蒼天紳士チャンピオン作品別感想

囚人リク
第185房 〜 第211房


囚人リク感想目次に戻る   作品別INDEXに戻る   週刊少年チャンピオン感想TOPに戻る

 各巻感想

1巻 2巻 3巻  4巻 5巻 6巻  7巻 8巻 9巻 10巻
11巻 12巻  13巻 14巻 15巻  16巻 17巻 18巻  19巻 20巻
21巻 22巻 23巻 24巻  25巻
連載中分

囚人リク 22巻


第185房 一緒  (2015年 2+3号)


置き去りとなったレノマさん。
それを救出するためにヘリから飛び降りるリク。
破獄戦は思いもよらぬ展開へとなってきました。

どうやらライフジャケットはヘリから飛び降りた時のクッションとするために取り出したらしい。
なるほど、こうしてみると結構な高さですなぁ。よく飛び降りられたものだ・・・

倒れ伏したレノマさんは警戒していなかった看守たち。
しかし飛び降りてきたリクが武器を持っていないはずはないと考えている。
素手ならば生け捕りにしただろうが、警戒心があるならば撃ってくるでありましょうな。危ない!!

そうはさせねぇ!!

そう叫び、リクが投げつけたのは・・・催涙ガス!!
シート下のライフジャケットと一緒にそんなものを取り出していたリク。
あの一瞬で何という機転・・・考えるよりも先に動いた結果なのかもしれないが、これは最適解と言えましょう。
集団に対してのこれは効果抜群。
無力化は無理としても動きを鈍らせることには成功した!!

急ぎ倒れているレノマさんのところに近付くリク。
身体から流れ出た血を戻そうとするが・・・そんなことをしてもダメなのはおじさんの時に学んでいる。
とにかく大事なのはこれ以上血を失わないように止めること。
きつく腕を縛り、血を止めようとする。これで止まってくれればいいのだが・・・

催涙ガスで動きを止めているとはいえ、いつ看守が復活するか分からない。
その状況なのに無防備な状態で、とにかくレノマさんの血を止めようとするリク。
どこまでいかれてやがるのかと言われても仕方ない行為である。しかし・・・

一緒に出ようぜ

まさにその一心。そのためには命の危機と分かっていても飛びだすことができる。
これがリクの強さ・・・レノマさんが希望を見出したリクの強さでありますな・・・
キリッとした表情は本当に頼もしさを感じさせます。

しかしこのままだと復帰した看守にやられてしまう。どうにかしないといけない。
いち早く我に返って動き出したのは田中一郎。
周龍にヘリをリクたちの真上につけるよう指示し、自身は狙撃で看守の動きを封じる。
うーむ、生確に看守の銃を飛ばすとは・・・狙撃の腕もなかなかのものですな。

その田中一郎の指示に逆らうのは人質を取っている沢田。だがその人質である天野だって黙ってはいない。

ボス!!リク!!俺だって!!

あれだけの男を見せられたとあっては天野もじっとはしていられない。
何とか脱出を試みようとするが・・・簡単にはいかない。
激怒した沢田に刺し殺される・・・寸前で史郎さんが助けてくれました。どあらああ!!
ようやく活躍の機会が巡ってきましたな史郎さん。
この強烈な一撃を受けた以上、しばらく沢田も起き上ってはこれますまい。良し良し。

そして松尾が救命用のロープ付き浮き輪を投げる。
ヘリを降ろしきることはできないが、これを使えば繋がることはできるわけですな。
レノマさんの体に浮き輪を通し、固定する。
そしてリクはそのレノマさんの上に乗り・・・その状態でヘリは空へ・・・こ、怖い体勢だな・・・だが、カッコイイ体勢だ。

リクは無謀だ。だから希望だ。絶望を覆したのは少年の不屈
煽りもバッチリ決まった今回。確かにもう無理だと思ったレノマさんが脱獄するのは絶望的だと思った。
それを覆すリクの不屈。例え催涙ガスの存在があったとしても、あそこで飛び降りられる者がどれほどいたことか・・・
その不屈の意志がレノマさんを救った。救えているといいのだが・・・どうだろうか。
結構な勢いで血を失ったし、今も辛い体勢でいる。一刻も早くしっかりとした手術と輸血が必要となりましょうが・・・ううむ。
船の中にそういった施設があることを期待します。



第186房 爆破  (2015年 4+5号)


離脱したヘリは真上へと高度を上げる。
こうなれば看守の銃は届かない。安全圏に入ったと言えましょう。
そしてその間にリクとレノマさんを引き上げる。ああ、やっぱりそのまま飛んで行くことはなかったか。

どうにか安定できるところに運ぶことができた。しかしさすがに衰弱しているレノマさん。
一刻も早く治療を行わなければ・・・
そう思っていたところで動く田中一郎。
要人移動にも使うヘリならば必ず常備されているはずのもの・・・そう、緊急輸血用の血液パックだ!!

さすがに血管縫合することはできないが、これで圧迫による止血と失った血液の補充は出来た。
これならば船まで持つかもしれない・・・あとはレノマさんの体力次第であるが、一山超えた気はしますな。良かった。

極楽島のヘリは陽動を深追いしたためまだやってこない様子。
なるほど、それならば逃げ切れそうな気がしますなぁ。だが・・・

グッフッフッ。脱獄王田中一郎以下9名脱獄犯ども。
視察委員のヘリに目を付けたまではよかったが・・・
極楽島の戦闘力をよもや忘れたか。己の愚行を呪い海のもくずと消えるがよい

おっと対空ミサイルか。迫ってくる相手だけではなく逃げる相手にも使えたんですな。
しかし勿論それを忘れている田中一郎ではない。
ハプニング以外の対応は万全。対応策も事前に考えている。
そのための準備として用意したのが・・・火炎瓶
電球にヘリ用の燃料を詰め込んだ即席の品である。ほほう・・・

敵は追尾システムを備えた誘導ミサイル。とても逃げられん。
だが、逃げられぬなら立ち向かうまで。最終決戦だ

ミサイル相手に小さな火炎瓶で立ち向かうと言う田中一郎。
どう聞いても無謀としか思えない発言であるが、あの脱獄王が考え抜いた策。ただの特攻ではありますまい。
とはいえ緊張の面持ちを隠せない一同。いや、そんな中でも真っ直ぐな瞳のリク。やはり希望でありますなぁ。

二郎よ・・・お前を撃墜した敵の存在を忘れるはずもない。お前の無念ごと打ち砕いてみせる。
発射台を爆破する!!旋回!!

ミサイルをやり過ごすのではなく、発射台そのものを爆破すると言う。
確かにそれが出来れば脅威は去る。最終決戦に相応しい戦いと言えましょう。
生き延びるか全滅かの戦い。となれば流石に負けはなかろうが・・・どのように攻略するのか、楽しみです。



第187房 決戦  (2015年 6号)


ついに脱獄戦も最終決戦。
敵は誘導ミサイル。これを突破しなければ自由の道は開かれない!!
文字通り生か死かを分ける戦いの幕が上がった!!

チャンスは1度!
しくじれば・・・ミサイルの餌食・・・撃墜されて全員おだぶつだ・・・
あとは周龍。頼んだぞ!!

ヘリでの戦いとなれば操縦士である周龍の担う役割は大きい。
利き腕である右腕を撃たれたのが痛いが・・・それでも今はその痛みに怯んでいる場合ではない。
今この場を乗り越える為、集中する周龍。さあ・・・開戦だ!!

さらばだ挑戦者たちよ。発射

寺嶋副司令室長の合図を受けて発射されるミサイル。
予測していたリクたちはすぐにその存在に気付き、対処を始める。
ヘリとミサイルのスピード差を考慮して回避のタイミングを計る田中一郎。この辺りはまさにさすが。

回避を行っても誘導ミサイルはしつこく追ってくる。
その速度と旋回速度はミサイルの方が上。いつまでも逃げられるものではない。
あと4秒もすれば確実に撃墜される。そのままであるならば・・・

もちろん策があると言った以上、そのままであるはずはない。
ヘリの進路はミサイルの発射台へ向かっている。
その手前にあるのは・・・誘導システムのレーダー!!
なるほど。発射台を火炎瓶で破壊するのは無理があると思ったが、狙いはレーダーの方だったか!!
これならば火炎の熱によって狂わせることが出来る。
そしてレーダーが狂わされ、ターゲットを見失ったミサイルはそのまま直進し・・・発射台を破壊する!!

慢心を悔やめ!!

最後の切り札として絶対の自信を持っていた誘導ミサイル。
それを発射台ごと木端微塵に砕かれてしまった。
ハハハ、こりゃ寺嶋副司令室長もダウンするしかないですわなぁ。
この様子を見れば脱獄戦・・・完全に制したのは疑いようもない!!
いやしかし、喜んだり怒ったり消沈したりと色んな表情を見せてくれた人でしたなぁ・・・面白かったよ!!

というわけで、最後の障害を越えた脱獄組。

俺たちは・・・脱獄したんだ

ついにその言葉を口にすることができた。破獄戦の勝利。ついに辿り着いた自由の空。
長い苦難の道でした。挫折を味わうこともありました。
それでもようやく・・・ようやくと言った感じであります・・・ううむ、感無量。
最後のミサイル戦はさっくり行きましたが、まあこれは事前に対策を練っており、その通り進めることができましたからねぇ。
考える時間が十分あったわけですし、そうなれば脱獄王の策略はさすがの一言ということでありましょう。
怪我を押して見事な操縦を見せた周龍も褒めてあげたい。さすが!!



第188房 自由  (2015年 7号)


ミサイル撃破に成功した。船からの速射砲も届かない。
ヘリも追いつけない様子ですし、こうなればもう危機は無い。そう・・・自由を勝ち得たのだ!!

遠ざかる島影が自由を約束した時、満月が笑った
物語の象徴である月が曇りなく脱獄組を乗せたヘリを照らしてくれる。祝福を感じますなぁ。

まだ成功を実感できずにいる松尾。
それは天野にしても同様であるようで・・・感じるために大声を出してみる。わああああああ!!
夜中に大声を出しても誰にも怒られない。自由であることを噛み締めるために叫ぶ天野。それに続く松尾。
あまりにも大きなことを成し遂げただけに、それを成したと実感するのにも時間がかかるみたいですなぁ。

史郎さんも何だか切なげな表情で今までいた刑務所の方を眺めている。
あれだけ巨大な刑務所がみるみるうちに小さくなっていく。

あんな小さい所に・・・俺ら閉じ込められてたんか・・・

中に居る時は果てしないほどに巨大と思えた極楽島特急刑務所。
自由を勝ち得た今となってはそれが小さな所に思えてくるから不思議である。

やっぱシャバの空気はちゃいまんなぁ。
まるで新米で炊いた酢飯みたいや。田中はん。おおきに。

そう言ってシャバの空気を味わう史郎さん。噛み締めてますなぁ・・・自由の味を。

それぞれが叫ぶ中、ヘリの中で横たわっていたレノマさん。目を覚ます。
うるさくて寝てらんねえとのことであるが・・・いきなりの憎まれ口ってのはいいですな。元気な感じが見て取れるぜ。

レノマさんもどうにか山を越えた感じがある。嬉しいことだ。
そのレノマさんに対しリク。まだなんか信じられないと述べる。

こんな場面・・・何十回も見てきたから・・・夢で・・・起きたらまたやっぱりいつものあの324房なんだ。
レノマ・・・握れっか?俺の手を。頼む。痛くなるくらい握ってくれ・・・

夢でないことを教えて欲しい。
リクのその願いを受け、痛くなるぐらいにその体を抱きしめるレノマさん。
抱かれながら、レノマさんに抱き付き涙するリク。しかしその涙の持つ意味は自由を勝ち得た喜びだけではなかった。

やっぱり・・・夢じゃなかったんだ・・・夢じゃ・・・
椿・・・

脱獄に成功した。自由を勝ち得た。夢のような出来事であり醒めて欲しくない。
しかし椿は死んでしまった。その命が返ることはない。夢であるならば醒めて欲しい。
相反する想い。だが夢でないことはもう分かってしまった。椿の死を受け止めなければならない・・・ううむ、辛い。

脱獄の喜びを噛み締める回かと思いきや、最後の最後でこれとはなぁ。
ここに真っ先に想いを馳せる辺りさすがはリク。リーダーの器であります。
できればみんなで喜びたかった。誰一人欠けることなく喜びを分かち合いたかった。
それが出来れば良かったのであるが・・・ううむ・・・

次回は一転して悲しみに暮れる回となりそうです。



第189房 弔意  (2015年 8号)


夢じゃない。喜びと共に悲しみを実感させる一言。
少し前まで喜びに浸っていたヘリの中が一転して静まり返っている。告別の時が始まるのか・・・

手を貸してくれ。陽平を・・・中心へ・・・

椿をヘリの中心へと運び、皆でその周りを囲む。
その体を運ぶ時に椿の体にまだ少し温かさが残っていることに気付く史郎さん。

ついさっきまで普通に元気やったもんな

その温かさは救いというよりはむしろついさっきまで・・・という想いに繋がってしまう様子。ううむ・・・
血も乾ききっておらず、触れればその出血量はハッキリと分かってしまう。

改めて椿の死を悼む面々。
あの脱獄の混乱の中では悼む間も悔やむ間もなかった。だが今は時間がある。悔やむ時間は十分にある。
作戦を立てた田中一郎は自分の責任だと苛まれることとなる。

若すぎる・・・まだ18歳だぞ・・・
どう・・・詫びれば・・・たった1人の兄との再会を待ちわびてる・・・妹に・・・
俺は・・・俺は・・・また・・・救えなかった・・・

新たな傷をその身体に刻み付ける田中一郎。相変わらず背負う人ですなぁ。

リクも感じる椿の僅かな体温。
まだ温かさは残っているのに、もうここにはいない。その事実がまた悲しい。

やがて冷めゆく体温にすがる。死は、生き残った者にも残酷だ
アオリの文章が示す通り、この告別はとてつもない悲しみに浸されることとなりそうですなぁ。ううむ・・・



第190房 不死  (2015年 9号)


椿の遺体を前に別れを惜しむ面々。
魂という物があるのならば、今もそこに漂っているのだろうか?
ヘリに乗り、仲間の脱獄の成功を見守ってくれているのだろうか?
椿がいなければあの場で内海看守に捕らえられ、全てが終わっていた。椿が救ってくれた。
その感謝の言葉も大事であるが・・・そのような別れを告げたいわけではない。

そんなやすらかな笑顔・・・そんなやりとげたみてえな・・・
違う・・・違うよ椿・・・そんなんじゃねぇ・・・生きてて・・・楽しんでる、そんな笑顔が見たかった
ごめん・・・ごめんよ・・・

感謝よりも何よりも、やはり思ってしまうのは悲しみ。
生きて一緒に出たかった。その気持ちで一杯となっているリク。よく分かる・・・

椿みたいないい奴が、と嘆き、自分が行けばよかったと悔やむ松尾。
しかし天野の言う通り、下見の時と同様にあのような芸当は椿にしか出来なかったと思われる。
運命という言葉は嫌なものだがそうとでも考えないと辛すぎる。
割り切るための言葉と分かって口にしても、やはり辛い。ううむ・・・

脱獄の仲間となってから椿と過ごした時間はそれほど長くない。
しかしいい奴であることはその短い時間でよく分かっていた。
シャバに出た後はお互い幸せになっていきたいと願っていた。それだというのに・・・
史郎さんも静かに涙をこぼす。

この世で・・・お前に出会えてほんまによかった。おおきにな

それぞれが悲しみに暮れる中、レノマさんの口から語られる椿の最期。

椿は・・・最期まで・・・椿のままだった・・・
我を見せず・・・静かに・・・熱く・・・微塵も・・・あきらめていなかった。
こと切れる間際まで妹に会うと信じて、どこまでも続くこの夜空にあいつは力の限り手を伸ばしていた。
奴は言った。俺たちに会えてよかったと。極楽島もまんざらじゃなかったんだとよ。

椿の想いを聞き、改めて涙する面々。悲しい・・・

別れは言わねぇ。オメェはずっと俺の心の中で生き続ける。俺の一生のダチだ

椿の胸に手を置き、そう告げるレノマさん。
その手にリクを初めてとして皆がそれぞれ重ねていく。皆、思いは同じであると言うことだ。

椿はいつでも俺たちのそばにいる。ゆっくり休め

椿を忘れない。みんなの心の中で生き続ける。それは永久の命。
そのような言葉で締めくくられる告別式。いや、別れではない、か。
悲しいが、生き延びたものたちにはその後の生き方がある。
友を心の中に宿し、どのように生きるのか・・・今後の展開に注目でありますな。



第191房 北東  (2015年 10号)


空の上は冷えるということで、自分の上着を椿にかけてあげる史郎さん。
そしてついに、その顔に布をかけられることとなりました
ああ・・・やはり奇跡の復活などということはなかったのか・・・ああ・・・

そして椿の遺体は潜伏先の台湾で荼毘に付すこととなるらしい。
さすがに潜伏する以上遺体をそのままにはできないか。
妹さんのところには遺品か遺髪辺りを持って行くことになりましょうか。辛い役目だ。

本来刑務所に置いていくはずだった沢田であるが、結局連れて来てしまった。
さすがにここで海に捨てたら死ぬでしょうし、扱いに困る子ですなぁ。
ちゃっかり気絶から醒めて話を盗み聞こうとしてたりするし、厄介な奴である。

というわけでもう一度殴って気絶。さらにヘリから宙づりの状態とする
なるほど、これならば話を盗み聞きされる心配はありませんわなぁ・・・酷い!!
そりゃ死にはしないかもしれないが・・・まあ、自業自得ではありますわな。仕方がない。

沢田はさておき、計画の再確認。
領海付近で待機中の台湾船にヘリは着陸する。周龍の親父さんが話をつけてくれた台湾マフィアの船だ。
台湾上陸後、東京への密入国準備におよそ2週間。それが済めば晴れて東京上陸というわけでありますな。
松尾は念願であった母との暮らしに戻れるわけだ。

脱獄発覚後は警察に身内を抑えられるため、椿の妹ともども松尾の母はダブルドラゴンクロスに匿われている。
医者もいるとのことですし、意外と長生きできるかもしれませんな。そうあって欲しいものです。

天野と松尾はスラムに戻ったらダブルドラゴンクロスにやっかいになるらしい。
ボスを慕う2人でありますし、その関係が続くのは願ったり叶ったりでしょうな。
そういった関係とはまた違うのが史郎さん。レノマさんとはボスとか部下とかそういう関係ではいたくはないでしょうな。
できるのであれば対等の関係でいたい。それはレノマさんも望む所ではなかろうか。

田中はん。俺の夢は誰かれ分けへだてなくうまい寿司をふるまうことや。
スラムの貧乏人にも。そして・・・味のわからん金持ちの奴らにも。
ほんまもんはここにありっちゅう、うまい寿司をふるまいたいんや。
そのためには人間を分け隔てるスラムの壁を取っ払わなあきまへん!
そやから俺にも・・・俺にも!田中はんとこで世界を変える手伝いさせておくんなはれ!

頭を下げる史郎さん。もちろんそんな史郎さんを受け入れる田中一郎。生き抜くことだけが条件だと述べて。

それぞれのこれからの道は定まりつつある。
では、リクはどうするのか。それは既に決めていた様子。

革命党に合流して、鬼道院をぶん殴る作戦を立てようと思ってる
まだなんにもわかんないけど、必ずやってやる。

やはりリクの目標はそこになりますよね。それを果たさなければ先に進むことはできますまい。
所属する組織は2つに分かれることとなるが、共に果たした脱獄という行為は忘れがたい絆となるでしょう。
おっと、そういえば組織としてはもう1つ。ドラゴンクロスに所属する周龍もいましたな。
椿との別れの時もずっとヘリの操縦をしていたために忘れがちになってしまってましたよ。

もうすぐ自由の地を踏みしめられる。
感慨を込めてそう呟く田中一郎。で、あったが・・・

おい・・・周龍。なぜ北東に飛んでいる・・・予定の進路は・・・南西だぞ・・・

ここに来て暗雲。もう障害はないだろうと思ったところで思わぬ流れとなってきました。
周龍の表情からして単純な操縦ミスとは思えない。故障ならばもっと早くそう告げているでありましょう。
となると何かありそうなわけであるが・・・ううむ、一体何が・・・怖いなぁ。怖い。久しぶりにまた怖くなってきた。



第192房 海上  (2015年 11号)


未来に目を向けた途端にヘリに忍び寄る暗雲。
操縦桿を握る周龍の顔は深刻である。
ヘリの故障でもなく操縦ミスでもない。となれば自身の意志で進路を外していることになるわけだが・・・

なぜ北東に向かっている!!俺たちは南西に向かわねばならんのだぞ!!

さすがに声を荒げて問いただすしかない田中一郎。
この様子に他の面々も不安顔で近づいてくる。
そしてリクもまた問いただす。なんで予定と違う方向に飛んでるの・・・

リクの問いにも答えられずにいる周龍。
ようやく絞り出した言葉は皆への謝罪の言葉。

すまない・・・

このタイミングでこの言葉。嫌な予感はもはや覆しようもない。
そして・・・絶望は突如現れる。
いきなりの光に眩しそうに目を細める面々。
その光に目が慣れた時、映るのは・・・船。巨大な船。
そしてその甲板にいる人物・・・・・・鬼道院!!!

豪快な見開きと共に現れた仇敵、鬼道院。
脱獄はなったと思った。後は出た後でこいつと戦うものだと思っていた。
それがまさかまさか・・・ここで出てこようとは・・・!!

周龍は脅しでも受けているのだろうか?
ドラゴンクロスが鬼道院の手によってどうにかされてしまっている。その可能性は確かにある。
しかしそれだけ大きな話なら神木さんたちを通じて情報がレノマさんたちにも入りそうなものであるが・・・
何にしてもこれは思わぬ展開となってきました。
自由を勝ち得たと思ってからの絶望。これは越えられるのかどうか・・・ううむ・・・



第193房 甲板  (2015年 12号)


悪夢・・・開幕
自由を勝ち取ったはずなのに、目の前の軍艦の甲板にはあの仇敵が立っていた。
なんでこんな所に・・・リクの疑問はもっともであります。

疑問の答えを知っているとすればやはり周龍でしょうな。
本来の進路ではなく、ここまで飛んできたのは周龍なわけで、鬼道院がいることも当然知っていたと思われる。
あの謝罪の言葉もそれを指してのことであったのでしょうが・・・

裏切り者には、死あるのみ。ギャングの掟だ。

割れた窓の破片を周龍の首に当ててそう述べるレノマさん。
どのような理由があるにせよ、この裏切りは制裁されて仕方がないと思えるものである。
それでも脱獄することを優先し、進路を戻させようとするレノマさん。
リクの目の前で殺すことに躊躇いを覚えてたりするのかもしれない。
田中一郎の言う通り、操縦士である周龍を殺したら墜落の可能性もありますしねぇ。
だが、どちらにせよ周龍は折れるつもりは無い様子。

やるならやれ。俺は・・・この命がどうなろうとも・・・進路は変えねぇ。

頑なな様子の周龍。
その心を折ることはできず・・・ヘリは鬼道院のいる軍艦の甲板へ降りてしまう。
となれば当然、銃を構えた兵たちが身柄を拘束に来るわけで・・・ううむ、絶望的な光景だ。

いやだ・・・いやだ・・・

また再び捕まえられてしまう。そんなことは嫌に決まっている。
思わず抵抗するリクであるが、その抵抗もむなしく抑えられ、足蹴にされ転がされる。ううむ・・・
這いつくばらされたリクたちの前に現れた鬼道院。見下しながら一言。

いい顔だ

愉悦に顔を歪ませながらそう述べる鬼道院。いやはや、お前の今の顔には負けるよ!!いい顔しやがって・・・

抑え込まれたリクたち6名。椿は既に死亡しているので抑えられてはいない。
沢田は・・・どうやら直前でロープを切断して海に逃げ込んだらしい。
まさか宙づりにされているのが功を奏することとなるとは・・・運が強いというか何というか。
夜の太平洋に飛びこんで助かるはずもないという様子の鬼道院だが・・・あの沢田だしなぁ。平気で生きていそうで怖い。

そして周龍は拘束されることもなく鬼道院の横に立っている。
一体いつから裏切ることとなっていたのだろうか。
最初からということはないだろうが・・・ううむ、何でこんなことになってしまったのだろうか。
周龍の激白。心して聞かねばなりますまい。



囚人リク 23巻


第194房 取引  (2015年 13号)


どうした?周龍。ちゃんと教えてやれ。かつての仲間に。いつからどうやって裏切ったのか

裏切った者、裏切られた者双方を揺さぶる鬼道院の言葉。嫌らしい感じだ。
もちろん周龍とて最初から鬼道院側だったわけではない。
今でも銃を突き付けられた状態でいる。一体いつからこうなったのか・・・

根尾をぶっ倒してすぐ後、親父への2回目の電話の時だ。

語り出す周龍。確かに船を調達してもらう為に電話しておりましたな。
レノマさんはその時、周龍を信じて席を外していた・・・

実際、この時の周龍に二心などない。
しかし父親にかけたはずの電話に出たのは防衛大臣となった鬼道院永周。
しかも開口一番、周龍の父親は預かったと来たもんだ。むむむ。

貴様・・・脱獄するそうだな。
数週間前にもお前は父親に逃走船の依頼の電話をしたな。
それを傍受した。スラム最大ギャングを野放しにするほど警察は甘くない。

まあそれはそうですわな。傍受されたらどうしようかという危惧は携帯を入手した当初からあったが・・・やはりか。
ひょっとしたらダブルドラゴンクロスの方も傍受されてたりするんじゃないかと不安になる。
脱獄のこと既に知ってて踊らせてたって言ってるわけですからねぇ・・・

父親の声を聞かせて周龍を惑わす鬼道院。
ふうむ、やはり人質でありましたか・・・
親父と天秤にかけて仲間を売った周龍。何とも辛い決断を迫られていたのですなぁ。
しかし。ああ・・・だがしかし。

残念だったな。お前の父親など捕まえてはおらん

簡単な言葉しか発してなかった周龍父。
そのことを考えるとこの可能性はあるんじゃないかと思っていた。
思っていたけど・・・ニセモノにコロリと騙される周龍の迂闊さが何ともはや・・・

電話局を抱き込み、特定番号からの発信は全て自分に転送するようにしたという鬼道院。
なるほどそこも含めてドラゴンクロスがやられたと思い込んでしまったわけでありますか。
とはいえなぁ・・・やっぱり迂闊だったよ周龍・・・

俺はなんてバカだ・・・なんてバカなんだ・・・

思いあまって自決しようとする周龍。しかしそれすら許さない鬼道院。

貴様らには生きることは元より、死の自由もない

言ってくれおる。この男はどこまでも憎たらしい。
それにしても何故ここまで脱獄組の行動を泳がせてきていたのだろうか。
脱獄の証拠など房に踏み込めばいくらでも出てくるだろうしなぁ。
やはりあのケシ畑の写真が目的なのだろうか。
脱獄するのならば確実に持ち出しているはずであるし、そこを確保する。らしい計画でありますがはてさてどうなのでしょうか。
次号の鬼道院の説明を拝聴するとしましょう。



第195房 敗北  (2015年 14号)


なぜ脱獄組はここまで踊らされたのか。鬼道院の口から理由が語られる、
それによると、傍受したドラゴンクロスへの通信で3つの拾い物をしたらしい。

1つは、極楽島に芽生えた脱獄計画
それを聞いた時、俺は焦ったと思うか?違う。興味が湧いたのだ。
船の調達という最終局面を想定するまでに計画は進んでいる。この難攻不落の要塞、極楽島に対してだ。
そんな綿密な計画をギャングの若き2代目が立てられようか。そこでだ、2つ目の拾い物。脱獄王田中一郎の存在だ

繋がる1つ目と2つ目の理由。
周龍が甘く見られている・・・ということもないかな。
実際、あれだけの綿密な計画を立てられるのは田中一郎を置いて他にはいなかったでしょうから。レノマさんでも無理だったわけだし。

しかしそんな田中一郎も囚人の中にスパイが送り込まれてくることは想定外だった様子。
丸井を通じて周龍と田中一郎が接触してたことが確認されてしまう。

クックック・・・胸が高鳴るではないか。
5度も刑務所にぶち込んでやった宿敵が、今もなお俺に反逆するかのように脱獄に挑む。
防衛大臣に上りつめた今や敵なしの俺にはちょうどいい退屈しのぎだ
・・・丸井は数々の報告をもたらしたぞ。
ハンググライダーの作成。船の調達の難航。ヘリポート攻略・・・
俺はお前たちの逃走手段のほとんどを掴んでいた。お前たちはずっと籠の中の鳥だったのだ

絶望的な言葉。
苦労して苦労して、椿という大きな犠牲まで出したというのに・・・
しかしこうなると周龍が裏切ろうと裏切るまいと脱獄は無理だったことになりますな。
いや、それならば早くに相談していれば椿は死なずに済んだかもしれないわけで・・・
最後の最後で思い直してくれればそのまま脱獄の可能性もあったし・・・やはり周龍は許されないか。

2つ目の拾い物の話は脱獄計画を掴み泳がせていたことの説明でしかない。
泳がせていた理由は何だろうか。退屈しのぎとは言っているがそれだけではありますまい。
武器の調達とか地味に忙しいようですしね。
田中一郎が言うように脱獄準備罪、またはより重罰の脱獄実行罪で捕らえるチャンスはあったはずである。

なぜ・・・ここまで・・・泳がせた・・・
なぜ・・・陽平は死ななければならなかった・・・言え!なんのためだ!!

吠える田中一郎。その答えが3つ目の拾い物。そう、あのマイクロチップである。

田中よ。革命党の黒田リサ。あれも俺のスパイだ
リサはお前の弟の二郎が書き残した日記の一部を見つけた。
そこに書いてあった「チップは大切な人と共に保管する」と。

やはりチップの回収が目的でありましたか。
本人曰く、その程度の証拠など何ほどでもないとのことであるが・・・何とも慎重な男であるなぁ。
いや、田中一郎がそれを手にしたのであればさすがの鬼道院でも脅威に感じたりするのか。
普通の人では思いつかない使い道、証明の仕方も田中一郎ならやってくれそうですからねぇ。

チップは必ず回収せねばならぬ。だがお前は用心深い。大方・・・刑務所のどこかに埋めていたのだろう。
歴戦のお前のことだ。拷問で問い質したところで吐く可能性は低い。
お前が確実にチップを所有している瞬間・・・それは俺を倒すために脱獄を決行しているまさに今、この瞬間だ。

まさしくズバリ。
もちろん田中一郎はチップを持ち出していた。鬼道院を引きずり下ろす希望として。
しかしそれは見つけ出され・・・鬼道院自身の手によって破壊される。

俺の勝ちだ

おじさんの仇を討つための大事な証拠が壊されてしまった。
今の状況だけでも絶望的なのに更なる絶望を味わうリク。
ううむ、これは本当に完全敗北というしかない状況であります。
ここから逆転の可能性はあるのだろうか?沢田が万一生きていてもわざわざ皆を助けるために動くとは思えないし・・・ううむ。



第196房 地獄  (2015年 15号)


無残に破壊されるマイクロチップ。
鬼道院の悪行を明らかにする可能性を秘めていたというのに・・・
たった1つの手がかりを失い、消沈するリク。さすがのリクもこれで終わりと考えてしまうより他ない。ちくしょう!!

なんで・・・なんでお前はそんなになんでもかんでも取り上げちゃうんだよ・・・
俺たちから・・・大切なもの・・・全部・・・

無念この上ないリク。
ふまれてもふまれても立ち上がる心を忘れないでくださいとのおじさんの言葉を信じる心も折れそうになっている。ううむ。

ならばというわけではないが踏みつけられるリク。
そして鬼道院の合図で始まる囚人たちへの暴行。
手強く暴れそうなレノマさんや史郎さんはさすまたで動きを封じるという徹底ぶりだ。

ボコボコにされて甲板上に転がされる囚人たち。
折り悪く雨まで降ってきて彼らの体を冷たく濡らしてくる。ううむ・・・

鬼道院の説明タイムは終わった。そして最後に鬼道院はこのように告げてくる。

お前たちは極楽島には戻さん。あそこは"極楽"だからな。
栗田陸。お前には言っておいたはずだ。特別な絶望を用意してやると。
お前たちの行き先は地獄島。2度と日の目を見ない永遠の闇だ。
ようこそ。本物の地獄へ

黒く厚い雲によって闇が生まれ、月の光を覆い隠す。
希望の光も目にすることができないという地獄島。一体どのようなところでありましょうか・・・

極楽島からの脱獄は成った。鬼道院が見逃したとはいえそれは間違いない。
しかし自由を手に入れることはできず、変わらぬ囚人という立場。
変わったのは押し込められる先が悪くなったぐらいという・・・嗚呼・・・

当初からリクに対して言った割にはそこまで厳しい刑務所じゃなさそうと思われてきた極楽島特級刑務所。
なるほど、そこからステップアップすることも前から考えていたってわけですな・・・
極楽島に慣れているようなら更なる絶望に落としてやろうとか考えていたのかもしれない。
やはり自身の顔に疵をつけた相手を簡単に済ませるような男ではなかったか・・・

これで鬼道院への因縁を全員が持つこととなりました。
これはブッ飛ばしてやらなければ気が済みますまい。
しかしまずは地獄島で脱獄が果たせるのかどうかからでありますな。名前の響きからして嫌な予感しかしないぜ・・・



第197房 漆黒  (2015年 16号)


暗く、深い、闇の底より新章開幕――

真っ黒なページ。めくっても暗闇は続く。
しかしリクが目を開けばそんな闇でも少しは見通せるようになる。
見えた光景は・・・牢獄。しかも鉄格子の向こうは剥き出しの岩肌となっている。これは・・・!?

リクが周りを見渡せば、そこには仲間達の姿がある。全裸で
レノマさんがいた。史郎さんがいた。松尾がいた。天野も田中一郎もいた。全裸で
もちろんリクも全裸である。寒そうな岩盤に冷たそうな隙間風。そこに全裸で拘留とは・・・こりゃ厳しい。
尊厳破壊的な意味でも効果は高そうですなぁ。まあこれぐらいは極楽島でも保護房でやってましたし。

しこたま殴られた後、薬を吸わされて気絶した一行。
そしてこの地獄島に落とされることになったわけですな。

島と言ってはいるが風に潮の香りはしない。それだけデカい島ということだろうか。
低い気温から井戸は本土とほぼ同じであると推測される。
こんな所に落とされても早速分析を始める田中一郎。さすがの脱獄王であるか。

ところでさっき、リクは6人全員生き残っていたと言っていた。
誰か忘れているんじゃなかろうか?
いや、騙されたとはいえ裏切った男がここにいるとはさすがに思わなかったのだろうか。
部屋の隅には周龍の姿があった。他の面々と同じように全裸で。

裏切り者は死ね

姿を見つけるなり掴みかかるレノマさん。そりゃ恨み骨髄でありましょうさね。
裏切らなくても計画が知れていた以上、脱獄の可能性は薄かった。
それでも仲間を信じて相談してくれればそれを逆手に取ることだって出来たかもしれない。
そう考えるとやはり裏切り者と呼ぶしかありませんわなぁ・・・

親父を失う自分に耐えられる自信がなかったと述べる周龍。バカな奴である。
自分でも最低だと思い、殺してくれと頼んだりしている。うーむ・・・

言われるまでもなく殺してやるよと周龍の頭を壁に打ち付けようとするレノマさん。
しかしそこに割って入るのはリク。うむ、さすがか。
裏切られた怒りはもちろんリクにもある。めちゃくちゃハラワタ煮えくり返っている。

でも・・・殺していいって道理はねえんだ・・・

追い込まれてもやはりその辺りの信念は曲がらないリク。
そしてお前が誰かを殺したら、お前に預かって腕に埋め込んだ自決用の薬で死ぬと脅しをかける。
年端もいかぬ少年のセリフとは思えないが、実際にやるだろうという凄みがリクにはある。さすがというより他ない。

田中一郎も許し難いとは述べつつも、同じ囚われの身である以上いがみ合ってる場合じゃないと述べる。
確かに鬼道院に騙された者同士という意味では変わりないですわな。
怒りの全ては鬼道院にぶつけるべきでありましょう。しかしそれが果たせるかどうか・・・

こんな・・・どこかも知れぬ牢の中で・・・
俺たちの運命は・・・どこへ向かっているんだ・・・

諦めずに脱獄を志すかと思いきや、早速絶望しかかっている田中一郎。おやおや。
まあ、あれだけ鬼道院に完敗を突きつけられた直後とあってはねぇ・・・心折れるのも無理はないか。
地獄島が極楽島より警備態勢が甘いとはとても思えませんですし。ううむ・・・

一寸先も見えぬ闇。男たちの運命はどうなってしまうのか。
そして一体いつまで全裸で過ごすこととなるのだろうか。気になるところである。



第198房 腐敗  (2015年 17号)


どこに向かってる・・・俺たちの運命・・・
運命・・・これからのこと・・・これから地獄島で・・・俺たちがどうなっていくかって・・・こと・・・
これからのこと・・・

状況を把握し、先のことを考えるとどうしても絶望的な気分となってしまう。
どれほど絶望的な状況でも屈せず戦ってきたリクであっても捨て鉢な気分となってしまう。
なまじ希望を抱き、脱獄に成功したと思えた直後だっただけに厳しいですなぁ。
高く上げてから落とされた方がダメージが大きいという奴だ。

なまじっか勝手に希望を持っちまってたからな・・・だからなんだってできた・・・
でも・・・それもこれも全部ムダだったってことか。今までの苦労は全部・・・
いや・・・生まれてこのかた・・・か・・・ムダな時間・・・だったんだな・・・

一気に絶望に浸る天野。もう生きててもしょうがないとまで言ってしまう。
それにつられるようにして史郎さんの口からも弱音が出てくる。
しかし椿の死について言及するのは・・・
確かにそうかもしれない。犬死に、ムダ死にだったと言って過言ではない。だがそれは・・・

やめろ。椿がどこで聞いてるかわかんねえんだぞ

史郎さんの弱音を止めるのはレノマさん。
止めてくれる人がいるというのはいいことですよね。
ここまでの状況に追い込まれた以上、腐ってしまった方が楽だという意見は分からないでもない。
しかし止める方もやはり大変。殴りたくない者を殴ってしまった痛みは大きい。
ううむ、この状態が長く続いたら止めてくれるレノマさんもどうなってしまうか分からないな・・・

そして非常に危ない状態となっているのが松尾。
母に会いたかったのに会えない。父に会いたいのにもう会えない。
ならば自分があの世に行き、父と共に母を待てばいい。そんなことを考えてしまう松尾。ううむ・・・

生きていても仕方がない。全部ムダな時間だった。
そのように嘆く皆。しかし、しかしそれでも命を絶つのは駄目だと言い続けるリク。

生きるんだ。生きるんだよぉぉ

生きた先に何があるのか。諦めないことで掴める何かがあるのか。
絶望に落とされた者たちが再度の希望を抱くことは難しい。
このまま状況の変化がなければさすがのリクもどうなることか・・・

しかしここでようやく変化が訪れそうな兆し。靴の音が鳴り響く。
うむ、少なくとも完全な全裸空間からは解放されそうな感じでありますな・・・
何が起きるかは分からないが、少しでも状況把握ができ、希望を見出せるようになってくれればと思います。



第199房 地底  (2015年 18号)


絶望的な空気が漂う拘禁部屋。
そこに現れたのは見慣れた看守服。ふむ、ようやく全裸空間から解放される時が来たようでありますな。
出ろとの命令に応じ部屋から出てみると・・・そこで見られるのは強制労働場の光景。
囚人たちが土木作業を行い、怠る者、倒れた者には看守からのムチがとぶ。うーむ、何と絵に描いたような奴隷就労。

着替えて掘れ。質問は一切受けつけん。以上だ。

それだけ伝える看守。わけもわからないまま働かされるリクたち。
全裸から解放はされたものの、これは厳しいですなぁ・・・
さすがに寝て暮らさせてくれるようなことはありませんでしたか。

労働によって絶望的な気分に浸る間もなくなるという利点はなくもない。
まあ、そのうちに疲れ果ててしまうことになりそうでありますが・・・

特に何も知らされずに労働させられるというのはストレスが溜まる。それを爆発させるレノマさん。
しかし絡んできた囚人を脅すことで情報の入手に成功する。
がんばっていれば上に行ける奴もいるという。暗い地下ではなく陽の当たる地上で労働できるという。

地上の、ケシ畑で・・・

なんと鬼道院の悪行の証拠たるケシ畑。そのすぐ下に送り込まれていたとは・・・!!
これは逆に鬼道院打倒に近付けたということではなかろうか。
何も情報がないところから、一気に核心に近付いたと考えられなくもない!!
まあ、どうやってその証拠を得て脱出するかという話でありますが・・・

地獄島とは関東平野の一角を立入禁止にして出来上がった陸の孤島のことでありました。
そこにケシ畑の巨大プラントを建設し、更にその地下にトンネルを掘り進めている。
テロを起こすため、都市の重要拠点にすぐ攻め込むための道を確保しようとしているのだろうか?
そして間もなくそのトンネルも目的地まであとわずかでたどり着くという。ううむ、順調だなぁ鬼道院の野望。

鬼道院の悪行を追う田中一郎たちをわざわざその拠点に送り込む。
絶対に逃げ出されることはないという確信でもあるのだろうか?
一度完敗したわけであるし、甘く見られているのかもしれない。
ならばこれはリクの言う通り、おじさんの導きと考えていいかもしれませんな。

やってやる・・・

絶望に至りそうになっていたリク。しかしその闘志は再び燃え上がろうとしている。
逆転の目がまだあると分かったのならば戦わないわけにはいきませんわな。
しかし脱獄の困難さは極楽島以上になりそうですが、果たして上手く果たすことができるのか・・・注目です。



第200房 肖像  (2015年 19号)


不屈の闘志の持ち主であるリク。
反撃の希望が見えた今、静かに燃え始める。
例え1人ででもやってみせる。そう語り・・・眠る。
ううむ、この小さな体で静かに語られると堪えるものがありますなぁ。

さて、スラム。脱獄の結果がどうなったのか気を揉んでいるダブルクロスドラゴンの面々。
特機に動きはなく、ボスたちがどうなったのか分からない。
しかし、松尾や椿の家に届いた封筒は訃報を知らせるもの
勿論これは虚偽であり、レノマさんたちは生きているのだが・・・それが分からないマリアさんたちには厳しい話ですわなぁ。
こうやって死亡したと見せて存在を消し、地獄島に送っているわけでありますか。

地獄島の日々は続き、朝礼の日。
どのぐらいのサイズがあるかも分からないぐらいに巨大な鬼道院の肖像画が掛けられた空間に集められる囚人たち。
そしてそれを両脇でぎっしりと上から見下ろすように固める看守たち。
これはまた何というか。レトロというか何というか。独裁者というか悪の地下組織みたいになってますぞ。

そんな肖像に礼を示すのは地獄島司令長官、剣崎進
眼帯といい肩書きといい、いかにもな幹部役といった感じでありますなぁ。ハハハ。

よく聞け。下賤の豚どもよ。
お前たちのような累犯者は生きている価値がない。国税をもってお前たちを食わす意味もない。
ただ鬼道院様は違う。壮大なる慈悲の心でお前たちに授けたもうたのだ。奴隷としての運命を
神であらせられる鬼道院様の所有物となる意味と価値を心せよ。

もはや囚人ではなく、完全に奴隷として宣言され、扱われることとなる様子。
うーむ、この日本でこの規模でこれだけのことが出来る。今の時点でもこれは凄いことと言わざるを得ませんなぁ。
ある意味ここまで来たら独裁者として満足しちゃいそうな感じである。
にも関わらず、通過点として精力的に動いている鬼道院。やはり凄い。

奴隷宣言されたリクたち。
勿論リクはそんな言葉には反感しか覚えておりますまい。
それについてはレノマさんも同様でありましょう。
しかし地獄島からの脱獄についてはリクほどの信念は持てずにいる様子。
なまじ頭が回る分、無理なものは無理と思ってしまう悲しさでありますな。

地獄島についての情報が無さすぎる。島の位置もわからないし、見えない敵とは戦えない
レノマさんの語ることは最もである。だが、この男は――田中一郎既に心に火が灯っている様子。

俺は、やる。リクの不屈が俺の混濁した頭脳を再び回転させた
そもそも極楽島は視察委員がいる以上、世間からその存在を認知されていた。つまり鬼道院もムチャできなかった。
だがここは違う。あの肖像・・・この地底の閉鎖空間・・・まるで独裁国家だ。

自分の肖像を生きているうちに飾るとか恥ずかしくはならないのだろうか?
そういう考えを持つ人間には独裁者は務まらないってことだろうか。

ともかく、鬼道院は身寄りがない人間や戸籍を抹殺した人間を地獄島に集めている。
となれば、あの人物もここにいる。この地獄島を知るためのキーマンとなる人間が!!

いたぞ・・・原田!!

やはりここで登場したのは原田看守!!
極楽島から失踪し、おそらくケシ畑の見張りに送られたと思われていた男。
ここで登場するのは必然の流れでありましょう。再登場、嬉しいです。

正義感を失っていない原田看守であるならば、説得次第では協力してくれる可能性もありましょう。
看守が味方となればまず情報面でかなり有利となる。
極楽島の時よりもむしろ脱獄は楽になるかもしれませんな。期待したいところです。



第201房 暗号  (2015年 20号)


地獄島脱出のキーパーソンである原田看守。
どうにか接触したい。そう思っていたのだが、倒れた奴隷に躊躇いもなく鞭を振るう原田看守の姿を目撃してしまう。
極楽島では他の看守とは違い、囚人を人間として接してくれていたはずなのに、何故・・・

注射痕・・・

どうやら薬による洗脳は看守の方に行われている様子。
そうやって看守を縛り、奴隷たちは暴力で縛り上げているわけであるか。
数は看守の方が少ないし、その方が効率的といえるかもしれませんな。

何もわからぬまま労働させられ疲れ果てた元脱獄組。
与えられた部屋に入ると、食事を食べる気力もなく寝入ってしまう。
そんな中、とにかく体力をつけて反撃しなければと考えるリクは食事を行う。
うーむ、この辺りの意識の差はやはり大きいですなぁ。
レノマさんと田中一郎も起きているが、双方脱獄について考えているのだろうか。

とにかく奴隷たちに地上への上がり方を訪ねて回るレノマさん。
どこであろうととにかく情報が命というわけですな。
しかし誰一人知っている人物はいなかった。上に行かなければ何も始まらないというのに手がかりさえ掴めない。厳しい。

そんな中、田中一郎の目標はやはり原田看守。
人としての優しさを持った男であるし、この地獄のような場所に憤っているに違いないと考えている。

あいつを抱き込みさえ・・・いや・・・味方につけることができれば・・・

そう考えたわけであるが、原田看守の異様さから薬物による洗脳教育を推測する田中一郎。

だから今から賭けに出る。暗号だ

そういって示すのは、一輪車に盛られた瓦礫。の上に置かれた特徴的な並びの複数の石。
囚人が看守に話しかけることはできないため、これで意図をくみ取ってもらおうという賭けである。ふむ。

かなり分かりやすいのはカタカナのキ。これは見ただけでそうと分かる。
田中一郎はこの「キ」に食い付けば、頭のキレる原田看守。そこから解読できるはずと踏んでいる。
他の石は数がヒントとなる。2、8、キ、4。
2は英語というヒントを貰えばツー、ハチ、キ、ヨン・・・
ハチに濁点があることに気付けばツ・・・バ・・・椿、4はシ、死・・・そういうことか。

原田は薬に冒された。状況証拠がそう物語っている。
だがな、俺はそれでも信じたい。原田という男を。原田と陽平の友情を
陽平は沢田の凶刃から原田を救った。そして病棟で2人は語り合い深いところで認め合った。
だからこそ、原田は俺たちの脱獄を1度は見逃そうとしたんだ。
陽平の死を伝えたい。俺たちにはその義務がある

そのように述べる田中一郎。
さて、その賭けは上手く行くかどうか。
原田看守の前をゆっくり通り過ぎる田中一郎。
原田看守は見た。メッセージを。
そして通り過ぎた田中一郎が振り返ると・・・そこには唇を噛み締める原田看守の姿が。

あの一瞬で暗号を読み取ったと言うのだろうか?
まあ、田中一郎たちと椿の関係は知っているし、連想できないことはない。
椿のこと、脱獄のことは気にかけていただろうし、それからどうなったかも知りたかったはずでありましょう。
であるならば、暗号に気付くのも無理はないかもしれないが・・・結果、訃報を知ることとなったわけで・・・ううむ。

椿の死によって原田看守の心が揺り動かされる流れでありましょうか。
無駄死にではなかったと喜べなくもないが・・・生きてて欲しかった思いもあるだけに、そこは何とも・・・
ともかく、原田看守のここからの行動に期待したいものです。



第202房 継承  (2015年 21+22号)


地獄島では看守たちも雑居房に押し込まれている。
狭い個室には鬼道院の肖像画が必ずあり、さすがと言わざるを得ない。

何やらやつれた様子の看守たちの食事風景。ムッチャムッチャ。
そこに送り届けられるのは鬼道院様よりのお情け。お情けっ・・・お情け!お情け!!
ようするに麻薬でありますな。
注射器を使った麻薬らしい麻薬。少年誌で展開していいのかと言わざるを得ない。

すっかり麻薬漬けとなった看守たちはお情けを堪能する。
原田看守も躊躇いはあるものの・・・やはり逃れられない様子である。麻薬は怖い。
更に暗号を読み解いたことで椿の死を知った原田看守。
そのことによってか、幻覚と共に椿の言葉に悩み、苛まれることとなる。おやおや・・・

やめろ・・・もう俺は・・・鬼道院に逆らえない身体になってしまったんだ・・・あの日を境に・・・

あれは原田看守が極楽島から飛ばされた日。
脱獄計画について報告しようとしていたが、逆に所長に呼び出された日である。

脱獄しようと目論む囚人を見つけただろう。余計なマネをしおって・・・

やはりこれが原田看守が飛ばされた原因でありましたか。
さすがに都合のいいタイミングで飛ばされ過ぎだとは思いましたが、やはり・・・
脱獄させてマイクロチップを奪ったりして楽しみたい鬼道院としては、脱獄が未然に阻止されては困るわけですわな。
切れ者だったからこそ地獄島に放り込まれることとなった。原田看守の不遇。

しかしそうなると内海看守もあそこでリクが諦めて全員逮捕という流れになったら処罰されてたんだろうか。
大手柄だ!!出世だ!!と喜んでいたら地獄に放り込まれる内海看守の図。想像すると面白そうである。

ともかく、気づいたらもうこの地下で薬が投与されていたという原田看守。
落とされて鬼道院の悪行に気付いたが時すでに遅し。もはやどうにもならない。

俺には何もできんのだ!!

看守の身でありながら絶望に浸されている原田看守。
しかしそれでも椿の為に涙を流すことはできる。うーむ、切ないですのう。

さて、翌日。
田中一郎からのメッセージを受け取った原田看守。
そのことについて何らかのアンサーがあるはずだと期待する田中一郎。結果は鞭打ち。バチィィン。あらあら。
まあ、これは他の看守たちに気付かれないためのフェイクである。
鞭を打ちながらどさくさに紛れて手渡されたのは小さな紙片。
開いてみればそこには期待したメッセージ。椿の無念は俺が継ぐ。協力は惜しまないとの内容が。

原田は、俺たちの仲間になった

これは有難い!!
右も左も分からない地獄島でようやく光が見えた感じであります。
この勝機を得てレノマさん。揺らいでいた心もようやく決意が固まった様子。

反撃の狼煙はあがった。今度こそ勝つ

やはりこの男がやる気にならなければ始まらない。
リク、レノマ、田中一郎、原田。4つの不屈が結集し、今地獄島との戦いが始まる。
今度こそ勝利し、鬼道院をブチのめしたいところでありますが・・・まずは脱獄が出来るかどうかですな。
原田看守を仲間にしたことで情報はある程度手に入るでしょうが・・・さてはてどうなるか。



囚人リク 24巻


第203房 継承  (2015年 23号)


原田看守との盟約はなった。しかしまだそのことはリクには伝えないレノマさん。
リクは今度は誰も巻き込まないように1人で戦おうと考えている。
容易いことではないだろうが、そうと決めたら頑固なリク。確かに今教えても面倒くさいだけな気がしますな。

というわけで、今日から原田看守とのやりとりが開始される。
極楽島とは違い、本が手に入る環境ではない地獄島。
なので原田看守のメッセージの紙の裏に、ネジで跡をつけて文字を書く田中一郎
こんな難しいやりとりでもちゃんと理解して読む原田看守はさすがのキレ者ですなぁ。

というわけで小さい紙面を使ってチョコチョコとオッサン2人の文通が始まる。目が悪くなりそうだ。

しばらくして情報を得たのか、脱獄仲間達に話す機会が来たと考える田中一郎。
脱獄を目指すリクたちとは違い、史郎さんや天野、松尾といった面々はもう完全にやる気を失っている様子。
飯を食べる気力もなく、早くここに慣れてしまおうとしている。
だが、そんな彼らに田中一郎とレノマさんが言葉を投げる。原田看守との全面協力の約束を取り付けたと。
そして決意したと。

レノマ「もう1度やる
田中「みんなでここから出るんだ

意志を発する2人。
案の定リクとしてはもう誰も危ない目にあって欲しくない様子。
とはいえリク1人で何かができるというわけではない。希望ではあってもそれ以上の存在になるにはまだまだですからねぇ。

脱獄の意志を示す者もいれば、もう戦うのは嫌だと述べる天野のような者もいる。当然ですな。
辛い目にはあっているが、大人しくしていれば少なくとも飯は食える。生きていける。そのように考える。だが・・・

いや、それはムリだ

天野の言葉を否定する田中一郎。
そしてこの数日で仕入れた原田看守からの情報を口にする。

この島がどこなのか原田も知らない。看守も軟禁状態でむろん外部との連絡を取る手段はない。
俺たちが掘っているトンネルもなんのためのものかわからないらしい。そして・・・地上部のケシ畑・・・これは確かに存在する。

ふうむ、思ったよりも手がかりが少ない。
看守とはいっても薬漬けで軟禁状態では得られる情報も限られてしまうのは仕方がないか。
しかしその限られる情報の中でも聞き逃せない情報があった。ここからが核心だ。

この地底エリアはトンネルを掘る以外に重大な使命を帯びている。命の選抜
ある期間ここで強制労働をさせられた囚人は全員ふるいにかけられる。
ある者は他エリアで死ぬまで銃器製造を担わされる。
ある者は新薬実験の人体実験に回され・・・
そして大半の者は病気の金持ち相手のドナー・・・つまり・・・臓器を抜かれて死ぬ
この島すべてが鬼道院の闇の金脈なのだ

トンネルを掘るのは目的の一つであるが、それ以外にも事を為すには金が要る。
囚人は大量にいるのだから、それを上手く金に換えようと考えたのが鬼道院。さすがの独裁者っぷりですなぁ。
どの結果も待ち構えるのは死あるのみ。銃器製造がまだマシな感じだが、選ばれる保証はありませんわな。
そしてある期間がどのくらいかというと・・・

強制労働開始から1か月だ

何と。そんなに短い期間で決せられてしまうのか!!これはいかん。
原田看守がいなければムダに時間を費やして、気付いた時には時すでに遅しだったわけか・・・危うい。
極楽島の時の様に、このままでは刑務所内でジジイになってしまうとか憂いている余裕もないわけだ。ううむ。
しかし1か月で入れ替えって、どれだけの人数が地獄島に送られ、死亡したことになるのやら・・・

この話を聞かされ、ようやくやる気になった史郎さん。腐っている場合ではないと気付かされる。
松尾もどっちにしろ1か月後には死ぬのなら、それならばダメで元々。母ちゃんに会えるチャンスにかけるしかないと述べる。
そしておっかない目に遭うのを嫌がっている天野は・・・

やっぱ・・・俺・・・嫌だわ・・・
女の子と1度もデートできねえまま・・・死ぬのは絶対嫌だ!!

ふむ、実に天野らしい動機でいいんじゃないですかね。そういうのも生きる希望として正しいものだ。

やろう・・・戦ってみんなで生きのびるんだ。周龍。お前もだ。
1か月で必ずここを攻略してやる

再びリクを先頭に立ちあがった脱獄チーム。
周龍も今度こそという想いを持って挑んでくれることでしょう。そうでないと困る。

さて、地上に出ないと話にならないわけであるが、その方法はあるのだろうか。史郎さんの問いに答える田中一郎。

あるにはある。ただしそれは・・・囚人同士の殺し合いに志願して、それに勝利することだ

それはまた何ともな方法ですなぁ・・・
しかし無駄なく人を金に変える方針の地獄島でそのような殺し合いは何故存在するのだろうか?
今後の国家転覆に向けての兵士を求めているということだろうか?
危なそうな奴でも薬漬けで洗脳してしまえば優秀な兵士になると・・・?
何となくスライスデビルが活躍してそうな場所でありますなぁ。

示された地上への道。しかし殺し合いなどリクが許容するはずもない。
となればこの道はまずあり得ないと思われる。他の方策を練るしかないだろうが、時間は限られている。
田中一郎はまたも頭を悩ませる日々が始まるわけですなぁ・・・大変だ。



第204房 空気  (2015年 24号)


地上に上がる方法は囚人同士での殺し合い。
志願者による1対1での闘いに勝ったものがケシ畑への配置転換をされるのだという。
うーむ、何だろうこれは。殺し合いをさせれば人間が減るのは間違いないのに、何故そのようなことをするのか?
映像を配信して趣味の悪い見世物や賭けごとに用いたりするのだろうか。
そういった利益が上がるシステムは構築されていそうでありますな。

殺し合いなど出来ないと述べる天野。そうでしょうな。
リクにしてみれば殺せるかどうかとかそういう話ではなく有り得ない。絶対ダメとのこと。そうでしょうな。
田中一郎としてもその反応は予想通りでしょうし、他の方法を探すしかないと考える。

やるしかないんだ・・・やるしか・・・

困難な道であろうとも、やらなければ1か月後には死が待っている。
いや、強制労働生活から5日が経過している。残りはあと25日しかない。25日・・・しか・・・
さすがの田中一郎も嘆いてしまう状況ですなぁ。
原田看守の協力もあり、時間さえかけられればもう少し脱獄の算段も立てやすくなるでしょうが・・・ううむ。

苦悩する田中一郎に対しレノマさんから提案。
強制労働を強いられている囚人に対し、看守の数が圧倒的に少ない点を指摘する。

暴動だ。暴動を起こすしかねぇ

確かに数の力でかかれば看守が多少武装していようとも何とかなりそうな気はする。
地獄島には対暴動用の手錠もなく、抑え込まれることもない。
しかしむしろそれがないというのが気にかかる。何か別の対策があるのではあなかろうか。田中一郎はそれを危惧する。
と、そんな悩む田中一郎の代わりに動き出す囚人が1人。若そうな奴だ。元気がありあまってそうな感じですなぁ。

1人の若者の看守への攻撃を機に始まる囚人たちの暴動。
焚きつけられて思わず参加しようとするレノマさん。しかし、囚人の一人は頭を抱えている。

先週も別の新入りがやらかしたばかりなのに・・・

やはり暴動は頻繁に起きているらしい。誰もが考えそうな方法ですからねぇ。
そしてもちろん、誰もが考える手段に対抗策がないはずがない。
酸素吸入器を加えた看守たち。そう、行われるのは酸素濃度の低下。それによって昏倒を引き起こすこと。
確かにこれならば閉鎖空間である以上、大人数であっても簡単に征圧できますわいな。

倒れた首謀者の若者を始め、暴動に参加した者たちは文字通り引きずられていく。
肉に直接金属のフックを通しての運搬。うーむ、これはエグイ。
報復ということで顔面もボコボコにされている。
同じようにボコボコにされたリクたちであるが、それよりもひどく見える。もう回復させる必要もないということか・・・

地獄島らしいところは見ることが出来た。
しかしそのダクトの存在が脱獄王に閃きを与える。換気用のダクトなら外に繋がっているはずだ。

地上への道、見えたり

ようやく動き出しそうな脱獄計画。これは期待したい。
ところで暴動鎮圧用の酸素濃度低下であるが、これは数の力で看守から酸素吸入器を奪うわけにはいかないのだろうか?
そんなことも考えたが、上手く行っても一番大事な数の優位が失われてしまうんですよね。
他の場所にいる看守ももちろんいるだろうし、それらが武装して向かってきた場合どうにもならなくなってしまう。
やはり暴動でどうにかするのは難しいか・・・田中一郎の案に期待するしかないですな。



第205房 寝顔  (2015年 25号)


換気用ダクトを使用しての脱獄。
脱獄ものとしては定番中の定番と言えそうであります。
それなりの対処もされてそうな気はするが・・・さりとて確実に外に繋がってそうな道は他に思いつかないですしなぁ。

そんなことを考えていると、囚人の一部が見張り台の前に集められる。
どうやら1か月の地底労働を終えて配置換えとなるらしい。命の選抜か・・・
配置換えされた先が死につながっているとは知らず、この強制労働よりはましだろうと考える囚人たち。
なんというか、朴訥そうな奴らばかりってのがなぁ・・・可哀想な話である。
というか、労う看守の目が無駄に綺麗でどんな顔したらいいのか分からなくなる。

死へと向かおうとしている囚人たち。
何の関係もない人達であるが、そんなことは許せない。思わず動き出してしまうリクであるが・・・止めるレノマさん。
そりゃまあ、囚人が知っているはずの無い死の選抜について口走らせるわけにはいかないですわな。

俺はファミリーを守る。お前もその1人だ。それが俺の守る範囲だ

仲間を守るためには譲る部分、切り捨てなければならない部分もある。
ボスを勤め上げるということはそういうことでありますな。
辛いが、こればかりは仕方がない。

死の選抜を目の当たりにし、いよいよ危機感を強める脱獄組。
あと24日で自分達も同じ運命となってしまうのだが・・・まだ田中一郎に具体的な脱獄プランはない。

俺たちにあるのは原田の協力と・・・地上へのダクト。
今日の暴動でダクトの存在に気がついた。換気用のダクトの行きつく先は地下ではないと考えるのが妥当だ。
つまり地上への道が1本。

それを使えば脱獄できるのか?と思いきや、子供1人がやっと通れる太さであるとのこと。ふうむ。
しかしそれは逆を言うと子供ならば通れるということである。
まあ、9歳の時の史郎さんが通れるのかというと絶対に無理でしょうが、それはさておき。
地上に出ることによって始めて脱獄のスタートラインに立つことができるようになる。そのためには・・・

下見がいる・・・極楽島で椿がヘリポートに行ったように下見が必要だ。
地上エリアを知らずして対策を練れるはずもない。
そこでだ・・・リクを地上に送る。ダクトは子供しか通れない。そのやり方を説明する。

田中一郎が言うにはトンネル作業現場にはダクトと並行して下水管が通っているという。
その下水管は当然トイレへと繋がっている。
下水管そのものは地上には繋がっていない。これは初期段階で原田看守から聞き出している。
だがメインダクトのそばまでいくことはできる。今日から夜、下水管に入り込むためにここの壁を掘る。それが地上への道に繋がる。

作業現場は強制的に「夜間」を設定し完全停止している時間帯がある。
囚人の体内時計を安定させ、商品としての人体の劣化を防ぐためだ。
その暗闇に紛れ夜間巡回の隙をつき、リクがダクトに侵入する。

作業する時間はちゃんと確保できるわけでありますな。
下水管からダクトへの移動については外のこととなるので原田看守の手を借りることとなる。
ふむ。考えられる範囲としてはここまでか・・・

時間はない。さっそく掘ろう

その言葉を受けて交代で壁を掘りだす脱獄組。
とはいえ満足な道具は無い。例の小さなネジを使って少しずつ少しずつ掘るしかない。ううむ、地道な・・・
こういう単純作業はむしろ迷いを膨らませる原因にもなってしまう様子。これでいいのか。こんなことで間に合うのか、と。

極楽島と違ってここは・・・あまりにも得体が知れなさすぎる・・・
こんなに自分の考えに自信を持てないまま・・・いいのか・・・このまま・・・こんなことを・・・

他の面々が不安がるだろうし、決して口には出せない田中一郎の迷い。
だがそれは、つまり他の面々は田中一郎の言葉を信じ、頼りにしていることの表れと言える。
若者たちの屈託のない寝顔を見て思いを新たにする田中一郎。この若き命たちがあと24日で潰えるなど断じてならん。

この命たちを守りたい。俺が弱気になってどうする・・・
必ず連れていく!自由な空のもとへ!

気を取りなおし、作業を進める田中一郎。今は信じて進むしかありませんわな。
それにしても、他の子らはさておき、レノマさんの寝顔は屈託がないというか何というか・・・色気があるな。不思議なほどに。
元々ビキビキしてない時はやたらと綺麗な顔立ちだったりしますからねぇ。ふむ・・・
まあ、そんな寝顔を見てやる気になったとか言うとせっかくの大人の行動が怪しいものになってしまうのでやめておきますがね!!



第206房 地上  (2015年 26号)


祈りを捧げながらの掘削作業。
どうにかこの下見で成果を出さなければいけない。限られた時間の中で光明を見出すことが出来るのかどうか。
焦燥感に耐えながら、作業は地道に続けなければいけない。辛いなぁ。

しかし思ったよりも作業は順調に進み、わずか3日で穴を開けてしまう
見回りこそあるものの、夜の間は交代で掘削作業が出来るわけですし、早くもなりますわな。
というか、思ったよりも下水管までの距離が短かったのが功を奏しましたな。
いやしかし、極楽島のように鉄板が仕込まれてなくて良かった。その辺りも田中一郎、ドキドキものだったでしょうな。

当然下水管を通っての下見計画は原田看守にも伝えられている。
ダクトに移るための目印のライトをつけておくなど準備は万全。いよいよ下見の開始だ!!
いや、その前に田中一郎から全員にお話。

あと20日・・・その間に俺たちがクリアすべきことは3つある

そう切りだす田中一郎。まず1つめはヘリの確保
極楽島と同じく、島である以上は逃走にヘリは不可欠という考えだ。
そして次の2つめはここがどこなのかを知ること
ヘリを無事に調達できたとしても、本土まで補給なしでたどり着けるような場所なのかどうかは知っておかないといけない。
なるほど、納得出来る考えだ。まだここが島だと思っている以上、考えておかないといけないことでしょうな。

そして3つめ。地上へ全員が揃って上がれる方法を見つけることだ

確かに逃走するにはまずそれが出来なければ話にならない。
そのために必要なのが下見。
この下水管を通れるのは小柄なリクのみであるし、ここからの脱獄は不可能である。
となればどうにかして全員が地上に上がる方法。その可能性に繋がるものを発見しなければいけない。
椿の時もそうでしたが、下見というのは大事な仕事でありますなぁ。

というわけで、臭さにまいりながら下水管を進むリク。
原田看守の目印を元に換気ダクトに入り、地上を目指す。かなりの道のりだ。
そうしてようやくの思いでたどり着いたのは地上。眼下にケシ畑の広がる間違いのない地上である。おぉ・・・
さすがに鉄格子があり、外に出られる状態にはなっていないが、外の様子を見るだけなら不可能ではない。
しっかりその様子を目に焼き付けて帰還するリク。その結果は・・・

ヘリポートも・・・ここがどこだかわかるような何かも・・・何も・・・見つけられなかった・・・

そりゃ島ではないのだし、ヘリポートは必要ないですわな。
まずそのことを知るのが第一なのだが、その手がかりとなるものも見つけられなかった。ううむ・・・

しかし田中一郎。設備の中にこういったものはなかったかと絵に描いてリクに見せる。
下見のこともさりながら、巾着の受け渡しで鉛筆と紙が手に入ったのは大きいですなぁ。
ともかく、何らかの設備があったことを知ることが出来ました。これは一体何だ・・・?

これは「ずり出し」という掘削した土砂を運びだす作業のためのための設備だ。
つまり・・・トンネル作業現場と地上の直通ルートだ。これをうまく使えば・・・全員で脱出できる。

おぉ、ついにルートが見つかった!!
それをどう使えばいいのか。その算段はまだまだこれからでしょうが、光明が見えたのは間違いない!!
3つの課題のうち、他の2つはダメだったが、1つは見えてきた。
まずはそこから詰めていくのが大事でありましょうな。とはいえ残り2つも早期に解決しなければいけない。
期限はもうあと20日・・・急がなければ!!



第207房 年輪  (2015年 27号)


課題の一つであった、全員が地上に上がれるルートは発見できた!!
確かに地下にトンネルを掘るのであれば、大量の土砂を地上のどこかに出さなければいけない。
リクの発見はその土砂を地上へと運ぶウインチの存在を示唆しているわけだ。

下見で地獄島を出る方法は見つからなかったが、一先ず全員で地上に上がる可能性は見つかった。これは大きい。
まだまだ確認しなければいけないことは多いものの、これは大きな前進と言えましょう。
少なくとも天野たちの表情には希望の色が見えてきている。この意識が出来上がるのは大きい。
こうなれば田中一郎としても残りの20日を使ってどうにか残る課題2つを解決したいところ、であるが。

ふあ・・・

思わずあくびの漏れる脱獄王。
いくら緊張感を保とうとしても疲れが達しているとどうにもならないようですな。
しかしこの場面、妙に可愛い感じで困るなぁ。おっさんのくせに。

脱獄計画は進めたいが、それを怪しまれないためにも昼間はしっかり働かないといけない。
史郎さんが労働中に出会ったのはやたらとシワの深い老人
ヨロけて倒れる老人を手助けする史郎さん。やはり心の大きな兄貴でありますなぁ。
さりげなく負担を減らすために土砂を自分の方に振り分けたりとお優しい。
そんな史郎さんの優しさに微笑みを見せてくれる老人。
ははぁ、この深いシワは笑い皺でありましたか。
昔はよく笑っていたのでしょうが・・・地獄島に来てからか、その前からか。すっかり人間不信になってた感じでありますなぁ。
そんな老人に人間としての温かみを思い出させる。史郎さんの大きさが見て取れます。

それはそうと、作業中であってもその頭脳は休むことを知らない田中一郎。
土砂を運ぶ際の歩数を換算し、トンネルの長さはおよそ13kmと推測する。

最低でもそれだけの直線距離を有する島。島の規模としては極楽島か八丈島クラスの大きさはあるということか・・・
それほどの島が・・・国家の介入の一切を封じ存在しえるものなのか・・・
鬼道院とて一介の防衛大臣・・・島を丸ごと我が物にしうるなど不可能だ・・・
この島は・・・一体どこに・・・何かヒントは・・・
あの・・・マイクロチップに残されていた画像・・・あそこに写っていたもの・・・
ケシ・・・いや・・・それじゃない・・・違う・・・あれでもない。待てよ・・・

もう何度も繰り返し見たおかげで脳裏に焼き付いているマイクロチップの画像。
鬼道院がチップを、画像を消去したとしても、その脳裏の映像まで消すことは出来なかった。それが今道を繋ごうとしている。

山・・・そうだ・・・あの山を・・・

攻略のカギは山。山?山をどうするのか。あるならば登らないとという話だろうか。どこの登山家だよ。
まあ、何か考え付いたのは確かなようですし、期待するとしましょう。

しかし期日は着実に迫っている。
脱獄組が想定しているリミットはあと20日ほどであるが・・・それも怪しくなってきた。
クーデターのためのトンネル掘削。そのトンネルが目標物の地下にまで到達したら地下の奴隷たちはどうなるのか。

答えはシンプル。奴隷などトンネルもろとも生き埋めだ
奴らは今、己の墓穴を健気に掘っているのだ。悪事の証拠は確実に隠蔽する。

顔をメタリックな感じに染めてそう述べる鬼道院。
うーむ、やはり容赦のない男でありますなぁ・・・
さすがにクーデターまであと少しという段階。田中一郎たちと遊んでいる暇はもうないということか。
しかしそれだけ地下の奴隷たちには注意を払っていないということにもなるのではなかろうか?
極楽島の時のように脱獄を事前に看破される可能性は低そうだが・・・さてさてどうなりますか。



第208房 本土  (2015年 28号)


命の選抜まで残り19日。
それが早まる可能性もあるが、今はまだその事実は知るすべもない。
とにかく今は脱走計画を進めていかなければいけない。

というわけで、この地獄島の位置特定のヒントについて話す田中一郎。それは山であると。

マイクロチップのケシ畑の画像には山が写り込んでいた。
たとえばその山が富士山だったとしよう。見える大きさ・・・見える角度・・・
太陽などの位置からある程度距離と位置は絞り込める。
チップ画像の山がなんという山か・・・それを掴むため、リクに山の稜線をスケッチさせる

ほう。稜線。
なるほど。チップ画像の山を毎日眺めて育った者が地底に居れば、即座に何山か言い当てることも可能であるわけか。
しかしそれはスケッチした後に聞いて回るということだろうか?結構危険な気もするが・・・それはまだ先の話かな。
それよりも田中一郎。ここで大きな気付きについて発表する。

地獄島は島ではない。本土のどこかだ

断言する田中一郎。おぉ・・・いきなりそこに気付くとは!!
その理由はトンネルの長さ。直線距離にして13km以上の大規模な島が国家の目を逃れ、鬼道院の悪の巣窟たりえるのは事実上不可能。
そしてこのトンネルが移動を目的としたものであることも推測がついている。

もし仮に地獄島が島だとしよう。島全体が鬼道院の独裁の地だ。
奴を遮る塀など地上にあるはずがない。奴は好きな所に自由に地上を移動すればいい。
だがそれができない。なぜだ?鬼道院は野望を実現するためにある場所へ行きたいのだろう。だが国家の目という塀がそれを阻む。
そこでトンネルなんだ。そんな重要な場所が辺鄙な島などにあるはずがない。
俺たちはすでに本土にいる。そう、つまり・・・逃走用のヘリなども不要ということ。3つ目の課題はすでにクリアしたのだ

全身から点描トーンをまき散らし、キラキラしながら結論を述べる田中一郎。あんた輝いてるぜ・・・!!
語りが盛り上がってきたので来るんじゃないか来るんじゃないかと思ってたが、見事にやってくれましたなぁ。このぉ。

何としても気付きたかった事実に気付いてくれた脱獄王。
これは地獄島脱走に大きな進展と言えますなぁ。
しかし位置特定の為に山をスケッチするにしても、リクの目には屋根が広がっており山など見えなかった。
おそらくそこは開閉式のドームになっているのだと思われる。なるほどね。

そこでだ、やるべきことは2つ。1つ目がその屋根をこじ開けることだ。

地底から地上のドームを開けさせる。そのような手段があるのだろうか?
既に田中一郎には心当たりがあるそうだが・・・ううむ、想像もつかないなぁ。
しかしもしドームを開けたとしてもそこは夜の暗闇。山など見えないと思われる。

そう・・・やるべきことの2つめはまさにそれだ。昼間にリクをダクトに送りこむこと

こりゃまた輪をかけて無理難題が出て来ましたな。
朝は房を出る時に点呼がある。それをかいくぐっても、トンネル作業の最中に下水管からダクトに移動しなければならない。
誰の目にも留まらずにそれを成し遂げるにはどうすればいいのか・・・詳細は田中一郎にもまだ思いつかない様子。だが・・・

必ずやってやる。必ず・・・!!

この男がやると言ったからには必ずやってくれるでありましょう。それだけの信頼感が、実績がある。
とはいえ地底の一囚人として出来ることはやはり限られている。
となれば頼みの綱は看守という立場で協力してくれる原田看守。
彼は彼で麻薬の禁断症状に苦悶しているようでありますが・・・頑張っていただきたい。
こちらも囚人たちほどではないものの囚われの身でありますからねぇ・・・周りに気付かれないようにどこまで協力できるものなのか。
しかしそこは田中一郎に劣らぬ切れ者の原田看守。何とかしてくれると信じております。信じたい!!



第209房 限界  (2015年 29号)


薬の禁断症状に必死に耐える原田看守。
逆らえない体にされてしまったと言うぐらいだし、相当キツイ症状が出てるでしょうに・・・
寝ている間に知らず知らず自分の体をかきむしるなど、禁断症状の苦しさが現れています。
この耐えるという行為を他の看守たちに知られることなくやってのけなければならない。
原田看守の戦いもまた過酷ですなぁ。

極楽島とは違い、地獄島の看守の多くは囚われの身。
囚人たちのように短い期間で死が待っていることはないが、薬による廃人の道は強いられている。なんとも・・・

そんな体勢にあっても室長になるための試験があったり、そこから幹部への道が開けたりするらしい。
バナナは班長の特権・・・やはりこういうところでも差は生じるもんなんですなぁ。

班長に問う原田看守。目的を知らぬままにいったい鬼道院様の何を信じていらっしゃるのですか?と。
あまり踏み込むと鬼道院への背反が悟られかねない。原田看守も言葉を選ばざるを得ない。
しかしそれ自体は同じように考える人もいることでしょう。班長も答えをくれます。

鬼道院様がなされることは凡人の我々が直視できぬほど尊いもの。
何も考えず鬼道院様にすべてを委ねてお仕えしていればいいのだ。
それが我々の幸せ。それが鬼道院様の幸せ。それが世界の幸せ!

潰したバナナの皮をムッチャムッチャしながらそう述べる班長。
うむ。イカれてる。やっぱりここはイカれてる!!
言葉だけでも、行動だけでも、表情だけでもヤバイのに、それらの積み重なり。ヤバイなんてもんじゃねぇ!!
ヤバすぎてむしろギャグかと思ってしまうぐらいである。当事者の原田看守にしてみれば笑えないだろうがね。

気をつけねば・・・隙を見せれば・・・即廃人!!
椿・・・田中・・・すまなかった。もう・・・決して俺は鬼道院にはなびかんぞ!!

決心を新たにする原田看守。
もしもお情け使用を拒んでいることを知られたら、無理やりにでも投与されて廃人一直線になってしまうかもしれないわけだ・・・
恐ろしいが、それでも戦う姿勢を見せる原田看守の姿は素直に頼もしい。

さて、囚人たち。
リクは稜線のスケッチをするために絵の練習をしている。
鉛筆を貰うことが出来たのは大きいですなぁ。
しかしリクの描いた長靴。これは一体どういうことなのか・・・
まあ、文字とかも碌に書いてないでしょうし、思ったように線を引くこと自体が難しいのかもしれませんが。にしてもこれは酷い。

本日のリクたちは運搬ではなく岩盤の掘削作業を行う。ガガガガガ。
作業を行いながらもその頭脳は休むことを知らない田中一郎。
皆の高まった士気が俺の頭脳を後押ししてくれるとやる気十分。
だが、やる気は十分であっても疲労というのはどうしても溜まるわけでして・・・

連日無理を重ねた結果、倒れる田中一郎
しかも作業中、高台から落ちようかという状況。これは危ない!!
地獄島でケガして使い物にならなくなった囚人が極楽島のように回復まで療養できるとは思えない。
下手すればそのまま処分されてもおかしくないわけだが・・・どうなるのか。どうにか救わねばなりますまいて。



第210房 転落  (2015年 30号)


田中一郎落下!単純に見ても10m以上はある高さからの落下である。これは危ない。
が、上手く左隣に配置されていたレノマさんが足を掴んで落下を阻止。
踏んばるものがないところでよくやってくれたものである!!

同じ班だから近くにいると思ったら、他の面々を見るとそうでもない様子。
作業中に打ち合わせとか難しそうな気はするが、単純に隣にいたかったのだろうか?
いや変な意味ではなく。レノマさんは田中一郎の疲れを見抜いていた感じがありましたからねぇ。

事故の発生を知り、大丈夫かと声を掛けて近寄ってくる看守。
朴訥そうな顔してるし、地獄島にもまともな善性を保った看守が・・・なんて話はありませんでしたー。
なまじ凶悪な顔をしていないだけに、人より物を重んじるその姿に怖さを感じる。よかったよかったではない。

どうやら田中一郎はいつも立ちくらみをしていたらしい。
碌に栄養も取れないこの環境ではそれも仕方がないことか・・・
特に頭脳担当の田中一郎としては甘いものが欠如しているのが厳しい。甘シャリ・・・甘シャリを!!

それはそうと、一人で問題を抱え込んで悩んでいる田中一郎にキレるレノマさん。
そういった悩みも共有することこそがブラザーであるってことですわな。これを受けて静かに語り出す田中一郎。

目下の目標2つのうち・・・地獄島の開閉式の屋根をこじ開ける方法・・・つめねばならんこともまだあるが、心当たりはある。
言うなれば・・・できそうに思っていることだ。
問題なのはリクを昼間に地上に上げる方法だ。これが未だ解決の糸口すらつかめていない。

朝の点呼をかわすすべがない以上、房から下水管を通るルートは使えず、作業中に換気ダクトに潜り込むしかない。
となると、どうにかして何かで周りの気をひいてその隙に・・・と行くしかないか。
ただ、その方法も地獄島では大きな危険を伴う。
極楽島はあくまでも公的矯正施設。囚人が死ぬことを基本的には嫌う。
しかし地獄島はそうじゃない。見せしめ的な意味も含め、何かしでかした者がいれば容易く殺されてしまう可能性があるわけだ。
うーむ、目を付けられぬよう大人しくしていても殺されてしまうような状況ですからねぇ・・・わざと目立つ危険性はどれほどか。
しかも一瞬で済む話ではない。リクがダクトに潜り込む間での1〜2分。その2分間、看守の目をひきつけておかなければならない。

なぁ・・・それ・・・俺にやらせてくんねぇか・・・看守の意識を釘付けにしてみせる。
やらせて・・・ほしい。

そのように語るのは周龍
ここにきて自分のやるべきこと、やらねばいけないことを発見した様子。
贖罪の意識が強いでしょうし、危険な任務であればそれこそ望む所という感じか。
しかし命を賭す美学など俺は認めんと周龍の申し出を却下する田中一郎。
もうこれ以上若者を死なせたくないという想いが強いのでしょうな・・・

だがここで周龍。トンネルの看守の配置が一か所だけ違う場所を見つけたと述べる。
看守は基本的に30m間隔で二人ずつ配置されている。
しかしたった一か所、ある見張り台だけは配電盤の台を改造したためにスペースが小さく、いつも1人しかいない。
どうにかこの看守1人の目を引き付けることができれば・・・他よりも大きなスペースの隙をつくることができるようになる。
ふむ。良い考えでありますが・・・逆に言うとその1人の場所には猛者が配置されていることとなるわけで。
そう、そこにいるのは看守・ギロチン!!なんだそりゃ。異名なんだろうけど凄いなコレ。顔からしてヤバそうな感じと分かる。

どんなヤツだろうと関係ねぇ!!頼む。やらせてくれ。
死ななきゃいいんだろ。かりはたった一回死んだくらいで返せるとは思ってねぇよ

覚悟を決めて語る周龍の目はまっすぐで力強い。
期待したいところではありますが・・・果たして無事に済むものかどうか・・・



第211房 狼煙  (2015年 31号)


リクをダクトに送り込には看守の目が一番薄い所を狙いたい。
しかしそこに鎮座するのは最凶の看守・ギロチン。
やりすぎる男と柱で紹介される通り、咳き込んだ囚人を見つければ異名の通りギロチンの刃のような一撃を飛び降りざま繰り出す。
さすがに警棒で腕を切断するようなことはないと思うが・・・派手に骨折させられはしそうだなぁ。
地獄島でこうなってはやや死亡と言っても過言ではありますまい。

飛び降りた後はすぐさま監視台へと戻るギロチン看守。
何となくゲーム的なルーチン行動に見えなくもないですな。ピトン。
途中に障害物置いといたらしばらく引っかかって行動不能になりそう。

ともかく周龍はこの男の目をしばらく釘付けにしなければならない。そして無事に済ませなければならない。
簡単に死んだりしやがったら俺は一生周龍を男として認めへんと史郎さん。さすがに不安そうな面持ちですな・・・

昨日落下事故を起こしそうになっていた田中一郎。今日は運搬作業なのでその心配はない。
といっても看守の前で立ちくらみ起こして倒れたりしたらどんな目に遭うかは分からないですわな。天野の危惧はもっともだ。
何の役にも立てないからと、少しでも役に立てることはないかと探す天野。良い子ですなぁ。

さて、田中一郎が注目しているのは一輪車のメンテナンス場
看守が一人でパンクした一輪車のタイヤのメンテを行っているのだが、その看守のいる場所の奥に調べたいものがある様子。
それを知った天野。看守が無駄にプライドだけ高そうなタイプであると見抜き・・・作戦を開始する。

誰かのせい、モノのせいと当り散らしている看守。
そんな看守に対し、いつも俺らのためにありがとうございますと感謝の言葉をかける天野。
そういった言葉をかけられるなど普段ないであろう看守は・・・嬉しそうな様子を見せてしまう。

ロックオン

取り入る隙アリと見た天野。調子よく手伝いを申し出、更に田中一郎も中に入れるようにしてしまう。
うーむ、これが極楽島で磨かれた太鼓持ちスキルというやつだろうか。たいしたものだ!!
こういうスキルを持った人物が1人でもいると作戦の幅が広がりますからねぇ・・・いや実際助かると思うぞ。凄いぞ天野。

天野の活躍によりメンテナンス場の奥へと入ることが出来た田中一郎。
中には乱雑にパンクしたタイヤが積み上げられている。そこを見た田中一郎には・・・別の光景もまた見えるらしい。

・・・見える。見えるぞ・・・業火に包まれたこの部屋が!

田中一郎の作戦はこうだ。このメンテナンス場に火を放つ。
そうすればその反撃の狼煙はずり出しの縦穴を駆け上がり、屋根は燻され充満する煙に耐え切れず、その口を開くこととなる!!

おかげで屋根をこじ開ける算段がついた。地獄島の場所を特定する道が繋がった。
ほころびを見せたな。地獄島よ

作戦の開示と共にカッコイイポーズを決めてくれる田中一郎。さすが!!
ジジィと呼ばれたりしたものの、それを気にすることもないぐらいの成果が得られたようですな!!
まあ、40にもなってないのにジジィ呼ばわりは厳しいと思いますけどね。分からなくはないです。

ともあれ、屋根を開ける方策は立った。後はリクをどうやって送り込むかである。
周龍に任せるだけで大丈夫なのか・・・その辺りはもう少し詰めないといけなさそうですなぁ。



  囚人リク感想目次に戻る

  囚人リク連載中分に移動

  作品別INDEXに戻る

  週刊少年チャンピオン感想TOPに戻る



HPのTOPに戻る