蒼天紳士チャンピオン作品別感想

聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝
第50話 〜 第62話


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連載中分

 聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 バックナンバー

聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝 7巻


レグルス編 第1話 魔眼のバロール  (2012年 11月号)


地上最強の聖闘士たちの銀河神話。金色の獅子編開幕!!

いきなりピンチの状況に追い込まれている男の場面から始まるレグルス編。
男にはコナーという娘がいる。
男は昔、娘に神話を語った。大半は失われているが、妖精も神々もいつも私たちの近くにいるのだよ、と。
そう、光の神ルー様も近くにおわしめされるのだ。

今こそ・・・力をお貸しくださいルーよ・・・この・・・魔眼を打ち砕くために・・・!!

剣を持ち、通路一杯に広がり浮かぶ眼に相対しようとする男。
しかし、その意志も虚しく、魔眼の前にやられてしまった様子。嗚呼・・・

場面は転換し、館から荒野へ。
馬を必至で走らせる少女と、その少女を追う騎士の姿がある。
少女の名前はコナー。騎士はファリニシュ。コナーに従う侍従のようである。

コナーは地方の古い風習で作法の躾のために他人の家に預けられていた。
それが先ほど、生家が何者かに襲われたと瀕死の雇い人が養母の家へ駆け込んできた。
そして混乱の中、父様と母様の生死は確認できなかったという。

・・・そんなの。嘘だって言ってほしいよ。父様・・・母様・・・!!

涙を流し、生家に向かって馬を走らせるコナー。しかし、その手綱がいきなり切れる。
落馬するコナーであったが、後を追っていたファリニシュが地面に落ちる前に受け止めてくれます。
見る見る間に遠ざかるコナーの馬。
これでは生家に向かうこともできませんな。
近頃はこの近辺は危険だしこのまま帰りましょうと申し出るファリニシュ。明日また改めて皆で参りましょうとのこと。

しかし、そうはさせじと怪しげなフードの男たちが登場。
この男たちは先ほど怪しげな力を用いてコナーの馬の手綱を切っていた。
怪しい風体の上に怪しい力を用いるとは怪しいことこの上ない。相手したくないのでさっさと去ろうとするファリニシュ。
正しい判断ではあるが、さすがに簡単には逃してくれそうにない。
掌から生み出された炎が壁となり、ファリニシュたちの進路を遮る。

まさか・・・ヤツら、魔術師(ドルイド)か・・・!!

ドルイドとは、ケルト人社会における祭司のことを指す。
ゲームなんかでも時おり出てくる職業名だったりしますな。

普通の野盗ではないと知ったファリニシュ。馬の手綱はコナーに任せて剣を抜く。
その剣技はドルイドの放った炎を切り裂くほどだと言う。す、鋭い・・・!!

私の名はファリニシュ。コナー様を護ることを障害の誓約(ゲッシュ)とした者よ!!

中々に格好のいい名乗りである。
ちなみにファリニシュは女性である。言われて見れば凛々しいながらにいい体つきをしてますな。

ライトニングスレイ!!

一瞬のうちに2人を切り捨てるファリニシュ。
近づいてしまえば魔術師が騎士に勝てるはずもないと言う道理ですな。数は多いけども。
人数差があるので無傷で勝つのは難しいかもしれない。
とはいえ、突破口は開けた。なのでコナーを駆け抜けさせようとするファリニシュ。
だが、フードの男たちがその真の力を発揮する。
フードをあげたとき、その素顔に現れたのは肥大した左目。
その左目に睨まれることで、コナーやファリニシュの体が強張り動けなくなる。

お前たち・・・その眼と文様・・・まさか・・・魔眼・・・?バロールの魔眼か・・・!!!!

バロールの魔眼。これも時おり聞く言葉ですな。
バロールとはケルト神話に登場するフォモール族の魔神である。ほう、ケルト神話。
ケルト神話といえば、クー・フー・リンやゲイ・ボルグなどが有名。
まあ、ケルト神話というより、上記の2つが有名といったところであるか。
そういった微妙にマイナーなところの神話が取り扱われるのは楽しいものがありますな。
ちなみに光の神ルーもケルト神話の神である。

神話の時代、この土地に栄えたダーナ神族をその力によって従属させたフォモール族の王、バロール!!
その眼の魔力は嵐を巻き起こし、大海すら一瞬で火の海にするほど強力だという。

そのバロールの魂が復活した。
幾多の命を流れ渡ると言われているようだが、それはどういう意味なのか・・・?

ともかく、バロールが復活し、その力で世界を支配するにはコナーが邪魔になるらしい。
なので、確実に始末しようと炎を放つドルイドたち。
体の自由を奪われている2人では避けることもかばうこともできない。万事休す・・・!!
と思われたとき、駆けつけた者がいた。
はだしで野を駆け飛び込んできたのは、少年。
黄金に輝く箱を背負った小さな少年であった。
少年は素手でドルイドの放った炎を打ち払いコナーを助ける。

女の子を寄ってたかって苛めるやつは悪党だって、シジフォスって奴が言ってたぜ、おっさん!

そ、そうか。まあ間違ってはいないな。
助けた後に、少年は尋ねるコナーって子知ってる?と。
どうやら聖域からの初任務としてコナーの護衛に派遣されたらしい。
道に迷って駆けずり回っていたようだが、ちゃんと目標を発見することに成功した様子。
向こうから近づいてきてくれててラッキーでしたな。

あんたが俺の護る奴か!よろしくな!!

元気よくそういい、握手を求める少年。
いや、今は体が強張ってて応じれないんですけど。
というか、敵がまだいっぱいいるのに何を呑気な・・・!!そりゃ状況をよく見ろと怒られるわ。

あーそっか!そうだよな!ゴメン!

言うが早いか、彼は一瞬でドルイドたつに向き直り――彼の拳が一瞬強く光ったように見えた。
それはまるで――まるでルー様の五条の光のようだった。彼自身も。

ライトニングプラズマーッ!!

素手で放ったとはいえ、必殺の奥義である。
雑魚のドルイドにはたまるはずもなく、一撃でやられて逃げ帰ることとなりました。
ドルイドを追い返した少年は、服で手をぬぐいながら改めて握手をするために手を差し出す。ゴシゴシ。

それじゃあ・・・改めてよろしくな、コナー!
俺はギリシャの聖域からやってきた!!
レグルス!獅子の黄金聖闘士!レグルスって言うんだ!!!

なんだか・・・彼の底抜けに明るい笑顔を見ていると・・・

力が抜けたのか、その場にへたり込むコナーでありました。可愛い。慌てて駆け寄るファリニシュ。
ファリニシュはどうやら聖域のことについても知識がある様子。
コナーの家は聖域と古くから親交があり、コナーの父の依頼で派遣されてきたのではないかと推察する。

ですが!聖域から派遣された者があんな子供とは思いもよりませんでした!!

お堅い騎士様っぽく、苦言を呈するファリニシュ。
一方のレグルスは蝶々に気を取られてフラフラしていた。こりゃ言われても仕方ないわ!!

聖闘士であるだけその実力は認めるが、何だその集中力のなさは!?
道に迷って任務の場所に辿り着けないなど言語道断だ!!
おまけにその泥だらけの格好はどうしたんだ!?

全くごもっともな説教でありますね。
そういえばレグルスの格好は、マニゴルドさんやアルバフィカが着ていた服に似た感じに見える。
黄金聖闘士が外出するときのフォーマルな衣装なのでしょうか。
まあ、上着はなく、靴も脱ぎ捨てられていてフォーマルの欠片もなくなっていますが。
というか、聖衣の箱にかけていた布はどうした?それも途中で放り捨てて来たのか!?

初任務ということもあるのだろうが、何ともはや。
ファリニシュも教皇様にとって我々の任務はとるに足らないということかとお嘆きの様子。
まあ、黄金聖闘士が派遣されたのだし、気にはかけてるってことですよ。多分。

ともかく危険は払われた。
ので、今日は一度もどりましょうと改めて申し上げるファリニシュ。
その言葉に対しコナー。レグルスの服の裾をぎゅっと掴んで尋ねる。足、速い?と。
それに対し、あの馬よりは速いと応えるレグルス。そりゃあそうだ。

ファリニシュ・・・ゴメンね!

心の中で謝罪するコナー。
そのコナーの頼みを受け、レグルスはコナーの体を抱えて走り出す。困ったお嬢様だ。

屋敷のどの馬よりも速く駆けるレグルス。コナーは驚きながら、なんでこんなに速く走れるのか尋ねる。
その質問には、聖闘士の修行をしてたらいつの間にか、かなとの答え。
まだまだ少年だと言うのに、どんな修行をしたらこんな風になれると言うのか・・・

うん。でも俺、色んなこと分かんないし。それに探してるものもあるから、まだまだ強くなるんだ。

そう述べるレグルス。そのレグルスが探しているものとは?

死んだ父さん!!!
父さん言ってたんだ。自分は世界の何処にでもいるって。風にも大地にも植物にもいるって!
だから俺、いつも見逃さないように目を凝らして見て全部覚えるんだ!風も大地も敵も!!
そうやって覚えて強くなっていけば、いつかきっと父さんに近づいていける!

そう夕日で笑う彼が眩しすぎて、私は顔を伏せてしまう。
私も父様をちゃんと見つけなきゃ。そう言いながら涙を零し、顔を伏せるコナー。

やっぱり彼は父様が呼んだ光の神様からの使いなのでしょうか。

信心深い子ですねぇ。コナーは。
まあ、バロールの存在も出てきましたし、信じないわけにもいかないか。父の教えがよかったとも言えるかな。

さて、そのコナーの生家では、家を襲った男たちがコナーたちを待ち構えていた。
グラスを片手に持つ顎ヒゲの男と、先ほどの襲ってきたフードの男たち。
そして、物言わぬ骸と化したコナーの父、モリアスの姿があった。

顎ヒゲの男の名はクルワッハ
左目に回りに大層な飾りの装飾をつけていることから、魔眼の持ち主であることは知れる。
クルワッハ曰く、野盗に殺されないようにコナーを迎えにやっていったとのことであるが・・・
思いっきりあのドルイド殺そうとしてませんでしたかね?
野盗に殺されるのは困るが、自分たちで殺すのは問題ないってことなんでしょうか?
生死はさておいて、血さえあれば問題ないってことなのかもしれんな。

アテナの聖闘士が現れたと報告するフードの男たち。
そのタイミングでやってきたのは、黄金聖衣に身を包んだレグルス。
おぉ。まさか途中の邪魔もなく一直線に辿り着くとは!!

クルワッハはコナーの知り合いだった。
が、バロールの復活のためにコナーの家の血を捧げようとしている様子。

あとはお前を殺して血を頂けば世界は私のものよ!!このバロールことクルワッハのな!!!

やはり血が目的だったのですね。
ん、そうすると今グラスに満たされているのってモリアスの血だったりするのか・・・?えげつない。

もういいよコナー!
・・・俺、あのおっちゃんが何言ってるのかよく分かんないけど、コナーが今凄く哀しいのは・・・よく分かる。
だから泣くなコナー!あいつは俺がぶっ倒す!!!

父を亡くした少女の涙に、レグルスの闘気が燃え上がる。
いきなりラスボスと思しき男との対面を果たしたレグルス。
これまでの構成とは違ったホットスタートでございますな。
しかしこれは、一度敗退して出直すフラグになるかもしれない。
バロールの魔眼。その力はどういったものなのか。奥底が知れない。
あらゆる相手を見るレグルス。そして目によって力を行使するバロール。この組み合わせの相性はいかに!?

そういえばクルワッハってクロウ・クルワッハのことなんですかね。
これもケルト神話に登場する神の名前で、バロールに生み出された暗黒竜との説がある。
ふうむ、色々と元ネタが使われていて楽しい感じですなぁ。
レグルスの暴れっぷりに期待するとしましょう。少年少女の淡い感じの物語にも期待だ!!



レグルス編 第2話 闇の魔人と光の使者  (2012年 12月号)


目の前で父を失う哀しみ――その聖闘士は誰よりもそれをよく知っていた――

センターカラーで完全武装のレグルスが猛り吠える!!
俺があいつを・・・ブッ飛ばす・・・!!!

騒ぐガキは好かん・・・が!魔眼復活の祝いに女神の聖闘士を血祭るのも良い――光栄に思えよ小僧!!

バロールの力を操るクルワッハもまた戦闘態勢に入る。
今、闇の力を振うバロールに対し、幼い黄金聖闘士が戦いを挑む。
思うのは父を目の前で失ったコナーのこと。

涙・・・いっぱい出てる・・・そりゃそうだよな・・・自分の父さんが目の前であんな風に死んで・・・
俺もそうだったっけ・・・ただ泣いて、その時の事ばっかくり返し思い出して・・・
それって凄く苦しいから。そんな思いして欲しくないよ・・・!!

ライトニングボルトーッ!!

レグルスの拳が強く輝く。単純ながらも力強い獅子の一噛み。決まれば一撃必倒の威力を持つ。
のだが、さすがに今回の敵は侮れない。
手にしたワイングラスの中身を巻くと、その中身がタールのような濃い闇となってレグルスの拳を遮る。
闇の幕は渦を巻き、レグルスの腕を捕らえたまま離さない。
そしてさらに闇は広がってくる・・・

どうにか腕を闇から引き抜くレグルス。
しかし、闇に覆われていた右腕は聖衣の生命力が奪われたのか黄金から灰色に変じてしまっている。おおぅ。
さすがに神の力を振うだけのことはある。こうも簡単に黄金聖衣を害するとは・・・
これにはレグルスも動揺の色を隠せない様子。
しかし、そうやって動揺している間にもバロールの闇の眼球は大きく広がっていく。

この闇の眼球は全ての光、温かみを飲み込む。お前のその忌々しい黄金色の光もな。
一片の光も私の視界に入ることは許さん。全て塗り潰す・・・っ!!

大きく広がる眼球は自らの信徒たちをも巻き込んでいく。
巻き込まれた信徒たちは生命力を吸われているのか、悲鳴をあげながら灰色へと姿を変じていくのであった。

このままではクルワッハに近づくことすらできない。
それに、側にはコナーがいる。巻き込まずに戦える状況ではない。
眼球がはじけて中の闇があふれ出したのを機に、コナーの手を引いて一度撤退しようと動き出すレグルス。
とにかくコナーだけでも安全な所に連れて行かないといけない。
だが、レグルスの横を伸びる細い闇。それが廊下の先でクルワッハの形に実体化する。先に回られた!?
そして細い通路で逃げ場がない中、前後から闇の波が迫り来る!!

絶体絶命の危機に陥るレグルス。
一方、そのレグルスを単身で派遣させた聖域は教皇の間。
シジフォスは教皇セージの前で黙って跪いている。どうやら初任務に赴いた教え子のことが心配らしい。過保護なことですな。

師であるシジフォス。レグルスの実力はさすがに疑いようもない。
2年という超人的なスピードで黄金聖衣を手に入れたわけですからねぇ。
だが、懸念があるのはその精神の未成熟さ。
7年前にレグルスの父が冥王軍に討たれ、それからシジフォスが発見する2年前まで。
レグルスは独り森の奥で父の形見である獅子座の聖衣とのみ過ごしていたという。

純粋ではあるものの彼は人の世を未だ知りません。任務はまだ早いかと・・・

心配するシジフォスに対しセージ。だからこそ見えるものがあろうと答える。

レグルスに向かって貰ったのは私と古くから付き合いのある家よ。
あの土地には異教としてもはや詩や口伝にしか残らぬ神々が数多くいる。
それらの中でも・・・魔眼バロールと光の神ルー。

我々の側にある体ある神々と違い、今や彼らはその土地に精霊として融け込み、
地下の楽園にいるとも命の循環にいるとも言われておる。
だがその力は絶大よ!
その中でもバロールの魔眼は一国をも滅し、伝え聞くその力はもはや――最強の兵器と呼ぶにふさわしい。

それ程強力な神を呼び起こそうとする者がいる。見過ごすわけにはいかぬとセージ。
しかしそのような恐ろしい神の潜む土地とあっては未熟なレグルスには荷が重いのではと危惧するシジフォス。
すぐこのシジフォスをと進言するが、セージはそれを容れない。

だからこそ言ったであろう。シジフォス。あの子は目が良い。曇りないということよ。
彼はその目で多くを見るであろう。不可思議なものも現実の人の心も。

レグルスならば精霊として溶け込んだ神々も見ることができるということでしょうか。
そしてまた、人の心も見通し成長することができるはずと信じているのでしょうか。
曇りなき純粋さは危うさもあるが、送り込んだのはセージの旧知の家である。
そこに住む人々のことを知っているからこそ、安心して送り込めているのかもしれませんな。

とはいえ、現状のレグルスは大ピンチ。
闇の波をまともに浴びたレグルスは息も絶え絶えになっている。
だが、それでもコナーだけは守ろうとその両腕で高く抱え上げている。大したものだ。
しかしやがて全ての生命力を奪われることになる。黄金聖衣ごと。一粒の光も残さず干からびることとなる。

全身を灰色に染め上げられるレグルス。
そのレグルスが抱えたコナーのもとに近づくクルワッハ。
細い腕を掴み、その血を頂こうとしています。腕から採血?意外と紳士的なんですね。
いや、持ち上げただけで首筋ががら空きになってるし、かぶりつく気かも知れない。
そっちの方が絵的には映えるかもしれないがどうなんでしょうか。
変態的かもしれんがクルワッハおじさんならそれでもいいんでないかね?

暗いな・・・何も見えない・・・
目も凝らせない・・・これじゃあ父さんどころかコナーも見つけられない・・・
あ?光だ。一粒だけ。良かったあれに届けば全部見えるかも?
待っててコナー。あの光に届けば。

光に向けて勢いよく腕を伸ばすレグルス。
その結果、その右拳がクルワッハの胸に叩き込まれることとなった。ドン!!

あれ?当たってる・・・俺・・・あの光つかもうとしただけなのに。
?何か・・・拳の中に・・・

疑問に思うレグルス。だが一撃を叩き込まれたクルワッハは激昂。
バロールにとって光は災厄。ならば2人まとめて飲み込んでくれる!と力を解放しようと動き出す。
だが、ここで救いの手は現れた。
廊下の窓を馬に乗ったまま突き破り参上するのは・・・コナーの従者、ファリニシュ!!

レグルスはコナーをファリニシュに預けようとする。
が、バロールの闇はそのレグルスの行動を妨げる。
何というていたらくなのだと毒づきながら、ファリニシュはレグルスとコナーの両方を抱え馬を飛ばす。
廊下を走り抜けるのではなく、別の窓を破って逃げ去るファリニシュ。なかなか賢い。
屋敷の中ならともかく、外には星や月の灯りがある。バロールの闇も広げるのは難しいのでしょう。

取り逃がしたバロール。まだこの体、馴じんでおらぬかと独りごちる
ふむ、肉体はクルワッハおじさんのものだが、精神は完全にバロールのものとなっているってことなのかな?
体を馴染ませるためにはコナーの家の血が必要になっているとかそういう話なのでしょう。

自身でファリニシュたちを追うのは難儀であると考えるバロール。
ならばと闇を渦巻かせ、そこから裸体の女性を産み出す。

魔眼バロールの名において命じる。あの光の血筋の娘とアテナの聖闘士を追え。妖精バンシーよ。

おっと、ここでバンシーでありますか。
ファンタジー系のゲームでモンスターとして出ることもあり、それなりの知名度のバンシー。
ケルト語のフェアリーの女という意味の言葉から来ており、古代アイルランド語では嘆きの妖精と訳されているそうな。
その泣き声はありとあらゆる叫び声を含めた凄まじいものだという。
なるほど。確かにさっそく涙を流しておりますな。
ちなみに、生まれでた時は裸体だったのに半回転しているうちに鎧が生成されていました。
うむまあ、しょうがないよね。しょうがない・・・

バロールはバンシーに追撃を任せて身体の修復に入るとのこと。
意外とレグルスが叩き込んだ一撃のダメージは大きかったみたいですね。さりげなく血も吐いてたし。
しかし、闇の力を解放したバロールの肉体は顎のヒゲが消えたせいかやけに格好良くなっていますな。手強そうだ。

さて、無事に逃げ延びたレグルスたち。
身体を灰色に染めていたはずのレグルスが意識を取り戻す。その身体と聖衣は元の輝きを取り戻しています。
不思議に思うレグルス。そのレグルスに対し、守ってくれてありがとうと述べるコナー。ふむ、よい感じですな。
しかし、その次に待っていたのはファリニシュによる修正。

この大馬鹿がーッ!!!

平手どころではなく、指を鳴らしてからの拳の一撃。バキッと音がし、レグルスが鼻血を流すほどの威力だ。

結果無事だったから良かったものの・・・考えなしにコナー様を危機にさらしおって・・・
コナー様は私が生涯守ると決めた方・・・この方に何かあれば私も命断つ覚悟よ!!!
お前達アテナの聖闘士もそのはずだろう!!?恥を知れ!!!!

ファイリニシュの怒り。レグルスもファリニシュが来てくれなければコナーを守れなかったことは分かっている。
それにコナーの父の仇も取れていないのだし、殴られても仕方のないことと考えている様子。
そんなレグルスにコナー。手にしていたお守りを見せる。
これはコナーの父のお守り。どうやらレグルスの右手に握られていたらしい。
なるほど。レグルスが闇の中で見た光。手を伸ばした光はこのお守りだったんですね。

・・・見える?これには魔術で光の神様の加護と光の精霊が宿ってる。貴方はそれに助けられたのよ。
だからね、あの闇の中で貴方がこれを手にしたってことは偶然じゃないって。
やっぱり貴方は光の神様の使いなんだって、私思っちゃったの。

笑顔でそのように述べるコナー。
レグルスは先ほどのありがとうという言葉に続き、こんな風に人に頼られるのは初めてという感じで嬉しさを見せる。
・・・でも、やっぱりそれだけじゃダメだ!!

ファリニシュ!ここの奴らって皆魔術師みたいに魔術使えるのか?

その問いにファリニシュ。皆というわけではないが、自分も得意ではないものの扱えはすると答える。

・・・俺にその魔術教えてよ!ちゃんとコナーを守れるように!

なんとレグルスが魔術を!?これは思っても見ない展開になりました。
魔法といえば頭のいい印象のある技術だが、果たしてレグルスに扱えるのか?
いやまあ、学問形式の魔法というより、精霊の加護を得るって感じの魔術ですからねぇ。
大事なのは頭の良さより精霊と通じ合える感覚。センスが大事な気がします。それならレグルスの得意分野だ。
というか聖闘士にしてみれば感覚を研ぎ澄ますのは基本中の基本ですものね。
そう考えると、精霊と通じ合っての魔術というのも小宇宙の原理が働いているのかもしれませんな。

ファイリニシュがレグルスに何かを教えるというのはあるかなと思っている。
なんせファリニシュの持ち技がライトニングスレイでございましたからねぇ。
ライトニングなコンビネーションが炸裂する展開が待っているのかどうか。
基本的には1対1になることが多い聖闘士だが、神相手ならそうも言ってはいられないでしょうしね。期待です。



レグルス編 第3話 父の影、その先の光  (2013年 1月号)


バロール打倒のためにコナーの従者ファリニシュから魔術を学ぼうとするレグルス。
だが、それはさすがに容易なことではなかった様子。

全く!聖闘士に一度見た技は二度と通用しないと聞くが・・・お前はいつになったら魔術を理解するんだ?

あ、その設定はやっぱり生きているんですね。
かなり特殊な聖闘士しか有効じゃない設定なのかと思ってました。

もう一度と頼むレグルスに応えて剣を掲げるファリニシュ。その剣に光が曲線を描いて集っていく。
目を凝らしてその様子を見るが、どうして光や闇が形をもって襲ってくるのか分からないレグルス。
バロールにやられたのも襲い来る闇の波をどうすればいいのか分からなかったからだ。
このままではあんなに自分を信じてくれているコナーを守れない・・・焦りをつのらすレグルス。
そこにファリニシュの魔術の光が襲い来る。うわぁ!!

光をじっと見つめていたために目がくらんでしまったレグルス。そりゃそうなりますわな。
そんなレグルスに、お前は目をアテにしすぎだと言うファリニシュ。

魔術はパワーやスピードでどうにかなるものじゃない!
精霊の力を借りて起こす、本来起こりえない現象なんだ

まあ、魔術というのはいわゆる奇跡の技ですし、本来起こりえない現象というのは間違いないでしょうな。
実のところ、ファリニシュも魔術に明るいわけではない。
今使用した閃光斬もファリニシュの剣ライトニングスレイブに宿った精霊の御技によるものとのこと。
へぇ。その剣は精霊が宿ってるんだ・・・それはそれで興味のある話だな。

精霊はこの世界を廻り、風や火や命を生み出す者らよ。その流れを見ることは世界の根源を見ることなのだ

世界の根源・・・精霊・・・
それはレグルスの父が残した言葉。自身はどこにでもいる、風の中にも大地の中にもいるという言葉に似ている。
コナーの父はこんなことを言っていた。死んだ人の魂は豚とか白鳥の口から入って次々生まれ変わるのだと。
その生まれ変わる先は人間とは限らない。人間以外のものに生まれ変わることもある。

きっと、この世界はそうやって紡がれた沢山の人の魂や精霊の織物なんだよ

なかなか詩的な表現ですねコナー。
でも子豚になった父様も可愛いかもという発言は如何なものかと。そんな可愛い子豚をいずれ食べるというのかよ!!
いやまあ、それもまた命の循環ではあるのでしょうが・・・考えると怖い話になるな。
というか、コナーのこの発言も気丈に振る舞おうと無理して出てきた言葉でしょうし、突っ込むほどのことではないかな。うん。
気丈に振る舞うコナー。気遣うレグルス。
無理はさせたくないが泣いているよりは笑っていて欲しいと思うレグルス。
なんとも複雑な話だが気持ちはわかる。なんとも初々しいやりとりですなぁ。

ファリニシュが見回りに行き、目がくらんだレグルスとコナーの2人が残される。
そんな夜の森に人の泣き声のような風の音が響く。ううむ、なんとも不気味な感じでありますなぁ。
レグルスも小さい頃怖かった夜の森を思い出しているようだ。
と、そこに突然黒髪の女性が現れる。2人のすぐそばで何かを川に浸しながら泣いている女の人。

女の人・・・?そんな・・・俺、なんの気配も感じなかった。

驚くレグルス。コナーは泣いている女の人に近づこうとして、見てしまう。
女の人が川に浸していたのは・・・ファリニシュ!!
腹に剣を突き立てられ、川の水を赤く染めているファリニシュの姿がそこにあった。

突然の光景に泣き叫ぶコナー。父に続き、大事な身内といえる従者のファリニシュまで死にそうになっている。
これは気丈なコナーであってもきついものがありますわな。
そんなコナーとは全く違う音色で泣き続ける黒髪の女の人。おぉお・・・おぉお・・・

哀しいわ・・・戦士の死って本当に哀しい。それを悲しむ貴方の気持ちもなんて哀しい・・・
戦士の鎧はどれだけ洗っても死がとれないの。
貴女の白いドレスも、その隣の坊やの黄金色の鎧ももうまっくろ。貴女達はきっと死ぬから。
だから沢山哀しんであげる。このバンシーのシェリーがね・・・!!

出てきましたなバンシー。
ちゃんと個体名が与えられているとは、なんとも手ごわそうな相手である。
バロールと同じ闇の波動を纏うバンシーにレグルスはいきなり攻撃を仕掛ける。ライトニングプラズマーッ!!!!
だがこれは通じない。拳はバンシーの体を突き抜けるが、まるで手応えがない。

・・・酷い子・・・急に攻撃してくるなんて・・・胸が張り裂けそう。あぁあ。あぁあ。
ほら溢れてきた。涙と哀しみと・・・闇・・・

ラメンテーションレイン!!!

零れた闇の涙を掌に集め、それを弾丸のように圧縮し、無数に分散させて飛ばす。
黄金聖衣で守られているレグルスであったが、それごしでも強い衝撃を受ける技だ。
コナーを守りながら戦わねばならないレグルスにとって、これはかなり厳しい。とにかく安全な場所に退避させないといけない。
水底に沈みそうになっていたファリニシュとコナーを抱えて森の奥へと逃げるレグルス。
なんだかここ最近連続で逃げ回ってますな。まあ、致し方ないが。

馬鹿な坊や・・・・・・逃げられやしないのに。
あんな元気な子供を殺すのは哀しいわ・・・きっと沢山泣いちゃう。
フフフッ・・・でも、それとっても気持ちいいィィ・・・

歪んだ笑みを見せながら泣き声をあげるバンシーでありました。うーむ、危ないなぁ色々と。

ファリニシュは腹を刺されていたがまだ息はあった様子。
止血を済ませたレグルスはファリニシュをコナーに託し、バンシーに立ち向かおうとする。
が、しがみついてそれを止めようとするコナー。気丈に振る舞っていくのもさすがに限界があるか。

やだァ!!レグルス!!・・・無茶だよ。目立って見えてないのに・・・いなかいでよ。一人にしないで。
・・・本当はね・・・あたし父様が側にいるなんて全然思えないの。
父さんみたいにファリニシュやレグルスがいなくなるなんてヤダよ・・・!!
・・・弱くてゴメンね・・・側にいて欲しいの・・・っ・・・

泣きながらそのようなことを述べるコナー。
うーむ、結構これは男殺しなセリフでありますよね。
可憐な少女に側にいて欲しいとか言われたらねぇ。そりゃあなた。ねぇ?

しかしレグルスは笑顔を見せてこう述べる。コナーありがと。頼ってくれて。と。

1人置いてかれるのってヤだよな!俺もね、昔狩りに行く父さんに側にいてってずっと泣いてた。
でも父さんが死んでから俺、怖くても泣かなくなった。もう誰も守ってくれないって分かってたから。
だけどね、コナーは泣いていいんだ。俺が守るから
必ず戻るよ!そしたら沢山笑って!

満面の笑顔でそう伝えるレグルス。
うーむ、これは逆に女殺しのセリフでありますよね。
純朴で真摯な少年に笑顔で俺が守るからとか言われたらねぇ。そりゃあなた。ねぇ?
コナーも、うん!!と頷くしかないってもんですよ。そりゃあね。

コナーとファリニシュを置いて夜の森を駆けるレグルス。想うのは父の見ていたものについて。

・・・父さん・・・獅子座の聖闘士だった父さん。ずっと俺を守ってくれた父さん。
夜の闇の中でもいつも、何かを見つめていた父さん・・・父さん。何を見てたの?
どうすれば父さんみたいに人を守れるの?

悩みながらもとにかく拳を振るうレグルス。
しかしやはりバンシーの体に痛痒を与えることはできない。まるで水を殴っているかのように弾けるだけである。
こちらの攻撃は効かず、一方的に相手の攻撃を浴びることとなるレグルス。
このままではコナーを守れない。どうすればいいのか。近づきたいよ・・・父さん・・・!父さん!!!

ラメンテーションレインに押されて吹き飛ぶレグルス。
倒れ伏した状態で、ようやく光に眩んでいた目が見えるようになってきた。
大地に横たわった状態で見えるのは草の節や根、土、虫、俺。闇。

・・・父さん。コナーが言ってたんだ。精霊はこの中を廻ってるんだって。
父さんは見えてた?そいつらの通り道。父さんはこの中にいるの?目をこらしたら見える?
世界の根源

目をこらした結果なのかどうなのか。
レグルスの目は一瞬ではあるが、確かに世界の根源を捉えていた。
木や葉などを駆け巡る精霊の通り道。二重螺旋を描くようなその道はまさしく生命の廻り道といったところか。
しかしこれは本当に世界の根源の姿だったのだろうか?
ただのイメージだったか、朦朧とした視界の見せた幻覚だったのか。

よく分からないけど、これが精霊の廻る道だとしたら・・・こいつの闇は、こいつの使う闇の精霊は・・・

再び目をこらし、バンシーの宿す精霊の廻り道を見るレグルス。見えた!あれを断ち切れば!!

獅子の大鎌(ライトニングクラウン)!!!

薙ぎ払うようなレグルスの右拳がバンシーの胴体を切り裂く。
いや、胴体そのものではなく、その中を廻る精霊の道を断ったのだ!!
その結果、精霊の作った現象の一つであるバンシーは存在を保つことができなくなり消滅する。
こんな哀しさはいらないわと悲鳴をあげながら消滅していくのでありました。

ここで新技が飛び出してくるとは!!
ちなみに「獅子の大鎌」という名前は星座の獅子座の一部を指す言葉のようです。
ちょうど頭の部分の7つの星をつないだ形を指す言葉だそうな。へぇ。
それで鎌のような切り裂く技を使わせたわけか。なるほどなー。

・・・ちょっとだけ分かった。父さんの見てた世界。

嬉しさと寂しさがない交ぜになったような表情を見せるレグルス。どういう感情でいるのでしょうかねぇ。
だが、今はまず守るべき相手を守るのが優先される。コナーの所に急いで戻らないといけない。
約束を守って生きて帰り、安心させてあげないといけない。

初めてだな・・・人を守りたいってこんな気持ちなんだ・・・
泣き止んでるかな・・・笑ってるといいな・・・コナー!!!

駆けるレグルス。
だが、その場所で見たのはバロールによって首根っこを押さえられたコナーの姿であった。
激戦を制したばかりだというのに、もう追いかけてきたのかバロール!!

やってきたレグルスを見てバンシーが破れたことを悟るバロール。コナーを下ろしレグルスに向き直る。

・・・聖闘士か・・・厄介なのはこの娘の一族だけだと思っていたが。
お前のその黄金色の鎧は目に染みる・・・忌々しい・・・あの男を思い出す・・・
光の神ルー!!!奴に関わるもの全てこの地上から滅するのみよ!!!

激昂している様子のバロール。
緒戦の時のような余裕ぶった態度はもうしてこないでしょう。本気でレグルスを潰しにかかってくるはず。
対するレグルスは父の世界に近づき、闇に対抗する手段を得てはいる。
だが、バロールの強大な闇にどこまで対抗することができるのか。
その不完全な世界の理解で打ち砕くことができるのか。
次回は決戦となりそうですな。レグルスはここでどこまで父に近づけるのか。楽しみです。



レグルス編 最終話 光を司る者  (2013年 2月号)


再度の激突、レグルスVSバロール!!

世界の根幹を見、精霊の道を断ち切る術を手に入れたレグルス。これで闘う手段は手に入った。
だが相手は魔神。神の名を冠する者である。果たしてどこまで通じるのか。

忌々しい。お前の黄金の鎧は目に染みる・・・あの光の神ルーのように・・・!!
奴に関わる者全て滅す。光の一粒も・・・その血筋も・・・!!!

ダークネスヌーディ!!!

バロールからあふれ出した闇がコナーに襲い掛かる。
しかしこの闇を獅子の大鎌で断ち切るレグルス。見事に使いこなしていますな。
裏拳的なものかと思ったら掌で刈り取るような動きの技だったんですね、これ。色んな動きのタイプがあるのかもしれんが。

闇を切り裂き、コナーを救い出すレグルス。その低い姿勢はまさしく飛びかかる前の獅子の様。

あんたがそうやってコナーを狙う限り・・・俺は俺の父さんみたいにコナーを守る!!!
・・・なんでだよ。なんでお前はこんなに凄い力を持ってるのに、こんなに小さいコナーを泣かすんだよ。
お前みたいな奴にもうこれ以上誰も殺させない。今度こそ見切る!お前の闇の力と根源・・・!
ライトニングプラズマーッ!!!

必殺の一撃を放つレグルス。しかし、バロールの噴出した闇により放ったライトニングプラズマごと吹き飛ばされてしまう。
やはり単純な力では圧倒的な差があるか・・・!!
ここでバロール。レグルスの父という単語を聞き、昔話を始めてくれます。コナーの祖先のお話だ。

その男は修羅の道を歩んでいた。
突如得た異能の力を持ち、王としてただ一族の繁栄のため戦い続けた。
男には一人、娘がいた。黒髪の可愛らしい少女。名前はエスリン
どんなに血を浴び戦っても、邪悪な魔人と恐れられようと、男はその娘さえ側にいればそれで良かったのだ。

百人の戦士を屠り、15もの将の首を取り、魔眼で海を炎に変える。そういった戦いの日々を男は送っていた。
男にとって娘は戦いすさむ心を癒す存在だったかもしれない。
しかし、娘にとって戦いは心をすさませるものでしかない。娘はいつしか問う。

お父様。戦いはいつ終わるのですか?

そう問いかけた後、娘は男の元を去り、その息子に父を殺させたのだ!!!

散々父へ愛を語ったその口で、己の子に己の父殺しをふきこむ。その舌の根も乾かぬうちにな!!!
その子供の名こそルーよ!!!
ハハハハ・・・それがそこの娘、コナーの祖よ。血の絆など初めからありようもない。
なぁコナー・ルーよ。お前達一族を殺す私に咎があるのなら、私を殺したその娘と子の咎は一体どこにあるのだろうな・・・?

親子の絆。それはレグルスの何よりの力の源。コナーにとっても心の支えとなるものである。
しかし、目の前の敵バロールはその血の連なる孫に討たれている。血の絆などと言われても反発しかでませんわな。

もはや光はいらん・・・!!
闇を従え地に満ちる。娘とルーの面影は全て消し去る!!
咎を償え。ルーの子らよ

吹き出した闇が形を持つ。そして衣と化す。闇を纏ったのか!!
胸の辺りに巨大な目のようなオブジェが誂えられた、バロールらしいデザインである。
その力は圧倒的。精霊の力とかではなく、魂そのものが放つ計り知れないパワー!!

・・・ようやくこの体も馴染んできたな。コナー、お前の父の血を取り込んだためやもしれんな。
後はコナー・ルー。お前を殺し血を取り込めば、この力も完全に戻ろうよ!

なるほど。血族の血故によく馴染むという話でありましたか。
闇の魔神が光の神を信奉する一族の血を欲しがるのは何故かと思ったら。なるほどなぁ。

なんでだよ・・・あいつ。こんなに物凄い力があるのに・・・
・・・なんで。なんで父さんみたいに人を守らないんだよ!!

やはりレグルスにしてみれば父への想いは何にも代えがたい。バロールの話を聞いてもそれが揺るぐようなものでもない。
まあ、そもそもバロールが戦乱を継続し、娘の心をすさませていったのがそもそもの原因なわけでありますからなぁ。
親子の絆という面では同情の余地もあるが、為政者としてみればよくある話と言えなくもなかったり。

巨大な魔眼の力に吹き飛ばされるレグルス。
コナーはなんとか体で庇ったが、黄金聖衣を着ていても血を吐き出すほどに深刻なダメージを受けてしまう。
それでもコナーを守れたことで笑顔を見せるレグルス。だがコナーはそんなレグルスを見て泣き出してしまう。

レグルス・・・ゴメンね。私・・・レグルスに会ってから怪我させてばっかり・・・ゴメンね。レグルスみたいに強くなくてゴメンね。

守られてばかりいる己の無力さに涙するコナー。しかしそれは流石に無理もない話である。
血筋はさておき、普通の力しか持たぬ娘が超常の力に狙われる。何もできずとも仕方がありますまい。
だからそういう人を守るために聖闘士は存在し、闘ってくれるのである。レグルスもここに来てそのことに気付くことができた様子。

コナー・・・俺ね、俺、今まで父さんと聖域しか知らなかったから・・・コナーみたいに細っこくてフワフワした子、初めてなんだ。
守んなきゃって初めて思ったんだ。コナーが教えてくれた気持ちなんだよ!
聖闘士ってああいう悪い奴らからコナーたちを守ってきたんだ・・・きっと父さんも・・・だから俺は・・・

想いを語るレグルス。そのレグルスを見てコナーは決意を固める。
自分もレグルスを守りたい。そう考え、バロールに己の命を差し出そうとする。

バロール・・・私を殺して・・・!
その代わりレグルスは助けて。本当は私達家族だけ殺せば満足なんでしょ。

そのように告げてバロールの前に歩み出すコナー。血を吐き出したレグルスは体を起こすこともできずにいる。

・・・父様。レグルスの父様。この世界を廻る父様の・・・その父様たちでもいいの・・・レグルスを護って!!!

真摯に祈るコナー。しかしバロールはその2人の姿を一笑に付す。
これが聖闘士か!!!守るべき者にかばわれて、自分はそうやって地面に這いつくばって見ているとはな!!!

・・・ッ!笑わないで!!!

一喝し、コナーはバロールに問う。どうして貴方が裏切られたかわかる?と。
その問いにバロール、我が魔眼の力を恐れたからよと返すが、そうではない。

結局貴方が誰も愛してなかったからよ・・・!
・・・血なんて関係なかったのよ・・・家族じゃなくてって私はレグルスを守りたいもの・・・
レグルスもあんなになってまで私を守ってくれたもの!!
自分の気持ちだけで人を傷つけられる貴方には分からないのよ!!!
私を殺しなさいバロール!!!それで貴方は本当の一人きりよ!!!

コナーの言葉を聞き、娘エスリンの姿を思い起こすバロール。心当たりがないわけじゃないんでしょうな。
だからといってそれを認めてしまえるほど素直な生き方はしていない。そうであれば殺されること自体なかったでしょうからね。
望み通りくびり殺してくれると襲い掛かるバロール。しかしこれを起き上がったレグルスが防ぐ。

ゴメンコナー・・・死ぬなんて言わせて・・・それと・・・ありがとな!守ってくれて・・・!

語るレグルスの体が光り出す。いや光っているのはそれだけではない。コナーの持つ父のお守りも光り輝いている。

コナーの声が届いたんだ。コナーの父さんや精霊たちに!!今、全部が見える

光の精霊がレグルスの体の周りを廻っている。
そこには死して精霊と化したコナーの父の存在もあったのだろうか。ボロボロだったレグルスに力を与えてくれているかのようだ。

フン。聖闘士のガキが調子に乗るな!
多少の精霊を従えたところでなんになる。その程度の光、全て我が闇で塗り潰してくれる。
消えよ幼獅子よ!!!!この我が闇の前にな!!!

一層の闇がバロールから、その魔眼から吹き出し荒れ狂う。
しかし今のレグルスはその闇を見通すことだって出来る。見えた!!!

バロール!!コナーたちもこの光たちも全部消して、お前はまた闇に生きるのか・・・?
この光を見ろバロール!!その魔眼で!!
ライトニングプラズマ!!!!

今度のライトニングプラズマは今までとは違う。吹き出した闇を次々と打ち払っていく。
だがこの程度の光ではバロール本体を討ち貫くことはできない。
が、そこで光に変化が訪れる。
無数の線に見えるほどの多数の打撃。その線が五条の光へと変化する
この五条の光。これはかつてバロールを屠った武器。光の神ルーの槍、ブリューナク!!!

強烈な光がバロールの左目を、魔眼を焼き貫く。
そして魔眼を失ったバロールは光の中に見た気がした。己の愛する娘、愛したはずの娘エスリンの姿を。

消滅するバロール。最後に見た娘の姿は救いであったのか。そう感じることはできたのか。

親子の再会はバロールだけではない。コナーのもとにも父が現れる。
コナーの父はレグルスに礼を言い、そしてコナーに告げる。

コナー。側にいるよ。お前の感じる全てのものの中に

亡くなった父が側にいると言われても、これまでのコナーは半信半疑であった。
しかし今ならば信じられるでありましょう。死しても自分たちを見守り、守ってくれた父の存在を。側にいるということを。

父さん。守ったよ父さん。俺は少しでも、父さんに・・・近づいているかなァ・・・?

この段階ではまだレグルスは父親の存在を感じることはできずにいる。
いつかレグルスも父の姿を感じることができるようにはなるが、その時というのは・・・先のことを考えると寂しい話だ。

コナーを守りきったレグルスは聖域にて任務完了の報告を行っている。
その表情は初の任務を行う前より少し大人びて見える。
この任務で人を守るということがどういうことか理解できた。それが大きいのでしょうな。

そういえばレグルスとサーシャは面識があったようですな。
そうなるとレグルスがコナーに言った、細っこくてフワフワした子はコナーが初めてというのはどういう意味なのか・・・?
結構お転婆さんなサーシャはフワフワしていないと!?
いやまあ、実際に触れた感じの話をしているのかもしれませんな。そう考えることにしましょう。

人を守りたいという気持ちを理解したレグルス。成長しました。
そして成長したのは少年だけではない。コナーもまた少し大人びた表情を見せている。
無事に一命を取り留めたファリニシュと穏やかに父の墓参りを行っております。

レグルス。私は笑ってるよ。貴方が守ってくれたから。貴方という光が守る世界で。

少年少女の成長の物語は美しいですなぁ。そう感じさせるエピソードでありました。
共に亡くなった父親の姿を追い求める。敵は娘の姿を見ながら散っていく。
親子の愛という部分にも焦点の当たったエピソードとなっておりましたな。やはり絆の力はかけがえのないものであるか。

さて、次号からは乙女座のアスミタ編が始まります!!
ある意味一番展開が読めない人の出番がやってきました。どういう物語になるか楽しみだ!!



聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝 8巻


アスミタ編 第1話 神を求めし者  (2013年 3月号)


一人の男が血に染まった川で溺れている。
溺れながら周りの風景を見ると、切り立った崖に血の滝と川。そこを這い上る亡者たちという地獄のような光景

ここはいったいどこなんだ・・・

まさしく屍山血河という有様。どうにか岸に這い上がった男は慌てて逃げ出そうとする。
しかし、その首に鎌が突き立てられる。
脅しとしてではなく、実際に首を切り裂いてくる鎌。
それを握っているのは黒い骨のような衣を纏った男たち・・・これは冥闘士!!の雑兵、スケルトン。

ということはやはり、ここは地獄。そりゃあ地獄のような光景のはずですわな。実際地獄なんですもの。
男はその地獄に落ちた亡者である。しかし他の亡者とは違いしっかりした姿を保っている。
スケルトンが言うにはたまに冥界の掟から外れて自我のある奴がいるそうな

そんな奴ァ――俺たちのとっておきのオモチャよォ!!!

右腕を切り落とし、痛み逃げ回る姿を楽しむスケルトンたち。下衆な連中である。

なんだ・・・?なんだこれ・・・!!
俺は本当に死んじまったのか・・・?これからこんなことが永遠に続くのか・・・?
俺はそんなに悪事を重ねたのか?俺はこのまま永遠に救われないのか・・・?
嫌だ。助けて。誰か助けて・・・!!!

地獄にて祈る亡者。それこそ神仏に助けを求めるかのごとく。
すると、その声を聞き届ける者がいた。
その者の登場により辺りは静寂に包まれる。血の滝すらその流れを止める。

今、私に助けを求めたのは君かね!!?

仏様のイメージが男の周りに浮かび上がる。声が直接頭に聞こえる。

君はいつも罰せられているな・・・地獄へ落ちたのもその業故か・・・

仏様はそのようなことを述べる。おや既知の人物なのですか?
男の方としてはその声が誰なのかはわかっていないみたいですが。

・・・澄んだ声だな。あんた神か?だったら俺をここから救ってくれよ・・・
生きてる頃から救いなんてどこにもなかった。本当に救いがあるなら一度でいい!どうか神様・・・どうか!!

男の願いに答え、滝に渦が発生する。何者かが降臨しようとしている。

・・・フッ!神か・・・
よかろう・・・!これも何かの縁よ。昔のよしみに救ってやろう。
しかし私とて未だ真の救いも、己が何者かも分からぬ身。だから今はあえてこう名乗ろう!!
我想(アスミタ)。乙女座のアスミタ!!最も己の内の神を求める者よ!!!

黄金聖闘士アスミタ登場!!おぉ・・・これが文字通りの地獄に仏という奴か!!

突然の襲来に慌てふためきながらもやるしかねぇと襲い掛かってくるスケルトンたち。
しかし、アスミタの唱える梵語ひとつでその攻撃は遮られる。
梵字には詳しくないが、おそらく"カーン"でありましょう。

雑兵とはやはり天地ほどの力の開きがある。腕の一振りで冥界の土へと還ることとなるスケルトンたち。ざまあないですな。

凄い・・・こいつ・・・本当に・・・神なのか・・・?

そのように考える男にアスミタは話しかける。15年ぶりだな、と。
おや、ずいぶん古い知り合いなんですね。男の方はやはり思い出せずにいる様子ですが。

やれやれ私の瞑想の邪魔までしたのだ。忘れたとは言わさんぞ。仏荒らしのアヒンサーよ

男、アヒンサーはその呼び名を聞いてようやく思い出す。
アスミタがまだ子供だった頃に確かに会っていると・・・!!

というわけで回想に入ります。
インドは苦行林。そこには囚われた若い頃のアヒンサーの姿があった。

アヒンサーは近辺を荒らしていた盗人である。
普段は死体から物を剥ぐぐらいの行動しかしていなかったが、最近は寺院の仏像の金箔を剥がすようになったそうな。
その罰として捕えられた後、苦行林に放り込まれることとなったらしい。頭を剃られて。

死体や仏像から物貰って何が悪い!あいつらもう服も食い物も必要ないじゃないかと叫ぶアヒンサー。
生きるために盗みを働いている。それを悪しき煩悩だと言われても納得できようはずもない。

俺たちゃ皆、死んだ奴をこやしにして生かされてんだよ!それが分からねえお前らはただのぼんくらだ!!!

なかなかに吠える。だが、そういう考えを改めさせるためにここに連れてこられたのである。
というわけで、縛られたまま茨の苦行にかけられるアヒンサー。
茨の上に座し、何日もそのまま過ごす。やせ細り、髪が生えてきてもそれはずっと続くという。
周りを見れば同じように苦行を行っている者たちがいる。
全身に針を刺したり座禅を組んだまま頭で体を支え逆さになっている者など様々な苦行僧の姿が見える。

ここの奴ら・・・マジで何日も食わねえのかよ・・・あんなに自分痛めつけて・・・何が救い・・・

呟いていると、隣の苦行僧が倒れこんでくる。
その勢いに押されて劣化していたのか戒めの縄が千切れる。
倒れ込んできた男はというと、どうやら苦行の結果死亡したらしい。なんと・・・!!

・・・修行で・・・?バカじゃねえの・・・?人生生きてなんぼじゃねえか・・・っ。

まるで理解できないというアヒンサー。まあ、その考えになるのは当然ですわな。理解しがたい。
飢えで死んだと思われる男だが、その手には麦が握られている。
これは有難いと死体から麦を奪おうとするアヒンサー。しかしそれを押しとどめる声があった。

おやめなさい。地獄に落ちてしまいますよ。

茨の上で法衣に身を包み座禅を組む子供の姿がそこにあった。
雰囲気のある子供ではあるが、窮しているアヒンサーがそんな言葉に耳を貸すはずもない。今だって地獄と変わんねェじゃねェか!と。
しかし、子供――アスミタが言うのはそういう罰当たりとか観念的な話ではない。
死亡した男が行っていたのは病の苦行。その握っていた麦を食べればアヒンサーも同じように病にかかり死亡するということである。

病・・・?自分から・・・ここの奴らは馬鹿だ!!!

怒り、麦を叩き付けるアヒンサー。
自分から望んで苦行をしているわけでもないアヒンサーにはどうしても理解できない行為のようですな。

どうしてわざわざ苦しみたがらなきゃならねェんだ!?命を投げるようなマネをするんだよ!!!
死なねェように命を必死で繋ごうとしてる奴もいるんだよ!!それを自分から病だ飢えだ!?
勿体ねェよ!!!だったら必要な奴にくれてやりゃいいんだよ!!!

なるほど。これがアヒンサーが激した理由か。
アスミタには一瞬見えた。病に伏す女性、母親と過ごすアヒンサーの姿が。
望まぬ病にかかり亡くなった母を見てきたアヒンサーにとっては、自ら病にかかり命を捨てる苦行僧の姿は見ていられないのでしょうな。
そしてアヒンサーが盗みを行ってきたのもその母を生かすためであったという。切ない話だ。

アスミタは生来目が見えない。それが故か人の痛みがどんどん伝わってきてしまう。見るつもりはなくても流れ込んでくるのだ。
アヒンサーの苦しみや盗みの動機なども見えてしまった様子。

・・・なァお前。修行してるなら聞くけどさ、どうして必要なものはそれを必要な奴の所にやってこないんだ?

アヒンサーの問い。しかし、幼いアスミタにそれに対する答えは持っていない。
それを知るために苦行をしているのかもしれない。
しかし、人の痛みが分かるアスミタが更に苦行をすることで得られるものがあるのだろうか。
本人も、こうすることで人の痛みから気を紛らわせたいのかもしれませんと振り返っている。

そんなことで命ムダにするってのか・・・ここの奴らみたいに・・・
そんなことで誰か救えるって言うのかよ!こんなこと今すぐやめちまえ!!!

掴みかかるアヒンサー。法衣の下のアスミタの体は、もうどれだけこうしていたのかすっかり痩せ衰えている。
あばらが胸全体に浮かび上がるほどに痩せこけた姿。苦しそうである。だがアスミタは言う。

私がこの道を行くのは・・・私自身を救うためです。
私には結局自分自身の痛みがない。そんな私にいくら人の痛みが見えたところで誰を救えましょうか。
なればこそ、この苦行の先に悟りを見出すしかないのです

私は神でも聖人でもない。だけどせめて・・・今、貴方の母君を弔いましょう。

そう述べて手を合わせるアスミタ。
月光に浮かび上がるあばら。それでも良く通る読経の声。

世は無常だ。俺やこの子がいくら考え悩んでも、きっとこの世は止まることなく移ろいでしまう。
それでもどうか、もし俺みたいな奴が地獄に迷い落ちていたなら――こいつみたいな仏に救われたい・・・

そのように考えていた昔のアヒンサー。
果たしてその願いはかなったのか。地獄に落ちた身を救いにやってきたのはその時の子供の成長した姿である。
どうやら先の出来事からすぐにチベットへ修行へ行き、運命に従って黄金聖闘士になった様子。

アスミタは確かにスケルトンを追い払った。しかしアヒンサーを地獄から救い出すことができるのだろうか?
本来既に死んでいる身。失った肉体を用意することはできない以上、それは難しいと口にする。
しかし、地獄で自我を保っているということは何か意味があるのかもしれない。
そのようなことを口にしたところで、静寂を切り裂いて鳴り響く鐘の音。チリーン。

おやおや。迷い魂を追ってみれば・・・何故このようなところに聖闘士がいるのやら。
さて一戦交えるべきか・・・この地鎮星の影法師がな。

その名の通り、法師のような冥衣に身を包んだ冥闘士が現れる。
な、なんとも特徴的な奴であるなぁ。錫杖に鐘とか手にもつものも独特。

そんな影法師がやってきた目的はアスミタではなくアヒンサー。
その鐘を鳴らすと、傷ついたアヒンサーの体がみるみるうちに修復していく。切り落とされた腕まで再生していく。スゲェ!!!

さあ立て。お前はもう亡者ではない。永遠の命を授ける。お前はアタバク様に選ばれた同志なのだ。

ほほう。やはりアヒンサーが自我を保っているのには理由があったみたいですね。
しかしアタバクとは・・・この名前にアスミタも聞いたことがあると反応を示す。

冥王軍108の魔星の中で唯一パンドラの指揮に属さぬ特別な任を負った者。
彼は自力で冥界の掟を克服し、己の園をかまえることを許された。この冥界で最も神に近い男だとな!!
一度会ってみたいと思っていた。

そのようなことを述べるアスミタに影法師。
極秘とされているアタバクの存在も知るアスミタを、やはりこのままにはしておけぬと襲い掛かる。

消滅せよ!!!影降伏!!!!

無数の独鈷が放たれ襲い掛かる。
だがそれらは全てアスミタの描く仏印によって全て地に落ちる。
また影法師自身も地に叩き付けられる。これぞ仏敵を地に伏せさせる降魔印!!!

アスミタは影法師にアタバクの下へ連れて行けと命じる。
が、素直に応じる様子のない影法師。
アヒンサーに向けて、永遠の命があればこのようなことができると言い残し、捨て身でアスミタに襲い掛かる。
だが、新たな梵語の一言、おそらく"オーム"で吹き飛ばされる影法師。ぐわあああぁーッ!!
うーむ。普通の冥闘士クラスでは本当に問題にならないですなぁ。

アスミタは冥界に向けて2つの使命を持って瞑想をしていた。
1つは冥界で生きる未知の感覚の探究。そしてもう1つはアヒンサーのような死人を迷わす悪鬼を調伏すること。
どうやらアヒンサーとここで出会うのはただの偶然ではなかった様子ですな。

永遠の命を与えられたという影法師の灰が地獄の果てへと舞っていく。
この灰からまた蘇るというのだろうか?となれば、この灰の行く先がアタバクのいる場所ということになる。

影法師の灰は地獄の果ての館へと入り込んでいく。
そこでは無数の男たちが暴食を貪っている。
それらの男の中心に座すのは・・・無数の腕を生やした冥衣に身を包む禿頭の男。これがアタバク・・・!!!
なんとも・・・描くのが大変そうな冥衣である。
だが逆にアタバク自身の顔は描きやすそうである。バランスが取れている!?

というのはさておき、アタバクは影法師の灰からアスミタが地獄へやってきたことを知る。

私には分かる。あの男もまた空なのだ。己の苦痛にも快楽にも心が動かない。私と同類よ

どちらも共に最も神に近い男だということであるか。この対決はなかなかに楽しみですな・・・!!
ちなみにアタバクとは古代インド神話に登場する鬼神アータヴァカに由来する名前。
密教においては明王の総帥――大元帥明王とされ、かの不動明王に匹敵する霊験を有するとされているそうな。ほほう。

そんなアタバクの側にはもう一人、強力な冥闘士がいる。
アタバクやアスミタとはまた大きく違った存在であるその冥闘士に声をかけるアタバク。

欲することに思い悩む者には決して辿り着けぬ領域よ。
・・・例えば、お前のように失った者をただ求める者にはな。
まずは闇を得たその力を欲望のまま奮ってみろ。救いがあるかもしれんぞ。輝火

・・・俺に命じるなよアタバク。
つまらんな。結局、俺の救いは拳だけか。気晴らしにはなるかもな。地上で最も神に近い男・・・!

まさかの輝火登場。これは驚いた。
アスミタ編は冥闘士との絡みであるが、初出の冥闘士や大物ゲストやらで大盛況でありますなぁ。
輝火とアスミタの対決・・・なかなかに楽しみである。釈迦の手の平で踊らされる描写とか出てきますのかな?

しかし、アタバクとかアスミタとかアヒンサーとか頭にアがつくキャラが多いシリーズである。
ちなみにアヒンサーとはサンスクリット語で非暴力を意味する言葉。
仏教などでは重要な教義とされている言葉らしい。
ほほう。そのような名を冠されたということは、重要な位置づけのキャラになりそうでありますなぁ。
最終的に生き返ることができるのか。はたまた死したまま何かを見つけるのか。気になるところである。



アスミタ編 第2話 届かぬ声  (2013年 4月号)


アスミタは冥界に至り、神に最も近い男と言われるアタバクとの間に因縁を持った。
その冥界での異変が現世にも影響を及ぼしている様子。

ヒマラヤ山脈。
冥王軍の魔星が落ちたという報告を聞き、ユズリハがその邪悪な小宇宙の正体を探るべくやってきていた。
体つきを見る限りやはり本編より前の話だというのがよくわかりますな。まだまだ成長途上よ。

それはともかく、ヒマラヤ山脈の山の一角に奇妙なものが存在しているのを発見するユズリハ。
仏像のようであるが、凄まじい邪気を発しており周囲の雪を融かしだしている。

これが冥王軍108の魔星の片鱗・・・この像・・・放っておいては危険だ!!破壊する!!!

まだ聖闘士でもないユズリハは小刀を取り出し像を傷つけんとする。
だが像からあふれ出る邪気は凄まじく、近づくことさえできずに吹き飛ばされる。
そんな吹き飛ばされたユズリハを抱きかかえるのは長であるハクレイ。
さすがに長生きしているハクレイはこの像が何であるのか一目で理解した様子。

アタバクだ。この神・・・荒野鬼神といわれる弱者を襲って食らう悪鬼神よ

悪鬼神。なんとも聞くだに悪そうな存在でありますな。やはり早いところ破壊してしまった方がいいのではないだろうか。
そう思うが、ハクレイは邪気を封じるに留めると言い出す。

こやつの小宇宙、どうやらこの現世から出ずるものではないからじゃ。
積尸気の更に奥、黄泉平坂の底より発せられておる

なるほど。所詮この像は現世への力の吹き出し口でしかないわけか。
破壊しても冥界に存在する本体に痛痒を与えることはできないと。
しかし、それでは封じるにしても一時しのぎにしかならないのでは?

案ずるなユズリハ。聖域には唯一、そのアタバクと対峙できる者がいる!
そうだ!乙女座のアスミタ!!!あの男は聖闘士で唯一現世と冥界を行き来し神仏と対話する男よ!!

冥界に生きた状態で行き来するにはエイトセンシズ・・・阿頼耶識に目覚めていないといけないと言われている。
現状の聖域でその阿頼耶識に目覚めているのはアスミタのみ。
なれば冥界に住むアタバクと対峙できるのはまさしくこの男をおいては他にありますまい。
しかしアスミタはどうにも他の聖闘士からも信用されていない様子。
まあ、アテナを奉る聖闘士の中において異教の信者だったりするのだからそう思われても当然でありますわな。
ひょっとしたら聖戦自体に関わろうともしないのではと懸念されたりしている。

以前の奴であれば難しかったであろうな。だが今の奴は・・・アテナ様に出会っている
いずれにしても今は彼に託すしかあるまい・・・

そのように述べるハクレイだが、それでも心配する部分はないでもない。

のう、アスミタ・・・お前は人の痛みを自ずと受けると言ったな・・・
ならばお前の閉じた目に地獄はどう見える・・・?

ハクレイの心配を他所に、傍目に見る限りは平然とした様子で地獄を歩くアスミタ。
一方のアヒンサーはこの文字通りの地獄の光景に顔を青ざめさせている。無理もないことだ。
苦しめられている亡者たちを見て何で逃げないのかと問うアヒンサー。
苦しけりゃ逃げるだけでいいのに。それとも苦行林の奴らみたいに苦しみたいのかよ、と。

彼らは別に苦しみたいわけではない・・・だが、逃げられもしない。それが冥界の掟だからだ。

冥界。ここには神話の時代より冥王の意思が流れている。
それ故死んだ者は皆自我を剥奪され痛覚のみ残され、一切の希望も許されぬ亡者として永遠に苦しむのだ!!

何とも酷い話である。まさに夢も希望もあったものではない。
冥界で意志を持つには究極の七感以上の感覚に目覚めなければならない。普通の人間にはとうてい無理な感覚だ。
しかしアヒンサーは何故かこうしてその感覚を得ている。
ふむ、その特異性ゆえにアタバクに目を付けられているということか。

・・・だから助かった。普通と違ったから。
・・・待てよ・・・?じゃあ・・・病気で死んだ母ちゃんは・・・?

その考えに至ったアヒンサー、自ら亡者が苦しめられている灼熱の沼に飛び込む。
どうやら先に落ちた母を探し出そうとしているようだ。きっと自分はそのために亡者にならなかったのだと信じ・・・!!
どうせここにいるのならせめて母と一緒にいたいという想いがあるのでしょうな。切ない話だ。

しかしアヒンサーのその想いは周りの亡者ごと焼き尽くされる。
黒い炎。苛烈にして獰猛なその炎は一人の冥闘士が放ったものである。そう、輝火だ。
輝火は地上でも最も神に近い男と呼ばれるアスミタと戦うべくやってきた。しかしどうにも気に入らないという表情。

随分アタバクが気にかけるからどんな奴かと思えば・・・とんだ惰弱よな・・・!!!

出た!!惰弱出た!!らしいセリフが飛び出しましたよ!!なんだか嬉しい。

失望した・・・そんな迷うだけのひ弱な亡者と群れる貴様の強さはどれほどよ・・・!
惰弱な貴様が救えるのは惰弱のみか!?乙女座よ!!!

吠える輝火に対しアスミタはあくまで静かな様子を崩さない。
救えるのはと言われてもアスミタは誰も救わないと答えるし、むしろ迷いさすらっているのは君の方ではないかと痛い所を突きだす。

ほざけ・・・!どうせただの暇潰しよ。せいぜい持ちこたえるのだな・・・
この天暴星ベヌウの輝火の黒炎をな!!!

コロナブラスト!!!

黒い太陽から生み出される激しい熱風が辺りを火の海へと変える。
しかしそんな猛烈な勢いの炎もアスミタが拡げたマントに触れただけで静かにその場に渦を描き留まることとなる。

君のこの炎いささか激し過ぎるな。いずれ君自身を焼く、否定と敵意に染まった炎よ。
いずれ虚無に飲まれよう。

アスミタの本質を見据えた言葉。しかし輝火としては簡単にそれを聞き入れるつもりなどありはしない。
さらなる激しさで相手を焼き尽くさんと迫る。
しかしアスミタは輝火の攻撃を全て倍の強さで跳ね返す。身動きすらせず直立不動のままで。
返ってきた己の攻撃にボロボロにされる輝火。だが全く引こうとはしない。
わずかにアスミタの頬をかすめることに成功するが、それと引き換えに血まみれとなる。なんとも滅茶苦茶な戦いぶりだ。

勝つことに執着がないのか・・・?
・・・いや違う!!あいつが執着してないのは・・・

アヒンサーが何かに気付いた時、その耳に響くのは鐘の音。
ふと見上げれば・・・そこにいたのは影法師。まさか、前回粉々になって死んだはずの影法師がもう復活しただと!?

これが永遠の命「不死」ということよ。
我らは永遠に苦しむだけの亡者共とは違う。己の意志と生身の肉体を持って冥界と現世を行き来する。
その生命を湯水のように使えるのだ

復活するから死んでも問題ないという意味での不死でありますか。でも痛いことは痛いでしょうになぁ。
まあアヒンサーとしてみれば、湯水のように使えるならこの亡者たちに分けてやれよと言いたくなる。

例えば・・・お前の母にかね?
ならばお前が分けてやれば良いのだよ。永遠の命を得てお前の母へ!

これは思わぬ魅力的な申し出。アヒンサーの表情も変わらざるを得ない。
アスミタとしても思わぬ展開に視線が輝火から逸れる。
その機を逃さず、アスミタの防御を打ち破ろうとする輝火。むむむ。

影法師はアヒンサーへと言葉を投げかける。その心に響くような言葉を。
生前のアヒンサーは病気の母のために、食べ物も着物も必要ない死人から分けて貰って生きてきた。

捨てる富を無駄にするのが死人なのならば、生を得る機会を無駄にするお前もまた、いつまでも奪われるだけの亡者よ!!!

そう告げた後、影法師は決定的な光景をアヒンサーに見せつける。
背後に浮かぶのは針地獄の光景。その巨大な針の1本1本に亡者が串刺しとなっている。
そのうちの亡者の一体はアヒンサーにとっては見間違えのないような人物である。そう、自身の母親だ。
この地獄で母はずっと苦しんできていた。それを知ったアヒンサー。これはまずい流れですな・・・

亡者となった母は哀れであろう。その痛みから母を救ってやりたいだろう?
ならば呼ぶが良い。このアタバクを。さすればお前に永遠の命を授けよう。

影法師にアタバクの顔が重なる。ふむ?これは影法師にアタバクが乗り移っているということなのか・・・?
さすがに短時間で完全復活するはずもないってことなんですかねぇ。

ともかくアヒンサーは母が苦しむ姿を見て涙を流す。
あんなに現世で苦しんだのに、死んでからも永遠に苦しむなんて・・・

アスミタ・・・!!お前は母ちゃんのために経を読んでくれたよな!
無駄だった・・・!無常の世に俺達の声は届かなかった!
だったら俺は・・・俺は・・・

苦しむアヒンサー。そこから救うために影法師、いやアタバクが生み出した針地獄の幻影を打ち破るアスミタ。
輝火と一戦を交えながら魑魅魍魎を呼び出し幻影の空間を破壊したのだ!!流石よな!!
だが、それは少し遅かった様子。
既にアヒンサーの心は進む道を定めてしまった様子。まさにアタバクの言う通り、己が魂の目覚めを選択してしまったのだ!!!

ようこそ同志よ。新しい命へ

アヒンサーの体が輝きに包まれ、それが収まった時、その背中からは無数の仏像の手のようなものが生えてきている。
それぞれの手はまさに仏像のごとく様々な印相を組んでいる。
これは・・・?アタバクと同じような荒野鬼神と化してしまったということなのだろうか・・・?
アヒンサーもまた魔星のひとつとしての宿命を持っていたということなのか?ううむ・・・なんともこれは・・・

とりあえずアスミタはさすがに強い。輝火をほとんど問題にしないぐらいの強さを有している。流石だ。
しかし強力な冥闘士に囲まれたこの状態。なかなかに厳しいものがあるように思えるが・・・?

それはさておき、思わぬユズリハの登場に得をした気分になった今回。
輝火の登場といい、良いゲストが多いですなぁ。次回もゲストが現れたらどうしましょう。期待したい!!



アスミタ編 第3話 涅槃の理  (2013年 5月号)


永遠の命をアタバクから受け取り母と分かち合う。
その誘いに抗うことができず魔道へと堕ちたアヒンサー。愚かであるが理解できないこともない。
地獄で今もなお苦しみ続ける母の姿を見せられたのではなぁ・・・

というわけで、決意したアヒンサーの背から無数の腕が生えて・・・きたわけではない。
どうやらアタバクの腕がアヒンサーを覆うように背中側から手前にやってきていただけだったらしい。ま、紛らわしい!!

複数の腕で智拳印を組み上げるアタバク。
密教としてのアタバクは善神とされているが、その密教の印相を組むアタバクの本性は如何なるものであるか。

アタバクはアヒンサーに語り掛ける。
これでお前は永遠への道を約束された。お前の母もいずれ同じ道を歩むだろう、と。

私という生き神の中でな

そのように述べ、自身の内にアヒンサーを取り込もうとするアタバク。
同時に空間を歪めて無数の腕を伸ばしアスミタの動きを封じようとしてくる。おやおやこれは・・・
アヒンサーは悪鬼の誘いに騙されたということなのだろうか?いや、そうではないとアタバクは告げる。

これが永遠へ至る道よ。
お前は他の亡者と比べて魂の格が高い。それ故私自らの手でこの肉体を与えようと言っているのだ。
お前と私はいずれ宇宙と意識を一つにする。それがお前自身の永遠となんの違いがあろうか!?

個を消滅させての集合意識となるのがアタバクの言う永遠へと至る道ということなのだろうか。
理屈としては分からないでもないが、個の意識が消えているのでは死ぬのと余り変わりがないですわなぁ。
それにアヒンサーの望みである母を苦しみから救うという部分はどうなるというのか。

安心せよ。私の魂は高位で尊い。不平等な救いはせぬ。
お前の母のような下等な亡者の魂も含めて――いずれこの冥界中の魂を平等に喰らってやるつもりよ・・・!!

まさしく悪鬼羅刹のごとく牙を剥きだしにして悪平等を語るアタバク。
この理屈に悔し涙を流すアヒンサー。結局俺らみたいな弱い奴らが・・・生きても死んでも奪われる・・・

・・・助けて・・・アスミタ・・・!!
・・・なんて・・・言えるわけないよな。

アタバクの腕を振りほどきアヒンサーのもとへ駆けつけようとするアスミタ。
しかしアヒンサーの体は見る見るうちにアタバクに取り込まれ、その色を変化させていく。

ゴメンなアスミタ・・・俺はいつも目先のことばっかりで。お前を裏切った。
俺は悟りとか真理とかはよく分からねぇ。だけど――だけどどうか、こいつの真理とやらだけは・・・否定してくれ。アスミタ!!!

苦悶の表情を浮かべながら取り込まるアヒンサー。最後にアスミタに願いを託し・・・
これにはさすがのアスミタも冷静さを保つことはできず、激した様子。
外道を注すべく技を放つアスミタ。しかしその攻撃はことごとくアタバクの体をすり抜ける。
どうやらこの場のアタバクは影法師を媒介にして空間を繋いでいるだけで本体ではない様子。そこまで行かなければ戦えないわけか。

急くな乙女座よ・・・これで良いのだ。
哀しいかな亡者はいかに八感に目覚めようと所詮は亡者なのだ。
彼らはいかに意志を持ちこの地獄に来たとて苦痛を与えればその意志を捨て亡者と化し、また快楽を与えてもいずれ意志を捨て亡者と化す。
なればこそ思うのだ!!彼らを生かす道とは唯一つ!!
ただ「私」という生き神とともに現世も冥界も渡り歩くことにあると!!!

それこそが私の悟りの境地であると語るアタバク。
この地で冥界の王ハーデス様と並ぶ仏として「私」という極楽浄土を作ると言い出す。

ただ私と魂ある世界!!!
私という意志が亡者たちを束ね、やがてハーデスら神々をも束ねる!!!
私自身が宇宙の真理となるためにな!!!

なんとまあ。ハーデスの管理する冥界で好きにやっているなあと思ったら・・・そんなことまで考えていたのか。
魔星の1つでありながらハーデスをも取り込もうとするアタバク。なかなかにスケールがでかい。
しかし取り込まれた魂はどのような状態でいるのだろうか?
ハーデスの管理する冥界のように苦しめられ続けるわけでないのならそれもまたアリなのかもしれんが・・・
ともあれアスミタはその考えを邪道と切り捨てる。その先にあるのは真理でなく地獄よ!

神に近いと言われた同志でも見える悟りはまた違う。
僧として出会ったならば互いの理を論じ合うこともあっただろうが、ここは戦場である。
特に論争とかそういうのに興味のなさそうな男がこの場にまだ存在している。そう、輝火だ。

坊主2人いつまで辛気くさい話をしている・・・!

まあ坊主ですしね。そりゃ話も辛気くさくなるってものですわ。思ったよりスケールでかい話だったけど。
しかし輝火はこの話を聞いてしまってどのように思うのだろうか?弟の魂のこともあるし。
と思いきや、アヒンサーを通じてその想いを吐露する輝火。

付き合わされたお前の連れも馬鹿な男よな・・・一度失った者と手を取りあうなど夢も良いところよ・・・虫唾が走る!!!

クラシファイアンク!!!

輝火の生み出した炎のアンクがアスミタの体を縛り付ける。
このアンクは一度敵を捕えればその身全てを焼き尽くすまで決して離さないという。
その業火に包まれるアスミタ。それを見届けて去ろうとする輝火。その姿には寂しさが見て取れる。

失ったものは二度と戻らん・・・!・・・不死など・・・反吐が出る!

僕もそう思うよ・・・お兄ちゃん

輝火の独り言に答える声。炎の中に浮き上がるのは1人の少年の姿。これは・・・輝火の弟、の姿だ!!
大切な弟の姿を目の当たりにして驚愕に目を開く輝火。
しかしすぐに幻覚と切って捨てようとする。乙女座の幻術に違いない。こんなものに惑わされるものか!!と。
だが、自身の身も冥闘士になる前の状態に戻ってしまったりと言葉と裏腹にすっかり惑わされている様子。
そうこうするうちに翠は側へと近づいてくる。近づくたびにその身を炎で焦がしながら。

お兄ちゃんが怪我をするから・・・僕は傷つくんだ・・・
僕はそうやってお兄ちゃんに追い詰められた。だから僕は冥界で苦しんでる・・・
それなのに、どうしてお兄ちゃんはそうやって生きていられるの!!?ねえ!!?

己を責める弟の姿に苦悶の声をあげる輝火。
アスミタに言わせるとこれこそが輝火の痛み。自身の中で作られた弟の責める声であるそうな。
ふむ、つまりは弟を死に追いやった自責の念が見せた幻覚であったわけですな。
決してアスミタが悪趣味な幻覚を見せて惑わしたという流れではない。はず。

君は失った者に焦がれ乾いている。
ベヌウよ。今の君は守るものという太陽からはぐれ不死という暗黒に迷ったひ弱な鳥よ。
問う!君はその痛みから逃れるため冥闘士の不死に準ずるのか!?
それともその痛みを永久に味わうために冥闘士の不死に準ずるのか!?
君の理を答えよ太陽鷺(ベヌウ)!!!
答えられぬのなら今の君に理はない!暗黒の輪廻より帰れ!!!太陽鷺よ!!!

天魔降伏!!!

膨れ上がったアスミタの巨大な小宇宙が炸裂し、輝火を打ち倒す。
乙女座としては珍しい直接攻撃系の技である天魔降伏。しかし相変わらず何が起きているのかはよくわからない。
まあ、とにかく凄い一撃を喰らって輝火が凄く吹き飛んだというのは分かるぜ!!

これで多少は君の暇潰しになったであろう。
その冥闘士の生を業とみるか恵みと見るかは君次第だ。次に目を覚ました時、君は己の理への道を歩み始めるだろう。

ふむ。なかなかよい説教でありますな。
こうして輝火はアテナの聖闘士への確執を抱くようになり童虎を生かしたりと色々することになるわけですな。

輝火を退けたアスミタは急ぎアタバクのもとへと向かう。
アタバクは法界定印を組み待ち受ける。
その背後にある曼荼羅。そこには取り込んだと思しき者たちの無数の苦悶の顔が浮かびあがっている
アタバクはこれが私の救いの理よ!と述べるが、どうにも救われているように見えない表情だぞ、オイ。

醜悪な図よな・・・つまりその顔はお前の食らった魂たちの成れの果てということか。
このアスミタ、悟りを追って初めて知ったぞ。真の悪鬼はいるということ。
どうしても滅せねばならぬものが存在していることをな・・・!

アスミタの言葉に滅しても構わぬ者の方が数は多いと返すアタバク。ならば今からそれを論じ合うとしよう。

その理を力でな!!!

無数の曼荼羅がアスミタの力によって生み出され、空間を覆っていく。これはちゃんとした曼荼羅ですね。安心。
そしてこの技は・・・天舞宝輪!!!宇宙の真理・・・乙女座最大の奥義。同時に攻防一体の戦陣である。

お前の資格や聴覚の感覚を奪い、やがて魂ごと消滅させてやろう。
己の所業を悔い、真の地獄を見るがいい!!!第一感剥奪!!!

ついに飛び出した乙女座最大の奥義。
しかし果たしてこれでアタバクを倒すことができるのだろうか?
原作でも結局誰も倒すことができなかったということで有名な技である。
感覚を奪うことは凄いがそれ自体が倒すことには繋がっているわけではないですからねぇ。
特に聖闘士の場合は感覚を封じれば小宇宙が高まりやすいという関係性があったりするわけですし。
アタバクも六感全て封じられても普通に動けそうな気がしてアレである。まさかの七感、八感剥奪もあるか!?

八感を剥奪されて冥界で動けずに地獄に堕ちるアタバク。それはそれで皮肉そうな流れで面白い。
しかし、アタバクを倒すことに成功しても、その喰われた魂たちはどうなるのであろうか。
ハーデスの支配する冥界の理ではやはり苦しみ続けるしかないことになるのだが・・・辛いエンディングになりそうですなぁ。



アスミタ編 最終話 縁  (2013年 6月号)


乙女座最大の奥義、天舞宝輪がアタバクに炸裂する!!
通常の空間であるならば感覚を破壊され物言わぬ肉の塊となるだけである。
しかしここは冥界。肉体よりも魂で存在する世界。
すなわち感覚を破壊するということは・・・その魂を完全に無に帰すということ!!!

そういえば本編でもそんなことを言っていましたな。
冥界では天舞宝輪はそれだけで必殺の技となるという話でありますか。

一気に第一感だけでなく第二、第三感も剥奪するアスミタ。
これでアタバクは触覚、視覚、聴覚を失った。もはや暗闇の中、指1本動かせぬ状態となっている。

だがお前は冥界で最も神に近いと言われる男。この程度では蚊が刺したほどもあるまい。
故にこのまま一気に奪わせて貰うぞ。残る味覚嗅覚・・・頭脳より生じる第六感!そして究極の第七感・・・!!
消えよ悪鬼!!!天舞宝輪!!!全感完全剥奪!!!

うむ、本当に第七感まで剥奪してしまえるとは!さすがは最大奥義である。
容赦のないアスミタの一気呵成に吹き飛ぶアタバク。
それを感じたアスミタは曼荼羅陣を解除。アタバクと共に散ったと思われるアヒンサーへと想いを馳せる。

・・・アヒンサーよ。私はな、これほど激昂することも不愉快と思うことも初めてだ。
せめてこの気持ちが君への手向けになっていれば良いがな・・・アヒンサーよ。

感傷に浸るアスミタ。その様子を嘲笑する存在がいる。
これは・・・吹き飛んだはずのアタバクの声!!お前は私と同じ「空」を持つ者と思っていたがなと嘲笑っている。

私に天舞宝輪は効かん。それどころかこれで私とお前に天地ほどの差があることが明確となった・・・
お前の心には不純な煩悩がある。神に近いと評せらるる者の内は「空」でなければならぬ!!
今度はこちらの番よ・・・真の宇宙の真理を見るが良い!!!

アスミタの作り上げた天舞宝輪の曼荼羅空間が歪められていく。
仏の姿は消え、亡者によって埋めつくされた曼荼羅が空間を塗り替えていく。
そしてその亡者たちが嘆きの形相を見せたまま曼荼羅から飛び出してくる!!

魔天無宝輪!!!

天舞宝輪に似た名前の技。それが示す通り、アタバクのこの技でアスミタの感覚が剥奪される。
ま、まさか乙女座が逆に感覚を剥奪されるようなことがあろうとは・・・思ってもみませんでした。
そしてその閉ざされた感覚の隙間を縫って亡者たちの苦痛が流れ込んでくる。
その苦痛の記憶に苛まれ倒れそうになるアスミタを支えるアタバク。

未熟よな・・・乙女座。
何を惑わされている。亡者如きの苦痛に何を響感する?

「空」を持つということは惑わされることもなくなるということなのであろうか。
それは人の痛みを理解できなくなるということに繋がっているように思えるのだが・・・?
アスミタがどうにも接しにくいのはそういう超然とした態度を見せてしまう部分によるところがやはり大きいのだろうか。
いや、今のアスミタはまだ人の痛みを理解する心は失ってはいない。
そんなアスミタがあることに気付く。アタバクの背後にある亡者の曼荼羅から苦痛の幾つかが消えかかっているのだ。

まさか。まさか私の天舞宝輪が奪ったのは・・・アタバクではなく・・・

アスミタの気付きを肯定するアタバク。

そうだ!!!この曼荼羅がある限り私に天舞宝輪は効かん!!!
剥奪されたのはここにひしめく私と同化した者たちの感覚よ!!!

それはまた何ともズルイ話でありますな。納得のいく話でもあるけど。つまり効いてないのにさっきは効いてるフリしてたのか?

この何億もの魂の盾全てを剥奪出来れば私を廃人に出来るやもな。
出来まい?それはお前の心に未だ煩悩があるからよ。だが私の心には何もない・・・!
無我の境地!!亡者どもがいくら泣き叫ぼうと助けを乞おうと私の心はなんら動かない。
ただ真理を求める心のみ!そうでなければこの大宇宙内に納められぬ・・・!

悟りを開き神に近づくというのはこういうことなのかもしれませんな。
人の痛みや苦しみを感じることがなくなる。それが神に近づくということ・・・何とも皮肉な話である。
その非情のアタバクは己の技を発動するために何億もの亡者の魂を啜る。まさに悪鬼!!

もはや論じることはない!!無に帰れ乙女座!!!魔天無宝輪!!!全感覚破壊!!!

そんなものが真理でたまるものか!!!
叫ぶアスミタ。しかしアタバクの技に抵抗することはできない。無念だ・・・!!

すまないアヒンサー・・・私はあの男の残忍な真理とやらを否定できなかった。
すまない・・・だが、この思いすらつまり煩悩なのだろうか。
この胸の痛みも。ただ一つの煩悩として無に帰るのか・・・だが、私は・・・

闇に落ちていくアスミタ。そのアスミタが見るのは昔の己の姿。
苦行林から離れチベットに修行にやってきていたころのこと。
ハクレイの元で修行しているアスミタは髪こそ生えているものの相変わらずやつれた様子。
やはり食事をとらずに己の体を痛めつけているというのだろうか。
相手は仏なのかどうなのか。何者かと対話し、己の心を曝け出すアスミタ。

苦行林から遠く離れても未だ世の痛みは私に届きます。だけどやはり私には私の痛みがないのです。
それら人の痛みを感じても私には現実味がない。私には誰も救えない。
まるで痛みという決してつかめない風が、ただ私の身体を吹き抜けていくようなのです。
この世はその風が吹きさらす巨大な苦行林。その中で私には苦痛も快楽もない。ただ、空虚であり無なのでしょう。

むしろ昔の方がアタバクの言う「空」に近い状態であったというアスミタ。
自身の痛みを持たないと言っていた昔のアスミタと違い、今のアスミタはその胸に痛みを覚えている。
それはかつての仏と思しきものとの問答で送られた言葉が意味するものを思い起こさせる。

そうだ。この世は無常。お前に限らず人は全て空なるものよ。
だがアスミタ。お前は此処にいてそうやって思考している。なんらかの縁によって。
お前の感覚は人の中でも巨大すぎる。それ故、多くの痛みに己を埋没させてしまっている。
しかしそのこと自体も縁となって今のお前を作っている。
いつか悟るよアスミタ。己が空虚ではないということを。
思って良いのだ。自分の内には哀しみも怒りもあり傷つく人間なのだと。
そうすれば見えてこよう。お前は神に近いが、神ではない。人間で良いのだと・・・

神に最も近いと言われようとも決して神ではない。
哀しみや痛みを感じる人間らしい感情は大事なものである。
他ならぬ真の神であるアテナも人間サーシャとして転生し、その痛みを感じながら生きてきた。その姿をアスミタは見ている。
痛みを感じる人間。だからこそ起こせる奇跡というものもある・・・!!

亡者の顔で埋めつくされた曼荼羅の空間。
その空間で無敵を誇るアタバクであるが、その亡者たちに異変が生じる。
なんと亡者たちが一斉に釈迦如来の真言を唱え始めたのだ!!
ナウマク・サマンダボダナン・バク。ナウマク・サマンダボダナン・バク・・・

既に取り込み終えて同一であるはずの亡者のこの行動に驚き戸惑うアタバク。
私の意にそぐわぬことはやめろ!!私はお前たちの宇宙ぞ!!!と吠える。が――

そんなこと・・・ここにいる誰も認めてなんかいねェよ!

そう告げるのは・・・アヒンサー!!
曼荼羅から1人抜け出していたらしい。そしてその身を以てアスミタを庇ったらしい。
感覚を破壊され、無に帰したはずのアスミタはまだ存在している。それはアヒンサーが己の感覚を身代わりにしたためだ。

アスミタ。なぁアスミタ。
なんだかんだ言ってお前は人のこと考えてくれてる。いつもすまし顔のくせしてこんなになってくれる。
皆お前を死なせたくないって言ってる。・・・って言っても皆地獄に落ちるような罰当たりばっかだけどな。
だけど俺たちはあいつよりお前の真理に賭けるぜ。どうしてなんだと思う?
それは、お前が俺たちのために泣ける奴だからだよ

そう告げて、感覚が破壊されたためか消え去るアヒンサー。
言葉を受け取ったアスミタは痛みと哀しみに涙を流し、そして結跏趺坐の構えを取る。
今になってその構えを取るとは一体!?

勿論説法をするためよ。この場に集う数多の魂たちのためにな!!

真言を唱え続ける亡者たちに向けて説法を行うと言い出すアスミタ。
アタバクは今更お前の説法如きでは救えぬ下等な奴らよ!!!と吠える。
しかしアスミタはこう返す。私は誰も救えんよ、と。

救いや悟りは結局個人的な追及の果てにしかない。それほど多くのものが我々の内にあるのだ。
喜び然り哀しみ然り。己の中に宇宙があり、己が宇宙と一つなのだ
それは決して奪い独占できるものではない!!!アタバク!!お前のこの邪悪な宇宙は破壊されるべきよ!!!

亡者たちの真言を受けながら小宇宙を高めていくアスミタ。

舞えよ宝輪!!!魂たちを解放せよ!!!
第八感剥奪!!!

ついに第八感までをも剥奪する威力を見せるアスミタの天舞宝輪。
冥界に存在するためには必須の第八感。これを剥奪されてはアタバクも亡者と何も変わりはなくなるはずである。
これだけの力を発揮したのはやはり亡者たちの唱える真言の力を借りた故であろうか。

吹き飛ばされるアタバク。その先にあるのは・・・輪廻の輪
輪廻転生が行われるその輪に飲み込まれれば再び冥闘士としての生を受けることは叶わない。
と説明しながらその輪廻の輪に飲まれるアタバク。・・・アァッ・・・
うーむ。極悪な奴であったがなんとも呆気のない最後であったものよ。

自由になった魂たちが生まれ変わるために己の意思でこの輪廻の輪への道を開いたのだろうか。アスミタはそう考える。
曼荼羅は消え去り、解放された魂たちは次々と輪廻の輪へと飛び去っていく。

君もそろそろ行かねばならん・・・アヒンサー。

どうやら完全に無に帰してはいなかった様子。
しかしその魂はボロボロであり、このままでは本当に消滅してしまう。その前に輪廻へ還らねばいけない。

・・・だけど輪廻に還ってどうなるんだよ。またあの地獄みたいな現世に帰ってまた死んで、そんでまた地獄へ来るんだろう・・・?

苦行の生と死の輪廻。それに疑問を唱えるアヒンサー。気持ちは分かる。
だからアスミタは語る。自分が今仕えている神、地上を守っているアテナについて。

私も思っていた。この苦しみばかりの地上にいかほどの価値があるのかと。それを守る神はいかほどと。
実際、初めて出会ったあの方は、世の苦しみに疲れ果て泣きじゃくっておられた。
だが、次に会ったその方は己の痛みは大切なものだと幸せそうに微笑んでおられた。
私は理解した。この地上はあの方が大切に守る巨大な苦行林であり楽園なのだと
あの方は神話の時代からずっと待っているのだ。
我々が幾度もこの地上で命を廻り、喜び、哀しみながら大いなる感覚に目覚め慈しみ合う日を。
だからこそ我々はこの地上と魂とその廻りを侵す理不尽と戦うのだろうと

それがアスミタの辿り着いた真理でありますか。
人は何度も生まれ変わり、何度も生き抜いて幸せになるために戦い続ける。
そのための楽園である地上を守るのがアテナであり、アテナの聖闘士たちであるということか。

そしたらさ・・・俺また母ちゃんの息子に生まれて・・・またさ・・・こうしてアスミタと・・・

そう告げながら笑顔で輪廻の輪へと還っていくアヒンサー。
見送りながら必ず叶えようと応えるアスミタ。

そうだ。この縁、必ず未来へ繋げねばならぬ。
数多の魂を苦しめる冥王ハーデスを討つ!

もうすぐ聖戦が始まる

最も神に近い男、乙女座のアスミタ。熱き想いを胸に静かにその時を待つ。
最後のページのカットは木欒子。冥界にて唯一生きながら存在する植物。
アスミタはこの前に座して聖戦を待つ。冥闘士との戦いにおいて大きな役割を果たすために・・・!!

というわけで、アスミタ外伝はこれにて終了であります。
いやあ、今回のゲストであるアヒンサーは今までにないほどの活躍を見せてくれましたね。
最後の強敵に対してまで活躍してくれるゲストというのはなかなかに珍しい。
難しい性格であるアスミタとの絡みもいい感じとなっておりましたし、別れもまた哀しいながらも希望が持てるようになっている。
いい話でありました。天舞宝輪の凄いところも見れましたしね!!

さて、次回からは牡牛座のアルデバラン編が開幕
ハスガードさんの話はどのようなものとなるのか。
残り人数の少ない後半にて満を持しての登場なだけに期待は高まります!!期待だ!!



聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝 9巻


アルデバラン編 第1話 二人の巨星  (2013年 7月号)


牡牛座の黄金聖闘士アルデバランの外伝が始まる!!

しかしてその物語はアルデバラン――ハスガードが死亡した聖戦の終結後から始まる。
世界を巻き込んだ冥王ハーデスとの聖戦から6年
アルデバランの黄金聖衣を受け継いだのは教え子であったテオネ
現在は聖域に残るたった2人の聖闘士の1人として修復作業に勤しんでおります。

いきなりのテオネの登場と牡牛座の黄金聖衣を纏った姿が見られたのは嬉しい限り。
しかし6年も経過しているのに聖闘士は2人だけで、修復作業も滞っている感じであるとは・・・
聖戦がいかに激しかったかを示していると考えればよいのでしょうか。
重機並の力を持つテオネがおりますのにのう。

シオンは教皇として知識の吸収という仕事もあるし、聖衣の修復という仕事もある。
となると神殿の修復作業なんかはほとんどテオネが1人で受け持たねばならないことになるわけで・・・大変だ。
なんとなく力仕事は得意だが細かい作業とかは苦手そうに思えますし。

ただ、近隣のロドリオ村の人にも修復作業は手伝ってもらっていたりするらしい。
ふむ。細かい装飾なんかはこういった人達に頼ることができそうですな。

神殿の修復も大事だが、そろそろ次代の聖闘士の指導も行わないといけない。やることは多大だ。
悩みくじけそうになるテオネ。俺がアルデバラン様のようだったら・・・と。
そんな自身の頬を殴りつけ気合を入れる。今はそんなことでは悩まない!!と。相変わらず真面目な子であるなぁ。

そんな聖域に薬草などの補給物資を積んだ馬車が近づいてきている。
その御者はセリンサ。かつてテオネと共にアルデバランに師事していた少女。
その横に座るのはアガシャ。おぉ・・・ロドリオ村と言われたからもしやと思ったら・・・!!
アルバフィカが聖戦で散った時に看取った少女ではありませんか。美しく育ったものだなぁ・・・

セリンサは聖闘士を辞めて戦災孤児たちを育てている様子。
直接的な戦いとはまた違った道を選んだセリンサ。本人も戦うことは性に合っていなかったと語る。
しかしその胸にはアルデバランの優しさと強さを引き継ぎたかったという想いが今でもあるらしく・・・慕われているなぁ。

聖域への道を急ぐ馬車の一行。
そこに襲い掛かるのが崖崩れ。緩くなっていた崖が馬車の振動で崩れたのか!?
潰される前に駆け抜けようとするセリンサ。
しかしたった1頭の馬が潰され足が止まってしまう。
セリンサとアガシャだけならともかく、馬車にはセリンサの子らが2人乗っている。
さすがに聖闘士としての修業を積んだ経験のあるセリンサでも3人を救うことは難しいか・・・

思わずアルデバランの名を思い浮かべて顔を伏せるセリンサ。
その窮地のタイミングであらわれたのは、アルデバランの名を受け継ぐ牡牛座の聖衣を着た男――テオネ。

グレートホーン!!!

腰だめに溜めた両手から放たれるグレートホーンが崩れてきた崖を吹き飛ばす!!スゲェ・・・!
うーむ。テオネも伊達にその聖衣を纏えるようになったわけではないということでしょうか。
6年の歳月は神殿の修復だけで費やしていたわけではないって話ですな。
むしろグレートホーンで更地にしてから修復した方が早い気がするな。修行にもなるし。

成長したテオネを見たセリンサ。思わずアルデバランと見間違えるほどであったという。
確かにその勇気ある行動、頼りになる感じは思い起こさせるものがありますわな。
しかしやはりまだまだ師には及んでいない。
さらなる大きな崖崩れには自分のグレートホーンでは防ぎきれないと馬車を担いで逃げ出すテオネ。

アルデバラン様・・・どうすれば貴方のようになれますか?

逃亡に不甲斐なさを感じるテオネ。まあ、セリンサたちや荷物は無事だったみたいだしいいじゃないですか。
確かに師であるハスガードならば大きい崖崩れも吹っ飛ばしてしまったかもしれませんが。
というか、まだテオネは腕組状態からのグレートホーンは身につけてないんですかね?
意外とあの居合のような抜き打ちグレートホーンはコツがいるのかもしれない。出来たら免許皆伝とかそんな感じの。

ともかく、一連の出来事を教皇となったシオンに報告するテオネ。
シオンはシオンで教皇の仕事が忙しく、聖衣の修復もまだ完了していない様子。
聖域を創り直すとは想像以上の激務よなと思わず黄昏てしまうほどだ。先代教皇セージの偉大さも改めて感じるってものである。
うーむ。少しの間くらいだけでも童虎に居てもらったらよかったかもしれませんね。

だが我々ものんびりしてはいられない。
ローマ法皇直々に要請の密書が届いた。その任務をお前に授けたい。
シチリア島エトナ山の巨人封じだ

この状況にあっても聖闘士の務めとして世の怪異と戦わなければいけないのか。
いやしかし、今回の相手はスケールがケタ違いといえる。

エトナ山の巨人といえばテュポン・・・!
聖戦ギガントマキア最後の巨人ではないですか・・・!!

ほう。ギガントマキア。
ギリシア神話におけるゼウスたちオリュンポスの神々と巨人のギガス一族が大地を賭けて争った戦いでありますな。
その戦いの最後で生まれたのがギリシャ神話でも最悪の怪物と言われるテュポン。
不死であるがゆえにゼウスも殺すことは出来ず、エトナ山の下敷きにして封じるしかなかったという。
その最悪の巨人が今このタイミングで目覚めようとしているのだそうな。うわぁ。

記録によると14年前に一度聖域は封印のための使いを出している。
ほう。その時も目覚めかけたけど封印していたということですかね?
そうなるとその封印が完全でなかった可能性があるわけですな。

知っての通り聖域軍の手勢は我々2人。再びギガントマキアが起こればこの地上を守る余力はない・・・

沈痛な面持ちのシオン。任務を受けたテオネも今までとはケタ違いの重圧をその身に感じている。
神話の巨人と戦う。自分がしくじれば地上が滅ぶ。

ケタが違う・・・戦うものも守るものも・・・これが、黄金聖衣を纏う・・・ということなのか・・・

身の竦む思いを感じるテオネ。
それを見たシオン。任務は取り下げ自身が出向くことも考える。
が、テオネはそれを制す。シオン様は聖域を動いてはなりません、と。

すみません・・・俺、まだ・・・自分の実力とか・・・信じきれなくて・・・だけど・・・
6年前の聖戦ではきっと皆が・・・この震えと戦ったのでしょう!
皆が命をかけて守ったこの地上・・・こんなところで失うわけにはいかない!
その任務必ず果たしましょう!この牡牛座の黄金聖衣にかけて!!

心でアルデバランに勇気を、力を願いながら勇ましい返事をするテオネ。
確かに他の黄金聖闘士たちもこうやって数々の世界の危機を救ってきたわけですからねぇ。ここで引くわけにはいかない。
意志を見せてくれたテオネを讃えるシオン。お前は今や私のなくてはならん片腕よ。

お前の力は私が信じている。お前という男を残してくれたアルデバランに感謝しているぞ

シオンとしてはまさしく素直な気持ちでありましょうな。
生き残ってくれて、今こうして働いてくれている感謝してもし足りないぐらいでありましょう。
ラカーユも生きのびていたら山羊座の黄金聖闘士として闘っていたのかもしれないなぁ・・・

明朝。エトナ山に向かう前に聖域の慰霊地を訪れるテオネ。
旅立ちの前にアルデバランとサロの墓を見舞おうということか。
しかしそこには先客としてセリンサの姿があった。
久しぶりに師弟4名が揃った形となりますな。2人は墓の下でありますが。
離れたところではアガシャがアルバフィカの墓を見舞っている様子。

ここでセリンサから衝撃的な話を聞かされるテオネ。
14年前、エトナ山の任務を受けて封印に出向いたのはアルデバランであったという。
その任務の途中、クレタ島で拾われたのがセリンサであったそうな。ほほう。

アルデバラン――当時はまだハスガードであった――はある男に会うためにクレタ島に向かっていたという。
テオネはこれから任務に赴き見ることとなるのでしょう。牡牛座の神話を。2つの巨星の物語を

14年前のクレタ島。
牡牛座の黄金聖衣を纏ったハスガードが何者かと闘っている。
その様子を見ている幼い頃のセリンサと同年代の子供たち。
先生は強くてデッカイ!絶対負けない!そんなチビ踏み潰しちゃってと叫んでいる。元気な子だ。

フ・・・チビか・・・初めて言われたな・・・

チビ呼ばわりされたのは巨漢のハズガードの方であった。
まあ、セリンサの先生がもっと遙かに大きいのだからしょうがないですわな。ってデカすぎ!!

その巨体は、腕組から放つ山をも砕くハスガードのグレートホーンの直撃を胸板で弾くほどであるという。デカすぎ!!

コル・タウリ先生かっこいー!!!

喜びのセリンサ。可愛いことですな。
それはさておきコル・タウリ(牡牛の心臓)でありますか。
ラテン語でのアルデバランの別名でありますな。
なるほど、これが2つの巨星の物語というわけでありますな。

聖戦後のテオネの話から始まった物語だが、主眼はハスガードのテュポン封印話となりそうですね。
あまり封印とかそういう仕事に向いている感じはしませんが・・・大丈夫なのだろうか。
山をもう1個落としておいてくれという話なら確かにうってつけなのかもしれませんが。

しかしクレタ島かぁ。
クレタ島といえば迷宮のミノタウロスが有名。
またミノス王の存在も有名。つまりミーノス・・・グリフォンのミーノスの出番がある可能性がある・・・!?
ゲストとして出てくるには巨大な存在。テュポンだけでもデカイ存在なのにさすがにそれはないか・・・

デカイ男であるハスガードらしくデカイ物語となってきました。
巨星の活躍に期待でありますな。



アルデバラン編 第2話 愚直なる拳  (2013年 8月号)


聖戦より8年前の聖域。
エトナ山の巨人テュポンが復活する兆しがあると教皇から聞き緊張した様子のシジフォス。
この時期の聖域だと黄金聖闘士はまだ数少ない。
シジフォス、ハスガード、アスプロス。後は教皇であるセージくらいであろうか。アスミタもいるか。
この状況で最後の巨人と言われるテュポンに復活されたら対処のしようがないのではなかろうか。危惧するシジフォス。

冥界の軍勢の前に巨人と争うのもまた一興よ
もっとも教皇様は既に手を打っておられますがね。

そう述べてシジフォスに近づくのは双子座の黄金聖闘士アスプロス!!
いやあまさかこの男が登場してくるとは!!しかも共に教皇候補であるシジフォスに絡むとは・・・!!

アスプロスは教皇がエトナ山へハスガードを向かわせたことをシジフォスに告げる。
そしてそこから微妙に嫌味を開始しだすアスプロス。

彼は2年前の任務にて最強の獅子座イリアス様を亡くし、あまつさえ彼の一人息子を見失っている。
貴方の兄と甥でしたな。射手座のシジフォス

何やら含みを持たせた言い方ですねぇ。
仲違いさせて黄金聖闘士からの信任を減らし、教皇選抜レースから蹴落とそうという狙いだろうか。
しかしシジフォスは別にハスガードを恨んでいるわけでもない。
兄のイリアスは既に肺を病んでおり長くないことは知っていた。それにそのことで一番己を責めてきたのはハスガード自身である。

・・・俺は知っている。ハスガードは必ずやり遂げる

さすがの人格者でありますな。
そのように信じてもらっているハスガードはエトナ山にて自分よりも巨大な存在、コル・タウリと激闘中。
子供たちに敵視されながらの戦闘という今までにないシチュエーションにかなり戸惑っておりますな。

しかしエトナ山の巨人を封じるにはこのコル・タウリの力が必要であるという。
やはりテュポン自身との闘いにはならないようですな。封じるのが目的となるか。

クレタ・・・島の侵入者・・・エウロパ様の子ら・・・守る・・・

どうにか力を借りたいのだが、相手は聞く耳を持つ様子がない。
ならばやむを得ない。相手の動きを封じるためにも本気を出す!!

タイタンズブレイク!!!

地面をひっくり返し、ガレキの山にコル・タウリを沈めるハスガード。
巨体に似合った豪快な技でありますな。

コル・タウリが埋まってしまったのを見て泣きながら走ってくるセリンサ。
ハスガードの胸を幼い拳でポカポカしている。可愛らしいことですな。
まあ、ちゃんと手加減はしているし、あれほど頑丈な男がこの程度では死なないと述べるハスガード。
この技って手加減ができるような性質の技なんだろうか・・・?
とはいえセリンサが危惧しているのはそれだけではない。

・・・だって貴方は先生をここから連れてくために来たんでしょ!?
せっ・・・先生がいなくなったら私たち・・・っ。どうすればいいのよ・・・っ。

ふむ。これはまた心苦しい話でありますなぁ。
封印にはコル・タウリの力が必要ということであるが、それは命に関わるようなことなのだろうか。
任務のためとはいえ幼い子供を泣かせるようなマネはハスガードも本意ではなかろうが・・・

いや、今はそれを考えている場合ではない。
地面に埋まったはずのコル・タウリが再び動き始めている。
姿を現したコル・タウリ。見る限りダメージを受けている様子はない。タフですなぁ。
いや、どうやらこの男。ただの人間ではないようだ。まあ、こんなデカイ人間が普通にいるわけないとは思うけど。

なんだ?この軋むような音は!?この男は・・・この男は一体何者なんだ・・・!?

コル・タウリの体が高温で真っ赤になる。
そしてセリンサに逃げろ、俺から離れろと告げる。

エウロパ様の子ヲ・・・守ル・・・クレタ島の子たちは・・・私ガ守ル。
イー・コール・ノヴァ!!!

地面から無数の光の柱が吹き出してくる。
この光。聖戦時のハスガードが使ったタイタンズ・ノヴァの光・・・!?
そうか。タイタンズブレイクとイー・コール・ノヴァを組み合わせた技が将来編み出されることになるわけか。
そのことはそのこととして、強力な技を前にしてさすがに焦りを見せるハスガード。
胸にセリンサを抱えていることもあるし、そりゃ焦るか。

大地が避け、落下するハスガードとセリンサ。
コル・タウリはセリンサを救うために地下へと向かう。ふむ、決着は地下でという形になりそうですな。

ハスガードたちが落下したのはかの有名なクレタ島の地下迷宮(ラビリンス)
どうやらセリンサは一度ここに迷い込んだことがある様子。かなり怯えておりますな。
そのすぐ側にあるのは頼りになりそうな大男。思わずホッとしてしまうセリンサ。おやおや。

コル・タウリと一戦構えた俺が憎いのは分かるが、こんな場所でまで邪険にしてくれるなと頼むハスガード。
しかしセリンサの返答は一瞥もない。

嫌。大人は私たちを見捨てたもの。絶対に信用しないんだから

どうやらセリンサたちはこの迷宮に置き去りにされた子供たちであるらしい。
化物が住み着いているという伝説もある迷宮に子供を置き去りにする。それは確かに酷い話である。
多感な子供が大人たちを恨むようになっても仕方がないのかもしれない。
そしてそんな子供たちを救ったのがコル・タウリ先生であるとのこと。
生きていくための沢山のことを教えてくれた先生。そりゃあ慕うのは当然というものでありましょう。

大人なんていざって時に自分の都合ばっかり・・・それなのにまた――私たちから先生まで奪わないでよ!!

セリンサの話と叫びを聞いてある少年のことを思い出してしまうハスガード。
共にその場にいたにも関わらず、少年の親を守ることが出来ず、そしてその少年――レグルスを保護することもできなかった。

・・・お前の怒りはもっともだ・・・酷い大人がいるな・・・
・・・だがきっと、俺もそやつらと同類よ・・・肝心な時に何もしてやれなかった・・・
・・・しかしな。俺はそのことを悔やまぬ日は一日たりとないのだ・・・

その大人たちが同じ想いを抱いているかは分からない。
しかし理由があった可能性がないわけではない。
何にせよハスガードは大いに悔やんでいる。それは間違いない。

・・・セリンサよ。"子供は種子"なのだそうだ
俺が尊敬し、目標としていた方の言葉だ。子供は己で感じたことも、今いる俺たちの思いも包んで次代に飛んでいく
だからこそな。俺はもう、どの種子も見失わんと決めたのだ。

次代のために。ハスガードを示す言葉が飛び出しましたね。
こういった過去も含め、色んな若者を見守ろうとする性格になっていったんでしょうな。

とりあえずハスガードの言葉が聞いたのか、あまり邪険な扱いはしないようになったセリンサ。
そのセリンサを腕に乗せて地上への道を探すハスガード。

迷宮が怖くない・・・この人・・・他の大人と違う・・・

セリンサも感じるハスガードの頼もしさ。よい感じでありますな。
しかし、ハスガードの受けた任務を遂行するにはやはりコル・タウリの力が不可欠となる。
それにエトナ山の巨人を倒さなければどの道子供たちも危ないことになる。
いや、この場の子供たちだけではない。世界中の子供たちの未来が閉ざされることとなるのだ。

だからこそ聞きたい。コル・タウリとはいったい何者なのだ。
俺は人並みより随分ガタイがある方だが・・・奴はそんな俺の2倍以上は大きい。
先ほどの技とて明らかに常人の域を凌駕する力よ。
それ故思う。あの男こそギガス族の生き残りなのではないのか?・・・あるいは・・・

推測を口にするハスガード。
しかしそれは残念ながら的中してはいない。
地鳴りとコル・タウリの放つ咆哮を聞きながらセリンサは語る。

この地下迷宮は神話の時代にダイダロスって人が作ったんだって。先生が教えてくれた。
ダイダロスは他にもクレタ島で沢山のものを造ったの。
その傑作の一つがね、牡牛の心臓にゼウスの血(イー・コール)を流して作った青銅人形
ゼウスの愛したエウロパとクレタ島を守る自動人形なの。

なんと。人形であったか!!それで先の技を放つ際に軋んだ音がしていたわけですな。
しかし神話の時代から動き続けているとは凄い稼働日数でありますな。

エウロパといえば牡牛座の伝承にあるフェニキア王の娘の名前。
牡牛に化けたゼウスはエウロパを背に乗せて連れ出し、娶ったという。
もちろんセリンサたちはエウロパの子供たちではない。
それでもその使命を守るため、クレタ島の子たちをエウロパの子として守ろうとしているコル・タウリ。

なれば・・・やはりお前は子供たちのためエトナ山へ行くべきなのだ・・・!
なればこそ俺は・・・俺は・・・!!!
お前を動かすほどの覚悟を見せねばならん・・・!!!

襲い掛かるコル・タウリの巨大な拳をまともに顔面で受けとめるハスガード。
クレタを、伝説を支えてきた拳。よもや避けるわけにはいくまい!いかに強大であろうと!

・・・だが俺とて使命と・・・誓いをもってここにいる・・・!!
お前がどんなに巨大であろうと・・・押し負けるわけにはいかんのだ!!!

覚悟を見せるために拳を交えるハスガード。
果たしてコル・タウリの心に届くのであろうか。
人形とはいえ花を愛でる優しさを持った者である。届くと信じたい。

ところでエウロパの子は3人おり、1人はクレタ島の王となるミノス。もう1人はラダマンテュスであるという。
何だか三巨頭の名前に似ているが・・・あいつら保護が必要な連中じゃないよね!!
子供のうちは可愛げがあったのかもしれない。たぶん。ひょっとしたら。



アルデバラン編 第3話 守るべきもの  (2013年 9月号)


何千・何万年もの時を生き、クレタ島の守護を続けるコル・タウリ。
その歴史に張る覚悟を見せねばならぬとその拳を顔面で受けとめたハスガード。
さらに自らの拳を相手に喰らわせる。
ふむ、やはり男同士。話し合いの最終手段は拳によるものしかないというわけか。

入った・・・!!!
グレートホーンもタイタンズ・ブレイクも効かなかったこの男に・・・やっと・・・!!

確かにハスガードの一撃は効いている。巨体を後ろへと倒れさせるコル・タウリ。
とはいえこれで終わりというわけではなさそうだ。
駆け寄ろうとするセリンサを止め、ハスガードは語る。

お前がコル・タウリを必要としているのは分かる・・・だが!世界にもあの男が必要なのだ・・・!
エトナ山の巨人を封じることはお前たちを守ることに繋がる。
今わかった・・・俺の使命はあの男の心を動かすこと!!

身勝手に見えてもいい。これがお前たちを生かし、次代に飛ばす道となるなら・・・!!そう考えるハスガード。
まだそこまでの年というわけでもありますまいに、既に次代のことを考えている。
レグルスやイリアスのことがあったからとはいえ・・・老成している感じはありますなぁ。

倒れ伏したコル・タウリに近付くハズガード。
しかし突如、その破損した胸から電撃が放出される。なにィ!!?
その雷は黄金聖衣でも防げない。そう、これは神の・・・ゼウスの雷。
コル・タウリの心臓に流れるイー・コールはゼウスの血である。その高温の体もゼウスの雷をはらむ地の廻り故である。
どうやらそれが暴走し、あふれ出ている様子。危険ですなぁ。

あの雷こそコル・タウリの真髄ということか・・・!?

牡牛の心臓の名を冠するだけに心臓こそが重要という話ですな。
まあ、大神の血で造られているぐらいだし重要なのは間違いない。
しかしその雷が真髄であるというのはハスガードさんの勘違いでございます。セリンサが涙ながらに教えてくれる。

・・・寿命なの
先生・・・少しずつ壊れてきたの・・・あの雷だって・・・制御するのができなくて・・・
先生も自分で分かってた・・・だから私たちを傷つけないように・・・無理はしないように静かに暮らしてたのに・・・
子供だって分かるもん・・・!先生が必要とされてることぐらい・・・
・・・でも・・・先生はずっとこのクレタ島を守ってきたもの・・・!
だからお願い・・・最後までクレタに・・・エウロパ様の側にいさせて・・・!!!

寿命が尽きるまで穏やかに過ごさせてほしい。そう願うセリンサ。
だがその願いはコル・タウリの願いと一致するものであろうか・・・?

心臓を暴走させ、体に高熱を宿し突っ込んでくるコル・タウリ。
膨大な熱量を伴った体に組み付かれ、さすがのハスガードも苦痛の声をあげる。

なんと・・・いう・・・プレッシャー・・・!!
真っ赤に燃える体・・・心臓から迸る大神の雷・・・強大すぎる怪力・・・!まさに神話の守護者・・・!巨星(コル・タウリ)!!!

圧倒的なまでの威圧感。それに打たれつつも、しかし別の想いも同時に抱くハスガード。

俺にはな・・・その力が・・・声が・・・虚ろに感じるのだ。
まるで老いた恒星が最後の願いを前に残った力をくすぶらせているような

コル・タウリが迷宮にやってきてから呟いているのはクレタを、エウロパ様の子を守るという使命に関してのみ。
長い時をかけて守り続けてきたその使命の前にはハスガードの言葉も割り込む余地はないのかもしれない。
どうにかしてこの男の心を動かさねばならない。共に戦うために。ならば・・・!!

ならば俺もまた・・・巨星となろう!!!

覚悟を決めるハスガード。その身から立ち上がる巨大な牡牛の小宇宙にさすがのコル・タウリも目を瞠る。

今こそ受けよコル・タウリ!!!牡牛座の拳を・・・!!!
グレートホーン!!!

至近距離から放たれるグレートホーン。
体を貫くその一撃に黄金の牡牛を見るコル・タウリ。

貴方様・・・ナノ・・・デスカ?ゼウスよ・・・・・・!!!

確かに牡牛座の元となった牡牛はゼウスが変化した姿と言われている。
黄金に輝く神々しい牡牛を見たコル・タウリが勘違いしてしまっても無理はありますまい。
ただその時の牡牛ってゼウスが気に行った女性――エウロパを連れ去るために化けた姿なのだが・・・うむ、まあそれはいいか。

ともかくグレートホーンの一撃を受け動きを止めたコル・タウリ。
その心臓は激しく脈打ち、太古の記憶を呼び覚まそうとしている。

最初の一輪はエウロパ様だった。そして、小さな――3人の種子。

思い起こすのはまだエウロパが生きており、ゼウスとの間に生まれた3人の子供とクレタ島で過ごしていた時のこと。
エウロパは語る。コル・タウリは確かにダイダロスの造った自動人形かもしれない。だけど――

私にとってはね、貴方もあの子たちも、同じ家族なのだと思っていますよ。
末長く私たちを守ってくださいね。コル・タウリ

そのような言葉をかけられていたコル・タウリ。
その言葉の通り、末長く。気の遠くなるほどに長い時が経つ間もずっとクレタを守り続けてきたコル・タウリ。
時は流れエウロパは消えた。しかしその残した種子はあちこちで開花している。

どこですか?エウロパ様・・・何処へ・・・?

種子が世界中へと飛び散ったことで逆に守るべき存在を見失っている様子のコル・タウリ。
かろうじてクレタとそこに住む子ら守るという意識は残っている様子。
しかし今、その心臓は暴走し、守るべき子供たちごと島を吹き飛ばしてしまいそうになっている。
そんなコル・タウリの体に乗り、声をかけるハスガード。自らの体で雷を防いでいるようだ。

傷つき倒れたコル・タウリ。
その口から洩れるのはエウロパへの謝罪の言葉。
既にこの身は朽ち、イー・コールの暴走を止めることはできない。

ソシテ・・・貴女・・・ヲ・・・見失ッ・・・タ。
私・・・ノ巨大ナ掌・・・モ・・・体モ・・・地ニ満チ・・・ル・・・貴女ノ・・・種子ニハ・・・足リ・・・ナイ・・・
貴女ヲ・・・私ノ・・・家族ヲ・・守・・・リ・・・タイノニ・・・

苦悩を口にするコル・タウリ。やはりこの男の願いは静かに暮らすことではない。
とにかく守りたい。世界に散らばったエウロパの子たちを守りたいと考えているのだ。

ならば世界ごと守ろうコル・タウリ!!もう見失わぬように・・・!
共に戦おう!守らせてくれ・・・コル・タウリ!!!

必死に呼びかけるハスガード。そして感じる。コル・タウリの苦しみを――
その使命、想い、力。何万年もの時間背負ってきたその重さに苦しんでいることを。

何が出来る・・・俺に・・・!そのお前に俺は・・・!?
ならば俺は・・・!!!!一瞬でも・・・共に背負おう・・・

コル・タウリの心臓を持ち上げ、全身にその雷を浴びるハスガード。
それによりコル・タウリ自身が雷を浴びることはなくなり、体が軽くなったように感じられる。
己の身を呈して庇うハスガードの姿を見て、ようやく笑みを浮かべるコル・タウリでありました。

馬鹿ナ男ダ・・・

ハスガードの持つ実直さ。それがようやくコル・タウリにも響いたみたいですな。
穏やかな気持ちになったためか、心臓の暴走から一瞬でも逃れられたためか、暴走も収まったようです。

そしてその夜。
迷宮から帰還した3名。ハスガードは離れた所に座し、コル・タウリとセリンサは子供たちと過ごしている。
そしてコル・タウリはハスガードと共に行くことを子供たちに告げている様子。
直接守ることはもう出来ないかもしれない。しかしこの任務は子供たちの未来を守ることでもある。
最後までエウロパ様とその子たちを守る。その任を全うせねばならぬと語るコル・タウリ。
子供たちとしてはそれは直に納得できるものでは無い。ぐずりたくもなるでしょう。
だが――少し前までは一番ぐずっていた感じのあるセリンサがこう言いだす。先生の好きにさせればいいじゃない、と。

それに私分かったんだ。先生もずっと迷子だったんだって
帰り道がやっと見つかったんでしょう?
でも・・・できるならね。ここも先生のおうちだって・・・忘れないで欲しいな・・・

涙ながらにそう語るセリンサ。うーむ、切ないですなぁ。
子供を守るために必死になって戦うハスガードたち。しかしその子供を泣かせる結果にもなってしまっている。
難しい話である。花は少し力を入れれば容易く潰れてしまう。子供も似たようなものであるのかもしれない。
守りたいとは願うが、扱いは難しい。まだ年若いハスガードには難しいと感じられて当然でありますわな。

兎にも角にもコル・タウリの協力を得ることが出来たハスガード。
2人は急ぎエトナ山へと向かう。山全体に暗い小宇宙が充満しており、巨人復活の噂は本当であったことが感じられる。
しかしそれがテュポンのものであるかどうかは分からない。
それを確かめるためにも進む2人。さてはてどうなりますことか・・・

これまでのペースだと次回でアルデバラン編は終了となるわけですが、どうなのでしょうか。
予告では最後とはどこにも書いていないが・・・?というか、あと1話で最後まで行くのか・・・?
現代のテオネの話もありますし・・・うーむ。気になる所である。
まあ、上手く纏めてくれるとは思ってますけどね。そこは疑わずにいられるところであります。



アルデバラン編 第4話 守護者  (2013年 10月号)


巨人の封印のためエトナ山へとやってきたハスガードとコル・タウリ。
さっそく復活したと思しき巨人。オリンポスの十二神と争ったギガスと戦っている様子。
子供たちの生きる地上を守るため。あの子たちを未来へ飛ばせるように戦う巨星たち!!

さて、2人が相手している巨人は果たしてテュポンなのか?
そこの話をするために少し時間は巻き戻る。
エトナ山の火口の一つ。人の手が入ったらしき洞窟を歩く2人。
その途中で見かけたのは無数に横たわる自動人形の姿
これはもしや・・・これまでの長い年月の間巨人たちを封じ続けてきた自動人形の成れの果てであるのか!?
膨大な自動人形の骸の姿に怯む2人。そこで地中より響きわたるのは暗い小宇宙の持ち主の声。

性懲りもなく来たか・・・ダイダロスの傀儡人形よ。
・・・だが作り物の巨人で一時はしのげても結局我の復活は止められなかったな。
この巨人族テュポンの兄、大音響を鳴らす者(エンケラドス)のな!!

おっと、さすがにテュポンではありませんでしたか。
とはいえギガス族には違いない。その力はオリンポスの神々とも渡り合えるものである。
ちなみにエンケラドスはアテナと闘い封じられたとされているそうな。へぇ。それは因縁の相手でございますな。

これより先、地上は我々ギガス族に戻る。各地でゼウスとアテナに封じられた兄弟たちを解放し、そしてやがては・・・
再びギガントマキアを起こし、神々と人間を根絶やしにしてくれる・・・!!

野望を口にするエンケラドス。もちろんそれをさせぬためにここにいるのがアテナの聖闘士ハスガードであります。
復活を果たしたというのであれば早々に封じねばならぬ。
その覚悟を決めてやってきたハスガードたちであるが・・・果たして勝てるのだろうか。

本格的な闘いが始まる直前、コル・タウリはハスガードに話しかける。
お前に出会わなければ私はこ奴らを・・・私にも同胞がいると知れなかった。そう告げ、礼を述べる。

ココニ・・・来テカラ心臓ガ騒グ・・・
奴ラニ地上ヲ渡スナト・・・コノ山カラ・・・巨人ヲ出スナト・・・同胞モ来テ戦エト・・・!
オ前ニ会エテ良カッタ・・・!!

コル・タウリ「アイツハ倒サネバナラヌ・・・!!」
ハスガード「その通りだ・・・コル・タウリ!!!」

戦いの意識を今一度高め、2人は初手から必殺の一撃を放つ。
タイタンズブレイクとイー・コール・ノヴァの同時発動だ!!

地底へ戻れ巨人!!!

山を投げつけられ地底へと封じられた巨人に大地を浴びせかける。これは確かに有効そうだ。だが・・・

復活した巨人には通じぬよ!!!ギガンラウド!!!

巨大な体から放たれる咆哮が返した大地をえぐっていく。
さすがに神と争う戦闘力。簡単にどうこう出来る相手ではないか・・・!!

2人を吹き飛ばしたと確信するエンケラドス。
背から翼を生やし、下半身は大蛇と化しているその姿を今こそ地上へと現そうと欲する。
しかし――まだ戦いは終わってはいない。その全身を細い光が縛り付け、動きを封じているものがいるのだ!!

なんだ・・・?飛び立てぬ・・・いや、体が動かぬ・・・!なんだ・・・この雷の鎖は・・・?
まさか・・・これは・・・お前たちの仕業なのか・・・!?

そう、これぞコル・タウリの心臓から迸るゼウスの雷の力。
ダイダロスが遺した最高傑作、エウロパを守る牡牛の心臓コル・タウリの力である。

動きの大半を封じられたエンケラドス。
しかしかろうじて動く大蛇の尾を振り回してコル・タウリの巨体を吹き飛ばす。
いかにコル・タウリが巨体といってもそれは人間の目から見てのこと。ギガス族にしてみれば大したものでは無い。
動きは封じることができたものの、このままでは殴り潰されることとなってしまう・・・
だが、もちろんただ黙って殴られているコル・タウリでもない。
命じられたことしかできぬ木偶と罵られながらも反撃を開始する。

エンケラドス・・・長イ時間ハナ、ソノ木偶ニスラ悲願ヲ持タセルノダ・・・!!

力を振り絞り、エンケラドスの頭部へと体当たりをしかける。
そしてこのままゼウスの血、イー・コールを暴走させ解放させるつもりである様子。
残った最後の意識でハスガードに頼みをするコル・タウリ。

私ゴトコノ巨人ヲ封ジロ!!!エトナ山ノ深クヘ沈メルノダ!!

捨て身。もはやこの巨人を封じるにはそれしかないと述べるコル・タウリ。
しかしそれでは・・・それではもう2度とセリンサたちと会うことはできなくなる!!
そう吠え、考え直させようとするハスガード。しかしコル・タウリは笑みを浮かべこう語り出す。

人間ハ良イナ。ハスガードヨ。
大丈夫ダ。アノ子タチハ・・・人間ハ強イ。私ハズット圧倒サレテキタ。
私タチ自動人形ハ何モ生メズ広ゲラレナイ。一代限り。朽チルダケノ存在ヨ。
ソレガ私タチノ限界。膨大ナ時間ノ中・・・私ノ成セタコトハ1ツ・・・エウロパ様ノ家族ノ種子ヲ守ルコトダケ・・・!
キット私ハ待ッテイタノダ。守リ続ケタ種子タチヲ託セル者ガ現レルコノ日ヲ!!

溶岩より熱く体を燃え上がらせるコル・タウリ。
ゼウスの血を全て解放し、エンケラドスへと叩き付ける。

叶エテクレ、ハスガード!
私ノ守ッテキタモノヲ。人間ノオ前ダカラコソ・・・ドウカ人間ノヨウニ。
私ノ想イヲ・・・継イデクレ・・・!!!

機械人形であるコル・タウリは何も生めず広げられず一代限りで朽ち果てると語った。
しかし想いならば受け継ぐことはできる。そう、人間のように!!
そしてその想いを受け取ったハスガードの纏う牡牛座の聖衣が輝きを増す。

呼応しているのか牡牛座の聖衣・・・コル・タウリの想いに・・・あふれるゼウスの血の力に・・・俺の魂に・・・!!
ここから先は次代なのだな・・・!?コル・タウリよ!

次代へと種子を飛ばす。
その想いをイリアスだけではなくコル・タウリからも受け継ぐハスガード。
自身もまた巨星を受け継ぐ次代であるということだろうか・・・!!

コル・タウリ。お前は人間のようにと言ったな。だが俺は、巨星のようでありたい!!!

魂を震わせ、想いを乗せて改めて大地を開くハスガード。そのパワーは先程とは段違いである。
この力にはさすがに焦り、吹き飛ばそうと咆哮を放つエンケラドス。
だがゼウスの血が、コル・タウリの想いが力をくれている。もっと己の内を爆発させろと。

あの男のように守りたいならば!あの男のように貫きたいなら!!あの男を越えたいならば!!!
帰れギガス!!地の底へ!!!

俺は次代の巨星となる!!!
そう誓い、エンケラドスを地中へと封じるために大地を返すハスガード。
想いを継ぎ、巨星を受け継ぐ。これがハスガードがこの先、巨星・・・アルデバランを名乗るようになった由縁でありますか。

さて、予想通りこの1話では終了まではいかなかったアルデバラン編。
今までより少しページ数も少ないですし、全4回の構成から全5回の構成となったのでしょうか?
となると次回でエピローグ。テオネの話も合わせて完結といった感じとなりそうですな。
テオネは封印が完了したはずのエトナ山で何を見ることとなるのか・・・楽しみです。



アルデバラン編 最終話 種子  (2013年 11月号)


巨人を封印するために大地の蓋を拓くハスガード。

燃えろ・・・爆発しろ俺の中の小宇宙・・・!超新星のように・・・!!あの男のように・・・!!!
タイタンズ・ノヴァ!!!

飛び出しましたタイタンズ・ノヴァ。
ハスガードとコル・タウリ。2人の大技を組み合わせた超新星のような輝きと破壊力を持つ一撃。
これはさすがのエンケラドスも抗しきれず、再び地の底へと封じられることになる。
とはいえ、地の底に落ちながらも自分を完全に押し留めることはできないぞと言い出すエンケラドス。

心しておけ聖闘士よーッ!!!

ともかく、この場は封印に成功した様子。コル・タウリに感謝し、子供たちは守られたと礼を述べるハスガード。
その時、牡牛座の黄金聖衣が共鳴する。何事かと思った時――視界に花園が広がった。
今の今までエトナ山にいたはずなのに、これは一体どうしたことか。
聖衣の共鳴はなおも続いている。その共鳴が側にコル・タウリが立っていることを教えてくれる。

・・・そうか・・・これはお前の最後の思念・・・ここに咲く花は皆・・・お前が守り続けた種子か・・・

コル・タウリが長い時をかけて守り続けてきた種子。
それをハスガードに示し、お前に託すと語り掛けるコル・タウリ。

コル・タウリ「コノ花園モ・・・モウ果テガ何処カモ分カラヌガ・・・」
ハスガード「・・・だが、美しい花園だ・・・必ず守り継ぐ・・・!!!

世界中に飛び散っていった種子たち。
果てが何処かも分からない。だがその種子たちを守るためにも世界を守らなければいけない。
その使命を背負い、必ず守り継ぐと宣言するハスガードでありました。

私ト、アノ場ニイタ自動人形タチハ幸イダ。本来何モ残セヌ人形ノ我ラガ、コウシテ種子ヲ残セタノダカラ。
サラバダ。ココカラ先ハ次代ヨ・・・・・・!

立ち去るコル・タウリ。その歩みの先にいる女性は・・・エウロパ。
クレタ島でコル・タウリが守り続けた女性。その元へと帰っていくことができたようですな・・・ようやく・・・

鳴くな牡牛座の聖衣よ。コル・タウリは去ったが・・・俺たちは生きて先へ進まねば・・・
刻まねばならん・・・我らの神話の影にいたコル・タウリという巨星の願いを・・・!
彼の守った時より長く・・・!だからこそ俺は・・・もう一つの巨星として生きる・・・!!!

そう、この日からハスガードは"アルデバラン"として道を歩み始めることとなったのだ。
ただ牡牛座の伝統ある名前として受け継いだわけではない。巨星として生きるというその意味を噛みしめ名乗っているのである。
うーむ、並々ならぬ決意がうかがい知れますなぁ。

それから、ボロボロでクレタ島に戻ったハスガードはセリンサたちを引き取って聖域へと戻っていった。
自分の道が見つかるまではと世話を焼いたわけでありますな。
そうしてセリンサは聖闘士候補生となり、しかしその道を外れ――現在へと至る。

ハスガードの初任務から14年が経過。
その間、次々に寄る辺のない子に頼られていつの間にか大所帯になってしまったという。さもありなん。
実のところ子供の扱いはそんなに得意じゃなさそうなのに、それでも慕われてしまうんですなぁ。人柄というやつですかね。

そしてそんあ子供たちの中から牡牛座のテオネが生まれて――
・・・でも、ごめんなさい。今はそのアルデバランの名が少し怖いです。それを名乗ったら不意に消えてしまいそうで・・・
・・・でも、あいつはずっと必死でその星を目指して、未来のためひたむきに自分を使おうとしていて・・・
怖いけど・・・信じていたいんです・・・
コル・タウリ先生。アルデバラン様・・・エトナ山に行ったテオネを見守ってください!
あいつが生きて輝けるよう・・・貴方たちの思いを継げるよう・・・!!

ハスガード――アルデバランの墓の前で必死に祈るセリンサ。
その祈りを受けるテオネはエトナ山に辿り着き、絶望的な力の差を目の当たりにしている。
危惧していたテュポンではなかったものの、やはりギガスであるエンケラドスの力は圧倒的。
ここでエンケラドスが地の底に封じられようとした時の発言の真意が明かされる。

奴らが封じたのは肉体のみ!!所詮人間と自動人形では我は完全には封じられぬ

どうやらエンケラドスの思念だけが残り実体化しているらしい。それは気づかんわ。
しかも普通であるならばここまで強く実体化するようなことはないという。
今回は自動人形の残骸とアレの力を借りることでここまでになったそうな。アレ?

ゼウスの血よ!!
あの日、牡牛座とやってきたコル・タウリよ!
我を封じる力を持つこの心臓の力が、今地上での我の姿を保っているのだ!!!

なんという皮肉。イー・コールが、ゼウスの血が逆に巨人に利用される形となってしまうとは。
この力を克服すればゼウスにはもう負けない。いずれ地に沈んだ肉体も取り戻せば絶大な力になるとのこと。ぬう。

今度こそ地上は巨人のものとなる。そう述べるエンケラドスに、必死のグレートホーンを放つテオネ。だが――

イー・コールラウド!!!

ギガンラウドをゼウスの血でさらに強化したものであろうか。
衝撃波がグレートホーンを容易く消し飛ばし、テオネ自身も吹き飛ばす。

これが黄金聖闘士の戦い・・・!!

覚悟はしていたものの、想像以上の苛烈さを味わうテオネ。
さらにその身にエンケラドスからの追撃が降りそそぐ。
うーむ、ハスガードに封じられたことがよほど腹立たしかったようですね。
虫けらのように思っていた人間に封じられたとあっては怒りもするか。

ボロボロにされるテオネ。その心は悔しさで一杯になっている。
自分がアルデバラン様くらい強ければこの任務も果たせて聖域も地上も救えるのにと・・・

・・・いや、まだ・・・全力じゃない・・・見ていてくださいアルデバラン様・・・この命と引き換えて一矢を・・・!!!

せめて最後に一矢でもと考えるテオネ。しかしそこで目の当たりにしたのは・・・師の、アルデバランの背中・・・!!

泣くな。泣くな牡牛座。俺たちは行きて先へ進まねば。
我らは刻まねばならん。我らの神話の影に、人を守り続けたコル・タウリという巨星がいたことを。

これは・・・エトナ山のこの場でハスガードが口にしたセリフ。それが再生されている?
であったとしても、テオネはこう言って後に続くしかない。
・・・そして、貴方という巨星がいたことも・・・?と。
その言葉に笑みを浮かべて振り向き、優しく頭に手を置いてくれるハスガード。

いつも、なんでもないことのように俺の弱さを強さに変える手。
いつも俺を、未来に進ませる・・・!!!

涙するテオネ。そして、牡牛座の聖衣が光と共鳴音を放つ。そう、エンケラドスの肉体を封じたあの時のように!!

・・・教皇・・・シオン様から聞いたことがある。
極稀に・・・聖衣はそこに刻まれた前任の記憶を見せてくれるって・・・
・・・見えた。14年前のあの方の決意。いや、きっと・・・時を超えてあの方がもう一度語りかけてくれた。
「生きろ」と。生きて繋げとォォォ!!!

アルデバランの意志が聖衣に宿っている。それは対峙するエンケラドスにも感じられるほど強いものである。
ならば瀕死のお前ごと早々に破壊してくれると力を振るいだす。
ズタズタにされそうな衝撃波を受けながらも、牡牛座の聖衣が、アルデバラン様が守ってくれていると感じ、前に進むテオネ。

信じろ・・・あの方から教わったことを。俺自身を・・・未来を!!!
巨星の名を汚さぬように・・・!!!

猛牛のように突き進むテオネ。
技を振るうのではなく、ただひたむきに突き進む。
狙うはゼウスの血を放つコル・タウリの心臓。
そこへ向かう最中、放っていた心臓の力が突然停止する。その直後、テオネの拳がコル・タウリの心臓を吹き飛ばした・・・!!

干からびた牡牛の心臓。こんな小さなものが・・・巨大な始まりになった。

心臓の助けを失い吹き飛ぶエンケラドス。
これで肉体も思念も封印完了となったわけですな。良くやったよテオネ・・・!!

しかし何故突然コル・タウリの心臓は――ゼウスの血は力が停止したのか。
やはり寿命が来ていたのか?いや、コル・タウリのいう寿命は体の方であり、ゼウスの血は絶える気配はなかったはずである。
そのゼウスの血の力が途絶えた。これはやはりコル・タウリの心臓が自身の意志で力の供給を止めたと考えるべきでありましょうか。
聖衣に意志が宿るのであれば、長年その身に入れてきた心臓に想いが宿っていても不思議はないってことですよ。

ともあれ、テオネは無事に任務をやり遂げた。
先に報告を受けたシオンはアルデバランの墓参りと共にセリンサにそのことを告げる。

行っておあげセリンサ。迎えに行っておあげ

思わず強がりそうになったセリンサにそう声をかけるシオン。いい気づかいですな。さすが教皇である。
駆け出し、テオネのもとへと向かうセリンサを見てシオンはこう語る。

彼らを見ると希望がわくよ。テオネはきっともっと強くなる。貴方の強さと優しさを追いかけながら。
そしていつかあの子を目指す者が現れる。こうして貴方の思いは紡がれるのだろう

二人の牡牛、二つの巨星。
それらが守り、そして次代へと託した者が立派に成長していっている。
うーむ、次代のために戦ったハスガードらしい話でありましたな。
テオネがどのように成長したのか、立派に育った様子を見て取れて満足であります。良かった良かった。

さて、次回からは射手座のシジフォス編が開始する!!
残る星座は3つ。ここで出てきましたか射手座。
果たしてどのような物語となるのか。新たな必殺技は飛び出すのか!?楽しみであります!!



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