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聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝
第28話 〜 第49話


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 聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 バックナンバー

聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝 4巻


第28話 表/裏  (2012年 2+3号)


新章突入!今回の舞台は18世紀の水上都市ヴェネチア。この世で一番楽しい町。
海上貿易で財を成し、おまけに戦火を免れたこの町はいつもどこか浮かれている。

さすが陽気そうなイタリアの町でありますな。
この町はどんな人間だって受け入れてくれる・・・だけど。
世はいつだって裏と表で成り立ってる

カーニバルの夜。ロングのコートに帽子といったスタイルの少年が人にぶつかっている。
このスタイルの少年はスリと相場が決まっている。
と思っていたら本当にそうだったので逆に驚いた。やはりそういうものなんだ。
少年は身無し児のスリ団の一人であるらしい。

どうせ俺は裏側さ。ああ・・・憂鬱だ・・・

少年のスリの手法は、相棒のトントという名の動物を用いてのもの。この動物はなんだろう。小さいサル?
ぶつかって気を引いている間に、トントが財布を抜き取るという流れだ。
本日はカーニバル。稼ぎ時である。
少年は一人の男に狙いをつけ、スリを敢行する。
だが、その男にぶつかったとき、妙な気配がした。
俺と同じ表とは違う匂い・・・いや。俺なんかよりずっと裏の・・・奥の方に・・・

スリに気付かれた様子はあったが、どうにか走って逃げる少年。財布も無事いただけている。
戦果を確認しようというところで、スリ団のお仲間がボートに乗って現れた。
この少年の名前はジョーカ。ボートに乗ってやってきたのはピグロにペーシェという名の少年。他にもいるようだけど割愛。
ジョーカを含めた少年達は目的地に向かう。
あまり気が向いた様子ではなさそう。特にピグロという少年は怯えている。
今日は機嫌いいといいな・・・暗黒(ネーロ)のルマーカ

少年達がやってきたのは墓地。
その中に座り込み、少年達を睥睨している男こそ、ルマーカ。
ネーロという犯罪組織の幹部を名乗っている男だが、実質は下っ端である。
町の身無し児を束ねる役割を担っているようだが、はっきり言って頭が悪い。
ジョーカ達はこの男にスリのアガリを上納しているようだ。

腕のいいジョーカは評価されているが、ピグロは殴られる。
カーニバルの日だというのにコイン1枚ではまあ怒られますわな。
というか1枚って。道に落ちてたのを拾ったぐらいのものですやね。

そろそろテメエも一人前に稼いで貰わねェと、ネーロの幹部としてしめしがつかんのよ!!

そう言いながらピグロを痛めつけるルマーカ。
仲間が痛めつけられている様子を見て忸怩たる思いを抱くジョーカ。
だけど、俺たち子供はアレに耐えるしかない。どんなにムカついても、痛くてもどうせ・・・

微妙に諦めた様子があるジョーカ。裏側から抜け出せることはないってことですかねぇ。
ルマーカの暴行はエスカレート。担いだ斧を使ってピグロの腕を斬りおとそうとする
役に立たない腕なら取ってしまって、物乞いでもした方が稼げるぜ、とのこと。
そうは言われてもな。さすがにここまでされると大人しく見ていられない。
体が勝手に動き出し、ピグロを助けてしまうジョーカでありました。

これはヤバイ。ジョーカは気に入られてはいるようだけど、なんせ相手は頭が悪い。
気を損ねたら一緒にやられてしまう。

ちょっと頭冷やそうぜルマーカ!
ピグロあやりの血で、自慢の斧がサビても損じゃねェか?な!?

と説得を試みてみたが、頭を冷やせとか損得とか語ったのでバカにされたと思ったらしい。
く、こいつめ。自分が普段からバカにされていると認識してやがる。面倒くさいやつだ。
というわけで、二人まとめて死ねやーと斧を振り下ろされそうになる。やられるー!!

しかし。
振り上げたルマーカの腕が止まる。
その腕に火の玉のような何かがまとわりついている。
ルマーカの腕の周りだけではない。墓地の中を火の玉が飛び回っているのだ。こりゃ怖い。
オバケだぁ!と逃げ出す少年達。よく見たら少女もいますな。

この状況でやってきた男がいる。取られたものを取り返すためにやってきた男。
さきほど、ジョーカがスリを行った男である。

さあー見つけたぞクソガキ!俺の財布返しやがれ!

ボートに乗って逃げたというのに後をつけられていたらしい。
この時までずっと出てくるの待っていたのですかね?
それはともかく、鬼火を操るというこの男。やはり普通の人間じゃないと慄くジョーカ。
本人は花踏んじゃってヤベ、とか呑気なこと言ってるようですけどね。

男の目的は財布を取り戻すこと、という建前。
そんな男に斧を持って襲い掛かるルマーカ。問答無用かよ。超小物臭ェ!

そんなテメェにゃあ・・・こいつらに相手して貰おうか!

鬼火が死者の形を象っていく
死者がまとわりつき、ルマーカの魂を引きずり出そうとしている。
どうやらこの死者はルマーカに殺された人たちらしい。そりゃ怨みも十分ですわな。

テメェも悪党のはしくれなら、汚く死んでく覚悟つけろや!!

笑顔でそう告げる男に、テメェは何者だと問うルマーカ。

マニゴルド(死刑執行人)
聖域から来た蟹座の黄金聖闘士さ!

死者を操り、ルマーカを仕留めるマニゴルド。
これでこいつらも成仏するだろうさ、とのこと。
ついでに想念も払ってしまうとは、スタイリッシュなことですな。

というわけで、始まりましたマニゴルド編。
ヴェネチアを舞台にどのような活躍が描かれるのか!非常に楽しみです。
今回のゲストキャラはジョーカ。
少年、少女、少女ときて、再び少年でありますか。
外伝は黄金と少年少女との関わりを描くという流れがあるんでしょうかね。

しかし、このジョーカ。本当に少年であろうか?
このスタイルの少年は少年と見せかけて女の子というのも定番
少なくとも私が知っている他の作品ではそうだった!名前もジョーカだしね。女が入っている。

やんちゃな感じのジョーカとその兄貴分になれそうなマニゴルド。
ここからどのような話に展開していくのか。注目です。



第29話 暗黒  (2012年 4+5号)


悪漢ルマーカ、マニゴルドに敗れる。まあ、敗れるも何も戦いにはなってなかったけど。
倒れたルマーカの体から霊体が現れる。ふむ、ちゃんと死んでいるみたいですな。
それを見て騒ぐジョーカ。やはりジョーカには霊体が見えるんですな。

マニゴルドは財布さえ戻ればジョーカに用はない。
用があるのは霊体となったルマーカの方である。
マニゴルドは問う。ルマーカが所属する組織、ネーロの本拠地について。
だが、ルマーカは知らないと答える。
まあ、幹部だとイキまいてたけど実際は下っ端でございますからねぇ。

霊体となったルマーカはやけにしおらしい。
肉体がなくなればよっぽど強い執着意外は薄れていくのだ。
つまり、こいつの偉ぶりはただの虚勢だったってことだ。
そんな奴にいいようにされてきたわけで、ジョーカの心中はさらに複雑になるな。

本拠地は知らないけど、一つだけ知ってることがあると言うルマーカ。
だが、それを言う前に霊体が蒼い炎に包まれる。
鬼蒼炎。魂を燃やす鬼火だ。それに包まれ、跡形もなく消え去るルマーカ。せっかくの手がかりが。
だが、今ので逆にわかったこともある。ネーロには積尸気の使い手がいる
とりあえずそれがわかったので町に戻ることにするマニゴルド。
ちゃんと盗まれた財布は回収します。複数。

盗られた財布は一つだけではなかったか?
手癖が悪いぞマニゴルド。

そう説教をしながら現れたのは、マニゴルドと同じ格好で同じような箱を背負った男。
魚座のアルバフィカ!まさか、黄金聖闘士が2人一緒に行動しているとは!!

マニゴルド曰く、どうせもう元の持ち主もわからない金なんだからもらっても問題ないとのこと。
なるほど、これが処世術というやつであるか。
アルバフィカも呆れながらも見逃す。指摘はしたが追求する気はないようだ。
他の黄金だったら果たしてどうなっていたことやら。

ジョーカから見たアルバフィカの評は、凄ェ美人。まあ、そう言われるわな。
となると、マニゴルドは美人を連れて歩く色男に見えるわけか。役得ですな!ん?

しかし、この2人の格好を見比べるとなかなか面白い。
マニゴルドは上着の前をはだけ、ラフな感じ。アルバフィカはピッチリと着込んでいる。
その辺りは性格的にはよくわかる。
しかし、聖衣を入れている箱はマニゴルドの方がきっちり包装されている。
聖衣に対する思い入れがハンパないということですかねぇ。

ともかく、また一からネーロの情報を集めようとする2人。
去っていこうとするところを呼び止めるジョーカ。
ネーロを倒そうとする2人に希望を感じているようだ。
組織を倒し、みなし児たちをまっとうな暮らしに返してくれるんではないか。
そう期待したのだが、そこまで面倒を見る気はないと言われてしまう。

良くなりてェなら自分で動いてどうにかするこった!

さすがに厳しいですなマニゴルドさんは。
これも他の黄金ならどうしたかわからないところですなぁ。
まあ、とりあえず自分で動いてみろってのは若者へのアドバイスとしてはいいことですよね。

とはいえ、自分でどうにかできるものならとっくにそうしているとジョーカ。
こき使っていたルマーカでさえ、使い捨てだったのに、その下で働いていた自分達に何ができるのか。
どうせ自分の意志で世界は変えられねェ・・・
どうせ・・・どうせ・・・
それが口癖になっているらしいジョーカ。切ないことである。

さて、場所は変わってどこかの屋敷のテーブル。複数の男が食卓を囲んでいる。
どうやらネーロの幹部たちのようだ。
遠くにありながら、ネーロの首領がルマーカを消したことを察知している。
そして、そのルマーカに近づいたマニゴルドの小宇宙も感じ取っている。鼻の効く奴らだ。

この場にいる幹部は4人。
大喰らいのレマルゴス。女たらしっぽいアレグレ。あとはナルシストっぽいのと大酒飲みの男。
なんとも品のない感じの連中である。まあ、暗黒なんて組織を名乗っているならそういうものか。

マニゴルドの小宇宙から積尸気の使い手であることをを感じ取る。
つまり、聖域が動き出したと気付いたわけだ。これは不利な状況ですな。先に察知されるとは。
幹部達は口々に言う。
新任の黄金の若造など我々の相手ではない、と。
奴らの黄金聖衣は我々が譲ってやったようなものだ、と。

そうでしょう!?首領アヴィド!

葉巻を咥えた長髪の男。この男こそがネーロの首領らしい。
そしてどうやら、元々聖域に所属していた連中らしい。
己の欲望のために聖域を抜け出した。つまり元聖闘士ということか。
聖域に興味はない。だが、富の絶対の尺度たる「黄金」には価値がある。
だから幹部達に命じる。殺せ!その黄金聖闘士を!

「罪から出でし所業はただ罪によって強力となる!」

表の聖域に我々は決して止められん!
世界は俺たちの強欲のためにある!我々暗黒聖闘士のためにな!!

暗黒聖闘士(ブラックセイント)!!
まさか外伝に姿を現すとは!しかもなんだか凄そうな組織として。
原作聖矢とは違い、かなり強そうな雰囲気を漂わせています。
しかも、首領の後ろに飾られている聖衣は、祭壇座?
ハクレイが纏っていた白銀聖衣の暗黒版であろうか。
うむむ、ハクレイとセージ。積尸気の使い手。色々と関係がありそうな気配がしますぞ。

しかし、カッコつきのセリフはなんだろうかと調べてみたら、シェイクスピアなんですな。
「罪から出た所業は、ただ罪によってのみ強力になる」
マクベスの一節らしい。へぇ。意味はわからんがとにかく格好よさげだ。

さて、町に戻り潜伏する2人の黄金聖闘士。
2人も黄金を派遣するからには一筋縄ではいかない相手だと教皇も危惧していたのでしょう。
積尸気の使い手がいるなんて聞いてないぞと愚痴るマニゴルドを嗜めるアルバフィカ。
まあ、おかげで美人で無愛想な同僚と二人旅できるんだけどな、とマニゴルド。
でも同じ部屋にあってもその距離は端と端であります。隔たりを感じるわぁ。

まあ、アルバフィカには毒の血がありますからねぇ。
特にマニゴルドは食事中。下手したらそれだけで死ぬ可能性もある。
万一のことがあればお前より教皇様に申し訳が立たん、とのこと。ヒドイ。
マニゴルドからしてみれば、もちっと気楽に生きろということだが・・・さすがにそうはいかないわな。
この毒の血によって死なせてきた人のこともあるんですし。
ともかく、その話はここまでである。
部屋の端にいたことで気付けることがあった。いち早く侵入者に気付ける。
岩盤をも切り裂く黒バラを振るい、部屋の壁を切り崩す。そこにいたのは・・・ジョーカ。

なんとなく、このコマのジョーカに盛大なアホ毛が生えているように見えた
あれ、アホ毛つきのキャラだっけ?と見返してみたがそうじゃなかった。トントの尻尾かコレ。
なにはともあれ、ついてきてしまったジョーカ。どのような運命を辿ることになるのか。
まあ、マニゴルドが自分で動けと言っちゃったわけだしなぁ。
その結果ついてこられても文句はいいにくいですよね。ねぇ。
積尸気の使い手が両陣営にいることもあり、霊が見えるジョーカは実況役にもよさそうだ。
空気にならないほどに動いていただきたいところです。



第30話 暗黒聖闘士  (2012年 6号)


黄金聖闘士2人の後をつけてきたジョーカ。並の人間の技とは思えない。
どうやってつけて来たのか問いただす。
どうやらジョーカには、人間の内側の力とやらを感じる力があるらしい。
そう、それは小宇宙を感じる力だ
黄金の2人は小宇宙が強い。それを感じてやってきたわけだ。

小宇宙とは人間の体にある宇宙のこと。命の力である。
これを感じ切って燃焼すれば奇跡すら起こすことが出来る。
そういった力が自分にも宿っていると知り目を輝かせるジョーカ。可愛いものだ。

どうやってつけてきたのかは分かった。
だが、何故つけてきたのかはまだ明らかになっていない。
そこを問いただすと、ジョーカは言う。

連れてけって言ってんだよ!!
あんたらが行こうとしてるネーロの本拠地に!!

やはりそれが目的か。しかし、行ってどうしようというのだろうか?
マニゴルドにしても、子供のお守をするつもりはない。かえれと言う。
だが、ジョーカは言う。普段は隠しているがネーロの奴らもたまに小宇宙を残すのだと。
マニゴルドたちが探しているネーロの本拠地。
ジョーカならば、その心当たりを案内できるという。なるほど、取引か。

ここで助け舟を出すのがアルバフィカ。
この子とて遊びで来たわけではない。相応の覚悟を感じるという。
まさかの角度からの援護射撃に驚くマニゴルド。

アルバちゃん・・・

普段人を避けているはずのアルバフィカがそんなことを言い出すなんて。
マニゴルドの驚きは当然だ。でもアルバちゃんはないでしょう。なんだか親しげ!?

というわけで、説得成功。ジョーカも連れて行くこととなりました。

さて、所は変わってギリシャは聖域。教皇の間。

新しく降誕したアテナ、サーシャの前に跪いている老人がいる。
祭壇座のハクレイ。前聖戦の生き残り。
つまり、二百数十年ぶりにアテナと会うことになるわけである。感慨深そうだ。

ハクレイは教皇セージの兄である。
前聖戦を戦い抜いた2人。セージは当時蟹座の黄金聖闘士であった。
兄のハクレイは白銀聖闘士でありながら、その実力はセージの数段上だったという。
まあ、白銀とはいえ祭壇座は教皇補佐としての地位があったみたいですけどね。

あのセージの数段上。驚くサーシャ。
まあ、身内の贔屓として大きく語っている可能性はありますけどね。
強さはともかく、再びアテナの元で正義のため、悲願のために戦えることを誇りに思っているのは間違いない。

挨拶をしたところで、教皇の間に響き渡る笑い声。
ハクレイの語る正義という言葉を嘲笑する。

姿を現したのはアヴィド。裏に散らばる暗黒聖闘士をたばねる首領である。
セージは一瞬で見抜いた。どうやら積尸気からの侵入を許したらしい
教皇の間にはテレポートは不可とされているらしいが、積尸気なら飛べるというのだろうか?
結構便利そうですな、積尸気。

暗黒聖闘士とは、その悪行により聖闘士の称号を剥奪されたならず者の集団である。
彼らは黒い聖衣をまとい、己の欲望のために力を振るう。邪悪に魂を染めた者たちなのだ!

葉巻を吸いながらやってくるアヴィド。
久方ぶりの聖域だが、ここには酒も金も享楽の匂いがしない。ただ節度と仕来りが石のようにあるだけだと言い出す。
そして、柱に葉巻を擦り付ける。なんと不敬な。
享楽はないかもしれないけど、アテナに仕えるという喜びがあるではないか!
今なら幼く可愛い女の子に仕えることができるのだぞ!それもまた享楽!
ダメな発言だから口には出さないけど、思っている聖闘士もいるはずだ。

無礼を働くアヴィドの前に立ちふさがるハクレイ。
それに対しアヴィドは、再び貴方の手で私を罰しますかと問う。

師である貴方自らの手でこの聖域を追放した時のようにな!!

アヴィドの後ろに飾られていた聖衣を見たときからそうじゃないかと思っていたが・・・
やはり、アヴィドはハクレイの弟子らしい。
しかし、祭壇座の弟子で積尸気の使い手とは。どういうことなんでしょうね。
それはさておき、よくみるとアヴィドの髪型はハクレイそっくりである
なんだかんだで師匠を慕っていたりするんですかね。

殴りかかるハクレイ。だが、そのアヴィドは鬼火が作り出した幻影である。
ああ、実体じゃないから教皇の間にもやってこれたという話ですか。
今回の目的は覚醒したアテナ見物だったらしい。
だが、次にまみえる時は、セージが送り込んだ積尸気の使い手。その男の亡骸を携えて参ると宣言する。

その時こそ我ら暗黒聖闘士と、聖域の聖闘士の全面戦争よ!!

笑いながら去っていくアヴィド。ふうむ、手強そうなやつですな。
しかし、このアヴィドや暗黒聖闘士。教皇や聖闘士にはケンカを売っているが、アテナは一応敬っていると見えなくもない。
全面戦争をした結果、我々がアテナを奉じてしまいたいとか考えているのでしょうか?
なんだかんだでそういうところだけは聖闘士のままとかいう話だったりして。これも享楽よ!

アヴィドが去った後、老人2人は強くなりおったなぁと語っている。
なんだか余裕がある感じですね。いざとなればこの2人が出張ってどうにかしちゃいそうだしな。

さて、調査に向かっているマニゴルド。
ジョーカの案内で怪しい場所に向かっている。
ここまで近づけばすぐにわかる。中に目的の連中がいる。
中の連中ももはや小宇宙を隠してはいない様子。
ならばこちらも臨戦態勢に入るまで。心して行きますかね!

黄金聖闘士2人が揃い立ちである。眩しいわぁ。
蟹と魚の魚介類コンビがどのような活躍を見せるのか。楽しみです。よ、美丈夫二人!!



第31話 黒き鯨  (2012年 7号)


ネーロの首領、アヴィドの魂が聖域から帰って来ました。
どうやら魂だけ飛ばしていただけで、肉体は本拠地に置いていた模様。
積尸気経由での侵入を許したとあったが、魂だけならまあ大丈夫か。

アヴィドは金貨のベッドに身を横たえている
黄金は我が腕の中にあってその輝きを増す!
アオリとしてはいいんですが、どう考えても全身痛くなりますよねこのベッド。

前回、マニゴルドたちは本拠地と思しき場所に向かっていた。
そこには幹部の一人アレグレがいる教会とのこと。
幹部たちはアレグレの強さに相当の自信をもっているようだ。小僧風情には手も足も出んよとか言っている。
さてはて、どのぐらいの強さなものか。

黄金聖衣をまとったマニゴルドとアルバフィカの2人。
いざ突入という直前、教会の中から悲鳴が響き渡る。
なんだか知らんが、とにかく突入だ!オラァ!!

中に入ってみると、大柄な男が教会の人間を殺している場面に出くわす。

懺悔の途中であるぞ!?罪人共!!

大柄な男、アレグレは牧師のような格好をしている。酒ビン片手にお仲間殺しとは趣味が過ぎるぜ。
アレグレ曰く、これは天罰とのこと。
この者たちは人々を誤った道へと教え導いていたのだ。

本能に忠実な欲望こそが人間の真実!
然らばその果てに神に通づる道があるのは道理!
私はその教えを身を持って宣教する者アレグレ!
私に説教があるならば、その肉を持って意を通すのだ!!

単純な言葉じゃなく、肉体言語で語れということでしょうか。
ナックルトーキングが好きとは趣味が過ぎるぜ。
それゆえか、教会の人間は全身の骨を砕くように殺されている。派手な肉体言語で語ったものだな。

貧弱な黄金くん?と挑発してくるアレグレ。
それに対し、死者を弔う意味も含めてマニゴルドが動く。

今のうちにここにいる坊さんたちに祈っときな!
天国に連れて行って貰えるようにな!!

アレグレに殺された霊たちが現れ、魂を引きずり出そうとする。
だが、余裕の体を見せるアレグレ。口に含んだ酒を霧吹きのように噴出す。

ホーリースパウト!!!

なに!?霧吹きで霊魂が浄化されているだと!?
積尸気の技は霊的な力を攻撃に利用するものである。
だが、この救世主の血であるワインとアレグレの息吹は全ての邪を浄化する。すなわち!

お前の積尸気の技は私には通用せん!この暗黒鯨座にはな!!

そう宣言すると共に暗黒聖衣を纏うアレグレ。
マッチョな肉体に合った重厚な聖衣である。これはなかなかカッコイイ。
しかし、元々白銀聖衣だった白鯨座の暗黒版でありますか。
ああ、大酒のみだから鯨座なのね。鯨飲ってやつだ。
アレグレの後ろには酒瓶がいくつも転がっている。ワインをラッパ飲みとかどんだザルなんだよ。

姿を現したアレグレ。次はこちらの番だと仕掛けてくる。
素早くマニゴルドの前に周り組み付き、背負う。

ウィイルバリツ!!

なんと投げ技!しかもバリツだと!?
バリツといえば、かのホームズが身につけていたという武術じゃないですか
日本式の格闘術と言われるバリツを操るアレグレ。この投げも柔術につながるものであるか。
一撃で血を吐くはめになるマニゴルド。ニホンのジュージュツ凄いです。

そして、次の標的にとアルバフィカやジョーカに目を向けるアレグレ。
しかし、ジョーカを見たときに、妙な反応を見せる。

この子供・・・生きていたのか・・・!
なるほど。因縁とはこうして続くものか。

何を言っているんでしょうね?やはりジョーカには物語的な因縁があるようだ。
生きていたのならば、生かしておくわけにはいかんとアレグレ。
なんなんでしょうね?実はアヴィドの子供だったとかそういう話ですか?

ジョーカを狙うアレグレ。しかし、そうはさせじと動き出す者がいる。
倒したと思った蟹座のマニゴルドさんがまだ動けたのだ。
その足をアレグレの胴体に挟みこむ。蟹バサミの構えですな。

積尸気だけじゃあねーのよ、蟹は!
アクベンス(蟹爪)!!

ボキッと音を立ててアレグレの胴体が破壊される!
本編で一度見せたアクベンスがここに来ての復活!なんだか嬉しい話ですぜ!
というか、蟹バサミだったんですなアクベンス。蟹だけに。
立ち状態で放っていたせいか、本編ではよくわからない技だった。あの時は胴体切断してたなぁ。

テメェにゃ懺悔も許されねェよ、クソ坊主!

バリツを操り、肉体言語で語るのが好きなアレグレ。
霊を浄化させる力を持つのだから、積尸気使いの蟹座にとっては天敵である。
しかし、そういう相手を肉体技で制してみせるマニゴルドさん。なかなかのものだ。
さて、このアレグレがやられて、ネーロの連中はどのような反応を見せるのだろうか。
奴は我々幹部の中では一番の小物とか言ってくれるのでしょうか?
そういった意味も含めて反応が楽しみだ!



第32話 黒き烏  (2012年 8号)


蟹バサミでボキリとやられたアレグレ。どうやらこれで退場らしい。

・・・バカな。この私が若造の蟹座などに・・・
あの島の子供を見つけたというのに

死に掛けたアレグレが何か言葉を残そうとしている。ジョーカにはやはり何かあるようだ。

一目見て分かった・・・面影がある・・・お前は・・・あの赤道直下の島の・・・

そこまで言ったところでこと切れるアレグレ。その背中には無数のカラスの羽が突き刺さっていた。
喋りすぎた敗者は仲間によって消される。伝統的な悪の組織の手法でございますな。
そう、アレグレを仕留めたのは同じくネーロの幹部である。

喋りすぎは美しくないなアレグレ。
そもそもそんな蟹座の足技にかかるなど無様、極まりない。

私はあんな無様耐えられない。この暗黒鳥星座(ブラッククロウ)のリュゼにはね。

壊れた教会のステンドグラスに腰掛けている男。
幾羽ものカラスを従え、アルバフィカの投げた黒薔薇を平気で受け取ってしまう。
ピラニアンローズが効かない!?
受け止めた薔薇の匂いをかぐリュゼ。幹部の中のナルシストっぽいやつだ。
ナルシストつながりで蜥蜴座かと思ったら、カラスで来ましたか。意外だ。
まあ、この絵柄で「神よ、わたしは美しい」をやられたら色々シャレになりませんしね。

しかし、暗黒烏星座ではなく、暗黒鳥星座なのか?暗黒鳥とかいてカラスを意味しようというのだろうか?
普通に誤植な気がしないでもない。

マニゴルドさんによれば、美人度ではアルバフィカといい勝負らしい。

フフ・・・そうだ。僕は以前からその魚座に会いたいと思っていたんだ。
しかし君は噂以上に美しいなアルバフィカ。

何故ならこの世にある美しいものは全て私を引き立てるためにあるから
君はこの地上で最もその役目にふさわしい。
砕かれゆく君の美は一層私を引き立てるだろうね。考えるだけで心が震えるよ。

自分に酔っ払ったようなことを語りだすリュゼ。
そりゃマニゴルドにも阿呆かと言われてしまう。ウェ。

しっかりと挑発されてしまったので、前に進み出るアルバフィカ。
あのよく喋るカラスは私が仕留めるとのこと。

その際にはジョーカ。君の聞きたいことは吐けるようにしておくよ。
あの真髄も解せぬ鳥頭にな!!

美しさの真髄とは何か?アルバフィカが猛る。

受けろ!ロイヤルデモンローズ!!

毒の香気を纏った赤い魔宮薔薇である。これはさきほどのように受け止めるわけにはいくまい!
だが、この攻撃に余裕の表情を浮かべるリュゼ。

君は本当に可愛らしいねアルバフィカ!

ブラックフェザーディフェンス!!

リュゼの周りを黒い羽が渦巻く。その勢いで香気が四散していく。

この羽は攻撃に転じれば刃物のように敵を裂き、防御に転じれば空気の層で有害物を遮断する。
つまり君の毒薔薇は私に対しては全く役には立たないということさ。

悪霊を浄化する鯨に続き、毒を四散させる烏。
聖域にケンカを売ろうとしているだけあって、黄金対策はそれぞれ行っている模様ですな。
アルバフィカの体が羽によって傷つけられ、血飛沫が舞う。
この血は猛毒である。ジョーカのような子供はこの血に触れただけで御陀仏となってしまうのだ。
そのため、マニゴルドはジョーカの側におり、アルバフィカに近づけさせないようにしている。

黒薔薇に赤薔薇。薔薇の攻撃を防がれたアルバフィカ。
だが、毒の血による攻撃はまだまだ有効のはず。
ならば、それをも防いで見せようというリュゼ。

招待してあげるよ・・・黄泉比良坂にね

教会が一転して亡者の群れが歩く死界の入口へと変貌する。
アルバフィカ、マニゴルド、ジョーカ。
3人は強制的に魂を肉体から引きずり出され、ここに連れてこられたのだ。

「積尸気冥界波」!こんな強力に放つのかよ・・・!

これが私たちの首領の力だよと誇らしげなリュゼ。
どうやらこの冥界波はリュゼの力ではなく、アヴィドの力によるものらしい。
本人は遠くにいながら、3人を黄泉比良坂に飛ばしたというのか?恐ろしい力だな。

3人は今は霊体。肉体はない。つまり、ここでは魚座の毒の血は意味をなさないのだ!

もはや君は手足をもがれた赤子も同然よ!さあ、これで・・・その顔をズタズタにしてあげるよ!

勢い良く突っ込んでくるリュゼ。それに対し拳を握って・・・思いっきりぶんなぐるアルバフィカ。ゴッ!!
いきなりの顔面パンチに驚愕するリュゼ。美形が顔を殴ってきただと!?って感じだ。

血や花がなくとも拳があろう

な・・・な・・・!?
アルバフィカの攻撃に混乱するリュゼ。殴られた部分を手で押さえるしぐさがカマっぽい。

感謝するぞ。戦いの中でジョーカにこの血がかかるのではないかと案じていた。
・・・良いのだな?ここでは血も香気も振り乱して殴り合っても

指をバキボキと鳴らし、笑みを浮かべるアルバフィカ。
なんだ!?久しぶりの殴り合いが楽しみでしょうがないって表情じゃないかコレ!?

アルバフィカさんはいつも味方を気にかけている。
その毒の血と香気のせいで。だが、それが大丈夫となったら、本来の闘志全開で闘うことになる。

お前、しくじってんぜ?カラス。

おのれ!とこちらも拳を握り殴りかかるリュゼ。
だが、その攻撃を顔で受け止めるアルバフィカ。美形が顔で受けただと!?
ともかく、ナルシストには予想外の行動に戸惑いっ放しのリュゼ。

己を着飾る前にな・・・リュゼよ。
まずは闘志と誇りを纏うがいい

言葉と共に、再びリュゼの顔面を殴り倒すアルバフィカでありました。
こいつは強い!
アルバフィカは美形であるが、ナルシストってわけでもなんでもない。
傷つくことを恐れず、味方を傷つけてしまうことを恐れるお人である。
そういえば、そのファイトスタイルは昔から正面のガチンコスタイルだった気がする。
魚座故に、その技は特殊なものが多いが、気性は正面からの殴り合いを望むものなのかもしれませんな。

アルバフィカの真髄は美しさにあらず!男らしさだ!

このアオリもなかなかに秀逸。
なるほど。真髄とはそういうことだったのですね!う・・・美しい。ハッ!!

しかし、前回のアレグレ戦もそうだけど、肉弾戦的展開が続きますな。
蟹も魚も特殊能力系の黄金なのに、まさかの肉弾戦決着
我々殴っても強いんですよと主張されているかのようだ。
このまま残り2人の幹部も殴り倒してしまうのだろうか?
残り2人は何の星座なのだろうか?ジョーカはもしやデスクィーン島の関係者なのか?
いろいろと注目です。



第33話 黒き猟犬  (2012年 9号)


アルバフィカの鉄拳がリュゼの心身を粉砕した。
拳でのガチンコは精神的に勝るほうが有利である。言うまでもなく、アルバフィカの圧勝ってことですな。

絵だけだとわかりにくいが、マニゴルドさんは自分たちの肉体を黄泉比良坂に呼び寄せる
確かに、魂だけ呼ばれているってことは、肉体は無防備な状態のはず。
攻撃されたらひとたまりもないけど、ちゃんと召喚できるんですな。さすがである。

殴られて気絶してしまったリュゼ。
情報を得るために、起きるまで待っているアルバフィカ。思いっきり殴りすぎたんだな。
意識を取り戻すリュゼ。だが、それと同時にその体が炎に包まれる。
またもアヴィドによる鬼蒼炎か!?
直属の手下であっても容赦しない。悪の組織っぽい行動っすね。

鬼蒼炎は魂にしか効かない。
が、黄泉比良坂という環境ゆえか、肉体のあるマニゴルドたちも焼こうとしている。
このままでは全員炎にまかれてしまう!
というところであることに気付くマニゴルド。どうやら積尸気のホールが開いたままになっているらしい。

突破するぜアルバフィカ!ジョーカ!
しっかり俺について来いよ・・・!!

黄泉比良坂を脱出しようとするマニゴルドたち。
一方の首領アヴィド。長テーブルに1人腰掛けている。
部下のアレグレとリュゼがあっさりやられたというのに、あまり動じた様子はない。
存外につまらん奴らだったなと吐き捨てる程度である。ううむ、やはり格が違うのか?

それよりもアヴィドが気にしているのはジョーカのことである。
アレグレが気付いたことは、アヴィドにもしっかり伝わっているらしい。便利なことで。

まさかあの島の生き残りがいたとはな・・・
我ら暗黒聖闘士を幽閉していた忌まわしき島、デスクイーン島の一族が!!

ジョーカはデスクイーン島の生き残りだということらしい。
暗黒聖闘士は島に封じられていたが、ジョーカの一族を殺し、出てきたというわけか。

そういった述懐をしているところに、天井に異変が生じる。
これは積尸気。そう、黄泉比良坂から積尸気を通じてマニゴルドさんがアヴィドの前に直接現れたのだ!!

よう大先輩!随分好きにやってくれたじゃねェか!

どうやら鬼蒼炎の中をつっきってきたらしい。よくぞ燃え尽きずに来られたものだとか言われている。
さすがのマニゴルドをしても、なかなかの荒技だったそうな。
だが、この場にいるのはマニゴルドのみ。アルバフィカとジョーカの姿はない。あれ?

これはやられましたね、マニゴルド。
そう、これはアヴィドの策である。わざと積尸気の穴を辿らせ、ここに導いたのだ。
他の2人はそれぞれ別の場世に送られ、他のやつに相手されているとのこと。

貴様、セージの弟子にしては頭が回らんな

師匠が頭が回りすぎるので、あんまり考えない子になっちゃったんじゃないでしょうか。
いや、そんな。マニゴルドさんがバカな子だとか言っているわけじゃないですよ?
まあ、確かにこれまでを見ると、あんまり賢そうな場面はなかったわけですが。
というか、アヴィドこそハクレイの弟子の癖に小賢しいことをしおる。男だったら拳で勝負せんかい!
まあ、この場にいるのは積尸気使いの2人ですし、拳の勝負にはなりそうもないですかね。

お前の相手は俺がしてやる。暗黒聖闘士の流儀でな

暗黒聖闘士の流儀とは何か?
まともな戦いにはならないって感じですね。なんだろうか。ギャンブルでもするんでしょうか?
エクストリームなギャンブルでお互いの魂をかけて闘ったりとかそんな展開があるかもよ!?

さて、マニゴルドたちとは別の場所に飛ばされたジョーカ。
どこかの屋敷の廊下を歩いている。
調度品などが飾られている感じからして、それなりにいい屋敷のようだ。

ここはネーロと関係があるところなのだろうか?このまま進んでも大丈夫なのか?
怖がっているジョーカ。暗くて先がよく見えない。思わず体が震えてしまう。
なんせ、直前に、自分はネーロにとって目障りな存在であるという事実を聞かされている。
下手に見つかったらそのまま殺されてしまうわけだ。怖くても仕方ない。

俺は親をなくして路地裏で他人の金盗って腹満たして・・・
生きてくために自分だましてきちまった。
このまま自分のことも良く分からないまま野良犬みたいに殺されちまってもきっと誰にも気付かれない。
どうせどうせ俺なんて・・・だけど・・・やっぱり俺は・・・

相変わらずネガティブな思考に陥りそうなジョーカ。
その前に、妙な装丁の仮面が現れる。壁に飾られていただけだが、この装丁は暗闇で見るとかなり怖い。
へんな仮面だと笑うジョーカ。

いや、俺・・・この仮面知ってる

ジョーカの呟きを受けて、背後から何者かが近づいてくる。

その仮面は赤道直下のデスクイーン島において、暗黒聖闘士と暗黒聖衣を監視し封ずる仮面だ
我々はそれを守る男とその血脈を絶やし、その仮面を奪った。
だが・・・取りこぼしがあったようだな。

君の家族は全て私が殺した。
この暗黒猟犬座星座のユドがな。

片メガネをかけた色黒の男。こいつが暗黒猟犬星座でありましたか。
ユドはジョーカの一族を皆殺しにしたという。だが、今はジョーカが生きていてくれてよかったと言い出す。
それというのも、この仮面を破壊できるのはデスクイーン島の一族にしかできないことだから、らしい。
なるほどね。せっかく一族を殺し、仮面を奪ったけどその仮面は壊せずにいる。
いつこの仮面を操るものが出てくるかわからないので不安ってわけか。

ジョーカとしても、この話を聞けば当然考える。
もしかして、この仮面があればネーロを倒すことが・・・

だが、その考えが読まれてしまう。
その仮面は欠けおち、本来の機能を一時失っているとのこと。そりゃ残念。
それよりも、この能力。考えていることを読む力はまさか?

私はサトリの法を会得しているのでね
君の考えていることも、君が今までどれ程心を偽ってきたかも全てが見える。

やはり出たかサトリの法!原作の猟犬座が持っていた技ですものね。
そして、ジョーカが隠してきたことを暴こうとするユド。そう・・・たとえば・・・

君が少女だということを隠して生きてるということもね!!

言葉とともに、ジョーカの上着を切り裂くユド。
シャツの肩口も破られ、胸元が明らかになる。
が、あまりよく見えない。このぐらいだと、胸板が厚い男かもしれないじゃないですか。
もう少しよくわかるようにしてもらわないと困りますな、ユドさん。

それはさておき、ジョーカはピンチでございます。
なんせユドさんは女性を侍らしていた好色っぽいお人である。
言うことを聞かないと何をしでかしてくるか分からない。まあ、少女趣味があるかどうかは知らないけど。

今ジョーカはこう考えている。
「もういやだ、全部投げ出して逃げたい」と。
訓練してきたわけでもないただの少女ですし、そう考えてしまうのも仕方がない。
ろくに覚えていない家族との品より、自分の身の方が大事なのも間違いない。

どうしようもない・・・生まれのせいでこんな目に遭わされたって、抵抗する力も俺にはない・・・どうせ・・・
どうせ?・・・なんて・・・もう!!

テメーらの言うことなんて誰が聞くかよ!!バ・・・バーカ!!

俺はずっと自分のこと表には出られない、どうせゴミみたいな奴なんだって思ってた・・・
でも・・・あんた教えてくれたよな。マニゴルド・・・!!
俺たちの体には宇宙があるって・・・それを感じきれば・・・奇蹟も起こせるって・・・!!

意を決し、仮面をかぶるジョーカ。
仮面が光を放ち、効果を発しようとする。果たしてその力とはいかなるものか!?

女の子がつけるにしては、なんともな感じの仮面でありますな。
ひょっとしたら、原作の一輝の師匠みたいに仮面をつけるとムキムキになっちゃったりして。まさか!?

しかし、よもやの展開ですな。
ユドはここで倒れそうな雰囲気。そうなると、残った暗黒聖闘士の1人はどうするのか。
普通に考えればアルバフィカが相手することになる。
が、正直本筋と関係ない消化試合になる可能性が高い。
つまり、場面が映ったと思ったらもう倒れている可能性が高いってことだ!
デジェル編の紅玉髄に続き、ここでも不遇を託つ者が現れてしまうというのかッ!?
まあ、それはそれでどうでもいいんですけどね。

それよりも、まずはジョーカである。
頑張れジョーカ。抱きしめた心の小宇宙を熱く燃やし奇蹟を起こせ!



第34話 霊魂の要塞  (2012年 11号)


被った仮面が光を放つ!気付いていたら、暗黒聖闘士のユドは地面に倒れ伏していた。
戦いが起きるどころではなかったようだ。これが封じる力ってわけか。
黒かった暗黒聖衣からは色が失くなっている
なるほどね。聖衣の力を奪う力があるわけか。よく、反乱とか起こせたものですなぁ。

子供の、なんにも強くない俺がやっつけたのか?と呆然とするジョーカ。
首飾りが切れていることに気付く。ジョーカの首飾りは、仮面の破片だった。
なるほど。ユドは、一部が欠けていて機能が失われていると言った。
その欠けた一部をジョーカが所持していたので、仮面の力が発動したわけだ。納得。

ジョーカもかすかに思い出す。
母さんらしき女の人が必死で俺を船に乗せている。
そのとき、首飾りを渡している光景も見えている。なるほどねぇ。

俺・・・ホントにデスクイーン島とか言う島の生き残りなんだなァ。

と、感慨にふけっているところで、いきなり立ち上がるユド。
お前、今やられたはずじゃ!?
仮面の力で暗黒聖衣の力は奪ったが、ユドのサトリの力は失われていない。
聖衣がいきなり重くなったのでぶっ倒れただけだったのですかね?
なんにしても、復活したユド。この場でジョーカだけでも殺そうとする。
が、その背中に突き刺さる白薔薇。これは・・・まさか!!

そうだ。その白薔薇、ブラッディローズは敵の心臓を一直線に狙う。
突き刺されば最後。その相手の心臓の血を吸い尽くす!
その花弁が真紅に染まるまでな!!

トドメを刺しに現れた感じのアルバフィカ。ごっつぁん。
積尸気のホールを抜けた後、アルバフィカは暴食の男、レマルゴスと戦っていた。が、もう倒してしまったらしい。
1コマだけ、暗黒聖衣を纏って倒れているレマルゴスの姿が描かれる。
なんとまあ。そうなるんじゃないかと思ったが、本当にそうなっちゃうとはね!
レマルゴスは、手足の聖衣の形状からして暗黒ヘラクレスじゃないかと考察されています。
原作のヘラクレスも1コマで倒されているし、踏襲された形なわけですね。
まさか紅玉髄を超える活躍のなさを見せてくれる奴が早くも現れるとは・・・レマルゴス・・・

それはさておき。
アルバフィカに再会できて安心した様子のジョーカ。
駆け寄ろうとするのを手で制するアルバフィカ。
毒の血の件もあるが、女の子であったことに驚いている様子。気付いていなかったのですね。

上着を破られたせいか、今回のジョーカはやたらと女の子らしく描かれている。
肩の辺りがなよっているだけでちゃんと女の子の体になるもんなんですなぁ。可愛らしい。

なんだか隠していたみたいでゴメンなというジョーカ。

でも・・・俺もう自分をだますのはやめる。
・・・そういうの、マニゴルドとあんたを見てたら、バカらしくなっちゃったよ!

どんな裏道歩いてても、自分まで裏に追いやることはきっとなかったんだ。
それと、暗黒猟犬座を退けた時、俺は確かに自分の中に熱いものを感じた。
それはきっとこの仮面のお陰でもあるんだろうけど・・・
進みたいよ。自分が少しでもなにかの役に立てるなら。

どうせ、どうせと後ろ向きになっていたジョーカだったが、吹っ切れたようですな。
前向きになって、笑顔を見せてくれるようになったのは素直に喜ばしいことである。可愛い。

さて、今回の主役であるはずのマニゴルドさんは、ボスのアヴィドと対峙しているところ。
アヴィドは、仲間の状況を逐一把握しているらしい。
レマルゴスに続き、ユドまでやられたことを、いち早く察知する。

まあいい。所詮は数合わせに過ぎん奴らよ

バッサリ切り捨てられた!
まあ、実際のとこ、アヴィドの力が圧倒的で、他はそれほどでもないって感じですからねぇ。
デスクイーン島での反乱も、他の4人は追随しただけだったのかもしれない。
それでいて、黄金聖衣は我々が譲ってやったようなもの!などという発言を行う4人。
振り返ってみるとなんとも滑稽でありますな。

他の暗黒聖闘士を倒して、ここに向かってくるという話を聞きマニゴルドさん。
俺んとこの仲間はテメェんとこと違って優秀だからなと言う。信頼してますのね。
とはいえ、このままでは見せ場が全部持っていかれてしまうかもしれない。
大ボスだけでも自分が倒さないといけない、と思ったかどうか。とっととおっ始めようぜと言うマニゴルド。

焦るな!どうせそいつらはここへは辿り着けん。
貴様も積尸気使いならば感じているはずだがな!この屋敷の正体!

この屋敷こそ俺の力そのもの・・・!!
この屋敷は今まで俺たちの殺った者らの魂で出来ている。ここは巨大な死霊の腸も同然!!

なんともまあ、悪趣味な!
屋敷の天井や壁、床には叫び声をあげる魂たちが浮かび上がっている。
屋敷はその時々で姿を変える。アヴィドの意のままに形を変えるそうな。
それで、アルバフィカたちは辿り着けないってわけですな。

考えてみると、原作の巨蟹宮も似たような状況だった。
NDの方の巨蟹宮の説明だと、死霊が集まりやすい場所だったとのこと。
それを模して屋敷を形成しているのかもしれない。
しかし、自分達が殺した人間の魂をわざわざ用いているところが悪趣味極まりない。

テメエ・・・集めんのんは金だけにしとけよ!やりすぎだ強欲野郎!

ああ、そうだが?金は現世の贅!ならば死界の贅とはなんだと思う?
それは人の命!魂よ!!
双方手に入れてこそ本当の富と力の象徴とは思わんか!?

なんともイカれた発言でございますね。そりゃ破門にもなるさ。
マニゴルドさんも怒る。確かにうちのお師匠はつまんねェジジイだがな。

テメエみたいなダセエハメの外し方はしねエんだよ!!

殴りかかるマニゴルド。その足下に葉巻の灰を落とすアヴィド。
と、その灰が床に接したところで爆発が発生する。

・・・んな・・・?これは・・・魂送破!?
・・・まさか・・・あの葉巻は・・・

そうだ!この葉巻もまた魂そのもの!

鬼蒼炎は霊的なものを火種として燃やす技。
魂送破は霊的なものを火薬とし、爆発させる技!
つまり!この屋敷そのものが俺の火薬でもある!貴様に逃げ場はありはしない!
せいぜい踊るようにあがくのだな!!

ただでさえ強いのに、フィールドがアヴィドに有利すぎる空間である。
だが、霊的因子がある場所であるならば、マニゴルドもその力が扱えるはず。
だったら俺もと魂送破を使おうとするが・・・いや、ちくしょ!やっぱダメだろ・・・!!
床に映る子供の霊を見て怯んでしまう。
霊を火薬として爆発させる技ですからねぇ。そりゃ躊躇う。
しかし相手に躊躇いなどはあろうはずもない。ヤバイ。

強欲とはそれだけで強い!そらな!貴様は既に牙を抜かれている!
正義のために振るうべき力もろくに使えない!

度重なる魂送破の爆発を受け、倒れるマニゴルド。だが、まだ闘志は萎えてはいない。

こっちはまだ遊び足りてねェんだよ。テメエの調子づいた技も屁理屈もよ・・・!
だからもうちょっと俺と遊んでこうぜ!なァ先輩!!

・・・よかろう。完膚なきまでな!!

強欲VS根性と銘打たれた戦い。
積尸気の力も振るえない状況に追い込まれたマニゴルドに残されたのは根性しかないのか?
次回、漢を見せると言われるが、どのように見せてくれるのか。
蟹座を象徴するヘッドパーツが飛んでしまったのは残念だが、マニゴルドの活躍は見たい!
根性決めた闘いを期待しています!



第35話 暗黒聖壇星座  (2012年 12号)


屋敷自体がマニゴルドを追いつめる魂の火薬庫!
こいつはまったもってよくやるぜというしかない。
マニゴルドが言うには、こいつら一緒に爆破してアヴィドを倒す気概は正直ないとのこと。

だからって手が無くなったわけじゃあねェんだよ。
この場にいる魂全部無くなりゃあテメェは丸裸だ!!
食らいな!!積尸気冥界波!!

ついに飛び出しました、蟹座の代名詞。積尸気冥界波。
屋敷に充満する数多の魂を全て冥界へ送ろうというマニゴルドさん。さすがに数が多くて重いらしい。
だが、その掲げた人差し指に加重がかかり、地面を向けてしまう。

持ち上げかけた魂を戻された!?

屋敷の魂はアヴィドの小宇宙によってこの場につながれ、滅多なことでは動かせないらしい。

・・・だが、貴様の遊びに乗る気になった!!

その言葉と共に、アヴィドの頭上に暗黒聖衣が現れる。
あの形は祭壇星座(アルター)!あんな聖衣まで、暗黒聖衣にゃあるのかよ・・・

そうだ。これは教皇を補佐する者がまとう聖衣。
言わば、負け犬の聖衣よ

負け犬ですと?
現役の祭壇星座のハクレイは相当強い。負け犬どころか、教皇であり、マニゴルドの師であるセージをしのぐほどにだ。
だけど、アヴィドは言う。確かに我が師は強かった。だが!あの老人は負け犬よ、と。

その力があるのに黄金聖衣も教皇の座も手に出来なかったではないか!!
遠慮?諦め?それとも怠惰!?どれも言いわけに過ぎん!!
結局、弟であるセージに負け、遠いジャミールの地で惨めに聖衣を修復するだけの日々ではないか。

割とその生活を楽しんでいたと思いますけどね、ハクレイ。
面倒くさそうな教皇の仕事を弟に押し付けたように見えるのは気のせいだろうか。
まあ、怠惰も言いわけだ!とか言われちゃうから反論しづらいわけだが。

フフ。しかもあの老人。この祭壇星座を俺に継がせようとした。

アヴィドを後継者に選んだハクレイの意図は確かに分かりませんな。
教皇補佐という立場はあまり似つかわしくなさそうな人物ですからねぇ。

俺は人の下につくために力を求めたのではない!!
俺は俺のためにこの力を使う!他人のことは知らん!!

ハッキリと言い捨てるアヴィド。
こういう性格ですから魂送破のような、魂を火種にする技を平気で使えるんですな。
爆発させられた魂は、熱さと痛みを感じながら消えていく。なんとも哀れな。

魂を見送るマニゴルドの頭を掴むアヴィド。
貴様の肉体をバラバラにして聖域に送ってやると言い出す。あの老双児の顔が見物だな・・・!
そんなことを言い出すアヴィドにマニゴルドから一言。

怖ェぞォ後が!・・・知らねェの?

分かるぜテメェの理屈。どんなに長く生きても命は皆、塵芥!!テメェのために使うのが一番よ。
あのジジィ共の生き方ァくっだらねェよ。悪ガキだった頃の俺もきっとそう言ってたぜ。
だが、教わらなかったか?命は宇宙なんだってよ!
そこんとこスパルタだったからな!あのジジィ共!命は粗末にすんなってな!!

その言葉と共に、再び積尸気冥界波を放つマニゴルド。やはり重たい!
しかし、今度はアヴィドの力に押し負けたりはしない。
圧力をかけて魂を押さえようとするアヴィドに力ずくで対抗する。

へ・・・黒い祭壇星座よォ。誰でも皆、自分のためだけに生きてんのよ!
強ェ奴も、弱ェ奴も、オレもジジィらも、テメェがどう見ようと・・・塵みてェな命どうにか光らせて生きてんのさ・・・
それをテメェごときがもて遊んでんじゃねェぜ!!

言葉を張り上げ、気合を入れるマニゴルド。
突き上げた指の爪がはがれ、骨がメキと音を立てて変形する。
だが、その状態でも無理矢理体を起こし、指を高々と突き上げる。
今度こそ放つことができる。これこそが蟹座の奥義。積尸気冥界波!!!

屋敷全ての魂が、マニゴルドの指に導かれるようにしてあの世へと送られていく。
屋敷を形成していた魂が消えたため、屋根が消滅し夜空が見える。
夜空に登り、あの世へと向かう魂たち。それはまるで無数の星々のようであった。まさに命は宇宙か・・・

金は現世、魂は天国か地獄。金も命も人が好きにしていいもんじゃねぇんだ。
世界はテメェの強欲のためにあるんじゃねぇのよ。なァ、先輩。

マニゴルドの胸に浮かぶアヴィドへの共感と反感!
その果てに見せたのは魂への優しさだった・・・!!

予告どおり、漢を見せてくれたマニゴルド!
その優しさを持って無念の魂をあの世へと送り届け、アヴィドも倒してしま・・・何ィ!?
魂を送っただけかと思ったら、アヴィドが白目を剥いて倒れているーッ!!
この展開は地味に驚いた。というか、それでいいのかアヴィド?
暗黒聖衣を纏って、いよいよ本気かと思ったら、来てない時の方が活躍してたってどういうこと!?
なるほど。これが負け犬の聖衣と言った理由なわけか。
この聖衣を着たものは勝者になってはいけないと思っていたとかそういう。いやいや。

積尸気冥界波を食らって、アヴィドの魂もあの世へ飛んでいってしまったのでしょうか?
まあ、そうだとしても、積尸気を使えるアヴィドなら戻ってこれるはずである。
次回はマニゴルド編の最終話になるが、どのような決着になるだろうか。
ジョーカが仮面の力でアヴィドを完全に封じるという流れはありそうですな。
その後のマニゴルドとジョーカのやりとりに期待が高まるぜ。

それにしても、今回のタイトル。暗黒聖壇星座になっているのだが・・・これも誤植ですかね?
最近誤植が増えてきている気がして困ります。単行本で直りそうな気はしますけど。
アオリは気合入ってて格好いいのだから、この辺りも頑張って調整していただきたいですなぁ。



第36話 師弟の思い  (2012年 13号)


暗い闇の中、アヴィドの魂が佇んでいる。
金も魂もその手には留まらず、すり抜けていく・・・
だが、失ったのであれば、また全て集めなおせばいい。
それがどんなに・・・多くの憎しみを生もうとも・・・

そう考えるアヴィドの前に浮かぶのは、デスクイーン島の仮面。
その背後には多数の死者の霊が浮かんでいる。凄惨な光景ですな。
アヴィドは仮面に向かって語りかける。俺を討ちにでも来たか?俺の殺した者らの憎しみをひき連れて、と。
しかし、その仮面の下からは思いもしなかった人物が現れる。

善事も悪事も突きつめた先に悟りがあるやもしれぬ。
お前には今・・・なにが見えておる。アヴィドよ!

仮面を取って姿を現したのは、アヴィドの師、ハクレイ。
一瞬驚いたような様子を見せるが、この期に及んでまだ師匠面か?と言ってのけるアヴィド。
道を誤った俺を導きに来たとでも?と尋ねるが、ハクレイは言う。

フン。本来人が人を導くなど傲慢よ。
最後、己の道を決めるのは自分!お前はわしに反する道を選んだ。
もう一度問う!お前は暗黒に堕ちて何が見えた!!

「満足」よ!!!

俺は根っから聖闘士は性に合わなかったのだ!たとえ生まれ変わっても俺はきっとこの道を行く。
導くは傲慢!・・・成程。確かに俺はあんたからなんの影響も受けていない!!
なにも継いでいない!!・・・なにもな。

師に背を向け、暗闇の中を立ち去って行くアヴィド。
なんだか悲しい別れ方に見えますなぁ。

視界が開けたとき、アヴィドが立っていたのは黄泉比良坂。この穴に落ちれば地獄行きである。
その場所に、アヴィドを追ってやってくるマニゴルド。ジョーカも連れてきたようだ。

払ってもらうぜ現世でのツケ。ジョーカと仮面の前できっちりとな!!

アヴィドはマニゴルドの冥界波で肉体からブッ飛ばされている。
さらに、その時の衝撃で魂自体ボロボロとなっているのだ。
だが、それを言うならマニゴルドとて同じ。現世での戦闘が既に魂まで響いている。
ジョーカの仇討ちどころか、返り討ちになるのがオチだろうよ、とアヴィド。

分かってねェな・・・今、テメエを追いつめてんのは俺たちだけじゃねェ。
そら、聞こえるはずだぜテメェには。テメェを憎む大勢の声がよ。

アヴィドの魂を、死者の群れが取りすがる。
これは全員、アヴィドの屋敷の一部にされていた者達である。
憎すぎて、行くべき天国にも地獄にも行けずにいる。

テメェを地獄に落とすまではな!!

まさしく、因果応報な状況。だが、そんな死者の群れにも怯まないアヴィド。

俺のせいでどちらにもいけないだ・・・?なんと惰弱な!
ならばいっそ俺自らの手で消滅させてやろう!!

取りすがる死者の霊を全て焼き払うアヴィド。魂だけでもまだまだ強い。

力にもならん憎しみなど今更気に留めんよ。
その数の分、俺はこの世を楽しんだのだ・・・この力と技でな!!

どこまでも我を貫こうとするアヴィド。ならばマニゴルド自身が戦うしかない。

テメェの最期乗ってやんぜェ!!

右の拳をアヴィドの顔面に向かって突き出すマニゴルド。
しかし、その拳は当たる前に止まる。

これで満足かよ。

ああ。次は地獄で楽しむ!!!

拳に吹き飛ばされることもなく、アヴィドは自らの足で死界の穴へと身を躍らせる。
そして、アヴィドは思う。師、ハクレイについて。

師よ。俺は証明してやりたかった
あんた程の力があったならば、金も地位も全て思うがままだったと。
俺がやれたならあんたもできたはず・・・見せつけたかった。愚かな師へな・・・!!

哄笑とともに落ちて行くアヴィド。
色々ととんでもない奴ではありましたが、師匠への想いってのはやはりあったんですな。
髪型まで真似ているぐらいですし、完全に嫌っているはずもなかったわけだ。

笑いながら落ちて行くアヴィドを見て、ジョーカは複雑な表情を見せる。
その頭に手を置き、マニゴルドは語る。

それなりに納得した人生だったんだろ。超ド級で迷惑な野郎だったけどな!
・・・俺には憎めねェタイプだよ

・・・俺に言うセリフかよ。
・・・でも、あいつもあんたたちみたいにブレないで生きてたんだな。

とんでもない悪党ではあったが、そのブレない死に様は何かを見せてくれたかのような気分にさせてくれる。
ジョーカもそういった信念のようなものを感じたようだ。

さて、暗黒聖闘士との戦いは解決し、マニゴルドとアルバフィカはヴェネチアを後にする。
デスクイーン島の仮面はジョーカから預かってきた。島へ返すことになる。
ジョーカは見送りにもこないのか。
と思っていたら、子供達に突き飛ばされるマニゴルド。どわあ!!
気づいたら、ジョーカにサイフを掏り取られていました。

へへ!仕事納め大成功だぜ!!

ありがとな。マニゴルド。アルバフィカ。
その仮面には自分の金と足で会いに行くよ。
もう決めた。その時はさ、必ず2人にも会いに行くよ。

楽しみにしてるぜジョーカ。そん時美人になったら付き合ってやるよ!

バ・・・バッカじゃねェの!!?

マニゴルドの軽口に真っ赤になるジョーカ。あらあらうふふ。
ジョーカは女の子であることを隠すのはやめたんですかね。上着は脱いでいるし、下もスカートなのかなんなのか。
これからどんどん女の子らしく成長して行くんじゃないかと楽しみである。
ただ、成長した後、マニゴルド達が聖戦で散ったことを知るんだよね。それがなんとも悲しい。

さて、次号は新章。山羊座のエルシド編が開幕!
個人的にお気に入りの黄金なだけに、活躍を楽しみにしております!



聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝 5巻


第37話 刀鍛冶  (2012年 14号)


ノン気に歌いながら刀を打つ少年の風景から始まります。

俺はノン気な鍛冶屋の子ー♪技は東洋仕込みの親父ですー♪
打っては研いで過ごしますー♪俺は剣の子親父の子ー♪

わっは!俺にしては上出来!!

出来上がったのはひどく歪な形の剣。
こんな剣でも少年にとっては上出来らしい。どころか、やっぱ俺って天才なんだ!とか思っちゃう。
なんとも前向きな子っすね。職人向けかもしれない。

少年の名前はラカーユ。親父はここの熟練職人である。
物心ついた時から囲まれていたからか、刀剣の類は心底大好きらしい。

親父の血は濃いぜと満足気なラカーユ。そこにその親父様登場。ラカーユの作った剣を眺める。
ラカーユは剣の中では親父の作る剣が一番好きだという。綺麗で鋭利さに温かみがある。
いつか絶対親父みたいな剣を打つ!それがラカーユの目標だった。
しかし、今回のは不出来。床に打ち付けたら簡単に折れてしまう。ギャー!!
なにすんだよ、酷ェよと掴みかかるラカーユ。
それに対し親父様。お前には俺と母さんの不器用なとこだけやっちまったのはもう仕方ねェと呟く。え?

だがな、鍛冶屋にとっては作る剣が俺たち自身を現すんだ。
見た目が歪でも武骨でも細くてもいいぞ・・・だが、すぐ折れるような剣だけは駄目だ!!
そんな剣を打つような奴にはなるな、ラカーユ。

なかなかに含蓄のあることをおっしゃる方ですねぇ。
早速感銘を受けたラカーユ。俺、絶対親父みたいな剣作る!と意気込んでみせる。
しかし、無理だってお前には、と即答。不器用じゃ仕方ないよね。哀れな。
それに、親父様はそろそろこの町で仕事をするのに嫌気がさしているという。
近頃、親父には剣の依頼が多い。
本当なら喜ぶとこだとは思うんだけど・・・それは、東の砂漠に急に現れた町が原因だった。
ある日一夜にして現れた町。陽炎(カタラニア)――みんな今ではそう呼んでいる。
ラカーユの町は剣士であふれ返るようになった。
それは陽炎で催されるイベントのせいだ。
闘技大会!!
そこで活躍すれば栄華が約束される夢のような大会。剣士らは皆それを目指してやってくるんだ。

コロッセオのような外観が描かれている。ここで闘技大会が行われるということでしょうか。
剣闘士による戦いとはまた古風でありますな。
そうやって人が集まり、賑わうのは悪くない。町の発展にも繋がる。
が、腕に覚えがある剣士が集まるとなると、ガラの悪いのが増えるのは必然。
元から済んでいた町民としては、ゴロツキが増えて苦労しているらしい。
親父様もそういったゴロツキ相手に剣を打つのに嫌気がさしてきてるんでしょうな。

サビだらけの剣を洗ってくるように言われるラカーユ。
水飲み場についたところで、物凄い悪寒に襲われる。
まるで首筋に鋭い刃を当てられてるみたいな・・・いや、実際当てられてたとしたら・・・殺・・・

振り向くラカーユ。気づけば、その隣には黒髪の男が座り込み、サビだらけの剣を手にしていた。

人だ・・・

物凄く鋭利な気配を感じたものだが、目に映ったのは普通の人間である。
少し安心したラカーユ。錆びてるから触っちゃ危ないっスよと警告する。
それに対し男。粗末な扱いだなと呟き、刀身に指を這わせる。
ジャアアっと音を立てて、根元から剣先まで一気に指を走らせると・・・なんと錆が一気に取れたではないか!!

どうなってんだ・・・この人の手・・・

全く驚きの技でありますな。
そんな技を見せながらも、男は剣について語る。良い剣だと。
ラカーユは、その剣は自分の親父が打ったものだと説明する。思わず正座しながら。

大した腕だ。どんなに使い手に汚されても、本質の清廉さは揺るぎない。お前の父の人柄が伝わってくる。

・・・この人、うちの親父と似たようなこと言ってる。剣は人を表すって・・・

剣について語っている2人。いい雰囲気だ。
だが、その背後に悪漢の影が迫る。悪漢というかなんというか・・・で、デケェ!!
俺たちも早く水飲み場使いてェんだけどなァ〜〜

ドオオオオオンと現れた悪漢は、後ろの男たちの倍はあろうかというデカさ!
いや、単に距離があるだけか。横並びすると、せいぜい頭2つ飛び出ているくらいだった。十分デカイけど。

悪漢は剣を握り、座ったままの黒髪の男に絡んでくる。
武闘大会に出る相手であるならば、今のうちに潰しちゃおうぜってことなんでしょうかね?ゴロツキらしい発想だ。
黒髪の男の体は細く、剣もそれほど大きくない。
なので、自分たちの剣を見せ付けてやるぜと悪漢。

いいかァー!?本当の剣ってのは・・・こんなのを言うんだよォ〜〜〜!!!

水飲み場を破壊する悪漢。剣というか、それ斧じゃないですか。
ていうか、デケェよこの斧。大人の体ぐらいありそうな斧である。こりゃ怖い。

・・・ダメだ・・・こいつら救いようがない・・・早く逃げないと。でも・・・

この人なんでちょっとも動かないんだよォーッ!!
心配するラカーユをよそに、目を閉じたまま微動だにしない黒髪の男。
その目を開き、悪漢の攻撃を雑な一撃だと言い捨てる。

己の武具と何ら通じ合っていない。力だけの一撃だ

これまた達人っぽい言い回しで来ましたね。
そんなこと言われても、頭の悪そうな悪漢には通じない。今度は体に叩き込んでやるぜと斧が振るわれる。

この人・・・殺られ・・・!!

心配するラカーユ。だが、座した体勢から、振り向き様の一閃。
男の持つ剣は悪漢を切り、倒れさせるのであった。

山羊座のエルシド。お前を斬った者の名だ

す・・・凄い!!
ラカーユも思わず興奮してしまうエルシドの技の冴え。こうしてエルシド編が開幕と相成ったわけであります!

今回のゲストは少年。ペフコとは違い、少し年かさの少年ですな。
で、このラカーユ。どうやら本編でエルシドさんの部下だった白銀聖闘士の一人らしい。へぇ。
マンガの方では設定はなかったが、アニメの方で名前が設定されているらしい。
将来死ぬことが決まっているゲストというのも悲しいものがあるが、まあ今はそれを忘れましょう。

舞台となっている町は一体どこなのだろうか?
エル・シドといえば11世紀のスペインの英雄の通称らしい。
スペインの南部は乾燥しており、砂漠もあったりするらしいから、舞台はそこなんですかねぇ。

それにしてもコロッセオで闘技大会と来ましたか。
今のところ女っ気が全くないエルシド編でありますが、闘技大会では女性が出てくるのでしょうか?
闘技大会の主催者が女性の可能性は高いと睨んでいる。
そう、誰か馬になりなさいとか言い出すようなお転婆なお嬢様が主催に相違あるまい!グラードコロッセオ的に。
それか、物凄く可愛い女剣闘士が現れる可能性もある。
切り裂くと中からオッサンが現れそうなぐらい可愛い女剣闘士とかが出る可能性がな!
あわわ。パンタソスの悪夢がどこまでもつきまとってきておるぜ!

果たして、このシリーズは女性不在で進むのかどうなのか。その辺りも期待しながら見ていきましょう!



第38話 あまぎれ  (2012年 15号)


美しき一閃が醜き悪を斬る!!
今シリーズもアオリがノリノリだぜ。

良い剣だ。だが、斬ったものはつまらなかったな

またつまらぬものを斬ってしまったといいたいわけですね。わかります。
エルシドさんはラカーユに剣を返す。
ラカーユは今の光景に興奮して顔を赤くしている。
あんな大男を一瞬で斬った・・・あんなに綺麗に・・・圧倒的に!!

まるでこの人自体が、一振りの剣みたいだ!!

立ち去ろうとするエルシド。それを追おうとするラカーユ。その背後から怒声が飛ぶ。こォら!ラカーユ!!
現れたのはラカーユの親父様である。遅いから様子を見に来たようだ。
親父様の登場にエルシドも足を止め、話しかける。
見事な剣でございましたと褒め称える。
が、その言葉は親父様には気に入らなかった様子。

最近の若ぇのは剣の扱いはーそりゃあ酷くてな。そのクセ口ばかりが達者になって知ったかばかりだ。
正直、オレはそんな奴らに俺の剣を使って欲しくも、ましてや薄っぺらに誉めて欲しくもねえ!

ガンコな職人って感じの人ですねぇ。気難しい。
そんな親父様の言葉をエルシドさんは黙って膝を折り聞き入れるのであった。ほう。

確かに良くも知らずに、ご無礼申しました・・・
俺もまた己自信を一本の剣として完成させようと生きる身
その道を物知らぬ他人に心無く評されるのは確かに耐え難い。ご無礼、お許しください。

礼儀正しいですねぇ、エルシドさん。相手の技量を認めた上での発言なのでしょうな。
逆に親父様はエルシドさんの腕を見ていないので、若造を相手取った態度でいるって感じですかな。
道という言葉を出したエルシドさんに対し親父様。
カタラニアの武闘大会に出ればその名は広まる。金、女、名声、称号、全てが手に入る。
お前さんはそのためにここへ来たのか?と問う。

確かに俺はこの武闘会制しに参りました。
・・・だがそれは、ただ任務という名の過程!
どんな贅も名声も俺の道に続いているようには思えません。

キッパリと言ってのけるエルシドさん。これには親父様も軽く笑みを見せてしまう。
口では、こんなつまらねェ武人は久しぶりだとか悪態ついちゃいますけど。

だから餞別に持たせてやるよ!

言葉ではなく、行為でデレるってわけですね。剣をエルシドさんに渡す親父様。職人はデレも気難しい。
かたじけないと受け取るエルシドさん。
この沈黙はどういった意味があるのでしょうか。
正直、自分には剣は必要ないんだけどな、という思いもあったりしそうだ。もちろん口には出さないが。

剣を渡した後、親父様はエルシドさんに言葉を残す。
お前みたいな固い野郎に一つ教えといてやるよ。剣は硬いだけじゃあ折れちまう。

「あまぎれ」となれよ

親父様は東洋で刀剣製法の技術を学んだという。そこでの知識を披露してくれます。
東洋の刃にはザッと2種類ある。「ながぎれ」と「あまぎれ」だ。
「ながぎれ」は硬く鋭いが欠け易い。
「あまぎれ」は切れ味よく欠けにくくそして研ぎ易い。
人としていたいのなら「あまぎれ」でいよ。欠けず・・・そして人の手によって蘇る。
ま・・・どっちを選ぶかはお前さんしだいだがな。

中々面白い話ですな。剣にも柔軟性が必要ってことか。
でも、エルシドさんが柔らかいところを見せるのは想像しづらいなぁ。

武闘大会に赴こうとするエルシドさん。そこにラカーユもついてくる。
親父様に、一緒に行けとドヤされたらしい。エルシドさんから色々学べといわれたらしい。ほう。
どうでもいいが、このページのラカーユがやけに女の子っぽく見えるのだが?
服のふくらみで胸があるように見えるだけでなく、顔も女の子っぽく見える。可愛いとか言えちゃうぐらい。

さて、ラカーユの案内でコロシアムに向かう。
カタラニアの街中は凄い熱気である。腕一本で成り上がろうというゴロツキで溢れているのだ。こいつはむせる。
それにかこつけて、ここには怪しい商売の人も沢山きている。
娼婦らしきお姉さん方も存在し、エルシドさんに声をかけたりしている。ほほう。
ついてきたラカーユは色々とエルシドさんの世話をしようと考えているようだ。

大丈夫とは思うけど、エルシドさんちょっと浮世離れしてそうなんで・・・!

・・・・・・

まあ、その通りですね。ホイホイついて行くことはないと思うけど、あるかもしれない。
ついて行ってもどうにかされることはないと思いますけどね。
しかし、このカタラニア。少し前に出来たばかりだというのによくこんなに人が集まったものだ。
いつか本当に陽炎みたいにパッとなくなったりするんじゃないかとラカーユ。ふむ。

エルシドさんの任務がどんなか知らないっスけど、ここには皆、欲や夢や思惑を持ってきてる。
それだけでこの町が動いてるんなら、本当にここは陽炎みたいなもんだなァ。

思わず語ってしまうラカーユ。そうこうしているうちに町の中心部に辿り着いた。
カタラニアコロシアム。
歴史を感じさせる闘技場に剣闘士。古代の遺物って感じですよね。
この光景に思わずゾクゾクと身を震わせるエルシドさん。なんかヤバイ。人斬りの目になってないですか!?

今からここで本戦前のバトルロワイヤルが行われるらしい。
まあ、かなりの数が来ているみたいですし、一気に数を減らさないといけませんわな。
本戦に出るのは、最後に残った1人だけだそうな。なに?他の本戦出場者はもう決まってるのか?
他の連中が血走ってるのもそういう理由があるんですな。
早い段階で人数を減らせるならそれにこしたことはないというわけだ。

コロシアムの中に入る前に、親父様から受け取った剣をラカーユに返すエルシド。

お父上には申し訳ないが・・・本来俺たちは己の肉体のみを武器とせねばならんのだ・・・!

そういい、山羊座の黄金聖衣を纏うエルシドさん。
箱を開けたら自動装着!という描写が多かったが、今回は手作業で身につけます。
まずは右腕から。これは伝統ですね。腕からって身につけにくそうだけど。
そして、何故か上半身裸で身に纏うエルシドさん。な・・・何故脱ぐ?
よく見たら、左腕はまだシャツをひっかけたままなんですな。ちゃんと脱いでから着なさい!
きっちりしているんだか、だらしないんだかわからないお人である。これが浮世離れしているということか・・・?

ともかく。黄金聖衣を纏ったエルシドさんは言う。
案ずるな。我が拳に斬れぬものはなし!と。

やはりエルシドさんは山羊座のヘッドパーツをつけた姿が映えますね。
次回はコロシアムでのバトルロワイヤルだが、まさしく血の雨が降りそうな気配がする。
どう考えてもエルシド無双になる展開しか思い浮かばない!
まあ、本番は本戦からでしょうし、ここは腕前を披露する場面ってところですやね。



第39話 カタラニアの美姫  (2012年 16号)


カタラニアのコロッセオに剣闘士たちが集まった。
生きて還るは一人のみ。バトルロイヤルの開戦だ!

怪しげな鎧マスクの男が闘技会予選の開始を宣言する。

各地から集った強者たちよ!己が力存分に出すが良い!最後の一人になるまでな!!

ウオオオオと歓声をあげる剣闘士たち。
その中にあって一人、静かに佇むエルシド。
これだけの大歓声の中で少しもたじろがない。本当に鋭い鋼みたいな人だとラカーユ。
叫ばなくても、その金キラの姿だけで十分目立ちますものね。

鎧マスクは続けて言う。
最後まで残った者は、この闘技会本戦出場の権利が与えられると。
更に本戦を勝ち抜いた者にはあらゆる富と名声を!
そしてあそこにおわす・・・このカタラニアに君臨する美姫の伴侶となる権利が与えられる!!

示された天蓋の下には仮面をかぶった高貴そうな女性の姿がある。
大小様々な剣に囲まれ座る姿は、このような大会を開く町の姫という印象を強めてくれる。
それはいいが、中に着ているのは洋服っぽいのに桜柄の羽織りとか、わらじのような履物とか。
和洋折衷というのですかね、これも。
ともかく、カタラニアの姫。仮面をかぶっても気品溢れる姿に観客が沸き返る。
そして、その美姫を手に入れる権利を手にするため、剣闘士たちは高ぶるのでだった。開始!

合図と共に、エルシドさんの周りの剣闘士が一斉に切りかかってくる。
コマに映っただけでも5人はいる。そのいきなりの攻撃をさらりと交わすエルシド。
どうも、金ピカで丸腰という目だったスタイルが気に入らないらしい。そりゃそうだ。
最終的には10人ぐらいに囲まれ、一斉に攻撃される。
剣どころか槍なんて持ってきてる奴がいるじゃないか。
しかしまあ、予想通りというかなんというか。エルシドさんの手刀がきらめいただけで、地に倒れ伏す剣闘士たち。
手に持った武器はどれも砕かれている。これでは戦闘不能でしょうな。
見た感じ血飛沫も待っているので体も斬っちゃったのかな?

ナマクラはいくら集まってもナマクラ・・・この俺の手刀の前ではな!

あれだけの武器を手刀だけで薙いだのか!と観客騒然。そんなァー!?
だが、そんなエルシドさんの美技にも怯まない男がいた。
エルシドさんの身長ほどもあろうかという鉄球。それは鎖につながれ、大男が振り回していた。
この男こそ、今回の大会の大本命。
鉄球で築いた屍の山は数知れず!凶気と戦慄の大量破壊兵器・・・鬼旋風のジェリコ!!

フハ・・・テメェはもうこの闘技場でシネだぜ!!ヒヒヒ・・・!!

強そうだが、あまり言葉に頭が回ってなさそうな発言をするジェリコ。
その鉄球を放つたびに、ザコ剣闘士が巻き込まれ、吹き飛ばされる。グシャア。うぉ、グロイ音しとる。
ザコたちが次々巻き込まれ、残るはジェリコとエルシドさんのみ。
そのエルシドさんも壁に追いつめられている。
そら終わりだァァー!!

回転させたまま歩いていき、そのまま回転に巻き込んで倒そうとするジェリコ。
だが、エルシドさん。鉄球の回転の間をすり抜け、身を低く倒し、鎖の下を跳んでジェリコに近づく。
そして手刀一閃。鉄球ごとジェリコを切り裂いてしまうのであった。
ってわざわざ交わさなくても、鉄球真っ二つになってますがね!
普通に切り裂いて迎撃もできたのに、わざわざ交わしてあげるエルシドさんは気遣いができる人。

遅い旋風だったな

いや、どうやらこのセリフがいいたいので交わしたかったらしい。なるほどー。
しかし、でかい斧持ったヒャッハーさんといい、大男が集まる街ですね。

予想通りのエルシド無双でありました。まあ、予選で黄金聖闘士の相手になる奴が出るとも思えないわな。
バトルロイヤルを制した後も、直立不動を崩さないエルシド。
その鼻にかすかな花の匂いが漂う。
気づけば、闘技場にカタラニアの姫が下りてきていた。おお・・・姫自ら・・・

見事な長切の如き手刀よ。誉めてつかわす戦士よ

仮面を外しながら語りかける姫。
エルシドさんはどうやらこの声に心当たりがあるらしい。
驚きながら振り返るエルシド。まさかと思いつつ、そこにいた者は・・・か・・・!?

あのエルシドさんが驚いている。
観客席から見ていたラカーユも異変を敏感に察知する。

その時のエルシドさんを見て一瞬思ってしまった。
戦いの中、一度もゆるめなかったあの手刀が一欠け刃こぼれた・・・と。

エルシドの過去に深く関わるといわれる峰という女性。一体何者なのか!?
名前からすると、和風。日本人の可能性もありますな。
ラカーユの親父様が日本刀の話もしていますし、その辺りに絡んだ展開がありそうだ。

女っ気が全くない展開になるかと思いきや、まさかの因縁がありそうな相手の登場。
果たしてエルシドとはどんな関係だったのだろうか?
あんまり色気のある関係とは思えないのがアレですな。
逆に、そういう相手だったけど、求道者であるエルシドさんは別れたという展開はなくもないか。
では、そういう相手が何故ここにいるのか。そして何者なのか。
仮面をつけていたけど、すぐに外したし、女聖闘士というわけでもないのか?
色々と気になってきます。今回のボスはどういった存在ですかなぁ。



第40話 斬桜鬼  (2012年 17号)


剣闘士たちの屍累々という闘技場に降り立ったカタラニアの美姫。
それはエルシドさんの知る、峰という女性だったのだろうか?
エルシドさんの問いに、姫は答えない。
代わりにお前の素晴らしい勝利に褒美をとらせようと言い出す。

いつのまにかその手には長い刀が握られている。柄も結構な長さの刀だ。
全て合わせれば、姫の身長ほどもあるのではないかと思われる。

これは私の魂、ありのたけを注ぎ研ぎ澄ました刀だ。その刃の冴え、とくと見ろ・・・

キン。
金属音が鳴ったと思ったとき、コロッセオの上部が切り落される。
刀を振ってもいないのに切ったというのか?どういう刀だ一体・・・

これが噂に名高い、妖剣・斬桜鬼!!

刀自体が持ち主の心に応え、自ら相手を斬る。
極限の研ぎが可能にする刀の完成形。私が到達した聖剣だ

・・・・・・!

姫の聖剣という言葉に反応するエルシドさん。その様子を見て、笑みを見せる姫。

本戦での戦い、楽しみにしている。

そう言い残して去って行く。
やはりこの長い刀では鞘もなさそうですなぁ。
切れ味が鋭すぎるのか、妖気によるものか、刀身に触れた花弁がスッスッと真っ二つになっていく。
取り出し時も、どこから取り出したかわからない刀。
妖剣などと呼ばれるだけあり、怪しげなことこの上ないですな。

しかし観客は、いやあー物凄いなァの一言で済ませてしまう。いいのか、お前らそれで?
まあ、ここは突然現れた陽炎の町ですしね。
こういったとんでもないものがあってもおかしくない場所なんでしょう。たぶん。

姫に会ってから、エルシドさんの様子がおかしい。
それに気づいたラカーユは気づかい、声をかけてくる。
見苦しいところを見せてしまったと思ったエルシドさん。水をかぶって頭を冷やす。ううむ、古風な。
ちゃんとヘッドギアを外してかぶっている辺りは律儀ですな。

何があったのかと問うラカーユ。その問いに、峰だったのだと返すエルシドさん。
峰という女性はかつての友・・・いや、友というより好敵手だったのかもしれないという。

オレは聖闘士として己を鍛えぬくことで己自身を聖剣へと完成させようとした
峰は研ぎ師として究極の研ぎにより刀に魂を宿らせ、聖剣の完成を目指した

道は違えど、目的とすべきところは同じだったというわけですね。
となると、峰は聖闘士というわけではないのかな。聖闘士が武器を作るというのもおかしな話ですし。

かつての知り合いに出会った。でも、動揺したのはそれだけが理由ではない。
峰は・・・既に死んだ筈の人間なのだ・・・!!

初めは人違いかとも思った。だが違う。あの刃への執念はまさしく峰だとエルシドさん。
確かに、妖剣を持ちながら、聖剣だなんて口走っておりましたしねぇ。間違いはないんでしょう。

あれは東洋より携えて来たという峰が愛した花が散る頃のことだ。
峰は胸の病に倒れた
完成されぬ刃と、痩せ衰えていく峰の肉体。
結核か何かでありましょうか?
今と違い、治す薬もないでしょうし、復調の見込みはない様子。
峰自身ももう長くはないのだろうと悟っている感じであります。切ないな。

なァ・・・エルシド・・・私の父の国では女が刃に拘わることは許されぬそうだ。
こうなったのは私が刃を汚したから・・・そう思うか?

思わん。お前は刃を汚してなどいない

峰の問いに即答するエルシド。ぶっきらぼうではあるが、真にそう思っているのが伝わる。
その答えを聞いたところで、激しく咳き込む峰。だが、決してエルシドには入って来るなという。
結核であるならば、菌が飛び感染することは十分ありえますからねぇ。

入れば恨む・・・!
無念だ・・・私はもうお前と共に刃の完成を目指せない・・・
せめてお前は・・・至れよ・・・!聖剣へ・・・!!

そう言い残し、峰は逝った。涙は出なかった。

うーむ。若い頃のエルシドさんにも色々とあったんですなぁ。
目指す場所を同じくした好敵手が病に倒れた。
その相手が今、眼前に生きて現れ、その上に聖剣を完成させたという。
生きて現れたのも衝撃だが、峰が先に聖剣に至ったというのも衝撃なんでしょうな。
まあ、聖剣というには禍々しすぎる代物でありましたが・・・

さて、エルシドさんの想いはさておき、本戦トーナメントが開始されようとしています。
一連の話を聞き、より心配そうになっているラカーユ。
ああいうタイプって欠けたら戻りにくそう。とのこと。
あまぎれになるにはまだまだってことですかねぇ。柔軟とは程遠そうですし。

それはさておき、まずは予選を勝ち残った3名の入場!
エルシドの他に2名の選手が闘技場に姿を現す。
ってこれはまた奇妙というか珍妙な取り合わせだな
ひとりは西洋の鎧をまとい、その上からマントを身につけた騎士のような男。
もうひとりは、人形のようなものを携えた怪しげな黒マスク。
いや、黒マスクの人形を携えた道化師のような男?どっちが本体かはよくわからない。
そして、金ピカ鎧のエルシドさん。怪しげな3人組だ・・・!

だが、最後に現れた男もまたこの3人に引けを取らない存在である。アナウンスも特別に熱が入る。

最後の一名はもちろんこの男!!
優勝候補にして我らが英雄・・・黒き戦慄のフェルサー!!

また仰々しい二つ名の奴が現れたものである。
真っ黒な鎧は全身を覆い、顔のほとんども隠している。ただ、その鋭い目だけは外から見えるようになっている。
そして、なんといっても
これまた黒い鎧をまとった黒い馬に乗って、フェルサーは現れたのでした。
なんという黒ずくめ・・・というか、馬かよ。これは戦慄せざるを得ない。

この剣気・・・まさかお前は!?

相変わらずの鉄面皮。久しいなエルシド

まさか、峰に続いての知り合い登場!
このセリフにより、フェルサーは単純なかませではないことが確定したようですな。

古代のコロッセオに集った剣闘士。
そこで勝ち抜いた4名が、素手の聖闘士、騎士、道化師、騎乗兵とは。
なんというか、もうなんでもありだったんじゃないかと思えてきますな。
馬乗ってくるのがありなのなら、ゾウに乗ってやってくるのもありだったんじゃないかと思えてくる。
まあ、ゾウがドラゴンだろうとエルシドさんの相手ではなかったでしょうけどね。

妙にエルシド所縁の人物が集まっているカタラニア。
任務としてやってきたということだが、こうなるとわかって送り込まれたのだろうか?
そのあたりについて、次回辺り教皇が遠くから解説してくれるかもしれない。



第41話 黒き潮流  (2012年 18号)


峰に続き、知った相手が眼前に現れる。
フェルサー。けっして争いを好まぬ男が何故ここに!?
二人は5年ぶりの再会だと言うが、それだけの期間があればどう変わってもおかしくはない。
とはいえ、こんな形での再会は衝撃が大きいですわな。さすがのエルシドさんも汗を浮かべる。

昔の話だ。今の俺は・・・鮮血により闘技場を黒き戦慄で覆いつくす、カタラニアの覇王よ!!

覇王と来ましたか。これはまた。
だが、さすがに英雄などと呼ばれるだけある。観客席はフェルサーの登場に沸きかえっております。
そんなフェルサーの体からは黒い小宇宙が立ち昇る。
なんだ?さすがに暗黒聖闘士ってことはないだろうが、もしや冥闘士なのか?

さあ、観客の諸君。楽しもうぞ!!今日もまたこのカタラニアで諸君の望む宴が始まる!!
武人達による血と熱によって諸君の興奮をこの会場に解き放つのだ!!

フェルサーの宣言により、闘技場を異様な熱気が包む。
ラカーユすら熱気に当てられたかのように歓声をあげている。なるほど、これは異様だ。

さらに異様なことに、フェルサーの鎧の胸に口のようなものが現れる。
上下に長大な牙を携えたそれは、観客たちの熱気を食っていた
これが武闘会を開いている目的ということなのでしょうか?
では、エルシドさんが任務として仕留めるべき相手とは、やはりこのフェルサーなのか?

フェルサーが踵を返すとあれだけの熱気を放っていた観客達が元に戻る。
見たところ、観客達に何か害があったりするわけではないようだ。

熱気は力となり夢を実現する糧になる・・・そういうことだ

そういうことか!
夢を実現するには夢に向かって前進するパワーが必要ですもんね。
そういった熱気を食らうのは割かし理に適ってる気がします。ボンバー。

宣言だけして立ち去ろうとするフェルサーに声をかけるエルシド。
しかし一回戦の相手はフェルサーではない。
道化のような姿をした人形が剣を握り、エルシドさんに向けてきている。
どうやらこちらが人形のようだ。黒い帽子の男が操縦者ということか。
それはそうと、前回のときとデザイン違ってないかい?人形と操縦者双方。
まあ、普段着と戦闘着は違うんだと好意的に解釈しましょう。

テメエもしかして聖闘士って奴だろ。キキッ。まさか本当にいたなんてな!!
テメエのことはたっぷり分析させて貰ったぜ。

俺は今世紀最大の科学者。この人形は俺の最高傑作。電気仕掛けのパルマーだ!!

俺の分析の前に敵はいねェ!さあー!!
第一回戦開始だぜーッ!!

凄い速さで剣を振るう道化人形のパルマー。
人間では不可能な速度の回転も人形ならば容易く行えるってわけですね。
しかし聖闘士からしてみればどうということのない速さである。
交差した一瞬でパルマーの胴体は剣ごと上下に真っ二つとなる。

・・・聖闘士の力。常識で測らぬ方がよいぞ。

いえいえ。極めて常識的に考えなければ。フヒヒヒ。

科学者たるもの、常識を忘れてはいけないってことですね。
どう見ても非科学的な作りの人形に見えるけど、それはそれ。
倒れたはずのパルマーの体からコードのようなものが延び、エルシドさんの首筋に刺さる。

今、貴方の中枢神経に直接電極をつないだ。
古代ギリシャの文献では貴方がた聖闘士の闘技は小宇宙というものを利用しているという
小宇宙とは研ぎ澄まされた感覚の更に先の感覚。
その感覚を高めることによって物質を構成する原子をも砕くという。
予選で見せた貴方の鋭い手刀も同じ原理なのでしょう。

その電極はテメエの神経に届いて感覚を封じる!つまり小宇宙は使えん!!
テメエの手刀はナマクラ同然・・・俺の科学の前に敵はいねェーっ!!!

泣き別れになったはずの胴体を浮かばせ、短くなった剣を振り下ろすパルマー。
しかし、操縦者もちゃんと自分で喋るときとパルマーで喋るときとで口調変えてますのね。
少なくとも、貴方とテメエとは分けている様子。

真っ向唐竹割り!とばかりに振り下ろされた剣。
だが、斬ったのは残像だった。エルシドの本体は一瞬にして操縦者の背後にまわりこんでいる。
操縦者の左手には小形のリモコンのようなものが握られている。
これで人形を操っていたというのか?よもや無線とは。
しかも、リモコンが小さすぎて、細かい動作とか絶対無理なんじゃねって感じのものである。
さすがに今世紀最大の科学者を名乗るだけあり、不思議な原理で動いてそうな人形だ。
進みすぎた科学は魔法と区別がつかないって奴ですね。

だが、リモコンは破壊され、人形は地に落ちた。勝負あったな。
と思いきや、まだこれからという様子の操縦者。

小宇宙を封じられた土壇場でこれだけ動くなんて・・・さすが聖闘士。闘技大会に来てみるものだ!!
墓場の死体以上の材料が転がっているのだものなァ!!

死体・・・!?

もしかすると、パルマーには死体の脳が移植されていたとかそういう話でしょうか。
細かい動きとかは人形の脳が判断する。
その脳を活性化させるためのリモコンだったと考えれば小型でも説明がつく。
極めて常識的に考えるとそんな推察が出来てしまうのですよ。フヒヒヒ。常識的か?

小宇宙のないお前にこれは防げまい!死体人形になるがいい!!

操縦者の体もまた人形のように無数の機械に覆われていた。
自らの体を改造したのか?その体にも死体の肉が使われていそうである。
だが、襲い掛かる無数のアームを手刀で全て切り裂いてしまうエルシドさん。

確かに小宇宙を燃やせば切れ味はあがる。
だがこの拳、それだけでは鍛えあげられん!

さすがでありますな。
エルシドさんの右手は過酷な修練によるものか傷だらけになっている。
素の状態でそこまで磨き上げ、今に至っているのだ。侮ってはならない!

エルシドさんの手刀により、人形遣いは崩れ落ちた。第一回戦突破だ!

活躍を見て微笑む峰とフェルサー。
前座は終わり、いよいよ本格的に任務を遂行するときが来そうな雰囲気でありますな。

カオスなカタラニアの闘技場が、人形遣いの登場でさらにカオスになった今回。
錬金術とかそういうのも含まれているのでしょうが、凄いテクノロジーでありました。
しかし、人形遣いが語っていた小宇宙の原理は正しいのでしょうか?
研ぎ澄まされた感覚の更に先の感覚。
科学者としての分析だから、わかりやすくそういうものだと思ったのかもしれない。
実際のところはもっとよくわからない原理なんじゃないかなと思わなくもない。
セブンセンシズなんて本当によくわからないものですからなぁ。
エルシドさんも封じられたと勝手に思ってたけど、実は封じられていなかったのかもしれない。
封じられたとしても、普通に勝てますしってところを見せたのかもしれない。どうなんでしょうね。



第42話 優しき男  (2012年 19号)


1回戦を見事に制して見せたエルシドさん。次はフェルサーの番である。
通路へと戻る際にフェルサーとすれ違う。

ならば再び峰の前で相まみえよう。眩い夢は続く

・・・さあ!!観客諸君よ、興奮に抱かれるがいい!!

相変わらずフェルサーが登場すると闘技場は凄い熱気に包まれる。その熱気を喰らうフェルサーの鎧。
エルシドさんは、先ほどの言葉と、今の様子を見て、やはりこの男が標的なのかという想いを強めている。

そこにラカーユ登場。エルシドに対し、あの人も知り合いなのかと尋ねてくる。

俺の兄弟子だった男だ

ほう。兄弟子でございましたか。
なんとなく、優しいという記号からフェルサーの方が若いのかと思ったが、そういうわけではなかったようだ。
かつて、エルシドさんと峰はフェルサーを兄のように慕っていた。
けっして争いを好まぬ優しい男だった・・・だがその強さは本物。
仁智勇を兼ね備えた、真の聖闘士となるべき者だった

優しかったはずのフェルサー。
しかし今はそんな様子はない。騎士様との1回戦を繰り広げているが、その攻撃は苛烈。
馬上で繰り出す一撃は、騎士様の剣をへし折り、鎧を裂いて血飛沫を噴出させる。
様子のおかしい観客は熱狂しているが、割と凄惨な光景である。

あれが優しかった男の姿なのでしょうか?ラカーユの問いに、エルシドさんはそうだと答える。
あれは俺がまだ聖闘士候補生だった頃だ・・・

回想。
まだエルシドも峰も子供といえるぐらいの年齢のお話。
2人は山里で隠れ住み、共に聖剣に至るために邁進していた。
だが、その山が山火事に包まれる。火勢は強く、このままでは山は炎で染められ、中にいる生物はひとたまりもない。
どうにか山から降りようと走る2人。しかし、途中で峰が足をくじいてしまったようだ。
自分に構わず行けという峰。聖闘士候補生のエルシドならば逃げれるだろう、と。
だが、そんな言葉を大人しく聞くはずもないエルシド。おぶってでも連れて行こうとする。
しかし、そこに焼けた木々がバキバキと倒れて迫ってくる。うわあああーッ!!

幼い2人が火に包まれようとするとき、現れたのはフェルサー。
その大きな体で2人に覆い被さり炎から守ってくれる。
頼れる男の登場に、緊張が解けたのか気を失う峰。
2人をかばったフェルサーは酷い火傷を負っているが、このくらいなんともないさと強がってみせる。
さらに、峰と共にこいつも守ってやってくれと狐の子をエルシドに預けるフェルサー。
この猛火の中、動物まで助けようというのですか?優しい男である。
フェルサーはその人柄ゆえか、動物にも慕われていたようですからねぇ。見過ごせなかったのでしょう。

そら!行こうかエルシド!!

ウオオオオオと手刀を振るうフェルサー。
側にあった火に包まれた大木を切り倒す。なるほど、周りに燃えるものがなくなれば火に包まれることもない。
そうやって、次々と木々を薙ぎ倒して行くフェルサー。逞しい。
そしてついには・・・焼けた山に一箇所・・・芝生が残った
だが、その代償も大きい。フェルサーの拳は焼け爛れている。
そんな状態で手刀を振り続けていたのだ。これではもう・・・

心配そうにフェルサーを見上げるエルシド。
その腕には気絶した峰と狐の子が抱えられていた。
しかし、この気絶した峰はなんだか可愛いですね。
大きくなると職業柄かがっしりした感じになっているが、この頃は肩も小さく、可愛い感じ。

やはり眩しいな、お前たちは

フェルサーは2人を見てそんな言葉を漏らす。

お前も峰もハッキリとした進みたい道、夢がある。それが俺にはたまらなく眩しい。
いくら強い拳があっても、俺にゃそれがない。だからせめて、お前たちのそれを守れたことが俺は嬉しい!

笑顔でそんなことを述べてくれるフェルサー。うーん、いい人である。そして悲しい話でもある。
ただ強いだけではいけない。智勇を兼ね備えた男だからこそ、その結論に至ってしまったのですかねぇ。
エルシドを守ったことは大きいが、優秀な戦士を失うことになったのは痛手でありますな。

エルシドの懐から狐の子が飛び降り、朝日に向かって駆けて行く。
その朝日を見て、フェルサーは言う。

・・・ああいう朱色になるんだよ・・・夢に燃えて道を見る目は朝日のように輝く。
俺はそれが好きだ・・・だから、叶えて欲しいと思ってるんだ。お前たち2人には。

それから間もなくしてフェルサーは俺たちの前から姿を消した・・・

そして現在。今こうして闘技場で相まみえることになったわけであるか。
優しかったフェルサーに一体何があったのか。その黒い鎧はなんなのか。峰は何故生きているのか。謎は多い。

というところで回想終了。
その間にフェルサーと1回戦を闘っていた騎士様は無惨な姿になっている。
血みどろになり、仰向けになって倒れている。が、担架で運ばれているので死んではいない様子。よかったね。

それにしてもこのフェルサー、見た目からしてかなり強そうである。
ただでさえ馬上という有利に加え、武器も長大にして幅の広い大剣。
そんなドでかい武器を片手で携えている。大型動物でも切り裂いてしまうんじゃないかというシロモノだ。
あんな奴と戦うなんて無茶っスよとラカーユ。そこまでして遂行しなきゃならない任務とは一体何なのか?

「夢」を討つことだ

夢?
エルシドさんは説明する。己に与えられた任務はある神々の調査であると。
その神々が古代、力をふるい滅ぼした町があったのがここなのだ。
そこに突如陽炎のように出現した町。恐らくここはその神々関わる場所・・・夢の神のな

夢の神の調査は本編でもエルシドさんがこなしていた任務である。
そうか、昔からずっと継続して調査していたのですね。さすがに一朝一夕で見つかる相手でもないわけか。
先日、シジフォスの調査で夢神の一人の封印が何者かに破られたことがわかった。

お前なのだなフェルサー!!夢神の力を利用しようとする者は・・・

ようやく明らかにされた任務。
なるほど。夢神に関わる者でしたか。そしてその所縁の地であるカタラニア。
そりゃ制しに来たという話でも何の不思議もないですな。
夢神が関わっているとなると、カタラニアが一晩で現れたというのもわからない話ではない。
全てが解決したときには泡沫の夢のごとく消え去ってしまうのでしょうなぁ。

決勝戦開始。エルシドとフェルサーの因縁の対決。
峰が見守る中、2人はどのような戦いを繰り広げるのだろうか。

夢神といえば、冥王軍に関係する神である。
となるとフェルサーは冥闘士なのだろうか?でも、鎧の質はそれっぽくない。
武器も携えているし、違うのだろうか。いや、冥衣に備え付けられている武器なのかもしれないですけどね。

峰は夢を叶えるために蘇り、剣を鍛え上げたと推測される。
では、フェルサーは一体何を考えて夢神の力を利用しようというのか?
熱気を喰らうのは一体どういう理由からなのか?
よくわからないが、なんとなく楽しそうには見える。
大舞台に立って始めて自分の夢を見つけちゃったとかいう話なのでしょうか?
観客の熱気が、興奮が忘れられないんだよ!とかそういう。世が世ならアイドルを目指してたかもしれませんな!



第43話 抜き身  (2012年 20号)


決勝の舞台で相対するかつての兄弟弟子。
自らを窮地から救ってくれた兄弟子を前にしたエルシドさんだが、任務のためならば斬れると言う。

たとえ貴方でも・・・!!

それでこそエルシドさんである。フェルサーも満足そう。
それこそがお前の望んだ道だ。己を刀と・・・長切と鍛えた男よ。そうでなければ盛り上がらん!!

意を確認したフェルサーが早速攻撃を仕掛ける。決勝戦開始だ!
馬を操り突進してくるフェルサー。
さすがに黄金聖闘士。その馬の一撃を正面で受け止めるエルシド。
このぶつかり合いに観客は大いに盛り上がる。ワアアアッ。

フハハ・・・!盛り上がってきたではないか・・・
俺の望みを叶えるこの最後の熱気・・・お前と作り出せることを嬉しく思うぞ!!

楽しそうなフェルサー。その乗馬の押す力が増してくる。
いや違う!これは・・・熱気を吸収して巨大化している!!

観客の熱気はただ喰らうだけではない。それを糧にしてより強大となっていくのである。
そして、熱気を喰い尽された人たちが次々と倒れて行く。
さすがにノーリスクってわけじゃなかったんですな。
観客は興奮できるし、フェルサーは熱気食べれて満足って関係ではなかったわけだ。

熱気を喰らいつくそうとするフェルサーの後に影が見える。あれは・・・

フフ・・・見えたか?
そうだ・・・これがお前の探す神だ・・・夢神ボペトール!!俺の望みを叶える神よ・・・

ボペトール!?これは聞いたことのない夢神が出てきましたね。
本編で出てきた夢の神とはまた違った存在なのでしょうか。
と軽く調べてみたところ、名前間違ってるんじゃないかというツッコミが散見。えー。
夢神ヒュプノスの息子にポベトール(Phobetor)という名前がある。
本編でも出てきたイケロスの別名がポベトールというそうな。へぇ。
これはイケロス自身なのか、それとも違う名前だから別の神として扱われているのか。
たぶん後者として扱われそうですな。そうなるとこの外伝で夢神退治までやってしまうのか?

夢神のことはとりあえず置いておき、まずはフェルサーとの闘い。
巨大化したフェルサーの力に押されるエルシド。持ち上げられ、壁に叩きつけられる。
だが、その間にも鍛え抜かれた手刀は振るわれる。

流石だエルシド・・・たゆまず聖剣を追っていたようだな。

その声と共に、フェルサーの鎧が断ち切れる。
右のわき腹から顔面の中央に斬れ筋が入るが、中のフェルサー自身は無事。ただ鎧を断っただけである。
ただ、馬の装甲も切り裂かれており、馬はダウン。フェルサーを地面に降ろすことに成功した。

言ったはずだ・・・任務のためならばためらわんと!

それでこそ長切・・・ならばこちらも本気を出そう。

そう言いながら手にした武器を構えるフェルサー。その構え・・・そしてこの剣気!これはまさか!?

そうだ。これもまた斬桜鬼
持ち主が斬ると思った瞬間に相手は斬られる!峰の到達した究極の研ぎだけが為し得る聖剣よ。
峰の夢そのものだ

その言葉に偽りはない。フェルサーが斬ると思った瞬間、光が走る。
そして、黄金聖衣を越えてエルシドの肉体のみを切り裂く。
光の速さで動く黄金聖闘士であっても反応できない。そして黄金聖衣でも防ぐことはできない。
次元をも断つこの刃の前ではいかな聖衣も無意味!勝負あったな!

早めの勝利宣言であるが、これはされてもしょうがない。圧倒的と言える武器だ。反則級ですよ。
勝利が見えたということで、少し話をしてくれるフェルサー。

この観客ども醜いとは思わんか?
こいつらはいつも人の夢を食い物にして下衆に喜ぶ。
己に夢も望みもないから他人の夢を傍観してそのスキ間を埋めるのだ
全くくだらない奴らではないか。エルシド!!

これはまた皮肉な話でありますな。
かつて、自身に夢がなく、エルシドや峰の夢を守れてよかったとか言っていた男のセリフとは思えない。

聖闘士の一線を離れて気づいたのだ。この世に必要なのは己が夢を道として実現する者のみ!
ボペトールの力はそれを可能にするこの町を作った!
そうだ・・・こいつらは人の夢を喰らっているつもりが、廃人と化すまで俺とカタラニアのエサになるのだ!!

フェルサーの全身、至る所にやけどの痕が見えて生々しい。
それも全てエルシドさんたちを庇ってのものであった。
しかし、そんな優しいフェルサーの姿はいまやない。夢神に取り込まれているのか、魅せられているのか・・・

お前の首をここで落とせばまた異様に盛り上がろう!
お前の夢もまた観客の食い物にされ俺の糧となるのだ!!
お前の道もここまで!

斬桜鬼を構えるフェルサー。もう一度、斬ると念じればそれで終わってしまう。
だが、エルシドさんは立ち上がる。まだだ・・・まだ俺は全てを見せてはいない・・・
そう宣言すると、黄金聖衣のスキマから輝きがもれる。そして、キャストオフ!!エルシドさんが聖衣を脱いだ!?

まさか・・・まさか。エルシドさんが聖衣脱衣組に加わるとは!なんという予想外。
もちろん脱いだのは上半身だけです。伝統と格式に乗っ取ってね。
まあ、聖衣をも抜けて切り裂く刃が相手なんだし、無防備となっても問題はないですよね。

俺の歩んで来た道は・・・己を刀と練磨する道。
なればこの身、一振りの抜き身となって切り開いてみせよう
貴方と峰と約束した道なのだから。

フンッ。しぶとく折れぬ刃よ!

鍛え上げた刃を振るい、死中に活を見い出そうとするエルシドさん。
斬桜鬼の攻撃をも断ち切ることができるというのでしょうか。熱くなってきやがったぜ!

しかし、エルシドさん。峰にもフェルサーにも長切と言われまくりでありますね。
ラカーユの親父にはあまぎれとなれと言われたのだが、果たしてなることができるのでしょうか?
基本的に固い人だからなぁ。あまぎれとなる姿が思い浮かばない。
というわけで、以下のような妄想をしてみた!

フェルサーとの決勝戦を制し優勝したエルシド。峰も夢神と共に消滅してしまう。
勝利し任務を果たしたがその表情は晴れやかではない。
その状態で闘技場を出ようとするエルシドにラカーユが話しかける。
「なーにしょぼくれてんですか。皆待ってますよ」「みんな・・・?」
ラカーユが視線を向けたその先には大勢の男たちが詰めかけ――「遅ぇぞチャンプ!!」
その通路にはこれまで戦った大勢の剣士が集まっていた。
電気仕掛けのパルマー、その操縦者、鬼旋風のジェリコ、それにやられた雑魚たち、
試合に参加する前に斬られた斧持った大男や、フェルサーの馬までエルシドさんの祝福に来てくれる。
戦いを経て、皆に祝福され、エルシドさんの顔にもようやく笑みが戻ったのでありました。
という流れなら、エルシドさんがあまぎれになることも可能じゃないかと思うのだけどどうでしょうか!?

上記の流れだと最後はこうなるな。
「もう沢山だ・・・もうこりごりだ・・・幾度もそう思ったハズなのに、もうこんなに人斬りたい」
むう?なんだか台無しな感じなセリフになってしまったぞ!?お、おかしいおかしい!!



第44話 夢神  (2012年 21号)


黄金聖衣を脱ぎ捨て、フェルサーと対峙するエルシド。覚悟の決戦、参る!!
傷ついた体でどうするつもりだと問われたならば、ただ一つ、抜き身の刀となると答える。そして――

貴方が持ち、峰の研いだその剣と語ろう!

剣と、斬桜鬼と語ろうと来ましたか。エルシドさんらしい話である。
だが、光速を見切れる黄金聖闘士といえども、それは不可能だとフェルサー。

振り被ることもなく、俺が思考した時にはお前は斬られている。
見切ることなどできぬ!ましてや・・・語り合う間などない!

両断されるようなことはないが、体を大きく斬られ、大量に血を噴出すエルシド。
常人ならば失血死するのではという勢いで血が噴出している。
フェルサーも終わったなと背を向けようとするが、気づけば立ち上がり構えているエルシドさん。

己が浮かび上がってきた・・・
血が抜けていき、指先が冷えると拳が本当の刃になったように思う・・・
己の内なる剣が見える・・・荒く固く・・・欠けた剣だ

聖剣とはまた違った感じの剣でありますね。あまぎれとは程遠い。
自身の性格がそういったものであると認識できているということかもしれませんが。
だからこそ、その己の内なる剣を研ぎ、鍛え上げようとしているのでしょうな。

己の内なる剣を見据えるエルシド。
さらに、フェルサーの持つ斬桜鬼の姿も見える。
斬桜鬼には、その剣を研いだ峰の姿が映っている
生前・・・というか、フェルサーが別れたときの、少女だった峰の姿が浮かび上がっている。
斬桜鬼の大きさと身長がマッチしているので、この時の姿のほうが色々と都合がよさそうだ。可愛いし。

これが斬桜鬼の姿。峰の剣に込めた魂。
聖剣を目指した果てが、まるで悪霊だ。これが聖剣なのか?いや・・・これでは魔剣だ!!!

思考と共に切り裂く斬桜鬼の一撃をかわすエルシド。なに!?
斬桜鬼に見える峰の動きを辿れば攻撃の瞬間がわかるって話ですね。
それはそうと、魔剣呼ばわりは今更な感じがありますね。
峰が斬桜鬼を出した時点で妖刀呼ばわりされていたじゃないですかー。
だが、改めて斬桜鬼に対して語りかけるエルシドさん。

聖剣とは武器として圧倒的なだけではいかんのだ。夢は妄執に変われば邪道に落ちる。
聖剣とは・・・仁をもって己を研ぐ、その先にあるものだ!!!

エルシドさんらしい言葉でありますね。
仁のため、義のため。己を研ぎ澄ますことで聖剣に至ろうとする。なんともらしい話である。
心まで刃になれば涙も流せん・・・!
それはそれで悲しい話ではありますけどね。

攻撃を交わし、フェルサーと斬桜鬼を切り裂くエルシド。
勝負はあった。観客の熱気を吸ったフェルサーの体も元の大きさに戻って行く。
倒れたフェルサーに近寄り、尋ねるエルシド。
強く優しかった貴方がなぜ・・・夢神を操りこのような修羅の巷を作らねばならなかったのか。

なにも・・・なかったからよ

フェルサーはそう答える。
全身の火傷で戦士としてまともに戦えぬと聞いた時もさしたる感慨はなかった。
むしろそれほどの気持ちしかなかったのだと、そちらの方が俺を失望させた。

この観客たちは俺だ、エルシド
俺が優しく見えたならそれは間違いだ。俺には執着がなかっただけなのだから。

やはりそういうことだったのですね。
観客に対して皮肉めいた言い方をしているなと思ったが、己に向けての言葉でもあったのですな。
フェルサーもまたエルシドさんの兄弟子らしく不器用な生き方というかなんというか。

俺はただひたむきなお前たちを見て心の隙間を埋めていただけだ。
そんな俺がいつまでも側にいられるわけもない。
聖闘士以外の道を見つけようと思った。お前たちの夢が叶うよう祈ってな。

だが旅先で一つの噂を聞いた。それは俺の唯一の望みを打ち砕いた。峰の死だ・・・!!
不憫だった・・・あの娘だけ夢半ばで倒れるなど・・・
あの異国の朱色に輝く瞳が二度と見れないなど、俺は峰にもう一度夢を見て貰いたかった・・・

夢神の力で峰の魂を復活させたのだ。峰の魂の見る夢と共に・・・

なるほどねぇ。
フェルサーの気持ちもわからなくはないというお話しですな。
しかし、旅先でどうやって峰の死を伝え聞いたのであろうか?意外とそんなに遠くに行ってなかったのだろうか。
旅に出るといいつつ山のふもとをうろつくフェルサーとか想像するのは嫌だな!
それはさておき。フェルサーの語りは続く。

全ては峰の夢のため・・・
もしかすると、お前がこの町にやって来ることも、自分の研いだ斬桜鬼と戦うことも、この町の叶えた峰の夢なのかもしれん・・・

この町はフェルサーの夢というよりは、峰の夢であったのか。
自らの研いだ聖剣の力を発揮させる場所を作りたかったということなのでしょうか。
そして、その力を貸した夢神は、観客の熱気を食らうことを対価としたと。
話し終えたところで、フェルサーが苦しみだす。

・・・スマン・・・エルシド。
このまま・・・俺と共に逝ってくれるかと思ったが・・・騒ぎ出した。
夢神ボペトールが!!

フェルサーの体から黒いものが噴出してくる。
これが夢神ボペトール!?ボペトールは観戦していた峰の周りに集いだす。
そして、この場にいる全ての人間どもの夢を喰らって滅してくれると宣言する。

休む間もなく夢神との対峙を迫られるエルシド。
未だ完成に至っていない聖剣で神を斬ることができるのだろうか!?
次回はエルシド編の最終話。見事な闘いを期待しております!!



第45話 錆びた刀  (2012年 22+23号)


倒れたフェルサーの体から夢神が飛び出し姿を現す。
忌々しいアテナの聖闘士めと悔しそうなボペトール。

だがいい・・・その男の働きで封印されていた力は取り戻した。
なればカタラニアを我が故郷、夢界に引きずり込み消滅させる!!
お前たちは我と我が一族の糧となるのだ!!

ドコンと空が割れて、暗い空間が現れる。これが夢界というやつだろうか。
ボペトールが宣言するだけで、この場にいる全員の熱気が吸い取られていく。
観客だけではなく、ラカーユやフェルサー、エルシドの熱気まで吸い取ろうとしている。
このままでは全員助からない!

ハハハ。この町は陽炎のようにかき消える。神話の時代のようにな!!!

かつて神話に語られた陽炎の町も、また夢神によって生み出されたものだったのでしょうか。
今回のカタラニアの夢の核となったのは峰の夢。
ボペトールは再び次の町の核となるよう飼ってやろうと宣言する。

さらばだ、力弱き人間ども!

勝ち誇る夢神。だが、まだエルシドさんは立ち上がる。

させんぞ!お前を夢界に帰すことも・・・この場にいる者の心や夢を食い荒らすことも!

フェルサーに斬られ血は足りず、熱気も奪われて半死人のような状況でも闘志は萎えていない。
虚勢だなどと言われるが、この闘志こそがエルシドさんの本領である。

ならばまずお前から喰らってやろう!!

ボペトールの攻撃は人の熱気を喰らいつくす。
それは肉体に向けた攻撃ではない。エルシドさんの鋼のような精神を削る攻撃である。
急速に心が萎え、拳が緩むのを感じるエルシド。
夢神はその巨体をエルシドの前に近づけ、直にその熱気を喰らいつくすつもりでいるらしい。
攻撃にさらされ、気が遠くなるエルシド。
その心に過ぎるのは峰の夢について。

・・・これが、あの日のお前の無念が呼んだ惨劇か・・・峰。

横たわり、問いかけるエルシド。
そのエルシドに応える声があった。

そうだエルシド。だがこれはかつての夢なのだ・・・
この夢を終わらせて欲しい・・・エルシド。
・・・今、私の見たい夢は・・・聖剣となったお前を見ること

熱気を吸い尽くされ、倒れ伏したはずのエルシド。
しかし、その身は起き上がり、拳は研ぎ澄まされた刃と化している。

俺にとっての熱や夢は尽きるものではない・・・俺それ自体がそれをはらんだ道なのだから!!

そうだ峰・・・それがあの日からの俺の夢でもある!

体ごと突っ込み、手刀を貫き通すエルシド。
巨大な夢神の身体が貫かれ、奪った熱気が人々のもとへと戻って行く。

これでもう、この任務も・・・

そう考えたエルシドさんの目に映るのは、穏やかな峰の姿。
着物をきっちりと着込み、微笑を見せてくれる峰の姿は実に美しい・・・
刀鍛冶の娘ということもあり、あまり姫という呼び名とは縁遠い感じだった峰。
しかし、今の楚々とした感じは何とも惹かれるものがございますなぁ。
そんな峰の姿にエルシドさんは誓う。

聖剣になった俺を見るのが夢と言ったな・・・必ず叶える

あの日、泣くことも告げることもできなかった。
見ていてくれ、その研ぎ師の目で。その東洋の朱色に輝く目で

峰の姿は一礼して消え去る。後に残ったのはさび付いた日本刀のみ。
これは研ぎかけたまま錆ついていた峰の刀である。
全てはこの錆びた刀の見る夢だったのだ
なるほどね。峰の夢ではなく、峰の刀が見た夢であったのか。
それで、エルシドと会っても特に反応を示したりしないわけだ。
夢の中で自らを美姫として設定したりするのもどうかと思ったが、これなら納得ですね!!

愚かだった・・・峰はすでに次の夢に思いを馳せていたというのに・・・
礼を言うぞエルシド。愚かな思い込みが大きな苦しみを生み出すところだった。
今度こそ己の道を見つける・・・この罪を償うためにもな。

悔やむフェルサー。エルシドに礼を言い、この場を後にする。
まさか生き残るとは思いませんでしたが、せっかく生き残ったのだし、フェルサーには頑張ってもらいたい。
本編では出番はなかったが、何をしていたのでしょうか?
きっとエルシドさんにとって役に立つ何かをしてくれていたのだと信じます。
または、本編後の聖域の復興に尽力してくれたということでもいい。フェルサーの活躍を期待したい。

ボペトールが倒れたことで、カタラニアは陽炎のごとく消えて行く。
実体のある観客たちは我先にと逃げ出す。
そして町は神話のように一瞬にして消え去ってしまったのでありました。
まさに浮世は夢でしたねェ、とはラカーユのセリフである。

任務を終え、聖域へと戻ろうとするエルシド。その横を並んで歩くラカーユ。
どうやらラカーユはエルシドについていき、聖闘士になろうとしているようだ。
常人では耐えられない程厳しい道。引き返すなら今のうちだぞとエルシドさん。
しかしラカーユ。生半可な気持ちじゃない。俺が自分で選んだ道っスよ!と笑顔で返す。

逃げは許さんぞ

はい!必ず追いつきます!!

そして辿り着く聖域。ラカーユはここで修行して見事に白銀聖闘士になるのだが、それは本編での話。
いやまあ、本編ではその後・・・なわけだが。うーむ、それを思うと物悲しい。

その件よりももっと物悲しく衝撃的な事態が発生しました。
エルシド編は今回で終了。次回は童虎編となる
続いて脱衣か!というのはさておき、掲載氏が週刊少年チャンピオンではなくなるのだ!!
6月12日創刊の別冊少年チャンピオンに移籍決定!!

これはなんとも衝撃的な話である。
しかし、月刊ペースなら話を練る時間もじっくり取れそうだし、いい話だったりするのかも・・・?
手代木先生も、別冊では更にクオリティ高く熱い作品を作っていけるよう頑張りたいと思いますと語ってくれている。

というわけで、この感想も別冊まで追っていって続けようと思います。
次回の更新まで1か月以上間が空きますけどね!!



聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 外伝 6巻


天秤座編 第1話 仙境  (2012年 7月号)


週刊少年チャンピオンから別冊少年チャンピオンへの移籍。
月刊誌へ移っての外伝第一弾は、天秤座の童虎の物語
しかも、「聖戦」を終えてから数年後のお話であります。
生き抜いてしまったひとりの男の物語、ここに開幕!!

中国は五老峰。廬山の大滝。
その大滝の前で座禅を組んでいる男がいた。
男はただ静かに佇み、全く動きを見せていない。まるで死んでいるかのようである。

その男――童虎を尋ねてやってきたのは、友である(ハオ)とその娘、依林(イーリン)。
童虎は半年前にも昊と会っていたそうな。
しかし、その半年前に別れたときと同じ状態で寝ていたという童虎
服が傷み破れて、ヒゲが伸び放題になっていると思ったら、そんなことになっていたのか・・・
昊はそんなことだろうと思い、服や食料を持ってきてくれたという。気の効く友人でありますなぁ。
しかし、半年寝たままでいられるなら食事もあんまり必要ないんじゃないだろうか。

依林ちゃんは今年で11になるとのこと。おぉ・・・これは可愛い。
童虎は赤児の頃にも会ったことがあるという。
となると、今は聖戦から10年以上経過した後の話ということになりますかな。

ともかく、依林ちゃんを招き寄せ足の上に座らせる童虎。ちょこん。
なんとも羨ましい体勢であるな。まあ、童虎には全くやましいところはないのであろうが・・・

依林ちゃんの父である昊は、いつも童虎のことを話していたという。大きな戦争を生き残った強い戦士である、と。

私が生まれる前。世界を賭けた、人間も神様も巻き込んだとても大きな戦争があったんでしょ?
童虎さんたちはその戦いに勝って世界を救ったって。虎みたいに勇猛な人だって父さん言ってた。

ふむ、やはり依林ちゃんが生まれる前に聖戦は終わっていたのですね。10年以上前のことか。
依林ちゃんの頭を撫で、賢い子と褒める童虎。じゃが、わしはそんな立派な戦士ではないわい。

ただの長い長い留守番役じゃ

留守番というか見張りというか、ですな。
まあ、アテナの帰還を待ち続けるという意味では留守番役という表現があっているのかもしれませんな。
その時が来るのは、何十年先か、もしかして数百年も先のことになるかもしれないと童虎。うむ、正解ですな。
依林ちゃんは、そんなに長く生きられないよう!と言う。普通ならそうでしょうね。しかし、今の童虎は普通の肉体ではない。

・・・依林よ。わしの心臓はおぬしらとちょっと違うんじゃ。
わしは先の戦いでアテナ様より秘術を施されておる。
それからこの心臓は一年に普通の人間の一日分。十万回の鼓動しか打たぬ
それが故にわしは普通の人間の何倍も生きられるのじゃ。

あっさりと秘術のことを口にする童虎。それって口外してもいいことなのでしょうか?
まあ、受けた身というだけで、他の人に施すことができるわけではないですしなぁ。
それに昊は既に知っていそうである。でなければ、半年座ったままの童虎を見てもっと驚くでしょうしね。
驚きの肉体の秘密を知った依林。しかし、その口から真っ先に出たのは童虎を案じる言葉だった。

童虎さんは戦争で生き残って、これからまた生き残り続けなきゃいけないの?そんなの淋しいよ!

よく気のつく子でありますな。
まあ、童虎もこの年月の間、そういった淋しさを覚えながら座り続けてきたのかもしれませんな。

・・・まあ、星を見る度、胸が詰まるぐらいにはの

聖闘士らしい話でありますね。
星座を見るたびに、共に闘った仲間のことを思い起こしたりしていたのでしょうか。うーむ、淋しい。

さて、昊の手によりヒゲを剃る童虎。
そうすると、やはり聖戦時の若々しい童虎のままの姿であります。
まあ、秘術によってまだ10数日しか経っていない肉体ってことになってますからなぁ。
昊は本来童虎と同い年だったはずなのだが、すっかり年上に見えてしまっている。
今はまだそこまでには感じないだろうが、この先どんどん差が開いて行くのでしょうなぁ・・・

それはさておき、下界の方では世の乱れが発生していると昊は告げる。
天災が続き、町の治安も乱れている。地方によっては家を失い食べる物もままならないという。

天の龍が怒っているのやもと皆言ってるな。この乱れ、いつ治まるのやら・・・

天の龍ねぇ。この五老峰において天に登った龍といえば、童虎の師匠である。
童虎は空を見上げ、消えていった師匠のことについて想いを馳せたりしているのだろうか?
それが分かる前に、異変が発生する。
立ち上がり、昊と依林ちゃんを遠ざけようとする童虎。
異変は空からやってきた。月を背景に、10人を越す武器を持った男たちが振ってくる。
棍のようなものを童虎の周りに突き立て、動きを封じようとする男たち。
何者であろうか?格好からして中国関係の人物たちのようであるが・・・

なんにしても、この手合いには拳で語るしかあるまいの!!

複数の棍で動きを抑えたはずが、童虎が身を捻っただけで逆に複数の男が吹き飛ばされる。
そして、蹴り。童虎の激しい蹴りにより、男の一人の衣服が弾け飛ぶ。
すると、その男の背中一面に刺青が彫られていたのが見受けられる。
童虎はその刺青の風習に覚えがあるようだ。まさかおぬしら・・・

そうさ!俺たちは仙境からやって来た!テメェを抹殺しにな!

ほう仙境?ということは、こいつら仙人なのか!?
まあ、まだ仙人になるまえの身といったところなんでしょうね。

聖戦を生き残った天秤座の童虎は今、仙境にとって一番目障りな存在らしい。ほう。

大人しくその首さし出して貰うぜ!!
俺たち彫道士(タオニア)の前にな!!

彫道士と来ましたか!
獣闘士とかあったし、これからも〜闘士が出るんじゃないかとは思っていましたが!
闘士ではなく、道士というのもありなんですな。ふーむ、奥が深い。
しかし、どうでもいいけど、この彫道士の皆さんは結構ノリがいい
名乗るためにわざわざ服を破き、彫り物を見せて、一斉にポーズを決めてくれるというサービスっぷり。
なんなんでしょうか、ちゃんと名乗るときのポーズとか配置とか前もって決めていたんでしょうか。
そうとしか思えないぐらいの息の合い方である。てなこと考えると結構可愛い奴等かもしれない。服破らなくてもいいのに。

彫道士の中央には仮面をかぶった男がいる。
男の名は流星(リウシン)。この隊を束ねる一番隊長とのこと。
流星だけは服を破いて彫り物を見せていない。仮面をつけている点といい、勿体ぶっておるのでしょうか?

ここで、童虎による仙境と彫道士についての簡単な説明。
彫道士とは、この大陸の神羅万象による平安の守護者。決して自ら討って出ることはないものたちとのこと。
よくわからないけど、聖域みたいに乱を鎮める方の側の立場だったということなんですかね?
童虎が思い描いた光景には聖衣のようなものを纏った人物が出てきている。
ふむ、となると彫道士にもそういったものがあるということなのだろうか?楽しみである。

仙境の思惑は分からないが、ともかくその刺客が童虎を狙っているのは事実。
流星を先頭に、死んでもらうぜと10数人の彫道士が襲い掛かってきた!!

返り討ちにしてくれると構えをとる童虎。
しかし、鼓動の回数が少ない心臓にまだ馴染んでいない童虎。すぐに息があがってしまっている。
動きを鈍らせたところを捕らえられ、地面に縫い付けられる童虎。
そして流星によるとどめ!!
というタイミングで、童虎と流星の間に割り込むものがいた。依林ちゃんである。

嬢ちゃん・・・どいてくんねェかな。余計な殺しはしたくねェ・・・だけど俺らにゃ余裕もねェんだよ。

立ち塞がる依林ちゃんに対し、どくように告げる流星。
しかし、なかなかに気丈な依林ちゃんは頑としてどこうとはしない。彫道士なんて・・・大っ嫌い!!
そこまで言われては仕方がないですね。
気乗りはしない、というか震えてすらいるようだが、実際のとこ余裕がない感じの流星。武器を振り下ろす。

次は長生きできる子供に生まれて来いよな!!

しかし、その武器は空中で切り払われる。
それを行ったのはもちろん童虎。用いたのは・・・天秤座の武器!!

フフ・・・どうやら天秤座の武器も・・・見ておれんかったようじゃの・・・
悪ぶるのは全く様になっておらんぞ、少年よ!

起き上がった童虎。依林ちゃんを抱きかかえ、一気に決めようとする。

喰らえ!!飛龍の咆哮!!
廬山龍飛翔――ッ!!!

幼女を抱き、龍を背負って飛翔する童虎。いいなぁ、実に楽しそうだ。
体調が悪いので手加減できないと宣言されたこの一撃。威力はやはり凄まじい。
一撃で大勢いた彫道士が吹き飛び、隊長の流星も仮面を砕かれながら吹き飛ぶ。
しかし、大技を放った童虎も、その一回だけでへたりこんでしまう。

ハ――情けないのう。
少ない鼓動での戦闘がこんなにしんどいとは・・・こりゃ序々に慣らしていかんとならんわい・・・

未来に至るまではずっとこの状態のままでしょうからねぇ。
これは厳しいハンデを背負った状態での戦いとなりますな。

さて、倒れた流星を起こし、仙境について問いただそうとする童虎。
どうやら童虎はかつて仙境で修行をしていたらしい。ほう。
やはり背中の虎の刺青は仙境でいれたものだったんですかね?

話を聞くために仮面の割れた流星の体を引きずり起こす童虎。
その際に見えた流星の素顔。それは・・・・・・テンマ?

未来さえ続いていれば、いつかきっとまた会える。地上で会おう・・・童虎!!

別れの際のテンマの言葉が思い起こされる。
これはまた、驚きな話ですね。
聖戦が終わってから10年ほどしか経過してないし、生まれ変わりとかそういう存在とは思えない。
記憶を失ったテンマ本人というのもありかもしれないが、ならサーシャ達はどうしたのよという話になる。
はてさて、どういった展開を見せることやら。

ここでカメラは五老峰から離れ、遠くの仙境を映し出す。
仙境では、玉座に座す色の白そうな男が1人。その前には幹部らしき男女が1人ずつ存在している。
彼らは何か竹のようなものを用い、砂に文字を書いている。何をしているのだろうか?

調べてみたところ、これは扶鸞(ふらん)もしくはフーチと呼ばれる、中国のこっくりさんみたいなものらしい。
桃や柳の木で作った筆を用いて砂盤に自動で文字が描かれるそうな。へぇ。

幹部のうち、頭に花を咲かせた女性の名前は牡丹(ムーダン)。
もう一人の幹部である黒衣の男の名前は(フウイ)。
そして、その2人を従えているらしき男の名前は、白澤(ハクタク)。
ハ・・・ハクタクでありますか!?
聡明で森羅万象に通じていると言われる中国の聖獣の名前でございますな。これは大物の名前が出たものだ。

牡丹は砂盤に「麗」と書き、灰は「猛」と書いた。
そして、白澤が書いた文字は「神」。うーむ、それぞれを象徴したような文字ということなのでしょうかね、これは。

灰は流星が童虎に返り討ちにあったことについて口にする。
それを聞いた牡丹。あの子はまだわかっていない。白澤様の目が全て見てるってこと・・・と発言。
この発言は気になるところですね。流星が童虎を狙ったのは、白澤を出し抜くためという目的があったのだろうか?
少なくとも、この3人が望んで向かわせたわけではない様子。ふうむ。
というところで、白澤様の御高説が開始されます。

そうだ牡丹。この私、白澤の目は万物全てを視る。この仙境もそうして手に入れた。
・・・だが、この目は良くないものまで視せる。
己の野望に駆られ身勝手に動く愚かな者よ・・・
12年前の聖戦でもそういう者はいた・・・
聖戦において・・・冥王のやり方では世界は制せぬ。
彼は理解していなかった。この世自体が巨大な命の奔流だということを。

この世を統べるには自然の摂理を識り、森羅万象を視ねばならん
すなわちこの白澤こそが、天地の帝王にふさわしい者なのだ!!

そう述べる白澤に向かって、数多の彫道士たちが平伏している。
なるほど、すっかり仙境は白澤様のものって話ですね。

だが視える。我らが憂いとなるのはあの虎の子よ・・・

万物の全てを視るという白澤の目にも童虎は厄介な存在と映っているらしい。
灰いわく、童虎は元々仙境の門下であった。
だが、己の宿星の導きに従い、最後に聖闘士の道を選んだ。そうしてあの聖戦を生き残った男である。

奴は必ずこの仙境に来るでしょう!!

力強く述べる灰。この灰という男、どうやら童虎とは同期だったようだ。
同じ門下の同期ではあるが、仲間というよりはライバルだった感じの灰。
奴の名前を聞いてから、背中の牙がうずきますと言いだす。

虎の喉笛噛み千切りてェって、背中の狐が煩いったらないんですよ!!!

燃え上がり、焼け落ちる服の下から見える背中に描かれていたのは、九本の尾を持つ狐
なんと、九尾の狐でありますか!これもまた大物が出てきましたねぇ。
白澤は灰に命じる。その因縁ごと噛み千切って来い、と。

・・・視ているぞ、九尾弧!!

九尾・・・弧?狐じゃなかったんですかーい!?
さすがにこれは誤字でございましょう。
口で言っている分には違いがないし、白澤様が間違えたわけではない。と無駄なフォローをしておく。

さて、場面は再び五老峰。
テンマそっくりの顔をした流星を縛り上げている童虎。こうでもしないと逃げちゃいますからね。

流星は顔だけでなく、跳ねっ返りな所もテンマそっくり。これは単なる他人のそら似で済ましていいものなのかどうか。
白澤の言葉から、聖戦は12年前だったことが明らかになっている。
テンマはその時から行方知れず。生きていれば二十六・七にはなっているはず。流星よりずっと年上の姿のはずですわな。
とうに死んでしまっておるのかもしれないし、何処かで生きておるのかもしれん。

じゃが、何処かで生きていて欲しいと思っとる。
奴はあの戦いで最も傷つき、最も大役を果たしたのじゃ。心からそう願っとる。

ふむ、よい話でありますね。
童虎の話でテンマについて語られることはあるかなぁと思ったが、これはよい思い出話。
とはいえ、死人に似てるなんて言われても、どうすりゃいいってんだよって感じなのは流星。そりゃそうだ。
ちなみに、流星を捕らえたのは別にテンマに似ているからってわけではない。たぶん。きっと。
童虎は流星から聞き出そうとしている。仙境への道を。

仙境は俗世と幽玄の狭間にある。その入口は一年に一度変えてあるはず!

なるほど。それではかつての修行場とはいえ、童虎も案内なしでは辿り着けないわけだ。

あそこはわしの第2の故郷のような所じゃからな。
ならば・・・行くしかなかろう!仙境へな!!

鼓動の少ない心臓という大きなハンデを抱えながらも、第2の故郷の異変を正すために動き出す童虎。
テンマそっくりの流星を連れ、白澤や九尾の狐といった大物と立ち回る。
なんとも盛り上がる話になりそうでありますなぁ。
さて、ここで疑問は依林ちゃんの立ち位置。
可愛い子なのでもっと見てたくはあるが、仙境まで連れて行く理由は全く無い。
ゲストキャラは流星でいいでしょうし、エンディングまでお別れになりそうな予感がして淋しい。
まあ、可愛い系ならば、敵側の牡丹もなかなか可愛いですからねぇ。今から戦いが楽しみである。

月刊に移り、さすがに余裕ができたのか絵に力が入っているのが見受けられます。
話もしっかり作りこみ、満足のいく展開を見せていただきたいところでありますな。期待してます!!



天秤座編 第2話 九尾狐の灰  (2012年 8月号)


仙境から放たれた刺客を一蹴した童虎。気絶した彫道士たちを縛り上げている。
どうやら一般兵たちは昼まで起き上がれない様子。
気絶もしなかった流星はやはり隊長格なだけあったということなんですかね。

その流星。同じように縛り上げていたはずなのだが、縄を切って逃げ出している。
まあ、さすがに聖闘士に挑むぐらいの強さの者ですし、普通に縛っただけじゃあねぇ。
とはいえ、この往生際の悪さにテンマを思い出してしまって苦笑する童虎でありました。

竹林を駆ける流星。
気絶こそしなかったとはいえ、龍飛翔で受けたダメージはやはり深刻な様子。
移動中に足を引っ掛け、崖下に転落しそうになる。
が、そんな流星を助ける童虎。猫みたいに襟首掴んで持ち上げられる流星の図であります。

放せよ!テメーに助けられるくらいならこのまま谷に落ちて・・・死んだ方がマシなんだぜ!!

そう吠える流星にゲンコツをお見舞いする童虎。
テンマに似た若者がってこともあろうが、簡単に死ぬなどと口走るのは感心しないですわな。
依林ちゃんも心配しておったといいますのにねぇ。全く。
てなことを言われてバツが悪そうになる流星。こういうところを見るといい子なんだなとわかりますわな。
そんな流星に対し、童虎は問う。

何故わしを狙う・・・そして、何故そうまで仙境は悪に染まった!?

童虎のこの問いに意外そうな顔をしてみせる流星。
どうやら、むしろ童虎の方が仙境に災いをもたらす邪悪だと聞かされていたらしい。

仙境を滅ぼす凶星を抱えたまま仙境を抜けたって!
今の仙境の災厄は全部あんたのせいだって・・・だから俺は!

凶星とは一体何のことなんでしょうかね?
童虎自身にも心当たりがないことらしい。
流星に、その辺りのことを告げたのは白澤でありましょうな。ふーむ。どういう考えでいるのやら。

仙境からすでに抜けた身である童虎。
しかし、仙境は第2の故郷である。放ってはおけない。同様に流星のことも放ってはおけない。
そのようなことを面と向かって言われた流星。観念したかのように現在の仙境について説明してくれます。

白龍様。一千年もの間、仙境と大陸を護っておられた偉大な方。
その彫道士の守護神たる白龍様が病に倒れた。仙境の災厄とはまさにそのことなのである。
現在は白澤が指揮をとっているが、早くしないと・・・仙境も大陸も幽界に没する

白龍様が死ぬとなんだか大変なことになるらしい。
仙境は別の俗世と幽玄の狭間にあるという。
その境界を保持しているのが白龍様だとしたら、その死によって境界が歪んでって話もありうるわけだ。

仙境。その病に倒れた白龍様は石と化して巨大な柱に巻きついている。
その白龍様に話しかけているのは白澤。

石と化しても尚、貴方の力はこうして自然に作用する・・・
だがもうすぐその僅かな力も失くなる。今や貴方の力は全てこの私に流れ込んでいるのだから

そのようなことを述べる白澤。
これはまたわかりやすい災厄の元凶でありますね。
白龍様の力を得たからといって、白澤が白龍様に代わり仙境と大陸を護ってくれるわけではない。

一千年に及ぶ護るだけの古い時代は終わる。それでは世は内から腐るのですよ。
唯一、危険分子の虎の首も直に灰がとってくるでしょう。
・・・ご安心を。世界は私の力で良くなる。
・・・しかし、私は世を護らない。矯正するのみ

ただ静かに見守るのではなく、矯正し導こうというのが白澤の理念らしい。
言葉だけ聞くなら間違ってはいなさそうだが・・・その理念によって苦しむ人は多くでそうですからなぁ。怖い怖い。

さて。五老峰。
山菜を採りに出ていた依林ちゃんが童虎の住処へと戻ってきたところ、見かけない男が立っている。
壁には男の手により漢詩が描かれている。
これは李白の作。彼が逃亡の道中に故郷を求め謳った詩であるとのこと。

追われる彼は聞いてしまったのさ。子規(ほととぎす)の声を。
「不如帰去 不如帰去」(かえれ。いえへかえれ)
だけど、帰る家など何処にもない!!!

なるほど。これはまた皮肉な詩を届けてくれたものですな。
今の童虎には仙境にも聖域にも帰る家はないと言いたい訳だ。聖域に帰れないってわけでもないとは思うがね。

それはさておき。
血で漢詩を書く男、灰。
その背後では縛り付けられた流星の部下である彫道士たちが燃え上がっていた。
それぞれ首から上の頭部だけを燃やされているという異様な光景。こりゃ苦しそうだな。
そんな凄惨な現場に戻ってきた童虎と流星。
これはどういうことじゃと問う童虎。流星もまた同様に問う。
なんでこいつら殺ったんだ?仲間だろ?同じ仙境の仲間だろ!?それなのになんで・・・!!?

破門となったからよ
「悲来呼 悲来呼」(かなしいかな、かなしいかな)
お前たちは仙境で最も白龍を慕う者らだったな。
白澤様の治める仙境には不必要。よって一計を廻らせそこの天秤座と共に反逆者として始末することとなった。
つまり流星。おまえにももう帰る場所はない!!!

そう述べながら流星に攻撃を仕掛ける灰。
さすがに流星。ショックはでかかったみたいですね。
攻撃を避ける気力もなく、童虎に救われる。強がってはいますが・・・すぐには立ち直れなさそう。
そんな様子に再びテンマを思い起こす童虎。うーん、複雑。

灰は白澤に付き従っている。
というのも、元々白龍様の治める仙境は肌に合わなかったから。

何故なら。以前の仙境ではこうしてお前と戦えんからさ・・・

そいつはまた猛々しい理由でありますね。
と思いきや、単なる戦闘意欲だけで童虎と戦いたがっていたわけではない様子。

・・・お前は猛虎で、俺は野狐
覚えているか?短い間だったがお前が仙境にいた時のことを。
俺とお前は門下生の中でも一・二を争う強さを誇っていた。
知っての通り俺たちの森羅万象の闘法は、極めるほどに自然の気が体を満たし、己の内なる姿が体の表面に現れる
最強の彫道士へ至る一歩。
・・・だが・・・あの時・・・お前は猛虎で、俺は野狐。

認められるわけもない・・・!
俺が競い合い続けたお前の威を借る野狐だと・・・!?

確かに。これはショックでありましょうね。
彫道士の背中には己の内なる姿が浮かぶという。なるほど、そういうものでありましたか。
狐もそれほど悪い動物というわけではない。
けど、奸智に長けているとか、あまり猛々しい印象はない。
そして、虎の威を借る狐という言葉もある。
灰としてみれば、背中に浮かんだ時、真っ先に浮かんだのがその言葉だったのでしょうな。こりゃ切ない。

俺はな、童虎。別にこの大陸を護りたくて仙境へ来たわけじゃない・・・!
ただ常人以上の力が欲しかった・・・誰より強く、誰もが認める!!
それ以外いらねェんだよ!!!

猛り狂う灰。
その全身が燃え上がり、服が焼け落ちる。背中に昔浮かんだのはただの野狐。だが――
拳を磨き上げ、野狐から仙狐へ。仙狐から九尾狐へ!!

背中の狐の尾の数が増していく。それと共に狐の姿も獰猛なものに変わっていっている。

今こそ現れてこの身を包め!!
九尾狐の墨衣(タトゥー)顕現!!!

墨衣!彫道士の内なる気を具現化したプロテクト!
なるほど・・・タトゥーと来ましたか。入墨なだけに。墨な割には光沢があってキレイな感じですな。

お前も纏え童虎!最強の黄金聖衣を!!そして俺と戦え!!

攻撃を仕掛けてくる灰。
そしていきなり必殺技を放ってくる。
掌から蒼く巨大な狐火が放出される。これぞ、狐蒼火焔(フーツァンフォイエン)!!
技の名称の後ろに漢詩が描かれているという演出。
灰は、あんまり知略キャラっぽくはないが、漢詩とかは嗜んでいる様子。
なんだかんだで狐を背負う男なだけはあるってことなんですかね
? それはそうと、この演出だと肝心の技名が見づらくってちょっと困る。

馬鹿め灰・・・!そんなことのためにお前はその力を与えた仙境を裏切ったのか・・・!?
それではお前の心こそ帰る家はない!
お前では、わしには勝てん!!!

童虎の背中に浮かぶのは猛虎。
しかして、纏うのは黄金の聖衣。
黄金の光が蒼い火を裂く。そして童虎の身を包む。

天秤座の童虎。12年ぶりの聖衣装着!!!

目の前に現れた、聖衣を纏う童虎。それを見て嬉しそうにする灰。

聖戦のように命を懸けて戦え・・・童虎ーッ!!

吠える灰。だが、童虎は静かに返す。灰・・・お前は命を懸ける意味を分かっておらん、と。

皆、己の内にある大切なものを守るため命を懸けとった。
だからか・・・わしの心は未だあそこへ帰る。今わしを動かすのはまだ・・・あの日々だ!!!

廬山昇龍覇――ッ!!!

五老峰の大滝をも逆流させる廬山昇龍覇が決まった!!
この大技一撃により、九尾狐の墨衣は砕かれ、地に伏せる灰。何、一撃KOだと!?
まあ、少ない鼓動で戦わなければいけない童虎ですし、長期戦にはできませんわな。
にしても、倒れ伏した灰が目を見開いていて怖い。ビクッ。

灰に激勝した童虎。心臓の鼓動に苦しみながら、流星に仙境まで連れて行ってくれと頼む。
その姿を見てか、流星。仙境への入口を開く鍵である手鏡を取り出す。
ふむ、どうやら連れて行ってくれるみたいですな。
まあ、灰の行動を見れば、どちらが災いをもたらすものであるのか一目瞭然ですしね。

連れてってやるよ!どうせ俺も似たような立場になっちまった!
・・・だけどな、俺はテンマじゃねェんだからな?

改めてそう宣言されると、さすがに童虎も困っちゃいますよね。
違う違うと分かっていても思い出してしまう。そりゃまあ、忘れえぬ日々の思い出の1人ですからなぁ。

帰る家など、どこにもないと灰は言っていた。
しかし、童虎の心には帰る場所があった。逆にそれを失った灰こそ孤独であったということか。
なんとも皮肉な結末でありました。こりゃ一撃で倒されても仕方がないですね。
残る幹部は2人だが、どのような姿で現れるのだろうか。
牡丹は文字通り背中に牡丹が現れていたりするのだろうか。花の墨衣とか気になりますね。
ハッ、牡丹は牡丹でも唐獅子牡丹だったらどうしよう・・・!!どうしよう。



天秤座編 第3話 雀の牡丹  (2012年 9月号)


かつての同門である灰を撃退し、仙境に向かおうとする童虎。
しかし、仙境ではその動きはいち早く察知されていた。

なァんだ!!灰ってそんなに大したことなかったんだァー!

雀とお喋りをしているのは、牡丹。
灰と共に白澤の側に控えていた幹部と目される女性だ。

大量の雀に囲まれている牡丹が屋根の上で回転し、飛び降りる。ほう。

兄さんに誉めて貰えるように頑張らなくちゃ!
きっとあたしがあの虎の子を仕留めたら、兄さん笑ってくれるよね。
・・・所以・・・本気出して行くわよ!雀の牡丹!!
ね?哥哥(にいさん)?

屋根から地上に舞い降りるころには、その姿を墨衣が覆っている。
そうか、牡丹は雀でありましたか。牡丹だからって牡丹とは限らないですわなぁ。そりゃ。
灰だって灰じゃなかったんだし。そりゃーそうだー。

それにしても、扇情的なデザインである。
腰の辺りがスカスカじゃないっすか。というか、脚はどうなっているのだろうか。
ようするに、タイツを履いているのか素足なのか。ここは非常に重大な話である。白黒ではなんともわからん!

物議を醸しだしそうな雰囲気はあるが、まあ、とりあえずおいておきましょう。

童虎と流星は墓を作っていた。
灰に焼き殺された流星の部下たちの墓である。
ノリのよくて、結構楽しそうな奴等だっただけに、惜しい奴等を亡くしたものである。
流星も、生き残り、取り残される淋しさというもを噛み締めていた。
似たような境遇であり、その境遇で10数年過ごしてきた童虎の気持ちも慮れるようになりましたかな?

どんな奴だろうと仲間がいなくなるのはやっぱ淋しいや。振り払ってもひょんな時に思い出しちまう。

仲間思いの流星である。
そんな風に仲間を思っていた流星をテンマと呼び間違えていた童虎。最悪のタイミングでしたな。ハハハ。

でもまあ・・・いいよ!
あんたにとってはそのテンマって奴が、あの聖戦ひっくるめての象徴だってことなんだろな

理解を示してくれる流星。いい子ですな。
あの日を生きた皆への憧憬や後悔・・・希望。テンマとの別れ際の"また会おう"という言葉。
だから童虎は生きようとしている。想いを胸に抱いて。

というわけで、現世でやることは終えた。
いよいよ仙境の道を開き、渡る時がやってきました。

流星が鏡をかざす。すると、光があふれ出し・・・見えてくる。あれは・・・!!仙境!!

移動は本当に一瞬でありました。
光の扉をくぐり、仙境に降り立つ童虎と流星。
まだ門の前の光景でしかないが、昔を懐かしむ童虎。
何も変わっておらん・・・あの時・・・わしが五老峰の師の下へ行った時と・・・
流石は現世の流れより隔離された場所じゃ。懐かしい・・・

じゃが、家は変わらずとも人の心は変わるもののようじゃの。

童虎がそう口にすると、門の周りに潜んでいた多数の彫道士が姿を現す。
この彫道士たち。流星の部下たちとは違い、ちゃんと墨衣を顕現できるだけの実力の持ち主たちである。
その正式な彫道士たちが、白龍様への恩を忘れ、白澤に忠誠を近い、童虎に襲い掛かってくる。
しかし、黄金聖衣を纏った童虎の敵ではない。
片腕を一閃させただけで、多数の彫道士を吹き飛ばしてしまう。わ、技すら使ってもらえないだと!?
・・・これが、聖衣を着た黄金聖闘士!!

彫道士と一緒に門も叩き壊してしまった童虎。
昔と変わらずにあった家の方まで叩き壊してしまうとは、困った虎である。仕方ないけどもさ。
ともかく、流星の案内により、白龍様や白澤がいると思われる本殿に向かう。
が、門を抜けようとしたところで無数の雀に囲まれる2人。
その数はあまりに多く、前が見えなくなるほどである。
さらに、何か囁きのようなものが聞こえてくる。これは・・・雀が囁いているのか・・・!?

先行する流星に、雀をなぎ払うよう勧告する童虎。
しかし、童虎も流星をかまっている場合ではないようだ。
周りを飛んでいた雀がいつのまにか人の形をとっている
しかも凄い力で締め付けてくるではないか!!
ううむ。スタイルのいい少女に囲まれるのはよいが、どうにもこの雀の子たち無表情で怖いのよね。

急いでいる時こそ油断大敵!
死んじゃうわよ?慌てん坊の仔虎さん!

いつのまにやら現れた、雀の牡丹。
その腕の中には血塗れとなった流星の姿。そして2人を取り囲む無数の雀の少女たちの姿・・・
うーむ。なんともホラーな光景っすね。こっちを見るなー!

あの短時間で流星がどうしてこうもダメージをおったのか?
その疑問はすぐに解消する。自分の身にもそのダメージが降り注ぐことになるからだ!
童虎を取り囲んだ無数の雀の子たちが叫ぶ。

破壊小囀(ホアファイシャオヂュアン)!!

雀の囀り。その幾重もの音波が体の中で爆発する。
この攻撃は黄金聖衣でも防げないか。聖衣の間を縫って、体の中で弾けるような攻撃である。
さすがの童虎も一撃で血塗れとなる。

あらあら。牡丹の囀りは刺激的?

見下し、述べる牡丹。童虎にはその名前に心当たりがあった。
牡丹・・・淋しがりの兄っ子牡丹か!?

どうやら童虎がまだ仙境にいた頃、牡丹とは知り合っていたらしい。
ただ、牡丹はその頃幼く、童虎のことは話としてしか認識はしていなかった様子。
童虎によると、牡丹とその兄は嵐による川の氾濫で沈んだ村より白龍様の手で救い出された者たちらしい。

兄の飛眼(フェイガン)と共にお前たちは震え寄り添い、この仙境で生きると誓っておったではないか・・・
それなのにどうして今、白龍様を裏切る!

うん。でももう、兄さんも私も白龍様はいいかなって

命を救ってくれた恩義のある相手である白龍様に対し、もういいかな、ですと?
なんとも冷めた意見を堂々と述べてくれる子である。
白龍様が没すれば、世は幽界に落ちる。それも別にいいと牡丹は言う。
牡丹に言わせれば、ただ兄さんが良いって言ったほうにいくだけだ、とのこと。

だって私は兄さんが偉いねって笑ってくれればそれで良いもの
そのためだったら・・・あたしなんだってできるもの

なんとも行き過ぎた兄妹愛でございますな。不健全である。
大量の雀の子に囲まれピンチであるが、それ以上に童虎にとっては戦いづらい相手である。
子供の時分を知っている牡丹とは戦いにくい。戦いとうない!!

軟弱的(よわむし)!

戸惑いを見せる童虎とは違い、牡丹の攻撃に迷いはない。このままでは危ない。
雀の子や牡丹本体を倒せば攻撃は収まるかもしれない。だが、それはできようはずもない・・・

やはり童虎。女子に拳を振るうのは躊躇われるか。それが幼い頃を知った女子であるならなおさらである。
だが、ここで童虎。あることに気付く。
音波の攻撃に晒されている中で、鈴の音が鳴り響いていることに気付いたのだ。

もしやこやつら。

雀の子らに向かって腕を振るう童虎。
振るった後、その腕には鈴が巻きついている。
鈴を奪われた雀の子らは人間の形態をとれなくなり、元の雀となって飛び去っていく。

やはりか・・・口から発する囀りや音波によってかき消されておったが、こやつら・・・
この首元の鈴でおぬしと互いの意志を疎通させておったのだな・・・
ならばこの鈴さえ奪えば、おぬしの技も無効となろう!

なんとも中国武術っぽい技を使ってくる子でありますな、牡丹。
しかし、普通に殴り倒す以外の解決策を提示してくれるとはありがたい。
正直、技の1つ放っても消耗が激しい童虎である。この解決策はありがたい方かもしれない。
相手を傷つけることなく、かつ、必殺技を用いることなく制することができるのだから。

遊虎千人演舞!!

おぉ・・・ついに童虎に、虎の名前がついた技が用意された!?
まあ、必殺技というわけじゃなさそうですけどね。
演舞の名が示すように、流れるような動きで雀の子たちを往なしていく。
槍を用いたポールアクションも見せてくれる童虎。おぉ。カンフー映画っぽい!!

一瞬のうちに雀の子らを全員元の雀に戻してしまいました。他愛ないものじゃて。
さらに飛び掛ってきた牡丹を軽く取り押さえる童虎。
ふうむ。牡丹は雀を強化し操るのに特化しているせいか、肉弾戦はそんなに強くはないのですかな。

もうやめよ牡丹。

牡丹を取り押さえた童虎が、悲しい瞳で見据えてくる。
牡丹は本来そのような娘ではない。無論兄の飛眼も。
聡明な兄の隣で仲睦まじく笑っとったおぬしらじゃ。
やはりわしはおぬしが白龍様をおとしいれようとしているとは思えんよ。
例えその白澤とやらにそそのかされているとしてもな。

・・・バカね。そんなこと言っちゃって・・・見てるわよ。白澤様が

牡丹のその言葉を受けて、雷が轟き、2人の側に落ちる。
そして巨大な小宇宙を纏った存在が現れる。そう、これが・・・白澤!!

暗い瞳におどり揺れる白髪。初めて見る姿の白澤であるが、どこか見覚えがあるように思える童虎。

やっぱり見てくれてる。
あの方はなにも見逃したりしないもの。この世の良いことも悪いことも。
だから私だけはいつ見ても安心させてあげるの。
私だけは代わらず哥哥の味方だよって

やはりか。白澤の正体は、牡丹の兄、飛眼でありました。
彫道士として白澤の力に目覚めたことによって外見も変わってしまったということなんですかね?

白澤は言う。森羅万象はその力を私に与えた。これは世の意思なのであろう、と。
聖戦においてのお前の戦いぶり、見えていたよ。名ばかりの神々の愚かさも。
そして・・・そこでお前がなにを失ったかも。
お前にはあの聖戦の無意味さを教えよう
世界はただ在るべき姿に矯正されるのを望んでいるだけだということをな。

降り立った白澤が述べる、聖戦の無意味さとは。
まあ、確かにあの聖戦。ハーデスにとってみれば遊びに近いものがあったでしょうからなぁ。
そんな遊びにつき合わされ、無数の命を散らすことになる聖闘士たち。
無意味さを説かれると色々と悩ましい話になる。
いや、人々の為にも立ち向かうのがアテナの聖闘士であり、決して無意味とは言わないのですけども。
白澤が述べようとしているのは、人々がどうというより、世界そのものについての話になるらしい。
スケールの大きな話になりそうだが、それだけに共感は得にくそうだ。
まあ、牡丹もそれがわかっているから、自分だけは味方だよと宣言しているのかもしれない。

次回、白澤との戦いと決着まで話は進むのでしょうか。
単行本1巻分のページ数としては丁度良さそうだが、話はやはり駆け足になりそうな予感がある。
果たしてどのように纏められるのか・・・楽しみでありますな。



天秤座編 最終話 悲しき瞳の飛眼  (2012年 10月号)


雷の音と共にそこに立つ白澤。
その目は暗く冷たい。かつての聡明で優しかった飛眼の面影は既にない。

万物に通じし白澤は見えるが故に哀切し、優しさがゆえに苦悩するという
飛眼もその見えすぎる白澤の力に目覚めたが故に暴挙に出たのだろうか?
童虎は問う。何故白龍様を裏切ったのか。
飛眼と牡丹の兄妹は白龍様に助けられ仙境に匿われていたはずである。それなのに何故・・・?

童虎の問いに白澤が答える、その前に飛び掛る姿があった。流星だ。

よくも・・・よくも白龍様を・・・仲間を裏切りやがって!!絶対許さねェ!!白澤ーッ!!

白澤の背後から飛び掛る流星。卑怯な!
まあ、不意打ちするにしては大声で叫んでますし、単に位置の関係上そうなったのでしょうな。
どちらにせよ、流星の拳が届くことはない。
ドシャアンと落雷が鳴り響き、飛び掛った流星の体を焼く。雷を落としただと!?
凄まじい力を見せつつ、白澤は静かに語る。

こんな場面、既視感があるな・・・そうか童虎。聖戦だ
お前はこんなことを何度も繰り返している。
仙境を離れ人と触れ合い聖戦まで体験し、お前の目は普通の人間以上に多くを見ている筈だ。
それでも尚、同じような誤ちを巡るというならば、やはり人間の目は閉ざされているのだ。

語りつつ、白澤の衣服の背中部分が煙のように溶けていく。
そして露になった背中一面に浮かんでいるのは、複眼の獣、白澤の姿。

一瞬のうちに、白澤の墨衣が全身を包む。
額には眼。それだけではなく、肩や腕にも眼らしき意匠があつらえてある。これが白澤の墨衣・・・!!

墨衣を纏った白澤が、先ほど落雷に打たれ地に伏していた流星めがけて再度雷を落とす。
慌てて助けに入る童虎。光の速さで動ける黄金聖闘士ならば、雷が落ちるより速く助けることも可能なはず!
しかし、流石に墨衣を纏っただけのことはある。
今回の落雷は先ほどのものとは桁が違う。
ガラララララと複数の落雷がひとつの箇所に集中して落とされる。
輝きが空を焼き、仙境の地面や建物を破壊していく。

閉ざされた視野で生きるとは恐ろしいものよ。
なにが正しいかも判断できず破滅を辿る。そろそろ気付くべきなのだ!
人間は守るに値しないと!!

強く語る白澤。
しかし、童虎は流星を守りきっている。
黄金聖衣を纏った自らの身を盾にして凄まじい落雷を防ぎきったようだ。
おかげで流星は無事。それはよかったが、童虎の心臓にはかなりの負担がかかった様子。
一度停止していればむしろ電気ショックになってよかったかもしれませんのにねぇ。

大人しく、その不自由な心臓を抱えて座していれば良かったのに、何故己からノコノコ戦いに首を突っ込むのか。
白澤のその問いに、縁の者らの危機とあらば当然じゃろうと答える童虎。

ましてやそれが世界の危機につながるなら、一人でも多くの者を守りたいと思うのは・・・!!

童虎はそう答える。しかし、白澤はそんな答えを一笑に付す。

それは・・・?人間という種族を守りたいということか?ハハ・・・見えぬとは・・・滑稽・・・
童虎・・・一つだけ言うぞ。そんなやり方が人間を増長させたのだとな!!!

私は仙境に来て森羅万象を学び、その偉大さを体感した。
萌ゆる木々。流るる川。済んだ大気。あふれる命。我々、彫道士の力の源よ。
その巨大な奔流は時に凶暴にもなり、常に命のバランスを保っている。公平で美しい
だが人間はどうだ?
例えばこんな村の話をしよう。
ある山奥にある村は、己らの利益のやめだけに下流の村に構わず、川の水をせき止め富んだ。
だがある大雨の日、そのせき止めた水はあふれ出し、ついにはその村も下流の村も呑み込まれてしまった。

そうだ・・・私たちの村は、人の私利私欲によって滅んだのだ!!!

どうやら白澤の力に目覚めたが故に、自らの村の壊滅の事実まで知ってしまったようだ。
自然現象を憎むわけにはいかないが、大元は自らの村が招いたことであった。
それを知ってしまった場合、憎しみの矛先が人間に向かうのもわからなくはないか。
少なくとも、そういった疑念を抱いた状態にはなったはず。
そして、白澤の眼は全てを見通す。
その眼で世界を見続ければ、どんどんと見えてくるのでありましょう。人間の醜さが。

矯正する!!人の歪めた世界を!!!人間そのものを!!!この猛威で!!!

落雷をも耐え切った童虎に、次なる自然の猛威が襲い掛かる。それは、大竜巻!!
凄まじい風の力の前に、木切れのように吹き飛ぶ童虎。
そういえば白澤は白龍様の力を奪っていた。この力はそれによるものであろうか?

いや・・・2人の恨みの形なのかもしれぬ・・・だがな飛眼。断じて違うぞ・・・!
わしの視た人間たちはそれだけではない!!
そうですな、白龍様・・・

天高く、どこまでも舞い上げられようとする童虎。
しかし、途中で白龍が封じられている柱に激突することで難を逃れる。白龍様の加護があったということか。
だが、童虎の心臓は相変わらず鼓動が遅く、体力が失われるのが早い。
この自然の猛威を何度も受け続けることができるとは思えない。ピンチの状況だ。

ボロボロになっても立ち上がる童虎。そんな姿を見て、やっぱりあんたは連れてくるべきじゃなかったと後悔する流星。

抜けた仙境のためになんでここまでしちまうんだよ・・・あんたは大事な役目があるんだろーが!
これからずっと生きてかなきゃいけないんだろ!!?

童虎の身を案じ、叫ぶ流星。だが、童虎はこう返す。

わしは・・・再び仙境へ来れて良かったと思うてる・・・
こうして命が燃えだすと、思えるのじゃわい。
もしかしてまだあの日々は続いていて、同胞らは何処かで戦っておるんじゃないかとな・・・
だが実際そうでないことも分かる。じゃから・・・
今度は絶対に最後までこぼさんのじゃ!
お前も白龍様も牡丹も飛眼もな!!

現在立ち塞がっている白澤――飛眼も救い上げると童虎は言う。
これが聖戦を生き抜いたものが持つ覚悟というものでありましょうか。

飛眼よ・・・
人間は決しておぬしの言う側面ばかりではない。森羅万象が命をつなぐのと同じように・・・
何度倒れても知恵と心をつないで次の時代を目指しておる・・・!それを簡単に途切れさせるなどあってはならん!
それがわしの聖戦で視たものじゃ!!

所詮は人間側の都合よ・・・御託はもういい!消えよ童虎!!!
お前が次代を目にすることはない!!!

さきほどを上回る大きさの竜巻が眼前に迫ってくる。
童虎は盾を構え、その竜巻に恐れることなく向かっていく。

心臓よ・・・今しばらくもってくれ!!!わしは必ず役目へ戻る!!!
見ていてくだされアテナ様・・・!!テンマ!!!同胞らよ!!!

大竜巻に呑み込まれる童虎。
しかし、その瞬間。竜巻が幾本にも別れる。これは・・・百龍かーッ!!?

見ていてくれ・・・同胞よ・・・わしは必ず・・・

大竜巻をも切り裂く童虎の百龍波。
その渾身の一撃は竜巻のみならず、白龍の力を奪っていたはずの白澤をも打ち砕く。

負けるのか?私が・・・奴の方が世を視ていたから?結局世は人間共がはびこるままなのか・・・!?
私たちの故郷を滅ぼした人間共が!!!
耐え難い!!そんな奴らと同じ世で生き、また視たくもない愚行ばかり視せられるなら・・・死んだほうがましだ!!!

童虎の百龍波で砕けた墨衣。傷ついた白澤は谷の底へと落ちていく。
が、その腕を掴み助け出したのは、百の龍の間を駆け抜ける一匹の虎――童虎である。

お前の都合で私を生かすな!お前たちの馴れ合いの茶番に私を入れるな!!!
飛眼はそう言って童虎の助けを拒否する。
だが、童虎に離す気はない。これから辛かろうと恥をかこうと生きて貰わねばならないのだから。
その生かされることの屈辱に拒絶しようとする白澤こと飛眼。
しかし、その死への旅立ちを防ぐものは童虎だけではなかった。そう、妹の牡丹だ。

兄さん・・・あたしね・・・本当は故郷とか世界とか仙境とか、きっとなんだって良かったの。
お願い兄さん・・・最後だけでもあたしを視て・・・!

全てを視る白澤の眼。
どれほど遠くのものであろうと見通すことができる。
だが、遠くが視えるからこそ、すぐ近くのものが視えないこともある。
飛眼はもうずっと長いこと妹の心境も視ることができずにいたのでありましょうなぁ。
そのことに気付かされた飛眼。力が抜けたところを童虎が引き上げる。生かすことに決まったようだ。

・・・だがどうすればいい?
恩師を裏切り、人への恨みを抱えてどこで生きろと?泥でもすすれと言うのか?

苦悩する飛眼。髪の色は元の黒い髪へと戻っている。白澤、または白龍様の力が抜けた証拠か。
そんな飛眼に童虎。まず地上で土を耕してみいと勧める。

人間らはずっとそうしてきた。日照っても流れても

そうすれば視えなかったものが視えよう。その白澤の力もその時きっと・・・
と言い残し、力を使い切ったのか倒れる童虎。
いや、体力どころか心臓がほとんど停止しかかっている。
さすがに今の状態であれだけの技を放つのは致命的であったか。
だが、そんな童虎の窮地に救いが訪れる。封印から脱した白龍様であります。

白龍様の力によってか一命を取り留める童虎。よかったよかった。
白龍様の側には流星の姿もある。流星の熱意が叶い、白龍様の解放に繋がったわけだ。

いいや。あんたがやったことさ!童虎!!

今まで童虎のことは天秤座と呼んでいた流星。それが最後に名で呼んでくれた。
そう最後である。その言葉を最後に、流星の姿は掻き消える。
どうやら流星とは白龍様の奪われた力の一部が逃げて具現化した存在だったらしい
ほう。では、テンマにそっくりなのは白龍様によるものだと?

いいや、あれはあ奴が自分の記憶を消して偽った姿よ。
それが何故あの天馬星座だったのか、私にも分からぬ・・・

・・・成程。合点がいきましたわい。きっとあれは彼らだったですじゃ・・・

共に戦った同胞たち。
その同胞との思い出が強い力となり、流星にあの姿を取らせたということでしょうか。
それに思い至った童虎。白龍に別れの挨拶を述べ、地上へと戻ることとする。

早く戻らねば同胞らに叱られてしまいますじゃ。

笑顔でそう述べる童虎。
白龍様も、その笑顔に満足そうな表情を見せております。

流石、地上に降りた我が同胞の弟子よな・・・行くが良い虎の仔よ。次代などあっという間よ。

長く生きている白龍様にしてみれば200年などあっという間なのかもしれませんな。
といいますか、やはり龍になったという童虎の師匠は白龍様の同胞だったのか・・・
もしかすると、白龍様も昔は人間だったのかもしれませんなぁ。

仙境から出て地上に戻ってきた童虎。
元のように五老峰の滝の前で座しているところに、やってくる昊と依林ちゃん。
童虎が仙境に行ってから出番のなかった2人だが、ようやく出て来れましたね。
しかし、なんだか会話の流れがおかしい。
昊が依林ちゃんを連れてきたのは赤児の時以来だと言う。
それは、仙境に行く前の時の話ではないですか。そういえば昊は半年前と同じとか言っている。
このセリフは最初の話で言っていたのと同じセリフだ。

そうか・・・仙境は現世と幽玄のはざま。時間のズレでも起こったか・・・?
それともあれらは本当に・・・

悩む童虎。そんな童虎に歩み寄る依林ちゃん。
最初の時と同じように、童虎のことを大きな戦争を生き残った虎みたいに勇猛な人だって本当?と尋ねてくる。

うーむ、そうじゃのう。わしがそんなに大した戦士かは分からんが、忘れられぬ戦いじゃよ。仲間たちも敵も。

視ていてくれ・・・同胞よ。共に行こう!!!

10数年の時が経とうとも、あの戦いは忘れられない。
そして同胞との思い出は常に心の内にある。そのことを強く感じた童虎。
次代へと共に行こうという終わり方はなかなかなに感慨深いものがありますなぁ。

さて、仙境での戦いは単なる夢であったのか?泡沫の夢・・・?
いや、座している童虎を見守る兄妹の姿がある。これは間違いなく飛眼と牡丹でしょう。
やはり時間のズレが起きて戻ったと考えるのが妥当でしょうな。
そう考えると意味深な描写もある。
昊が童虎の耳元で叫ぶ前後。童虎の足元には狐の姿があった。もしやこの狐は・・・?
仙境の住人である灰の死はなかったことにはならないだろうが、色々と想いを巡らせられる演出ですな。

というわけで、天秤座編はこれにて終了!!
月イチ連載になっても相変わらず単行本1巻分のペースで進行されるようですな。
画はしっかりしているが、やはり駆け足な感じはしないでもない。
まあ、心臓のハンデつき童虎は長く戦えないので戦闘があっさり終わるのは仕方ないことかもしれませんが。

そういえば、別冊に移ってから、サブタイトルに天秤座編といった文言がつくようになった。
しかしこれ、カラーの1話目と4話目は時は天秤座編で2、3話目は童虎編となっている。どっちなんだ!?
今後のことも考えると星座の名前で統一したほうがいいと思うんですけどなぁ・・・
というわけで、感想は2、3話目も天秤座編と称していますのであらかじめ御了承ください。

さて、次の登場は獅子座のレグルス!!
レグルス編になるのか、獅子座編になるのか!!
それはさておき、楽しみなことには変わりない。一体どんな話になりますのか。
座して待つことにしましょう。



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