

ついに兄の病を知ったシジフォス。
ついに弟を認め、満足した様子のイリアス。
涙するシジフォスを前にイリアスは静かに語る。

人には天命がある。私の体はこのまま肺から病に蝕まれて死ぬ。
・・・だが、私は私の力と感覚を聖域に残さねばならん
・・・だが、私は私を作る方法しか知らぬ。
私を作るには雑音のない、ただただ大地に近い場所でしか出来ぬ。
私は聖戦も聖域も捨てる気はない。必ずや別の形で聖域へ舞い戻ろう

それは受け継がれる意志。力と感覚。
自然に囲まれた雑音の無い場所で、獅子は子を育て・・・そして意志を受けついだ獅子は聖戦で活躍することとなる。
仲間と共に未来へ進むというシジフォス。イリアスはそれに参加は出来ないが、それでも別の形で共に戦おうとしてくれている。
うーむ、やはり不器用な愛情表現ですなぁ。しかしさすがに英雄らしい意志の強さもまた感じます。

兄弟の戦いは終わった。
それを見届け現れるアルケス。デルフォイの神託の書をついにシジフォスへと託してくれる。
長く辛い戦いであったが、ようやく任務を果たすことができたわけでありますか。
これが此度の聖戦の役に立てばよいのだが・・・

なァ、アルケス・・・未来は明るいのか・・・?

その答えがどのようなものであれば、シジフォスに未来から目を背けるという選択肢はない。
けれどもやはり尋ねずにはいられなかったようですなぁ。
だからこそか、アルケスは柔らかな笑みを浮かべてこう答える。

・・・さて。未来は現在の事象の積み上げ。今こうしている間にも枝分かれして未来は無限に広がります。
私たちの語る未来はその中で可能性が高い一つの断片。本来、未来は貴方方しだいなのですよ

預言は確かに未来を示している。けれどもその未来に本当に辿り着くとは限らない。
辛い未来を見たとしても、それを変えられると信じて進むことができれば・・・
辛い未来をも乗り越えると決心したシジフォスにしてみればそっちの方が楽なことでありましょうな。

兄さん・・・俺・・・待つよ。いつか大地の果てから帰る兄さんを・・・
・・・それまで俺はハスガードたちと聖域を守る。聖域という・・・人の世界で。
それを約束にして欲しい・・・!兄さん・・・!!!

シジフォスのその言葉に、約束もいいなと返すイリアス。
自由を奪う約束。だけど、人が人でいられるためにはそういった縛るものも必要なのである。
広大な大地に、自然に溶けて消えることのないよう自己を律するものは必要なのである。

人間の強さを教えてやってくれ。新しい私に

イリアスもまたそれが分かっているのでシジフォスにそう頼んでいるのでしょうな。
自然の中でこのイリアスと育つ。それだけではどんな子に育つか分かったものではないですからなぁ・・・
いや、まあそれで出来上がったのがレグルスという子だと分かってはいますか。思ったよりはまともに育ったものだ。

さて、神託の書を無事に教皇のもとへと持ち帰ったシジフォス。
描かれていたのはイタリアの小さな町への地図。
なるほど。この聖戦におけるアテナ生誕の地でありますな。
まあそれがそうとは全く描いていないので、意味を理解するまで10年以上かかるわけでありますが。不便な話だ。

不便な神託よりももっと確かなものがある。
イリアスが死に、その息子であるレグルスは行方不明となった。
そんなある日、射手座の聖衣が共鳴音を発する。そう、獅子座の聖衣に呼ばれているのだ・・・!!

未来は動き続ける

イリアスの言葉通り、力と感覚を受けついだ息子が聖域に帰ろうとしている。
シジフォスは兄の言葉を受け、レグルスに人間の強さを教えることとなるのでしょう。
そして父の意志を受けつぐレグルスは聖戦で重要な働きをしてくれることとなる。
例え故人となったとしても未来を託すものがいる。未来を紡ぐとはこういうことでありますか・・・

というわけで、シジフォス篇はこれにて終わりであります。
すれ違っていた兄弟。しかし最後には理解し、絆を交わすことができた。良かった良かった・・・

さて、次回からは双子座のデフテロス編が開始します!!
やはりトリを飾るのはシオンか。そしてやはりデフテロスの方の話となるようですな。
だがデフテロスが黄金聖衣を纏うのは聖戦が始まってからだったと思ったが・・・どのような話になりますのか。
期待して待ちたいと思います。




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