蒼天紳士チャンピオン作品別感想

バチバチBURST
第1話 〜 第26話


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 バチバチ
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バチバチBURST 1巻


第一話/宿敵  (2012年 25号)


1ヶ月強の期間を経て、バチバチが新章となって帰ってきた。
タイトルも改題。バチバチBURSTとして新たに一話からスタートだ!爆ぜる!!

BURSTというタイトルについては思うところがなくもない。
が、そのうちなれるということで目をつむりましょう。

さて、大相撲巨編の再開が巻頭カラーで描かれますぞ。

直径十五尺(4.55m)の円の中で執り行われる神事・・・
大相撲は他のスポーツとは一線を画した崇高なる神事という一面を持っている。
毎年四月上旬。東京靖国神社では、奉納相撲としてその神事がとり行われていた。

しかし・・・神聖なる土俵に・・・まるで神事とはほど遠い・・・
禍々しいまでに血腥い因縁が生まれていた・・・

満開の桜の下で、2人の力士がすれ違う。
これは間違いなく宿敵である2人の姿でありましょうなぁ。

奉納相撲は桜の花と共に見ることができるようになっているらしい。
桜と相撲。両方眺めることができるとは、なんとも粋なことであるな。
まわし一丁でぶつかり合う!これぞ日本男児!益荒男よ!
そう叫ぶ、武川水産のおっちゃん。タニマチなんてやってるだけあり、こういう場所は外さない感じですかね。

にわかにざわつく観客。
その理由は、これから出てくる男の存在によるもの。別格と呼ばれる男・・・

序の口、序二段、三段目。そのすべてで全勝優勝。いまだに負けなし・・・
序の口からの27連勝という現在の記録も楽に越えちまうだろうと言われとる天才・・・
虎城部屋・・・王虎剣市

かの大横綱・虎城の血を継ぐ男。人を惹きつける華があるよとおっちゃんも絶賛。
体格、風格、実力。どれも兼ね備えているだけに、その意見は納得せざるを得ない。
さっそくその王虎の取組。
正面から王虎に思いきってぶつかる相手力士。しかし、手応えがまるでない。
そう思ったときには投げられていた。
小手投げ。左のわきに相手の右腕をはさみ、関節を決めるようにして投げ捨てる。
メキメキと悲鳴を上げる関節。下手に踏ん張れば、壊されてしまう技だ。

王虎はこの小手投げで連勝中らしい。
技術があれば、片腕だろうと、大きな相手を投げることができる。
観客の中でもそんなことを言っている人がいる。
ってこのバーカとか言っている人、鯉太郎と蒼希狼の取組にもいたような・・・?

それはさておき、王虎は投げ飛ばした相手を助け起こす。これはよいパフォーマンスですね。
清々しい!未来の大横綱!と褒め称える観客。
単に本場所でもないので折らずにおいただけだというのに・・・
武川水産のおっちゃんもこの表面上の姿に騙されている様子。
気は優しくて力もち・・・力士はこうでなくっちゃな!と絶賛している。
そして、三段目ですでに人気があるとも言う。
さすがに連続優勝を果たしたとは言え、人数が多い三段目は一場所で抜けたりはしないのか。

コワイ・・・あの人・・・コワイ・・・

絶賛するおっちゃんの横で、大きな体を震わせている少年がいた。
丸山大吉、17歳。土俵で戦っている力士と比べても遜色ないぐらいの体格の持ち主。
であるが、どうにも気弱そうな感じの子であるな。
王虎の内面の殺気を感じ取って怖がったのかと思ったが、単に相撲そのものを怖がっている感じです。

僕はただのデブなんだ・・・無理だよ叔父さん・・・相撲部屋に入門だなんて・・・

どうやらこれから相撲取りになろうという少年らしい。
なるほど。武川水産のおっちゃんはこのためにやってきていたんですね。
しかし、大吉くん。学校へも行かずに家に篭っていたとな?そりゃ両親も心配になるわ。
果たしてこんな気弱な子が激しい相撲界でやっていけるのでしょうか・・・?
大吉くんのおばあちゃんは、一度思い切ってやってみんしゃいと勧める。駄目ならその時帰ってくればいい、とのこと。
その言葉に泣き出す大吉。僕は厄介払いで相撲部屋に入れられるんだ!と。
そりゃ、引きこもっちゃった息子なんて厄介者以外の何者でもないですわな。

泣き出して逃げ出す大吉。とはいえ、小銭しか持ってないし、すぐに戻ってくるよとおばあちゃん。
いつものことと言ってますが、いつも泣いて逃げて戻ってきてを繰り返しているのか・・・?
これから入門する親方に会わなくちゃいけないというのに・・・これでは先が思いやられる。
入門前にスカすなんざ聞いたこともねぇぞ。

アイツはまず強くならんといかん!イジめられたら倍にして返してやるぐらいにな・・・

どうやら引きこもっていた理由はイジメらしい。
なるほどね。イジメられないよう強くするために相撲を学ばせるってのがおっちゃんの考え方でありましたか。
間違ってはいないかもしれないが、やはり厳しいんじゃないでしょうか?
ニキビすら痛くて潰せないという子である。向いている訳がない。

体が少し人より大きいからって相撲の才能があるなんて・・・痩せの暴論だ!!

泣きながら走る大吉。と、廊下の曲がり角で誰かにぶつかり倒れる。アウチ!
人とぶつかったのだが、大吉はまるで壁にでもぶつかったのかと思ったらしい。
巨体を弾かれた大吉。弾き飛ばしたのは、優しそうな表情の男。
空流部屋の幕下――鮫島鯉太郎だ!!

鯉太郎は片腕で130kgの大吉を助け起こす。涼しい顔をして。さすがであるなぁ。
大吉が一般人であることを知った鯉太郎は言う。いい体格してんな。羨ましいよ・・・と。

羨ましい・・・?僕のことなんかを?
初めて言われたそんなコト・・・・・・
鯉太郎っていうのか・・・嫌みな人だな〜

そんな結論かい。
まあ、イジメられっ子の体格がよくてもなぁって部分は確かにありますわな。余計に引け目に感じる気がする。
とはいえ、勿論鯉太郎は嫌みで言っているわけではない。
今でこそ立派な体格になっているが、太れずに悩んできたのが鯉太郎ですからねぇ。
太れるのも才能の一つである。鯉太郎としてはそういう意味を込めての羨ましいよ、なんでしょう。
でも、大吉も稽古を始めたら急激に痩せたりして。

ところで、鯉太郎を呼ぶこのチョンマゲの人は・・・やはり白水さんなんでしょうな。
やっぱり頭はそのままなのか。まあ、この頭で名を馳せたし、簡単には辞められないか!

さて、仕度部屋。
出番を控えて体を温めている力士がいる。虎城部屋の幕下、田上大さんである。
その田上さんを気持ちワリーとくさす力士は、王虎。本場所でもないのに気合入れてんじゃねーよ。
王虎のセリフに、相手は鮫島だし本場所じゃなくても気合が入る、と田上さん。

キラキラした顔で喋るなバカが・・・だからテメーは駄目なんだ・・・
テメーのやってることは相撲じゃねぇ・・・ただのジャレ合いだ。

ハッキリ言いますね王虎。
しかし、目を閉じて喋られるとうっかり猛虎さんに見えてしまって困る。猛虎さんが暴言吐いてる!?ちゃうねん。
髷を結うと見分けがつき難くなるキャラが何人がいそうなのが問題ですな。
猛虎さんは大銀杏になっているので、そっちで見分けないとなぁ。稽古場では違うけど。

田上さんによると、王虎は連勝中に何人も小手投げで力士を壊しているらしい。
やっぱり犠牲者は複数でてるんだ・・・対戦相手を何だと思ってるんだ・・・?

じゃあお前は・・・地を這う蟻を気にして歩けるのか?

王虎にしてみれば、相手はそのぐらいの存在でしかないってことらしい。キツイねぇ。
暴言を吐く王虎に、周りの力士は面白くないといった表情と意見を述べる。当たり前ですな。
だが、王虎はただの苦労知らずの天才というわけではない。
記録に残らないとはいえ、前相撲で鯉太郎に破れ、その屈辱をしばらく引きずることになった。
いや、立ち直った今でもその屈辱だけは胸に刻まれている様子。

天才なんて都合のいい言葉で語れるほど・・・簡単なモンじゃねぇんだ・・・
うちの関取と地獄の毎日を・・・あいつは過ごしているんだ・・・
すべては鮫島に喫した、たった一度のあの敗戦を・・・拭いさるタメに・・・

猛虎さんとの稽古は熾烈を極めるらしい。これは猛虎さん自身が強くなるためってのも含まれているからなんですな。
ボロボロになって横たわる田上さんを始めとした虎城部屋の力士たち。
その中にあって、同じくボロボロになりながらも立ち向かおうとする王虎の姿。
なるほど。こういうのを見ている田上さんとしては、完全に王虎を否定する気にはなれないわけだ。

まぁ・・・その地獄のような稽古のおかげで・・・オレも幕下に上がれたんだがな・・・・

そういう話でありましたか。
田上さんも鯉太郎に遅れることなく幕下まで昇進できていたというのは僥倖。
そして、奉納相撲という舞台で鯉太郎との戦いでありますか。
田上さんはライバルポジションというわけでもないのに、存在感がありますなぁ。
だからこそ、こういった場面で出番が回されるってわけだ。あ、カマセとか言ったりするんじゃないぞ!!

鮫島・・・とんでもねぇ怪物が育っちまってるぞ・・・

相対する鯉太郎に心で語りかける田上さん。しかし、鯉太郎もまた成長している。
拍手ひとつで観客達を注目させる。その威圧感は観客にも伝わり、実際より大きく見えるという・・・

虎城に王虎なら、空流にはアイツがいる!見ろバァさん!あいつが角界一の悪タレと言われた・・・
あの大関火竜の息子・・・空流の鮫島鯉太郎だ!!

体格や風格、実力では王虎に及んでいないかもしれない。
しかし、それでも宿敵として並ぶだけの格が鯉太郎にはあるって話ですね。
悪タレの火竜の息子ではあるが、土俵での所作などは昔から感心されていた鯉太郎である。
品格のようなものが備わっているということでしょうか。これは王虎には見られない部分ですな。

さて、田上さんとの奉納相撲の開始だ!
相変わらず体格は田上さんの方が上。見ている大吉も、相手のほうが大きいし、勝てないと思っている。
だが、開始のブチかましは鯉太郎が優勢。大きいはずの田上さんが揺らぐ。
そしてすばやくハズ押しを決めるためにワキをとる。
入った!と思ったが、これは田上さんに素早く切られる。
そして、四つに入ろうとまわしを取りにかかる田上さん。
だが、今度は鯉太郎がその腕を交わす。そして、逆に組み付いた!
前ミツをとり、一気に押す鯉太郎。オオッ!!
そうはさせじと足を踏ん張り、押し返し、留まろうとする田上さん。だが、その体重移動は鯉太郎の狙い通り。
繰り出されるのは鯉太郎の得意技。左の下手投げだ!!
巨体が回転し、土俵に叩きつけられる。見事な技である。

完敗を喫した田上さん。悔しそうだが、確実に相撲が上手くなっていると鯉太郎を評価する。

だが鮫島・・・それだけじゃ・・・その程度じゃ・・・
来場所幕下に上がってくる・・・王虎には・・・

親子二代にわたり土俵で生まれた因縁が・・・
来場所・・・若き二人の力士により再び角界を震撼させることとなる

王虎はまだ三段目か、と思ったら来場所はもう幕下になるらしい。
鯉太郎が幕下何枚目かはわからないけど、同じ幕下であるならばぶつかる可能性はある。
お互い途中で負けることがなければいつかはぶつかる。果たしてそれが早いのか遅いのか。その違いでしかない。

前相撲の試合は記録に残らない。
とはいえ、そこでの敗北の記憶を王虎に刻まれている。
ついでに満員の観客の記憶にも刻まれているはずである。これは幕下での対決が盛り上がりそうだ。

そして、気になるのが田上さん以外の同期の存在。
石川や渡部は幕下まできているのだろうか?どんな姿になっているのだろうか。
蒼希狼はどうだろうか。天雷はさすがに上がっているだろうけど、髷を結った姿はどんな感じなのだろうか。
髷といえば、鯉太郎はやはり髪が伸びるのが遅い気がしますね。
顎の下で結べるくらいでないと髷は結えないというが、まだかかりそうな感じである。
そういえば、田上さんはちゃんと髷が結えてよかったですね。剛毛過ぎて結えなかったらどうしようかと。

他にも、白水さんはどうなったのかなとか、川口さんはどうなったのかなとか気になることは多い。
さらっと川口さんも関取になっていたらどうしよう・・・!!
阿形さん改め仁王さんや、猛虎さんも気になるし、気になることが一杯だぁ!!
次回は誰が登場することになるのか、凄く楽しみです。
楽しみすぎて、大吉がどこの部屋に入るかとか考えている余裕がないくらいである。
いや、武川水産のおっちゃんもいるんだし、空流部屋に決まってるんだろうけどね。
間違って虎城部屋に入れられたりしたら間違いなくイジメられてスカすことになるでしょうなぁ。
立派な体格だが、白水さんよりも逃げ出しそうな感じの大吉を迎えたとして、空流はどんな風に迎え入れるのか。
大吉自身はともかく、兄弟子として振舞う鯉太郎の姿というのは見てみたいところでありますな。



第二話/力士  (2012年 26号)


力士として心身ともに成長を遂げた鯉太郎。
その様子をみて、なかなからしい空気を纏うようになったと評するのは新寺親方。
そして、その前に座っていたのは・・・空流親方!
頭を丸めたように見えるが、一度坊主にしたんでしょうか?
親方なりに吽形さんの件に対しての反省を見せようとしたということなんですかね。

空流親方は、鯉太郎の成長もまだまだだと評する。
撒き散らしていたエネルギーを土俵に集中させるコトはできるようになってきているが、まだまだ・・・
新寺親方に、順調に育ってるじゃねーかと言われるが、まだまだ、と答える空流親方。
これは、まだまだこんなモンじゃない、これからこれからって意味が篭っているのでしょうな。
やはり目指すのはあの悪タレ大関、火竜の強さでありましょうか。

目つきの悪い鯉太郎が睨みつけているのは王虎。
その王虎、インタビューに真摯な意見を述べる。自分は天才なんかじゃないです・・・
彼の前じゃ私の連勝なんて何の意味もないです。本当の天才は僕に土を付けた彼の方ですよ・・・
彼を倒さないかぎり・・・僕の何もが始まりはしないんです・・・

謙虚な意見ですね。
土をつけて天才なら、王虎に勝った鯉太郎に勝った白水さんや渡部も天才になるな!やったね!!
まあ、実際のとこ本気でそんなことは思ってはいないだろうけどさ。

さて、鯉太郎に続いての出番はこの男。
今、関取に最も近い男、空流部屋の幕下、白水英樹さんである!!
そうかー白水さん、関取まであと一歩のところに来ているんだ。
ということは、鯉太郎よりも番付は上になっているってことなんでしょうか。
それはさておき、頭はやっぱりそのままなんですね。
そこは変わらず、ナマズのようなヒゲが装備されました。そっちを伸ばすのかよ!!
すっかり頭の方は見慣れたので別のインパクトを持ち込もうとしましたね。
土俵に笑いを持ち込むとは許せん奴だ!とか昔の白水さんに言われちゃいそうだ。

所変わって、取組を終えた田上さんの場面。
鯉太郎に負けた田上さんは虎城親方に酷く罵倒されている。

貴様は何をやってでも勝つという・・・勝利への執念が圧倒的に欠けとるわ!!

俺に恥をかかせおって!と吠える虎城親方。
公衆の面前で酷い怒り方であるが、手玉に取られたのは事実だし、反論のしようも無い。

やめちまえ・・・貴様なぞとうに底が見えとるわ!

これは酷い。
でも、竹虎さんの件の際、この手の言葉は口癖のようなものだという話があった。
竹虎さんにはそういって慰めた田上さんだったが、いざ自分が言われるとそう考えて落ち着くことはできずにいる。
それは自分でも、底が見えてきているということなのかもしれない。切ないな。
幕下まで順調にあがっているのに、虎の名を与えられないのもそこに原因があるんですかねぇ。

虎城親方が荒れているのは、因縁の火竜の息子が相手だったからというのもある。
さらに、因縁の空流の弟子でもあるのだから、鯉太郎に抱く苛立ちはハンパではない。
その上、新弟子のことで最近色々あったという。
なんでも虎城部屋に入る予定だった学生横綱が空流部屋に取られたという。そりゃ機嫌も悪くなるよな。

親方に罵倒され、沈んでいる田上さん。
その様子を見かけた王虎、惨めだなと話しかけてくる。
いっそ本当に辞めちまったらどうだ?と言う王虎の胸倉をつかむ田上さん。
何で・・・テメーにまで・・・そんなこと言われなきゃいけねーんだよ。

ジジイの言うとおり、底が見えてんだよお前は・・・
お前だって本当は感じてるんだろ?ここが限界だってな・・・

だが・・・俺ならまだお前を上に・・・引き上げられるぞ・・・・・・
択ぶのはお前だ。このまま終わるか、一瞬でも華を咲かせるか・・・

た、田上さんが悪の道に誘惑されているーッ!!
これは、耳を貸しちゃいけませんと言うべき所なのだろうか?
いや、でも確かに田上さん自身も限界を感じているのは確かである。
ならば、ここはいっそ悪の道に身を委ね、強くなるのもありなんじゃないだろうか。
ていうか、悪の道といってもどういうことをするというのかはわかったものじゃない。
相撲ですし、いきなりマワシからセンヌキを取り出して相手の額を割ったりはしないでしょうしね。
まあ、虎城親方がいうところの、何をやってでも勝つという執念の部分を鍛えてくれるのでしょう。
田上さんに最も欠けている部分を王虎が補ってくれる。そう考えると悪いことではない気がする。

というか、王虎。胸倉つかまれているというのに落ち着いて話してますね。
これが田上さん以外の人間だったら、どうなっていたことか。
その場は公衆の目があるから無事かもしれないが、後日ボコボコにされていたことでしょう。
そう考えると、田上さんと王虎の仲は結構良好なのではと思える
田上さんは卑屈にもならず、やっかんだりもせず、対等の立場で話してくる相手である。
王虎にとっては滅多にいない貴重な同僚だ。そりゃ思うところも少しはあるんじゃないだろうか。
そう考えるとこの悪の道への誘いは、田上さんについて来てほしい、辞めないでほしいという心の現われ・・・
なんていう風に取ることも出来なくもない。それはそれでいい話な気がする。

さて、場面変わって外をうろつきまわる大吉の方。
前回食べてたちゃんこは、自身の少ない小遣いで買ったものらしい。
このまま武川のオジさんのところに戻れば、相撲部屋に投獄されちゃうと泣き出す大吉。

僕はただ誰にも迷惑かけずひっそりと暮らしたいだけなのに・・・
なんでこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ〜

親に食わせてもらってる引きこもりが言っていいセリフではありませんな。
ひっそり暮らすなら、自給自足が出来るぐらいでないといけませんわ。

そんな大吉がフラフラと歩き、寝ていた誰かの顔を踏んづける。グニャ。こりゃ痛い。
誰を踏んだのかと思ったら・・・空流部屋の十両、仁王 剛平(元・阿形)さんではないですかー!!
何故か盛大にモミアゲを伸ばしている仁王さん
おかげで剃りこみが前以上に目立つことになっている。怖い!
こんな男に睨まれては、そりゃ殺されると思っちゃいますよね。
必死で空流部屋に入門するために騙されて連れてこられたのを説明しようとする大吉。
そんな説明をしちゃ逆効果ですわな。

いきなり兄弟子の顔踏んづけるとは・・・いい根性だなぁ・・・オイ!

まあ、そういう話になりますよね。大吉の運命やいかに!
と煽ってみたが、一発殴られたぐらいで済んでいたようだ。よかったね。

白水さんの取組は豪快な押し出しで勝負あり。
さすがに関取に最も近い男。危なげの無い勝利ですな。
来場所は仁王もほぼ幕内確定とのことだし、ここに学生横綱が加わればますます空流は勢いづくことになる。
その噂の学生横綱は今日この場所に来ているというのだが・・・なんだか空流親方の表情が冴えない
なんだ?学生横綱に思うところでもあるのでしょうか?

幕下の取組も終盤の様子。そろそろ仁王さんも大銀杏結って化粧回しを締めないといけない。
関取はそういった準備が大変なため、普通複数の付け人が存在する。
関取一人に対し平均3〜4人が付き、位が高くなればその数も多くなる
空流部屋は人数が少ないため・・・仁王一人に対して全員が付け人という形になっていた。

大変な話ですな。
これで白水さんまで十両になったら、ほんと人手が足りなくなってしまう。
若い衆をもっと引き入れていかないといけませんなぁ。

で、新弟子として入門する予定の大吉は早くもコキ使われている。
仁王さんは、大吉のことを、入門予定の学生横綱と勘違いしている様子。
親方は、学生横綱の件については弟子達に話していたのですな。そういう勘違いか。
まあ、勘違いとはいえ、早くも面通しが出来たわけで、よかったと言えなくもないですな。

さて、準備が整った仁王さんが土俵に上がる。
化粧回しは独自の物を締めている。これはかっこいい仁王象ですな。
大吉たち新弟子は、前相撲を取った後はこの化粧回しを身につけることができるわけだ。よいな。

神事ということで、十両たちは大勢で土俵にあがり、型を取る。
化粧回しも華々しいし、取組とはまた違った雰囲気がある光景である。さすがの大吉も圧倒されているな。

この世界で関取になるってのはスゲーことなんだ・・・
何百人もの力士が必死になって目指すのが関取だ。それでも辿り着かない者がほとんどなんだ。
俺は土俵に立って初めて納得したよ・・・選ばれた力士には・・・神が宿る

そのような言葉がありましたね。
横綱は神の依り代であるというものでしたか。
神もできれば強靭な肉体に宿りたいってことなんでしょうかね。

神・・・様?・・・って宗教か・・・?

いきなり神様とか言われても一般人にはピンと来ない。当然だな。
あまりそういうことを感極まった様子で言われると宗教扱いされちゃってもしょうがなくなってしまう。
まあ、そのうちそういう考えに大吉も染まるかもしれないですけどね。ならないかもしれないけど。

相変わらずパワフルな相撲で勝利を収める仁王さん。
戻る途中、母親に頼まれて女の子を抱っこする仁王さん。お、貫禄っすね。
でも、よりにもよって仁王さんに抱っこさせるとはどういうことか。そりゃ子供も泣くわ。殺される〜!!

という一幕はともかく。仁王さんの取組を見て、技もへったくれもないと評する男が一人。

やっぱ虎城より空流のほうが・・・オイシーわ

目付きの悪い眼鏡の巨漢。この男は一体何者であるか!?
普通に考えるならば、こいつこそが噂の学生横綱でありましょう。
どこぞの少年漫画雑誌の編集長に似ている気がしないでもないけど、それは気のせいということにしまう。サワー。
かなり生意気そうというか、波乱を起こしそうなこの男。
空流親方が難しい顔をしていたのはこの性格によるものなのでしょうか。
それに、空流の方がオイシイとはどういう意味なのでしょうか。
空流部屋なら自分が一番になれる可能性が高いってことなんでしょうかね?

確かに空流部屋は現在十両が一番上という状態。
学生横綱の場合、大相撲におうて幕下15枚目格の幕下付出の資格を取得できるという。
これは下手すると、現在の鯉太郎よりも上の番付になる可能性があるということだ。
大吉はさておき、やってきた新弟子が自分より上の番付になる。
これはどう扱っていいものやら困る弟子である。たぶん年上でしょうしね。
素人の新弟子に学生横綱の新弟子。これはかなりタイプの違った弟子達である。どうなるのか。
それはそうと、学生横綱が力を発揮して早くも十両昇進したら大変ですよね。
何が大変って、付け人の数がまるで足りないって意味で大変。
空流部屋も増築しないと、十両が大部屋暮らししないといけないハメになってしまう。
今必要なのは、すぐに十両にあがれる学生横綱より、じっくりとした成長の見込める素人なのだよ!
空流親方の表情はそういう意味合いが篭っていたのかもしれない。親方も大変ですな。

十両が大勢になっても川さんならなんとかしてくれる!
場合によっては分身して別々の十両の面倒を見ることだって可能だ!
と言おうとしてみたが、新章になってから川さんの出番が無い。
これはひょっとすると、いなくなっている可能性も考慮したほうがいいかもしれない。
突然医者を目指すと言って出て行ったという可能性もなくはないですしね。
その辺りも含め、旧キャラの現在を知りたいところでありますなー。



第3話/丸山大吉!  (2012年 27号)


東京上野駅から徒歩で約20分。
不忍池を少し行った住宅地の中に・・・空流部屋があります。

朝っぱらからどしんどしんと暴れまわる相撲部屋が住宅地の中にあったりするんですなぁ。
まあ、近隣住民は理解している人ばかりでしょうけど。

そんな空流部屋の前に朝っぱらから立ち尽くす男が1人。
ここまではおじさんが来てくれたようだけど、直前でおっぽり出されたようだ。

あさっぱら ぱんだせおった でぶひとり

住み込みするにしても荷物少ないなと思わなくはない。が、それはいいや。
どうせ荷物あってもあの大部屋には入らないだろうし。
部屋の前でウロウロする大吉。
もはやいっぱしの男になるまではお前の帰る家はないと思えと宣言されてしまっている。

僕にはもう・・・帰れる場所はないんだ・・・

始める前から打ちひしがれている大吉。早いな。
そんな大吉の背中にクランクションが浴びせられる。パフッパフー。
鳴らしたのは誰あろう、空流部屋の三段目、川口義則(仮)さんである!!
ヘルメットにサングラス。カマキリのように高く上げたハンドル。
ブイブイ言わせそうなスタイルであるが、実際は自転車です。速度はハトが止まるほどです。
その集まってきていたハトを空に帰し、空流部屋に戻る川さん。一体何をしていたのだろうか・・・?

不良だ・・・

いや、不良じゃないですよ。最も悟りに近いお人に対してなんてことを。

それはさておき、部屋から出てきたのは一人の女性。椿である。
あんまり椿は前と変わった感じがしませんね。完成された川さんとは違い、もう少しイメチェンしてくるかもと思ったのだが。
出てきた椿と目が合い、挙動不審になる大吉。照れてるとかいう感じじゃなく、ビビッてる感じだな。

ちょっと誰か来て!外に不審者がいる!!

朝っぱらから何だとー!!と椿の叫びを受けて部屋の若いものたちが飛び出してくる。出入りだ出入り!!
白水さんに捕まり、ヘッドロックを極められる大吉でありました。
まあ、鯉太郎は前に見知っているから、すぐに入門希望者だというのがわかりましたけどね。
ただ、鯉太郎はまだ学生横綱だと間違えている様子。
その誤解はすぐに解けることとなりました。

朝6時。
空流親方の前には2人の入門希望者が並んでいる。
一人は大吉。そしてもう一人。メガネをかけた体格のいい男。

はじめまして。今日から空流部屋に入門させていただく、常松洋一と申します。

この常松こそが、学生横綱である。やっぱりそうだったんだ。

へ〜・・・んじゃ、二人も学生横綱が入るのか・・・

なんでやねん鯉太郎。天然か!
大吉は勘違いされているだけで、一度も自分から学生横綱と名乗ってはいないというのに。
だけど、オタオタと言い訳されると逆にイラつきますね。イラッ。

彼は武川さんから預かった丸山大吉君だ。まあ煮るなり焼くなり好きにしろって言われてるから好きにしろ!

親戚と親方からお墨付きがでてしまいました。こりゃ大吉、大ピンチだ!!
そんな風に言われちゃうものだから、いきなり泣き出してしまう大吉。うーむ、こりゃスカすな。間違いない。

大吉の方は置いておいて、常松に質問。
元々は虎城部屋に入る予定だったのに、それを蹴って空流部屋に入ったという。なんでまた?

感動したんです。W同部屋対決に・・・アレを見てしまっては他に行く気にはなれませんでした。
今だって緊張してるんですよ・・・僕にとって白水さんも鮫島さんも憧れのヒーローですから。

これはまた、口が上手いというかなんというか。
前回、怪しいセリフを吐いているのを見てなければうっかり騙されてしまうかもしれないところである。
実際、白水さんはすっかり騙されちゃいそうな表情になっている。キラキラするな!!

さすが学生横綱を張った男、よき眼力をもっとるわいと褒める白水さん。
だが、すぐに空流の看板を背負わせるわけにはいかない。
まずは空流の伝統行事"勝ち押し負け押し"稽古をやってもらう。

勝ち押し負け押しってのは、1人ずつが鯉太郎たち既存のメンバーと何番か続けて取ってもらう稽古である。
それで空流の看板を背負っていけるかどうか見せてもらう。鯉太郎も通った第一関門だ。
ちなみに川さんが背負っているネコは数に入りませんのであしからず。

関取は・・・仁王関はいないんですか?

常松の質問に、オメーらごとき関取が相手にするワケねーだろと返す白水さん。これはよろしくない。
おかげで常松の本性らしきものがちらりと顔を出しそうになっている。危ういなぁ。
実際、仁王さんはどこに行ったのだろうか?相手はともかく、顔見せに参加ぐらいはしてもよいだろうに。

入門志願者は増えたけど、毎回これで逃げちまう・・・
空流は盆中なんてしねーからな・・・覚悟しろよ。

盆中とは、気をきかせること。また、気分よく勝たせてあげることを言う。なるほどね。
しかし、空流部屋。人手は足りないままなのかなと思ったら、志願者を追い返していたのか。
稽古についてこれるやつだけ取りたいという気持ちはわからなくもないですけどねぇ。
ただでさえ十両が誕生し、人手が欲しいという時だと言うのに。

ともかく、稽古の始まりである。
常松がまわしをつけている間に、大吉は上半身裸になって準備運動をするよう言われる。

無理無理無理無理。僕、相撲なんてやったことないですから〜〜!!

ぶるぶると肉を震わせて拒絶する大吉。
さすがに素人にいきなりは無理なのはわかってる。受ける鯉太郎は何もしないよと言う。
お前は頭から突っ込んで思いっきりただ押せばいい。
な〜〜に、土俵はコンクリートじゃねえんだ。死にはしねぇよ。とのこと。

素人と力士じゃあ、体格の差なんて関係なくどんだけ押しても動かねぇ。
そんだけでも十分ビビる。白水さんの考えていることはそういうことである。
でも、常松が川さんを押し切れないと言う想像図はどんなもんだろうか。
大吉だったら押し切れずに耐えれるのだろうか?川さんは想像がしにくいから困る。

コンクリートじゃないと言われても、踏み固められた土俵は十分硬い。
投げられたりして頭から落ちたらグシャッと行きかねん。そりゃ怖い。
でも、相手は何もしないと言ってるんだし、思い切っていきなさいよ。
と思ったが、どうも何もしないという言葉を信じていない様子である。おのれ。

恐ろしい目に合いすぎて帰りたいと考える大吉。しかし、もはや帰る家はないと宣言されている。
そういえば、武川のおじさんは言っていた。バァさんだって本当はお前が心配なんだぞ、と。
バアちゃんも言っていた。一度思い切ってやってみんしゃい、と。
ダメならそん時帰ってくればいい・・・と。

そんな言葉が大吉の脳裏に思い起こされる。そして――鯉太郎をも驚愕させる出来事が発生した

こ・・・こいつ・・・
気絶(いっ)てる・・・

肉体をその場に置き去りにして心だけがスカす
そんな離れ技を丸山大吉君は初日にして見せつけたのであった。

流れ的に、ここは一念発起してブチカマシ、潜在能力を見せるという展開!
と思いきや、まさかの立ち気絶という離れ技!!
この流れはさすがに予想できなかった。やろう・・・オレの予想を覆しやがった!!

アハハハ。仕方ないですよ。鮫島さんのオーラはすごいですもん・・・
でもコイツはダメですね・・・どう見ても向いてない・・・
僕には遠慮しないで全力できてください。
プロってのがどれほどのモノなのか体感したいんです。

じゃあ・・・始めましょうか・・・

まわしをつけた常松登場。
130kgはあるという大吉の体を片手で吊り下げるその筋肉。す、すげぇ身体してやがる・・・
特に右肩のコブのようなものがすごい。あれはぶちかまし続けて出来上がったコブなのか?
傷も目立つように数がついているし、なかなかの迫力を見せてくれる。

それはそうと、常松。メガネは外さないのか?それはさすがに危険すぎるでしょ?
ぶつかられても危険だが、ぶつかっても危険すぎる。さすがにやる直前に外すとは思うが・・・
あと、鯉太郎のオーラがすごいという件について。
確かに本番でのオーラはすごいけど、気を抜いているときの鯉太郎はむしろ可愛い方だったりするのだぜ。
気を入れたときと抜いたときの振り幅の差が鮫島鯉太郎の特徴だ。なめるなよ!!

まあ、ともかく。新入り2人は共にキャラが立っている感じがします。
常松がどのように暴れるのか。それとも暴れる前に食い止められるのか。
楽しみな展開になってきましたな。



第4話/常松洋一!  (2012年 28号)


伝統もいいですが、どうせならそんな根性試しみたいな稽古じゃなくて・・・ガチで一番取ってもらえませんか?

いきなり強気な発言を行う常松。
さすがに学生横綱。その自負は十分にあるって感じでしょうかね。
白水さん、鯉太郎にプロの厳しさを教えてやれ!と言い出す。これは受けて立つって話か。

話が纏まったので、メガネを外し、臨戦態勢に入る常松。
持ち上げてた大吉はゴロゴロと隅に転がしておく。よく転がりおるわ。

常松「ハハ・・・楽しみだな・・・手は抜かないでくださいね」
鯉太郎「心配すんな。俺はそんなに器用じゃねぇ・・・

まあ、そうかもしれませんね。生き方からして不器用な男ですから、鯉太郎は。

というわけで、学生横綱・常松とのガチ勝負を行うことになりました。
常松の右肩には傷だらけのコブがある。
あのコブを見るに、立ち合いは右からのカチ上げかと推察する鯉太郎。

まあ・・・学生横綱だろーが、受けて立たねーとな・・・

元より、誰が相手だろうが正面から突っ込むのが鯉太郎の相撲でしょうからねぇ。
なので、今回もブチカマシを敢行する鯉太郎。
それに合わせるように、下から右肩でカチあげを行おうとする常松。
ゴン!と派手な音を立てて衝突!!
鯉太郎の状態が反れ常松の右腕が跳ね上げられる。

マジか!?鯉太郎のブチカマシを止めやがった!!?

驚愕する白水さん。だが、土俵上の鯉太郎は冷静な感じ。今更初弾が止められるなんてのは慣れっこって感じか。
すばやく追撃のブチカマシを行う鯉太郎。この追撃の早さも特徴である。
バランスを崩したところに、胴体へブチカマシを決められて思わず土俵を割ってしまう常松でありました。

ガチの一番、これを制したのは鯉太郎。やはりプロとしての経験の差がでたのか?
あんまり常松には必死な様子が見受けられなかったし、本気だったとは限りませんけど。
だが、それでも、強さの片鱗は垣間見せた常松。
白水さんも、これが学生横綱かと内心ビビル。椿も使えるわ!と思わずガッツポーズ。お嬢・・・
立ち合った2人は、お互いを凄いと褒め称える。
常松はともかく、鯉太郎は本心で言っているんだろうなというのが伺える。いい子ですな、相変わらず。

まぁ・・・ある程度の強さは不思議じゃねーさ・・・
常松は来場所からいきなり幕下・・・つまり、白水・鯉太郎と同じ番付なんだ。

そうですね。学生横綱には幕下付出の資格がある。プロの経験はないが、番付としては互角なのだ。
しかし、この親方の「ある程度」という言葉に内心反応してしまう常松。
思ったよりも評価されていないことが気に入らないって感じですね。ふーむ。

ならば、次は俺とだ!と白水さん登場。白水さんもごっつくなったなぁ。
だが、今日はもうやめておきますと言い出す常松
やはり自分はまだ本調子じゃないですし・・・じっくり馴らしていきたいので・・・

そんな言い訳が通用するのだろうか?試験というわけではないが、稽古の一環なのに。やめておきますはなかろう。

参ったな・・・僕の力はある程度わかったはずですよ。これ以上やった所でただのイビリじゃないですか・・・
今の僕をガイにした所で白水さんの貫目を落とすだけですよ。
大丈夫ですよ。自分はプロをナメてませんし、スカしもしませんから・・・

なんとも常松、口のうまいヤツである。こう言われると白水さんも強くは出にくい。
ある程度、という言葉の辺りには親方の言葉に対してのトゲがあるように思えなくはないですけどね。
だが逆に、説得力を増す要因にもなっているわけだ。

ここでちょっとした回想。常松が空流に入りたいと申し出てきたときのこと。
虎城部屋に入門するとは一度も言っておらず、一方的に目を掛けてもらっていただけと常松は言う。
既に虎城親方には空流に入るとキッパリ告げ、渋々とだが了承を得ているらしい。
何でウチなのかと問う親方に対し、W優勝決定戦を見て、と説明する常松。

本当に・・・それだけか?

親方の鋭い問い。その問いに対し、見えないような角度で笑みを浮かべる常松。なんだこの笑みは・・・?

空流に入れなかったら相撲は辞めるつもりです!!
お願いします!親方に損をさせるコトは絶対にありません!!

ゴンと音がするほどの勢いで土下座を行い、頼み込む常松。
そこまで言われちゃ仕方あるまい。
だけど、そこまで言い出すなんて、怪しいと思うなって方が無理と言える。
一体どういう目的で空流に入ったんでしょうかねぇ。
空流の方がオイシーわ、とは一体どういう意味なのだろうか。気になる。

さて、白水さんとの一番は結局流れることになりました。ヤル気がねーなら仕方ねーだろ、とのこと。

(そうね・・・ついに手に入れた即戦力だし・・・これ以上やってスカされでもしたら大変だわ・・・)

お嬢がなんだか悪い顔をしている!!
いや、別に悪いことを企んでいるわけではないが。部屋の娘ってのも大変であるなぁ。

だけど、もう一つの伝統でもある・・・丸坊主にはしてもらうからな!!

そういえば、鯉太郎も丸坊主になってましたな。
まあ、鯉太郎の場合、染めてたってこともあるし、坊主にした方が手っ取り早いって話もあったわけで。
常松も、新人は坊主だなんて時代錯誤もいいとこですよと嫌がる。

困るでしょ・・・関取になった時、ザンバラならまだしも・・・伸びかけの坊主じゃ格好つかないじゃないですか・・・

なんとも自信満々なセリフですな。
まあ、確かに幕下付出という資格持ちだし、十両まではあと少しという位置の人間である。
髪が伸びきるまえに昇進ってのも十分ありえる話だ。
しかし、そう思ってるならもっと髪を伸ばしておけよといいたくはなるな。

ともかく、簡単に十両になっちまうような言い草に、白水さんブチギレ。
なんだかんだで結局プロをナメてんじゃねーかって話ですわな。
一触即発な雰囲気。だが、そこに割り込んできたのは鯉太郎。

この世界じゃテメーより強ー奴なんて山ほどいるんだよ。
そんな人間が必死になっても届かねー場所なんだよ。十両ってのは・・・
生意気な口は俺を倒してから利け・・・相撲取りナメんなよ!

ハッキリといってのける鯉太郎。立派になったものである。
いっぱしの兄弟子っぽいじゃねーかと親方も満足そうな様子。
なんだかずっと不機嫌そうだった親方だが、ここで妙案が思いついたかのような表情になる。

鯉太郎・・・オマエがそいつら二人の面倒見てやれ
お前のやり方でいい・・・色々と教えてやれ!

鯉太郎がこの二人の指導係!?
大吉はまだしも、年上で同じ番付で野心家な後輩という常松の指導は難しそうであるな・・・
いや、大吉は大吉で面倒くさそうですけどね。どうやって自信をつけさせればいいのやら。
とりあえず、気絶しているうちに丸坊主にはしておきましょう。伝統です。
川さん、相変わらず寝てる相手の頭を剃るのが得意ですな!!

こうして空流部屋に二人の新弟子が加わったのである。
しかし後にこの二人が空流に・・・鯉太郎に・・・暗雲をもたらすことになるとは・・・

また不吉なナレーションが入りましたな。怖い怖い。
しかし、このナレーション。中途半端なところで終わっていますな。これは解釈の余地がある。
暗雲をもたらすことになるとは・・・みんな思ってたが結局なりませんでした・・・と続くとか。
暗雲をもたらすかどうかはともかく、面倒なことになるのは簡単に予想できますしねぇ。

しばらくは空流の新弟子の話で回るのでしょうか?
大吉の稽古の様子とか、色々とネタはあるでしょうしね。
一番気になるのが大部屋の様子。大吉は泣きながら従うだろうけど、常松はどうでるのか。
ここで住まずに、近くに部屋を借りて通うようにしますとか言い出したりして。
この人数で一部屋に詰め込まれるより、一人でも少ない方が皆にとってもいいでしょ、とか言って。
ありえる気がして怖いな。
あと、仁王さんは結局あの一畳個室で暮らしているのだろうか。その辺りも気になるところであるな!



第5話/年齢  (2012年 29号)


空流部屋に住み込みをすることとなった大吉。というわけで、持ち物チェック。
ゲーム機にソフト。パソコンに、トレカ、着替えと携帯に。んで・・・何だソレは・・・

何って!?え〜〜知らないんですか!?
「マジカル少女マホ」じゃないですか!?
びっくりしたな〜びっくりさせるな〜
これは劇場公開記念で作られた限定10体の超激レア1/1フィギュアに決まってるじゃないですか〜!!?

知らねーよ。知ってたとしても何だソレと言っちゃうわ。
大吉め。シャツの胸が怪しいなとは前々回から思ってはいたが、やはりそうだったのか。
荷物少ないなと思ったら、とんでもないのを持ち込んでやがったもんだぜ。

もはや異邦人とアオリを受ける大吉。
こいつ、学校にも行かない引きこもりのくせに、こんなフィギュアをどうやって買ったというのだろうか。
親の金で通販でこんなの買ってたという話なら・・・そりゃあ、相撲部屋送りでも仕方ないですわな。
本人も捨てられたんだとか言ってたが、そうされるだけの行為をしてた自覚はあったんだな・・・

なんにせよ、ただでさえ狭いのにそんなモン置けるかよって話ですよ。四畳半に5人だぞ。

・・・ハァ?知りませんよ、そんなコト・・・

これはイラッとくるな。
でも髪型が坊主になっているせいか、前回ほどはムカつかない。不思議。

フィギュアもそうだが、そもそも相撲にカンケーないものを持ち込んではいけない。
ゲームも携帯も空流部屋では禁止である

え―――!?何ですかソレ!?昭和じゃないんですから!!

時代錯誤な気は確かにするが、仁王さんがキメたことである。
そういうのは関取になって一人部屋をもらってからだ、と。

一人部屋もないんですか!?納得できませんよ!!プライバシーはどうなるんですか!?
そもそも何も無しでどうやって生きてけばいいんですかー!!?

相撲取って生きるんだろーが・・・
相撲部屋に入るってのはそういうことですわな。
相撲取って食って寝る。生活の全てが相撲取って生きるということとなる。
うーん、元々ストイックな鯉太郎はともかく、やはり現代の若者には受け入れがたい環境であるな。
学生横綱としてやってきた常松はこの環境をどう考えるのだろうか。
さすがに学生時代はこういう環境でやってきたわけじゃないだろうし。

何しに来たんだ・・・お前は・・・

マホのフィギュアを軽く突いて破壊し、述べる常松。全くですな。
常松としては、空流の決まりごとについてどうこう言う気はないらしい。
まあ、大吉と同じレベルで語るのは嫌だという気持ちがあるのかもしれませんな。

しかし、限定10体のフィギュアは一体いくらぐらいの価値があるのだろうか。
常松も挑発的な意味を込めて優しく押したが、まさか壁にぶつかって壊れるとは思ってなかったのかもしれない。
いや、ひょっとしたら首はアタッチメントで着脱式になっており、壊れてはいないのかも!?
まあ、どうでもいいことでありますが。

何てコトをと怒りを見せる大吉。だけど、常松に睨まれただけで怒りを引っ込める。
怒りに任せて突っかかるだけの情熱はないか。甘いな大吉も。
それはそれとして、同期なんだし仲良くしろよと仲介に入る鯉太郎。

ダメですよ鮫島さん。こういうアホにはガツンとカマしてやらねーと・・・
自分は大学で主将をやってたんでわかるんです。甘やかすと付け上がるだけですよ・・・
それに同期といってもコイツはまだ17のガキでしょ・・・自分22ですよ。仲良くは無理がある。

俺も17だ。この世界、年は関係ねーんだよ

そうですね。先に入っているか、番付が上か。それらが重要な世界である。
実際のとこ、空流の力士は全員常松より若い
年上の弟弟子相手にどういう態度をとるかと思ったが、すっかり力士としての考え方が身に付いているようですな鯉太郎。
そういえば、川さんも常松より年下なんだろうか?
地球の人間に換算すると若いのかもしれない。または設定年齢19歳とかそういう話なのかもしれない。

ゴタゴタはさておき、就寝。
明日は4時半起床で掃除。6時から稽古というスケジュールになります。
四畳半に大きな男が5人丸まって眠っている。やっぱり狭いなぁ・・・白水さん脚痛めそうな寝方だ。
そして、仁王さんも首だけ大部屋に入り込んでいる
どうやら、例の一畳だけの一人部屋の壁を破って大部屋に繋いだらしい。
なるほど。私物の本などは棚に仕舞い、寝るスペースだけは確保したわけか・・・!!
関取になれば、体を伸ばして寝るぐらいのことはできるようになるわけだな。いやいや。
早い所お金を溜めて増改築しないといけませんね。プレハブでも建てるか?

朝6時。予定通り早朝稽古が行われる。オラッ!オウッ!デェイ!!
全身を砂だらけにする鯉太郎と白水さん。その横で、妙な声で悶えている大吉。
何をしているのかと思ったら腕立てをしようとしているらしい。1回もできないのかよ。
体格に見合った太い腕してるっていうのになぁ・・・その分自重がありすぎて厳しいのか。

俺が何とかするよ・・・新弟子任せられてるのは俺だから・・・

頑張って教育しようと考える鯉太郎。健気でありますな。

まぁお前が新弟子の頃に比べたら大したことねーか・・・兄弟子の苦労を思い知るがいい・・・

鯉太郎は鯉太郎で別の意味で手のかかる弟弟子でしたからねぇ。
やる気が無いのもありすぎるのもどちらも大変である。
まあ、鯉太郎は基本的に素直な子なので最初の時と、ときおり荒れる以外は大丈夫だったのではないかと。
大吉も手がかかるのは最初だけだといいなぁ。

常松も土俵外で四股踏みなどで汗を流している。
しかし、取組は避ける模様。首を痛めたみたいと言っているが、本当かな?

というところで、仁王さん登場。関取になったということで、白いマワシをしております。
仁王さんに稽古を受け、さらに全身砂まみれとなっていく鯉太郎。何度も転がされてるんだろうな。
そして、その稽古の様子を見てなんだか悪い顔をする常松。なんだ?

朝10時。朝の稽古終了。風呂の時間。汗を流してさっぱりしましょう。
ただ、下っ端は関取の背中を流す決まりとなっています。これも大事な稽古だ、とのこと。
強くなる稽古というよりは、精神性を磨く稽古ってとこですかねぇ。相撲部屋は厳しい。

というわけで、風呂場。ポーズを決めた仁王さんの体を洗う。っていちいちポーズを取るな!こっち見んな!!

テキトーに洗うと殴られると聞いたのでデッキブラシで洗おうとして殴られる大吉。そりゃ殴られるわ。
というか、いつまでマワシをしているんだお前は。
教育係である鯉太郎も責任とって殴られている。おやおや。

入浴後は食事。
これも関取が終わってから食べることになる。
って何でこの2人、後ろで待機しているのでしょうか?配膳でもしてるのか?
白水さんたちがいないのだが、何をしているのだろうか。川さんは行方不明がデフォルトかもしれんが。
最初の頃は、食事の前にマワシを洗って干すなどの作業があった。
白水さんはそっちをやっているのだろうか?
関取が食べ終わるまでただ待機しているのなら、そっちを手伝った方がよいのではなかろうか。

今の生活が嫌なら強くなるしかない。番付上がれば世界も変わる。ここはそういう世界だ。
鯉太郎はそういうが、じゃ僕なんて無理じゃないですか、と大吉。僕の肉は飾りの肉なんですよ〜〜

うるせーぞ!!いちいちブータレやがって!!!
文句があるなら仕事の一つもまともにこなしてからにしろ!それに才能がねーだ!?あぁ!?

その体で生まれて、才能ねーなんてほざくんじゃねーよ

普段は大人しそうな表情の鯉太郎だけど、やはり怒ると怖いっすね。
それでも殴りかかったりせず説教に留める辺り成長が伺える。
そして、才能について。
大吉は痩せの暴論というが、鯉太郎にとっては正直羨ましい才能ですからねぇ。
食えば太るだろ、とか言われたら逆に太れる人間の暴論だと思ったことでありましょう。この仕事で太りにくいのも辛い。

まあ、何にせよ仁王さんが食べ終わったら死ぬほど食わせてくれるはず。
食って寝ることも力士の大事な仕事でありますから。

な〜〜〜に〜〜〜!!?食って寝る仕事!?
確かに今言った!そんな夢みたいな・・・そんな夢みたいな仕事だなんて・・・

におうぜき!!
僕も早く仕事がしたいので・・・とっとと食べ終わってください!

シュピっと敬礼して言ってのける大吉。なんてヤローだ。
まあ、確かに食って寝るのも仕事のうちであるが・・・
「食って寝るのも仕事」と「食って寝るのが仕事」一文字違うだけで大違いになりますね。
後者だったらまさしく夢のような仕事である。そんな仕事ありえねーよ。

大吉がゴタゴタぬかす展開は予想通り。
しかし、ここで予想外の動きを取る男がいた。常松である。どうやら誰かと連絡を取っている様子。

あぁ・・・予想通り大したことないよ。心配するな。約束は守る
もう待てねーな・・・仕掛けていくか

どうやら常松、単独の考えで空流部屋に入ったわけではない様子。
一体誰と連絡を取っているのだろうか?そして、約束とは一体なんであろうか?
大したことないというのは仁王さんに向かっていっているのか?
そして仕掛けるとはどういうことなのか。かなり考えさせられる展開である。

他のスポーツであれば、空流部屋でゴタゴタを発生させ、逃げるように移籍って手が考えられる。
しかし、相撲部屋の移籍は基本的にないとのこと。となると、部屋そのものを傷つけるマネはできない。
いや、移籍できないと言っても、まだ1日泊まり稽古をしたこの段階なら可能なのでは・・・?そこはよくわからない。

そういえば、空流は携帯禁止じゃなかったっけ?
ひょっとしたら誰もスマホの存在を知らなかったので見逃されたのかもしれない。ありうる話だ。

何にしても、早々と常松の実力と策謀が明らかにされそうである。
裏で動かずに、土俵上で仕掛けるような流れになってほしいところであるが、果たして?



第6話/怖さ  (2012年 30号)


巻頭カラー!見開きで描かれる龍虎の2人。

凶虎咆哮
昇鯉睥睨

2人の幕下本場所の戦いも近く行われそうで、楽しみですが怖いものもありますなぁ。

マスコミが虎城部屋の稽古風景を取材している。
相変わらず猛虎さんの稽古は激しい。気の抜けている他の虎城部屋の関取とは激しさが違うってわけですな。

虎城部屋はここ最近、十両が二人続けて廃業したらしい。へぇ。
だが、猛虎関が幕内に上がり、王虎も快進撃ときている。
いや・・・王虎のは快進撃どころの話ではない。
その強さは幕下以下では飛びぬけている。勝って当たり前といえるぐらいなのだ。
現に稽古相手が務まっているのは幕内の猛虎関だけってのがいい証拠だ。

やはり蛙の子は蛙ってことだな

ことわざだから仕方ないけど、虎が蛙呼ばわりされてしまっているのもどうなんでしょうか。
さらに言うなら、竜――火竜の子である鯉太郎も蛙の子呼ばわりされている。
記者たちの間でも、王虎と鯉太郎の対決は期待したいところらしい。
前相撲で国技館を埋めた2人である。
幕下で闘いとなったら、またあの異様な熱が再燃するかもしれない。そりゃあ期待は高まるってものさね。

さて、猛稽古をしている王虎。それとは違い、新弟子の指導に忙しい鯉太郎。
まあ、教えることによって逆に学べる点ってのもありますしね。これも稽古の一環である。
一抱えもある丸い石の玉。これを抱えるようにして持つ。
すると自然に脇がしまり腰が落ちる。そのまま股を割ってスリ足をする。そういう稽古だ。
やってみろと渡された大吉。そのまま倒れこんで動けなくなる。バタバタ。

何するんですか〜僕は漬物じゃないんですから〜〜!!

肉の漬物ってのは聞いたことがないからなぁ。塩漬けにはするかもしれないけど。
てなことはどうでもよく、いちいち泣き出すなよ。面倒くさい。

涙はストレスを緩和するタメに体が行う生理現象なんですよ!
わかりますか?僕がどれだけ肉体的に苦痛を強いられているか!!

知らんがな。というか、我慢しなさいな。本当、甘えが抜けきらない子でありますよ。
それはそれとして、涙はストレスを緩和する生理現象というのは納得できる言葉かもしれない。
蒼希狼が泣きまくっていたのもそういうことなんですね。
一緒にされたら蒼希狼が怒り出しそうだな。バカ〜〜

てなこと考えてたら、大吉が常松にはたかれていた。パン!
その一撃だけでなく、往復でパンパンと張り、おまけに腹に蹴りを入れる。
おいおい。張るのはともかく、蹴りはまずいだろ。相撲取り的に。
慌てて止めに入る鯉太郎。そうか、常松のことはツネと呼ぶのか。

イラつくんだよお前は・・・口だけは一端に回りやがって・・・消えろよ。

多少やり過ぎな気はするが、こういった甘えた相手には少しばかりの厳しさは必要である。
先輩ではなく、同期が厳しいところを見せるというのもいいことかもしれませんな。
萎縮させつつも、兄弟子への反感は少なくできるでしょうから。
とはいえ、さすがに兄弟子になったばかりの鯉太郎にそこまでの考えを持てとは言えない。
教育を任されているのはオレなんだからと常松を抑えようとする。

いいんですか?鮫島さん。こんな無能に時間を割いていて・・・
心配なんですよ。来場所・・・あの王虎と同じ番付でしょ?
自分は虎城部屋で彼を見ていたのでわかるんですよ。今のままじゃ鮫島さんは王虎には・・・

負ける、といいたいわけか。まあそう思うのも無理はないですわな。
ならば試してみますかという流れになり、土俵で鯉太郎と常松が相対する形となった。

さて、その勝負の間にメディアから取材を受けている王虎。
相変わらずメディアの前ではいい子ちゃんでありますね。
殊勝な様子を見せ、さらに内心では絶対許さない相手である空流と鯉太郎を持ち上げる。

強いですよ彼は・・・勝利のタメならなんでもするという怖さがある・・・

それはむしろ王虎に言えそうな言葉でありますな。
こやつこそ、勝利のためになんでもしてきそうな怖さがある男であるからして。

それにもう一つ・・・今の空流には彼がいますし・・・

王虎のいう彼。それは学生横綱・・・常松洋一のことである。
常松は今年一番の逸材と言われていたらしい。
虎城部屋に入るものと誰もが思っていたのだが、何故か空流に入った。
記者だけではなく、王虎も意外そうにしている。ふむ。

常松さんは・・・彼が中学の頃から度々部屋に出稽古に来てましたし・・・僕も兄のように慕っていたんです
彼ほどの人がなぜそんな不義理を・・・いまだに理解できない・・・
尊敬してましたから・・・彼の相撲を真似るほどにね

あの王虎が人のスタイルを真似るだと!?
その言葉が示すとおり、常松は人を壊す相撲をとることができている。
鯉太郎との再びの勝負。
最初のときとは違い、右肩をかちあげるのではなく、横合いから振り下ろすようにぶつけてくる。
そうしてブチカマシの威力は殺した。だが、すぐに左手で常松の前ミツをとり、下手投げの態勢に入る鯉太郎。
が、それこそが常松の仕掛けであった。
鯉太郎の左手に絡みつく常松の右腕。これは・・・小手投げの構えだ!!
王虎が得意とし、何人も壊してきた必殺の技である。

下手を取りやすいように立ち合いを工夫してみたら、やっぱり取りにきましたね・・・
ちょっと見てたら下手を取った瞬間に脇が空くんですよね〜〜

どうやら完全に誘いに乗ってしまったということらしい。
これが学生横綱の実力ということなのか・・・眼力もハンパではないようだ。

完全に投げずに止める常松。これ以上やったら腕を壊し、ヤマに行くことになる。
だが、そう言われて引く鯉太郎でもない。意地っ張りですからなぁ。さすが空流といえなくもない。
ならばと力を篭める常松。

おい!!!

さすがに見ているわけにはいかず乱入する白水さん。川さんもしっかり止めに入っております。
ヤマ行かせ気かテメー!と吠える白水さん。その白水さんに対し、意外そうな様子を見せる常松。

へぇ・・・意外なコト言うんですね・・・同部屋同士で潰し合いをした人とは思えないな・・・
ハハハ・・・悪い意味で言ったんじゃないですよ。本当に感動したんですから、あの無情さに・・・
吽形さんでしたっけ?仁王関の踏み台になった・・・

言葉を続ける常松。
さすがにこれは聞き逃せない。鯉太郎が殴りかかり、喋るのを辞めさせる。

やっぱりガキだな・・・

まあ、なんだかんだで鯉太郎はまだ17歳ですからねぇ。ガキ呼ばわりされても仕方がない。
尊敬する兄弟子を愚弄されたのだから、手も出るってものなんでしょう。
でも土俵の上で拳で殴るってのはいかがなものかと。稽古場ならノーカンなのか?

鯉太郎はこの困った弟弟子をしっかり教育してみせると言う。
責任感はさすがに人一倍ある男である。しかし、これはさすがに難しいんじゃないだろうかねぇ。

常松は結局誰と連絡を取っていたのだろうか。
そして、空流に何をもたらそうとしているのだろうか。
王虎と似たようなスタイルであるし、上手く稽古に付き合ってくれたら鯉太郎にとってはありがたい存在になる。
のだが、常松の目的がわからないと、お願いしていいものかもわからない。うーむ。

弟弟子が空流に、鯉太郎に暗雲をもたらすという予告もある。嫌な予感がバリバリしますなぁ。
常松が大吉を稽古場の壁に叩きつけたら部屋がドリフのコントのように崩壊するとか。
そしてあいにくの曇り空だったので、空流に、鯉太郎の頭上に暗雲が立ち込めちゃいましたとか。
そのぐらいのオチで済んでくれると助かるんですけどねぇ。
まあ、これはこれで財政難の空流部屋には本当の意味で暗雲立ち込める結果になりそうだけど。



第7話/意識  (2012年 31号)


大吉と常松。2人は新弟子検査を受けに行っている。
187cm、139kg。丸山大吉、文句なしの合格であります
大吉は体重もだが、身長も結構なものなのですね。
力士になるのがよほど嬉しいのか、号泣している。今の時代珍しい奴だと記者からは好感触。でも実際は――

終わった・・・何もかも・・・どうしてこんなコトに・・・
これで今日からただのデブからプロのデブになってしまったんだ・・・

デブはデブとて大違い。ついに向こう側のデブとなった大吉でありました。何だよ向こう側のデブって。
というか、同じデブならプロのデブの方がいいじゃない。言い訳にしやすいですしね。

186cm、118kg。常松洋一合格

凶兆、入門す。と、でかくアオリが入りました。
この新弟子検査を持って、正式に空流の力士として入門したとされるわけですね。
しかし、身長と体格の割には体重軽い気がしますね。もう少しありそうな気もするが・・・

検査を終え、戻ろうとするところを記者に囲まれる常松。
さすがに学生横綱。中学の頃からプロから引く手あまただったというだけはある。

記者はまず当然の疑問を投げかける。
王虎とも浅からぬ繋がりがあったのに、何で虎城部屋ではなく、空流部屋を選んだのか。

王虎さんの・・・あの才能とは競技者としてぶつかってみたかったんです
同部屋じゃそう簡単には本場所での取組はないですからね。

なるほど。そういう理由で来ましたか。それは記事にもしやすくていい理由ですね。
しかし、王虎は常松のことを兄のように慕っていたという。本当に彼を敵として見れるのかい?と記者。

だから空流に入ったんです。情を打ち消すために・・・
空流には上に上がるためには仲間だろうが喰い殺す非情さがあると思ってましたから・・・

また、キツイことを述べる奴だな、常松。
確かに空流部屋はこの間の同部屋対決で一人潰している。
実際のところ、潰さなくてももう限界だったわけではあろうが、最終的に潰したのは確かですからねぇ。
王虎も、鮫島は何をしてくるかわからない怖さがあると言っていた。その言葉もあり、信憑性がさらに増す。

ええ・・・本当に怖い部屋ですよ・・・僕はもしかしたら部屋を間違えたのかもしれませんね

どう見ても、そんなこと考えてないだろって感じですな。
しかし、常松も王虎も持ち上げるようで空流部屋を叩いているように思えてならない。油断のならない奴等だ。

2人が新弟子検査に行っているころ、鯉太郎は食事の買出しに行っていた。
しかし、高いところのネギを買ってきたということで椿に怒られている。
さらに、部屋にやってきたマコ姉にも怒られてみたり。謝りな!ペシッ。
久しぶりのマコ姉だが、この全身図。やけに足が長いというか、小顔というか。可愛いんですけどね。

そんな風に玄関でやりとりをしているところ、プロのデブとなった大吉がとぼとぼと歩いて帰ってくる。
大吉の新弟子検査は合格ラインの75kgを64kgもオーバーしてクリア。
あんなに運動してるのに9kgも太ったとか言っている。太る素質があるんだろうけど・・・太り安すぎだ!!
その75kgのラインで鯉太郎が苦しんできたというのに・・・

それはさておき。大吉とは初顔合わせのマコ姉。腹に一発決めてのスキンシップ。
キレイな人に殴られて、思わず赤面する大吉。おやおや。

マコ姉は今年から大学生。どうやらこっちの大学に入ったらしく、上京してきているらしい。
ちょくちょくチャンコ作りにも来ているという話。
ほほう。これは今後の出番が増えると期待していいってことなんでしょうね。よかったよかった。

チッ・・・鯉太郎さんの手付きか・・・

まあ、僕は2次元にしか興味がないんで、と惜しがりながらも強がる大吉。
って、そうかーマコ姉はもう鯉太郎の手付きだったのかー。
口に出して言ってたらブン殴られてたのは間違いないだろうな。

大吉は帰ってきたが、常松は帰ってきていない。直ぐに帰ってこいと言ったのに、どこ行ったのやら。

その話題の常松。人と会っていました。相手は・・・王虎である。

王虎「よう・・・無事空流に入れたみたいだな――常松・・・」
常松「常松・・・?さんはどーした・・・ずいぶんと偉くなったじゃねーか剣市」
王虎「そう言うなよ。この世界じゃ俺が兄弟子なんだ。お前こそもう少し丁寧な言葉を使ったらどうだ」

なんだか似たもの同士ですな、こいつら。メディアに対しての外面がいい点も共通している。
それでいてキレやすそうなのも共通であるか。
王虎が感化されたのは相撲のスタイルだけでなく、性格面もだったりして。

王虎に鮫島について尋ねられた常松。親父が有名ってだけのどこにでもいる普通のガキだよと答える。

お前の言っていた通り・・・伸し上がるための土台としては最高にオイシーよ

それが登場時に言っていたオイシーの意味だったんですかね。
名のある力士である鯉太郎を踏み台にしようという話か。
でも、同部屋の力士をどうやって踏み台にするのだろうか。その辺りはよくわからない。
予定通り完璧にコトを進めてみせると言っているが、何を企んでいるのか・・・

さて、常松が王虎と会っている頃。
空流部屋では新弟子合格を祝うために部屋の皆が待機していた。
が、いつまでたっても帰ってこないので仁王さんがキレております。
しっかりしつけろと鯉太郎を殴り、マコ姉に怒られる仁王さん。相変わらず仲のいい2人ですね。

そうこうしているうちに、ようやく常松が帰ってきた様子。
ここはビシッと怒らなければいけない。勢いよく立ち上がり、説教に出る鯉太郎。何してやがったんだテメー!!

常松曰く。大学時代の仲間から入門祝いをしてもらってつい。
連絡したかったんですが、携帯がなかったので、とのこと。
って、本当はあるんですけどね。スマホはやはり携帯扱いされず没収されていなかったのか。
というか、まあ、それ以前に連絡をとる気もなかったんでしょうけどね、常松の場合。

全身に怒りを滲ませている鯉太郎。
それに対し、笑顔で特に悪びれた様子も見せない常松。これは殴らにゃ仕方ない。
というわけで手を出そうとしたが、押さえ込まれてしまう鯉太郎。

もういいですよ。ソレ系は・・・
ソレ系は土俵でやりましょうよ。僕も今日から正式に空流になりましたし・・・
ただはっきりと先に言っときますよ・・・俺はここに仲良しこよしするタメに入門したんじゃないですから・・・
そういうぬるいことは無駄ですから、俺抜きでやってくださいよ。
どんなに兄弟子ぶろうが・・・あなたたちと俺とじゃ根本的に相撲に対する意識が違う・・・

常松の言う、意識の違い。それは一体何かというと・・・

金・・・

カネ?マネーということでよいのでしょうか?
ふうむ、確かにこれは意識が違うといっていいのかもしれない。
プロらしいといえばプロらしい考え方ではあるが、少年漫画的にはどうなのかなって話ですな。
逆にいうと、空流部屋は金銭に無頓着なのが多い印象。
椿は消費する分は節約したいが、稼ぐ分にはそこまで関心がないように見えますしね。

ここから常松の目的について明かされる流れになるのでしょうか。金を溜めてどうするのか、とか。
山と積み上げた札束を前にし、俺はこの金で角界を手に入れる!とか言い出すのでしょうか。デッカイ夢っすね。

しかし鯉太郎も大変であるなぁ。兄弟子の経験がほとんどないのに、いきなりこんな相手を任されてさ。
大吉だったらまあ、苦労しながらもそれなりに育てれたんじゃないかと思う。
が、常松は基本的に言うことを聞く気はないし、慣習に従う気はない様子。
聞かずにすませるだけの実力があるからってこともあるが、教育する方は大変である。
17歳の少年にいきなり任せるには荷が重いですわな。仁王さんも、もっと口出ししていいんですよ?
というか、親方がある程度間に入ってくれないといけない気がするんですがねぇ。
そういえば、今、親方はどうしても会わなければいけない人がいるといって出かけているらしい。
それは一体誰なのだろうか?その人物によって、今の事態の解決に繋がるのかもしれない。繋がらないかもしれない。
なんとか穏便に収まって欲しいものである。



第8話/ナメるな  (2012年 32号)


前回の常松の金・・・発言についてどういう反応が返されるのか。
それは一旦スルーすることとなりました。あらら。とにかく、確執が生まれたという話ですね。
そんな風に常松との確執がハッキリしたわけですが、もう一人の弟弟子もやはり面倒くさい。

大吉ー!!どこ行きやがった!!

どうやら朝っぱらから大吉が姿をくらましているらしい。
椿曰く、いつものショートスカシでしょ、とのこと。
相撲部屋から黙って逃げ出すのをスカシというが、そのショート版。
稽古だけ逃げて昼飯には戻ってくる行為のことである。ナメんな。
白水さんからも、完全にナメられてんじゃねーのか?と言われる鯉太郎。悔しそうでありますね。

というわけで、スカした大吉は置いておき、残った面々で稽古。
さすがに常松も常時カマボコでいるってわけではない様子。今回は土にまみれている。

がっぷり四つに組んだ状態で互角の勝負を行う鯉太郎と常松。
仁王さんは、昨日今日入門した奴くらいサクッと片付けねーかと激を飛ばすが、難しいことをおっしゃる。
白水さんも思う。常松は実際強い、俺だって気を抜けばやられちまうんだ、と。
学生横綱がなぜ幕下付出なのか納得も行くぜ、とのこと。

あっさり上に行くと言われたときはキレかけた白水さんだが、常松の強さは認めざるを得ない様子。
しかし、このセリフはなかなか面白い。俺だって、と来ましたか。
さすがに今十両に一番近い男である。確実に自分は鯉太郎より強いと考えている男のセリフですな!

もう一番だ!こい!と常松に要求する鯉太郎。
しかし常松。そういうガキみたいな意地で稽古するのやめましょうよとか言ってくる。

さむいんですよね。兄弟子の面子の必死な押し付けが・・・
そんなことしなくても、ちゃんと兄弟子として見てあげますから・・・

これはまたムカつくセリフでありますね。
新弟子検査を受けてからは、露骨に慇懃無礼な態度を取るようになってきた様子。これは鯉太郎もストレス溜まるわぁ。

どうせ何番も取るのであれば自分よりレベルの高い人間とやりたい・・・
仁王関・・・逃げてないでそろそろ自分に稽古付けていただけませんか?

チョーシにのった常松の挑発。
だが、仁王さんはそれを無視し、鯉太郎にしっかりやらねーかと説教する。
こんな木端相手にナメられんじゃねーよって話だ。
自分が木端かどうか、一番取ってから言ってもらえませんか?という常松に対しては――

顔じゃねーよ。図に乗るな

睨みつけてそう返す。その迫力ゆえか、常松の顔にもヒヤリとした汗が流れております。
うーむ、なんだかんだで仁王さん。十両に上がった人間としての強さがあるということなんですかね。
番付としてはそんなに差がないけど、その強さには差がある雰囲気。
正直、常松の強さは今のところよくわからない。
今回は鯉太郎と組み合った状態で互角だった。
白水さんが言うには、気を抜かなければ負けない相手ぐらいとのことだった。
そう考えると、そこまで圧倒的に強いという感じは受けない。
けど、本当の力は仁王さんと戦うために隠している気がしないでもない。うーむ、判断しづらい奴だ。

朝の稽古が終わったぐらいの時間で大吉が帰ってくる。
というわけで、玄関で説教でございます。テメー部屋を何だと思ってんだ!!いや、全く。

昼時になると決まって帰って来やがって!飯食うだけの場所じゃねーんだぞ!!

いやはや全くでありますな。白水さんの、猫か・・・というツッコミがバッチリはまっている。
とはいえ、こんな可愛さのない愛玩動物を飼うつもりはさすがに空流部屋にはありませんしね。
飯食うだけにしたいなら、せめて愛嬌のひとつも身に付けてみせろや!!

何なんだよお前は・・・教えた仕事はできねー、稽古もヤル気がねー。
文句タレてはすぐスカす・・・ナメてんのかよ俺を・・・!

あの〜〜〜・・・チャンコはまだですか?歩いてたらお腹空いちゃって・・・

ガシャン!!

玄関のガラス戸を破って大吉のデカイ体が外に吹き飛ばされる。
さすがに大吉のこの態度はない。鯉太郎も我慢の限界が来たって感じでありますね。

消えろ・・・殺すぞ。

怒りを携え述べる鯉太郎。怯えきった大吉。前転からのダッシュで逃げさっていく。
ってこいつ、時折いい動き見せるんですよね。
この必死な動きが相撲にいかすことができれば、ひょっとしたらもありえるのに。
立会いと共に前転して勢いをつけてのブチカマシとか。うん、その時点で負けてますよね。分かってた。

そんな空流部屋の様子を、写真に収める男たちの姿がいた。
どうやらスクープでもないかと張っていた記者連中らしい。
鯉太郎の怒声は外にまで響いていただろうし、注目を集めていても不思議はないですわな。

大吉が逃げ去った後、鯉太郎は一人悔しさに身を震わせるのであった。うーむ、切ない。

鯉太郎がクソナマイキな弟弟子やヘタレな弟弟子に苦しんでいる。
白水さんとしても、そろそろこの状況をどうにかするべきじゃないかと考え、仁王さんに相談している。
が、仁王さん。親父が鯉に任せたんだからと手を貸すつもりはない様子。
うーん。少しぐらいは手伝ってくれてもいいんじゃないですかね?
大吉はともかく、常松は正直難しい要素が盛りだくさん過ぎて鯉太郎1人では難しすぎますよ。
ねぇ、仁王さん。別冊少年チャンピオン読んでないでさ、仁王さん。フルットいいですよね仁王さん。宣伝お疲れです!

さて、鯉太郎は空流親方に新人教育について相談をしている。
さすがの鯉太郎も、自分の手には余ると思ったらしい。
任されたことだし、必死になって頼れる兄弟子になり、指導したいと考えていた。けど上手く行かない。
もうどうしていいかわからないといった様子。
俺には兄弟子みたいな威厳も貫禄も足りてないですし、とのこと。
まあ、正直そういう問題じゃない気はしますけどね。今回の弟弟子がどっちも問題児すぎる。

何より・・・土俵にだけ集中したいんです。今のままじゃ気が散りすぎて焦りしか生まれなくて・・・
来場所はあの王虎と同じ番付だっていうのに・・・

それは気がかりでしょうなぁ。
常松は確執さえなければ、稽古の相手としては申し分ない。
王虎のスタイルと似ているということもあり、対王虎の練習台とすることもできる。
ので、そういう意味で直近の問題は大吉ですな。
毎回説教食らわすような精神状態は厳しい。せっかく体作ってるのにストレスで痩せてしまうかもしれない。
ストレスで太るタイプと痩せるタイプの2種類がいるというが、鯉太郎は間違いなく痩せるタイプである。
逆に大吉は太るタイプとみた。く、相撲取りとしてはやはり大吉は恵まれた体してやがんなぁ!!

その大吉。鯉太郎に殴られ、ブツブツいいながらベンチに座っている。
そこに、写真を撮ったとおぼしき記者たちが話を伺いに来る。これは、マズイ予感・・・

夜。消えろと言われた大吉は部屋に帰るわけにもいかず、ベンチに佇んでいる。
鯉太郎は親方に言われたことを振り返っていた。

まぁそう肩肘張るな・・・お前だって最初から打ち解けてたわけじゃないだろ・・・
全身刃物みてーなお前を仁王や吽形、白水や川口がどう接してきた?
兄弟子ってことを無理矢理力だけで納得させようとしたか・・・?
よ―――く考えてみろ・・・お前にとって空流の人間は何だ・・・?
受け止めてやれ・・・ダメなトコも含めて・・・
そうすりゃ自然と兄弟子として受け入れてもらえるさ・・・

ふむ。いいアドバイスでありますね。
確かに。入門時の鯉太郎は色々と問題を起こすヤツであった。
それを受け入れ、育ててくれたのが今の兄弟子たちである。
力で押さえていた部分もないわけではないが、それだけではなかったのも間違いない。
まあ、そういった兄弟子の良さを感じることができたのは、鯉太郎の素直さに掛かっている部分もあるんですけどね。
片方だけ立派でも上手く行かないって話もあるのが難しいところ。
とりあえず、あんまり肩肘張るなという親方のアドバイスを受けるとこから始めてみるといいんじゃないかな。

朝。
ベンチに座ったまま眠っていた大吉が目を覚ます。
お腹は減ったが、お金はないし食べ物もない。そして消えろと言われたが帰る場所もない。泣くしかない。うう・・・

乗れ・・・帰るぞ大吉

そんな風に泣いている大吉の後ろに、自転車に乗った鯉太郎が現れる。
あら、なんだかいいシーンじゃありませんか。
どうやら一晩中自転車をこいで大吉を探していたらしい。
けど、当の大吉は鯉太郎がそうやって探してきてくれたというのには気づいていない様子。うーむ、まあいいか。

なんというか、ケンカして家出した弟を連れ戻す兄貴みたいですね。うん、そのまんまだ。
もう怒ってないから帰ってこいよって話ですよ。これは。
だからといって、謝罪もせずに今日のチャンコ何ですかね?とか聞かれても困る。うるせーよ。

大吉「あの・・・もうブン殴ったりしませんよね・・・?」
鯉太郎「殴る!
大吉「えぇ!?」
鯉太郎「スカすならスカせ・・・必ず連れ戻す!そして殴る!
大吉「えぇ!?」
鯉太郎「とことん付き合ってやるよ・・・家族だからな・・・

よい話ですねぇ。
鯉太郎もいい兄弟子になるための一歩を踏み出したって感じでしょうか。
こうやって確執があって争って、そして和解するのを繰り返して絆が生まれるわけですかね。
雨降って地固まるってやつですね。
と言いたかったのに、最後のコマ。鯉太郎が大吉を吹っ飛ばした場面の記事が載せられている。
さらに、大吉のコメントが載っているというオマケつきだ。あーこれは危ない。特に大吉のコメントが危ない。
なんせ大吉である。やられたことを大袈裟に話したことは疑いようもない。
「もう本当恐ろしくて、殺されるかと思いましたよ。毎日毎日怒鳴られて死にそうでした〜〜」
ぐらいのコメントは言ってそうである。
ちょっと脚色したら空流部屋では凄まじいかわいがりが行われているように聴こえる。
とはいえ、相撲部屋ではよくありそうな話なんだし、そこまで問題になるかな?
むしろ鯉太郎が過敏に恐縮しちゃったりしないかが気になるところである。はてさて。

それにしても、力士2人乗せてよく無事ですなこの自転車。特に後輪のタイヤとかヤバそうだ。
まあ、パンクしたら歩いて帰るだけでしょうけどね。いい運動になりそうだ。
あと、大吉が座っていたベンチは白水さんがスカしたときによく座っていたベンチなんでしょうか?
見晴らしがいいので、皆ここに来るとかそういうことなんでしょうか。
鯉太郎も事前に白水さんに聞いていれば、すぐに場所を特定できたでしょうにね。
まあ、一晩明けたくらいが双方気持ちも切り替わっててよかったって話かもしれませんけども。



バチバチBURST 2巻


第9話/僕だから  (2012年 33号)


雨降って地固まらず。まだまだぬかるみがあった様子であります。
大吉への折檻を写真に撮られていた鯉太郎。
それだけならまだしも、弟弟子である大吉のコメントが記事になっている。
目線で隠してもバレバレである。大吉も白水さんも特徴ありすぎ!

何なのよアンタ!?いつこんな取材受けたワケ!?ねぇ!?本当にこんなありもしないコトまで言ったの!?

あることないこと書かれているらしい。
どのぐらいありえないことが書かれているのか興味ありますな。
まあ、針小棒大に煽り立てるのがこの手の記事のやり方でしょうし、大吉のコメントだけで出来てるとは考えにく。
とはいえ、記者に愚痴を述べたのは事実。
でもさすがに椿の言うように売ったというわけではない。報酬とかもらえてないですしね。
だからといって、僕は何も悪くないんです〜はないだろう、大吉よ。

オメーのことはどーでもいいんだよ!まずは鯉太郎の気持ちを考えてみろよ!!

これまでは割と大吉には温厚な感じであった白水さんもさすがにキレていらっしゃる。
まあ、これで窮地に立たされているのは他ならぬ鯉太郎ですしねぇ。そりゃ怒るさ。

鯉太郎は次に何か問題を起こしたら終わりと言われている。
実際に朝一で親方が呼び出されているというのが現状だ。うーむ、怖い。

毎日血を吐くほど稽古して・・・苦しいのに無理矢理食べて・・・必死に体つくって・・・
そばにいてわからなかったの!?アイツにとって相撲がどれほどのモノか・・・

椿のセリフを受けても、大吉の態度は大きく変わったりはしない。
やっぱり僕には無理だったんです。合うはずがなかったんです。もう辞めさせてくださいと主張する。
うーむ。鯉太郎に対して悪いとかいう話ではなく、あくまでも自己弁論に徹している感じがある。
これはさすがに椿も呆れてしまいますわな。

お嬢・・・もういいよ・・・
鯉太郎に詫びだけは入れていけ・・・じゃねーと俺がお前をブチ殺すぞ

ピリピリした空流部屋。
その親方は呼び出しを受けて理事長の前に立っている。スーツ似合わないなぁ、親方。

やってくれたな〜空流よ・・・忘れたのか?火竜の息子はもう一度暴力沙汰を起こせばどうなるのか・・・
理事長・・・鮫島は前科がありますからな・・・厳しく処罰するべきですぞ。

てな風に理事長を煽るのは虎城親方。嬉しそうですねぇ。
果たしてどのような処分が下されることやら。

大吉が引きこもりになったのは、周りの人間に虐められていたから。
いや、虐められていたというより、周りの人間に馴染むことができなかったのが原因な感じがある。
本人も外の世界に僕の居場所なんてないと考えていた様子。だからといってこの部屋はどうよ。
そんな大吉に対し、家族だからなと言って帰る手を引いてくれたのが鯉太郎である。
ふむ。大吉もその瞬間は気づけなかったが、今にして思えば・・・って感じがあるようですな。

稽古で汗を流し、処分を待つ鯉太郎
。 マコ姉はそんな鯉太郎を心配して今日もやってきている。
殴ったのは本当だし、最悪クビになるかもしれない。そんなことを口にする鯉太郎。

何でアンタだけ・・・仁王さんだってアンタのことボコスカ殴ってるじゃない
それに大吉君もあんまりよ。何で兄弟子を貶めるようなマネするのよ。

マコ姉が不満を述べるのはわかる。
しかし、『仁王さん』とさん付けしていることに違和感をかんじてしまってそれどころではない。心境の変化!?
というのはさておき。鯉太郎はマコ姉の不満を押し留める。

いや・・・悪いのは俺だよ。大吉は悪くねぇ・・・
もう・・・やめたんだ。誰かを恨んで生きるのは・・・

前回の最初の頃の怒りまくっていた顔からは一転、すっきりとした顔を見せる鯉太郎。
決心した男の顔はこうも爽やかになるものか。

白水さんは鯉太郎の身の上を大吉に聞かせる。
鯉太郎の親父は暴力沙汰起こして角界から追放された元大関である。
親父が追放されてからは散々な目にあってきたらしい。
歩けば罵詈雑言を浴びせられ、周りに大勢いた人間も手の平を返したように冷たくなった。
信頼していた母親でさえ消えてしまったという。

鯉太郎が空流に来た時は世の中すべて拒絶したような・・・ひっで〜〜ツラでな・・・
だけど少しずつ・・・少しずつ変わっていったんだ。わかるかお前に・・・?
鯉太郎の味わってきた屈辱と悔しさと・・・そして孤独がよー・・・
わかるかお前に?アイツにとって空流がどれほど大切なモンで・・・空流の人間に裏切られたアイツの気持ちが・・・

白水さんの言葉に涙を流す大吉。
この涙はいつもの涙とは性質が違う。自分の心を守るためだけに流していた涙ではない。
相手を、鯉太郎のことを思っての涙が含まれているように見受けられる。ほう、これは・・・

大吉がそんな涙を流していたのを見ていたわけではないだろうが、理事長は甘めの処分を下す。
つまり、もう少し様子を見てはどうか、という内容だ。
この判断に虎城親方大焦り。そんなコトでは示しがつかんではないですか・・・!!

まあ・・・考えてみたまえ。私らがフンドシ担ぎの頃はよく兄弟子にくらわせられたもんだったろ・・・
そうやって勉強しながら心を鍛えられたものじゃないか・・・

まあ、相撲部屋に限らず体育会系は全体的にそんな印象がありますよね。
縦社会の厳しさを体に叩き込む、みたいな。体育会系に限らずあるとこにはあるっぽいけど。

理事長のその言葉に時代が違う。今の若者はそれじゃ付いてこんのです!と叫ぶ虎城親方。
それはその通り。でも、虎城親方の部屋はそれが分かっているところとは思えないのだが・・・?
猛虎さんのおかげでずいぶん改革されている様子だけど、その前はずいぶんな雰囲気だったじゃないですか。
それはさておいて、意見を求められた空流親方が口を開く。

節度は大事です。が・・・指導として多少くらわせたくらいで騒ぎ立てる今の風潮もまともとは思えない。
弟子の顔色を伺いながら接して・・・果たして人間が育つのでしょうか・・・
人から敬われる胆力を持った・・・力士たる人間が育つのでしょうか・・・!?

難しいお話ですよね。
しつけにはある程度の厳しさも必要となってくる。
そういったしつけがされずに野放しになった人間が果たして敬われるようになるだろうか。
親方の言葉は今の教育体制も含めて色々と考えさせられる内容となる。
が、そっちの話をしだすと色々と面倒なことになりそうなので波及しないでおきたいところですな。

さて、大吉。
白水さんから鯉太郎の話を聞き涙を流した大吉は行動を開始する。
マワシを身に付け、記者たちがたむろする外へと出て行く。涙は今でも全開だ。

どすこーい!どずこーい!!
僕はお相撲さんだーもゔただのデブじゃないん゙だ〜〜
僕が・・・僕が悪いん゙です〜〜〜僕はヘタレだから〜〜〜〜
辞めざぜないでぐだざ〜〜い!
鯉太郎ざんを辞めざぜないで〜〜〜〜!
僕だってほんどは強くなりだい〜〜じぶんがいやだぁああ
でも。でも、僕だから――!!

泣きながら叫ぶ大吉。マワシはさすがにまだ一人で巻けないのか、ずるずると下がってきている。
危ない大吉!記者の前で発言はともかく、見せたりしちゃうのはいろいろとマズイ!
というわけでもなかろうが、大吉の涙の発言を蹴りを入れて止める鯉太郎。ドス。

言っただろ。お前のデカさは・・・それだけで才能だってよ

笑顔でそう述べる鯉太郎。やばいね、これは惚れそうになる。大吉感涙。

暴行を受けていたはずの弟弟子が泣きながら兄弟子を辞めさせないでくれと叫んでいる。
そして、なんだかいい雰囲気になっている。何だか話が違わなくない?と記者も戸惑っております。
それでもどうにか記事にしようと群がって来る記者もいる。
そんな記者を押し留め、大吉達を部屋に戻そうとする白水さん。
といった場面で、ゴルァアという叫びと共にあの人が現れた。

ボゴッ。ゴン。ガン。

大吉、鯉太郎、白水さんの3人が頭を小突かれる。小突いたにしては派手に吹っ飛んでるな。
まあ、殴ったのが仁王さんですししょうがない。パワーが違うわ!

何やってんだチャンコの用意もしねーで。バカヤローどもが・・・!!

そう述べたあと、今度は記者たちを一瞥して一言。

いい記事書けよ

記者の前で堂々とくらわせてこう述べる仁王さん。
暴力沙汰とやらで書けるものなら書いてみやがれって感じですな。かっこいい。
空流部屋は既に悪評、というか悪童として名が知れ渡ってるし、仁王さんの行為も今更な感じかもしれませんな。
というか、これを記事にするのも難しいでしょう。
弟弟子がチャンコの用意をせずにいたので兄弟子が一発ずつ小突いていた!酷い!なんてのじゃ記事にならない。
まあ、久しぶりに仁王さんがいい感じに締めてくれてよかったって話ですな。

大吉には色々とイライラさせられたものでしたが、だからこそのカタルシスがあった回でありました。
ずっと自分のことしか考えず、謝ることすらできなかった大吉。
それが、人のために涙を流してお願いをするようにまでなった。この成長は大きい。
鯉太郎もまた成長したように思えます。
厳しさだけでなく、受け入れる強さというのを身につけたように思える。うーむ、よい兄弟子になったものだ。
さらに大吉も変わりたい、強くなりたいという思いがあったのが伺えた。
どうせ変わることなんてできないという気持ちがああいった態度を取らせてきたんでしょうなぁ。
前相撲なんかで一勝でもしてみせれば大幅に変わる可能性もある。期待したいところだ。

しかし、仁王さんが殴ったのは3人のみで川さんは除外なんですね
あの場にいるのに普通に見逃される川さん。まあ川さんですし問題ない。特別な人なんだよ!!



第10話/変化・・・  (2012年 34号)


マスコミという災難は逃れた空流部屋。
その空流部屋の前で吠える力士達の姿がある。たのも〜!たぁのぉも〜〜!!

新寺の石川様が出稽古に来てやったぞオラ!出てこーい鮫島〜〜〜!!

おっと、ここで石川が登場でありましたか。
どうやら石川もちゃんと幕下になれている様子。よかったですね。
そしてマゲも結えている様子。まあ、石川は前相撲の段階で今の鯉太郎くらいの長さありましたものね。

出稽古に行く力士はまわしを締め込み、その上にドロ着。
そして出稽古先まで素足で出向くのが習わしであるとのこと。ほう。
夏の暑い日とか大変でしょうな。アスファルトの上とか大変なことになりそうだ!冬は冬で大変か。

石川の他にも出稽古に訪れている力士がいる。
新寺部屋の幕内、飛天勇豪士さんである。ほう、幕内。
どうやらこの飛天勇関、仁王さんと既に因縁が出来上がっている間柄らしい。

どういう因縁かというと、仁王さんが新十両でいきなり支度部屋の奥・・・三役クラスの場所に陣取った。
それを注意した飛天勇関と大喧嘩になった、てなことがあったらしい。
そりゃどう考えても仁王さんが悪いですわな。何をしてるのやら。
まあ、ケンカはしているけど、なんとなく仲が良さそうな気もするしいいんじゃないですかね。

ところで、石川。ちゃんとこの間の大吉のコメントが載った新聞記事を見ているらしい。
殴られた腹いせにマスコミに兄弟子を売るとは許せないって感じである。
が、その当人である大吉。顔面を倍くらいに腫らしてしまっている。
この状況じゃあ、さらに殴りつけるってわけにもいきませんわなぁ。

えらいことにはなっているけど、これは部屋の誰かがやったってわけではない。
記事を読んで駆けつけた後援者の武川さんが泣きながら殴った結果であるとのこと。
ふむ。考えてみればそうなりますわな。
しかし、武川さんとしてみるとこれはかなり立場がない。
性根を入れ替えるために送り込んだ身内がこんな不祥事を起こしたのだ。いたたまれないでしょうな。
まあ、そこはそれ、アレだ。谷町さんでありますからね。
包んでくれるものを増やしてくれるという形の誠意ってもので見せてくれれば。グヘヘ。
てな交渉を誰かやったりしないのかなぁ。やっていない気はする。その辺は将来の常松に期待だな。

弟弟子が出来てから、鯉太郎の周りにはゴタゴタが続いている。
だけど、そろそろ気を入れてかからないといけない。なんせ来場所は王虎と同じ番付になるのだ。
石川も、かつて教習所で失神KOという屈辱を受けた借りがありました。
とはいえ、王虎の狙いといえば鯉太郎なのは間違いない。俺と戦る前に喰われんじゃねーぞと石川。

オメーじゃあるまいし、正面からハジキ飛ばしてやるよ!

実にいい笑顔で述べる鯉太郎。まあ、その言葉を受けて石川とドスドスと叩きあいになるわけですが。
・・・にしても、やっぱりこいつら仲いいなぁ。
物凄く屈託のない笑顔を浮かべている鯉太郎が眩しい
弟弟子のゴタゴタがあっても、同期に囲まれたら和やかに過ごせたりしたのかもしれないとすら思える。
常松はそんな鯉太郎を見てどう思っているのだろうか?やはり温いとでも思っていそうな感じがあるなぁ。

さて、虎城部屋。
こちらは十文字部屋の力士達が出稽古に来ているらしい。
虎城親方と十文字親方が並び、稽古の様子を観戦している。
王虎の暴れっぷりは凄まじく、出稽古に来ていた力士はもう倒れそうな状態らしい。
そんな王虎を見て誇らしげな虎城親方。

さすがは我が息子だよ。私の指導をしっかり理解しとる。王虎の頑張りで部屋が活気付いた。
俺は諦めていたんだよ・・・どんなに技術を教えても誰も付いてはこれんかった
だが王虎は違う。すべて言わずともその先まで理解しちまうんだ。

確かに王虎の才能は凄い。
けど、さすがにそれは親の欲目が過ぎるってものじゃないでしょうか。
特に、部屋が活気付いたのは王虎の頑張りというより、猛虎さんの頑張りが大きいような・・・
まあ、そこは認めたくないってことなんでしょうけどね。

王虎!上手取った後、体がバ〜〜〜っとしとるぞ!ギュッとタメろギュッと!!

なるほど。これが虎城親方の指導であるか。伝わるかこんなもん!!
十文字親方曰く、天才が簡単にできるコトでも凡人には難解だったりする、とのこと。
いやそうなんでしょうけど、この天才風な伝え方では伝わる方が珍しいってものである。
名選手が名監督になるわけではないという言葉があるが、虎城親方もそのタイプでしたか。
そう考えると、あんまり稽古に顔を出さないのはむしろ正解なのかも。
王虎にも舌打ちされてしまっている虎城親方でありました。ハハハ。

さて、その王虎と稽古して倒されている田上さん。
猛虎さんはそこまでで田上さんに下がるように言う。が、王虎はそれを許さない。

引っ込んでろよ。このバカはまだできる。
なぁ田上・・・そうだよな?そうやって甘えて誰かにとめてもらおうとしてんだろ?
わかりやすい全力感を必死に出して褒められてーんだよなー?
アイツは頑張ってる・・・真面目に相撲に取り組んでいるってなー。
だからお前はダメなんだよ

横たわる田上さんの顔面をゴッゴッと蹴り上げながら述べる王虎。

そんなクソみてーなもんで生き残れると思ってんのか?23にもなって何でわからねーんだ、バカが・・・!
だから同期にもナメられてんだよ!本当は気づいてんだろ!?仲良くやってるように見えて・・・
誰の意識の中にも、テメーのコトなんて刻まれてねーってな・・・!

生きちゃいねーんだよ。死んでんだテメーは・・・

非常に厳しい言葉である。横で聞いていた力士達も思わず涙目になる。
まあ、他の力士も他人事ではない内容ですからなぁ。
確かに田上さん。その人柄はともかく、強さで存在が刻まれているようには思えない。
それは強さを比べる相撲取りとしては悩ましい話である。
突きつけられてしまい、苦悩する田上さん。ガリガリと顔面をかきむしる。あぁ・・・あ゙あ゙あ゙あ゙!!
そして、ピンと張り詰められているものが切れた。

ゔん゙ん゙!

ガブっと王虎の足に喰らい付く田上さん。
その田上さんを、キタネーんだよと蹴り飛ばす王虎。

フン・・・バカが・・・やっと使えるようになったか・・・

なんだろうか、このセリフは。
やはり王虎は田上さんをダークサイドに落とそうと考えていたということなんだろうか。
その常識人っぷりから秘めた力を解放できずにいた田上さんが、本気を出せるようになるとかそういう?
にしても、田上さんに噛み付かれた時の王虎の表情はなかなかに味がある。
ようやく覚醒したなという喜びが含まれていたりするのかどうなのか。興味深いなぁ。

しかし、王虎が興味を示していた人材は田上さんだけではなかった。

あと1人・・・この手駒を入れて・・・来場所の準備は整う

そう王虎が述べる手駒とは・・・ブ、ブタフグ!?こと大鵠!?
猛稽古の中、汗一つ、砂一つないたるんだ肉体。
何やらブツブツと呟き、すっかり壊れてしまった様子のブタフグでございます。
うーむ、阿形さんに敗れたとき、付き人にまでもうダメだなコイツと言われたわけだが、こうなってしまっているとは。
気分の悪い悪人であったが、こうなってしまうとさすがに憐れである。

しかし、王虎はこのブタフグを用いてどうしようというのだろうか。田上さんもだけど。
両方幕下なので、来場所で使うとしたら、幕下戦の星調整に用いるつもりなんでしょうか?
鯉太郎と確実に場所で当たりたいと考える王虎。
自分は負けないにしても、鯉太郎が途中で負けると予定が狂うことになるし面白くない。
なので、鯉太郎を勝たせるための手駒としてこの2人が動くことになるのかもしれない。
鯉太郎とぶつかったら、この2人はわざと負ける。
また、天雷のように鯉太郎が負ける可能性がある相手とぶつかったら、全力で潰しにかかる。
そうやって、自分と鯉太郎との本場所での戦いの舞台を整えるための駒として使うつもりなのかもしれない。

そうなってくると、楽しみなのはブタフグと天雷の因縁の対決ですね。
阿吽に潰されたので、もう機会はないかと思ったが・・・ちょっと期待の対戦になりそうである。
あと、石川が田上さんに潰される可能性も見過ごせない部分である。危ない危ない。
そして、当の王虎が常松に潰されたら大笑いという話でもある。
あれだけ入念に準備したのに、自分が負けたら調整も何もないじゃん!というオチが待っているとか。
ありえなくもないのが面白いところですな。はてさて、波乱の来場所がどうなるのか。楽しみですわい。



第11話/覚悟  (2012年 35号)


鯉太郎がマスコミによって攻撃されている。
そのことにより相撲の評判が下がったことに対しての穴埋めなのか、スポーツ番組に王虎が登場する。
大銀杏も結っていない幕下力士でありながらTVに出るとは・・・流石というかなんというか。

あの元大横綱・虎城親方のDNAを受け継いだサラブレッド!
端正なルックスから女性ファンも急増中という王虎。ほう。
まあ、そういう方面のファンが増えるのは相撲界にとってはありがたいことでしょうな。

インタビューに来た女子アナが王虎関と口にする。
が、幕下の間は"関"がつかない。つくのは十両以上の力士、関取になってからである。

勉強不足でと詫びる女子アナに、今の若い人は知らなくても不思議はないですよと返す王虎。

それどころか残念なことに"相撲=ダサイ""お年寄りが見るモノ"というイメージしかないでしょ・・・
今の世の中にはスタイリッシュに見えるスポーツがいくつもあり、
若者の選択肢の中に"相撲"はないと言っても過言ではないですし・・・
話題になるのはゴシップくらいでしょ・・・

やはりバチバチの世界でも相撲人気の低迷は深刻のようですな。
さりげなくマスコミへの苦言も含まれているのかもしれない。
それに気付いているわけではないのか、弟弟子を暴行した兄弟子の話について水を向ける女子アナ。

悲しいことですよ・・・そういう悪しき習慣がぬけない部屋があるということが・・・
ですが私はその鮫島君については何も言えないんです。

具体的な名前は出してないのに、何も言えないといいながら鯉太郎の名前出してる!?
その辺り、王虎は如才ないのう。まあ、相撲取りのインタビュー見てる人なら誰を指してるか一目瞭然か。
というか、悪しき風習を最近まで引っぱってた部屋の人に言われましてもね。

ともかく、王虎。マスコミに対しては鯉太郎を持ち上げる方針。
それは、自分は彼に前相撲で大敗しているからという理由づけ。

強さがすべて・・・またそれもこの世界の揺るぎない事実

この王虎の発言に、強ければ何をしても許されると?と尋ねる女子アナ。
そして、そう勘違いする者がいてもおかしくはないということです、と王虎。
うーむ、この話の内容では鯉太郎が強ければそれでいいんだという捻くれ坊主みたいな印象を受けてしまう。
まあ、王虎としてはそういう風に印象を持っていきたいんでしょうけどね。
マスコミの思惑とも合致している辺りがいやらしい。

だから来場所は私にとってとても重要な場所なんです。
来場所はその鮫島君と同じ番付・・・もう一度彼と勝負ができるかもしれない。
鮫島君にリベンジしてまずは自分が同世代のトップに立つ!
角界の悪しき風習は私たちの代で終わらせなければいけない・・・!

もし・・・また鮫島君に負けるようなことがあれば自分はキッパリと髷を落とす覚悟です
彼もその覚悟をもって私の挑戦を受けてほしい。

いきなりの引退覚悟の挑戦宣言。
この発言にマスコミは飛びついた。翌朝、各誌はこの発言を大々的に取り上げる。
「王虎引退覚悟」「鮫退治!逃げるな鮫島」「王虎引退!?」「引退懸ける王虎」
「スカイツリーおじさん逮捕」「ゲームボーイおじさん逮捕」「ドアラVSガチャピン」「宇宙人、足立区に潜伏!?」
てな感じの見出しが躍っている。な、なんだ下の行の内容は・・・!?川さん足立区で何してたんですか?
というか、猪木のウチはいつでも受け入れるとは王虎に対してのコメントなのだろうか。
元相撲取りのレスラーはいないわけではないし、引退後の話もありそうですわな。

さて、この王虎の話を受けて、空流部屋の前にはまたマスコミが詰め掛けている。
なんせ鯉太郎を名指ししてきましたからねぇ。この記事に対してのコメントを取ろうと必死な様子。

あううう・・・僕のせいだ・・・どうしよ・・・
だけどアレは僕が悪いって言ったのに・・・何でそのコトは報道してくれないんだよ〜〜・・・

青くなっている大吉。自分のせいだと思えるようになっているとは、ずいぶん成長しましたなぁ。
まあ、気にするな大吉。和解話とかスキャンダルにもならないし、取り上げてくれないに決まっている。
アイツらはいつもこんな感じだという鯉太郎の発言通りですな。

まあ、何にせよ鯉太郎と王虎の再戦が近いとあれば世間は騒がしくなる。
それだけ大横綱・虎城と大関・火竜の因縁も名もデカイ・・・
何より前相撲でみせた2人の取組は・・・見た者の心に強く刻まれとるんだ・・・騒ぐだけの価値がある。

あの時もそうだったろ・・・雑音は土俵で消せばいい・・・

まあ、そうですね。
外での仕掛けより、土俵の上で生き様を見せる方が空流部屋らしい話である。親方の言う通りだ。
だが、その意見に反発する存在がいた。常松である。

そんな悠長に構えていたら・・・いずれ王虎に跡形も無く喰われてしまいますよ。
なぜこちらからもアクションを起こさないんですか・・・?
これじゃただバカみたいに殴られてるだけじゃないですか。

俺はこれからの人間ですからね。ゴメンなんですよ。アンタらと心中なんてのは・・・

全くもってハッキリ物を言う奴であるな。
まあ、常松も王虎と似たタイプですからね。内に凶気を秘めながら外面はいいという。
やはり空流に適した存在ではないように思えるが・・・果たしてマッチングする日は来るのだろうか?

もういいでしょう。アナタたちの甘さにはうんざりだ・・・俺は俺のやり方でいかせてもらいますよ・・・
使えるモノはすべて使う・・・それが俺の主義だ。

そう述べて一人マスコミの前に立つ常松。
学生横綱であるとはいえ、常松の注目度はそんなに高くない様子。ナメられてますな。
しかし、親方か鮫島出せよと言われても退かない常松。

今の自分じゃ顔じゃないくらいわかっています。ですがどうしても一言言いたくて・・・
たしかに暴行は事実です・・・ですがこの空流部屋が悪い訳じゃない
親方は尊敬できる素晴らしい指導者なんです。問題なのは親方の心意を理解できない弟子の若さにある。
だが今のままでは終わらせませんよ。この部屋は必ず自分が変えてみせます・・・!
これからなんです。この部屋も・・・鮫島さんも・・・
だから俺は年上の弟弟子として年下の兄弟子を守らなければいけない。

王虎は俺が倒します。負けたら廃業なんてふざけた条件に兄弟子を晒させるわけにはいきません

ふむ。そういう売り出し方をするのが目的でありましたか。
最後だけ聞いていると随分殊勝な物言いに聞こえるからたいしたものである。
その実、暴行があったことを事実とし、鯉太郎は親方の心意を理解できない若造だと腐している。
鯉太郎を下げ、自分を持ち上げる話術。やはりこの辺りからも王虎と似た印象を受ける。
王虎め。相撲のスタイルだけでなく、話術まで真似ていやがったのか!?

テメーのやり方ってのは・・・口で相撲を取るコトなのか・・・?

怒り満面の鯉太郎登場。
まあ、よりによって常松に親方の心意を理解できてないと言われちゃ怒りますわな。

語りてーなら土俵で語れ・・・それが空流だ。

まさしくその通り。
しかし、常松はその発言で終わらせてしまうつもりはない様子。
だから発言を引き出すようなことを口にする。
アナタはのむんですか?王虎の言う負ければ廃業って条件を・・・と。

潰し合いってのは、はなっから覚悟の上だバカヤロー!!

言ってしまいましたね。まさしく売り言葉に買い言葉。
挑んでくるのなら退くことはできない。それはそうだが、この発言は・・・

当然のことながら、翌朝の各誌はこの鯉太郎の発言が大々的に取り上げられる。
「鮫島×王虎。負けたら引退か!?」「鮫対虎再び」「殺るか殺られるか!」
うーむ派手に見出しを飾ってますね。
鯉太郎がいかにも悪人な写真を用いられ、王虎は爽やかな感じが用意されている。
まあ、この辺りはいつもの通りの印象操作ですわな。
にしても、猪木のコメントが先日と変わっていないのはいかがなものなんでしょうか。オレは人生ホームレス!

前代未聞のアオリを受けて・・・良くも悪くも注目を浴びた・・・
劇的な五月場所が幕を開けようとしていた。

相撲にあるまじきデスマッチ!?
まさしくあるまじき展開である。そりゃあ前代未聞であろうさ。プロレスじゃねーんだぞ。
さすがにこの発言、相撲は理事会が動く内容なのではないだろうか。
良くも悪くも注目の鯉太郎と王虎。
相撲界を活気づける2人のうち1人が消える可能性がある戦い。理事会としては黙って見過ごせるものではあるまい。
そう考えると、王虎が負けても上の働きかけで引退は消える可能性がある。
だが鯉太郎が負けたらどうなるか?
近くの人間は止めるかもしれないが、マスコミ等はこぞって廃業しろと迫ってくるでしょうね。面倒くせえ。

常松も鯉太郎がこの発言に乗っかるように画策していたようだが、その真意はどこにあるのだろうか。
鯉太郎を追い出して常松にはどれほどの得があるのかよくわからない。
それとも奮い立たせるためにわざとやったとでも言うのだろうか?さすがにそんなタマには見えないが。

これは2人の直接対決はなしになる可能性が高いかもしれませんな。
大きな口叩いておきながら、2人とも途中で土がついて直接対決ならず!てなオチ。
これにはマスコミも苦笑。なんて流れになるんじゃないかなーと平和的に。
それか、どちらかが事前に負傷することで対決が実現しないとか。
王虎がうっかり突っ込んできた4tトラックを正面から受けて欠場するとか。
王虎が足立区に現れたUFOに轢き逃げされるとかそういう話。どういう話?



第12話/いざ五月場所!!  (2012年 36+37号)


ついに本場所が開幕!
弟弟子が現れてから色々と振り回されてきた鯉太郎だがようやくバチバチできますかね。

鯉太郎と王虎の引退試合というアングルを確立したマスコミ。
やはり今場所の注目は幕下であると見ているようだ。
鯉太郎や王虎は前回の盛り上がりもあったし、マスコミとしては煽るのが楽で助かる相手である。
話題性もそれなりによいでしょうし、いい飯の種ってところなんですかね。

実のところ、王虎の引退発言はマスコミの間でもハッタリと受け止められていた様子
なるほどね。だから軽い気分で記事にできるし鯉太郎を煽ったりもできるわけだ。
まあ、そもそも幕下は総勢で120名はおり、番付の近いものから始まり、同じ勝ち星同士を順に組んでいく。
幕下に上がったばかりの王虎と鯉太郎では番付は近くないだろうし、すぐには当たらない。
下手すると優勝争いになるまで当たらないという可能性もあるわけだ。

それに王虎の優勝候補筆頭は揺るがないが、今場所の幕下はツブが揃ってるしな、と記者。

まずは若竹部屋の天雷。先場所はタイミング悪く十両には上がれなかったが実力はもう関取クラス
そして川柳部屋の日本人力士最重量の大森海。十両返り咲きを狙って調子を上げている。
新寺の石川も面白い。ムラがあるが優勝候補を喰うのはいつもこの男だ
他にも十両経験者やベテランもいる。なるほど、なかなかツブが揃ってますな。

でもやっぱり部屋として面白いのは・・・空流部屋!

新弟子も加え、6人。黒い浴衣を纏って練り歩く。相変わらず凶悪っぽいですなぁ。
この中に混じって歩けば大吉は可愛らしく見え、清涼剤になりえなくもないかもしれない。かもしれない。
見開きの一番左端は安定の川さん。
凶悪な連中を並べつつ、最後に落としてくれる優しさが川さんにはある。猫好きっすね。

幕下には空流部屋で3人も力士がいる。
話題の鯉太郎は除くとして他の2人。
まず白水さん。何度も十両の壁にハネ返されてはいるが、潜在的な力を評価する人間は多いという。
そして幕下付出の学生横綱、常松洋一。おもしろい伏兵になりそうだと注目されている。

この幕下の顔触れじゃあ王虎どころか、生き残ることすら鮫島にとってしたら至難の業だろうな、とのこと。

確かに凄い顔ぶれだ。
とはいえ同部屋の2人とは当たることはないし、他に警戒すべき相手は天雷ぐらいな気もする。
天雷はやはり実力として既に関取クラスと認められているようだ。
この天雷。ルックスはイケメンだし強いし態度も悪くない。というか悪くなくなったのに何故か目立たない。
昇進していけば記者が食いつきそうな力士であるんだけどなぁ。
王虎と違って派手なことを言ったりはしないのでマスコミには逆に扱いづらいのかもしれない。

それにしても石川。優勝候補を喰っているという話があるのが驚きである。
もしや三段目とかで天雷にリベンジを果たしたりとかしたんだろうか。
話として取り上げられないところで活躍するのが石川らしいっちゃらしい話であるな。

この激戦の幕下に闇に堕ちた田上さんも参加することになる。楽しみなことこの上ない。
下手したら鯉太郎どころか王虎だって誰かにつまづく可能性がある。
2人揃ってコケたら笑えるよな〜〜〜と記者。だが―――

1人静かに、光を浴びながら歩く王虎の姿。その威容はやはり別格と言わざるを得ないものがあったという。
うーむ、色々とヤバ怖いですねぇ。

さて。取組前の部屋では石川が柱に向かって猛烈にアップ中。
そんな気合の入った石川に話しかけるのは北里部屋の三段目、渡部仁
ってドングリ幕下になってないのかーッ!!
まあ、そういう人もいますよね。しかし田上さんは上がって渡部は上がれていないとは・・・
猛虎さんの猛稽古の成果が出た結果ということなんでしょうな。

同期であと出ていないのは蒼希狼である。
まあ渡部曰く、僕だけ同期で遅れているとのことだから、幕下にはいるんでしょうね。どんな姿になってるか楽しみだ。
そういえば渡部は前のときより少しは痩せているように見える。
やはりあの体重では長く動けなくて厳しかったんですかね。

そんな風に石川と渡部が話しているところに王虎登場。
王虎の顔を目撃した石川はいきり立ち、王虎の胸ぐらを掴む。

あんまふざけたコトしてんじゃねーぞテメ―――・・・

さすが石川。王虎が鯉太郎に廃業を持ちかけたことを怒っているようであります。
勝負にしょーもねー煽りつけてんじゃねーぞ!と吠える石川。
その気持ちはもちろんあるだろうけど、煽られたのが鯉太郎じゃなかったらここまで怒っていたかどうか。

一方。別の部屋を割り当てられている鯉太郎。
石川と同じように取り組み前のアップに余念がない。
が、そこで口を出してくるのが常松。ヤル気ないんじゃないかって心配してたんですよとか言ってくる。

王虎は実力からいってまず星は落とさないでしょうから・・・
現状、鮫島さんのベストはさっさと負けることだ
そうすれば王虎とあたることもなく、廃業の条件から免れられる。

まあ、その通りなんですよね。
その通りだけど、わざわざそれを口にするってことは、そうはさせませんよと言っているのに等しい。
実際、それでは俺の予定が崩れる。アナタにはまだ負けてもらっては困ると言い出す常松。
うーむ、やはり常松の狙いがいまいちよくわかりませんねぇ。
王虎との契約により、うまく本場所で2人が戦えたら金が入るとかそういう安易な計画とかでないとよいのですが。

イラつくことを喋る常松に対し、鯉太郎は反論する。
土俵ってのは・・・もっと単純で・・・もっとわかりやすい場所だろーが・・・

強ー奴が勝つ!それだけだろ!!

鯉太郎と石川。2人が同じことを同時に吠える。
やはりこの2人は似たもの同士でありますなぁ。それゆえ結びつきの深い2人である。
だが、その2人がいきなり初戦でぶつかることになる。これは・・・!!

よーく見とけ。勝負ってのがどういうモノか教えてやるよ!

そう述べてはいますが、王虎も常松も人の取組を見て感じ入るような性格じゃなさそうだからなぁ。
まあ、とにかく熱い取組を期待しています。
鯉太郎も石川相手だったら余計なことを考えず、ただ純粋に己をぶつけることができるでしょうしね。

しかしこの戦い。一体どのような顛末になるのか。
序の口で初顔合わせしたときのようなことにはなりますまい。
あの時は双方まだ未熟でしたし、意地の張り合いでも問題はなかった。
しかし幕下まで上がっておきながらあの時のようなやり方は行わないと思われる。
今度は磨き上げた技術を交えたぶつかり合いが見れそうで楽しみでありますなぁ。
石川の勝利する確率もなくはなさそうだが・・・はたしてどうなることか。



第13話/開戦  (2012年 38号)


今話題の「ドスコイ!ツッパリ君」と写真が撮れる!
しかも今回は、今場所新入幕を果たした仁王関にも来てもらっているという!

しーん・・・

なんだか凶悪そうなマスコットの着ぐるみと並んでいる仁王さん。
これはあれか、突っ張りとツッパリをかけているとかそういうことなのか?
元ネタのキャラは結構人気だというが・・・
仁王さんが人気ないというより、王虎に人気を持ってかれているのが問題なんでしょうさ。たぶん。

素人衆からは大人気の王虎。しかし、力士からは嫌われまくっている。
まあ、あれだけ壊しながら進んできたら嫌われもするよね。
かなり横柄な態度でもあるし、タコになりやがってとか言われてもしょうがない。
とはいえ、横綱の息子としての威光を笠に着ているだけってわけではない。
虎城部屋の力士はこう述べる。
俺もアイツは大嫌いですけど、近くで見てる分俺らとは違うってのはよくわかってますから・・・

嫌われ者だし、首を狙っているのは多いが、それらを蹴散らす実力を持っている。王虎とはそんな奴だ。
なんとも厄介な話ですなぁ。幕内まで上がれば対抗できる人も増えるんだろうけども。

さて、その王虎の一番。
相手はどうやらあのせいろうさんの弟弟子らしい。兄弟子の雪辱戦でありますな。
とはいえ、立ち合いの前から呑まれてしまっている様子。うーん。
とりあえず、いきなり組み付くことで小手投げを封じることには成功した。
少なくともこれで壊される心配はなくなったぜ!という形。よかったね。と思いきや――

組み合いながら王虎。鯉太郎に視線をやり笑みを浮かべる。どこまで余裕なんだコイツは。
そして相手の前ミツをとり、強く引き寄せる。
そして上からのしかかるようにして相手の膝を土俵につかせる王虎。
あまりに力強く引いたものだから、相手の腰や背中がベキベキいってるじゃねーか。

これはアレですね。いわゆる鯖折りってやつですね。
微妙に間違った認識をされることが多い鯖折りですが、本来は今回の王虎がやっているようなやり方が正しいらしい。
マワシを取って強く引き付け、上からのしかかるようにして潰す技。
かけられた相手は腰や膝に大きな負担がかかる。
なんせ大柄な力士にのしかかられるわけですからねぇ。これで故障した力士も実際に存在する。
ガップリ組んだからって安心できないというわけですね。さすが王虎は壊し屋ですわ。
という流れを今ひとつわかっていないマコ姉が可愛い。

覚悟はいいか。鮫島鯉太・・・

今倒した力士は一瞥もせず、凶悪な笑みを鯉太郎に向ける王虎。
しかし、鯉太郎はそんな王虎のことを軽くスルー
直近の対戦相手である石川相手に激しく睨み合っているのでありました。ハハハ。王虎。ハハハ。
強く意識した相手にスルーされるのは屈辱でしょうな。これはなかなかいいダメージを与えたっぽいですよ鯉太郎。天然で。

さて、いよいよ鯉太郎と石川の取組が始まろうとしている。
おや、観客の中には一部の初期にいた不良君らしきキャラがいるような・・・?
それはさておき天雷さん。未だに石川を山本呼ばわりしているんですね。
おかげで柱の石川のキャラ紹介にも山本なんて名前が出てしまっているじゃないか!!

さぁーて・・・弾けよーぜ

ようやくバチバチがバーストしそうな感じになってきました。
石川がどれほどの成長を見せているのか。楽しみな一番です。
幕下まで上がってきたことですし、ハリだけってことはないと思うがはてさて。
強力な技の一つや二つぐらいこさえている気はします。
序の口の対戦とは違った2人の取組模様に期待がかかりますな!



第14話/無情・・・  (2012年 39号)


初日からライバル同士である鯉太郎と石川の対決。
さて、どのような成長を見せてくれることであるか。

前回の序の口での対決は鯉太郎の勝利。
渡部の口ぶりだと、その時以来の直接対決のような感じであります。

鯉太郎にはあの時なかった"投げ"があるし、"押し"一辺倒の石川は不利かと予想する渡部。
その予想をされた渡部。じっと手を見ている。

無情・・・

なんだいきなり。
よくわからないことを呟き出した石川。ここで軽く回想だ!

新寺部屋。
親方に教えを受ける石川。
鯉太郎は四つ相撲を覚えたが、石川は押し相撲を鍛え上げる方向でいくらしい。
組んでじっくりなんて性に合わないっス!とのこと。
ならもっと張りにも突きにも重さが必要だな。と言われる石川。
まあ、石川もそれほどデカイというわけではないですしね。重さという点では厳しさがある。
肉は少しづつついていっているようだけど、ドングリのような太り方はなかなか難しいか。

それも大事だがそれだけじゃねぇ・・・まずは重点的に下半身を鍛えろ。バネを強化するんだ
瞬発力を上げて突進するスピードを倍増させる。
体重プラススピードで一発の重さを上げるのよ。
全身を使って打つ突きは城門を壊す丸太となり、そして張りは城を崩すハンマーとなる。
モノにできりゃ一瞬で勝負がついちまうほどの・・・無情の一撃となる

これはよい教えでありますね。
競技において下半身を鍛えるのは非常に重要。
無情の一撃とやらだけではなく、攻守において役に立つこと間違いない。
力士2人を乗せて耐えたり、その力士2人を引きずるような突進を見せたりしている石川。
そうやって鍛え上げた足腰こそが今の石川の一番の武器となっている様子。

身につけた無情の一撃。
しかし、立ち合いでいきなりは狙うなよと親方に言われる。
突進力が一番上がるのは立ち合いなのに、なんでまた?

嫌われちまうのよ。いきなりブン殴られるんだからよ。ブハハハハ

まあ、確かにやられた方はたまったものじゃないでしょうな。
しかし、白水さんはいきなりのゴリラ張り手とか見舞っていたりしたような・・・嫌われたのかなぁ。やはり。

上京してきたマコ姉。今場所からはしっかり観戦できる体勢。
今日の対戦相手である石川のことを椿に問う。
石川の所属する新寺部屋と空流とは同門でよく一緒に稽古をしている。
仲の良い分、お互い負けたくもないんじゃないですかね、と椿。
仲が良い?と問われれば、ええ・・・友達ですよと返す椿。

友達・・・?こっ・・・鯉太郎に!?友達・・・?
ありがと――石川君――!!

うるっときちゃったマコ姉でありました。
鯉太郎は昔から荒れた子でしたからねぇ。
空流という新たな家族を得ただけでなく、友達まで得ていたとは。姉としては安心することしきりでありましょう。
あとは恋人でもできれば。いや、それはちょっとどんな反応になるか楽しみな気がしますな。

それはさておき。
いよいよ、鯉太郎VS石川の2度目の対決が始まる。

一撃だ・・・テメーとオレには遠慮も加減もいらねーよな

嫌われるも何もない。むしろ最初から全力で行くのが礼儀だと言わんばかりの石川。
鯉太郎もまた、全力でブチカマす構え。お互い最初からやる気でありますね。
ハッキヨイ!!

行司の声と共に、勢いよく踏み出す石川と鯉太郎。
ブチカマそうとする鯉太郎の側頭部を石川の一撃が捉えた!!
と思いきや、左腕でガードしていた鯉太郎。
多少勢いは削がれたが、そのまま肩からブチカマシを決める。
しかし、石川もまた左腕でこのブチカマシをガードしている。
ぶち当たって崩れた体勢のまま打ち合いを始める両者。このまま一気に勝負は決まるのか?

というわけで、次号は巻頭カラーで激闘の様子が描かれます。
最初に押される形となった石川だが、ここから押し返すことができるのだろうか。
鯉太郎は身につけた四つ相撲を見せての戦いをするのか、それとも押し相撲に付き合うのか。
強い奴が勝つ!というのを見せるために土俵に上がっている以上、矜持よりも勝つことが重要である。
となれば、押し相撲に付き合うより、投げで決めるということもありえると思うがはてさて。

石川が勝つ可能性も充分あると思いますし、この対決、どうなるか何とも読めませんな。
ともかく派手な戦いを期待しております。ハジけようぜ!!



第15話/張り合い  (2012年 40号)


王虎すら目に入らねぇ。悪童同士の真剣勝負!
石川の無情の一撃と鯉太郎のブチカマシ。
両者それぞれ受けきったところで、仕切りなおし。改めて張り合いの始まりだ!

出た!いつもの意地の張り合戦!!

これは、初対決の時と同じ流れになるのか!?
と思わせた打ち合いだが、やはりあの時とは違う。
石川の張りは早い。その回転数は凄まじく、鯉太郎は手が出せなくなっている。

アレはやっかいなんだよな

天雷も認める石川の張り。思わずクラゲに戻されちゃったぐらいですもんね。

問題ねぇ・・・確かに手数はスゲーが、一発の怖さはねぇ・・・
白水さんの張りの方が何倍も怖ぇ・・・
これなら・・・体で押し返せる。

回転数はあるが、一撃の重さはそれほどでもないらしい。
白水さんは身長ありますからなぁ。体重もついてきてるし、やはり一撃の怖さは上でありますか。
ガードを固め、組み付くために突進しようとする鯉太郎。
しかし、そこに横合いから強烈な張りが飛んでくる。
回転数があるだけの張りではない。大きく勢いをつけた、威力のある張りだ。
新寺親方曰く、正面から飛んでくるのは"突き"。横っ面に飛ばしているのは"張り"だそうな。
そういう区別のつけ方がありますのかね?

手数の突きは体で押し返せる。
が、威力のある張りはしっかり受け止めないといけない。
そのコンビネーションに翻弄される鯉太郎。張りを警戒すれば突きをまともに受けることになる。
一撃の威力がないとはいえ、突きを顔面に受ければダメージは蓄積するってものだ。

ちょっと椿ちゃん!本当に友達なの!?ボッコボコにされてるよ!!

まあ、こういう形の友達ですんで。仕方ないのですよマコ姉。
マコ姉だってよく鯉太郎ボコボコにしてるじゃないですか〜

まあ、それはさておき。
石川の突きと張りのあわせ技を喰らい、マズイ状態の鯉太郎。
うかつに張り返そうとしたばかりに、強烈なカウンターをもらってしまう。
上体が崩れ、このままでは土俵外に落ちる!という状況。
だが、こらえた。そして、今の一撃で距離はできた。この間合いならブチカマせる・・・

まだだ・・・まだ軽い・・・俺の張りはこんなもんじゃねぇ・・・
手で撃つな・・・体で撃て・・・
下半身のバネを爆発させろ・・・一撃でブッ壊せ!!
この間合いなら仕切り直して撃てる。無情の一撃・・・

間合いが開けば、ブチカマせる鯉太郎有利。とはいかないらしい。
石川にも中距離用の技として、無情の一撃が用意されている。
下半身に力を込め、体で撃つような一撃。ブチカマシに合わせて、今度こそ決めてやるという姿勢だ。

やっぱ石川は強ぇ・・・ムカツクが"押し"だけじゃ勝てねぇ・・・だが組んでなら・・・
低く・・・鋭く・・・ブチカマシを全力で突き刺し、懐に入る・・・

意地の張り合いによる張り合戦では、もう鯉太郎には勝ち目はなくなっている様子。
組んでの投げを鍛えてきた鯉太郎と、押し一辺倒で育て上げてきた石川との違いが出ているわけですな。
まあ、大事なのは最終的に勝つことですし、押し勝負に拘る必要はありませんわな。
なので、組み付くために飛び込もうとするのは正解と言える。
が、その結果、石川の無情の一撃をまともに顔面に受けることになってしまいました。ゴギッ!!

無情の一撃により、眼が虚ろになる鯉太郎。
だが、間合いは縮まった。
組むことすらせず、いきなり下手投げの構えに入る鯉太郎。
相手は渾身の一撃を放ったばかりで体は崩れてますからねぇ。チャンスってわけだ。

大器!!もう一撃、打て!!!

投げられそうになりながら、潰すように打ち込む石川。
この一撃で鯉太郎の意識が軽く飛び、マワシを掴む手が緩む。

離すな!!鯉太郎!!!

親方の激励。それが聞こえたのかどうか。
気を取り戻した鯉太郎。足に力を込め、マワシを握る手にも力が戻る。
そして、左手で石川の頭を抑え、上体を崩し・・・投げる!!

勢い付いての投げは難しそうと思えた下手投げでしたが、見事に体が回っておりますなぁ。
叩きつけるような投げが決まり、悪童対決は決着!!勝負あり!!

鯉太郎を上回る押しの強さを手に入れた石川。
だが、総合的なところではまだ鯉太郎の方が上だったって感じですな。

押しの強さを鍛え上げるのはいいが、組まれてからの防御がまだ甘いように思える。
組まれる前に倒してしまえばいいんですよ!という考えかもしれないが、それはさすがに厳しかろう。
なので、今後は組まれても簡単に投げに移られないようにする稽古をしたらいいんじゃないですかね。
まあ、それにも下半身の強さは必要になるので、新寺親方の特訓指示は何も間違ってはいないわけですが。

この取組を見て、王虎や常松、大吉たちは何を思うのでしょうか。
大吉以外は特にコメントもなく流してしまいそうなので、鯉太郎の本番取組を初めて見た大吉のコメントに期待だ!
勝ったのはよかったけど、痛そうでやだなぁとか言い出しそうで怖い。



第16話/くだらねぇ  (2012年 41号)


鯉太郎と石川の対決は紙一重の差で鯉太郎の勝利。
悔しそうにする石川。惜しいところではありましたな。
新寺親方も笑顔で悔しそうにしている。のはいいけど、何を叩いてるんですか親方?

あんなにボコボコにされてたのに勝っちゃうなんて、と鯉太郎のスゴさを評価する大吉。
なんだかんだで素直な子になってきましたねぇ。よいことだ。
そして、含蓄のある言葉を述べるツッパリ君。中の人は一体誰なんだ!?

勝負は終わり、息を整えた鯉太郎が、起き上がろうとする石川に手を差し伸べる。
なんだかんだでこの2人は友達ですからね。
土俵の上では勝者となるべくバチバチと争うが、争い終わればこういう関係に戻れる。よいことだ。
喧嘩の後は仲直りよね、とマコ姉は納得した様子。いや、喧嘩じゃないですから。
というか、マコ姉はやっぱりそういう世界で生きてきたということなのだろうか・・・!?

手を差し伸べた鯉太郎だったが、結局フラフラと倒れてしまう。
天雷も認める山本、もとい石川の張りですし、さすがに無事ではすみませんわなぁ。
しかし、負けは負け。それを噛み締めて下がる石川。

こっからだ・・・俺はまだまだ強くなる・・・
今日の負けは飲み込め・・・次のタメに・・・今回は鮫島の方が俺より少し強かった・・・

そんな風に考えていたところ、廊下で王虎とバッタリ出会う石川。
いや、王虎が待ち構えていたといった感じであるか。

見せてもらったよ、お前らの勝負ってのを・・・どちらが勝ってもおかしくない取組だった・・・

と、王虎が評価してくれるようなことを言ってくれる。わけがなかった。

な〜〜んて言うとでも思ったか。バカが。
勝負ってのがどういうモノか見とけだと・・・?よくあんな遊戯で偉そーに語ったな・・・
負けたけどいい取組ができた・・・みんな誉めてくれた・・・次こそは勝つ・・・か?
くだらねぇ・・・仲良しこよしのお相撲ごっこか?
勝者は敗者を喰い、のしあがる。負けたら何も残らねーのが土俵だ。
だから負けた。お前は・・・ただの喰いカスだ

なんとも酷い言い様である。
しかし、それを言うのならば、鯉太郎に負けた王虎はどうなるのか。
ならテメーも鮫島の喰いカスだろーが、と石川。ごもっともですな。それについては王虎も否定しない。

あぁ・・・だから鮫島にエグリ取られたモノを取り返さないと俺は何も始まらないんだ。
次はない・・・負けたら廃業ってのは本気だ。
土俵ってのは、地獄なんだよ

相変わらず狂気を見せる王虎。
しかし、自身の廃業は本気で口にしていたことだったんですな。
うーん。こいつはこいつでストイックなのかもしれない。
というか、エリートすぎるんですかね。なまじ才能に溢れていただけに挫折に耐えられない類の。
実際、猛虎さんが立ち直らせなければ、そのまま腐っていたかも知れないわけですからなぁ。

土俵は地獄。その信念は凄いと思う。
けど、さすがに相撲で1度も負けずに横綱まで昇りきるなんて出来るとは思えない。
負けを飲み込み、糧として次の強さにする。石川の考え方は何も間違ってはいない。
王虎の考え方はいつか壊れてしまいそうな考え方であり、怖いものがある。
幕下の間はともかく、関取になったらどうなるのかって話ですわな。まあ、その前に今場所負けるかもだが・・・
というか、土俵は地獄という考えがあるからって、田上さんを引きずりこまないでくださいよー。
まさか王虎・・・石川も仲間入りさせてやろうと企んでいたりしないよね?
みんなで地獄行きなら怖くないぜー!とかそういう。迷惑な話だ!!

それはさておき。
勝った鯉太郎が控室に戻ろうというところで常松と出会う。

見てましたよ鮫島さん。いや〜〜面白い取組でした。笑っちゃいましたよ
あの張りワザと受けてたんですよね。お客を盛り上げるタメに・・・

んなワケねーだろ・・・プロレスじゃねーんだ。

さすがにそんなわけないですわな。避けれるものなら避けたかっただろう。
覚悟を持って受け止め反撃するというのはプロレス的ではあるが、まあ、そういう話ではない。

いやいや安心しました。さすがに俺も初土俵に少し緊張してましたから・・・
あの程度のレベルなら・・・問題はない

相変わらずナメた口を叩く男である。
というわけで、鯉太郎。兄弟子として警告をしておく。
昔、自身がナメていたんだと思い知った経験も合わせての言葉でしょうかね。

土俵はな・・・番付を一枚一枚必死になって上がってきた奴らが・・・戦ってる場所なんだ。
お前は何もせず幕下付出から始めるからわかんねーと思うが・・・そんな甘くはねーんだよ。

何も・・・せず・・・?
アンタは俺の、何を知ってる?

鯉太郎のその言葉に、珍しく真面目な表情で帰す常松。
まあ、何もしないで学生横綱になれたとは思えませんわな。
常松が相撲取りになり、学生横綱となり、金のために空流部屋に入った。
それらの行動にもそれなりの理由があるんでしょうな。垣間見える一瞬でありました。
その理由が語られるのがいつのことになるか・・・

ともかく、今回の言い合いは大吉が間に入ることで終了。ナイスだ大吉。
しかし、顔を冷やす氷が全部アイスなのはどうなのよ。食べて冷やせと!?
まあ、そういう気遣いが出来るようになっただけでも成長していると見ておきましょうさね。

さて、ついに初土俵の舞台に立つ常松。
その初めて相手はこの男。記者達が、相手が悪いよな〜〜と言う男。
日本人力士最重量、240kgの大森海さんだー!!

こ・・・これは・・・勝てる気がしない!!大森海さんが。
ここで出てきたのが天雷とかであれば、勝敗予想のしがいもあったのですが・・・うーむ。
まあ、いきなり天雷が敗れるのを見るのも嫌ですし、よかったと言えなくはないけども。

重さは力。というのは間違いない。相撲のみならず、格闘技全般に言えることだ。
というわけで、どういう風に大森海さんがやられるかで常松の強さを測ることができる。
あの巨体を寄り切ってしまうとかするのなら相当なものだが果たして?
勝利はほぼ確定しているので、勝利の仕方に注目するとしましょう!

しかし、柱の文言がなんだか厄い。
佐藤タカヒロ先生は原稿を土俵と呼ぶとある。
つ・・・つまり、原稿は地獄だと先生は仰ってるということなのか・・・!!
漫画道ってのは怖いっすね。



第17話/初土俵  (2012年 42号)


注目の新人、常松の初土俵。
その直前にあるのは日本人最重量、大森海。240kgの肉塊!!

大森海さんはいつになく燃えている。
それもこれも、相手の常松が空流部屋だからである。
本来なら初土俵だし、プロの厳しさをじっくりと教えてやろうかというところ。
しかし、今回はそんなつもりはない。完膚無きまで、速攻で叩き潰す!と考えている。

怨むのなら・・・お前の兄弟子を怨むんだな・・・!!

兄の大森山さんに続き、弟にまで怨まれている仁王さんでありました。
まあ、最重量の誇りを持つ肉体を持ち上げられてしまったわけですからねぇ。そりゃ屈辱でしょうさ。
というわけで、あの敗戦から20kg増量してきたらしい。な、なにぃ!?
素人目にはまったくわからんだろうがな!と誇らしげな大森山さん。確かにわからんわ!!
というか、大森山さん、前は幕下でしたよね。
今回の紹介では三段目になっているんだが・・・落ちたのか・・・

それはさておき。大森山さん。
弟の大森海さんに気をつけるよう警告する。
相手はあの悪魔の弟・・・つまり小さな悪魔・・・プチデビルだ!!

そんな可愛いもんじゃないっしょ。悪魔の弟は普通に悪魔さ。それを思い知る展開となる。

いよいよ立ち合い。
素人目にはわからない大森海さんの増量だが、常松は気付いている様子。
動画で見た時より少し太ったか・・・?とか考えている。

オイシーよな・・・初っ端カマすには最高の相手だ・・・

全くですね。
デカイ奴は強い。そのイメージは万人が持つものであるし、真実でもある。
そのデカイ奴を倒せば、倒した者はよりいっそう強く見える。
だから、漫画などではデカイ奴が真っ先にかませにされる。それはデカイのが強いと知られているからである。
プロレスなんかにもいえる話ですな。デカイのを倒すのが盛り上がるというのは観衆の心理なのである。

さて、そのデカイ相手に立ち向かう常松。

まずは立ち合い・・・十中八九体格の利を活かし正面から・・・前に出る。
この肉だ・・・どんな強烈に当たろうと吸収しちまうだろう・・・
まずは横にいなす。
が・・・このデブは付いてくる。

さすがに大森海さん。ただ太っているだけではない。意外に動けるからヤバイ。

だがこの時・・・右足が3cmほど浮く・・・!!

浮き上がった右足を蹴足繰りで払う常松。
危うく倒れそうになる大森海さんだったが、常松の頭を抱え込むようにしてこらえる。
本当、身体の割に身軽ですなぁ。動けてる!動けてるよー!

今場所は稽古十分。体はキレキレなんだよ。そう簡単にキマるかバカ!

大森海さんも、頑張って十両への返り咲きを狙っているんですなぁ。
まあ、夢のような時間だったようですし、そりゃあ必死に稽古にも取り組みますわな。

お前は全部研究済みだ。ブタ・・・

そんな大森海さんに酷いことを言ってのける常松。
そして、ハズをとり、一気に押す!!
ドドドドドと前に出る常松。大森海さんは止めることができず後退していく。
あんなデケーのに押し勝ってるなんて、スゲーバカ力だ!と驚く観客。
だが、これは力ではない。技術だ。
あれだけ背骨を伸ばさせられたら簡単に押されてしまう。
ハズをとり、相手の上体を起こして押す。理に適った攻め方である。

ヤロー・・・稽古場とは別人じゃねーか・・・

やはり本来の姿は隠していた様子。
稽古場では抑えるようにしているのか、本当に身内にも隠そうとしているのか。
どちらかはわからないが、鯉太郎にとっては気に入らない話でしょうな。
まあ、鯉太郎本人も本場所と稽古場では全然違ったりしますが、これは隠しているわけでもないしなぁ。

押し捲る常松。ついに大森海さんの足が俵にかかる。
が、そこで止まった。まさに土俵際という所でありましたな。
大声を上げ、必死で押す様子を見せる常松。だが、これは演技。
本来ならこのまま押し出せたのだが、わざとここで止めた様子。

面白くねーだろ・・・簡単に終わらせちゃ・・・
お前ら2人の取組の記憶を・・・完全に消してやる。よーく、見てろ!

意外と鯉太郎や王虎のことを意識している常松でありました。
王虎はともかく、鯉太郎に関しては眼中にないみたいな発言してましたのになぁ。
言い争いをしているうちに、踏み台以上に気にかける存在になっちゃったのかしら。

常松が大森海さんの右腕を絞る。
関節を決められた大森海さん。痛みで体が浮く。
これも素人から見れば、押されてパワーで浮き上がったかのように見えるわけだ。
そして、ここでひと押し。

どうした・・・頑張れデブ。

挑発。この一言によって、反撃にでようとしてしまう大森海さん。
しかし、その反撃は常松の狙い通り。
前に出ようとした大森海さんの力を利用し、横にいなす。
そして、右腕を取り、小手投げ!!
あごがビッタンとつぶれるような感じで投げられる大森海さんでありました。

あの巨体を投げるとは・・・!
! 観客は大盛り上がり。うーむ、常松は本当に盛り上げ方を心得ているようですなぁ。
学生横綱で今場所初土俵の、常松洋一。
観客や記者の心にバッチリ印象を植え付けることに成功した様子。
特に記者の関心は大きい。今後は優勝候補の一角として扱われることになるでしょう。
その小手投げは王虎並だと評しているが・・・

笑わせる・・・コピーはアイツの方なんだよ・・・
まあいい。すぐにわかる。今場所は俺の土俵だ

不敵に微笑む常松。
うーむ、小癪な感じであるが、結構格好良く見えますなぁ。

常松は技術力と分析力に長けた力士であると判明しました。
動画を見て研究し、弱点を発見する分析力。
そしてその見つけた弱点をしっかりとつける技術力。さすがに学生横綱。レベルが高い。
鯉太郎の下手投げに入るときのスキとかも観察してすぐに見つけてましたしねぇ。
うーむ・・・味方になってくれればすごく頼もしい男であるのだがなぁ。

常松は観客の盛り上げ方も心得ている。
デカイ奴を倒した方がオイシーという考え方。プロレス的な考え方も心得ている。
ということは、もしかして。前回鯉太郎に言っていた、わざと避けなかったんですよね発言。
あれは煽りではなく本心で言っていた可能性もあるんじゃないだろうか・・・!
いやぁーやりますね鮫島さん。あそこでわざと張りを喰らうなんて盛り上げ方を心得てますよ!
という気持ちで発言したのに、プロレスじゃねーんだと返されて、内心不満だったのかもしれない。
そういう擦れ違いが険悪な雰囲気を生み出してしまっているのかもしれませんなぁ・・・
笑っちゃいましたよとか言っている時点でありえないけど。

そういえば、今週の鯉太郎。氷で顔を冷やしてたけど、さすがにアイスは使わなかったか。
それとも、あれは砕いたアイスで冷やしているのか・・・!?いや、さすがにそれは・・・

初日から盛り上がりを見せている五月場所。
あとは白水さんや天雷の取組が残っているが、この2人が再び戦う流れになるのだろうか?
それと、田上さんやブタ河豚。BURSTになってから名前の出てこない蒼希狼。
まだまだ気になる顔ぶれは存在している。果たしてどのような取組が行われるのか。期待であります。



バチバチBURST 3巻


第18話/尊敬  (2012年 43号)


240kgの巨体を投げた!
ということで、観客の心をしっかりと掴んだ常松。アイツは本物だぜ!!

注目されながら引き返す常松。
その帰り道に待ち構えるは・・・空流親方。おやおや、ついに動きましたか。
親方だけではなく鯉太郎も動く。
投げなくても押し出しでキメれたというのは鯉太郎も気付いていた様子。
というわけで、鯉太郎も常松に説教食らわせてやろうと動き出すのでした。

さて、空流親方と常松のやり取り。
押しでキメれたはずなのにの、なぜすんなりキメなかったか?
その質問に対し、常松。今日は自分のデビュー戦なので、より強烈に顔を売っておこうと思いまして、と答える。
プロとして、外連味のある面白い取組を客に見せないと、とのこと。

勘違いするなよ、こわっぱが・・・

おっと。親方が怒った!!
この正面きっての迫力に、さすがの常松も黙る。
そして親方による説教開始。

力士ってのは勝ち星一つ手にするタメに必死に稽古をつんで土俵に上がるんだ。
キメられる時は無情にキメるのが相手に対する礼儀。
客・・・?マスコミ・・・?面白い取組だと・・・?
お前が今まず一番に意識すべきことはそれ以前に・・・相手への敬意だ
それがない者は強くなるどころか必ず消えちまう。

重要なものでありますよね。
さすがにブタフグのような腐った相手に敬意を払うことはないが、基本的には相手に敬意を払って欲しい。
なめた相撲を取られて涙を流す大森兄弟を見るとそう感じてしまう。
でかいがゆえにかませにされやすい兄弟は大変だなぁ。

常松よ・・・お前がなぜプロに入ったのかはわかっとるよ・・・
お前の大学の恩師に会ってな・・・だからこそまずは・・・

冷静に受け流そうとしていた常松だったが、いきなり血相を変えて親方に掴みかかる。
大学の恩師ねぇ。一体常松の過去には何があったというのだろうか?
金目当てにプロ入りする理由でもできたのだろうか?
そして、空流親方が前に誰かに会いに行ってたのは、この常松の恩師だったのですね。よい伏線回収だ。

親方の胸倉を掴んで凄む常松。その行為に、影で見ていた鯉太郎激怒。ツネマツー!!
テメーオヤジに何やってんだバカヤローが!!

いきなり蹴りが飛んでくるとは思いませんでした。ヤクザキックという奴か。前のめりすぎるけども。
言葉も合わせて聞くとヤクザキックという言葉が非常に似合うので困る。
そして常松を壁に押し付ける鯉太郎。
目を逸らして相手にするのを避けようとする常松は相変わらずヒネておりますなぁ。

今日という今日は勘弁ならねぇ!と怒鳴る鯉太郎。しかし、親方はそれを止める。
代わりに常松に対し、今場所はしっかりと兄弟子を見ておけよと忠告する。

お前に何が足りないのか・・・プロとは何か・・・きっとわかるはずだ。

そう述べる空流親方。分かってくれるといいですね。

さて、白水さんが勝利を収め、本日の幕下の取組は終了。
天雷の出番はなかったが、まあ危なげなく勝利したのでしょう。
というわけで、取組は進み、仁王さんの出番である。
仁王さんは十両から昇進し、今場所から新入幕となる。そうかぁ。仁王さんもついに幕内か。

仁王伝説の幕開けじゃ!!!

調子ノリノリの仁王さん。観客席にまで塩を飛ばして顰蹙をかっている。何をしているのやら。
硬くならないのはいいが、逆にもう少し落ち着けと。

相手が幕内のどのレベルなのかは知らないが、立ち合いから一気に仁王さんが押し捲る。
ぶつかった時点で優勢であり、押しも返される気配がない。圧倒的な実力差だ!
でも勇み足で負ける。またかよ!!
阿形時代からこういうところは成長してないんですなぁ・・・
毎回毎回黒星付く度に勇み足という仁王さん。学ばないお人だ。
だがまあ、勇みすぎた結果が勇み足だと考えれば気合十分とも言えるわけで。
ようするに基本ができてないってことだな。やっぱだめじゃん!!
これにはさすがの鯉太郎。ツネ見てるかな・・・と不安になっちゃう。困った兄弟子だよ!!

とまあ、星は落としたわけだが、相手力士を驚愕させるには十分だった様子。
今後も迫力で押しつつ、勇み足を続けていくことになるのでしょうな!

一日目に快勝を重ねる空流部屋。最後で一人思いっきり黒星つけましたけどね。
ともかく、そんな五月場所の一日目は終了。
続いて翌日の二日目。
一日目は取組がなかったあの男の出番がやってくる。
同じ虎城部屋の人間から、変わったな・・・あの人・・・と言われるのは・・・田上さん!!
ついに闇に堕ちた田上さんの姿が明らかになるのか!?
ある意味今場所最も注目される展開でございます。果たしてどのような姿になっているのか!?

今回は顔を伏せていたり後姿だったりでわからなかった。
しかし、おそらく見た目からして大きな変化があるんじゃないかと思われる。
そして取組の内容も大きく変化していると思われる。
勝ちを意識した相撲を見せてくれるようになると思うが、果たしてどうなるのか。
考えてみると、これまでの田上さんは相手に敬意を払った相撲をしてきた。
王虎はそれじゃもう伸びねーよと言い、田上さんをダークサイドに堕とした。
今回空流親方が述べた、相手に敬意を払えというスタイルとは真逆の存在になっている可能性がある。
常松の成長に関わるキーパーソンにもなりそうですな、田上さん。期待したい!!



第19話/これでいい・・・  (2012年 44号)


脳裏によぎる悪魔の囁き。
執拗な罵倒を受け、闇へと堕ちた力士――田上。その表情は暗い。

バンテージをグルグル巻き、右手をモリっと膨らませる。
これで叩きつければ強烈な一撃になりそうですな。

そうやって事前準備を行っているところに、騒がしい連中がやってきた。鯉太郎と大吉である。
鯉太郎は前日取組があったので本日はお休み。
しかし関取は毎日取組があるので、仁王さんのために場所取りをしておかないといけない。
朝一で場所に入って明荷を置くのも付き人の大事な仕事である。
しかし、どうやら大吉。東と西を間違え、さらに一番奥。横綱が仕度する場所に置いてしまったらしい。
それはさすがに色々と問題になりますわな。
というわけで、鯉太郎。大吉に説教しながら西の支度部屋に荷物を移動させる。
が、この時間ではいい場所は既に取られています。
だが、三役クラスの場所に置いてまた仁王さんがケンカしたりしたら大変だし・・・

というところで、田上さんですよ。丁度いいところに知った顔を見つけた!
田上さんに場所を譲ってもらって事なきを得る鯉太郎たちでありました。

田上さん、闇堕ちしたかと思ったが、どうもまだ吹っ切れている感じはしない。
フレンドリーな感じこそはしないが、それでもちゃんと譲ってくれるとはお優しい。
なので、鯉太郎も素直にお礼を言い、さらに頑張れよと激励までしてしまう。
そんな激励を聞くと、王虎のあのセリフが思い起こされる。だから同期にもナメられるんだよ、というセリフが。

頑張れ・・・?
殺すぞ・・・

鯉太郎としては煽るつもりも何もない。特に意識したわけでもない激励であったろう。
しかし、ナーバスになっている田上さんには悪い意味で響いてしまった様子。うーむ。

土俵に立っても相変わらず深く悩んでいる様子の田上さん。
プロ入りをする際、監督にはこう言われていた。お前はこれ以上強くはならんぞ、と。
しかしその言葉に反し、成長して幕下まで上がってきている。それも短期間の内にだ。

虎城「やめちまえ・・・貴様なぞとうに底が見えとるわ!」
王虎「ジジイの言う通り、底が見えてんだよお前は・・・お前だって本当は感じてるんだろ?ここが限界だってな・・・」

部屋の親方とその息子による罵倒。それが田上さんを悩ませる。
怒りと共に繰り出される張り手。強烈!!
いや、待った待った。まだ相手の手付き不十分の状態ですよ。
まあ、一回ぐらいはよくある話でございます。やられた方はムカツクだろうけどね。

貴様は何をやってでも勝つという・・・勝利への執念が圧倒的に欠けとるわ!!!

虎城親方のこの言葉は重く圧し掛かっている様子。
だから田上さんは思うようになった。何をやっても、どんな手を使ってでも、認めさせてやると。

ベゴンと強烈な張り手が決まる。
だが、これまた立会い不十分の状態でございます。
覚悟が決まってない状態で強烈な張り手を顔面にもらうのはたまらない。今回はモロに入ったしなぁ。
結果、力が入らず、開始したところでブチカマシをもらって轟沈。
田上さんは確実な勝利を手にするのでありました。

もちろんこの取組の内容には観客席からブーイングが飛ぶ。
わざとかどうかは判断し辛いし、ルール的にはギリギリだが、心象は最悪ですわな。

とにもかくにも勝利はした。
だが、自分らしくない取組を行った罪悪感は後になって田上さんを責め上げる。
土俵を下りた時点で顔が真っ青になり、今にも吐きそうな様子の田上さん。
うーむ、やはり悪いことが体質に合ってないんじゃないですかねぇ?
王虎はその田上さんの様子を見て笑みを浮かべているが・・・これで予定通りなのか?

俺は間違っちゃいないと罪悪感に苛まれている田上さん。
その前に現れたのは十文字部屋の元十両。現在幕下の大鵠ことブタフグ!!
今や十両時代の肉体は見る影もなくやつれた様子であったのだが・・・復活したのか?
虎城部屋に稽古に来たときは廃人のような状態であった。
阿吽に敗れたショックがずっと響いていたのでしょう。
しかし、今は元の調子を取り戻しつつある様子。肉体はともかくむかつく喋りが戻ってきやがった!
いや、そこだけ戻ってこられても困るんですけども。

さすがに悪知恵の働くブタフグ。田上さんのバンテージ割り増しや不意打ちを見破っている。
しかし、この先もずっと通用するかは怪しいんじゃないか、とのこと。
なんせ同期の連中はハートもボディも強い。2発いいのをもらったぐらいでは倒れるまい。

ボクならソレに鉄板いれちゃうかもな〜〜〜〜

入れても倒せるかはわかりませんけどね。
というか、さすがにそれをやったらバレるし言い訳が効かないでしょ。
ブタフグも実際にはそういう後に証拠が残るようなマネは早々しないはず。他人事だから言ってやがるなこいつめ。

そういった感じで、闇堕ちしても相変わらず煽られる田上さん。
そんな田上さんに対し翌日の組み合わせが発表される。
三日目に発表された割は、鮫島−田上
いきなりの鯉太郎との戦いが実現することになりました。うーむ、早速でありますか。

闇堕ちした田上さん。
勝利への執念が磨かれたのかと思ったら・・・なんだか間違った方に突き進んでいる気がしてならない。
取組は普通に行うが、勝つための貪欲さが凄いって方に行ってほしかったんだけどなぁ・・・
勝つため、いざとなればヒジを使うことも辞さないとか。あれこれ蒼希狼のキャラじゃん。
なるほど。キャラ被りを避けるためにこうった方向に進んじゃったんですね。いやそれはどうなんだ・・・?

田上さんも色々と厄介な状況に身を置いている人である。
黄金世代と呼ばれるような同期と一緒なのは田上さんにとって幸か不幸か。
置いていかれるまいと自身も成長できたのは幸運だったでしょう。
しかし、その成長についていけなくなった時、それは逆に負い目となってしまう不幸。
実のところ、結構なスピード出世だし、期待されてもいいぐらいな成果をあげているんだけどなぁ・・・
竹虎さんが虎の名前をもらってるんだし、田上さんだってもらってもよさそうなものなんだが。
やはり鯉太郎に負けてしまっているというのが問題か。虎城親方の印象を悪くしちゃってるんですかね。
虎城部屋でなければ精神的に追い詰められなかったんじゃないかという不幸。
でも虎城部屋で猛虎さんに鍛えられたから幕下まであがれたんじゃないかという話もあり・・・うーむ。

ともかく、鯉太郎との取組である。
万一これで田上さんが鯉太郎に勝利したらどうなるのだろうか?
汚い取組であるが勝利した。虎城親方も誉めてくれた。
てな話になったらもう田上さんが戻れなくなってしまう気がしてならない。怖い。
でも、鯉太郎が勝ったら改心して引退なんて話になったりはしないかという怖さもある。
闇の力を取り込み、上乗せして正道に立ち返る田上さんが見たいところであるが・・・
その期待が叶うかどうかは難しいところでありますなぁ。



第20話/どすこーい  (2012年 45号)


え〜〜〜何ですかソレー!聞いてないですよ〜〜〜〜!!

夜の空流部屋に響き渡る覚悟なき咆哮。
どうやら大吉、前相撲のことを前日まで聞かされていなかったらしい。
たった三番相撲を取るだけと白水さんは言うが、ヘタレの大吉には三度も殺されるという連想にしかならないらしい。

わかったわかった。うるせーな・・・
こんな時は川さんが取って置きの秘策教えてくれっから・・・

川さんの秘策を大吉が用いるだと・・・?
どんな技が飛び出すのやら。あまり激しい動きはできなさそうですしねぇ。

さすがに早い時間は支度部屋もガラガラである。
中には緊張した面持ちの新弟子たちが準備している。
大吉は中の人たちが怖いので廊下で準備。鯉太郎がまわしを締めてあげている。
しっかり締めたほうがまわしを取られにくい
その理屈はわかるがさすがに締めすぎだろう。肉がはみ出してるぞ。ハムじゃないんですから!

まぁ・・・経験者なんかは結構やるけど・・・
あとは似たよーなモンなんだし・・・頭っから思いっきりやってこい!

学生時代にやっていたとかでもない限り、新弟子なんてまだまだ未熟な連中の集まりですものね。
鯉太郎は田上さんや王虎などと経験者ばかりと当たっていた感じですが。
その辺りも含め、鯉太郎の時期の新弟子って本当に黄金世代だったんだなぁ。

さて、土俵を挟んで東と西の新弟子たちが出揃った。
並んでいる順番で誰と当たることになるかわかる。指差し確認で対戦相手を確認する大吉。
そして、確認した対戦相手は・・・ピョコっと表現されるのが似合う小兵。
よっしゃ―――!!

思わずガッツポーズを決める大吉でありました。
そりゃあそうだわな。明らかに小さすぎる。本当に新弟子検査を通ったのかと思える小ささだ。

おいおいおい本気でござるか?こんな僕でもこれはわかるよ・・・
君は違う・・・・・・君は違う!!

そこまで力を込めて言わなくても。
でも油断は禁物である。目つきは鋭い相手だ。
新弟子検査ギリギリといえば、鯉太郎だって体重ではギリギリだった。むしろ文字通り水増ししてたくらいだ。
ならば鯉太郎のように暴力三昧の日々を過ごしてきた可能性はありえる。
それで町にはもう相手になる人間は1人もいなくなり、猛者を求め流れ流れてこの角界へ辿り着いたんじゃ・・・

勝手に空想を膨らませてビビル大吉。
それゆえか、小兵のはずの対戦相手、小林の体がやけに大きく見える。髪の量も大幅アップだ!!

殺される・・・

すっかり意気消沈してしまった大吉。さっきまでの浮かれた様子は一気に吹っ飛んでますな。
どうでもいいけど、四股名は丸山ではなく大吉の方の名前で呼ばれるんですね。
そっちの方が縁起もいいしって話なのだろうか。
ともかく、心のスカしを決めようとした大吉に喝を入れる鯉太郎。

起きろコラ!!取組前からのまれてんじゃねー!!
根性キメろ!!お前言ってただろ!もうただのデブじゃねぇ・・・相撲取りだってよ!!
仁王さんの顔を毎日見てんだろーが!こんなトコでビビッてんじゃねーぞ!!

鯉太郎のこの言葉は効果覿面。
そう、対戦相手を恐れる必要など無い。なんせそれよりもっと怖い仁王さんの顔を毎日見ているのだから!
思い出せ・・・あの恐ろしい・・・恐ろしい顔を・・・

思い出した結果、そっちでビビッちゃう大吉でありました。
その代わり仁王さんのオーラも背負ったので相手も驚いちゃってますけどね。ハハハ。

というわけで、ついに土俵にあがることになった大吉。
手をつく姿勢のへっぴり腰がなんだか面白い。内股すぎる!
小林の方も立会い時に腰が浮いてますね。新弟子はまだこんなものってことなんですかねぇ。
この取組前の連中も昔の白水さんのようなペシペシ相撲だったし。
ともかく、やるしかないと覚悟を決めた大吉でございます。

大丈夫・・・僕には川口さんから教えてもらった秘策がある・・・
やるしかない・・・秘策!

白水さん曰く、決まれば確実に主導権が握れるという技術。その秘策とは一体何か。
どうでもいいが、大吉の回想の白水さんえらい下衆な顔になってるな。
大吉ビジョンではそう見えているということなのだろうか。酷い話だ!!
というのはさておき、教えられた秘策とは・・・ネコだまし!!

なるほど。これならデカくて鈍い大吉でも十分できる技ですな。さすが川さん。
決まれば確かに主導権を握れそうな技である。
が、相手も同時にネコだましを放ってきていたという。
同時に決めて同時に驚きながら退くという2人。何この戦い。

ブタがネコだましだと・・・!!

言いたいことはわからないでもないが、そこはどうでもいいじゃないですか。
ともかく、立会いの衝突は起きず、距離は開きました。

さぁ・・・ショータイムだ・・・!

ファイティングポーズを取る小林。シュッという息吹と共にジャブのような張り手が繰り出される。あ痛っ!

お前に元ボクサーの俺の攻撃は見えまい。
高校インターハイ新潟県十日町ベスト16だった俺がなぜ角界に入ったのか・・・
今、体重を無差別に戦うプロの格闘技は大相撲だけ・・・最強の男・・・それが俺の夢!

夢はでっかくて素敵だと想います。
でも、町のベスト16でボクシング辞めた状態で言われましても・・・何なのこの人!
実際、小林の張り手は確かに早いのかもしれないがさっぱり効いていない。
ボクシングでも階級差があれば攻撃がほとんど効かないようになると言われている。
小兵の小林の張り手など、大吉の弾力の前にはほとんど無力!!

とはいえ、叩かれたら痛いことには違いない。倒れないけど痛がって立ち尽くす大吉。
その大吉に、自分の体信じて前に出ろ!と声援を送る鯉太郎。
確かに、デカイ体は才能だと言うのは痩せの暴論かもしれない。

でも・・・でも・・・僕にそんなコト言ってくれる人は・・・鯉太郎さんだけだ・・・
鯉太郎さんの気持ちに応えなきゃ・・・
僕はもうただのデブじゃない!!

うーむ、かなりいい信頼関係が築けているじゃあないですか。癒される。
覚悟を決めた大吉。頭から小林に突っ込んでいく。
両手を下ろして本当に頭だけで突っ込んでいく姿勢がなんだか可愛らしくもある。
何度か交わされたが、ついにその突進が小林を捕らえた!

こっ・・・これが力士・・・

さすがの体格差か。
大吉の体でまともにブチ当たれば素人は確実に吹っ飛ぶ。その考えは正しかった。
空を舞う小林。そして同時に空を舞う大吉のまわし。っておい!!

フッ・・・とんでもねー男がいたもんだぜ・・・大吉とか言ったな・・・覚えておこう・・・

クールに決める小林。
いや、この状況でそんな決め方されましても。
モロだしの状態のまま感極まってガッツポーズを決める大吉。
初めて相手を吹き飛ばしたわけでしょうし、その嬉しさは望外でありましょうな。
ただ、まわしが外れた場合は"不浄負け"という反則負けとなります。
結果は敗北。しかし、結果より大きなものを得たんじゃないかと思えます。
勝つことの気持ちよさを知った大吉。ひょっとしたら今後化ける可能性があるんじゃなかろうか。
ついでに露出が気持ちいいとか目覚めちゃった可能性もあるんじゃなかろうか。
勝利の興奮と露出の興奮が脳内でごっちゃになると危ないですね。だからまわしはちゃんと締めとけって言ったろ!!

てなわけで、丸山大吉の相撲人生の始まりでありました。
やぁ、鯉太郎のギラギラした前相撲とは大違いですねぇ。楽しそうだ。
この所、常松や闇堕ちした田上さんなど重い展開が多かったので、今回は癒し回になってよかったです。
しかし、まさか大吉が癒し枠になるとはねぇ。
丸坊主になった辺りから大分見た目もマシになってましたしなぁ。いいことである。
今後の大吉の相撲人生に幸あらんことを!



第21話/大丈夫・・・  (2012年 46号)


僕ならソレに鉄板入れちゃうかもな〜〜〜

ブタフグの悪魔の囁きに耳を貸す田上さん。

しかたねぇ・・・勝つためだ・・・
しかたねぇ・・・勝つためだ・・・
しかたねぇ・・・勝つためだ・・・
しかたねぇ・・・しかたねぇ・・・

それは、愛しき勝利のため
それは、憎き敗北のため

確かに、勝ったやつがえらいんだよとは言われてきていた。
だからといって、手段を選ばずに勝ったやつが果たしてえらいと言えるのだろうか。
しかし、どのような理由をつけようと黒星は黒星でしかない。
それを避けるためにはどんな手段も使う。勝負の世界とはそれだから非情と言える。しかし、これは・・・

苦悩しながら道を踏み外そうとする田上さん。
それに対し、鯉太郎はまっすぐ挑みかかろうとしている。
今場所は部屋がゴタゴタしていたからいまいち調整できていない。そのため直前まで白水さん相手に汗を流す。

鯉太郎は調整できなかったのは自分が未熟だからだという。大人な意見ですなぁ。
それを聞いて大吉、僕のせいじゃないのかと安心する。空気を読み取れ!まだまだ子供だな。

本日の相手は同期の田上さんということもあり、調整に余念のない鯉太郎。
白水さんも一度、まだ髷の結えていないビッグヘッド時代の田上さんと当たっている。
正統派の上手い相撲を取る奴だったという感想。いい印象ですなぁ。
でもその印象を覆すことになる場所となりそうだ。

東で空流部屋が調整を行っているころ、西の虎城部屋の連中はというと・・・ギスギスしていた。
悪堕ちさせてきた相手である王虎に話しかけられる田上さん。
やはりまだまだ覚悟は決まっていないようで、その表情に精彩の色はない。

壊せ・・・そこまでしたら後はねぇぞ・・・どーせやるならところんやれ。
己の存在を肯定してこい・・・

追い討ちをかけるように呟きかける王虎。うーむ、悪いやつだ。
というか、王虎は一体どういう結末を望んでいるのだろうか?
てっきり鯉太郎は自分の手で叩かないと気がすまない人間だと思っていたのだが・・・
ただ潰すだけではあきたらず、徹底的に追い込んでから潰してやるとか考えているのだろうか?
それとも、鯉太郎のことを逆に信じているという話だったりするのだろうか?
それともそれとも、鯉太郎よりも田上さんを育てるほうが大事と思っているとか・・・それはさすがにないか・・・?

わかってんだよ、そんなことは!!

声を荒げる田上さん。
そう、わかってる・・・もう・・・後戻りはできねぇ・・・
ここまでやったんだ・・・ここまでやってしまったんだ・・・
勝つために・・・鮫島に、俺を刻む・・・

暗い表情のまま土俵に上がる田上さん。
同期の面々は皆この取組を注目している。さすがに皆同期のことは気になるか。
あ、蒼希狼の姿だけは見えないが・・・まあ、アイツは前から同期の取組でも姿を見せてなかったしなぁ。

まずは立ち合いだ・・・呼吸を合わせて先にブチカマす。
集中だ。流れを掴んで一気に・・・・・・

右に寄ってる・・・!?

立ち合いの線の右の方に寄って腰をおろす田上さん。
何だ?と思ったら今度は左に寄っていった。
どういう考えか?と思ったら、単に動揺を誘い集中を乱すのが目的だったらしい。
さすがにそんなセコイ手は通じませんわな。技巧といえなくはないけど、妙にセコイ。

この土壇場の場面に来ても、最後まで迷いを見せる田上さん。
やるしかない。それは分かっている。覚悟は決めた。迷うな。

やれる・・・やれるやれる。やれ・・・やれる・・・のか・・・俺に・・・?

うわああああ!!

迷いを見せた。と思ったら次の瞬間には突っ込んでいた!!
これは読んでいる方もビックリな流れである。何!?いきなりだと!?
読者の読み方と呼吸を合わせていた鯉太郎も不意を突かれたに違いあるまい。
いや、こっちの呼吸に合わせてたわけじゃないのは知ってますが。

ともかく、手つき不十分の状態で強烈な突きをもらってしまった鯉太郎。
土俵の上に上半身を横たえるような格好となっているが・・・大丈夫か?これ・・・?

吹っ切れた様子の田上さん。これが最後の一線であったのか。
もう汗もかいてないし、完全に闇に染まったという感じの顔になっている。
まあ、苦しみながら悪いことをするよりは、こっちの表情の方が多少マシかもしれませんがね。

さて、不意打ちが決まってしまったわけですが、果たしてどうなるのか。
というか、本当に田上さんは鉄板を仕込んでしまっているのだろうか?
少なくとも自分でここまでやってしまったんだとか言っているからには仕込んでそうな気はするが・・・
やってしまったというのが全く別の話だったりする可能性もなくはないですけどね。
取組前に虎城親方に、負けたら辞めてやるぜと言い捨ててきたとかあるかもしれませんし。
まあ、そうでなくても田上さんの今後は気になるのですよね。
ここで鯉太郎に勝っても負けても明るい未来があまり見えない。
どうにか逆転の目はないものか・・・
頭を打ちつけて休場するが、一場所分くらいの記憶が吹っ飛ぶとかそういう展開ならどうだろうか。
引退しようとするところを猛虎さんと竹虎さんで説得して食い止めるとか。
そんな感じで元の気のいい田上さんに戻ってくれると嬉しいのだが・・・難しい話でしょうなぁ。



第22話/差  (2012年 47号)


ついに同期の鯉太郎に対しやっちまった田上さん。
なんだか吹っ切れたような表情になっていますが・・・起き上がる鯉太郎を見てまた戸惑い出す。
うーむ、なかなか覚悟が決まらないみたいですねぇ。

頼むよ・・・立つなよ・・・終わりにさせてくれよ・・・

やっぱり田上さんは精神的に、魂的にこういう行為が向いていないんですな。
取組を見ている石川も、田上はそんなセコイ男じゃないと保証してくれている。
虎城部屋の1人ではあるが、田上さんは田上さんとして同期に評価されている。そういう人なのだ。

さて、不意打ちでモロにカマされて倒れた鯉太郎。
だが起き上がり、頭を下げる。え?

やめろよ・・・俺がつっかけたんじゃねーか・・・何でお前が謝んだよ・・・

これは確かに田上さんが惨めになりそうな展開である。
狙ってやっているなら鯉太郎も酷い精神攻撃をしかけてくるもんだといえる話である。
が、もちろん鯉太郎にそんなつもりはない。
自身が受けたのは集中が足りていなかったからだと反省している。
そして、そんな不甲斐ない状態を見せてしまったことに対し、相手に謝罪している。
取組前も白水さんに言っていたように、田上さんを気の抜けない相手だと思っているのだ。

しかし、王虎はこう解釈する。鮫島にとっちゃテメーんなんて眼中にねーんだ。ナメられてんだよ、と。
いや・・・ナメるほどの存在でもねーんだ・・・

王虎によって闇堕ちさせられた田上さん。
そういった内容のことをたっぷり吹き込まれているせいか、鯉太郎は自分なんか眼中にないと思ってしまっている。

わかってたさ・・・お前にとって俺はただの・・・同期に過ぎねーってのは・・・
前相撲で初めてお前に負けた時、どこかで納得しちまってたんだ・・・
血が・・・才能が違うコトを・・・
負けへの悔しさも復讐心も湧かないほど受け入れちまっていた・・・・・・

そういえば、まだ教習所に通い出していたころの田上さんはそんな感じでしたな。
鯉太郎のことを、俺らみてーな人間とは根本が違うと評してしまっている。
あの時点で既に諦観の状態にあったということか・・・
同意しなかった石川はまだ活躍の芽があるってことなんですかね。

そんな俺が・・・お前の中に住んでるはずがねーよな・・・

悟った感じの田上さん。
だからこそなのか、自分を鯉太郎に刻み付けるために再度立ち合い不十分の状態でつっかける。
しかし、集中していた鯉太郎はこの攻撃を腕で防ぐ。

一撃目はかばっていた石川であるが、さすがに再度の行為は看過できなかった様子。
しょーもねーコトしやがって!と罵倒する。
そして田上さんも、ワザとだよと鯉太郎に明かす。

真正面から意地張って勝負すんのが俺ら同期じゃねーのかよ!!
ずっとそうやってきたじゃねーか!!
しょーもねーヤローに感化されてんじゃねーぞ、バカヤローが!

叫ぶ石川。想いはよく分かる。
しかし、王虎も一応は同期じゃないんですかね?
前相撲を取り直したり教習所の時期がずれてるから同期にはならないのか・・・?
化粧回しをつけて土俵に立ったのは同じ時期なのになぁ。
まあ、石川の言う同期とはもっと仲間的な意味が篭められているんでしょうな。
でも、だからとって仲間という言葉は使えない。勝負の世界にいる人間は複雑ですなぁ。

俺は虎城の田上だ・・・お前らはただの敵だ・・・

石川の罵声を受け、辛そうな顔でそう述べる田上さん。
しかし、鯉太郎は平然とその言葉を受け止める。

あたり前だ。土俵はそーいうトコだろ

言われて見ればその通りか。
元々鯉太郎は同期であろうがなんであろうが、土俵の上では敵と見なし全力で当たることを良しとしている。
土俵の外でも、他の力士を敵と見なし虚勢を張っていたこともある。
そういった意識を元から持っていたのが鯉太郎なんですな。
だから、多少ダーティーな手にこられたからといって、それで怒ったりするようなこともないらしい。
ううむ、なんとなく人間が大きく見えちゃいますな!!

肝が冷える・・・殺る殺られるの・・・圧倒的な覚悟の差・・・
そうだ。俺の方だったんだ・・・
本場所での鮫島が怖くて・・・俺の方が本気で向かい合ってなかったんだ・・・
だけど俺だって・・・俺だって!

過ちに気付いた田上さん。そういうことなんでしょうね。
もうずっと前に鯉太郎には敵わないと感じていた田上さん。
そうやって及ばないという意識に捕われていたから、先を見据えることが出来ずにいた。
その結果、王虎の悪の道への誘惑に流され、こんなことをするハメに・・・

ようやくハッキヨイの声もかかり、2人の取組が開始された。
果たして田上さんはここから巻き返すことができるのだろうか?
汚い手段ではなく、正攻法で鯉太郎に己を刻み込んで欲しいものである。

相撲とは違うけど、その人格の良さで読者にはいいイメージを刻んできた田上さん。
まあ、そっちの方面で人気が出ても田上さんとしては複雑な気分でしょうなぁ。
お前は俺ら同期の癒し枠なんだよ!とか言われても困るでしょうし。

いい具合に改心してくれそうな雰囲気の田上さん。
しかし、鉄板を仕込んでいたとしたら、さすがに去就に関わる話になると思われる。
ので、本当に仕込んだのか?という所に疑問を呈してみたい。

取組前の描写では確かに仕込んでいるように見える。
だが、あれが鉄板だと誰が言っただろうか。実はただの板チョコだったのかもしれないではないか!!
ひょっとしたら、虎城親方お気に入りの一枚を拝借してきたのかもしれない。
その一枚をトイレで食べる。しかたねぇ、勝つためだと言いながら食べる。
この行為を親方に知られれば相当に激怒されるのは疑いようもない。
が、鯉太郎に勝てばその怒りも帳消しになるかもしれない。
つまり、田上さんのここまでやってしまったんだ、は自分を追い込んだという意味での発言だったんだよ!!

こんな驚きの展開でもいいから、田上さんには元の姿に戻っていただきたい。
そして元気に相撲を取り続けていただきたいものである。癒し枠は重要ですよ!!



第23話/信じろ・・・!  (2012年 48号)


卑劣な手段は捨て、ようやく真っ向勝負に向かい合った田上さん。
だがさすがに鯉太郎。
集中の差か、覚悟の差か、ブチカマシを当てて主導権を握ってくる。

得意の連続のブチカマシ。これで一気に相手を退け押し進むのが鯉太郎のパターン。
なのだが、2発目を当てられたときにおかしなことに気付く田上さん。

・・・!?
いつもより軽い・・・打ち損じか・・・?

迷う田上さんの顔面に張り手を見舞う鯉太郎。
ここで鯉太郎も異変に気付いた。田上さんが・・・いつもより重い!!
逆に田上さんは鯉太郎の攻撃がいつもよりも軽いと感じている。
さすが、稽古場で何回もやり合った仲である。その辺りの感触は記憶されているんですな。

何発も張り手を繰り出し押そうとする鯉太郎。
しかしその連打に効果はなく、逆に田上さんの一発で上体が浮くという結果に。おぉ・・・!!

コイツ・・・先場所とは・・・まるで別人じゃねーか!

驚愕する鯉太郎。田上さん自信も驚愕。読者も驚愕。
田上さんは鯉太郎を相手にしてもいつもの圧を感じない。
厚く巻いたバンテージのせいか?いや・・・そうじゃねぇ。
脇が開かない・・・腰が浮かない・・・足が出る・・・鮫島のブチカマシを喰らっても芯がぶれなかった・・・

そう、これは田上さんが強くなっていることの何よりの証拠である。
それもこれも、王虎と付き合い猛虎さんの地獄の稽古をくぐり抜けてきた結果である。

猛虎&王虎によって雰囲気の変わった虎城部屋。その稽古はかなり厳しい。
多数いる力士の中にも、稽古の厳しさについていけずに出奔する者たちが出てきていた。
そんな中、毎日1番ひどくやられているのに踏みとどまっている男がいた。田上さんである。
去っていく力士に何で耐えられるんですか?と尋ねられる田上さん。

否定したいんだよ・・・自分の限界を・・・
一歩でも・・・1mmでもいいから前に・・・強くなりたい・・・ただ・・・それだけだ。
・・・それだけだ。

積み重ねた努力は決して裏切らない。
積み重ねた分だけは実になっているのだ。
だが、その努力を信じきることができなかったのがさきほどまでの田上さんである。

情けねえ・・・何なんだよコレは・・・
アレだけの稽古をして・・・何で信じられなかったんだ。自分を・・・
否定どころか、自分で認めちまってんじゃねーか・・・ここが限界だって・・・
信じろよ・・・もっと・・・過ごしてきた地獄のような時間を・・・
信じろよ・・・磨いてきた俺の相撲を・・・

段々と田上さんの心が上向きになってきました。いい感じです。
その田上さんの取り組みを見る王虎の表情がやたらと真剣なのですが、これはどういうことなのか?
前回は小者がどうこうとか言っていた人なのだが、今回はやけにマジな感じじゃない?
やっぱり俺が見込んだ通りの男だったな!とか内心思ってたりするんでしょうか。それはそれで。

腰の浮かない田上さんの圧力は手打ちでは止まらない。
なので、カウンター気味の一発を叩き込む鯉太郎。だが、それでも今の田上さんは止まらない。

信じろ・・・押し相撲は、俺が上・・・!!

それを証明するかのように鯉太郎を押し捲る田上さん。ついに土俵際まで追い込む。
鯉太郎としては、なんとしても懐に入り込みたい。
だが田上さんも鯉太郎の左下手の怖さは十分理解している。そうはさせじと一気に勝負を決めにかかる。

見てるか・・・王虎・・・俺がとるぞ・・・鮫島を・・・!!

本当に田上さんが鯉太郎を降した場合、王虎はどんな反応を見せるのだろうか?
きっと田上さんに、俺の獲物だったのに余計なことしやがってと当り散らすのでしょう。
それでいて、内心ではよくやったと誉めたりするのでしょう。あれ?王虎にそういうキャラを望んでいるのか俺は!?

まあ、まだまだ田上さんの勝ちと決まったわけではない。
土俵際に追い込んだが、ここで鯉太郎の反撃。
押し捲ってくる田上さんの張り手を下からハネ上げる鯉太郎。
正面からの衝突では押し返せないが、下から攻撃を逸らすことならば力で負けていても可能である。見事な技術だ。

フン・・・吽形さんみてーなコトしやがって・・・

嬉しそうに述べる白水さん。いいですよね、こういう展開。
そして、田上さんの右腕をハネ上げた時、脇が開く。右のまわしががら空きになる!

あぁ・・・ここまで追い詰めて・・・
いや・・・はねのけろ!!
自分の力で切り開け!!ここで終わってたまるかよ・・・!!

弱気になりそうな自分に活を入れ、ぶち当たろうとする田上さん。
ハネあげられた右腕を即座に戻し、懐に入ろうとする鯉太郎を押し戻そうとする。が――

ベキッ

田上さんの右手と鯉太郎の左手が接触。
掌の部分に当たった田上さんと、人差し指1本で当たった鯉太郎。
結果は言うまでもなく、鯉太郎の指があさっての方向に折れ曲がる。うわぁ・・・

真剣に相撲をとったがゆえの不慮の事故。
であるのだが、ようやく立ち直り、真っ向勝負を挑んだ田上さんの取り組みでこれが起こるとは・・・
見た感じ指自体はまっすぐ伸びてますし、付け根で脱臼しただけかもしれない。
とはいえ、この手ではもう張り手は厳しいでしょうな。
だが、投げならば人差し指は関係ない
中指、薬指、小指。投げに必要なのはこの三本であると吽形さんは言っていた。
ならば、人差し指が使えなくても支障はないのではなかろうか。

とはいえ、ここでの負傷は今後の取り組みにも響きそうである。
五月場所はまだ二戦目。まだあと五戦もあるのだが、一体どうするのか?
負傷による休場を考えるのなら、今回の場所では王虎と当たることはなくなるのだろうが・・・はてさて。

ところで、ここ最近のサブタイトル。19話、21話、23話を並べてみるとなかなか面白い。

第19話/これでいい・・・
第21話/大丈夫・・・
第23話/信じろ・・・!

なんだかとっても言葉を投げかけられている気分になっていいですねぇ。
ちなみに、その間の2話の中に大吉回の20話が入っている。

第20話/どすこーい
第22話/

うむ、田上さん主導の回とは見事にがありますね。どすこーい。
ハッ!それを総括してここ5話のサブタイトルが決まっているということなのか・・・!?恐ろしい・・・!!



第24話/たった一つの・・・  (2012年 49号)


自分を信じ、真っ向勝負!!
と、ようやく立ち直った田上さんであったのだが、ここでアクシデントの発生とは・・・

指が折れ曲がったのは観客にもはっきりと見て取れる。これは驚くわな。
石川や渡部たちも青い顔をしている。
そんな中、1人目を見開く王虎。これは・・・どういう感情の表情なんだ?
微妙に微笑んでいるように見えなくもないが・・・微妙だな。

違う・・・鮫島・・・今のは・・・わざとじゃ・・・

思わず動きを止めてしまう田上さん。
だが、負傷したはずの鯉太郎は止まらなかった。

「かんけーねー」
鮫島は指の折れた左手でまわしぬ喰らいつき、そのまま躊躇なく左下手投げの動作へ入った。

相撲で重要なのは小指・薬指・中指の3本
投げを打つには何の支障もねーよ・・・

やはりそう来ましたか。
まあ、闘争心バリバリの鯉太郎が多少の痛みで止まるはずもありませんわな。

あぁ・・・これで・・・終わりか・・・

鯉太郎の下手投げで、田上さんの視界が土俵へと近づいていく。
人生を投げ打つかのような行為と反省。
それらを1つの勝負で一気に行い、今敗北しようとしている田上さん。それゆえか走馬灯を見ることになる。
田上さんの回想。
そこは子供の頃、わんぱく相撲で二位になり表彰されたときの事。
一位、二位の子は、なんとあの大横綱虎城さんと一緒に撮影されるという!!こりゃあスゲェ。
虎城親方は子供の頃の田上さんに聞く。相撲は好きか?と。もちろん、はいと返事する田上さん。

結構結構。君たちは宝だ・・・その才能を大事に伸ばしていくんだぞ

やたらとキレイな顔をして述べる虎城親方でありました。
対外的な表情なんだろうなとは分かっているが、こういうのを見るといい人なんじゃ?と思えて困る。
そうかー田上さんが虎城部屋に入ったのはこの日の出来事があったからなのかもしれませんなぁ。
子供心に偉大な力士に憧れても仕方なかったでしょうし。
虎城親方も見事に青田買いに成功したってわけだ。覚えていない可能性が高いけど。

まだ・・・終われねえ!!

回想から復帰した田上さん。
足を踏み出し、鯉太郎の下手投げを堪える。
そして右手で上手を取り、左手で鯉太郎の頭を抑える。打ち合う気だ!!

俺に誇れるものは相撲しかねぇんだ・・・こんな形で終わりにしてたまるかよ・・・

田上さんの勝負根性に鯉太郎も応える。
お互いまわしを取っている手とは逆の手でお互いの頭を押さえ、土俵に叩きつけようとする。
まさしく打ち合い、潰し合いといった感じですな。おぉお!!

力の篭る両者。思わず石川も渡部を締め上げるぐらいに見ている方も力が入る。
気合を込めて押し込む。押し込む。折れて避けた人差し指から血が噴出しても押し込む!!

その結果・・・土俵に頭を叩きつけられたのは田上さんの方でありました。

勝利して大きく息をつく鯉太郎。
敗れた田上さんは笑みと共に涙を流している。
精一杯やったという涙なのか、それとも・・・

熱戦は鯉太郎が制することとなった。しかし指の負傷は激しい。
相撲は結構ケガが激しい競技である。包帯やらテーピングやらで身を固めた力士も多い。
指をやってしまうことも無い話ではないようだが、今回はどうなるのだろうか?
無理をさせるべきではないと思うが、王虎のこともあるし無理をしちゃいそうだなぁ・・・

鯉太郎のことも気になるが、敗れた田上さんの去就は何よりも気になる。
最後まで取り組みをしっかりと見ていた王虎はどんな態度を取るのか?
再び鯉太郎に敗れたことで虎城親方はどんな叱責を飛ばすのか?ブタフグは絡んでくるのか?
できれば辞めるとかいう方向には行かないで欲しいところであるのだが・・・
竹虎さんを止めようとした猛虎さんの説得に期待したいところである。



第25話/今より・・・  (2012年 50号)


幕下ながら、客を沸かせる大熱戦を制した鯉太郎。
さすがに勝負を終えて落ち着くと痛みが出てきた様子。
漫画ではこういうとき無理矢理元の位置に戻す手法がよく使われる。
鯉太郎もとりあえずそうしてみるかと手をかけるが、田上さんはそれを止める。

素人が無理に治療しよーとしちゃダメなんだ・・・
脱臼ならスジいわせてクセになるし、骨折なら変にくっついちまって後がやっかいだ・・・

なるほどねぇ。これは大事なアドバイスですな。
脱臼がクセになるってのは固定しているスジがおかしくなるからなんですな。

まぁ・・・ヤマ行かせた俺が偉そーに言うのも変な話だがな・・・
すまなかった・・・鮫島・・・

謝んなよ・・・こんくらい土俵じゃよくある話だろーが。
指1本でお前に勝てたと思えばラッキーだろ・・・

謝罪する田上さんに、ハッキリこう述べる鯉太郎。
本当、鯉太郎の勝負意識は高潔というかなんというか、真っ直ぐですなぁ。
今回センターカラーで鷹を肩にとめていた鯉太郎。龍なのか鯉なのか鷹なのか。
だが誇りを胸にという意味では孤高を意味する鷹はいいマッチングかもしれない。

勝負がつき、引き上げる2人。
さすがに田上さんには非難の言葉が飛んでいる。
指の件については事故かもしれないが、最初の立ち合いはどうみても仕掛けてましたものねぇ。
しかし、本当に王虎と同じ部屋なの?という疑問はどうなんだろうか。
力士壊しまくっている王虎と同じ部屋と言われたらかえって納得できるんじゃありません?
それはさておき、そこまでして勝ちたいのかよ。という言葉に内心で答える田上さん。

勝ちたかったよ・・・でも勝てなかった・・・ここまでやって・・・俺は勝てなかった・・・
思い知らされた・・・本物との差を。俺はこれで土俵から・・・

暗い顔で廊下を歩く田上さん。
そこに現れたのはブタフグ。出てきたな。
ブタフグ曰く、鉄板は入っていないとのこと。ああ、やっぱり入れてないんだ!よかった。
ちゃんと仕込んでたら最初の仕掛けで終わってたかもよ、とのこと。

田上「確かに俺はこんなコスイまねまでして勝ちたかったよ・・・でも・・・ソレは違う・・・」
ブタフグ「同じだろ。半端な奴だな

まあ、道具を用いて威力を上げていることには違いがない。
半端と言われても仕方がない部分はある。
やるならトコトン振り切る。真っ向勝負を捨てたなら心にチリ1つ残さず非道になる。
ブタフグらしい意見でありますなぁ。実践している人間が言うと説得力がある。
でもこれは正直性格によるものですからねぇ。田上さんには全く合わない手法だ。

というわけで、非道なブタフグ。田上さんをも精神的に追い詰め、引退を迫ろうとしだす・・・

やめてもらおーか・・・俺の弟弟子だ

このタイミングで猛虎さん登場!!田上さんを殴りつける。
おっと、ようやくお叱りの時間が来ましたか。
コイワコワイと立ち去るブタフグ。お前の精神攻撃の方がコワイわ。

それはさておき。殴られた田上さん。猛虎さんが説教をする前に、頭を下げる。

もう・・・底が見えました。俺は・・・ここまでです。
後がなかったんです。俺には・・・
キタネーマネまでして今日負けたら終わりだって・・・
真っ向からやっても勝てず・・・非道にもなりきれない・・・
王虎の言う通り、俺はダメな人間です・・・

すっかりしょげ返ってしまった様子の田上さん。追い込まれてますなぁ。

何をそんなに焦ってるんだ、お前は・・・歩む速さなんて人それぞれ違うだろ・・・

全くですな。
実際のところ、田上さんは結構な速度で強くなっていっている。
同期のライバルや部屋にいる強者と渡り合うことで、著しい成長を見せている。
その成長が頭打ちじゃなかったということは、今回の鯉太郎との取組でもわかったのではなかろうか。
しかし、幕下で燻っていた時間のある猛虎さんが言うと説得力のある言葉ですな。
15年やってきた竹虎さんにもまだ行けますよと言ってるぐらいだし。歩む速さは人それぞれだよねって話だ。

やめてくださいよ。アイツらと肌を合わせてればわかりますよ・・・俺に才能がない分・・・痛烈に・・・
結局そんな言葉は優しさでも何でもない!!
ならこの先が俺にはあるんですか!?俺に才能があるんですか!?

知らん!

お前に才能があってどこまで登れるのか・・・そんなことは俺は知らん!
ただ・・・今より弱くなることはない

きっぱりと言い切ってくれた!見事だ!!
まあ、そうですよね。無責任に才能があるとかないとか言えたものではない。
だが、努力は裏切らない。その分を応えてくれる。
才能がないのならば、その分を努力で補っていくしかありますまい。
実際、その努力によって今回鯉太郎を追い詰めることに成功している。
それはバンデージのおかげでも、負傷のおかげでもない。一番大きかったのはまさにこれまでの努力の結果だ。
一時は土俵上でも気付けていたんですけどね。自分を信じることが一番大事だということをさ。

俺がくらわせた弟弟子は・・・王虎とお前で2人目だ

手を差し伸べてそう述べる猛虎さん。いい言葉ですね。
虎城部屋で俺が認めたのは王虎とお前だけだと受け止めれそうな言葉である。
まあ、実際幕下以下の虎城で目ぼしいのはこの2人しかいないと思いますけども。
ともかく、涙を流してその手を取る田上さんでありました。
よかった。これは引退を回避できそうな流れでありますよ・・・

さて、鯉太郎のほうに視点を移してみる。
廊下を歩きながら、あいたたたた!!と派手な悲鳴が聞こえてくる。
叫んでいるのは・・・大吉でした。なるほど、見ているほうが痛ーよと言っているわけですな。
まあ、確かに血を噴出して曲がった指とか見てたら気持ち悪くてしょうがないですものね。解るわ。

治療に向かう鯉太郎の前に現れるマスコミ。おいおい。後にしてくれよさすがに。
虎城部屋の力士が立ち合いで故意に仕掛けてきた。指の怪我も故意なんじゃないか?と考えている様子。
というか、そういう風に煽って、空流と虎城の対決を盛り上げようと考えている記者。嫌な面してやがるな。
これには鯉太郎、くだらねーこと吐いてんじゃねーよと詰め寄る。
が、そこに突如現れた男が、あれは故意でしたと言い出す。王虎だ!何っ!?

敵対のつもりなんでしょう・・・僕が鮫島君に腕を折られたことを田上はずっと許せずにいましたから・・・
申し訳ありませんでした。兄弟弟子を思ってやったこととはいえ、許されることじゃない・・・

なんだろう、これは。
王虎はこのパフォーマンスで何を得るつもりなのだろうか?
許されないので田上さんに責任をとらせ、仲のよかった鯉太郎の怒りをあおるとかそういうのは止めて頂きたいところだが。
単にいい子ちゃんぶりたかったというのなら、まあそれはそれでいいや。
とにかく田上さんが無事ならそれでよい。

しかし、こういう風に負傷しているときには周りがしっかりしてくれないといけませんよね。
セコンドが記者を押しのけて治療室に向かうとか、ボクシング漫画なんかだとよく見る光景だ。
なので、ここでは大吉に頑張ってもらいたかった。
鯉太郎さんに故意ですよねって?それってギャグですか?プフー。
ぐらい言ってくれれば熱くなりそうな場を冷まさせることも十分できただろうに!!

それはさておき。
この日は衝撃的な割が発表されたとのこと。
一体どのような取組が発表されたのだろうか?
いきなり鯉太郎と王虎の一戦が実現することになるのか?
それ以外に衝撃的と言えるほどの組み合わせはあまり思いつかないが・・・
王虎と常松も面白そうだが、幕下に上がったばかりの王虎と幕下付出の常松が2戦目で当たるとも思えない。
そういう意味では王虎と天雷も遠いような気がする。白水さんも遠いか?
川口さんと渡部の取組だったら読者的には衝撃的かもしれない。
身軽な2人の衝撃的な取組とか考えただけで衝撃的だよ!!ショッキング!!
何が起きるか。楽しみなところであります。



第26話/力士  (2012年 51号)


颯爽とバイクを駆って空流部屋へやってくるマコ姉。似合ってるな。
鯉太郎がケガをしたと聞いて居ても立ってもいられなくなった様子。相変わらずですなぁ。

鯉太郎の指はどうやら脱臼しただけで折れてはいなかったみたいだ。
だが、普通に考えたらはずれただけでも痛いですわな。
出血したこともあり、負傷箇所は爆発しそうなぐらいに腫れあがっている。視覚的にキツイ。
大吉も思い出して吐きそうになっている。うっぷ。
しかし、当の本人は平然としたものである。

大ゲサに騒ぐなよ。相撲取るには問題ねーから・・・

鯉太郎のこの言葉を聞き、アンタそのケガで休まない気なの?とマコ姉。
もちろん鯉太郎にそのつもりはない。
この程度で休場するわけねーだろとのこと。
通りがかった仁王さんもそんなしょっぱいケガという認識である。
しかし、マコ姉に睨まれて気押される仁王さんの姿はなんだか面白いものがありますな。

上等じゃない・・・大吉!金属バット持ってきな!

ええっ!?
いきなり何を言い出すのかこの人は。
そんなものに頼らなくても見事な飛び膝蹴りとか持っているじゃないですか。いや、そういう問題ではない。
バイクに乗ってみたりと、そういう暴れ方がマコ姉には似合うから困る。

と暴れているマコ姉をとりなしたのは空流親方。
鯉太郎と一緒に稽古場に来てもらい説明をする。ついでに大吉も。

そもそも力士にとって人差し指をケガするなんざ恥じることなんだよ

そう説明する親方。それを示すために鯉太郎に基本の型を取らせる。
股を割って腰を落ろす。足の指はしっかり土俵を掴む。
ヒジを脇に付け、小指が前に出るように構える。これが基本だ。決して大吉のような構えにはならない。波ッ!!

張るにもまわしを取りにいくにもこの基本の状態からだと小指が先に出るはずなんだ。
つまり人差し指をケガするってコトはワキが開いてるって証拠よ
基本がおろそかになってるってことだ。
小指の負傷はいっぱしだが・・・人差し指の負傷なんざまだまだ半人前ってコトだ

基本は大事ですよね。
そういえば田上さん、鯉太郎に押されても脇が開かないと言っていた。
基本を鍛え上げた田上さんとおろそかになっていた鯉太郎の差で押されていたわけであるか。

人差し指は使わなくても握力にそう影響はない。
逆に小指が使えない状態だったら力は半減してしまうとのこと。
だからってあの指で相撲させるんですか?と反発するマコ姉。指導者なら止めるべくじゃないんですか!?

これだから暴力部屋なんで言われるんじゃないんですか!?

厳しい話でありますね。
でもまあ、ケガを押して出場している力士は大勢居ますからなぁ。
虎城部屋の竹虎さんだって全身ボロボロになりながらも引退試合まで取りきったわけですし。

とりあえずマコ姉には今日のところは帰ってもらい、翌朝。
マスコミがごった返す中、稽古中の空流部屋を訪れるマコ姉。
中に入ると、いつもと変わらず稽古に取り組んでいる鯉太郎の姿があった。親方怒鳴られてる。ハハハ。

とはいえ、負傷しているのは鯉太郎だけではない。
仁王さんは昨日の取組で張られた箇所が腫れてきているし、白水さんはムチウチになっている。
まあ、腫れぐらいならそこまで問題にはならないでしょうな。目立つけど。

鯉太郎だけじゃねーんだよ・・・ヤマ行ってる奴なんてな!
どこの部屋の力士も手の指が折れる程度じゃ普通に土俵に上がってるんだ・・・
一場所十五番、幕下以下は七番。取組は交通事故に遭ってるようなもんだ・・・
それが年に6場所。はっきり言ってじっくりケガ治してる暇なんてねーんだ。

この辺りが相撲の激しいところですね。
ボクシングなど他の格闘技に比べて戦いの間の期間が極端に短い。
その分取組自体は短時間で済むものではあるが・・・やはりケガは怖いですわな。厳しい世界だ。

だが泣きごと言わず痛い体をひきずって力士は土俵に上がる・・・稽古する・・・なぜかわかるかい?
恐ろしいんだよ・・・番付を落とすコト・・・何より・・・昨日より弱くなるコトが・・・

力士は番付一枚を上げるのに計り知れない血と汗を土俵に捧げるんだ。
だが気を抜けばあっという間に番付を下げちまう。
常に付き纏う不安を払拭するためには止まってられねーんだ。力士って奴らは・・・

鯉太郎は才能はもちろんあるが、基本努力を重ねている男ですからねぇ。
恵まれた体格を持っているわけではないし、その分を努力でカバーしないといけない。
だから、立ち止まって弱くなることを恐れている。分かる話であるな。

まあ、吽形さんのケガに比べれば致命的というほどではない。
よほど悪化しない限りは取り続けることも可能でありましょう。
マコ姉も休ませる気があるなら、鯉太郎の小指をはずすぐらいしてみたらいいのではないだろうか・・・!?
もしそれをやったとしても、次の取組は土俵に上がりそうすけどね。
なんせ次の相手は因縁の相手。鯉太郎にとっても空流にとっても。
そう、その相手とは虎城部屋の・・・王虎剣市

五日目にして因縁の対決が組まれることとなった。
思ったよりも早い展開であるが、果たしてどうなるのか・・・?
というか、ここで直接対決となると、ブタフグは何のためにコマとしたのかよくわからないのだが?
まさか田上さんを煽るために用意したってわけじゃないですよね?
王虎の計画はいまいちわからないので困る。

計画といえば、独自の計画を立ててそうな常松はどうしたんだ?
大吉もそうだが、稽古場にいないのが気になる。虎城部屋に出稽古に行ってたら面白いがさすがにそれはないか。うむ。



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