蒼天紳士チャンピオン作品別感想

ANGEL VOICE
第313話 〜 第339話


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 各巻感想

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連載中分

ANGEL VOICE 36巻


第313話 異常  (2013年 47号)


全国高校サッカー選手権千葉県予選決勝戦。いよいよ後半戦の開始となります。
前半は1対0。船和学院リードで折り返し。さて、ここから市蘭の反撃なるかというところ。

涙を流しながらの市蘭イレブンの登場は当然の如く相手に警戒心を抱かせる。
が、どういう理由かは分析することもできないし、気にしてもいられない船学。

こちらはこちらでやるべきことがあるでござる。早いうちに2点目を取って試合を決めるでござる

確かに船学もリードしているとはいえ決して余裕のある状況とはいえない。
早めにセーフティリードを稼ぎたい所。しかしその思惑は後半開始早々に打ち砕かれそうになる。

ホイッスルと同時に走り始める市蘭イレブン。
その迷いのない表情は相手を威圧する何かが秘められている。
成田が凄い速度で詰めてきたため、前方へのパスが苦し紛れのものとなる。
それをカットする百瀬。いきなり攻守が入れ替わることとなりましたぞ!!

上がれー!!走れ走れ走れー!!

控室で自らが言った通り、選手に向けて走れと叫び続ける黒木監督。
選手たちもまた、決してやり残すことのないよう走り続ける。
その走りはどう見ても飛ばし過ぎのように見え、長くは続かないのではと船学に思わせる。まあ、普通に考えたらそうでしょうな・・・

乾がボールをキープし、成田がゴール前へと走り込む。
ゴール前へのクロス。成田が頭で合わせることができれば同点のチャンス!
マイちゃんのお母さんも決めてっ!!と願うプレーでありましたが・・・惜しくもキーパーに阻まれてしまいます。
さすがにそう簡単にはいかないか。

クリアボールを拾ったのは船学。
しかしあっという間にディフェンスのために走って戻ってくる市蘭。
そんな無茶な走りをしたら5分ともたないぞと考える船学。さてさて、それはどうでしょうかな。

この試合。何一つとしてやり残すことがあってはならん!!

その意識を持って走る選手たち。やがてこの市立嵐山の走りに――船和学院が圧倒され始める

やはり意識の差というのは大きい様子ですな。
果たして精神は肉体の限界をどこまで凌駕出来るのか。
市蘭はスタミナの塊であるが、この無茶な走りをどこまで続けることが出来るのか・・・!!
見守っていきたい所であります。



第314話 互角!?  (2013年 48号)


後半開始早々全力で走り回る市蘭。
こんな走りをいつまでも続けられるはずはないと考える船学。そりゃそう考えますわな。

おそらく5分――5分でペースを通常に落とす。
ペースの切り替え時には思わぬ隙が生まれるものでござる。そこがこっちにとっては狙い目

そのように考えていた船学であったが5分経っても市蘭の動きは変わらない。
全員がとにかく走り回り、ボールへと詰め寄せていく。
ならば10分だ。10分で落とすはずと考える船学。しかし――当然の如く10分経過しても市蘭の動きは変わらない!!

さすがの市蘭でもこの動きは無茶がある。息があがりだしている。
しかしそれは市蘭の動きに付き合っている船学にも同じことが言えるわけでして・・・ほほう。

二宮さんが右サイドを駆け上がる。ここから折り返して成田に合わせるのが黄金パターン。
だが、今回の二宮さんのキックは精度を欠き、成田にはまったく合わなかった。
しかし船和学院のDF鈴谷はこのクロスボールをヘディングで外へ出す。
傍から見れば全く危なげなく処理できる球であるのにコーナーのチャンスを与えてしまった。これは船学らしくない。
見ている観客の中にも不安になる者が現れるぐらいであす。ってまだ市蘭を軽んじているのがいるのか。

互角の戦いをしていると述べる一般の観客。しかしそれは違うと天城たち。
それはピッチにいる船学の選手はもちろん、自分のところのサッカーを見慣れている船学の生徒たちもわかってるだろうとのこと。

コーナーに・・・逃げた!!
あの場面でゴールライン方向にクリアするなんてことは・・・八津野が相手でもほとんどなかった。
こんなことってあるのかよ・・・・・・?うちが市蘭に・・・押されている

さすがに船学。応援している生徒も目が肥えている。
DFが成田の影に怯えてコーナーに逃げた。まさに状況が見えていなかったという話ですわな。
これにはさすがに土岐監督も渋い表情を見せています。
ユゥエルを成田のマークにつかせてとにかくこのセットプレーでの得点は回避しようとする。
また、市蘭のスタミナに合わせて動くことで逆にこちらが先に潰れるのではないかと危惧する選手もいる。それに関しては古川――

そうなる前に流れを変えるでござる。なせば成る――でござる

何やら怖いことを言っている。どうするつもりなのか・・・

セットプレーでユゥエルと張り合う成田。
ニアへの飛び込みは警戒されているし、とにかく高さでユゥエルの上を行くしかない。
が、さすがに相手の技量が凄い。
単純な身体能力だけならば互角以上に競り合えるかもしれないが、上手さではやはりユゥエルに軍配が上がるか。

ここで始まるのは船学のカウンター。
古川はここで決めようと考えている。確かに船学がここで追加点を取ることとなったら流れは変わるかもしれない。
そして古川ならばそれをやってきそうな気がするのも確かである。怖い話だ。
まあ、今の市蘭ならば全力で守りきりそうな気はするが・・・果たしてどうなりますかな。



第315話 足りないもの  (2013年 49号)


チャンスから一転してピンチ。
古川がボールを持って駆け上がる。船学のカウンターだ!!

万代さんがコーナーキックで上がっているためディフェンスの数が少ない。
距離を保ちながら下がって守る脇坂さん。そうして相手の動きを制限しながら味方が戻るのを待つわけですな。
実際、市蘭の戻りはとてつもなく速い。
ここで1点取って2点差にすればおそらく試合は決まると考える古川であるが、一瞬で囲まれるこの速さには驚きを禁じ得ない。

しかし船学で点が取れるのは古川だけではない。
古川が上がるのと同様に駆け上がっている伊能。オレに回せとアピールしている。
そのアピールを見て舌打ちするのが古川以外の船学の選手。

古川っ・・・伊能を使うのか?

大事な決勝戦であるのに内部に不穏な空気が出来上がっている船学。
ここで古川は思い出す。監督にハーフタイムで言われたことを。何が足りなかったのか?考えてみようかというセリフを。

いつも通りの攻めができていたのにあれだけ攻めて前半は1点しか取れなかった。
それはどういうことなのか。この場で改めて考える古川。
しかし市蘭の選手に囲まれている現状ではゆっくり考えている暇はなさそうですな。

いつもは上で待つようにしている成田も今日ばかりはディフェンスに参加する様子。
まあ、よほど深い所まで下がるのでなければすぐに上に戻れるのが成田ですしねぇ。
それにここは確かに必死で守らなければいけない場面である。むしろ喋ってないでさっさと当たれという場面だ。

これ以上ゴールに近付けたら――ファウルを取られた時のフリーキックが怖え

四方を囲んだ状態なのにそういうことを気にしなければいけない。古川の凄さがよく分かるシチュエーションだ。
とはいえ成田が身体を当てたのであればさすがに古川も揺らぐでありましょう。
またルーレットでかわすようなことがあれば後ろから迫っている乾からはボールが一瞬無防備となる。
上手くすればファウルすることもなく奪い返すことができそう。だが――古川が取った行動は当たられながらのパス!!
脇坂さんがギリギリ届かないぐらいの距離を正確に狙った伊能へのスルーパスである!!

いつも通りの攻めができていた。
いつも通りということは・・・伊能を活かしきれてなかったということでござる

さすがに古川。拘り過ぎることなく冷静に一番この場で効果的にゴールを狙える手段を取ってきた。
その結果ゴール前で所沢と1対1になる伊能。繰り出されるシュートは・・・市蘭のゴールネットを揺らす。

痛恨。まさかの2失点目
うーむ、古川がいうところの試合が決まる2点目が決まってしまった。これは・・・危うい。
後半開始早々に走りまくり、そこでカウンターを決められての2失点目。
普通のチームであるならば立ち直れないぐらいの衝撃でありましょう。
だが、市蘭ならば・・・負けられない意識に溢れている今の市蘭ならば何とかしてくれる・・・
そう信じたい所であります。早い段階で何とかして1点を返さないといけませんな。



第316話 絶望!?  (2013年 50号)


痛すぎる2失点目。まさにやられたという感じである。
悔やむ市蘭に対し、伊能はかなり調子に乗っている。

見たか!!オレに任せときゃこんな試合楽勝なんだよ
どうしたお前ら。ハイタッチしに来いよ。生意気なオレがシュートを決めても素直に喜べねえか?

そのようなことを考える伊能に対し、唯一ハイタッチを申し出る男がいた。パスを出した古川である。

伊能「いいパスだったぜ。やりゃあできんじゃねぇか
古川「――でござるな」

うーむ、これは古川の度量の大きさと見るべきか気の小ささと見るべきか。
伊能の発言はデレが出たと見るべきか嘲りが出たと見るべきか。どちらとも取れそうで際どいですなぁ。

何にせよ市蘭は2失点目を喫した。
思わず立ち上がっていた天城。落ち着きを取り戻して席に着いた頃には落胆の色を露わにしている。

後半15分。0対0なら船学といえどちょっとしたことに慌てる。1対0なら1つのきっかけで追いつくことができる。
それが2対0になると――余裕を持って守られるだけだ。終わったな

なんせあの船学である。まだ時間差はあるとはいえ、2点差はセーフティリードといっていい状態であろう。
走り回って相手を慌てさせれば同点のチャンスはあった。
が、余裕を持って処理をされるということであれば、その慌てさせることもできないかもしれないわけだ。
こりゃあ市蘭の応援団も声が出なくなりますわなぁ・・・
逆に船学の応援団の方はにわかに活気づいている。うーむ、厳しい。

2点差になったことで諦めてくれればよいのでござるがと考える古川。
諦めなくても走る気力は萎えただろうと考える船学。しかし――その走りに変化はない。とにかくムチャな走りを続ける!!

市蘭にしてみればどのような状況に追い込まれようとも試合を諦める理由にはなりませんものねぇ。
理由を知らない船学や観客たちにしてみれば信じられない走りでありましょうさ。

ここで黒木監督は久住先生にお願いしたいことがあると言い出す。

あいつらのことをよく見ててやってくれませんか?
2点差をつけられました・・・しかしここでペースを落とすわけにはいきません。
あいつらを見ていて限界がきた者がいれば私に教えてください。交代させます
本来なら私が判断しなければならないことなのですが、今の私はあいつらの頑張りに甘えて見過ごしてしまう可能性があります。
お願いしてもよろしいでしょうか?

マイちゃんのために走り続けろと言っていた黒木監督。
だが限界を超えて走らせることで別の問題が発生する可能性ももちろんある。
大人としてはそうならないように対処することも考えなければいけないという話ですな・・・
地味にではあるが大任を引き受けた久住先生。彼もまたこの大一番で戦っているということでございます。

ボールを奪われてもすぐに走って取り戻す市蘭。
その姿を険しい表情で見つめている土岐監督。ここで動く。
クイっと両手でサインを出してチーム全体に指示した様子だが、一体何を仕掛けてきたのだろうか?
天城が盛大に驚き、乾や黒木監督も驚いている。
さらに指示された船学の選手たちも驚きの表情を見せている。これは一体・・・?

完全にベタ引きして守りを固める態勢となったのだろうか?
FWだけ残して後は守るというのは定石であるが攻撃的なサッカーをしている土岐監督の船学としては珍しい形といえる。
それをされたら市蘭は確かに厳しいとは思うが・・・それだけでここまでの驚きを見せるだろうか?
まあ天城はリアクションが派手だからそういう顔も普通にするだろうが・・・うーむ、どうなるんでしょうか。



第317話 チャンス!?  (2013年 51号)


船学の選択に驚きを隠せない市蘭イレブン。成田がやけに可愛いことになっているな。
さて、何が起きたのかというと、なんと王者である船学が・・・引いて守っている!!

高い位置にユゥエル、中盤に古川を残して他は全員引く形となっている。
2点リードで残り25分。引いて守って逃げ切るつもりなのか・・・?
観客たちも船学のこの動きはこれまで見たことが無いらしくざわついている。
あの八津野とやるときだってこんな守り方はしたことがない。

もしかして・・・疲れ・・・か?

そのように推測する百瀬。ふむ、確かに市蘭の無茶な走りに付き合って披露している感じはありますな。
引いて守ればスタミナの消耗は抑えられる。
となると、これは逆にチャンスなのではないかと考えだす市蘭。

真正面からぶつかって圧倒的な強さで勝ち続ける船学は・・・絶対引いて守る練習なんかしてねえ!!
練習でやってねえことをいきなり試合でやろうとしても・・・必ずどこかでボロが出る。

なるほど、確かにつけいる隙があるかのように感じますな。
じっくり攻め立てれば、1点を返せる可能性もある。1点差になりさえすればまだ望みはある。

乾が中盤でボールを持ち、組み立てを開始。
尾上とのワンツーで抜こうとし、アイコンタクトによる意思疎通も完璧に行われていたのだが防がれてしまう。あらら。
鋭いパス回しで中盤に残っていた古川にボールが渡る。
そして古川から前に残っていたユゥエルへとボールが出る。船学のカウンターだ!!やべぇ。

ディフェンスの連携といい前に繋ぐ早さといい、これは急造のものとは思えない。
船学は引いて守る練習をメチャメチャやっている!!そのように考える市蘭の面々。それはどうやら正解である様子。

船学はJリーグチームとの試合でこういう戦い方をする

そうか、天皇杯用の戦い方か!!
確かに船学であってもまず勝てないのではと思えるチームが存在しましたわな。
普通なら高校チームがプロであるJとやっても、ほとんどボールに触ることができない。
だが、船学は天皇杯で本気でJを食う気で練習をしてきているという。それがこの形であるということか・・・!!
うーむ、こりゃあ天城も濃い顔で驚くわけだわ。まさかそんな格上用のシフトを取ってくるだなんてなぁ・・・

土岐監督が市蘭を警戒しているのは知っていたが、ここまで容赦なく仕掛けてくるとはさすがである。
しかもカウンターで点差が開きそうになっているピンチの状態。なんだか本当に絶望的な雰囲気になってきましたぞ・・・
どうにかしてここでユゥエルの攻撃は阻止しておきたいところでありますが・・・
ファールでも何でもして食い止めたいが、どうなりますか。怖い怖い。



第318話 攻め手  (2013年 52号)


2対0!!――勝利は確定しているが・・・この1点がとどめになる!!

カウンターで市蘭の守りを突破したユゥエルはそう考える。
だがまだ一人、広能が必死に止めるべく横についている。
確かにここで3点差にされては絶体絶命ということになる。どうにか止めてくれ広能・・・!!

横から体をぶつけて止めようとするが、相手がデカすぎてはじき返される広能。うーむ、ファウルも難しいか。
だが、自身が伊能に振り切られたから2点目を取られたという負い目のある広能。
絶対に止めなきゃという強い意志。それに広能くんの熱い守りに期待していますというマイちゃんからの手紙。
それらが広能の心に火をつけ、見事にユゥエルの足元のボールを蹴り出すことに成功する。おぉ。

零れたボールをクリアする脇坂さん。危なかった・・・実に危なかった。
だが、広能の頑張りは見事なものであった。これは褒めたい。良くやった!!

そして、今回の船学のカウンターを見てさきほどまでの考え方を改めつつある市蘭。
もともと上にいたユゥエルと古川以外で上がってきたのは伊能だけ。他はほとんどポジションを上げていない。
ひたすら守りを固めて、攻めはカウンターに限定する戦い方だ。
これは多分大学チームやJリーグ対策の戦い方ではないかと推測する乾。鋭いですなぁ。

そうとなると、逆にこれがチャンスだなどと甘い考えは通用しないことになる。
カウンターを常に警戒し、それでいて積極的に攻めていかないといけない、神経を使った戦いを強いられることとなる。厳しい。
だが船学の方にも不安要素がないわけでもない。高校チーム相手に初めてやる戦法なだけに不満を覚えるものもいる。伊能だ。

クソっ!!せっかく1本決めて乗ってきたのに、なんで引いて守らなきゃなんねえんだよ?

市蘭の怖さを良く知っている土岐監督。それに比べるとやはり選手たちの方はまだ認識が足りていない様子。
あのまま市蘭の走りに合わせていたら、いずれ双方ともスタミナが尽きてしまうと土岐監督は考えたようだ。

スタミナが尽きて気力の勝負になれば、ほとんどの場合追われる者より追う者の気力の方が充実していますから

うーむ、油断がないですなぁ。
王者でありながら、肝心の監督が一番油断なく構えている。これが船学の恐ろしい所である。

その船学の守り。さすがに本気でJリーグに勝利することを考えているだけあり、固い。攻め手が見つからない。
乾がボールを持っても攻めあぐねるぐらいだし、よほどのものであるのは想像に難くないですなぁ。

一旦百瀬にボールを下げ、乾は成田に集中切らすんじゃねーぞと声をかける。そしてこうも続ける。

Jには古川やオレよりうめえやつが何人かいる。だが、おめえより速えやつはいねえ。絶対出遅れるんじゃねーぞ。

ほう、成田の速さはそこまででありますか。
微妙にリップサービスが入っている部分はありそうだが、成田の速さが船学にとって脅威となるのは間違いない。
この固い守りを崩すには成田のスピードはやはり必要不可欠なのでありましょうな。

それにしても、乾にそう言われて本当に自分は日本代表になれるんじゃないかと考える成田。
マイちゃんの手紙に会った一文、成田くんが日本代表のユニフォームを着ている姿をいつか見たいなという言葉。それが思い出される。

いつでもいいぜ。オレに出せ!!キヨハル

やる気を見せる成田。うむ、いい気迫だ。
その成田を初め、頑張っている選手たちの動きに感化される市蘭の生徒たち。ようやく応援を再開する気力を取り戻したようだ。
必死に選手たちに声援を送る。そして、その中に尾上を――下の名前の輝久と呼んで応援する声があった。

なんにも言わずに家を出たのに・・・クソババア・・・来てんのか?

まさかの母親の声援。やはりこの大一番。尾上の母親とのフラグが回収される流れとなりましたか!!
これはついに尾上のミドルが火を吹く時がやってきましたかな?
船学が引いて守っているのなら、ミドルシュートは効果的であるといえるかもしれない。
もちろん引いて守っている分、シュートコースが消されている可能性は高いわけでありますが・・・
パスをもらうための成田の動きがシュートコースを開ける結果になるとか、そういう展開もあるかもしれませんな。
ここは尾上の活躍に期待したい所です。なんとか早く1点を返したい!!



第319話 安定する前に!!  (2014年 1号)


大声援の中に母親の声が混じっていた気がする。
思わず足を止めてスタンドを注視してしまう尾上。
とはいえ何も言わずに出てきたのだし、来てるわけねえよなと思い直す。はてさてそれはどうですかな?

いい所でボールをもらう尾上。まだ船学のディフェンスは詰めてきてないし・・・ゴールまでのコースが開いている!!

来てるわけねえ・・・けど、でももし・・・もし来てるんだったら・・・しっかり見とけよクソババア。
おめえに苦労しかかけなかった息子は今・・・割とちゃんとやってるんだぜ

尾上の強烈なミドルが出た!!
が・・・これは、クロスバーの上!!うーむ、惜しい。
少し抑えをきかせていれば枠に行っていたのではとのこと。想いが強くて力が入り過ぎちゃいましたかね。
外したことは残念であるが、乾にしてみれば大きなことに気付かせてもらったプレーである。

あの位置からのミドルをフリーで打たせた。
船学のディフェンスは・・・まだ安定してねえ!!
ベタに引いて守ると言っても対戦する相手によってディフェンスラインの位置取りは変わってくる。
船学はまだ成田が走り込むゴール前のスペースを消すためにどの位置までラインを下げるか・・・それを探っているんだ。
だから尾上のミドルに対応できなかった。

なるほどねぇ。引いての守りを練習している船学ではあるが、それでも対戦相手に合わせた調整には時間がかかるわけか。
特に成田の走り込みは速い。そのために引いて守らねばならない分、尾上のミドルへの対処が間に合っていなかったと。
だが、今のミドルを見れば尾上をフリーで打たせてはいけないという考えになるはずである。
となると、今度は逆にディフェンスが前に出てくるわけで、そこにスペースが出来ることになる。
乾はその空いたスペースに走り込むから、状況を判断してミドルを打つかオレにパスを出すか判断してくれと乾に伝える。そして――

集中しろ成田!!

いつも通りの言葉。だがそれは、今度こそ行くぞという意思が見て取れる言葉である。
表情からそれを察し、同じように緊張した面持ちで応える成田。

船学のディフェンスラインが安定する前に、1点取り返す!!

いくぜ。
そう心の中で呟く乾。そして動き出す尾上と成田。
百瀬から尾上にパスが出る。もちろんミドルを警戒する船学はDFの加藤が前に出てシュートコースを切ろうとする。
しかしそこで空いたスペースに走り込んだ乾に尾上からパスが出る。
前に一人しかいないのであれば、乾ならば抜くことは可能でありましょう。
突破はしきれていないが、うまくボールを運び、ゴールまで近づく。
そしてシュートかと思えるほどの勢いでクロス。逆サイドへと蹴り込む。

キヨハルが言ったんだよ・・・オレより速いやつはいねえーって

逆サイドに走り込んでいたのは成田。渾身のダイビングヘッドが・・・決まるのか!?

ここは何としても決めて欲しい場面。だが、このタイミングで引かれると・・・どうなるか分からない。
枠を外さなくても、相手キーパーの超反応に止められる恐れは十分にあったりする。
まあ、そこからどうにか押し込むという話ならあり得るか・・・?

どうにかここで1点取り返し、まだ勝負はついていないという雰囲気に持って行って欲しいものでありますな。



第320話 八津野並  (2014年 2+3号)


大歓声から一転して静まり返るスタジアム。
誰もがグラウンドのその一角を見つめ、そして驚愕する。
乾の放り込んだシュートと見まがうばかりの速いパスを成田が捉え・・・見事にゴールに押し込んだのだ!!

後半19分。ついに市蘭が1点を取り戻すことに成功する。これは大きい!!
病院で娘の死に項垂れていた父親も顔を上げている。そして――

マイちゃん見てる?仲が悪い3人が、また抱き合ってるわよ

この1点を決める立役者となった尾上、乾、成田の3人が肩を組んでいる。よい光景ですなぁ。
もちろんまだ負けているのだし、喜んでばかりはいられない。まあ、それでも嬉しいものは嬉しいのだから仕方がないか。

今のプレーを振り返る美幕の3崎。
口で言うのは簡単だが、船学の堅い守りを破ってこれだけのことができるチームはほとんど存在しないだろう。
そう、八津野並だと言える。

うち並?

そう言われてぶすくれる天城。ああ、そういえば天城は八津野でしたね。
もちろん覚えてはいたけど、あまりに市蘭に傾倒しているからそっちの意識が薄くなっていたよ。
そんな天城を気にしつつ、江崎は思う。
一緒に練習してきたオレたちが思ってる以上に、あいつらすごいのかもしれない。と。

船学としても今の1点はマグレなんかじゃなくしてやられたという雰囲気。
だが同じようなヘマはしない。今度こそ守り抜くという構えの船学。
1点差に詰め寄られはしたものの、まだまだ焦りが見られる状態ではないか。

残り20分――ただ守りに徹するというのもなんでござるから、追加点を取ってくるでござるよ

そう述べる古川。うーむ、ここでまた点差を広げられるのは厳しいな・・・
伊能は古川に対し、このシステムはあんたに向いてない。オレとポジション代われよと申し出てくる。
が、その申し出を拒否する古川。お、ちょっと強い調子ですな。

さて、1点取り返した市蘭は意気が上がっている。
マグレが重なったわけでもセットプレーのパターンがハマったわけでもない。
流れで船学のディフェンスを崩して1点をもぎ取った。その事実がとにかく大きい様子。いけるぜ!!

市蘭の応援団もようやく息を吹き返し、盛大な応援を再開する。
セーフティーリードである2点差がつけられたときは沈黙しちゃってましたが、今こそは勢いに乗る時でしょうな。
そんな観客席を見ながら尾上は思う。

見てたか?クソババア。オレ・・・結構ちゃんとやってんだろ?

そのように心の中で声をかける尾上。だが、母親は・・・来てなかった。声が聞こえたのは尾上の思い違いである
なんともはや・・・そんなこともあるかと思ったが、本当にそうなるとは・・・
先に試合があると告げていたわけでもないし仕事もあった。
仕方がないことではあるが残念なことでもある。仕事が終わって、今から駆けつけても間に合いそうにないとのこと。
うーむ、だが延長になれば・・・延長になればひょっとして。そういう想いもなくはないが、どうなんですかねぇ・・・
まあ、何にせよこの思い違いがいい方向に動いたのは確かであります。

母親が見に来ているという思いが力になったのは初めてだった――たとえそれが勘違いでも

そんなナレーションが入るが滑稽と笑うよりも健気であると称賛したく思えてしまいますな。
その勘違いを活かしたまま今度はミドルを完璧に決めて欲しいところでありますが・・・さてどうなりますか。

1点差に詰め寄ったところで試合再開。
船学はシステムを変えず引いて守りに徹した状態。
この状態であるならばカウンター以外ではそうそう攻め込まれることはないはずである。
現に古川の前に味方はおらず、視界内には市蘭の選手がキーパー含めて7人はいるという状況。厳しい。
しかし古川はこう思う。確かに攻めの人数の極端に少ないこのシステムでは周りを活かすことばかり考えていてもダメであると。

それがしが変わる必要があるのかもしれぬでござる

そう考えた古川を、百瀬、尾上、山守の3人が囲み――3人が抜かれた。

そうだ!!自分を前にだせ古川!!

頷く土岐監督。むむ、ここに来て古川の成長を促すこととなってしまったわけであるか・・・?
さすがに簡単に同点まで行かせてくれるとは思っていなかったが、これは厄介ですなぁ。
古川の活躍も描かれそうな気がするし、それを何とか凌ぎながら逆転しなければいけない。
うーむ、この先もまだまだ死闘となりそうでありますな。



第321話 古川鷹山  (2014年 4+5号)


追加点を取ると宣言して駆け上がる古川。
これまで周りを立てようと優等生過ぎた古川がここに来て個人技を使おうとしている。土岐監督はそれを奨励している。

我を・・・自分をもっと前に出せばプレーの幅が広がるはずだ

ここに来てなんとも厄介な話である。
さすがに1点返してさあこれから同点に向けて気勢を上げようというタイミングで引き離されるわけにはいかない。
前に入って食い止めようとする万代さん。
しかし古川のドリブルは止まらない。さすがに上手い。
が、すぐにフォローに入る脇坂さん。横から体を寄せて自由にボールを蹴らせない。
その不自由な状態で放ったシュート。それでもコースをついてくるのはさすがだが・・・所沢が止めてくれた!!

力と力。意地と意地とのぶつかり合いは少しでも怯んだら負けと関根さんは語る。
古川ほどの選手が正面からやってくるプレッシャーは半端なものではありますまい。
それを飲み込み、見事な反応で止めてみせた所沢。お見事!!

大会前、あの皆川さんが言ったのだから間違いないのでござろう。所沢均――高校サッカーNo.1キーパー

いつの間にかNo.1となっていた様子。
弟とは甲乙つけがたい気もしますが、弟を立てるよりも皆川さんは敵を立てたって感じですかね。

2対1。1点差に詰め寄られた船和学院は高い位置に残ったユゥエルと古川の2人が積極的にプレスをかけに行く。
市蘭をもう一度突き放し、勝負を決めるためにボールを奪おうとする2人。怖いなぁ。

そのうち、その動きが功を奏し、古川がボールをカット。素早くユゥエルへと送る。
ユゥエルはボールをもらって突破を試みようとするが、そこに万代さん。肩からぶつかりユゥエルを倒す。
あの巨体のユゥエルを倒すとは凄いなと思ったが、どうもユゥエルもここはわざと倒れたっぽいですな。
万代さんもこの男相手に半端に突っ込んでも意味はないと思って多少強めに行ったわけですし、ファールは取られやすいって話だ。
でもまさかカードまで出てしまうとはなぁ・・・今後まさかの退場がありえるのか・・・?

後半24分。残り16分というところで船学のフリーキック。
ゴール正面やや右寄り。32.3メートル付近というゴールを狙える距離。さて、今回キックする古川はどう狙ってくるのか・・・
絶対守り抜くという気概を見せる市蘭。成田も今度こそ絶対にユゥエルの上まで跳ぶと意気込みを見せています。

先程自分のシュートを止めた所沢に思いを馳せる古川。
確かに所沢はすばらしいキーパーである。データを見た限りセットプレーからの失点もほとんどない。

――ということは、運動能力、集中力、かけ引き。いずれも極めて高いレベルということでござろう。
されども・・・なせば成る――でござる

ここで古川についての紹介が挟まります。こ、ここに来てか・・・!?
古川鷹山。鷹山という名は父がつけた。
若い頃、役者の道を目指していた古川の父はある舞台で演じた上杉鷹山に傾倒し、その名を息子につけた。
上杉鷹山――江戸時代、財政危機に瀕する米沢藩の藩政を建て直した人物である
第35代合衆国大統領ジョン・F・ケネディは日本人記者団に「日本で最も尊敬する政治家は誰ですか?」と問われた時上杉鷹山だと答えた。
――日本人記者の中に上杉鷹山を知る者はいなかったという。

面白い話であるが、それ以上に古川父の姿が面白い。似てないにもほどがあるでござろう!!何だその表情は。
それはさておき、上杉鷹山が残した言葉に次のようなものがある。

なせば成る。なさねば成らぬ何事も。成らぬは人のならぬなりけり
(強い意志を持って行動すれば何事も成就させることができる。結果が得られないのはなし遂げる意志と覚悟が足りないからである)

いつしかこの言葉は古川の座右の銘になっていた。
これは余談だが、古川は若くして役者の道を諦めた父を叱り付けたことがあったという。
確かになせば成るの精神に反しておりますが、それでも無理なものは無理ってことですよ。
役者時代の写真を見ればある程度の推測は出来てしまう。悲しいことでござるなぁ・・・

なせば成る――でござる

古川のフリーキックは古川自身が想定したラインを正確にトレースする。

見事なキックが飛び出したようだが、はてさてこれはどうなりますか・・・
ユゥエルに合せるキックなのか、直接狙っているのか。どのように想定しているのか・・・怖いところですなぁ。

古川のござる言葉は父親譲りという年季の入ったものであったらしい。
にわかなキャラ付けではなく、骨身に染みこんだ口癖。治ることもないのでしょう。
座右の銘も飛び出したことだし、ここはかなり危険な気がします。どうにか追加点は防ぎたいところなのだが・・・
成田のジャンプに期待する流れでしょうか。はてさて・・・



ANGEL VOICE 37巻


第322話 守護神  (2014年 6号)


古川が思い描いた通りのコース。それはユゥエルの頭に合わせるコースであった。
ユゥエルのマークについているのは成田。
攻めの展開が遅くなるのは承知の上であるが、ユゥエルの高さに対抗できるのは成田しかいない。
その期待を背負っているからには負けられない。

何がなんでも・・・おめえの上にいく

そう心に決めて飛ぶのだが、強く思えばどうにかなるというものでもない。
ユゥエルに競り負け、ゴール左角へのヘディングシュートを許してしまう。
これは厳しいコース。脇坂さんも思わずやられたと思う程である。だが・・・所沢がやってくれた!!
指先だけで触れ、どうにかコースを逸らし、枠を外させる。危ない危ない・・・

しかし続いてコーナーキック。まだまだ市蘭のピンチは続く。
特に今の勝負を見れば分かる通り、成田はユゥエルに競り負けている状態である。
今度も合わせられたら危ないかもしれない。
成田は成田でどうにかしてユゥエルの上に行かないとと考えている。
最適なポジションに先に入られて先に跳ばれている今の状況では厳しそうですなぁ・・・

乾「考え過ぎるなよ成田!!古川のボールの癖を知らねえおめえはポジション取りでは負ける」
成田「じゃあどうすんだよ!?」
乾「根性で上に行け

なんと、ここで根性論が飛びだすとは。しかもあの乾から。
うーむ、ヘタに考えるよりはそっちの方がいい結果が出ることもあるってことなんですかね?
ポジション取りは技術も絡むし簡単に上回ることは出来ない。
ならばそれを捨てて、とにかく高く飛ぶことに集中した方がいいってことなんでしょうか。

ともかく今回のコーナーキック。
古川はやはりユゥエルに合わせてくる。
根性で跳ぶ成田であったが、やはりうまくポジションを取ったユゥエルの方が優勢な様子。むむむ・・・

危うい処であったが、このコーナーも所沢の飛び出しで救われる。
見事なパンチングでクリアに成功しました。さすが所沢。
伊達にあの皆川さんが高校No.1と認めたわけではないってことですな。まさに守護神

・・・だからこそ、追加点を取られれば市蘭が受けるダメージも大きいはずなんだ。

まさしくその通りでありますな。次に追加点を取られ差を広げられると・・・流石に致命的になりそうである。
そんな状況で、ユゥエルに競り負けている成田。
万代さんはこう提案する。次からはオレもユゥエルに付いて身体を寄せる。2人がかりならなんとかなるんじゃねえか?と。
それに対し成田、余計なことすんな!!オレが自力で上に行くと反論するが・・・

勝たなきゃいけねえんだ。意地は捨ててくれ

確かに。この勝負は何があろうと負けられない。勝たなければいけない。
ハーフタイムでその気持ちを確かなものと固めたのである。個人の意地で負けるようなことがあってはならない。
その気持ちもあるためか、意地は捨ててくれとお願いをする万代さん。
それに応えるように、頼むと頷く成田。なんとも良い空気でありますなぁ。
そして成田のこれまでの動きも全くムダというわけではなかったのが明らかとなる。

所沢だけじゃねえ。お前もすげえよ・・・オレを全力で跳ばせてるんだからな
まだ早い。この試合・・・まだ疲れちゃいけない。

全力の跳躍でユゥエルの足に疲労が見えている。
なるほど、これならばひょっとすると成田にも勝機があるかもしれませんな。
相手が疲れた結果というのは不本意かもしれないが疲れさせたのも成田なのだと考えれば問題ないように思える。
それにしても、ユゥエルもまたメンタルが強い選手であるなぁ。さすが王者といったところか。

さて、残りは15分。この15分でまずは同点に追いつかねばならない。
ピンチの後のチャンスをものにすることができるのか。
何とか先に得点して同点にしてしまいたいところですなぁ。



第323話 外へ!!  (2014年 7号)


船学が守りを固めているためポゼッション・・・ボール支配は圧倒的に市蘭。
しかし船学の守りは固く、なかなかゴール前に迫ることが出来ずにいる。
残り15分。そろそろ同点に追いついておきたい所なのだが・・・焦る展開でありますな。

日本一の船学が本気で守りについている。
1点目のディフェンスのゆらぎも修正されているだろうし同じ手は使えない。
何とかどこかでゴール前に入れる流れを作らないと、このままではズルズル時間だけ過ぎていくことになる。

サイドを変えよう

得意のサイドチェンジを行う市蘭。
百瀬から乾、乾から尾上へと渡り左サイドを駆け上がる。
尾上には二宮さんほどの精度のクロスはない。
が、それをフォローするために乾が走っている。乾にパスを出す尾上。しかしこれは合わずにラインを割る。惜しい。

だが今の攻撃で分かった話もある。
市蘭の選手が全力で走っても追いつけなかったボール。
しかし万一追いついていたらと思うと船学の選手も全力で走らないといけない。
となれば、当然疲労する。船学のスタミナも限界に近付いているわけだ。

二宮と尾上はもっと外に広がれ!!フィールドを広く使ってサイドを入れ替えるんだ!!

黒木監督の指示が飛ぶ。
それを受けて乾も百瀬にこう告げる。

右から左――ニノさんから尾上に移す時、オレを飛ばして直接尾上に出してくれ。
左からの場合、オレもモモさんを飛ばしてニノさんに出す。
あいつらを・・・全力で走らせよう

スタミナ勝負ならば市蘭は誰にも負けない。それだけの練習をしてきたのである。
それを活かす戦い方をしようとしているわけですが、果たしてどうなりますか・・・
土岐監督によると走らせようとしているのは明白だが付いて行かないわけにはいかない。ここは耐えて乗り切ろうとのこと。
ふーむ、なかなか有効な作戦のようですな。よっしゃよっしゃ。船学は限界まで選手交代をしないつもりなんですかね?

残り10分を切る。焦りが強くなる市蘭。
時間がない。このままサイドからの崩しばかり狙ってていいのか?もっと違うやり方で・・・
そのような迷いを見せている中、飛ぶのは百瀬の激。

迷うなよ!!今一番してはいけないのは迷うことだ!!
このままの形で攻め続けていれば必ず突破口は開ける!今までやってきたことと同じくらい、今やっていることを信じよう!!

うーむ、凄い。
選手の迷いを見抜き、この上ないタイミングで道を示す。
これぞまさにキャプテン。古川もすごい男であると認めてしまう百瀬のキャプテンシー。恐るべし。

その百瀬の言葉で勢いを取り戻す市蘭。
さて、そのタイミングでグラウンドには何か異変が生じた様子。
土岐と黒木――両監督が同時に気付いた異変とは一体何なのか。
上手く行った場合だと、船学の選手の誰かが倒れたりしているのかもしれないが・・・さてさて?
同点に追いつけるかはわからないが、ここでチャンスだけでも掴んでおきたい所ですなぁ。



第324話 突破!!  (2014年 8号)


プレー中に黒木監督が何かに気付いた。
それは同時に関根さんも気付いた内容である。

黒木っ!!割れたぞ

割れた?何が割れたというのか?
同様に船学の方も土岐監督が同じことに気づいた様子。マズイな・・・これはと警戒の表情となっている。
なにやら市蘭有利な出来事が起きたようですね。関根さんが分かりやすく久住先生に解説してくれます。
久住先生のようなキャラがいてくれると自然に解説の流れにもっていけるのでよいですなぁ。

今しがた左サイドのテルヒサからキヨハルを経由して右サイドのニノにサイドチェンジしたじゃろう。
船学もボールの動きに合わせてディフェンスラインを左から右にシフトした。
じゃがその時――4人のDFの内、右の2人はニノの突破を封じるために全力で走ったのに対し、
左の2人の動きが緩慢になっとったんじゃ・・・恐らく疲れのせいでの

なるほど。割れたとはディフェンスラインのことでありましたか。
サイドチェンジ時にディフェンスラインがシフトし始めたちょっとの間、真ん中が広く空くことがあるという。
言われてみればその通り。この空いたスペースに乾か百瀬がボールを止めて切り込めば真ん中を突破できる!!

だが・・・それを――どうやってあいつらに伝える?
大声で指示を出せば船学側にも聞こえてしまう。彼らのことだ。即座に修正してくるだろう。

これは確かに悩ましい。
疲れから来る本人たちも気付かない僅かなスキ。
修正される前にどうにかして突きたいところであるのだが・・・

逆に船学側は市蘭に気づかれる前に修正を行いたい。
ベンチが自陣エンドから遠くにある船学側としては市蘭以上に深刻な事態であるといえる。
なんせ大声出したら最悪、出した指示を市蘭側にだけ聞かれてしまう可能性があるのだから。

というわけで、両監督はピッチの選手を使い、伝令を立てることにした。
ユゥエルにラインをシフトする際、中央が空いていると伝えてくれと指示する土岐監督。
黒木監督は広能に同じようにシフトする際に中央が空くということを伝えている。しかし――うまく伝わっていない!!
もう1度お願いしますではない。一刻を争う状態なのだ!!

とにかくっ・・・今言った通りのことを乾か百瀬に伝えろ!!あの2人にはそれでわかる!!

うーむ、何だかんだで経験値の差というのが出てしまいましたね。
留学生のはずなのにノータイムで伝令を受け取れるユゥエルが凄いと感心しておく流れかもしれませんが。

2人が伝令に走る間に再びサイドを変えるため山守に声をかける百瀬。
この時も同様にディフェンスラインが割れる。
そのタイミングで声を掛けるユゥエル。修正されてしまう・・・!!
というところで、ボールを止めてサイドチェンジを行わずに中央に切り込みをかける乾。気付いていたか!!

乾・・・キヨハル・・・!!

ぐぬぬといった感じの土岐監督。してやったりといった感じの黒木監督。両監督の表情の差がたまらない。
しかし中央のスキをついたとはいえ、船学の対応は早い。即座に乾へとDFが向かう。
右へのシュートコースを切り、左・・・成田へのパスを縦に出せばキーパー牧瀬が先に抑えるポジショニング。
この2人では攻めきれない形である。そしてここで攻めきれなかった場合、中央の穴はもう開くことはない。むむむ。

最初に気付いたのはオレじゃねえよ。
あの人がしきりに目配せするからよお

そういって乾がパスを出したのは――百瀬!!
そうか、最初にディフェンスラインが割れていたことに気づいたのは百瀬だったのか!!
山守にサイドチェンジの指示を出す時に妙な表情になっていると思ったら、あれは目配せしていたからだったのか!!

ゴール前。フリーの状態でパスを受ける百瀬。
マイちゃんが攻めの組み立てて一番好きだったサイドチェンジ。それで掴んだチャンス。

決めろ百瀬ー!!

脇坂さんの、皆の想いを受けて放つシュートは・・・見事に船学のゴールネットを揺らすことに成功した!!

いやあ、凄い。この流れ。
サイドチェンジからの得点はあるかと思いましたが、船学の疲れと合わせた崩しによる納得のゴール。
一度はこの攻めでいいのかと迷った市蘭であるが、百瀬の激により信じて攻め続けた。
それが見事に実った瞬間であります。感動的ですなぁ・・・!!

ついに同点に追いついた市蘭。
残り時間はまだある。逆転の可能性は残っている。
しかし船学もこうなれば守り一辺倒の形を変えてくるはずである。
果たして点を奪われることなく済ますことが出来るのか・・・まだまだこれから怖い展開が続きそうですなぁ。



第325話 勢い!!  (2014年 9号)


ついに同点!!追いついた!!
黒木達や天城達。見守る連中の握る拳にも力が籠る。そして当然市蘭の選手たちの喜びもかなりのものだ。うっしゃー!!
逆に追いつかれた船学の選手たちの動揺は大きい。

確か・・・市蘭は去年と全く同じメンバーなんだよな。
ありえねえだろ・・・去年は9対1で勝ったんだぞ。

確かに普通に考えたらありえない話である。
船学もキーパーこそ見劣りはするものの、それ以外で劣っている感じはしない。
それでもこの結果。この1年で市蘭の選手たちがどれほど急成長したのかわかろうというものだ。
乾が前に言っていた通りですな。これだけの才能が集まるのはこの年ぐらいしかない。あの言葉が本当に理解できる。

船学が勝つ所を見に来たという感じの観客は多い。
未だに市蘭は甘く見ていられるらしく、こんなところで番狂わせはいらない。市蘭なんかといい試合してんじゃねえと酷いお言葉。
うーむ、八津野に勝ったりしてはいるが、市蘭への評価は簡単に高くなったりはしないものか。

市蘭は甘く見られているが、その分船学には厳しい要求が突き付けられる。
延長とか認めず、残り7分できっちりケリをつけろとのこと。ふむ。
それを受けて古川は味方に檄を飛ばす。

それがしたちは船和学院!!――でござる。

その言葉に頷きを返す選手たち。これは、一気に攻勢に来るか・・・?
と思いきや、攻めているのは3人だけ。残りは引いたままの状態である。
天城が言うには今は市蘭に勢いがあるから一番ディフェンシブなシステムを変えることはできないとのこと。慎重ですなぁ。
観客の厳しい言葉に惑わされることなく慎重な様子を見せる船学。
それは王者の誇りによるもの。絶対に負ける訳にはいかない。安いプライドではなく、積み上げてきた誇りによるものである。

3年連続高校三冠!!
今までだって楽な試合ばかりしてきたわけじゃねえ。
どんな戦い方になろうと・・・最後に勝つのはオレたちなんだ
どれだけのものを犠牲にしてサッカーに打ち込んできたと思う。

これは手ごわいですな。八津野や習実とは違い、相手を見くびって驕るようなことはない。
それをするよりも、とにかく勝つ!!その意気込みでプレーしている。さすがと言わざるを得ません。

一方の市蘭。こちらはDFの4人を残してみんな攻撃のために上がる。
守りを固めている船学とは逆に積極的に逆転を狙う構えの様子。
これは怖いですなぁ。天城の言うとおり、古川とユゥエルにショートカウンターくらったら失点の可能性がある。
そうなればもう取り返す時間はほぼない。この判断は吉と出るか凶と出るか・・・

だが、市蘭の士気は高い。あと1点!!逆転するぞ!!と燃えている。
そして乾はこんなことを考えていたりする。

スマン高畑・・・!!お前がいなくなったのに・・・オレは心のどこかでこの試合を楽しんでいる。
スマン!!・・・でも・・・それくらい市蘭の連中はみんなすげえんだ

そんなことを考えながらゴール前へと突破を仕掛ける乾。
そしてこのタイミングで乾へのマイちゃんの手紙の内容が明らかになりそうな雰囲気。
これはもしや、ここで逆転の可能性もあったりするのか・・・!?

試合も大詰め。そろそろマイちゃんの手紙の内容も次々明らかになっていきそうですな。
その後押しを受けて逆転してくれるといいのですが・・・どうなりますか。楽しみですが、ドキドキしますなぁ。



第326話 心の底から  (2014年 10号)


逆転へ向けて仕掛ける乾。その脳裏に浮かぶのはマイちゃんの手紙の内容であった。

乾くんへ・・・私がサッカー部に入ったばかりの頃、一番心配だったのが実は乾くんだったんだよ。
まだサッカーのことがよく解っていない私の目から見ても乾君はずば抜けて上手いから、
市蘭でサッカーをやっても物足りないんじゃないか?――って不安だったの。
物足りなさ・・・あったでしょ?
でも乾くんは本当にサッカーが好きだから、自分が楽しむだけじゃなく周りのみんなも楽しんでないと嫌なんだよね。
広能くんに基礎的なことから一つ一つ教えてあげている乾くんを見てそう思ったよ。
今では広能くんはもちろん他のみんなもすごい勢いで上手くなってきてるから、
乾くんにとっても昨日より今日。今日より明日とどんどん楽しみが増えてきてるんじゃないかな?
まだまだ発展途上のサッカー部。いつかきっと乾くんが心の底からプレーを楽しめるサッカー部になるよ

確かに乾は物足りないと零す時もあった。
そしてそれはこのチームが自分の期待に応えるだけの素質を持った奴らの集まりであったからというのも判明している。
今、市蘭は最強の王者・船学と互角に渡り合えるほどの強さとなっている。
そんな中、乾のこの逆転へ向けた個人技!!
ゴールを阻むのはキーパーの他に正面のDF2人。さあ、どうする!?

フェイントで左にいく素振りを見せれば右へのシュートコースが開くかもしれねぇ。
逆に右にいく素振りを見せれば――中に切れ込むことになるからこっちの方がDFはつられやすいだろう・・・
2人まとめて左をぬけるかもしれねぇ・・・抜いた後角度がねえけどな。
DF・・・あの2人も迷ってる。どっちを選ぶ?乾!!

天城も選択を迷うこの場面。しかし乾が選んだのは左右のどちらでもなく・・・2人のDFの真ん中!!
ボールを通し、その後強引に身体を入れて突破を図る!!
そしてDFを抜き去り、ゴールキーパーとの1対1。
飛びだしてきて抑えようとする船学のキーパー牧瀬。
しかし乾はボールを浮かせてその牧瀬の身体を超すシュートを見せる。うめえ・・・!!

見事な乾の突破からのシュート。マイちゃんからの手紙には最後にこのような言葉が綴られていた。

許可がもらえたら近いうちに1日だけでも学校に行こうと思っています。
その時はまだ広能くんと3人で練習しようね。絶対だよ。
それじゃあ決勝戦頑張って。かっこいいシュートを決めてください

その期待に応え――かっこいいシュートを決める乾。
涙を流しながらガッツポーズを決める乾の心中はマイちゃんが示した手紙の内容の通り。
いつかきっと乾くんが心の底からプレーを楽しめるサッカー部になるよという内容の答え。

スマン高畑・・・スマン!!
オレは、この試合を楽しんでいる

マイちゃんがいなくなった悲しさ。しかしそれと共にこの試合を確実に楽しんでいる心がある乾。
その相反する心故か涙がどうにも溢れて仕方がない様子。
この涙の逆転劇に感染していたマイちゃんのお母さんも涙する。ルカさんも涙する。
そして・・・市蘭イレブンも皆涙する。

追い詰めた!!船学を・・・追い詰めたぞ!!
待ってろよマイちゃん。高畑さん。もうすぐそこにいくからな

ついに逆転に成功した市蘭。
思わず涙してしまうがまだ試合時間は残っている。
黒木監督は5秒で気持ちを切り替えろ!!残り5分!!このリードを守り抜く!!と声をかける。
その言葉に応え、涙を止めようとする市蘭イレブン。

さあ、残るは5分。
当然船学は同点に追いつかねばならぬため全員で攻撃へと転じてくる。
果たして追いつかれることなく逃げ切ることはできるのだろうか!?
少なくともこの逆転により観客たちは市蘭の強さを認めざるを得ないようになっている。
いい雰囲気を得ることが出来たわけだし、このまま勝利という形になってほしいが・・・どうなりますか。注目です。



第327話 何が何でも  (2014年 11号)


こんなことは誰も想像していなかった。
船和学院が2点リードしながら市立嵐山に追い付かれ追い越される。
後半残り5分。3年連続高校三冠の絶対王者が窮地に立たされていた

確かに試合が始まる前は――いや、この状況になる前までは誰も想像しなかったことでありましょう。
期待する者はいたとしても、本当にそうなってくれるとはという想いに捕らわれていそうである。

当然船学はディフェンシブな体制ではいられない。
同点に追いつくために全員攻撃を仕掛けようとする。
船学の生徒たちもここぞと必死に応援を開始。声援が力に変わると信じてあらん限りの声を振り絞る。

果たしてあの船学の怒涛の攻めを耐えきることができるのだろうか。
その質問に対して、黒木監督は大丈夫です!!と自信を持って答える。

ありがたいことに前の試合――準決勝の習実戦でいい経験をさせてもらえた。
お前らは最後の最後ギリギリのところで習実の猛攻から1点のリードを守り抜いたんだ。
船学と習実では攻めの圧力が違うだろう・・・だが、今のお前たちならたとえ船学の攻めであっても受け切れるはずだ!!

選手を信頼する監督。いいですねぇ。
それにこの試合はキーパーが所沢に戻っている。その部分の安心感も違う。
そしてこの試合にかける意気込みは今までのどの試合よりも高い。勝つぜ!!何が何でも勝つ!!

その市蘭の必死な守りを打ち破るべく、ゴールへと迫る船学。
柏原が中へと入れたクロス。所沢の正面へと飛んで行っている。
そこに立ち塞がる古川。ボレーで角度を変えるが・・・所沢が手で弾いてサイドネット。危ないところでありました。
これは所沢が防げなかったら芸術的なゴールとして讃えざるを得ないところでありましたよ。

船和学院のコーナーキック。
しかしセットプレーとなると船学は有利。なんせユゥエルの高さは成田であっても止めることができずにいるのだ。
それは敵味方、観客も含めて分かっている事実。古川もユゥエルの頭に合わせてくる。
だが、このセットプレー。制したのは成田!!ユゥエルの上を行った!?いや――

違う・・・オレが飛ぶ直前あいつが身体を寄せてきたんだ

前に言っていた通り、万代さんがやってくれたみたいですね。
敵味方共にユゥエルにボールが来るとわかっている。だからこそ出来たダブルチームというわけでありますか。見事に決まったぜ!!

さて、残り時間は3分。果たしてこの時間を守りきることができるのか。
どうやら残り3分を切ったところで船学の攻めに大きな変化が現れるようだが・・・?
まだまだハラハラする流れは続きそうで怖いですなぁ。



第328話 王者の焦り  (2014年 12号)


残り3分。まさかのリードを許した船学は必死の攻めを見せている。
応援している船学の生徒たちもこれまでにない必死さが見て取れますな。

遠目からユゥエルの頭に合わせる船学。
セットプレーの時とは違い成田はいない。高さでは敵わず、必死に万代さんたちDFが体を寄せて妨害するしかない。
が、さすがにユゥエルも走りながら妨害されながらでは上手く合わせるのも大変な様子。
このヘディングシュートはクロスバーの上へと流れていく。ふう、怖い怖い。

残り2分。再び遠目からユゥエルの頭目がけて出す船学。こ、これは・・・!!

遠目から高さのあるユゥエルに入れ、ユゥエルはヘディングシュートを打つか落として味方に渡す。
これは・・・パスをつなぐ手間を省いた・・・放り込みじゃねえか!!

まさかあの船学がとにかくゴールを目指す放り込みを行ってくるとは!!
今までならば細かいパスをつないで相手を崩して点を取ってきていた。
しかしこの残り時間ではそれができないと判断し、簡単で確実に機会が増える方に出たようだ。
何が何でも勝とうとする意地が見て取れる。だが、それと同時に・・・焦りが見える。

王者船学が・・・焦ってやがる

これはなかなか凄い光景である。あの船学がここまで追い込まれた姿を見せるとは・・・

再度の放り込み。ユゥエルから伊能へとボールが渡る。
オレが決めてやると息の荒い伊能であるが、ボールを受け取った瞬間市蘭の選手3人に囲まれている。
うーむ、放り込みは確かに手間が省けるが、守りは崩れていないのでこういう状態になりやすいんですよね。
両サイドへのシュートコースは完全に消されているし、ゴール中央付近へのシュートは守護神である所沢がきっちり抑える。
伊能が凄くてもこれでは決めるのは難しいでしょうわな。

残り1分。だが、ここでロスタイムの提示。時間は・・・3分!!合わせて残り4分!!

たった3分!?

追い付くために焦りを見せている船学にしてみればまさにたった3分なのかというところ。
市蘭にしてみれば長い3分となりそうですが、それでも習実戦で感じたほどではない!!

船和学院はユゥエルにロングボールを入れ続けるが同点に追いつくことはおろか、市蘭ゴールを脅かすことすらできなかった。
アディショナルタイム(ロスタイム)に入って1分が経過したあたりから、観客が立ち上がり始める。
この時間帯にビハインド状態の船和学院をここ数年見た記憶がない。

残りは2分。これはもはや決まったのではあるまいか。
そのように感じ、決着の時を迎えるために立ち上がる観客。3崎たちも立ち上がっている。

とうとうやったな。あいつら

勝利を確信した様子の3崎。だが、それに対して天城は1人まだ何があるかわからないと座り続けている。
が・・・次の瞬間にはその冷静な仮面も剥がれ、涙が溢れだす。

オレたちは・・・勝てなかった。
船学を倒すために八津野に入って3年間・・・一度も勝てなかったんだよ。
オレたち以外のやつが・・・船学に勝つのは悔しいのによ。
あいつらが勝つのは・・・嬉しいんだ。もう・・・わけがわかんねえよ

天城は本当にいい奴であるなぁ。自身が挑み続けた3年間の気持ちも加わった熱い涙である。
複雑な心境でありましょうが、嬉しいという気持ちもちゃんと認識できているようで良かった・・・

さて、天城もついに立ち上がり、静かにその瞬間を待とうとしている。
そう――絶対王者船和学院敗北の瞬間を

ついにその時がやって来ようとしている。市蘭が船学を破る。その時がついに・・・来る、のか!?
天城ではないが、まだ何かあるのではないかと思えてしまってならない。
いやでも、ここまで勝利を確信して盛り上げておいて追いつかれるという展開はあるのかどうか・・・いや、あるかもしれないが。
単純な放り込みを続けて市蘭を慣れさせ、最期は古川が個人技を見せて凄さを見せる可能性もある。
ギリギリの段階まで我慢してみせる強さを見せてきた!!みたいな。
そういう恐れもあるので最後まで油断はできないが・・・決まって欲しいところですなぁ。



第329話 ラストワンプレー  (2014年 13号)


船学の放り込みを跳ね返す市蘭。
きっちりと守り、吠える。見開きで吠えるものだから試合終了したのかと思ったらまだでした。
ロスタイムに入って2分を経過。残り1分という状態である。

無駄なファウルは避けなければならないが、相手を見過ぎるなよ!!

と百瀬からの激。
確かにこの時間帯、焦った守りをするとファウルになりやすい。
最後の最後でセットプレーで失点というのもよくある話ですし、怖いところだ。
しかし、競技場の雰囲気はどんどんと試合終了の方へ近づいて行っている。船学の生徒たちが悲嘆に暮れだしました。

ホ・・・ホントに・・・負けるのか?
市蘭なんか・・・100回戦ったら100回勝てる相手じゃなかったのかよ・・・?

目の肥えた船学の生徒たちであってもどうやらこんな認識であったらしい。
八津野や古豪である習実を破ってきた実績を全てマグレだと思っていたのだろうか?
少なくとも、うちが負けるはずがないという絶対の自信があったのでしょうなぁ。

ロスタイムも刻々と経過していっている。最後のワンプレーになろうかというところで吠える古川。いくぞ!!

最後に見せてやろうじゃないか。船学らしい・・・オレたちらしい攻撃を!!

船和学院はユゥエルへの単純な放り込みをやめ、丁寧に攻めの形を整える。
両チームともわかっていた。これがこの試合最後の攻撃になるであろうことを

パスを繋いで駆け上がってくる船学。
ここでファウルは避けたい。特に万代さんはこの試合で既にカードを1枚貰っている。
最悪延長突入を考えていたら、ギリギリのところで当たりの強さを迷うかもしれない。
そのように考えた山守、自分があたって行かなければと考える。
が、その結果山守自身がファウルをしてしまうこととなりました。おやおや・・・

土壇場でフリーキックの機会を得る船学。うーむ、まさに最後のプレーとなりそうなシチュエーションですね。
決められれば延長。止めれば試合終了。まさにお互い正念場という状況だ!!

さて、フリーキックとなるとひとつ問題がある。
それはこの試合、古川と伊能の2人が交互に蹴っているということであり、次の順番が伊能であるということ――

・・・オレが・・・決める・・・オレが・・・オレが。

この場面で機会が巡ってきたわけでありますが、伊能にはいつもの強気な様子がない。
震えている足は疲労によるものではない。決めなければそこで終わるという――恐怖によるものだった。

自信家であった伊能もさすがに船学そのものの敗退がかかる大事なキックを背負う勇気はなかったか。
こればかりはその名を背負ってきたという年月と自負がないといけないことでしょうしねぇ。
さて、そうなるとこれはどうなるのか。
伊能がそのまま蹴るのか、古川に励まされて蹴るのか、はたまた古川が変わるのか。
どちらが蹴るにせよ、結果はどうなってしまうのか。延長か?試合終了か?見逃せない展開であります。



第330話 絶対に!!  (2014年 14号)


山守「スイマセン!!無駄なファウルをしました!!」
百瀬「ドンマイ!!」

なんだか知らないがやけに気合の入った謝罪と慰めである。
まあすぐにセットプレーに入るしそこに時間をかけている場合じゃないってことなんでしょうけども。

特にこのセットプレーはこの試合のラストワンプレーとなる可能性が高い。
決まれば延長、外せば試合終了。固唾を飲んで見守る場面である。

ボールの位置はゴールに対してやや左寄り26メートル前後。
直接狙うこともユゥエルの頭に合わせることも考えられる位置である。
普段の伊能であれば間違いなく直接ゴールを狙ってきたでありましょう。だが・・・

どうする?・・・この位置から左足で蹴る場合、直接ゴール右側に決めるのは難しい。
ユゥエルに合わせればボールが巻いて入る分強いヘッドが打てるはずだが、
さっきのコーナーキックで・・・成田はユゥエルの上まで跳んでいる・・・どうする?

悩む伊能。
実際は高く跳んだわけではないが、他の選手が妨害すればさすがのユゥエルでも成田の上を行くのは難しいということである。
今回は万代さんは壁に参加しているが、脇坂さんが寄せるつもりなので状況は同じ。成田も余裕を見せている。
難しい状況であるが、果たして伊能はどちらを選ぶのか・・・

この1本を防げば勝てる。集中して守り切ることを考える市蘭。さあ、審判も笛を吹いた。いよいよだ・・・!!
監督や観客が緊張して見守る中、最後のフリーキック。しかし伊能は・・・

こんなはずじゃなかった・・・怖い!!

足が震え、棒立ちになってしまっている伊能。おやおや。
ロスタイムは過ぎているし、審判は既に笛を吹いている。このまま立ったままでいる場合、試合終了となることもありえる。
さすがにその終わり方では後悔しても仕切れない。
急いで伊能のもとへと駆けつける古川。どうしたでござるか!?
近づいてくる古川に伊能は涙を流して述べる。蹴れません・・・と。

怖いんです・・・蹴ってください。お願いします・・・蹴ってください

ううむ、まさか泣き出してしまうとは。
まあこの場面。緊張感は半端じゃないのは分かりますけどねぇ。
野球で例えるなら名門校の敗退がかかった最後の打者になるかならないかって場面ですし。
背負う重みを今まで感じずに来た伊能にこの役目は荷が重かったということでしょう。
この状況で蹴ることができる古川。それを見れば少しは伊能も古川を尊敬するのではないだろうか。
そのように思うが土岐監督はそれ以上のことを考えている様子。

尊敬が必要なんじゃない。すぐそばに古川がいた。そして古川のプレーを目の前で見た――それが大切なんだ。
伊能――今お前はとてつもなく大きな経験をしているんだぞ

将来のことを考えると伊能の成長は大きい。
が、それでもこの試合を落としてまで考えることであろうか。
そのようにも思えるが・・・だが・・・古川が急いで蹴ったこのフリーキックは・・・!!

お前もこれから先練習を重ね経験を積むことによってどんな状況でも臆することなく力を発揮する
――そんなプレーヤーになれるはずだ。お前にはその素質がある。
将来――それでも足がすくみそうになった時。
充分な練習を重ね、充分な練習を積み――それでもまだ足がすくみそうになった時。古川を思い出せ

古川の放ったフリーキックはユゥエルの頭に合わせるのではなく、直接ゴールを狙うものだった。
そのボールは所沢の指に触れるものの・・・軌道を変えるには至らず、そのまま市蘭のゴールに吸い込まれる・・・!!

うううううむ!!決められてしまったか!!
土岐監督渾身のガッツポーズ。してやられてしまいましたなぁ・・・
そして決めた古川は伊能の方を向いているわけですが、その表情は如何なるものであるのか。
険しい表情なのか、緊張の解けた柔らかい表情なのか・・・読者に見えないのがなんだか怖い。

王者を救う一撃。これで延長は確実となったわけであるが、市蘭の体力は持つのだろうか。
確かに体力面は飛びぬけているが、後半は最初から走り続けていたわけですからねぇ。
1人分なら交代枠で丹羽が出ることもできるが・・・はてさてどうなりますか。



ANGEL VOICE 38巻


第331話 起死回生  (2014年 15号)


試合終了直前。まさしく最後のワンプレーであったフリーキック。
そのラストチャンスを見事にものにしてみせた古川。
これには競技場の観客も割れんばかりの歓声を上げる。そりゃあそうでしょうな。

しかしまだ勝負がついたわけではない。同点となり延長。まだまだ試合は続くのである。
だからこそ、古川の表情はまだまだ厳しい。そして伊能に向けてこう述べる。

これからでござるぞ。この試合も。お前も

この試合だけではなく伊能の成長に関しても言及してくれる。
プレッシャーに負けて涙を流した伊能に対する励ましの言葉でありましょうか。いい先輩ですなぁ・・・

何なんだ・・・オレは。何を見てあの人を越えたと思ってたんだよ・・・バカじゃねえの?

深く反省している様子の伊能。いい状態でありますな。
ううむ、しかしやはり古川は凄かった。
天城たちも言っているがこの状況で直接狙うというのがまず凄い。
他の誰かに合わせていれば失敗したときに責任を曖昧にできるのに、この土壇場で自分で責任を負う覚悟で狙うとは・・・
こりゃあ確かに伊能が考えを改めるようになるのも当然ってものでありますよ。

ここで後半終了のホイッスル。
市蘭はほぼ勝ちが確実と思われたところで逃してしまった形になる。ショックは大きい。
逆に船学の方は勢いづいている。応援団も声を出す元気が戻ってきたようだ。むう。
このまま流れを持っていかれてしまうと厄介でありますが・・・どうなるか。

延長は10分、10分の20分。あと20分を走らなければいけない。
監督や控え選手らが総出で選手のマッサージを行う。少しでもこのインターバルの間に回復させないといけないのだ。
だが、二宮さんの足はかなり危険な状態。痙攣が全く治まらないのだ!!
しかしこんな危険な状態だというのに誰にも言うなよと告げる二宮さん。本当に走れなくなるまで下がるつもりはないということか。

オレたちは知っている!!もし負けてもっ・・・高畑が許してくれることを。そうだろ?百瀬!!

吠える二宮さん。確かにそれはその通りでありましょう。だが・・・

だが・・・今日は、今日だけは・・・それに甘えるわけにはいかねえんだ。
勝つんだよ・・・何があっても。何が何でも

円陣を組み、再び何が何でも勝つんだという気勢を取り戻す市蘭。
モチベーションという意味ではさすがに切れることはなさそうですな。後は流れを再び引き寄せられるかどうかだ。
だが、船学の方にも意識の変化はあったりする。
つい先ほどまでゴザルと呼んでいた伊能が古川さんと呼び始めた。意識の変化が如実に出ている。
そんな謙虚さが出てきた伊能に対し、握手を求める古川。

負ける要素がなくなったでござる

うーむ、不協和音になりそうだった伊能の存在という不安もなくなりましたか。
ここにきて更に厄介な感じとなった船学。さてさて延長ではどのような展開となりますか・・・
さすがの市蘭も後半開始から全力で走りまくったツケは大きい。
選手交代も視野に入れながら戦わなければいけなさそうですなぁ。



第332話 一気に!!  (2014年 16号)


市蘭と船学。80分の戦いを終えて3対3の引き分け。決着がつかずに延長戦に突入することとなる。
ここからさらに前・後半合わせて20分戦わなければいけない。
スタミナの心配がされるところであるが・・・ここで船学は選手交代を行う。
うーむ、この辺りはさすがに選手層の厚い船学ですな。羨ましいことである。

しかし船学はこの延長突入でいきなり交代枠最大の3人を入れ替える
普通は誰かがケガした時に備えて1人は残すものだが・・・勝負をかけてきたということか?
交代したのは運動量の多い両サイドバックとボランチ。守備にフレッシュなのを入れてきたわけか。ふむ・・・

後半、古川のラストプレーのせいで流れは完全に船学に傾いている。
その勢いに乗って延長の早い段階で得点してしまおうと考えているって感じですかな?うーむ、怖い話だ。
逆に延長にまで持ち込まれた市蘭。気落ちしている場合ではないぞ。

オレたちは挑戦者だ!!積極的にいこう!!

さすが百瀬。そのことをよく理解しており、声を出す。
絶対に受けに回ることなく、積極的に行く。そして勝つ!!何があっても勝つ!!
その意識で臨んだ延長戦であるが・・・行われたのは船学の一方的な波状攻撃であった

次々に攻め込まれ、シュートまで持っていかれる市蘭。
攻められっぱなしで反撃の糸口さえつかめないこの状況は・・・相当マズイ。

負けに等しい試合を終了間際に振り出しに戻した。その勢いを延長戦に持ち込んできた船学。
人数をかけて一気に攻め上がってくる。市蘭はその攻めに振り回されている状態。うーむ、これは・・・
関根さんに言わせれば、船学の連中は分かっているのだとのこと。うちの反応が悪くなることが。

頭の中では切り替えたつもりでも、なぜあの時追いつかれてしまったのかという思いがどこかに残っとるからのぉ。
それが原因で集中しきれず、反応が遅れて受けに回ってしまうんじゃ。

むう。さすがに意識しただけで切り替えれるものではありませんか。
なんとか堪えて集中しなおすような状況に持っていきたいところである。
が、どうやらその堪えるというのもなかなか難しい状態になってきました。
足が痙攣したままの二宮さんが足をもつれさせる。疲労がさすがに蓄積してきたか・・・!!

さらに二宮さんを抜いた伊能は個人プレーではなくサイドチェンジなど周りを使ったプレーをしだす。
ううむ、ここにきて孤立していた伊能が機能し始めるとは・・・厄介な!!

不安要素のなくなった船学。
一方、市蘭はジャンプした万代さんが足をつらせるなど疲労のピークに近い状況。
スタミナはとびぬけているとはいえ、いつも以上に一生懸命に走ったのだ。限界だって見えてくる。
肉体的な疲労に加え、勝利間際で振り出しに戻されたという精神的な疲労も圧し掛かっている。
これは・・・本当に大ピンチだな・・・
延長は前・後半合わせて20分もある。堪え切れるのか。点を取ることができるのか。凄く不安になってきました・・・



第333話 倒れる前に!!  (2014年 17号)


延長開始早々に足をつらせる万代さん。ここはボールを外に出してもらい、ピッチで治療を行う。
まだ4分しか経過してないのにこれとは・・・本当に疲れがピークに達しているようですなぁ。
船学はこれを見て一気に攻勢に出るつもりの様子。

先行すれば――市蘭は反撃の気力をなくす!!

さすがにそれで諦める市蘭ではないだろうが・・・疲労は更に大きくなるでしょうなぁ。失点は何としても防ぎたいところだ。
しかし、万代さんの治療のために外に出したボールを船学に返す市蘭。こういうフェアプレーは心地よいですな。
応援している天城にしてみれば気が気じゃないようだが。

まあ、天城が焦っているのは分からないでもない。
延長に入って市蘭はまったくボールをコントロールできていない。
ゴールエリア近くで船学にボールを回されてしまっている状態である。下手すれば崩されてしまうぞ・・・

見ていることが出来ず、守備に参加しそうになる成田。
そのために下がろうとしたところで戻れと乾に言われてしまう。気持ちは分からなくはないですが・・・

勝つためには点を取らなきゃならねぇんだ!!
こっちに攻撃が移った時おめえが準備できていなかったら・・・あいつらががっかりする!!

確かに必死に守り、反撃のチャンスを掴めたのにそれが点に結びつかないのではがっかりしますわなぁ。
自分が出来る最大のことをするためには耐えることもまた必要である。
それに、さすがの成田も疲労がないわけではない。
守りに参加していないとはいえ、常にDFの裏を取るために細かいダッシュとターンを繰り返してきている。
スタミナは残っていても、足はどうやら限界が見えてきているようだ。うむむ・・・

いよいよ限界が来て走れなくなる選手がでそうな感じである。
まだ丹羽がいるので1人は倒れても大丈夫ではあるが・・・どうなるのか。

ともかく必死な守りが功を奏したのか、ついに中盤で山守がパスをカット。
百瀬につないで反撃のチャンスが訪れる。今だ!上がれ!走れ走れ走れ走れー!!

準備はできてるぜ

信じて前で待っていた成田にまでボールは繋がるのか。
早いうちにリードを作っておきたいところであるが・・・簡単にはいかないのは間違いないので・・・ううむ。



第334話 あの時!!  (2014年 18号)


延長前半5分経過。
ここで初めて延長に入って市蘭が攻め上がる番となる。
この久々の攻撃のタイミング。逃すわけにはいかない・・・そりゃ天城も立ち上がり、必死な顔で応援しますわ。

百瀬から乾。乾から右サイドを上がる二宮さんへと繋がる。
が、ここからセンタリングにはいけずに寄せられてしまう。
うーむ、どうやら左足の痙攣がまだ収まらないみたいですなぁ・・・この足でボールタッチしたらどこに行くか分からない。
無理して出ていた弊害が表れてしまいましたか・・・!!

伊能にボールを奪われる二宮さん。
せっかくのチャンスが・・・と思いきや、ここで引き下がるような人ではなかった。
流れを引き戻すチャンス。ここで終わらせるわけにはいかない!!
その意識で頑張り、どうにかボールを奪い返して百瀬へと渡す。それを見て走り出す成田。おっ。

百瀬はその全体の動きがちゃんと見れているのか、ダイレクトで乾へと渡す。
これだけ急いでボールを渡すということは攻めの展開を急いでいるということだと判断する乾。となると・・・成田か?

オレには見えていない・・・成田の動きを見て急いだのか?

百瀬の考えを読み、2つの選択肢を考える乾。
強引に前を向き、成田の位置を確認してからパスを出すか。
胸でトラップしボールの落ち際をそのままダイレクトでゴール前に入れるか。
乾は後者を選んだ

まるでシュートのように振り向きざまにゴールへ向けて蹴り出す乾。
周りの味方を見ているわけではないし、普通に見れば確かにシュートに見える。
が、シュートというほどの勢いはない。やはりこれはパスなのだ。

こんなパスが繋がるはずがねえ・・・繋がるはずがねえとわかってても、あいつに期待してしまうんだ
いいじゃねえか・・・一度やめたサッカーをまた始めたのは、あの時あいつに期待したのがきっかけなんだからよ。

懐かしい思い出でありますな。
乾がサッカーを再び始めたのは、自分が思い描いた最高のパスを受けてくれる相手が出来るかもしれないと思ったからだった。
そして今・・・その思い描いた最高のパスが・・・繋がる。
見事に飛び出していた成田がそのパスを受けて・・・見事にゴールへと決めて見せたのだ!!

この展開は本当に胸が熱くなる。ガッツポーズしたくなるゴールシーンである。
成田もついに乾が期待する選手にまで成長したということだろうか・・・!!

数少ないチャンスをものにした市蘭。これは大きい。
さすがに二宮さんはそろそろ限界な感じでありますが、代わるのだろうか?
丹羽さんが入ることでディフェンスの枚数が増えて守りが厚くなるのかもしれない。
さて、今度こそ逃げ切ることが出来るのか・・・注目です。



第335話 まさかの!?  (2014年 19号)


乾の最高のパスが通り、成田がゴールネットを揺らす。
このスーパープレイにしばし呆然となる観客。味方である脇坂さんも驚いているぐらいですしねぇ。
そして一転して歓声が沸き起こる。この瞬間がやはりいいですなぁ。土岐監督の表情はどういうものだこれ。

乾もガッツポーズを決める見事なゴール。いい時間に追加点を取ることができた。
と思いきや・・・まさかのオフサイド
観客としても判断が微妙なラインであったが・・・審判がオフサイドと判断した以上それは覆らない。そんなぁ。
成田はちゃんとラインを確認してから飛び出したらしいのだが・・・
早すぎて審判の方の確認が間に合わなかったのかもしれませんな。早すぎるのも考え物か。

判定に納得できない成田を必死になだめる百瀬。
そこに乾が通りがかり成田に向けてこう述べる。

いいシュートだった

乾のこの飾った感じもない素直な賛辞はなかなか珍しい。
そして吠える乾。ああああああ!!よォし!!よしっ・・・よしっ!!
何だかテンションMAXになってますね。得点にこそならなかったものの、凄い手応えは感じちゃったのだし無理はないか。

今の乾と成田のプレーは船学に相当な衝撃をもたらした様子。
成田の位置も動きも見えていなかったはずなのに凄いパスを出した乾。それを受けた成田。
お互いのベストを信じた結果と言える。素晴らしいプレーでありました。
これは百瀬が成田の動きを見てプレーを急いだからってのもあるんですよね。この働きも見逃せない所だ。

船学としてはまず成田をしっかりと捉えておくことが重要と判断する。

もし成田氏に消えられたら・・・おそらくあのプレーからゴールを守り切れるチームは世界のどのリーグにもないでござる

そ・・・それほどの次元の話であるのか!!
乾は成田に対し、お前の速さについていける奴はほとんどいないと言っていた。
おだても入っていたのかと思ったが、これは本当のことだったのかもしれませんなぁ。

遠い先の話――プロに進んだ乾が現役を引退する時、集まった記者に「生涯で最高のパスは?」という質問を受ける。
その質問に乾は船和学院戦で成田に出したこのパスだと答え――最後にこう付け加えた。
「あれはオフサイドではなかった」――と。

乾も審判の判断に納得はしていないんですね。
してはいないが、それもまたルールと認めるのが乾らしいスポーツマンシップである。爽やかだなぁ。

ともかく、このプレーで俄然勢いづいてきた市蘭。
船学を一瞬で崩すあんなプレーができるのだ。臆病にならずにガンガン行き、チャンスを作りたい。そう思えるようになった様子。
うーむ、オフサイドで気落ちするかと思ったらそうでもなかったようですな。これは良い。
しかし、凄いプレーを見て勢いづくのは何も市蘭の選手だけではない。

敵味方に関わらず良いプレーを見せられれば気持ちが高ぶるやつらがうちにはたくさんいますから

その土岐監督の言葉が示す通り、やる気になっている選手がいる。ユゥエルだ。
古川と位置を入れ替えて中盤に下がっていたユゥエル。実はもともとここが本来のポジションだったそうな。

古川が・・・あまりにも古川がいいパスをくれるから、牙を剥き出しにするのを怠けてたのかもしれないな。

そのように内心で思い、市蘭DFに仕掛けようとするユゥエル。
ここに来てこの男が目覚め始めたか・・・厄介ですなぁ。
勢いはついたものの、やはりオフサイドで追加点が消えたのは厳しい。
逆に船学の攻撃で逆転という展開になったらやっぱり苦しい試合展開になるのは間違いないでしょうし・・・うーむ。
頑張って止めていただきたいものであります。



第336話 ここから!!  (2014年 20号)


ボールを持って突進するユゥエルに体を寄せる山守。だがビクともしない。
目覚めた野獣が襲い掛かる!!というアオリはどうかと思うが、迫力は確かにそれに匹敵するかもしれない。

正面から突っ込んでくるユゥエル。
山守が横から寄せ、正面に万代さんと脇坂さん。
しかし古川が外に開くのにつられて体を開けてしまう万代さん。
わずかな動きであったが、その隙間に体を突っ込みこじ開けるユゥエル。速いし強い。

しかし、こじ開ける際のタイムロスを縫って水内さんがボールを狙って滑り込む。いいぞ!!
と思いきや、つま先のボールコントロールで水内さんをかわすユゥエル。う・・・うめえ!!
そして渾身のシュート。これに所沢・・・一歩も動くことが出来ず!!
ううむ。まさか今の成長した所沢が反応できないほどのシュートを打たれるとは・・・やっぱりこの男はヤバイ。

延長前半7分。ユゥエル・カールソンが1人で持ち込み、自分で決める。
そして盛大に観客にアピールをするユゥエル。

これが・・・これがオレなんだよ

昔のユゥエルはもっとクールな感じでしたが、それも船学で少し牙が抜けていた結果だったわけですか。
本来のユゥエルは熱い点取り屋だったってことですかね。こりゃ厄介な男が目覚めてしまったものだ。
しかし、ここでの失点は痛い。もちろんまだ時間はあるし、追いつくことは可能であるのだが・・・
船学の観客も諦めろと煽ってくる。が――

伊能が変わり、ユゥエルでさえ影響を受ける――そういう相手だということを忘れるなよ

土岐監督の言う通り、市蘭の選手たちは諦めていない。
所沢が反応できないくらいのシュートであれば仕方がないと気持ちを即座に切り替える。
まだだ・・・まだまだ終わってねえぞ!!

何とか取り返したい市蘭であるが、主導権はリードしている船学に。
さらに疲労でさすがに動きが鈍りつつある市蘭。
尾上はファウルでカードをもらう。ここで退場者が出るのは致命的だが・・・それよりもまずはこのフリーキックである。
古川は右で蹴るし、直接ゴールを狙われる可能性は角度的にない。
となれば間違いなくユゥエルに合わせてくる。何とか成田に頑張って防いでもらいたいところであるのだが・・・

そういえば角度が厳しいのなら伊能が蹴るってことにはならないのかな?
と思いきや、古川さんお願いします!!と頭下げちゃってる伊能でありました。か・・・変わったな本当に!!

というわけで、一気に点差をつけられそうなピンチの状況となる市蘭。
2点差はマズイ。確かに延長前は2点差をひっくり返したが、それと同じことが出来るとはまず言えないですからねぇ。
何とかして凌ぎたいところですが・・・どうなりますか。



第337話 成田VSユゥエル  (2014年 21+22号)


延長に突入し、激戦を続ける市蘭と船学。
その試合会場に足を運ぶのは尾上の母。おぉ・・・諦めずに来てくれたのか!!これは嬉しい。

しかし市蘭は現在大ピンチ。
1点をリードされ、さらに追加点を入れられそうな雰囲気。
ここで2点差にされてはさすがに苦しい。どうにかこのフリーキックを防がないといけない。

ユゥエルは少しゴールから離れた位置にいる。キックのタイミングに合わせてゴール前に走りこむつもりだろうか?
そのパターンはビデオでも見ていない。初めてのケースだがしっかり対応しないといけない。
マークで張り付いている成田はもとより、サポートの万代さんも振り切られることなくついていかないといけないのだ。

さて、蹴るために動き出す古川。
それに合わせてゴールに向かって走り出すユゥエル。
万代さんも張り付くために素早く追うが・・・間に入ってきたのは伊能。
伊能にブチ当たったら当然万代さんがファウルを取られることになる。
なるほど。距離を開けて布陣したのは味方を盾にしてマークを振り切るためだったのか。
伊能が機能するとこういうこともできるようになるんですなぁ。やっぱり厄介だ。

古川のキックは正確にユゥエルの走りこむ先へと飛んでいく。
万代さんは振り切られた。頼れるのは成田だけとなったわけだが・・・なんとここでユゥエルの上を行って見せる成田。
凄い!けれどもかなり無茶をして跳んだせいか、右足を攣る成田。ギュギギギ。
これでは続けて跳ぶことはできない。ならばともう一度ユゥエルめがけてボールを放り込む箱学。これはヤバイ。

成田氏。貴殿は着地してすぐ倒れ込んで試合を止めるべきでござった
たとえリードされている状況であっても、ここは攻めに繋ぐことを考えるよりまず試合を止めるべきでござった。

確かにそれが冷静な判断だったかもしれませんな。
しかし成田が足を攣らせるほど披露するとは・・・さすが船学というべきか。

成田は跳べない。ならば万代さんが広能と2人がかりで止めようとする。
2人がかりならば体を寄せて抑えることも・・・と思ったが、吹き飛ばされる2人。
さすがにユゥエル。その身体能力はバケモノ並である。が――

2度目の跳躍はほとんど左足1本で跳んだ
にも関わらず、ユゥエルの上を行きクリアする成田。片足でユゥエルの上を・・・あ、あり得ないでござる!!

これは古川といえども驚愕せざるを得ない。
その驚いているうちにというわけではないが、クリアボールを拾った百瀬から乾へと早いパス回し。一気に攻勢に転じる。
成田も足が攣っていなければ攻撃に参加したところだろうが・・・
というか、成田は今必死で這いずってエリア外に出ようとしている。
どうやら今のジャンプで左足も攣ってしまったらしい。こりゃキツイ。

早く外に出ねえと・・・試合を止められてしまう。
追いついて逆転するには攻めの回数を増やすしかねえんだ。
やっぱり・・・やっぱりそうなんだよ。
左足1本でユゥエルの上にいけたのは、バンとブンタが身体を寄せてあいつを抑えてくれたからだ。
どんなに不利な状態でも・・・力合わせりゃ勝てるんだよ
すぐに戻るからなっ。それまで・・・頼んだぞおめーら!!

あの成田がここまで仲間を頼るようになるとは。
いや、前から仲間を信じるプレーはしておりましたが、それ以上に自分は仲間の信頼に応えようという意識が強い様子でした。
それが、動けない状態になりながら攻撃を託すほど信を寄せることになるとは・・・やはり感慨深い。
ここで成田の期待に応えてどうにか同点に追いつきたい市蘭。
やはりここは尾上の活躍が期待されるところでありましょう。
母親の前でいいところを見せることが出来るか!?出来て欲しい!!



第338話 囮!?  (2014年 23号)


延長前半間もなく残り1分。
成田が両足をつらせながら必死で守ったおかげで、前半最後の攻撃は市蘭側となりそうである。
しかし船学も当然必死のディフェンス。成田がおらず10人の状態でこれを崩すのは厳しい。

思った通りだ。スタミナは残っていてもあいつの足はもう限界なんだよ

ライン外に出た成田を4人がかりでマッサージ。
昔に比べるとこういう時に動ける人が増えているのは良い点である。
とはいえ一度この状況になるとまたつったりするものですからねぇ。
もうこの試合は全力で走れないのではないか。そのような不安もあったりします。

が、それでも成田は走る。
マッサージで走れるぐらいまで回復したのを確認すると、すぐに立ち上がってコーナーへと駆け寄る。
勿論すぐに試合に復帰したいのだが、一度ライン外で治療を受けた以上、主審の許可がなければフィールド内へ戻ることはできない。
下手すればこのまま主審に気付かれずに前半が終わってしまうところであったが・・・
観客の声援が審判にそれを気付かせてくれる。おぉ。
成田もいつの間にか注目され期待される選手になったんですなぁ。お前がいると何かが起きる!!

審判の許可を得てフィールドに戻る成田。
船学のDFは、あいつは全力では走れない。動きを見極めてから対応しても間に合うはずだと考えている。
はてさて、それはどうでしょうかな。

成田が戻ってきたのをきっかけに動き出す市蘭。
尾上から山守。山守から乾。ゴール前に飛び込む成田にタイミングを合わせて左から右へのサイドチェンジ。
最後は乾から大きく右サイドの二宮さんへとパスが繋がる。
二宮さんは二宮さんでずっと足を痙攣させた状態であるが、それを誤魔化しながら頑張っている。

ガンバレッ・・・オレの足。あと少し・・・あと少しでいいんだ。ガンバレ。ガンバレ。ガンバレ

そのように心で呟きながら駆け上がる。
そしてその二宮さんからパスをもらうために走る成田。
全力で走れるはずがない。そう思っている船学のDFではあったが・・・やはり無視はできる存在ではない!!
DF3人で成田を挟むように並走。スペースを潰そうとする。
警戒されてますなぁ。やはり成田は放っておくと何をされるか分からないと思われるようになったわけか。

しかし二宮さんがあげたセンタリングはゴール前へと走り込んだ成田の頭上を越えていく。
ミスキックかと思われるそのセンタリング。いや、狙いはニアではなくファーサイド。
そこに走り込んでいたのは・・・尾上!!成田は囮か!!

足が限界近くなっていた成田と二宮さんが必死で作り上げたこの場面。
尾上は見事に頭でそれを合わせ・・・ゴールネットを揺らす!!

キーパーも完全に成田に意識を奪われていたようですな。見事なゴールでありました。
ううむ、尾上がやってくれるのではないかと思っていたが、ミドルではなくこういう方向で来ましたか!!
しかも母親がちょうどやってきたタイミングでこれとは。まさに見事・・・!!

どうにか延長前半の内に同点に追いつくことは出来た。
しかし二宮さんはさすがに限界ではないかと思われる。
ここから後半戦でどのような戦いを迎えることとなるか。どちらが先に点を取ることとなるか。まだまだ緊張の時間は続きますな。



第339話 なぜ!?  (2014年 24号)


延長前半終了間際に同点に追いつく市蘭。
二宮さんの右サイドからのクロスを尾上がヘッドで押し込む。
成田の走りによる牽制があったとはいえ、見事に決まった感じですなぁ。すばらしい!!
そして何よりすばらしいのは、尾上の母がこの大事な場面に間に合ってくれたことである。

試合の状況は全く把握できていない。
それでも・・・一番大事なことはしっかり見ることができた。
あの協調性のない息子に、チームメイトがパスを出してくれていた
いつも一人だった息子が、チームメイトと抱きあっていた。ホッとした。

なるほど。点を取ったり活躍をしたりとかそれよりも喜ぶべきところがありましたわな。
そういう意味では個人技に近いミドルシュートよりもパスをもらってのこの展開の方が感動は大きいわけだ。
うーむ、泣ける話ですなぁ。

さて、再び試合を振り出しに戻した市蘭。
このしぶとさに改めて驚愕の色を見せる船学。なんなんだ・・・?あいつら

運動量はオレたちをはるかに超えている。まともに動ける奴がいるはず・・・ねぇんだ。
力の差は歴然――こっちが圧倒している。なのになんで・・・

これは別に市蘭を見下したり侮ったりしているわけではない。
実際、個々の実力は乾のような例外を除けば船学の方が上である。
力の差は歴然といっても過言ではない。
しかし、それをカバーする精神力が、絶対に負けられないという想いが市蘭にはある。
勿論船学にだって負けられないという想いはあるだろうが・・・これはやはり想いの質の違いと言わざるを得ないか。

ここで前半終了。両チームそのままエンドを入れかえて残り10分に全てをかけることになる。
うーむ、そうか。延長戦だとハーフタイムでの休憩はないのか。厳しいなぁ・・・しかし。

勝つ!!ぜってー勝つ!!

どこまでもガムシャラに戦おうとする市蘭。
体力は限界を迎えようとしているが気迫は衰えることを知らない。いいムードだ。
マイちゃんのためにも、この試合は絶対に負けられないのだ・・・!!

さて、後半が始まる前に脇坂さんはDF4人集まって声を掛ける。
あいつらが絶対逆転してくれる。あとはおれたちが守り抜けるかどうかだぞ、と。

最後の10分だ・・・全力でいこう

そう述べて、小さな円陣を組む。うーむ、脇坂さんは本当立派になったものであるなぁ。カッコイイわぁ。

さあ、いよいよ延長も後半戦。
広能はマイちゃんからもらった手紙を思い返す。
持ち前の粘り強さを存分に発揮してゴールを守り抜く姿が目に浮かぶとあった。その言葉通り、絶対に守りぬくと誓う。

絶対・・・守り抜いて見せるから

そのように考える広能であったが・・・体は頭の考えを裏切る。
どれだけ気迫が籠っていようと、やはり人間。体力の限界を超えて長く動き続けることはできない。
フラつき、倒れそうになる広能
それに気付いた久住先生。黒木監督に広能を交代させてくださいと告げる。お、ようやく動いたか!!

二宮さんがそろそろ限界かと思ったが、先に広能が来ましたか。
足の疲労以上に体そのものが倒れそうだし、これは仕方がないですかねぇ。
しかし交代する前に攻撃を仕掛けられそうな雰囲気である。ここはどうなるか・・・粘り強さを見せてほしい!!



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