蒼天紳士チャンピオン作品別感想

バチバチ
第115話 〜 最終話


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 バチバチBURST
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第115話/大森海  (2011年 43号)


大銀杏を冠した阿形さんが臨む一番。
この一番も今の阿形さんにとっては通過点に過ぎない。

十両だろーが、幕内だろーが、噛み砕いて飲み込んでやるわ!

その噛み砕こうという相手は・・・肉の壁!!
思わず阿形さんが見上げてしまうほどの大きさである。アレ絶対中に人が入ってるだろ!
これは、大森山さん?いや、大森山さんは幕下である。ではこれはまさか・・・!?

大森海太二
日本人力士。最重量240kg

わざわざ日本人力士と注釈されるこの人こそ、幕下最重量230kgの大森山太一さんの双子の弟だ!
観客が昔言っていた双子の兄弟がついに現れるとは・・・わかりやすいカマセっすね!

この大森海さんは十両にあがってから全く稽古しないと評判の人である。
だからここまで落ちてきてるんだよね。だめじゃん。

今日も新寺親方が阿形さんの取組を見に来ている。
本人がいうようにファンなんだな。オッチョコチョイなのが好きなんですかね。

大森海さんは既に負け越しているので来場所はまた幕下に降格である。
十両の給金は毎月100万。それが幕下だと場所ごとに15万になる。
まさしく番付一つ違えば天と地ですな。
さらに、関取だと個人部屋や付き人もつく。ガリガリ君100個買って来させる無茶もできる。
そんな夢の時間が終わってしまうのだ。レストランで上から下まで全部ということもできなくなる!

冗談じゃねぇ

確かに。注文で全部だなんて言うやつが本当にいるとは思いませんでしたよ。冗談じゃねぇ。
そのことではなく、夢の時間を終わりにしたくはないということでした。
十両までは番付を駆け上がった男である。すぐに十両に返り咲いてみせる!!

大森海「お前はそのキッカケとなる生け贄だ!」
阿形「あぁん?俺に言ったのか?丸焼きにして客に配るぞ!」

かなりの客に行き渡りそうですね。
ではなく、悪そうな言葉だったら阿形さんの方が圧倒的だ。
なんせ、大森山さんに言わせれば、阿形さんは悪魔の皮を被った悪魔。つまり、悪魔だ!

さて、取組開始。この体格差でまともにいっても通じない。
けど真っ向から行くのが阿形さんである。ブハハハ。バカヤロウだ!そりゃ新寺親方もファンになる。
受け止められ押し込まれる阿形さん。
見ている他の力士はそりゃそーだと評する。しかし、吽形さんは違う。

どーした阿形。今のお前ならそのくらい造作もなく止められるだろう。

その言葉通り、のしかかる大森山の圧力を止める阿形さん。
でも、さすがに造作もなく止められるというのはかいかぶりじゃないですかね。

観客「とっ・・・止まった!!?」
吽形「とーぜん・・・

やはり凄くかいかぶっていた。まあ、吽形さんからしてみれば、かいかぶってもしょうがないのか。

阿形さんの反撃。と行きたい所だが、そこは腐っても十両である。そう簡単にはいかない。
大森海さんのマジ顔。怖ェ。
そして、すばやく横に回る大森海さん。早ェ!?
あの体で動き回れる。だから十両にまでなれたのである。そりゃ凄い。
こりゃ、ドングリ渡部の目標になりえる男じゃないですかね?この体でも俊敏に動けるんだぜ!

そして、必ず勝ちにもっていけるパターンがある。
片腕を掴み、反る。泉川だ!
大森海さんの必勝パターンが決まろうとしている。だが、窮地こそ阿形さんの見せ場である。
間違いなく大逆転を見せてくれる・・・と思うが、果たしてどうなるのか。
今場所は色々想像がつかなくて困る。気楽な気分で見れないよ!

しかし、空流親方。阿形さんは新寺親方のところの大関と同じ、とはどういうことであるか。
負けん気の強さが人一倍ということなのか。奇跡の逆転ファイターということなのか。
まあ、新寺親方の好きなタイプという共通があるのはわかりました。



第116話/強引に  (2011年 44号)


で、でたー!!大森海さんの必勝パターンだー!
泉川!相手の腕を両手で挟みつけ、片方の肘を前方に出しながら極める、相撲技の一つである。
正直、この説明だとよくわからない。極めてどうするのか?折るのか!?相撲怖いッスね。

キメ出せーと弟に声援を送る大森山さん。
コマからはみ出しててわからないが、腕をぶんぶん振り回しているように見える。
全体で見たら結構カワイイことになってたんじゃないでしょうか。動いている映像が見てみたいな!

それはさておき。
反った状態の大森海さんは阿形さんに足をかけられグラつく。

こんなもんでグラついてんじゃねーよ。テメェ・・・四股踏んでんのか?

四股はこういうことでグラつかない足腰を作るためのものなんですなぁ。
言葉とともに前ミツを取る阿形さん。
持ち上げられた体を片手で元の状態に戻してしまう。この力技に観客も沸く。
空流親方に言わせれば、これこそ阿形さんの持つ華である。

強引に力ずくで己に引き寄せちまうのよ・・・客の心も白星も・・・酔わせちまうんだ

それが、新寺部屋の大関と同じだという根拠でありますか。
その大関、天鳳もまた度を越えた強引さで暴れまわってたころがあったらしい。ほう。
大関と幕下ではずいぶん差があるが、今後この天鳳さんと阿形さんが絡むことがあるのか?気になりますな。

しかし、まずはこの勝負。なのに阿形さんは女性客に良いところを見せようとしてしまう。
さすがに片手で持ち上げるのは無理がありすぎる。バカヤローめが!
まあ、吽形さんに言わせればストイックすぎないところが良いということなのかもしれないが・・・
この場所ぐらいはキッチリしてくださいな。

上手を取った大森海さんは一気に押し出そうとするが、腰を落とした阿形さんはビクともしない。
見事に鍛えられた足腰だ。だが、それならばこれはどうか。240kgの体重で押しつぶす!

テメーみてーな力だけの馬鹿が通用するか・・・外国人じゃあるめーし!!

押しつぶされそうになる阿形さん。だが、こんなところで終われるはずはない。

俺以上にデタラメな奴が重い覚悟引きずって・・・俺と戦うタメに必死で勝ち上がってんだ・・・
軽いんだよ。テメーじゃ。バカヤローが!

本当・・・寒気がするよ・・・おまえには・・・

観客も力士も驚愕する。
240kgの体が持ち上がった!

あと200kg増やしてこい・・・

そして、そのまま後ろに倒す。まさしく力相撲ってやつですな。うーむ、魅せる。

俺は夢見ちまってるのよ・・・アイツと出会った時から・・・
見てみてーんだ・・・外国人力士の力相撲相手に・・・力で捻じ伏せちまう日本人力士って奴を・・・

それは憧れますわなぁ。相撲に限った話ではないが、そういう光景はなんだか憧れる。

阿形の勝利を見届け、新寺親方は去っていく。最後に残した言葉が嫌な現実を思い起こさせる。

新寺「これでお前んトコにもやっと関取が出るな。しかも一気に二人も!
空流「ああ・・・そうだな・・・」

この空流親方の表情。吽形さんのことに気付いていると見て間違いないですな。
まあ、実際重症だったわけだし、気付かないほうがどうかしてますわな。
序二段の2人は自分のことでいっぱいだからまあ、気付かないこともあるかもしれないけど。
てなこと考えると、気付いていない床上手さんや椿がどうかしていることになってしまう。アレレ。

互いに全勝が見えてきた。
廊下ですれ違う2人。

阿形「やるからには一切手は抜けねーぞ」
吽形「手を抜いて・・・俺に勝てるのか?」
阿吽「あと二番・・・コケるなよ

すれ違いながらも絆を深める2人か。いい話ではあるのだが・・・吽形さんはやはり惜しいなぁ。
好調なのに雰囲気が重いというのも困った話である。

しかし、阿形さんの大銀杏もすっかり違和感がなくなった。次回からはまたしばらく戻るんですけどね。



第117話/カッコよく  (2011年 45号)


空流部屋の成績はこのところもの凄く快調である。
特に今場所はほとんど白星。5日目まで全勝の人間が4人もいる。
そして、久々に関取が誕生しようとしている。しかも阿吽の2人が揃って、だ。
これは後援会会長の岩本さんも大喜びですわな。グシャシャシャ
今日から毎日昇進祝いの予行練習じゃ!後援会が忙しくなるってそういうこと!?

浮かれ過ぎの谷町さんたち。まあ、気持ちはわかる。
でも、肝心の力士たちはピリピリとした空気を纏っていた。
阿吽はお互い勝ち残り、まさに相撲生命を賭けた戦いに臨もうと意気込んでいる。
鯉太郎は白水さんと揉めたことを未だに抱えている。
なので、白水さんがいなくても自分で探しにはいけずにいる。まあ、しょうがないか。

その白水さん。川の見えるベンチで一人佇んでいた。
白水さんは白水さんで鯉太郎を殴ってしまったことを悔やんでいるようだ。
そんな白水さんの隣に腰掛けるのは吽形さん。
この場所は白水さんが入門したてのころスカして一晩中いた場所らしい。思い出の場所であるか。

白水さんの悩みを聞く吽形さん。いい兄貴分ですなぁ。
空流でいる自信がなくなったという白水さん。
俺は・・・阿形さんや吽形さんみてーな・・・カッコイイ男にはなれない・・・

鯉太郎を殴ってしまったことを明かす白水さん。
図星指されてカッとなって。で・・・何とか絞り出した言葉が「俺は兄弟子だぞ」ですよ・・・ハハ・・・

やはりその辺りのことも悔やんでいたようだ。
白水さんにしても鯉太郎にしても、売り言葉に買い言葉という状態でしたからねぇ。

白水さんは鯉太郎と出会ったときから気付いていた。コイツはカッコイイ部類の人間だと。
俺とは違うんです・・・モテるし・・・お嬢の接し方見ればわかりますよ・・・

ああ、やはり周りから見てもそう見えるんだ。
年齢が近いということもあったろうが、椿はかなり鯉太郎に親しく、というか近く接してますよね。

でも俺、鯉太郎の前でだけはカッコよくキメたかったんです。
俺はアイツを本当の弟みてーに思ってるから・・・

おや、これはいい発言ですね。
白水さんがここに来て開眼し、好調になれたのも、鯉太郎にカッコイイところを見せないとという思いがあったのでしょうな。
弟弟子に抜かれたくないというか、弟に追いつかれまいとする兄の必死さといったところでしょうかね。

白水さんがガキの頃。通称、便所公園という場所があった。
そこの便所の屋根から飛び降りるという度胸試しがあったという。
ああ、ありますなそういうの。小学生のころってそういう度胸試しは誰でもやりますよね。坊ちゃんでもやるぜ。

皆飛び降りているのに、白水さんはビビッていつも飛べない。
でもある日、根性キメて飛んだのだ。好きだった女の子が見に来てたから・・・
しかし、その女の子はドン引きでした。なんせ飛び降りた白水さんは骨折しましたから。アゴを。アゴ!?
やはり危険な行為は危ないという話ですな。危険が危ない。

それからもずっとそうなんです。カッコつけたい奴の前じゃ・・・俺は必ず失敗しちまう・・・
そんな星の下に生まれてきたんでしょうね。俺は空流の皆とは根本的に違う・・・
俺はきっと・・・死ぬまで・・・ダセェままだ・・・

男泣きに泣く白水さん。
そこに吽形さんが声をかける。いいんじゃねーか?お前はそれで、と。

お前の言うダセェってのが全てカッコ悪いとは・・・俺は思わねーけどな。

確かに。白水さんはこれまでもダサくありながらカッコイイところを見せてきてくれましたからねぇ。
それに、弟弟子にカッコイイところを見せたいというのは吽形さんもよくわかる話である。

あと二番あるんだ。土俵の上での失態は土俵で回復すればいい。
面と向かって鯉太郎と話せねーなら土俵で語ればいいさ。お前は力士だろ

さすが吽形さんはいいこというなぁ。鯉太郎もまさにそれを望んでいるでありましょう。
自分の兄弟子は、やはりカッコイイ奴だった。そう誇りたいと思っているでしょうさね。
白水さんの胸を叩き、吽形さんは言う。

しっかり頼むぜ。お前は空流の柱になる男なんだからな・・・

白水さんが柱!白水さん自身が驚く話である。が、吽形さんは力強く言う。

なるのさ・・・今場所で。ぶってー柱に。
立ち向かおーぜ。結局それしかねーんだよ。

吽形さんはそして、頼むぞ・・・と言い残し・・・真っ白に・・・ってオイオイ!
いいタイミングで逆光を浴びるものだから、その・・・召されたかと思っちゃうじゃないかオイ!
まあ、白水さんも何か遺言めいた雰囲気を感じているようですけどね。むむむ。

さて、所変わって後援会会場。
川さんは酔いつぶれた岩本さんの頭に三角巾をつけていた。何してますのん。
それはともかく、空流親方が別室で吽形さんの怪我の状態を聞かされていた。
口止めされていたことであるが、もうそうは言っていられない。下手したら再断裂しているかもしれないのだ。
このままでは、相撲生命どころか、日常生活も困難になる。
十両を目の前にして、残酷な決断を迫ることになるわけだが、それでも・・・
このことを聞き、空流親方は苦渋の決断を下す。

吽形は明日から休場させます

ついにこの決断が下されるか。
親方の決断は絶対であるが・・・吽形さんも阿形さんとの戦いだけは譲れない一線でしょうしねぇ。
阿形さんと戦い、それでもまだ相撲取りとしてやっていけるのなら、休場して・・・でいいんだが。
その程度ですむという保証がないからなぁ。ううむ、どうなるのか。



第118話/たった一人の・・・  (2011年 46号)


吽形は明日から休場させます。

空流親方が発した言葉を偶然聴いてしまった椿。
残酷なようでもあるが、やはり将来のことを考えるとこの判断は仕方がない。
が、その判断に異議を唱える者がいた。阿形さんだ。

吽形さんがいないところで勝手に決めるなという阿形さん。
そうはいってもねぇ。本人に言っても絶対に聞くはずないですし。
医師が言う将来とは、10年、20年先。相撲を辞めてからのコトも含めての話である。
吽形さんのケガはそれだけ重症なのである。

前十字靭帯っていうのは、運動選手にとってもっとも重要な箇所だ。
捻り、曲げ、ヒザにかかる負荷を一番受け止めている箇所である。
そこがまた断裂しているかもしれないと医師は言う。

しかも、今は半月板が損傷し、内側靭帯も部分断裂している。
つまり、簡単に脱臼してしまう状態になっているのだ。グラグラなんだよ。

おそらく、今までも何度も脱臼していたはずなんだ。
その度に激痛が走り血が溜り、その苦痛の中、自分で外れたヒザを入れていたんだろう・・・

それはさすがにマジかよと思ってしまう・・・
一般人だったら激しい運動はまず不可能な状態である。
稽古で培った強靭な筋肉でなんとか補っている。とはいえ、常に脱臼の恐怖はつきまとう。怖いナァ。

アイツが大丈夫だと言ってるんだ。アンタが決めることじゃねぇ。

阿形さんはそう言うが、医師としては言わなければいけないことがある。
相撲どころか、日常生活すら困難な状態なのである。
今場所は休ませてもう一度手術するのが懸命だと諭す医師。
十両昇進はお預けになるが、このまま無理して後遺症を残すよりずっといい。

確かに十両昇進は大事だ。だけど、吽形さんが拘っているのはそこではない。
この場所だけは、何があっても引き下がれない。そんな場所になってしまっている。
それは、優勝決定戦で阿形さんと戦えるチャンスがあるからだ。

だから吽形は何が何でも絶対に今場所の土俵に上がる!
俺と本気の一番を取るタメに絶対に勝ち上がる!
吽形が世界で一番負けたくない奴は・・・俺だからだ!!
それは・・・俺も同じだ!!


熱く語る阿形さんだが、それで納得できるはずはない。医者として言わせて貰う。

それは君のエゴじゃないのか!?
これでもし彼が再起不能にでもなったら、君に責任がもてるのか!?

俺らは力士だ。ハンパな覚悟で生きちゃいねぇ。
限界までいって土俵の上でブッ潰れちまったのなら・・・それはそれで本望だ。

なんというか・・・やはりストイックすぎる連中ですよね。
肉体のことよりも、思いを優先させようとしてしまう。
若さゆえの暴走という気がしないでもないがなぁ。でも、その思いはわからなくもないですし・・・
どうせなら、壊れたら責任もって俺が養ってやるぐらいのことを阿形さんには言って欲しかったですな。
関取になって高給取りになれば、それも可能でしょうに!吽形さんは嫌がりそうだけど。

力士の道理はともかく、医者としては絶対に納得できない。
吠える医師。それに対し阿形さん。

頼みます・・・

畳みに四肢をつけ、さらに頭をこすりつける。
土下座。懇願のベスト・オブ・ベスト。
見開きで行われたこの土下座に込められた意味は大きい。その迫力に医師も怯む。

何とかこのまま・・・吽形を土俵に上がれるよう治療してやってくれよ先生・・・
もう一度手術なんて言ったら・・・吽形はここでもう引いちまうかもしれねぇ。
それほどの地獄から吽形はここまで這い上がってきてんだ・・・
信じてやってくれ親方・・・頼みます・・・

もし・・・本当に吽形がダメな時は・・・
その時はキッチリ俺が終わらせる・・・
吽形は俺の・・・たった一人の・・・親友だから・・・

うーーーーむ。
阿形さんの思い。吽形さんの思い。わからなくはない。わからなくはないが・・・うーむ。
見開きで行われた頼みます、は読者にも向けられているのかもしれない。
吽形さんに休んで欲しい、報われて欲しいという思いは読者も大いに抱いている。
その読者に対してもお願いをしているのかもしれない・・・でも、うーーーむ。

空流親方はハラを決めたらしい。
親方も言及はされていないが、おそらく右目が見えなくなっている。
これも相撲によって追ったケガでありましょう。
だからこそ、いらねーところまで俺に似ちまったと言っているのでしょうな。

大部屋で眠る一堂。みなそれぞれに思うところがあり、眠れそうにはなかった。
ほぼ全勝を決めている部屋の様子とは思えませんわなぁ・・・
あ、川さんは眠れていそうな感じがありますな。まあ、川さんですし。うん。

11日目。
枚数からいって6勝でほぼ十両確実な阿吽の6勝目をかけた取組。
その大一番が始まる。

どんどん悲劇を迎えそうな気配が濃くなっていきますなぁ。
先場所で竹虎さんが引退フラグを引き取っていってくれたと思ったのに・・・
阿吽の直接対決ができるとしたら、この場所しかないというのはわかります。
両方幕内になったら、大関や横綱全員倒さないと優勝決定戦で同部屋対決なんてできないわけですし。
ボクシングと違って別の部屋に移って勝負、なんてこともできないですし。

もうこうなったら、阿形さんもケガをしてもらうしかないのかもしれない。
そして2人で休場。ケガからの復帰という地獄も2人でならば越えられるでしょう!
そして、完治した状態で改めて、幕下でなくてもいいから優勝決定戦を行えばいい。
今のケガした吽形さんとやりあって、どこまでお互い満足できるかわかりませんからねぇ。
谷町など周りの人は残念がるでしょうが、2人にとってはいい解決かもしれない。

あ、もしそうなった場合、吽形さんが白水さんに言ったセリフが現実味を帯びそう。
お前が空流の柱になる。これは阿吽が一時離脱することを意味していたのかもしれない・・・
なんだか、どう転んでも鬱な展開になりそうだなぁ。うーーーむ。



第119話/歓喜は・・・  (2011年 47号)


関取になれるかどうかの運命の日。
阿吽共に気合は十分。近寄りがたいほどの迫力を纏っている。

マス席には椿と谷町さんたちが集まっている。
なんせ記念すべき日になりそうな取組ですしね、これはかぶりついて見ないといけない。
会長は早くも飲みまくって出来上がっている。
酒でも入れて気を落ち着けないと血圧上がってポックリ逝っちゃうとのこと。そりゃ怖い。

久々に空流に関取が誕生するんだぞ・・・
ワシが生きてる間にはもう無理かと諦めとったんだがな・・・

む、卑怯だぞ会長。そういうことを言われるとなんとも止めようがないではないか。

さて、吽形さんの出番が迫る。
吽形さんの背中を見守る鯉太郎。

親父の火竜が大関だったということもあり、十両なんてのはまだ半人前。二流以下と思っていた鯉太郎。

だけど今はわかる・・・関取になるってのがどれ程凄いコトかって・・・
何百人もの力士たちが、命懸けで関取を目指し・・・
だが、そのほとんどが名も残せずに消えてゆく・・・
何百もの無情さを喰って、生き残った猛者だけが辿り着ける場所・・・

そんなとんでもねぇ場所に、ついに辿り着く。俺の兄弟子がついに・・・関取に・・・

吽形さんのヒザのことに気付いていない鯉太郎は、ただ純粋に兄弟子が関取になる瞬間を楽しみにしている。
ある意味羨ましい話ですなぁ。私も純粋に楽しみたかったよ・・・

相手は若大雲。聞かない名前であるな。
いよいよ、十両昇進を賭けた取組が始まる。見守る空流部屋の一堂、谷町、そして吽形さんの担当医。
あの場は引いた医師だが、今でも納得はできていない。あのヒザでまともな相撲が取れるはずはないと思っている。

それでも始まってしまう。神に祈る白水さん。
その結果は・・・電車道!!

前ミツをとり、一気に押す。一度も下ることなく、2本の線を残す。
圧倒的な貫禄を見せて、吽形さんは関取の座を勝ち取ったのでした。
これには会長を始め、谷町さんたち大喜び。関取じゃー!!

アレがヒザを壊した男の動きかと、信じられずにいる医師。それに対し、空流親方は言う。

常に不安と共に生きてるんですよ。力士ってのは・・・
負けちまうんじゃねーか・・・オレは強くなれなえーんじゃねーのか・・・
常に自問自答を繰り返し、その不安を払拭するタメ、毎日愚直に稽古を積む。
挫折を繰り返しながら才能を磨き・・・
己を肯定するタメに土俵に上がる・・・

吽形さんは自分の現状を冷静に考え、理解している。
それでもなお、先を信じて必死に土俵に上がっている。
その覚悟は並大抵のものではない。俺にはその覚悟を踏みにじることは出来ないと親方は言う。

たとえ師匠であっても奪えんのです・・・生き様は・・・

それでも、指導者としては止めて欲しいという気はしますが。
ここで止めてしまったら、心が先に折れてしまうという可能性があるんですよね。
なんだかんだで、阿吽はどちらも努力型である。
才能もあったでしょうが、それを磨くための地道な努力を経て、今ここにいる。
吽形さんが冷静に分析しているとしたら、その気持ちが手術後も持続できるかどうか、という点にあるのかもしれない。
誰よりも阿形さんに負けたくないと思っている吽形さんが置いていかれるのはどんな気分であるか。
一度味わっているだけに、また味わいたくはないという気持ちがありそうだなぁ・・・

もはや、生き様を思いっきり見せ付けて完全燃焼してもらうしかないのでしょうか。
燃え尽きたと見せかけて、アッサリ復活するなんて流れは・・・望むところなんですがね!
医師も頑張って、ほとんど休場せずに手術する方法とか編み出してくれないものか。

十両昇進をキメたのに、吽形さんの顔には歓喜のカケラもない。
そしてそれは、同じく昇進をキメた阿形さんも一緒だった。

ヒザの痛みをこらえているからではないですな。
見据えているのは、優勝決定戦。ただそれだけである。この取組はその通過点でしかない。
幕下力士たちの夢である関取の座も通過点というのはどうかと思うが、まあ今のこの2人の状況としては仕方ない。

どうにかならないものかねぇ。
竹虎さんか、天雷(兄)辺りが駆けつけて、いい方法を提示してくれるという逆転技とかないものか。
こんなこともあろうかと、神の技を持つ外科医者を見つけておいたんだ、とか。
法外な請求費をつきつけられても、阿形さんはじめ、空流部屋全員が必ず返すからと言ってくれそうだ。
そういった希望に溢れた展開を夢見ておきたいものでございます。



第120話/ここからだ!  (2011年 48号)


吽形さんの膝の話を聞いてしまった椿。
さらに阿形さんの語る2人の覚悟も聞いてしまったし、どうしていいかわからない。
眠れない夜を過ごす椿。
しかし、眠れないのは椿だけではなかった。

夜中の2時にひとり、土俵で汗を流す白水さん。
その脳裏には天雷と向かい合ったときのことが浮かんでいる。
思わず引いてしまったことがよほどトラウマになっているようですな。

白水さんは眠れない。もしかしたら、明日で最後になるかもしれないから。
昨日の取組でビビッて引いてしまった。勝負には勝ったが、力士としては・・・
勝ったんだからいいだろとか思うかもしれない。だが、問題はそこではない。

ビビッちまった残像が消えねーんだ。土俵に上がるのが怖くてたまらねーんだ。

白水さんはその取組の後、鯉太郎に言われた。アンタは空流じゃねーのか!?って。

明日、ビビッてまた自分の相撲が取れなかったら・・・俺は足を洗うかも知れねぇ・・・

深刻そうな表情の白水さん。
だが、それを聞き怒る椿。ふざけんな・・・

空流の看板に泥を塗るようなコトはできないという白水さん。
だが、今の状況で簡単に辞めるだなんて言われて納得できるはずもない。
吽形さんは、相撲どころじゃない体で泣き言一つ言わず、必死に土俵に上がっているのだから。

ここで椿はようやく吽形さんの膝について白水さんに語る。再断裂、後遺症・・・

白水さんにとって相撲がそんな軽いモノなら・・・吽形さんと足を取り替えてやってよ!!

その手があったか!!
竹虎さんか天雷兄辺りが俺に任せろと取替えに来てくれれば万事解決する気がしますね!
本当にそれが出来る話であれば、どれほどよいか。

その話を信じられない。というか、信じたくない白水さん。
しかし、吽形さんのあの遺言めいたセリフを聞いてしまうとなぁ。
不吉な想像に心臓は早鐘を打つように騒いでいる。

吽形さんは優勝決定戦で阿形さんと戦うつもりなのよ。
ただでさえあの足で土俵に上がるのは怖いはずなのに・・・あの阿形さんと・・・
そんな吽形さんの前で・・・怖いんで辞めますなんて言えるの!?

涙を流し叫ぶ椿。
椿の言葉というよりも、吽形さんの覚悟というものを魂で感じ取った白水さん。
その表情に怯えなんてものは見えない。

鯉太郎にはその話はまだ聞かせていないという椿。
白水さんは、鯉太郎には場所が終わるまで黙っててくれと頼む。
鯉太郎はナイーブだから、今のこと知ったら取組に影響が出ると思うから、と。
やはり白水さんは弟弟子思いですなぁ。いい兄貴である。

翌日。鯉太郎と白水さんは共に取組がある日。
鯉太郎に遅れて部屋を出る白水さんは吽形さんに言う。

俺の心配はもうしなくて大丈夫っスから・・・
なりますよ。絶対に折れねぇ、空流のぶってー柱に

うむ、いい具合に腹が据わってきているようですな。
本日の取組の相手は石剛雲。歯抜けの強面である。おお、怖い怖い。
昨日の天雷との取組を揶揄される白水さん。気をつけろー、そいつ得意は引き技だぞー。
だが、そんな言葉も今の白水さんの耳には入っていない。

あの二人が戦う・・・本場所で阿形さんと吽形さんが・・・
そんな時に、俺ごときが・・・二人の集中を削ぐわけにはいかねーだろ。
ダセーとか、コエーとか、そんな小ぃせーこと、もうどうでもいい。

ハッキヨイの声と共に前に出る白水さん。
カウンターの張り手をモロに喰らう。そして連打を浴びせられるが、全く引く感じはない。

いつまでも兄弟子に甘えちゃいらんねーんだ。
あの二人の邪魔にだけは死んでもならねぇ。
こっからだ・・・
見ててくれ・・・吽形さん。
俺は・・・ここからだ!!!

ゴリラ張り手を叩き込み、白水さんが相手を捻じ伏せる。
これで、本当に白水さんは羽化できたのでしょうか。まだ不安は残るけど、とりあえずは見事な取組でした。
下で見ていた鯉太郎も思わず力が入っている。
実際、阿吽の方が色々と瀬戸際になっていますので、弟弟子二人が揉めている場合でもないんですよね。
白水さんはいい風に立ち直ってきている。
やはり後の問題は吽形さんか・・・本当に、足を取り替えることができればなぁ。



第121話/イライラ  (2011年 49号)


白水さんのもの凄い張り手を見て、囃し立てていた力士達も真っ青。
見事に引かない相撲を取って見せた白水さん。
その帰り道に声をかけようとする鯉太郎だが、白水さんは黙れと一喝するのであった。

鯉太郎の相手は石森。
特に聞いた名前ではないが、ここまで全勝で来ている相手だし、強いことは強いはず。
その相手を前に考え事をする鯉太郎。
白水さんを罵倒してしまったことを気に病んでいる様子。全くナイーブな奴だ。

何であんなこと言っちまったんだ・・・俺は・・・謝んなきゃ・・・

立ち合いの最中に考えることではないですな。
そんなんだから、相手のブチカマシを顔面で受けるハメになる。
さらに、張り手をかます石森。だが、そこで決めれないようでは厳しい。
気を取り直した鯉太郎の反撃。
掌底気味の張り手が石森のアゴを捉える。これ、むしろ掌底じゃないっすか。
蒼希狼戦でのキズが開いてしまったが、どうにか勝利。

そして、白水さんと話をする鯉太郎。
あの時は頭に血が昇ってしまって、ヒデーこと言ってしまった。

相手は天雷で、しかも初顔合わせだったんだし・・・
白水さんが天雷の圧力で引いたとしても仕方ねーんだって・・・

言葉を選んでいるのはわかるが、それでも微妙に罵倒しているように聞こえなくはない。
まあ、事実だからしょうがないのよね。
その鯉太郎の胸倉を掴む白水さん。どこまでナメてんだテメーは

胸倉掴んだままの状態で鯉太郎を挑発する白水さん。イラつくんだよ。何様だカスが!!

今日のお前の取組じゃ・・・俺が相手だったら一撃で終わってたぞ

白水さんの挑発。
そう、次お互いが負け無しの7勝全勝なら、阿吽同様に2人も同部屋優勝決定戦である。
これを聞いて驚く鯉太郎。どうやら本当に認識していなかったようだ。
なんですか、白水さんが全勝するなんて頭になかったってことですか。どこまでナメてんだテメーは!

いいか、空流部屋はただの仲良しこよしの集まりでも・・・ほんわか大家族でもねーんだ
勝つタメなら躊躇なく・・・その開いたキズをねらうぞ。

殺す気で来い・・・じゃねーと殺すぞ!

目を見開いた状態での白水さんの挑発。鯉太郎もわかったと受け入れる。
鯉太郎が去り、ほっと一息つく白水さん。よかった、最後まで悪ぶれた。
ずっと側でやり取りを見ていた川さんに謝罪する白水さん。

鯉太郎にはあのくらい言わないと、俺相手じゃ少なからず情が出ちまうと思うから、と白水さん。
確かに。鯉太郎だと兄弟子相手に優勝を譲ろうとする可能性はなくはない。
白水さんが今後優勝する可能性なんてないかもしれないんだし、ここは、とか思ってもおかしくない。ナメんな!

全力のアイツが腹の底から俺を認めねーと意味がないんです

白水さんは吽形さんのことも語る。ヒザの靭帯の再断裂。
一度目の時の手術で以前の動きにまで復活しただけでも奇蹟みたいなものである。
また休んでもう一度手術すれば元通り、って簡単な話ではない。
それは誰よりも本人が一番分かってて、「もしかしたら本場所で・・・」
考えたくもねぇコトがどうしても頭に・・・むかつくけど・・・浮かんでくるんです・・・

涙する白水さん。
泣けるシーンだけど、やはり川さんに一方的に話しかける白水さんの図は異様だ。
白水さんは川さんとのコミュニケートの方法を知っているのだろうか。
実は喋らないだけで、細かい動きで意思疎通を図っているのかもしれない。
耳を二回動かしたら肯定の合図とか。親しい相手だけが川さんの意図を汲むことができるのだ!!

それはさておき、最終13日目。
本人たちの想いをよそにこの日、空流の名が日本中に轟き始めるのである。

序二段と幕下のそれぞれで優勝決定戦をやる部屋だしなぁ、そりゃ有名にもなる。
と言いたいところだけど、下位力士の話がそこまで話題になるものでしょうかね?
バチバチの世界では相撲はまだまだ人気ジャンルで取り上げられているのかもしれない。
角界としては、前代未聞の出来事だし沸くのは当然でしょうけどね。



第122話/ダブル同部屋対決へ  (2011年 50号)


空流部屋の活躍は流石に相撲界で話題になっている。
序二段と幕下でダブル同部屋優勝決定戦なんてコトになったら、前代未聞である。
これは、そのうち空流さんの時代が来るかもな!と親方衆にも評判だ。

となると、面白く思わない人ももちろん出てくる。虎城親方だ。なんだか久しぶり!
虎城部屋は人数は相当いるはずだが、猛虎さん以外はパッとしていないらしい
王虎が復活したとはいえ、活躍するのは来場所以降でしょうしねぇ。

プロレスじゃあるまいし、そううまくいくか!と思いたい虎城親方。
しかし、鯉太郎は凄い下手投げで7戦全勝を決める。
それより前に、白水さんも全勝を決めており、序二段の空流同部屋決定戦は確定した。

さらに吽形さんが決め、そして阿形さんも決める。
これで幕下の空流対決も決まった。歴史的な事件だ!!

来場所は一気に2人も十両入りする。
さすがに空流部屋の凄さをみな認めざるを得なくなってきているようだ。
まあ、猛虎さんは既に十分知っていますからねぇ。不思議はないさと笑顔で言えます。

逆に虎城親方は怒り満面。ぐっぎぎ・・・
その横に歩み寄り、語る人物の姿があった。

1つの部屋からとはいえ、有望な若手がこんなに出るとは・・・
大相撲界の未来は明るいですな

アゴに手を当て、貫禄満点なこの人は・・・飛丸さんだー!!
25歳の序二段にして、元横綱の親方と並び立つとは・・・恐ろしい人だ!殴られたけど。

鯉太郎の同期もその話をしている。
天雷曰く、鮫島の兄弟子は弱くはないよ、とのこと。
ふむ。実際弱くはないのですが・・・あの取組はいろいろと擁護し辛かったからなぁ。

ダブル同部屋対決が決まった日。
その話題が一部のマスコミに取り上げられ、小さくではあるが日本中に空流の名が飛びまわった。
その大半は批判的な記事であったが・・・

ちょうど話題に欠いていた時期というのも功を奏したようですな。
前は鯉太郎による悪評で有名になった空流だが、今回は実力によって話題になった。
まあ、一度ワルのレッテルが貼られているので、それを踏襲して批判されていますけどね。

全体的に批判だらけの中で、ただ一社だけ、手の平を返したように好意的な記事があった。
日刊トップである。角界一の稽古量花開く!と銘打ち、ダブル優勝決定戦は歴史的事件であると紹介する。
そして、迫力の四力士の写真が・・・白水さんー!!もっとマシな写真はなかったんかい。

その記事を見て喜ぶマコ姉。あら可愛い。
額縁を買ってくると言ってますが、何を飾るのでしょう?記事?

日刊トップの山崎さんは登場の仕方から、空流にとって害になるかと思ったが、そうでもないようだ。
まあ、一般マスコミの流れに逆らうとなったら、むしろ空流の味方になるのが自然か。
その記事を呼んで、鮫島とウチの王虎に差がついたよなーと語る虎城部屋の力士。
その会話を聞きつけボコる王虎。やっぱりこの狂虎は怖いな。
来場所は序の口で取り組み相手全員壊して優勝とかやりそうなぐらい怖い。

そして、十五日目。千秋楽。
ニュースの扱いとしては小さかったが、相撲ファンとしては流石にこの出来事は大きい。
幕下以下の取組を見ようと待っている客達。その話題はもちろん空流のことである。
そして、その客たちの前に現れました、空流部屋!

普段と違う、真っ黒な浴衣を纏い、横並びに歩く一同。
白水さんですら、もの凄い迫力をまとっている・・・
一人一人が圧力を放っているようだ!ドン!ドン!ドン!ドン!チーン!

川さん、何してるんですかぁー!!

こんな状況でも自分の立ち位置を見失わない川さんは尊敬できる、かもしれない。

ともかく。
世間の浮ついた騒ぎとは裏腹に、誰も口を開かず・・・誰も目を合わせず・・・
不気味なまでに静かなその佇まいから・・・
醸し出る4人の殺気は・・・一瞬でゆるい空気を突き刺した

そしてそれは、これから始まる同部屋対決の・・・激闘を予感させるものであった。

いよいよ、同部屋対決が始まるのですな。
まずは、ある程度安心して見れそうな鯉太郎と白水さんの一番。
白水さんが意地を見せるのか、それとも?
ともかく、この一番で白水さんの評価はかなり改まるんじゃないかと期待したい。



バチバチ 15巻


第123話/いざ!  (2011年 51号)


親父の火竜が死に、斉藤家に引き取られた鯉太郎。
いい家族ではありますが、それゆえか馴染めずにいる鯉太郎。家出を繰り返す。
その度に連れ帰ってくれたんですな。よい人だ、正ちゃん。

さて、ついに優勝決定戦の日である。
幕下以下の力士による優勝決定戦は、十五日目の千秋楽に十両力士の取組が終わった直後にまとめて行われる。
何故この時間なのかというと、幕内力士目当てで大入りで入ったお客に・・・
次代のホープをお披露目するという意味があるからである。
そのため、いつもは空席が当たり前の幕下以下の力士にとって、いきなり別世界で相撲を取ることになるのである。

普段なら自由に使える仕度部屋も、この時間帯は幕内力士がいる。
所属する力士に幕内力士がいない部屋などは、たとえ優勝決定戦であっても廊下などで準備するのが当たり前なのだ。

やはり幕内と幕下以下では大違いというのがわかりますなぁ。
阿吽はもはや幕内入りしたといっていい力士だが、それでも扱いが変わるわけではないか。

優勝決定戦や大観衆という場。
鯉太郎も緊張の様子が見える。まあ、一番の原因は相手が兄弟子だということでしょうけど。
王虎との因縁のおかげで、大観衆での取組は初めてではない鯉太郎。アガる心配はないかな。

並んで仕度する鯉太郎と吽形さん。吽形さんは鯉太郎に話しかける。
鯉太郎の下手投げはかなり出来上がってきているらしい。
確かに、本場所でも何回かそれで決めているようですしね。
でも、本人に言わせれば、まだ八割方は力んでしまうらしい。蒼希狼を投げたときは手ごたえがあったらしいけど。

少しずつだけど確実に強くなってる実感があって・・・
吽形さんが言ってた三年先ってのはこういうことなのかなって・・・

いい表情してますね鯉太郎。
実のトコ、優勝決定戦に挑む4人の中では一番気が楽な立場だったりしますのよね。
吽形さんのことを知らないので、自分のことを気にかけているだけで済む。
それはかなり幸せなことすな。教えずにいてくれた白水さんに感謝しないといかん。

自分のことに精一杯な鯉太郎。どうしても早く結果が欲しいと考えている。
とはいえ、もちろん自分の欲のためというわけではない、自分を育ててくれた人達のために、である。

少年の頃の鯉太郎は、引き取ってくれた斉藤家の人たちに反発していた。
しかし、この頃の鯉太郎は本当に福々しい。このままなら太れそうだったのになぁ。

いづれーんだよ、お前らの言え!わかってんだよ!本当は俺をウザく思ってんだろ!!
俺は火竜の息子だもんな・・・嫌われて当然だ

親父のことを持ち出す鯉太郎。その鯉太郎にビンタをかます斉藤正一さんこと正ちゃん。

一番近くで見ていたお前が・・・オヤジを悪く言ってどうする
火竜が現役の頃を・・・土俵に上がっていた頃を忘れたのか?
お前の親父より凄い人間を・・・俺は知らないぞ。

うむ、さすが正ちゃん!見事でありますな。
作中でもかなりの人格者として描かれている気がします。

斉藤家でやっかいになることに引け目を感じている鯉太郎。
ならば、恩を感じて暮らせばいいでしょ!というマコ姉。

そんでいつかしっかり恩返しすればいいじゃない!

なるほど。正論でございますな。
子供が無駄に引け目を感じることなんてないですわな。
とはいえ、今ではすっかり恩を返すことばかりを考える子になっちゃった気がしないでもない。

次の場所必ず優勝すっから・・・そしたら一番に教えっから!

そういえばそんな約束もしてましたな。
その時は白水さんが俺がいるから優勝はできないぜ!とか言ってたな。
あの時は軽口に聞こえたが、まさか本当に優勝決定戦になるとは・・・

吽形さんも、今日の白水さんはハンパじゃないぞと忠告する。なんせお前が相手だからな、と。

非情になれよ鯉太郎・・・
上に行く奴ってのは、相手が誰であろうと踏み越えてくもんんだ・・・

実際、白水さんにも殺す気でこいと言われていますしね。
その仕込が生きているのか、鯉太郎はバッチリやるきになっている。うむ、思惑通り!

そして、その仕込をした白水さん。
廊下の壁を相手に体を温める。フー・・・

白水さんと話をするのは阿形さん。
千秋楽のこの時間はいつもの場所とは空気が違う。のまれるなよと忠告する。

カンケーないっスよ・・・そんなモン。
真っ向から鯉太郎をブッ倒して・・・優勝するだけですから

あの白水さんが立派な発言をしている。
この大一番でアガってしまって、本来の取組が出来ないんじゃ本当になんだよそれー!だからなぁ。
天雷戦で、足を洗うかもしれないと思うほど退いた自分を恥じている白水さん。
その白水さんが、鯉太郎との戦いで引くことはない!と思いたい。

さて、ついにその時がやってきました。
後援会が、同期が、親方が、家族が見守る中、2人の力士が土俵入りする。

東からは鯉太郎が。
西からは白水さんが土俵入り。
白水さんの右腕の力の入りようが凄い。

それにしても、仕度は綺麗に2組に分かれていたけど、どっちにもいる川さん。
東西をウロウロしていたのだろうか?
でも、鯉太郎と白水さんは同じところを歩いて入場してたし、分かれてはいないのか?

川さんのことはともかく。
次号は巻頭カラーで2人の激闘が描かれることになる。凄い楽しみだ!!



第124話/序二段優勝決定戦!  (2011年 52号)


ついに始まるW同部屋対決。
まずは序二段の優勝決定戦。白水さんと鯉太郎の対決だ。

時間帯により、通常とは違う大入りの会場。
多数の観客と関係者が見守っている。
同期の連中もほぼ全員見にきている。さすがに蒼希狼の姿はないか。

そういえば、序の口優勝戦の時は誰も見に来てなかったのかな。
渡部の人望が鯉太郎より低いということなのだろうか?ナンテコッタ。

同期の予想。石川は鯉太郎が勝つと信じて疑わない。
白水さんを、天雷ごときにビビる奴と腐しているが、どちらかというと鯉太郎を応援したいから言ってるように聞こえる。
田上さんはもう少し冷静にモノを見ている。
お互いの手の内はわかってるだろうし、何より情が邪魔をして前に出る鯉太郎の相撲に影響が出るかもしれない。
ふむ、さすがに田上さん。鯉太郎が情に流されやすい性格だと気付いているのか?

だが心配無用。
もの凄い顔で白水さんをニラみつけている鯉太郎の姿があった。いきりたってるな。
情に流されやすい鯉太郎は、殺す気でこいと言われたら本当にその気になっちゃうの。
てなことだと唯のバカな子ですな。
実際のところは、意識的にテンションを高めているのです。情を捨て、全力で勝つために
対して、白水さんは凄い落ち着いている。
って、なんか怖い!落ち着きすぎて空虚にすら見える!
あ、空虚って四股名よくない?空流部屋っぽいし。字面はカッコイイ。

観客の多さに白水さんが慄くことがあるかと思ったが、もうそんなのは全然関係ないようですね。
手をついて構えた白水さんには凄い貫禄が見て取れる。やばい、強そう。
始まる直前、お互いに思う。

まずは全力でブチカマす・・・駆け引きはしない。
今の俺のすべてを真っ向からぶつける。コレはアンタが言ってたコトだぜ。

一撃だ・・・今の俺の最強の技、ゴリラ張り手を全力で打つ・・・
容赦なく・・・潰す気で打つ!!

そして、ついに。火蓋が切って落とされた!
立ち合いの一瞬を制したのは鯉太郎。ブチカマシが白水さんの腹を襲う。
速い!だがその一撃では揺らがない白水さん。ならばと追撃の二激目!!

こっ・・・こんなに速ーのか・・・場所でのコイツは・・・

鯉太郎は本番に強いタイプである。
しかも全力の一撃を出してくるから稽古場とは別物でしょうな。
だが、白水さんも昔とは大違い。
鯉太郎が入門した当初はそのブチカマシでぶっ飛んでいたのに、今は普通に立っている。
それでも、連続でブチカマシを続けられたら持たない気はする。
そんな白水さんの脳裏に、鯉太郎の罵倒が蘇る。

真っ向勝負が白水さんの相撲じゃねーのかよ・・・できもしねーコト言うんじゃねーよ!!

言わねーよ!

胸を突き出し、鯉太郎のブチカマシを受け止める白水さん。
そして、両腕をかちあげ吹き飛ばす。鯉太郎のブチカマシがハジキ飛ばされた!?
距離が開いたところで、繰り出されるのは・・・ゴリラ張り手!
右手が大きくアップになった絵は迫力満点。
そして、強烈な一撃が鯉太郎の側頭部に叩き込まれる。大きく状態を揺らす鯉太郎!
と思いきや、左腕でガードしていた模様。

一進一退の攻防は次回へと続く。

いやぁ・・・白水さんスゲェな。
後半の大ゴマラッシュは、ほとんど白水さんの見せ場でありました。
それに応えるだけの迫力満点っぷりに慄く。

白水さんの髪型はいつもどおりなのに、観客は誰もそれを見て笑ったりしない
ただ、その雰囲気に気圧されているように見えた。なんという貫禄か。
まあ、雰囲気とか分かりづらいテレビで見てる人は笑ってたかもしれないけどね。
とはいえ、この取組の内容を見れば笑いも吹き飛ぶさね。

ここまでは互角の勝負だが、鯉太郎にはまだ組み合ってからの下手投げがある。
その投げをこらえて、どのように張り手を決めるかが白水さんの勝機でしょうな。
田上さんには見事に決めたことだし、ワンチャンスあれば決めてきそうな気はする。
ともかく、目の離せない取組になりそうだ。



第125話/お前はいつだって・・・  (2012年 1号)


白水さんのもの凄い張り手を見て、戦慄する渡部に石川。
その凄さを身をもって体験していた田上さんも改めて戦慄している。

まともに喰らったら終わるぞ。鯉太郎もその認識でいる。
そう警戒しながらも突っ込む鯉太郎。
事前に言われている。殺す気でこいと。出なければ殺すと。
本気で向かってくる鯉太郎に満足そうな白水さん。

それでいい・・・全力で・・・来いよ!!

土俵の中央。仁王立ちになった白水さんに、鯉太郎は張り手の連打を浴びせる。
ボコボコにされるハゲチョビン。いや白水さん。
やっぱり観客からはハゲと認識されているのか?ちゃうねん。

そもそも、白水さんは手を出せないのではなく出さずにいるのである。
白水さんは考えている。鯉太郎に見せ付けなくてはいけないと。

確かに俺には・・・阿吽のような貫禄はねぇ・・・
だけど・・・お前よりも長く空流やってんだ・・・
お前の全力を・・・正面から全部受けきってやる・・・
倒せるもんなら倒してみろ。もう引かねぇ!!!

こいコラ!!

鯉太郎に来いと言ったらもの凄い掌底のような張り手をコメカミに入れられました。

稽古じゃねーんだ!鮫島の張りを受けきれるかバカが!!

本番の鯉太郎の張りを受けた経験のある石川が吠える。
まあ、石川は鯉太郎贔屓ですし、あんまり参考にはならないけど。
とはいえ、普通なら今ので倒れるところであった。だが、踏ん張る白水さん。

なりますよ・・・絶対に折れねぇ・・・空流のぶってー柱に!

終わりか・・・?
次は・・・俺の番だ・・・

手の止まった鯉太郎に替わり、大きく振りかぶる白水さん。
この構えを見て戦慄する田上さん。逃げろ鮫島!!
だが、その警告を聞かない鯉太郎。ブチカマシで吹き飛ばしてやると突進する。
無茶な賭けだ。下手したらカウンターになって一発で終わる。

アイツの張りの重さはハンパじゃねーんだ!

田上さんをしてそう言わしめるのが白水さんのゴリラ張り手である。
実際、田上さんは鯉太郎のブチカマシと白水さんの張り手の両方を受けた人である。
田上さんを倒すのに、ブチカマシは3回必要だったが、張り手は2回で済んだ。ならばこの対決は!?

だよな鯉太郎・・・お前はいつだって・・・逃げねぇ。

激突。白水さんの右手が跳ね上がる。
だが、鯉太郎の突進も止められてしまっている。相打ちか。
しかし。
腕が跳ね上がって引いたのなら好都合だ。もう一度放つことができる。
大きく振りかぶっての2発目。迫力の見開きで振るわれるゴリラ張り手が、ついに鯉太郎を捉えた!ゴギ

必殺の一撃を受けた鯉太郎は一体どうなってしまうのか!
ていうか、凄い音してますよ。ゴギって。
下手したら頚椎をやってしまって死亡もありえる音だ。
それをやったら、色々な意味で凄い漫画になるが、見たくはないな。

まだ鯉太郎には吽形さん直伝の下手投げがある。
今回の展開からそこに行くのか、その前に倒されるのか。
少々プロレス的な展開が気になるところではあるが、白水さんの覚悟が見て取れた回であった。次が待ち遠しい。



第126話/ここだ!  (2012年 2+3号)


必殺のゴリラ張り手が炸裂!!仰け反る鯉太郎。
だが、それで終わりではない。
素早く引いた左手でもう一発ゴリラ張り手を叩き込む。ゴギ!

ダメだ・・・あんなモン一発でも喰らえば致命的だ・・・
この勝負決まっ・・・

自分は一度は耐えたくせにそういうことを言いますかね、田上さん。
でも二発は耐えれなかったわけだし、終わったと言うのはわかる。
だが、鯉太郎は立っている。
右目の上の傷口は開き、再び流血している。だが立っている。
それどころか、反撃のブチカマシを行う鯉太郎。動けるのかよ!?
ブチカマシを受け止め、さらに張り手をかます白水さん。

スゲェ・・・一発の重さで体が・・・消し飛ぶ・・・
意識を切らすな!!
次がくる前に先に・・・前へ・・・

ブチカマシと張り手。交互に決まっている。
初激のように衝突することはなく、お互いの攻撃を交互に行っているように見える。
土俵中央。同部屋の兄弟弟子がバチバチに死闘を繰り広げている。
一歩押されれば一歩出る。たがいに引かない。
この取組を観客が同期が熱く見ている。関取集も見守っている。目が離せないでいる。
新寺親方にいわせればブサイクな意地の張り合いである。
だが、だからこそ感情が剥き出しで、見ているコッチにまで噛み付いてくる。

相撲を取りながら、鯉太郎は昔のことを思い出していた。
憧れだった親父、火竜の栄光。それが一転しての転落。
いつも周りを大勢の人が囲み、誇らしげであったのに、どんどん人が離れていく。
そんな親父の側に最後までいたのに、親父もいなくなってしまった。
暗闇に放り出されたような鯉太郎。
問題を起こした有名人の息子ということもあり、嫌でも注目を浴びる。荒れるのもしょうがない。

どこに行きゃいいんだ・・・俺は・・・どこに・・・

斉藤家は帰る場所である。それを与えてくれたことには本当に感謝している。だけど・・・

向かうべき場所は・・・どこだ・・・俺はどこに進めば・・・

白水さんの強烈な張り手を顔面に受け続けたことで腫れあがり、両目が見えなくなっている。
フラフラと、ブツブツと呟きながら相撲を取っている鯉太郎。
これでは何も見えない。どこに向かっていけばいいのかもわからない。

鯉太郎!

右手で自分の胸を叩き、ここだ!と示す白水さん。
その声が暗闇を刺す光となった。

そうだ・・・前だ・・・わかってる・・・止まるな・・・前だ!!
いつだってこの人たちは・・・俺の前にいてくれる!!
俺の道を示してくれる!!

両目が塞がり、何も見えないと言うのに全力で突っ込む鯉太郎。恐怖はないのか?
そして、それを受け止める白水さん。スカせば楽に勝てるのにわざわざ受け止める。
勝敗だけに拘るならば、バカな意地よと笑い飛ばせたのでしょうが・・・
この一番に賭ける2人の意気込みは単純な勝敗で計れるものではないですわな。

マコ姉、おじさん、おばさん。クソオヤジ・・・
どうだ!?スゲー兄弟子だろ!俺が全力でブチ当たろーがビクともしねー。
こんな人たちが生きているこの土俵なら・・・俺は何者なのかみつけられると思うんだ・・・

俺がどれ程のものか・・・試してみるよ・・・俺が選んだ、この土俵で!

激しい意地がぶつかり合う土俵。
この対決もいよいよ決着がつきそうですなぁ。
果たしてどちらが勝つのか。
一撃必殺のゴリラ張り手であったが、さすがに鯉太郎の攻撃を受けて威力が弱まっていたか?
この一番に賭ける鯉太郎の意気込みもあって耐えれたのかもしれない。
しかし、鯉太郎に道を示す白水さんは格好良すぎるなぁ・・・
白水さんは鯉太郎のことを本当の弟のように思っていると言っていた。
鯉太郎も、白水さんのことをそういう風に思ってくれたら嬉しいんだけどね。
少なくとも、強さはこの上なく認めているし、その在り方も認めているか。ふむ。
決着と、今後の2人の関係が楽しみであります。



第127話/決着!  (2012年 4+5号)


一進一退の攻防を見せる空流の兄弟弟子対決。
だが、その差が現れようとしてきている。

もういい鯉太郎・・・何度張ろうが・・・何度ブチカマそーが・・・
”押し”で俺には・・・勝てねーよ!!

強烈な張り手が鯉太郎の顔面に突き刺さる。
これを受けて、さすがの鯉太郎も力尽きそうになる。もう、力残ってねーや・・・

でも・・・白水さんになら・・・負けてもいいか・・・

微妙に日和った声が聞こえてきました。
鯉太郎は身内には甘いからなぁ。尊敬できる兄弟子になら、とか思ってしまっているようだ。
だが、まだだ!

俺はまだ吽形さんから教わった下手投げを出してねぇ・・・!!
まだ・・・終われねぇ・・・

投げる・・・

白水さんが尊敬できる兄弟子なら、吽形さんだってそうである。
その尊敬する兄弟子から教わった投げをまだ使えていない。
そんな状態で終わるわけにはいかない。鯉太郎の闘志に再び火が灯る。
その様子を見て満足そうな白水さん。そう、白水さんもまた、全力の鯉太郎を望んでいるのだ。

それでいい・・・”四つ”でこい!!
だが簡単には取らせねーぞ・・・

ケツに力を入れて腰を落とせ・・・足の指で土俵に杭を打て・・・
下から上へ・・・重さを乗せてハジき飛ばせ・・・
まわしを取りにきた瞬間・・・迎え撃つ!!!

迎え撃つ気満々の白水さん。鯉太郎もその気配はバリバリに感じている。
体はすでにギリギリ。次もらったら沈む。
ならば、力を振り絞りあと一度だけでいいから渾身の力でブチかます。
投げは力がなくてもキメられる。

鯉太郎(まわしを取れば・・・勝てる!)
白水(最高の一撃で・・・キメる!)

勝負!!

突進する鯉太郎。迎え撃つ白水さん。
その対決を制したのは白水さん。ゴリラ張り手が突進してきた鯉太郎の顔面に突き刺さる。
力を失った鯉太郎は前のめりに倒れ、白水さんの胸に顔をうずめる。
だが、そのまま倒れこみはしなかった。
その左腕はまわしを掴み、右腕はしっかりと白水さんの体を崩そうとしている。
そう、投げに必要なものは。

崩し・・・タイミング・・・

蒼希狼との戦いで見せた、力を使わないタイミングによる投げ。
力を出し尽くした今だからこそ出せる最高の投げを出す鯉太郎。
戦いの終結。
これを観客が、椿が、親方たちが、同期が、マコ姉が唖然とした表情で見守る。

決着。そう。鯉太郎の見事な下手投げを、白水さんが上から押しつぶしての決着だ!!

最高の投げが決まるかと思った。
この一連の流れからして決まるかと思った。
それを覆す白水さんの力技に震えた・・・本当、白水さんはカッコヨクなったよ・・・本当に。

白水さんは上背があり、リーチが長い。
そのため、頭を掴んで上から押しつぶすという行為がやりやすかったんでしょうな。
そういう意味では鯉太郎の下手投げと相性が良かったといえるが・・・やはり凄いのは気迫でしょうな。
殺す気で行くというのは奮い立たせるための言葉だったろうが、絶対に負けないと言う気持ちはやはりあったようだ。
かなり危険な叩き付け方をしている気はするが、まあ、大丈夫でしょう。鯉太郎は丈夫だ。

空流同士の対決の1戦目は白水さんが制しました。素晴らしい闘いだった。
次は阿吽による対決が待っている。これもハラハラする闘いになりそうだ。どうなるのやら。
その前に、鯉太郎と白水さんのこれからの関係を示唆しそうな展開が挟まりそうかな。それも気になるぜ。



第128話/俺は・・・  (2012年 6号)


死闘に幕は下りた。
観客は息を呑み声もなく、行事すら声を張ることができずにいる。
椿や同期に至っては口が開きっぱなしだ。あがが。

一拍遅れて、勝負ありの声がかかる。

勝っ・・・た・・・のかな・・・

死力を尽くした白水さん。
水を打った静寂に、自分の勝利が信じられずにいる様子。
観客にもようやく波が伝わってきたようで、おおおと騒ぎ出す。大歓声。
スゲーもん見せてもらったと大喜びの観衆。いいねぇ。

同期たちもあの鮫島を正面から捻じ伏せたと驚いている。
ずっと鯉太郎を応援していた石川も、さすがに白水さんを認めないわけにはおれないようだ。
一度あのチョンマゲと張り合ってみたいとか言い出す。

新寺親方も、いい兄弟喧嘩見せてもらったぜと御満悦。
この勝負は割と安心して見れる勝負だったから、空流親方も笑顔を見せています。

土俵の上では喝采を浴びる白水さん。名前も連呼される。ハゲとかお侍とか呼ばれたりもするけど

一度、強敵の圧力に押され引いてしまった。
本当の弟とすら思っている相手に不様な姿を晒してしまった。
そんな落ち込む自分に、尊敬する兄弟子は言ってくれた。お前は空流の柱になる男なんだと。
兄弟子のために、弟弟子のために、自分自身のために。
絶対に折れない、空流のぶってー柱になる。そう決めて臨んだ一番での勝利。
その実感を得て雄叫びをあげる白水さん。よい話だ。

と、ここで鯉太郎が起き上がる。
激しく頭を打ち付けたからどうなったかと心配したが、問題はなさそうだ。

ゴメン・・・白水さん・・・あんなコト・・・言っちまって・・・
俺ごときが・・・ゴメン・・・

しおらしく謝る鯉太郎。
それに対し、どんな顔をすればいいのかわからないといった様子の白水さん。
精一杯強張ってみせて、そんなコト忘れちまったよと言ってみせる。

完敗っス・・・やっぱ強ーよ白水さんは・・・

あったりめーだ。俺はお前の兄弟子だぞ・・・

強張った顔が緩み、涙と共に笑顔を見せその言葉を口にする。
かつて、口に出して後悔した言葉。
痛いところをつかれて、ようやく搾り出した苦い言葉。
それを今、笑顔で口に出すことができる。胸を張って言える。

倒れた鯉太郎に肩を貸し、起き上がらせる白水さん。
空流の兄弟弟子は二人とも笑顔であった。勝ったほうも負けたほうもよい笑顔だ。
マコ姉も、こんな笑顔見せたことないじゃないとか言い出す。
まあ、姉としては寂しいでしょうけど、いい部屋に入ったってことですよ。

こうして、空流W同部屋対決、序二段優勝決定戦は、熱戦のすえ兄弟子の意地を見せ、白水が優勝を決めた。
空流に白水あり。白水は見事にその言葉を見ていた者にキザんだのである。
そして鯉太郎もまたこの一線を機に、力士として、人間として大きく前へ進むことになる。

だが・・・

白水と鯉太郎で上がった会場のボルテージ・・・
数分後・・・誰もが今のは前座だったと思い知る
二人の男が空流を背に・・・壮絶な生き様を見せ付けるのである。

一つの熱戦は終わった。いい終わり方をしてくれた。
だが、次の戦いはそうはいかない。
どうしても決着に悲劇が付きまといそうな戦いである。
最後の生き様を見せようと戦うことになるのでしょうか。
序二段の二人の戦いが前座と思えるほどの戦い。一体どれだけのものになるのやら。

確かに、白水さんと鯉太郎の戦いは熱戦だった。
しかし、相撲としてはやはりブサイクな感じと言わざるを得ないんでしょうな。
阿吽の二人は、高いレベルでの相撲を取りながらも、熱の篭った戦いを見せてくれるんじゃないかと想像してみる。
幕下最高の力と幕下最高の技のぶつかり合いといったところか。
吽形さんのヒザのことさえなければ、ただ楽しみに見ていることができましたのにねぇ・・・
勝負の展開も、結末も気になってしょうがない!

気になるといえば、白水さんはこの後、髪を伸ばすのだろうか?
もう、今の髪型が観衆にも染み付いちゃったし、もうそのスタイルでいっていいんじゃないかなぁ。
川さんが剃るのを止めても、自分で剃って今のスタイルを維持するのだ!
大銀杏を結う頃にはまた考えないといけないでしょうけどね。



第129話/覚悟を・・・  (2012年 7号)


勝利した兄弟子が、敗れた弟弟子に肩を貸し退場する。
その様子を歓声をあげて見送る観客。よい光景だ。

死力を尽くした2人だが、ブッ倒れるのはまだ早い。
今倒れてしまっては死ぬまで後悔することになる。
尊敬する兄弟子である阿吽の対決。これは絶対に見逃せない対決なのだ。

吽形さんのヒザのことを知らない鯉太郎は純粋にこの対決を楽しみにしている。
力の阿形と技の吽形。今の空流最強はどっちだろうかと楽しそうに口にしている。
そんな鯉太郎に、ついに吽形さんのヒザが限界であることを話す白水さん。
当然動揺する鯉太郎。笑えねーよ・・・

でも・・・現実なんだ。
こんなコト考えたくもねーし、口に出したくもねーけど・・・
吽形さんの相撲見れるのは・・・これで最後の可能性だって・・・

白水さんの言葉に、吽形さんとの稽古でのやり取りを思い起こさせられる。
そして、場所前に行われた阿吽のやり取り。

吽形「俺らがもし・・・場所であたったらどうなると思う?」
阿形「殺し合いだろ」
吽形「だな・・・」

ようやく悟った鯉太郎。どうにか止めたいと考える。
だが、白水さんは言う。俺らごときがあの二人にはさめる口はねーんだ、と。
そう、二人にだ。当然、阿形さんは親友である吽形さんの覚悟を誰よりもわかっている。
だから阿形さんは何も言わずに土俵に上がるんだ。

わかるだろ・・・あの二人は力士だ。
空流の・・・俺らの兄弟子なんだ

見守るしかない。そう語る白水さん。辛いなぁ。
同じように辛い立場にあるのは空流親方。
ケガのことを知らない新寺親方は、俺の中じゃ今場所の結びの一番だぜとはしゃいでいる。
ありがたいことだが、落ち着いてください。

空流親方は目を見張っている。
何かと思ったら、吽形さんがサポーターを外している!
ケガをかばったりする気は一切ないという意志の表れであるか。
それを見て椿も辛そうな顔をする。
さらに、ヒザを握った手で打ちつける吽形さん。己に気合と喝を入れようとしているのだろうか。
これで脱臼しちゃったらどうするつもりなんでしょう。
まあ、自分ではめて土俵に上がるんでしょうなぁ・・・とんでもないぜ。

白水さんと鯉太郎も見届ける配置についた。
準備と舞台は整った。いよいよ、修羅の闘いが始まる。
どのような死闘が繰り広げられるのか・・・凄惨な結末に至るまでは楽しんでいきたいと思います。



第130話/一人  (2012年 8号)


哭きの一番・・・
盛り上がった序二段の空流対決に続いての幕下の空流対決。
歓声がわきあがるが、それとは裏腹に厳しい表情の2人。
そして、阿形さんは過去を振り返る・・・

子供のころの阿形さん。
そのころから人一倍力が強かったらしい。
ちびっこ相撲で闘った相手を壊してしまう。もちろんわざとではない。

別に壊そうと思ってた訳じゃないんだ・・・
ただ・・・ただ・・・褒められたくて・・・
力いっぱいやっていただけ・・・

柔道か何かの道場に招かれた阿形さんだが、ここでも加減しろと怒られる。
なんだか分かる話ですなぁ・・・
周りよりなまじ力があるばかりに、壊してしまう。やけに共感してしまうエピソードだ。

大きくなっても周りとの力関係は変わらない。
その力を見込まれラグビー部に入ったようだが、そこでも何人もケガさせてしまう阿形さん。

どこにいても俺の力は・・・いつもはみだしちまう・・・
俺はいつだって・・・一人きりだった・・・

寂しい話ですなぁ。
というか、力が強いのだからその力を活かすように、と考えたのがいけなかったのではないだろうか?
球技とか、文化系とかそういう方面に進めばよかったのに。
まあ、そうしなかったから相撲と出会えたんでしょうけどね。

というわけで、空流親方が阿形さんをスカウトにやってきました。
ラグビー部が阿形さん1人で壊滅させられたそうな。どんだけやねん。
今よりずいぶん若そうな空流親方。
威勢のいい阿形さんを気に入り部屋に連れて行く。
そこに居たのが吽形さん。2人はここで出会ったのだ。

吽形「どっちが先に関取になるか勝負だな」
阿形「フン・・・いい子ちゃんヅラが・・・俺にナメた口利いてっと殺すぞ!」
吽形「ハハッ・・・言葉通じないのか?バカヅラが・・・」

挑発されたので挑発し返す吽形さん。
殴りつける阿形さんに、殴り返す吽形さん。

イイ音するな。中身がカラだと・・・

というわけで、喧嘩を始める2人でありました。元気一杯だねぇ。
しかし、ブタフグ戦でもそうだったが、吽形さんは喧嘩を買うのがうまい。
自分から売ったりはしないだろうが、買うときは盛大に買い叩いてくれる。

殴り合いをしている2人を止めようとするおかみさん。
だが、面白そうにしている親方は、どうせなら土俵で、相撲でやれと炊き付ける。
殴るなら張れ!蹴りはなし!足の裏意外が土俵についたら負けだ!

罵倒しながらお互いを張り飛ばす2人。大仏!Mハゲ!
やっぱり吽形さんは仏っぽい顔と認識されておるんですな。

何だよコイツ・・・何で倒れねぇ・・・何で向かってこれる・・・
何で・・・壊れねぇ!!?

最後は2人で頭突きをかまし、同時に土俵に横たわる。
戦いを終えたところで、背中合わせに座り込み語る2人。
テメー何者だという阿形さんの問いに答える吽形さん。

俺はお前と同じ、この時代に裸一貫で勝負しようっていう・・・酔狂なだたのバカだよ。

ここで吽形さんが相撲界に来ることになった原因についての話が入ります。

吽形さんのいた高校は県下でも有数の進学校。
そこでトップクラスの成績だったという吽形さん。さすが。白水さんがこの人以上に賢そうな人はいないというだけある。

教師にも同級にも慕われていた。
周りの学校からも一目置かれるような学校だったが、成績次第で教師も生徒も態度が変わる。
将来勝ち組みってヤツに入るタメには、まず一流の大学に入る。
確かにそれは間違っては居ないが、ただそれだけに固執する価値観に疑問を覚えた吽形さん。
いや、単純にその生き方がつまらなくなっていたらしい。

気付いたら、答案用紙白紙で出して・・・一心不乱に怒る教師を殴ってたよ

そこからはあっさりしたもんだったよ。
誰からも引き止められず、誰にも声をかけられず・・・さよならだ。

それは・・・さすがに誰も声をかけれないと思いますよ。
キレたら暴れだす危ない相手と思われても仕方がない。
まあ、それでも相手してくれる友人がいたなら、吽形さんも留まれたのでしょうが・・・

吽形「その時確信したよ。俺はずっと一人だった
阿形「俺もだよ

救われたよ・・・お前がいなかったら今頃俺は・・・
お前も・・・そうだろ?

だから・・・だから・・・これが最後かどうかは・・・俺が決めてやる

さあ・・・いこーか・・・

至近距離で見合って、ついに阿吽の本気の取組が始まる。
仕切りってこんなに近い距離で行われるんだなと思わせる見開きでありました。

子供のころから力が強く、ぶつかった相手を壊してしまう阿形さん。
その阿形さんが全力でぶつかっても壊れずにいてくれたのが吽形さんである。
まあ、相撲界には同じように壊れない人がいっぱいいたようですけどね。
それでも、対等な存在がいるということがとても救いになったようですなぁ。

吽形さんとしても、自分と共に歩んでくれる男がいたことは救いになったんじゃないでしょうか。
今回の語りは阿形さん視点だったので、吽形さんの思いは分からない部分がある。
過去のエピソードも要点だけ語ったものでしたからねぇ。

今回のやりとりを見る限り、吽形さんは相手の態度に合わせて行動できる人なのかもしれない。
協調できるって意味ではなく、喧嘩売ってきたら、それに合わせて喧嘩で返す感じの。
そう考えると、先生もうっかり怒って手を出してしまったんじゃないでしょうか。
手を出されたら、反射的にカウンターが発動するのが吽形さんのスタイルなのだ!
割と、社会では難しそうな性格の気がしてきた。いや、普通の会社ではそうそう殴られたりしないけど。
空流親方は、よっぽどでないと弟子を殴ったりしない人なので、空流部屋では吽形さんも安泰。
逆に吽形さんが虎城部屋に入っていたらどうなっていたか・・・
猛虎さんをカワイガロウとしていた力士みたいに、兄弟子がビクンビクンとなってたりしそうだなぁ。

ともかく、生涯の親友と出会えた2人。
その戦いが今始まろうとしている。果たしてどのような死闘となるのか。目が離せませんな。



第131話/真っ向!  (2012年 9号)


いよいよ始まる、阿吽の取組。真っ向勝負だ!

共に競い登ろうとしてきたが、一度はケガで断念しそうになった吽形さん。
だが、リハビリをこなし、鍛え上げ、ついに直接対決を行える場を作り上げるまでになった。

悪かったな阿形・・・待たせちまって・・・安心しろ・・・落胆はさせねーよ!!

緊張は高まり、呼吸音も大きく聞こえる。
そんな中、行司の合図が放たれる。ハッキヨイ!
勢い良く飛び出す阿吽。お互いのブチカマシで、お互いの頭がぶつかる。

真っ向!?阿形さん相手に・・・力でいくのかよ吽形さん!?

吽形さんも意地っぱりな人ですからねぇ。
想いをぶつけるためにも、最初は真っ向からぶつかりたかったのでしょう。
だが、やはり力では阿形さんの方が上である。
出合った当時はどうかわからないけど、成長した今ではさすがに力に開きがあるようだ。
吽形さんも、阿形さんの力は常軌を逸していると認めている。

だが・・・相撲は力だけじゃねぇ・・・

正面は正面でも、下にもぐりカチ上げる吽形さん。
これならば自分は当てられず、一方的にぶつけることができる。うめぇ!

しかし、カチ上げられた勢いを利用して、振り下ろし気味に張ろうとする阿形さん。
この迫力にはさすがに吽形さんも震える。まともにくらったらぶっとんじまうわ。
なので、素早く身を交わしてその腕をとり、関節を極めるようにして投げる!
が、それをこらえて、なんと極められそうになっていた右腕一本で吽形さんを横に投げ飛ばす阿形さん。

本当に凄まじい力だな、オイ。
それに吽形さん。腕を取っての投げは、極まってはいなかったが、下手すると折れた可能性もある。
でも、そういったことを考えず、全力で2人は取りあっている。
まさに殺し合いといった感じでありますなぁ。

鯉太郎と白水さんの取組では、一歩も引かず、バチバチにぶつけあっていた。
今回の阿吽の取組は、避けるべきところは避け、それでいて技を見せる戦いになっている。
相撲としてはこれで正しいでしょうし、見るべきところがかなりありそうな戦いだ。
見ても阿形さんの力は真似できるもんじゃないような気はしますけどね。
パワーファイターに対する戦い方の研究にはなるか。
ここから戦いの激しさは増して行きそうな感じがしますが、長い戦いにはならない予感もします。どうなるか。



第132話/怒涛  (2012年 10号)


阿吽の真剣勝負。
お互いの張りが同時にお互いの顔面に突き刺さる。まさに張り合いってやつだ!
相撃ち!?いや、こういった勝負ではやはり阿形さんに分がある。
入門当時はともかく、今や単純な力では差がついてしまっているのだ。

両者グラつく中、先に動けるようになった阿形さん。
左の張りで吽形さんを吹き飛ばす。

ギリギリだ・・・まばたき一瞬でも気を抜けば・・・一気にもっていかれる・・・
たまらねーよな・・・この感じ・・・

楽しんでいただけているようで何よりです。
だが、まだまだ勝負はこれから。

集中しろ・・・深く・・・深く・・・

組み付き、上手を取ろうとする阿形さん。
その右腕を払い、脇に絡めとる吽形さん。阿形さんに緊張が走る。な、何が来る!?

頼むぞ・・・装具から解放してやったのは・・・動きの制限を解くためなんだからな・・・

拘束具を外した吽形さんの本気の動き!
喉輪で押したあと、切り替えして後ろに回る。
素早い動作により、前に戻ろうとする動作中に足を払われる阿形さん。
前方に突き落とされそうになる。
足を出してこらえようとするが、その足を払う吽形さん。

入った裾払い・・・落ちる!?

だが、左腕を横にいる吽形さんに絡めて必死にこらえる阿形さん。
でも吽形さんの攻勢は止まらない。
横について、押し出そうという構えを見せる。
吽形さんは投げだけではない。ケガの後、鍛え上げた押しの技術も持っている!

この素早い動きのやりとりを静かに、だがじっと見据える猛虎さん。
一体何手先まで読んでやがると称える。
いい存在感っすね猛虎さん。ごっつぁんです。

さて、一気に押し出そうとする吽形さん。
一連の動きに耐えた己の右ヒザを褒める。

よくついてきた・・・上出来だ・・・キメるぞ・・・!

だが、それであっさり決められてしまう阿形さんではない。
吠えた後、歯を食いしばり、踏ん張る。
さらに右腕で吽形さんの頭を掴み、横に倒れるようにして投げる!おうらあ!

首捻り!?

強引にあそこから力で持っていけるのかよとどよめく控え室。
しかし、これも決まらない。ギリギリで耐える吽形さん。

ダメだ・・・生半可な技じゃ・・・力で一気に振り出しに戻されちまう・・・
もっと集中しろ・・・研ぎ澄ませ・・・
必要なのは一瞬でノドを掻っ切るような技・・・
体の隅々まで酸素を送れ・・・まずは動き回って隙を作る・・・
ここから止まることのない無酸素地獄だ・・・ついてこいよクソッタレ・・・

己のヒザに喝を入れ、吽形さんが動き出す!
と思いきや、顔を紅潮させた阿形さんが吽形さんの両腕をガッチリ押さえ込んでいる!
この体勢からどうするのか?
強引に力で投げ倒そうというのか!?
阿形さんは、一応全く技術がないわけではない。
首捻りとかも、ちゃんと形に従ってやっているのでしょう。強引だけど。
全くの無形ではなく、基本は押さえ、足りない部分を補って余りある力でカバーする。
そんな阿形さんの攻撃に耐え、磨き上げた技術で対抗する吽形さん。
いまだ、どちらが優勢なのか甲乙つけ難い状況。
長引けばケガをしている分、吽形さんが不利になるに決まってはいるが・・・はてさて。

実にスピーディに技を展開する2人。
どきどきはするけど、やはり週刊連載だと間が空いてしまいますなぁ。
単行本で一気に読む場合は凄く楽しめそうだ。
呼吸を止めて、無酸素地獄で一気に読めそう。ついてこいよ!



バチバチ 16巻


第133話/結晶  (2012年 11号)


素早く動こうとする吽形さんを捕らえた阿形さん。
今こそ力の阿形の本領が発揮される時か。

脇に抱えられた腕がミシミシと音を立てる。
だが、腰を落としてこらえる吽形さん。この体勢からじゃさすがの阿形さんも持ち上げれない。
一気に押し出してしまおうとする吽形さん。
ケガしてからは、この押しもまた鍛え上げてきたのだ!
だけど、やはり阿形さんの力は凄まじい。
押されながらも吽形さんを持ち上げ、振り回す。ぶぁっ。

だから・・・どうしたよ!

横に振り回されたので、ケガした足で着地する。
右のヒザがビキりと痛むが、そんなことで怯んでいる場合じゃない。
さらに体勢を低くして押そうとする吽形さん。
押されまいと、同じように体勢を低くしこらえる阿形さん。
両者四つにがっぷりと組み合った!

あの不利な体制で押し負けていないぞと感心される阿形さん。

あんなのが幕下にいたのかよ?

関取連中にも注目されているようだ。だが、さらに評されるのは吽形さん。

感心すべきは・・・あの力を巧みに押さえ込んでいる吽形って奴だ。

猛虎さんはそう評価する。
さすがに阿形さんの力をよく知っているだけありますね。
その力を巧みに押さえ込む吽形さんの技を評価している。
そして、その両者の取組を見て歯軋りしている人が一人。

ぐぐぐ・・・空流めぇ・・・

虎城親方だー!!
どうしたんですか?そんなに空流部屋に目立たれるのが悔しいのですか?
もちろんそれもあるだろうが、おそらくそれだけではない。
新寺親方は評する。
必死に魂を燃やす2人の姿は、ギラギラしてた若い頃の空流親方にそっくりであると。
虎城親方も、阿吽を見て空流親方の若い頃を思い出してしまったのかもしれませんな。

激しい展開を見せた阿吽の取組だが、四つに組み合ったところでしばし止まる。
拮抗している勝負の流れが変わる瞬間を捕まえようとする両者。

白水さんは思う。こんな時こそ力で勝機をこじ開けるのが阿形さんだと。
鯉太郎は思う。吽形さんは大鵠を飛ばしたあの投げを見せていない。アレがキマればたとえ阿形さんだって、と。

均衡を破り、先に動いたのは阿形さん。
覚悟をキメたその動きは無駄なく最短の距離でまわしを狙う。
しかしその時・・・それは瞬きほどの、まさに瞬間――
吽形の鋭利に磨かれた感覚が、その刹那を捕らえる。
一寸のくるいなく、静かにそして完璧に――体が投げへの軌道を描く・・・

それは意識よりも先に肉体が反応した・・・まさに稽古の結晶であった

が・・・

ボリ

無情にも・・・残酷にも・・・ここで絶望が訪れる・・・

最高の舞台で、いざ結末というところで・・・ついに訪れてしまいました。
今まで大丈夫だったのだから、きっと大丈夫。そんな風に思っていました。
しかし、そんな期待を一気に吹き飛ばすような事態に、思わず叫び声をあげざるをえない。うわああああ!!

脱臼だけではなく、靭帯までちぎってしまっている。
これではさすがにもう相撲を取り続けることはできまい・・・
と思わせておいて、これからが死闘の幕開けだ!ってなことにはならないだろうか?
倒れこまず、体勢を立て直し、四股を踏む吽形さん。その衝撃で外れた膝がピッタリはまったのだ!とか言って。
それはそれで恐ろしいことになるだろうけど、さすがにないか。

勝負はここまでと差し止めになるのか?
阿吽の決着はどういった形でつけられることになるのか。
そして吽形さんは今後どうなってしまうのか。続きが気になりすぎる。



第134話/そんなもんじゃ  (2012年 12号)


絶望。驚愕の眼の先に絶望。熱き土俵の上に、堪え難き絶望
アオリがこれでもかと絶望感を煽ってきてやがる!おのれーッ!!
そして、嗚呼、無情!特大フォントで締められる。まだ終わってねぇよ!

親方や椿、鯉太郎たちが絶望と驚愕を見せる中、ひとり何?何があったのって感じの虎城親方。
膝のことを知らなかったとはいえ、なんだかのんきな反応に癒される。
それはともかく、膝がゴリっと折れ曲がり、前のめりに崩れそうになる吽形さん。

瞬間・・・躊躇なく・・・その右手は振り上がる。

右手を上げたところで、阿形さんの頭には過去の思い出がフラッシュバックする。
吽形さんと出会い、共に鍛え、そして共に駆け上がった日々。
共に関取となる日を夢見た日々・・・
そんなことを思い出してしまったせいなのか、振り上げた右腕は崩れる吽形さんを支えるために使われてしまっていた。

覚悟は・・・決めていたはずだった・
この一戦への思いか・・・共に歩んだ時間の重さか・・・己の底にある願望か・・・
覚悟とは裏腹に、無意識に出た阿形のその手は・・・吽形の芯を深くエグった

何だ・・・この手は・・・
何でだ!何で・・・ふざけんな!違うだろーが!!

声を荒げながら、外れた足を体重移動で無理矢理折り曲げる。
そして、拳を叩き込むことで、外れた膝をゴリンと嵌め込んだ!!
やるんじゃないかと思ったが、本当にやるとは!!
まあ、吽形さんの膝は外れやすくなっており、その場合自分で嵌め直していたという描写があった。
嵌め方というのを心得ていたということなのかもしれませんな。
でも、関節ははまっても、靭帯は完全に切れちゃってますからねぇ・・・これではさすがに。

殺し合いだろーが!!
そんなもんかよ!?ああ!?
そんなもんは・・・いらねーだろーが!!
テメーは・・・空流の阿形だろーが!
ここは土俵だ!!クソみてーな情は捨てろ!!

怒りを込めた吽形さんの張り手の連打。その威力に、阿形さんの髪が乱れ、血飛沫が舞う。
しかし、吽形さんにはそれ以上を決めるだけの力は残っていない。
嵌めた膝もガクガクと震えている。
もともと、断裂した靭帯を補うために、筋力で支えてきたのだ。
嵌めなおしたところで、すぐに元通りに動けるってわけではないですわな。

そんなんじゃ・・・そんなもんじゃねーだろ俺らは・・・
土俵で情を殺せなー奴に・・・負けるわけにはいかねーよ。

吽形さんの覚悟に涙する鯉太郎。
そして阿形さんも言う。大丈夫だ、と。

もう・・・死んだ・・・

それでいい・・・

阿形さんの反撃の張り手が吽形さんに突き刺さる。
これにて阿吽対決は終了ということになったのでしょうか?なんとも残酷な結末である。

情を殺す。阿形さんは当然そういうつもりで土俵に上がった。
しかし、心の底の想いが溢れてきてしまった。殺しきれなかった証拠である。
だから、吽形さんに殺してもらったということで、もう、死んだという表現になったのでしょうかねぇ。
情を殺すことはできず、殺してもらったという風に見えて、なんだか悲しい。

阿吽の戦いは高度であり、結末は残酷なものであった。
しかし、その前の鯉太郎と白水さんの戦いを前座と呼べるほどであっただろうか?
見方は分かれるでしょうけど、やはり前座呼ばわりは言いすぎだったと言わざるを得ませんかなぁ。
ただ、読者ではなく、観客が一番この日に心に残ったのはこの取組だろうと思われる。
リアルで膝がゴリンとなってしまったのを目の当たりにしたわけだしなぁ・・・そりゃ頭を占めちゃうよ。

この戦いが終わったとして、今後の展開はどうなるのか?
吽形さんの今後の見の振り方はどうなるのか?気になることが一杯である。
いや、もしかしたら戦いはまだ終わっていないのかもしれない。
阿形さんが出した張り手を掴み、膝を顎に叩き込む吽形さん。
そして、体を相手の首の後ろに乗せ、関節を決めながら地面に叩きつける。虎王完了!!なんて展開があるかもしれない。
そして、それを見て、あれは・・・虎城親方の現役時代の決め技!?ってな展開があるかもしれない。ないな。



第135話/愚直  (2012年 13号)


阿形さんの一撃で決着か。
と思わせてカウンターのブチかましを決める吽形さん。これは効いた。

さすがにヒザのことを知らなかった新寺親方や虎城親方も壊れていることに気付く。
気付いたときの虎城親方の表情がなんともいえない。
驚いているような少し嬉しそうなような。

だが、それでもまだ倒れない吽形さん。
確かに膝はもうイッちまってる。はまってはいるが、少しでも捻れば簡単に外れる。
だが曲げた状態で前進する負荷なら・・・まだ筋肉で補える。

前へ!!

さすがにこれまで不安定な膝と付き合ってきただけはある。
どのように動かせば戦えるかもちゃんと承知しているようだ。
しかし、その動きはやっと戦えるぐらいの動きでしかない。
正面からぶちあたるということは、あの阿形さんと力でやりあうことになるのだ。

力勝負で・・・俺が・・・負ける訳にはいかねーだろ。

全く無茶な話である。でも、今はその方法しかない。
だから、笑顔で正面突破を試みる吽形さん。
何度も何度も、お互いの頭をぶつけあう2人。
打ち負け、怯みながらも吽形さんは突っ込んでくる。そして阿形さんもそれに応え頭を突き出す。

同部屋なのに・・・仲間なのに・・・親友なのに・・・
これが土俵に上がった力士・・・空流の・・・俺の・・・兄弟子なんだ。

涙を流し吠える鯉太郎。誇らしげですなぁ。
観客もまた、愚直なまでに命を削る阿吽の取組を見て心を振るわせる。
相撲ってこんななの・・・
まあ、普通ではありませんよね。

高らかに響く頭と頭がぶつかる音。ゴンゴンゴンゴンゴン。
吽形さんが阿形さんの力に押し負けるのは時間の問題か?
と思いきや、徐々に押し負けなくなっているらしい。おや。
当たり方を見ていると、吽形さんの方が低い位置で当てているように見える。
おそらく出足も吽形さんの方が速いのでしょう。その差が回数によって生まれてきたのか?
多少の不利は力で補う阿形さんだが、それにも限界はあるってことですね。

空流親方は語る。
駄目だな俺は・・・土俵での気構えを教えておきながら・・・気を抜くと俺が目を逸らしちまいそうになる。
四股・・・摺り足・・・股割り・・・強くなりたきゃ基本の地金を鍛え上げろ・・・
アイツらは俺を信じ、不満も言わず毎日・・・必死に・・・愚直に稽古を積んできた・・・
あの足でも地金を崩さずに戦っとる・・・
その健気さに・・・どうしても涙が出ちまう・・・

鯉太郎や白水さんと同じく、涙を流しながら見守る空流親方。
そして、虎城親方もまた語る。

終わりを迎えた者の・・・最後の燃焼か・・・フン。
見事だ

虎城親方が認めてくれただと!?
あれだけ嫌っていた空流部屋の力士だというのに、褒め言葉を投げてくれるとは・・・
もちろん誰も聞いていないのだしリップサービスなんかではない。
その生き様に対し、賞賛してくれている。
最後だから、褒めてやってもいいかと思っているのかもしれませんけど。
そういう風に考えると、なんだかんだで竹虎さんの引退後の面倒もちゃんと見てくれてそうな気がしますな。

土俵での命のぶつかり合いもいつしか終わりを迎える。
阿吽の根性もまた互角であったということか。立った状態で2人とも動きを止めてしまう。

よくやった。お前らは・・・俺の・・・誇りだ

吽形さんは阿形さんにもたれかかっているように見える。
だが、阿形さんも意識が飛んでそうだし、もたれかかっているように見える。
まるで人という字が支えあっているということを表現しているかのようではないですか。

しかし、相撲に引き分けはない。
この後どちらかが倒れ、完全な決着を見るはずである。
ううむ、そこまではこの回で描ききって欲しかったですなぁ。

膝がボリっとなってから、これで決着か!と思える展開が2話続いてしまっている。
さすがにこれだと冗長な気がしてしまうのですよね。単行本で読むと気にせず一気に楽しめそうだけど。
しかし、この回は虎城親方のデレがあったので、必要な回だったかなぁと思えてしまうから困る。
虎城親方はこういう面があったりするから憎めないんですよね。
まあ、次の展開が始まったらまた小悪党全開で暴れてくれるんでしょうけど。それはそれでよい。

次回こそは決着でありましょうが、その後の展開が気になりますなぁ。



第136話/燃焼  (2012年 14号)


ぶつかり合う体力は使い切った二人。
しかし、まだ倒れない。フラフラになりながらも、ゆっくりとお互いまわしを取ろうとする。
ゼハッ。ゼエ。ゼエ。ウェッ。ウェ。ゼエ。ゼハッ。ゼエ。
息を荒げる阿吽。ウェウェ言うな。

見ている方にも限界だというのがわかる。
ならば、自分達が応援するしかない。堰を切ったように声をかける鯉太郎と白水さん。
頑張れー!うわぁー!!あー!!
って鯉太郎。吠えてるだけじゃねーか。

弟弟子の声に促されるように、椿も叫びだす。
そしてそれが伝染するように、頑張れ頑張れと声援が国技館中に溢れ出す。
感動一色!といった感じだが、椿の横の谷町のじいさんが呆けているのが気になる。
吽形さんのヒザを見たショックで逝ってしまっているんじゃないだろうな?怖いよ。

溢れかえる歓声が二人を包む。
幕内でもない俺たちにこれだけ声をかけてくれる。吽形さんも満足そうである。

お前の・・・おかげだ・・・お前が・・・相手だったから・・・

そう口にするが、まだ終わりではない。まだだ・・・まだ・・・終われねぇ・・・

まだ・・・俺の奥で・・・小さく燃えてるんだ・・・
このまま燻りつづけて生きるなんてゴメンだからよ。
だからもう二度と・・・火がつかないように・・・
ここで今、お前を倒して燃え尽くす・・・

こい・・・

叫びと共に押し出そうとする阿形さん。
その押し出しを受け、大きく右足を踏み込む吽形さん。
まっすぐ伸ばしてではなく、捻った状態での踏み込みである。当然の如くヒザはゴリンと外れる。
だが、それも全て織り込み済み。
低い体勢になったのを利用して、左足を軸に回転。投げを放つ。

これで・・・全部だ!!!

最後の最後で吽形さんが投げを放つ!
しかし、その投げは阿形さんの力で食い止められてしまうのであった。

止められちまったか・・・もう・・・十分だ。もう・・・
阿形・・・ありがとな

満足気な笑顔を見せる吽形さん。
その吽形さんを思い切り投げ飛ばす阿形さん。
情を殺した以上、生易しく決着なんてわけにはいかない。
だから、渾身の力を込めて投げ飛ばす。なんともはや。

阿吽対決もついに決着がつきました。
ヒザをあらぬ方向に曲げ、横たわる吽形さん。その前にヒザをついて崩れ落ちる阿形さん。
これじゃ、阿形さんが本当に吽形さん殺したみたいじゃないですかー!!

殺し合いだろ、とはいえ本当に殺してしまうのはさすがに問題がありすぎる。
まあ、さすがに死んでいるわけではないでしょうけどね。力を出し尽くして動けないだけかと。

死闘は幕を閉じたわけだが、今後の展開が早速気になるところである。
阿吽の戦いはさすがに決着がつくまでに長引いた気がするが、盛り上がれはしました。
観客が大泣きするのはさすがにやりすぎな気もしましたが、まあ彼らも場の空気に呑まれたのでしょう。たぶん。
なんせ、あの大横綱である虎城さんが見事だと述べてしまう取組である。
その虎城さんのコメントが会場を覆い、感動の空間を作ったとしても、何の不思議もない。
後は弟弟子たちが泣き出して吠えれば簡単に国技館中を感動の渦に巻き込めるってもんよ!

まあ、観客達はともかく。
2人のことを知る空流部屋や、読者たちには、ようやく決着をつけることができたのかって感じでありますな。
吽形さんは今後どのように生きていくのだろうか。
親友が去ることになる阿形さんはどのような活躍を見せてくれるのだろうか。
そして、鯉太郎はどのような成長を見せるのだろうか。注目です。
あ、あと白水さんの髪が伸びるのかも注目してます。川さんも今の白水さんなら髪を伸ばすのを認めてくれるはず!きっと。



第137話/約束  (2012年 15号)


勝者が兄弟子なら敗者も兄弟子。そこは非情なる土俵。
弟弟子たちが涙するなか、静かに勝負ありの声が国技館に響いたのであった。

声もない観客
。 眩しい天井の光を見つめながら、横たわった吽形さんが呟く。終わったな・・・と。
その足は歪な方向に曲げられている。
のだが、なんとなく内股ぎみに見えてしまってちょっと可笑しくも感じてしまうから困る。

その膝が激しく痛む。取組が終わり気が抜けたので痛みを感じるようになったようだ。
そんな状況であるが、吽形さんは言う。最高だった・・・と。

なぁ・・・阿形・・・俺は・・・俺はまだ・・・やれると思うか?

静かに問う吽形さん。その問いに、きっぱりと答える阿形さん。

無理だ
もう辞めろ

前に行った言葉がある。お前の最後は俺が決めてやる。俺の最後はお前が決めろ、という言葉。
それを実行しないといけない。勝負が終わった後でも、約束を守るために厳しい態度を取らねばならない。
厳つい表情で、搾り出すように辞めろという阿形さん。
未練を残させるわけにはいかないわけですし、阿形さんも辛い立場ですなぁ。

吽「そうか・・・無理か・・・」
阿「無理だ」
吽「終わっても・・・いいのか・・・」
阿「終われ」
吽「そうか・・・」
阿「そうだ」
吽「わかった」

言葉によるやりとりを追え、背を向ける阿形さん。気づかれぬように、それでも激しく涙を流す。

取組は終わったが、最後に礼をするのが相撲である。
倒れた状態の吽形さん。鯉太郎がいって起こそうとするが、それを止める白水さん。
そう、今はまだ手を貸されるわけにはいかない。

まだ・・・土俵を下りるまでは、俺は・・・力士だから

再び膝を無理に嵌めて立ち上がる吽形さん。
取組中よりはきれいに嵌めることができたでしょうが、その時よりも痛みは激しいはずである。
だが、それでも意地を張ってみせる吽形さん。この人は本当、最後まで強情な人でありますな・・・
その姿に再び涙を零す鯉太郎。泣きっぱなしの椿。そして走り出す親方。

阿形さんと同様に、吽形さんも昔の言葉を思い出す。阿形さんは言っていた。
お前がいるから俺はここまでこれた、お前もそーだろ、と。俺らは二人で阿吽だ!!と。

そうだな・・・
あとはお前に託す・・・

涙を流し礼を終える吽形さん。阿形さんも確かに受け取ったと頷きを返す。
そして、全てを終えた吽形さんは崩れ落ちるようにして土俵を下りる。
その吽形さんを支えたのは空流親方でありました。

翌日。大海一門空流部屋所属。幕下、吽形亘孝の引退が発表された

阿形さんからの終了宣言も出たことですし、正式な引退も発表された。
吽形さんの相撲はこれで最後と決まったようです。予想はしていたけど、やはり寂しいなぁ。
今後の吽形さんはどうやって生きていくのでしょうか。
ストイックすぎる人でありますし、普通の会社勤めとか出来るのか心配になる。
そして、吽形さんが抜けた後の空流部屋はどうなるのか。
十両になった阿形さんの付き人とかも含めて気になることは色々とある。
今日の取組を見て、空流部屋に入りたがる若者も出てくるかもしれない。新弟子の予感もあるか?
吽形さんの姿を見て入ってくるくらいなら、気合と覚悟が備わった新弟子になりそうだし、期待できる。
はてさてどういった展開になるか。



第138話/何で・・・  (2012年 16号)


親方に支えられ、戻ってきた吽形さん。意識はちゃんとあるようだ。
白水さんが駆け寄り、俺が医務室に連れて行きますという。
だけど、勝者である白水さんはこれから表彰式がある。連れてはいけない。

カッコよかったぞ白水。いい取組だった。

吽形さんの言葉に黙って涙を流す白水さん。
その白水さんに代わり、鯉太郎が吽形さんに肩をかして連れて行こうとする。

惜しかったな鯉太郎・・・潰されはしたが、最後の投げはよかったぞ。
でも今回は白水の・・・兄弟子の意地が勝ったな。

白水さんに続き、鯉太郎の取組も褒める吽形さん。
そして親方にも礼を言う。俺なんて半端者の気持ちを汲んでいただいてありがとうございました、と。

もう・・・思い残すことは何もないです。
今場所をもって・・・引退させていただきます

吽形さんの覚悟はずっと聞かされ、覚悟していた親方。この発言を受け入れる。
だが、つい先ほど知ったばかりの鯉太郎としては納得がいかない。

来場所十両じゃないっスか!!

幕内に入るのがどれほど厳しいことか。鯉太郎は身にしみてわかるようになっている。
尊敬する兄弟子が、ついにその領域に入ろうというのに引退を決めてしまう。納得はいかないでしょうな。
しかし、吽形さん。来場所はどうであれ、今場所で終わりだと決めたのだという。

膝なら治しましょうよ!手術でも何でもして!!
諦めるなんて吽形さんらしくないっスよ!!

諦めなかったからここまでこれたんだよ

吽形さんは静かにそう答える。まあ、それは確かに事実であるな。
一度壊されたのを、諦めずに練り上げ、ここまで持ってきたわけですから。
手術すれば元に戻せるというほど単純な話ではない。
再びメスを入れても、前回以上のパフォーマンスがでるとは・・・
いや・・・何より・・・今日以上の取組を・・・これから取る自信がもうない。

俺にはもう、ここから先は見えてこない。
阿形のおかげで、俺の中に燃やせるモノは何も残ってない。

全てを出し切ったと告げる吽形さん。でも、鯉太郎はそれでも納得がいかない。
俺なんかよりずっと強ーのに・・・まだまだ聞きてーことだらけなのに・・・
何で・・・何で・・・

もう・・・家族が・・・いなくなるのは嫌だ・・・

素直な感情を吐露してみせる鯉太郎。
納得いかないというか、納得したくないんでしょうな。
母が父のもとを去っていったことを思い出す鯉太郎。そしてその父も死んだ。
家族と別れる痛みはこの上なくよく知っているわけですからねぇ。
そんな鯉太郎に吽形さんは言う。

心配すんな・・・繋がりは消えねぇよ。俺らは一生、空流の兄弟弟子だろ。
鯉太郎・・・お前はそのまま曲がるなよ。
俺は不器用なお前が真っ直ぐに伸上がる姿を見てみたい。そして必ず自慢させてくれよ・・・
アイツは俺の弟弟子なんだ・・・ってな

こうして力士たちの思いは受け継がれていくのでしょうかね。
引退した竹虎さんは吽形さんに言葉を残した。
それは果たしきれなかったが、吽形さんは鯉太郎に言葉を残す。次こそは果たせるといいですな・・・

さて、翌日。
二日後の番付編成会議を前に・・・空流部屋から吽形さんの引退届が提出された。
新十両確実。期待の新星の予期せぬ引退。
これは空流親方のW同部屋対決で上がった信用を失墜させるのに十分であった。

それはそうでしょうね。
阿吽という2人組。2人揃っての十両昇進!
角界にも久しぶりに明るそうな話題が飛び込んできたという矢先にこれだもの。
大相撲教会会長、北ノ山光史さんも難しい顔をしている。地顔かも知れんけど。

そして、この日は吽形さんが入院で不在ではあるが、後援会による打ち上げが行われていた。
店には、盛大に祝うための用意がされている。
そりゃ、幕下、序二段の優勝者が出て、さらに新十両が2人も出るなんてなれば祝うのにも気合が入る。
そのお祝い気分に、吽形さんの引退という水を差された。罵声にも似た非難が飛ぶのもしょうがない。
楽しみにしていた後援会会長も顔を真っ赤にしております。ポックリ言っちゃうよ!

何を考えとるんじゃ!!辞めるなら来場所十両になってからでもいいだろうが!!
どの世界に関取になれるのに辞める力士がいる!!

それはそうでしょうな。関取になれたのとなれなかったのでは、今後の肩書きも大違いらしいですし。
十両にあがれば、給金もかなりの額になる。大森海さんが豪遊してたように、結構な収入になるそうな。
1場所でもいいから、上がってほしい。後援会としてはそういう思いもありましょう。
引退するにしても、せめて大銀杏姿が見たいという気持ちがあるんでしょうな。それはわかるわ。

そういった罵声に対し、親方と何故か川さん、ただただ無言で頭を下げ続けるだけであった。
結局止めることもできず、引退という事態を引き起こしてしまった親方。
吽形さん自身の思い、更に阿形さんの思いがあったとはいえ、本来は止めるべき立場である。
それを果たさなかった以上、罵倒されるのは当然だし、本人もそれは重々承知しているのでしょう。
普段ならば、打ち上げはわいわいと楽しく行うものなのであるが、誰もそんな気分にはなれずにいる。
いつもとは違う暗い雰囲気。になるはずが・・・

ビッ・・・ビール足りてますか!?ビッ・・・ビール・・・

目を真っ赤にした、しゃがれ声の鯉太郎がその場の空気を懸命に変えようとしていた。
力士だから・・・だから、後援会の人の前では笑う。
兄弟子にそう教えられたのだ。それを実践しないといけない。
悲しみに浸りながらも、教えを頑張って守ろうとする鯉太郎の姿は健気ですねぇ。

吽形さんに教えてもらったコトだから・・・

そう言われてしまったらしょうがない。
納得いかない部分もあるし、悲しい部分も大いにある。
それでも、残ったものは前に進まねばならないのである。
お星様になった吽形さんの分も祝儀を弾まねばならんのである!ってオイ!勝手に殺すなバカゴリラ!!

こうして、九月場所は歓喜と悲哀の混じる中、幕を下ろしたのであります。
黙ったまま頭を下げ続ける川さん。
川さんは、取組後、医者を連れて疾走したりと、影での活躍が多かったですね。
今回も謝罪を続けることで、後援会への謝意を大いに示しているのでしょう。
次回はCカラーで力士の散り様を見せるというが、どういう展開になるのか。断髪式はするのか?
その散り様によっては、後援会会長も認めてくれるかもしれない。どうなりますかな。



第139話/断髪式  (2012年 17号)


さよなら、吽形
センターカラーで吽形像を背負った姿が描かれる吽形さん。カッコイイですねぇ。
その吽形さんの断髪式が行われる運びとなりました。いよいよ本当にお別れか・・・

九月場所千秋楽から三日後の午前。
協会からの正式な通知で・・・阿形の十両昇進が言い渡された

前回の打ち上げのときも、十両はほぼ決定という言い方でまだ確定ではなかった。
今回の通知でようやく関取になることが確定したわけでよかったよかった。
吽形さんの引退の件もあったし、ひょっとしたらもありえたからなぁ。

ちなみに通常の番付発表は一ヵ月後なのだが、新十両には色々な物の準備があり・・・
来場所に間に合うよう発注しなければいけないために通知が早いのである。

準備するものとは例えば、化粧廻し。シルクの締込。明荷といったものである。
空流部屋の後援会は阿吽像が描かれた化粧廻しを用意してくれるらしい。こいつはありがたい。
これで、少女漫画家が描いたどす恋廻しをつけて土俵にあがらなくてもよくなったわけですな!

そして翌日。吽形の断髪式がとり行われることになった。

全国から空流部屋に人がかけつけてくる。
逗留先から、合宿先から。これもまた吽形さんの人徳によるものですな。
ただ、両親はやってこないらしい。なかば勘当同然でこの世界に入ったからだ。
まあね。いきなり教師を殴って学校を飛び出し相撲界に入りました、では親との関係も悪くなりますわいな。
引退後は両親とも折り合いがつけれたらいいんでしょうけど・・・どうなるやら。

床上手さんは吽形さんの髪を整えている。そう、大銀杏の形にだ。
断髪式のこの日は幕下以下の力士であっても大銀杏を結うことが許されるのである
うーむ、凄い似合ってる!これは凄い!というか貫禄がある。
後援会の人々も、願わくば場所で見たかったと口々に叫ぶ。
さすがに関取の証である大銀杏。吽形さんもいつもより頭が重く感じるらしい。

さて、いよいよとり行われる断髪式。
断髪式で髷に鋏を入れる順番。
一般的には、後援会→お客さん→弟弟子→兄弟子→裏方→肉親→親方の順で行われることが多い。

段々身内に近づくってことなんですかね。
でも、最初が一般客なのは問題があるから、後援会が最初になっているってことなんですかねぇ。

所作としては断髪する力士の背後から一礼をし髷の数本に鋏を入れ・・・
向かい合わない位置に立つため背後から肩に手を置き一声かけるのが通例である。

後援会会長は悔しさに涙する。ケガに気付けず、浮かれていたことを悔やんでいるのだろうか?
お寺の住職も涙し、武川水産のおっちゃんも涙する。
まさしくこれからだというところだったのに。惜しむ人が多いのは当然ですよね。
涙にくれる断髪式会場。
所縁のある人たちばかりですし、ここでの涙は当然ですよね。泣ける。

お客さんの鋏入れが終わり、続いて弟弟子の番。
鯉太郎は緊張する。力士の象徴である髷を切るというコト・・・
それが俺には力士の命を・・・吽形さんの命を奪うような気がして・・・思わず口からその言葉がもれた。

スミマセン・・・

だが、吽形さんは言う。ありがとうな、と。

俺の・・・セリフです・・・本当にありがとうございました

最初に鋏を入れたのが、この上なく尊敬する兄弟子だった。鯉太郎にも辛い経験ですわなぁ。
しかし、こういう式があるからこそ、受け継ぐ気持ちというのが強くなるのかもしれない。
同じように受け継ごうとしている白水さん。
今日は泣かないと決めていたが、どうしても涙があふれ出てしまう様子。仕方が無いですね。
川さんはいつも通りの様子。こういう役柄が求められているならば、それを為すのがエンターテイナーってものだ。
二丁鋏をスタイリッシュに振るうぜ。シュピーン。
椿はあぶなっかしい。ちゃんと見て。耳が落ちちゃうよ!
床上手さんも涙にくれる。アナタのことは本当の息子のように思ってるとのこと。おっかさん・・・ん、ん?

この一連の流れで気付かれたが、阿形さんの姿がない。
どうやら断髪式には姿を現す気はないらしい。
まあ、既に阿形さんには土俵の上で鋏を入れてもらいましたからね。
髷ではなく、力士の魂そのものを切り取ってくれているわけだ。

では最後に、止め鋏を親方が行う。

親方・・・最後まで親孝行ひとつできない・・・ボンクラな弟子でスミマセンでした。

何を言っとる。お前は自慢の弟子だ。
お前が今日までどれほど必死にやってきたか俺が一番知っとる。
ヒザをやっちまってからも弱音一つ吐かず・・・愚痴もこぼさず・・・お前は本当によくここまで戦った。
必死に土俵に上がってきた者だからこそ・・・本気で相撲を取ってきたからこそ・・・見える限界もある。
わかっとったよ。お前が今場所最後の覚悟で土俵に上がっていたことは・・・

俺には・・・たとえ周りにとやかく言われようとも・・・
ただ黙って悔いなく・・・力士としての意地を貫かせてやることしかできなかった。
お前の生き様を・・・親である俺が否定することはできなかった・・・

現役時代の空流親方の姿が描かれている。
片目を包帯で覆った姿の親方。やはり取組で目の光が失われたのでしょうかね。
この親方はなんだか迫力がある様子。若い頃は結構な体格だったのかもしれませんな。
前にも本人がおかみさんに零してたように、自分がそうだったから気持ちがわかりすぎてしまう親方。
死んで生きられるか
これがテーマである以上、生き様を否定するようなことはできなかったのかもしれないですな。
親方の言葉を聞き、吽形さんも語り返す。

俺は空流で・・・親方の弟子で・・・本当によかった。
自分はここで生きることは戦いだと知りました。そして立ち向かって生きる気概を身に付けました。
人間は誰でも大なり小なりそれぞれに何かを抱えて、皆何かと戦っている。
嫌になって逃げたところで・・・逃げた先にも必ず戦いはある。
どうせ戦うのなら俺はこれからも正面から向かっていきます。

たとえうまくいかないコトだらけでも・・・決して引かず・・・前へ・・・
空流の看板を背に・・・立ち向かって生きていきます

吽形さんの宣誓を聞き、親方の止め鋏が入る。
断髪式は終了した。力士として吽形さんは本当に終わりを告げたのである。

お疲れ・・・頑張れよ吽形・・・

親方の激励を受ける吽形さん。
大銀杏から、力士の象徴である髷を落とした吽形さんは静かに語る。
頭・・・軽いな・・・と。

いつかそうなるだろうとは思っていたが、やはり吽形さんの引退は寂しい。
納得できない部分はもちろんある。
元の力は戻せなくても、ケガを治し、その時点での全力で挑めないものかとも思えた。
しかし、吽形さんがそうと決めてしまったのならしょうがないと思える。
ただ、とにかく惜しいと思ってしまうのは止めれませんな。
今後、吽形さんはどのようにして生きて行くのだろうか。
決して引かずに前へ立ち向かって生きて行くと宣言したが、今後の仕事先とかが気になります。



第140話/またな・・・  (2012年 18号)


断髪式を終え、完全に力士ではなくなった吽形さん。
幕下の横にあった己の名札を取り外す。
その裏には本名である吉田の名前があった。なるほどこうなっているのか。
す、すると川口の名札の裏には川さんの本星での名前があったりするのだろうか・・・!?

それはさておき。
吽形さんは立ち去る前に、世話になった部屋を隅々まで見て回る。
そして、稽古場の土俵に向けて一礼。染みる光景ですな。

親方のもとには吽形さんの父親らしき人物が現れている。
岩手県議会議員の吉田務さん。議員さんの息子だったのか吽形さん!
それが高校を飛び出して相撲部屋に入るとは・・・そりゃ勘当も同然になりますわな。
しかし、それでも父親は迎えに来てくれたわけだ。ふむ。

本当似てないわね〜〜(性格が)

床上手さんに言わせれば愛想がない父親ということらしい。
面影は思いっきりあるんだけど、厳しい感じはしますね。

空流親方は吽形さんにマネージャーとして残ってもらうことも考えていた。
確かに技術面の指導など、できることは多いような気がする。
しかし吽形さんは丁重にお断りする。

スミマセン・・・やっぱりここは俺にとって力士として戦う場所なんです
素人になった今、ここにはもういれません。

残念な話であります
。 まあ、せっかく阿形さんに消してもらった相撲の炎をまた燻らせるようなことになりかねませんしね。
では、これから一体どうするのだろうか?後援会長の振ってくれた職も断ったというし。

もう一度高校入って大学を目指そうと思います

ほほう。そういう手段がありましたのか。
実は退学ではなく休学扱いになってたりするんですかね?
まあ、吽形さんの頭なら、やる気さえあればどうにかなるんじゃないかと思います。

長い間・・・本当にお世話になりました。

部屋を去り、父と一緒に地元へ帰ろうとする吽形さん。
その途中で父は言う。結局お前は無駄な時間を過ごしたんだな、と。
吽形さんはこの世界に入るときに啖呵を切っていた。

俺の道は俺が決めるよ!何言われたって俺は力士として生きていくんだ!!

わかっただろ・・・どんなに努力しようがしがみつこうが世の中叶わんことだらけなんだ。
バカな奴ほど一握りの勝者の言葉に己を重ねて勘違いした夢を見る・・・

無駄だったかどうかは・・・これからの俺を見て言ってよ

父の言葉に、ただ静かにそう反論する吽形さん。
力士として生きて行く道は途絶えた。それでもその道を歩んだことが無駄だったかどうか。
それはこれからの吽形さんの行いが示してくれるってことですね。
断髪式のときにも言った通り、空流の看板を背に逃げずに立ち向かってくれることを期待したい。

さて、ホームがにわかに騒がしくなる。
湿っぽいのは嫌だからと黙って出てきた吽形さんであったが、気づかれてしまったようだ。
鯉太郎たちが見送りにやってくる。来るなってほうが無理ですよ!

ダンディーなお父様は先に電車に乗ってもらい、吽形さんとお別れの言葉を交わす。
椿は吽形さんの写真をまとめたアルバムを渡す。たまにはこれを見て思い出して欲しいとのこと。
川さんは何かのチラシを渡す。空中都市マチュピチュ
こ・・・これは・・・!!一体何を意味しているのかさっぱりわからねぇ!?
まさか、川さんの正体に繋がるヒントをさりげなく与えてくれたというのか!?
大学に入った吽形さんは考古学者となり、空中都市の秘密を解き明かすとかそういう布石か!?

見送りに阿形さんの姿はない。照れ臭いんですかね。
そんなことで来れないなんて、全く駄目な男ですよ。こりゃ来場所早々にも十両陥落だな!
と相変わらず憎まれ口を叩く白水さん。
残念ながら別のホームにいた阿形さんにバッチリ聞かれちゃっていました。ハハハ。
ホームを間違えたらしき阿形さんの顔がなんだか可愛いことになっているのはなんなんでしょう。恥ずかしかったのか?

阿形さんは吽形さんにこの浴衣を見せようと思って来たという。
十両になれば自分の四股名入りの浴衣を着ることができる。
乾ききっていないのか、名前から墨が垂れているように見えるが、それもまた迫力だ。似合ってるぞ。

阿形じゃねぇ・・・俺はお前を喰って関取になった。
俺は四股名を変える。お前の名も背負って土俵に上がる。
阿形吽形二体で一対・・・俺はこれから・・・仁王だ!!

におう
に・・・臭う!?
なんで平仮名なんだよ!しかもえらい丸文字だなおい。臭いそうだよ!!

それはそうと、仁王でございますか。改名はあると思ったけど、金剛の方ではなかったんですね。
しばらくは改名後の名前で呼ぶのに戸惑いそうだ。
天雷は割とすぐに慣れたんですけどね。

白水さんの頭を掴んで振り回す阿形さん。
その様子を見て笑う吽形さん。父はそんな吽形さんの姿を見て何を思うのだろうか。

そして、いよいよ電車の時間が来ました。お別れの時です。
空流部屋に来て様々な思い出が出来た。吽形さんの胸には色々な出来事が去来する。

吽形!!
またな!

ああ・・・またな・・・

別れの言葉を告げ乗り込み、静かに崩れ落ちる吽形さん。うーむ切ない!!

吽形さんが将来どのような人物になるのか。期待しておきたいところですが、その前に重大発表。
次号はCカラー大増27P。そして何かが始まる最終回!!
ナ、ナニィ!?
・・・そして、次章開幕の重大発表あり!!とのこと。

どうやら普通に終わるって話ではなく、区切りとして最終回とするみたいですね。
そして新章の開幕でありますか。チャンピオンではよくあるタイトルの変更が来ますかね?

単行本も数十巻になると新規が入りにくいという傾向がある。
なので定期的に改題して入りやすくするという手法があると聞きます。
完結しているのを見ると集めやすいという心理もあるみたいですしね。

改題が来るとしたならばどんなタイトルになるのだろうか?
相撲とわかるようなタイトルになるのだろうか?鯉太郎を中心とした感じのタイトルになるのか?
そもそも新章はすぐに始まるのか。始まるとしたら、数年先の出来事になったりするのか?
色々と気になってしょうがないですな。



最終話/死んで生きれるか  (2012年 19号)


場所が終了し、鯉太郎たちは最後である3回目の教習を受けることになる。
その教習所で異常事態発生。
石川が倒れ、蒼希狼もやられている。何が起きたんだー?
はい、王虎の仕業であります
見開きで鯉太郎の顔面を鷲掴みにしている姿が危なすぎる。

吽形さんが去ってから数日。吽形さんの存在はやはり空流部屋にとって大きく・・・
部屋の中にデカイ穴が空いたようだった。

燃やせるモノは何も残ってない。

その言葉の意味が・・・日に日に俺の中に染みこんでいった。

いつかは慣れるかもしれないけど、今はまだ寂しく思う時期でしょうなぁ。

さて、十両になった阿形さん改め仁王さん。
鎖で封印されていた個人部屋に移れるようになりました。
己の力でとってみろ!と書かれた部屋に乗り込む。フリーダーム!!
しかし、中は一畳ほどの狭ーい部屋でありましたとさ。プッ。

さすがに元からこんな狭い部屋だったとは思えない。物置だったのかもしれないけど。
半分潰して駐車場にしたという話はあったし、そのあおりで狭くなったのですかねぇ。
まあ、頑張って稼いで大きくしてくださいよってことだ。

吽形さんがいなくなった喪失感は消えないまま・・・また相撲漬けの日々が始まる

三期目の教習所。そこには新たに入門してきた新弟子たちが教習所一期目として加わっている。
どいつも新人らしく目を輝かせている可愛いものだ。
そして、鯉太郎はその憧れの視線を向けられる側の存在となっている。成長したものだ。

カッケーなー鮫島さん・・・貫禄あるよな〜・・・
すごかったよなー見たか優勝決定戦?
っつーかA土俵の人達全員まだ負け越しがいねーんだろ?

最初に教習所に来た頃は虫のような腹をしていた鯉太郎。
二期目の前半なんてボロボロにされていたというのに、今では見事な貫禄を見せている。
体もちゃんとできあがってきているように見えますな。腕とか太くなってるし。

天雷もまた憧れの目で見られる。A土俵で一番強いという大物感は健在。
石川も好評価。押し相撲の強引さなら誰にも負けないとのこと。
渡部も鯉太郎に一度勝っているということで評価が上がっている。のはいいが、聞き耳立てるなよ。
蒼希狼や田上さんだって相当な実力者だという評価。
総じていうなら、スゲー世代だよなってことである。

しかしそこにはケガのタメに今回が一期目として教習所に加わった・・・
もう一人の、忘れてはならない鯉太郎と同期のあの男がいたのである。

田上さんと一緒に現れたのは・・・そう、狂える虎、狂虎!いや、王虎!字面は似たようなもんだな。

王虎の強さとヤバさを理解している田上さん。教習所だし落ち着けよと忠告する。
が、どうやら周りがまず放っておかなかったようだ。
石川が絡み、さらに蒼希狼が絡んでくる。蹴りまでいれて、どこまでも挑発的な蒼希狼。
鯉太郎の評判も知っていたし、蒼希狼は王虎が強いという評判も知っていそうだ。だから挑発する。
その結果が・・・あっさり気絶!ビクッ。ビクッ。
あのタフな蒼希狼が土俵に額を打ち付けられて気絶・・・しかも、王虎は片手だと・・・!?

へっ・・・上等じゃねーか。買えよ。次は俺だ!

青い顔しながら強気な発言を行う石川。やるじゃん。
棒立ちの王虎に得意の突っ張りと張りのコンボを叩き込む。
だが、棒立ちでもそれを受けることができるだけの余裕が王虎にはある。

な・・・なんだコイツ・・・まるで手応えが・・・

どういう感じなんでしょうかね。効いている手応えがないとかいう話なんでしょうか?
ただ受けるだけでも怪物という感じが漂ってくるのが王虎である。表情も厄いし。
ある程度受けたところで、反撃。よかったね石川!唇を切らせるぐらいはできたよ!
そして、右手で石川の顔を鷲掴みにし、後頭部を土俵に打ちつける王虎でありました。
酷い。でも、ちょっとラッキーだったかもしれない石川。
王虎の標的は鯉太郎だし、それまでにつまみ出されたりすると困る。
そうじゃなかったら、投げるときにそえてた左腕で、石川の右腕をへし折ってたかもしれない。怖いわぁ。

危ない目つきで鯉太郎を見てくる王虎。
その様子を感じ取り、俺が行くと天雷。竹虎さんが評価した王虎と天雷の戦いがなるか?
と思われたが、これは鯉太郎が売られたケンカである。割り込ませたりはしない。

対峙する二人。
周りはどうするべきかを判断しかねている。
止めるか・・・ヤバイだろ・・・でも・・・でも・・・見たい・・・

前相撲での直接対決以来のぶつかり合い。
まさしく喰らい合いといった感じの見開きが凄まじい。これぞバチバチって感じだ。

そんなやり取りがあった二か月後。
福岡で行われる大相撲十一月場所に元気な姿で出ている鯉太郎。
しかし、その脳裏には教習所での戦いの記憶が残っていた。

王虎との対決は、やはり王虎が圧倒的な強さを見せている。
ぶちかましが決まったのか、鼻血を一筋垂らしている王虎。
しかし、鯉太郎はさらにボコられたのか、王虎の右手で顔面を鷲掴みにされ吊り上げられている。

よーく聞け・・・俺はここから負けなしで番付を上がる。
テメーに俺が味わった屈辱を返すタメにな。
安心しろ・・・こんなトコじゃ殺さねぇよ。
大勢の間の前で大々的に喰い殺してやる!

やはり、そう来ましたか。まあ、王虎自身が大勢の前で恥をかかされましたからなぁ。
でも、いい顔したがりの王虎が大勢の前で本領を発揮できるのだろうか。
この男、危ない本性を全開にした方が強いと思いますの。

土俵の上で俺を殺せるもんなら・・・殺してみろよ

吊り上げられたまま、鯉太郎の左腕が王虎の顔面を掴み、きしませる。さすがに鯉太郎。ただではやられていないか。
こうして、2人の教習所での応酬は水入りで幕を閉じた。
ここから王虎は駆け上がってくるのでしょうねぇ。おぉ、怖い怖い。いつ頃に直接対決になることか。

俺は土俵で生きる・・・吽形さんのように力士として燃え尽きるまで・・・
しっかり見てろよクソオヤジ・・・

親父である火竜に向けて誓う鯉太郎。そして、火竜のあの言葉が思い起こされる。

土俵には俺の全てがあるんだ。わかるか鯉太郎・・・
俺が俺を証明できる唯一無二の場所よ。相撲ってのは生き様だ。それをバチバチにぶつけ合うのが力士よ!

死んで生きれるか!!

鯉太郎の闘いは続く。いつか闘神に至るまで!
ってな感じでバチバチ第一部完結であります!

もちろんまだまだ夢は終わらない。新章は本誌25号より再開!
かつては素人であった少年も立派な体格となり、生き様をバチバチにぶつけ合うようになった。
現在から時は経ち、吽形さんの抜けた空流部屋に新たな新弟子が加わる。
また、付け人を従えて関取となった阿形改め仁王にあの好敵手が!?
そして、関取を狙う鯉太郎の背後には、血眼になって番付を駆け上がる、あの血に餓えた虎の影!!

どのぐらいの時が経過したのかはわかりませんが、鯉太郎の髪はさらに伸び、後ろに垂らすようになっている。
顎の下で結べるようになったら髷の結い時というが、まだそこまではいってないかな?
他の同期がどんな姿になっているかも気になります。
さらに、新弟子の存在も気になる要素だ。どんなキャラが登場するのか・・・!
新章が待ち遠しいぜ!!



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