蒼天紳士チャンピオン作品別感想

ANGEL VOICE
第205話 〜 231話


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 各巻感想

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連載中分

ANGEL VOICE 24巻


第205話 IH予選開幕  (2011年 33号)


5月29日。旭中央高校運動場。
ここでIH予選の1次トーナメント1回戦が行われます。

今日も可愛い校長が応援に来てくれました。もっと喜ぼうぜ!
まあ、それはともかく。習実戦に続き、市蘭の生徒がまた応援に来てくれています
しかも人数が増えている。前は5人だったのに、20人近くになっているのだ。こりゃ嬉しい。
これは気合が入る。
試合前はなんだかテンションが上がらないとか言っていたが、これは頑張らざるを得ない。
ちなみにテンションが上がらない理由は、対戦相手が大灘東だから。
お、お前らはこの前の生っ白い集団!
先週あれだけ気合入れてたのに、こいつらじゃあそりゃテンションも上がらないわなぁ。

一次トーナメントに来る前にブロック予選があったんだが、幸運とラッキーを重ねて上がってきたらしい。
でも、それもここまででした。
前の試合では23対0で負けた大灘東。
今回は27対0で負けました。本当こいつらは変わらないなぁ。

市蘭と戦った他のチームは、チームがまとまったり、いじけたサッカーをやめたりしてたのになぁ。
まあ、こういうチームが存在するのもリアルな話ですわな。

勝ったらマイちゃんが喜んでくれる。
今は・・・そう信じてやるしかねえ!

6月4日の準決勝、5日の決勝戦を制する市蘭。
危なげなく、決勝トーナメントにコマを進めるのでした。展開速いな。

決勝トーナメントに出場が決まったということを報告するために病院に来た市蘭メンバー。
なんだか病室に入るのも緊張する。
ともかく、暗い顔なんかはできない。笑顔で報告しながら病室に入る成田。
そこで見たのは、涙目のマイちゃん。こりゃ怯む。
まあ、泣いていたのではなく、目にゴミが入っていただけなんですけどね。

睫毛も全部抜けちゃったから、すぐ目にゴミが入るの

睫毛も抜けるのかよ・・・こりゃ怯むわ。
髪の毛に関しては、帽子をかぶっているので気にせずに済みますがねぇ。
眉毛も抜けている。でも怖い感じじゃなくなんか可愛いのはマイちゃんゆえか。

眉ならば抜いて描くというのはよくある話。なので、描きさえすれば問題ない。
丁度良いので、オレが眉毛を描いてやるという成田。
ペンを持ってブラック・ジャックになった気分。なんでやねん。

百瀬「どうせだったら、変顔にしたらどうだ?

え、何を言い出すんですか百瀬さん。
乗り気になるワッキーとバンの指導を受けながら、眉毛を描く成田。
どんな風にされたのかと慌てて鏡を見るマイちゃん。
おやおや、キレイに描かれているじゃありませんか。お礼を言うマイちゃん。
成田もいい仕事をするなぁ。
一方、百瀬さんは変顔じゃないよな?と疑問に思っている。マジだったのかよ!

見た目にこだわらない百瀬は、ある意味デリカシーがない。
百瀬さんはカッコイイんだけど・・・女にモテル気が全くしないな!

ともかく。マイちゃんが満面の笑顔で決勝トーナメント進出を祝ってくれます。
喜んでくれたじゃねーか!
みんなの嬉しそうな顔ったらないですね。
これでこれからも頑張れます。勝ち残れ!



第206話 手術  (2011年 34号)


6月17日。今日もマイちゃんのお見舞いに来ている広能と山守。
しかし、今日のマイちゃんはなんだかぼうっとしている。元気がなさそうだ。
IH予選の決勝トーナメント表を見せても上の空といった感じである。
来週の3回戦には八津野と当たろうという状況ですのにのう。

マイちゃん父母は、医者から状況を聞く。
どうやら、マイちゃんは腫瘍に起因する水頭症を起こしているらしい。

水頭症とは――
脳全体を覆うように流れている脳脊髄液の流れが遮られ、頭の中に水がたまった状態のことを言う。
たまった水が脳を圧迫することによってさまざまな症状が引き起こされる。
吐き気や頭痛が悪化しているのも、水頭症によるものとのこと。

この水頭症を治す為に手術が必要となります。
そして、担当医はその手術と併せてやってみたいことがあるという。
それは一体・・・?脳腫瘍の症状を緩和する策があるというのですかね?
とりあえず、この内容はお預けでございます。

6月18日。
IH予選の決勝トーナメント開始。
市蘭の応援団もかなり人数が増えた。
そして校長をも圧倒するほどに声を出す人がいた。間宮先生だ。ぶっちぎれー!
いやぁ、熱いな間宮先生。いいキャラだ。
千葉英洋を3−0で破り、2回戦進出。

明けて6月19日。
相手は東古城。関東大会予選で習志野実業を破って優勝したチームだ。マジか。
今まで戦ってきた相手とはレベルが違う。
そう聞かされてもなんだか舐めた表情の市蘭。どこが相手だろうが負ける気はないってことかね。

マイちゃんの水頭症の手術は明日である。決して陶酔症ではない。ぼうっとしてたのは陶酔してたからなのか!?いやいや。
勝利の報告を手土産に、手術頑張れって言いに行こうと張り切る市蘭。
習実のことを考えると、このセリフは・・・いやいや。

連日の試合で双方疲労は残っている。でも、相手が驚くほど走るのが市蘭だ。
向こうが戸惑っているうちに速い攻撃を仕掛け、見事に先制に成功。流れをつかんだ!

よしっ!いける!!

市蘭が先取点をあげた、ちょうどその頃――
高畑麻衣は昏睡状態に陥った

本当に、試合の結果と連動しない漫画であるなぁ!
まあ、水頭症の手術で――ってことはないでしょうから、今回は大丈夫。きっと大丈夫。
医師も何か試したいことがあると言ってたし、とりあえずそれが明かされるまでは大丈夫・・・さ。



第207話 キッカーは!?  (2011年 35号)


関東大会予選で優勝したチーム。
その東古城を相手に、ほとんど市蘭がボールを支配している。
習実に負けてから1ヶ月ちょっと。たったそれだけの間にここまで成長できるものなのか?

まあ、東古城がどのくらい強いかはわかりませんからね。
習実に勝ったといっても、決勝は勝っても負けてもいい試合だったので、習実が手を抜いた可能性がある。
そうでなくても、市蘭との疲労で動けなくなってたかもしれませんしね。足をつらせてる選手が続出してたし。

しかし、そうでなくても、市蘭の選手の技術は向上している。
とくに、二宮さんと尾上の成長は著しいものがあった。
だが、それだけではない。チーム全体に、まだ伸びしろがあったのだ

尾上のミドルシュート。まだヒザを使いこなした完璧なものではない。
しかし、大きく外れることはない。ゴールバーに辺り、チャンスボールとなる。
そこに、ごっつぁんと走りこむ成田。
だが、ここはファールで止められる。決定的なシーンではありましたが、惜しい。ともかくPKだ。

PKといえば、確実性の高い乾。しかし、ここは俺が蹴ると言い出す成田。
習実戦で止められてしまったのが心に残っているようだ。

ぜってー決める。

成田のその真剣な様子を見て、味方に回る二宮さん。
まあ、もともと成田がもらったPKですしね、成田が蹴るのもよいでしょう。
というわけで、PKだ。習実での雪辱を見せるか!?

止められました。ウソぉ!!

こっちが言いてえよ!

まあ、PK戦とは違い、弾いただけでは終わりじゃない。
ルーズボールを二宮さんが抑え、2点目を得るのでした。
結果オーライではあるが、PK恐怖症になりそうな成田。うむ、やはりPK戦になる前に決着つけるようにしないとな。

前半終了。2対0といういい状況だ。
負ける気がしないとは脇坂さんの言葉。調子に乗りすぎか?
いや、調子に乗るのも実力のうちです。それでいい。
乗るしかない。このビッグウェーブにって感じですかね。調子ノリノリ。

それはともかく、前半の様子をマイちゃんに知らせた久住先生だが・・・何か戸惑っている。何だ!?
昏睡状態になって緊急手術をいう情報はすでに前回で読者は知っている。
それ以上の情報はとりあえず欲しくない。これ以上悪い情報は流さないで!
手術が上手くいきすぎて、即日退院。応援に来るので不在でしたという流れならアリだ!



第208話 動揺  (2011年 36+37号)


2点先制し、前半を終了した市蘭。負ける気がしない。
後半、東古城は人数をかけて猛攻をしてくるだろうが、それをしのげば勝ちに大きく近づく。
気合を入れて後半に挑む市蘭。
しかし、そこに不吉な報告が・・・

高畑・・・今、緊急手術を受けているそうです!

久住先生ーッ!!
なんでそんなことをデカイ声で言っちゃうかなぁ。かなぁ。
焦って報告しないといけないのはわかるけど、選手に聞こえないように気を使ってくださいよ。
たまたま聞いてしまった広能は凄く動揺しています。マイちゃんの容態が急変した・・・?

一人では抱えきれないので脇坂さんに相談する広能。
とはいえ、脇坂さんも冷静なタイプじゃないからなぁ。動揺しまくるのは確定的。

マイちゃんの容態は、水頭症が原因で起きた脳ヘルニアらしい。
脳腫瘍から色々併発しますのなぁ。厄介な。
脳が本来あるべき部屋から別の場所に押し込まれる状態のことらしい。
呼吸や心拍をコントロールする小脳がヘルニアを起こして圧迫されたので昏睡状態になったらしい。

さて、話を聞いたワッキー。やはり動揺してます。
でも、この話は他の誰にも話すんじゃないぞと釘を刺す。そりゃ、試合中にこんな話をされちゃぁなあ・・・総崩れになる。

後半開始。監督の言葉通り、人数をかけて攻撃をしてくる東古城。
全力で押し続けることができるのはせいぜい10分か15分。それまで絶対にしのぎきる!
広能も、なんとか試合に集中しようとする。
が、ここで昔のことを――マイちゃんの無事を祈願したことを思い出す。
あの時は確かに、一発でバーに当たっていた。ならば大丈夫。高畑さんは心配ない!

そんなことを強く考えていたら、すっかり試合中だというのを忘れていました。広能ー!

抜かれる広能。中に入れられてしまう。しかし、これはミスキック。ワッキーがクリアできるボールだ。
だが、本来はヘディングで大きくクリアしなければいけなかったボールを胸で受けてしまう。
足元に落ちたボールを取られ、突破される。
所沢が飛び出すが、その横を抜かれゴール。後半開始早々に東古城に1点取り返されてしまった。

こういってはなんだが、広能はともかく、守りの要である脇坂さんがこれでは厳しい。
だからといって、マイちゃんのことをみんなに話すわけにはいかない。どうするんだ・・・?
この試合の先行きもなんだか怪しくなってきたし・・・本当に先が読めないなぁ。



第209話 高校生  (2011年 38号)


広能と脇坂さんの様子がおかしい。何を知っているのか聞き出そうとする。
それを知ったら、全員ガタガタになってしまう・・・脇坂さんはそう危惧する。
が、広能。脇坂さんと2人だけで抱えているのは無理だと思ってしまう。

高畑さんが緊急出術を受けている。

この情報が市蘭メンバー全員に伝わってしまった。これはマズイ。
変化はすぐに見られた。乾が簡単にボールを奪われる。それに対し、声を荒げない成田。これはおかしい。
そして、二宮さんから、マイちゃんの容態について質問される黒木監督。
手術は始まったばかりだろうし、答えられるはずもない。
じっちゃんの姿もいつのまにかなくなっている。病院に行ったのか?

試合なんかしてる場合なのかなぁ・・・?

いや、山守。さすがにその考えはいかんでしょう。
お前たちが病院に行ったって何かができるわけじゃないでしょうに。
気持ちはわからなくはないが、言っては駄目だ。

百瀬はその辺がわかっている。とにかく今は試合に集中しようと声をかける。

だが、一旦狂った歯車は簡単に直らない。
ディフェンスラインの乱れから、同点に追いつかれる。

ここで再度、百瀬の激。
たとえ病院に行ったとしても、オレたちには何もできないんだから!
今!ここでできることに全力を尽くそう!

そう。勝利の報告ができるようにしておかないといけない。

取り返す!と意気込んではみたものの、後半の21分と23分に立て続けて失点してしまう。
集中はしているはずなのに、いつもとは何かが違う。
その様子は外から見ている間宮先生にもあきらかである。前半と後半であまりにもプレーが違う。
精神的に動揺をきたす何かがあったのだろうと分析する間宮先生。凄いな。

全力でやってはいるが、精神的な動揺はいろんなところに影響を及ぼす。簡単には修正できない。
それは、経験が浅いから、というだけではない。
それ以上に、彼らは――普通の高校生ですから

精神的な動揺による揺れ幅は大きいですわなぁ。これはさすがにしょうがない。
だが、逆に。気持ちを奮い立たせることができれば、爆発力となる可能性はあるのである。
何か、気持ちをリセットさせることができれば・・・

そう思っているうちに、後半33分。5失点目を許す。
病院から久住先生に連絡が入ったのは、ちょうどその頃だった。
マイちゃんの手術はうまくいったらしい。呼吸も脈拍も正常に戻ったそうな。
うむ、いいぞ。そういう報告はでかい声でやれ!
安堵の表情を見せる一堂。さぁ、心配事は消えたぞ。
残り時間は4分。ロスタイムを入れて5分!現在は2対5の3点差。

追いつくぜ!

気持ちのリセットには成功した。逆にやる気に満ちている・・・だが、時間は残りわずか。
1点入れるのに2分もかけられないという状況である。そんなことが可能なのか?
リアルのサッカーでは、ありえなくはない話である。
作品内でも、5分で2点とったことはあるし、1点をギリギリで追加すればいけなくはない。
だが、相手も強豪である。果たしてうまくいくかどうか・・・
本当、勝てるかどうか心配になる漫画やで。



第210話 残り時間と点差  (2011年 39号)


市蘭反撃開始!
ロスタイムを入れて残り5分。ようやく心配事がなくなり、顔つきがハッキリと変わる。

3点差はどう考えてもセーフティリードである。
ベタに引いて守っている東古城。
これを崩して攻めるだけの時間の余裕はない。ならば縦に長いのを放って来る。
その展開は東古城も読めていた。しかし、成田の高さは予想を越える。

百瀬のボールを成田が頭で合わせて、乾の前に落とす。
すばやくDFを抜いてシュート。まずは1点取り戻すことに成功した。
時間を節約するために、ペナルティエリア外からシュートしている乾。それでちゃんと決めるから流石だ。

決めたあとのボールも成田が運んでいる。本気で残り時間で追いつくつもりだ。
残り3分ちょっとで2点。本気で追いつけると思っているのか?
そう問いかける東古城の選手に、二宮さんは言う。

頑張らないまま終わったら、頑張ったやつの前にツラ出せねえだろーが

まさしくその通りである。
早い段階でその思考にまで辿り着いていれば、ここまで苦労することはなかっただろうが・・・
まあ、心配のほうが先に出てしまうのもしょうがないことである。

残り3分。まだ100パーセント無理と言いきれる点差ではない。
ボールを奪い、市蘭の攻撃。いけいけいけいけいけいけいけいけいけー!!

乾にボールが渡る。成田の激しい動きは、ボールをもらう動きには繋がらないが、かく乱にはなった。
サイドの二宮さんにボールが渡る。
中に折り返す二宮さん。習実戦では出来なかった、低くて速いボール。
練習して身につけた折り返しをここで見せる。
それに頭で合わせる成田。ゴール隅に決まり、さらに1点取り戻した!あと1点!

さすが、成田の頭は信頼性が高い。
そしてあと1点である。
プレイが途切れなければ、ロスタイムは長めに取ってもらえることがある。
残り1点であれば、追いつける目は充分にある!頑張れ!
でも、追いつけない、現実は非情である。なんて展開もありうるんだよなぁ・・・厄いぜ。



第211話 モチベーション  (2011年 40号)


あと1点!ここで同点に追いつき延長戦に持ち込めば、絶対に勝てる!

と思ったが、追いつけなかったので負けました。むう、やはりそうなっちゃったか。
試合は終わり、翌日。学校ではその話がいたるところでされていた。
負けたけどいい試合だった。みんな最後まで頑張っていた。
終了間際、立て続けに2点取った時には震えたという生徒もいる。
なんだかんだでずいぶん受け入れられてきましたなぁ。よかったよかった。

そして、その様子を見て、決心した生徒達がいる。あれ、この顔ぶれは・・・?

一方、久住先生。練習に顔を出したくないなとか言い出す。
すっかり憔悴した様子。まあ、あんなデカイミスして平気な顔されてても困りますわな。
試合終了時には、ほぼ全員から責められる久住先生。あの温厚な所沢も怒っているぞ!

まあ、それはともかく。サッカー部。
前に入部を希望していた1年生4人が再入部を希望していた
IH予選。全部試合を見に来ていたらしい。
そして、その試合を見て、どうしてもサッカー部を。市蘭サッカー部でサッカーをやりたいと思ったらしい。

良い話じゃ。
元々マジメにサッカーをやりたかったのに、ケンカに巻き込まれて止めた子たちだしね。
こうして、新入部員が再び戻ってきたのであった。
この新入部員の加入が何か変化をもたらすのだろうか・・・?

乾は成田に、東古城戦での動きのダメ出し。
成田のあの動きではパスが出せない。
ああいう時にパスを出すために、覚えてもらいたい動きがあるらしい。
ほう。ここに来て新たなコンビプレーでございますか?これは楽しみですな。
それにしても、公式戦は確かあと1回。それが今の3年生たちのリミットのはずだが・・・違ったかな?

みんなが練習しているなか、脇坂さんはひとり考え事をしていた。
そんな脇坂さんに声をかけるじっちゃん。
試合終了時、久住先生を百瀬と脇坂さんの2人だけが責めなかった
脇坂さんに言わせれば、あいつは悪い知らせも持ってきたが、いい知らせも持ってきてくれた。
オレたちが負けたのはそれが原因ではないと脇坂さんは言う。
問題なのは・・・高畑の緊急手術を聞いて、誰一人普段どおりのプレーできなくなったこと。

オレたちは・・・メンタルが弱すぎる

メンタルの弱さを自覚してきた脇坂さんはさすがに違う。
最初の失点の時。もしも脇坂さんが普段どおりのプレーができていれば、広能が口を割ることもなかった。
そうすれば、結果は違っていたはず。そう考えることもできてしまう。
百瀬が責めなかったのも、キャプテンである自分が立ち直らせることができなかったことを悔いてのことかもしれない。

何があっても動揺しない精神的な強さを身につけるにはどうすればいい?
その問いにじっちゃん。もしもマイちゃんの手術のことを聞いても普段どおりのプレーをしていたら・・・
そんな薄情なやつらに、ワシは何も教えてやらんと言う。
さすがにじっちゃんは人情派だのう。孫娘に甘いともいうが。

だけど、マネージャーが手術と聞いていちいち動揺する小童が、打倒船学を口にするなど片腹痛いともいう。
どっちなんだよ!
そう詰め寄る脇坂さんに、なんだかいい表情で返すじっちゃん。

動揺するのは仕方ない。人間だもの。
動揺した後――それを乗り越える強さを得ればいい
なるほど。では、どうやったらそれができるのか?
その質問に、そんなのは簡単じゃと返すじっちゃん。

ワッキーに質問。
どうして船学に勝ちたい?何で八津野を倒そうと思う?

船学は常勝の歴史を築こうとしているし、八津野は全国1位の座をつかみたい。みんな勝ちたいのだ。
それらに負けないくらいのモチベーションがあれば、何があっても乗り越えられる

簡単とは言ったが・・・これは難しい。
一度みんなで話し合ってみろとじっちゃんは言う。たしかにこれは、話し合ったほうがいい内容ですな。

相変わらず脇坂さんは主人公のようである。精神的な話はこの人にお任せですな。
これまで、廃部がかかっていた試合では、部を存続させるというモチベーションがあった。
しかし、存続が決まった今、どうしても勝たなければという意識が薄れているのも事実。
マイちゃんのために・・・というのも、どうにも足りない様子。
山守にいたっては、マイちゃんの手術を聞いて、試合なんかしてていいのかなとか考えてたし。

負けられない。その思いを再び抱くためには何が必要であるか。
もう一度廃部論を持ち出してみるか?
新入部員が入ったばかりだし、後輩のためにも負けれないと言う意識がでるかもよ。酷い話だけど。



第212話 次・・・!?  (2011年 41号)


東古城戦の3日後。市蘭部員たちは、手術後のマイちゃんの見舞いに訪れていた。
そのマイちゃんの部屋の前には、立ち番を務めている2人の不良の姿があった

おや、この2人は、北村君に坂井君じゃないか。
マイちゃんをゴッド・マザーと呼ぶように噂を広めた張本人たちだ。
さすがにこの2人はマイちゃんの状況に詳しい。病状まで知っているかはわからないけど。
集中治療室から戻ってきたばかりのゴッド・マザーに負担をかけるわけにはいかない。
だから、どうでもいい見舞いは追い返すようにしていたのだという。

なるほどね。それを聞いて、百瀬。

ありがとう

さすがに百瀬は屈託がないなぁ。思わず赤面する2人。照れるなよ。
ゴッド・マザーの容態は逐一チェックしているという。
もし、訃報なんて訪れたら、一帯の不良が泣き崩れることになるのか・・・凄いな。
さらに、市蘭のこともみんな見ているという。
みんなとは、オレたちのような者。千葉中のハンパ者が見ている。

その言葉をいいようには取れない成田たち。邪魔したらマジで殺すぞと言い放つ。
だが、彼らにそんな意志はない。

邪魔なんかするわけねーだろ
最初に市蘭サッカー部がまじめにサッカーをし始めたと聞いた時、冗談だろ?と思ったよ。
でも・・・この前の試合、負けたとはいえベスト8に入ったんだろ?
サッカーには詳しくねえけど、千葉でベスト8に入ることがどれだけ大変かってことくらいはわかる。

もし・・・もしお前らが八津野や船学に勝つようなことがあったら――
オレらみたいなハンパ者にも、何かできるのかもしれねえ

いつのまにか不良の期待を一身に背負う立場になっていたんですな。
最後の決戦には、市蘭生徒意外にも千葉中の不良が応援に駆けつける、なんて展開も期待できるかも。
そして、重さ数トンはあろうかという旗を押したて、大音声をあげる不良達とか。別の漫画だなこれは。

病室なので、明るく振舞おうと笑顔でやってくる市蘭部員。
しかし、その表情が驚きに変わる。というか、ビビッてる。ヘイヘイ、ビビッてんぞー!
そりゃ、ビビるのもしょうがない。ゴッド・マザーがお怒りなのだから!
眉は吊りあがり、眉間に皺がより、こめかみには血管まで浮き上がっている。お、お怒りをお沈めくだされ!

マイちゃんの母の手による仕業だったらしい。こりゃ怖い。というか、マイちゃん男前だな。
母が言うには、麻衣の心の声を具現化したものらしい。
ふむ、なんだかんだで不甲斐ない連中に渇をいれねばという気持ちがあったということですかね。

実際、負けても次は絶対になんて言葉が出てくる連中ですからね。だから、これだけは言っておかないといけない。

次は次はって言うけど。
百瀬さんや脇坂さんたち3年生にとっては、次の選手権が最後の大会なんだよ
悔いを残さないように、頑張ろうね。

確かに、この認識はしっかり持たないといけない。次の大会は最後。その次はないのだ。
乾はその辺りをしっかり認識している。百瀬たちがいなくなってしまう前に勝ちたいと言っていた。
もちろん仲間意識もあるが、これだけの才能が揃ったチームは早々現れない。勝つなら今年でしかないのだ!

さて、見舞いを終えて4日後の6月26日。
先日、船学と八津野によるIH予選の決勝が行われた。結果は6対1。船学の圧勝である。
そこまで差がついたのか?
と思ったら、八津野は正ゴールキーパーである皆川を出さなかったらしい。
皆川といえば、あの船学の皆川さんの弟であると噂の皆川だ。その名前だけで凄いとわかる。
準決勝でケガをしたので、大事をとって出さなかったらしい。
まあ、千葉からIHに出場できるのは2校。勝敗に関係なく本大会に出れますからね。

船学には、1年で得点王になったという点取り屋もいるらしい。だからこその点差か。

黒木監督は、この後のことを考えて、関根のじっちゃんに相談する。
古巣の筑実大に、船学の部員は入っていないか尋ねる。何人かいるようだ。
筑実大って結構いいところなんですな。八津野のキャプテンも来てたしなぁ。

今年も筑実大での夏合宿を予定している
そこでぜひ、その生徒に会って訊いてみたい。
船学の土岐監督が、いかにしてあんな凄まじいチームを作り上げたのか――を。

この話を聞くことで、船学並の力を持ったチームになることができるのだろうか?
黒木のコーチングは信頼がおけますし、可能性はありますな。
しかし、夏合宿か。
1年も4人増えたし、また賑やかになりそうですね。
ついに水内さんの寝相についての謎が明かされるときが来るのだろうか・・・!?楽しみだ!
1年生のうちの1人が水内さんと同じような寝相で、2人並んで中央で寝てたりしたら大笑いできるな!



第213話 消える  (2011年 42号)


8月上旬。今日から筑実大学での合宿が始まります。
いきなりのインターバル走。せっかく身につけた体力なんだし、維持し、伸ばしていかないとね。
この合宿には例の1年生たちも参加している。
ここで改めて、先輩たちの凄さを思い知る1年。お、いい流れっすね。

・・・すごいなあ。こんなにハードな走り込みで身体を作ってたんだ

伊達に船学に体力Sランクとつけられているわけではないですわな。
成田に至っては周回中に黒木に呼びかける余裕すらあるぜ。テツ〜テツ〜こりゃウゼェ!
百瀬たちにとっては最後の夏合宿である。
ってそんなこと言ってたら、毎年誰かにとって最後の夏合宿だろーが!そりゃそうだ。

インターバル走を終えて、軽く休憩を挟んだ後に練習開始。
この回復の早さも体力があるという証拠ですわな。

さて、ここで乾が成田に声をかける。
この合宿中に覚えておいてもらいたい動きがあるそうだ。
パスを受けやすくする動き。プルアウェイ――俗に言う、”消える動き”だ。

最初成田はそんなの必要ないと言う。オレのスピードについて来れるやつなんかいないと。
しかし、スピードにはついていけなくとも、パスコースは切ることができる。
プルアウェイはそれをさせないための動きだ。

DFの視点からすると、マークする相手とボールの両方を視野に捉えられるようにしたい。
そうすることによって、マーク相手が動いても、ボールが動いてもすぐに反応ができる。
よって、DFの外に回りこんで視野から消える。それがプルアウェイの動きの基本となる。

DFが消えたマーク相手を追えば、ボールが視野から消える
そうなれば、パスを止める動き出しが遅れるというわけだ。なるほどなぁ。

東古城戦のとき、オレはDFの視野から消えていただろうがという成田。
しかし、あの時はDFに身体を触られていた。
それによって、位置を確認できていたのだ。
触っていた手の感触でどう動いたかは察知できる。なるほど。

あの時は、身体を後ろにまっすぐ引いてDFの手を外し、動きを相手に感じ取られにくくしてから走るべきだった。
それもプルアウェイの動きの一つである。
うーむ。フォワードの動きもなかなか奥が深いんですなぁ。
こういうことを解説してくれる漫画は少ないからよいわぁ。

プルアウェイの動きをしても、DFの反応が遅れるのはほんの一瞬。
お前は、その一瞬を見逃せずパスを出せるのかと成田は問う。

出してやる

力強く答える乾。それを受けて成田も。

じゃあ・・・やる

なんだかんだで、成田も乾を信頼しているのでしょうなぁ。いい感じだ。
尾上も乾にアドバイスをもらおうとしていたし、乾の立ち位置はよいなぁ。

さて、黒木監督。お目当ての船学出身の生徒とお話。
やってきたのは、神崎という生徒。船学のAチームにこんな選手いたかな?
黒木は問う。船学の土岐監督について。いかにして今の船学というチームを作ったのかについて。

この問いは難しいな。後輩たちに不利になるかもしれない情報を簡単に渡せるだろうか?
神崎の表情はその辺りを語っているのかもしれない。
または全くわかっていないのかもしれない。自分控えだったので、よくわかりませんっす!とか。
有意義な話になるかは五分五分といったところですかね。



ANGEL VOICE 25巻


第214話 強さの秘密  (2011年 43号)


夏合宿中に、船学の強さの秘密を聞き出したい黒木。
元船和学院の選手であった神崎から話を聞く。

土岐監督に変わる前。大志田監督時代の船学のサッカーは今とは違う。
いくつも用意されている攻撃パターンを高い技術力でミスなく繰り返し、得点を積み重ねていくというものだった。
それが土岐監督の代になったガラリと変わった。選手のその時の閃きを優先している。

土岐監督がどうやってそういうサッカーに変えていったのか。
神崎によれば、土岐監督は、こういうプレーがしたいと思ったらどんどん実践しろというだけだった。
実際にどういうプレーをするかについては部員同士で話し合って決めたらしい。

話し合いの場に関しても監督が持ったわけではなく、部員同士で勝手にやっていたらしい。ふうむ。

船学ほどの技術の高い者が集まれば周りはすべてライバル。
――極端な話、部員同士で足の引っ張り合いがあってもおかしくはないのだが?

その問いに、神崎はそういうことはなかったと返す。
今思えば――ものすごく仲間意識が高いチームだったと思います。とのこと。

それだ!!

閃きは他の者と共有できなければ次のプレーにつながらない。
共有するために必要なコミニュケーションはその仲間意識から生まれているのだ。

では、土岐監督は仲間意識を高めるために何か特別なことをしたのだろうか?
この問いに、特別なことはしてなかったと思うと返す神崎。むむ。

土岐監督はいろいろと改革をしているようだが、仲間意識を高める何かをしていたわけではない。
では、普段はどのように部員と接していたのだろうか。
この問いに神崎は答える。気さくな人で、監督の方から話しかけてくることが多かったと。
話す内容については、日常生活のことやチームの状態。試合での選手起用について相談されたこともあるそうな。

そんなことまで部員に相談しているというのか?
例として、八津野とやる直前のこと。
去年の船学のキャプテンだったDFの森田が足を痛めたらしい。
神崎もDFで、森田の横で守っていた。それだからか、土岐監督から相談を受けたらしい。

足の故障のことを考えれば無理はさせたくないのだが。
相手は八津野だからなあ。お前はどう思う?

そういった感じに土岐監督から相談を受けたらしい。そんなにぶっちゃけた話をするんだ。
神崎曰く。土岐監督は、部員と指導者の間にある壁のようなものを取っ払おうとしていたんじゃないかとのこと。

確かにそう見える。だが、それだけではないようにも見える。
指導者と部員の間の壁を取っ払うというのは一見いいことのように見えて危険なことでもある。
場合によっては監督の言葉に重みがなくなってしまう。久住先生の言葉を誰も聞かないみたいなもんですね。

それに、それが仲間意識を高めるとも思えない。うむ。
最後に神崎に質問。その土岐監督の質問に君はどう答えたのか?

正直言って森田のことはあまり好きじゃなかったんですけど、八津野と戦う上で絶対に必要な戦力でした。
だから――出すべきだと答えました。
森田が動き回れない分は、自分が全力でフォローします――と。

この最後の言葉で黒木と関根のじっちゃん2人に衝撃が走る!凄い驚いてるな。
全くわかっていない久住先生と違い、2人には秘密がわかった。
土岐監督は、神崎の最後のセリフを言わせたのじゃ!

おそらく土岐はハナっから森田を出すつもりじゃった!
それが何で神埼に相談したか?あいつから”自分が全力でフォローします”という言葉を引き出すためじゃ!!

土岐が神崎に、森田をフォローしろと命令したら神崎はどう思うか。
やっかいな仕事を押し付けられたと思うだろう。
もしフォローしきればいで失点したら、森田のせいで自分の評価まで下げられると思うだろう。
だが、自分の口で言い出したことであれば、神崎は何があってもフォローし続けるしかない!

一方フォローしてもらっている森田はどう思うか。
神崎の献身的なプレーを意気に感じるに違いない。
――以降、神崎に何かがあった時、森田は誰に何を言われるまでもなく、全力で神崎をフォローそしたであろう。

結論。
土岐は部員と指導者の間にある壁を取っ払ったんじゃない。
部員と部員の間にある壁のようなものを一つ一つ取っ払っていったんじゃ!!

なるほどなぁ・・・これは凄い。
仲間意識の高さがコミュニケーションにつながり、プレーの共有につながる。
あの爆発的な攻撃力の高さはそこから来ているわけか。
オタク趣味な選手がいた場合でも、部員の壁を払ってくれるんだろうか?
もし、船学にチャンピオン好きがいたら、土岐監督の働きで全員チャンピオン好きになっていたかもしれない!?
す・・・すごい!!

このことを知った黒木はどう生かすのでしょうか。
普通に考えると、ここまでの人心掌握術は並みの人間にできることではない。
学んでこうしよう、と思って出来る芸当ではない。
久住先生の活躍の場面が来たかとも思ったが、正直難しいだろうなぁ。
そういうことができる人はマイちゃんぐらいしかいないだろうけど・・・どうするのかなぁ。
そういえば、脇坂さんにはモチベーションを持つという宿題があった。
モチベーションを皆で話し合って決めるためには仲間意識を強めることが必要になるわけか。うむむ、難しい。



第215話 腕試し!!  (2011年 44号)


合宿2日目の朝。今年もおっぱじめた男がいる。
やはりの水内さんだ!なんであんなところに寝てるのかなぁ。
あと6日以内にこの謎を解き明かすぞ!
変なところで気合が入る市蘭部員であった。
というか、1年に何をさせるつもりだ?

まずは試合を行います。筑実大のCチーム。去年の合宿の締めでボロ勝ちした相手だ。
そのぐらいの相手じゃ物足りないという成田たち。
なんでAチーム貸さねえんだよ?セコいんだよ筑実大は
ボコボコだ!?失敬な。
向上心の強い連中なので、なるべく強いところとやりたい。
でも、今年のCチームは面白いぞと黒木監督のお墨付きがある。ほう?

面白い理由はすぐにわかりました。
Cチームには去年の八津野のキャプテンである権藤さん。
さらに、船学のDFだった神崎さんの2人がいた。
八津野と船学のCB2人がバイタルエリアと呼ばれるゴール前の最も危険なエリアを守っている。
面白いだろう?

面白ぇじゃねえか!!

八津野や船学と戦うための予行演習ってところですな。少なくとも目安になる。
あの2人から何点取れるか。いくぜ!いくぜ!いくぜ!!

まずは神崎さん。チェックが速い。
ならばもっと余裕がある位置で前向いてパスを受け取れば抜ける。
実際得意のシザーズで抜いてみた。が、すばやく権藤さんに前に入られてしまう。
さすがにフォローが速い。さすがにそう簡単に点は取れないようですな。

サイドを使う。中の2人に比べるとサイドは弱い。
しかし中に入れたボールはその2人に阻まれてしまう。
権藤さん、高校時代はそれほど目だった活躍はしてなかった気がするのだが、凄かったんですね!

筑実大のコーチは言う。あの2人は今はCチームだが、来年の今頃は間違いなくAチーム。
筑実大の守りの柱となると目されている。それほどか。
権藤さんはともかく、神崎さんはこんなキャラいたっけ?ぐらいの扱いだったのだが、ここにきて株急上昇だな。

余裕で守られている状況を打破しないといけない。
消える動き・・・プールサイドをやるぜ!プルアウェイだ。凄い離れ方してるぞ。

言葉はともかく、実践できれば大きな武器になる。ストライカー成田、覚醒なるか?



第216話 最高の受け手  (2011年 45号)


市蘭対筑実大の練習試合。15分が経過して0対0という状態。
この相手に点が取れないようでは、八津野や船学から点なんてとれっこない。

得点を取るためのテクニック。プルアウェイ。
それを仕掛けようとする成田は乾に問う。
それが上手くいったら、あの2人を同時にかわせるんだろうな?と。

確かに、権藤さんと神埼さんの2人は連携して守っている。2人同時にかわせないと意味がない。
その問いに乾は答えない。内心では無理だろうと思っている。
ひと言でプルアウェイと言っても、いろんな動きがある。

オレは成田のその動きを見たことがねえから、パスを出すタイミングは勘に頼るしかねえ。
そんな直感だけのプレーがそうそう上手くいくわけねえ

確かに。上手くいかせようとするなら、色々とお互いの動きがわかるようにならないといけませんわな。

さて、乾にボールが渡る。いけえー!
成田はプルアウェイに必要な動きを考える。

今コイツは――オレとボールの両方をし視野に捉える位置にポジションをとっている。
プルアウェイ。視野から消える位置に回りこむ。
オレについてきたコイツの視野からはボールが消え、反応が遅れる。

権藤さんが後ろに回った成田を追うために、ボールから視界を外した。
今だ、パスを出せキヨハ・・・!!

求めるまでもなく。成田の足元には乾からのパスがでていた。
もちろん、権藤さんからはいきなり成田の足元にボールが来たように見えるわけだ。驚いている。
このボールを見事にトラップし、一気に駆ける成田。
権藤さんを抜くのに時間がかかっていないので、神崎さんがフォローする間がないわけですな。

この見事な突破にコーチ陣一堂驚きの表情になる。
1年たちも吠える。おおおおお!!
なんか、この1年たち、すっかりリアクション要員になってないかね。いや、必要だけどさ。

抜いたー!
八津野と船学のDFを振り切ったー!!

そしてキーパーとの1対1。流れに乗った成田はこういうところでも強くなっている。
外すことなく、見事にゴールを決める成田。いやぁ、凄い。

コーチだけでなく、この一連の流れを見て、あの乾も満足そうな笑みを浮かべる。おぉ。

そして権藤さんもまた、去年の練習試合の時とはまるで別物だと認める。
いや、あの時は本当に出来たばかりのチームでしたからねぇ・・・そのころと比べられても。
でも、天城に対し、市蘭に気を付けろと言うぐらいだし、相当なものになっているのでしょうな。

試合は2対0で市蘭が勝利を収める。
2点目は乾が単独で持ち込んでのシュートだった。
八津野と船学の出身者。権藤と神埼がいるDFから2得点を上げ、さらに守りきって勝った。
このことにより、市蘭の部員たちは、初めて打倒船学、打倒八津野へのリアルな手応えを感じた。

この感触こそが、実際に戦うに当たって大事になるんでしょうな。
まさしく雲を掴むような相手だったのが、もうその姿が見えるところまで来ているのだ。

試合終了後。成田と乾の会話。
1点目の後もプルアウェイをやったが、決まったのは最初の1本だけだった。
さすがにそうそう成功するものではないか。
練習すれば成功率上がるんだろうな?と問う成田。
お前があの動きをやり続けて、オレと呼吸が合うようになれば、多少はな。と答える乾。

フツーにやったんじゃどうにもならない相手。
そういった相手から1点をもぎ取るためにやり続けるのである。
やれば確実に点になるような単純なものではない。
100回やってゴールに結びつくのは、せいぜい1回か2回
そういうやつらを相手にした時――その1点はとてつもなくでけえ1点になる。

まさしくその通りなんでしょうな。
もちろん脇坂さんたちが守り抜いてこそでしょうが、サッカーの1点は本当に大きい。
特に強豪に対しての1点はとても大きい。だからこそ、乾は言う。

船学や八津野とやる時は、99回無駄に走れ

そういう無駄とすら思えるほどの運動量は成田の得意とするところですわな。
実際に走ってくれることでしょう。

と、厳しいことを乾は口にしたが、実のところ褒めたい気持ちはあった。
あの1点目のときのパス。とっさに反応してトラップできるとは思ってなかった。
おめぇと初めて勝負した時の――あの高揚感が蘇ったぜ。

想像以上の早さで近づいてたんだな。
オレがイメージする、最高のパスの受け手に

あの乾によるこのセリフ。最高級の褒め言葉かもしれませんなぁ。決して口には出さないけど。
市蘭は確実に進化を続けている。
打倒船学、八津野も技術的には見えてきた。あとはメンタル面の強化ですな。
脇坂さんに与えられたモチベーションの宿題は合宿中に答えが出るのか。注目です。



第217話 覚悟・・・  (2011年 46号)


もう一度あの歌声を――

なんとも悲しくなるような表紙とアオリでございます・・・やめて!

合宿中の市蘭部員が集められる。
内容はマイちゃんのこと。どうやら、抗癌剤の投与が中止されたらしい
どの抗癌剤が効果あるかわからないから、いろいろ試しているはずなのに、中止とは・・・?

担当の医師の説明。
水頭症の手術をした時、ごく一部、マイちゃんの腫瘍を切除したらしい。
そして切除した腫瘍を組織培養し、各種抗癌剤を直接投与してみた。
なるほど。手術の前に言っていた、試したいこととはこれであるか。
これで効果があれば、どの抗癌剤が効果的かわかるって寸法ですね。しかし――

残念ながら、使用可能な抗癌の中に望ましい効果を得られるものはありませんでした
内臓への負担を考えますと・・・抗癌剤の投与は中止した方が良いと思います。

なんという・・・
あの時の、試したいことがあるというセリフに一縷の望みを抱いていたというのに・・・これは・・・

説明を受けた市蘭部員は一様に押し黙っている。
脇坂さんはつぶやく。

覚悟しなきゃ・・・なんねえのかもしれねえな

この言葉に掴みかかる成田。しかし、その成田を殴り倒す脇坂さん。
誰もその2人を止めるものはいない。

わかってんだろーが・・・

口にはしたくない。覚悟はしなくてはいけないが、認めたくないその考え。
成田も表情を歪める。暴れてもどうにもならない。あまりにももどかしい。

病院。マイちゃんが母に問う。私、死ぬの?と。
これはキツイ。悪くなっているのは自分でもわかるのに、投薬をやめるとなったわけだからなぁ・・・

こうなってくると、投薬によって毛が抜けたのは本当に損しただけということになってしまう。
結果論とは言え、厳しい話である。

母親は一生懸命マイちゃんを励ます。
麻衣みたいないい子が死んだりするわけないでしょ。世の中そういうふうにできてるの、と。

それに対しマイちゃん。私はいい子なんかじゃないんだよと考える。
サッカー部のみんなが新しく入ったマネージャーを追い出しちゃったときのこと。

あの時、私みんなのことを叱ったけど、ホントはね・・・嬉しかったの。
自分が帰れる場所があるような気がして・・・嬉しかったの!!

私・・・嫌な人間なんだよ。
死にたくない。死にたくないよぉ・・・

母に抱きつき泣き出すマイちゃん。奇跡は起こらないのか・・・

なんというか・・・本当にマイちゃんはいい子すぎる。
そんなことまで気に病んでいただなんて・・・
こうなってくると、本当にこの世界には神も仏もいないのかという気分になってくる。

今回の脇坂さんがいう、覚悟しておけというセリフは古谷野先生からのメッセージなのかもしれない。
読者にも覚悟を迫っているということなのでしょうか。やだやだやだ!
1話目でフラグを立てられているとはいえ、どうにかそれを覆す方法はないものか。
天使の歌声は聴けなくなったが、なんとか命は永らえるようになったとか。そんな方法はないものか。
最後まで諦めたくはないが・・・覚悟はしないといけないのかなぁ。ぐう。



第218話 約束  (2011年 47号)


合宿最終日。1年生4人が壁際に立たされていた。
どうやら夜通し水内さんを見張っているように言われたけど、睡魔に勝てなかったかららしい。
って、そんなことで立たせられるのも可哀想だな、おい。

結局、水内さんの謎は明らかになりませんでした
まあ、謎は謎のままにということで。

言いつけを守ることもできなかったとしょぼくれる4人。
水内を見張るためにサッカー部に入ったんじゃねえだろ!!

まったく二宮さんの言うとおりですな。
ここで質問。なんで市蘭のサッカー部に入ろうと思ったんだ?マトモな部じゃないのはわかってたはずなのに。

4人は中学は別々だが、全員あの船学との試合を見たらしい。
10点差近い点差をつけられても試合を投げ出さず・・・
最後まで全力で走る先輩たちを見て、メチャクチャカッコいいと思いました。

ふむ、確かにあの試合は感動しましたからなぁ。
アレを見たならば、ここで自分も、と思うのはありえる話だ。
その後、入ったはいいが、暴力に巻き込まれ、一時は離れた4人。
でも、今はこうしてサッカー部に戻ることができている。よかったじゃないか。

よくありません!!
先輩たちとあまりにも差があり過ぎて・・・サッカー部の一員だという実感がわかないんです!!

まあ、確かに。
船学や八津野に勝とうっていうチームだ。言い換えれば、全国の頂点を目指しているようなチームだ。
そりゃ、差がありすぎると思ってしまうのも仕方ない。
でも、別にこの連中も最初から上手かったわけじゃないからなぁ。
乾が言うには、これだけの才能の持ち主が集うのは珍しいらしいけど。

市蘭イレブンは、才能もあるが、何より意識が強いんだろうな。強くなろうとして頑張っている。
そして、その意志を確かめるための話し合いが行われようとしている。
合宿最終日の夜。
1年の4人も含めた16人で話し合う。提案したのは脇坂さん。つまり、関根さんの宿題ですな。

話し合って決めたことを、ここにいる全員の約束とする

さらに、試合のときに使うキャプテンマークに名前を書き、誓いとすると百瀬は言う。
なんだか知らないけど、凄い大事な話っぽい。自分たちが関わっていいのかなと萎縮する1年。
まあ、聞くだけ聞いておきなさい。

百瀬は言う。

オレたちは――何のために船学を倒すんだろーか?

何かスポーツをやっていたら、頂点を目指すのが当たり前じゃないか?
1年の疑問は最もである。それが理由にならないとしたら、難しすぎる質問だ。戸惑う1年。
だが、他の面々は違う。答えはすぐに出た

モチベーションを高めるための話し合いですが、やはり思うところは一緒なんですかね。
その答えは一体なんなんでしょうか。
内容によっては1年たちがまた置いてきぼりにされてしまいそうだなぁ。マイちゃん関連とか。
この4人にも1度くらい歌声を聞かせてあげたかったのう・・・いや、まだ可能性は・・・あるさ。



第219話 強い意志  (2011年 48号)


何のために船学を倒すのか。考えるまでもなく答えは出ていると二宮さん。

高畑のためでいいじゃねえか。あいつを喜ばせるためだけでいいじゃねぇか。
あいつがいなかったら、こんな部とっくに消えてただろ?
だったら・・・高畑のためでいいじゃねぇか。

この二宮さんの言葉に一様に頷く面々。

そ・・・そんなにすごい人なんだ・・・

驚く1年。1年生たちは知らないんだよね。あの歌声を。勿体無い。
千葉の不良であれば、知らない人はいないゴッド・マザーであるが、1年生は知らないらしい。
まあ、不良じゃないだろうしな。

1年以外は皆同意する。と思ったが、ここで脇坂さん。

口先だけで言っても意味がねえよ
IH予選のときも似たような話しただろ。それなのにあの時はどうなった?
高畑緊急手術の話を聞いて――誰一人、本来の自分のプレーができなくなっちまったじゃねーか。

全く持ってその通りですな。山守にいたっては、試合なんかしてていいのかなとか思ってやがったしな。

次の選手権は、オレたち3年にとって最後の大会ってだけじゃねぇ。
もしかしたら、高畑が見届けられる・・・最後の大会になるのかもしれねぇ

言いにくいことだが、言わねばならない。脇坂さんも立派になったものだ。
聞きたくないことであるから、大声を張り上げる成田に、逃げてんじゃねぇよと諭す。

何があってもやり抜く覚悟があんのか?
グラウンド上に――ピッチ上に立って試合をしている限り、何があってもやりとげるって――
そういう強え意志が必要っつってんだ。
おめーにそれがあんのか?

あると答える成田。まあ、そう返事をすることで、腹が据わるってもんですわな。
脇坂さんの言葉を聴き、百瀬は言う。オレたちは無力だと。

オレたちが高畑にしてやれるのは、せいぜい八津野や船学に勝つことくらいだ
やりとげよう

全国1位と2位を相手にせいぜいと言ってのける百瀬。
まあ、人の命がかかっているときの話ですしねぇ。そのぐらいの心境だって話ですわな。
百瀬の表情を見れば、そのセリフに突っ込むを入れる余地もない。

1人1人キャプテンマークに名前を書き込み、1人1人手を合わせあった。
その音は、激しく打ち鳴らす音ではなく、小さな音だった。ぺしぺし。
小さな音だったけど――とても大きな決意がこもった音だった。

その様子を見ていた1年達に声をかける二宮さん。
お前ら、オレたちを格好いいって言ったよな。ガッカリしたか?

オレたちは、マネージャー1人を喜ばせるので精一杯なんだよ

そんなことを言い出す二宮さん。その背中に声をかける1年生たち。
オレたちは・・・戦力として何のお役にも立てません。
でもっ・・・全力で、先輩たちをサポートさせていただきます

その言葉を聴き、水内さんが静かに1年生たちの前に出てくる。そして、両手を挙げて打ち鳴らす。
他の先輩たちともそれぞれ手を打ち合わせる1年。そして、キャプテンマークに名前を書く。

初めて――サッカー部の一員であるという実感がわいた

おう、いい話ですな。
マイちゃんの話が出たときに、また1年との間に隔たりができるのではないかと危惧したものだが、うむ。いい話だ。

それぞれの名前の書き方には性格が見えそうな感じがありますね。
二宮さんや乾は丁寧な感じの文字である。
成田は大きく、広能は小さいという辺りも、なんだからしい感じがするなぁ。

さて、合宿を終えて、マイちゃんの病室に全員でお見舞いに行く市蘭。
そこには1年生たちの姿もあった。うむ、完全に市蘭サッカー部の一員になれたようですね。よかった。

そして8月24日。
高校サッカー選手権、千葉大会2次予選が始まる。

最後の戦いである。これに負ければ後はない。ついにこの時まで来てしまったんですなぁ。
マイちゃんのために、勝ち進んで欲しいものである。そして、マイちゃんも出来うることならば・・・



第220話 やるべきこと!!  (2011年 49号)


8月24日。
全国高校サッカー選手権大会、千葉県大会二次予選。
市蘭はブロック予選と一次予選を免除されている。
それだけの実績を積んできたということですな。
関東大会ではベスト4に入っているわけですし、これは当然か。

二次予選は59校が14のブロックに分かれてトーナメント戦を戦い――
船学と八津野が待つ決勝トーナメント出場を目指す。

さすがにその2校は直接決勝トーナメントに行っているのか。
早い段階でその2校と当たっちゃう学校は可哀想だし、いい判断ですな。

二次予選というのに、市蘭の応援に100人以上の生徒が駆けつけている。
誰もいない時から応援を続けていた校長としては感無量。
だが、間宮先生は納得していないご様子。

なぜ全校生徒に招集をかけないのか

いきなりそこまでいいますか、間宮先生。ほら、3年生は受験勉強とかありますし。

学校とは学問を学ぶだけの場ではありません。社会生活を学ぶための場でもあるんです。
母校を応援する熱い気持ちがなくてどうしますか

間宮先生は熱いなぁ。
元々母校愛が、属していたサッカー部への思いが強すぎたゆえに廃部論を持ち上げた人ですしねぇ。
反転すればこうなるのはわかっていたことだったか。

右サイドを突破した二宮さんが低くて速いクロスを出す。
それに頭で合わせる成田。本当、成田のヘッドは頼りになる。

関根さんも見事と誉める、高さを押さえた速いクロス。
だが、二宮さんは納得していない。まだだ・・・まだまだだ。
船学や八津野があんなにドフリーで蹴らせてくれるわけがねえ。
もっと精度を上げねえと競った状態じゃ使えねえ

そして前半10分。
ボールを受け取った尾上。シュートコースは開いている。
成田がプルアウェイを行おうとウロウロしているが放置する尾上。
見事なミドルシュートがゴールの隅を捉える。
だが、尾上は納得していない。
まだだ・・・まだ膝が使いこなせてねえ

さらに前半14分。
乾が1人で4人を抜きゴールを決める。
まだまだ・・・こんなモンじゃねえぞ!!

そして前半19分。
成田のプルアウェイが成功し、乾のパスが通る。
そして、きっちりとキーパーとの1対1を決める成田。
完ペキだ・・・もうこれ以上何も言うことがねえ!!

この辺り、凄く性格が出てますね。成田・・・

ともかく、1回戦の掘上との試合は9対0で制す市蘭。
さらに、3日後の8月29日。市蘭は中山商業に8対0で快勝。決勝トーナメント出場を決める。
この時点でベスト16入りをはたした。
24日の3日後で29日?うむ、まあいいか。

さて、決勝トーナメントである。が、試合が始まるのは2か月後の10月29日から
トーナメント表を見せてくれる監督。
初戦の相手は美浜学園幕張。ほんとクサレ縁に近い関係になってきましたね。
その美幕に勝ったら、次は八津野である。ついに来るか!

それにしても、このトーナメント表。ワクワクするな。
初戦の美幕。次に八津野。その次の準決勝には習志野実業
そして、決勝で船学と戦うことになる。
これまで丁寧に試合を描いて来ただけに、それらの高校と戦うんだというワクワク感がハンパない。

市蘭もやろうぜ、やってやるぜと気合を入れている。ぺちぺち。

さて、2か月間が空くわけだが、その間に何をするのだろうか。
各人課題にしているものはある。それらを詰めるのはまずあるでしょう。成田も頑張れよ。
一番怖いのは、その2か月の間のマイちゃんである。
このタイミングで来る可能性が高いんだよなぁ・・・
あ、でも八津野と戦う前だと最悪の事態にはならないかな?うん、きっとそうだよね。きっと。



第221話 チームの始まり  (2011年 50号)


9月28日。選手権予選決勝トーナメントまで、あと1か月。
百瀬は1人でマイちゃんのお見舞いに来ていた。

抗癌剤の投与中止から約ひと月半。
抜け落ちていた頭髪や眉毛が生えそろってきていた
抜けたのでずっとそのままかと思ったら、ちゃんと生えてくるんですな。

本来は、喜ばしいことである。
腫瘍を摘出し、抗癌剤治療を終えてのことであれば、それは病気を克服した証だから。

絶望しないで欲しい。
治療中止によって戻った眉や睫毛を見ても――
毎日少しずつ伸びていく髪の毛を見ても――
どうか、絶望しないで欲しい

百瀬の願いはよくわかる。見ているだけでも、本当に辛い。
髪は伸びたのに、目は虚ろで、唇がカサついている。うう、本当に見ていて辛い。

どうにか気を取り直し、決勝トーナメントまでの間の期間のことを話す百瀬。
最近は週に2回、練習試合をやっているらしい。
戦術を磨くためだけではなく、自分以外のポジションの役割と動きを理解するために、である。

決勝トーナメントはハードな試合が続くことが予想される。
誰かがケガをして出られなくなったら、他の誰かが代わりをしなきゃいけない。
なので、所沢に代わって万代さんがゴールを守ることもある。

マイちゃんは、万代さんなら運動神経抜群だから大丈夫だという。
ところが、この間の試合。30分で5点も取られる万代さん。
何やってるのかと思ったら、シューズを買い換えたばかりで靴擦れができてたらしい。ハハハ。

しかし、ちゃんと万代さんも頑張っている。
その言葉を受け、成田クンも頑張ってる?と問うマイちゃん。頑張っていると答える百瀬。
広能クンは頑張ってる?
乾クンは頑張ってる?
二宮さんは頑張ってる?

ひとりひとり尋ねてくるマイちゃん。
それに答えながら、こらえきれず涙を流す百瀬。

・・・ああ。みんな・・・頑張ってるよ

話しつかれたか、眠ったマイちゃん。それを見て病室を後にする百瀬。
相変わらず立ち番を続けている2人に声をかけておく。
この2人も結構長いことマイちゃんを見守っている。容態が日毎に悪くなっているのを見て辛いと感じている。
いい子たちであるなぁ。
だから百瀬も、いつもありがとうとお礼を言う。

そして1か月後。10月28日。

明日から決勝トーナメントである。
市蘭部員全員が病室の前に集まっている。
マイちゃんは会いたがっていたが、頭痛が酷く会えずにいる。
だから、病室の前であいさつをするに留める。

初戦の相手は美浜幕張。
去年――同じ大会で、同じだ相手と戦った時――高畑は歌を歌ってくれた。
あの時、このチームは始まった。
明日勝って、またみんなで報告に来るよ。

マイちゃんの母に見送られ、立ち番の2人にぜってー勝てよと激励される市蘭。
おお!!勝つさ!!

強豪ひしめく決勝トーナメントがいよいよ開幕であります。

マイちゃんのことはもう考えてもどうにもならない気がしてきた。
今はもう、その時の覚悟を決めて待つしかないのかもしれない・・・
とりあえず、試合を楽しむことにします。たのむぞ、市蘭!



第222話 戦い抜く  (2011年 51号)


10月29日。決勝トーナメント1回戦がついに始まる。
市蘭の前の試合は八津野。順調に勝ち上がったようだ。
我々もそれに続くぞと、黒木監督。おお!!

対戦相手は美浜幕張。もう何度も戦った相手であるので何も言うことはない。
状況によって4−3−3と4−4−2のシステムを使い分けてくる。

試合の前に、百瀬に何かあるかと声をかける黒木。
それを受けて皆の前に出る百瀬。
キャプテンマークを開き、書かれた全員の名前を見せる。

何があっても戦い抜くという誓いを――もう一度心に刻んでくれ

百瀬の言葉に頷く1年たち。おや、1年もユニフォームもらえたんですね。
もうすっかり彼らも市蘭サッカー部の一員である。名前も判明したようでなによりだ。
寺島琢己、滝元駿、平沢修司、三輪小太郎
誰が誰かとかは一致しないけどな!!

いこう。
おおっ!!

出陣である。
さすがに一般の観客はそれほど入っていない。
だが、最前列には市蘭の生徒達が大量に詰め掛けているのが見える。
校長先生は今日も大張り切りで声をあげている。ガンバレ市蘭ー!!

相手の美幕も、勝ったり負けたりの奇妙な因縁を感じているようだ。
どっちが強えか・・・この試合で決着をつけようぜ!!

キックオフ。試合開始であります。

その頃、マイちゃんの病室にはルカさんがおりました。久しぶり。
遠いからという理由で市蘭の観戦には行っていないようだ。
まあ、勝つと信じているのでしょう。たぶん。

マイちゃんは、今頃きっとビックリしてるよと言う。

美幕の人たちが。市蘭の成長のすごさに

まるで・・・今までの練習をずっと見てたみたいだな。
やはりマイちゃんはよく理解してくれている。
それに答えるように、奮闘を見せる市蘭。
山守が粘り、百瀬に繋ぐ。それをダイレクトで乾に。
乾はDFを抜き、キーパーと1対1に。そしてボールを横に流し・・・決めたのはシンゴだ!!

流れるようなゴール。見事である。
先制されたことをくやしがる美幕の生徒。
ふと視線を転じると、そこにはなんと八津野の島村監督と天城の姿があった!偵察か!?

ちゃんと見ておいた方が良さそうだな

かつて、練習試合では全く相手にならなかった市蘭。
だが、さすがに天城。一目で強くなったのを見抜いているようだ。嬉しそうな笑みだな。
逆に、島村監督は険しい表情。
かつて、島村監督は誰よりも早く市蘭を評価していた人であった。
が、その予想を上回る速度で成長している。この事実に表情も険しくなっている模様。
それにしても、天城の横で居眠りしているのは誰だ?何してんだ。
おそらく、噂の皆川さんの弟というヤツでしょうな。
八津野には手強いキーパーがいる。どんなキャラであるか楽しみだ。



ANGEL VOICE 26巻


第223話 いつの間にか  (2011年 52号)


打倒船学&八津野に向け、まずは1回戦の美浜幕張戦。
そういえば、今回の表紙は脇坂さんである。
これまで、成田→マイちゃん→百瀬→所沢→乾→尾上→黒木→脇坂と個人で表紙を飾っている。
このまま市蘭メンバーが1人ずつ登場していくんでしょうな。
でも、そうするとその人数が尽きたら終わってしまいそうな感じがして厄い。
まさかの2ループ目という可能性もありますけどね!
さらにまさかの1ループ目で出てない人を残しながらの2ループ目とか!
作者も気付かずに水内さんが1ループで2回入っちゃうとか。ありえますよね。

さて、美浜幕張戦。
開始10分で、乾の折り返しを成田が決める。吠える校長。うおおお。

市蘭の攻撃力侮りがたしと見たか、八津野の天城は寝ていた隣の男を起こす。
この男こそ、船学の正GK皆川さんの弟、皆川総司である。
目付きはちょいと悪いけど、確かに皆川さんの顔だ!ヤバイ、それだけで凄そう!

美浜幕張も大会に向けて夏にフィジカルの強化をはかっていた。
だが、それでも市蘭の運動量にはついていけないでいる。
市蘭は2年かけてじっくりと体力を作ってきたわけですからねぇ。モノが違う。
だが、運動量だけでなく、技術的にも美幕を越えているという市蘭。

市蘭と美幕の最初の戦いは去年の今頃。
その頃は、美幕の方が圧倒的に格上と見られていた。だが、負けた。
その何か月後か後に再戦。市蘭はチームとして大きくレベルアップしていたが、そのときは美幕が勝利した。
戦跡を見ると、一進一退のライバル校といった感じである。
応援の数も同じくらいだ。

美幕のサッカー部は1年間公式戦出場を辞退している間に忘れられた存在となっていた。
同じように、市蘭もサッカー部の存続がかかるほどのゴタゴタがあった。
お互い、誰にも見てもらえない状態から、少しずつだけど応援に来てくれる人が増えてきた。

なんか・・・美幕と市蘭って似てたんだよな

ライバル的存在として同じ歩幅で前に進み、階段を上ってるつもりだった。
・・・それなのにいつの間にか、手が届かねえところにいっちまってたんだなあ

なんだか切ない話である。これがモチベーションの差というやつなのか。
試合は6−0で市蘭の勝利。ここまで差がつくとは。
でも、このぐらいでないと次の八津野とは戦えないわけですからねぇ。

試合終了後、百瀬は神崎に話しかける。

今まで戦ったすべての試合が、オレたちが成長するための糧になっている。その中でも美幕は特別だ。
美幕というチームがなかったら、オレたちは今のようなチームにはなれてなかったと思う。
ありがとう。

ふむ、よい話ですな。
因縁があるとはいえ、また美幕かと思わなくはなかったが、いい話だった。必要だった。
しかし、百瀬の発言だと、美幕は市蘭を育てる肥やしにされたとも言える。
そんな肥やし呼ばわりされた美幕が誇りを持つようになる方法が一つだけある。

お前らが八津野と船学に勝つことだ

神崎のその言葉に、初めは驚きつつも、笑顔で応える百瀬。

自慢してくれ。「市蘭を育てたのはオレ達だ」――と

敗れた美浜幕張のメンバーはそれぞれ市蘭イレブンを激励する。
よい光景ですねぇ。いかにもスポーツといった感じだ。校長も感激する。
でも感激しすぎて引かれている。うるせー。
今回は出てないけど、きっと間宮先生も熱く応援しすぎて引かれているはず。

試合が終わったので帰ろうとする天城たち。
起きたけどまた寝てしまったと思われた皆川だが、どうやらちゃんと見ていたらしい。
1点目と6点目はどうしようもない。あとの4点はオレなら止めてた

ふむ。1点目の時点でちゃんと起きて見てたんですな。天邪鬼め。
しかし、6点目は成田が1対1で決めた場面ですよね?
あれが止めれないのか。まあ、普通は簡単には止めれないですわな。
成田も成長したものだ。凄腕のキーパーに1対1で止めれないと言わせるとは。

だが、八津野のDFなら、1点目や6点目の状況をそもそも作ったりはしない。
次はその八津野との戦いである。
事実上全国2位の八津野高校。戦いは8日後の11月16日となる。
市蘭がどこまで強くなったのか、それがわかる戦いとなりましょう。
今度はじっくりと戦いの様子が描かれそうだ!楽しみにしています!



第224話 キーパー力  (2012年 1号)


今週の表紙は広能と山守。
ゲェーッ!単独じゃなくなってるー!!
これだと水内さんや丹羽さんが単独表紙を飾るのは難しそうな気がするぞ。

美幕に圧勝した市蘭。周りの見る目もずいぶん変わってきました。
ルカさんの情報によると、乾がファンレターをもらったらしい。
オレはそんな手紙もらってねーぞと憤る成田。そんなんだからもらえないんじゃない?

サッカー部の人気は飛躍的に高まっている。
練習の見物をしている女子たちもおり、好意の視線で見られている。
脇坂さん派や二宮さん派といった派閥まで出来ているとのこと。ワッキーは男前だからのう。

人気が出るのはいいことだけど、浮かれて慢心することはないだろうかと心配する久住先生。
まあ、前に女子マネージャーが複数来たときは浮かれまくってたしその心配は分かる。
だが、今回は浮かれている余裕すら与えてくれない相手である。気合入りまくり。
そういえば、あの女子マネたちはどうしているんでしょうね?
今更サッカー部応援の流れに乗ることもできないでしょうし。
青田買いのつもりが、とんだことになってしまいましたね。ハハハ。

皆緊張している様子であるが、成田はファンレターのことが気になる様子。

成田「何と書いてあった?」
水内「周りのみんなは地味だって言うけれど、堅実な守備をするあなたが好きです――と書いてあった

なにぃ!?ジミーももらっていたのか!?
しかも、ファンレターなのかラブレターなのか怪しい文面だ。
送った子はずいぶん職人系のポジションが好きな子のようですな。渋い。

まあ、それはさておき。
八津野戦に向けての練習に入る市蘭。
今年の八津野は守りのチームと言われている。だが、それはまったくの思い違いだ。
天城を中心に、その攻撃力には相変わらず、すさまじいものがある。
では、なぜ守りのチームと言われるか――
皆川というGKの存在が、そう言わしめているんだ

皆川総司。去年まで船学をのゴールを守っていた皆川裕貴の弟である。
GKとしての能力は、経験を考慮に入れれば――所沢以上!!

この発言に一同驚く。
すごく身近な例だけど、所沢の凄さは全員が理解している所でしょうからなぁ。
まあ、関根のじっちゃんは今だけだと笑っているようですが。
しかし、その今が問題である。
攻撃力は今まで通りで、GKはヒサシ以上。どういうレベルのチームなんだよ。
楽な相手ではないと分かっていたが、改めて強敵と思うしかない。
今からの練習は、所沢を皆川と想定して行うことになる。

一方、八津野。
こちらは逆に皆川を所沢と見立てて練習を行おうとしている。
所沢の凄さを説明する八津野の島村監督。
というか、関根のじっちゃんの説明ですな。
関根さんは大学から7人のGKをJリーグに送り出している。
Jリーグ発足前まで経歴を遡ると、今までに3人の日本代表キーパーを育てている
その男こそ、関根菊一。市蘭では軽んじられてるけど、知る人には凄い人なんだよね。
まあ、行動が軽いから軽んじられているんだけど。部室にまたゲーム機持ち込んでないだろうな。

その関根というコーチが、今年の春。大学を辞め市蘭専属のコーチになった。
分別がある年寄りが、大学職員の身分を捨て、無給――ボランティアで市蘭に行くことを選んだんだ。
とことん所沢の素質に惚れ込んでいると見るべきだろう。

完全に移行した決め手はマイちゃんの気がするけど、まあそんなことはわからないか。
所沢の素質に惚れ込んでいるのは確かだし。そもそも分別があるかどうかは不明だけどね。

この評価に慄く八津野。だが、皆川は闘志を燃やしているようだ。
次の日本フル代表のキーパーはオレだ!と息巻いている。
所沢以上に、自分の兄というでかい相手がいるわけですからねぇ。ここで負けてはいられないってことか。

市蘭と八津野。双方が同じ練習をし――双方が同じことに気付く。

はて。一体何に気付くというのだろうか?
練習の段階から盛り上がっている八津野戦。うーむ、いいですね。じっくり行きたいですね。



第225話 いつも通り  (2012年 2+3号)


さて今週の表紙は誰かな。ってアレー!?流れが断ち切られてる!!
流れを断ち切ってタイトルのところにいるのは皆川弟。
どうでもいいが、この場面の皆川弟はやけにいい顔していてカッコイイ。

市蘭と八津野、両方が相手のキーパーに見立てて練習を行う。
そして両方の監督が同じことをいう。いつも通りに打てと

相手キーパーが優秀だからといって、特別なことをやろうとするな。
誰か1人がいつもと違うプレーをしたために、チーム全体のリズムがおかしくなることがある。
それだけは避けねばならん。

なるほどねぇ。
特別なキーパー対策なんてあるものなのだろうかと思ったら、そういう話ですか。
相手キーパーは凄いと印象付けておいて、それでいていつも通りにやれという。なかなか難しい話ですわな。
実際、尾上もいつもより持ちすぎていたりする。相手が所沢クラスでは慎重になってしまうか。
逆に、一人よがりの強引な展開に持っていこうとしてしまう場合もありえるという。
いつも通りのプレーに徹するのは考えた以上に難しい。
八津野の選手も同じことに気付いていた。

本日の練習は終了。帰り支度をしながら広能は思う。
ヒサシはあんなにすごいんだから・・・失点はDFの責任だよな、と。

さりげなく名前で呼んでいる広能。ちょっと前まではさん付けだったのに。
心の中ではいつも呼び捨てだったぜとか言うのでしょうか。それはちょっとどうだろう。
所沢なら、そう呼んでも全然気にしないだろうしなぁ。

さて、広能は乾に声をかける。
マイちゃんが入院してから初めての居残り練習だった
八津野戦に向けて、集中力を高めていきたい。そういう思いからである。

キヨハル。お前はどんどん上に登って、いずれは日本のサッカーを背負うような選手になるんだろうな。
オレはそんなすごいやつとパスを交換している。
この時間が――オレが一番自信を持っていられる時間なんだ

居残り練習を終えた2人はマイちゃんの病室に。
マイちゃんは尋ねる。今も2人で練習しているの?と。
その質問に、やってねえよと答える乾。

あれは・・・3人でやる練習だからな

確かに。あの居残りのコソ練はマイちゃんを含めて3人で行われていたものだった。
こう言われてしまっては広能も頷くしかない。
また3人で練習したいねというマイちゃん。うむ、そうできればどれほどよいか。

11月4日。八津野戦の2日前。
練習を終えたところで、成田が所沢と関根さんに声をかける。

1対1の練習をしときてえ。あと・・・PKも。

これでもう――やり残したことは無い

完璧だ、とか言っていた成田ではあるが、やはり相手が相手だし、心残りはあったようだ。
特にPKは恐怖症になりそうな部分もありましたからねぇ。
成田の1対1は皆川弟も認めるものになりつつある。
だけど、慢心しきらずに磨いておきたいというのはとてもよいことですな。普段から慢心しやすい性格なだけに。

さて、次週は八津野戦が始まりそうな雰囲気である。
目標である2校の1つ。どのような戦いになるのか。注目です。



第226話 言っておきたいこと  (2012年 4+5号)


11月5日。八津野戦の前日。
尾上は母に「明日の試合観に来いよ」と言おうと思った。
だけど、照れくさくていえずにいる尾上。赤くなるな!
テルちゃんはゴミ出しとかもしているらしい。偉いねぇ。
まあ、明日の八津野戦で終わりってわけじゃないし、またの機会でいいですよね。
なんて言うとフラグみたいで怖いんですけど。

決戦を前にした放課後の練習。
それを見守る校長と女生徒。女生徒はトーナメント表を見て、残りの3試合はどれも大変だと言っている。
わかっている子じゃないですか。どうですかね、来年辺りでもサッカー部のマネージャーに。
今のタイミングはマイちゃんにかかりっきりになりそうだし、来年辺りにでも。

その大変な試合が控えているのに、全然緊張感がない市蘭部員。
いや、いい顔をしている。校長はそう評する。

やるべきことを全てやり尽くした――そういう顔です

さすがに校長。市蘭サッカー部の成長を見守ってきた人の言うことは違うな。

昔のことを話しているらしい面々。
ああ、確かに昔は成田が1対1になると絶望的な気持ちになったもんだよね。ゲラゲラ。
そんな話をして笑っている中、一人脇坂さんは真面目な顔をしている。
どうやら何か考えていることがあるようだ。

翌日の決戦を控え、マイちゃんの病室を訪れる市蘭部員。
百瀬を除く3年生は別の用事があるので後から来る。
マイちゃんは言う。
百瀬や乾を除いたら、八津野の人たちはサッカーを早くに始めた先輩である。
ちゃんと挨拶しないといけない。
でも、試合が始まったらそんなこと関係ないんだから、全力でぶつからなきゃダメだよ、と。
そして、最後に発した言葉は――はっきり聞き取れた。

絶対に勝とうね

小さな奇跡だったのかもしれない。でもその奇跡に勇気付けられる。おお!!

さて、脇坂さんたちの用事。それは黒木監督に言っておくことがあるというもの。
昔、脇坂さんたちはケンカに明け暮れていた。
曲がりなりにも勝負の世界に身を置いていた。その時の経験からわかっていることがある。
どれだけ死力を尽くして戦っても、勝てねぇ相手がいるってことだ。

高畑のために・・・明日は全力で勝ちにいくよ。
終了のホイッスルが鳴るまで死にものぐるいで走ってやらあ。
それでも、もし負けたら・・・オレたち3年は引退だろ!?

成果をあげられないまま目標をなくして――また元の・・・腐ってた頃の自分に戻ってしまうかもしれねえ。
だから、今のうちに言っときてえんだ。

オレたちをサッカーに誘ってくれて、ありがとう

この言葉を受けて震える黒木。
これこそ、黒木が欲しかった言葉でしょうなぁ。
過去のこともあるし、サッカーをやって楽しかった嬉しかったと思ってくれるのが何よりの誇りである。
その言葉を受けることができた。
黒木は思う。お前たちは――もう何があっても大丈夫だ!と。

オレもっ・・・お前たちに最高の誉め言葉を贈りたい!!
でもその前に、あと3試合戦ってくれ。

言い残していたことは全て言った。あとは戦うのみ。
こうして11月6日。準々決勝の日を迎えるのであった。
いやぁ、来るとは思っていたけどいい話だ!指導者冥利に尽きるってもんですね。
いよいよ次回からは八津野戦が始まる。熱い戦いを期待しているぜ!



第227話 全力で!!  (2012年 6号)


今回は二宮さんが表紙になっております。
単独表紙シリーズは終わったのかと思ったら、不定期に現れる流れですかな。

いよいよ強豪、八津野との対戦の日がやってきた。
船学と並び、目標であった相手である。
その市蘭の応援に、300人の生徒が集まってくれた
感無量な様子の校長だが、間宮先生は渋い表情。今でも全校生徒を招集すべきだと思ってそうだ。

300人集めた市蘭だが、八津野の応援は凄い数である。
向こうの応援席の半分以上が人ごみで埋まっている。
それに対し校長、応援は数じゃありません。質ですよ質!と反論する。
が、八津野の応援は質も凄い。さすがに年季が違いますわな。

今回は松村さんこと村松さんことルカさんも観に来てくれました。
相変わらず校長に対してぞんざいな態度でありますな。
逆に校長は思いっきり持ち上げたりしてるし、この2人の関係は妙に面白い。でも、名前は覚えようよ。

さて、選手入場。
この時の応援を聞く限り、八津野の観客はまだ市蘭を見くびっているようですな。こんな試合言うな。

大事なこの一戦。ルカさんがやってきたのは、応援席の雰囲気をマイちゃんに伝えてあげたいからである。
そして、ゴッド・マザー、マイちゃんを慕う不良達も、マイちゃんのために出来ることをやろうとする。
この試合はテレビで放送されるが、夜に録画したものを流すだけでリアルの情報は伝わらない。
なので、競技場に言った連中から中継を経て、随時状況を知らせてくれることになった。
これでマイちゃんもリアルタイムで一緒に感動を味わえるってわけだ。
いつものようにリードされる展開になったらハラハラすることになるなぁ・・・

不良達の行動に、マイちゃんはありがとうと礼を言う。
本当にありがたい話ですわなぁ。みな、いい子だ。

試合前、マイちゃんに言われたことがある。相手は先輩なんだからちゃんと挨拶してね、と。
それを守って、きっちり挨拶をする市蘭イレブン。いいヤツラだ。ヨロシク。

所沢と邂逅する皆川。兄とは違い、人の良さそうな顔をしている所沢に拍子抜けした様子。
とはいっても、貴方はその皆川兄より人相悪いじゃないですか。

そして、黒木は八津野の島村監督に挨拶する。
笑顔で応える島村監督。だが、背を向けた時には凄く真面目な表情になっていた

思えば、市蘭が成長してくると真っ先に予想したのがこの島村監督である。
先見の明はあったが、その予想を上回るスピードで市蘭は成長してきた。
侮ることはできないと思っていそうだ。厄介ですな。驕りとかなさそう。

とはいえ、ここまできたら、後は全力でぶつかるのみである。
ぜってえ、絶対に――勝つ!

勝利を胸に秘める市蘭イレブン。だが、エンドを決めるジャンケンは負ける百瀬。
習志野の時も負けてたし、百瀬はジャンケン弱いのか?
ともかく、八津野のキャプテンである天城が攻めるゴールを選ぶ。
八津野は自陣を風下になるように選んだ。
攻めるには風上の方が有利であるのに、わざわざ風下を選んだ。なぜだ?

風上から追い風に乗ったボールは失速しない。
失速しないから、オフェンス側のプレイヤーはスピードを落とすことなく、
ディフェンスが整う前にゴール前まで迫れる可能性が高くなる。

前半に大量得点をあげてオレたちを諦めさせるつもりなら、間違いなく風上を選ぶはずだ。
それなのに前半の自陣を風下に選んだということは、八津野はこの試合――大きく点が動く試合とは見ていない!!

後半の運動量はうちの方が上回る。
つまり、八津野は――後半、オレたちが風上に立つのを恐れたんだ!

強豪の八津野をして恐れさせる市蘭の運動量。
実際、スタミナは船学をしてSランクと言わせるだけのものを持っている。
逆にいうと、八津野はそういった情報をしっかり持っているということになる。
あの強豪が油断なく戦おうとしているのだ。苦戦は必至である。
それでも、頑張っていただきたい。マイちゃんも状況を聞いているぞ!頑張れ市蘭!



第228話 八津野  (2012年 7号)


全国高校サッカー選手権、千葉県大会準々決勝、八津野対市立蘭山。
40分ハーフ――80分の試合が始まった。

八津野は習志野と違い、乾に専属のマーカーをつけることはしなかった。
だからといって乾が自由に動けるというわけでもない。
素早いチェックにより、動きを封じる。
乾から二宮さんにパスがでるが、こちらにも素早くDFがつき、二人で挟み込む。
速く激しいプレスにボールを奪われる市蘭であった。

関根のじっちゃん曰く。
試合立ち上がりに強烈なプレスをかけて相手を消極的にさせるのは強豪チームの常套戦法らしい。
なるほどねぇ。開始後10分くらいはそのまま強いプレスをかけてくるのでしょう。
まずはそれを乗りきることからだ。

ボールを奪った八津野はロングボールを放り込む。
しかし、これは風に押されて失速。脇坂さんが防ぎ、山守がクリアする。

この一連の攻防はリアルタイムでマイちゃんの病室に報告されていた。

八津野がガーっと来たんですけど、なんとか防ぎました

すげぇ曖昧な実況だ!!
こりゃお母さんも汗をかくしかない。

続いて八津野の攻撃。中盤を上手くパス回しでつなぐ八津野。
市蘭も早めにプレスをかけようとするのだが、詰めるよりも早くパスを出される。
昔に行った練習試合のことを思い出させられますなぁ。とにかく八津野はボールを止めるのがうまい。
ファーストタッチで確実に止め、的確にパスを出す。
だが、脇坂さんたちはそんなことは既に練習試合で承知している。
なので、この場面も食い止める。

八津野がダーっと来たんですけど、何とか防ぎました

そういった攻防も、一言でまとめるとこんなもんになる。どうにかならんのか!?

開始から5分。ボールは八津野がほぼ支配している。
だが、全国2位の八津野をしてまだ1本もシュートまで行かせていない。
しっかり集中できている証拠である。
だが、ここで天城。ダイレクトパスを前に送る。
これまでのワントラップからのパスとは違うペースに、DFの間を抜かれる。ピンチ!?
と思いきやこれはオフサイドであります。
これは助かった、というわけではなく意図的に仕掛けたオフサイドである。
天城がダイレクトを出す前にDFラインをあげていたのだ。やるねぇ、ワッキー、バン。

前半6分――ボールは圧倒的に八津野が支配するもシュート数ゼロ
八津野はまだ所沢にたどりついていない。
だが、天才・天城はまだ個人技を見せていない。
ここからが本番といっていいでしょう。
まずは10分。そこをどのようにしのぐかがポイントだ。踏ん張れ!
そして、マイちゃんへの報告役の人間をどうにかしてくれ!



第229話 天城の力  (2012年 8号)


八津野のペースで始まる試合。八津野応援席も盛り上がっております。
そろそろペースを落ち着かせようかと提案する味方に対し、まだだと答える天城。

ボールはほとんどオレたちが支配していても、まだ市蘭にプレッシャーをかけきれていない。
まだシュートを1本も打ててないでしょ!?

さすがに天城。そこに気付いていたか。
表情を引き締め、シュートチャンスを得ようと考えているようだ。

天城に相対する山守。
そろそろ早いパス回しにも対応できないといけないのだが、距離を詰めきれずにいる。
ならば、せめてパスコースを切ることはできないだろうか。
そういった意識が命取り。
パスを意識したことを見抜かれ、天城にドリブルで突破される。ついに個人技が来たぞ!

だが、山守も抜かれたままではない。素早く後ろから張り付く。
そして万代さんが前に出て時間を稼ぐ。
脇坂さんと所沢の指示により、ディフェンス陣は的確に動く。
他の連中も自分のやるべきことがわかっているようだ。集中できてるね。

しかし、天城は前に出た万代さんも抜いてしまう。
1年半前――1年半前は、4人がかりでも止められなかった。
だが、今のオレたちなら――

脇坂さんも前に出て食い止めようとする。今の自分たちが3人がかりでいけば。
そう思ったのだが・・・4人が3人になっただけ・・・

これじゃあ、あの時と同じじゃねーか!

3人を抜き去り、ゴール前へと突入する天城。
これを見て八津野は決まったなと確信の笑みを浮かべる。
それだけ天城が信頼されているってことなんでしょうけど・・・ベンチはともかく選手は気を緩めるなよ。

ゴール前まで来た天城。そこに立つのは守護神、所沢。

そんなにすごいキーパーだって印象は・・・ないんだけどね。

確かに所沢の成績はそこまでいいわけではない。まだまだ発展途上でしたからねぇ。
だが、この試合はまさしく1点を争う試合である。
序盤であっさり許してしまうわけにはいけない。気合も抜群に入っている。

右に来るか?左に来るか?
天城が入ってきたのはほぼゴール中央。

所沢は天城だけでなく、その両翼の八津野の選手のポジションも頭に入れている。
左の11番より右の10番が前に出ている。
シュートが身体に当たりルーズボールになった場合、追いつく可能性が高いのは右の10番。

周りがしっかり見えてるヤツだからな――

所沢もまた、天城の凄さを知っている。
だからこそ、判断できた。天城は右に蹴る!

見事にキャッチしてピンチを抑える所沢でありました。おおぉ。
天城がガーッと突破してヤバイと思ったけど、所沢がバシッと抑えたぞ!
うむ、不良風の解説でもピンチをどうにかしてくれたと分かるな。よくやった!



第230話 全国2位  (2012年 9号)


今週はやたらと線が太いように感じました。何故でしょう?
おかげで、今までとはキャラの感じが異なって見える。少々怖い感じがある。
でも、2ページ目のルカさんがえらく美人になっている気もする。これはいいな!

天城の突破によりキーパーとの1対1というピンチ。
この危機をスーパーセーブで防ぐ所沢!すげぇ!
これには八津野の監督もコクッと頷く。って寝てるじゃねぇか!
相変わらずだなぁ。まあ、寝てるようでちゃんと見てるんでしょうけど。

ただ止めただけではなく、弾くことなくキャッチする。
これには八津野の連中も驚き。天城もえらい顔して驚いている。なんだとぉ・・・!?
そんな中、皆川弟は1人冷静に頷いている。
自分と並ぶと称される男だし、このぐらいはやってくれないとなって感じか。
なんだか、この皆川弟もやけにかっけーな。

とりあえずの危機はしのいだ市蘭。
だが、しばらくの間は八津野の猛攻が続くだろうと黒木たちは予想している。
その予想通り、八津野はここからの3分間で実に4本のシュートを放つ。
体が温まってきたということか。そこまでの侵入を許すようになってしまっているのだな。
だが、そのシュートのことごとくを防ぐ所沢。すげぇ。
さすがに八津野の観客も、このキーパーは凄いと認めてしまう。

とはいえ、この状態ではいつ点が入ってしまうかわからない。
そうわかっていても、中盤はやはり八津野の方が上手である。
天城だけではなく、八津野の選手はみんなドリブルで抜く技術を持っている。

過去2年半の間――八津野が敗れた高校チームは船学だけ。
これが――全国2位の圧力!!

天城を基点にして、さらに八津野の猛攻が続く。
今回の攻撃もシュートまで持ち込まれるが、サイドネット。外れてくれて助かった。

突破された広能に対し、もっとしっかり足を伸ばせと言う脇坂さん。
広能だけでなく、他のDF陣にも、もっと身体を寄せ、足を伸ばしてシュートコースを限定させるように言う。

どんだけシュートを打たれようと所沢に孤独な戦いをさせちゃなんねえんだ!!
そのために・・・オレたち(DF)はここにいるんだろーが!!

やっぱりワッキーは決めてくれますねぇ。
押されまくっている市蘭だが、この一言で集中力は再び増すことでしょう。
八津野の猛攻がどこまで続くかはわからないが、とにかくは耐えることですな。



第231話 遠いゴール  (2012年 10号)


押されながらもどうにか八津野の猛攻を防ぐ市蘭。
その戦いの会場に現れたチームは・・・習志野実業!
午前の試合で準決勝進出を決めた習実がスタンドに姿を見せたのである。
おぉ・・・凄い存在感だ。でも、立ってないで座りなさいな。

習実といえば、エースの松田。小さいけど実力はバツグンだ。
その隣には、でかい奴がいる。松田の隣にいるからでかいのではない。本当にでかい。
そして怖い。だ、誰だこいつ?え、茂森!?あの気弱だった茂森!?ウソだッ!!

一体茂森に何があったのでしょうか。気弱だった青年が、すっかり変わってしまって・・・
聞くも涙なエピソードが待っていそうだ。

習実の予想は、八津野の勝利。それは間違いないと考えている。
だが、自分達が苦しめられた市蘭にどういう形で勝つか。それが気になっているらしい。

さて、試合の方は相変わらず八津野が優勢。
山守のパスが天城にカットされる。その瞬間、観客席で動揺する男がいた。なんだ?

病院。相変わらず曖昧な報告が続いている。
八津野がダーっと来たけど、なんとか防いだそうです。わからねーよ。
これでは全然伝わらない。待機している不良達もそう考えている。そりゃそうだ。
マイちゃんはこの曖昧な報告に、怒ったりはしない。
怒ったりはしないが――寂しそうだ。

観客席には携帯を構えた不良。
どうにか必死で伝えようと思っているようだが、曖昧な結果しか伝えられずにいる不良だ。
その不良が座っている席が松田の前だった。これが何を意味するのか。

開始から15分経過。
八津野は攻めまくっているが点が取れない。ゴールが遠く感じている。嫌な試合だ。
キーパーに阻まれるだけでなく、バーやポストに嫌われる試合。この試合もそうなのか?

試合経験の多い八津野は、そういった試合を何回も経験しているのでしょう。
なんとか点を取って、この嫌な雰囲気を払拭したいと考えている。
DFがオーバーラップし、攻めに加わる。サイドからの突破。これを許せばかなりのピンチだ!
そうはさせじと、振り切られること無くピッタリ張り付く広能。
タッチライン側にクリアする。コーナーではなく、スローインとなった。

この一連の八津野の攻撃と、市蘭の防御。
その詳細がマイちゃんの下に届けられている。あら急に随分わかりやすくなったわね。母も御満悦だ。

スローインに逃げたのは広能のファインプレー。いいぞ広能!
コーナーになっていたら、蹴るのは天城。
天城にはピンポイントでクロスを入れる技術がある。蹴らせなかったのは正解だ。

試合が終わったら褒めてあげて欲しい

中継の不良はそう報告する。
これを聞き、笑顔を見せるマイちゃん。広能クン・・・頑張ってるんだね。
ようやく見せた笑顔に不良達も嬉しそうだ。やったな!

さて、この詳細な解説。行っていたのは観客席の不良ではなく、松田。
どうやら事情を聞いて協力してくれるらしい。まじっすか!
今回だけでなく、最後までボクに解説させてくれないかな?と申し出てくれる。

その子に・・・少しでも伝わるように

な・・・なんていい人なんだ。

不良達も感激する松田の優しさ!カッケェ!!
というか、この世界の不良達は妙に可愛いな、おい。
顔に傷つけた強面のくせに、凄い震えて感動している。いいヤツラだ。

心強い解説役が加わり、マイちゃんへの心配はなくなった。

――さあ市蘭。大切なその子に、今度は攻め込む姿を見せてあげてくれ。

市蘭の反撃はいつになるか。そろそろ来る気もするが。我慢の時間はどこまで続くのか。
気の早い話だが、松田のおかげで次の習実戦がさらに楽しみになってきた。
マイちゃんのことを知った松田はどういった反応を見せるのか?楽しみだ!



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