蒼天紳士チャンピオン作品別感想

ANGEL VOICE
第259話 〜 第285話


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 各巻感想

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連載中分

ANGEL VOICE 30巻


第259話 試合前  (2012年 40号)


習実との試合前にアップを行う市蘭。
まだユニフォームにも着替えていない段階なのだが、汗をかくぐらいに激しく動いている。

現在、試合場では船学が試合を行っている。
相手はIH予選で市蘭が敗退した相手である東古城。
まあ、敗退したといっても、マイちゃんが昏睡状態になったと知り動揺しての結果ですが。
ともかく、その東古城相手にどんな試合をするのか見ておきたい市蘭イレブン。

試合の様子はテレビを録画しているし、1年生がビデオで撮影している。
――後でそれを見ればいい。

黒木監督としては、この一戦をまず勝つことを大事にしたい様子。まあ、それはそうですな。
最終的な目標として船学は存在するが、習実もまた大きな壁であることに変わりはない。
決しておろそかにはできない相手だ。
しかし、この1年。ビデオを構える姿がやけに様になっている気がして怖い

いつもよりも激しい試合前のアップを見て、久住先生は尋ねる。
今回ここまでやらせているのは、何か考えがあってのことなんですか?と。

その原因は、所沢の代わりに大事な試合に出ることになった万代さん。

開始直後に失点するようなことがあれば、それで試合が決まってしまう可能性が高いそうです

関根のじっちゃん曰く。
試合開始直後というのはどうしても動きが硬くなるもの。
緊張感と身体がほぐれず試合に入り込む――普段どおりのプレーができるようになるまで5分か10分はかかる。
その時間帯に点を取られるのはまずい。

技術的なことだけで言えば、バンはもうそこらの高校生キーパーを超えているという。ほう。
もとから備わっている運動能力の高さに加え、レベルの高いオフェンスが10日の間に色んな攻撃パターンを見せてくれた。
だが公式戦――それも負けたら終わりのトーナメントにフル出場するのは今回が初めて。
試合に入り込む前――そこで何が起きているのかわからんまま点を取られることがあれば、パニックを起こす可能性が高い
一度そうなったら試合中、元に戻ることはあるまい。
たった10日でつかんだ技術なんぞ全部消し飛んでしまうしのぉ。とのこと。

なるほどね。急造はやはり急造でしかないということか。
動きが硬い開始直後の時間帯に、トラップミスからの失点。この可能性が一番高いし怖い。
なので、激しいアップにより身体をほぐし、なるべくその可能性を消しておこうとしているわけだ。

アップしている最中、1年生が駆け寄ってくる。どうやら船学の試合が終わったらしい。
船学はとてつもなく強いです、と1年。それは身に染みて知ってますよ。
なので問う。オレたちが負けた東古城に、何対何で勝ったのか、と。

全国高校サッカー選手権大会千葉予選。準決勝第一試合。
船和学院は7対0で東古城を下し、決勝にコマを進めた

うーむ、さすがに船学。圧倒的な強さでありますな。そうでなくてはいけない。
先に勝ち上がった船学に挑むために、市蘭もこの試合を制せねばならない。
その相手、習志野実業と試合場の前で出会う市蘭。
おぉ、あの影の薄かった茂森が凄い存在感を放っているぞ・・・!!
それはいいが、やはり松田の小ささは際立っておりますなぁ。
この小ささでフィジカルが凄く、天城も認める天才であるという。人の良さも抜群だし、恐ろしいお人だ。

強敵である習実。
しかしこの相手を破らなければ船学とは戦えない。やってやるぜ!
意識を高める市蘭でありました。

さて、次回はいよいよ習実との試合が開始されるわけですが・・・開始直後、不安だなぁ。
可能性を消そうとはしているが、多分相手は速攻を狙ってくると予想される。
こちらの不安は相手の狙いどころ。
習実の監督、田沼さんは急造GKであることは理解している。
となれば、パニックを起こさせるために早い段階での点を取ることを狙ってくるはず。
果たして市蘭はその速攻を防ぐことができるだろうか?開始直後から激しい争いになりそうだ!



第260話 次のチャンスへ!!  (2012年 41号)


練習をこなし、GKとしての技量を磨いてきた万代さん。
しかし、公式戦は初めてである。
しかも、負けたら終わり。自身にとっても最後の公式戦となる試合だ。しかも相手は強豪。

で・・・できるのか?オレに・・・オレがドジったら・・・
こいつらが今まで必死にやってきたことが・・・全部パーになっちまうんだぞ

怖え・・・

相変わらず万代さんはメンタル面に不安がありますなぁ。
これまでも、オレにはできねぇって、とヘタれる場面もありましたし。
まあ、逆に、根拠のない自信を得て活躍するって場面もあったりしたわけですが。
この辺りの精神的な浮揚は試合中ずっと描かれていきそうですやね。

監督の合図を受け、試合に挑むため動き出す市蘭。
万代さんは、試合に臨む前に所沢に問う。こんな大事な試合のキーパーがオレにできると思うか?と。
この問いに、できますよ。と即答する所沢。
万代さんにしてみれば、そう言われても簡単には自分を納得させられない。
そんな風に即答できるだけの根拠を示して欲しいと言い出す。

万代さんがいてくれてよかったと――そう思っているからです

所沢は真摯であるなぁ。
本当に心からそう思っているのが伝わってくる。
だからこそ、万代さんもそれ以上追及することはせず、試合場に向かうこととなります。やあ、いい話だ。

というか、背負いすぎですな万代さん。
ゴールキーパーが原因で負けた、なんてことはそんなにはないはずですよ。
DFの能力も上がっていることですし、決定的なチャンスが作られたのならそれはDFの責任となるわけですし。
自身もDFなんだからその辺りはわかると思うが・・・責任を感じちゃうタイプなんでしょうなぁ。
大丈夫大丈夫。トンネルとか、自分の手で自陣のゴールにボールを投げ込むとかしなけりゃ平気だって!
こんなこと書いて、やらかしちゃったらどうしよう。

さて。いよいよ準決勝が開始されようとしている。
マイちゃんの病室に設置されたテレビにも試合場の様子が映し出される。
病室にはルカさんがいて、一緒に観戦をしている。
そしてルカさんは言う。これをマイに見せたかったんだよ、と。

テレビに映し出されたのは市蘭のスタンド。
スタンドを埋め尽くさんばかりに駆けつけている市蘭の生徒たち。
さらに、市蘭イレブンを応援する横断幕やボードなどが用意されているという。
これはマイちゃんには嬉しい光景でしょうなぁ。
ずっと、いつかはこんな日が来ると信じてきた。その日がやってきていたことを知った。こんなに嬉しいことはない。
涙するマイちゃんでありました。うーむ、感動的である・・・

ところで、あのやっつけ仕事な水内さんの応援ボード。
あれはルカさんが担当して作った品だったらしい。なるほど。そりゃあやっつけだわ!!
というか、小さいんだからせめて手前側に回そうぜ。なんで毎回後ろに回すんだよ!

それはさておき。両校選手の入場。
対峙する強者たち。やはり松田は人間が出来た受け答えをしてくれますなぁ。
八津野に勝ったのはマグレだと言われたりもするが、冷静に返す二宮さんもカッコイイ。

マグレだろうが何だろうが、つかみ取る準備ができていたからチャンスをモノにできたんだよ

いいことを言う。まさしくその通りだ。
運だけではなく、その運が向いたときに、つかみ取ることが大事って話ですわな。

その時――スタンドの空気が変わった。

ざわざわとざわつくスタンド。
それもそのはず、試合を終え、決勝進出を果たした船学が偵察に現れたからだ!!
いやあ、やっぱり雰囲気あるなぁ船学は。最強のチームに相応しい。

この試合に勝った方に、次の大きなチャンスが回ってくる
そのチャンスをつかみ取ることができるか。
という話だが、まずはそのチャンスを得るために、この試合を勝たなければいけない。
つかみ取る準備をしっかりしておかなければいけないという話だ。

さて、いよいよ試合開始間際。
延長とかPKとか面倒くさいから、サクッとケリをつけよう!
関東大会の頃とは違うってわからせてやろーぜ!
という感じで景気よくぶちあげている市蘭イレブン。
そんな中、忘れてないか?キーパーはオレなんだぞ!と不安そうにしている万代さん。

頼むぞ――万代!!

忘れているはずもないですわな。
万代さんが頑張ってきたことは皆知っている。そして信頼できるほどに育っていることも知っている。
だからこそ、ゴールを託すことができるし、景気のいい話もできるってものだ。
とはいえ、実際のところどうなるか・・・
まずは開始の10分。この時間で点を取られないことが大事。
なのだが、どうなることやら・・・楽しみであり、不安であるなぁ。



第261話 GK万代  (2012年 42号)


準決勝が開始されます。
いくぜいくぜ、いくぜ!!

万代さんにとっては初となる、開始からのキーパーポジション。
もうハラをくくってやるしかない。と内心で考えているくらいだし、やはり硬さがありますなぁ。

ボールをキープして攻め上げようとする市蘭。
その基点となるのは乾。
そしてその乾にピッタリと張り付くのが・・・石持!!
関東大会ではこのマンツーのマークに、さしもの乾も苦しめられた。
しかし、終盤は石持も疲れ果て、脅威ではなくなっていたものだった。

関東大会の時と同じだと思うなよ

石持は言う。スタミナの重要性を学んだよ、と。
どうやら習実にとっても、市蘭とのあの試合は色々と勉強になった試合だったらしい。
夏の合宿以来走り込みをくり返し、今ではスタミナでも市蘭に引けをとらない自信があるそうな。
それは面白い話ですな。
いつのまにか市蘭は古豪にも影響を与えるチームになっていたんですなぁ。

関東大会の時とは違うという石持。
まあ、確かに。寡黙だったはずの石持がやけに雄弁になっている。
これは茂森が強面になったのと関係していたりするのだろうか?どうなんだろうか。

弁は立つようになったが、相変わらずDF能力の高さは健在な石持。
乾からボールを奪い、習実の攻撃に移行させる。
習実の攻撃の基点になると言われる、9番の宮部。
開始早々、いきなりミドルシュートを放ってくる。

まずはあの急造キーパーがどれ程のものか――見てみようじゃねえか。

およそ30メートルの距離から放たれるシュート。
それだけ離れているのに、ちゃんと枠に入っている上にコースをついている。宮部恐るべし!偶然かもしれんがね。
しかし、そのシュートを見事に防いでみせる万代さん!おぉ!!
いきなりのナイスセーブに湧き上がる市蘭の観客。
ベンチも今のワンプレーで硬さがとれるんじゃないだろうかと満足気な表情。一人を除いて・・・

習実のコーナーキック。
セットプレーであるし、ピンチは継続している。
しかし万代さん。スーパーセーブを決めたことで何だか自信を持ってしまった様子。
やれる・・・やれるぞ!!

やけにキラキラした目で頼もしげな万代さん。
しかし、関根のじっちゃん曰く、気に入らないとのこと。

教えたことができとらんわい

一体何ができていないというのか?
それは次号明らかになりそうな気がする。
なんとなく点を入れられて明らかになりそうな気がして怖い。

開始早々に万代さんの問題点がクローズアップされそうな展開。うーむ、厳しい流れだ。
早い段階で点を入れられたら、そこで試合が決まってしまう恐れがあるとのことだったが・・・
そう思わせて、立ち直って、万代復活!な展開もなくはないだろうが・・・
ともかく、楽な試合にはなりそうもないですな。



第262話 欠点  (2012年 43号)


開始早々のコーナーキック。
見事なセーブは決めたものの、まだピンチは継続しているって状態だ。

割らせねえ!!ゴールラインは・・・絶対割らせねえ!!

意気込みを見せる万代さん。
その万代さんのプレーを気に入らないと言っていた関根のじっちゃん。
気に入らない理由とは・・・ポジション取り
ほほう。なんだか大事な話のように聞こえますな。どういうことでしょうか?

その話を伺う前に、今はコーナーに対処できるかどうかである。
セットプレーに参加する習実の新しい得点源――茂森隼人!!
存在感の塊と化した茂森は、前回の市蘭のミーティングで最も注目された男である。
プレーの映像を見ると、セットプレーではそのほとんどを茂森の頭に合わせてくる。
その圧倒的な打点の高さで次々と得点を重ねる茂森。すげえな。
この高さに市蘭は対抗しないといけないのだ。

万代が一気に乗れるかどうか――このコーナーにかかってるのかもしれねえ。頼むぞ成田!!
うちで茂森と競り合えるのは、お前だけなんだ!

身長としてはかなりの差があるが、とにかく成田は高く跳べる。
フィジカルとしても簡単に競り負けない強さがある。
だが、技術的な面ではどうやら茂森の方が上手だって様子。
先に跳び、押さえ込まれた体性になってしまったことで上にいけない。成田が競り負けた!!

ヘッドで合わせて、得点を!!
という流れであったが・・・飛び出した万代さんがパンチングでボールをクリアする!!
おぉ!やるじゃないですか!!
ヘッドの打点は成田に及ばなくても、腕を伸ばせばさすがに上回るって話ですわな!!

万代さんの活躍に沸き返る市蘭生徒たち。
メンバーも、さらには本人も嬉しそうであります。
だがやはり関根さんだけは浮かない様子。
今のプレーで相手に気付かれたかもしれん、とのこと。ポジション取りの話ですか?

バンは無造作に前に出過ぎる

ほう・・・そう言われれば確かにそんな風に思えなくはないですな。
あのコーナーでのパンチングは見事だったけど、最初から茂森に来ると確信しての飛び出しだったように思える。
もしあそこで茂森に合わせて来なかったらどうなっていたことか・・・
この万代さんのクセに気付かれたら、それを利用して点を重ねられる可能性がありますね。

松田が気付いた

お前が気付くのかーい!!
さすがは天城に天才と呼ばれるだけのことはあるってことか・・・!
この絶望感は中々にヤバイ。
万代さんが早いうちにポジション取りについて学びなおしてくれるとよいのだが・・・

前に出すぎということは、ループシュートでも決められる恐れがある。
そうなると、今度はループを警戒して慎重になり、逆に前に出れなくなるようになる可能性もある。
いわゆるループ恐怖症というやつですね。万代さんはこれにかかってしまうのか・・・?
まだまだ緊張状態が続きそうであります。先に点が取れればまだ安心できるんですけどねぇ。



第263話 ナイスキーパー  (2012年 44号)


コーナーキックというピンチから一転してカウンター!チャンスの市蘭。
百瀬から成田にボールは渡る。
そして得意のメイア・ルア!!
見事に習実のDFの1人を抜き去る。が、もう1人のDFが素早く詰めてボールを奪っていく。むう。
さすがに成田の突破の対応もしっかりされているようですなぁ。

試合の様子を観客席から観戦しているのは王者・船学。
しかしまとまった席は確保できていないのか散り散りに座っている。
その中の1つ、古川とユゥエルが並んで座っている席に近づく男がいた。天城だ!!
古川・ユゥエル・天城が横に並ぶ。なかなかに壮観な状況。
しかし、コーヒーを巡ってやけに可愛い顔になっている古川。何してるんだか。
まあ、天城も別にユゥエルのためにコーヒーを買ってきたとは限らない。
ブラック飲めないのに間違えて買ったから押し付けたと見るね!!

さて。2人に市蘭の様子を聞く天城。
古川曰く。やはり所沢氏が出られないのは痛いでござるなあ。とのこと。
その言葉を聞き、そんなはずはねえんだけどな、と天城。
2人の意見は食い違いを見せている。はて、これは吉と出るか凶と出るか。

関根のじっちゃんは万代さんは無造作に前に出すぎるとダメだししている。
実際、ポジション通りに守っていたなら最初の宮部のシュートは余裕を持って止めることができたはず。
それに先ほどのコーナー。あれも万代さんはキックの軌道を見切る前に動き出していた。
つまり最初から茂森の頭に合わせてくると決めてかかっていたというわけである。

あいつは、前に出ることに気持ちが傾き過ぎとる

不安な話でありますねぇ。
とはいえ、いまのうちはそれがうまく回っている。
松田の動きにつられDFの壁に穴が開いたところをスルーパス。しかしこれを飛び出した万代さんが止める。
ナイスな飛び出しであるがあぶなっかしい。
何よりも、その一連のプレーを笑顔で見つめる松田の存在が危なく怖い。

キーパーのポジショニングは、まずボールと適切な距離を取るところから始まる。
バンにはボールと25メートルの距離を取れと教えてきたのに今のあいつは20メートルちょっとの距離しか取っとらん。
20メートルはヒサシの距離じゃ。

なるほど。教えが守れていないというのはそういうことだったんですね。
しかしまあ、所沢のことをよく見ていた人だけに所沢の距離で試合中動いてしまうのは無理ないのかもしれない。
本来ならばそれより5メートルは後ろで守っていないといけないということだが・・・それはどうして?

バンはヒサシと比べて・・・後ろの守りが弱い

やはりそれが弱点でありましたか。
そして松田はその弱点も見越しているように思える。
そのため、放たれたシュートの内容は・・・ループ!!
前に出ようとしていた万代さんの頭上を越えるループ。果たして万代さんはこれに対応できるのだろうか?
対応できたとしても、これを基点に次々と攻められて迷う展開になりそうな気もする。
なんとか先制点を取っておいて万代さんの気持ちを楽にしてあげたいところだが・・・
天城の言葉がいい方面のフラグになるかどうか。気になるところです。



第264話 迷い  (2012年 45号)


前半3分。松田、ゴール左隅に向けてループシュートを放つ。
必死に戻る万代さん。飛びつき、手を伸ばす・・・が、ダメ。
松田のシュートは市蘭ゴールのサイドネットを揺らすのであった。

うーむ。さすがは松田と言ったところですかねぇ。
ただのループではない。見事にコースをついてきやがった。

開始3分でいきなり点を奪われた万代さん。
観客席で様子を見守る所沢は何を思うのか。

何やってるんすか万代さん。止められないループじゃないでしょ!?集中してくださいよ!!

なぜか甘い見積もりを口にする山守。止められないと何故言える!?
二宮さんからも、前に出すぎているぞと叱責を受ける。これはその通り。
だが、これは何も最初に好セーブして調子に乗ったからとかそういう話ではない。

万代さんは万代さんで色々と考えている。
が、その考えていることが段々と裏目に出てきつつある。
再度の習実の攻撃。
宮部のスルーパス。ゴール前にボールが転がってくる。
本来なら万代さんが飛び出してクリアするところだが、今回は脇坂さんに任せてしまう。
ループを打たれたのがやはり効いているみたいですなぁ。

ちょっと前までの強気でキラキラした万代さんの表情が、今や見る影もない。弱気な顔になっている。あらあら。

万代さんは前日から一睡もしていなかった。そして一晩中考えた

DFは松田につられる。
つられるというより・・・ボールを持っていなくても、松田にはついていかなきゃなんねえから。
それをおとりにしてゴール前へのスルーパスが通りやすくなるよな。
脇坂たちディフェンスラインとオレの間にあるスペースを、どうやって消すか・・・だよな。

脇坂たちはラインを下げられねえから、オレがやるしかねえ。
積極的に出よう!!前へ!!

これが万代さんが出した結論でありました。
考えて考え抜いて決めた結論である。そう簡単に覆すわけにはいかない。
だから、次に松田が攻めてきたときは積極的に前に出る。
が、松田。
本来なら簡単にかわせる相手なのに、あえてループで万代さんの頭上越えを狙ってくる。

うーむ、やはり松田。勝負に関してはとことん非情の男である。
これで再度得点を上げられたら、いよいよ万代さんの精神が危ないことになる。
果たしてここで点は入ってしまうのか?入ってしまう気もするなぁ・・・うーむ。

万代さんは悩むのも考えるのもよい。
けど、そこで出した結論を誰かに相談するべきでしたね。
関根さんや所沢、脇坂さんたちでもいいから事前に聞いておくべきでした。
その辺りの意思の疎通を怠ったのは大きい。これはマズイ展開になってきましたよ。

ならばこちらも点を取ればいい。
と言いたい所だが、今回も乾は石持にマークされて動きづらく、攻めの流れが掴めない。
なんとも危ない試合展開になってきましたぜ・・・本当、どうなってしまうのやら。



第265話 恐怖心  (2012年 47号)


万代さんの頭上を再びボールが越えようとしている。
こうなってしまってはもうできることはない。入らないように祈るしかない。
入るな・・・外れろ!!

その願いが通じたのか、ボールはゴールバーに当たって奥に落ちる。
あわや2点目・・・というところだったが、何とかそうはならずに済みました。怖いなぁ。
思わず息を止めてしまった校長の気持ちがよくわかる。

古川の言うように、確かにこの場面、松田なら万代さんを交わして確実にゴールをゲットできたであろう。
しかし、目先の1点を取得するよりも、先を見据えた戦法を松田は取ってきた。

松田のやろう。万代を潰しにきてやがる

さすがに天城もすぐに気付いたか。
この辺りの視点はさすがといえますな。
関根さんも今のループ2本で潰されたかもしれないと言っている。
前に出ることの恐怖心を植え付けた。
松田のやつ・・・即席キーパーの弱点を見事についてきおったわい。

肩を落とす万代さん。
その万代さんを元気付けるために脇坂さんが叫ぶ。

見ただろう万代!!
松田ほどのやつでも2本目は外した。ループなんかそうそう簡単に決まらねえんだ!!
ポジショニングには注意は必要だが・・・気にし過ぎるんじゃねーぞ!!

まあ確かに。松田ならばループを警戒させつつ得点も可能かと思いましたが・・・
利き足で蹴っていたら入っていたかもしれないってのが格が落ちないフォローでいいですね。

脇坂の声ははっきり聞こえていたが、その内容はすべて素通りした

マズイマズイマズイ。
万代さんが気弱な表情になっている!!
危惧していた展開が本当に来てしまったって感じですよ。
これは・・・どうすればいいんだろうか?自信を取り戻させるキッカケが見つからないよ?

キーパーの万代さんが不安を抱えている最中なのに、中盤も習実がペースを握っている。
どうやら開始早々、一気に突き放すつもりのようだ。ヤバイな。

松田と冨樫をオトリに使い、自ら中央突破を図る蓑部。蓑部・・・?
それに対し、万代さん。ゴールマウスに張り付いてて前に出てこれていない。
この状態ではシュートを広角に打たれてしまい、かなり防ぎにくくなる。
絶体絶命!という場面だが、そこに飛び込んできたのは水内さん。
ジミーの地味に派手な活躍により追加点を奪われるのは防げました。よしよし。

脇坂さんによる万代さんへの叱責。
これに万代さん。呆然としながらスマンとだけ返す。

スマンって・・・それだけかよ!?蓑部をエリアに入らせたオレのプレーも怒れよ

さすがに脇坂さんである。自分のミスの部分もちゃんと理解している。
そして、それを指摘してこない万代さんの危うい状況も把握している。
いや、それについてはさすがに市蘭イレブン皆が気付き出しているみたいですな。

というわけで、習実のコーナーキック。
このコーナーは全員で守ることにする。
ここで追加点を奪われるわけにはいけない・・・そのためにも成田の仕事は重要となる。
最初のコーナーの時のように万代さんは前に飛び出したりはできない。
ならば、成田が茂森に高さで勝つ。それが追加点を防ぐ最も大事なポイントとなる。

うーむ。思った以上に松田の攻撃は効果覿面だったみたいですねぇ。
まだ開始から10分も立っていないのにこの状況。
果たして万代さんは試合中に復帰できるのだろうか・・・?
ハーフタイムを挟めば何かがあるかもしれないが、前半はまだまだ長い。怖い時間帯が続きそうである。
松田を負傷退場させれば復帰できるかもしれないが・・・それはさすがに、ねえ?色々とまずかろう。



第266話 攻撃パターン  (2012年 48号)


松田のループ攻勢によりすっかり精神的にガタガタにされた万代さん。
その様子はもう習実の連中にもバレバレになってしまっている。
万代さんは動揺がまっすぐ顔に出るからなぁ。ポーカーとか弱そうだ。

茂森。落ちついていけ。ギリギリを狙う必要はねえぞ。

この言葉に自信を持って応える森。ずいぶんな自信だな。
さすがにこれは成田の気に触った様子。
1回オレに競り勝っただけで、オレが存在してねえかのような言い方しやがって。

ナメてんじゃねーぞ!!

成田の意地はさすがである。
茂森よりも高い打点でクリアに成功する。
だが、成田の凄さはそれだけには留まらない。
クリアした当人だというのに、真っ先に走りこんでいる。
具体的に言うと、クリアボールを拾った百瀬よりも前を走っているという。す、すげぇ・・・!!
さすがにこれは茂森もギョッとするしかないな。

得意の俊足を活かしてカウンターを狙う成田。
百瀬のパスをファーストタッチで直前のDFの裏に流し抜きにかかる。
が、それはその奥にいた別のDFにクリアされてしまう。
どうやら成田の縦への突破のパターンは既に研究されてしまっている様子。
完全な2段構えで対応。逆に言うと、一度突破を許せば誰も追いつけないと言うことを意味しているわけだ。

カウンターは防がれたが、成田のクリアで多少流れは変わるかもしれない。
相変わらず乾には石持が張り付いている。
が、乾抜きでも今の市蘭は攻めの組み立てができるようになっている。
習実としてもそれは知っている。
だが、乾を自由にさせていなければ市蘭の攻めのバリエーションは一気にその数が減るというのも知られている。

山守から百瀬。百瀬から二宮さんにパスが回る。
サイドから突破する二宮さん。
この場合の攻めのバリエーションは市蘭には1つしかないと考える習実。

二宮がゴールニアサイドに低くて速いクロスを入れ、そこに成田を飛び込ませる!!
確かに成田のスピードは脅威だが、それしかないとわかっていれば十分守りきれる。

そのように考えていた習実だが、予想外の攻めが展開される。
二宮さんが出したセンタリングはニアサイドではなく、ファーサイド。
そこにはもちろん成田の姿はない。そこにいたのは・・・尾上!!

キタ―――――!!

実に嬉しそうな表情を見せる校長。まあ、気持ちはわかる。
だが、頭に合わせることは余り慣れていない尾上である。
このヘディングはクロスバーの上。外してしまいました。残念!

とはいえ、習実のスカウティングレポートにはなかった攻めを見せたというのは大きい。
それしかないとわかっているから十分守りきれる。
ならば、それ以外にもあると思わせればよい。それで十分従来の攻撃も通りやすくなる。
だが、それだけが目的というわけでもない。

市蘭はまだまだ成長期だからなぁ。昨日の情報は今日はもう役に立たねえぞ

いいセリフですね。さすがは二宮さんである。
習実の連中の表情にも緊張の色が見えてきました。いい感じだ。
そして、天城もまだまだ市蘭はこんなもんじゃねえぞと太鼓判を押す。

さあ天才クン――お前もそろそろガツガツいけよ

前の試合の時よりもさらに成長している乾。
今度こそは疲れていない石持を抜き去ることができるのだろうか?

試合が始まってからずっと翻弄されてきた市蘭であったが、ようやく反撃の狼煙を上げれそうな雰囲気である。
今回の攻めに、乾の活躍を加えれば、早い段階で1点返すのもありえない話ではない。
というか、万代さんのためにも早い段階で返してあげて欲しいものである。

それにしても、習実のスカウティングレポートはいつから作成されたものなんでしょうかね?
やはり一度戦った後から作成されたのでしょうか。
そうなると、昔の二宮さんはむしろ高いボールしか出せなかったというのは知らなさそうだ。
この先も、今までにない攻撃パターンが見られるようになるのだとしたら、それは楽しみな話である。
二宮さん自身が切り込んでのシュートなんて展開もあるかもしれない・・・!!楽しみだ。



第267話 情報  (2012年 49号)


準決勝の最中、マイちゃんの病室を訪れる者たちがいた。
それは――美幕の3崎!!花束持って登場だ!!

会いたかったんだ。市蘭というチームを作ったマネージャーさんに

この言葉に赤くなって照れるマイちゃん。あらあら。
まあ、市蘭が強くなった一因は間違いなくマイちゃんの存在ですからねぇ。
今の市蘭を作り上げたという意味では3崎の言う通りである。
しかし、マイちゃんが赤くなっているのは過大な評価に照れただけなのだろうか?
なんせこいつらイケメンですからねぇ。
不良達が病室を訪れるのは何回もあったが、今回はイケメンのスポーツマンが花束持って登場である
思わずマイちゃんが赤くなってしまってもしょうがないのではなかろうか。どうなのだろうか。
ルカさんはマイペースで大変結構。

前半10分経過。
この時間帯、市蘭が中盤を支配し始めている。
というのも乾が石持を連れて下がったので市蘭は余裕を持ってパスを回せるスペースができるようになった。
攻撃のパターンこそ減るものの、中盤で奪われて攻勢をかけられるよりいいとの判断でしょうな。
今の万代さんの調子を考えるといい考えかもしれない。
まあ、天城は思いっきり不満な様子ですが。乾のヤロ〜〜。

でもまあ、今はまだ仕方ない。なんせ石持のマークはユゥエルがキレるぐらいしつこいのですから。
との古川の説明を聞いてキレたのか?と尋ねる天城。
照れた様子で少しと答えるユゥエルがなんだか可愛い。こんな表情も出来たんだ。

さて、乾を絡めずの攻めを繰り返す市蘭。
成田が突破をかけようとするが、前方にはDFが2人いる。
同じように縦の突破をしかけようとしても、1人を抜く間にもう1人がクリアしてしまう形だ。
だが今回は成田の前に尾上が走りこんでいる。む、まさかこの2人で来るのか?

いや・・・この2人は2人とも自分で決めたがる
偵察した試合で2人がパスを交わしたのは八津野戦での1回のみ!!
犬猿の仲らしいな。成田の単独突破に備えろ!!

よく調査していますね。
だが、もはや昨日の市蘭は今日の市蘭とは同一視できない。
それを証明するように成田が尾上にパスを出す!!

尾上のミドルをキーパーが弾いたところに成田が走り込むのも市蘭のパターン。
急いでシュートコースを切ろうとするDF陣。
だが、尾上は成田にパスを出す。まさかこの2人のワンツーが見れるとは!!

そしてキーパーをかわし、見事にゴールを決める成田。おお!!
と思いきやオフサイドでありました。むう、惜しい。
でもまあ、点にこそならなかったがいいつながりでありました。マイちゃんも嬉しそうである。
というか、ずいぶんと生気が戻ってきているように見える。いい傾向だ。

過去まったくというほどやらなかったことを立て続けに行う市蘭に戸惑いを隠せない習実。
仲が悪いのは本当なんですけど、それを越えてのチームプレイが出来るようになったって話ですな。

さて、こうなってくるとせっかく作ったスカウティングレポートも忘れさせた方がいいなと習実の監督は判断する。
ヘタに情報に頼ると後手に回る可能性がでてきた。
選手たちもそれは感じている。
八津野戦から2週間・・・たった2週間の間に、コイツらどれだけのことをやってきたんだよ

まだまだ発展途上のチームの怖さでありますな。
八津野ほどの強豪を破っておきながらまだ成長する。これが市蘭のスゴイところでありますな。

見ただろ?万代。
ループで取られた1点は――いずれあいつらが取り返してくれる。

万代――!!おめえも練習でやってきたことを、そのままやりゃあいいんだ!!

今回の脇坂さんの言葉はちゃんと万代さんの耳に届いた様子。
多少生気の戻った表情で頷く万代さん。お、立ち直る兆しがでてきましたかね?

しかし、習実の攻撃となったらまた松田が万代さんの精神を削りにくるんでしょうなぁ。
なかなか気の休まらないことになりそうだが、どうなることやら。
とにかく早いところ同点に追いついて欲しいところですね。
万代さんだけでなく読者の気も休めていただきたいものである。



ANGEL VOICE 31巻


第268話 立ち直るまで  (2012年 50号)


練習でやってきたことをそのままやればいい。
脇坂さんのその言葉に、やってやらあと内心で叫ぶ万代さん。
これで立ち直ってくれるといいんですけどね。

中盤での展開を有利に進める市蘭。
習実はFW松田のポジションを下げて中盤の人数を増やすことでそれに対応する。
だが、松田は非常にドリブル能力の高いドリブラーである。
中盤でボールを受けたとしても、そのままDFを抜きさってゴールまでいくことが可能な男なのだ。

その松田が中盤でボールをカットする。
山守が追いかけ、DF陣が外へと追いやろうと動き出す。
しかし4人がかりでも松田からボールを奪えない。
この辺りのキープ力は乾を髣髴とさせるものがある。
さすが天城がいうところの2人の天才のうちの1人であるか。

キープしながら、右サイドの神保にボールを流す松田。そう、これが怖い。
松田がボールを持つと、どうしてもディフェンスがそれに集中し、他への対応が遅れてしまう。
よって、あっさりとクロスを入れられてしまう市蘭。
クロスに合わせるべく冨樫が走り込む。

山守(万代さん!クリアして!!)
脇坂(前に出てクリアしろ万代!!)

そう叫ぼうとしたのだが、肝心の万代さんは前にでることはなかった。
呆然とゴールマウスに張り付いてボールを見ているだけである。
ヘッドで押し込まれたボールに対しても反応できず、そのままゴールを許してしまう。
うーむ。前に出ることが怖いのはわからないでもないが、横への反応すらできなくなっているとは。

松田の攻撃で前に出る判断が難しいのは解る。
だが、今のは前に出てれば余裕でクリアできたはずである。これは・・・マズイ。
予想以上に松田がしかけたループ攻撃が与えた影響はでかかったみたいだ。

ダ・・・ダメなんだ脇坂。練習でやってきたことを全部・・・全部忘れちまった
オレ・・・どうしたらいいんだよ?

自分で考えろ!!

まあ、これはさすがにね。自分でどうにかしてもらわないことにはどうにもならんのではないかと。
突っぱねる脇坂さん。しかし、このことも付け加えておく。

万代。この試合――おめえがどんなプレーをしてもオレは何も言わねえ
いや・・・他の誰にも何も言わせねえ
おめえが――ビビってゴールマウスに張りついたまんま点を取られても何も言わねえ。
前に飛び出してループを決められても――何も言わせねえ。
どういうプレーをするか自分で決めて――それを思いっきりやれ

本当、脇坂さんはいいことを言ってくれる。頼もしいお人であるなぁ・・・

万代さんにそう告げた後、ディフェンス陣を集める脇坂さん。
万代さんには立ち直ってもらうが、それは今すぐってわけにはいかない。
さすがに所沢の代役ができるやつなんかそうそういないって話ですわ。だから――

あいつが立ち直るまで、オレたちが守ってやろう

決意を新たにするディフェンス陣。
こうと決めれば市蘭は強い。のだが・・・力及ばないことは往々にしてある。
特にこの作品はそういう傾向、これで大丈夫と思わせつつ――という流れが多い。
今回も冒頭で万代さんが復活の気配を見せつつ、結果はこれでしたからなぁ。
前半の復活はもう見込めないと考えたほうがいいかもしれない。頑張れディフェンス陣!!



第269話 3点目!?  (2012年 51号)


2点を失い、なおも立ち直れずにいる万代さん。
マイちゃんの声は脳裏に浮かぶのだが、それで復帰できるほど単純ではない。大変だ。

その万代さんの復活まで耐えようと奮起する市蘭DF陣。
脇坂・水内・丹羽の3人がかりで松田を追い込む。
さすがに先ほどと同じミスはできないので広能は富樫のマークに残す。
気合が増したゆえか、松田の攻撃を見事に抑えるDF陣。やるねぇ。

キーパーの万代さんが棒立ちなのはテレビで観戦している状態のルカさんにも分かる。
立ち直らせるにはどうしたらいいのか3崎に尋ねます。が、難しいなという返答。そりゃそうでしょうな。
しかし、マイちゃんは言う。特別なことはしなくていいの、と。

必至に闘ってる仲間を見てたら何か――自分に出来ることをやらずにいられなくなるから。万代さんは大丈夫。

力強く頷くマイちゃんに衝撃を受ける3崎。
すぐサッカー的な思考に走って難しいと断じてしまった自身を恥じる。
そう!立ち直るきっかけは――仲間だ!!

江崎が言うと説得力ありますね。
彼もまた確執を乗り越えて仲間に立ち直らせてもらった男でありますし。

守りを頑張っているのはDF陣だけではない。
少し下がった状態の乾も守りに参加している。天城は不満な様子ですけどね。
さらに百瀬が富樫にプレッシャーをかけてオフサイドポジションに追い込むプレイなども見せたりする。
これには古川もいいディフェンスでござるなぁと高評価。

各人が必死で守ろうと動いている。その様子を見つめる万代さん。
マイちゃんの言うように、胸に去来するものが大量にありそうですなぁ。

2点目を取られてから15分が経過している。
習実もそろそろ追加点を取らないとキーパーが立ち直るかもしれないと焦りを見せ始めた。
そういった点が欲しいという状況。
そういう場面で決めてみせるのがストライカーの役目である。
というわけで、ゴール前でパスを受け取った松田。
外へやろうとする脇坂さんをかわす。これはまずい!3点目が・・・

その時――自然に足が前に出た

棒立ちだったはずの万代さんが前に出てきている!!
ついに混乱から回復したのか!?
自身に気合を入れるためか吠える万代さん。シュート体勢に入る松田。
万代は身体ごと飛び込み――それを止めにいった

かなり立ち直った様子の万代さん。しかし、ここで止めれるかどうかはまた別の話。
なんせ相手があの松田ですからなぁ。一体何が起きるか。
身体ごと飛び込みすぎてファールを取られちゃう可能性もあるかもしれない。
それでイエローもらったりしたらまた萎縮したりしちゃわないだろうか・・・
いや、ここは立ち直ったものと考えよう!考えたい!でも点は取られそうな気はする。うう。



第270話 復活  (2012年 52号)


仲間の姿に奮起し飛び出す万代さん。抑えろっ!!万代!!

だが、ここで松田のキックフェイント。シュートと見せてキーパーを交わそうとする。うまいでござるなあ。
しかししかし、万代さんも簡単に諦めたりはしない。
いかせるかと倒れこんだ状態のまま足を伸ばし、防ごうとする。

届けっ!!届け――!!

願いが通じたのか、伸ばした足がボールを弾く。
が、そのルーズボールに走りこむのは習実の富樫!!
落ち着いてインサイドキックでゴールにボールを押し込もうとする。
しかし、万代さんが飛び出した後のゴールに詰めている男がいた。水内さんだ!!

キーパーが飛び出したら水内さんがカバーする。
所沢が何回か指示を出していたパターンですな。
こういった地味な仕事をきっちりこなすから、派手な活躍も見込める。ジミーの本領発揮でございますよ!!

身体の正面でボールを受け、零れた球をクリアする水内さん。防いだ――!!

この一連の攻撃を防げたのは大きい。湧き上がる観客。
脇坂さんも、お前もいい飛び出しだったぜと万代さんを誉める。
おやおや。今日はどんなプレーをしても何も言わないんじゃなかったんですか?

言わずにいられないプレーもあんだろ?オレのミスを救ってもらったんだからよ。

確かにそうですな。
いやはや、相変わらず脇坂さんは男前である。

万代――松田に裏を取られた脇坂のミスをお前がカバーし、ボールを抑えられなかったお前のミスを水内がカバーした。
これがチーム!!これが――仲間だ!!

万代「サンキュー水内」
水内「ジミーと呼べ
万代「サンキュー・・・ジミー!!」
ジミー「(グッ)」

そう、フィールドの上では水内さんはジミーなのだ!!
当初は悩んでいたみたいですが、結局ジミーという呼び名が気に入ってきたんじゃないんですか?水内さん。

なんにしても、この一連のやりとりで万代さんの目に光が戻ってくる。
自身の叱咤も兼ねてか、手を叩き声を出す万代さん。おぉ。ここ一番、集中して守りたいですな!!

この様子を見て久住先生。万代さんが立ち直ったのでは?と嬉しそうにする。
が、関根さんはまだ手放しには喜んでいない様子。ふむ?
しかし、スローインからの習実の攻撃を万代さんが飛び出して防ぐと評価一変。

ワシの弟子じゃからのぉ。カッカッカッ。

調子のいい爺さんだぜ全く。まあ、関根さんがこう評価するなら、完全に立ち直ったと見ていいですな!
TVの解説も評価してくれるし、何よりマイちゃんがもう大丈夫と言ってくれる。心強い!

もう、こんなところにいても意味がねえな

万代さんの立ち直りを見て、ディフェンスに参加していた乾が動き出す。
万代の声に応えるかのように――乾はポジションを上げた。

ついに天才・乾が動き出す!
万代さんも復活したことですし、いい感じに盛り上がってきました!!いいねぇ!!
ここ最近ずっとしかめっ面の天城もようやくまともな顔に戻れそうな流れである。
前の試合では結局体力を消耗しきるまで抜ききれなかった石持を、今回はかわせるのか?注目です。



第271話 パスコース  (2012年 53号)


前半は残り約10分。
なんとかして前半のうちに1点は返しておきたいと考える市蘭。
となれば、頼れるのはやはりこの男。乾である。

後ろに下がっていた乾がポジションを上げた。
これで習実が中盤で一方的にボールを支配することはできなくなった。
が、ともかく最終的に効果的なパスさえださなければいい。
それだけを気をつけようと考える習実の面々。

乾が前に出たことで流れが変わるのか?船学の土岐監督はなんともいえないなって感じの答え。
体力万全の石持もついてますし、どうなるかは予想しづらいですわな。

さて、その乾にボールが渡る。
いつものようにパスを寄こせと叫ぶ成田。だが――

こんなところでやみくもに叫んでも意味がねえんだったな

すたすたと有効なポジションを取ろうと動き出す成田。おぉ・・・成長している!!
となれば、後は乾の活躍を祈るだけである。
石持が張り付いている以上、ボールをもらってからは簡単に前を向けない。
そうこうしている間にもう1人が別の選手がやってきて挟み撃ちになる。
今回も富樫が下がってきて挟み込もうという状況になった。

守りに自信を持てると、大胆な攻めができるようになる。
――ドリブルも含めてな

見事な突破!体を反転させ、石持を抜きさる乾。おぉ。
そしてサイドには二宮さんが走りこんでいる。
前半の初めのころ、予想外のセンタリングを見せた二宮さんである。習実の連中もコースを切ろうと必死になる。
しかし、乾は逆の方向に目を向けていた。

おい。このパスコースが――見えているか?

習実の選手の間を通り、茂森が進もうとした逆をつく早いパス。
このパスの絵は凄い・・・なんというか、凍りつくような感動が見て取れる。これがいわゆる冷血のパスなのか・・・!?

そして、その見事なパスを受け取るのは成田。
パスコースが見えていたのかはわからないが、そこに走りこんでいたのは紛れもない事実。
きっちりとトラップし、そしてきっちりとゴールを決める。

見事すぎる一連の流れに唖然呆然といった感じの習実。観客も驚きで静まり返っている。
さらに、あの土岐監督までもが無意識のうちに立ち上がってしまっていたという。

どーよ?

おぉっと。凄い嬉しそうな顔してるぞ天城!!
驚くユゥエルと古川とは違い、俺は分かっていたぜ!と得意満面な様子。
うーむ。天城の乾にかける信頼は相当なものがありますな。己が天才と認めるほどの相手だし、しょうがないか。

さて、前半35分。ついに1点を返し、士気の上がる市蘭。
この勢いで前半のうちに追いついたりするのだろうか?楽しみな流れだ!!



第272話 いこーぜ!!  (2013年 1号)


ゴール前に走り込む成田に乾から絶妙のスルーパス!!
前半25分、2対1。市立蘭山が1点差に詰め寄りました。

そういえばテレビ中継していたんですな。
あのパスからの得点までの流れは何度もVTR再生して欲しいシロモノである。

この得点シーンを見て、病室ではマイちゃんが暴れていた。バタバタ。キャーキャー。
この様子を見て笑顔のルカさんとちょっと困った感じの3崎。ハハハ。

なんか・・・黒木監督にいいように使われた気もするけど、練習に協力してよかったな

マイちゃんの喜ぶ姿を見てそんなことを考える3崎でありました。おやおや。
さすがはマイちゃんというべきか。これがゴッド・マザーの魅力なのでしょうか。
しかし言葉こそ相変わらずだが、表情を見ると凄く元気を取り戻しているように見える。
もう市蘭が勝ったら全快したってことにしていいんじゃないですかね?

さて、点を返された方である習実としてはかなり呆然とせざるを得ない得点のされ方でございました。
乾が合図を送ったわけでも、成田が要求したわけでもないのに、あんなギリギリのパスをきれいに繋いできた。
やられた方の動揺はさすがにでかいですわな。
さすがに、何度も繰り返せるようなプレーではないでしょうが。

得点こそ2対1で習実がリードしていますが、攻撃の質は市蘭の方が上のようですね。

そのように語る船学の土岐監督。思わず立ち上がってしまうほどですものねぇ。

勢いに乗って中盤でボールを奪い返す市蘭。よーし、もう1点いこーぜ!いこーぜ!!
と思ったのだが、習実は完全にベタ引きで守りに入る構え。
松田1人を上に残し、FWの富樫まで守りにつかせる作戦にでてきた。
今同点にされるとチーム全体が浮き足立ち、取り返しがつかなくなるかもしれないとの判断だ。
前半残り5分。守りきってリードを保ったまま後半に臨もうという構えですな。

弱気弱気ー!!一気にいきましょう!!

市蘭の1年たちが声を奮う。やけに汗かいてるなこいつら。走りながら応援してるのか?
それはさておき船学の古川。市蘭の連携は見事であると褒める。
それに対し天城。いいチームだぜと返す。面白い顔で。

聞いてるでござるよ――貴殿が美幕の3崎と一緒に市蘭の練習に参加してるという話

ほう。さすがに知れ渡ってますか。
まあ、天城1人が加わってるだけでも話題になりますわな。
というか美幕の3崎は古川にも名前が知られるほどの存在でありましたのね。

あいつらは一人一人――とくに中がいいってわけじゃねえし、技術的にもバラつきが大きい。
だが一つの集まりとして見た場合。あんなにまとまったチームをオレは見たことがねえ。
それぞれが相手を高める存在なんだよ

そのように語る天城。うーむ。さすがにいいところに目をつけておりますなぁ。まさしくその通り。
そして天城はこうも言う。逆のパターンもあると。
類まれな素質を持っていながらチームに悪い影響しか与えない奴

古川「うちの伊能のことでござるか?」
天城「ああ。たぶんあいつを外した方が船学は強くなるぜ」
古川「外すわけにはいかないでござるよ。来年にはチームを引っぱってもらうつもりでござるのに」

全国1の強豪である船学を将来引っぱることになる存在、伊能。その存在が今明らかになる。

あれっ?ゴザルとユー、こんなところで見てたのか?

確実に先輩であろう古川とユゥエルに対しこのような口を叩く存在。
確かに天城が船学の将来を案じても不思議ではない感じでありますな。

伊能基希。公式戦でセットプレーのキックを任されるほどの能力を持ちながら、その言動とプレイ内容に大きな問題があった。

この男が話題になった得点王の新人でありましょうか。
凄いのかもしれないが、今のところはその凄みが見えない。まあ、プレーしてみないことにはね。
ただ、言動に問題があるのは一瞬で分かる。
天城がいるのを発見して、あの「ふーながーくに勝ちたいなー」てやつ歌ってよとか言い出す。
既に敗退しておりチャンスのない天城になんてことを言い出すのか・・・
これはさすがに古川、失礼でござろうと注意する。
その後の顔を見るに、わざと挑発的な言動を取ったんだなというのが見受けられて・・・

オレ、あいつ大っキライ!!

天城がそういうのも無理からぬって話でありますわな
。 才能があるとはいえ、チーム内の心の折衝に定評のある土岐監督が何故この選手を放置しているのか?
何か考えがあってのことなのだろうか?雨降って地を固まらせるような・・・?
ともかく、ここに来て船学側にもウィークポイントとなりそうな部分が出てきました。
序盤だけかもしれないが付け入る隙となるやも。

それはまだ先の話として、現在の習実戦。
結局追加点を入れることはできずに前半終了となるのでありました。

ぜってー勝てよおめーら!!勝って船学をぶっ潰そうぜ!!

もうすっかり市蘭側の人間となった天城でありました。まあ、しょうがないよね。

思ったよりもお互いに点が入っていない状態で前半を終えた習実戦。
後半はどのような展開になるでしょうか。もう万代さんが乱されることはないかな?ないといいな。
逆に成田の練習の成果による得点は既に出ており、今後の得点シーンが予想しづらい流れにはなっている。
どのように追いつき、追い越すのか。
それとも追いつくだけに留まり、再びPK戦となるのか。
因縁のPK戦を所沢ではなく万代さんが守る。これはまたプレッシャーのかかりそうな場面で万代さんにも気の毒だ!ありそう。



第273話 ドリブル合戦  (2013年 2+3号)


1点差に迫ったが同点にまで追いつくことはできず前半終了。ハーフタイムに。
ここで病室のルカさん。同じく病室にいる3崎にハーフタイムはどんなことを話すのか質問する。

負けてる時は各ポジション――うまく機能しなかった部分のチェックと修正の指示が出されて、
勝ってる時は細かい修正の指示が出されるくらいで、あとは後半に向けてテンションを上げるよね。
でも・・・この試合に限っては逆じゃないかな

まあ、そうでしょうね。
前半の終了間際には完全に流れは市蘭寄りとなっている。テンションを上げて後半を迎えたいところだ。
逆に習実は何か手を打ってこないと市蘭の勢いに飲まれて追いつき追い越されることになりかねない。

両チームのミーティングは――箱崎が予想した通りのものだった。

とりあえず、万代さんには関根のじっちゃんの拳骨が飛ぶ。ゴッ。
一時はどうなるかと思ったぞ、と説教。しかしその後にこんな言葉も贈る。

考えるなよ。考えずとも身体が勝手に反応するように仕上げてある
サッカー史に名を残す、名キーパーコーチのワシがな。

ふむ。よい言葉ですな。小心者ゆえか考えすぎてしまうのが万代さんの弱点である。
身体に刻まれたことを気合で動かせばなんとかなるって話でありますよ。
しかし、この堂々とした自画自賛っぷりはさすがに関根さんである。
そして続けて黒木監督から全員に向けて激。

いいかお前ら!!序盤に2点は取られたが、習実の得点はその2点で止まっている!!お前たちが止めたんだ!!
終盤からはこっちの形でゲームを作ることが出来るようになってきた。この流れを逃すなよ!!
1点差をはね返し、逆転する!!勝つぞ!!

おおっ!!

テンション上げまくりの市蘭控え室。
一方の習実の方は深刻な空気。
リードしているとはいえ、後半の40分ずっと引きっぱなしなんてありえない。どうするのか。

習実の田沼監督の指示は、まず茂森に出された。
その内容は成田につけというもの。
エリア付近に来た時、身体を寄せてあいつの出足を遅らせるんだ、とのこと。
それだけで市蘭の得点力は落ちるに違いない。

この指示を了承する茂森。この巨体で成田の動きについていけるのだろうか?
巨体だからこそ邪魔できるしプレッシャーもかけれるって話ではありますが・・・やれるのか?

やります。恩返しにもなりますから

前の試合で精神的な弱さを克服させてくれた相手の恩返しってことですか。
それから何があってこんなに顔つきが変わってしまったのやら・・・

さて・・・いかに守り、いかに攻めるかについてだが、後半は――例のあのフォーメーションでいこう

例のフォーメーション。
それは対八津野、対船学戦用に準備してきたフォーメーションである。
練習試合で繰り返し試し、十分実践で使えるレベルになっている。
船学が見ている前で晒すのは残念だ。
しかし、市蘭が番狂わせさえ行っていなければ、本来今日の八津野戦で使っていたフォーメーションだ。

勝つのは――うちだ!!

監督の指示により、元気を取り戻す習実。
明確な指示と指針がちゃんと打ち出されるってのは大きいですよね。
さすがに習実。決戦に向けての切り札はちゃんと用意してあったか。

さてさて、その特別なフォーメーションとは――それは、松田を後ろのポジションに下げること!!

FWポジションから中盤左サイド、ウイングハーフに下がっている松田
これにより中盤の人数が増えてディフェンス力を上げることができる。
それに左サイドのあの位置なら、攻めの起点になる宮部もポジションがかぶらず、高い位置で使えるとのこと。
そして何より、前にスペースがあるあの位置の方がドリブラーとしての松田の力が発揮できるようになるわけだ。おぉ。

いいねえ。こういうのを見たかったんだよ。天才2人のドリブル合戦

天城の認める2人の天才のドリブル合戦であるか。それは盛り上がりそうですな。
後半開始後、松田のプレーに乾が触発されるとある。
これは天城がたいそう喜ぶ展開になりそうであるが、果たしてどっちが優勢となりますのか。
とりあえず先んじたのは松田。まずはこの突破を防ぐのが大事である。がんばれディフェンス陣!!



第274話 天才の領域  (2013年 4+5号)


後半開始早々に左サイドの松田にボールが回った。これはいきなりのピンチだ。
天才ドリブラーが本領を発揮しだすか!?

水内(あんなところから1人でゴールに持ち込むのか?)
広能(松田ならやってくるかもしれない)
脇坂(注意しろ!!松田ばかり見てると他の誰かをフリーにしてしまう)

DF陣に油断はない。やるべきこともちゃんと理解している。頼もしい。
だが、そのDF陣が警戒しないといけない相手というのが松田なのである。
まずは中盤の百瀬と二宮さんを抜く松田。
この見事な突破は乾をも驚かせる。

新フォーメーションに戸惑ってる間に3点目を取れば市蘭を慌てさせることができる。
そうなれば流れを引き戻し、さらなる追加点も狙えるはずだと考える習実。
もちろん市蘭はそうはさせじと守らないといけない。
百瀬と二宮さんが後ろから追いすがり、広能と脇坂さんで前方左右から挟み込もうとする。
狙いはいつも通り、ゴール前には切り込ませず、外に追い出すというもの。

せっかく前半の終わり頃からこっちのペースになってきたんだ。ここでの失点は許されねえ。

集中する脇坂さんたちDF陣。
松田はその相手に対し、強引に中に入り込もうとする。が、この蹴り出しは大きい!
松田が体を入れる前に脇坂さんがクリアすることができる。
と思いきや、松田が体を倒れこませるようにして蹴りだしたボールに触れる。
これにより軌道が変わり、脇坂さんがクリアすることはできなくなった。
そして、そんな倒れこみそうな無理な体勢をしておきながら、起き上がりそのままボールを追う松田。

どっ・・・どういうバランス感覚してんだよ!?倒れるだろフツー

本当、これには驚愕せざるを得ない。
しかし、すぐにフォローに入る水内さん。ゴールを狙うにしても角度はない。
ならば折り返しのクロスを入れてくるのは間違いない。なんとかカットしたいところ。
だが、防げなかった。見事なグラウンダーのクロスが放り込まれる。そこに走りこむ宮部と富樫。
万代さんが飛び出してこのボールを防ごうとする。止めれなければ、確実に1点という状況だ!!

吠えて飛ぶ万代さん。ギリギリのところで届き、ボールの確保に成功しました。お、抑えたあぁ!!
うーむ、この松田の一連の攻撃。
見ている方はかなりドキドキさせられてしまった。間宮先生みたいな緊張した面持ちになっちゃいましたよ!!
40メートル以上を1人で持っていく松田。市蘭の5人がかりでも止めたとはいえない。
こんな攻めがこれからずっと続くのか!?

それがしが100年練習しても――辿り着けない領域でござる

あの古川をしてそこまで言わしめる松田。まさしく天城の言う通り天才だということなのでしょうな。
だが、天城の言う天才ならば市蘭にもいる。
松田のドリブルが見事に乾に火をつけてくれた様子。

さあ・・・今度はおめえの番だ

よほどうれしいのか緩みきった顔を見せる天城。
しかめっ面から元の顔に戻ったと思ったら、今度はゆるゆるになってるでござる。

あんなプレーを見せられたらオレもって気になるよな。
だがオレたちはあの松田を相手に毎日練習をしているんだ。

そのように考える石持。しかし火のついた乾はそう簡単に止まるとは思えない。
果たしてどのような突破を見せてくれるのか。次回が楽しみである。

松田の強さはやはり時間をかけて作り上げた肉体の強さですよね。
小さいのに当たり負けないパワー。そして何よりもバランス感覚。
それらを駆使する松田に対し、乾はテクニックが優れているといった印象。
その絶妙な個人技が久々に見られるかもしれない。そう考えると天城ならずとも楽しみになりますわなぁ。
ゆるゆるな顔になるかはともかくとして。



第275話 乾のこだわり  (2013年 6号)


松田のプレーに触発された乾。
己もドリブルでの突破を図るべく、習実の守りの要である石持に突撃する。
習実の守りは石持が乾の動きを封じることが前提となっている
実際、前回の試合では体力が尽きるまではほぼ完全に守り切っていた石持である。
だが、その石持をあっさりと抜き去る乾であった。抜いたー!!

石持がかわされたのを見て焦る習実。焦って突っ込み、2人目がかわされる。
続いては、下がりながら守る2人。この2人も一気に抜くことができるか!?

外には尾上が上がっている。
尾上に・・・出すか?いや!松田の突破を見せられた後だ。乾は1人で持って上がることにこだわっているはず!
そのように予想する習実の面々。確かに乾には拘っている部分があった。
松田は最終的にシュートまで持ち込むことはできなかった。同点に追いつくためにはそこに持ち込みたい。
そのためには、自分1人で持ちこむことには拘らない!

予想に反し、尾上にパスを出す乾。
予想外の動きだった故に、止められることはなく、あっさりとこのパスは通ることとなる。

ヘタレがぁ!!1人で持っていかんかい1人で!!

天城としては気に入らない行動だったみたいですね。まあ、そう言いなさんな。

乾氏は――シュートにこだわってるでござるよ

古川の言う通り。最後にシュートに持ち込むことにこそ拘っている。
だから、尾上から折り返しのパスを受けて、再度自身で持ち込むこととなる。
尾上とのワン・ツーによる突破。この協力プレーにマイちゃんも嬉しそうな表情。
さらにここで成田からも協力プレー。
茂森の後ろを取るような動きをすることで茂森が成田につられて外に開く!!

そのまま奥まで持って入れキヨハル!!

成田のこの発言からして、乾を突破させるために意図して茂森をどかしたのが見て取れる。ううむ、成長したなぁ・・・

最後のDFをかわす乾。だが、最初にかわしたはずの石持がここで追いついてきた。
このまま並んで体を寄せればシュートコースを限定させることができると考えている様子。
だが、その前に乾はシュートを放った。ペナルティエリアに入ってすぐの辺りで!!

ゴールの左方向に向かって放たれたシュート。これは、枠の・・・中か・・・?

外だっ!!外した!!

習実のキーパー霧谷はこの軌道なら入らないと確信する。
それは離れたところから見ていた市蘭のメンバーにもわかる。焦ったのか乾!?
いや、シュートすることに、得点することに拘っていた乾が中途半端なことをするはずもない。

インフロントキック――足先内側をボールの下に差し込んで蹴り出すキック
ボールの中心やや外側に差し込んだ乾のインフロントキックは巻き込む方向に回転がかかり強烈な弧を描く。

キーパーがただ見送る中、乾のシュートはゴールに吸い込まれる。
天才・乾。圧巻の同点ゴール!!これにはさすがの松田も驚愕の表情を見せておりますわ。

乾の凄さはさすがですが、今回は尾上や成田の協力プレーが輝いて見えた。
最初の練習試合の頃はいてもいなくても変わらず、むしろ得点した乾を殴りつけていたものだったというのに・・・
この成長が見れたというのが何よりも嬉しい。病室ではマイちゃんがまた狂喜乱舞しておることでしょう。

いいタイミングで同点に追いつけた市蘭。しかし松田がこのままに終わるとは思えない。
ここから激しい点取り合戦になるのかどうか。試合はまだここからだ!!



第276話 本物の叫び  (2013年 7号)


乾のスーパーゴールに敵味方を含めて一同驚愕。
黒木監督だけ笑顔なのがよいですね。あ、間宮先生と校長も笑顔だった。

松田や乾のプレーの凄さは、サッカーにさほど興味を持っていなかった生徒をも魅せるものがある。
思わず立ち上がり、体が震えているのを自覚する生徒。
たて続けに超高校級のプレーを目の当たりにしたのだから、やむを得ない反応ですわな。

そして乾のガッツポーズ。
市蘭の生徒たちはそれに合わせて大盛り上がり。そりゃあね、ここで盛り上がらないでどうするって話だ。
病院内の面々もキターと大喜び!マイちゃんも予想通りキャーキャーと騒いでいます。す、すごい元気そうだ!!

この状態を見て、天城は自身の考えを確固たるものとする。

市蘭の生徒はサッカーを見慣れてねえ。それが・・・見ろよ。あのハシャギようを。
そのプレーで見る者の目を釘付けにし、興奮させる。
やっぱりおめーら2人は――天才なんだよ

確かにね。天城の見立ては確かだったということですわな。

さて、乾のゴールで同点に追いついた市蘭。観客も含めてテンションは最高潮。
逆に追いつかれた習実の動揺はかなり大きい。欲しかった追加点を逆に取られてしまった。このままでは気持ち的に押し込まれる。

よーし!!あと3点・・・いや、5点取るぞ!!

ノリノリになりすぎているのか、無茶なことを言い出す成田。

船学を倒すんだろーが!!習実相手にその程度のことができなくてどうすんだよ!?

ふむ。それを言われるとその通りな気がしないでもないですな。
石持や茂森のようなDFはいるものの、習実の防御はそこまで凄いわけではない。
そういう意味では、5点はさておき3点は確かに欲しいような気もしますなぁ。
とはいえ、面と向かってそれを言われる習実としては面白くない。調子にのりやがってと感じるのは当然である。
しかし、松田は笑顔でこう述べだす。同じだな、と。

選手権に出場する約4000校のうち、500校か・・・もしかしたら1000校くらいが"打倒船学"を叫んでるんじゃないかな。
――口先だけで
自分を鼓舞するためじゃなく、本気で"打倒船学"を叫んでいるのは、おそらく10校あるかないか。それほど・・・船学は強い。
あいつらの・・・市蘭の叫びは本物だよ。うちと同じじゃないか。

なるほど。確かに同じと言えば同じですな。だから松田は叫ぶ。打倒船学を目指して。

市蘭の向こうに船学はいる!まず、あいつらを越えるぞ!!

古豪としての驕りなどはもはやあるまい。
この戦いに勝利し、叫び続けた打倒船学を確かなものとする。
その精神を新たにすることで、追い詰められそうだった状況から立ち直ることに成功する習実イレブン。
うーん、松田はさすがに厄介な存在でありますなぁ。

ゲームは振りだしに戻った。点数的にも気持ち的にも。
ここからどちらが先制し、どちらが有利な展開に持ち込むのか。注目の流れであります。



ANGEL VOICE 32巻


第277話 師匠と弟子  (2013年 8号)


後半開始早々に同点に追いつきいいムードの市蘭。
しかし、一度松田がボールを持てばやはり緊張が走る。厄介なお人だ。 だが、市蘭の守りは堅い。
後半が始まってまだ5分であるが、もう市蘭は習実の新フォーメーションへの対応ができている様子。
さすがに監督がDF出身なだけに守りは堅実だな。

とくに脇坂。あいつの状況判断とラインコントロールはすでに高校じゃトップレベルと言っていい

な・・・なんと!!
天城からそこまで評されるとは・・・成長したもんだなあ、脇坂さん。なんだか感慨深いものがある。
まあ、そのぐらいじゃないと高校最強の船学とは戦えませんわな。
しかし、去年サッカーを始めたばかりの男とは思えない。これは脇坂さんに限った話ではないが。
元々身体能力は高かったとはいえねぇ。才能と環境が合致した結果というわけか。

市蘭は勢いがあるだけではなく攻守のバランスがとれたいいチームである。そう古川は褒める。
嬉しそうな顔をする天城。うーむ、すっかり身内面であるな。いや、練習にも参加してるし、してもいいんだけどさ。

だから・・・つい期待してしまうんだよ。ジャイアントキリングを

この天城の言葉を聞き、古川とユゥエルの2人は――笑った

むう、なんとも怖い笑いだ!!
この笑いの意味はどういったものなのだろうか。
挑戦者に対する不敵な笑みなのか。肉食動物が獲物を前にした獰猛な感情を表した笑みなのか。ともかく、怖い。

さて、市蘭の攻撃。
間をおかずに3点目――逆転ができたら、流れは完全にこっちのものとなる。なんとかそうしたいところである。
本日の得点の2点のうち、1点目のアシスト、そして2点目を自ら決めたのは乾。今日は乾に当たりがある!!

乾に集めろ!!

監督の指示の通り、百瀬のパスが乾に通る。そして再び石持を抜き去る乾。
うーん、本当に今日の乾はキレキレですな。
そして乾から成田へのパス。成田は乾が抜き去ったときに動き始めている。出し手と受け手。互いにパスコースは見えていた。

見事な動きの成田。これも少し前までは想像できなかった動きですなぁ。本当、成長が著しい。
しかし今回はこの攻撃は実らない。監督の指示を事前に受けていた茂森が必死に体を当てて成田の出足を遅らせる。
簡単には倒れない、止まらない成田ではあるが、さすがに茂森の巨体に当たられてはスピードも鈍りますわな。

ぶつかってきたな?
随分――変わったじゃねえか。前やった時はちょっと接触するだけでビビってたのによ。

あなたは、オレの師匠です

し、師匠?いきなり何を言い出すのだ茂森。
ああ・・・心の師匠とかそういう話ですか。まあ確かに接触を怖がっていた茂森に喝を入れたのは成田だけどもさ。
敵なのにアドバイスしてくれたこと、それに感動している様子。まあ確かに普通はしませんよね。

厳しい練習に耐えることができたのは、あの励ましのおかげです。
だから・・・あなたからゴールを守り抜くことが、恩返しになると思っています。

ふむ。面白いことをいう奴であるな。そういう師弟の関係も楽しそうではあるか。
しかしそんな茂森に対し成田。師匠は選んだ方がいいという。

師匠が偉大すぎると、弟子は一生師匠を超えられねえんだよ

いっ・・・偉大すぎる師匠?

キョロキョロと辺りを見回す茂森。さすがにそこまでの人とまでは認識はしていないか。そりゃそうだ。

超えます!!・・・あんまり偉大じゃなさそうだし。

ですよねー。うん、やはり師匠は選んだ方がよかったんじゃないかと思える。別の意味で。
まあ、きっかけをくれた人には違いないですしなぁ・・・
それなら恩人でいいじゃないという気はするが。何で師匠とかいう認識になっちゃったんだろう。
茂森が激しい顔つきになったのは、成田の教えでラフプレーにも耐えようと意識改革をしたからなのかね?
おかげで存在感も出るようになった様子だが・・・逆に存在感のないDFというのも強力だったかもしれないなぁ。痛し痒し。



第278話 市蘭の力  (2013年 9号)


再び市蘭の攻勢。
乾と成田の意思疎通は大分高いレベルで行われるようになっている。
パスコースを見切り、受け取れる場所へと走る成田。
しかし、今回もまた茂森に体を当てられ出足を潰される。
ちゃんと肩で行っているし、ファールにはならなさそうな当たり方だ。上手いな。
これは成田の動きを相当観察している様子ですな。

言ったはずです。あなたからゴールを守り抜くことが恩返しになると思っていると。

油断は全く見込めそうもありませんな。
茂森は成田の動き出しを見て走り込むコースを予測し、体を入れてきている
そうでなければさすがにあの巨体で成田の動きにはついてこれないでしょうからねぇ。

大したもんだよ。見事だよ。あっぱれだよ。あ〜〜〜ハラ立つ!!

認めながらもイライラしまくりの成田。困った師匠だ。
だがここで意地を見せねばやはり師匠ではない。いや勝手にそう認定されているだけではあるが。

考えろ。どうやってあいつを振り切る?

決定的なチャンスを得るために考えを巡らす成田。
一方、試合の方は膠着状態。
双方守りが安定してきて簡単には得点まで繋がりそうにはなさそうな雰囲気。
万代さん、キーパーになって目立ってるなぁ。TV映りもよさそうで人気もでそうだ。

ヤだぜ・・・終了間際まで同点のままいってヒヤヒヤするのは。

そんなことを述べるルカさん。
それに対し、マイちゃんのお母さんは大丈夫よと笑い、こう述べる。

そこのお三方だって――負けるかもしれない試合だったらわざわざここに来て一緒に応援したりしないでしょ?
ここに来たのは、市蘭が勝つ自信があるからなの

さすがに鋭いですなお母さん。
負けた時のガッカリする顔を見に来ました!なんてゲスな奴はいませんしね。
3崎は思っている。市蘭はまだまだ力を出し切ってはいない、と。

ワクワクするマイちゃんの視線を受けながら頑張る市蘭。
山守から尾上に。左サイドを駆け上がる尾上。しかしそちらはDFが固めている。ならば・・・逆サイドだ!!
って尾上!の一声で逆サイドを狙えと意思疎通しているのが地味に凄いな。これがチームワークか。

市蘭のサイドチェンジは――速えぞ!!

早い時期から練習していた、マイちゃんも大好きなサイドチェンジ。
ここに来て見事な冴えを見せております。
尾上―百瀬―乾―二宮と繋がるライン。
あっという間に習実を置き去りにし、無人の右サイドを駆け上がる二宮さん。
ここからクロスをあげてゴールを狙うこととなる。
さて、今回はニアサイドかファーサイドか。

茂森は成田を見る。
成田はファーサイドに向かって走り出していた。
それを確認し、茂森はボールを持った二宮を目で追いつつ自らもファーサイドに向かって走る。が――

えっ?・・・

ファーサイドに向かって走り込んでいたはず。だからそちらに向けて体を寄せようとしていた。
しかし、成田はいつの間にかニアサイドに走り寄っている。その背中が見える!!

ファーサイドに走ったのは・・・フェイント?

なるほど。走り出しを見てコースを予測されているならフェイントを最初に入れれば惑わせれるわけだ。
なんだかんだで成田はフェイントを色々練習してきてますからねぇ。
この場面でフリーになることができたのはかなり大きい。果たして決めることができるか!飛び込め成田!!



第279話 力の結集!!  (2013年 10号)


茂森をフェイントで振り切った成田。
二宮さんのクロスに合わせて飛び込み、見事なダイビングヘッドを見せる。
狙い過たず、ゴールへと吸い込まれるボール。
市蘭は見事に3点目を取得。逆転に成功するのであった。

左サイドの尾上から百瀬、乾へとつなぐサイドチェンジ。
最後は右サイドを縦に入った二宮さんがゴールニアサイドに折り返して成田が飛び込む市蘭の黄金パターン
うーむ、見事に決まりましたなぁ。本当に攻撃陣が全員で決めたゴールという感じがする。
MFの山守が含まれてないが、山守は守備寄りのMFという印象ですからねぇ。

パスをみんなで繋いでゴールする。みんなの力を結集したプレー。
マイちゃんがサイドチェンジが一番好きなプレーと語る理由である。
これが一番好きというのは珍しいが、理由を聞けば納得という話ですわな。

すごいね・・・みんな
競技場で見たかったな・・・

涙するマイちゃん。ぬぬぬ。
このところ元気になっていたからもう病気のことはなかったことにならないかなぁとか思ったのだが・・・そうはいかないか!!
いや、逆に元気になるフラグなのかもしれない。
呂律事態は回らず歌は歌えないが、動き回ることはできるようになるとか・・・あって欲しいなぁ・・・

未来のことはさておき、とりあえずこの試合。
後半14分、市蘭は初めてこの試合でリードに成功する。
茂森は成田のフェイントについていけず、得点を許したことで気持ちが沈んでいる様子。まったく・・・ついていけなかった。
その結果、表情が昔の弱気なものへと戻る茂森。あらら。なんだそのヘナチョコ顔は

ヘナチョコって言わないでくださいよ。もともとボクはこんな顔なんですよぉ。
DFだから気弱な姿を見せちゃいけないと思って・・・あんな顔を作ってたんです

何か劇的な出来事があって顔つきが変わったのかと思ったら・・・厳めしい顔を作ってただけかよ!!
まあ、何事も形から入るのは悪くないですからなぁ。気合の入りがそれで変わることもある。悪くない話ではあるか。
ヘナチョコ顔では強く当たることもできないでしょうしね。

面倒くさいが、どうにも憎めないところがある茂森。
成田はもう一度あの顔になってみろと諭す。

悔しい時ほどそんな顔をするもんだろーが
目の前で点取られて気弱な顔に戻るんだったら・・・オレのこと師匠とか呼んでんじゃねーよ。

おっと。いいこと言いますね成田。さすがは師匠!!
こういうことを言ってくれるのは非常に有難い話でありますわなぁ。試合中に気持ちを折っちゃいけないって話だ。

師弟関係がいい感じになったのはさておいて。
この試合で初めてリードした。ここから習実は今まで以上に前がかりになってくることが予想される。
ではどうするか?守り重視に切り替えるのか?
いや、守りに入るのはまだ早い。今まで通り――もう1点取りに行く。その意識で向かうべきである。
黒木監督の指示を受け、市蘭イレブンは意識の統一を行うのであった。
一方の逆転を許した習実は――

もっとオレにパスを回してくれ
絶対に決めるから。

そのように言い出す松田。珍しいですな。
だがその言葉は――信用に足るものだった。

逆転されて気落ちしそうな習実であるが、やはり松田がいる限りは簡単には折れそうもない。
取られたのならば松田がきっと取り返してくれる。そういう信頼が強く感じられる。
実際、松田ならば決めて来る可能性が高いですからねぇ・・・さてさて、防ぎきることができますやら。



第280話 期待と裏切り  (2013年 11号)


後半に入り、市蘭に逆転を許した習実。
「打倒船学が目標だろ!」「市蘭なんかに躓いてんじゃねーよ!

そんな声が観客席から飛ぶ。うーむ、まだ市蘭なんかと侮る人たちがいるか。
まあ、さすがに船学と比べてしまうとどうしてもってことはあるかもしれませんがね。

松田はゴールを狙うために積極的に切り込み、自分でシュートまで持っていく。
百瀬を抜いた後、3人に囲まれきる前に放ったシュート。
万代さんが反応できないほどに鋭く、コースをついたシュートだったが、これは枠を外れる。危ない危ない。

天城に言わせると、どうせなら正面に回っていた水内さんも交わして打てばよかったのに、とのこと。
松田はああいうところでおとなしさが出てしまうんだよな。
といった感じの評価を天城は行っているが、古川の見解はまた違う。

いやあ、あれでなかなか・・・負けん気が強くてガンコでござるよ――松田氏は。
松田氏の場合、サッカーを始めた時の指導者――監督さんが最高の人物だったでござる。
その監督に言われ、自分で決めたことを、松田氏はいまだに頑なに守り続けているでござるよ

ほう。ミョーに情報通ですな。松田と昔一緒にやっていた時期とかあったりするんですかね?

その監督に何を言われたのか。話は松田が小四の頃にさかのぼる。
ドリブルに磨きをかけ試合には出れるようになっても、周りの大きな子に身体をぶつけられるとなかなか思い通りにプレーできない。
それを見かねた監督さんは松田少年にこう言ったそうな。

いいか、松田。相手に身体をぶつけられたらバランスを崩したフリをして倒れろ。
お前は身体が小さい。審判が同情してファウルを取ってくれやすいからな

というようなことを、笑顔と共に言い出す監督。な、なんだそれは・・・最高どころか最低最悪じゃねーか!!

それは、言われた本人の受け取り方次第でござろう。
松田氏はその時、何があっても絶対に倒れてやるもんか――と、心に決めたらしいでござる
習実に入って筋トレを始めたのも、バランスを保つ筋肉をつけるため。倒れないために。

なるほどねぇ。これぞまさに反面教師ということか。
幼少期に自分で決めて守り続けれる。これが松田の強さの秘訣なのかもしれませんな。
天才と呼ばれるほどの実力を持つ松田だが、生まれ持った身体の小ささをカバーするための筋肉が身についたのは最近のことである。
天才キャラとしては珍しい部類でありますなぁ。努力が実を結ぶ天才か・・・なんだか主人公っぽいなぁ。

点を取り返すために奮起する松田。
しかし習実は松田だけのチームというわけではない。
乾の専属マーカーとして任されている石持。彼は忸怩たる思いを抱いていた。

誰かの専属マーカーになるということは、その試合攻めの組み立てにも守りの組み立てにもほとんど参加することはない。
そのかわりマークした相手にも仕事をさせず、11人対11人の試合を実質10対10にするのがオレの役目なのに・・・
この試合、ほとんど乾を止めることができてねえ!!

今日の乾は好調ですからねぇ。とはいえ、それで済まされるものではない。
なんせ習実の市蘭封じは乾を石持が抑えることが基点となっているのだから。そこが崩されると厳しい。
逆に市蘭としては乾が抑えられるのはかなり厳しい話なのであるが・・・

監督もみんなも・・・オレがお前を止めると期待してくれている。
その期待を・・・これ以上、裏切るわけにはいかねえんだ!!

必死の頑張りが通じたのか、乾からボールを奪うことに成功する石持。おぉ・・・
そして素早くパスを松田へと繋げる。おぉう・・・

前に4人いた。
競技場にいる者――テレビの前にいる者――観戦するすべての者が、芸術の目撃者となる

そのようなアオリを受けて天才・松田が駆け出す。
成長した市蘭のDF陣をぶち破ってゴールを決めてしまうというのだろうか?
確かに松田ならば・・・松田ならばやってきそうで非常に怖い!
だが楽しみでもあったりするから困る。相手チームの選手なのに活躍を楽しみにしてしまう松田というキャラは何ともすごい。
やはり主人公体質ということなのだろうか・・・厄介なお人だ!!



第281話 芸術  (2013年 12号)


ゴールまでは4人。いや、キーパーを含めれば5人というところか。
ここで松田がその天才性を見せつけてくれることとなる。

脇坂さんは慌てずに4人で囲みを作って防ごうと考える。
が、二宮さんは松田に距離を詰められすぎている。これでは裏に出されたときに対応できない!!

松田が相手を抜きにいく時のドリブルは乾や天城、古川のそれとは違う。
フェイントを多用せず動きの緩急のみで相手を揺さぶり、ボールを小刻みに動かすことなく一度の切り返しで相手の裏に出す。
体格が小柄であるがゆえの利点――瞬間的なダッシュと方向転換の速さを活かすためである。
――結果的にボールへのタッチ数は極端に少ない

まず1タッチ目
裏に出すと同時に加速。二宮を振りきる。
2タッチ目
横に並びかかる百瀬の前にボールを通し、自身は背中側から回り込む。
だが、この蹴り出しは大きい。広能の前に転がり出たボール。クリアできると走り込む広能。
しかし松田。足を伸ばしてこのボールを抑える。これが3タッチ目
足先を前に入れてボールの勢いを落とし、広能をやり過ごす。
だがさすがにバランスは崩れる松田。でもそれで倒れるような男ではない。それは脇坂さんもわかっている。
それはわかっているが――それでもボールを奪うタイミングは今しかないと思った。
4タッチ目
その脇坂さんの逆を突く。

体勢を完全に立て直していない。ほとんど傾いた状態でボールを蹴って進む。
この体幹、バランス感覚こそが松田の武器である。
ほんの4タッチ。4回しかボールに触れていないのに市蘭の4人を抜き去ってしまう松田。
昔ならいざ知らず、今の市蘭DF陣をこうも見事に抜き去るとは・・・さすがの天城も思わず立ち上がる。
観客や、他の市蘭の面々も一様に驚きの様子を見せている。
そんな中、古川は述懐する。

天城氏はピンときてないようでござるし、松田氏自身どれほど深く考えていることやら・・・
何があっても倒れない・・・倒されないドリブルを身に付けようとすることは、日本の枠を超え世界に飛び出す準備をするということ。
松田氏は小学生の――サッカーを始めてまだ間もない頃からその準備を続けてきたということ

見事でござる。

古川の頷きを受けて、というわけではないが、そのタイミングで松田のシュート。
5タッチ目はシュートであった。
もちろんこれが枠を外すようなことはなく、見事に市蘭のゴールへと吸い込まれる。

見事な芸術を見せつけた松田は一度振り返り、そして天を仰ぎ吠える
さすがの松田としてもこのプレーはいつでもできる当たり前の行為ってわけじゃなさそうですな。そうでないと困る。

しかし、ほんの4タッチで抜き去り、そのままシュートとか・・・どれだけのスピード感に溢れた攻撃であることか。
乾や天城のように小刻みなフェイントを使うわけではないってのも差別化が図られていていい感じである。
こういうプレーができる選手ってのは単純に憧れてしまいますわなぁ・・・

てな具合に、敵側の選手なのに感嘆してしまうことになるのが松田の怖さである。うーむ、本当に厄介な人だよ。



第282話 手応え  (2013年 13号)


松田の芸術的なゴールに唖然呆然の観客。
一拍の間を置いて――大歓声が沸き起こった

ゴールを決めた松田は笑顔を浮かべて石持に抱き付く。おっとそっちが抱き付くのか!!
まあ、ゴールを決めるきっかけを作ったのがこの石持の活躍ですしね。
石持からは抱き付いてこないでしょうし、こっちから行くしかないって話か。納得。

後半20分、試合は3−3の同点。ふりだしに戻る。
松田はこれで3点目。ハットトリックを達成している。ううむさすがというべきかなんというか。
特に今回のゴールシーンは衝撃的である。4回触って4人抜かれ、そして5回目がシュート。でゴールってか。ハハハ・・・

レベルが違いすぎてつい笑っちまった

その己の行動に悔しがる二宮さん。
しかしそれも無理のないこと。未だに他の市蘭の面々も驚きから帰ってこれないでいるのだから。
それはあの成田ですら同様である。悔しがるのさえ忘れて驚きを表情に出している。
だが、それら呆然とする市蘭の中にあってただ一人いい顔をしている男がいた。それを見て嬉しそうな笑みを浮かべる黒木監督。

そう・・・それがDFの顔だ

その男とは脇坂さん。一人、燃えるような表情をしている。おぉ・・・カッコイイ・・・!!
考えているのだ。次、同じ状況になった時――どうすべきかを

あの人を見習わなきゃ

脇坂さんの姿勢を見習って表情を引き締める茂森。
お。DFとしての師匠を見出した感じでありますかね?

さて、同点に追いつかれた市蘭。いつまでも呆然とはしていられない。
乾としては自分がボールをカットされたのが点を奪われた原因のひとつであるという自覚もなくはないはず。
リベンジとばかりに仕掛けていくこととなるでしょう。
しかし、ここで習実のプレスが早くなってくる。動きがよくなっているのだ。

松田氏に集めればまだまだ点は取れる――そういう確信が勝利への手応えにつながったのでござろう。

古川の言う通りですな。
だからこそ、市蘭としてはこれ以上の失点をする前に得点を稼いでおきたいわけである。
ボールは乾に渡り、再び石持と対峙することになる。

松田にあんなプレーを見せられたからっておとなしくなるんじゃねーぞ。いけええええええ!!

天城の叱咤を受けたからってわけでもないだろうが、見事に石持を抜き去る乾。
いや・・・お前はお前で・・・マジにすげえよ。
こりゃ天城も脱帽ですわな。ハハハ。

コイツも1人で来るのか?と警戒する習実。
しかし既に成田が前に走り込んでいる。だから即座に速いパス。アーリークロスを前方へと送る乾。
ディフェンスの裏、キーパーの前という絶妙な位置に出るボール。うめえ!!
しかしそれも茂森の高さが防いでしまう。うーむ、さすがにやる気になった茂森は違うなぁ。

松田も凄いが乾も凄い。次の1点をどっちが取るか。勝負の行方を決める1点となりそうだ。
そんな中、市蘭はコーナーキックの権利を得る。
このコーナーで決定的なチャンスを得ることができるだろうか?
逆にカウンターをもらって失点という可能性も高いので油断はならない。はてさてどうなるか・・・

どうでもいいが、今回の校長と間宮先生、表情シンクロしすぎ。



第283話 黒木監督  (2013年 14号)


市立蘭山のコーナーキック。
成田が頭に合わせる黄金パターンで得点を狙うがこれは茂森にクリアされる。
この後、市蘭は続けて2本のコーナーキックを得るが、いずれも習実の守備陣ゴールを阻まれる。

そして攻撃は習実側に。
どんな状況で松田にボールが渡っても慌てるなよと声をかける脇坂さん。

じっくり構えても止めるのが難しい相手。慌てたら何もさせてもらえねぇ。集中切らすんじゃねーぞ!!

その指示に従い、今回は見事に松田を4人で囲みゴールキックの状態に追い込む。
さすがの松田も毎回の攻撃で芸術的な突破ができるってわけではないですわな。
脇坂さんたちの守りが安定しているということでありましょうけども。

ますます次のゴールが重い1点になりそうでござるな。ドキドキするでござるよ

何だか普通の観戦者みたいなことを言いだす古川。
普通ならばビデオも回しているし、最後まで観ずに適当なところで切り上げるはずである。
実際船学としてはそういう予定でいたのだが、監督自身が引き上げる気が無い様子。
それは、より深く偵察するためには最後まで直接見ておいた方がいいということですか?

えっ?・・・偵察?そ・・・そうです。偵察です偵察

何のために見ているのかも忘れてたんですかアンタは。
まあ確かに面白い試合だし、普通に試合を楽しんでみてしまうのも無理はないか。
そんな土岐監督に質問。強いていえば、習実と市蘭。決勝で当たる相手として嫌なのはどちらか?

市蘭

迷うことなく即答してみせる土岐監督。その理由は、黒木監督が率いるチームだからというもの。ほう。

あの人は、チーム作りの方針にまったくブレがないんですよ。
ほとんどが素人の集まりだった市蘭というチームを短期間で成長させるには・・・どういうサッカーをやらせればいいかわかりますか?
さっきの、乾が入れたアーリークロスに成田が走り込むプレー・・・あれですよ。

俗に言う「放り込み」という奴ですね。
だが市蘭においてはただの放り込みではない。
高い精度でロングボールを入れられる乾と、スピードとヘッドの強さを合わせ持つ成田の組み合わせは対戦相手には脅威である。
試合開始から終了までひたすらそれをやらせ、残った者で守りを固めれば・・・
運が良ければ強豪をも倒せるチームがあっという間に完成する。

でも黒木監督はそれをしませんでした。
おそらく部員たちに楽しいサッカーをさせたかったのでしょう。今の市蘭のような・・・全員でパスを繋ぐサッカーを。

楽しいサッカーを提唱する指導者はたくさんいる。
しかし、どうしても勝たなきゃいけない状況に追い込まれたらあっさり方針を変えてしまうものである。
それだというのに、廃部のかかった試合であってもその方針を変えなかった黒木監督。
結果的にその試合が見ている者たちの胸を打ち、部の存続に繋がることとなったのであった。

恐ろしいほどにブレないんですよ・・・私には真似ができません。
監督がブレないから部員たちは迷うことなく練習に打ち込めるし、楽しいから自ら進んで努力もする。
市蘭というチームはまだまだ成長を続けますよ
決勝までの・・・一週間の間にも。

さすがに名監督は名監督を知るということだろうか。
チームだけではなく監督を評価する。こういった視点の人は珍しい。良い着眼点だ。
黒木監督もまた今の船学を鍛え上げた土岐監督を評価しておりましたなぁ。

黒木監督。指導者としてのあなたを尊敬すると同時に、これから先も――あなたが率いているというだけで、私はそのチームを恐れます。

久しぶりに監督が評価された回。
しかし、試合の方は膠着したまま残り10分を切ろうとしている。
この状態となると、古川の言う通り次の1点が非常に重要となる。
勝負を決める1点。獲得するのはどちらとなるか・・・注目である。



第284話 誰か  (2013年 15号)


後半残り10分を切る。
勝負は次の1点を入れた方に決まりそうな雰囲気。
そんな中、右サイドを二宮さんがボールを持って駆け上がる。
中の成田へ折り返す黄金パターンだ!!

と思いきや、ニアサイドの成田に出すスペースは消されており出すことができない。
仕方なくファーサイドの尾上に出すがこれはクリアされてしまう。

どうやら習実はやり方を変えてきた様子。
高い位置に残っているのは松田と富樫の2人のみ。あとは全員引いて守りを固めている
ここから先の失点は致命的であるのはわかっているから、とにかく守りを強化しているわけですな。
実際の所、松田さえいれば得点のチャンスとなるってのが怖い所なわけでして・・・
こういう戦い方をされると市蘭としては辛い。

攻めの人数が足りない。今攻めあがっているのは4人。
3点目を取って15分以上チャンスらしいチャンスを作れていない。
もう1人誰かが上がって攻撃の枚数を増やさないと、こっちの攻めに慣れてきた習実の守りは崩せねぇ

それは市蘭の誰もが考えていることであった。
二宮さん、乾、尾上、成田。この4枚だけではもはや突破は難しい状況。
このままだとズルズルと後半終了ということになりかねない。すると延長だが・・・

延長で得点が動くとは限らねぇんだ・・・PKになったら、キーパーが万代じゃ勝ち目はねぇぞ

と指摘する天城。まあ、その通りですわな。
体力のある市蘭にとって延長は自分たちの時間にしやすい。
が、習実は前回の反省を受けて体力づくりをしてきている。
また、引いて守る分体力の消耗を抑えることはできているはずである。
ようするに延長もずっと今と同じ膠着状態に持ち込んであわよくばPKにという手段も習実は取れるってわけだ。

攻めの人数を増やしてもっとガムシャラに点を取りに行きたい。
または乾の個人技でなんとかならないものか。
観客の1人が抜きにいけ!!とハッパをかけて天城にいいことを言ったと褒められる。個人技も必要!!
って天城。熱くなりすぎでしょ。気持ち入りまくり。

強引に仕掛けて抜いたとしてもパスの出しどころがないでござるよ。

二宮さんには1枚、尾上と成田には2枚のマークが常についている。
なるほど、これは厳しいですな。
乾が石持を抜いても成田か尾上のマークのどちらかがフォローに来るだけでフリーにはしないでしょうし。
いよいよとなれば乾がキーパー含めて抜き去ってくれればとも思うが・・・
それを期待するのも市蘭というチームとしてはどうかと思うな。

誰か・・・もう1人いかないと。

そうは考えるが、誰が上がるかという話になる。
上に上がる者には相当なプレッシャーがかかる。
自分が上がったせいで守りが薄くなり反撃を防ぎきれなかったら、周りに何も言われなくても責任を背負うことになる
負けられない試合であればあるほど萎縮してしまうものであるからして。

それでも・・・誰かがいかなきゃならねえんだ。

とりあえず今回の攻めは乾が強引に切り込もうとするが習実の守りに阻まれる。
そして習実の反撃。ボールは松田に渡る。
3人で囲むが交わされてシュートにまで持ち込まれるピンチ。
しかしどうにか丹羽さんがコースに入っていたので事なきを得る。ふう・・・危ない・・・
守りが1人薄ければ今のは決まっていた可能性が高いといえよう。

それでも・・・それでもっ!!誰かがいかなきゃならねぇんだ!!

気持ちのこもる天城。だからそれに気づくことができた。
ボールを持った乾も視野の端にそれを捉える。
それは――ボールを追う観客の目には映らず、テレビにも映っていない。

やっぱりおめえか

そう、誰かがいかなければいけない。そんな時にやってくれるのはやはりこの男・・・百瀬である

うーむ、こういう所で予想に反さないところが素敵ですなぁ。
天城のやっぱりおめえかという言葉に凄く頷ける。
責任を背負う覚悟を持ち、意を決して前に出ることの男。それが百瀬である。さすがですなぁ。

テレビには映っていないが、マイちゃんもこの膠着状態を救うために動くのは百瀬と確信してくれているのではなかろうか。
次回はその辺りの話も触れてくれそうで期待が持てる。さてさて、このプレーで勝負を決める1点が入るか・・・!?



第285話 触れば!!  (2013年 16号)


松田がボールを持てば盛り上がるのと同様に乾がボールを持つと市蘭の観客は盛り上がる。いけ乾ー!!
再度石持を抜き去ろうと挑みかかる乾。
と思いきや、ドリブルではなく近くにいた二宮さんへパス。弱気かよ!?

ちょっと前の天城の様に自力で抜けや!と批判する観客。
しかし当の天城は別の視点で見ていたのでこのプレーに好意的。

見えてたのか?・・・だとしたら、全力で走るあいつにタイミングを合わせるには石持をかわすのに手間暇かけてられねぇよな。

ボールをもらった二宮さんにはすぐにプレスがいく。
が、乾がもらいに行くことでワン・ツーが成立。見事な速さで抜き去ることに成功したのであった。
この二宮さんのプレーもなかなか上手いですな。こういう手法は今後も使えそうだ。

いくぜ!いくぜいくぜいくぜ!!

駆け上がる二宮さん。
乾は前にいたDF鮫島を成田の必殺技裏バキュ(メイア・ルーア)で抜き去る。速度を持った抜き方にはこれがあったか。
それでもその間に石持に追いつかれ並行される。だがゴールエリアには入って行くことに成功。
よく見るとずいぶん右側から攻め込んでますな。
二宮さんが中央に近づいていたのではなく乾が右の方に切り込んでいっていたのか。

乾が右から切り込むので二宮さんは中央でセンタリングを受けるために走る。
そして成田と尾上も同様にセンタリングを受けて決めるために駆け出す。いくぜ!!

決めろ!!
ここで・・・
決めてくれ!!
その後は・・・絶対オレたちが守りきってみせる!!

市蘭DF陣の期待を受けるこの攻撃。
習実の方としては逆になんとしても止めたい攻撃である。
習実キーパー霧谷は考える。石持が体を寄せているからシュートは打てない。折り返しのクロスを入れてくるはずだ、と。
ゴール前に飛び込んでくるのは誰がいるか?キーパーはボールから目線を切ることができない。

報告しろっ・・・!!ゴール前に飛び込んでくるのは誰だ?

霧谷の心の声に答えるように、飛び込んでくる選手の報告がされる。
ニアサイドに成田。真ん中に二宮と尾上
乾以外の攻め手全員がクロスを受けるために飛び込んでくる。なかなか怖い状況ですな。

乾は一瞬外に開いて石持の前に出る。そしてグラウンダーで強いクロスをゴール前に出す!!

ゴールラインギリギリから斜めに繰り出される強いクロスはGK霧谷の脇をすり抜ける。
これは・・・触りさえすれば無人のゴールに入れることのできる場面だ!!
シンゴ!!テルヒサ!!二宮!!押し込めぇー!!

全力で走り、一斉に足を突きだす3人。もちろん習実の連中も必死で並列し守ろうとしている。
突きだした足は市蘭の面々の方が先に出ている。が・・・クロスが強いのか成田ですら追いつくことができずにいる。

・・・触れば、触れば入るのに・・・!!

攻撃陣の足に触れることなくゴール前を過ぎ去るクロス。しのいだ!!そう確信する習実DF陣。
だが、ここで走り込んでいたのが・・・百瀬!!
足元に来たボールを丁寧にインサイドキックでゴールに叩き込む。

後半34分――市立蘭山再び均衡を破る

うーむ。前回百瀬が走り込んでいたからきっとこの展開になるだろうなとは思っていました。そして予想通りそうなった。
綺麗な流れなのだが、それが面白い。期待を裏切らない面白さとはこういう事か!!

声をかける描写等を見ても市蘭の選手も習実の選手も乾以外は誰も百瀬が上がり出したことに気付いてなかった様子ですな。
まあ、百瀬の後を追っていた習実の8番は当然気付いていたでしょうが、間に合わなかったと。ふむー。

やはりここぞという所で頼りになるのは百瀬でありますなぁ。さすがです。
しかし、これで試合が決まったかどうかはまだわからない。
松田が天を仰いで吠えて鬼になるかもしれない。松田がいる限り予断は許されない状況だ・・・!!
まあ、鬼になった先輩である天城は結局得点できなかったんですけどね。
似たような状況になったら昔を思い出して渋い顔になる天城が見られるかもしれないですな。
いや、今日はよく見せてるか。渋い顔のみならず色んな表情を。



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