蒼天紳士チャンピオン作品別感想

囚人リク
第131房 〜 第157房


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 各巻感想

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連載中分

囚人リク 16巻


第131房 煙草  (2013年 48号)


宝の山の備品室に潜入。直後にいきなりやらかしてしまうリク。
扉の向こう側に流れ出たペンキ。気付かれなければやり過ごすことも出来たかもしれないが・・・
さすがにその想定は甘かったみたいですな。気付いた看守が乗り込んできました。

気配・・・たしかに人の気配がする!!

灯りをつけて中を点検する看守。
囚人に襲われる可能性もあるわけだし、装備があるとはいえ結構ドキドキものですな。

一通り見回りをしたが誰かが潜んでいそうな様子はない。
詰み方が悪くて倒れただけかと結論付ける看守。まあ、外壁を伝って忍び込んだとか考えるよりは常識的ですわな。
ほっと一息をいれる看守。しかしその真上にペンキをこぼした犯人たちがいた。

意識が上にさえ行かなければ見つかることのない場所。
離れたところからだと逆に見つかりやすくなりそうだが、とりえあず一周りする間は見つからずにすんだようだ。
しかし2人ともかなり無理な体勢をとっている。長くは持ちそうにありませんな。
レノマさんは左手でリクの服を掴み右手で崩れ落ちそうな箱を支えている。辛い状態だ。
まあリクも崩れそうな箱を右足で支えなければいけないので辛い状態には変わりないか。

ペンキの処理を簡単に済ませ、残りは明日若いもんにやらせるかと考える看守。
ついでにその場で一服。よそでサボれクソ野郎!!
ふむ、考えてみると備品室にサボりにやってくる巡回の看守がこの先いないとは限らないのですな。
朝まで作業できるとはいったがその点は気を付けねばいけないようだ。

ともかく、看守のサボリは煙草1本吸うぐらいの時間で済んだ様子。
もうダメだと思った2人だったが、どうにか我慢しきれたみたいですね。お疲れ様です。
しかし荷物を崩すこともなく静かに降りることが出来た様子の2人。意外とまだ少しは余裕があったのか?

グライダー作成の初日からいきなりのトラブル。
これはレノマさんの制裁もあるか。と思いきや、他のことに気を取られているレノマさん。
何かと思ったら看守が荷物の下に蹴り飛ばした煙草の吸殻。
ポイ捨てして荷物の下に蹴り込むとか凄いマナーの悪さだな看守。火が消えきってなかったらどうするつもりなんだ。
いや、これは将来ボヤ騒ぎを起こして捜査の目を攪乱する際の伏線となるのかもしれないな。

それはさておき、レノマさんは嬉しそうに煙草を咥えて火をつける。
煙草は嗜好品ですしねぇ。吸わない人には分からないけど、ずっと吸ってた人にしてみれば久々に舞い降りた幸福というところか。
だが――激しくむせるレノマさん。
どうやら9年の間に体がきれいになってしまい吸えなくなってしまった様子。おやおや。

規則正しい節制の生活を強いられてきたレノマさん。
体がきれいになり、でかくなった。その点だけ見ると刑務所生活も悪いことばかりではないのかもしれない。
まあ、それ以外に我慢ならない部分が多すぎるんですけどね。

レノマさんと並んで座り、リクは未来のことについて語り出す。

脱獄の罪って何年くらいなのかなぁ。まともな法でもけっこう長いんだろうな。
釈放されるのは結局やっぱりおっさんになってからなのかもな。
おっさんか・・・早くなりたいな

大好きなおじさんをずっと見てきたリクにしてみれば自分の憧れの姿であるのかもしれませんな。おっさんというのも。
まあ、まともな法の場合は少年法も適用されるでしょうし、そこまで刑期は長くはならないんじゃないですかね。おそらくだけど。

どんなふうになってんのかな。俺も。あの街も

自身は脱獄の罪で改めて裁かれる。そのことを確定させておきながら、未来へ想いを馳せるリク。
世界は必ず新しくなると信じて疑っていない。実に夢見る底抜けのバカと言った感じである。
いや、レノマさんが考えるとおり、これは凄いことだと思いますよ。
13歳の少年が夢見がちなのはまあ普通のことである。
しかしスラムでの生活、極楽島での生活を経てなおリクは希望を見つけ出し信じることができている。凄いと言わざるを得まい。
だからレノマさんもお月様へ向けて満面のえっみを浮かべちゃったりするわけでして。ハハハ。いい感じですなぁ。

危機はどうにか乗り越えてグライダー作りを開始。
どれだけの期間がかかるかはわからないけど、いよいよ脱獄作戦も佳境といった感じでありますな。
完成さえすればあとはいよいよ決行ということになるわけですし。
しかし脱獄後のことや沢田のことなど現時点で抱えている問題もまだ多い。
そこの解消をどのようにするのか・・・新展開が楽しみであります。周龍との仲も深めていきませんとなぁ。



第132房 陽動  (2013年 49号)


昼休みに田中一郎に呼ばれて勢ぞろいする脱獄同志たち。
それにしても見開きページの筋肉はよいものですなぁ。特に椿の筋肉の感じがまた何とも。
それはさておき、田中一郎は集まった皆にこう告げる。

ついに閃いた。俺たちの・・・この島から脱出する完璧な作戦を!!

ほう!何だかいきなりではありますが、ついに閃きましたか。これは楽しみだ。全員固唾を飲んで言葉の続きを待つ。
実に単純なことだった。閃いた作戦というのは・・・そこまで語ったところで止まる田中一郎。ん?どうした?

なぜだ・・・思い出せん

はあああ!?
そりゃあ皆声揃えてそういいますよ。何ですか田中一郎。頭を使いすぎて早くもボケが始まってしまったんですか?
いや、いつの間にか後ろに沢田がやってきている。聞かれることを警戒しての演技か?
と思いきや、田中一郎に詰め寄るレノマさんやリクたちがみるみるうちに年老いていく。
ノンビリ考えていたらジジィになっちまうぞといいながら本当にジジィにならなくても!というかジジィになる前に出られるっショ。

まあ、ここまで無茶な展開となれば言うまでもなく夢オチ
作戦が思いつかず追い詰められた田中一郎の見る夢でありました。うーむ、追い込まれているなぁ。
グライダー作成の方は任せっきりとしている以上、こちらのアイディアはどうにか進めないといけない。
順調に作成を続けているのだから完成までには何とか名案が浮かばないといけないのだが・・・こりゃ焦りますわなぁ。
それでもリクたちに心配かけさせないよう強がって見せる田中一郎。大人の意地ですかねぇ。

極楽島は離島であるだけにヘリコプターの利用者は多い。
所長などのお偉方が東京の行き来に使っているそうな。のんびり船旅とは行きませんものね。
ならばこのヘリを奪って島外へ脱出はできないものか。

真っ先に考えたよ。だがクリアできない点がいくつもあった。
まず1つ目。操縦できる者がいない。ならばメンバー集めの際に操縦できる人間を探すことも考えた。
だが仮にいたとして2つ目。脱走はすぐに発覚する。無線もしくは警報で即座にコントロール室に通報され、
非常事態としてヘリは一瞬で全機捜索開始。俺たちが乗るヘリなど残されていない
さらに、万にひとつ脱走発覚前にヘリを調達できたとしても指令なしに1機で飛び立つヘリなど異常事態だ。他のヘリの追跡を受ける
空の旅を楽しむ暇もなく数分後には海のもくずだ。

前にあった対空ミサイルなんかを見れば脱走犯への砲撃など躊躇いなくやるでしょうからなぁ。
足こそ速いが目立つヘリでの逃走は確かに難しそうである。

そんな話をいつもの3人でしている所、陰で立ち聞きしていたのが周龍。
3人でコソコソうさん臭いと思ってついてきたはいいが、しかめっ面だらけだったので入りにくかったそうな。そうか。

てかよ。俺、ヘリ操縦できる奴を知ってんだけど

そう言って、こいつだと自分を指す周龍。ほほう。
どうやらスラムの壁が出来る前に親父さんがヘリの操縦しているところを子供の頃からずっと見ていたらしい。
親父・・・ドラゴンクロスの初代。何だか威厳のあるカッコイイ親父さんでありますなぁ。
それはそれとして、周龍は田中一郎にヘリの件についてもう1回考え直せと詰め寄る。

どうせ他のアイディアだって手詰まりなんだろ。ヘリ作戦が困難なのはわかった。だがな、1つはクリアしたんだぞ。
自由への扉へ手をかけたってことじゃねえか。8人の命がテメェに託されてんだぞ。命懸けで考え直せ

フェンス間際まで田中一郎を追い込む周龍。詰め寄り過ぎだ。
というかそのようなことは言われるまでもないんですな。こちとら悩み過ぎて夢にまで出てくるほどなのですから。
まあ、お互いのことをよく知らないからこそ信頼よりも先に強い言葉が出てしまうんでしょうなぁ。
よくは分からないが周龍のここから出たいという気持ちはかなり大きいものがあるのではと感じられますし。
いや、単に親父さんのようにヘリを操りたいという希望が溢れ出たための詰め寄りだったとか・・・いやそんなまさか。

ともあれ周龍の言うように操縦者の問題は解決できている。しかし問題はそこからだ。
脱走発覚後ヘリは捜索に全機出動する。これはマニュアルにも記されていた確定事項だ。
どうにかしてそのヘリのうちの1機を手に入れれば、手に入れる方法さえあれば・・・
思い悩む田中一郎。だが、ふとこの発想自体が間違っているのではと考え直す。相変わらず柔軟な思考をしていますな。

待てよ。ヘリポートにあるのは何も刑務所のヘリだけとは限・・・
刑事施設視察委員!!奴らは定期的に東京からヘリで来ているはずだ!!

この気付きに思わず声を発しそうになり、慌てて手で口を覆う田中一郎。
しかし身を起こしたところで冷静になる。そう、まだ最大の問題が残っているのだ。

ヘリを調達できたとして飛び立てるのか!?無数に散ったヘリの追撃をどうかわす!?
どう逃げる!!どう行方をくらます!!せめて・・・10分でいい。陽動できさえすれば・・・
陽動・・・陽動・・・

考えあぐねて夜が明け、日の光が差し込む。その眩しさを手で遮ろうとしたとき、目に入ったのは枷である手錠。

これだ・・・・・・

朝日を浴びながら恍惚のポーズを見せる田中一郎。
何といいますかね、来るかもしれないと思ってはいたけど、予想を越えたポーズ決めてくるから困るんだよこの人はよぉ!!
毎度大真面目にやっているからこっちが全力でツッコんであげないといけない気分にさせられてしまう。
いやまあ、本気で死ぬほど悩んでの閃きでしょうし、ポーズぐらい決めたくなるのはわかりますがね。

というわけでさっそくリクとレノマさんを呼び出し島からの脱出方法を説明する。

やはりヘリを使う。操縦は周龍。ただし強奪するのはムショのヘリじゃない。定期的にやってくる視察委員のヘリだ。
奴らは島に来る際必ずヘリを使う。今朝看守に聞いて裏をとってある。

さすがに田中一郎。そういう細かいチェックは確実でありますな。
しかし肝心なのはヘリを奪った後の行動である。追撃の手はどのように逃れるのか。

GPSの付いた手錠で敵を陽動する。俺たちの偽りの居所を教えてやるんだ。
外した手錠は房内に残して逃走する予定だった。俺たちの行方をくらますためにな。
リク。お前はロープを背負いグライダーで飛び立つ予定だったな。あれも併用する。全員の手錠も外に持ち出すんだ。

陽動に使うのであれば外へと持ち出さないと意味がありませんものね。
そしてヘリを陽動するのであれば手錠を刑務所の外だけではなく島の外へも出さないといけない。
そこで神木さんたちあらかじめ用意してもらうのがラジコン飛行機。それに1組の手錠をくくりつけて南へ飛ばす。
残り7組は島内を散らばす。脱走発覚後看守たちは8個のGPSが地上をはいずり回るのを見て袋のねずみと安心することとなる。
だが1個が突然島外に移動したのを見れば慌てふためく。そして上空に群がるヘリに「ただちに追え」と指令を出すこととなるだろう。
これが陽動作戦の全貌である。その隙に奪ったヘリで刑務所所空を離脱そのまま闇に乗じて――

自由へ一直線だ

見事な作戦。田中一郎の顔にも笑みが浮かんでおります。歓喜で吠えるリク。
だが、そんな中レノマさんは1人怒っていた。

じゃあよ・・・リクはどうすんだよ!!
地上に置き捨てたまま俺たちだけトンズラか。ぶっ殺すぞこの野郎!!

そりゃあこれで本当にリクを犠牲にする作戦であったならばレノマさんの激怒は当然のことでありましょうな。
だがさすがにそんな作戦を自信ありげに披露する田中一郎ではありますまい。そこも何か考えているはず。
普通にヘリでリクを拾ってから逃げるという話ではいけないのかな?
タイムロスはなるべく無くしたいところだが、備え付けのハシゴかロープでも投げて捕まらせればそれほどロスはない気がする。
なんとなく操縦者である周龍と揉めたりしそうな気もするが・・・どうなりますかねぇ。

ともかくこの部分さえクリアすれば脱獄に必要な課題は突破できたこととなる。
細かいトラブルは随所で起きそうな気がするが、もうそこからは突き進むしかありますまい。
ヘリの燃料が刑務所で補充する予定だったので足りてないとかありそうな気はしますが・・・果たしてどうなるか。
突き進む破獄ロード。ここからの展開に期待だ!!



第133房 全員  (2013年 50号)


田中一郎の講じた脱獄最終作戦。
見事な策でありますが、これだとリクは島内に置き去りとなってしまう。そう考えて激怒するレノマさんであったが・・・

急くな。説明はまだ途中だ

勿論リクを捨て駒にするつもりなどない田中一郎。そのことについても説明を開始する。
まず口にするのは当初の計画で使おうとしていた滑車のこと。
リクが運んだロープに滑車をつけて全員が外に出る予定だった。
しかしヘリ作戦に切り替えたことでその必要はなくなったこととなる。

その滑車も昨晩やっと完成させたところだ!!有り合わせの材料で無ぇ知恵絞って苦労してな!!

もうそこまで進めていましたか。
しかし自分で無い知恵とか言ってしまうとはレノマさんも謙虚ですなぁ。イヤミのつもりなのかもしれないが。
だが、その作業はムダ骨というわけではない。ヘリ作戦に切り替えても滑車は使うのだから。

リクがロープを運び、壁の外まで渡す。そのロープを使ってもう1本ロープを結わえた滑車を流す。
そう・・・外で待つ神木たちに手錠を託したことを確認した後、俺たちはその滑車を使いリクを回収する

なるほどー。外に出て回収するのではなく、外に出たリクを中に引っ張り上げるとは盲点でした。
これもまた体重の軽いリクだからこそ出来そうな作戦でありますね。史郎さんの力も活かせる。
しかし結局1本以外の滑車はムダになったということなのでは・・・いや、今はそこには触れるまい。ともかく――

その頃には陽動作戦が進行。囮を追って捜索ヘリは刑務所上空から消える。
そして俺たちは残された視察委員のヘリを奪い、誰ひとり欠くことなく飛び立つんだ

一斉に前を見据える感じの脱獄組の絵ってのはなかなか感動するものがありますね。
しかし当然そうなるだろうけど、ヘリの中が凄く狭くなりそうな光景ですな。空気も薄そうだ!!
そして勿論、全員の中に沢田は含まれていない。ヘリに乗り込む前にカタを付けるってことなんでしょうな。

ヘリに乗って島からの脱出に成功した場合、そのまま東京へと向かうのか。
さすがにそれはムリだろうと田中一郎。
脱獄の報が伝われば本土は当然封鎖。迎撃もあり得るわけですからね。

これは今から早急に手配しなければならないが、途中で船に降りる
そのまま一旦海外へ逃亡だ。その後東京へ密入国する

沢田に語った通り一度海外へ逃亡する形となるわけですな。
ヘリは途中で捨てる。まあ惜しんでいられる状態ではないでしょうしね。これは仕方がない。

船の手配はレノマさんに頼もうと思っていたが、ダブルドラゴンクロスには船は無い様子。
なので海外ギャングとのパイプもある周龍に手配を頼むこととなる。
うーむ、ヘリに続いて周龍頼みとなる流れか。重要部分を掴まれる形になるのは何となく危険な気もするが・・・
今一つ周龍との信頼関係が築けていないので心配してしまいますよ。

ともあれ脱獄の形は見えた。田中一郎も一番頭を悩ませた部分が解消できて嬉しそうである。
とはいえ細かい部分はまだまだ詰めていかないといけない。
たとえばヘリポートへの行き方。10人近い人数がどうやってヘリポートまでたどり着くのか。
看守服を着て誤魔化すにもそれだけの人数分調達できるのか。
また、ヘリを奪うにしてもキーがなければ飛ばせない。操縦士がいても動かなければどうにもならないのだ。
そのように疑問を並び立てるレノマさん。それに対して田中一郎。

そこら辺は後で考える

ふむ。さすがの田中一郎も最後まで全部考えてましたってわけじゃあないんですな。
いや、普段であればその辺りも詰めてきたのかもしれない。
しかし今回は相当頭を悩ませたみたいですからねぇ。
閃いた時には思わず素敵なポーズを決めてしまうぐらいに嬉しかったわけですし・・・細かい所が飛んでも仕方がないですわな。

おっちゃんも疲れてるんだよねというリクのフォローに対し、歳は取りたくねーなと皮肉ってみせるレノマさん。
ならばと田中一郎。リクのために激怒してみせたさっきの態度を持ちだし、仲がいいなとからかってみせる。おやおや。
しかしあの話の流れは確かにおかしい。レノマさんが引っ掛ける風な言い方だったと主張してもおかしくはないですわな。

それはさておき、田中一郎はリクに礼を述べる。
どうやらあの日、脱獄の仲間たちに語った言葉をレノマさん伝手で聞いたらしい。

俺は・・・武器を手にし、この腐った世の中を転覆させるべく革命戦に身を投じてきた。世界が変わることを信じて。
数多くの同志を巻き込みながらな。だが、散っていったかけがえのない命はこの世界を変えるに必要な代償だったとは考えられない。
俺が死ぬことでしょく罪するのは簡単だ。だがこの命と引き替えになどと言うのもおこがましい。生きていくしかないのだ。
世界は変わったとしても俺の罪は消えない。生きながらにしてその罪をどうすべきか・・・苦しかった。
俺はお前が言った、新しい世界の新しい法で裁かれるという言葉に救われた。希望だ
さすが、俺たちのリーダーだ

さらりとリーダーという言葉が飛び出しました。おやおや。
まあ確かにこの濃い脱獄組の面々を纏め上げるだけの希望を宿しているのはリクかもしれませんわな。
今の所このリーダーの襲名に不服を述べそうなのは周龍だけでありましょうし。沢田は最初から考慮外として。

リーダーって何すんだよというリクだが、普段通りにしておけばいいんじゃないんですかね。
別に今更頭使ったりケンカに勝ってもらったりとかに期待しているわけじゃない。
皆を奮い立たせるような希望の象徴となってくれればいい。
それはまさにレノマさんが脱獄を決意した時にリクに望んだことである。

というわけで、田中一郎は難関であった島内の脱出計画を見事に構築してみせた。
脳みそ一つで全作戦を組み上げて、この巨大要塞の防壁を攻め落としてしまった。
これはもうたいしたおっさんだぜとレノマさんも認めるしかないって話ですわな。すげえよな。ああ。

柔らかな陽光に包まれ、穏やかな表情で眠る田中一郎。
大役を果たし、本当に安らかな気持ちでいることでしょう・・・良かった良かった。
まあこの先も色々とトラブルが発生することとなるのでしょうが、今この一時だけは心安らかに休んでほしいものであります。



第134房 志願  (2013年 51号)


いつもはリク、レノマ、田中一郎の3人で行っている作戦会議。
だが、今回は最後の逃亡に至るまでの最終報告と言うことで脱獄8人衆全員が顔を合わせることとなる。
雨が降っているので顔を合わせるのではなく全員壁に接した状態となってますけどね。

リクやレノマさん以外は田中一郎とは初顔合わせの様子。
さすがの脱獄王の知性と貫録に慣れない敬語を使ってる様子の史郎さんが可愛らしい。

8人で打ち合わせ・・・と思いきや、この場にはもう1人存在していた。
壁の上の方の建築時の足場らしきところに腰かけていたのは・・・スライスデビルこと沢田。
脱獄メンバーが揃っていなくなったので探し回っていたようだ。うーむ、面倒くさい奴ですなぁ。

忘れんなよ。俺もメンバーの1人だ

意図的にハブるつもりでいたわけだが、さすがに沢田。簡単に振りきれる相手ではないか。

とりあえず脱獄までのおおまかな流れは説明し終えた。
が、ここからさらに細かな問題の対応をしていかなければいけない。
たとえばグライダー制作。
リクとレノマさんが担当しているが連日夜中に作成しているのは睡眠時間を削り、心身ともに相当負担なはずである。
なのでこれに関しては天野や松尾が協力を申し出ることで解決という形になる。いい奴らだな。

続いては船の調達について。これは国外逃亡するためにも必須事項であります。
担当するのは周龍。日本籍船だと足がつく可能性もあるので海外ギャングから借り受けないといけない。
周龍が言うには親父と連絡がつけば頼んでなんとかなるだろうとのこと。ふむ。

さらに次の問題。それはヘリについて。
リクが気にしているのはヘリポートに辿り着いてもエンジンをかけるキーがないといけないのではということ。
確かに1〜2人が乗るような小型機ならばそうでしょう。
しかし視察委員が乗るのは操縦士を入れても7〜8人ぐらいの大きさのものでやってくる。割とすし詰めになりそうですな・・・
というのはさておき、その規模のヘリだと電源スイッチとスターターで始動するタイプとなるのだそうな。へー。

自身の疑問が簡単に解決され、照れ笑いを浮かべるリク。
そんなリクの頭に手を置き、優しげな表情を見せる田中一郎。いいおっちゃんだ。

ヘリの始動は問題ない。が、まだ問題はある。そのヘリがあるであろうヘリポートについてだ。
この極楽島でヘリを見上げることは何度もあるが、屋上のヘリポートを実際に見たものは当然いない。
もしそこに脱獄を阻む最終トラップがあったとしたら・・・

下見をするしかない

そう結論付ける田中一郎。
ヘリポートは屋上95階。そこへ行くには非常階段を使うしかない。
つまり非常階段出入口のある場所までおよそ廊下を200m歩いて行かなくてはならない。
普通に考えた時は大した距離ではないが、行きかう看守がそれなりにいそうな場所ですし・・・見つかる可能性は高い。
少なくとも囚人服のままうろつけば確実に見つかることとなるだろう。
なので廊下に出る前にまずは看守室隣にある更衣室に忍び込む。そこで制服を拝借し、囚人服から看守服に着替える。
更衣室までは空調ダクトが届いている。備品室の1階上、79階までの移動はこのダクトを使うこととなる。

総移動距離500m。本番もこのルートを使う。

ふむ。ダクトを使用するとかいよいよ本格的になってきましたな。
しかし首尾よく看守服を手に入れたとしてもうまくいくのだろうか・・・?
看守とすれ違うたびにバレないかどうかドキドキすることとなる。
その距離が何千倍にも思えるほど長い200mとなるだろう。わずかな違和感から声をかけられバレれば即刻脱獄計画は水の泡となる。
必須といえる下見だが、こなすのはかなり難しいですなぁ・・・
さすがに顔に傷のある田中一郎が看守に変装しても怪しまれるに決まってますしね。
脱獄発覚のパニックを利用する本番時はともかく通常警戒態勢時の下見はムリがある。

そんな難しい状況。であるのにレノマさんは何故か笑みを浮かべている。
それは自分とリクの2人だけだった時に比べればずっと話が進んでいることに対する笑みである。
何から手をつけていいのかわからなかったあの時に比べれば困難な部分が分かっているだけでも進歩と言えますわな。

レノマ・・・こうもやることがはっきりしてくると、ホントに怖えな。

同じようにやることがはっきりしてきたと実感しているリク。
怖いなといいつつその表情はやる気に満ちている。この辺りはさすがにリクですな。天野や松尾、史郎さんですら狼狽えているのに・・・

さて、脱獄の流れと問題点についての報告は終わり。現地解散となる。
が、その場に2人だけ残ったのはレノマさんと周龍。
さっそく船の調達をしてもらうために、これで連絡をつけろと携帯電話を周龍に渡すレノマさん。
周龍の足を踏みつけ、この場で電話を掛けさせる当たり何か随分と警戒してる様子ですな。
さすがに周龍のことを信頼しきっているわけではないということか・・・?

極楽島からドラゴンクロスの2代目が電話を寄越してきた。これは大騒ぎである。
慌ててボスへと繋ぐ部下。
さあ、外伝には登場していたドラゴンクロスのボスが本編に初登場だ!!
相変わらず蛇を担いだ貫録のある親父さん。うーむ、怖い。
あの周龍も迷惑をかけて申し訳ありませんでしたとまず謝罪から入っております。

それはさておき本題。脱獄を考えているので船を手配してくださいと頼む周龍。
これに対し親父さん。他愛もないとの答え。

だが断る。甘えるな

それだけ告げて電話を切る親父さん。うーむ、さすがに最大派閥のギャングのボス。厳しい。
長である以上息子にも甘い顔はしないということでしょうか。
とはいえ、ここで船が手配できないと脱獄計画自体が成り立たなくなってしまうのであるが・・・

心配ねぇ・・・船は必ず俺がなんとかする。

仲間たちにそう宣言する周龍。
ふむ、田中一郎に対し全員の命がかかってるんだから死ぬ気で考えろと迫ったぐらいですしねぇ。
となれば自身も腹を括らねばいけないぐらいの考えはしますか。見事に作戦を考えた田中一郎を褒めてたぐらいだし、自分もと。

船については周龍に任せるしかないとして、あとの問題は下見である。
誰が行くか・・・難しい問題であるが、立候補する男が1人いた・・・椿だ!!

静かなる男、椿陽平。俺がやると頼もしく宣言してくれる。おぉ・・・
でも正直このメンバーで可能性があるのは椿か周龍しかいないとは思っておりました。
リクやレノマさん、史郎さんはまず体格的に目立ちすぎる。松尾もか。
田中一郎は顔の傷など目立つ容貌だしすり抜けるのは難しい。天野はヘタレだし単独行動を任せきれるかは不安である。
となれば気づかれにくく、度胸のある椿か周龍ということになるわけだ。
船の調達とヘリの操縦を周龍に任せるのならば、ここは椿の出番ということになるのが順当ですわなぁ。

椿ならばスラムで錠前屋をやっていた経験もあるし手先も器用そうだ。
何か不測の事態が起きた時もどうにかしてくれるんじゃないかという信頼感もある。
怖いことになりそうではあるが、頑張って下見をクリアしていただきたい。



第135房 潜入  (2013年 52号)


ヘリポートまでの下見は俺が行くと申し出る椿。
それに対し、本当に下見なんかやった方がいいのか?あまりにもリスクが高すぎるやろと反論を開始する史郎さん。

最悪、射殺の可能性もあるぞ。最低でも加刑の上、独居や
全員や。そうなったら脱獄なんか夢のまた夢や。見取り図かてあるんやろ!?もっかいそれ見て調べて情報集めてやった方が・・・

確かに史郎さんの主張することは分かる。発見された場合のリスクは高すぎます。
だが、それでも・・・やはりその肝心の本番で失敗しないためにも下見は必要不可欠であるといえる。
誰よりも人の命の重さを繰り返し見てきて、メンバー誰一人傷つかないことを願っている田中一郎がそう言うのだ。
作戦成功には欠かせないことであるのはもう間違いのないことなのである。

というわけで3日後。田中一郎と入念な打ち合わせをしたのち、いよいよ椿が下見に乗り出す。
心配そうに見送る一行の中で、一人周龍は船の調達について頭を悩ませている。
それを見た天野、仲間ならもっと心配しろよと述べるが、してどうすんだよ!!と反論される。

心配なんて役にも立たねぇ。折れたちゃ成功を信じるしかねえんだよ。信じてるから、次の準備をしてんだよ

ふむ、いいことを言ってますな。
確かに天野の言うとおり下見が成功しなければその先のことを考えても仕方がない。
だが、信じて送り出した以上、もう成功することを信じて先のことを考えるしかありますまいて。
心配する気持ちは当然であるが、それを越えて自分の成すべきことをやろうとしている周龍。なかなか立派である。

まずは備品室まで移動し、寝間着を脱ぐ椿。
その後ダクトに侵入。慎重に何番目の枝道を通るか確認しながら進む。
そしてようやくたどり着く更衣室。隣は看守たちの控室だがどうやらテレビに夢中なようだ。今のうちに・・・
と、足を下ろしたところで開く更衣室。どうやら看守が買い置きのタバコを取りに来たらしい。
まっすぐ自分のロッカーに向かい、目的を果たしたらすぐに出ていく。そのおかげで椿も発見されずに済んだわけだが・・・危ねぇ。
映画のワンシーンのような流れではあるが、緊張感故に変な笑いに繋がりそうなシーンでありますな。

一度足を引っ込め、大きく息をつく椿。
気の弱い奴なら今日はもうと引き替えしておかしくないところだ。
とはいえいつかは下見はしないといけない。なので意を決し、看守が現れないことを祈りつつ着替えを侵入する椿。
ロッカーから看守服を取り出し、着替えている間も看守がこないかどうか気を張っている。大変だ。

どうにか看守が来ることもなく着替え終わる椿。マスクを着用し、顔を見られることのないようにする。
そして隣の看守室の様子を伺う。どうやら見回り交代のタイミングである様子。
新しく見回りに出た看守が歩を進め、角を曲がったのを足音で確認してから、ついに更衣室の扉を開く。うーむ、ドキドキしますな。

廊下には当然監視カメラが備え付けられている。
が、カメラは無数にある。よほどおかしな動きをして目立たなければ発見されるようなことはないはずだ。
なので、少し速足にはなってしまているが、目立たぬように歩く椿。
だが、先に行った看守の足音が聞こえてくる。速く歩きすぎて追いついてしまいましたかね?
少し遠ざかるのを待って・・・いや、これは・・・違う!!こっちに戻って来てる!!

すわ、鉢合わせか!?
と思いきや、上手くそれを回避する椿。
どうやらロッカーからマスターキーを入手し、適当な部屋を開けて潜ることでやり過ごしたらしい。なるほどなぁ。
一応変装をしているとはいえ、看守と遭遇することのリスクは大きい。
それを避けるための策として田中一郎から事前に授かっていたマスターキー作戦。うむ、さすがに脱獄王の知恵でありますな。
しかし、一難去ってもまだまだ難事は続くのであった・・・

椿が潜り込んだのは非常用の備蓄倉庫。カンパンなどの缶ヅメが保管されています。
そこに潜みながら、外の看守の話声に耳を傾ける椿。

テレビで笑いすぎたせいかなぁー。なんか・・・腹減っちまってよ。倉庫に行って缶ヅメ取ってこようかと思ってよ

なんと、逃げ込んだ先にどうやら看守がやってきてしまう様子。
ヤバイ。果たしてこの窮地をどう乗り越えればよいのか・・・

同じく追い詰められたリクとレノマさんは上方の死角に隠れることで回避した。
椿も同じ手法を取るのだろうか?それとも何か他に上手い手段を思いつくのか?
もしかして備蓄倉庫は他にも大量にあって、椿のいる部屋にはこないオチとかだったりするのだろうか。
腹減ったからってカンパンじゃ味気ないですしねぇ。

どうでもいいが、看守に化けた椿がまたやけに美人な感じに見える。
緊張に息をつく姿に色気があるというか・・・遭遇したら嫌が上でも注目浴びちゃいそうですな。危険危険。



第136房 夜行  (2014年 1号)


看守をやり過ごすために入った備蓄倉庫。
しかしその備蓄倉庫に看守がやってこようとしている!!
慌てて隠れる場所を探そうとするが、どこにも隠れる場所は無い。
リクたちの時とは違い天井が低いから棚の上に登って死角に入るという手も使えないようですな。

部屋の中を見渡した時、発見したのは南京錠のついた細い扉。
あの奥に入ることができればやり過ごすことはできるかもしれない。しかし当然マスターキーで開く代物ではない。
だがそこはさすがに脱獄王。事前にいいアドバイスをくれている。

お前、昔鍵屋だったそうだな。用意しておけ。下見までにピッキングツールを作っておくんだ。何かの役に立つかもしれん。

なるほどなぁ。下見までに数日あったのはこういった準備のためだったんですな。
しかし、子供の頃から心得があるとはいえ、この短時間で開錠など出来るものなのだろうか。
いや、何にしてもやるしかないのか。
迫る足音に心乱されながらも指先に神経を集中させ・・・どうにか開錠に成功する椿。フゥー。

南京錠は外して中に持って行っているが、さすがにその小さな変化に気付くほど気の利く看守ではないようですな。良し良し。
さて、細い扉を抜けた先、そこは武器庫でありました。
なるほど。確かにこれは厳重な保管がされてて当然の場所ですな。
無数に並べられている武器を見て椿、当日もし失敗すれば・・・ここにある武器で・・・と最悪の事態を想定してしまう。

必ず・・・必ず成功させてやる!!

恐れは抱いたが、それを飲み下して前へと進む椿。
逆に言うならば、当日そういった目に合わないためにもこの下見は確実に成功させないといけないわけですからねぇ。
自分のみならず仲間の命にもかかわることでありますし、椿の決意は強そうだ。

さて、ようやく屋上まで繋がっている非常階段の入り口前の通路までやってきた。
ここは全部独居房となっている。
大抵の囚人は大人しく眠っているが、窓に張り付いてずっと廊下を睨んでいるような囚人もいる。こえーよ。

そんな独居房の廊下を抜けて、ようやく非常階段までたどり着くことができた。
看守が巡回で上下階に移動する時は看守専用エレベーターを使う。非常階段はひとまず一息つくことができるわけだ。
この長い非常階段を登りきれば、ついにヘリポートである。
意を決し、登り始める椿。カツカツと少しずつ登っていく。
あと5階。もう少しだ。そう思っていたところで――看守と出くわしてしまう。バレた!!

目を見開く椿。なんだかやけに色っぽい。
が、どうやらバレたわけではないようだ。
さすがに巨大刑務所。違う棟の看守同士は顔も知らないってわけですな。

このシブイ感じの看守、名前は原田
どうやらサボって酒を飲んでいたらしい。本人が言うとおり出世はできなさそうなタイプですな。
山本という偽名を使い、どうにか話を合わせてやり過ごす椿。
なんとかピンチは乗りきったようだが・・・この原田看守は何者なんでしょうなぁ。
この遭遇だけに出てきたとは思えない感じではあるが・・・何か重要な役割がありそうな気がするぜ。

さて、原田看守をやり過ごし、ついに非常階段を登りきる椿。
ヘリのプロペラが見える。もう少しでヘリポートだ。
だが、そこに至るための階段は守衛室の目の前!使えない。どうやって上に行けばよいのか・・・

みんなが信じてくれたんだ。俺の成功を。あの上を見るまでは324房には戻れない。
待てよ。いや・・・無謀か・・・でも・・・やってやる!

今まで以上に強烈に意を決し、守衛が背を向けた隙に走り出す椿。
そのまま柵を飛び越え、いや柵を蹴り上げ・・・建物の隙間を飛び、ヘリポートのある上階まで跳躍する!!
うーむ、本当に無謀なことしますなぁ・・・オイ。
少しでも足の乗せる位置が悪ければそれで終わりとなるところでありましたよ・・・恐ろしい。
だがしかし、それをやり遂げてみせた椿。ついにヘリポートに辿り着く。
けれども、まずは水平線に視線を移して一時思いを馳せる。

この先にいるんだな・・・待ってろ。美雪!!

囲いのない夜空に立つ。刑務所内では感じたことのない視野の広がり。
これならば遠く離れた妹もいつもより近く感じられることでありましょうな・・・

さあ、いよいよ目的地に到達である。
だが本番はここからだ。田中一郎が警戒するような最終トラップがあるのかどうか。
あった場合、椿はどのようにしてそれを切り抜けるのか。まだまだ気は抜けませんなぁ。



第137房 遺品  (2014年 2+3号)


椿陽平、監獄の頂上に立つ!!
確かに物理的に立ってますが何か別の意味にとれそうな言葉ですな。頂上取ったどー。

それはさておき、一通り妹への思いを本土に向けて送ったところで自身の使命を果たそうとする椿。
携帯電話の撮影機能を使ってヘリポートの様子を撮りまくる。
奥の方には来客用のための空きスペースが存在している。脱獄当日は視察委員のヘリがここに停まっていることとなるはずだ。
さらに近くでヘリを観察する椿。その椿が見たものは・・・

というところで椿凱旋。
帰り道は大きなトラブルもなかったみたいですね。まあ行きのトラブルが大きすぎたってところか。
それにしてもヘリポート階段前の看守はどうやって切り抜けたんだ?
降りる時も屋上から建物の間を飛び越えたのだろうか。上に行くよりある意味怖そうな気がする。

史郎さんが自分だって信頼しているんだからね、思わず憎まれ口叩いちゃうんだからねといったポーズを見せている最中の帰還。
そりゃあもう、誰よりも必死こいてロープを巻き上げますよ。ハハハ。
そんな風に引き上げている最中に看守がやってくる。
危ういタイミングではあったが、どうにか見回りまでには戻ってこれたみたいですな。フゥ。

下見中はかなり焦った様子も見せていた椿だが、今は落ち着きを取り戻している様子。
そんな椿が撮影したヘリの写真を見せてくれるので皆で見ることにする。すると、そこには――

海風と地震対策だろう。ヘリの足元だ。固定用のロックがかかってる

なるほど。そういうものはあってしかるべきでしょうな。
これは確かに事前に分かっていてよかった。
対策も道具も何も無しに当日決行した場合、ここで立ち往生になっていた可能性もあったわけですからねぇ。

下見成功の喜びも束の間と落ち込む天野達。だが、そんなことは些事とばかりに別の質問を行うリク。

どうだった?ここのさ、屋上に立ったんだろ?東京って見えたのか?

なかなか子供らしく純粋な視点での発言ですね。
さすがに高い所に登ったからって望遠鏡でもなければ遠く離れた本土の姿など見える筈はない。

けど見えた気がした。必ず・・・成功させてやろうと思ったよ

椿の遠くを見るかのような目。その表情と声に励まされる天野達。
そう、難点が見つかったからってくよくよしてはいられない。
先に見つけることが出来て良かった。解決方法はこれから考えるという風に思考を切り替えないといけませんやね。
何度も困難にぶつかってきたリクならではの柔軟性が見られた形となってよいですなぁ。さすがリーダー。

さて、早速田中一郎に下見の成果を伝える椿。
ロック問題は追い追い考えるとしてそれ以外の部分も詰めていかないといけない。
例えば屋上直前の守衛室。椿のように跳躍してかわす方法は全員が出来るとは思えない。
そのように田中一郎が述べると、途中の武器庫で催涙ガスを持ってきましたと言い出す椿。
その催涙ガスで守衛室を制圧すると言うことか・・・まさかこの極限の下見作戦で土産まで持ってくるとは。たいした奴だ。

しかし、勝手に持ち出して炊場のスコップのように数が足りなくなって騒ぎにならないか。
その懸念もあるが、場所的に囚人が触れるとは思えないし、同じような騒ぎにはなりますまい。
南京錠がかかっていたことからも、平時は使われない武器庫でしょうしね。逐一チェックをしているとは思えない。
そんなことをしているなら先に保存食の減りの早さの方が問題になっているでしょうしね。

椿の報告を聞き終えた田中一郎は弟の二郎とその家族の写真を眺める。
弟家族のことを想い、思わず時計を握る手に力が入る田中一郎。
その結果写真がズレ、その下に隠されていたものが姿を現す。これは・・・マイクロチップだ!!
そう、あの仲間から送られてきた暗号文に書いてあった二郎が見つけたというチップだ。やはりここにあったか!!

急いでマイクロチップの中身を確認する田中一郎。相変わらず多機能な携帯だな。
それはさておき、その中に入っていた画像はなかなか衝撃的。
麻薬のヘロインの材料となるケシ畑。それを極楽島の囚人と看守が栽培している。
つまりこれは極楽島が麻薬の栽培を行っている証拠となり得るわけだ。

極楽島を管轄しているのは警視庁。そのトップはあの憎き鬼道院!!つまり・・・これを証拠に!鬼道院を失脚させられるぞ!!

やはりその考えになりますよね。と思いきや、やっぱりダメだなと思い直す田中一郎。おや。
証拠としては弱すぎる。こんなもの画像加工のCGだと言われたらそこまでだ、とのこと。ああ、なるほど。
言われてみたらその通りですな。衝撃的ではあるが、でっち上げだと言われた時に反論のしようがない。
おじさんのように他の証拠と合わせていたら説得力も増すのだろうが・・・うーむ。
しかし、ふと田中一郎は別の疑問に思い至る。

待てよ。この刑務所に屋外作業は存在しない。
とすればこの畑はムショ内のどこに・・・これほどの広大な畑なんて敷地内で見たことがない。
仮に屋外作業があるとして、以前TVで衛星写真を見た時・・・この島にはこんな畑はどこにもなかった!!
極楽島・・・何かがおかしい・・・

一枚の写真がもたらす別角度からの疑惑。
うーむ、まさかそういう方面に発展するとは思いもよらなかった。さすがである。

果たしてこの写真が意味するのは一体何なのか。
実は極楽島の衛星写真は偽物で、もっと広大な土地があったりするのだろうか。
いや、それなら空を飛んできた二郎や現地の島にいる神木さんたちが気付きそうなものだしなぁ。
極楽島の地下には栽培が行えるような人工的な施設があるとかそういう話だろうか?
Z棟の囚人たちの姿も今まで見たことは無いでしょうし、そういう隔離施設がある可能性は高そうだ。
脱獄も大事だが、鬼道院を追い詰めるための証拠も出来れば集めておきたい。
さてさて、上手く証拠集めに立ち回ることができるのか・・・注目です。



第138房 覇道  (2014年 4+5号)


チップ画像に写る看守と囚人。それはこのケシ畑が極楽島にあると示している・・・
だが一体どこに・・・この広大な畑があるというのだ・・・ニセ画像なのか・・・
いや・・・二郎が命を賭して遺したチップだ!!

実際にニセ画像だったという可能性もなくはないと思う。
が、確かに命を賭して残し奇跡的に兄の手に渡った画像がニセってのはなぁ。救いがない。
でも流石の田中一郎もリアリストなだけじゃなく、そういった感情で否定したがることもあったりするんですな。
まあ、よく考えた結果やはりこの画像は・・・って結論も有り得るんでしょうが。

仮にケシ畑が極楽島にあるとして鬼道院は莫大なアガリを手にすることになる。まさか貯金のためではあるまい

熱い札束を手にして悦に入っている鬼道院を見たら、ひょっとして貯金が趣味なのかと思わなくはない。
いやもちろんお金は目的のために溜めているわけであってそっちが主眼ではないはずですけどね。

これはチャンスなのか!!
奴を打倒できる証拠がこの島に眠るなら。脱獄よりも先に島にいる今のうちに調査に着手だ!!
・・・と言いたいところだが、行動が制限された囚人にできる調査などたかが知れている
うかつに動けば脱獄自体が危うくなる。歯がゆいが・・・やはり脱獄が先決だ。
それにしても・・・あのケシ畑はどこに・・・

打倒鬼道院を目指す田中一郎としては何とも歯がゆい。
まあ、それとは関係なくとにかく脱獄を優先したい仲間のこともありますし、自身の想いを先にはできませんわな。

さて、その頃の本土では内閣改造が行われている。
三村新内閣が発足。憲法9条改正を押し進める三村氏の動向に関心が寄せられます。
もちろんこの民寿党の三村を援助したのは警視総監である鬼道院。
いや、今日からは新たな防衛大臣の鬼道院永周ということになる。ひとまずの目的を果たしてしまったわけか。

総理の座につき、約束通り防衛大臣の座を鬼道院に与えた三村は問いかけを行う。
なぜそれほどに防衛大臣の座にこだわる。何がしたいのだ、と。

心酔・・・しているのです。
この国は先の大戦後戦力を放棄しました。しかしその理念は我が国が国際貢献を行う上での足かせとなっているのは明白。
私は三村総理の掲げる憲法改正案こそ責任ある国際貢献の実現とともに日本国が主体的防衛能力を保有する唯一の方法だと信じる者です。

なんというか教科書通りの答えといった感じですね。
さらに総理に最も近く、最もお力になれる場所でお仕えしたいので防衛大臣の座を所望したなどと言い出す。愛い奴め。
果たして三村総理はこの言葉に納得したのかどうなのか。
政治家であれば腹芸はお手の物であろうが、鬼道院相手にどこまで通用するものか。
あまり優秀そうに見えないのが困りものでございますな。

新自衛隊南富士駐屯地。
この駐屯地のNo.2である林田2等陸佐。
太い眉に厚い唇という頑健そうな彼は上司からも期待されている様子。これからもよろしく頼むぞと声をかけられている。
しかし部屋に戻れば全裸で滂沱の如く涙を流して祭壇に向かって拝礼するような人でありました。な・・・何故脱ぐ・・・

ところ変わって宗教家の周回らしき場所。
多数の信者が詰めかけ、三天大帥メテオ様の声に涙を流しながら耳を傾けている。

信じるのです。そうすれば必ずあなたは救われる。未来永劫子々孫々。あなた方は救われるのです。

特筆した言葉があるわけでもないのに何故この人たちはこんなに心酔した様子を見せているのか。
無関心なものにしてみれば宗教というのは本当に得体の知れず不気味なものに思える。
どうでもいいが三天教だから指を三本立てて組んでいるんだろうけど、小指だけ組ませるのは地味に難しくて困る。

大盛況だな鈴木さん。話ひとつであれだけの人心を掴むとはたいした才能だ。

信者の前から部屋へと戻ったメテオ様を迎えるのは鬼道院。
そんな鬼道院に葉巻を進め、仕事ですからねと冷めた返事を返すメテオ様。三天教は禁煙ではなかったのかね?

2分前から私は大帥メテオではありません。ビジネスマン鈴木茂ですから

さようでありますか。
大帥メテオの時も胡散臭い感じだったが、ビジネスマン鈴木茂はさらに胡散臭い感じだなぁ。
まあ、鬼道院と裏でつながっている宗教家というだけで胡散臭くないはずがないんですが。

どうやらこの三天教は日本全国に散らばるおよそ160におよぶ新自衛隊の駐屯地、そのNo.2を洗脳している様子
三天教が洗脳して意のままに操れるようにしている。その三天教に出資しているのが鬼道院。
さてさて、これで一体何をするつもりなのか。
警視総監のポストには信頼する側近を配置するとのことであるし、日本で力を行使できる機関はほぼ全て手中に収められたことになる。
そして鈴木茂に鬼道院はこう語る。

いずれ国教にしてやる。俺が支配する独裁国家誕生の暁にはな

これはまた禍々しい月を背負って宣言するものである。
しかしこの日本で独裁国家を樹立しようなどと企むとは・・・鬼道院の野望はデッカイなぁ。

さて、その目論見の初動として新自衛隊の人事刷新を行う鬼道院。
駐屯地の洗脳済みであるNo.2を駐屯地司令に押し上げる。
これで各地の駐屯地は意のままとなったも同然という話ですな。

三天教の洗脳にはヘロインなどが盛り込まれている。麻薬の製造は行っているのだし当然使うに決まっているか。
その結果、林田強司令官に至っては目も虚ろで目の前をハエが飛んでも気付かないほどである。やべーよ。

鬼道院の秘書はこれでクーデターを起こす際の戦力が整ったという。
しかし鬼道院が考えているのはそれではない。防衛大臣が命令したからってクーデターに協力するほど日本の軍隊は未熟ではない。
それよりも目的は動かさないことである。
なるほど、各地の司令官が動くなと命令すればそれは確かに出動することも難しくなる。
意に沿わぬ動けという命令なら個々でボイコットもできるが、動くなという命令は個人だけで動き出すのは難しい。
ようするにクーデター鎮圧に動かさないための下準備を行っていたというわけですな。
ではそのクーデターに使う「軍」は一体何なのか・・・秘書の問いに鬼道院は笑みを浮かべる。

この世は金を持つ者のみ創造を許される。
あの島からあがる大量の白い粉。その金こそが俺の戦力、極楽島囚人軍を生み出すのだ

極楽島10万人の囚人を私兵に!?
どう考えても言うことを聞くことはなさそうな連中であるが、麻薬を用いて言うことを聞かせるつもりなのだろうか。
それこそ食事や水に麻薬を含み、中毒者に仕上げれば操作も可能ってことだろうか。
もちろんずっと飼いならすつもりはなく、クーデターに成功すれば焼き払うことも考慮しているんでしょうなぁ・・・うぬぬ。

リクたちはそうなる前に脱獄を成功させないといけない。
が、もしこの考えがあっているならばノギたちが麻薬漬けになってしまうという可能性があるわけでして・・・うわわ。
そこは炊場のトップである高木さんが色々と機転を利かせてどうにかしてくれると信じたいところですなぁ。
ん、そういえば看守の食事も同じところで作ってるんだっけか?そうなるとさすがに食事に混ぜるのは難しいか?うーむ。どうなるのか。

鬼道院の野望はとてつもない。
まああの隕石が降ってきた日より現行法は死滅したとか言ってますものねぇ。
現実の日本とは色々とかけ離れた状態にあると考えた方がいいと思われます。
鬼道院の覇道はどこまで加速するのか。リクや田中一郎はこの野望を食い止めることができるのか。注目であります。

しかし佐々木とか田中とか鈴木とか。主要人物の名前が微妙に普通な中、麗乃真や鬼道院といった名前が凄く目立つ。
全員平凡な名前でも困るし、こういったバランスが大事ってことなんでしょうな。きっと。



第139房 義挙  (2014年 6号)


極楽島囚人軍。10万の囚人を私兵とする計画はなかなかに壮大なものがある。
しかし極1文字の旗とか作るほどの纏まりがあるのだろうか。

なんにせよ、秘書さんは相当な衝撃を受けた様子。思わず激風に打たれたかのようによろめく。
そして語る。鬼道院様にお仕えして1年9か月と16日目。やっと計画の最終段階を明かしてくださったのですねと。

15日目だ。

さすがに数少ない身内ということなのか、しっかり記憶している様子の鬼道院。
こういう細かい部分で忠誠心を養うことができるって話でありますな。勉強になるわぁ。

その年月は鬼道院が夢を想い走り続けてきた年月だという。
思ったほどは長い時間をかけてきていないんですな。
まあ、どの段階からが夢を追い始めた年月なのかはよく分かりませんしのう。
独裁を夢見たのは最近かもしれないが、昔から出世欲は凄そうでしたしねぇ。

釈放。それが囚人共の成功報酬。クーデターでは死にものぐるいで戦うだろう。
加えて、奴らは元来凶悪だ。暴徒としてエリート。10万人の最強の軍隊だ

暴徒としてはエリートだろうけど、正直軍隊としてはどうなんだろうかと思わないでもない。
確かに釈放と言うエサがあるのならば必死になる理由もあり、纏めやすくはなるでしょうが・・・
ノギや須藤くんのような凶悪とはほど遠い子もいるし、単純に10万人が兵力となるかどうか・・・

何にせよ、鬼道院もそれだけではクーデターは成功しないと考えている様子。

民衆の支持がいる

非常に大事なものでありますね。
安定した国家を運営するためにはやはりある程度の民衆の指示は必要になる。
独裁国家であるならば、それこそ熱狂的な支持がなくてはならない。
しかし民衆とは壁の内側のスラムも含まれているのだろうか。だとすれば鬼道院ほど恨みを買っている者はいない。
そんな秘書の言葉に鬼道院はこう語り出す。

なんのためにスラムを作ったか。犯罪多発地域を壁で囲い、金も教養もないゴミ共を排除し、この東京を美しくするため・・・
否。あえてスラムの不満を充満させるためだ。そこで俺はスラムに対して一世一代の大芝居を打つ
首相官邸、国会、報道機関を囚人軍を使って制圧した後・・・

ここから鬼道院の妄想タイム。
無精ひげを生やし、髪を乱した鬼道院がスラムの人間にクーデターの説明をするという想像の場面である。
自らの行為を義挙と述べる鬼道院。もちろんスラムの人たちはそんな言葉を信じる筈もない。
警視総監の時はスラムで支配者気取り。今度は防衛大臣になったらクーデターで国ごと乗っ取ろうってか。ふざけんな!!と大怒りだ。

皆様のお怒りはごもっとも・・・のことでしょう。ですが、どうか聞いていただきたい。
今回は1人の人間。鬼道院永周の言葉として。どうか。

そう口にして、地へとひれ伏す鬼道院。
正座の状態から手をつき、頭を深々と地につくほどに下げる。土下座・・・そう、謝罪のベスト・オブ・ベスト。土下座だ!!
これにはスラムの人たちも声を失う。うーむ、やはり頭は立場が強い人間が下げる方が強いのですな。

国策として・・・国家公務員の義務として・・・
命令だったとはいえ。最前線に立たされ皆様を抑圧し続けてきたことをどうかお許しください!!
私とて人の子。苦しかった
出自、学歴、収入。そんなもので人間を差別するなど絶対にあってはなりません。
私は日々考えた。この差別を・・・壁を・・無くす方法を・・・
ですが相手は国家。私1人の力で正攻法で変革を起こすには限界がありました。そこで選んだ方法がこの義挙でした。

涙を流しながら鬼道院はスラムの人たちに絶対的な効果を及ぼすセリフを口にする。

今こそ・・・ついに・・・私の想いを実現できるのです。
ただ今より、スラムの壁を撤廃。扉を開放いたします

その言葉と共に開かれるスラムの壁。自由への扉。
鬼道院の言葉を信じられない人にとってもこれは間違いのない開放の道である。
もしそうなったとしたら、スラムの住民は間違いなく歓喜の声をあげて飛び出していくでありましょうなぁ。

膨張しきった不満を一気に解放。その反動エネルギーが俺を頂上へとのし上げる。
その時こそ、我は王となり、民は王国の下僕となるのだ

一瞬にして私戦の軍を創出し、民衆の心をも操作する。
このお方は魔術師かと慄く秘書さん。うーむ、大分心打たれているようですが、果たして想定通りにいくのでしょうか?

スラムの民衆の心は確かに掴めるかもしれない。
これまでの行いはさておき、実際に開放したのは鬼道院であるし、命令で仕方なくという言い訳もできる。
実際のところスラム計画を持ち込んだのは誰かって話になるが、まあその辺りは報道など要所を抑えた時点でどうとでもなるのだろう。
しかしスラム以外の民衆の心はどうなのだろうか?
開放されたスラムの民が暴れ出したりしたら鬼道院に対する不信の念へと繋がったりしないだろうか。
そのスラムの民を征圧したりしたらそれはまた本末転倒であるし・・・うーむ?
ひょっとしたらスラムと同じように一般の民衆にも芝居を打つ用意があるのかもしれない。なかなかの役者ですのう鬼道院。

それにしてもそもそも囚人軍は言うことを聞いてくれるのだろうか?
ある程度はうまくいっても、途中から勝手に動き出すのが絶対に出てきそうな気がする。
一部の連中が爆弾なんかを使ってスラムの壁を破壊したらどうなるんだろうか。
せっかく無精ひげも生やして演技しようとしていた鬼道院の企みが一発でパーということになるわけだが。
うーむ。その時の鬼道院の顔を見てみたい気はしないでもないぞ!!



囚人リク 17巻


第140房 理由  (2014年 7号)


鬼道院が己の野望を成就させるために動いている頃、リク達は最終的な脱獄計画の詰めに動いていた。
とはいえ肝心の逃走船の手配は上手く行っておらず焦りを募らせる周龍。
考え過ぎて自分でもどこ見てるのか分からなくなってしまったのでとりあえず走る。ダダダダ。さすがに必死でありますな。

脱獄のために動くことが出来るのは夜の間だけ。
じりじりしながらも昼間は待つことしかできない。辛い時間である。
まあ、リクやレノマさんのように脱獄計画のために常時頭を悩ますよりはよかったのかもしれませんが。

というわけで、その自由な時間はそれぞれがそれぞれ好きなように過ごす。
読書をするものもいれば筋トレに励むものもいる。
何で筋トレでまで意地の張り合いをしているんでしょうかね、この2人は。まあ、トレーニングのモチベーションには最適でしょうが。
というかリクはやらなくていいのか?やってたけど脱落して椿のところに来たのかもしれませんが。

さて、この他愛のない昼休みの時間。
大きな話もなく過ぎるかと思いきや、田中一郎がリクに例のケシ畑の画像を見せる事項が発生する。
この島で鬼道院が裏金作りのために麻薬の製造に関わっている。
しかもそれに極楽島の看守や囚人も関わっているという。恐ろしい話である。
リクもスラムにいる時に麻薬の恐ろしさは目にしたことがある。やはり凄惨な世界だなぁ・・・

奴を打倒する証拠がこの極楽島のどこかに潜むこの画像が教えてくれた。だが、その追跡は島を出てからだ

証拠を集めることよりも脱獄を優先するという田中一郎。
勿論当人も歯がゆい思いを我慢してのことである。
なるほど、同じように鬼道院に怒りを抱いているリクにだけはこのことを伝えておこうと考えたわけですな。

ところでな、リク。突然だが。お前の大切なそのおじさんというのは、奈落谷交番の藤本吾郎さんか?

おっと、いきなりの発言。
そしてリクにとっては非常に大事な話を聞かされることとなる。何故おじさんは鬼道院に殺されたのか。

お前のおじさんは、あの鬼道院を追いつめていたんだ。それもたった1人でな。
奴の悪事の証拠を揃え、失脚させるまであと一歩の所、マスコミへの公表寸前に殺されてしまった。
我が革命党でも突きとめきれない悪事の深部にまで踏み込み、鬼道院を追いつめたのだ。
奴と敵対していた俺とて命までは奪われなかった。だが、お前のおじさんはそうじゃなかった。
殺されねばならなかったほど・・・あの鬼道院が唯一恐れた男だったのだ

言われてみればその通りでありますな。
1話目であっさりと殺されたものだから甘く見ちゃってた感じはありますが、よくよく考えると凄いことをしている。
鬼道院の野望ややっていることがでかくなればなるほど、追いつめたおじさんの存在がでかくなっていく。
たった1人でどうやって鬼道院を追いつめるほどの証拠を手に入れたのだろうか・・・?

藤本吾郎・・・ただの警官なのか・・・

田中一郎も疑問に思っている。それはそうでしょうなぁ。
というか本当にたった1人だったのだろうか?協力者がいることは十分にあり得るのではなかろうか。
特にケシ畑の画像なんかはスラムの警官であるおじさんでどうにかなったとは思えない。
そうなってくると、椿が遭遇したサボリの原田看守辺りが凄く怪しく思えてくるわけですが・・・うむむ。

昼間の田中一郎の話でおじさんへの想いを強くするリク。
鬼道院を追いつめる程の人なのに、普段はとにかく優しくて、とてもそんなことをしているようには見えなかった。
スラム内ではそれなりの権力がある警察官という立場にありながら、それに驕った様子もない。
サイフを忘れて、呼び込みの手伝いをして報酬を得たりする微笑ましい姿もよく見せてくれている。
そんな気のいいおじさんのことが忘れられないリク。

ほんと、忘れられないよ・・・忘れ・・・られるもんか・・・
・・・たいよ。会いたいよぉ・・・

月を見ながら涙するリク。
おじさんは月だった。スラムを照らす月だった。おじさんに会いたい
うーむ、アオリも合わせて何とも心揺さぶる最終ページとなっておりますなぁ。
月夜に映るおじさんの朗らかな笑顔。それを想像しながら泣き濡れるリク。悲しい話である。



第141房 倉庫  (2014年 8号)


相変わらず逃走用の船の手配に頭を悩ませている周龍。
手配の術が閃いたりしないものかと逆立ちをしたりしている。まるでマンガ家のようですな。アイディアー閃けー。
そんな周龍の前に現れる一人の囚人。やたらと笑顔でやたらとゴツイ。名前は丸井太郎。あ、怪しい笑顔だ・・・

スラム最大ギャングの2代目である周龍に憧れていたという丸井。
本人もスラムで弱小ではあるがギャングをやっていたそうな。ふむ。
とりあえず丸井は置いておいて、やってきた田中一郎と話すことにする周龍でありました。

脱獄計画は進行しているが、肝心の逃走船の手配がままならない。
手配には時間がかかるし、早めにどうにかしたいところであるが・・・やはり刑務所の中から海外とのパイプを作るのは難しいか。
田中一郎も組織の長ではあるが、こればかりは名案が浮かんだりはしないでしょうなぁ。

ところでお前はなんでここに来た

いきなり周龍の投獄理由を尋ねる田中一郎。確かにその話はまだでありましたな。
本人に言わせれば話するほどのことはやってないとのこと。
仲間と共に特機に火炎瓶を投げつけ、負傷した仲間の逃亡を手助けしただけらしい。結構なことやっとるじゃないか、オイ。
火炎瓶で燃え上がっているように見えるが、これで公務執行妨害の懲役2年で済むとはどういうことだろうか?
派手に燃えたようで実は当たってなかったとかそういうことだろうか。
まあ、警察側としては投獄さえできれば罪の内容も年数もあまり気にはしていないようですが。

「素行が悪い」「態度が悪い」難クセつけられ加刑に次ぐ加刑。それで結局9年だ。この先も出られる気はしねぇ。
きっと俺は人質なんだよ。親父のドラゴンクロスは巨大だ。これ以上警察が手に負えなくならないための人質なんだよ。

そう理解している周龍。しかし田中一郎は述べる。おそらくそれだけじゃない、と。

周龍。スラムにあれほどドラッグが蔓延しているのはなぜだ
ドラゴンクロスとNo.2のダブルドラゴンクロス。この2大組織がどちらも薬を流してないのにだ。

この問いに周龍。スラムには目の前の金に飛びついてしまう弱小ギャングがごまんといるらしい。
そういう奴らがばらまいてしまっているのだろうとのこと。まあそうなんでしょうな。
だが、その彼らはどこからブツを手に入れているのか。弱小ギャングがどうやって壁の向こうからブツを仕入れるのか。

その元凶もまた、お前を貶めた元凶と同じ。警察の当時のトップ、鬼道院なんだ。
おそらくお前が人質となっている真の理由はスラム最大のドラゴンクロスにクスリに手を出させないため。
ヘロインの売買を邪魔されたくないからだ

人質にすることでドラゴンクロスがクスリに手を出さなくなったりするのだろうか?
さすがに警察側が直接ヘロイン売買の邪魔をするなとドラゴンクロスに言うとは思えないし、その辺りはよく分かりませんな。
だが、警察――鬼道院がヘロインの生産と売買を行っているのは確かである。証拠の断片の画像も入手している。
詳しい話は皆が揃っている時に行うという田中一郎。
鬼道院絡みだし、リクだけに話すのかと思ったら皆にも伝えるつもりでいるんですな。まあスラムの住民なら他人事じゃないか。

法を犯すギャングが言うセリフじゃねえが・・・やりきれねぇ。腐ってやがる。

この事実に衝撃を受ける周龍。
隕石落下からのスラム建設。そしてそこで行われる鬼道院の野望。
すっかり狂ってしまったこの世界。だからこそやらねばならないと田中一郎は語る。

創るんだ。俺たちが。そう、リクが言った新しい世界を!

空を見上げてそう志を新たにする田中一郎。うーむ、まさに革命の闘志でありますなぁ。
周龍も段々と仲間らしい感じになっていっていい感じであります。

さて、鬼道院の方であるが、野望へ向けて着々と準備を進めている。
囚人兵10万人分の武器の調達。現在は6万丁。まだ4万は足りない状態である。
そのうち2万丁はクーデター決行の際に極楽島の看守用を使用するとのこと。
それって看守たちは身を守る術がなくなるんじゃなかろうか・・・一般の看守は用済みと切り捨てられそうな気もするな。

防衛大臣の地位を利用すれば新自衛隊の武器を流用することも可能でありましょう。
しかしそれだと動きを察知される可能性がある。
今まで通り粛々と事を進めるつもりの鬼道院。口の堅い死の商人から買い集めるとのこと。

この倉庫が武器で埋まるのは時間の問題。

いい笑顔、いや危険な笑顔を見せる鬼道院。どうでもいいが秘書さんもだが温かそうな格好してるな。そんなに寒いのかこの倉庫。
まあ一応変装のつもりなのかもしれませんけどね。
変装と言えば、前に鬼道院はスラムのギャングに武器の融資をしたりしていたなぁ。
囚人軍だけではなく、スラム内にも私兵を用意しようという考えなのだろうか?

さて、このタイミングで極楽島の叶所長から電話がかかってくる。
緊急の連絡。その内容は・・・唐周龍と田中一郎が接触しているというもの!!
うわあ、知られてしまいましたか・・・!!
しかも丸井太郎はパイプを通じて2人の会話を盗み聞きしていた様子。
つまり麻薬栽培の証拠写真が田中一郎の手に渡ったことも知られてしまったわけである。こ・・・これは・・・!!

脱獄計画のことは運よく話していなかったが、画像のことを知られたのはヤバイなぁ。
鬼道院としてもそれはアキレス腱である。田中二郎の家族にも容赦はなかったし、これは危険すぎる流れ・・・

しかし丸井太郎。やはり初見の印象通りの人物でありましたな。怪し過ぎたよさすがに。
鬼道院が囚人を送り込んでスパイ行為に及ぶ。確かに予想できたことであるが、これだけ囚人がいると回避は困難だったか。
まあ田中一郎も屋外で迂闊に喋り過ぎたって気はしますけどね。
証拠画像の話をした時の構図から盗み聞きの可能性がありそうな気はしていましたが、本当にそうなってしまうとは・・・

それにしても、分かりづらいけど随分建物の上の方にいるんですな丸井太郎。
これだと例えば天野達に周りを見張らせていたとしても気付けなかったかもしれない。
さすがに鬼道院が送り込んだ囚人なだけあり、技術はそれなりのものがあるということか。
表情があまりに怪しいのは・・・まあ、能力と引き換えということなんでしょう。仕方ない仕方ない。



第142房 確定  (2014年 9号)


田中二郎の妻子を殺害してまで証拠隠滅を図った画像。
しかしその麻薬製造の証拠画像は田中一郎の手に渡っていた。
それを聞いた鬼道院は憤る・・・かと思いきや、動じずに笑みを見せている。ほう。

どうやら例の件とやらで田中一郎の手に渡っているのではと考えていた様子。
例の件ってどの件のことだろうか?秘書さんはなんという感知能力と慄いている様子ですが・・・というか、慄きすぎである。
まあ、実際どこに行ったか分からないという不安を抱えるよりも所在が分かった方が安心できますよね。

では、送り込んだ刺客。丸井に田中を始末させますか?

怖いことを言っている。だがやはり鬼道院はチップの在処がわからなくなるのを一番恐れている様子。
田中一郎を亡き者にした場合、その行方は誰も知り得ぬものとなる。決行前の大事な時期に不安要素は抱えたくないですわなぁ。
ならば刑務所で拷問にかけるかという問いにも否定的な鬼道院。
田中一郎は歴戦の革命家であり、拷問ごときで口を割る男ではないとのこと。うーむ、高く評価してるようですなぁ。

チップは看守に見つからない場所に隠しているはず。
ゆえに警戒心を抱かせにくい囚人としての丸井を送り込んだのだ。
田中はこのまま泳がせておけ。ただし監視は怠るな。一瞬たりとて目を離すな。

なかなか厄介な話でありますなぁ。割と警戒せずに写真入りの時計掘り返している気もしますし、危うい気はする。

さて、刑務所内にも年間行事というものはある。
正月はやはり祝うべき日であり、工場勤務も休みとなる。鏡餅とか飾られたりしております。
さらに食事もおせちやちらし寿司などで彩られております。これも炊場で作成されたものなのでしょうか。やりますな高木さん。

ちくしょうムダにうめぇ!!この刑務所はたまに優しいからけしからん!!

何だか面白い愚痴をこぼす天野。まあ分からなくはない。
優しくしておいて後で何かあったりしてと述べるリクに対し、レノマさんはこんなことを言い出す。

今まで何人か豚のエサにされたらしいぞ
正月三が日、出役もなく。たらふく食わせた後、正月休み明けは毎年何人かいなくなってる。

まさか豚さんの体内がそのようなことに・・・!!いや、気にするのはそこじゃないか。
というかリクが言うとおり、これはレノマさんのウソ、冗談の類であります。
含み笑いしているレノマさんが何だか可愛らしいですな。史郎さんとのやり取りも何だか子供らしくてよい。

囚人同士のケンカは容認するが殺し合いはやたらとうるさい極楽島特級刑務所。
レノマさんは工場の労働力を減らさないためと言っているが、さらに別の労働力として使われていることはさすがに想定外か・・・

楽しそうに食事をしているなか、母親のことが気になる松尾は食欲が湧かない様子。
母の余命はあと半年しかなく、急ぎたいけど昼間は何もできない。
だから毎日早く夜が来てほしいと思うが、それは母の寿命が早く減るということにも繋がる。たまらない切なさでありますな・・・

その話を聞いた史郎さん。ほな、と松尾の食事に手を伸ばす。
それを見た天野は早々にブチギレ。こんな時まで食い意地張って、テメェどういう神経してんだ!!と。
だが、史郎さんは自身が食べようとしていたわけではない。そのことをすぐに知らされる。
ちらし寿司の具を除け、ご飯を握り、刺身を乗せる。

松尾。俺の握った寿司はな、なんか知らんが元気になるってな。これでもシャバでは評判やったんや
俺もお前もバカ力要員や。食うて食うて力をつけて明日を待つんや。

史郎さんの粋な計らい。松尾も涙を流しながら頂く。いい話でありますなぁ。気持ちのいい奴らだ。
真っ先に罵倒した天野に対しても気にするなと言ってのける。
でもエビを無心して断られたりもしている。うーむ、何というか本当に仲のいい奴らだなぁ。微笑ましいわぁ。
そして「それはそれ」と椿の顔真似までしてみせる天野がまた面白い。真似された椿の反応が気になる所だ。

さて、松尾が気にしているのは脱獄の決行日。
他の連中も早く出たい気持ちに変わりはないだろうが、松尾の場合は特に時間が無い。
というわけで、田中一郎に決行日について聞くために集まる一同。
今回はちゃんと沢田も側にいます。まあハブろうとしても聞きつけてくるでしょうしねぇ。しかし何故体育座りなのか。

準備に完璧を期したいところであるがそれではキリがない。
ケツを切った方がいいと述べるレノマさん。そのためには視察委員のヘリが来ないことには話にならない。
その日はいつか・・・もちろんその情報も入手しているレノマさん。

次に視察委員が来るのは2月1日

あと1か月。長いようで短い期間である。
果たしてそれまでに全ての課題はクリアできるのだろうか。船の件はもとより、ヘリのロックなど課題は色々とある。
やれるのか・・・悩みを見せる田中一郎。だが、レノマさんはこう言葉を続ける。

次回の視察は半年後だぞ。やれるのかやれねえのか。選択の余地は無ぇ

なるほど。それは確かに選択の余地はありませんな。
松尾のためにも、この決行日は遅らせる訳にはいかない。だから田中一郎も決意する。

1か月後、2月1日。脱獄を決行する

ついに決行日が定まりました。
果たしてそれまでに全ての課題がクリアされているのだろうか!?
決行してからの課題は随時その場でどうにかするにしても、事前に出来る準備は終わらせておかなければいけない。
ヘリのロックに関しては、まあ最悪車輪部分を破壊するなりすればよさそうだ。最終的に捨てるわけですし。
だが問題はやはり船の手配ですな。この部分がどうにもならないと海に出てから路頭に迷うことになる。
周龍としても毎日のように頭を悩ませているところであろうが・・・うーむ、厳しい・・・
むしろ外の神木さんたちが動いた方がいいのではないだろうか。さすがに外国のギャングと短期間で繋がるのは難しいか?うーむ。



第143房 会議  (2014年 10号)


囚人リク版3マッスルズ結成!?
というわけで、レノマさんだけではなくリクと史郎さんも合わせてのマッスルポーズ。
えらく楽しそうというか幸せそうな史郎さん。リクも小さくはあるがそれなりに筋肉あるようですな。タフなだけある。
そしてその3人に混ざろうとする田中一郎とそれを止める椿
ある意味この2人がマッスル3人より目立って見えるのが何ともはや・・・凄いカラー絵だ・・・!!

さて、本編。

脱獄の日は2月1日と定まった。
1か月後のその日を決戦の日と定め、備え整えていくことになる。
いよいよ脱獄と言う絵物語が現実のものとなろうとしている。さすがに動揺の色を隠せない一同。
あのクールな椿であっても汗をにじませるほどである。緊張しますなぁ・・・
というわけで、天野がその緊張を解すように声をかける。そんなに死ぬかも死ぬかも思ってっと本当に死んじまうぞ。

バイクって知ってっか?
面白ぇ乗り物でよ。一直線に遠くを見てりゃどこまでもまっすぐ走るんだよ。
けどよ、ビビッて足元しか見てねえとすぐにすっ転んじまう。
怖えけどよ。気持ち持り上げていこうや

確かに天野のバイクの乗り方はかなり危ない。命知らずな行為に思える。
いや、肝心なのはそこではありませんな。どちらかというと怖がりな方の天野が元気づけようとしている。それが有難いのである。
松尾や椿のように会いたい人がいるわけではない。
史郎さんのように果たしたい夢があるわけでもない。
親友のために共に行くと決めただけで、外に出る目的があるわけではない。それなのに同じように頑張っている天野。立派である。
まあ、早くシャバの女の子と会いたいという目的は当然あるわけですが・・・愛ちゃんはどうしたんだ。

ともかく予定は定まったので、ここから当日までは課題を取り除くことを考えていくこととなる。
今残された大きな課題は2つ。
1つは海外へ逃走するための船の調達。これは引き続き周龍に任せることとなる。
もう1つはヘリのロックをどうするかだ。これに関して現段階での田中一郎の見解は――

お手上げだ。みんなのアイデアを募りたい

おや、今まで一人で様々な答えを出してきた田中一郎がそんなことを言い出すとは珍しい。
まあ実際一人で考え込むよりは皆でアイデアを出し合った方が閃くことは多いですしねぇ。船の件も話し合ったらいいのでは?

椿が撮影した写真を見る限り、ヘリのロックは鍵穴もない。完全な電子ロックであるというのが分かる。
元々鍵屋で、開錠の心得がある椿だがさすがに電子ロックはお手上げの様子。
スラムでは電子ロックの鍵なんてなかったようですし、これは仕方がありませんなぁ・・・

さて、ここで皆で一堂に会して頭を悩ましているところに近付く影がある。
いや、近づいているのは通風孔。パイプ越しに聞こえてくる一同の会話を盗み聞きしようとしているのだ!!
脱獄の決定的な情報を聞き取られてしまう・・・そう思ったところで立ち上がるのがスライスデビル・沢田拓児。
なんだかやたらとキリリとしたカッコイイ顔になっている。お、おお・・・?

場所を変えようぜ。ここは破滅の匂いがする

危険な匂いを嗅ぎつける沢田。物凄い嗅覚である。
その沢田が近づいてくる気配を察してすぐに姿を潜ませる丸井もなかなかの感覚の持ち主である。
むむむ、沢田の意外な活躍も含め、面白いことになっておりますな。影の対決といったところでしょうか。

沢田の言葉に従い場所を移す一同。
ここならばパイプもないし、同じような手段で盗み聞きされる恐れはない。
当然、この面子が一堂に会して話し合っている時点で怪しいのだが、それだけでは脱獄の決定的な証拠にはなるまい。
少なくとも脱獄の手段や決行日さえ知られなければなんとかなるはずである。恐らく。

さて、安全なところに移動したので話し合い再開。
なんとか決行日前日までにどうにかしておきたいところである。
が、逆に早すぎても気付かれて交換されてしまう恐れがある。
かといって結構当日ぶっつけ本番で解除に挑むのはありえない。不確定要素はなるべく当日に持ち込まないようにしたい。
というわけで様々なアイデアがでるが、どうにも上手くは行きそうにない。
まあ簡単にこうしたらいいんじゃないかというアイデアが出るなら田中一郎が先に気づいてますわなぁ。
元々頭を使うのが苦手な奴が多いわけですしねぇ。だからこそ思わぬ閃きもあるのかもと期待するのであるが・・・

屋外で話をしている最中、突然の雨。
こりゃいかん。リーゼントが崩れちまうぜと慌てて軒下に移動する一行。
ラグビーの時とか見る限り多少の雨で崩れるような頭じゃないと思いますが・・・まあ、こだわりは大事ですわな。

雨を見て木工場に来る前の農作業について思い出す松尾。
作物には雨がありがたい。雨が降れば作物も育つ。そうすれば出荷できない形の悪い作物も増え、それが飼料になる。
結局最終的に喜ぶのは豚となるわけだ。ふむ、風が吹けば桶屋が儲かるって話ですな。
言いかえれば雨が降ったら豚が喜ぶになると。豚・・・豚ねぇ。

この天野の言葉がヒントとなったのか、田中一郎が口を開く。
ヘリポートのあのロックと同じものを極楽島で見たことはないか?と。
その問いに答えたのは松尾。そう、先ほどの話に出た農場でのことである。

農作業場にはパッションフルーツを育てるビニールハウスがあるんですよ。
その屋根が可動式で、折り畳んだ屋根をロックしていたのが同じものでした。

ふむ、面白い話でありますな。
田中一郎もこの話を聞き、いけるかも・・・しれん・・・と何か閃いた様子。
一体何を思いついたのでしょうか?
農場・・・豚の繋がりもあり、期待できるのは高木さんの存在。
高木さんならば農場の電子ロックの解除とか詳しいことも分かるかもしれない。
けれど、屋上のヘリロックが同じものとは限らないし・・・うーむ?どういう話となるのか。

次回も全体会議が続きそうな感じですが、ヘリロックの件は解決しそうですね。
後は船の手配だが、これはやはり難題ですなぁ。果たして周龍だけで解決できるのであろうか・・・

そして脱獄組は知らない大きな課題。動向を探るために動いている丸井の存在をどうするかですな。
こちらは沢田がどうにかしてくれると有難いですな。
密かに動き、処理をする。その過程で沢田も倒れるなり捕まるなりすれば脱獄組としては喜ばしいことになる。
まあさすがにそうは上手くはいかないでしょうけどね。イケメンとなった沢田は実に手強そうな様子でしたしね!!



第144房 血杯  (2014年 11号)


仲間たちの会話から閃きを得た様子の田中一郎。
突然の雨はあがり、太陽が姿を見せようとしている。
その光指す空の下を歩く田中一郎。また光を浴びようというのか・・・!?

レノマ・・・今月末に刑務所の行事はないのか?

顔の前で両手を妙な形に決めて尋ねる田中一郎。なんだ、考え事するときのポーズなのかこれは?
いやまあ、確かに考え事する時って指を回したり妙な構えになることはありますけどね。うん。
それはさておき、レノマサさんが言うには月末に全棟対抗野球大会があるらしい。
ほう、それは是非とも参加しておかねばいけない行事でありますな!!

野球大会は楽しみだ。しかし今は脱獄のことを優先しなければいけない。と、当然ですね。
で、田中一郎の更なる質問。備品室に家庭用品はあるか?とのこと。
これに関してはひと通り揃っているとの答え。これを聞き、田中一郎はしばし考え・・・

見えた。こうだ

相変わらず奇妙なポーズで作戦が思いついたことを示してくれる田中一郎。
その内容は読者には分からない。が、何やら凄いらしい。
そしてどうやらこの作戦を成すには大勢の力が必要となるようだ。誰か1人が働けばいいというものではない。
かなり大掛かりな作戦らしいが、果たして上手く行くのだろうか。その不安についてはリクが保証をしてくれる。

ここから飛び立つにはこれしかないよ。
今までも1度だって、おっちゃんが間違ったことはない。いこう。これで

リーダーの力強い承認を頂けました。これならもう異論を挟む余地はありませんやね。
そしてここで進み出てきたレノマさんはこう述べる。

この作戦は固い結束が必要だ。裏切りは許さねぇ

まさにその通り。となれば、誓いの盃を交わすしかありませんわな。そう、血の盃だ

レノマさんから刃物を借り、自分の手の甲を斬りつけ、血を絞るリク。
なんというかすっかり自傷に躊躇いのない子になってしまいましたなぁ。頼もしくはあるが悲しくもある。
そして刃物はレノマさんや椿へと回っていく。
受け取った刃物で傷を作り、リクが広げた手の上にそれぞれの血を落としていく。
なるほど。さすがにこの人数では2人や3人でやっていたように組み合って飲み交わすという手法は難しいですわな。
血を垂らし、一度リクの掌の中で混ぜ合わせてしまおうという話か。
天野や松尾だけではなく史郎さんも痛そうな顔をしているのが何だか可愛らしい。

沢田はアホらしいということで参加せず。
残る8人の血を混ぜ合わせ、各々の手の甲に擦り付ける。そしてそれをそれぞれが口へと運ぶ。

行こう。必ず東京へ

ついに脱獄メンバーによる固めの盃が交わされましたな。
これに参加することのなかった沢田はまあ、予定通り途中で争い別れる流れとなりそうでありますな。

さて、今日も備品室に忍び込んでハンググライダーの製作に取り組むリクとレノマさん。
いちいち去る前に分解して片付けなければいけないのは面倒ですなぁ。まあ仕方がないけども。

備品室と言えば田中一郎が訪ねていた家庭用品。
どうやら電池などを用いて何か作る必要があるようだが何だろう。田中一郎も詳しい作り方を知らないらしいが?

さすがに専門的な知識が要りそうなものを作るとなると素人には如何ともしがたい。
というわけでその知識がありそうな人物の所に足を運ぶ2人。その人物とは・・・須藤くん。久しぶりの須藤くんだ!!
しかし久しぶりの登場なのに早速イジメられている様子の須藤くん。見るからに大人しそうだしなぁ。無理もないか。

おい!弱い者イジメするな!!

相変わらずこういう光景は見逃せないリク。
例え見知った顔でなかったとしても飛び出していったことは疑いようもない。
そして見開きで決まるレノマパンチ。さすがボスは頼りになりますなぁ。

お前らもよく覚えとけ。この須藤は俺のダチだ。次やったら殺すぞ。

ほほう。これは嬉しいお言葉でありますな。
これで須藤くんもしばらくはイジメられるようなこともありますまいて。良かった良かった。

さて、それはさておき須藤くんには用事があって会いに来た2人。その用事とは――

遠隔操作型の発火装置の作り方を教えてほしい

ほう。そう来ましたか。
須藤くんはハッカーの経験はあるようだけど、そういうことも詳しかったりするのだろうか?
ソフトとハードでは色々と違いそうだが・・・まあ、読書家だしそういう知識を持ってる可能性はありますかな。
しかしその発火装置をどのように使うつもりなのか。
印象的にはボヤ騒ぎを起こして看守の目を引き付けるためのように思える。
でもそんなの置いてあるの発見されたら警戒されることになりそうだしなぁ・・・むむむ?
それとも発火装置を作動させてスプリンクラーを動かすのが目的だとか?
スプリンクラーが動けば農場のビニールハウスの屋根が締まって電子ロックの解析が出来るようになる!!
うーむ、繋がっているようで繋がっていなさそうな推論だ。よし、分からん!!



第145房 偶会  (2014年 12号)


元同房の須藤くんに尋ねるのは遠隔式発火装置の作り方。
当然これは脱獄に関わるものである。
その脱獄に関わること――協力することに少し逡巡する須藤くん。

何に使うのかわかんないけど・・・僕が教えれば脱獄の計画が進む。
でも同時にそれはこの2人が、いや脱獄するみんなが危険な道を歩むのを助けるということ
だから、できれば・・・教えたくない。

そのように考える須藤くん。
しかし今更この2人の決心を止められるはずもないと思い直す。
まあ、そのこともそうでありますが、この2人が須藤くんから聞けなかったからって諦めるはずはないですしねぇ。
より危険な道を通ってしまうよりはここで教えておいた方がまだいいって話ですわな。

ヘリのロックという課題のために動くリクたち。
一方の周龍は最大の課題である船の手配に相変わらず頭を悩ませている。
船のことを考え過ぎてフとネが続いていれば何でも船に聞こえてしまう状態だ。タフネス!!

そんな周龍に近付く丸井。相変わらず凄い体に胡散臭い笑顔だ。
その丸井に対し、弱った周龍は相談を持ち掛けようとしてしまう。おぉ・・・!?
海外のギャングとのパイプを持っているかどうか尋ねる。
幸い丸井は弱小ギャングという設定なので繋がりはないと答えてくれた。おかげで致命的なことは聞かれずに済んだが・・・危ういな。

最大の課題を抱える周龍。弱ったところに近付く丸井。
早いところ何とかしないと危険なことになりそうですが・・・
どうでもいいが、唇ふるわせるな丸井。昔はよくやったもんだなぁと懐かしく思うじゃないか。

さて、発火装置の作り方を無事に聞くことが出来たリクたち。
須藤くんはさすがに読書家というか何というか。危ない知識も色々仕入れていそうだなぁ。

早速今夜から作成作業に移る。
かと思いきや、どうやら備品室に存在しない材料が要る様子。
細くて強いピアノ線。それが必要なのだが備品室にそのようなものはない。何度も行っているからわかってしまっている・・・
そう項垂れるリク。しかしレノマさんにはそのピアノ線のようなものに心当たりがあった。

安心しろ。持ってる奴がいる。
テメェ手にワイヤー仕込んでんだろ。よこせ

なるほど。確かに沢田のワイヤーならば条件に適いそうである。しかし気軽に取り外せるものなのだろうか?
まあ、気軽に外せる物じゃなくても奪っていくつもりで喋ってそうですけどねレノマさん。

知ってんだぞ。
テメェが独居から解放されたのは看守殺しの証拠の凶器が見つからなかったかららしいな。その左手に仕込んだワイヤーがよ。
なんなら手首ごとぶった切って看守にそのワイヤー渡すか。
田中のおっさんを人質にとってるからっていい気になるなよ。こっちはいつでもテメェなんざ終身刑に追い込むこともできるんだぜ。

沢田は脱獄の件でレノマさんたちを脅している。
が、逆にレノマさんも沢田を終身刑に出来るだけのネタを掴んでいるというわけだ。これは良い脅しですな。
そのように突き付けられると、沢田は顔を歪めて非常に悔しそうな顔をする。
本人も分かっているようですな。分が悪いのはどちらであるか・・・

協力するしかねえんだよ

ワイヤーの仕込んだ左腕を踏みつけられ、そのように言われる沢田。
うーむ、非常に屈辱を感じていそうですなぁ。
沢田には丸井と戦って欲しいところでありましたが、この流れは一体どうなるか・・・

一方、田中一郎は松尾と椿を連れて農作業場の見物に向かっている。
松尾が前にいた農作業場はパッションフルーツを作っていたらしい。シャバで高く売れるのだそうな。ほう。

ここのフェンスは電流も流れていないんだな。基礎もゆるくなってる。いけるか・・・一瞬でいい。外せれば・・・

一体何を企むのか脱獄王。
野球大会と絡めてこの農作業場のロックをどうこうしようというつもりらしいが・・・むむむ?

田中一郎の企みはわからないが、ここではそれよりも大きな問題が発生する。
松尾が曲がり角でぶつかった看守。その顔は・・・椿が屋上の下見に出かけた時に鉢合わせた顔・・・原田看守だ!!

どうやら一瞬すれ違っただけでは気付かれなかった様子。
が、どこかで会った気がするとまでは感づかれている。
うーむ、ここで原田看守が出てきてしまいますか・・・この邂逅はどのような展開を意味するのか・・・

看守との対決はこれまでにもありましたが、どれも一筋縄ではいかないものばかりでした。
そして原田看守は他の看守とは違い、何やら怪しげな雰囲気がある。
仕事熱心という感じはしない。が、逆に何か探っているかのような気配はある。
もしも原田看守が反鬼道院派の人間であるならば強力な支援者となるのだが・・・そうは上手くはいかないか?
気になる展開であります。まだまだ気が抜けないぜ。



第146房 的中  (2014年 13号)


農場を偵察していた田中一郎たちが戻ってくる。
リクが鼻血を流していたのに目敏く気付く田中一郎はさすがの観察眼というか気遣いというか。
それはさておき、やはり農場で使っているロックは屋上のものと同じらしい。
ふうむ、やはり事前に同型のロックを調べようという話なのだろうか。

それにしても田中一郎は基本的に仲間を下の名前で呼んでいるんですな。
リク、レノマだけではなく陽平、智広と呼んでいる場面が見受けられる。
まあ沢田は仲間として意識してないから下の名前で呼ばないでしょうけども。

順調に計画は進んでいる。
そのように思えたが、実は問題も発生している。椿が屋上の下見に行った時にはち合わせた看守に会ってしまったのだ。
下見の時はメガネを外していたし、マスクもしていた。何より看守が無反応だったりバレてはいないだろうと田中一郎。
そうだといいんだけど・・・という感じで黙りこくるリクたち。
そんな状況で動き出すのはレノマさん。いきなり史郎くんのリーゼントを手で潰しだしたのだ!!ぐしゃ。もみもみ。

おどれ・・・何を・・・何をするんじゃウラァッ!!

簡単には崩れない、強固なリーゼントかと思ったらそうでもなかったんですな。
しかしいきなり何をするのか。
どうやらリクたちに言わせると重い空気、嫌な空気をぶっ壊そうとしたためらしい。
まあ確かに騒々しい感じになったし、これはこれでいいのかな?
嫌な空気を持続させないってのもボスとして大事な資質であるのかもしれませんな。

さて、発火装置の作り方と道具を確保できたので早速備品室で製作に取り掛かる。
結局あの場で沢田からワイヤー回収したってことなんですかね?

それはさておき、リクは発火装置を作り終えてから重大な問題に気付く。
この発火装置は農場で使うのだが、80階のこんな所で作ってどうやって地上の農場まで持っていくのかということだ。
ふーむ、ハンググライダーのように決行日に使うわけではないし、持ち出しには確かに問題がありますわな。
木工場からノコギリを持ち出した時は天野のリーゼントに仕込んでいた。
しかしノコギリとは厚みが違う。同じ手は使えない。さすがに史郎さんが巨人でもそれは同じである。
ならばレノマさんの後ろ髪に括りつけたらどうだろうか。発火装置のモジャモジャ感が似ているし誤魔化せるかも・・・!?

髪に紛れさせるのは置いておいて、別の案。
発火装置を木とか葉っぱでカムフラージュしてロープにくくって地上の植え込みに下ろせばいいのではないか。
リクのその意見に、お前脳みそ増えたんじゃねえのか?とレノマさん。
珍しいお褒めの言葉。と思いきや、案自体はボツを食らう。まあ、発想の量が増えただけ成長はしてるってことか。
さすがに地上80階で風も強い中、地上にまでロープを垂らしたら壁に打ち付けられてボロボロになりますわな。
ならば地上までレノマさんがロープで降りて行くとか。どんだけ時間がかかるんだよって話だけども。

ならば炊場の森田に頼る。そう言いそうになったリクであるが、それも不可能である。
退院して刑務所に戻ってきたがどうやら他の工場に飛ばされたらしい。ふむ。
それに例え炊場に戻っていたとしても、森田は自分たちを救うために大ケガまでしたわけですし、もう迷惑はかけられませんわなぁ。

あ〜・・・むしろ堂々と小脇にでも抱えてりゃ見逃してくんねえかな

考えあぐねて飛び出したセリフ。
しかしこれが思わぬヒントになったらしい。どうやら1度リクの言うように堂々と小脇に抱えて持ち運んだ例があるようだ。

須藤だ。あいつの学習意識の高さは知ってんだろ。配役してしばらくあいつの購入した本は木工関係だらけだった。

ここで再び須藤くん登場。単なる読書家ではない。その学習意識は仕事にも及ぶ。
谷村看守部長にも本から学んだ知識を伝えて生産性向上について提案したりしている。
うーむ、スラムの住人でさえなければ将来熱心に仕事に取り組むタイプの人間になれていたでしょうにねぇ・・・
それはさておき、谷村看守部長に私本で購入した本を見せましょうと提案する須藤くん。

許可こそ必要だったが翌日、須藤は雑居房から木工場に堂々と本を持ち込んだ
その中身をくり抜いてその中に発火装置を入れれば運べるぞ。木工場にさえ持ち込めば持ち出しはなんとでもなる。

なんとでもなるものなのだろうか?
その辺りは疑問でありますが、まあレノマさんができるというのならできるのでしょう。

俺は隠蔽のプロ。このムショ最強の調達屋だぞ

その通りでありましたな。炊場の監視が強くなって外との物資のやり取りは難しくなったが、それでも隠蔽のプロに違いはない。
また谷村看守部長は騙されちゃうのかとか思わないでもないが、まあそういうキャラだし仕方がないよね。

さて、今日も昼になれば一堂に会する脱獄組。
椿はメガネのネジがゆるんでいたのでドライバーを借りてからくるらしく、遅れる。
そのため単独で歩いている所を看守に話し掛けられる。
それもただの看守ではない。原田看守だ!!

どうやら農場ですれ違った時からどっかで見たことがある気がすると気になっていたようだ。
これはヤバイ。メガネまで外されてしまいましたよ。
こうなればやはり気付かれてしまう。あん時の山本じゃねえかー!と。
でも即座に看守に化けていたとは気づかれていない。囚人服を着ているだけだと誤魔化すことが出来れば・・・いや、難しいか。

逆・・・お前看守に化けた囚人か

やはり気付かれてしまいました。そりゃ看守が囚人に化ける理由はありませんものねぇ。
椿も何も言えずに逃げ出そうとしたりしてるし、怪しいことこの上なかったですし。
いやまあ、どう言い逃れすればいいのか私にも分かりませんでしたが。

囚人が看守に化けて歩いている。これは大問題でありましょう。
どういう目的で、どういうルートで看守の服を手に入れたのか。問い質されることは目に見えている。
普通ならばこれで脱獄の夢は潰えることとなるのだが・・・さてはてどうなりますか。
ここはやはり原田看守を説得するしかありますまい。
賄賂は通じやすそうな相手だが・・・いや、それ以上に何か裏のありそうな人物であるが・・・
実は俺も看守に化けた囚人なんだよとか言い出したりしてくれたら面白いのだが、さすがにそれはないわな。さすがに。



第147房 封殺  (2014年 14号)


椿の正体が発覚した!?問い詰められる椿。これはまさに絶体絶命!!
荒事ならば落ち着いて対処できる椿であるが、口はあまり上手くないらしく、誤魔化すことはできないようだ。
田中一郎やレノマさんならもう少し何とかしたかもしれないが・・・さすがに人違いは通じないでしょう。
山本と椿は別に存在すると言い張ればひょっとしたらひょっとするかもしれませんが。

ともかく言い逃れはできそうにない。
というわけで、原田看守の手を振り払って逃げようとする椿。
しかし簡単に逃がしてくれる相手ではない。焦った椿はバックハンドブローで殴りつけようとするが・・・原田看守はこれを躱す!!
そして椿の顎に向けて鋭い左アッパー!!
が、椿の方もこの鋭い一撃を躱す。そして体勢を低くして一気に離脱。うーむ、息を呑むような攻防だ。

見た感じ原田看守もボクシングの心得がありそうな感じですな。
武闘派の看守・・・勘もなかなか鋭いし、これは厄介な相手に見つかったものです。
そしてさらに厄介なことに、原田看守と揉めた様子を沢田に目撃されてしまっていたりする。こ、これは・・・

焦って逃げ出した椿は脱獄組の集合場所へとやってくる。そして暗い表情で謝罪。

すまん・・・しくじった・・・昨日言ってた看守にバレた・・・
バレたんだ。終わりだ。この脱獄は失敗した

肩を落としてそう述べる椿。看守は振り切って逃げただけだとも正直に伝える。
その話を聞き、どこでだ陽平!!と声を張り上げる田中一郎。
田中一郎のその様子を見てほかの面々もこれはマジの話なんだと理解する。おやおや。
しかし田中一郎が声を張り上げたのは別に椿を責めてのことではない。気づいたからだ。沢田がいないことに!!

沢田はすでに脱獄組とは連帯関係となっている。
この脱獄が失敗すれば自身にも飛び火する。放置できる状態ではない。
それ故、即席の刃物を用意しだす沢田。ワイヤーは提供しちゃってありませんものねぇ。別の武器を用意するしかないか。

口封じだ。こいつで頸動脈をかっさばく
監視カメラの無ぇこの通路を選んだお前の敗北だ。

殺害場所を選び、原田看守とすれ違う一瞬で殺害に及ぼうとする沢田。
しかしそこで間に割って入り原田看守を救う物の姿があった――だれあろう、椿だ!!

身を挺して原田看守を守った椿。
原田看守はこれに恩を感じて見逃してくれる・・・何てことはさすがにないですわなぁ。
相も変わらず絶体絶命の状況。一体どうなるのか。
それこそ沢田のように口封じするしかないような感じでありますが・・・
でも監視カメラがなくても調べたら特定される可能性は高いでしょうし、それはさすがになぁ。

というわけで、やるのであれば賭けをしての口封じになるのではないかと思われる。
どうやらボクシングの心得がありそうな原田看守。椿とボクシング対決でもしたらいいのではなかろうか。
そこで戦いによって友情が芽生えてタイマン張ったからダチになってアレやコレって話で。どうだろうか。ダメか!?



第148房 寝台  (2014年 15号)


自身の体を盾にして。沢田の"看守口封じ"を防いだ椿。
思った以上に凶器は長かった。こりゃ椿のダメージも相当なものがありそうだ。

それはさておき、この状況に戸惑う原田看守。今俺は命を狙われたのか!?こいつに!!

さすがの原田看守でもいきなり囚人に命を狙われるという展開は経験がなさそうでありますな。
囚人に命を狙われ、そして囚人に命を救われる。戸惑っても仕方がない状況である。

ここで別の看守が登場。その気配を察した沢田はいち早く逃亡する。負傷した椿を置き去りにして。
駆け付けた看守たちは椿が原田を襲ったのかと思い、痛めつけようとする。
が、原田看守はここで椿を庇う。ただの事故だと。そして医務に連れて行ってやってくれと述べる。ほう・・・!?

とりあえず詰問はされずに済んだ様子の椿。
しかしそんなことは知らず、昼の休憩時間が終わってしまった沢田達。
沢田にしてみれば看守の口封じに失敗したこと――殺しの感覚が鈍っていることが口惜しくて仕方がない様子。
どうにかして出たい。が、もはやそれも叶わなくなったのかと無念そうな様子。おやおや。
そしてその沢田を睨み付けているのがレノマさん。
午後の作業開始ギリギリで戻ってきたから結局何があったのか聞き出すことができずにいる。
椿も戻ってこないので何が起きたのかサッパリわからず、不安だけが募る状況である。怖いなぁ。

もちろん脱獄に関わっているメンバーは皆不安に感じている。
田中一郎の焦った様子を見た天野。これはもう加刑は免れられないと震えている。そのぐらいで済めばいい方ですがね・・・

椿・・・オメェ・・・なんで沢田の野郎を止めになんか行ったんだよ・・・
口封じにそのまま殺らしときゃあ・・・殺らし・・・
くそ・・・何考えてんだ俺ぁ・・・

追い込まれている様子を見せる天野。
思っちゃいけないことなのだろうが思わざるを得ない。追い込まれた人間らしい心情を見せてくれています。
まあ脱獄の件は確かに口封じできるかもしれないが、看守殺しなんて徹底的に調べられるだろうからなぁ・・・
そうなると近い時間で接触した椿が疑われることになるし、結局難しいことになったのではなかろうか。

リクも不安を感じている。が、自身への不安よりも先に椿がどうなったか気にしている辺りがさすがと言えましょう。
そういう考え方なので、看守ならば椿が今どうなっているか把握しているはずという結論に行き着く。
確かに点呼をとっているのに椿がいないことを何とも思ってないってのは、つまりそういうことであるわけか。

というわけで、思い切って椿がいないことについて尋ねるリク。
谷村看守部長によると椿は昼休みに事故にあって病棟に運ばれたとのこと。
ふむ、これは少し安心できそうな情報ですな。
捕まったわけではなく病棟に運ばれたのであれば、これはひょっとしたら・・・なんて期待が持てそうな話である。
しかしどうでもいいが、谷村看守部長の指さしポーズが気になる。小指立てんな。

病棟。久しぶりに愛ちゃん先生登場。本当に久しぶりだな。
もちろん手当をしようとすれば椿の傷は鋭利な刃物で刺されたものであることは分かってしまう。
が、それに言及する前に原田看守が病棟を訪れる。事情聴取がしたいとのことだ。

怪我人を守ろうとする愛ちゃん先生。しかし原田看守は警棒やスタンガンといった道具を置き、傷つける気はないとの態度を示す。
帽子を取り、日の光に照らされた原田看守の表情は真剣なものであり、悪いことはしないように思える。
それを感じたのか、愛ちゃん先生も原田看守の事情聴取を認めてくれることとなりました。ほほう。

日の光が差す中、目を覚ます椿。傍らにいるのは原田看守。
命を救い、良い関係が築かれることになるのか。そのようにも思える流れでありましたが・・・
帽子を被り直した原田看守の表情はやはり看守としてのそれのものに思える。

脱獄だな。極楽島をなめんなよ

これは尋問が始まってしまいそうな流れでありますな。
はたして椿はこの窮地を逃れることができるのだろうか。
拷問までは発展させるつもりはないようですが、脱獄が判明したらそうも言ってはいられないでしょう。
原田看守はさておき、上の判断としては脱獄に関することは協力者も含めて洗いざらい吐かせようとするでしょうからねぇ。
それは何としても避けないといけないところであるが・・・どうなりますか。



囚人リク 18巻


第149房 激情  (2014年 16号)


病棟の密室にて非情の尋問開始!!
命の恩人であったとしても脱獄は許されない。さすがに見逃してくれる話にはなりそうもないか・・・
でもまあ考えてみると成功率は非常に低いわけですからねぇ。
もしかしたら失敗してその場で殺される可能性もある。
それならば事前に潰して刑期の延長で済ませた方が命の恩人に報いることにはなるかもしれない。
そんなことを考えているのかどうなのか、原田看守の尋問が始まる。

仲間は何人か。その質問に答えない椿。仲間を売る気はないということだ。
だがその答えを聞かずに己の推測を口にする原田看守。

脱獄の準備をするには深夜しかない。現に非常階段ではち合わせた時も。
帰りは仲間の待つ舎房に戻ったんだろ。つまり、最低でも同房の者は全員グル

まあそうなりますわな。鋭い。そして続いての質問は決行はいつかというもの。これも椿は答えないが、原田看守が推測を始める。

あの時お前は非常階段を登っていたな。屋上へ向かって。
屋上の下見・・・そして最終目的はヘリの調達か。
いや、脱獄発覚時ヘリは全機出動する。となると別のヘリが必要だ。
決行は視察委員がヘリでやってくる時。1月31日から2月4日の間だな

うーむ、見事に看破されてしまっている!!
まあ、屋上であったという部分が根拠となっているだけにこの推測はそこまで難しいことではないか。
とはいえ上手く追い込んでくるものですなぁ・・・
追い詰めつつ、再度椿に仲間は何人だと自白を迫ろうとしてくる。

違う・・・違うんだ。俺がみんなをそそのかした
脱獄だって未遂だ。俺が悪いんだ。だから・・・俺だけのせいに・・・

もはや脱獄の件について言い逃れはできない。なので仲間だけでも救おうと首謀者であるフリをする椿。
しかしそれは罪を大きく被ることである。つまりそれは・・・

妹に会いたいか。履歴を調べた。それも叶わぬ夢となったがな

思い浮かべた妹の姿。そこで動揺して出来た心の隙に効果的に叩き込まれる原田看守の言葉。これは・・・キツイ。
シーツを強くつかんで悲しみを堪える椿の姿が哀愁を窺わせる。

椿は隕石で両親を失い妹とたった2人で生きてきた。その妹と離れ離れになっているのはどれほど悲しいことか。
原田看守は言う。だったら犯罪を犯さなければいい。そうすれば今も2人で一緒にいられた、と。

あんたに何がわかる!!
スラムの人間じゃないあんたに・・・
隕石の前までは・・・スラムの壁ができる前までは・・・みんな・・・仲よく生きてたじゃないか・・・
それなのに・・・たった5mの幅の壁ができただけで人は人に優しくできなくなった・・・しなくなった。
スラムの人間と外の人間と何が違う。ある日突然理由もなく差別された。
それは悪いことと知っているくせに外の人間は無視をした。無視をし続けたんだ。
大人は汚い。あんたもそうだ。
苦しかった・・・助けてほしかった・・・

悲しみを表情にだし、そう述べる椿。
確かに椿の過去は涙なしには語れないものがありました。
犯罪を犯したといってもアレは生き延びるためにも仕方がないと言わざるを得ないし情状酌量の余地はあった。
しかしそれが通じないのがスラムの人間に対する歪んだ法である。
そしてその歪んだ法は他のスラムの人たちにも降りかかっている。
助けを求めたのに助けはこず、涙を流す少年たち。大人を信じられなくなっても仕方がないのかもしれません。

涙を流す椿に対し原田看守は静かにこう述べる。

明日退院できるそうだ。
仲間と話し合え。そして脱獄を中止しろ。そうすれば見なかったことにしてやる
中止しなければ即、所長報告の上全員刑罰に処す。明後日に返答しろ。

ふむ、やはりそこが妥協のラインでありますか。
脱獄を見逃すことはできない。強行されて殺されるような事態になるよりも中止を促す方に回ったわけですな。
その妥協点を告げて立ち去ろうとする原田看守。しかし立ち去る前にひとつ質問がある。なぜ俺を助けた。と。

これ以上汚れてしまったら、笑顔で美雪に会えないと思った・・・

純粋な答えである。私欲や打算で守ったわけではない。
いや、自分の心を守るというのが私欲であるというのならそうともいえるのかもしれないが・・・
とにかく、そういった心の声に従い、原田看守を助けたのだという。
それを聞き、何かを堪えるような表情をする原田看守。感銘は受けてくれたようであるが・・・

俺は看守だ。奴は囚人だ。でも正直だった。でも人だった・・・
アオリが見事にはまっております。
うーむ、何とも悲しい尋問でありました。
さてさてこの原田看守の妥協を受けて脱獄ナインはどのように動くのだろうか。

中止を報告すれば見なかったことにすると言っている。
けれども、中止したと口で伝えるだけで納得してもらえるのだろうか?その点は疑問が残る。
中止したふりしてこっそり決行したらどうなるか。
視察委員が来ている間は屋上までの道で監視してそうな気がしますなぁ・・・

ならば原田看守の口をふさぐ方向に行くのか?
殺すのは反対する人が多い。けれども他の看守のように買収や脅しによる押さえつけはあるのかもしれない。
しかしそのどちらも効く相手かどうかはわからないわけで・・・うーむ。
説得できれば一番なのであるが・・・どうなりますかねぇ。



第150房 内紛  (2014年 17号)


脱獄を中止しなければ所長に報告の上厳罰に処す。
中止にしなかった場合は見なかったことにする。

脱獄計画に気付いた原田看守が述べたのは以上の条件。
その条件をもとにどう動くべきか脱獄組で激論を交わすこととなります。

それにしても有無を言わさず懲罰ではなく相談するための時間までくれるとは温情採決でありますなぁ。
椿は原田看守はN棟の看守じゃないから脱獄の痕跡が発覚しても管理責任は問われないと述べる。
が、もちろんそれだけではありますまい。
田中一郎が言うように沢田から命を救った礼というのもあるはずである。

極楽島の看守としては珍しいタイプだな

確かに今までの看守とは毛色が違う感じがありますね。厄介な相手である。

明日の昼までに結論を出さなければならない。
中止にしなければ加刑。中止すれば今まで通り。こう考えると中止するのが安全なように聞こえる。
が、中止はねえだろと周龍。むしろなんとか原田の甘さにつけこめないかと言い出す。ギャングらしい発言だ。
そういうことを言われると反論したくなってしまうのが史郎さん。つけこむなら逆。せっかくの申し出だから受けて延期すべしと言う。

ね・・・寝ぼけたこと言ってんなよ!!母ちゃんの寿命は待ったなしなんだぞ!!

それが問題なんですよね。
延期したとなると松尾はもう生きている母に会うことはできないでしょう。それでは脱獄を決心した意味がなくなる。
それに田中一郎の言う通り、中止を受け入れた後は再び脱獄をできないような措置を取ってくるに違いあるまい。
総転房はさすがに脱獄のことを公にせずに行うのは難しいでしょうが、何らかのことはしてくるでしょうなぁ。

天野としては一度バレたと思ってビビッてしまった分、ここは引いてしまいたいという気持ちが強い様子。
うーむ、意見が割れてきておりますなぁ。
そんな脱獄組の会話に今回はしっかりと入ってくるの沢田。自分の意見を述べる。

本当はお前らもわかってんだろ。シンプルにまとまる方法をよ。今度こそ必ず殺す

ハッキリとそう宣言する沢田。だがそれに即座に異を唱える者がいた。リクである。

ダメだ。それは絶対にダメだ。

何も悪いことしてない看守を殺してまで、そんなことしてまでやる脱獄なんてダメだ!!とリクは吠える。
相変わらず子供らしく純粋な気持ちを真っ直ぐに口にする男である。
母ちゃんに会いたい、出たいと叫ぶ松尾に対しても、そんなことして母ちゃんの目ぇ見れんのかと言い放つ。
ふむ。椿が妹に会うためにこれ以上汚れたくないと述べたのと同じ話ですわなぁ。

沢田としてはリクの言葉で自説を曲げる気は全くない。
きれいごとなんてなんの役にも立たない。本当に出たいのであればやることは1つだと述べる。
確かに窮地は凌げるかもしれないが、その選択がどのような結果をもたらすかは分からないですからねぇ・・・
リクとしてはさすがにその一線を超えるのだけは譲れないところである。
バレたからって人を殺してまでやらなきゃならないことなんてあるもんか。

リク「あるもんか・・・ねえ・・・おじさん・・・」
沢田「誰がおじさんだコラ!
リク「テメェのことじゃねぇ!」

地味にコントのようになっている2人。何やってるんだか。
沢田はずっとレノマさんだけに関わっていた感じでありましたが、ここに来て色々と触れ合うことになってきましたね。面白い。

さて、激論が続く中席を外すレノマさん。
何も意見を言わないと思ったらどうやら独断でこの件を処理しようとしている様子。
外にいる神木さんに緊急事態と告げて動かすこととしたようだ。

これしか・・・方法はない。
原田という看守がいる。そいつの帰宅を襲撃して拉致だ。決行日まで監禁しろ。絶対に殺すな

なるほど。殺しはしないものの無力化してしまおうという話でありますな。
脱獄後は無事に解放するわけですし、リクに対しても一応筋は通せる流れである。
まあこの計画そのものを伝えてもリクが納得するかどうかは微妙でしょうが・・・

ムダに共犯になるこたぁねえ。俺1人が汚れればそれでいい。

そのように考えるレノマさん。
考え通り、その日の夜に原田看守に襲い掛かる覆面姿の4つの影。
これで脱獄という秘密は守られた・・・かと思いきやその襲撃者4人を返り討ちにしてしまう原田看守。えぇー!?

椿陽平・・・これが返事か

当然のごとく椿たちが仕掛けた連中だと思ってしまう原田看守。
うーむこれは・・・凄くヤバイことになってしまいましたぞ・・・
温情をかけたのだが裏切られた。そんな気分でありましょう。
襲撃者は殺すつもりはなかったのだろうが、襲われた方にはそんなこと分からないでしょうしねぇ・・・

思った以上の強さだった原田看守。そして追い詰められる脱獄組。
うーむ、これは一体どういう手段で逆転すればいいのか・・・目が離せない展開となってきました。



第151房 絶望  (2014年 18号)


激論を交わしたものの何にもいいアイデアはでずに原田看守への返答の日を迎えることとなりました。
昼休み中に返事を伝えねばならないのに・・・
いや、昨日の話し合いではあえて言わなかったが、レノマさんにはアイデアはあった。
帰宅途中の原田を襲撃して拉致。決行日まで監禁してしまうという裏工作だ。

もちろんこの工作をするのであれば刑務所の外でなければならない。昨晩のうちに行わなければならない。
だから手早く連絡を行い動いたわけであるが・・・結果は失敗。原田看守の強さは想定外でしたなぁ。

拉致のみで殺すわけではないからなのか、レノマさんの工作を非難する者はいない。
まあ、それだけ追い詰められていたということでしょうな。
だからこそ、この工作も失敗したと聞いて落胆は大きい。
何か他にも方法はあるかもしれないと叫ぶ松尾であるが・・・頭脳の要である田中一郎が沈黙してしまっている。

万策は尽きた
しかも原田には恩を仇で返す形になったからな。もはや今更中止にしたとて見逃してもらえねえだろう。
早速舎房に踏み込まれて計画も暴かれる。脱獄絶無を謳う極楽島にケンカを売ったんだ。罰もとんでもねえもんになるはずだ。

周龍のその言葉を聞き、まず初めに爆発したのは天野。
天野は中止にして見逃してもらいたいと主張しておりましたし、そういう言葉が漏れるのは仕方がないか。
しかし中止はないと主張した周龍もさすがにここからずっと出られないとなると爆発せざるを得ない。
船のことを考えなくてよくなったとかそんな呑気な発想にはなりませんわなぁ。さすがに。

やけを起こすなと止める田中一郎。それを泣きながら殴りつける周龍。
一方、松尾は自分に付き合って無謀な脱獄に参加した天野に自分を殴ってくれと頼む
それは別に松尾のせいではない。参加は自分で考えてしたことだ。
それでも今は殴ってもらいたい。少しでも巻き込んだ罪悪感が、これからの不安が紛れるのならば・・・

血の杯まで交わした連中が見事にバラバラになっております。悲しいことだ。
この状況で椿は原田看守の所に向かう。今更行っても仕方ないのかもしれないが・・・けじめは大事である。

原田看守と会う椿。さすがに襲撃された原田看守の態度は硬い。
椿がやったこととは考えていないが、仲間の誰かがやったことなのは間違いないと捉えている様子。相変わらず鋭いなぁ。

大人は汚いと言いながらお前はどうなんだ

これは厳しい言葉ですな。言い返すことが出来ない。
今から所長に全てを報告すると言われても何も言えない。
いや、行動なら起こすことはできる。背を向けた原田看守に凶器を突き立て口封じをする。それならばできる。
説得が無理ならばもうそれしかない。ないのだが・・・やはり妹のことを考えるとそれも出来ませんわなぁ。嗚呼・・・

みんな・・・ごめんよ・・・言い出しっぺのくせしてさ。1番何もしてない・・・

静かに皆に謝るリク。
この言葉を聞き、暴れていた連中もすっかり大人しくなる。
もちろんそれはいい意味で大人しくなったわけではない。絶望的な状況を受け止め、諦観してしまった様子である。
脱獄王も頭を抱えるしかないこの状況。まさにタイトル通りの絶望である。

後は原田看守が所長に報告するだけ。
田中一郎が例の画像を持っていることもあるし、所長に知れたならば確実に重い罰が待っていることでしょう。
だが、所長のもとへ向かう原田看守を呼び止めたのは上司と思われる白井看守部長
原田看守を呼び止め、実はな・・・と何事かを口にしようとする。な、なんだ一体・・・?

絶望的な状態だが、何か思わぬところから救いの手が来そうな感じである。何だろうか。
鬼道院の計画が動き出したのか?今日集まりにいなかった沢田が何かしたのか?
実は職務中の飲酒がバレて原田看守がクビになるとかそういう流れか!?報告前だったのでセーフとかそういう。
いくらなんでもそれはラッキーが過ぎる気がするがはてさて。
何とかこの絶望的状況から脱してほしいものであります。



第152房 暗部  (2014年 19号)


原田は・・・所長に全てを報告しに行った。終わりだ。午後にはやつらは踏み込んでくるだろう。

椿から決定的な話を聞かされるリクたち。
もはや抗う気力もないのか、午後の作業を淡々とこなしながらその時を待つ。
しかしなかなか看守が踏み込んでこないのでいぶかしく思い始めるリク。
木工場に来るのはネジの付け忘れのクレームぐらいなものであり、重大な話は降ってこない。
そうこうしているうちに作業は終わり、夜になる。
舎房の点検がされている様子もない。これは一体どうなっているのだ・・・?

すぐに踏み込まれることはなくて良かったが、どうなってるか分からない宙ぶらりん状態はそれはそれで堪える。
もしかして原田看守は報告を思いとどまってくれたのではないか。そのような甘い期待をする天野だが、椿はそれを一蹴する。

原田は毅然とした男だ。1度チャンスをくれた。そして裏切った。もはや報告を躊躇うほど甘くはない。

短い付き合いだというのにずいぶん原田看守のことを理解しておりますな。
まあ、短くとも濃密なやり取りをした間柄ですしねぇ。

こういうハッキリしない状態は誰よりも好きじゃない男がいる。レノマさんだ。
我慢ならずに直接原田看守に問いただしに行こうとする。こんな時間のムダはねぇ!はっきりさせてやる。

意気込んで原田看守の管轄であるE棟へ向かうレノマさん。
極楽島にはNとSだけではなくE棟もあったのか!?
一体どういう囚人が入っているのだろうか?NとSは未成年とそれ以外なのかと思ったが、年齢以外の区分けがあるのか?
W棟辺りは女性の囚人専用とか。これはありそうですね。

レノマさんはE棟の看守にも知れた顔だったりする。さすがに有名人ですなぁ。
E棟の看守の方から話しかけてくれたこともあり、原田看守に依頼された件の報告に来たと嘘をついて会おうとする。
が、ここで聞かされたのは思いもよらない言葉。

原田は昨日付で辞職した

何と・・・これはまさに寝耳に水な情報である。どういうこった?
レノマさんにこのことを聞かされたリクたちも一体何が起こっているのか疑問に思うばかりである。
天野にしてみればこれはやはり原田看守が同情してくれたのではないかと思いたいところ。
しかしこのまま中止すれば無かったことにってのは日和過ぎじゃないかね。
報告していないだけならともかく、同情で辞職したりはしないでしょうさ。

辞職じゃなかったとしたら・・・

突然そんなことを口にしだすレノマさん。辞職ではないとな?

たまにあるんだ。囚人や看守がな、忽然と姿を消す

なにそれ怖い。
しかもその囚人や看守がどこに行ったのか誰も知らないとか。ホラーな話ですなぁ。
さすが極楽島刑務所。怪談話にもことかかないようですな。いやいや。これはそういうオカルト話ではなさそうだ。
田中一郎は原田看守が一体どうなったのかを考える。

レノマの言葉・・・辞職ではなく・・・どこかへ飛ばされたとしたら・・・
どこかへ・・・どこか・・・あの畑か!!
画像には看守も写っていた。当然だ。囚人がいる以上看守も必要だ。
どうやら定期的にこのムショから送り込んでいるのだろう。それも極秘に!
なにしろあの畑は鬼道院のトップシークレットだからな。
一般の看守は知らない閉鎖性の高い場所なのだろう。おそらく鬼道院と所長ほか数名の幹部の共謀だ。
ではなぜ原田が飛ばされた?偶然の人選か?または懲罰人事か。もしくは・・・俺たちの脱獄を報告したから・・・
いや、それはあり得ない。脱獄を見抜いたのなた大手柄だ。あんな極秘の場所に飛ばされるはずはない。
原田が選ばれた理由はわからない。だがケシ畑説が正解なら昨日所長は原田を呼び出したはず。
原田も同時に報告へ向かっていたとしたら・・・所長室で何があったというのだ!
所長室・・・見取り図にあったあの・・・謎のエレベーターは!?

想像の翼を羽ばたかせる田中一郎。
直属の上司を使って所長は原田看守を呼び出したのだと考える。うむ、ここは合ってますな。
そして、脱獄の報告を原田看守が行う前に他部署への異動を聞かされる原田看守。
怪しげなエレベーターに無理やり乗せられる原田看守の姿を想像したりしている。
よく分からないマスクをつけさせられ、極楽のような気分になれる場所へ飛ばされる・・・うーむ、実に怪しいやりとりだ!!
本当にこんなやりとりがあったのかは分からないが、想像の所長が実に悪そうな顔をしている。

原田は不運にもケシ畑の看守に選ばれた。それは俺たちにとってまさかの幸運。
いや、こんな妄想・・・信じ込むわけにはいかない。所長は報告を聞いていて、明日にでも踏み込んでくるかもしれないんだ!
所長が知ったか否か。それを待ち続ける時間は俺たちにない。
はっきりさせてやる!新たな手を打つんだ!!

ビシッとポーズを決めて覚悟も決める田中一郎。出た!脱獄王のポージング出た!これで・・・イケるのか?

それにしても極楽島・・・おまえの闇はどこまで・・・

ついにこの極楽島の裏の顔。闇の部分が姿をちらつかせて来ました。
囚人だけじゃなく看守まで薬漬けにされている可能性があるのか・・・怖いなぁ。
原田看守は勤務態度とおそらく独身であるって部分がちょうど良かったのかな。
加藤看守も家族がいなければ賄賂の罪でケシ畑送りになっていたかもしれませんなぁ。怖い怖い。

さて、とりあえずは脱獄の件はバレていないんじゃないかと思われる。
が、それをハッキリさせるために新たな手を打つという田中一郎。一体何をしてくれるのか。楽しみです。



第153房 非常  (2014年 20号)


原田看守がどうなったのか、自説を仲間に語る田中一郎。ケシ畑の管理に追いやられたと。
確かにそれならば囚人や看守が突然消える件は納得できる。
しかし原田看守がいなくなったからといって所長が脱獄の報告を受けていないとは限らない。
見つかってから2日も経っているのだし、捕まえにこないということは報告を受けていない可能性が高そうだが・・・

俺たち、泳がされてんじゃねえのか

車座には入ってないものの、すっかり一蓮托生の立場となった沢田。
意見も述べるようになってきました。脱獄したいという想いはこの男も同じですからねぇ。

泳がされているという意見は史郎さんと周龍に一蹴される。
しかし脱獄に関わったメンバーを洗うために泳がしているということはあるんじゃなかろうか?
まあ、田中一郎をはじめ大物がいつも一堂に会しているんだし、そんな必要があるとは思えないか。
それよりも別の可能性が考えられる。脱獄王である田中一郎は自身の経験からその可能性を語ってくれる。

あれは俺が初めて投獄された西骸刑務所だった。
入所後間もなく、俺は弁護士時代にノウハウを買われて所長とは懇意の間柄だった。

やはり手に職あると強いですな。今も昔も確固たる立ち位置を築いている。
そのおかげで昨晩脱獄未遂があったという情報を聞くことが出来た。ほう。
しかし西骸の所長はいう。その動きは事前に察知しており――わざと泳がせていたのだ、と。

察知し把握していたのは私と数名の幹部のみ。
実践を利用した非常事態の対応訓練だ。いやー実にうまくいった。
こうして我々は日々努力を重ねとるわけだ。お前も脱獄など夢々考えるなよ。

どや顔でそんなことを述べる所長。まあ確かにうまくいったわけだし、そういう気分になるのは仕方がない。
しかし後日それを語った相手に脱獄されてしまうとは思いもしなかったでしょうな。どや顔決めただけに恥ずかしい!!

看守の訓練のためにわざと泳がせている。なるほど、そういう可能性もありましたか。
もしくは、未遂ではなく実行犯で捕まえてより重刑を科したいという可能性もあるとのこと。
ううむ、こっちも有りえますな。実行犯となれば即座に射殺も有り得るでしょうし・・・考えたくない話だ。

だが、この仮説は所長に報告が届いたという前提だ。原田が報告してなければ懸念ですむ。
こんな不確定要素を抱えたまま脱獄計画を進めるわけにはいかない。所長が知ったか否かはっきりさせる。

どうやらその方法まで既に考えている田中一郎。さすがである。
その方法とは・・・ウソの脱獄騒ぎを起こすこと!!

夜中に非常ベル鳴らせば全棟で大騒動だ。その際、所長が俺たちの脱獄を知っていれば・・・
324房に看守を急行させ、俺たちの動向を確認させるだろう。まかさ本気で脱獄させるはずはないからな。

なるほど。面白いアイディアですな。
しかしその非常ベルを誰が鳴らすのかが問題となる。ベルは舎房にはない。あるとすれば廊下のベルである。
また椿を看守に化けさせて行かせるのか。そう尋ねるレノマさんに、それはムリだと答える田中一郎。

仮に椿がベルを押したとして、どの場所の非常ベルが押されたかはすぐに特定される。
監視カメラの映像を調べれば誰が押したかはすぐに分かるし、そうなれば何故押したのか問われることとなる。
いくらマスクをしていようと面が割れる上に疑惑を提供してしまう。
報告を無視して更衣室に急行し、324房にまで戻ったとして、更衣室で突然看守が消えれば当然怪しまれる。
そうなればダクトから備品室への逃走ルートのが判明も時間の問題。脱獄計画は発覚することとなる。

ふうむ。なるほどねぇ・・・しかし椿は追い込まれると黙って逃げちゃう子のイメージがつきつつありますな
もちろん機転が利かないわけではない。前の偵察の時だって幅跳びで看守の目をすり抜けたり自分で考えて行動したりしている。
けれども、口で誤魔化すということは不得手なのは間違いない。
レノマさんや田中一郎であれば口八丁も使えようが・・・もしやるなら事前に模範解答を教えておかないといけませんわな。

まあ、今回は椿に行ってもらう必要はない。誰がベルを押すかの問題は既にクリアしていると田中一郎。

今から準備をしてくる。俺たちの運命を決する作戦だ。今夜決行する

今までよりも更に緊張の一夜となりました。
夜。横になってじっと非常ベルが鳴らされるのを待つリクたち。そして・・・ベルが鳴る!!
ベルが鳴らされたのは医務室。
一人の老人が痛みに耐えかねて非常ベルを押してしまった・・・という設定だ。

一郎先生、押しましたぞ!!約束通りベルのボタン!完璧に押しましたぞぉぉぉ!!

なんとここで信造さんが出てくるとは・・・何だこのやったぜ感は!!
なるほど。信造さんであれば脱獄組とはそこまで関わりは強くない。それでいて確かに役割を託せる人でもある。
いつか活躍の機会があるのではないかと思っていたが・・・何だかうれしいですなぁ。

さて、ベルは鳴った。ここからが本番である。
看守たちが来なければ計画はバレてないということ!!
なだれ込んで来たら、リクたちは極楽島に泳がされていたということ。それは全ての終わり。全てが終わってしまう・・・

来るなよ・・・来るなよ・・・と願うリクたち。
しかし鏡を使って見張っていた天野の表情はその甘い期待を砕くものであった。
鏡に映し出されたのは、多数の看守が真っ直ぐにこちらに向かってくる姿・・・凄い威圧感だ。

が、その看守たちは324房に一目もくれずに行ってしまう。
これはつまり脱獄は所長に報告されていないこと。まだ計画はバレていないことを意味する!!

おじさん!!まだ繋がってる!まだ明日に繋がってるよ!!

思わず泣き出してしまうリクでありました。ああ、良かった良かった・・・

何とか脱獄計画を続けることは出来そうである。
最大の危機をラッキーがありながらも乗り越えることができた脱獄組一同。やはり脱獄には運の要素も大事なんですなぁ。
しかし看守が迫ってくる正面向きのシーンは迫力がある。アニメのOPの一場面で使えそうな雰囲気がある。

さあ、いよいよ脱獄の決行日が迫ってまいりました。
こうなってくると問題はヘリのロックと船の手配の2つに絞られる感じである。
前者は田中一郎がどうにかしようとしているが後者はどうなのだろうか。事前に進めないといけないのだが、そろそろ厳しいのでは?
前準備も大変だが、決行時も多数のトラブルに見舞われそうで怖いですわぁ。



第154房 再開  (2014年 21+22号)


非常ベル押下作戦により、ひとまず脱獄計画は発覚していないものとして行動することとなった脱獄組。
早速今夜から脱獄準備を再開する。
まず田中一郎が最初に行うのはベルを鳴らしてくれた人へのお礼。大事なことですな。

信造さんは特に罰を受けた様子はない。良かった。
まあ、こういう非常ベル誤操作によるトラブルも全くないってわけじゃないんでしょうな。

歳を取るとどんなことでも頼りにされるのが嬉しいものだと語る信造さん。
確かに嬉しそうに働いてくれてましたな。先生と尊敬する田中一郎に頼られたのがよほど嬉しかったのでしょう。
だからといって消しゴムを飲み込んで見せるとは凄い覚悟だ。
下手すれば演技じゃなく本当にお腹を壊していたかもしれないぞ。

久々にワクワクしましたわ

入れ歯が外れるほどに興奮しながら語る信造さん。いや、本当に助かりました。
そんな信造さん、これまでは償いとして刑務所内で死を待つばかりの様子だったのだが・・・
どうやら田中一郎の脱獄話を知ったせいか、生きる望みを持ってしまった様子。

娘に・・・脱獄成功の暁にはこの手紙を・・・

小さな紙片を受け取る田中一郎。
ふむ、この信造さんの働きに報いるためには必ず脱獄に成功して、この手紙を送り届けなければなりませんな。

さて、一方では松尾が椿と二人きりになっている。
どうやら椿が原田看守に変装がバレたとき、責めてしまったことを悔やんでいるようだ。
まあ仕方がないと言えば仕方がないですけどね。テンパってしまうのも仕方がない状況だ。
だけど、それで済ませることは出来ない。松尾自身が落ち着かない。

殴ってくれ

自分は酷いことをした。罰を受けないといけないと語る松尾。
椿は最初断るのだが、その必死な様子を見て思い直す。
そうでもしないと俺はお前とダチでい続けられないと言われてはねぇ。

気絶すんなよと言い置いて、強烈なパンチを叩き込む。おお、吹っ飛んだ吹っ飛んだ。
どうにか気絶はせず、立ち上がる松尾。そのまま立ち去ろうとするが、それを止める椿。

俺も殴れ。
殴りたくもねえダチを殴ってしまった

頼まれてのことなのにそれを自身への罰かの様に語る椿。
そうしてもらうことで気が済むのだと語る椿。これは松尾の理論と同じであり、断りにくい。
仕方無く、言われた通り殴る松尾。これでお互い一発ずつって感じでありますな。
何というか、言葉を交わすのが苦手な不器用な男の友情を感じる場面である。
お互い左手で殴っているが、これは手加減しているってことだろうか?全力では殴ってそうだけど。

原田看守の身を案じる椿。
色々と窮地に陥らさせられた人ではあるが、決して分かり合えない人ではなかった。
松尾にしてみれば正直原田看守がそうなって助かったという気持ちは強い。これは松尾に限った話ではないでしょう。
助かったという気持ちはあるが、同時に原田看守の身を案じる椿。無事だといいんですがねぇ・・・

続いて松尾はリクのところへと向かう。
原田看守に脱獄計画がバレたときの言い争いで図星を突かれてカッとなって殴ったことを詫びようというのだ。
俺も1発殴ってくれ。そのように述べる松尾。しかしリクはそれを拒否する。

だいたいさぁー。お前のデカいげんこつと俺のげんこつで同じ1発じゃ割に合わねえよ。
それにさ。悪いけどこのげんこつは渾身の1撃のために大切に取っておきてえんだ。
鬼道院をぶん殴るために

そのように言われてしまうと無理強いは出来ませんわな。リクは相変わらず先を見ている。
そんなリクの意見だから松尾も素直に理解を示し、もうむやみやたらと人は殴らないと誓う。
よい心がけですな。元々この刑務所に入ることになったのも暴力を振るってしまったことが原因でありますし。
ここで反省しておけるのは良いことである。囚人らしい心がけと言えますな。

そうだよ。せっかくでかくてあったかいげんこつ持ってんだからさ。母ちゃんの肩たたくためのげんこつにすればいい
タントン。タントン。大人ってなんでこんなのが気持ちいいんだろな。

大きなげんこつは何も人を傷つけるためだけにあるわけではない。
使い方を考えればそれはちゃんと人の幸せに繋がることになる。
大好きな母親のためにそのげんこつを振るう。
この考え方。松尾にしてみれば目の覚めた想いでありましょう。実際目が輝いてるかのようになっておりますわ。

さて、脱獄計画が再開したため、備品室への侵入と作業も再開する。
レノマさんは昨夜備品室へ向かい、入口に小さな紙を挟んでいた。
看守が324房ではなく備品室に踏み込む可能性があったため、ここに入ったかどうか確認しようとしたのだ。
房にも来ず、ここにも看守が踏み入った形跡はない。となるとやはり脱獄は知られていなさそうですな。安心した。

いつの間にか寒くなってきたな

床に寝そべり、そんなことを言い出すレノマさん。
リクとレノマ。2人で作戦を始めた頃はまだ暖かかった。季節なんて気にしてる暇もなくここまで来たわけだ。

いよいよ・・・ほんとにいよいよだな・・・

脱獄計画の事前発覚という最大の危機を逃れたリクたち。
さあ、いよいよ脱獄予定日まであと少しとなってきました。
まずはヘリのロック問題を解決するための作戦があります。果たして無事に進めることができるのか?
それが片付けば、残る問題は船の手配だけとなるが・・・こっちは本当に難関だなぁ。
悩みまくっている間にスパイの丸井が探りを入れてきそうだし、その辺りのやり取りも描かれそうであります。



第155房 面子  (2014年 23号)


脱獄計画再開。決行日が迫る中、問題を1つ1つ解決していこうとする田中一郎。
まずハンググライダーの製作進行状況を尋ねる。

大丈夫だ。まずまず完成してる。決行日には間に合う

割と曖昧な答えをするレノマさん。
まあ決行日に間に合うなら問題ないんですけどもさ。
この答え方する時は進行状況が芳しくない時な気がして困る。
まあレノマさんなら最後に追い込みかけて間に合わせてくれるとは思うけども。

ともかく今はそれよりも大きな問題がある。おそらく現在では最大の問題となっているあの事項。そう、船の調達の件だ。

船の調達は進んでいない・・・正直もうどうしていいかわからねぇ。煮詰まってる・・・

弱音を吐く周龍。かなりまいってるみたいですなぁ。
田中一郎にもとっくに相談をしているが、いいアイディアは出してもらっていない様子。
ううむ、この田中一郎ですらいい考えが浮かばないのでは、本当にお手上げな感じがしますなぁ。
ここは基本に立ち返り、もう1度親父さんに頼んでみるしかないのではなかろうか。
そのように松尾は提案するが、ムリだと一蹴する周龍。

息子の俺がどれだけ泣きつこうがわめこうがあの親父は・・・

ふうむ。厳しい親父さんのようですなぁ。しかしどうやらそれだけではない様子。
リクにどんな人なのと尋ねられたとき、かすかに笑みを浮かべる周龍。

乗り越えたい・・・いや、せめて同じ高さに並びたい。
壁・・・でもあるが最大の憧れの存在なんだよ。俺にとって・・・親父は・・・

隕石が落ちる以前、周龍の父は中国系企業をいくつも抱えたビジネスマンとして稼ぎまくっていたそうな。
だが、あの日を境にしてすべてが灰と化した。財産も社会の秩序さえも何もかも。
それまで築き上げたノウハウでは立ち上がれない。みんな追い詰められていた。それは周龍の父も同じであった。
だが・・・周龍の父は社長という責任ある立場の人間としてこう言ってのける。

家族を含めて生き残った者全てに伝えてくれ。
お前たちは俺の家族だ。地下に潜ってでもみんなを食わす・・・と。

この時、周龍の父はギャングとして生きていくことを決意した。

泣いたまま死んでいくか、這ってでも生きていくか
親父は後者を選んだ。同胞の絆ひとつを武器にして。

苛烈でありますなぁ。そう決意したからって、スラム最大のギャングとなるなんて並大抵のことではないでしょうに・・・
しかしこの話で分かったことはある。
同胞を家族として扱うのであれば、本当の倅だからと言って特別扱いすることはできないわけでありますな。
そういうところで甘い顔を見せたりするのは組織にとって良くないことだと理解しているのだ。賢い人である。
でもレノマさんに言わせれば今回の件はそれだけではないみたいですけどね。

オメェがなめられてんだよ。
肉親を特別扱いしないのは人を束ねるボスとして当然だ。
だが、組織の2代目としても手を貸してもらえねえってのはどういうこった。
認められてねえんだよ。オメェは2代目としてもよ

まあ確かに。そういう見方もありますか。今の周龍は血筋で2代目とされているに過ぎず、実績も何もない。名ばかりの2代目だ。

だったら認めさせろよ。根尾健一。奴は今この極楽島にいる

レノマさんのこの発言に顔色を変える周龍。
この根尾という男、かつて周龍の父の暗殺を試み、そのためにドラゴンクロスがやっきになって探し続けている対象である。

奴をカタにはめろ。それを手柄にテメェは本物の2代目になる。
ただし、奴は強えぞ。

なるほど。これはビッグチャンスでありますな。
煮詰まっていた周龍にしてみれば道が開けた気分でありましょう。
とはいえギャングが言うカタにはめるというのはどっちかが死ぬまで闘うということを意味する。
果たして周龍に勝ち目はあるのか?まあ、例え勝ち目が薄くてもやらないわけにはいかないでしょうがね。
リクはそんな生き死にの戦いはダメだと止めるが、さすがにこればかりはリクが口を挟む場面ではない。

これは俺のギャングとしてのメンツの問題だ。お前が口を挟む余地はねぇ。

そう言い残して根尾のもとへと向かうレノマさんと周龍。
それはいいのだが、廊下に書かれたQという文字が凄く気になる。
何だろうこれは。まさかのQ棟!?東西南北ではなくアルファベット分あるということなのか!?
うーむ。気になりますね。謎ですね。クエスチョンですね。謎のQだ。

ともかく、周龍は根尾を見つけタイマン張れと述べる。
相手はでかく、見るからに危なそうで強そうである。さてさて周龍の勝ち目はどの程度であるか。
まあでかさと強さという点ならレノマさんも負けてはいないわけではあるが・・・今回のレノマさんは見届け人である。
それを示すために人差し指と中指を交差させる構えを見せるレノマさん。「弾き返さず」のサインだ。

クロスする人差し指と中指は何があっても報復のチャカは弾かねえ意味のサイン。
これを裏切ったが最後、この渡世は歩けねぇ。テメェもギャングならわかるだろ。

このサインを受けて根尾も周龍のタイマンを受ける気になる。
さあ、己の維持とファミリーの面子をかけて周龍の戦いが始まります。
ここが一番の見せ場であり、負けられない戦いになりそうな周龍。
意地と根性を見せていただきたいものであります。



第156房 死闘  (2014年 24号)


親父にドラゴンクロスの2代目として認めさせるため、周龍はヒットマン根尾に挑む!!

寂れた倉庫の中、2人の他は見届け人のレノマさんしかいない。
この状況でのタイマン。まずは周龍が仕掛ける。渾身の右ストレート・・・が、当たらない!!
逆に根尾のボディブロー。
強烈であるが、どうにか左腕でカバーする周龍。
しかしやはり体格差によるものか、腕で庇ったのに打撃の威力は殺しきれていない。
衝撃に表情が歪む。その隙に頭を抑えられ、顔面への膝蹴り。
これもどうにか右手を間に差し込んだのだが、威力は殺しきれず鼻血を出して後ろへと倒れ込む。むむむ、不利な状況だ。

お前・・・想像よりはるかに弱ぇな。とっとと死ねや

煽りを入れる根尾。
うーむ、確かにここまで見る限りでは実力差は圧倒的ですが・・・しかし簡単に諦める周龍ではない。

再び殴りかかる。が、今度は完全に根尾の拳をもらう周龍。
ガードも間に合わず、脇腹や顔面に叩きつけられる根尾の拳。
周龍のまき散らす返り血は遠くへ飛び、レノマさんの頬をも染める。

この力の差・・・やべぇ・・・
この勝負、負けは即ち・・・死・・・
こんな所で・・・こんな・・・こんな所で殺されてたまるかよ!!

実力差を悟りながらも諦めない。その意識が逆転の一手を生み出す。
倒れ込んだ周龍に拳を振り下ろそうとする根尾。
その拳を、身を翻しながら根尾の股をくぐりぬけて躱す周龍。
そのまま足を根尾の胴体に絡めて背後を取り・・・裸締めの体勢に入る!!

後ろを取られるまでは余裕そうな顔だった根尾も、この状況に焦り出す。
寝ころんだ状態で、完全に周龍の腕が根尾の顎の下、首を抑えるように回っている。簡単には抜けられない状態だ。
しかし試合ならともかく、喧嘩であるならば方法がないわけでもない。
根尾は周龍の目に指を突っ込んで技を外させようとする。が――

目玉ぐらいくれてやる。認めろ。負けを!

この絶好のチャンスを逃したら全ては終わりである。目の一つを惜しんではいられない!!
その覚悟が本物であるのは技をかけられている根尾にも分かる。
おお、まさにその名が示すように龍が周り包み込むかのような絞め技ではないか!!

ギャング同士の決着は殺し合い。死は必然!殺るのか。周龍

周龍が勝つとなった場合、また別の問題は発生する。
刑務所内で殺しを行った場合どうなるのか。このタイミングで長期の懲罰房行きとかはシャレにならないのだが・・・

とりあえず根尾は負けを認め、気絶する。
それを確認して締めを解き、立ち上がる終了。
曇っていた空からは光が差し、壊れた天井から暖かな日差しの祝福を周龍にくれる。

勝利の余韻・・・に浸る間もなく、気絶した根尾を叩き起こす周龍。
根尾は死の恐怖によるものか失禁している。おやおやこれは恥ずかしいですね。屈辱ですねぇ。
そんな屈辱の根尾に周龍は見下ろしながら告げる。

次に1歩でもドラゴンクロスのシマに入ってみろ。そん時は殺すぞ

ふむ。殺しはせず、脅すに留めましたか。
まあこの酷い敗戦が広まれば根尾のヒットマンとしての勇名は死んだも同然ですしねぇ。
となると、根尾は相当精神的に追い詰められた感じになるわけで・・・
凶行に及ぶことも十分考えられるわけで・・・

勝負は決したと背中を向けた周龍に向けて刃物を突き立てようとする根尾。
舞い散る鮮血。果たして凶刃の行方は・・・!?

裸締めを解いた時は、そのタイミングですぐに根尾が復活。死んだふりだったとか言うのかと思いました。
しかし実際は本当に気絶しており、そのまま殺されててもおかしくない状況だったという。
うーむ、根尾。お前、想像よりはるかに頑張らねぇな。

この場に周龍だけならば最後の凶刃もヤバイかと思えるが、レノマさんもいますしねぇ。
見届け人としてこういう凶行は防がねばなりますまい。
割り込んで鉄拳制裁。根尾の顔面から鮮血が舞うとかそういう流れではないかと思います。スッキリとした結末に期待だ!!



第157房 代償  (2014年 25号)


敗北した根尾が卑劣にも武器を持って背中から襲い掛かる。
周龍も直前で気付き振り向くが、躱すことはできない。
咄嗟に左手を差し込むことで致命的なダメージは免れるが・・・ナイフは左手を貫通しており、実に痛そうである。
周龍は手を差し込んでダメージを防ぐテクニックに長けている感じですな。防具でもついていれば良かったのですが。

ギャングの決着は殺しのみだ。こういうことがねえようにな

したり顔でそんなことを述べる根尾。
仁義もへったくれもあったものじゃありませんな。
しかし熱くなって忘れているようですな。ここにいるのは2人だけではない。立ち会い人がいるということを・・・

上等だ。
負けを認め、本来殺されるところを見逃してもらった・・・なのにテメェは裏切った。「弾き返さず」は無効だ。
ここからは、立ち会い人としての俺の面子を潰したテメェとダブルドラゴンクロスとの戦争だ

そう告げて、根尾を見開きでぶちのめすレノマさん。さすが、期待通りの活躍だ!!
しかし根尾にしてもレノマさんにしても、レノマさん自身ではなくダブルドラゴンクロスが相手みたいな話をしますのね。
正直ダブルドラゴンクロスじゃなく、レノマさん1人が相手でも十分脅威だと思うのだが・・・
まあ、ボスであるレノマさんがダブルドラゴンクロスだと言えなくはないか。

完膚なきまでにボコボコにされる根尾。
頭を踏みつけられ、泣きながら謝る姿は自業自得とはいえ哀れなものである。
そして、一度卑劣なことをした以上、そんな姿を晒しても簡単には許されない。
ギャング同士の決着は殺しのみなどと述べていたのだから、自分もその覚悟があるはずである。

死ねや

拳を振り上げるレノマさん。
しかしそれが振り下ろされるのを止める者がいた。周龍だ。
自分に向けてきたナイフを根尾の前へと蹴って送る。

2本・・・人差し指と親指。それ使ってテメェで落とせ。2度とチャカ弾けねえようにな。
もし・・・次、会った時に指がくっついてたら・・・そん時はお前が消える時だ。

どうにか周龍の計らいで命だけは助かった根尾。
しかし自分の手で自分の指を切り落とすとはまたキツイことを。
それでも命の危機というものを味わった根尾はそれに従ってしまう。
うーむ、やたらと指が痛めつけられる作品でありますなぁ。

何はともあれ、根尾をカタにはめるという当初の目的は達成できた。
すぐにドラゴンクロスに連絡を取り、2代目として認めさせ、船を調達してもらう必要がある。
物陰に移動し、レノマさんから電話を借りる周龍。
前はレノマさんの監視付きでの電話だった。が、今回はどうやら違う様子。

親父と2人っきりでしっかり話せ。
頼んだぜ

おや。これはこれは。
どうやら周龍もレノマさんに認められた様子でありますな。
自分から脱獄組に誘っておいたわけだが、どこか信じられない部分ってのがあったんでしょうな。
房内でもめ事を起こした時も自分が監視するみたいなこと言ってましたし。

その夜。
食事中に周龍は仲間たちに結果を報告する。
生きて戻ってきたことで勝ったのはわかっているが、相手はどうしてしまったのか。
一番気になるその点については、殺してないとの返事。リクにしてみれば凄く安堵する答えでありますな。
そして、肝心の船については・・・

船は親父が協力してくれる

おぉ。ついに難題が解決した!!
レノマさんが認めたのと同じように、親父もまた息子を認めたということでありましょうか。
2代目としての活躍と意志を見せる。ファミリーに公平感を与えるには大事な試練だったわけですなぁ。

何にしても朗報である。松尾や史郎さんが面白い顔をするほどの朗報である。
大きな懸念点も1つ解決したし、実に目出度い。
同じ房にいない田中一郎は明日まで心配をし続けないといけないかもしれませんが・・・まあ、耐えてもらうとしましょう。
松尾たちのでかい喜びの声である程度察することは出来たかもしれませんけどね。

さすがに疲れたという周龍。お疲れ様です。
周龍にしてみれば頭を悩ませていた船の調達、親父に認めてもらえていないということ、それらが解決した大事な日である。
かなりほっとしていることでありましょうなぁ。今はゆっくり休んでいただきたいものであります。

さあ、残る大きな問題はヘリのロックについてのみだ。
それの解決策は既に田中一郎によって示されつつある。この難関は皆の力でクリアするとのことだが、果たしてどうなるのか。

もう少しだ。見ててよ!おじさん!!

その難関さえクリアすれば、すぐに脱獄決行の日がやってくることでしょう。
無事に前準備を整えることができるのか。
決行日当日は必ず何らかのトラブルが起きるでしょうが・・・前準備だけは万全にしておきたいものですな。



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