蒼天紳士チャンピオン作品別感想

囚人リク
第26房 〜 第52房


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 各巻感想

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連載中分

囚人リク 4巻


第26房 暗闇  (2011年 38号)


巻頭カラー!
リクの返り血を左目に浴びた椿の拳が、大きく空を切る。
カラーで描かれたその様は、なんというかギャラクシー!?
史郎さんがまたいい表情をしておられますなぁ。

返り血を浴びて閉ざされたのは左目だけ。なのに、全く見えていない様子の椿。
片目は開いているはずなのに?疑問に思うノギに、解説を行う史郎さん。そう、あれは9年前・・・

ねじりハチマキをして、出前を行っていた史郎さん。何!史郎さんがちゃんと働いている!?
まあ、スラムとはいえ働き口とかはあるんでしょうな。流石史郎さん。真面目だ。

で、その若い史郎さんが目にした、信じられない光景。
当時のスラムで新興勢力ながら猛烈な暴力性で恐れられていたギャング団のボスが血を流して闘っていた。
逮捕前のレノマさんである。
その相手は、近所のボクシングジムに通う、レノマと同じく9歳の椿であった。

レノマさんと椿が同い年・・・9年前に9歳ってことは、今は2人とも・・・マジっすか!レノマさん若ッ!
リクはまだ13歳だし、弱くてもしょうがないかねとか思っていたら、2人とも9歳の時点で強かった。いいわけしようもねぇな。

身につけたボクシングの技でレノマさんを追い込む椿。
さすがに手こずるが、スライディング一閃。
足を刈られて倒れる椿に圧し掛かり、拳を振り下ろす。
その際、親指を右目に叩き込み・・・そのまま殴りぬける!やはりボクシングではこれですよね。何をするだぁー!
ともかく、これが椿とレノマさんの因縁。怨む理由。
椿の右目は義眼だったのだ!

左目が見えない今、椿の視界は消えている。
こんな重要な情報をなんで教えてくれなかったのかと叫ぶノギ。

俺かてっ・・・んなもん・・・めちゃくちゃ教えてやりたかったわい・・・
けどあかんのや。
この、男、江田史郎の口からは・・・たとえ憎き敵とはいえ、そいつの弱点をベラベラ喋るなんて、できるわけあらへんやろ・・・

これぞ男の流儀である。さっすが史郎さん!
ノギには分からない世界の話らしい。うむ、まあ、ノギですししょうがないか。

さて、大チャンスのリク。視界の利かない椿は思いっきり背中を向けてしまっている。
今ならさすがのリクでも攻撃を叩き込める。下手したら倒すことだってできるかもしれない・・・

ここから椿の目線で描かれる。視界は真っ暗なので、誌面も暗い。というか黒い。
どこから仕掛けてくるか全くわからない。周りの声でかろうじて何が起きているか推察するぐらいである。
殴ってこないリク。それどころか拳に巻いた包帯をとっているらしい。なんだ、何をしている?
包帯で首を絞める気か!?首をガードする椿。しかし、そういった攻撃もこない。
一体こいつは何を考えてやがるのか。
全く仕掛けてこないリクに対していらだちを募らせる椿。見えるようになったら、2度と立ちあがれねえようにしてやる!

ようやく、左目も見えるようになってきた。リクは正面にいる。
そして・・・包帯を使って、己の右目を塞いでいた。何してやがる!

お前、左目が見えねえんだろ。

まさか、片目が見えない椿に合わせて闘おうと言うのか!?

椿「憐れみか!!」
リク「ちがう!!お前と同じ条件で正々堂々!このタスキをぶち込むためだ!」

本当、リクはどこまでもまっすぐというか・・・こんな場所には似つかわしくない理屈を振りかざす。
ノギの言うとおり、弱いほうのリクが言うセリフではない。
でも、だからこそ動かせるものもある。少なくとも史郎さんは満足そうに笑っています。ブワーハッハッハッハ。

同じ条件などといいだしたリクに椿は激昂。
右目を奪われてからの俺の地獄を、お前は背負えるってのかよと叫ぶ。

何かのせいにしてんじゃねえ!!

椿に対し、リクの一喝。
俺は・・・絶対にしねぇ。
何かのせいにしていじけるなんて・・・俺を大切にしてくれた人をがっかりさせるようなことは・・・死んでもやらねぇ。

リクの信念。これが、椿の背負う別のものを呼び覚ます。
背中から聞こえてくる、兄チャン・・・の声。
これは、妹か?そういえば女の入墨をしてもらっていたとか言っていたが、妹を彫ってもらっていたのか?
椿の過去にはまだ何かありそうですな。
ともかく、椿の攻撃。怒りで大振りになっている。
2度目の大振りは通用しねぇ!
カウンターは狙わず、動いて交わそうとするリク。しかし、腐っていた床が抜け、足を取られる。
倒れこんだところに襲い来る椿。絶体絶命!?

が、椿は攻撃をわざと外す。

面白えよテメェ・・・掛け値なし、男の勝負・・・やってやる。

椿がついにリクを認め始めた?ラグビー終盤のレノマさんのような状態になっている。
ここからだ。ここでさらなる男気を見せれば、椿もデレさせることができるかもしれない!
しかし、男の勝負って何をするんでしょうね。タイマンじゃさっきからやってることと変わりない。
リクに勝ち目があるような勝負に変えてくれるんでしょうか。
お互い片目になったことだし、ダーツで勝負だ!とかそんな流れになるとか。ないな。



第27房 共有  (2011年 39号)


攻撃をわざと外した椿。リクを立たせて完全な決着をつけようとする。
袖を破り、長髪を後ろでくくる。その表情は穏やかだ。

消えた・・・椿から邪気が消えた

史郎さんもそう呟く。しかし、油断を捨てた椿はますます厄介である。
さらに強くなってしまった椿に対し、リクはどうするのか・・・?

ここからは、なんのせいにもしねぇ全力の潰し合いだ。お前も、そして俺も・・・

お互いファイティングポーズをとる。え、まさか普通に殴り合いですか?
どうやらそうらしい。最初のときのように防御を固めるリクに殴りかかる椿。
椿の左拳がボディに刺さる。
今のリクは右目が封じられている。見えないとこからいきなり衝撃が来るのは怖い。覚悟の間がない。
その状態でボディを続けられたらガードが下がるのも早い。
ガードが下がればアゴを打ち抜かれて、一気に意識が飛ぶ!
史郎さんもそれを危惧してガードを下げるなと激を飛ばすが・・・椿の拳はそのガードした腕を打ち砕いた!

根性・・・不屈・・・そんなもんじゃ、どうしようもない世界がある。

リクの右腕が折れ、ありえない方向に曲がっている
一堂愕然。そして、右の拳がリクのアゴを捉える。
小さいリクが相手なので、体重を乗せてパンチを放つと体勢を崩してしまう椿。
だが、問題はない。その一撃で、リクはヒザから崩れ落ちたのであった。

しょせん・・・何も変われねえんだよ。どうしようもねえのさ

静かに去っていこうとする椿。
確かにさっきまでの邪気が消えている。逆に諦観がただようようになってしまってますな。

終わった。でも、リクはよく頑張った。誰が何と言おうと褒めてやりたいと史郎さんは思う。
松尾も、終わっちまったと呟く。が、諦めきれない男がいた。
柱のとこまで、這いずり転がってすすみ、立ち上がる天野。
そして、その右腕を勢いよく柱に叩き付けた!

折れろぉー!折れろー!れろっ!れろっ!

何をしだしたのだこの男!?レロレロじゃないよ。
慌てて止める松尾。それに対し、涙を流しながら語る天野。

俺ぁよ・・・どうしても・・・リクに立ってほしいんだよ・・・

ズタボロのリクを応援するために自分も痛みを共有しようと考えたのか・・・ほんまかいな。
さすがにこの行動には史郎さんも驚愕。面白い顔になっている。

リクはもう十分やったという松尾。だが、天野はそれでも諦め切れない。

希望なんだよ!リクは!俺が生まれて初めて見た希望なんだよ!
あの掃き溜めみてえなスラムでも!このクソみてぇなムショでもよ!
俺たちがあきらめて捨ててきた希望なんだよ!!

リクー!!立ちあがれぇぇぇ!!

ついに、自分の右腕をへし折って叫ぶ天野。さすがにこれは狂気と呼ぶに相応しい行動である。
椿も、いかれてやがると呟き踵を返す。
果たして天野の叫びはリクに届くのか?
脳を激しく揺さぶられたリクは何を見ているのだろうか・・・
そして、もし覚醒したとしても、右腕を折られたリクに戦う術はあるのか?いろいろ詰んでいる。

どうにもならない状況であるが・・・これを覆すことができたら、本当に希望として祭り上げられても問題なくなるな。
一度ラグビーで奇跡を起こしたからって、さすがに天野も持ち上げすぎだと思う。
でも、もしここで椿相手に奇跡を起こすことができるなら・・・
破獄に向けて仲間の心がひとつに、なんて展開があるかもしれない。
まあ、その奇跡が起きる感じがしないのが問題なんですけどね。奇跡は起きないから奇跡っていうのよ。



第28房 熱血  (2011年 40号)


リクゥ!立ち上がれぇえええ!!

天野の悲痛な叫び。
よく見ると折れた腕をブラブラさせているのがキモチ悪い。

粉骨砕身した友を応援する資格。
誰も決めちゃいねぇ。そんな形のねえもんを得るために・・・自ら腕をへし折るどアホウをムショで拝めるとはな!

そこまでリクに期待する男が居る。
史郎さんもまた、見たいと思っている。
絶望を希望に変える。そんな男を!!

そのリク。座り込んだ状態で吐く。そして少し気を取り戻し始める。
座り込んでしまっているのには気付いた。でも、肝心の包帯がどこかにいってしまっている。
あの包帯がないと、あれがないと、みんなの思いを乗せたあれがないと・・・
横に倒れこもうとするリク。これで倒れればもう起き上がってはこれない。
が、その途中で顔に巻いた包帯がずれ、包帯の存在をリクに知らせる。
包帯があることに気付き、力を取り戻すリク。
そう、これをあいつにぶち込むんだ・・・

殴られた後遺症で意識が飛んでいるのでしょうけど、この時のリクの顔はやばい。なんだかエロそうな顔になってる。

ともかく。
みんなの痛みをわからせないといけない。そのためにリクは立つ!

いいかげんあきらめろ!!

起き上がるリクに、椿が再び攻撃を仕掛ける。
リクだってあきらめたいとは思う。そのほうが楽だもの。
でも、そりゃムリだ
だって俺ぁ・・・弱えってだけで殴られたり蹴られたり・・・そんなのがいやなんだ・・・
めちゃくちゃいやなんだ・・・

どこで意識が戻っていたのかはわからない。
しかし、とにかくあきらたくない。屈したくないという意地だけは残っていた。
椿の拳を、額で受け止める。
カウンター気味に、拳に額を叩きつけるようにして受けた!

これにより、椿の右拳がひしゃげる。
さらに懐に倒れこむリク。左拳で迎撃しようとするが間に合わず、懐に入られる。
そして、カエルとびのように、しゃがみ、飛び上がるリク。

・・・届け・・・俺たちの包帯

その包帯をまとった頭突きは、椿の顔面を捉えた。
まともにくらった椿。首のあたりの歪みを見る限り、相当の衝撃を受けたらしい。
包帯も一撃で吹き飛んでいる。
驚く4人。さすがにこの展開には声もでないようだ。
盛大に血を噴出す椿。
この見開きの絵。なんだかリクが首を絞められて落とされているようにも見える。
だがそんなことはなく、倒れたのは椿。最後に立っていたのはリク。
27VS16の抗争は完全に決着がついたのでありました!

いやぁ・・・まさか勝つとは思いませんでした。
でも、あの絵を見せられては、相当なダメージだったんだなと納得するしかない。
この世界では頭突きは凄いダメージソースなんだということですな。
レノマさんもノギの頭突きで負傷しておりますし。ムショの最終兵器は頭突き!覚えておくといいことがあるかもね!



第29房 辛勝  (2011年 41号)


届けた・・・届けたぞ。タスキ・・・
ぶち込んだぞ!みんなの痛みを!!

まさかの一発逆転。沸きあがる倉庫内。すげぇな、ホント。

リクは大の字に横たわる椿に近寄る。
そして、飛び出しそうになっていた義眼を元に戻してやる。

オメェも・・・痛かったろ・・・
俺も・・・痛かっ・・・た。

痛みを伝えるということはこういうことなんでしょうな。
これだからこそ、敗れた椿もどこか穏やかな表情でいられるのでしょうな。ううむ。

さて、勝ったリクを肩に担ぐ史郎さん。奇跡を見せてもらいましたし、担ぐ理由は充分ですな。
椿もまたスラムの犠牲者である。
スラムだからこそ、レノマさんとストリートファイトなんてすることになった。
それにより眼を潰され、転落人生が始まったのである。
やはりスラムを継続させている警視総監が悪いという流れになりそうですな。
脱獄し、警視総監の鬼道院を降し、スラムを解放する!これが大筋の流れになりそうな予感。

倉庫の外では、16が27を完全に制圧している。
史郎さんにやられてボコボコの奴もいるが、それ以外はロンゲの16が圧勝だ。
しかし、倉庫の中では番狂わせが起こっていた。
出てきたのは、27の4人と史郎さん。

椿はリクがやっつけた
この宣言に沸き返る27の連中。なんだ、元気いっぱいじゃないですか。

しかし、あっさり信じるんですね、16の連中も。
この状況なら史郎さんが倒したと見てしまうのが普通じゃないですかね。
場合によっては、史郎さんを先頭に5人がかりで倒したと勘ぐられても仕方ない。
まあ、そこは史郎さんの人徳か。
本当にそうなら、黙っているはずがないという信頼が、ノギの言葉を裏付けたのだ!やっぱり史郎さんは凄ぇや!

嬉しそうにしている27の連中を見て気が抜ける天野。
気が抜けたら折れた腕が痛くなってきたぜ!なんで俺っ・・・骨なんか折るんじゃなかった!
いきなりそれはないっショ。まあ、天野らしいっちゃらしいけど。

広場が大騒ぎをしているところにやってきた者たち。
谷村看守部長。そして、第16木工場の正担当刑務官、荻野だ。
派手にやったということで、全員懲罰房送りにするという。
襲われただけだろうと、これまで黙認していたとしても関係ない。後から宣言したことが適用されるのだ。

所属の正担当はオヤジと呼ぶ決まりがあるらしい。
谷村をオヤジと呼ぶ松尾。上記の通りなので血縁関係があるわけではない。たぶん。
骨折している2人は先に医務室に連れて行って欲しいという。
が、そんな願いを聞き入れる谷村ではない。おのれー

だが、ここで現れたのは、第26木工場の正担当、北島さん。
でっかくてハゲでヒゲで、強そう!史郎さんがオヤジというと、本当に父親に見えちゃうから困る。巨人族の血統か!?

北島さんは、骨折しているものはひとまず医務室に連れて行けという。
まあ、残りの連中は即懲罰房行きではありますがね。

この判断に不服そうな谷村。敬語を使っているところを見ると、北島さんの方が立場は上なのかね?
年上なだけでは丁寧語も使ったりしないでしょうしね、谷村だと。

北島さん曰く、近々刑事施設視察委員会が入るとのこと。
なんだかわからないけど、その委員会が今後の展開に影響してくるのでしょうかね?
少なくとも、あまり囚人の処罰が行き過ぎると面倒なことになる相手らしい。ふうむ、味方になりえる存在かどうか・・・

谷村もしぶしぶながら納得する。
しかし、これほどの騒ぎ。全員懲罰房送りにするぐらいでは示しがつかない。
では、どうするか?

首謀者の俺が・・・特別懲罰房に入る

それでまとめてくれと椿は言う。
しょっぴかれる椿の表情は穏やかなものであった。うーむ、見事に仲間フラグが立っていますね!
しかし、特別懲罰房の懲罰は過酷である。さすがに特別なだけはある。
上半身裸に剥かれ、鞭打ち。気を失うことも許されない。

拷問らしい拷問が始まりましたねぇ。
刑事施設視察委員会とやらは、こういうところは見ないのですかね?
それにしても、こういうシーン。好きな人にはたまらないのでしょうな。興奮するのでしょうな。
いや、某は別にそういう趣味はござりませんので・・・
今後もボスキャラは特別懲罰房送りになったりするのでしょうか。気になります。



第30房 辛酸  (2011年 42号)


特別懲罰房に堕ちた椿が拷問を受けています。
まさか本当に詳細に描かれるとは思わなかった。

拷問を行っているのは、第16木工場の正担当、荻野看守部長。
荻野が刑務官になった理由。
それは、社会のクズ共を合法的にいたぶることができるからである。こいつは真正のサドっすね。

北島さんが前回言っていた視察だが、この特別懲罰房には関係ない。
入口の外観は備品倉庫。壁は完全防音で120%見つかりっこない。だから中ではやりたい放題だ。
そのセリフはフラグと受け取った。視察が楽しみですな。

さて、椿は拷問を受けながらも背中の刺青をかばっている。
それに気付き、いやらしい笑みを見せる荻野。わぁ、いやらしい。
熱した鉄の棒を用意させる。
これに対し、あの椿が懇願する。この背中だけはやめてくれ・・・
だが、そのお願いは相手の嗜虐心を刺激するだけだった。
というか、この時の荻野の顔がやばすぎる。これ、そういう漫画じゃねーから!たぶんだけど。

しかし、読者にお披露目する前に焼かれてしまうというのもどうなんでしょうな。

またも大切なものを失ってしまったという椿。
やっぱり、何をやったって・・・俺の人生は・・・

ここから椿の回想だ!
戦闘が終わってから回想とはねぇ。そういえばレノマさんもそうだったっけか。
若い頃の椿は頑張って働いて稼いでいる。鍵のレスキュー屋でございますか。
給料は安いが、それ以外にもボクシングを身につけて、それで稼ごうとしている椿。ドリームですな。

魚1匹とドッグフード100gを買って帰る椿。ドッグフードは自分のご飯。ううむ。
買って来た魚は、ミユキ――妹のためのものである。
兄思いのいい妹さんですなぁ。
つつましく生きていた2人であるが、ミユキちゃんが病気になる。
スラムの病院では治せない。外科医の病院で手術するとしても、1000万はかかるらしい。
去年の隕石で、椿の両親はすでに亡くなっている。この上、妹までいなくなったら・・・

金さえあれば。
ここで思い出した、昨日のお客さん。
鍵のレスキューで金庫の開錠を頼まれていた。
その金庫には大金が入っているに違いない。

これはドロボウなんかじゃない・・・妹を助けるためなんだ・・・
やるしか・・・やるしかないんだ!

助けるためなのは間違いないけど、完全にドロボウですよ。

忍び込み、金庫を開き、金を手にしたところで、見つかる。
ただ、見つけたのは他の侵入者である。なんだ同業者か。どちらにしろ厄介だな。
どうやらレノマさんのグループの人間のようだ。

同じ稼業である限り、縄張りはキッチリ守ってくれないと困るとの事。
というわけで、金をかけてレノマさんと椿のタイマンが始まる。

いつまでも盗みに入った家でやってはおられないでしょうし、ここで外に移ったのでしょうな。
そして、史郎さんが2人の戦いを目撃すると。
レノマさんの攻撃で右目を潰される椿。うーむ、むごい。

そのタイミングで舞い降りるチラシ。
スラムの外でチャンピオンと闘える、地下格闘技イベント。LION KINGS
出場資格は不問で、賞金1000万!
これは・・・やるしかない!
きっとこれが残された唯一の道だ!

果たして、椿は妹を守るために賞金を獲得できるのか!?
なんだか、回想前のセリフを見ている限りでは望み薄なんですけど・・・凄い辛い過去だな、おい。
レノマさんに右目を潰される前であれば、てな展開になりそうでやばい。
こりゃレノマさんを恨んでも仕方ないですわ。

そんな椿だけど、そろそろいい目を見て欲しいところですな。
是非リクの仲間となり、集団脱走を行って欲しい。
その中で、鍵のレスキューをしていたという開錠スキルが役に立つに違いない。仲間を増やして、目指せ破獄!



第31房 下界  (2011年 43号)


「歩こうが走ろうがどうせ先には壁がある」
スラムでは1日に3度は耳にする言葉である。
コツコツ頑張ってもバクチで大儲けしても、スラムで暮らしている限り越えられない差別の壁がある。
そういう意味もあるが、実際に壁もある。
壁の内側=「スラム」から壁の外側=「下界」へ行くにはいちいちビザの申請が必要なのだ。

もはや完全に日本国内の地区とは別扱いされちゃってるんですなぁ。
パスポート代は50万かかるらしい。外に出るだけでも大変だ。

椿はそんな下界に出ようとしている。1000万稼げるというチラシに乗ったのだ。
短期の特殊パスポートを使って入ろうとする。
センターの所員に説明する。違法の地下闘技場で闘うことになるが・・・妹の手術にたくさんのお金がいるのだ。
所員は妹の年齢を聞いてくる。4歳です。4歳。そんなに幼かったのか。

俺にも4歳の娘がいる。
この壁を越えられても辛いことばかりだろうが、まあがんばれよ。

なんだか温かい言葉をかけられたぞ!?ほくろの目立つ所員に見送られ外に出る。
スラムとは違う外の世界。妹を連れてきてあげたいと考える椿。
兄チャンが絶対に助けてやるぞ。

地下闘技場の控え室。グローブをつけた椿がスタンバイしている。
片目を失い、プロボクサーの道を断たれた椿が大金を稼ぐには・・・もうここしかないんだ!
この格闘技はどうも金持ちの方々の娯楽になっているようですな。趣味のよろしいことで。

椿の対戦相手は、LION=KINGSにおいて50戦無敗、常勝のチャンピオン。
だが、年はまだ8歳。椿よりも年下である。
どうやら、地下闘技場では年齢別に制限をかけた戦いをしているようですな。
なるほど。そう聞くと公平そうに聞こえますな。やれる気がしてきたぞ。
スラムの猛る隻眼の狼というアオリを受けて椿が金網リングに入る。
そして、無敵のチャンピオン登場。

ポン太ー!!
オス8歳!

ら、LIONだーッ!?
LION=KINGSなんだから、ライオンが出て当たりまえじゃないですか。そ、そういわれればそうか。ふざけんな
確かに10歳以下の部に両方該当するだろうけど、これはねぇよ。
観客は戦いではなく、残酷ショーを見るために集まったということか。いい趣味してるな、こいつら。

容赦なく襲い掛かるライオンのポン太。どうでもいいが、その名前はもう少しどうにかならないのか。
金網に登り逃げる椿。さすがにここまではライオンは追ってこれまい。
だが、非情なアナウンス。
椿は金網を登り逃げようとしているが、この後どうしても逃げられなくなる。それは何故か?
会場の客にクイズとして投げかける。

金網に電流を流して落とす?違う。銃で撃ち落す?違う。
妹を人質に取られているから?そう、それが正解である。
って、この答えだした奴!見覚えのあるほくろしているぞ・・・お前あのセンターの所員!?
そりゃ、こいつは妹がいるって情報を知っているしなぁ。正解もするさ。

モニターには妹のミユキが銃をつきつけられているシーンが映し出されていた。
どこまでも非情であるな。逃げることは許されない。ならば・・・!

ポン太ぁ〜〜〜〜!!

電球を破壊し武器とした椿がライオンを撃破した!?スゲェ!!
逃げることなく闘った椿。だがその椿が賞賛されることはない。
会場のみんなは椿が食われるのを期待しているのだ。
ポン太に代わりすぐに2匹目を用意する。対戦は続く。やらなければ妹の命はない
初めから賞金を払うつもりなどなかったのだ・・・これは、悔しいなんてもんじゃないな。
だから、残っていた電球の破片で興行主らしき男を刺してしまったとしても、誰が責められようか。

脱出し、妹の下へと急ぐ椿。
しかし、妹がいると思われる建物には既に手が回っている。またほくろの所員がいやがる。

ダメだ・・・帰れない・・・もう2度と・・・ミユキ・・・!!

月日は経ち、4年後。
身を隠していた椿だったが、見つかってしまう。
見つけたのはほくろの所員。またテメェか。
殺人、及び安全保護区域不法滞在並びに逃亡罪で逮捕される。これが椿が刑務所にいる理由か。

凄まじい回想は終わり。現実では拷問を受けていた椿。
ひとまず拷問は終了し、保護房の方に移される。
鉄格子付きだが窓のある保護房。しかし、椿は立ち上がることもできないほど疲弊している。
倒れこんだ椿の背中には入墨がある。
そこに描かれていたのは穏やかな表情の女の子

ミユキ・・・

一人涙する椿。
守れなかった。苦しかった。無様な人生に哭く男を月は責めない。
そして、同じ月に照らされたのは、別房に鎮座する男。レノマさんか。
同じように特別懲罰房送りになった2人だが、この後どのような邂逅を果たすのか。

なんとも凄まじい過去を見せられましたなぁ。泣けてきた。
ライオンが出るのはある程度想像できたが、まさか勝つとは思いませんでした。
どちらかというと、そっちのほうが盛り上がるんじゃないでしょうか?獅子殺しですよ。スターだよね!

そして、背中の入墨だが、ミユキの顔は焼かれていないみたいでちょっと安心した。
あの変態だと真っ先に焼きそうなものだと思ったのだがなぁ。
せめてその事実だけでも知って安心していただきたいものだが・・・辛いな。

しかし、そのミユキはどうなったのでしょうね?
普通に考えると病気が治らずに死んでいる。でも、椿の救いとして生きていて欲しいと願ってしまう。
場合によっては、生きていることでさらに椿を苦しめることになるかもしれないが・・・
なあに、最後はリクがなんとかしてくれるよ!何とかしてくれよ!頼むよ!



第32房 下界  (2011年 44号)


特別懲罰房から保護房へと椿は移されました。全裸で
ここで下が脱がされているのは、両手を封じられているから用を足すときに困らないようにしているんですね。
決して看守の趣味とか作者の趣味とかそういう話ではない!たぶん。後者は怪しいけど。

ともかく、移された椿に話しかけてくる者がいた。
隣の房から、屎尿口を通じて声をかけているのだ。この声は・・・レノマさんだ!

因縁の相手がすぐ隣の房にいる。
こんな状態ではあるが、椿は怒りで少し元気が出たようだ。

あの日・・・テメェに片目を潰されてから・・・
あの時!テメェがジャマさえしなければ助かっていたんだ!
妹は・・・俺の妹は・・・

怒りをぶつける椿に対し、レノマさんは静かに応える。やっぱりお前知らなかったのか。

お前の妹は今でも元気だぞ

この言葉に驚愕する椿。だが、そんなはずはない。人をからかうのもいい加減にしろ。
あの時すでに余命1年を宣告されて、人質にまでされて、元気なわけないだろう・・・

刑務所にぶちこまれてからも・・・何通も手紙を書いた・・・
まだ無事ならと・・・もしかして病気が治ってやしないかと・・・
信じて・・・信じて・・・信じて・・・
けど・・・ただの1度も返事はこない。来なかった・・・


なんとも泣ける話ですな。
だが、おそらくそれは荻野の仕業である。
奴等は検閲と言いながら、気分次第でシャバとの手紙も平気で握りつぶすのである。酷い話だ。
だからこそ、レノマさんは独自のルートでシャバと連絡を取り合っている。
調達屋と呼ばれるようになったのはこのルートを確立しているからなんですね。

魚を2匹。
どういう意味か知らねえが、魚を2匹。ちゃんと2匹買って待ってます・・・だとよ。

シャバからの連絡を受けるとき、椿の妹から伝言を受け取っていたのだ。
でも何故、レノマさんが椿の妹の伝言を受けていたのか?その点について回想が入る。

椿とのタイマンの後、レノマさんは金髪の女の人を連れて椿の妹が入院しているところに来ていた。
なんでこんなところに来たのか。罪悪感か?まあ、そんなものをイチイチ抱いてはいられないか。

シメてやるんだよ。兄妹とか血のつながりのある奴はな、忘れた頃に敵討ちだなんだって面倒臭えんだからよ。

さすがにシビアな世界に生きているだけはありますな。
ところが、その妹は人質にとられているところでした。
丁度、椿がLION=KINGS司会の獅子村を刺したところでレノマさんがやってくる。
脅していたやつとカメラマンは慌てて窓から脱出。助けてー!!
殺風景な部屋に残されたのは美雪ちゃんだけとなりました。
泣き出す美雪ちゃんをなだめる金髪の女の人はなんだかいいですな。

椿が逃げ出さないよう、美雪ちゃんを人質にしていた。
その連中は、美雪ちゃんにも逆らったら体バラバラにして売り飛ばすと脅していたらしい。
兄チャンがそばに帰ってくるまで死にたくないと泣き叫ぶ美雪ちゃん。
その涙に流されたのか・・・それとも、バラバラにされるという点に過去の自分たちを見たのか。
美雪ちゃんの病気の手術代である1000万をポンと出すレノマさん。うーむ、男前だのう・・・

お金を出したことについては具体的に椿に告げたりはしない。さすがレノマさん男前。
とりあえず元気になったとは伝えておく。勝手に治ったんじゃねえか。

さっきの伝言もたまたまよ。シャバにいる俺のファミリーがたまたまそういう話を聞いただけよ。
3丁目の大宮川のな・・・船着き場の南の角・・・
クソまずいドッグフードを計り売りしてるあのペットショップで働いてるらしいぞ
今でも、あの街で

妹は生きていた。守れなかったと思っていた妹が生きていた。
この事実に、椿はどれほど救われたことだろうか。失った目からも涙を流す椿。よかったよかった。

あんな掃きだめのクソみたいなスラムにいたガキ共はみんな、レノマさんや椿たちはみんな。
裏切られ、ジャマをされ、信じるものは何もなく。苦しくて、何かのせいにしてなきゃ自分を保てなかった。
生きていけなかった。
だが、リクは何かを強烈に信じていた

あいつが信じているのは明日だ。俺たちと同じあのスラムで生きていながらな・・・

レノマさんの言葉に納得する椿。
今なら、あんなガキになぜ負けたのかがわかる・・・

俺は・・・あいつがうらやましかったんだな

椿の言葉に、自分もそうかもしれないと返すレノマさん。
事実を知り、リクを通じ、わかりあった感じの2人。お月様も優しく照らしてくれております。

いや・・・いい話だった!泣けた!
しかし、この最終ページ手前の構図はいろいろ反則過ぎるッ!!
おだやかな顔のムキムキの男2人がポーズを決めて仰向けに転がっている。全裸で
それを1ページに1人ずつ見開きで2人並んでいるのだぞ!なんのグラビアだよ!
うっかりこの回を見た人が、そういう漫画だと誤解したらどうするんだ!
うむ、まあ、あんまり誤解でもない気がしてきた。問題ないな!

そういえば、今回の話の直前のページに3巻の宣伝が行われていました。
3巻の表紙になった史郎アニキが宣伝を行っているぞ!全裸で
なんという全裸祭り!もう言い訳はできねえぜ!するつもりもないぜ!買ったれや!

凄くいい回でした。感動した。ネタにもなる回だった。
だが、ひとつ問題があった。
サブタイトルが前回31話と同じじゃねーかぁ!!ざ、残念すぎる・・・
おそらく編集ミスと思われます。単行本では直るんでしょうが・・・残念すぎる。



第33房 絶食  (2011年 45号)


諦めない、屈しない。運命が俺を突き刺しても。
単行本3巻発売記念の2号連続カラーの1弾目だ!

保護房。正座したレノマさんの前には食事が置かれている。
しかし皮手錠はされたままである。これではマトモに食べれない。
そんな状態で箸が添えてあるのはなんとも皮肉であるな。

保護房に移されてから一週間。
その間食事には一切手をつけていない。
谷村たちはそんな様子を鉄格子の向こうから見ている。

ほおれ、よーく見ておれ。
人間が生存の危機に直面し、意地を捨て犬になる瞬間を

本当、こいつはいい趣味をしているなぁ。
その谷村の顔を見て、再び意地を張るレノマさん。食事を蹴り飛ばし、犬食いを拒否する。
しかし、谷村としては、折れるまで出すつもりはないようだ。
レノマさんの孤独で辛い戦いはまだまだ続くのだろうか・・・

さて、第27木工場。
この間の第16木工場とのケンカにより、レノマさん以外の全員が1週間懲罰房に入っていた。
今日から通常作業に入ることになる。作業を行う前に谷村から一言。
懲罰房に入っていたので、納期に支障が出ている。ので、一層の集中力を持って作業に当たる必要がある。
ほう、監獄の工場の製品にも納期とかちゃんと定められているんだ。出荷とかしてるのかね?

今月は毎年恒例の、あの大運動会がある!

谷村の言葉にザワめきが起きる。なんと、運動会とは・・・学園物の定番だね。アレ?
昨年の第27木工場は2位だったが、谷村に言わせればこれでも屈辱らしい。
それというのも、1位は北島さんや史郎アニキのいる第26木工場だからだ。
谷村は北島さんへの対抗意識が強いのですな。ふむむ。

テメェら、負けたら3日間飯抜きだ!

お、横暴だ!お前は極悪看守か!うん、その通りだったな。
とはいえ、3日は厳しすぎる。ボスもいないのにどうやって・・・と、ここで天野に妙案。
運動会に勝つという話であるならば・・・ボスの還房の検討を願えばよい!
ボスがいねえと勝てるものも勝てねえです!

ならん。

あっさり斬られたぁ!それはそれ、これはこれってか。キツイなぁ。
午後からの作業時間は運動会の練習に充てる。
なので、限られた時間で遅れた納品分を取り戻せという。キツイなぁ。

昼休み。運動場にでるニーナナの連中。ボスが保護房に入っていることはわかった。
ボスはまだ逆らっていて心が折れていない。しかし、保護房とは、名前によらず厳しいところである。
そこでは人間扱いされず、ぶち込まれた奴はほとんど人格崩壊してしまうらしい
でも、ボスなら・・・あのボスなら・・・

そんな話をしていたら、フェンスごしに金髪が話しかけてくる。
保護房といえば、素っ裸にされて排泄は丸見え。皮手錠をされているからケツもふけない所である。
頭がおかしくなっても、壁には全面クッション材が貼り付けられてるから頭打ちつけて自殺もできない。
耐えられるわけないと金髪はいう。うーむ。厳しい。
それでも、天野たちはボスを、レノマさんを信じている。強いボスが帰ってくるのを待っている!

そのボスに何かできることはないものか・・・
ここで天野。学のある須藤くんにちょっとした頼みする。

午後。運動会の練習が開始される。まずは基礎体力をつける必要がある。

300周グラウンドを走れ

何さらっと凄いこと言っているんだよ、コイツは。
でもそれについて苦情もでないってことは、そのくらいなら出来るということなのか?ハンパねぇな。
まあ、走っている間にやりたいことがあるからなんでしょうけどね。
ここで、天野が願い出る。

大運動会に向け!栄冠を勝ち取るべく、我が第27木工場全員の士気を高めるために!
第27木工場の唄を作りました!歌唱許可を願います!!

ほう。歌であるか。歌はよいな。士気を高めるには持って来いである。
と考えたのかどうか、谷村も許可を出してくれる。よし。
全員で大声で唄いながらグラウンドを走る。
即興で作った唄らしく、なんとも頭の悪そうな内容だ。

ニーナナの皆がグラウンドを走っているころ、レノマさんはグッタリしていた。
さすがのレノマさんも一週間以上食事なしでは持たないか。
意識も混濁し、なんのために意地を張っているかもわからなくなっている。
それでも、谷村のことを思い出すと、意地を張りたくなってしまう。
あのクソ野郎の勝ち誇ったような面だけは見たくねえ!!

そんな思いを抱えるレノマさんの耳に、天野たちの歌声が届く。
なんて呑気な歌を・・・と思うレノマさんだったが、じっと聞いているとあることに気付く。
これがその歌詞だ!

ともに生きれず!
ッパッてー!
ェに負えない悪ガキがー!
刑を食らって監獄へー!
然いいことありゃしねぇー!
ロボロ人生俺たちはー!
ラム生まれのドブネズミー!

オーオーオーオーオー

まさかの縦読みッ!?まってるぜボス!
じっくり聞いていないと本当にわからないだろうな、これ。とくに最初のまっの部分。
まあ、最初の言葉に気合を入れて叫んでいたんでしょうけど、よく気付いたなレノマさん。

ボス!
俺たちはおっかねえけど、めちゃくちゃ強ぇボス頼りにしてんだ。待ってるぜ!

天野たちの思いを受け取ったレノマさん。
そのレノマさんは食事をとっていないために、やせて情けない体になってしまっている。
このままじゃ、みっともなくて・・・

夜。保護房を訪れる谷村たち。
その眼前には、這い蹲って食事に喰らいつくレノマさんの姿があった。

つあーっはっはっ。それ見たことか。このガキ、とうとう心折れよったわい!!

嬉しそうにする谷村の前で、食事を喰らいつくすレノマさん。
そして、食べ終えたところで、倒れた食器を歯で持ち上げ整える。
そして、丁寧に座りなおし、一言。

ごちそうさまでした。うまかったぜ

これはカッコイイ!堂々としたその姿は、とても折れた人間のものとは思えない。
それがわかるから、微妙な表情になっている谷村でありました。

谷村相手の小さなプライドは捨てた。
俺は第27木工場が期待している強い俺のまま・・・必ず戻る

まさに誇り高き翻意!これでこそレノマさんである。
次回は巻頭カラー、巨弾30ページで登場だ。大運動会が開始され、レノマさんが解放される?
なんとも熱い展開が待っていそうだ・・・熱い魂を解き放て!!



第34房 団結  (2011年 46号)


万国旗が飾られ、いかにもな運動会ムードが漂う刑務所。
そう、本日は極楽島特級刑務所、N棟大運動会の開催日だ!!

N棟の開催日ってことは他の棟は別の日にやっているのかね?
来賓がここに集中している気がするし、別の棟は別の日にやっていそうだな。

外で運動会が行われている間、ひとり静かにスクワットで筋肉を磨き続ける男がいた。
我らがレノマさんだ。カラーでその姿を見せつけるレノマさん
レノマさんのカラー登場率は非常に高い。映えるからしょうがないですわな〜

さて、最低でも27はあるN棟。
1つの木工場につき何人ぐらいいるんですかねぇ。
ともかく、そのN棟の人間が全員運動場に集まる。結構な広さだな、この運動場。

叶所長がまず挨拶。
その間に隣の第26木工場の史郎さんから声がかかる。
こいつは競技。正々堂々の戦いである。レノマがおらんからいうて手心を加えるつもりはない。
それはそうでしょうな。史郎さんのその言葉に、こっちには秘策があると返す天野。
でも、それはつい言っちゃっただけのセリフ。秘策なんてない!
まあ、負けん気があるのはいい事ですけどね。

さて、来賓の紹介。
刑事施設視察委員会の委員長、高田様
おや、この人が視察委員の人ですか。なんだか平凡そうな人だが・・・期待できるのかね?
いや、それよりも。来賓といえば、この男である。
その男の姿を見て、リクの目が怒りに見開かれる。
そう、警視総監の鬼道院である

テメェなんでおじさんを殺したんだぁ!!

刑務所に入ってからもずっと考えていた。
だからこそ、仇を前にしてつい激情してしまった。気持ちはわかるが、そいつはいけねぇ。
慌てて止める天野。下手すると再び懲罰房に放り込まれるところだが、それは勘弁してもらえたようだ。

囚人が何を言ったところで、妄想や責任転嫁と取られるだけである。
ましてや証拠などは何もないわけですしねぇ・・・うーむ。

なお、本日優勝した工場には、直接鬼道院からトロフィーが授与されるらしい

さて、27のテントでリクから事情を聞く。おじさんって誰だよ。

俺の・・・大好きなおじさんは・・・鬼道院に殺されたんだ・・・
その罪を・・・なすりつけられて俺は・・・刑務所に来た・・・

この発言にさすがにザワつく27の仲間たち。
そう、冤罪によってここに放り込まれたのである。
その相手がよりにもよって警視総監。簡単には信じられない。そういう人が出るのは当然だ。
だが、天野は信じる。

こいつが・・・今まで誰かをだましたことが・・・一度だってあったか?
俺はリクを信じる。そして、あの野郎が許さねぇ

出会って2週間ぐらいしか立っていないでしょうに、ずいぶんリクを信頼していますなぁ。
まあ、共に闘ったソウルメイトだということなんでしょう。期間は関係ない。
それに、確かにリクがそういう嘘をつく奴じゃないのは、短い間柄でもわかる。

ハチマキを締めて気合を入れる天野。松尾も同じく気合を入れる。
俺も、俺もと27の皆が同様に気合を入れだす。涙まで流しているやつがいるぜ。

言わせてやろうぜ。リクに・・・鬼道院と鼻っ柱がくっつく距離でよ。
優勝してよ。リクに・・・鬼道院から直接トロフィーを受け取らせてやろうぜ。
表彰台に!リクを送ろうぜ!!

よっしゃあ、行くぞ第27木工場ー!!

凄い盛り上がりだ。
ボスがいない状態であるが、リクのために負けられないと気勢があがる。
それは飯抜きだなんて刑罰を忘れてしまうほどの熱量である。
靴が壊れるほどの気合を持って挑み、総合得点で2位につけるニーナナ。
そして、ついに本日最後のプログラム。棒倒しだ!
早い!もう最後かよ!間がいきなりすっとんだな・・・いや、この疾走間はなかなかのものだ。

最後の相手は史郎さんが率いるニーロク。
力と力がぶつかる棒倒しで決着とは、盛り上がる展開ですな。
棒倒しはそのぶつかりあうことが危険なことから、学校によっては禁止されている危険な競技。
棒の付近なんて押し倒されて潰される子が多いでしょうしね。

しかし、お互い棒の1番上に誰か登っていないといけないルールがあるのかね?
この登っているのが落ちたら負けなんでしょうか。

ともかく。1位になるためにはドデカイ壁をぶち破らないといけない。
史郎さんは言う。

俺を倒して、あの旗を取ってみい。
男の流儀で応じるさかいに

テメェが相手でも・・・勝たきゃなんねえんだよ!!

史郎さんと戦うことはもうないかと思ったが、正々堂々と競技で勝負することになるとはね。
競技なのでタイマンを挑む必要はない。
ニーナナの総力を持って当たる!
とにかく江田をぶっ倒せー!
リクと天野がそれぞれ片足にタックルをかける。
さらにそれに続けと10人以上がズクラムを組んで押しにかかる。押せぇー!もっと押せぇー!!

さすがの史郎さんもズズズと押し込まれる。いっけえええ!!
だが、黙ってやられる史郎さんではない。
リクと天野を片腕で引きずり上げる。そしてスクラムの中に投げつけ、崩壊させる!
一瞬にして、史郎さんの前には誰もいない状態になってしまいました。すげぇな。

このままでは負ける。あの北島に・・・

谷村が苦渋の表情を見せる
。 ならばどうする。このまま座して見守るのか?
そういうわけにはいかない。ならな、秘密兵器を出すしかない!!

というわけで、ついにボスの帰還だ!レノマさん復活!レノマさん復活!

極楽島が揺れる。野獣、ついに帰還。
レノマさんであれば正面から史郎さんと渡り合うことができるぜ!
とはいえ、一週間以上の保護房生活はさすがに厳しかったはず。
この疲労した体では、互角に戦うのがやっとかもしれないなぁ。
でも、凄い期待したい戦いである。派手な戦いを期待してるぜ、レノマさん!史郎さん!!

そういえば、レノマさん。ちゃんと服は着せられているんだろうか?
未だに腕が封じられているように見えるのだが。
全裸で史郎さんと戦いだすレノマさん。それを見て史郎さんも脱ぎだす。
フフ・・・男の戦いは、やっぱり裸だろ。とか言い出して。
えらいことになりそうだなぁ。でも、面白そうだから突っ走れ!と言いたくなってくるから困る。



囚人リク 5巻


第35房 威風  (2011年 47号)


野獣は放たれた!
ついに我らのレノマさんが復帰しました。ボスー!!
いやぁよかったよかった。ちゃんと下履いててよかった。危惧してたんだよ。

拘束されていた手も解かれ、完全解放。
しかし、なんだか穏やかな感じですなレノマさん。シャバではないが、外の空気を感じているのかもしれない。

そんなボスのもとに駆け出す27のみなさん。
棒倒しの棒も旗もそっちのけである。
今のうちに旗を奪ってしまえば26の勝ちだが、もちろん史郎さんはそんなの許したりしません。
男のすることじゃないからな。舎弟にはその考えは行き渡ってないようだけど。

お努めご苦労様です!待ってたんですよォォ!
と嬉しそうに近づく天野たち。しかし、スコアボードを一瞥したレノマさんは言う。

なんだこのザマは。
テメェら、負け癖つけてんじゃねぇ!!

しまった。レノマさんは極度の負けず嫌いだった!
そういえば、昼の遊びの野球のときでも史郎さんのチーム相手に負けず嫌いを見せてたなぁ。
レノマさんが腕を振ると、一斉に27の連中が横並びになる。
なんだ、何が始まるんだ?まさか、一番端の奴を殴ったら、そのままドミノ倒しになるのか!?
と思ったら、そういう話ではなくちゃんと全員殴ってくれるようだ。
もちろんリクも含めて全員殴られます。ドオオオン。

その後、松尾を立たせるレノマさん。何かと思ったら、どうやら自分を殴らせるつもりらしい。
このパンチは気合を入れるためのものである。ならば自分も受けなければならないってことか。

天野は言う。この運動会、どうしてもリクには勝たないといけない理由があると。
それを聞いたレノマさんはリクに聞く。勝ちてえんだな、と。
鬼道院を見て、肯定するリク。

まかせとけ

笑みを浮かべ言うレノマさん。

いくぞオラァッ!!

ボスの号令一下、雄叫びをあげる27。いやぁ、レノマさんは本当に格好いいなぁ・・・
全く持ってめちゃくちゃなヤローだと評するリク。
でも、オメェと同じ工場でよかったと思うリク。
やぁ、なんだか凄くいい間柄になっているんじゃございませんこと?

この様子を静かに眺める鬼道院は何を思う?
割と仲良くしているように見えるのだが、満足なのだろうか?
下手したらリクの転房なんて話を持ち出してくるかもしれない。それはやだなぁ。レノマさんの出番が減っちゃう!

ともかく、今の競技である。
熱血している27をウザイ奴らだと罵る史郎さんの舎弟。
しかし、史郎さんは熱く震えていた。ええやないかァ!!
もろ肌脱いで吠える史郎さん。

かかってこいやー!男の勝負やぁぁ!!!

ウゼェ〜
舎弟も思わず呟く史郎さんの暑さ。やっぱり男の勝負は裸だよね!
上着だけ脱げない仕組みのツナギだが、腰の辺りで結んでおけば大丈夫ってわけだ。

お互いのボスを先頭に立て、睨みあう26と27。
今、レノマさんと史郎さん、2人の野獣の戦いが始まろうとしている!

これはいい肉弾戦になりそうな予感ですな。
体格的には史郎さんが有利だが、レノマさんは技にも長けていそうな感じである。
スッキリとした決着を見せて欲しいとこですな。

昔、史郎さんが一撃でレノマさんに蹴り倒されたことがあったが、まあ、アレは不意打ちでしたし。
指鳴らして喋っている最中に蹴るなんて酷いじゃないか!
あれでガクガクしてたけど、まだ倒れたわけでもなかったですしね。
谷村の横やりが無ければ、あの後復活した史郎さんとの死闘が繰り広げられてたはず。ハズ。

というわけで、今回の戦いで史郎さんの汚名が返上できることを期待しています。



第36房 肉弾  (2011年 48号)


レノマVS史郎。超重量級のバトルが始まる。

足技が得意そうなレノマさん。体格をいかして正面からぶつかっていく史郎さん。
その攻防は一進一退。どちらが勝つかわからない見事な戦いである。
2人の戦いに沸き返る運動場。
棒倒しに参加していたはずの他の面子も黙って2人の戦いを見守るようになっている。

来賓席では、刑事施設視察委員会の委員長、高田さんが怯えている。
刑務所とはいえ、こんな暴力を野放しに・・・
なんて言ってるけど、男同士のタイマンは暴力とは少し違うんじゃないですかね?
格闘技を鑑賞している気分で見ていれば良いのに。
まあ、下手すると椿のときのように目玉潰したりしかねないけど。
鬼道院以外の来賓が眉をしかめているのが気になる。育ちがいいってことなのだろうか。

止める必要はないという鬼道院は、2人の履歴を確認する。この装置なんだかいいな。カッコイイ。

佐々木麗乃真 18歳。スラム出身。3人殺害で懲役28年
江田史郎 18歳。スラム出身。同じく3人殺害で懲役20年

レノマさんの情報は前からあったが・・・史郎さんも18歳だとぉ!?
9年前の話をしていたとき既に立派な体格だったというのに。
まあ、史郎さんだしなぁ。きっと史郎さんは子供のころから立派に史郎さんだったんだろう。
ミルク飲ませてくれやとか赤ん坊の頃から言ってた可能性だってある。

というか、史郎さんも3人殺害か。あの史郎さんがねぇ。
椿のときのように理由がありそうですな。その過去の話にも期待したいところ。
同じ3人殺害で刑期が8年も違ったりするのか?まあ、レノマさんは余罪が多いか。

スラムの猛獣同士勝手に傷つけあればいいという鬼道院。
それでも人権がと気にする高田さん。

獣に人権などない
人権ごっこがしたければ、普通の刑務所ですればいい。
ここはスラムのクズが集う特級刑務所。極楽島だ

礼儀正しい装いも捨てて語る鬼道院にビビる高田さん。外見どおり期待はできそうにない人だなぁ。
それにしても、スラム出身が集められる刑務所だとは思っていたが、年齢で区別されているのかな?
レノマさんも史郎さんも椿も18歳以下であるし、少年院のような感じである。
そうなると、20歳になったら転房とかあったりするのだろうか?謎だ。

力比べの体勢に入っていた2人。そろそろ決着をつけようと動き出す。
レノマさんの膝蹴り、後ろ回し蹴りが史郎さんの頭部に決まる。
だが、史郎さんはそれで崩れ落ちることはなく、レノマさんの胴体を抱え込み、持ち上げる。

往生せえやああ!!

パワーボム!
その体格に似合った見事なプロレス技が炸裂。レノマさんが敗れた!?
と思いきや、技をしかけた史郎さんが片膝をつき、レノマさんは起き上がる。
技をしかけられながらも反撃を行っていたようだ。
あれがもし外れていたら危なかったというレノマさん。うむ、やはり史郎さんは強いんだなぁ。
不意打ちじゃなく&脱いでいる状態の史郎さんはとっても強い!
この2人の戦いはどっちが勝つかわからない。どうなるのか!?

ギュッ。

すれ違いざまに、史郎さんのズボンをずりおろし、足首の辺りで縛るレノマさん
トイレでは全裸で堂々としていた史郎さんだが、やはり公衆の場では堂々とはできないか。女性の目もあるしね。
見事なテクニックを見せ、去っていこうとするレノマさん。卑怯者ー!!

卑怯者?一生言ってろ、バーカ

なんとも小憎らしく味のある表情を見せるレノマさん。
ああ、こうしてみると10代なんだなぁと思える部分がありますね。いやぁ、いいなレノマさん。
極度の負けず嫌いのレノマさんですし、勝つかどうかわからない勝負に拘るよりこういった絡め手にでるのもらしい話ですな。

強い上にズルイ悪魔のようなレノマさん。
そんな人にどけと言われたら守るべき棒をかなぐり捨てて逃げ出すのもしょうがない。
結局1人で棒倒しを制してしまったレノマさん。
ボスーボスーと嬉しそうに駆け寄る27の皆さん。働けよ。まあ、他の競技で既に活躍はしてるからいいけど。

棒倒しの棒の先端に刺さっている旗をリクに渡すレノマさん。

ほらよ、約束のもんだ

任せとけといった言葉の通り、勝利をものにしてくれた。本当、レノマさんは頼れるボスだなぁ。
逆転優勝を果たした第27木工場。
次回はリクと鬼道院の接触になるわけだが、どんな展開になるか?
いきなりタイマンが始まったりして。
そして、リクに敗れた鬼道院は慣例に従い、特別懲罰房に入れられると。アレ?



第37房 対峙  (2011年 49号)


『棒倒し』の勝者は第27木工場。そして、逆転優勝でございます。やったー!

これでリクは鬼道院に近づくことが出来る。
あの日、13歳の誕生日の次の日。
リクが交番を飛び出して10分もしない間に、鬼道院はおじさんと争っていた。
その場でたまたまケンカになったのではない。
間違いなく、鬼道院はハナっからおじさんを殺すために交番に来たんだ。
そこまでは理解したリクだが、やはり何故殺されたかはわからない。

鬼道院の悪事を突き止めたから、なんてのは読者視点でしか知らないことですからねぇ。
リクがこのことを知っていれば、脱獄後の鬼道院打倒の道も見えるものなのだが。

とにかく、今は、おじさんを殺した理由、その濡れ衣を着せ、リクから全てを奪った理由を聞き出す。
もし、鬼道院が答えなかった場合。その時は・・・その時は・・・!!
我知らず拳を握り締めるリクを心配する天野。よい仲間であるな。

さて、念願の優勝を果たして凄く嬉しそうな谷村看守部長。
そんな谷村をレノマさんはほとんど相手にしていない様子。目を合わせようとすらしねぇ。
まあ、谷村は北島さんの第26木工場に勝てたことが嬉しくて仕方ないようで、そんな態度も気に留めない。ゆかいゆかい。
さらに、背景をキラキラさせて栄光の表彰式だ!とか言い出す。光るな!

優勝した工場には、警視総監の鬼道院から優勝トロフィーが授与される。
刑務所の運動会でもそういうものがあるのか。凶器の貸与になったりしないのかね。

優勝、谷村看守部長率いる第27木工場!!
バンザ・・・

一人で盛り上がってバンザイまでしようとしてしまう谷村。何可愛いことしてんだよ、お前ェ!!
優勝した時は喜んでいた27の連中だが、いつまでも喜んでいる気はない。
優勝は目的であり、表彰台にリクを送り出すという次のステップが待っているのである。

代表者前へ、の言葉で前に出ようとしたレノマさんに、俺に行かせてくれと頼むリク。

俺ぁ、あんな野郎からトロフィーなんか受け取りたくねぇ。
お前が取ってこい。命令だ

おやおや、レノマさん。素直じゃないですなぁ。
ボスの威厳を保ちつつ譲ってあげるレノマさんは本当いいボスだ。

そのレノマさんに礼を言うリク。そして、表彰台に送ってくれた皆にも礼を言う。
突き出したみんなの腕を、己の両腕で打ち鳴らして前進し、ついに鬼道院と対面。
渡してきたトロフィーを持つ手を掴み、聞く。

どうして・・・おじさんを殺した・・・!!

その質問に満面の笑みを持って答える鬼道院。

あんなクズは、死んで当然だ

テメェこの野郎!!
まあ、まともに答えるはずはないですわな。
自分が失脚しかねない証拠を掴んでいたので殺しましたよー、なんて言えるわけがない。
さすがにそこまで抜けていてはラスボスの資格もなくなってしまいますわな。

殴りかかろうとするリクをスタンガンで迎え撃つ鬼道院。卑怯な。
倒れこんだところに刑務官たちの追撃。ドゴドゴ。

鬼道院は下がり際、刑事施設視察委員会の高田さんに、人権とやらはもうよろしいのですかとイヤミを言う。
刑事施設視察委員会とやらにはちょっと期待してたんだけどなぁ。
委員長がこの有様ではあんまり期待ができそうにないな。
ボコられているリクを助けてくれたのは女医の虎沢愛さん。立派ですな。

気絶したリクが目覚めたのは夜。運動会は終わった後です。
警視総監に殴りかかるとか、かなりの大事だけど、懲罰はなかったのかねぇ?
来週罰を受けるなんて話にならないといいけど。

目を覚ましたリクが外に目を向けると、お月様が夜を照らしていた。
お月様。
子供のころのリクはお月様につっけんどんな態度を取っていた。そんなリクにおじさんは言う。
月は、静かに、誰にでもまんべんなく・・・明るく照らしてくれている。

お月様は、まーっ暗な夜の闇を照らしてくれる
わしらが夜道で迷わんようにな。
優しいじゃないか。

まるでおじさんだ。俺もそんなふうになりてえな

リクにとっては、月はおじさんを表す存在でもあるのか。
これまでも、様々な場面で月が出てきておりましたが、今後も出てきそうですな。
月を見ると、どうしてもおじさんのことを思い出してしまうリク。

脱獄して、敵討ちするっていって、まだなんにもできてない。
リクは一人涙する。

敵を見つけたとき、リクの中には敵討ちの念があった。それによって刑務所でも頑張って生きていこうと思えた。
だが、今はそれだけではなく、第27木工場の仲間がいることによって救われている。
次回は久々に全員が揃った雑居房での話になる。
レノマさんとどのような話をするのか気になりますなぁ。
鬼道院がおじさんの敵だと教えれば、レノマさんなら有力な情報とか持っていそうだ。楽しみ。



第38房 娑婆  (2011年 50号)


大運動会優勝でニヤニヤしっぱなしの谷村。
トロフィーをいじり、朝日を浴びてキラキラしています。光るな!
そんな谷村の悪口大会が開かれる。なんだか和やかな状態ですな。頑張った甲斐があったか。

笑顔の谷村が、ひでぇ顔だったと笑うリク。だけど、リクもまたボコボコに顔を腫らしていた。
とはいえ、警視総監に殴りかかってそれだけで済んだのだから運がいい話である。
どうやら、視察委員のオッサンがまだ視察を続けているので、懲罰を免れたようだ。
一応役には立ってくれてるんですね、あのオッサンも。

27の一同が談笑している横で、レノマさんは肉体を鍛えていた。
なるほど。こうやって弛まぬ鍛錬を行っているから、あの肉体を維持できるわけか。さすがにボスである。
懲罰房でなまった体を取り戻さないといけませんしね。

なんだかんだで1位ってのは気持ちいいものだと思う一同。
来年も優勝を目指すか!天野の言葉にみんなで賛同する。連覇じゃー!

ここでリクがようやく、みんなに自分の刑期を話す。リクが喰らった刑期は30年。
さすがにこの長さには天野も驚く。
でも、リクにしてみれば長さなど関係ない。
元々脱獄をする気でいたから、刑期なんて気にしていなかったのだ。
だが、今は脱獄のだの字もできていない。何も。

この辺りはさすがにまだ子供ってことですかね。
脱獄を夢見たものの、それがどれだけ困難であるか気付くことができていなかった。
そして、もしそれができなければ30年もいなければいけない。その事実に今更ながらに気付く。

来年の今頃は脱獄している。
そう告げたくはあるが、もちろんそんなことは口走れない。大変だな。
そういえば、天野や松尾は刑期何年なんだろうな?
なんとなく地位が高い人ほど刑期が長い気がするし、長そうな気がするな。その罪状も気になる。

運動会にはパン食い競争もあったらしい。天野め。いい役をやってやがるな!
脱獄の話はまた今度にするか、というリク。話す気はあるんだ?
リクのために何かしてやりたい気持ちを持っている奴は多いが、さすがにそれは・・・
成功しても失敗しても、連帯責任になりそうですしねぇ。

シャバに出たら何がしたいかを語り合う一同。
スラムに比べれば、飯も寝床もあるが、やはり自由がない。
やりたいことがほとんどできない状態で、毎日同じことの繰り返し。確かに大変だ。
天野は恋がしたいとか言い出す。
まあ、それは確かに野郎だらけのムショでは叶わないでしょうな。叶ったりしたら逆に大変だ!

松尾がやりたいのは、酒と煙草
ガキの頃のことを語る松尾。親父は靴の職人だったらしい。

朝必ず1杯だけひっかけてから仕事を始めるんだよ。
その際、最後の1口で右手と槌を清めんだよ。毎日毎日・・・
それがよ、朝日にキラキラーってしてよ、めちゃめちゃかっこよかったわけよ。
そして、仕事が終わった夜はさ!
1日の締めの儀式みたいにさ、うまそうに1服すんだよ・・・
その煙がさ、今度は月の明かりにフワァ〜〜ってゆれるんだよ・・・

松尾はそんな父の姿に憧れ、こっそり始めていたらしい。
それにより、憧れの親父に近づけたような気がしてたそうな。ほほう。いい話だなぁ。
そんな松尾は15歳。リクとは2歳違いであります。嘘だッ!!

この刑務所は過剰に成長しちゃう要素でも含んでいるんでしょうか?
レノマさんが18歳、松尾が15歳でリクが13歳。
こうしてみると、むしろリクがおかしい気がしてきたから困る。

木工場で作業。
天野はレノマさんに調達をお願いしようとしている。
1週間後は松尾の誕生日。そのために、酒と煙草を用意したいらしい。
調達には流石にリスクがある。それでも、松尾のためにお願いしたい天野。
気持ちはわかるが、それはなぁ。リスクを背負うのはレノマさんであるし、難しい。
すいませんでしたと謝罪する天野。
そのアマノに、そんなにすぐあきらめるぐれえなら最初から来るなというレノマさん。

違うっすよ!そんな軽い気持ちじゃねぇっす!

あいつがめちゃくちゃ喜ぶ顔が見たいと天野は言う。
確かに可愛い顔しておりましたけどね。15歳と判明したせいか、顔つきが少し若くなってた松尾。
仕事中の私語ということで訓戒を受ける天野。
その背中に、レノマさんは言葉を投げる。

だったら作ればいい。
不自由に甘えて慣れてんじゃねぇ。自由は自分で作り出すもんだ

さすがに力あるボスは言う事が違う。いいボスだな、ほんと。

その夜。松尾が寝たのを確認し、レノマさん以外の4人を起こす天野。
1週間後の松尾の誕生日パーティーを祝う計画を立てる。
誕生日に酒と煙草をプレゼントしてやるんだと喜色満面で語る天野。
確かに、それは喜ぶでしょう。でも、それらをどうやって手に入れる?

そりゃあ、あの・・・つ、作るんだよ。

1週間で作り出すとか、そんなことができるのか!?
煙草はまだしも、酒を作るなんて、そんな短期間で出来るとは思えない。
仮に出来たとしても、巡回をどうするのか。
酒も煙草も独特の臭いが残る。寝たふりしても絶対にバレるシロモノだ。
心情的には祝ってやりたいが、パーティーは現実味に欠ける。難しいものですな。

天野は静かに語る。
自分は誕生日パーティーなんて、やったこともやってもらったこともない。
でもよ・・・思いついちまってから、ワクワクしてしょうがねえんだよ。
こんな不自由でクソみてえなムショ暮らしでもよ、
誰かに祝ってほしいじゃねえか・・・誰かを祝いてえじゃねえか・・・

きっとどっちもめちゃくちゃうれしいと思うんだよ、と語る天野。
その天野に伝えるリク。それは、誕生日を祝ってくれたおじさんとの思い出。

俺、知ってる・・・めちゃくちゃうれしいんだ

祝ってくれる人がいる。
そんな普通が、かけがえのない喜びだった。
うむ、やはり心情的にパーティーはしてあげたいところだな!
酒煙草がなくても、気持ちだけでどうにかならんものか?

レノマさんが今回も寝たふりして話を聞いているのが意味深ですなぁ。
酒と煙草の作り方だけ教えてくれたりして。どういう展開になるか楽しみだ。



第39房 共感  (2011年 51号)


天野の提案する松尾の誕生パーティに皆は反対する。
その時リクは語った。誕生日のお祝いって、ホントにうれしいんだ・・・と。

よかったぁ〜〜って。
生まれてきてよかったーって。
自信がさ、持てるんだ。
どんなにつらい毎日でも・・・もっと生きたいって・・・思えた・・・

そう語るリクの表情は辛そうである。楽しいはずなのに辛そう?何故?
ノギの質問に答えるリク。
13歳の誕生日。おじさんは1日間違えていた。
間違えていただけなのに、忘れていたんだろ!っておじさんを責めたんだ。
そのすぐあとに、おじさんは殺されたんだ。
最悪の時間だった・・・
でも・・・でも・・・!!
うれしい時間だった〜・・・

毎年、毎年、必ず。
俺が生まれて生きていることを祝ってくれる人がいるって・・・
すっごく生きる支えになってたんだよ・・・
こんなこと、照れくさくて言えなかったけど、本当に嬉しかった。
ありがとうおじさん。本当にありがとう・・・

リクの搾り出すような言葉に聞き入る一同。
そんなに、いいものなのか。誕生日祝い・・・
やってみたい・・・
やろう。やるぞ。

リクの手に皆の手が重ねられる。どうやら、思いはひとつになったようだ。

成功させよう松尾の誕生パーティー!!エイエイオーッ!!

楽しいことになってきましたね。
困難はあるでしょうが、なんとかしてやりとげようという気になったようだ。
プレゼントは酒と煙草。これを俺たちで作る
それにはどうすればいいのか、考える。

須藤君は、昔読んだ小説の知識を持ち出す。
桃の缶ヅメにパンを浸して発酵させてお酒を作るという方法だ。
でも、これが本当にできるものかはわからない。物語の話ですしね。

煙草は葉っぱを乾燥させて作る。とはいえ、どんな葉っぱでもいいというわけではない。
だから、明日の運動の時間に外で代わりになりそうな葉っぱを探す。
と予定したが、予報では明日か雨らしい。
さらに、誕生日までの献立に桃はない。果物は明日のバナナだけである。

どうしよう。

せっかくやる気になったというのに、困難が立ちふさがる。
どうしても酒タバコがないといけないというわけじゃないと思うけどねぇ。
とはいえ、やる気になったんだからなるべく妥協はしたくない。考える天野。
桃じゃなくてもいいから、とにかく缶ヅメを手に入れて・・・

ダメだ。

考える天野に、いきなりのダメ出しをするレノマさん。

リク。誕生日ってのは、そんなにいいもんなのか

レノマさんの問いかけに、ああ。と答えるリク。
かすかに微笑むレノマさん。ふむ。
レノマさんのおじさんは誕生日を祝ってくれなかったんでしょうか?
育つまでは優しかったんだし、やってくれそうなもんだけど。
リクの返事を聞いて、そのころのことを思い出したという微笑なのかもしれませんな。

レノマさんはムショに入って長い。酒の作り方も心得ている。

まあ、見てろ

頼もしいボスですなぁ。そりゃノギも思わず敬礼しちゃうよ。お調子者め。

まずは翌日の配色時に何かを仕入れる。
その仕込みの間、松尾には目隠しをする。
さらに、松尾以外の全員バナナを残す。不思議に思う松雄。そりゃ不思議に思うわな。

本人に隠れてパーティーを催す場合、しばらくは本人がハブられるという現象が発生する。
それはそれで淋しく思ったりするのだが、まあ、パーティーすれば帳消しですよね。

レノマさんが仕入れたものがなんであるかはとりあえず不明。
バナナと合わせて酒にできるものなんでしょうかね?
バナナの皮を使ってタバコをこしらえたりするのかしら?その辺りはわからないので、楽しみだ。

さて、誕生日前夜。
床下にはレノマさんが仕入れた調達品のストックがあった。
注文が来てから調達するんじゃなく、常に仕入れて備蓄していたのか!スゲー量だ。

これだけ調達できるなら、酒と煙草くらいなんとかなるんじゃないか?
と思うが、谷村は自分が欲しいものしか捜検で見て見ぬフリしないらしい
酒も煙草もやらない谷村は、抜き打ちの持ち物検査でそれらを見つけたら即懲罰を行うらしい。
ズルい奴だ。
でも、逆に言うと、自分が欲しいものなら没収せずに放っておくのか?
つまり。この中のどれかが贈り物になるんだ。フフフ、どれが来るかな〜とか考えていたりするんだな。谷村め。
まあ、没収すると自分のものにならないからという判断なんでしょうけどね。

さて、調達物の中からひとつ選択する。
翌日の昼。工場で谷村にワイロを渡す。ものは指輪。
どうやら谷村は結婚記念日5周年を迎えようとしているらしい。奥さんにどうぞってことだ。
そのかわり、今夜の巡回はゆるくしてくださいと頼むレノマさん。
来年の運動会も優勝したいんですよね、などと言われれば谷村も断る理由はない。
騒ぎにしないという約束で交渉は成立した。

ふーむ。谷村結婚してるのかー
結婚記念日に贈り物とかしてるのかー
結構な愛妻家なんですなぁ。なんだか谷村が段々人間味に溢れてきてるんだが。どういうこっちゃ。
まあ、実は恐妻家という説もなくはないか。それはそれでネタ的に美味しい。

18時。
松尾が楽しんでいる最中にテレビを消すレノマさん。何をする!
まあ、それよりも楽しい時間がになる予定ですからね。

ハッピバースデーツーユー♪
ハッピバーヅデーツーユー♪
ハッピバースデーディーア松〜尾〜♪
ハッピバースデーツーユー♪

本人も忘れていた誕生日を祝われる松尾。
自由なき島で初めての誕生日パーティーが開催される。

さあ、パーティーの始まりだ

怖ェ!?
レノマさんが真面目な顔でパーティーの始まりとか言ってる!何のパーティーですか!?
血沸き肉踊るパーティーになりそうだ・・・!何をするっていうんですか!
いや、誕生日パーティーだとはわかっているんだけど・・・怖い!

これがまた、他の連中が可愛い笑顔だったりするものだから、余計にレノマさんの怖さが引き立っている。
菅くんですらいい笑顔を見せているというのにもう、レノマさんったら。

さて、酒と煙草は無事用意できたのでしょうか?
次回予告では監獄フリーダムになるか?とあるが、さすがにそれは。
酔ったノギが暴れるぐらいならあるかもね!



第40房 乾杯  (2011年 52号)


松尾智弘16歳の誕生日会がついに決行される!さぁ、パーティーの始まりだ。
盛り上がる皆に比べ、突然の申し出に戸惑うばかりの松尾。そりゃそうだ。
なんせここは刑務所である。パーティーなんてする自由はない。本来ならば。

松尾の、できるわけがないという至極もっとも意見にみんな笑顔で返す。
レノマさんが丁度見切れているのが気になる。笑顔なのか?どうなんだ?

天野がゴソゴソと何かを取り出す。これは・・・煙草!?
でも、なにやら文字がぎっしりと書き込まれている。ああよ!紙は辞書で出来ているのさ。
葉っぱの代わりはバナナの皮が用いられている。それをしっかり乾かして砕いたものだ。
なるほど、やはりバナナの皮を使ったのか。

バナナの皮が煙草の代わりになるのだろうか?
須藤君の解説。
その昔、バナナの皮には向精神物質が含まれるって都市伝説が流れて、それで煙草の代用にする人もいたらしい。
だが、アメリカの研究機関が物質の含有をキッパリ否定している。つまり代用にはならない。
今回用いたのは、極楽島の伝統によるものだ
レノマさんは語る。

俺が投獄されて間もない頃、煙草好きの囚人と同房でよ。
どうしても煙草が吸いたいそいつがすがるような思いで作り上げた発明品よ。
煙草の葉っぱとそっくりな色合いといい、入手の手軽さといい、バナナ煙草。最高じゃねぇか。

いいか松尾。このムショ特製煙草をうまく吸うコツは、本物だと信じきれ

信じればなんでも上手くいただけますよね。想いの力は偉大だ。
なんにしても、ボスが、みんなが送ってくれた物というのが嬉しいのだろう。感激する松尾。
それでも、煙や匂いが残ることを気にする松尾。まあ、その辺りも手を打ってますので安心なさい。

ライターなんてものはあるはずはないので、これも自作である。
シェーバーの電池、シャーペンの芯、ティッシュペーパーの3点セットで簡単便利特製刑務所ライターの出来上がり。
なかなか面白いものですな。さすがにレノマさんは知識が豊富だ。

いよいよバナナ煙草に火がつく。煙を吸い込み、一気に吐く松尾。プァッハァァ。
とてもよい笑顔になっている。最高だな。
だけど、それで終わりじゃない。もう一品ある。もちろんこれ、だ。
炊場から消毒用エタノールを分けてもらってそれで作成したのである。

一応消毒用のエタノールは薄めれば飲めないことはないらしい。エチルアルコールですしね。
まあ、刑務所にでも入っていない限りは真似しない方が無難でしょうけど。

それでもそのままじゃさすがにアレなのでバナナを漬け込んで水で薄めてある。
バナナ風味の刑務所ハイってなとこですな。バナナは皮だけでなく実も使うのか。バナナ凄いな。
そのバナナハイ。うまそうな匂いがするらしい。思った以上にバナナの香りがほどよいまろやかさを・・・
何か語りだした松尾。まあ、じっくり楽しみたいんでしょうね。ふふ。

一息で飲み干し、大きく息をつく松尾。プァッハァァッ。

かは・・・サイコーだよー

嬉しさに涙する松尾。その表情を見て菅君も言う。
いいもんだよ・・・誕生日って・・・楽しいな。と。
うむ、祝うのも祝われるのも楽しいものだ。よし、俺たちも飲むぞ!!

皆で酒盛りを始める。煙草と違い酒は量があるので皆で頂く。皆で飲んだほうが楽しいしね。
飲んで騒いでいる所に巡回が現れる。これは見つかったらタダではすまない。
だが、事前に取引していたので谷村が食い止めてくれる。助かる!
しかし、騒ぎにするなよと言われてたのに、思いっきり騒いでますよね。騒ぎの種類が違うけど。
なんだかんだで契約を守る谷村は割と扱いやすい御仁である。

酒を飲んで楽しそうにしている一同。ノギもムショでこんなに笑ったのは初めてだと言う。
シャバとは違い、心から楽しむことなんて早々出来ないのがムショである。
ある程度の生活は保証されるが、楽しむことができない。
少年達には厳しい環境ですわな。だから思う。早く出てえな・・・と。

酒盛りは続き、夜になったころ。みんな大分出来上がっている。
泣き上戸のノギ絡み酒の須藤笑い上戸の菅。人それぞれですね。
ノギが絡み酒だったら凄いウザそうだなと思ったが、それはないようで安心した。
酔った勢いでレノマさんに絡んだらどうしようかと思った。それこそパーティーという名の謝肉祭が始まるとこだったよ。

松尾は改めて天野に礼を言う。誕生日会を言い出したのが天野だと気付いているようだ。

俺ら・・・シャバに出られても仲良くしようや

いい言葉ですね。ムショでこれだけ仲の良い友人に出会えた。
天野や松尾にとっては不幸中の幸いといったところなんでしょうかね。頼りになるボスもいるし。

酒を半分以上残してほとんどのメンバーが酔いつぶれてしまう。
それまで1杯も飲んでいなかったレノマさんが、残りを全て飲み干してしまいます。お見事!
さすがにレノマさん。酒も強いか。豪傑といった感じですのう。

天野も酔いつぶれてしまいました。
それを見届けたレノマさんはリクの隣に移動する。
レノマさんは、他の皆が酔いつぶれて、リクと2人で話が出来る機会を待っていたようだ。
鬼道院とおじさんのことを聞いたレノマさんはリクに問いかける。

お前、脱獄を考えてるだろ

まさか、レノマさんから問いかけが出てくるとは!!
この問いにリクはどう答えるのか?
なかなか進まないと思っていた脱獄話が一気に進みそうな気配がしてきました。
レノマさんの協力があればなんだって出来そうな気もするが・・・さてはて。

いくらレノマさんとはいえ、脱獄の手引きがバレたりしたらタダじゃすまない。
もしリクが脱獄を望んだとして、簡単に手を貸してくれるだろうか?
脱獄した後はスラムのファミリーがどうにかしてくれるかもしれないけど、その前が問題ですな。
こうなれば、レノマさんも含めて27全員で脱獄するしかないのかもしれない。オオゴトだな。
鬼道院を倒し、極楽島の存在自体に異議を唱えるという流れでなんとかならないかねぇ。



第41房 青空  (2012年 1号)


お前、脱獄を考えているだろう。
誕生日回のどんちゃんムードから一変、いきなりの重大な話。酔いも吹き飛ぶわな。

大切な人を殺され、いわれなき罪をきせられる。
俺なら間違いなく脱獄を考えるとレノマさんは言う。
それに対しリク。どうやって脱獄すればいいのかさっぱりわからないんだと返す。
肯定しているってところですな。

リク・・・脱獄するぞ

手伝いどころか、脱獄するぞと来ましたよ!
保護房にずっと入れられている間に考えていたらしい。
いつのまにか、今の境遇に慣れてしまっていた。
ボスの座にあぐらをかいて居心地よくしていた。

そうじゃねぇ!!そうじゃねぇんだよ!!
満期で出た日には俺はもう37だぞ!37のオヤジになるまでこんな所にいてられるか!!

確かに。少年時代どころか青年時代もムショで暮らすことになるんだよね。
とはいえ、9年間は大人しくしていたレノマさん。仮釈とか待っていたりしていた。
でも、リクと会ったことで考えてしまった。明日について

オメェについての明日がおじさんだったみてえによ・・・俺にとっての明日はなんなのか・・・
自由への闘いよ。何にも囚われない自由・・・
俺の明日は、そいつを手に入れることだ

レノマさんの考えはわかりました。
脱獄するという話を他に誰か知っているのかと問うレノマさん。
リクが話したのはノギに一度だけ。
ノギか。この脱獄劇にノギは連れて行けないなとレノマさん。
まあ、普通に足手まといですしね。と思ったが、理由はそれだけではない。

ノギだけではなく、他の同房の連中を連れて行くことはできない。
天野と菅の刑期は8年。松尾が7年。須藤は6年。
残りの刑期に至っては、全員5年かそこらである。
30年と28年というリク達とは違い、ほうっておいても若いうちにシャバに戻ることができる。

そんな奴らを・・・絶海の孤島に浮かぶ巨大要塞みてぇなこんなとこから脱獄するなんてよ、
万にひとつも勝ち目のねぇ勝負に協力させるって話はねぇ。
死ぬかもしれねぇんだ。いやむしろその確率の方が高い

さすがにレノマさん。全員の刑期をしっかり把握している。
そして、ちゃんと考えていてくれている。いいボスであるなぁ。
昔ノギをいじめていたのも躾の一環だったと考えることにしましょう。
ノギを鍛え上げるための愛のムチだったのだよ!少々無理があるか。

死ぬかもしれない脱獄劇であるが、それでもレノマさんは外に出たいと考えている。

たった1日でも構わねぇ・・・あの青空の下をよ・・・
何も考えねえまま、風の吹くまま気の向くまま自由に走りてえ

大型のバイクにまたがって走るレノマさんの絵は似合いすぎていて怖い。
ボスとして祭り上げられていても、ここにはそういった自由はない。
自由に太陽の光を浴びることもできない。だから、出たい。うまいものも食べたい。

協力者。この言葉がリクには衝撃的に思えている。
思いつかなかった。なぜ、1人でやらなきゃとならないとしか考えられなかったんだ俺は!!
協力者・・・協力者!!
し、しかも!すぐそばに・・・こんなに頼りになる奴がっ!!

けど!

レノマさんは信頼に足る男である。
短い間柄であるが、それについては疑いようもない。
そんなレノマさんが協力してくれるというのであれば、これほど頼もしいことはない。
しかし、レノマさんは凶悪な犯罪者である。
殺しの時の理由はともあれ、その後はスラムでもいろいろやってきていた。
どのぐらいの悪さをしてきたかはわからないけど、椿の時の話からして、少なくとも盗みとかはしてそうだ。

そういった凶悪な獣を解き放つことをよしとしないリク。
そんなリクに問いかける。

だったらテメェ、1人でできんのかよ!!

んならぁテメェはぁ!シャバに出ても悪さしねえって誓えんのかよ!!

吠え返すリク。純粋ですなぁ。13歳の少年らしいと言えなくもないか。
しかし、自分がとても大変な状態で、すがりたくなるような状態でそういうことを気にできるのは凄い。
一も二もなく協力を願うのが普通なところであるが、さすがと言うか。
レノマさんもそういった反応が来ることは予想していたのかもしれない。
リクの返しにも悪さしないなんて誓えるわけがないと返す。

そん時ゃ俺がテメーをぶっ殺すぐらい言え。じゃなきゃ脱獄なんかやめておくんだな

友情か道徳か。リクに究極の選択が与えられる。
まあ、実のところ、脱獄囚となったレノマさんが悪させずに生きられるはずがないんですよね。
それについてはリクも同様なはずなんだが、そこまではまだ考えられないか。
普通に仕事につくこともできないでしょうし、隠れ住むしかないんですから。

まあ、リクに関しては無実であることを証明する闘いに勝てばいいんですが・・・それも時間がかかるしなぁ。
結論としては、レノマさんと協力するしかない。
でも、それを簡単に認めてしまうことができるのかどうか。
リクの主人公としての答えに期待したいところです。
あと、同じく刑期の長い史郎さんや、長そうな椿はどうするのかも気になりますな。



第42房 血族  (2012年 2+3号)


レノマさんに脱獄の話を持ちかけられたリク。
だが、許されざる殺人囚であるレノマさんを出してよいものかどうか。悩むリク。
誰がなんと言おうと、ここから脱獄すると言っているレノマさん。

ありえんのか、それとも、ありえねえのか

冤罪であるリクとは違い、レノマさんの殺人事件は実際に行われたことである。
まあ、理由が理由だけに同情の余地はかなりあるんですけどね。
とはいえ、その後も生きるために悪いことをしてきたレノマさんである。
協力は願いたいが、外に出してしまっていいものかどうか。悩むリクであった。
そんなリクに、辞典の背に隠していた刃物を渡そうとするレノマさん。

俺がシャバに出ることを恐れているなら、今のうちに俺を殺しとけ

リクに刃物の柄をつかませ、刃を己の首筋に当てる。
軽く引けばそれだけで頚動脈が切断でき、簡単に殺せる。

でっきるわけねえだろ!!

もちろん、リクにはそんなことはできない。

レノマ「そんなもんか!!テメェの覚悟は!!
リク「こんなもんだ!!

どんなもんだって感じですな。
リクは下獄以来ずっと考えていた。ノギと話をした時も、ラグビーの時も、椿とケンカしてた時も。
松尾の誕生日を祝ってる間も。ずっとどうすりゃ脱獄できるのか考えていた。
どんどん仲良くなっていってるみんなには内緒でずっと!!

こんな所に来て・・・友達なんか作るつもりなかった・・・
でも・・・少しずつ、少しずつみんなと友達になれて・・・
めちゃめちゃうれしかった・・・でも、怖かった・・・
このまま居心地よくなって・・・おじさんの敵討ちができなくなるんじゃないかって・・・

俺の覚悟はそんなもんだとリクは言う。
ここの仲間のことを考えたくらいでグラグラしてしまうちっぽけなもんである。

でも・・・必ずやりとげるんだ。なしとげてやるんだ!!
それが俺の脱獄なんだ!!

想いはある。だけど、どうやって脱獄すればいいかなんてのは全くわからなかった。
だから、レノマさんが協力者として名乗りをあげてくれたのはうれしかった。
こんな頼りになる奴は他にどこ探したっていやしない。

それに、俺はもう今のレノマはシャバに出ても悪さしないって信じてる・・・
でも、罪を償ってる真っ最中のお前が、シャバに出るのはやっぱりダメかもしれん・・・

硬いなあリクは。
そしてやはりお人好しでもある。
リクが想定している悪いことってのはどこまでが含まれているんですかね?
殺人とイジメはおそらくNGだろうけど、生きるための悪事もダメなのだろうか?
それに、罪を償っている最中といっても、スラムの住民の刑期なんて適当に決まってそうだしなぁ。

悩むリクに、道を示すレノマさん。
腕を切り裂き、カプセルのような何かを取り出す。

コイツは・・・耐え難い苦痛や屈辱に支配されそうになった時、
俺が俺のまま死ぬために用意していた、自決用の毒薬だ

そんなものまで用意していたのか!!誇り高いですなぁ。
しかし、それって刃物がないと取り出せないシロモノじゃないんですかね?
保護房ではどう頑張っても取りさせなさそうだ。

この毒薬をリクに渡す。
レノマさんも、もう俺は昔の俺じゃない、そう信じたいと思っている。
だが、まっとうな生き方を知らないというレノマさん。
ふむ、これは脱獄してからまっとうに生きるという話なのでしょうか?できるのか?
まあ、レノマさんの根性ならばあるいは。

そして、レノマさんは言う。リクは俺とは違うと。
あの掃き溜めのスラムでも性根を腐らせずに生きてきた。

だからもし・・・俺がシャバに出られた時、間違いそうになっていたら、こいつを俺の飯に盛ってくれ。

そこまでリクを信頼していますかレノマさん。
なぜそこまでオレを・・・と問うリクにこう返す。

お前は正義を間違わない。だからお前も覚悟しろ

そこまで言い切られたのなら、覚悟するしかありますまい。
顔を叩き、気を入れるリク。毒薬を受け取る。

けど・・・もしこれを使う時が来てしまったら・・・そん時は俺も半分飲んで死ぬ

ふむ、リクらしい発言ですな。思わずレノマさんの口元もほころぶ。
ついでにもうひとつ尋ねてみるリク。なんで俺を脱獄に誘うのか?俺は無力なのに。俺で・・・いいのか?
その質問に答えるレノマさん。

リクよ、月は闇夜を照らしてくれる
俺たちみたいなスラムの暗がりに生まれてきた迷える人間にとって、月だけが優しかった。
これから挑もうとする脱獄は明らかに無謀。一寸先も見えねえ闇夜も同然だ。だからこそ、俺は月がほしい・・・

困難に出くわした時、それでも明日を信じるお前のような月の明かりが、俺はほしい

かつておじさんが語った言葉。我々を優しく照らしてくれるお月様。
そんなお月様のような存在になれているという。これは嬉しいでしょうなぁ。
微笑むリク。そのリクと左腕を絡めて座るレノマさん。
さらに、お互いの左腕に刃物で軽く切り込みを入れる。
そして、お互いがお互いの血を飲みあう。血の盃ってやつですか。こいつはまた仁義モノっぽい光景だ。
刑務所で行われるこの儀式を月は照らしてくれています。なんという圧倒のシーンであるか・・・

今夜から、俺たちの共通の敵は、極楽島特級刑務所。
そして、俺たちは血をわけたブラザーだ

なるほど。
血の盃を交わすことで、血をわけだ兄弟となったわけだ!わぁ。

なんとも迫力と感動の展開でありました。
ようやく脱獄モノとして動き出していきそうな雰囲気ですな。
この先2人だけで脱獄を図ろうとするのか?
それとも史郎さんや椿たちも誘おうとするのだろうか?
天野たちに気取られずに脱獄案を練ることができるのか?いろいろと楽しみだぜ!



第43房 特級  (2012年 4+5号)


本日は刑務作業のない免業日。
休みは嬉しいが、若者としてはやることがない暇な時間は辛いもののようだ。
天野もヒマを持て余し、全く勝ち目はないけど須藤くんと将棋を指す。そして負ける。100連敗だ!

天野「勝てずともー 時間つぶしの 将棋かな〜」
松尾「おお!?俳句じゃねえか!スゲェ!」

相変わらず仲いいな、この2人。
やることないなら、筋トレのひとつでもやってたらどうなんでしょう。
天野たちが暇な理由はもうひとつある。ボスがかまってくれないからだ
え!?天野はレノマさんにかまって欲しい子だったのか!?かまってちゃんめ。
まあ、知識が豊富なレノマさんだし、暇を潰す方法もいろいろ知っていそうだからなぁ。

そのレノマさんは近頃リクとよく話をしている。もちろん脱獄についてだ。
こればかりは他の連中を含めて話すわけにはいかない内容ですからねぇ。

さて、テレビ視聴可能の時間となりました。
部屋にテレビなんてついてるのかよ。とか思ったけど、視聴可能な時間は限られているわけか。
でもチャンネルは自由なんですな。『殿様のブランチ』とかやっているらしい。ほう。
でも、今日はMHKの特番を見る。『激撮!裏日本』だ。

極楽島特級刑務所の今、と題されたドキュメント番組。
俺が映ってたりするんじゃねぇか!?と食いつく天野たち。お目出度いヤツラだ。
しかし、番組内容に詳しいレノマさんであるなぁ。

俺は毎月テレビ情報誌を購入してる

そ、そうですか。
まあ、こんな場所ですし、情報の収集は大事ですもんね。ええ。
ともかく、この番組はなかなか役立つ。
中に居るだけではわからない情報が外の視点からもらえるのだ。

極楽島特級刑務所の外観。ものすごい張り出した形状の建物である。建てるの難しそう。
リクがここに着いたときは、霧が出ており、さらに護送官にボコボコにされてよく見てなかった。
今、こうしてみると刑務所のデカさがわかってしまう。うむむ。

さて、極楽島の概要について説明がされます。
東京湾より南へ約350km。古くより流刑の地として知られる八丈島からさらに南、はるか絶海に浮かぶのが極楽島。
この地に刑務所が着工されたのは20年前。
当時日本は経済不況のどん底で、東京の低所得者居住区では治安の悪化が加速。
犯罪件数が前年比200%以上の年が続く異常事態だったという。
全国の刑務所も過剰収容が進み、パンク寸前だった。
そこで政府が動く。それまでの国内最大施設である府中刑務所は収用可能人数3500名。
それを遥かに越える4万人収容の世界最大級の刑務所を建設が始まったのである。

ところが10年前。
隕石による東京壊滅。治安の悪化は激烈を極め、受刑者は一気に増加した。
そこで政府は極楽島の収容人数を10万人に飛躍させるべく、建設途中の刑務所の大拡張に踏み切った。
それであんなに歪な形になっているんですな。拡張しすぎ。

さて、あらましは以上。続いては特級という言葉についてゲストと共に解説されます。
ゲストはこの方。極楽島特級刑務所の最高責任者であり、警視総監の鬼道院永周。お前かー!!
さりげなくフルネームが出てきましたね。名字どころか名前も一発変換できない名前かよ。

鬼道院の登場に歯をかみ合わせるリク。砕けるぞ。
怒りに震えるが、情報は大事である。こらえてチャンネルはそのままにしてもらう。

通常、刑務所は法務省の管轄である。だが、極楽島は超法規的措置として警察が管轄している。
それは貴方たち一般市民のためだと説明する鬼道院。
スラム内での犯罪は裁判を経ず、警察権力のみで投獄することが可能である。
加速する治安の悪化に対抗するには、逮捕から刑の執行までを警察が一気に処理できる迅速な体制が必要なのだ。

速いのはいいことだが、それは重大な人権無視では?と尋ねるレポーター。
それに対し鬼道院。人権はスラムの外にあるものだと一蹴

人権、ヒューマニズム、人類みな兄弟など、薄っぺらい倫理観は隕石衝突とともに吹き飛んだ

スラムを覆う巨大壁の建設プロジェクトは9年前、国民投票で可決されたものだ。
つまり、スラムの存在そのものを国民が認めたということになる。
ならば今更、安全地帯で正義を叫んでも詮無きこと
安全地帯ではないスラムに住んでみますか?と問われてそうしますと言える人がどれだけいることか。

スラムのクズを容赦なくブチ込み犯罪の根源を絶つ!!
こうして警察はあなたたち市民の平和を守るのです。

鬼道院の言葉は正しい部分もある。
安易なヒューマニズムが嫌いな人からの支持は高そうな気がするなぁ。
でも、そのスラムを利用して悪い事を知っているだけに、読者としては微妙な気分。
というか、スラムの外だってよっぽど酷いことしてるしなぁ。ライオンと戦わせたり。

というわけで、鬼道院の言葉に怒るリク。
だが、逸るなとレノマさんに制せられます。ふむ、よい関係ですな。

さて、次は初公開となる極楽島の衛星写真。
空から見た概要が紹介される。おお、これはよい情報。
周囲41.55km。人口約16万人
そのうち受刑者10万人が暮らす建物が島の約半分。
残りは刑務官2万人とその家族2万人が住むエリアとなっている。
そのエリアには映画館や図書館などがあり、ひとつの都市を形成している。
彼らの生活を支える人員、たとえば食道や薬局などの従業員が2万人ここにいる。
なるほど。合わせて16万人になりますな。

一般人もこの島にいることに驚く天野。
まあ、谷村の奥さんや子供がいるのだから、島に一般人がいてもおかしくはないか。
って谷村は子供もいたのか!次々に谷村の家庭状況が明らかになるなぁ。
お父さんのところのチームは運動会で一番になったんだよとか言ってるんだろうか。うわぁ。

島の状況を知り、それぞれ思いを馳せる。
天野はやはり女が一番らしい。脱獄してえ〜恋してえ〜。ハハハ。

しかし、写真を公開してしまって大丈夫なんですかと心配するレポーター。
確かに。政治犯の奪還を目論むテロリストには格好の情報になる。
だが、その質問に対し笑みを見せる鬼道院。

来るなら来い。追う手間が省けてありがたい

えらい自信でございますな。
生半可なテロリストぐらいなら撃退して見せるという自信があるってことか。
この世界の警察はどれだけ武装しているんだろうか。

さて、今回の情報で島には空港があることがわかった。
だが、空路での脱走は難しい。飛行機の操縦もできないし、潜伏しづらい。
やはり海路が現実的か。脱獄のポイントは3つ。
この建物からどう出るか、港までどう辿り着くか、そしてどうやって船に潜伏するか。だ。

調達屋であるレノマさんはどういうルートで調達しているんでしょうかね?
島の従業員にはレノマさんの関係者がいそうな気もするが、どうなんでしょう。

脱獄に向けて動き出したリクたち。
一方、極楽島には新入りがやってきました
しかし、その刑務所の入口で騒ぎが起きている。上陸早々揉め事とは何事か。
と刑務官がやってきたが、そこで見たのは・・・噛み千切った指を口から吹き出している男!
なんだコイツ!!見るからにヤバイ人じゃねーっすか。
ここまでわかりやすくヤバイキャラが出てくるとは。怖いわぁ。
果たしてこの新入りがどのような展開を生み出すのか!楽しみでございます。
27に来るのかな?それとも他の工場に収まり対立するのか?
次号は巻頭カラー!盛り上がってまいりましたぜ。



囚人リク 6巻


第44房 来襲  (2012年 6号)


タワー展望台から太平洋を遥かに見渡すと、水平線にカゲが映る。
これこそ極楽島特級刑務所である。

しかし、タワーは隕石でやられなかったのかね?
とか思ったが、思いっきり直撃してたよな。新しく作り直したのか。

さて、極楽島に新入りがやってきました。危ない奴だ。
いきなりケンカを始めて、相手の小指を食いちぎっている。グロイ。
刑務官が止めに入るが、意に介さず攻撃を続ける。ので殴り倒すしかない。

ケンカの原因は、単に髪型がむかついたから、らしい。
うーむ、どこまでも電波な野郎である。この新人がどのような波乱を巻き起こすことになるのか。

新人の話はとりあえずここまで。リクたちの方に話が戻る。
免業日は強制的に運動場に出される。
運動のアナウンスを受けた後、房から出て運動場に出るまで、よく観察して移動する。
その間にあった看守の目は12箇所

房がある廊下の先の通用門に1つ、そこを抜けてすぐにも1箇所。
そこからエレベーターホールまで曲がる角ごとに2箇所。ホールにも1箇所。
エレベーターの中にも看守がいる。エレベーターは地上85階から一気に運動場や工場がある1階に下降する。
エレベーターを降りて正面に1箇所。そこから検診場の間に3箇所。検診場でも看守。
最後は運動場に出る直前に看守の目。

なるほど。確かに12箇所ありますな。
さすがは巨大刑務所。看守の数も半端じゃないようだ。
レノマさんが言うには、さらに監視カメラが18箇所、見える場所に設置されていたという。
さらに、外からは見えないように最低10箇所は設置されているだろうとのこと。
つまり、この距離で40箇所看守の目があるということになる。どこまで厳重なんだよ・・・

掴みきれねぇ。抱えきれねぇ。俺たちの敵は、規格外に巨大だ

改めて、脱獄が困難な場所であることを思い知らされますなぁ。
この号のチャンピオンの表紙にリクがいますが、横には「夢はでっかく!脱獄!!」と書いてある。
見たときは、でかいのか?と思ったものだが、これはでかい夢と言わざるを得ませんな。

こんな巨大な刑務所でも、ゴッキーは自由に出入りできる。保護房にもいたな。
このゴッキーが今後の伏線になるだろうか。ならないだろうか。とりあえず覚えておこう。

就寝の時間。だが、突如サイレンが鳴る。目を覚ます囚人達。
さらに電子ロックがかかり腕が封じられる。何が起きたんだ?脱獄騒ぎか?先を越された?

極楽島にサイレンが響き渡る。緊急事態。レベル4が発生したという
。 なんだか大ごとのようだ。非番の看守も総動員される騒ぎである。刑務所だけでなく、町にもサイレンが鳴っている。

リク達がいる房は地上85階。町はともかく、海は見える。
騒ぎが気になり、外を見た天野の目に飛び込んできた光景。
それは、海に浮かぶ数隻の船に、刑務所から砲撃を行っている場面であった。ドオオン。

我々「新東京革命党」は先月収監された田中一郎他26名の同志の解放を要求する。

どうやら、収監された犯罪者を取り戻そうとやってきたテロリストのようだ。
刑務所はこの要求を聞く気はもちろんない。砲撃を続行する。
しかし、小さい船には当たらない。このまま島東岸に回りこみ接岸し、一気に上陸を目指す。
テレビで島の地形は確認できてますし、行動に淀みはない。
だが、テレビでは明かされていない情報というのはいくつもある。
小さな船の前に立ちふさがる巨大な船影。
警視庁が誇る極楽島第2駆逐艦隊である。駆逐艦が配備されているのかよ。
さすがにこれが相手では小さな船など問題にはならない。粉々にされる。

だが、船は囮であった。
本命は空。ヘリにより屋上から近づく。壁づたいに降下して、警備が手薄になった建物内に侵入する。
そういった作戦である。が、これも通じない。
隠してあったため、衛星写真ではわからなかっただろうが、地下から対空ミサイル施設が飛び出してくる。そして発射。
ヘリは撃破されてしまいました。ううむ。まじで戦争ですなぁ。

誰もが外の様子に注意を奪われている中、ひとり冷静に観察をしているレノマさん。鏡を使い、廊下の様子を探っている。
通用門が開いている。これが巨大刑務所が見せた、小さな小さなほころびである。

確かに小さなほころびだ。だが、このほころびが巨大な穴を穿つ結果に・・・なるのか?

前回で極楽島の全景が明らかになり、そして今回で武装面の充実振りも明らかになった。
監視の目が尋常でないこともわかったし、脱獄がいかに困難か思い知らされてしまう。
もし、うまく船に乗り込んでも、気付かれたら海の藻屑になりそうな恐れがあるわけだ。ううむ。

しかし、運動場に移動するだけでも毎回検診場があるんですなぁ。
頻繁に裸にされ、身を改められるわけか。うーむ、嫌な話だ。たまらん。
こういうことがあるから、食事にも困るスラムにでも戻りたいと思ってしまうようになるんだろうなぁ。

だが、脱獄するには余りにも巨大な刑務所である。果たして2人は脱獄を果たすことができるのか?
仲間を増やすつもりはあるのか?危ない新人はどう関わるのか?
見所満載でありますなぁ。これからの展開が楽しみだ!



第45房 因縁  (2012年 7号)


夜中の襲撃の興奮冷めやらぬ囚人の面々。
起床の号令があるまでは喋ってはいけないという規則があるため、起きても布団でウズウズしているしかない。
起床の号令と共にハネ起き、夜中のことを話しだす。
元々単調な生活を強いられている連中ですし、こういった話題には飛びついてしまうんでしょうな。

しかし、天野の髪型
単行本4巻のおまけに描かれたとおり、起きたら自然に逆立つようになっているらしい。
最初の頃、どうやって刑務所でリーゼントにしているんだ?と疑問に思ったものだが、そうかクセ毛か。
自然にそうなっちゃうならしょうがないですよね。

大砲が装備され、ヘリまで撃墜する極楽島の守り。
外敵に対してあれでは、中からの脱獄なんて絶対にムリだよなと語る天野たち。
その通りだろうけど、今まさに脱獄を考えようとしているレノマさんは心中穏やかならず。
でも、脱獄のことを明かすわけにはいかないので、強張った顔でごちそうさまするしかない。怖いよ!

さて、いつもどおり工場で作業。
昼の運動時間に入るのだが、その前に伝達される事柄がある。
どうやらヘリの残骸が落ちて運動場の一部が使えなくなっているらしい。
って、使えるのが一部しかないって状態じゃないですか。

野球もできないし、いつもダベるのに使ってるベンチも立入禁止の中である。
しょうがないので、すみっこでダベることにする天野たち。結局ダベるだけか。

リクはいつも見ていないところを観察しようと歩き出す。
その頭の中には、昨晩の光景が焼きついている。
刑務所には凄い攻撃力があること、通用門の閉め忘れだってある、ということ。収穫のあった夜であった。
だが、リクはヘリが撃墜される姿が目に焼きついてしまっている。

目と目が合っちまったんだよ

それはキツイ。トラウマになりそうな光景だ。
未来の自分達もああなるのだろうかという恐れを抱いてしまいそうだ。
恐れを振り払うように頭を振るリク。
気付くと足元にはヘリの部品かなにか、見たことのないものが落ちていた
拾ったところで、看守に怒鳴られ、思わず部品を飲み込んでしまうリク。
果たして、この部品はなんなのか。
後の伏線に使われることでしょう。なんなんでしょうね。

悩むリクと同様に、レノマさんもこれからについて考えていた。
通用門を開けることが出来たとしても、それから先がわからない。
囚人がいけるところの観察と並行して、建物内部の見取り図が必要だと考える。

レノマさんにはシャバ時代の部下が囚人として刑務所に何人か入ってきている。
それらの部下に見取り図を手に入れさせるということも考えるが、それで手に入る情報もたかが知れている。
ならばどうするか。レノマさんの腕の見せ所といったところでしょうな。

なんて考えにふけっているレノマさんに絡んでいるハゲがいた。
普段使っているベンチに座られたということで因縁をふっかけているらしい。
このハゲ、ラグビー終了時に27を狙おうとしてたハゲじゃないか?
レノマさんの強さは知っているだろうに、無謀なことを。
案の定、ナイフを取り出して脅したところを返り討ちにされるハゲ。
一撃で腕と鼻をへし折られる。強いな、やっぱり。

ハゲが使おうとしたナイフは27が確保。
すばやくレノマさんから受け取り、証拠は土の下に。
なんで埋めちゃったんだろ?自分達で使えばいいのに。隠して持ち歩くのは大変でしょうけど。

ハゲは懲罰房送りとなり、レノマさんは訓戒を受ける。
これはハゲが喧嘩を売ったから、ということですかね?しっかり見てますなぁ。

その見ていた看守は、なんとも貧乏そうな様子。
伸びきった髪にしわだらけのシャツ。汚いままのブーツ。
そして黄色く変色した人差し指の爪。パチンコを打つ奴によくある煙草のヤニが染み込んだ跡だ。
恐らく負けが込んで散髪代もないか借金まみれなのだろうと推測する。
そこでレノマさんは看守に提案する。

ここでガリすればいいじゃないですか。無料ですよ。

ガリとは理髪のこと。刑務所では囚人が囚人の髪を切るらしい。
レノマさんの髪型も囚人の誰かがカットしたということであるか。腕のいいのがいるんだな。
まあ、彫り師がいるくらいだし、髪を切れる人もいるか。

看守の誘導を行い、うまくいったと微笑むレノマさん。
悪い顔だ。とても魅力的だ。
どのようにこの看守を利用するつもりなんでしょうね。

さて、この騒動から10日経過。
レノマさんにやられたハゲは骨が折れたので入院していた。
が、治ってもいないうちに懲罰房に送られようとしている。
嫌だと抵抗するハゲ。愛ちゃん先生に診察させろとダダを捏ねている
ふむ、愛ちゃん先生、囚人に人気なんですな。出番はあんまりないのに。

ハゲを懲罰房送りにしに来た看守だったが、抵抗されて果たせずにいる。
とりあえず、ハゲを壁につなぎ、会議に向かう看守。
壁につながれたハゲは、見るとはなしに懲罰舎の方を見る。
するとそこには、囚人に飛び掛られている看守の姿があった!

飛び掛っているこいつは、あの危ない新入り!?
どうやら、看守に殴られたことを根に持っていたらしい。だからっていきなり襲い掛かるか!?
しかも、指から鋼線のようなものを抜き出す。
それを一振りすれば、見事に看守の首が切れ、胴体と泣き別れに・・・なにをしでかす!!

ただのキレた暴力系のキャラかと思いきや、まさか平気で殺しまでやってくるとは・・・
しかも、この男、頭も回るところを見せてくれる。
死亡した看守のポケットから懲罰房をロックするボタン式のカギを奪い取る。
それを使い、自分の房のロックをかけた後、鋼線を使って看守のポケットに戻す。
これにより、自分は看守殺しには関わっていないとい主張するつもりなのでしょう。

だからって、殺しまでしてしまったんじゃあなぁ。
当人の房の前で死んでいるのだし、言い逃れれるかどうかわからない。

ちなみにこの男の名前は沢田拓児
スラムのギャング共に恐れられた殺しの請負人。スライス・デビルと呼ばれた男。
どうやら有名なやつらしい。ハゲも知っている。
そしてハゲはこの男を雇おうと考えている。レノマさんへの借りを返すために・・・

風雲急を告げる展開になりそうな囚人リク。
果たしてレノマさんはこのスライス・デビルと戦うことになるのか!?
というか、ハゲはどうやってこの危ない男を雇うつもりなんでしょうか。
というか、ハゲは看守殺しの目撃者という立場になるんじゃないのか?
目撃証言を迫られるだろうし、それで喋っちゃったら沢田は終わりの気もする。
さらに、喋ってしまったら雇うことも不可能になりそうな気がする。
喋らないなら喋らないでハゲは過酷な懲罰を受けることになるでしょう。アレ?ハゲ詰んでない?

殺しまで行う危険な男の出現に、ハード差が跳ね上がった刑務所。
脱獄する前にも大きな波乱が起きそうな気配がするぜ。



第46房 照準  (2012年 8号)


看守殺害事件発生!
殺された看守の名前は斉藤。無線の応答がないので、同僚が2人駆けつけてきていた。
斉藤はスライス・デビル沢田を出房させるために来ていた。
ならば、カギを開けたとたんに襲いかかったに違いない。

だが、沢田の房のカギはかかっている。トリックを仕込んだかいがありましたね。
カギは斉藤のポケットにある。密室トリックの亜種だ!
しかし、犯人はこいつに違いないと確信できる状況。だが、どうやって・・・までは看守の身ではわかるまい。

しょうがないので出房させる。
上手く行ったといった感じの笑顔を見せる沢田。キメェ!

目撃者のハゲについてどうなったか。
ハゲからしてみれば、沢田は雇いたい人間なので、バラすことはない。
なのでとぼけてみせる。看守たちは疑いの目を向けるが、それ以上は追求できずにいた。
そして、1週間後には懲罰房から出されるハゲ。
沢田も外に出られている。容疑が晴れたのか?
なんというか、取調べがずいぶん甘い気もするなぁ・・・
冤罪でもぶち込まれるような刑務所なんだし、疑わしきは罰するとかされると思ったのに。

監視カメラは故障していたらしい。
なるほどね。だからあのトリックもバレていないわけだ。
もちろん沢田は監視カメラが故障していたことを知って行動に移した。
危ない奴だが、そういった面での気配りはちゃんとできる男である。厄いなぁ。

懲罰房にはネズミが頻繁に出てくる。
それをひねりつぶし、食器孔から廊下に投げる。
すると、どこからともなくきっかり24秒で看守がすっ飛んでくるのだ
たかがネズミの死骸といえども、不審物であるのには代わりがない。
監視カメラで見て、不審物があるならば取り除かないといけないわけだ。

だが、そのその日は違った。30秒たっても、1分たっても誰も来やしない。
そこでピンと来たわけだ。カメラが機能してないと。
さらに、確認を行う沢田。
監視カメラに向けて吠えてみせる。
それに対し、殺された看守の斉藤は、自ら監視カメラが故障中とバラしてしまう。
こうして、誰の目にも映らない状況での殺しを完遂したわけだ。
いや、ハゲにはしっかり見られてましたけどね。ハゲを連行していた看守にも見られてたら終わりだったな。

ハゲに見つかったこと自体は沢田は気にしていない様子。

ここの看守は囚人の言うことを信じて証拠にするほどバカなのか?
それにお前なんかはさぁ、いつでも殺せるから。

それが余裕でいられる理由か・・・
証拠にするようなバカはいないだろうけど、証拠としてデッチあげるやつはいそうな気がする。
気に入らないからという理由で特別懲罰房に送るぐらいはやりそうな看守がいそうな気がするなぁ。
それをしたならしたで、沢田の恨みをその看守が買うだろうし・・・面白いことになりそうだ。

だが、今はそういう展開ではない。
ハゲが沢田に依頼する。許せない奴がいると。
もちろんレノマさんのことである。報酬は500万
ハゲは外の世界に髑髏会というチームを持っている。
沢田の刑期はスリによる2年という短期のもの。出たら金を受け取れるように話をつけておくとハゲは言う。

そのレノマさん。前にガリを進めた看守に話しかけている。
看守はさっぱりした髪型になっている。看守さん、モテるでしょう。だなんておべっかも出来るレノマさん。

女なんか興味はないという看守。趣味はパチンコだ。
たぶんそうだろうなと思っていたので、話を合わせるレノマさん。

レノマ「俺も好きなんですよ。『山物語』22連チャンしたことあるんですよ」
看守「ハッ甘いな!俺は33連チャンだぜ」
レノマ「おおお!スゲェ!

なんという営業トーク!レノマさんは本当に如才ないお人。
この看守が安月給だという言質を得てしまう。ならば、篭絡もたやすいと見るべきか。
してやったりといった感じの笑みのレノマさん。果たしてどのように利用するつもりなのか・・・
というところで、その背後を狙う者がいた。沢田だ。

ハゲの500万という依頼を受け、レノマさんを狙おうとしている。
まずは様子見。額はいいが、それほどのターゲットなのかどうか調べようとする。
後頭部に向かって小石を飛ばす。
これを、交わし、空中で小石をキャッチするレノマさん。
さらに、素早く振り向いて臨戦態勢を取る。抜群の危機回避能力に加え、戦闘体勢の移行の速さ!
おそらく、服の縫い目に武器を隠しているんだろうと沢田は推測する。

フフ・・・こいつはなかなかお目にかかれねぇ、極上の遊び相手になっちゃいそうだぜ・・・

レノマさんの凄さを見ても、怯むどころか楽しそうにする沢田。
殺しの請負人にターゲットにされたレノマさん。
脱獄も考えているというのに、こんな凶人の相手もしないといけないとは大変だ。

しかし、レノマさんは本当にパチンコをやったことがあるのだろうか?
なんせ刑務所に入るまではまだ小さかった。他の楽しみは色々知ってそうだけど。
パチンコは実際にはやっておらず、仕入れた情報だけで語っているのかもしれない。
俺は毎月パチンコ情報誌を購入している。とか言ってくれるのかもしれない。
自信満々で言われれば、それで納得しちゃう気がするから困るぜ。



第47房 理性  (2012年 9号)


脱獄のために、周囲の観察を続けるリク。
運動場で見張りの数を数えている。
高台に1人。と思いきや2人。と思いきやまだ奥にいたりする。
入れ替わり立ち代り姿を見せる見張りに、何人いるんだかわからなくなるリク。

ただ数えるだけなのに・・・我ながらこの「役立たず」感ハンパねえな

頭を抱えるリク。精神力はバツグンだけど、他は年齢並ですからねぇ。リクは。
観察を続けるリクの前に怪しい人影が現れる。
今日はボスと一緒じゃないのかと尋ねているが・・・何者だ?

一方のボスことレノマさん。
今日もガリを勧めた看守と話をしている。
看守は髪を切ってからパチンコに勝てるようになったらしい。運が向いてきた。
レノマさんの勧めに従ったからだろうか。よかったですね。
だが、恩着せがましい言い方はやめろと罵倒する看守。

うらやましかったら頑張ってさっさと出所しろ!
あ・・・そりゃムリか!お前の刑期はあと20年も残ってるんだったな。
けっへっへっへ。気の毒になぁ〜〜じゃあな〜〜

ムカつく笑い方だ。そりゃレノマさんも表情を怒りに染める。
そこに絡んでくるハゲ軍団。
ここでハゲ軍団のボスの名前が一文字さんと判明する。割とどうでもいい。
こないだのワビをいれるために、第3木材乾燥室に来いとレノマさんに声をかける部下のハゲ。
どうやら、リクを人質に取っているらしい。
でも、そんなの関係ない。虫の居所の悪いタイミングでそんな話をされて・・・我慢できるわけがない。

呼びに来たハゲを全員叩きのめし、第3木材乾燥室に到着。
人質を取られたからってワビを入れたりする気なんてさらさらない。
でも、リクはちゃんと返してもらう。俺の全取りだ!
そんな感じのレノマさん。だが、ハゲボスこと一文字は余裕の表情。
それもそのはず。この木材乾燥室には、スライス・デビルが待機していたのだ!

天井に足を広げて張り付いている沢田。器用なことだ。
ドライバーを取り出し、レノマさんに向かい襲い掛かる。
武器を取り出そうとする動きをいち早く察知し、手にしたドライバーを投げつける沢田。
ドライバーに右手を貫かれ、さらにとび蹴りを受けてしまうレノマさん。
こうして、闘いは始まった!

こいつは俺の獲物だと宣言する沢田。一文字を乾燥室から追い出す。
レノマさんが一撃でのびてしまっているはずもない。
角材でもう一撃かますが、素早く蹴りで反撃を行うレノマさん。
しかし、その蹴りをキャッチする沢田。
この体勢はアンクルホールドか?左足の関節が破壊されてしまう!?
だが、そうはさせじと残った右足で飛び上がり体を回転させるレノマさん。
そして、解放された左足で改めて沢田の顔面に蹴りを入れる。

乾燥室の機材からは勢い良く蒸気が噴出している。
これに触れたら火傷は免れない。その蒸気すぐそばに顔を近づけさせられる沢田。
これは怖い。それゆえか、必死で命乞いをする沢田。俺はただ雇われただけなんだよ!
しかし、それは油断を誘うための言葉にすぎない。
沢田ことスライス・デビルの必殺武器。ワイヤーがレノマさんの首にかかろうとしている!!

ワイヤーを首に絡めて、背負いのように一気に引く。
これでレノマさんの首を落とそうという話ですな。
だが、それは果たせない。沢田が最初に使ったドライバーを拾っていたレノマさん。
そのドライバーでワイヤーを伸ばし、切断を回避する!

俺のワイヤーが見切られた!?

驚きの沢田。そこにレノマさんが容赦なく蹴りを浴びせる。

こういう小細工は場所を選べ。水蒸気がついて丸見えだ

なるほど。ワイヤーがきらめいて見えたのは、演出じゃなかったんですね。
それでも、その違和感をきっちりと感じ取り、わずかな時間で防御してみせるレノマさんはハンパない。
防御に使ったドライバーを、今度は武器にしようとするレノマさん。

なめやがってこのガキゃあ!ぶっ殺してやる!!

振り下ろされるドライバー。だが、それを止めたのは、リク。
材木を入れる袋か何かに入れられていたリクが、レノマさんを止めたのでありました。

ダメだ・・・

殺人を止めるリク。
まあ、ここは止めないといけませんわな。
外に出たら、俺が止めると誓ったわけなんですし。
第一、さすがに殺しをしたら刑期が延びてしまう。のはまだしも、また懲罰房に入れられることになる。
脱獄を計画しているのに、何度も懲罰房に入ってなんていられないわな。

それにしても、沢田もレノマさんを殺した後はどうするつもりだったんでしょう?
看守の時のようにトリックを使って逃れる気だったんでしょうか?
ハゲ部下の一人を身代わりにするつもりだったとか?怖いねぇ。

ともかく、リクの声によってレノマさんは理性を取り戻したのでありました。
凶器を置くレノマさん。闘いは終わった。

まさかスライス・デビルとの闘いが一話で終了するとは思いませんでした。なんというテンポのよさか。
それでいて、迫力もあり、見せ場が双方あるよい戦いでした。
だが、沢田はこれで引き下がってくれるでしょうか?
目の前に武器を置いちゃったりしてるし、まだ反撃してきたりはしないだろうか?
念のためにワイヤーのついた指をへし折っておくぐらいはしたほうがいいかもしれない。
治療中にワイヤーのことも気付かれて取り除かれるだろうし、脅威はかなり下るはず。

そういった流れになるかは、今後の沢田の活用次第ですね。
果たしてスライス・デビルはこの刑務所でどのような役割を担うことになるのか。
うーむ、この先の展開が楽しみである。



第48房 矜持  (2012年 10号)


リクの声で我に返ったレノマさん。
沢田殺害は踏みとどまり、次はただじゃおかないと言い捨てる。
だけど、すぐ側に武器を置いちゃ、沢田が黙るわけもないですわな。

振り向いたレノマさんの足にドライバーを突きたてようとする沢田。
だが、もちろんレノマさんは予想していた。後ろ回し蹴りで吹き飛ばす。
そして、壁に沢田を押し付け、ドライバーで刺す!!

前回のラストで、武器を目の前に置くのは危ないんじゃないかと思った。
しかし、これは逆にレノマさんが攻撃を誘ったんじゃないかとも思える。
攻撃してこないならそれでよし。してくるなら、油断無く迎撃し、痛い目に合わせる。そんな作戦だ。

その痛い目に合わせてやるってなところで、看守たちがやってくる。
派手に人が吹き飛んでぶつかったりしてるし、大きな音がしてたんでしょうな。
このままではリクも見つかってしまうと危惧するレノマさん。
扉のようなものを蹴りつけ、注意をひきつける。
部屋には木材のカスなのかホコリなのかが舞い上がり、視界が遮られる。これでリクは見つからずに済むはずだ。

リクにもレノマさんの思いは伝わったようだ。
2人そろってしょっぴかれる必要はない。まだここの観察は続けないといけないのだ。

続けてろ!!

うーむ、やはりクールな判断力ですなぁ、レノマさん。

リク救ったレノマさんは、騒ぎを起こしたということで懲罰房送りになります。
この辺りの刑罰の判断はよくわかりませんな。
ハゲを一撃で沈めたときは訓戒で済んだのに、今回は懲罰房送り。
勝てばよいのか?ってわけでもないらしい。難しいものっすね。
まあ、前回と違い、どっちがケンカを売ったのか一目でわからなかったから両方罰するってことなのかな。

さて、残された沢田。
その耳にはドライバーが突き立てられ、壁に縫い付けられている。
これなら身動きもとれまいってことですね。
でも、命だけは救われたということでもあり、情けをかけられたと考える沢田。

この俺の・・・この俺の殺しがコケにされた
こんな屈辱はただの1度も・・・!!

叫ぶ沢田。
そこに黙らっしゃいと警棒の一撃。そんなことしたら耳が!?
耳から血の筋を引いて、壁から離れる沢田。うーむ、痛い。
さらに、別の看守の左ハイキック。なんかキレイな蹴りっすね。いえ、お世辞じゃなく正直な感想です。

沢田はレノマさんとは違い、懲罰房ではなく保護房送りになる。
というのも、この場にやってきた2人の看守のうち1人はパンチの看守。
この看守は、例の看守殺しの後、沢田を懲罰房から出したあの看守である。
パンチ看守は、どうやって斉藤看守が殺されたかはわからないけど、沢田が犯人だと考えている。

犯人は貴様だ。覚悟しろ。きっちりカタにはめてやる。

蹴りを叩き込むパンチ看守。
気付けば沢田の両腕は後ろに拘束されている。手枷を発動させたようだ。
その状態で、保護房に連行する前に痛めつけようとするパンチ看守。
拘束してから何分以内に入房させにゃならんという決まりはない。
ならば、今のうちにいたぶっておこうという判断を下す。特別懲罰房に入れればいいのに。

ともかく、木材室に沢田とパンチ看守が2人だけになる。
だが、沢田はそんなことを意にも介していない。
レノマさんに対する恨みに意識が集中しているようだ。顔面にペンチを落とされても気付いていない。

舐められたと感じたパンチ看守。ペンチを使った拷問を開始する。
沢田の口を開き、奥歯をペンチで掴む。引き抜く気か!?

斉藤は俺にとって・・・ただの同期じゃねえんだぞ。
苦楽を共にした・・・幼なじみの大事な友達だった。
聞いてんのか?この野郎・・・
斉藤がどれだけ無念だったか。先月赤ん坊が生まれたばかりなんだぞ!!
あんなに喜んでいたのに・・・やっと父親になれたってよ・・・がんばらなきゃって話をしてたのに・・・

斉藤看守にも家庭が、生活があった!
考えてみれば当然だけど、そういうことを言われると切ないですなぁ。
だけど、当の沢田にそんな意識があるものやら。
歯を引き抜こうとしたところで、ようやく声をあげる沢田。

やっとこっちを向いたか!苦しめ!もっと苦しめ!

ペンチの力で、歯がメリメリと割れる。
そして、音を立てて引き抜かれる歯。麻酔もなしでの抜歯だ!
この拷問を受けてのスライス・デビルの感想は?

あ・・・あの野郎・・・

全く意に介していない・・・?相変わらずレノマさんへ意識が向かったままだ。
やせがまんしてんじゃねえぞとさらに痛めつけだす沢田。大変だな。
思いっきり痛めつけても音を上げない沢田。痛みを感じないのか?

パンチ看守は沢田の経歴を調べた。
ここに来たのはスリで2年の刑。だが、スラムでは殺しの請負人として暗躍していたと。

人殺しが生業のうじ虫野郎にゃ痛覚もねえか!!くたばりぞこないの殺人マシーンめが。

このセリフを聞いて、やっと沢田が看守に目を向ける。
殺人鬼呼ばわりが気に触ったというのか?いや、その逆だ。

その殺人マシーンがなぁ、生まれて初めてのミスをしたんだぞ!!この悔しさがテメェにわかるか!!

こいつぁ、やっぱりイカれてますな。
こいつには何を言っても通じない。斉藤は・・・斉藤はこんな奴に・・・!!

沢田を蹴り倒し、もう一人の看守に保護房へぶち込んでおけと言い、走り去るパンチ看守。
ああ、パンチ看守の無念はどこへ向かうのか。

ハダカに剥かれ、皮手錠をされた沢田が保護房に放り込まれる。相変わらず不衛生なところだ。
血を吐き出し、横たわる沢田。その表情は苦痛に歪んでいる。

痛い・・・

一人になったところで、ようやく痛みを口に出した沢田。
意識が向いていなかったとはいえ、やはり痛いものは痛いはず。やはり我慢していたのか?
それとも痛いのは心だとでも言うのだろうか。確かに傷ついている・・・俺の自尊心がなぁっ!ってところか。

こんな男でも、月は優しく照らしてくれる
作品内では月の象徴として描かれているリク。
今回はほとんど沢田と関わることがなかったが、相対した時どう評するのでしょうか。
まあ、レノマさんみたいに同情できる過去があるわけでもなさそうだしなぁ。
あったとしても、殺人を続ける男を許せるはずもないでしょうし、沢田が仲間になるようなことはないでしょう。おそらく。

保護房にぶちこまれた沢田は今後どのように扱われるのか?
保護房といえば、椿はまだ中にいるのだろうか?
史郎さんのフルチン事件はそろそろ刑務所内では忘れられただろうか?
いろいろと気になりますな。



第49房 交渉  (2012年 11号)


沢田と戦ったことにより、懲罰房に入れられたレノマさん。
やはり一人ですることもなく過ごしていると、脱獄への思いは募るばかりのようだ。

出てぇ!こんなところから!!

設備やシステムをどれだけ備えていようとも、ヒューマンエラーは必ず起こり得る。あの通用門のように。
もし、同じ状況が発声した時、通用門を1つ上手くくぐり抜けれたとする。
だが、そこから先がわからない。どこに進めばいいのか、どこが危険なのかもわからない五里霧中の状態。

やはり要る!どう考えても・・・刑務所の見取り図が必要だ!!

レノマさんが今受けているのは軽屏禁。正座、もしくはあぐらをかく他に何もしてはならない刑である。
見張りが来るときにはちゃんと座っていないといけないわけですな。厳しい。
懲罰房の見回りに来たのは、例のパチンコ好きの看守。
運動場だけの巡回だけではなく、こういったところも見回っているらしい。
いろいろやることはあって忙しいが、あの給料じゃ割に合わないとグチを零しだす。
そんなこと言われましてもね。
それより、この房は蚊が多い。つい顔に止まった蚊を叩いて潰すレノマさん。
しかし、それを自傷行為とみなされ、軽屏禁の3日延長を言い渡されてしまう。ふざけんな!

この看守もなんともゲスい奴でありますな。
しかし、それでも。自由を得るためには・・・なんとしてもあいつを抱き込んで見取り図を手に入れる必要がある!
落とすならパチンコ中毒で金に困っているあいつしかいないとレノマさん。

しかし・・・もしも失敗したら・・・
その瞬間に脱獄の意図がバレて・・・すべてが終わる!
刑期も10年は増えるだろう・・・看守のチェックも厳しくなる。そうなりゃ・・・
もう2度と・・・もう2度とチャンスは・・・

バチイイン!

弱気になる己の顔を叩き、気力を奮い立たせるレノマさん。

俺としたことが・・・何ブルってんだ・・・
やるしかねえだろ・・・やるしかよ・・・

思い悩むレノマさん。
一方のリク。簡単に人質にされ、見ているしかできなかった自分を情けなく思っている。
俺にも何かできることはないか考えるリク。
看守に怒られても、くじけずに話しかけてみる。
殴られてえのか?と言う看守の背景が拳になっているのが妙におかしいっス。

怒られたリクが軽くおべっかを使ってみせる。ほう。リクも色々と学んでいるな。
それによってか、看守の口が少し軽くなる。

俺たち刑務官がどれだけ苦労してるか世間は全くわかってないわな。
囚人を虐待しただの、脱獄犯が出りゃあ職務怠慢だの・・・

グチを零しだす看守。これは面白い。
脱獄犯というフレーズが出たが、ここを出た人間がいるのだろうか?
その問いに、看守は答える。極楽島では未だ脱獄した奴などおらん、と。
他の刑務所で脱獄をくり返してきた奴の話らしい

そいつがなぁ〜〜今度極楽島のS棟に入ってきたっつーんだよ。めんどくせぇ!

なんと!?
しかも、その男は革命の闘士ともてはやされているらしい。
この間のハデな奪還騒ぎで目当てとされていた人物だ、とのこと。
まさか・・・田中一郎のことか!?
そんなモブキャラっぽい名前なのに、まさかの重要人物だったというのか!?

脱獄のスペシャリスト!!いるのか!そんな奴がここに!

思わぬ情報を得て、震えが走るリク。己の顔を叩いて気をとりなおす。
レノマさんと同じことしてますね。よいつながりだ。

俺にも・・・俺にもできること・・・

S棟の脱獄のスペシャリストを探すことを決意するリク。
腕についた傷は、レノマさんとのブラザーの誓い。この誓いにかけて、何かしなくてはならないのだ。

レノマさんも、懲罰房で腕の傷を見つめている。
弱気になりそうな自分を奮い立たせてくれる。あの誓いにはそういった意味合いも含まれていたようだ。
じっと座るレノマさん。足音で看守の違いがわかるらしい。
今やってくる看守は例のパチンコ中毒者。
レノマさんは、まずは話のとっかかりにと最近の調子について尋ねる。クイクイ。
言いわけねえだろ、と看守。自分から話さないのはそういう時ということだ。

山岡さん。時計してないですね。

ようやく名前が判明した山岡看守が目を放した隙に、立ち上がり目の前まで来ているレノマさん。
扉越しとはいえ、間近まで迫られて驚く山岡。ハハハ。

刑務官という職務において時間厳守は必須。にもかかわらず腕時計をしていない。
1週間前に運動場で会った時からそうだった。質に入れたのか?
そう問いかけるレノマさんに対し、俺にも谷村看守部長みたいに時計をくれるのかと反応する山岡。
レノマさんが調達屋で、谷村にワイロを送っていることは公然の秘密らしい。
さすがに看守部長と言われるだけある。谷村って結構権限がある人なんですね。

その谷村ほどではないが、それでもいろいろできることがないわけじゃないぞと言う山岡。
この軽屏禁を甘くして欲しいんだな?と言い出す。が、それは的外れだ。
じゃあ、なんの話しかといいますと、これはワイロなどではない。

交渉です。極楽島特級刑務所の見取り図がほしい。報酬は1000万だ

ついに勝負に出たレノマさん
! 果たして看守の抱きこみ計画はうまくいくのだろうか?
正直厳しい気はします。脱獄に手を貸すのはさすがの山岡でも躊躇われることでありましょう。
それに、報酬はどういった形で支払われることになるのか。
外の仲間が払うにしても、見取り図を手に入れる前に支払う形式だと踏み倒される可能性がある。
よしんば上手く手に入れたとしても、チクられないとは限らない。
そういった危険性はあるが、それでも踏み出さなければいけなかったレノマさん。心中お察しします。

個人としてどれだけの強さを持っていようとも、脱獄には一定の働きにしかならない。
腕よりも弁。スラムが懐かしいわいってところでしょうか。
そういう意味では、弱いリクでもやれることがある。
今回のように、看守から情報を聞きだすことなんかもレノマさんよりはリクの方が向いている気がする。
手腕は見事だけど、やはりレノマさんは怒りっぽいっすからねぇ。
それに、26のボスということもあり、警戒されている部分もあるでしょうから。

リクとレノマさん。それぞれが脱獄のために動き出す。果たしてどうなるのか?
そういえば、脱獄のスペシャリストはS棟にいるとのことだが、どれだけ離れているんだろう?
リクのいるのはN棟である。方角を意味するのなら、逆側の棟だ。
極楽島は広い。果たして会えるものなのだろうか?
N棟は20歳以下の者が入り、S棟は大人向けのところなのかもしれない。
そう考えると、レノマさんは20歳超えたらS棟に転房させられてしまうのだろうか?
もしそうだとすると、リクと共に脱獄するチャンスは今しかないということになる。
話が動き出してきた感じがしますな!



第50房 後悔  (2012年 12号)


脱獄するには必須の見取り図。
看守、山岡を買収しようとするレノマさん。果たしてどうなるか?

見取り図を持ってくるだけで1000万。仕事の内容としては容易い。
意志の篭った目で睨むレノマさんだが、その首元は汗でぐっしょりである。
それはそうだ。ここで失敗すれば、脱獄の道は閉ざされてしまうのだから。気が気じゃないでしょうな。

壁一枚を隔てた心理戦。
レノマさんの申し出に、しばしの沈黙後、もっと詳しく聴かせろと言い出す山岡。いけるか!?
公務員とはいえ、山岡は一番下の階級。本人も言うとおり、そんなに給料が高いわけではない。
ならば悪くない話だというレノマさん。だけど――

そうじゃねえよ。
貴様・・・脱獄する気か。俺を買収してか!?ふざけるな!!

まあ、囚人が見取り図を欲しいなんて言ったら脱獄を企ててるとすぐにわかりますわな。
山岡もそれが分からないほどバカではない。
この買収の持ちかけにより、レノマさんがパチンコの話で近づいてきた意図も察してしまう。
金をちらつかせりゃなんとでもなると思ったか。このコウモリ野郎めが・・・

なめんなよ・・・テメェがどこまで俺のことを職業意識の低いダメ人間だと思ってるのか知らねえがな、
これでも国に仕える薄給の国家公務員だ、ちきしょう!!

踵を返す山岡。

見誤ったな。佐々木。

去っていこうとする山岡を必死で止めるレノマさん。
このまま行かせては終わってしまう。ここで引きとめねえと!!
というわけで、前金で500万支払う約束をする。

隠し口座を作れば・・・24時間以内に入金する。
頼む・・・お前しかいないんだ・・・たの・・・

懇願するレノマさん。だが、山岡はそれを聞き入れることなく去って行くのであった。
崩れ落ちるレノマさん。なんとも絶望感の漂うページである。
脱獄の意図がバレれば、監視は今の比ではなくなる。もはや可能性はなくなってしまう。愕然ともしますわな。

甘かった・・・すまねぇ。リク・・・

レノマさんの懇願を振り切り、足早に戻る山岡。
早速、谷村看守部長に報告を行うが・・・見取り図については報告しない。
まあ、手洗い用の石けんが切れてるのは一大事ですからねぇ。そっちを優先するのもわかる。
いや、そういうことじゃないのはわかってますけど。

すぐにレノマさんの買収話を上司に報告しなかった山岡。
思い悩んだ表情で家路につく。と思いきや、その途中でパチンコかよ。こいつは。
しかし、今日もツキがない山岡。その背後に、いかにもそっちの稼業の方な2人が現れる。
どうやら借金取りの人のようだ。路地裏に連れ込まれ、殴られる山岡。
今その金を返そうと、と言い訳するが、パチンコでか!?ふざけんな!?と殴られる。全くですな。
借金の額は800万。これをパチンコで返そうだなんてバカげた話である。
公務員である山岡なら退職金もそれなりの額になる。
嫁さんもいるし、なんならエエ働き口を紹介したろか?とか言い出す借金取り。いかにもっすな。
あと1週間だけ待ってやるといい、借金取りは去る。1週間で果たして返済できるものかねぇ。

今度こそ家に帰る山岡。
家の扉には借金返せの落書きがされている。これはあまりにも世間体が悪い。
帰ってきた山岡を出迎えるのは、奥さんと2人の子供。
殴られて血だらけの顔をしながら、大丈夫だよと言って見せる山岡。しかし――

私たちは大丈夫じゃないの!
今日も借金取りが来たわ。子供たちもおびえて・・・
もうこんな生活・・・がまんできない。離婚してください

離婚届をつきつけられる山岡。まあ、奥さんの行動は当然といえますわな。
借金の原因は何なのかわからない。が、もしも夫のパチンコ狂いが原因だとしたら、離婚の理由に十二分すぎる。
子供たちのためにも別れるのは正解といえるでしょうな。
しかし、この奥さん胸でかくて美人っすな。山岡め。

つきつけられた離婚届を丸め、ひとり部屋に篭り酒をあおる山岡。もう色々ドン底ですな。

・・・なんだ、これ・・・なんなんだこの人生・・・
どこで・・・くるっちまったんだ・・・俺の人生・・・

昔は建築家になる夢があった山岡。
しかし、その夢を諦め、公務員になる。それは安定した収入を得て、今の奥さんと結婚するためだ。
夢を追うよりも、好きな人と安定した暮らしの中で生きる。
このころの山岡は堅実というか、ちゃんとした考えを持っていたんですなぁ。奥さんも一緒になろうと思っても仕方ない。

わからない・・・どこでくるっちまった・・・

そりゃ、借金の原因のところを思い出さないとわからないでしょうよ。
パチンコ狂いという現状を見てしまっているだけに、同情もできないから困る。
悪徳金融が相手で、借金が膨れ上がったんだ、という様子もないですしね。どうやって800万も借金こさえたのやら。

金だ・・・金さえあればまだ・・・

確かに今のドン底状態の原因は借金である。
でも、金さえあればやり直せるとか考える辺り、やはりドン底思考でありますなぁ。
奥さんも、これで借金が消えても、何か悪いことしたんじゃないかと気が気ではなくなるでしょうに。
そういったことまでは気が回らない山岡。
だけど、さすがに脱獄に手を貸すようなマネだけはできない。犯罪者になる気はないのだ。だけど――

そうだ・・・正しい見取り図なんて誰も知らねえんだ・・・もちろん佐々木も・・・
だったら・・・俺が適当に描いたものを渡したって・・・

これだ、と笑みを浮かべる山岡。
脱獄の共謀に手を貸すことなく、かつ、報酬を得ることができる手段。上手いことを思いついたもんである。

一方のレノマさん。夜になっても看守が駆けつけてこないことを不信に思う。
山岡が報告していれば、もうとっくにやってきて拘束、尋問されているはずなのに。

奴は話に乗ったのか!!

そう結論づけるレノマさん。まあ、そう思うのが自然ですわな。
さすがのレノマさんでも、偽の見取り図を作成している最中とは思うまい。
それがわかるのは、お月様ぐらいなものである。
囚われたレノマさんを照らす月、偽の見取り図を作成する山岡を照らす月。
男たちの緊迫の心理戦を静かに照らしてくれております・・・
偽の見取り図作る山岡の後姿はカッコ・・・よくはないが、鬼気迫るものがある。
こいつはこいつで追いつめられていますからなぁ。人生の逆転を賭けた一手を仕込もうとしているのだ。

レノマさんはなんだかんだで、運が強い人なんでしょうな。
囚われの状態で、気弱になるのを防ぐために盲進してしまったレノマさん。
しかし、そのタイミングで買収の相手が借金を厳しく取り立てられ、離婚届まで出される展開。
このタイミングだからこそ、買収について報告されず、今後の可能性を得ることができるわけだ。
まあ、もう少し待っていたら、顔を腫らした山岡が出てきて借金に苦しんでるとわかり、もっと有利に交渉できたかもだけど。

しかし、この偽の見取り図を渡されたとして、話はどう転がるのか?
建築家志望だった山岡は、適当につくったはずの見取り図が、本物と完全に一致するものを偶然つくっちゃったとか!
それは余りにも偶然が過ぎる。レノマさん剛運ってレベルじゃねーぞ。
だけど、偽の見取り図であるということがわかれば、今後レノマさんは動きやすくなる。
偽とはいえ、買収の話に乗り、物を手渡したのだから、山岡が罰に問われないはずはない。
レノマさんがその辺りをついて、本物の見取り図を持ってこさせる展開があるかもしれない。
でも、山岡が言う、正しい見取り図なんて誰も知らない、ってのはなんなんでしょうね?
囚人は誰も知らないってことなのか、看守も含めて誰も知らないのか?
増改築をくり返しすぎて、もうわからないよってことなのかも。それはそれでズサンだな。

なんとも迫力があって楽しみな展開になってきました!この先、どう転ぶ!?



第51房 謀略  (2012年 13号)


レノマさんの買収計画は吉と出たのか凶と出たのか。
結局看守は駆けつけてこなかった。だが、一晩悩んで考え直したかもしれない。
朝、出勤直後に谷村に報告するという可能性だって充分にある。
もし、そうだとしたら・・・駆けつけてくるタイミングは・・・もうそろそろ・・・

座して判決を待つレノマさん。
その耳には走って近づいてくる看守の足音が・・・!!

オイこら出ろ!!

怒りの看守。どうやら懲罰房に入れている間に、囚人の房を調べたところ、食べ物がでてきたらしい。
バナナ!味付のり!コロッケ!たくあん2切!
どうやら後で食べようと残していたらしい。ふむ。ってお前誰だよ。
レノマさんの横の、名も知れぬ囚人の違反がバレただけでした。全く人騒がせな。
しかし、食べ物を残しておくのも違反なんですねぇ。

ほっと一息をつくレノマさん。そこに山岡がやってくる。
昨日はずいぶんボコボコにされたように見えたが、治療するとそんなでもなかったらしい。
山岡は言う。昨日は急な話だからびっくりしちまったが、よく考えれば願ってもない話なんだよな、と。
借金取りに追われてこのザマだ。隠し口座のナンバーと名義を用意したからこれで頼む、と。

賭けには勝った!ああ・・・繋がった
さすがのレノマさんも安堵の余りにぶっ倒れてしまう。
山岡が上に報告すれば終わりだと一晩中気が気じゃなかったのだし、しょうがない。
だが、ここで隠し口座の情報を得れば、まさしく同じ穴の狢となる。

まずは第1関門クリアだ・・・

そう考えるレノマさん。だが、山岡にも秘めた企みがあるのだが、さすがにそこまでは読めないか?
早急に前金の500万を入れるというレノマさんに、ちょっと待ってくれと言いだす山岡。

見取り図の原版は所長室に厳重に保管されていてな。ちょっと厳しいのよな・・・
だがな、ここの建設に携わった建設会社を買収すりゃ複製は手に入れられる。買収すればな。

ふっかけてきやがったな。クソッ。金の亡者め・・・

山岡の申し出はもちろん嘘である。報酬を釣り上げるためのデタラメだ。
レノマさんもそれは分かるのだが、立場が弱いことには変わりない。200万の上乗せを約束する。
だが、これはブラフ。もちろん報酬が上乗せされるのは嬉しいが、目的はそこではない。
山岡の本当の目的は、自分を金の亡者だと思わせることにあった。

俺へのその印象を強く根付かせろ!山岡は金の亡者だと!
金に目が眩んじまえばなんでもやっちまう金の亡者だと!!
まさか、ニセモノの見取り図を用意するはずの無い木偶の坊だとな!!

ムカツク顔して、謀を仕込んでいるとは・・・山岡め。なかなかやりよる。
レノマさんは山岡のこの策に気付けるのでしょうか?
ともかく、隠し口座の番号と名義は暗号化されることになりました。
極秘中の極秘であるゆえ、完全に暗号化し、外に回ることになる。
5桁の数字を複数並べるタイプの暗号文だが、読者には全部見えないしこれをもとに解読は難しいかな。
この暗号文を炊場の宮田に渡す。
そうすれば、あとはレノマさんの手下が明日の朝までに前金の500万と追加分の200万の合計700万を振り込んでくれる。

山岡「朝には700万が・・・」
レノマ「そうだ。入ってる」

微笑を交わす2人。
信頼とか親愛とかそういったものは一切ない。交渉をしたという証でしかない笑顔だ。
踵を返し、去って行く山岡。
その後姿を見送り、小さくガッツポーズを決めるレノマさん。よっしゃあぁ・・・

リクよ。勝手に危ねえ橋渡って悪かったな・・・でもよ。楽しみに待ってろや。

差し込む朝日が希望の光のように見える。
レノマさんとリクの脱獄計画は動き出そうとしているのだ。
その計画のとっかかりである見取り図を得るための報酬の暗号文は、山岡から炊場の宮田へ。
宮田から運送業者の手を通じ、島の外へと流れて行く。

さて、その夜。
レノマさんとの交渉を上手い事やりおおせた山岡は、今日も見取り図の作成に取り掛かる。
この偽の見取り図を渡せば、レノマさんの脱獄は脱走途中で必ず失敗する。

そんなことはどうでもいい。問題はその後だ

山岡は考える。ニセモノをつかまされたと知った佐々木は、怒りくるって俺の収賄罪を所長にばらすだろう、と。
徹底捜査を受ければいくら隠し口座とはいえ、俺の収賄罪が暴かれてしまう。
その時は金も没収され、公務員の資格も剥奪されたあげく・・・俺も囚人堕ちだ。
最悪だ・・・何か・・・何か方法は・・・

それしかないと思い、交渉を受けたけど、今更になってその後のことを考えて怖くなる山岡。
脱獄させなければいいってわけでもないんですな。

待てよ。所長まで届かなければいいんだ・・・
あくまで第27木工場内で解決できれば、谷村の権限のみで処理できる。
谷村は金に汚い。1200万のうちいくらか払えばこの問題をもみ消すだろう。
第一あいつも汚職まみれだ。俺を処罰できる理由はねえ。
そうなると・・・脱走前に佐々木の見取り図所有が発覚するのが理想的
大事にならず、佐々木は脱走を計画したとして独居房送り。
その後は谷村と共同で佐々木を永遠に独居房に閉じ込めれば完全犯罪の成立だ

・・・・・・!!
すべての金を受け取った直後、見取り図の隠し場所に俺自らが踏み込んで発覚させてやる!!

恐るべき山岡の謀略。
まあ、脱獄を成功させずに報酬を得ようとしたならこうするしかないんでしょうね。
本物の見取り図を渡して、失敗してくれと願うわけにもいかんでしょうし。
完璧だ・・・とにんまりする山岡。
だが、レノマさんを永久独房送りにするのに、多少の罪悪感を覚える。
なんだかんだで、18歳の少年ですからねぇ。レノマさん。見えないとしても。
その少年を永久に独房に閉じ込めるというのは・・・

そうじゃねぇ!!そうじゃねえだろ!!

迷いが生じそうになった山岡は、部屋を飛び出す。
足を向けたのは家族の寝室。妻と子供たちの寝ている姿を見て、山岡は思い直す。
俺の、選ぶべきものは!!俺の守るべきものは・・・!!

みんな・・・もう苦労はさせない

父親の顔で、キリリと決める山岡。
か・・・格好いいなんて言ってあげないんだからね!
実のところ、背景さえなければ格好良く見えてしまう場面だから困る。
借金の原因が分からないから微妙だが・・・苦労させた原因はあなたじゃないですかー!!
まあ、だからこそ、もう苦労はさせないと言っているんでしょうけども。

しかし、前金だと700万。借金返済の800万まで届かないのだがどうするんでしょうね?
一週間以内に残りの報酬も振り込まれると考えているのだろうか。
まあ、ニセモノの見取り図を渡せば、翌日には報酬がもらえるはずであるし、間に合わないこともないか。
借金を返した場合、残りは400万だが、それで谷村を買収できるのか?
その辺りの疑問は残るが、まあそれは今考えても仕方ない気がする。

レノマさんは山岡の謀略に気付くことができるのだろうか?
ニセの見取り図を渡されるなんて考えは全くないのだろうか?
まあ、ああ見えても18歳の少年である。そこまでは気付かなくてもしょうがない。
なんせ18歳だからなぁ。ああ18歳。すぐに忘れそうになるから何度も書くよ!レノマさんじゅうはっさい!



第52房 迫真  (2012年 14号)


徹夜で偽の見取り図の作成に勤しむ山岡。もちろん家族には内緒である。
働きながら、短い時間で完成させなければならない。割と大変な仕事だ。
バレないように、普段は作成中の見取り図は押入れに仕舞い込んでいる。

妻は当然の如く冷たい様子。まあ、仲直りする要因もまだないですからね。
子供たちはそれを不安そうにしている。
やはり、子供からしてみれば両親が争っているのが一番不安になる要素なんですよね。
借金取りが来るのは確かに怖いかもしれないけど、両親がバラバラになるのはもっと怖いわけだ。
もう誰かに殴られて帰ってきたりしないでね、という息子。
その言葉に大丈夫だと返す山岡。

よかったー

笑顔を見せる子供達。こんなに落ち目で甲斐性なしの俺なのに、子供たちにはお父さんなんだ。
こんなに心配してくれて・・・あんなにうれしそうにしてくれる。
この家族を!!俺は絶対に手離さない!!

朝。取引をした結果により、前金の700万が隠し口座に振り込まれているはずである。
残高照会で確認する山岡。さすがに緊張する。
そりゃあそうだ。ここは大きな岐路なんだからな。俺の人生の再生が始まるか否かの!!

始まった。

前金は確実に振り込まれている。
しかし、それを確認したとき、山岡は感じていた。自分の足下が沼のようになっていることを。
このまま深みにはまり、沈んで行くのではないかと錯覚したのだ。
なんだかんだで、犯罪に手を染めることに相当な抵抗感があるのが伺える。
もしバレたら、確実に家庭は崩壊するわけですしねぇ。
お父さんを信じていてくれている子供たちにも向ける顔がなくなってしまう。
そういうことを考えると思わず吐きそうになってしまう。ひどい面だな・・・

職場に到着。今日も懲罰房の見回りを行い、レノマさんと会話。
前金の確認をしたことを話す。その際、顔色が悪いことを指摘される山岡。

意識して平常どおり過ごせ。他の刑務官に不信がられるぞ。
些細なほころびが命取りに繋がることもある。

レノマさんに言わせれば、でかいヤマを初めて踏むときはよくあることだと言う。
スラムの連中ですらそうなる。ましてや、下界の公務員で暮らしてきた山岡ではなおさらである。
やはり犯罪、とくに大金のかかった犯罪は緊張感がハンパないんですわな。
レノマさんは幼少からどれだけの数、大金を得る修羅場をくぐってきたのだろうか・・・

約束の日は3日後。
その日に第27木工場の製図作業室の図面収納棚に入れておくように約束する。
あそこなら、他の図面と紛れてまず見つかることはないはずである。

取引についての交渉は完了した。
念のため、バレても俺の名前は絶対に出すなよという山岡。
まあ、この念押しは当然のことでしょう。簡単に了解するレノマさん。

交渉は終わったが、山岡は立ち去らない。聞いてみたいことがあったのだ。
なあ・・・お前・・・犯罪を犯した時・・・どんな気分だった・・・

山岡のこの質問に、レノマさんは静かに答える。

目的を達成させるために、ただ・・・無我夢中だった。
後悔もなく。生きるためには間違っていなかったのだと、信じて疑わなかった

レノマさんのこの感想。山岡が感じているのと全く同じものである。
だが、今は少し違うとレノマさんは言う。

将来の夢はと聞かれても、死なないようにしたいだけとしか言えなかったこの俺が・・・
くだらねえ夢なんかを・・・見るようになった

夢。いつかリクに語った夢ですね。
でっけー荒野をバイクでただ走ってみたい。そんな夢。
後ろにはちゃっかりリクを乗せて2人で爆走ってなスタイルである。楽しそうな夢ですなぁ。

無謀だな。

山岡はそれだけ言い、立ち去ろうとする。
実際、この極楽島特級刑務所からの脱獄なんて無謀もいいところである。反論もできない。
だからこそ、レノマさんも夢だと言っているのかもしれないですな。

佐々木に渡す見取り図はニセモノである以上、どうせ脱獄は失敗するんだ。つくづく憐れな奴・・・

山岡は思わずハメようとした相手を憐れんでしまう。
そのレノマさんは、朝日を受け、嬉しそうにしていた。そして、決意を固めてもいた。

俺は・・・俺は1日でも早くここから出てえんだ!!

逸ってしまっているのは自分でも分かっている。それでも、早く出たい。
レノマさんの苦悩が見て取れますなぁ。

それから3日間。山岡は偽の見取り図作成に勤しむ。
レノマさんの姿を見て、山岡は何を思いながら作成を続けていたのだろうか。

そして、ようやく懲罰房から出てくることができたレノマさん。
第27木工場はボスの帰還に沸き返る。お帰りなさい!ボス!
しかし、そのレノマさんはそっけない感じ。交渉がうまくいったか気になってしょうがないんですな。

工場作業中、製図作業室に入るレノマさん。
前金はつかませた。山岡はすでに同じ穴の狢。だからありえないはず・・・!!今さら裏切りなど・・・!!

ないとは思いながらも、不安でいっぱいなレノマさん。
だからか、引き出しをあけ、そこに見取り図があることを確認した時、会心のガッツポーズを決めてしまう。
見よ!この恍惚の笑顔!レノマさんイカしてるわぁ。
でも、ニセの見取り図を掴まされてのガッツポーズですからねぇ。レノマさんヌケてるわぁ。

レノマさんが安堵しているその頃、山岡はある決意とともに所長室のドアをノックしていた
な、なんだ?何故所長室に向かっているんだ山岡?

緊迫の看守買収作戦編は次号決着!とのこと。
一体どのような終わりを迎えるというのだろうか?
谷村に交渉を持ちかけ、見取り図取得の現場を押さえるつもりだった山岡。
今の動きを見る限り、そういう気配ではなさそうだ。
知られるわけにはいかない所長のところに足を運んでいるわけですから。

所長室には本物の見取り図があるのかもしれない。
だからといって、今更本物の見取り図を奪取するとは考えにくい。
となると、所長室に向かったのは辞表を提出するためだろうか?

レノマさんの脱獄失敗を見届けるのは忍びなく、辞めるという話でしょうか。
そして借金を返し、今度こそと建築家の夢を再び追うという流れか?
でも、辞めたからといって、レノマさんと交渉したという罪は消えないですからねぇ。
脱獄に失敗したレノマさんが山岡との交渉を口にすれば、山岡は捕まってしまうはず。
一体どうするつもりなのだろうか?気になりますなぁ。



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