蒼天紳士チャンピオン作品別感想

囚人リク
第77房 〜 第103房


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 各巻感想

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連載中分

囚人リク 10巻


第77房 検査  (2012年 43号)


糞つぼの検査の手が止まった!!
果たしてスコップは発見されてしまうのか!?緊迫の瞬間である。

確かに異音がした缶はスコップが入っている缶である。
開けられたならば一瞬で発見されることになる。
しかし・・・異常なし!!
その宣言を受け、糞つぼを乗せたトラックが発進していく。

安堵の息と汗を流すリクとレノマさん。よかったよかった。

看守の木之内さん曰く。糞が水っぽい時はああいう音がするもんだそうな。
さらに言うなら、下手にフタを開けたら鼻がひん曲がって1週間は飯が食えなくなるそうな。
なるほどね。やっぱりチェックは甘くなっているということか。

やったな

上々の結果を得ることができた。拳をつき合わせて微笑む2人でありました。よかったよかった。
これで実行に向けて計画が進められると嬉しそうなレノマさん。
そこにスラム時代からの部下の森田がやってくる。
どうやらレノマさん、森田にスコップの補充を頼みたいらしい
糞つぼに突っ込んで運ばれていったスコップの代わりにしようという話らしい。なるほど。
忘れないように通しナンバーも入れておいてもらう。N-12と。
そういう番号のチェックもしている辺りがレノマさんの抜け目のなさですねぇ。大胆でいつつ繊細だ。
作業用具は看守による定期チェックが入る。その回避のためでありますね。
懇意にしてる肥料業者から分けてもらうのは訳ないらしい。ほほう。

夜。
今日も寝床は出産を控えた豚さんの部屋。
レノマさんはいい加減この扱いに我慢できず、高木さんにつっかかる。

なめんなよ。看守に何をアピールしてえか知らねえがな!
気にくわねぇ。ムショに来てまで仕事をがんばるとか、カッコつけてんじゃねえよ。

怒りのレノマさん。しかし、その怒りを受け流す高木さん。
逆に高木さんは質問する。なぜ炊場を志願したか?と。
炊場は看守のヅケ――評判や評価がいいので、仮釈を狙って志願してくる者は少なくない。
そういう者は表面的にでも一生懸命に仕事をする。が、2人にはそれは当てはまらない。

もちろん脱獄の下調べだなんて説明は出来ない。
ので、俺たちは延長職の甘シャリ目当てよと誤魔化す。
炊場は勤務時間が長いので、コーヒー牛乳やゼリーなどの簡易食が特別に与えられるらしい。へぇ。

豚の見張りに豚小屋で寝泊り。その処遇に不平を漏らすレノマさん。
しかし、高木さんは言う。誇れ、と。

昼間の仕事もだ。任されているということに誇りを持て。
こんな最果ての刑務所に放り込まれ生きていくのはとても辛いことだ。
だから俺はせめて唯一の楽しみの食事くらいは、生きている喜びを感じられるものにしたいと思ってる。

出産を控えた豚さんを見守るのは重要な役目だ。バカには任せん

それは事実でしょうね。
お産は大事でありますし、全く信用してない相手に任せるとは思えない。
特にあの高木さんである。豚さんを大事に思ってないはずもないですからねぇ。
しかし、高木さんもマメというか律儀な人である。
こうやって炊場1人1人に声をかけて気を遣っているんでしょうかね。そりゃ尊敬も集まるわ。

高木さんの言葉を受け、感じるところがあったのか、拳を収めるレノマさん。
仕事の様子は相変わらず適当ですが、高木さんに対する見方は変わった感じですな。

なんなんだろうな。なんかわかんねえけどよ、ムチャクチャむかつくけどよ。
なんかよ・・・殴る気にならねえんだ

真摯に語りかけているのが分かってしまうからなんですかね。
高木さんは面倒くさいけどいい人ですからなぁ。面倒くさいからむかつくけど、いい人なので怒りきれん。
なかなかよい上司と言えますな。

和んだ状態であるが、ここからいきなり危機的状況が発生する。
看守の木之内さん。慌ててどうしたのかと思ったら、スコップを片手に持っている。
どうも、糞の回収業者が、缶に入っていたスコップを届けに来てしまったらしい。
持ってきたのは今朝だったが、看守が確認するのは夕方になってしまった。
そのおかげで森田がスコップの補充を行える時間ができてしまい、結果・・・N-12のスコップが2本!!

これは一体どういうことか!?
急いで調べる看守。購入時に製造番号をメモしているので、それと照合する。
結果・・・本物は今朝、業者が持ってきた方だと判明。
ということは、もう1本はおそらく外部から持ち込まれたものであることも判明してしまう。

なんとまあな不正発覚!
脱獄計画に黄色信号が灯った感じがありますが、果たしてどうなるのか!?

うーむ。スコップの補充を聞いた時、気が効いてると感心したものだが、こうなるとはなぁ。
考えてみれば、業者が返しに来る可能性も十分ありえましたわなぁ。
かなり言い訳が効きづらい状態だが、果たしてどうするのか?
スコップ紛失したのでこっそり補充しました、で通用するのだろうか。
補充を行った森田が罰せられそうな流れになりそうで怖い。
そうなった場合、レノマさんがどう行動するか。高木さんは何を思うか。
緊迫した展開となってきましたぜ。



第78房 尋問  (2012年 44号)


見事な機転により脱走前のチェックに成功するリクたち。
しかし、結果的にスコップの重複という疑惑を生み出す結果となってしまった。
呼び出される炊場のお頭、高木さん。果たしてどうなるのか・・・!?

3週連続巻頭カラー。
見開きカラーのトリを飾るのは実直の人、高木元文!
8巻の表紙は田中一郎だし、このカラーは色々と渋すぎる!!高木さん銀髪なんですな。

呼び出された高木さん。看守より尋問を受ける。
ドラム缶にスコップが入っていたこと。それは問題だが、まあそこまで大きな話ではない。
重大なのは返却されるまでのスキに同じナンバーを打ち、補充されたスコップがあったということ。
これは誰かが外部から品物を持ち込んだということを意味する。
スコップぐらいなら、とも思うが、他の物だったらと考えたら捨て置けない話ですわな。

木之内看守の質問に対し、高木さんは心当たりがないと答える。
が、様子からして疑っている相手はいる様子。まあ、そうでしょうなぁ。
つい最近豚舎の世話を任せるようになった目的不明の男たちがいたりするわけですし・・・

高木さんの返事を聞き、早急に該当者を見つけ出せと指示する木之内さん。
若い看守の方は片っ端から全員シメあげればいいんですよと血気盛んだが、それは最終手段だと止める。

高木・・・いいな。お前の手に負えん時にはそういう方法を取らざるを得ん。信用しているぞ。

やはり炊場の人間、さらにそのお頭である高木さんは信用されているんですな。
大事な職場であるだけに、片っ端からシメあげるマネは難しい。食事関係の流れが止まっちゃいますものね。
それに、木之内看守としてはなるべく高木さんの責任問題にはしたくないんじゃないかな?
うまく該当者を見つけ出せば、その相手だけ処分すればいい話になる。
高木さんは精力的に働き囚人の人望もあるので看守側としても重宝したい人でしょうし。

さて、看守に犯人を見つけ出すよう言い含められた高木さん。
真っ先に向かうのはやはりレノマさんたちのところ。そりゃそうですよねー。

豚舎の用具庫にリクとレノマさんを連れて行く高木さん。
そして、糞の回収業者が今朝スコップを返しに来たことを告げる。
となれば当然同じナンバーのスコップが重複することになる。補充したことがバレたわけだ。

ズバリ言う。やったのは、お前たちか

高木さんの問いに、逆ギレしてみせるレノマさん。証拠でもあんのか!!
レノマさんは平然ととぼけようという構えのようだが、嘘の苦手なリクには大変な話である。
しかも、この件により何も関係ない炊場全員が罰を受けることにもなりかねない。
自分のとった行為のせいでそんなことに・・・!!
まだ幼いリクには厳しい話でありますかな。

思わず口を開きそうになるリク。それを殴って止めるレノマさん。

女々しい!

強烈な高木さんの張り手が飛んできました。
その迫力に、ちょっと離れたところにいるはずの豚さんたちもビックリしている。
ストレスが溜まったりしないか心配になりますね。

やっぱり・・・やっぱり・・・ぅお前らだったのかぁ!!

はち切れんばかりに胸を膨らませ、号泣する高木さん。一体どんな気持ちなんですかねぇ。
一戦を交え、それなりに認め、豚さんのお産という重要な仕事も任せた人間のこの行為。
まあ、会ってほとんど日も経ってない人間ですし、信じるのが早すぎたといえなくもないですが・・・

レノマさんはリクに言う。甘えてんじゃねぇぜ、と。

俺は・・・オメェが死にそうになっても、目的のためなら見殺しにする覚悟はある
逆も然りだ。その覚悟がねえならとっととやめちまえ。

脱獄という一大事をこなすにはそれなりの覚悟がいるってことなんでしょうなぁ。わからなくはない。
下手すると同房の人間や昔の仲間が脱獄の責任を負って加刑なんて目にあうこともありえるのだが・・・
さすがに今のリクにそういうことは思い付くまい。思い付いて決心が鈍っても困りますわな。

翌日。
高木さんはレノマさんの部下である森田に声をかける。
そして誰もこない冷蔵庫の中に入り2人っきりで話をする場を設ける。
要件はもちろん重複したスコップのこと。
高木さんはレノマさんとリクの仕業であり、森田もグルであろうと考えている。

奴らがやったという証拠がほしい。正直に教えてくれ。
そうすればお前の共犯の罪は軽くしてもらえるように尽力する。
お前のこれまでの炊場での献身的な取り組みを俺はよくわかっている。

説得を試みる高木さん。
森田は言い逃れを試みるが、その胸に刻まれた刺青が繋がりを証明してしまう。
ダブルドラゴンクロス――レノマさんのシャバでのチームの名前だ。
2人が同じチームに属していたということは高木さんも調べがついているようだ。

今朝調べた・・・補充してあったスコップは、昨日お前が担当していた肥料業者のものだった。
正直に話せ!そうすれば必ず!俺が全力でお前の罪を軽くしてやる!!

真摯な高木さんの態度に、スコップの補充を認める森田。だが・・・

ドラム缶にスコップを入れたのも、この俺です。全部・・・1人でやりました

そう来たか!!
スコップに関する一連の問題を全て自分の行いにするつもりか!森田!!

誰も来ないと思われた冷蔵庫の中。
だが、折り悪くそこに足を踏み入れてくる若い看守。
森田の発言を聞きとがめ、自白したものとして引っ立てていく。
高木さんは止めようとするが、それも叶わず。森田は特別懲罰房へと引っ立てられていくのでした。

特別懲罰房。
椿が受けたように、固定された状態で警棒の乱打を受ける森田。相変わらずここは凄惨だな。
調達は自白したが、何のためにドラム缶にスコップを入れたかは話さない森田。
まあ、自分がやったわけでもないのだし、理由なんかあるわけないですわな。
しかし、そんな森田の態度が気に入らない様子の看守。
俺の心象をよくしねえと、刑期の1年や2年いくらでも簡単に増えるぞと脅しかけてくる。
そしてその状態で再度質問。なんのためにやった?

あんたみてえなクソ看守への腹いせだよ

傷つき、血塗れになりながらも、信じる人のために強がり罪を背負う。
うーむ。よもや森田がこんなに格好いい奴になるだなんて誰が想像しただろうか!!
これはさすがにダブルドラゴンクロスということなのだろうか。
ファミリーを愛せというレノマさんの教えが叩き込まれているということなんでしょうな。

さて、その大切なファミリーの一員である森田が酷い目にあっている。
果たしてレノマさんはその事実を知ったとき、どのように動くのだろうか?
リクにはキレイごとを言うなと言っていましたが・・・さてはて。

豚舎に入るまでは苦労はしたけどそれなりに順調であった。
しかし、今回はまだまだ大きな障害が控えていそうな予感がある。
下手したら高木さんに脱獄計画がバレてしまう可能性もあったりするのか・・・?
なんともはや、先の展開が楽しみであります。



第79房 白雪  (2012年 45号)


ボスのレノマさんを庇う森田。
その挑発を受け、看守は森田へ攻撃を加える。
が、それが本当の理由だとは思えないとも考えている様子。
うーむ、結構賢いですなぁこの看守。厄介な話である。
この人、拙速ではあるが基本的に職務に忠実なんですよね。

まさかお前、誰かを庇っとるんじゃああるまいな

なので、怒るだけではなくこういうことにも感付いてくる。本当に厄介な人である。
とにもかくにも今日の拷問はこれまで。続きは明日となります。

クソが・・・絶対言うもんか・・・なめんなよ。
どんなことがあろうと絶対に裏切らない!あの人を・・・!!
あの日・・・俺は決めたんだ。

というわけで、まさかの森田の回想シーン突入だ!!
それは10年前。森田9歳の頃のお話。
東京スラムはギャング同士の抗争が頻発していました。

宝町野良犬軍団(ストレイドッグス)を、なめてんじゃねえぞ!!

どうやら森田はこの宝町野良犬軍団、T.S.D.に在籍していたらしい。
そのギャング団はダブルドラゴンクロスに敵対している。
そしてそして、そのダブルドラゴンクロスのボスであるレノマさんが野良犬軍団に捕まっていた。
どうやら闇討ちで襲って捕獲したらしい。
子供の頃のレノマさんとはいえ、よく闇討ちで捕獲なんてできたなぁ。

森田は野良犬軍団の中では単なる見張りの下っ端。
抗争の前夜祭にも参加させてもらえず、見張りのために手錠を人質のレノマさんと一緒にされるような扱い。
これじゃあ見張りどころか、人質の一員みたいな扱いじゃあないですか。

雪の降る寒い日の夜。
薄着で風邪気味の森田。であるのに、火の用心と称してストーブを消していく野良犬軍団の幹部達。
なんともはや。人を人とも思っていないような扱いですなぁ。

ヒザを抱えて寒さをこらえつつ、ウトウトとする森田。油断してますなぁ
。 レノマさんは隠し持っていたナイフを用いて縛めを解き、そのまま凶器として森田につきつける。
この辺りの抜かりのなさはさすがにレノマさんでありますね。

首筋にナイフを当てるレノマさん。
森田は慌てて殺さないように言う。死体を引きずっては逃げられないだろう、と。
ならば備え付けの手斧で森田の手首を切り離せばいい
ってそんなことされちゃたまらない。森田は必死で言い訳を考える。俺を連れていかねえと逃げらんねえぞ!!

咄嗟の言葉であったが、別にウソというわけでもない。
目隠しされて連れてこられたレノマさん。
監禁場所は元地下鉄予定地でまるで迷路のような道となっている。
なるほど。道案内なしでは抜けられないわけですな。
ついでに言うと、地形的に風の吹き抜けがひといので、薄着の2人が出歩いたら凍え死ぬ可能性が高い。
だから逃げるなんて諦めろという森田だが、レノマさんはかまわず外に出る。強引ですなぁ。

逃げ出してしばらく進んだところで、後方から扉の開く音がする。
どうやら幹部たちが様子を見に戻ってきたらしい。こりゃまずい。逃げたのに感づかれた。

探せぇ!!森田のやろう!!ぶっ殺してやる!!

人質のレノマさんはすぐに殺せないが、森田はすぐ殺せるぜってか?なんともはやだな。そりゃ森田も率先して逃げる。

逃亡を開始した2人だが、段差に躓き足を痛める森田。
これでは逃げられない。観念して助けを呼ぼうとする森田。だが――

あんの森田の野郎め!!これだから信用できねえんだよ!!親に捨てられたような奴はよォ!!

森田が辛く当たられてたのにはそういう理由があったんですか。
いや、捨てられた子に罪があるとも思わんが・・・歪んでるなぁ野良犬軍団。
そして、この声は当然すぐ側にいたレノマさんの耳にも入っている。
同じような境遇であるレノマさんがとった行動とは・・・寒さに震える森田に上着をかけてあげること!!

熱あんだろ。着とけ

そして、足をケガした森田を運ぶためのソリを用意する。
ちゃんとしたものではないので、引っぱるレノマさんの手は血塗れになる。
さらに2人の上に降り積もる雪。寒さと疲労でさすがのレノマさんにも疲れの色が見えているぞ。

何とかして森田を引きずったまま1号線へと向かおうとするレノマさん。
しかし森田。レノマさんにもういいと告げる。

上着を着せてくれたり。
俺を脅して道だけ聞いて、腕切り落としてあとは1人で行きゃあいいのにさ。
引っぱってきてくれた・・・
俺・・・人の優しさをさ・・・生まれて初めて感じた
ありがとよ。もう充分だ。
腕落として行ってくれ。1号線はよ、このまま行ってあそこのビルの角を曲がりゃすぐだ。

あーあ。俺もオメェみてえなボスがよかったな

覚悟を決め涙を零す森田。
その涙は生まれて初めて感じた人の優しさの温かみよるものなのだろうか・・・

静かに涙する森田。
しかし、その後はさらに号泣することになる。
結局、レノマさんは見捨てるようなことはせず、森田を背負って帰ったのだ。
そして森田はダブルドラゴンクロスの一員になったというわけですな・・・
号泣する男の姿をお月様は静かに見守っていてくれています。

そして現在――
同じく夜に輝くお月様が、獄につながれた傷だらけの男を優しく照らしている。

ボス・・・まかせてださい。
今度はこの森田秀充がボスを守ってみせます

嬉しかった。それだけでいい。三日月よ、拷問に耐えぬく強さを俺に。

相変わらず、この最終ページの柱のアオリは秀逸ですなぁ。格好いい。
レノマさんの行為と、森田の忠義に感嘆させられた今回の話。いい話であった・・・
ダブルドラゴンクロスの結束の強さはこうやって築かれていっているんですなぁ。

しかし、今後拷問は苛烈を極めるのは目に見えている。果たして森田は庇いきれるのか?
また高木さんから森田の投獄を聞いた場合、レノマさんはどう動くのか?
ファミリーを愛すことを掟としているレノマさんである。見殺しにすることなんて本当にできるのか?
前回はリクに甘いことを言うなとか、お前を見殺しにする覚悟があるとか言ってたりしたが・・・
正直レノマさんもそこまで非情に徹することができる人とは思えないのですよね。
というわけで、なんとか森田を救い出し、脱獄計画もバレずに済む方法を考えていただきたい。
そんな都合のいい方法があるのかどうかわからないが、レノマさんなら思いつくよ、きっと!!



第80房 忠魂  (2012年 46号)


ボスであるレノマさんを庇い、口を割らない森田。
その森田の前に、現在のお頭である高木さんが訪れる。
どうやら森田を救うために自白するよう説得に来たようだ。
森田は高木さんのことも信頼しているだろうけど、聞き入れそうにはないですなぁ。

拷問を受けて傷だらけの森田。
水分が足りないのか、唇はカサカサにひび割れている。
流れ出た鼻血を舐めとり飲み込む画がなんとも生々しい。

そこまでして・・・なぜ庇う!!

森田の説得はできなかった高木さん。
どうにかしてあいつの証拠を掴み、お前をここから出してやるからなと誓いを新たにするのでした。

さて、リクとレノマさんがまた揉めています。
内容はスコップの件について。高木さんに言われたことが効いているみたいですなぁ。
名乗り出ないと炊場の奴らに連帯責任で迷惑をかけてしまう。リクとしては憂慮したい事態だ。
だが、炊場というのは特別な仕事である。
連帯責任で多数に影響を及ぼすと、刑務所自体が回らなくなる可能性がある。
だからレノマさんも大した罰は受けないよとタカをくくっている様子。しかし――

レノマさんを尋ねる高木さん。
その高木さんにより、森田が特別懲罰房に落ちたことが知らされる。
そして地獄の拷問にも一切口を割らないことを告げられる。

お前は、森田が体を張るに値する男なのか

怒りを必死でこらえている様子の高木さん。
森田のことは部下としてよく知っているが、レノマさんのことはよく知らないんですものねぇ。
しかし、森田はレノマさんに心酔している様子。
そう、あれはまだレノマさんがスラムでギャングをやっていた頃のこと。

俺ぁあん時、マジしびれたっすよ。
まだ小さなチームだった俺たちの「ダブルドラゴンクロス」が、
スラムNo.2のギャング団「Tears of GOD」をぶっ潰したあの日のあの瞬間・・・
ダブルドラゴンクロス以外のスラムの奴らは絶対に不可能だって思ってたことを・・・
俺がなんべん生まれ変わっても・・・自分じゃ絶対見れねえ景色をあなたは見せてくれる
だから・・・ボスはムダ足踏んでちゃいけねえんっす・・・
こんなところは俺にまかしてください。今度はまた刑務所相手に脱獄っていう大勝負を挑んでるんですから。

10歳にも満たない少年が巨大なギャング団を潰した。
そりゃあ、憧れもしますわな。ついていきたいと思わせますわ。
森田の背景も含め、憧れる要素はかなり多かったということですね。
なので、森田は高木さんを通じ、レノマさんに伝言を渡す。

「また夢をみさせてください」「ボスは俺のヒーローだから」

命懸けで憧れのボスを庇おうとする森田。
高木さんはそんな森田を救いたい。だが、その命懸けの行動も汲み取りたい。高木さんの思いは複雑だ。
なので、後はレノマさんに任せることにしました。
自白するか、森田を見捨てるか。そのどちらかの選択を。

苦渋に顔をしかめさせるレノマさん。
その結論は・・・森田の思いを汲み、見捨てる決断を下すこと。
リクには看守を買収して切り抜けたと説明する。
だが説明している間も、鉄格子を握った手には力が入り、辛そうな様子が見て取れる。ボス・・・

翌朝。
仕事中に高木さん。レノマさんたちの方を見ているが何も言ってこない。
その様子を見て、これでみんなに迷惑かけずにすみそうだと安心するリク。
それはよかったが、決断を下したレノマさんにもまだ後悔の色が見えていたりするのが気になります。

さらに1日が経過。
高木さんはこちらを見ている。複雑そうな心境で見ている。
見られているレノマさん。リクにはほっとけという。
が、これは自分自身に言い聞かせている言葉でもある。ほっとけ・・・ほっとくんだよ・・・

しかし、そう考えれば考えるほど、昔のことってのは鮮明に思い起こされてしまうものでして。結局――

やったのは俺だ。森田を解放しろ

手下を見捨ててまで夢を追うのがボスならよ、俺はボスじゃなくていい

やはりというか何というか。
口では非情なことを言っている人ですが、やっぱりなレノマさんでありました。
まあ、こういう人だからこそ今でも多くの部下に慕われているんでしょうしね。

森田を解放するために自白したレノマさん。
果たしてどのような目にあってしまうのか。
特別懲罰房は初めてではないとはいえ、何回も入りたいわけではない。当たり前だ。
それでも、己の矜持を曲げることが出来ないレノマさん。
脱獄をしようという人間とは思えない甘さではある。が、それもまた魅力であるんですな。
この甘さを持ちつつ、見事に脱獄を果たしていただきたいものであります。

しかし、突然レノマさんが自白しだしたもんだからリクは相当驚いたでしょうな。
聞かされていたことと全然違うじゃねぇか!!って話だ。
まあ、リクは人がいいから納得もしてくれるでしょうが・・・
結局お前も非情にはなりきれないんだな、ぐらいは言ってもいいかもしれない。



第81房 謝罪  (2012年 47号)


レノマさんの罪を背負って特別懲罰房に落ちた森田。
そしてその森田を救うために俺がやったと述べるレノマさん。男だねぇ。
言われた高木さんも戸惑っている。
高木さんとしてはどういう想いなんでしょうか?
森田を救って欲しいという想いはあるだろうけど、レノマさんがここまで言うとは思わなかったとか?

戸惑っている間に看守登場。
自白したということでレノマさんは取り調べに連れて行かれるのでした。

リク。こいつは恐らく特別懲罰房モンだ。厳しい追求を受けることになる。
だがな・・・俺は、死んでも口を割らねえからよ。
テメエは絶対にしゃしゃり出てくんなよ。安心してろ。わかったな!!

口には出さず、目だけで決意を露にするレノマさんでありました。

さて、いきなり特別懲罰房に入れられるようなことはない。まずは取り調べ。
レノマさん、ドラム缶にスコップを入れたのは炊場の仕事がキツイのでムカついてやったと説明。
あくまでも衝動的な行為であると主張する。
しかし看守は納得しない。補充まで行っているのだから計画的な行動としか思えん!とのこと。
うーん、そいつはどうだろうか?
衝動的に入れた後、こいつはマズイと後で冷静になって補充したかもしれないじゃないですか。
だが、そう言った説明をする前に看守はヤバイことに感づいてしまう。

計画的・・・スコップを搬出して・・・補充して・・・刑務所から出して・・・入れて・・・
まるで何かの実験・・・
だとすりゃなんの実験だ。刑務所に持ち込む実験・・・?
タバコ・・・クスリ・・・いや武器・・・

じゃあ、搬出・・・出すのはなんの実験だ・・・
まさか・・・脱獄

ヤバイ所に行き当たってしまった。これはマズイか・・・?
だが、レノマさんはあくまでも冷静な態度を崩さない。
脱獄なんて出来るわけない。考えるわけ無いじゃないかという態度を貫く。
遠隔操作でロックもできれば電流も流す、完璧に思える手錠をつきつけ、脱獄なんて妄想できるシロモノじゃないと述べる。

この発言でどこまで誤魔化せたものか。
とりあえず、脱獄を計画しているのが完全にバレた!って状態にまでは言っていない様子。
看守が去った後、さすがのレノマさんも息をついております。ふぅー。

看守と入れ替わりに取り調べ室に現れたのは森田。
特別懲罰房から解放され、スコップ調達の軽塀禁のみとなったようだ。それはよかった。
しかし、森田としては納得ができない。
覚悟を決めていたというのに、なんで自分を救うために動いてしまったのか。
今度は俺がボスを守ろうと思っていたのに・・・

なんで・・・なんでっ!!こんなの俺!!役立たずじゃないっすか!!

悔しさに震える森田。
お頭こと高木さんに伝えた通り、森田はボスであるレノマさんに夢に向かって突っ走ってもらいたかった。
そう、デカイ相手であるこの刑務所相手の脱獄という夢に。
しかし、その発言は途中でレノマさんに遮られる。
それもそのはず、机には盗聴器が仕掛けられており、2人の会話は筒抜けとなっていたのだ。
これは・・・危ういところでありましたな。
こういうことに気付く辺りがレノマさんの嗅覚の鋭さというところか。

大人しくなった森田に対し、レノマさんはただ一言こう告げる。すまなかった、と。

2人きりにすれば何かボロを出すんじゃないか。看守はそう考えていた。
だがそうは上手くは行きませんでした。
というわけで、特別懲罰房に連れて行かれるレノマさん。
見送る森田の心中は複雑である。

ボス・・・なんで来ちまったんですか・・・なんで・・・なんで・・・
けど・・・嬉しかった自分もいて・・・ちくしょう・・・ちくしょう・・・!!情けねぇ・・・!!

情けないと感じるのは、地獄から救われた、助かったという想いがあるからなのだろうか?
嬉しいと感じるのは、レノマさんが自分のために動いてくれたという想いからだろうか?
それらがない交ぜになっているのを感じる。複雑な想いですなぁ。
レノマさんが無事に出てくるまで森田はその想いに苛まれるのだろうか?それはそれで厳しい話である。

特懲に連れて行かれるレノマさん。その途中の通路で騒ぎが起きていた。
看守に取り囲まれて騒いでいるのは・・・リクだ!

俺だ!!俺がやったんだ!!スコップをドラム缶に入れたのは俺だ!!

叫ぶリク。まあ、確かにね。うん。入れたのはリクですよ。その通りだ。
3人目にしてようやく本当の実行犯が名乗り出てきたという流れでございます。

とはいえ、看守にしてみれば何が本当なのかよくわからない。
そもそもスコップを入れた理由もよくわかっていないわけですし。
てなわけで、面倒だからということで2人まとめて特懲送りとなってしまいました。

リクにとっては初めてである特別懲罰房。
果たして地獄の責め苦にどこまで耐えることができるのか?
月は大きく欠けており、このままでは夜を照らすことも難しくなるのではないかと思える。
そんな状況での特別懲罰房・・・不安ですなぁ。

やはりレノマさんも衝動的に罪を告白するべきではありませんでしたな。
ちゃんとリクに説明し、納得させてから動くべきでした。
目で訴えかけたからといってそれで納得するリクではありませんものね。

リクは痛みで喋ってしまうようなことはないと思える。
だが、精神的な揺さぶりやウソに対しての免疫はないと思える。
そういう戦法でこられたとき、果たして動揺をみせずにいられるのだろうか?
そして、この特懲からはどうやってでてくることができるのだろうか?
やはり高木さんの働きに期待するしかないのだろうか?
うーむ。脱獄遥かなり!!



第82房 拷問  (2012年 48号)


特別懲罰房に落ちたリクとレノマさん。
2人に看守の容赦ない責めが降りかかる。
それはいいけど、いやよくないけど、最初のページの看守は何なんだろうか。
視線を向けずにレノマさんに警棒を叩きつけている。
これはあれかね?カメラを意識しているってことなのかね?カッコつけやがって!!

ともかく。
看守はもうスコップをどちらが入れたかなんて気にしていない。
それよりもスコップを入れた目的を知りたいと考えている様子。
そりゃあ、困った話ですな。それが一番聞かれたく内容なわけですからして・・・

普通に考えれば脱獄のために持ち出されるか試したのだろうと考えられる。
が、この高性能の手錠がある限り、脱獄なんて出来ようハズもない。
遠隔操作でロックもでき、高性能のGPS付きで追跡も可能
古株のレノマさんがそんなことを知らないはずがないと看守は考えている。

真の目的はなんだ!!言え!!言うまでここから出さんぞ

なんですかね、それは?
脱獄が目的だったといってもウソつけとか怒られちゃうって話ですか?
だとしたらもう何も出来ることはないじゃないですか・・・
いや、それらしいウソをつけばなんとかなるのか?それらしいウソって何があるだろうか・・・

レノマさんたちの自白により特別懲罰房から出ることの出来た森田。
高木さんの嘆願と人手不足の件もあり、1週間の懲罰と3か月の減食で戻ってこれることとなった。
それ自体はよかったが、救われてしまった森田の心境はいかがなものであるか・・・

看守による拷問は続く。
万にひとつ、ここで折れてしまえばこの拷問地獄からは逃れられるかもしれない。
だが恐らくその後は満期で釈放されるその日まで昼夜独居房に閉じ込められる生活が待っている。
すなわち・・・それは脱獄の道が閉ざされるということ!!だから――

リク!!絶対に耐えぬくぞ!!

決意を篭めた表情のレノマさん。
その表情を7日間の間保っているのだから大したものだ。
いつしか欠けていた月も再び満ちようとしている。耐え抜けばいつかは光が差すこともあるか・・・?

レノマさんの向かいの部屋にはリクが拘束されている。
どうやら看守は順番に2人を痛めつけている様子。
悲鳴が漏れれば相手の方にそれが聞こえる。嫌な仕組みだ。

あいつもまた俺と同じように・・・必死で耐えてんだな。俺も、負けねえからな!!

意思を再度固めるレノマさん。さすがである。
だが、その意地が看守の責め苦をエスカレートさせる結果となる。
というわけで、やり方を変えると宣言する看守。取り出したりますは、どこにでもあるカッター
ただのカッターと侮るなかれ。これからやるのはまさに拷問といえる行為だ。

こいつは初めてやる方法だからな。ぎこちなくてもカンベンしろよ。

そう宣言し、レノマさんの左手の人差し指の爪にカッターを当てる看守。
中ほどに当てて、一気に先の方に振りぬける。
爪は指先の肉と一緒に削げ、神経が密集している指の肉が露になる。
さすがにこれにはレノマさんも悶絶。
悲鳴こそ押し殺した感じがあるが、押し殺したが故にその表情の変化は激しい。
おかげで看守は手応えを感じてしまったようだ。これはいけるな・・・と。

いかれてる。まるで遊びを見つけたガキ。エスカレートは明白。
こんなこと・・・延々とくり返されたらたまったもんじゃねえぞ!!

全くですね。カッターを見つめる看守の顔がすげぇヤバイことになっている。
微妙に無表情になっている感じがあまりに危うい。何だその目は・・・!!

剥きだしになった指の肉にカッターの刃を突き刺す看守ってうおあああああああ!!
さすがのレノマさんも悲鳴を上げる。これは見ている読者も悶絶する。感想書いてる自分も今悶えている。

喋るまでずっと続けるぞと宣言する看守。だがもちろんそれだけではない。
追い込みはするが、あくまでも目的は動機を吐かせる事である。なので取引を持ちかけてくる。

もし、お前が先に自白するっていうんなら、たった3か月の軽塀禁ですませてやる。
そして栗田のみ、昼夜独居の上10年の加刑だ。

中指の爪にカッターの刃を当ててそう呟く看守。
だが、自身が助かりリクのみ加刑される。そんなことをレノマさんが認めるはずもない。
それを認めるようでしたら、わざわざ森田を救いに落ちてきたりはしないですものね。

誰がリクを売るものか!

そんな意思を見せるレノマさんを見て、看守は責め方を変えてくる。カンのいい奴だ。

隣の栗田にも試してみようか
2人共黙っていれば、この特別懲罰房に延々といることになる。この痛みと共に。
だがな、お前が吐けばそれで2人共特別懲罰房から出られる。
栗田も・・・この痛みから解放してやることができる

この呟きはかなり効果があった様子。見るからに衝撃を受けているレノマさん。
そのレノマさんを残して去る看守。
しばらくした後、リクの房から悲鳴が聞こえてくる。これは厳しい。レノマさんの心が揺れている。

おまえもこの激痛を・・・そんな小せえ体で・・・

強固な意志を持っているレノマさんでありましたが、これは厳しい。
責め苦にはなんとか耐えられるかもしれない。自殺用の薬を用意するほど誇り高い人ですから。
しかし、仲間のためを思ってしまうとどうだろうか・・・
見事に弱味につけこまれてしまった感じのあるレノマさん。一体どうするのでしょうか。

レノマさんの行動も気になるが、今後の展開も気になるところである。
拷問を開始してから7日が経過している。つまり森田の軽塀禁が解かれる時期でもある。
解放された森田が高木さんと相談して動く可能性はあるかもしれない。
むしろそのぐらいしか事態を好転させる手段が思いつかない。
まあ、2人が動くにしても方法はわからないんですけどね・・・

それかあれだ。いわゆる恩赦って奴を利用したらいいんじゃないか?
難産だったブタさんが立派な子供を産んだ!今日はお祝いだ!特別懲罰房の2人も出してやれ!!
てなことが起きたりする可能性もひょっとしたら・・・いやぁーさすがにないかぁー?



第83房 意志  (2012年 49号)


レノマさんに取引を持ちかけた看守。
その効果を高めるために隣の房にいるリクを痛めつけて悲鳴を聞かせる。
看守はリクの爪も削ぎ、その肉に刃を突き立てる。
まさか2週に渡ってこの描写を目にすることになろうとは・・・!!あがが。

佐々木・・・今の悲鳴が聞こえたか?
限界を超えた苦痛にお前は今助かりたいと思っているはずだ。
ただ・・・仲間を裏切ることへの後ろめたさがそうさせないだけなんだろう。
だから俺は与えてやった。
仲間を苦痛から解放してやるという大義名分を!!
さあ吐け!!お前は必ず落ちる!!

なんともえげつないやり口である。だが有効だ。
実際レノマさんは落ちかかっている。
この拷問は人間の所業じゃねえ!!こんなのが何日も続いたら・・・と考えている。
自身だけではなくリクもその拷問を受け悲鳴を上げている。これは精神的にも磨耗しますわなぁ。

痛えよな・・・もう・・・もう・・・辛えだろ・・・
もともと・・・無謀だったんだよ。脱獄なんてよ・・・
もう・・・耐えなくていい・・・

そう・・・たった3か月の軽塀禁ですませてやるから自白しろ。
ただし栗田は昼夜独居の上、加刑10年だがな。

何!?リクの拷問中だったはずの看守が何故ここに!?
まさにいつのまにって感じである。
慌てて振り向き抗弁するレノマさん。

俺はなぁ・・・自分が助かりてえから自白するんじゃねえぞ・・・
俺はただリクを助けてえだけなんだ。この苦痛から解放してやるために!!
リクを・・・リクを助けるためなんだ・・・違う・・・俺が助かりたいんじゃねぇ・・・
俺はっ!自分が助かりたいんじゃねぇ!!

自分にそう言い聞かせるように叫ぶレノマさん。
実のところ、看守はそこにはいない。ゴキが這っているだけである。
己の挫けそうな心と、それによる後ろめたさが幻覚を生み出したのであろうか?
かなりの勢いで追い詰められていますな・・・

こんなバカげた拷問なんか終わらせてやる。

すっかり消沈した様子のレノマさん。扉越しに看守に話しかける。
拷問を行っていたのとはまた別の看守であるが、口を割るのに人を選ぶ必要はないでしょうな。
というわけで、リクの状況を尋ねるレノマさん。
その様子を聞き、解放するために自白するという流れに持っていくわけですな。
ところが、看守はこう述べる。栗田はツメをあんなにされても口を割らない、と。
さらにレノマさんがやられた爪はまだ1本だけか、と。
どういうことかと問うレノマさんに看守はこう返す。

あー知らなかったのか、お前の大切な恋人ちゃんの惨劇を。
憐れなもんよのう。栗田の奴は・・・特別懲罰房にぶち込まれた早々だ。
7日前から1日1本ずつやられてる

な・・・なんだと!?なぜリクだけ!?
あの拷問してた看守、やり慣れてないみたいなこと言ってたのに、ずいぶん前から練習してるじゃねえか!!

栗田の方が落としやすいと思ったんだよ。加藤さんはな。
お前も持ちかけられたあの取引をな、実はぶち込んでから2日目に栗田にも同じように持ちかけてたんだわ。

なるほどねぇ。
まあ、確かにリクの方が痛みに弱そうに見えますものね。
簡単に自白させれそうと考えるのは当然であったか。
小さい子供だから拷問しにくいとかそういう意識はまるでなかったらしい。おのれい。
にしても、ようやく看守の名前が出てきましたね、加藤看守
てなことはさておき、取引を持ちかけられたリクはその時こう答えたらしい。

ムダだ。俺は死んでもレノマを裏切らねぇ

相変わらずリクの根性は凄まじい。
こうと決めたら絶対に折れない信念ってのを感じさせてくれる。
看守も責め方を間違えましたな。もっと情に語りかけるような作戦。
誰かに罰が降りかかるぞと脅すような責め方ならばもっと揺さぶれたであろうにさ。
看守としては頑として仲間を売らない姿勢ってのは理解できないのかもしれない。
リクのその返事を笑う看守。
一方レノマさんは衝撃を受けていた。

あいつ・・・7日も前から・・・
それに引き換え・・・俺は・・・俺は・・・

悔しさの余り力が入り、拘束されている鉄棒が歪んでいる。
もちろんそれで脱出できたりはしないが、憤りは伝わってくる。屈しそうになった自分が許せないのでしょうな。
なので、やってきた加藤看守にこう告げる。
1日1本ずつなんてなまぬるい。なんなら10本まとめてやってみますか。と。

確実に落ちると見ていた相手が挑発を行ってきた!!
目論みの外れた加藤看守は怒りのままに本当に10本の指全ての爪を削いでくる。えぐい。
クソいてぇと呟くレノマさんであったが、その表情には多少の生気が戻ってきている。

ありがとよリク・・・お前のおかげで乗り越えたぜ・・・
すまなかったな・・・リク・・・かんべんしてくれ・・・

どうにか持ち直したレノマさん。
加藤看守もこのままでは口を割らせるのは難しいかと考えている。
だが、まだ別の手はある様子。

佐々木を解放しろ。そしてうまいもんを食わせてやれ
看守室で特別食を食う佐々木の姿。それを撮影して栗田に見せる。
友達はさっさと自白し解放されたと偽ってな。
希望をへし折る。これが本物の拷問だ!!

共に苦痛を与えたのでは共通の意識が芽生える。
なので、片方を甘く扱い不公平感を与える。
これによって信頼関係にヒビを入れさせる。いろんな所で目撃される策略である。
柱のアオリにも"離間の計"発動!!と記載されております。

果たしてこの作戦は上手くいってしまうのだろうか?
レノマさん、長い監獄生活で贅沢な料理を胃が受け付けなくなっていた!とかそういうオチはありえるのか。
それとも上等な料理のために出産を控えた豚さんが犠牲になりそうになって高木さん反発とか。
そろそろ、救いの手がどこからか差し伸べられるという展開が見てみたいところである。雰囲気だけでも。



第84房 演技  (2012年 50号)


リクが頑張っていることを聞き、落ちかけていたレノマさんが持ち直しました。
看守間で言ってはいけないことの連携が取れてなかったようですな。ハハ。

というわけで、加藤看守。レノマさんを解放すると言い出す。
持ち直したレノマさんを落とすのは難しい。なのでターゲットをリクに絞るとのこと。

奴を支えているのは佐々木との絆だ。もしその絆が壊れたら?

笑みを浮かべながら計画を口にする加藤看守。
炊場に配属されたばかりとのことだから若いのかと思ったが、そうでもないのかな?
少なくとも指示を行えるだけの立場にはあるようだ。
というわけで、今回は失敗しないようにちゃんと他の看守と話し合いをしておく。

まず、2人の絆を断つ為に誤解を生じさせる必要がある。
レノマさんに飯を与え、看守たちと和解したかのようなライブ映像を見せてやるとのこと。
その際、わけもわからず解放されたレノマさんの不信を払拭させねばならない。
騙すときこそリアリティが必要だ

栗田よ・・・お前は言ったな。死んでも佐々木を裏切らねえと・・・
だがな・・・希望を失った魂は簡単に折れるぞ

というわけで、加藤看守の計画がスタートする。
実のところリクも相当に弱ってはいる。そりゃあこんな拷問、弱らないはずもないわな。
だが、レノマさんもまだ頑張っている。それを支えにしてリクも踏ん張る。
俺から折れるわけにゃいかねえだろ!!って話だ。ヌハァ。

しかし、そうやって頑張るリクに対しやってきた看守はこう告げる。
佐々木が自白した、と。

そしてレノマさんを解放し、取調室に入れる加藤看守。
解放とは言っても特別懲罰房から出たというだけのようですな。またすぐぶちこむことも可能か。
それはさておき。突然解放されたことの理由を説明する加藤看守。

ひとまず今日から3日間休戦だ。
刑事施設視察委員会の奴らが来るんだよ!あの偽善者どもめが!!
おい。テメェ、これまでの取調べをチンコロして助けてもらおうとか考えてんじゃねえぞ。
残りの刑期19年。五体満足で過ごしたけりゃあ俺を怒らせんなよ。

ふむ。なかなかいい理由を考え付いたものですな。
まあ、椿のところの看守によれば特別懲罰房に入れてしまえば視察もされない様子ですが。
囚人が入ってなくとも、明らかに拷問器具が用意されてる部屋みたら一発で指摘されますものね。
とはいえ、その辺りの都合は囚人にはわからない話か。
どちらにしても視察委員会に拷問のことを話すわけにはいかないレノマさん。
今度はそっちにスコップを入れた原因を探られる可能性もあると考えるからだ。それよりもリクが心配なレノマさん。
加藤看守は先に解放し、今は別室だと説明する。
ちょうどそのタイミングで普通の懲罰房に移動させられるリクの声が扉の向こうから聞こえてくる。

リクの声・・・本当に解放されてたんだな。

嬉しそうなレノマさんでありました。いい顔している。
しかし、実のところは看守の芝居。
取調べ時に録音していたリクの声を再生し、移動させているように見せかけていたのだ!!
わざわざ重り入りの袋を引きずって演出までしているとは。これが騙すときに必要なリアリティ・・・

見事に誤解してしまったレノマさん。
その眼前に食事が運ばれる。思わず警戒して後ずさるレノマさん。
美味い飯を食わせてやれと前回言っていたが、普通の囚人食じゃないですか、これ?
いや、美味いことは美味いのかもしれないけども。

警戒するレノマさんに対し、栗田はしっかり食っていたと言う加藤看守。
なかなかに上手いことを言う奴だ。

そうか・・・あいつは食ったか・・・
きっと・・・3日後に再会する拷問に備えて体力をつけておこうとしたんだな。
わかった!リク!俺も食うぜ!!

てな感じで、見事に策に嵌ってしまうレノマさんでありました。
一方のリク。レノマさんが自白したと聞かされてもにわかには信じられない。そりゃそうだ。

敵を目の前にしてる時のあいつぁめっぽう強いんだ。特に、でっけえ敵に対してはな。

レノマさんを信じているリク。実はちょっと前まではかなり折れそうだったりしたんですけどね。
それはさておき、リクの眼前には信じられない光景が映し出される。
レノマさんが解放され、看守となごやかに過ごしている光景だ!!
背後からの撮影なので表情が見えないのはアレだが、見えたらあんまりなごやかにはなってないだろうしなぁ。
少なくとも刺青のおかげでレノマさんということは疑いようもない。

う・・・うそだろ・・・

これはやばい。リクも看守の策に嵌ってしまった様子。
レノマさんはすぐに看守の策に気付き、カメラも発見する。が、時既に遅し。
ライブ映像はリクのもとに届けられてしまった後でありました。

リク!!騙されないでくれ!!リク――――!!

すっかり心が粉砕されたような表情になっているリク。こいつはヤバイ。
果たして立ち直ることができるのか?出来るとしたらその切欠は何か?
信じられないからもう一度映像を見せてくれと頼むリク。
上手く言ったと思って警戒せずに看守が見せたら、その先には暴れているレノマさんの姿が。
なんて展開だったらすんなりやり過ごせそうなんですけどねぇ。
その場合、映像を見せた看守は前回に引き続き連続で失敗を犯すことになる。まあ、どうもいいけども。

次号予告の内容は、希望なきリクの明日はどっちだ!?である。
うむ、何が起きるのかさっぱりわからない予告なため、絶望感が増してしまう。困ったね!!



第85房 崩壊  (2012年 51号)


看守の策謀にかかり、信じた友の裏切りの映像を見せられるリク。

違う!!リク!!違うんだ!!
俺は自白なんかしてねぇ。信じろ!!信じてくれ!!

大暴れしながら祈るレノマさん
蹴りをくらって倒れた看守の左腕が折れ曲がっているように見える。すげぇ蹴りだ。
だが、そんなレノマさんもさすがにスタンガンには勝てない。
加藤看守にスタンガンを押し当てられ、崩れ落ちるレノマさん。
同じタイミングで、拘束から解放されて崩れ落ちるリク。シンクロしてますなぁ。

誰かリクに・・・伝えてくれ・・・俺は・・・何も・・・

スタンガンをくらって倒れたレノマさんを蹴りつける加藤看守。
そのもとへ、リクに映像を見せていた看守が戻ってくる。
リクが完全に心折れた様子と聞き笑顔を見せる加藤看守。顔の下半分を鼻血で血塗れにしながら。怖いよ。

拘束を解かれ、特別懲罰房の床に投げ出された状態のリク。
ここで終わりだなんて信じられない様子。

あの映像・・・あのレノマ・・・かもしれない・・・俺を騙そうとして・・・
あいつなら・・・やりかねない・・・
あの映像のレノマは看守がなりすました、にせもの!!

無理矢理に良い方に解釈をしようとするリク。
確かにやりかねないとは思いますけどね。
しかし、鎖の切れた拘束具が落ちた音に驚き、ひねり出した空想を自身で否定してしまう。
鎖が切れるとは・・・どれだけ激しく使い込んでるんだこの拘束具。

何を寝ぼけたこと言ってんだ・・・どっからどう見てもレノマだったじゃんかよ・・・

にせものを用意するという発想はあったが、騙されてメシを食っているという発想にはいかなかった様子。
まあ、それも都合の良い考え方といえばそうなんですけどね。

脱獄・・・
30年も・・・こんな所で生きてかなきゃなんないのかよ・・・
おじさんの仇をとれないまま・・・

絶望的な気分になるリク。
倒れたまま仰向けに移動し、鉄格子越しに空を見上げる。
が、空は曇っているのか優しく照らしてくれるはずの月の姿は見えない。

希望が・・・見えない・・・もう・・・生きる気力も・・・

希望も生きる気力もなくなった。
それでも体は生きようとして飯を食わせろと腹を鳴らせる。
そんな矛盾した状態にも苦悩してしまうリク。

・・・ちくしょう。どうすりゃいいんだ・・・今までの苦労は全部水の泡・・・
あれも・・・これも・・・全部・・・もう・・・どうにもならない・・・

悔しさの余りに足を打ちつけ、髪を引きちぎり叫ぶリク。
なるほど。完全に心を折られた様子でありますな。

なんで・・・喋っちまったんだよ・・・
レノマ・・・何折れてんだよ・・・デケェ図体してよ・・・
あの日の近いはなんだったんだよ。
信じてたんだぜ。丸太ん棒みてえな腕も。負けず嫌いなところも。優しいところも。過去を話してくれたお前も・・・
そういう強いところ全部・・・信じてたんだぞ・・・なのに・・・
なのに裏切・・・裏切・・・うら・・・ぎ・・・

裏切り。その一言を最後まで口にすることが出来ないリク
思い起こされるのはスラムの少年たち。
みな辛い想いをして生きてきている。レノマさんもそんな一人であった。
そして、強く思い出されるのはおじさんの教え。

わかってる・・・人のことを裏切り者だなんて・・・簡単に言っちゃダメなんだって・・・
ただ少し・・・しんどくて・・・
・・・・・・・・・・・・今度だけは・・・

涙を零すリク。
床に出来た水溜りには雲に隠されて見えなかったはずの月が映っている。
希望は見えない。それでもおじさんは優しく見守っていてくれているということなのだろうか・・・

どっぷりと絶望的な状況に浸ったリク。果たして逆転の目はあるのか!?
誰かリクに伝えてくれというレノマさんの叫び。
それを果たせるとしたら誰なのか?やはり高木さんの出番となるのではないか?
とはいえ、どうやってリクと話すところまで持っていけるかはわからない。
でも、どうにかして活躍していただきたい。
そろそろ責め苦を受け続けるのも厳しくなってきたのでスッキリした展開を見たいところであります。



囚人リク 11巻


第86房 察知  (2012年 52号)


暴れだしたレノマさんに殴り倒されはしたが、ともかく看守の陰謀は成功しつつある。
って、あのレノマさんに殴られ蹴られしてるのによく無事でいられたな看守。
腕とか折れている様子もないし、なんだかんだでこいつらも鍛えているってことなのか!?

それはさておき。
加藤看守。ついに最後の仕掛けに入ろうとする。
裏切られたと思っているリクに揺さぶりをかけるためにささやかな取引をもちかけるつもりだ。
さすれば必ず吐く。奴の抱えるネタはきっと相当にでかい。そう考えている加藤看守でありました。

失意のリクに向かって静かに語りかける加藤看守。
自白しなかったお前は満期を迎えるまで昼夜独居が確定だとまずは脅す。
そしてその後でラストチャンスをやろうと言い出す。うむ、アメとムチですな。

どちらが先に計画を考えた?
首謀者じゃない方はある程度の温情をかけてやる。ただし!その逆は地獄だ。佐々木はお前が首謀者だと言ってるぞ。
さあ吐け。計画がどうやって進められたか。1からすべてを話すのだ。

首謀者と言われるとどっちがってのは難しい気がしますな。
先に脱獄を意図したのはリクである。
が、2人で協力してと言い出したのはレノマさんである。この場合どっちが首謀者となるのだろうか?

首謀者なんてどうでもいい。知りたいのは計画の内容だ

あ、そうでしたか。でも脱獄だと知ったらたぶん首謀者も知りたくなりそうな気がするな。

栗田よ・・・お前を支え続けた絆は決壊したのだ。
もはやためらうことなど何もない。佐々木に罪を被せてそのまま一気に吐いてしまえ!!
そうだ・・・恨め・・・憎め!!貶めてやれ!!言え!!すべてを溢してしまえ!!
どうした!!吐けっ!!全部!!何もかも!!

計画は・・・俺が立てた

それだけ告げて気を失うリク。
結局、リクはレノマさんに罪を被せるようなことはしませんでした。
これは加藤看守にしてみれば想定外。大焦りの様子。
上手くいったと思ったのだが、思わぬ反抗にあって愕然って感じですね。

夜。気絶から回復したリクはひとり特別懲罰房で横たわり呟いている。

レノマ・・・俺・・・裏切られたと思ってさ・・・正直お前を恨みかけた・・・
でもさ・・・恨めなかった・・・
俺もあのスラムで生きてきたんだ・・・わかってる・・・
誰かを裏切ったり見て見ぬふりをしなきゃ・・・自分は生きていけないことがたくさん・・・あって・・・
つらい思いをしながらも生きてきたんだ・・・必死に・・・おまえも・・・
そんな・・・お前をさ・・・恨めるもんか・・・

スラムという厳しい環境で過ごしてきたという身の上では同じ2人である。
恨もうと思っても、そう考えると恨めない。
てな風に考えれるリクはやはり優しい男だと思う。
恨む相手の境遇や過去を思いやれる人間なんてそうはいないと思えますものねぇ。

レノマさんにヘマして拷問に付き合わせてしまったことを詫びるリク。
そして月を見上げ、おじさんに脱獄できなくなったことを詫びる。

脱獄・・・そういや・・・あいつ・・・一言も脱獄のことに触れなかったな・・・なんでだろ・・・

一瞬頭を掠めた疑問。その疑問が回答へと導いてくれる。
ひょっとして、あいつら脱獄のこと掴んでねえんじゃねえのか!?という答えに!!

もし知っているなら必ずそのことを言う。隠す必要はない。そりゃあ確かにない。
全部知ってるふりをして吐かせようとしたんだと考えるリク。
そう考えると、あの映像も一瞬しか見せなかったのは明らかに不自然だと解釈する。

て・・・ことは・・・レノマはっ!!あいつぁ吐いてねえんだっ!!
おじさん!!レノマってばスゲー奴だよぉ!!

感激の涙をこぼすリクでありました。よかったよかった。これでまた闘える・・・!!

さて。仕上げと思っていたのに崩せれなかったことを知った加藤看守。荒れてますな。
しかし冷静さは残っている。覚悟を決めた2人にもはや拷問は通じないと認識している。

わからん・・・わからんぞ・・・囚人同士など利己的で自己中の獣同然。
それがあれほどまでに・・・認め合うことが・・・

2人を合わせてみるか、と言い出す加藤看守。
油断させて発言を引き出そうとかそういう意図があるわけではない。
ただ・・・あいつらの様子を見てみたいのだ、と加藤看守は考えている。ほう?

どのような思惑でセッティングしたのかはわからないが、数日振りに顔を合わせるリクとレノマさん。
お互いの指を見てそれぞれが酷い拷問を受けていたのだなと認識する。
そして、お互いよく生きてたなと確認しあう。よかった生きてて・・・

リク「でも、お前にはちゃんと謝んなきゃならねぇ。俺・・・お前を1度疑っちまった。ごめん・・・」
レノマ「俺は・・・1度お前を本気で売ろうとした。悪かった」

お互いが謝罪をし、しんみりとした空気が流れる。
そんな空気を打ち破るようにリクに頭突きをかますレノマさん。そして笑顔。
暖かい日が差す特別懲罰房。2人の顔にも笑顔が見えるのでありました。
さて、この様子を見た加藤看守は一体何を思ったのだろうか・・・?

ひとやまは越えた感じがありますが、それでも解放はされない2人。
再び特別懲罰房にそれぞれ送られ、枷をかけられる。
拷問する意味がないとはいえ解放はできないので、とりあえず繋いでおいてるって所だろうか。

リクよ・・・もはやなんの手立てもない・・・わけじゃない・・・
森田!!お前だけが頼りだ!!

2人の運命は森田秀充に託された!森田の方で来たか!!

きつかった拷問描写はとりあえず終了になりそうですね。よかったよかった。
さらに、逆転の兆しが出てきた様子。
軽塀禁から解放された森田はどのように動いて2人を救い出すのであろうか?
高木さんが関わってくるのかどうなのか。
それにしても、レノマさんは森田に指示を出していたのだろうか?
録音装置がある以上、声に出して指示はだせないが、指で背中に字をかくなりで伝える方法はある。
その指示に従って何かしてくれる可能性はあるが・・・一体何をしてくれるのか?
予想はつかないが、上手いこと働いて欲しいものである。期待しているぞ!!
にしても、加藤看守の心の動きも気になるなぁ・・・



第87房 伝達  (2012年 53号)


リクとレノマさんの絆の深さに戸惑いを隠せない加藤看守。
だが、頑強に口を割らない2人の態度を見て、隠し事の重要性を意識せざるを得ない様子。

やはり脱獄としか・・・
だが手錠がな・・・外せるはずもなく・・・ん!?はずもなく・・・その思い込みが間違いだとしたら・・・

慌てて何事か調べ出す加藤看守。なんだかヤバイ雰囲気。

この男は!?そうか、そうだったのか。こいつは極楽島前代未聞の一大事。
許さん・・・許さんぞ・・・俺の手で一網打尽にしてやる

真実解明に向けて意欲を見せる加藤看守。
どうやらリクのここ最近の動きを洗った様子。
そうなれば、当然あの男と頻繁にあっていたことは明らかになる。そう、脱獄のスペシャリスト、田中一郎だ。

というわけで、S棟を訪れる加藤看守。
看守にもN棟専門とかそういう分類はちゃんとあるんですな。
しかし、田中一郎。例のじいさんと並んで座っているが、何か話したりしているのだろうか・・・?
じいさんも多少は寂しさがまぎれるかもしれないし、よかったですね。

田中一郎は過去4度の脱獄すべてにおいて手錠を外している。いわば手錠抜けのスペシャリストだ。
ならば、この男がリクに手錠抜けを教えたのに違いない。加藤看守はそう考える。
というわけで、カマをかけてみる加藤看守。栗田はキサマに教わったことをゲロしたぞ、と。
しかしこれを理論的に返す田中一郎。

だったら極楽島の大事件でしょう。なのにS棟の看守は1人も来ずに、N棟のあんたがたった1人で来るのは不自然だ。

さすがでありますね。こういう分析の鋭さは随一である。
この場の追求を逃れ、リクが捕らえられていることを知った田中一郎。
何か動きを見せたりするのでしょうか・・・?

加藤看守は田中一郎から反応を引き出すことはできなかった。
だが、クロであることは間違いないと推測している。
そこがクロであれば、その先の推理は磐石のものとなりますからねぇ。

続いてレノマさんの周辺を探る加藤看守。
すると、前回の懲罰での不自然な点に着目してしまう。
前回の懲罰。そう、あの見取り図を手に入れた懲罰の話である。
それに関わったのは山岡さん。働き盛りで突然の辞職。しかも退職したその日にレノマさんは釈放。
これを偶然と考えず、怪しいと考える加藤看守。す、鋭い・・・

何か取引の臭いが・・・!!よし、ちょうどいい。明日は非番だ。奴を訪ねてみるか

もうフェードアウトするのかと思われた山岡さんにまさかのスポットライトが!
でもこのスポットライトはどちらかというと、脱獄犯とかに向けられるサーチライトの様なものですな。
あまり当てられたくない光である。逃げてー!!

というか、凄いですな加藤看守。まるで名探偵のようである。
真実を追究しようという意欲的な姿勢が垣間見える。
拷問もそのための手段の一つに過ぎなかったということなのだろうか・・・恐ろしい男よ。

未だ捕われのリクとレノマさん。
しかしレノマさんは面会の機会のあった森田に密かに言付けをしていた。
極楽島に潜ませてあるファミリーになんとかしてこの窮状を伝えて欲しいという内容だ。

だが、スコップ調達の件で外部と関わる仕事から外されどうにもできない様子の森田。そりゃそうか。
かといってあきらめるわけにもいかない。何とか他の手立てはないか考える。
そんな風にして動きの止まることのある森田に声をかける高木さん。冷凍室に呼び出し、相談を受ける。
こういう部下のケアとか、そういう行動は本当にマメな人でありますなぁ。
森田をどうにかして元気付けようとする高木さん。そんな高木さんに救いを求めようとする森田。

お頭なら・・・お頭なら・・・
しかし・・・この人の心を動かすには、すべてを話さなければ・・・でも・・・

悩みつつも意を決して高木さんに外への連絡を頼み込む森田。
そしてついに、高木さんにレノマさんが脱獄を考えていることを明かしてしまう。ほう、これは・・・
さすがに驚きを隠せない様子の高木さん。
その行動には心動かされるものもある。だが、炊場のお頭として力を貸すことはできない。

脱獄に協力したとなるとなんらかの罪が炊場全体に下される。すまんが協力はできん。

お頭という立場を誰よりも重んじる高木さんである。これは当然の判断か。
その代わり、脱獄の話は自身の胸に留めておいてくれる様子。ううむ。

高木さんがどうにかしてくれるという感じはもはや完全になくなったと見ていい。
ならば、もう、森田が自身でなんとかするしかない。誰にも頼めないのなら・・・俺が出るしかない!!

やるしかねぇ・・・やるしかねぇ・・・やるしか・・・やるしかねぇ!!
ボス・・・まかせてください・・・

グワッシャアァ

悲壮な決意を胸に秘め、自ら足を圧搾機に巻き込ませる森田。
ガシュンガシュンいってたからもしかと思ったら、本当にやりおったよ!!

左足大腿骨を粉砕骨折した森田。救急車で運ばれる。到着次第緊急手術の必要がある大ケガだ。
刑務所の医務課で対応しきれないほどの大ケガをすれば外の病院へ搬送される!
そうして外のファミリーに連絡を取るのが森田の作戦であった。
遠のきそうになる意識を気合でつなげる森田。
狙い通り、外の総合病院へ救急車で搬送されていきます。

ああ・・・シャバの空だ・・・
けど・・・予想以上の警備だな。こんな中この暗号文を落としても、ファミリーが拾って見つけてくれるのか・・・!?

不安に思うのは仕方がない。
当然囚人を外に出すのだから警備の数は多い。
さらに暗号文は簡単に見つからないよう、小さく折りたたまれてある。
こんな目に留まるかもわからないサイズのものを果たして見つけてくれるものか・・・?

信じろ!!ファミリーを信じろ!!必ず見つけてくれる!!
けたたましくサイレン鳴らして救急車が刑務所から出てくりゃ何かあったと察してるはず!!
接触できるチャンスはここしかねぇ!!頼む!!見つけてくれ!!

願いを込めて、暗号文を落とす森田。
救急隊員や警備の人間はそれに気付かない。
病院に入り、自動ドアが閉まろうとする中、新聞を持った男が暗号文を見つけて拾い上げる。
この男は敵なのか味方なのか。目を見開く森田。
その目に映ったのは、暗号文を拾った男がまくる右腕に刻まれたダブルドラゴンクロスの刻印
そして、その刻印の刻まれた右腕が形作るのはファミリーを信じろ。それ以外はクソファッキンの構え。
全てを懸けた森田の願いは届いた!!今は安心して休むといい・・・

森田は予想以上に熱い男となっている。ファミリーを信じる心の勝利だ!!
いや、今はまだ前哨戦に勝利したに過ぎない。
ここからダブルドラゴンクロスと加藤看守との戦いになるわけだが・・・一体どうなるのか?
加藤看守は山岡さんに接触しようとしている。見取り図の件がバレるのは致命的だ。
そうなる前にどうにかしたいところだが・・・どうするのだろうか?
さすがに消してしまうというのは・・・少年漫画の主人公側の行動としてはどうなんだろうか。ギャングらしいけども。

しかし、消さずにどう解決するのかは正直わからない。
もうこうなったら、脱獄のことはさておき、加藤看守にリクとレノマさんが身の上話をしたらいいのではないだろうか。
特にリク。無実の罪を着せられた。犯人は鬼道院だ、と告げたら面白いことになるのではないらろうか。
真実を追究する名探偵加藤であるならば、その件を探ろうとするかもしれない。
そして鬼道院に気付かれて消されるかもしれない。主人公側がやるわけじゃないから問題ないって寸法だ!!
はたしてどうなることか・・・目が離せない展開になってきましたな。



第88房 夫婦  (2013年 1号)


厳重な警備の中で緊急手術を受ける森田。
こんな状況なのによくもまあ気絶もせず暗号文を落とせたと感心する。
その命懸けの行動に答えようとダブルドラゴンクロスのファミリーが動き出す。

潜入中のファミリーは10人弱とそれなりの人数。
荒事が得意そうな顔の者もいれば、いかにも普通の人といった人相の者もいる。
様々な作戦に対応することができそうな顔ぶれであるが、どのように動くのだろうか?

ファミリーが動き出そうとしている頃、非番の加藤看守。
家の様子が描写されています。
美人の奥さんに子供が2人。家族と一緒に夕食を取ろうとしてたりとなかなかいい父親みたいですね。
囚人相手には非情な看守であるが、家庭に入ればいい父親ってことなのだろうか。
まあ、犯罪者と家族とでは対応が違ってても当たり前ですけどね。

子供が大きくなってこの家もそろそろ手狭だな。
このスコップ混入事件、解明の手柄を独占すれば昇級は確実。これがいわゆる人生の転機ってやつか・・・

ンフフ・・・とほくそ笑む加藤看守。
登場時は若い看守なのかと思っていたが、そうでもないんですな。
子供がどのくらいの年齢かはわからないが、塾に行ってるってことはそれなりっぽい。
山岡さんのところの子供たちより上かもしれないし、そうなると山岡さんより年上だったりするのか?
階級は他と変わらないけど、先輩として他の看守に指示を出せる立場にいたのだろうか?その辺りはよくわかりませんな。
ともかく、手柄を独占したがっているのはわかった。その辺りに即けこむ隙があるか?

スーパーごくらくじま。
この店のレジで働いているのは山岡さんの奥さん。
そして山岡さん自身もこのスーパーで働いている様子。
建築家の夢は再燃したのかもしれないが、とにかく子供たちのためには別の働き口がいるといったところか。
その山岡さんを尋ねてやってくる加藤看守。
ここで判明したのは、加藤看守は山岡さんと同期だったということ。
別に仲が良かったわけではないが、知らない仲というわけでもない様子。
ベンチに座りながら加藤看守、山岡さんへの揺さぶりを開始する。なぜ刑務官を辞めた、と。

公務員の座を捨ててまで何を求めた。いや、求めたわけじゃねえ・・・か。追い込まれたんだろ佐々木に。
一体何があった。俺は・・・佐々木が脱獄を考えてるとにらんでる。
お前のことも調べた
ギャンブルで借金漬けのお前に大金を握らすかわりに奴は・・・何を求めた?
マスターキーか?いやそれはムリか。失くなればすぐに発覚する。リモコン式だから型をとるわけにもいかない。
じゃあ・・・手錠のキーか。いや、それもムリだな。
あれは厳重に管理されている。お前のような下級の看守が触れられるシロモノじゃねぇ。では・・・見取り図か

まるで刑事か探偵のように推測を口にしながら真相に迫っていく加藤看守。
実際、それが一番怪しいと踏んでいたんでしょうな。
それでいてとぼけつつ、推測を口にすることで相手を追い込んでいったわけだ。うーむ嫌らしい。

核心に迫ったところで山岡さんの側に近づく加藤看守。肩に手をまわし、素直に言えという。
徹底的に調べ上げればお前のやったことはボロが出るとも。それを知った家族は何と言うかな、とも・・・
うーむ。さりげなく足を踏みつけたりするのも合わせてとても嫌らしい。
ネチネチした取調べだが・・・やたらと似合うから困る。
そして山岡さんもこの追い込まれるというキャラが非常に似合っているから困る。適材適所って奴ですね。何か違う。

調べたりするのは本当にやめて欲しい山岡さん。加藤看守を跳ね除けようとする。

なら吐け!!見取り図はどこに隠した!!まさか雑居房に堂々と持ち帰れるはずもあるまい。
木工場かぁ?そうなんだろ!!木工場のどこだ!!教えろ!!言え!!

逃げ場のないほどに徹底的に追い込まれた山岡さん。
レノマさんの表情が浮かぶが、それ以上に強く浮かぶのは家族の笑顔。
家族を守るために・・・拳を強く握りながら苦渋の選択をする山岡さん。見取り図の収められている場所を口にしてしまう。
それを聞き出した加藤看守。嬉しそうですな。
まあ、さすがに同僚をわざわざ告発したりするつもりはない様子。この件は黙っておいてやるとのこと。
それはありがたいが、山岡さんとしては加藤看守に言っておかないといけないこともある。

加藤。俺が刑務官を辞めたのは、借金の帳消しのためだけじゃねぇ。
何が正義で何が悪なのか、わからなくなっちまったからだ

実際、辞める必要があったわけじゃないですからねぇ。
それでも辞めることにしたのは、まさしく山岡さんのが口にした通りの想いがあったからなんでしょうな。
現実世界の刑務所はともかく、スラムが存在する作品内ではまともな法の裁きが下されているわけでもない。
そんな状態で囚人となった連中に責め苦を与えるのは果たして正しいことなのか・・・

くだらん。我々が正義で囚人が悪。それ以外には何もない

強く言い切る加藤看守。ふうむ、揺るぎないように見えるが・・・?
この断じた観念が揺らぐとしたらどうなるのか。見たいような気もしますなぁ。

家族と共に食事をとりおえた加藤看守。なかなかによいごちそうさまでしただな。さすがに炊場担当なだけのことはある。
それはさておき。加藤看守は明日を待ちきれない様子で、食後早速刑務所に向かう。
第27木工場で証拠となる見取り図のコピーを抑えようという考えでありますな。

いよいよ辿り着いたぞ。この決定的確証を手にする瞬間に!!
佐々木・・・栗太・・・俺の勝ちだ

確信を持って製図作業室の引き出しをあける加藤看守。
だが、そこには何もなかった。
念のため他の引き出しもあけてみるが、もちろんそこにも何もない。

山岡めがぁ・・・騙しやがった!!

顔を歪ませて盛大に悔しがる加藤看守でありました。ハハハ。
どうやら山岡さん、こんなこともあろうかとメッセージを残していた様子。
製図室には捜検が入るので引き出し保管ではいずれバレるだろう、とのことだ。
まあ、捜検に限らず、他の囚人が発見しちゃうこともありえたでしょうからねえ。引き出し保管は危険だ。
なので冷房の配管に細工をしたのでそこに隠せとレノマさんに事前に伝えていたらしい。
なるほどねぇ。もちろん見取り図が見つかったら自身の見の破滅ってこともあるが、気の利いたことである。
この事前の策が功を奏したって感じでありますな。よかったよかった。

その山岡さん。スーパーの仕事を終えた帰り道で妻の明穂さんとお話。
加藤看守に迫られたのを気に病んだのか、罪を洗いざらい告白することにしたようだ。

宝くじが当たって借金を返せたっていうのは・・・嘘なんだ。
本当は・・・囚人と取引をした・・・発覚すれば俺は・・・

犯罪者・・・なのね。あなたは・・・私は、犯罪者の妻

山岡さんの告白に静かにそう答える明穂さん
。 もしもあなたが刑務所に入ることになれば、その時は子供たちは私が守るわ、とも言ってくれる。
うーむ。なんとも切なくって申し訳なくって。山岡さんもすまないと言うしかなく・・・

しょうがないじゃない!!刑務官の頃より、今のあなたが好きなんだから

そりゃーしょうがないですよね。愛の力は偉大ということだ。
まあ、家族を省みないパチンコ狂いだった刑務官時代の姿と、今の家族のために一生懸命な父親の姿。
どっちが好きかといったら比べるべくもありませんわなぁ。

ねぇ。月・・・きれいね

囚人との取引。犯罪者と呼ばれてしかるべき行為をした男とその妻に対しても、月は優しく照らしてくれる。
その月の輝きに照らされ、山岡さんの心にも平穏が戻るようになるといいですなぁ。
いや、少なくとも妻の優しさには触れることができたのだし、愛を感じることはできているか。羨ましい話だ。

羨ましいといえば、加藤看守の奥さんも結構美人だった感じがある。
なんですか?刑務官になると美人の奥さんがついてくる特典でもあるんですか?
こりゃちょっと極楽島の求人を確認しないといけませんな!
いや、山岡さんは刑務官になる前から明穂さんと付き合いがあったみたいだけども。

さて、翌日。レノマさんを救うべくファミリーが行動を開始する。
刑務所への運搬員に紛れ込んでやってきたのは、レノマさんの部下である神木和哉
今回の冒頭で出てきたファミリーの中でも一番目立っていた人物だ。
その神木さんが高木さんと接触した。
果たしてここからどのようにしてレノマさんを救い出す流れとなるのだろうか?

高木さんがキーになりそうな展開になってきました。実に楽しみである。
ファミリーの行動には期待したいところであるが、救う方法は本当に分からない。
加藤看守はかなり真相に辿り着いている。
今、レノマさんたちが特別懲罰房から解放されたとしても、常に加藤看守の監視の目がつくこととなりましょう。
そうなると、消えてもらうのがレノマさんたちにも山岡さんにとってもありがたい話であるのだが・・・
でも、それをすると今回登場した加藤看守の家族が哀しむことになるんですよね。
少年誌の主人公側の行動としてもどうかと思うし、難しいところだ。
頭を打って記憶でも飛ばしてもらうしかないんじゃないかと思える。
手柄を独占しようと思って脱獄の推測を誰にも話してなかったのが仇になった!みたいな。ありえる解決かもね!



第89房 反撃  (2013年 2+3号)


執拗な看守の追跡に脱獄計画は最大の危機を迎えている。
これまでは危ういところがありながらもそれなりに順調であった。
しかし、今は明日が見えない。希望はシャバのファミリーの動き次第という状況。

巻頭のカラー絵にもそういった部分が反映されている
これまでは破竹の勢いでぶち破るぜ!みたいな扉絵でした。
が、今回は枷に繋がれ弱った2人の姿。うーむ、これはキツイ。何の漫画かと思われてしまうぐらいにキツイ。

というわけで、そんな弱った2人を救うべく動き出すファミリー。
炊場のお頭である高木さんに渡りをつけに来るのでありました。

脱獄の手助けを請う神木さん。しかし、高木さんの態度は森田の時と同様。
責任のある立場である以上、軽々に飲んでくれる筈も無い。森田の暗号文にもそう書かれている。
だが、諦めるわけには行かない。

俺たちはボスに惚れたんです。あきらめるバカがいますか。
男が男に惚れて、その人が旧知に立たされているなら命を張る。そんな森田は・・・バカなんでしょうか?

土下座の体勢に入りながらそのように語る神木さん。
高木さんが真っ直ぐな人だと聞いているので、真っ直ぐにぶつかりに言っているようですな。
そして偽りのない本音、というか展開したいと考えている作戦を告げてくれます。

炊場の帳簿を操作します。それに手を貸してください。
それで加藤という看守の収賄を偽装し、こちらの傀儡にします。
1度・・・どうかボスに会ってください。そして試してください。
俺たちのボスを。森田が命をかけたボスを。佐々木麗乃真が、取るに足らない男ならキッパリあきらめます。お願いです。

グッと肩に取り縋り懇願する神木さん。必死な様子が見て取れる
。 そのタイミングで囚人と接触していることが看守に発見されてしまう。ピピィー!
慌てて運送会社の人間が神木さんを引き剥がす。
そして神木さんも表情で希いつつ、口では囚人だから1発かましとこーと思いましたと説明する。
どうにか物陰の交渉はそれでごまかせたみたいだ。
さて、請われた高木さんはどう動くのか・・・

夜。看守は炊場での配給を夜食として取ることがある。
配膳する高木さん。看守は夜食に手をつけると、いつしか眠りについてしまう。
どうやら高木さんが睡眠薬を盛ったみたいですな。
先の神木さんとの交渉の際、高木さんのポケットに睡眠薬を忍ばせていた。それを用いたのだ。

狙いは特懲のマスターキー。
もちろんレノマさんを直接救うとかそういう危険すぎるマネはできない。
だが、睡眠薬が効いている間に話をすることぐらいはできる。
神木さんの言う通り、佐々木麗乃真という男を見極めようと考えている様子の高木さん。
森田や神木さん。2人の男の悲壮。果たしてレノマさんはその懇願を受けるだけの価値があるのか。知らねばならない。

つまらねえ脱獄の言い訳などするようなら、俺は絶対にお前を許さんぞ!

決意を胸に、特別懲罰房にやって来る高木さん。
扉越しにも血や汚れなどの臭いが鼻につく酷い環境である。
扉を開いてみれば、飛び込んでくる光景は予想以上の惨事。思わず手で口を覆う高木さんでありました。

呼びかけを行えば直にレノマさんは答えてくれる。
そして話を開始する高木さん。まず森田が圧搾機に飛び込んで今は外の病院にいることを伝える。

森田から聞いた!!お前は、なぜ脱獄をする。

脱獄計画が少しずつ漏れていっていますね。
でも、今の状況ではそれについてウダウダ言う事もできない。
田中一郎の時の様に口封じするなんて出来る状態でもない。なので、尋ねられたことに正直に答える。

自由だ。自由を手にしたい

このレノマさんの返答に怒りの表情を見せる高木さん。

笑えねえな。俺たちは罪人だ。他人の自由や平和を奪った側だ
話にならん!栗田の理由もどうせその程度なんだろう。

リクは違う。あいつは無実だ

思ってもみなかった言葉が飛び出し、驚愕の表情を見せる高木さん。さらに驚きは続く。
リクは親と慕った大好きな警察官のおじさんを目の前で殺された。殺したのは警視総監の鬼道院。
そのうえ、その罪を着せられて30年の実刑を受けてここにいる。

冤罪・・・そ・・・そんなこと信じられるとでも・・・

確かににわかには信じられない話でしょう。だが事実だ。
この間の運動会の授賞式での騒ぎの件もある
憎き仇、鬼道院を目の前にして気持ちを抑えきれずにつっかかっていった奴がいた。あれこそ揺るがぬ証拠である。

ふーむ。レノマさん解放の意味合いが強いエピソードかと思ったら、運動会の話をこう繋げてきたか!!
もちろん高木さんも参加しており、授賞式での出来事は印象に残っている。よい流れですなぁ。

俺たちスラムの人間に人権はねぇ。そんなことには慣れていたつもりだが。
だが、あいつは・・・あいつは・・・まだ13歳なんだぞ。
それがこんな所へ飛ばされて・・・拷問され・・・爪をぶっ飛ばされ・・・
なぁ・・・なんか間違っちゃいねえか

俺たちは罪人だと高木さんは言った。自身も何らかの罪を背負い、償う意識を抱いているのでしょう。
だが、冤罪で小さな子供が刑務所に放り込まれ、拷問まで受けている。
これは確かに間違っていると思わざるを得ないでしょうな。
だからこそ、高木さんは迷いを口にする。なんなんだ・・・正義って・・・

知るか。だがな、俺の正義ははっきりしてる。俺の正義は、あのちっちぇ男だ
俺はどうなったってかまやしねぇ。でも・・・あいつだけでもこのムショから出してやりてえな。

自決用のカプセルを渡し、血の盃を交わした相手であるリク。
己の道を照らす相手と認めた男である。俺の正義はリクだと宣言しても何もおかしいことはないですわな。
その真っ直ぐな言葉に嘘偽りがないのは高木さんも感じ取った様子であります。
迷いの表情を見せたままレノマさんの房を後にする高木さん。
その足で今度はリクの房へと向かう。
そしてそこで見たのは、若干13歳の少年が枷に繋がれ弱っている姿であった。無実である少年がこのような目に・・・
憤激を堪えきれず、床に拳を打ちつける高木さん
さてはて。事実を知ってしまったのであるが、どのように動くのでありましょうか。

一方の加藤看守。
山岡さんに見取り図の件でハメられたと気付き、怒りの電話をかける。
日が明けても怒りは覚めやらぬ様子ですね。そりゃそうか。
電話に出た山岡さんに、家族がどうなってんのかわかってんのかと脅す加藤看守。だが――

俺は女房に真実を打ち明けた。もう恐れるものは何もない。逮捕するならしろ。脅迫は通じないぞ

震えながらそのように答える山岡さん。格好いいわぁ。
電話越しだったからこそなんとか虚勢が張り切れたって感じですね。
非番でもないし直接迎えなかったので直接脅せなかった。これで山岡さんから聞き出すのは難しくなったと判断する加藤看守。
だがせっかくの出世のチャンス。諦めることはできず、どうにかして次の手を考える。
スコップ混入は糞つぼに潜って脱出する実験だったということは既に推測されている。
後は脱獄を企てていたという証拠さえあればいい。証拠さえあれば・・・

待てよ・・・何もバカ正直に見取り図を探さなくたって・・・
そうだよ・・・とにかく「証拠」さえあればいいんだ・・・ねつ造しつまえば・・・

あいつらが脱獄用に必要であろう手作りの看守服。それを俺が用意し、木工場に忍び込ませる・・・と。
そして、発見するのも俺。
これであいつらも終わりだ

ついにねつ造という強硬手段に打って出る加藤看守。やっちまいましたねぇ。
そして、最後のそのポーズは一体何なのか
素晴らしいアイディアに酔っているポーズなのか。日の光を浴びてとても御満悦な様子が見て取れる。
緊迫した空気を一撃で破壊する力を秘めたカッコイイポーズだ!!何やってるのだか。

さて、カッコイイポーズについてはさておき。
加藤看守VS高木さん&レノマファミリーという駆け引き合戦が始まりそうな雰囲気。
ファミリーが収賄をねつ造しようとするなら、看守は脱獄の証拠をねつ造する。
ねつ造合戦の勝者はどちらになるのか。立場ある人間である看守の方が不利に思えるが・・・はてさて。

職務熱心なだけなら傀儡になったりするかな?とも思ったが、ねつ造に手を出す人間なら可能性もある。
家族を愛する姿勢も見せているし、自身のねつ造が発覚したら、という脅しも出来るようになる。
うーむ、反撃できる形が見えてきた気がしますね!!ここからの展開が楽しみだ!!



第90房 携帯  (2013年 4+5号)


策謀が動き出す。
脱獄計画の証拠をねつ造すべく、看守服の用意を行う加藤看守。
期限は3日。それまでに加藤看守をどうにかできないと、ねつ造した証拠でカタにはめられることとなる。
ダブルドラゴンクロスの面々はボスを無事に救い出すことができるのか!?

しかし、やはり刑務官の給料はそんなに高くないみたいですね。
車も小さいし、部屋も確かに手狭だ。家族のために出世を願うというのも分からなくはない。
だからといってその犠牲にされる方はたまったものじゃないですけどね。

看守服の作成を依頼した翌日。
朝早くから業者の荷物を搬送している高木さん。
そこにやってきたのは山田運送の業者に扮した神木さん。荷物を渡すと同時に高木さんに何かを手渡す。
それが何かはすぐに判明する。まさか刑務所でこいつが使えることになるとはな、という代物。
そう、携帯電話だ!!
かなりの小型化が施されている品物である。手の中に隠せるし、隠匿するには良いものだ。
通話機能などはおそらくなく、メールの送受信のみが行えるものでありましょう。

神木さんたちは加藤看守をはめる策を考え付いている。
だが、それを実行するには内部協力者の存在が必要不可欠となる。どうか高木さんに協力してほしい・・・願う神木さん。
その祈りが果たして通じたのか。メールに返信が来ました。その内容は――

やる。指示しろ。高木

丁寧にも名前入りで、期待していた返信が届くのでありました。よかったよかった。
このメールからも高木さんの実直な感じが伝わってきますな。

正しいことが何かわからない。ただ、森田の覚悟に報い、栗田を苦しみから解放してやりたい。

高木さんは腹を据えた様子。こうなればもう迷っても仕方がないですものね。
さて、さっそく神木さんから加藤看守をはめる作戦が通達される。
メールは送受信すべて削除願いますとのこと。まあ、万が一のことを考えたらそうしておかないとね。
まずは極楽島特級刑務所で使用されている帳簿をこの携帯電話で撮影する。撮影機能も要しているのか、この携帯!高性能だな。
その写真でニセの帳簿を偽造するとのこと。

配食で看守室に入り込む高木さん。
こうして考えると炊場の頭という身分は便利ですな。好きな仕事に自身を配属できるわけなのだから。
看守が全員食事に立ったのを見計らい、こっそりと帳簿をめくって撮影する高木さん。なかなかにスリリングだ。
そりゃ、無事に終われば高木さんといえども一息をつくさ。ふぅ・・・

さっそく撮影した写真を送信。どうでもいいが、携帯を使うのは豚舎の前と決めているんですな。
まあ、ここなら看守もあまりこないという判断なのでしょうけども。豚さんが力をくれるという判断もあるかもしれない。

写真はなかなかの出来栄え。
確認しながら撮れるようなものでもないのに一発で綺麗に撮る高木さんはなかなか凄い。
印かんの文字もはっきりわかる状態だし、偽造するには問題ないようだ。

これで帳簿の操作は大丈夫。だが、本番はここからだ。
加藤看守を罠にはめる作戦の開始。まず、加藤看守が賄賂を受け取っていたこととする必要がある。
賄賂の品を用意するのでそれを看守の更衣室にある加藤のロッカーに忍ばせて下さいとのこと。

いくらなんでもそりゃムリだ!!
看守室までなら配膳で入り込める。だが更衣室となると話は別だ。たやすく囚人が立ち入ることなどできない場所。

と思い悩む高木さんだが、看守室に入り込む作戦もメールには記載されていた。
なるほど、これなら・・・と高木さん。
だが、看守は何ごとにも短時間のサイクルで巡回する。それをクリアしないといけない。
その問題については神木さん。なんとかしますと返信。何か考えないといけませんなぁ。

昼の3時ごろ。今度は佐々川運送の業者に成りすまして潜り込む神木さん。
なんだか神木さんばかり動いている気がするが、顔を覚えられたりしないのだろうか。時間が違えば当番の看守も違うか。

神木さんはトイレが我慢できないと装う。このままでは我慢できずにもれちまいます、と。モジモジ。
初登場時に比べてなんだか可愛い感じになっている神木さんである。この懇願に看守も折れる。
囚人用のトイレは使わせれないので刑務官用のトイレを使用させてもらえることとなった。計画通り!!

トイレに入り込んだ神木さん。まずは窓を開けて何かしている様子。何をしているのだろうか?
それはわからないが、ともかく準備は整った様子。
あとは2日後。決行するのみ!!

その2日後の昼。
偽造の看守服もできており、加藤看守の手にはテーラー寺西の袋が握られている。
一方、ダブルドラゴンクロス+高木さんの作戦も決行の時を迎える。
どうやら神木さん、配管に細工をしてトイレの汚物をあふれさせた様子。
看守が自身でこれを始末するとは思いにくい。こういう汚れ仕事は囚人にやらせるはずという読みだ。
その読みは正解。高木さんのもとに掃除の依頼が来たので、1人でそれを受ける高木さん。来たか、決行の時!!

高木さんを呼びに来たのは城之内という小さな看守。若いのか、看守内でも立場は低いようだ。
高木さんに掃除を任せた後、用事があるのかどこかに立ち去る。うーむ、油断してますな。信頼されているともいうか。
それに付け入る感じにはなるが、四の五の言ってはいられない。べしゃべしゃと音を立てて移動し、用具入れを開ける。
その中には加藤看守のロッカーに仕込むための賄賂が隠されていた。こいつを持って更衣室に行き、忍び込ませれば作戦完了。

ただし問題は、俺がこの場を離れている間に看守が様子を見にきた時だ。
俺がいないとなると看守にとっては一大事。騒動になることは必至だ。どうか・・・

窓の方を一瞥し、祈る高木さん。
トイレを出て更衣室を探して走り回る。そうか、場所は知らないからまずは探さないといけないのか。
途中で看守と出くわす可能性もあるし、これもまた危ない橋ですな。

どうにか無事に更衣室を探り当てた高木さん。加藤看守のロッカーに賄賂を忍び込ませる。
だが、高木さんが移動している間に看守がやってきてしまいました。
高木さんの言う通り、短いサイクルで行動しているため、確認に戻るのも早いということですね。

いない!!あいつどこへ行った!!
やばいぞ!!目を離したスキにどこかへ行きましたなんて始末書もんだぞ!!

囚人の行動や補足より、自身の罰を先に恐れる辺り、城之内看守はやはり下っ端ですなぁ。
罪を逃れるために都合のいい考えをしようとする城之内看守。
糞でもしているのかとトイレの個室を開けて回る。最後の個室。ここにいなければ、高木さんが抜け出したことが明らかになる。
が、その個室から飛び出してきたのは看守の腕。
隙間から右腕だけ突き出し、扉を開けるのを押しとどめる。

高木はここにいる。気分が悪くてゲロ吐いてやがる。
俺がついて監視してるから大丈夫だ。それとも見てみるか?ゲロまみれの高木を。

そういって追い払おうとする看守の腕。
その言葉を証明するかのように、弱弱しい高木さんの声が個室内から聞こえてくる。
城之内看守はそれで納得したのか引き下がる。とりあえず始末書は免れたとほっと一息。うーむ、ダメな子だ。
今の看守って誰だろ?とは思うが、まあいいかで済ませてしまう。ダメな子!!

もちろんこの看守は本物ではない。
トイレの個室にいたのは看守に化けた偽物。手錠を外し、看守服の腕を使って偽装した男の演技であった。
となれば、この演技は手錠を外せる男にしかできない。そう、脱獄王、田中一郎の電撃参戦だ!!

高木さんの声は例の携帯で声を録音していた様子。うーむ、本当に高性能だな。このサイズで。
なるほど。高木さんが窓の方を一瞥していたのは、そこから田中一郎が入ってくるのを知っていたからなんですな。

頼もしい味方の参戦で、炊場編の戦いもいよいよクライマックス!!
加藤VSファミリーの戦いはどのような決着を迎えるのだろうか。
今のところねつ造作戦は互角の推移を見せている。
が、加藤看守が自身で発覚させるのに対し、ファミリー側は帳簿偽造の発覚を誰かにさせないといけない。
このタイムラグがどうでるか・・・まだ予断を許さない状況であります。
下手するとどっちのねつ造も成功しました。加藤看守とレノマ&リクの全員が罰されました。なんて可能性もあったりする。
最悪の事態を回避することができるかどうか・・・楽しみでありますな。

しかし、田中一郎はどうやって参戦したのだろうか?
田中一郎がリクたちの脱獄計画を知っているのは、当のリクかレノマさんしか知らないはず。
レノマさんが事前にファミリーに通達でもしていたのだろうか?
そうなれば神木さんたちが協力を取り付けるよう高木さんにお願いして、という流れでいけなくはない。
となると、まずは高木さんと田中一郎の邂逅が描かれる可能性がありますな。どんな風に話すのか楽しみな2人だ。



第91房 連結  (2013年 6号)


加藤看守のロッカーへの仕込みを終えた高木さん。急いでトイレに戻る。
途中で看守に声をかけられ、見つかったかと思ったがそこは既にトイレの目の前。
掃除を命じられたと説明することでことなきを得ることができた。
外に出ているのは何でだよという疑問を看守が抱かなかったのは幸いですな。

城之内看守にトイレ掃除終了の報告をし、ようやく一息がつける高木さん。まさしく寿命が縮む思いでしたな。
そんな高木さんに声をかけてくるのは、共犯者となってくれた田中一郎。
ここで2人が事前に話し合いをしていたシーンが描写される。

レノマさんはシャバの仲間に田中一郎のことを伝えていたらしい。手錠抜けができることも。
そのため、神木さんは高木さんに田中一郎の協力を取り付けてくださいと言ってくる。
それを受けてS棟を訪れる高木さん。
田中一郎は既に加藤看守にカマをかけられたこともあってか、すぐに応じてくれそうな姿勢。
だが、それを申し出た高木さんを完全に信じるわけにはいかない。なので問う。
関わらずにすませようと思えばできたはずなのに、お前はなぜ手伝う、と。

受ける義理のない罰・・・苦痛から・・・俺は、栗田を解放してやりたくなりました

顔を歪ませ、激憤に耐えるかのような表情を見せる高木さん。
その言葉から、リクの無実と投獄の経緯を知ったのだと田中一郎は即座に理解できる。
こうしてここに、高木・田中の協力体制が整ったのであった。ありがとうございます!!

段取りの説明。
掃除をしに高木さんがトイレに入る。そこで用具入れから神木さんが隠した金品だけを持ち出す。
田中一郎はそれまで外で待機。高木さんが更衣室に出発したら窓からトイレに入ってくる算段となる。
そして用具入れにはあらかじめ偽装した看守服の袖が用意されている。
その袖を着けて、見回りにきた看守をごまかすという計画だ。
これは手錠を外せる田中一郎にしか出来ない芸当である。まあ、教えれば他の囚人にもできようが、教えるわけにはいかんしな。

その間に・・・俺は・・・更衣室まで・・・行っ・・・て・・・加藤のロッカーに・・・賄賂の金品を忍ばせておき・・・ます・・・

苦しそうに作戦説明をする高木さん。
そりゃ、その体制じゃ苦しいさ。腕をクロスさせた状態で伸ばしてるおかげでプルプルしていらっしゃる。何してんの!!
そんな愉快な様子の高木さんを真面目な顔で見ながら真面目に会話を続ける田中一郎は紳士である。

携帯電話のボイスレコーダーに高木さんの声を録音しておくというのは田中一郎のアイディア。
看守を確実にごまかすために仕込んでおこうと提案する。
この辺りの頭の回り方はさすがに群を抜いている感じがしますね。経験の差か。
というわけで、高木さんに苦しそうな声を渾身の演技で吹き込んでもらうことにします。

高木「もしもし高木です。苦し・・・
田中「まずは録音ボタンを押してからだ。『もしもし』はいらん

大真面目な顔をしてボケとツッコミを行う2人。なんだこの妙なおかしさのある空間は!!
お頭の天然感あふれるボケに真面目にかつ的確なツッコミを入れる田中一郎。うーむ、これは名コンビの予感が!?
というか、高木さんが思った以上に可愛いキャラになっていて困る。

協力しての作戦はどうにか成功することができた。これで高木さんのできることは全て完了である。後は神木さんたちに任せるのみ。
そして田中一郎は例の礼品楽しみに待ってるぞと言って去っていく。
なんだろう。協力してもらったのだから礼をするのは当然だが、田中一郎は何を要求したのだろうか・・・?

己の成す仕事を終え、神木さんに後事を託す高木さん。
田中一郎もまたリクやレノマさんについて想いを馳せる。
そのレノマさんは、相変わらず特別懲罰房で酷い目にあっている。
加藤看守が殴りつけ、口の中を切ったのか、激しく血をまき散らす。
血が看守服に付着したのを見て満足気な加藤看守。どうやら偽造した看守服を上に重ね着していたらしい。
なるほどな。偽造した服を自ら発見しても、それが2人が用意したものかは特定しづらい。
が、発見された看守服に2人の血液が付着していればどうか。DNA検査で2人のものというのはすぐに判明する。
なんで血がついているのか?という疑問はあるが、脱獄の容疑がかかっているときに証拠品としてこれがでれば心象は相当悪くなる。
なかなか考えてますなぁ。加藤看守も。

栄光のエピローグへ。いざ!!

重ね着した看守服を勢いよく脱ぎ去る加藤看守。
何気にポーズを決めているように見えるのだが・・・アンタも好きねぇ。

栄光のエピローグに向けて一直線。かと思いきや、搬入の監視当番の時間が挟まれます。
とりあえず当番から戻ってきてからにするか、と証拠品となる看守服を机に置いて外に出る加藤看守。
さあ、ここからが没落の開始だ。

搬入の監視を行っている加藤看守の側に近づくのは、山田運送の制服を着た神木さん。
神木さんは自信を佐々木麗乃真の部下ですと説明する。
そしてさらに、家族がどうなってもいいんですかと脅しをかけて2人で話ができる場所を作り出すことに成功する。

動き出したのは神木さんだけではない。他のメンバーもそれぞれの行動を開始している。
山田運送の代表を騙るメンバーは、電話で炊場の偉い人にこう告げる。お宅の加藤さんが賄賂を強要してきます、と。
予め送り届けておいた山田運送の正規納品書と刑務所の帳簿のコピー。
それを見比べると、実際に納品した数よりもずいぶん少ない数が帳簿に記載されているのが分かる。
その宙に浮いた品を我々は毎月シャバでさばき、その金を収めさせられていましたと説明する。刑務所と山田運送の契約更新を盾に。

高木さんが撮影した帳簿のコピーにより偽造帳簿の作成は成った。
このコピーを本物の帳簿とすり替えたのも高木さんの功績である。うーむ、高木さんの働きはやはり大きいなぁ。

帳簿のコピーをどうやって手に入れたのか。刑務所側としては気になるところだろうが、それは言えませんとさらりと流す。
それよりも賄賂の話の方が重要じゃないですかねと誘導しているわけだ。
加藤看守がロッカーに金品を隠しているはずだと告げ、改めさせるように仕組んだりしている。

コピーをマスコミ経由で公開されるとさすがに刑務所の立場が悪くなる。
少なくとも、部下から犯罪者を出したことになる直属の上司の責任は免れないところとなるだろう。
ウチも同犯だから公にするつもりはないですよと、白々しく述べるメンバー。さすがにギャング。見事な手際でありますなぁ。

そして、他のダブルドラゴンクロスのメンバーはもっとギャングらしい行動に出ている。
加藤看守の家にあがりこみ、武器を突き付けて家族を脅している。
その動画を見せられ、さすがに青くなる加藤看守。だが、神木さんは容赦ない。

お前も山岡さんの家族を脅迫材料にしただろ。自業自得だ

まさしく自業自得。
動画で揺さぶりをかけるというのもリクに対しやっていたし、その辺りも因果が巡ってきてますな。

人質という手段で相手の行動を封じ、さらに神木さんは告げる。上司にお前の収賄を暴露している、と。
もちろんありもしないことなので、加藤看守の動揺は薄い。
が、ありもしないことをあるようにしたと説明する神木さん。帳簿を偽物と差し替え、加藤看守のロッカーに金品が忍ばせてある、と。
その説明を受けても半信半疑な加藤看守。というか、信じたくないんでしょうな。

勘の悪い野郎だな。テメェ追い込まれてんだぜ

これまでずっと丁寧な様子だった神木さん。特に高木さんに頼み込む姿勢はかなり真摯な姿が見てとれた。
その神木さんがイキイキとした感じで脅しをかけている。うーむ、ギャングとしての本領発揮といったところであるか!!
これには加藤看守も下唇を噛んで悔しそうな表情を見せるしかない。ハハハ。

上司は加藤看守のロッカーを改め、金品が存在していることを確認する。
これにより、賄賂の強要があったことになってしまった。こうなると加藤看守は看守という立場から犯罪者という立場となる。
犯罪者となった加藤看守がレノマさんたちを陥れようとしても簡単には聞き入れてはもらえまい。
ここに、見事な逆転劇が成立したわけである!!やったな!!

ただ、加藤看守を貶めてもレノマさんたちが解放されるとは限らないんですよね。
第2、第3の加藤看守が出てきて、レノマさんたちはずっと解放されないという可能性もある。
また、加藤看守の家族は人質に取られたことを警察に報告するだろうし、そうなると話がややこしくなる可能性はある。
なので、神木さんとしては加藤看守を傀儡にする方向で進みたいと考えるのではないだろうか。
いつでも貶められる手駒として扱うという方向で動くのではと推測する。
けど、それはそれで厄介な話ではあるか。山岡さんと違って脱獄を応援してくれる人ではないし、地雷となることもありうる。

どのように処置をするのかは次回のお楽しみでありますな。
即日クビになって一般人になった加藤看守が家族ごと闇に消える。というのが一番後腐れのない解決であろうが・・・
少年漫画的には主人公側がそういう動きをするというのもなぁ。別の意味で後腐れがあるように思えてしまう。
まあ、最終局面の展開を楽しみに見るとしましょう。



第92房 終局  (2013年 7号)


加藤看守の圧倒的優勢は崩壊した。逆に追い詰められている。
だが、まだ完全には折れ切っていない加藤看守。冷や汗でダラダラになりながらも何とか踏みとどまる。
理屈では負けそうになっているが、自身の方が立場は上なのだと思い込んでいるため、そこでゴリ押しを図ろうとする。

お前たちがいくらごたくを並べようと、所詮は悪党のたわごと。
自己中心。短絡的。他人を脅し、暴力を振るい、犯罪を犯し平和を乱す社会のゴミ。
そのゴミが・・・この国に認められし国家公務員であるこの俺に、よくも偉そうな口を聞いてくれたな。
いいか、低能な貴様らにもわかるように言ってやる。ギャングはクソ。スラム生まれもクソ。即ち貴様らはクソ中のクソ
立場をわきまえろクソ犯罪者どもめが!!

この世界の住人は、スラムの住民はもうそれだけでクソだと決めてかかっている。
その見下した態度が、ここに来て爆発したようだ。だが・・・

監獄法で禁じられている拷問は犯罪じゃないのか

神木さんの反論に怯む加藤。看守なら何をやっても許されるのかという問いに答えることはできない。
ああ・・・一応拷問は禁止されているんですな。
中でやっている分にはバレはしないということで平然と執り行われているようですが。
そういえば調査委員会みたいなものもありましたな。あんまり期待できる組織でもなかったけど。

神木さんが加藤看守を追い込んでいるころ、家族を人質にとっていたファミリーは引き上げようとしている。
このタイミングで引き上げるということは、脅す姿を取るのが目的なだけで、本当に害する気は全然ないんでしょうな。
神木さんの交渉がどういう形になっても、家族を傷付けて脅すようなことまではしたくないということか。
それを示すかのように、脅しつけていたナイフもフェイクである。

夫が一体何をしたの?と問う奥さん。
それに対し、ファミリーの一員である女性はこう述べる。ただ一生懸命に働いているだけ。だから私たちにはジャマなのよ、と。

ふーむ。加藤家のことを気遣っているのですかね。
親を信じていそうな子供たちに、お前の親は小さい子にも拷問をかけるような奴なんだぞと言うのはちょっと・・・躊躇われますわな。
考えてみると、リクと加藤の2人の子らは見た目の大きさはさほど変わらないように見える。
そんなリクに対し容赦なく拷問をしかけることができる。
スラム生まれの犯罪者。加藤看守曰く、クソ中のクソが相手ならば、小さい子供であろうと容赦なく振る舞えるということなのだろうか。

立ち去るファミリーに対し、加藤の奥さんは最低ねと毒づき、子供たちは涙を流しながら悪者めぇ!と叫ぶ。
それに対し、一言だけ返す女性。そうよ。私たちは悪党よ。と。
うーむ、格好いいが物悲しい。やはりこのスラムそのものがどうにかならないと、意識の差は少しも解消されないのかもしれないなぁ。
どうでもいいが、子供たちが加藤看守そっくりでなんだか困る。女の子の方は特にだが、髪型を変えるなりなんなりしようぜ。

さて、加藤の上司との交渉はいよいよ佳境。
上納していた賄賂も発見されたことだし、加藤看守の罪は決定的なものとなった。
ねつ造されたものだなんて、上司には瞬時にわかるものでもないでしょうしね。

一体何が望みなんだ。うちとそちらの契約の保護・・・それとも・・・

要求してくるとなれば、やはり加藤看守のクビであろうか。賄賂を要求してきた張本人でありますしね。
しかし、賄賂要求の罪でクビにしたとあれば、監督不行き届きの罪で上司の降格も免れえないところとなる。
だが、要求されたのは思ってもみない言葉。逆に加藤看守はクビにしないでくださいというものであった。

それが目的ではありません。騒動にもしたくありませんから。
要求はただ2つだけです。1つは賄賂総額を私に戻すこと。
もう1つは・・・何事もなかったかのようにしてくれればいい。そうすればお互いに傷つかずにすむ。

上司としてみれば願ってもない。有難い申し出でありましょうな。
部下の不始末で自身に災厄が降りかかる。上に立つ者の勤めとはいえ、やり切れない思いは強いでしょう。
それを逃れられるとあるならば、相手の要求を呑むのが一番と考えるのが必定。いい落としどころである。

俺たちの、勝ちだ

勝利宣言を目の前で行う神木さん。加藤看守、強がりながらも悔しそうな表情。
なので、とどめをさしてあげようという感じに神木さんが語り掛ける。

聞け。佐々木麗乃真。栗田陸。2人を解放しろ。スコップの件はあんたの不始末とし・・・2人の嫌疑を晴らせ。

強気に要求してくる神木さんを見て、認めたくない気持ちを口にせざるを得ない加藤看守。俺は・・・負けたのか?
そんな・・・まだ・・・まだ・・・俺は・・・

それとな、上官にはお前をクビにしないように伝えてある。拷問の件は伏せておく。
すべてを忘れろ。お前にできることはそれだけだ

立ち去る神木さん。
その姿を見送り、崩れ落ちる加藤看守。
崩れ落ちたのは体だけではない。その表情も何ともいえぬものへと変貌を遂げている。な、なんといえばいいんだこれは!?
微妙にキュピズムが入ったかのような変貌。そして、嗚呼・・・という言葉。
敗れたことを実感し、それでいてクビは免れたということの安心感。さらにその安心感を与えられたという屈辱。
色々とない交ぜになり、へたりこむしかないという状況。見事に表れておりますなぁ。

看守とファミリーとのねつ造合戦はわずかな差で先んじたファミリー側の勝利。
これで加藤看守は今後うまく操れる存在となったかもしれない。
脱走に向けて、有効に動かす駒となりうるかどうか。そこまで先のことはわからないが、今後の出番には期待したいところである。
変なポーズと取るだけではなく、顔芸の出来る男だというのも判明したわけですしね。
いざ脱獄という時に、妙なポーズで登場し、妙な顔芸で見送るという役目が最終的に与えられるのかもしれない。期待だ!!



第93房 光明  (2013年 8号)


今回も獄に繋がれた状態での巻頭カラー扉絵。
だが、今はそこに光明が訪れようとしている。

レノマファミリーの策略に嵌り逆転敗北を喫した加藤看守。
上司に呼ばれ会議室にてお説教。
事前に神木さんに聞かされた通り、賄賂を受けていたことにされており、さらにクビは免れるという話を聞く。
食い違いが全くないことから、自身の敗北は揺るぎないのが分かる。それゆえか表情が消えている加藤看守。

今回の件は封殺する。話はそれだけだ!!

怒りを叩き付ける看守部長。
それに対し加藤看守。スコップの混入については自分がやったと言い出す。神木さんの指示通りですな。
まあ、看守部長にしてみればそんなことはもうどうでもいいことなんでしょうけども。
そして獄に繋がれている2人のことも看守部長にとってはどうでもいい。
むしろこの封殺したい事件に関係する話ですし、さっさと解放してしまいところでありましょうて。

申し訳・・・ありませんでした

お前の顔などみたくもないと言われた加藤看守。謝罪の言葉を述べて会議室を後にする。
会議室から出てきた加藤看守を見て慌てて目をそらす看守たち。
封殺するとのことだから情報統制はされていると思ったが、ある程度は漏れてしまっているのかね?
まあ、悪い噂というのはどこからともなくでてくるものですからねえ。

加藤看守は武田看守に一緒に来てくれと頼み、特別懲罰房へと向かう。
入ってきた加藤看守を見て語気を荒くするレノマさん。
しかし、その声には答えず、無言でレノマさんを縛っている枷を外し始める加藤看守。

・・・・・・ちだ。お前たちの勝ちだ

無表情でそう告げる加藤看守。いや、ハッキリ述べるその前には下唇を噛んで悔しそうにしているのが見て取れる。
完全に心が死んでしまったというわけではないようですね。
悔しさを感じながらも、敗北を受け入れざるを得ない。複雑な気持ちが無表情を招いているのかもしれない。

枷を外しおえたところで武田看守に豚舎に戻すよう指示を出す加藤看守。
レノマさんは長く繋がれた特別懲罰房の枷を扉が閉ざされる最後の瞬間まで見ていた。
そしてそれが見えなくなったとき、心の中で告げる。

森田・・・みんな・・・ありがとうよ
リク・・・やったぞ。俺たちは勝った。生き残ったんだ!!

内心で嬉しさに心躍らせているレノマさん。
一方、その解放の立役者である高木さんは仕事しながらもどきどきしっ放しである。
神木さんがうまくやったのかどうか。それは結果が出るまでわからない。
下手を打てば解放はされない。それどころか、手を貸した自分や、ひいては炊場のみんなが処罰を受ける。気が気ではありますまい。
だから看守に声をかけられてビクッとなっても仕方ないのである。決して高木さんが可愛い系のキャラによってるとかそういう話ではない!

それはさておき、看守によってレノマさんとリクが解放され炊場の通常勤務に戻すことを伝えられる。
この吉報を聞いた高木さん。いてもたっても居られず、便所を願い出て離席。
そして便所に隠していた携帯電話を用い、神木さんたちに結果を報告する。
そうか、さすがに身体チェックがあるのだから、身に着けてるわけにはいきませんわな。

高木さんの二人は解放されたというメールを見て歓喜する神木さんたち。よかったよかった。
それにしても高木さん、前略も略していいんですよ。相変わらず丁寧な人である。

森田・・・お前の気持ち、つながったぞ。お前の信じた正義が!!

経過としてねつ造で看守を賄賂犯に仕立て上げたのだが、それでも森田の想いは正義だと高木さんは言う。
正義という言葉自体が曖昧なものであるし、そういう考えもできるってことなのかもしれないですなぁ。
少なくとも、仲間を救いたいというのは信念であり、美しい思いと言えなくないわけで。美しいは正義か!!

病院内の森田はかすかに微笑んでいる。情報など入ってはいないだろうが、なんとなく感じるものがあるのだろうか。
これもまた仲間に対する信頼の成せる技でありましょうか。美しい。

解放の立役者である神木さんを初めとしたファミリー、高木さん、そして田中一郎。
その人たちの尽力によってレノマさんは解放された。そしてリクもまた。
看守に突き飛ばされたリクを救おうと腕をからませるレノマさん。
見事に生還し、またあの誓いの日のように腕を組むことができる。懐かしさが思わず笑みを浮かべさせてしまう。うーむ、美しい。
2人のジャレつきようを見て、飽きれたように去っていく看守。

注意だけはしているが、地獄のような拷問を抜けたのだし、まあ仕方ないかと思われているのかもしれませんな。

そういやさ、彼女。ちゃんとお母さんになれたのかな

いきなりその話を切り出すリク。彼女とはもちろんお産を控えた豚さんのことである。
なんとなく高木さんの考えが移ってきてないですかね、リク。ちゃんと彼女呼びをしている・・・!!

それはさておき、無事に産んでいた様子。これは一安心。
可愛い子豚たちを見て嬉しそうにしているリク。しかし、触れようとするのはレノマさんが止める。

そっとしといてやれ。家族の時間だ

確かにそうですな。お産の話はどうするのかと思ったら、こういうまとめ方となりましたか。美しいですなぁ。

ギャングのファミリー、豚さんの家族。そして今回はもうひとつの家族の話で締めとなる。
それは加藤看守の家族の話。家に帰れば当然のように押し寄せてきたギャングの話となる。
加藤看守は囚人の逆恨みだ。もうちゃんと解決はしてきた。心配はいらない、大丈夫だと述べる。
そうは言われても、またいつ襲撃されるか不安だという奥さん。それはそうでしょうな。
ならばこの際、昨日言っていた一戸建てへ引っ越す話、真剣に考えてみたらどうだろうか。

あんなものは・・・お前が言った通り、俺の給料じゃ夢のまた夢の・・・話だ。

悔しそうにそう述べる加藤看守。
稼ぎが少なくて家族の安全を確保できないと告げるのは男として屈辱でありましょうなぁ。
だが、それでも今は最悪な事態まではいかなかったことを喜びたい。
息子の堅児くんと娘の実花ちゃんを抱き寄せ、もう絶対に怖い思いはさせないと伝える。

俺はこれ以上の何を求めていたんだ。もう絶対に怖い思いはさせない。させたくない!
だから・・・このままで・・・このままでいよう。このままがいい

明日から、また真面目に働くか。

真面目に働いてなかったというわけでもないが、昇進に目が眩んでいたのは事実でしょうからなぁ。
もはや出世の目はなくなった。後は家族の平和を守るために真面目に働く日々のみか・・・
全てを失ったわけではないが、なかなかに厳しい日々を送ることになりそうですな。
精神的にはかなり堪えたでしょうし、今後脱獄の妨害をするような動きをすることはなさそうかな。

さて、次回は炊場編の完結となるお話。
炊場編が終わりとなると、また元の27木工場に戻るのだろうか。
糞つぼに入っての脱出は見送りとなるのか?それとも・・・?
脱獄計画がどのような展開を見せるのか、注目でありますな。



第94房 復帰  (2013年 9号)


特懲から復帰して炊場での仕事に戻った2人。
豚さんに構われて嬉しそうなリク。フッ。すっかり豚さんに魅せられてしまったみてぇだな。
そんなリクにちゃんとやれと注意するレノマさん。おっと真面目な発言ですね?
え、どっちかがちゃんとやらないと終わらないから?そりゃあそうだ。
仕事がちゃんとされているか高木さんにチェックされちゃいますものね。

説教好きの面倒臭ぇ野郎が来る前に終わらせようぜ。

とレノマさんが述べたタイミングで・・・レノマー!後ろ、後ろー!!
陰口を叩くと招き寄せるってやつですね。いやレノマさんなら陰口じゃなく面と向かっても言いそうだが。

高木さんは救出作戦の全容を聞かされる2人。感慨深い話ですわな。
自分たちを救うために大ケガをした森田を気遣うリク。
まあ、入院はちゃんとできていますし、刑務所で労働しているよりよほど楽かもしれませんね。2度とはやりたくないだろうが。

てな話をしている最中に接近してくる看守。
真っ先に気付いた高木さんは2人に注意している振りをして脱獄の話をしていたのを誤魔化す。
ふむ、実直だった高木さんもなかなか腹芸ができるようになってきたじゃないですか。
注意の声から看守への声掛けが同じ調子で演技臭いのがアレですが。

高木さんは土井看守部長に呼び出される。
何事かと思ったら、病欠で抜けていた2人が復員することとなったらしい。
ああ、リクたちが入る前にちょうど欠員があったという2名ですな。病欠だったのか。
その穴を補充したためシフトの組み合わせがうまくいかないという土井看守部長。
どうしたものかなという相談を受け、高木さんが出した提案とは・・・

決定だ。2人とも木工場へ戻れ

なるほど。復員したならば補充要因である2人は戻した方が能率としてはいい気がしますな。
って考えてみたら、長いことその2人特別懲罰房にいたんだし、シフトは穴だらけだったのでは・・・?
森田の抜けている穴は高木さんが埋めると言っているが、実際この数日よりは絶対に楽でありましょう。
この数日は特懲行きの欠員2名、ケガで入院の欠員1名、そして自身は救出作戦の手伝いで時間を取られたりと苦労が絶えなかったわけで。

(佐々木・・・栗田・・・お前たち2人は目立ちすぎた。もはや炊場からの脱獄は・・・)
仕切り直しだ

大っぴらに脱獄の支持はできないものの、応援したいという気持ちはある。
確かに高木さんの言う通り、炊場での脱獄は難しいでしょうし、一度戻って仕切りなおした方がいいでしょうな。

栗田。どうか腐るなよ。茨の道であろうとも

リクの肩を掴み、そのように語る高木さん。
無罪という話を聞いてから、思い入れはかなり強くなっている様子ですなぁ。本当、いいお人だ。
レノマさんの脱獄は認められないというが、事情を知ったらまた違う意見を述べるかもしれませんな。
まあ、事情はわかったが罪は罪なので償うべきとはいいそうですけども。

だがな。お前が優しい男だということはわかった

突然の高木さんの優しい言葉。不意打ちだったのか盛大に照れてしまうレノマさん。レ、レノマさん!?
この人は相変わらず不意にこういう表情を見せるから困る。

高木さんはリクに何かを手渡す。これを田中さんに渡してくれといいながら。
ああ、これが田中一郎の言っていた報酬のアレですか。一体何だろうかな。
それを手渡し、立ち去ろうとする高木さん。その背中にリクは声をかける。本当にありがとう、と。

その言葉。豚さんへもいつも忘れるな

やはり高木さんは最後まで高木さんでありますなぁ。いいキャラだ。
言われずともすっかり豚さんとは仲良しになってますよ。

しかしこれで炊場からはオサラバか。ここに移ったのは失敗でしたなぁ。
得るものがないわけではなかったが、目を付けられたりしたし、危険も大きかった。

それもやってみなきゃわかんなかったことだよ。これは、成功のもとなのさ

確かにそうですな。ずっと成功ばかりってことはないでしょうし、失敗することだってある。
その失敗を糧とし、最終的な成功を収めればいい話である。
まあ、今回は下手すると本当にすべてが終わりになる可能性があったわけですが・・・それも全ては過ぎたことだ。

さて、転属に関してはすぐに手続きがされる。
元いたところに戻るだけだから話は速いですわな。
そういえば炊場では同部屋の相手は誰になるのかとドキドキしたものだったが最後まで豚さんと一緒に住んでいただけでしたな。

炊場から第27木工場に戻ってきた2人。
これを盛大に喜び迎え入れる27の面々。こいつは嬉しいサプライズって奴ですな。
元々人気の2人だったが、一度いなくなったことでさらに人気が高まっているのかもしれない。ハハハ。

昼。高木さんに言われた通り田中一郎のところに向かう2人。
まあ報酬を渡すという話がなくてもリクはお礼に行こうとしてたと思いますけど。今回のようにレノマさんを引きずって。

リクは田中一郎に礼を言い、そして報酬を手渡す。
その報酬とは・・・高木さんがファミリーから受け取った携帯電話!!おぉ。これが渡るのか!!
革命の闘志がこの道具を手に入れて何をするのか・・・と思ったら目的はその機能ではなかった。
そこには外から転送された一枚の画像が映し出されている。
元気そうにやっている家族の姿。弟の二郎の奥さんと子供の姿であった。

天国の二郎よ・・・お前はいつも空から見てるんだろうが、俺はずっとこれが見たかった。お前の愛した家族の今。元気そうじゃないか。

満足そうな笑みを浮かべる田中一郎でありました。
いい話ではあるが、やはり田中一郎自身は行動を起こす気はないみたいですな。
今後もリクの脱獄に手を貸してくれるかどうかは・・・貸してくれる気はしますな。なんだかんだで。

再び7人に戻った324房。歓喜の声であふれております。
またこの面々の様子が見れるというのは読者としても嬉しくはありますな。

炊場の話を聞かせて欲しいというが、さすがに話せるようなことはほとんどない。
いろいろあったがほとんど脱獄がからんだ話ですものね。
スコップ混入したら特別懲罰房で爪はがされたぜ、なんて話をしてもアレですし。
豚さんに子供が生まれましたという話ならいけるかもしれないな。まあ、実際に見ないと可愛さは伝わらないかもしれないが。

ひとつさ、とっておきの炊場土産があるんだ。

そう口にするリク。何だろうかと皆が注目する中、ズンと合掌。

嗚呼・・・ごちそうさまでした

こ・・・これは、この後光の射し方は・・・極楽島で一番美しいと言われている高木さんのごちそうさま!!
まさかこの技を身に着けていようとは・・・炊場での経験は無駄ではなかったということだな!!え?

見事な技を習得したことを示し、炊場編完結
地獄に落ちたり色々と大変だったけど、高木さんを初めとして色んな人の繋がりが強まった気がします。
さて、次回は刑務所行事でサッカー大会だ!!なんだそりゃ!!
ラグビーとか野球とか運動会とか色々やってくれますなぁ。
まあ、手をケガしている2人にしてみればサッカーは有難いか。史郎さんの出番もありそうだし楽しみな話である。



囚人リク 12巻


第95房 蹴球  (2013年 10号)


炊場から古巣の木工場へと帰還したリクとレノマさん。
そしてこのタイミングで執り行われるのは刑務所行事のサッカー大会!!
本年度第3期球技祭、15分ハーフの大会であります。
本日より昼の運動時間を使い3日間をかけて優勝チームを争う!!

谷村看守部長の号令を受けて盛り上がる囚人たち。
なんでもトーナメントを制した工場には超豪華な賞品が用意されているそうな。い、一体なんだ・・・?

ルールを守り正々堂々ハツラツと!若者らしいプレーを心がけ!美しい汗を流すべし!!

そのように述べる谷村。うーむ、まあお決まりの文句なんでしょうが言う方も言われる方も違和感のある言葉だ。

超豪華な賞品が何かは気になるが、それよりも気合が入る理由は別にある。
1回戦は第26木工場対第27木工場。
そう、いきなり史郎さんのところとの戦いである。ああ・・・いつもの意地の張り合いか!!
胸元を開きながらにらみ合う様は何か異様なものを感じさせますな。

レノマ「俺が率いる常勝第27木工場にスキはねえぞ」
史郎「だまれボケ。こないだの運動会の借りをきっちり返したる」

炊場での地獄にから復帰して早々にこの対決である。まあ、いい息抜きにはなるかもしれませんな。

キックオフ。いきなりのレノマさんの強引なドリブル
思いっきり腕を振り回してDFをなぎ倒しているように見えるが刑務所ルールではOKらしい。
まあ、多少はラフなのもありですよね。マリーシアってやつだよ。きっと。

無人の野を行く、というか無人の野にしていくレノマさん。
しかしニーロクのキーパーは極楽島の巨人、史郎さんである。
その体のデカさはゴールやボールが小さく思えるほど。まるでハンドボールみたいだ。
そしてその巨体には似合わぬ俊敏さも兼ね備えているのが史郎さんだったりするという。こりゃ1点を争う闘いになるな。

史郎さんはキーパーなので攻撃の方は大したことはない。
攻め続ければいずれは得点のチャンスがある。そのように考えるノギ。
しかしそういった考えが甘いと思えるのがここのボス連中である。いや、この2人がボスの中でも特別なのか。

自陣のゴールからシュートを放つ史郎さん。
コースはニーナナキーパーの松尾の正面。
しかし受け止めるには松尾の他にさらに4人が必要という。
このシュート何回もされたら松尾がもたないよ。

よう覚えとけ。俺はキーパー・・・兼ファンタジスタストライカーや

さようですか。まあ、色々とファンタジスタではあると思う。確かに。

というわけで、試合は0対0の膠着状態のまま後半終了まであとわずかというところまで進む。
点が入らなくてもバタバタ人が倒れて盛り上がりそうな試合ですなぁ。

残り1分。レノマさんは勝負に出た。強引にゴール前まで躍り出てシュートの体勢に入る。
熱くなればなるほど自分1人でゴールを決めたがる。史郎さんの読み通りの行動。
と思いきや、ここで天野にパスを出すレノマさん。
そう、自分で決めたがりはするだろうが、それ以上に勝つことが大事なのがレノマさんなのである。
チームのボスであるのだし、チームプレイをしても何もおかしいことはない!!

完全に裏をかかれた史郎さん。さすがにその体勢から逆方向に跳ぶことはできまい。もらった!!
と思いきや、ゴールポストに体当たりを決めてゴールそのものを動かし天野のヘディングシュートを外させる史郎さん。ア、アホな・・・

これが男のパワーセーブや

凄いどや顔でそんなことを述べる史郎さんでありました。かなわんな、この笑顔。
ブーイングやレノマさんのイカサマしてんじゃねえぞという声もどこ吹く風だ。
刑務官が言うにはルールは遵守とのことだが、今回のこれはルール的にOKなんだろうか?
まあ、暴力沙汰にならない限りは面白ければよしという裁量が働いているのでしょう。

さて、残り時間20秒というところでコーナキックの権利を得たニーナナ。
そこにリクが投入される。呼びつけるレノマさんの表情が何か企んでいるように見えて・・・危険だ!!

リクは1人だけコーナーとは逆の方向、レノマさんの方を向いている。
レノマさんは上げられたコーナーキックのボールを頭でリクの足元に落とす。
そしてリクにボールを挟めと指示する。
その指示通りボールを挟むリク。そしてその腕を掴んでその挟んだボールごと史郎さんに叩き付けるレノマさん。
人間シュートというやつですかね。足でボール挟むのは反則な気もするがどうなものだろうか。
どちらにしろ、この技も史郎さんの巨体で阻まれることに・・・

うおらああああ!!

見事なドロップキックが炸裂しました。
なるほど、味方を蹴る分にはルール違反ではないわけか。
ボールを挟んだリクを抱えた史郎さんごとゴールに押し込むレノマさんでありました。む、むごい。

史郎よ。イカサマ勝負で俺に勝てると思ったか?

思えるはずもないですわな。というかこれはイカサマという割には力勝負すぎる気がしますが・・・
まあ、レノマさんが実に嬉しそうな笑顔を見せているのでまあよいとしましょう。

いやあ、いい息抜き回でありましたな。
少し前まで地獄のようなところに繋がれてて明日も見えないとか言われてたのが嘘のようである。
ちなみにニーナナはその後無事に優勝したらしい。良かったね!!
それはいいが、豪華賞品とは一体何だったのだろうか・・・?
また谷村看守部長がニヤニヤしちゃうようなものなのだろうか。気になるところである!!



第96房 人質  (2013年 11号)


サッカー大会は第27木工場の優勝で幕を閉じた。
その豪華賞品は・・・鉛筆1本!!
芯の通った男になれよというメッセージであろうか。
菅くんの発想的には間違ってませんな。豪華かどうかは考えてはいけない。体を張ったリクも浮かばれんな。

朝食の配膳に来た炊場の人間に世間話の振りをして情報の聞き出しを行うレノマさん。
でも豚肉が食べにくくなったというのはきっと本心だと思われる。豚さんの教えはちゃんと刻まれているんだな・・・
それはともかく、スコップ混入騒ぎのおかげで搬出入のチェックが厳重になったらしい。
こうなるとやはり糞つぼを利用しての脱出は無理そうですな。
もっというと、何かを調達するのもしばらくは難しそうである。
まあ、神木さんはあっさりと仕込みを行っていたりするが、これは信頼度の高い高木さんを介しているわけだからなぁ。

昼休み。レノマさんは今日もリクを使っての筋トレを行い、2人だけで話せる場所を確保する。
足を抑えて腹筋。と思いきや抑えたリクを持ち上げる方の腹筋でありました。
この足を持ち上げての腹筋は結構キツイ。やってみるとわかるがなかなかお腹に来る。
しかし視点がぶれにくいので漫画を読みながらもできる筋トレである。一冊読み終わる間できればそりゃあもう凄いことになるよ!!
ついでに漫画を保持している腕も鍛えられて一石二鳥。うっかり笑わされると死ねますけどね。

それはさておき、計画の練り直しを考える2人。
元々炊場に入ったのはこのでかい壁を突破するためである。
その時に絞った3択。トンネルを掘るか、乗り越えるか、炊場の搬出の車を利用するか。
これらのうちの「車の利用」はダメになった。
となると残りの2つだが・・・その2つも現実的と言えるかは難しい所である。うーむ。

ますは考えを整理しましょう。1番厄介なGPS付きの手錠の外し方は既に手に入っている。
てそういえばレノマさんは手錠ちゃんと外せるようになったのかね?
その話題に触れられる前に急いで別の話に持って行っているのを見るかぎり怪しいな・・・

ともかく、レノマさんは山岡看守との取引で見取り図を手に入れた。
そしてエレベーターを使わずに下に降りられる非常階段を見つけた。
作戦はそこから始まる。まずは寝床の324房を抜け出すこととなる。
リクが腹痛に襲われたフリをして騒ぎ、それを聞きつけてやってきた看守を襲ってマスターキーと看守服を奪う。
痛みを感じる暇もなく気絶させるらしいレノマさん。まあ、レノマさんなら普通にできるでしょうな。

看守服を奪った後はまずレノマさんだけがそれを着て外に出る。
目的は更衣室でリクの看守服を手に入れることだ。
更衣室の場所は見取り図で確認済み。最短ルートを最速で戻る。
おそらくリクのサイズに合う看守服はないだろうから、ブーツの中に寝間着を仕込むなどしてごまかす。
素早く着替えた後は守衛の目をくぐり抜け、非常階段まで一直線だ。

しかし、看守服を着ているとはいえ、リクやレノマさんはそれぞれ目立つ体格をしている。
レノマさんは特に有名人である。顔を知られている可能性はとびきり高い。
だがレノマさんはその点は心配ないと言う。

俺たちの棟の夜勤の看守は昼間の工場の業務とは全く関わりのない新人かジジイだ
称呼番号とマニュアルで働いているでくのぼうよ。囚人の顔など認識してねぇ。
大人数を抱える巨大刑務所ゆえの盲点よ。

なるほどねぇ。まあ、問題なんて早々起きるまいとタカをくくっている部分もあるでしょうしね。
守衛をくぐり抜けたら、次は非常階段。
バカ正直に階段は使わず、下見で見つけた支柱のポールを使って地上84階から一気にフリーフォールを敢行する。
1階に到着し、外に出る。そこに待ち構えているのが・・・この高い壁

リク「遠いな・・・」
レノマ「高えな・・・」

壁までは見張りと看守カメラの存在がある。
看守服があるのでうまくすれば壁までは辿り着けるかもしれない。
だが、この高さだけはどうにもならない。うーむ。やはりこの壁が難関ですなぁ・・・

トンネルを掘るか乗り越えるか。もはや2択。
トンネルを掘るとすれば夜。しかし、囚人は朝まで雑居房に閉じ込められている。掘りようがない。
ならば乗り越えるか?しかしそれも現実的ではない。道具も無しに登れる壁ではない。

どうすりゃいいんだ!!

悩む2人。と、ここでリクはいきなりこんなことを口にする。もう限界じゃねえか、と。
この発言に顔色を変えるレノマさん。いやリクが言いたいのは諦めるとかそういう話ではない。

俺たちの脳みその話だよ。
もう・・・この先はほぼ思いつきの作戦は通用しないぞ。
お前も感じてるはずだ。今回の炊場でも、その前の見取り図の時だって、ギリギリだった。
失敗の許されない道のりなんだ。もっと理詰めで計画できる頭脳がいる

理詰めの頭脳。脱獄の知識と経験を持った人物。それはもちろん田中一郎が第一候補に挙がるでしょうな。
既に脱獄計画のことを知っているし、改めて打ち明ける必要もない。協力を仰ぐには最適な人物だ。

あんなスカシたおっさんとチームを組めるかってんだよ。

まあ、レノマさんはそう言っちゃいますかね。そうしないといけないかなとは思っていそうではあるが、悔しそうだ。
根っからのボス体質であるレノマさんとしてはやりにくい相手なんでしょうなぁ。
どうでもいいがレノマさん左投げなんですね。

そうだよな。
ヘタすりゃ死ぬかもしれねえ俺たちの脱獄計画に、脱獄する理由もないおっちゃんを巻き込んで迷惑をかけるわけにはいかねえよ!!
自分のことばっかり考えて・・・俺ぁ・・・俺ぁどこまでバカなんだ!!

レノマさんはそれが言いたかったわけではないと思うが・・・
まあ、危険なのでなるべく他の奴は巻き込みたくないとは前にもレノマさん自身が言っていましたな。
田中一郎にもその言葉が当てはまるかはわからないけど。

ちくしょーいい頭ほしいなぁ

脱獄とか関係なくてもいい頭は欲しいですよね。もっと回転が速くなりたいものだ。グルグルグル。

さて、今回もあぶり出しによる手紙のやりとりを行っている田中一郎。
今回の手紙はなかなか面白いことが書かれている。

鬼道院ガ行ッテキタ数々ノ悪事ノ証拠ヲ収メタデータが確実ニ存在スルトイウ情報ヲ入手シマシタガ、
告発好評マデアトワズカノ所デ、鬼道院本人ノ手ニヨッテ押収サレタモヨウ。

鬼道院はまた自分自身で動き回っているのか。アグレッシブなやっちゃなぁ。
と思ったが、倒れているのは警官の格好をしているし、これってもしやおじさんの件か?
確かに鬼道院の悪事の告発を考えていたし、その証拠を潰しに鬼道院が来たわけだからなぁ。
それはさておき、手紙にはまだ続きがある。

シカシ、別データノ存在情報ヲ入手。タダシ行方ノ判明ニハ至ラズ。
今コソカツテノ笑顔ニ満チタコノ国ヲトリモドスタメ、新東京革命党総統、田中一郎ノ脱獄ヲ望ム。

ほほう・・・これはこれは・・・面白い話だ!!
このデータさえ手に入れば鬼道院を失脚に追い込める。
警視総監汚職の報は世界へ発信され、スラムに横行する不条理な権力を撤廃させることにも繋がる。
希望のある話だ。しかし・・・田中一郎には戦えない理由があった。

スラムに人権をと標榜し戦いを続け、脱獄を繰り返してきた男である革命の闘士、田中一郎。
彼は極楽島に送られる際、鬼道院本人に脅しをかけられている。
田中一郎本人は人質をとられることを恐れて家族を作らなかった。
しかし、弟は違った。妻と息子という大切な家族がいる。それは田中一郎にとっても親戚という名の大事な存在である。

再び脱獄なぞバカなことを考えた時は

写真を引き裂き、意を示す鬼道院。
なるほど、これが田中一郎が戦えないという理由でありましたか・・・これは辛いなぁ。

田中一郎の参戦が成れば、これ程心強いことはない。しかし自らが脱獄するわけにはいかない。
となるならば、アイディアだけ頂くという方向になりますかね。
自身が脱獄するということでなければ、弟の家族に危険が迫ったりすることはない。はずである。
それでいて、リク達にデータの収集と鬼道院打倒を託す。うん、いい方策じゃないですかね。
リクとしても鬼道院の打倒、さらにはおじさんの意志を継ぐという遣り甲斐のある仕事となるわけですしね。
脱獄後も対鬼道院戦があると考えれば漫画的にも連載継続の道が開けていて安心できる。よい流れだ!!



第97房 恐慌  (2013年 12号)


弱き者のために闘おうと銃を取ったはずだった。
だが・・・弟が死んだ今、あいつの残した家族だけは守りたい。
みんな・・・俺にはもう革命家の資格はないんだ。

仲間からの暗号文を読んで物思いに耽る田中一郎。
その田中一郎の回想編が始まります。

10年前。
まだ東京に隕石が落ちる前の頃のこと。
田中一郎は商社の長男として生まれ、豪邸で生活するような身の上であった。
しかしそんな彼が選んだ道は弁護士。それも国選弁護人である。
金の取れそうな金持ちではなく、主に金銭面の事情で弁護士がつけれなかった被告人を弁護するのが仕事の国選弁護人。
ビジネスマンの父としては儲からない仕事というのは理解しがたい様子。しかし若き頃の田中一郎はやりがいを感じている。

法の下に正義は平等です。金銭的弱者だからといって権利を享受できない事態があってはなりません

見事な正義感っぷりですな。そんな兄をからかう二郎。
文恵さんは兄貴のそんな所が好きで婚約をしたんでしょ、と。
おや、田中一郎には婚約者がいたんですか。二郎の方ではなく。ふむ・・・これは。

文恵さんは議員の娘なのだろうか。父の力で法案を通していただいたと田中父は感謝している。
誕生日プレゼントで高級な腕時計を贈ったりしてますし、金持ちなのは間違いないでしょうな。
田中一郎自身は金にならない仕事をしているが、射止めた相手は金持ちの令嬢。これは商売人の父としては喜ばしいことでしょうなぁ。

本人の言う通り、田中一郎は法の下に正義は平等と信じている。
金銭的弱者の弁護を行い、その後のフォローも行ったりしている様子。
法務省関係者の子息の飲酒運転に巻き込まれたお婆ちゃんを弁護し、見事に隠蔽を暴いたりしたこともあったようだ。
ふーむ。立派な話ですなぁ。権力におもねる弁護士なんて世の中には多いでしょうに・・・

街中に立てかけられた笹には短冊がかけられている。七夕の時期ですかな。
ご自由に願い事を書いてね、という短冊を見て物思いに耽る田中一郎。短冊一枚に一体・・・何が書ききれるというのだ・・・

富める者だけが更に富み、貧しき者は更に苦しむ。変えたい。俺は・・・そんな今の社会を変えたい

そんな風に考えていた若き頃の田中一郎。やはりこの頃から革命家としての芽はあったのですな。
そんな想いを抱いたまま過ごし――ある日のこと。
あの日がやってきました。隕石落下。東京壊滅のあの日が。

田中一郎は東京在住ではない。ので隕石の直接被害は免れている。
それでも余波で窓が吹き飛んでいたりするし、どれだけ凄まじい威力だったのか計り知れようというものである。
居ても立っても居られず、車で東京へと向かう田中一郎。覚めてくれ。悪夢なら覚めてくれ!!
だがその願いは空しい。夢ではない。いや、本当の悪夢は東京についてから見ることとなる。

あの東京が瓦礫の山と化している。
道行く人は皆傷つき、瓦礫に押しつぶされた人たちも少なくはない。衝撃的な光景である。
そんな中、死体から金目のものを剥ぎ取っている男女を発見する田中一郎。おおっと、それはいけませんな。火事場ドロボウですかいな。

やめろ!!

思わず取り押さえようとする田中一郎。
だが犯行に及んだ男女は泣いていた。よく見れば、男の腕には赤子がいる。
この男女も災害の被害者。生まれたばかりの赤ん坊を育てていくには手を汚さなければやっていけないと考えたのだろう。

俺は生き延びる。
でも・・・そのかわり・・・その間・・・一生・・・この死んじまった人への感謝は絶対に忘れやしねぇ。

うーむ。そう言われてしまうとなぁ・・・これは止めるのも忍びない。
田中一郎としては黙って見逃し、死者に手を合わせるしかないのであった。うーむ。
法に照らして考えると、男女の行いは見逃すべきではないのだろうが・・・田中一郎はそこまでガチガチな主義者というわけでもない。
だからこそ苦しんでいる様子ですな。なんなんだこの世界は・・・

ここで別の人物が回想を引き継ぐ。その人物とは鬼道院!!

あの天災から10年。俺はここまで来た。混乱の時流を掴んだのだ。

そう思い返す鬼道院。彼が隕石落下直後に取った行動とは何か。それが語られます。

隕石の落下により港区を中心とする3km圏は壊滅。東京南部は一瞬で破壊されたという。
これを受けて、政府は首都機能を八王子に移転することを決定したそうな。
ニュースを見ながら一室で会話を行っている3人の男たち。
1人は警察庁長官の前園義十郎。1人は警視総監の田辺光一。そして最後の1人が警視正の頃の鬼道院である。
暴徒鎮圧の現場責任者を務めている人間なだけにこの場に参加を許されている様子。
前園長官にしてみれば東京の治安の回復は今の最大の関心ごとでしょうからねぇ。民寿党からの突き上げも厳しいようですし。
鬼道院は前園長官の許しを得て提案する。時流を掴むための腹案を。

まずは特級機動隊を創設します。自衛隊から人員を割いてください。
完全武装。その上、裁判を経ずして投獄まで持ち込める権利を与えます。
要は片っ端から最速で暴徒どもを刑務所に送り込み、力による治安の回復を実現するのです。

法整備は有力政治家を説き伏せ、非常事態宣言の発令を促せばなんとかなると言う鬼道院。
だが、暴徒を追いやる取り締まり方では地下に潜り拡散することになるのではないか?

させません。犯罪多発地域を取り囲む巨大壁を建設します。
腐り・・・汚れた空気を隔離しなければ、今は美しい善良なる市民の心身もたちまち汚染されることでしょう。
つまり、スラム街を刑務所にしてしまうのです

今の隔離されたスラム街という形は全て鬼道院が思い描いた絵の通りであったという。
そのスラムに暴力の芽を与え、それを鎮圧し、出世する。そして最終的にはこの国を統べようって話ですな。
田中一郎と鬼道院。
2人は昔から革命家とそれを取り締まる警察として戦いを繰り広げていた。
ならば回想を並列して語るのは当然の成り行きと言える話でありますわな。
さてさて、後篇の回想ではどのような内容が語られますのか。
文恵さんはどうなったのか?二郎の家族については?気になる話である。



第98房 境界  (2013年 13号)


隕石後の治安対策としてスラムを囲って刑務所にする案を述べだす鬼道院。
混乱はこれからが本番である。生き残った者、失職した者は多数。犯罪の増加は未曽有の規模となると予想される。
だから臭いものにフタをするという要領で囲いをしようと言うのだ。うーむ、なんとも酷い話だな。

しかし、そのような人権を無視した方法など、差別ではないか。

常識的な意見を述べる警察庁長官。しかしこのように鬼道院は述べる。

差別ではありません。区別です
学歴、収入、容姿。この世は区別にまみれています。
ならば分けましょう。新しい東京に必要な人間と無用な人間を。
有力な人間は復興のために壁の外へ退出させます。力なき人間は朽ちればいい。その選別方法は後ほど。

なんともハッキリと言いにくいことを言う奴である。でも爽やかな感じはさっぱりしない。
差別という言葉はあんまり好きではないが、これはどう考えてもなぁ・・・

長官は鬼道院の言葉に揺らがされている。政治家がなんと言うか、などと口にして回避を図ろうとする。
が、鬼道院。我々警察は彼らのスキャンダルを握っている。難色を示す方がいれば・・・などと口にする。
うーむ、最終的にはそれを使って権力を握る気マンマンって感じですなぁ。

透明な壁は建設するまで時間がかかる。
なので簡易的なバリケードで東京を封鎖する政府。不安がる都民。
そこに現職の内閣総理大臣、原瀬幸男から声明が発せられる。やたらと恰幅がいいなこの総理。

本日午前8時、非常事態宣言を発令いたしました。
東京都内犯罪多発地域を中心に、包囲する形でバリケードを設置しました。
出入りが可能な通用門は各所に設置しております。
ただし通用門利用においての最低条件は前年度世帯収入の2000万以上の者のみとする。以上。

に、2000万・・・!?
世帯での収入とはいえ、これだけの稼ぎを出せているものがどれほどいると思っているのだ・・・?
いや、少ないと分かっていて言っているんだろうな・・・これが鬼道院の言う選別方法か・・・!!

ふざけんなー!!

当然の如く激昂する都民たち。
金がない者はこの掃き溜めから出ることも許さない。そんなことを言われて納得できようはずもない。
怒りをバリケード前に立つ機動隊にぶつけようとする都民。
だが、その内の1人が突然額を撃ち抜かれて死亡する。

はじめまして。我々は新設機関、特級機動隊
復興の役に立たん低所得者層のお前らなど外に出る意味がない。どうせ犯罪を犯すのがオチ。
そういう輩はハナっからまとめ閉じ込めておくに限るのだ。

復興の役に立つという意味なら労働力や手に職持つ者もいるのではないだろうか?
そういった人員はここ以外にもいるから不要ということでしょうか?うーむ・・・さすがにこれが差別でないとは言い難い。

一般市民に銃を放つ暴挙。法の番人である弁護士としての田中一郎は怒りに震える。
しかし、特級機動隊員は平然とこんなことを言いだす。

この混乱の東京で!!法律は俺たちだ。現行法は隕石衝突とともに滅んだのだ

くそう、やたらと嬉しそうな顔をしやがって!!むかつくオッサンやで。

結局、特級機動隊の暴力による脅しもあり、非常事態宣言による封鎖は粛々と執り行われる。
収入が条件を満たしている世帯はバリケードから外に出ることが出来る。
商売人の田中一家ももちろん条件を満たしている。ってあれ、田中家もバリケード封鎖内に入ってたのか?
隕石のダメージがそれほどでもないから範囲内には入ってないかと思ったら・・・
実は一家がいたのは別荘で実家は都内にあったとか。ってそれなら崩壊後の実家に戻る必要がないな。むむむ。

このままこのゲートをくぐってしまえば・・・

思い悩む田中一郎。確かにゲートをくぐってしまえば、もうスラムの人間と関わることもなくなるであろう。
それでいいのだろうか。それで・・・
悩み、一度引き返す田中一郎。
西地区の緊急避難所では炊き出しが行われている。
そこでは田中一郎の弁護を受けたお婆さんの姿もいる。もちろん外に出るだけの条件など満たせてはいない。
炊き出しを受け取ったが、それを刺青をした大男に奪われる。おや、これはいけませんな。
しかしこんな強面を注意なんてよほど勇気のある奴しかできない。そう、田中一郎のような勇気のある奴くらいしか。

おい!恥ずかしくないのか。

男の肩を掴み説教をする田中一郎。しかし、これをお婆さんが止めてくる。
暴力に屈するというのですか?どんな世であろうとも、人として恥ずべきことをする者が大手を振っていいはずがない!!

私のバカ息子なんです

おっとそれは・・・それはなんとも・・・なんと言えばいいのか・・・
しかもそのバカ息子にも子供がいるとか聞かされてはなぁ・・・何も言えなくなってしまっても仕方がない。

隕石は、人の心も破壊してしまいました。

寂しい話である。だが、それでも信念を貫きたいと考えている男はいる。そうでありたいと思っている男がいる。
例え今日壁の外へ出ようと、必ず法という武器でこの惨状を救うべく戦う!そう誓う。しかし――

なんとも先生らしい。でもご無理はなさらないでくださいね。先生は向こう側のお人なんですから

向こう側の人・・・なんだこの寂しい言葉は。
区別を受け入れてしまった人の言葉はこんなにも寂しく聞こえるものなのか。
貴方と私達とはもう違うと言われたようなものじゃないか。

俺は弁護士なんだ。法を武器に弱き人々を救済する者。
何も、弱き人々と同じ境遇に立つことが正義ではない。
むしろ壁の外の出なくては動きづらくなるだけだ。だから俺は外へ出るのだ。壁の外へ。

正論を唱え、自身を納得させようとする田中一郎。まさに正論である。だが・・・

俺には・・・やっぱり・・・できない・・・ごめん・・・

恋人の顔が浮かぶ。家族の顔が浮かぶ。しかし、スラムに取り残されることとなる人たちの顔も浮かぶ。
田中一郎は、恋人の贈り物であった腕時計を引きちぎり意を決する。
そして、武装を整えた彼は満月に誓う。苦しみの中から戦い抜くと。

愛も栄誉も捨て、苦しみと体温を合わす。革命家、田中一郎の誕生である

うーむ。なんとも激しい話でありますなぁ。
本人の考える通り、壁の外で戦うという方法もあった。しかし、田中一郎は中でスラムの人々と共に戦うことを選んだ。
そして強力な革命家となったわけだから、その判断はある程度は正しかったとも言える。
覚悟が鈍らないためにも苦楽を共にしたい。その信念は見事といえる。簡単に真似できるものではないわなぁ・・・

そのような信念を抱いた男であったが、家族を人質に取られて動けなくなっている。悲しい話だ。
そういえば弟の二郎の奥さんはやはり元恋人の文恵さんなんだろうか?
だとするならば、より一層守りたい想いは募るだろうし、人質として効果的ということになってしまう。うむむ。

次回は連載100回直前緊急カラー
この数回は田中一郎が主人公のような目立ち方をしているが、果たして本当の主人公はこの記念すべき100回で目立てるのか!?
どういった話が出て来るのか楽しみです。



第99房 1歩  (2013年 14号)


苦しみの中から闘うことを選んだ革命家・田中一郎。
その仲間たちの闘いは総統が捕まった後も続いている。
刑務所に情報を送り、総統が脱獄してくれるのを心待ちにしている。人質を取られ、もう戦えなくなっているとも知らずに・・・

返信はないが、ずっと信じている仲間たち。
まあ、考えてみれば田中一郎ほどの大物。簡単に刑務所から返信なんて許可がおりるはずもないものね。
返信できたとしてもあぶり出しの道具を揃えないといけなのも面倒だし。

鬼道院の悪事を証明するデータ。それさえあれば逆転の手立てにはなる。
田中一郎としても、それがあれば人質が害される前にどうにかできるという算段にはなるかもしれない。
やはりデータの入手が最優先事項となりそうですね。果たしてどこにあるものやら。

ところでこの唇の厚い人物は男性何ですか?女性何ですか?
俺とか言ってはいるが・・・判断し辛いな。

さて、主人公のリク達。今日も筋トレをしながら壁越えの方法を考える。
一見するとどっちが筋トレしているのかわからない光景だな、コレ。
リクも腕や肩に負荷がかかって鍛えられるかもしれないし、一石二鳥でありますな。

ともかく、壁越えを果たすために原点に戻って情報を洗い直そうと考えるレノマさん。
そうですな。今度は慎重に、ていねいに行きたいところである。筋トレと違って雑にやっていいものではないのですから。

原点ということで、入手した見取り図をよく見直そうということとなった。
谷村看守部長に願い出て製図室への入出許可をもらう。
理由は第27木工場へ貢献するために新しいデザインのタンスを作りたいというもの。
その言葉を聞いた谷村、俺が監督するここの良さが身に染みたかとご満悦。嬉しそうですね。
炊場でのギリギリの駆け引きとは違う。長年付きあいのある相手なだけに言いくるめる方法もよく理解している。
レノマさんとしてみればやりやすい相手でしょうな、谷村は。やっぱあいつアホだな。

製図作業室は密室ではない。作業場とは窓で仕切られているため向こうからも見られる恐れはある。
まあ、机の上にまさか刑務所の見取り図が拡げられているなど思いもよらないでしょうけどね。
中でサボっていないかどうかは外からでも判断できるというわけだ。

なんかさ・・・ガキの頃にさ、迷路みてえな排水管とかでさ探検したじゃん。あんなふうな抜け道ってないかな。

リクの言うような抜け道がないか探す2人。
見取り図をよく見て回り・・・そして気になるものを同時に発見する。
第27木工場のトイレの真下にある点線。壁があるところも関係なく伸びている。
その点線は壁を抜けて別のページに繋がり、他のトイレに繋がっている。ほう、これは・・・

てな具合に気になるものを見つけた!と思ったタイミングで看守がいきなり入ってくる。なんだぁっ!!いきなり!?

バーロー!底板が無えとか斬新すぎるだろ!!どうやって使うんだよ!
タンスだぞタンス!!使ってくださるお客様のことを考えろ!!

レノマ親方の熱心な指導が製図作業室に響く。
さすが、見事な機転でごまかしてくれましたね!!ってレノマさんらしくない物言いだな。何がお客様か。こりゃ笑える。

でだ。
発見したのは排水管。その線はトイレを繋いでいるだけではない。
そのまま辿れば・・・なんと壁際にまで到達している。
もしここを通れたら一気に壁際にまで辿りつける。間にある監視の目やフェンスもお構いなしである。
そして休憩時間に壁を掘り進むことができれば、壁の外までトンネルが・・・開通する!!

これはなかなかの発見である。表情を明るくするリク。
しかし、ここはひとつ冷静になりましょう。
自分たちは毎度思いつき失敗してきた。こんな簡単に決めていいのか?と考える。

不安はある。だが何もしなければ満期出所があるだけだ

まあ、それはそうですな。慎重にしなければいけない。だからといって立ち止まっているわけにはいかない。
なので計画の進展スピードよりも危険を冒さないことを重視するようにする2人でありました。妥当な所ですな。

そうだな。やるしかねぇ。慎重に・・・大胆に・・・
よし!トンネル作戦開始だ

壁越えのためのトンネル掘りが開始されようとしている。
それはいいが、ちゃんと新しいタンスのデザインは仕上がったのだろうかね?どうでもいいけど。

休憩時間。レノマさんは外に出る。
階段側の地面を掘ると、そこにはミルクパン。の袋に入ったノミ
なるほど、トンネルを掘るための道具を掘りにきたのですね。
ちなみにこれは本来襲われたときに対処するための武器として埋めてあったものである。
どこで襲われてもいいように武器を至る所に隠してあるらしい。さすがと言うか何というか。

さて、トイレの用具入れにやってくる2人。
排水管があるのはこの真下である。マットをめくると、なんとなく土管が見えたような気がする2人。ふうむ、楽しみですな。

見取り図によるとおよそ30cm掘れば排水管のコンクリートにブチ当たる
しかしそこまで掘るのにバレたりはしないものだろうか。
まあ、トイレに入る所がバレなければ昼休み中は延々と掘っていられる。
昼休みは看守が運動場に出払っているから工場内には1人しかいない。お互い順番に入り口で見張りをすることとする。
看守が近づいてきたら素早くトイレに入って咳をする。その合図で作業を一時停止し、ノミを隠して小便のフリをする。
掘った穴はマットを被せて隠しておけば用具入れを覗かれても見つからないって寸法だ。

ただし、問題は時間。昼休みは40分しかないし掘れる量はわずかなものとしかならない。
慎重にやるとはいったが、これは焦れるなぁ。
掘った瓦礫はポケットに入れていちいち外に運び出して捨てることとなる。ふむ。
で、今日掘れた分はどれくらいかというと・・・手の中に納まって握る込めるぐらいの量しかない。

これっぽっちしか・・・予想以上に少ない・・・

確かに愕然とする。だが停滞しているわけではない。これは小さくとも大きな1歩である
そう伝えるリク。受けるレノマさん。そう、脱獄の道はこういった小さな一歩を積み重ねることが重要なのだ!!

地道なトンネル掘りとは、いかにも脱獄ものらしい話になってきましたね。
しかし、これは排水管まで掘り進むのにどれぐらいかかりますことか・・・
さすがに30年かかるようなことはないと思うが、結構な日数を消費しそうである。
ある程度亀裂を入れて、あとはレノマパンチで破壊ってわけにはいかないものですかね。関係ないとこまで壊しちゃいそうだけど。

トンネル掘りはいいが、この排水管利用作戦はやはり難しいのではないかと思える。
まず、この排水管。そもそも人が通れる大きさなんだろうか?
リクはまだしもレノマさんが通れるかどうかわからない。
作業はリクだけに任せるとしても、その後の本番での脱獄時は2人とも通れないと意味がない。むむむ。

さらに、排水管なので途中で穴を開けると水が、汚水が噴出してくるのではあるまいか?
そんなことになったら穴を掘っていたのもバレてしまうし、大変なことになりそうな気がするが・・・

穴といえば、今はいいが用具入れに穴を開けてマットで塞ぐって・・・それ、落とし穴じゃないですか?
知らない人が掃除するために用具入れに足を踏み込んだら大変なことになるのではないだろうか・・・

てな具合に心配する要素はいろいろとある。
田中一郎が聞いていれば色々と指摘修正をしてくれると思うのだが・・・どうなるか。

次回は連載100回記念の巻頭カラー!!
果たして脱獄作戦への希望を見出せる記念すべき回となるかどうか。注目だ!!



第100房 日記  (2013年 15号)


連載100回突破記念巻頭カラー!!
ついにやってきましたねぇ。しかしまだまだ。これからもガンガン行ってくれるのは間違いない。
期待して楽しむこととしましょう。

さて、本編。

掘削作業初日の成果は僅か。しかしそこで腐ってはいけない。
小さくとも大きな1歩。重ねればそれは確実に形となる。
それを信じて黙々と掘る2人。あ、ちゃんとリクも見張りだけでなく掘削作業に参加するのですな。

1か月後。
トイレの用具入れには大きな穴が広がっている。
どうやら堅い部分は終わり、ここから排水管までは柔らかい土となる様子。
なるほど。それならば掘るスピードは格段に上がりそうですな。
最初は途方もないと思えたトンネル作戦ですが、こうしてみるとなかなかいいペースで進んでいる。

これまでと違い、2人以外の誰かの力を必要とするわけではないので見つかる危険度は低い。
とはいえ、1か月も外で遊ばずにいたら不審に思われたりしないかという疑問はある。
まあ、加藤看守ならともかく谷村なら気にしたりはしないでしょう。そういう不思議な安心感がある!!

それはさておき、レノマさんも順調に進んでいる作戦に対し気がかりな点がないわけでもない。
この極楽島にしては"掘られる"ってことへの警戒心が低くないか、と。
確かに。トンネル作戦なんて脱獄を考えた場合誰しもが思いつく内容である。
絶海の孤島ならではの盲点なのか?それとも何か仕掛けがあったりするのか・・・?気になる所だ。

トンネルはあと30cmで排水管のコンクリートにたどりつく。そこからが本当の勝負だ。
どのようなアクシデントが発生するか・・・ちょっと不安であるな。

さて、場面は変わって東京のスラム街、新東京革命党のアジト。
田中一郎の仲間である革命党の面々は鬼道院の犯罪の証拠を集めたデータを探して東奔西走している。
構成員の一人はピアスを十字架型に変えたりしている。神様の導きがあらんことを祈り・・・

もしかしてこれを見つけられたのも、そういうのがあるのかな。

その言葉と共に取り出したのは、田中一郎の弟、二郎の隠れ家にあった日記
田中二郎はその日記で気にかかる内容を記している。

5月25日。
スラムの壁を崩すには武力闘争よりも、この世の腐敗の根源を断つ闘いに移行すべきだ。汚職公務員の悪事を一掃する。
第1の標的はスラムを牛耳る警視総監の鬼道院だ。

7月30日。
俺は1人で鬼道院を追った。その中で異質な事件を知る。
淀水町奈落谷交番で警官が射殺された。撃ったのは鬼道院。
被害者の名は藤本吾郎。スラムの人間を温かく見守っていた心優しき警官だ。

ついにおじさんのフルネームが明らかになった!!ほほう。
でもこれからもずっとおじさんという呼び名が一番使われそうな気がしますな。それはそれでいい。

おじさんは鬼道院の悪事の証拠を握っていた。
しかし公表寸前にデータは押収され殺害。その罪は事件現場にいた1人の少年に着せられることとなった。
この事実は事件直前に少年と関わっていた親子の証言に基づく。

ここでなんと、1話で登場したスラムの親子が登場。うわあ、懐かしい!!
そういえばリクが警官殺しとして極楽島送りになったとき、こんなのデタラメだ!と憤っていてくれてましたな。

特機に逮捕されそうになったところをリクに庇われたオッサン。
気になって子供と一緒に後を追い、交番での事件を目に耳にしたという。
リクと入れ違いにやってきた鬼道院。そしておじさんと言い合う声。

おじさん「麻薬の生産!精製!密売!臓器売買!全く枚挙にいとまがないな!」
鬼道院「おお。それはここには入ってなかったな

む、言われてみれば確かにそんなことを言っていた。
そうか、押収したデータに入ってなかったということは、その情報は別のデータとして残っているかもしれないわけだ。
むしろそちらのデータこそが鬼道院を失脚させるのに必要なメインのデータであろう。
その可能性を知った二郎は藤本巡査の自宅を訪れる。
既に自宅は鬼道院の手が入ってか荒らされまくっている。
しかしその家探しでは見つからなかったマイクロチップが二郎の手によって発見される。
時の経過が味方したとのことだが、プラントの植物が枯れたことと関係あるのですかな?

ともかく、見つけたチップの中身を確かめる二郎。
しかし中身の画像は不鮮明で解読ならず。だが、親子の証言に嘘は感じられない。藤本巡査は用心深く公表を進めていたのだろう。
つまり・・・鬼道院を倒すメインデータがどこかに存在する可能性は高い!!

ふうむ。それがあれば革命には大きく近づきますわなぁ。
だが何故二郎は仲間にデータの存在を知らせなかったのだろうか・・・
その理由は1つ。仲間の中にスパイが居るのではないかと疑ったからだ
二郎の日記は最終ページが破り取られている。
しかし次ページに最終ページの筆圧が残されている。そこから二郎がどこまで秘密に迫っていたのかが窺い知れる。
そのことに気付いたのは十字架のピアスの女性。しかしその女性こそが鬼道院の手のものであった・・・

8月30日。
以前から気になってはいたが、我々の行動が先読みされていることが不自然に多すぎる。
仲間内にスパイがいる可能性を否定できない。なのでこの案件は1人でしか進められない。
だが今日は大きな収穫があった。先日交番の巡査の自宅で見つけた画像を解析ソフトにかけてみたのだ。
浮かびあがったのは大規模なケシ畑。麻薬のヘロインの原料だ

これは・・・麻薬の生産の証拠か!!
画像を見ると極楽島特級刑務所の囚人服と看守の姿が見られる。
なるほど、これを見るかぎり看守が囚人を使って麻薬の生産を行っているのが一目でわかりますな。
もしやこれが前に谷村が言っていた刑務所の裏の顔の一端なのか・・・?
囚人服の背中の所属棟を示すマークがZとなっているのも気にかかる。まさしく特別な棟に入れられた連中ということか。

麻薬の生産事実はここからも窺い知れる。しかし臓器密売に関してはまた別の話。
となれば、他のデータとして残されている可能性が高い。なるほどねぇ。
それにしてもおじさんはこのデータをどうやって入手したのだろうか?
凄い情報屋のツテでもあるのだろうか。
それとももしや、単独で極楽島に乗り込み撮影して帰ってきたとかそういう・・・!?おじさん凄すぎる。

それはさておき、二郎は続きとしてこのようなことを書いている。
巡査が何を想いこの不鮮明な画像を保管したのかは知らないが、この画像は俺たちの悲願達成の第一歩だ。
大切な人と共に保管しておこう、と。

二郎のいう大切な人か・・・やはりそれは家族のことでしょうか。うーむ、これは危険な話であるぞ・・・
革命党はとりあえず泳がされることとなる。
メインのデータにたどりついた時、命共々奪い返すつもりらしい。ふうむ。

スパイを用いたりする鬼道院は色々と慎重な面がある。
十字架ピアスの女性に革命党に心を動かされたりしていないか証明させたりしている。
ふうむ、それで足舐めでありますか。ふむ・・・少年誌的にはギリギリということなのかもしれませんな。
青年誌ならばどうなっていたか・・・まあ、それは各人の想像のうちということで、ね。
こういうことを書いているからこの囚人リクの感想はエロワードで検索に引っかかって飛んでこられるんだよ!!

それはさておき。
鬼道院は二郎の日記の続きを読んでいる。
最終ページには極楽島へ兄の田中一郎の奪還作戦を決行する3日前の内容が記されている。

なぁ、兄貴。元気でいるか?弱者と共に闘おうとした兄貴に憧れ、俺も革命党に身を投じた。
でも、未だ志を果たせずにいる。兄貴、どうすればいいんだ。

思わず愚痴になりそうになった自身を戒める。これじゃまるで遺書でありますな。
そう感じた二郎はこの内容が記された最終ページを破り、処分するのであった。なるほど、そういう流れか・・・

志・・・か

最後まで読み終えた鬼道院。志という言葉に冷笑するでもなく、妙に生真面目な顔をしている。
これは一体何故だろうか?自身にも何かその言葉に感じるところがあったりするからだろうか?

夜のプールにやってくる鬼道院。
その凄い肉体には凄く大きな傷跡が残されている。うーむ・・・強そうだな。

スラムと極楽島。この2つは俺が支配する俺の国。
国家権力も、市民の目も介入させず、俺はここで巨万の富を得る。真の王者となるために

そのように心の中で唱えながら、水面に浮かぶ鬼道院。
月は志を照らし、水は孤独を包む。そして静かな夜。そのようなアオリで締められる。
やはり鬼道院も志という言葉に共感を感じる部分があったのですなぁ。
実は革命党に心動かされていたのは鬼道院自身だったのでスパイにもそういう問いかけをしたとかいう話だったりして。

考えてみれば、鬼道院の野望もある意味革命ですからねぇ。
色々と共感しちゃう部分があるのは仕方がないのかもしれない。
弱者の救済を願う新東京革命党とは志が大きく違う気はするけど。
でも、真の王者・・・つまり真のチャンピオンになりたいという志と読むと凄く良い志と思えなくはないから困るな!!

というわけで、連載100回は色々と重要な情報が飛び出した回でありました。
主人公たちの活躍はほとんどなかったが満足だ!!

臓器密売はレノマさんの過去とも繋がるし、色々と因縁が加速しそうで楽しみですなぁ。
しかし、二郎のいう大切な人と共に〜という言葉。
あれはもしかすると、例の家族の写真と一緒に時計に収まっているということではないだろうか。
つまり現在田中一郎が鬼道院の悪事の証拠を知らずに握っているとかそういう・・・!!
もしそうならば、田中一郎が脱獄する意味は急激に増すこととなる。
持ってきてくれたリクへの感謝の念は一層増すことになるだろうし、色々と面白いことになるが、果たして・・・?
今後の展開に期待でありますな!!



第101房 敷設  (2013年 16号)


田中二郎の遺した日記には"あの場所"の画像が存在した事実が記されていた。
果たしてあの麻薬精製現場の画像は一体誰が撮影したものなのか。さすがに鬼道院も気にかかる様子。

あの場所の存在が革命党にはバレていないとはいえ・・・不安の芽は摘み取るか

何かやたらと渋い顔をしている鬼道院。
まあ、不安要素が出てきたら気に入らない感じになるのも仕方がないか。

というわけで、鬼道院の部下である女性は画像データを求めて田中二郎の家族のもとへと向かう。
二郎の奥さんと一人息子はスラムで2人仲良く日々を送っている。
どうやら息子さんには父親が死亡したことは知らせれずにいるみたいですな・・・

そんな家族のところに踏み込む鬼道院の部下たち。求めるのはマイクロチップ。

「大切な人たちと共に保管しておこう」そう書いてあった。あんたの死んだ夫、田中二郎が遺した日記にね。

思わぬタイミングで息子に父親の死を知られてしまった。うーむ、いつまでも隠せておけることではないとはいえなぁ・・・
子供の前よ!!と憤る母親だが、その子供を含めて刃物で脅しつけられる。
鬼道院の部下はマイクロチップはどこ?と尋ねるが二郎の奥さんは何も知らないと答える。
その表情を見るかぎり本当に何も知らない様子。
子供まで狙われているのだし、さすがにウソをつける状況とは思えませんわな。
というわけで、部下は鬼道院に連絡を取る。本当に何も知らないようですがいかがいたしましょう、と。

消せ。失火に見せかけてな。

その指示に従い、二郎の家を燃やして立ち去る鬼道院部下。
うーむ・・・そういう奴だと知ってはいたが・・・冷静に消せと言ってのける場面に慄いた。
しかし、田中一郎への足かせでもあった家族をここで消してしまったもよかったのだろうか・・・?

その田中一郎。刑務所にて台車の車輪が破損したりしている。イヤな予感を受け取ったという感じでしょうか。

さて、脱獄のためのトンネル掘りを行っているリクとレノマさん。
その手を一度止めて、聞きたいことがあるというリク。
その内容は、壁の外に出た後はどうしようかというもの。まだ先の話だけど、考えれる部分は考えておきたいですわな。

船か飛行機。どちらかを奪い、この島を離脱する

ほう。まあ、この極楽島という孤島を抜け出すにはそういう方法しかないでしょうな。
脱獄なんて即座に発覚するだろうし、呑気に密航して発進待ちをするわけにもいかない。
とはいえ、海も空も即座に閉鎖されることに変わりはない。簡単に抜け出せるかどうか・・・

だから今最適な方法を神木たちに探らせている。

なるほど。刑務所の外で島の中の話だし、現地にいる神木さんたちの方がルートを考えるのに適してますわな。
しかし炊場の森田さんは入院中だし、シャバとは連絡が取れないのではないかね?

忘れたか?田中がケータイを持ってる

おっと、それもまだ生かすつもりでありましたか。
まあ、炊場の一件で物の持ち込みも随分制限されたし、そういう連絡手段がないと厳しいですわな。

脱獄できるのは当分先の話だ。焦ることはない。
今は俺たちにできることを、確実に進めていくだけだ。

その通りでありますな。というわけで、いよいよトンネル作戦は佳境。
見取り図から察するに、ようやく排水管のコンクリートに到達しようとしている。

リク「なんか、こうも順調なのが不思議だな」
レノマ「俺たちもちっとは失敗から学んだってことだ

まあ、炊場での失敗は手痛い経験でしたからねぇ。学ばざるを得なかったでしょうさ。

さて、排水管のコンクリートを目指して掘り進めるレノマさん。
早く顔を見せろと楽しみに掘り進めると・・・やわらかい土ではなく、固い出応えがあった!!これは・・・もう一丁!!
勢いよく手応えのあった部分にノミを叩き付けるレノマさん。
いよいよか・・・と思ったら・・・叩き付けたノミが折れている!!
焦り手で土や砂利をかき分けるレノマさん。そこに見たのは・・・鉄板!!

それ以上掘り進めることはできず、昼休みは終了。
あの鉄板が何だったのか、もう一度見取り図を確認することとなった2人。今度はどういう言い訳で製図室に入ったのかね?

排水管が鉄製だったのか調べる2人。
リクは図面の決まり事や建設時の注意事項が記された小さい文字を読み進めている。
と、そこに驚愕の文言が書かれていることに気付いた。こんなに小さく・・・

※注意。なお、敷地内は全面に渡って地下30センチに脱獄防止用の鉄板を敷設すること

レノマ「俺たちの思惑なんて・・・」
リク「お見通しかよ・・・・」

これが極楽島か・・・!!

順調と思える時ほど落とし穴を警戒しなければならないって話でしたな。
まあ、これもレノマさんが懸念していた「掘られることへの警戒が薄い」って部分についての回答なわけだ。
トンネル作戦なんて脱獄の定番もいいところだし、警戒してないわけないですわなぁ、そりゃあ。
まあ、鉄板だって味噌汁かけて腐食させるなりすればいつかは壊れると思う。どれだけの厚さかは知らないけど。
とはいえ、これからそんなことをしていたら一体何年かかるのかという話になりますからなぁ・・・

トンネル作戦は失敗し、振り出しに戻った壁越え計画。
やはりこうなるともう2人だけでは難しそうですなぁ。優秀なブレーンがいる。
どうにか田中一郎の協力を得たいところであるが・・・果たしてどうなるか。
人質となっている弟の家族がいなくなったことを知れば脱獄の話に乗ってきそうな気はしますけど。
連絡手段はいつものあぶり出し手紙でも何でもいいですしね。

しかし、本当に二郎の家族は殺されてしまったのだろうか?
鬼道院は消せと言っただけだから、部下の裁量に任される部分もあるように思える。

部下「消せと言われたので消息不明にしておきました!!」
鬼道院「なにっ!?」

こんな展開もあるんじゃないだろうか。どうだろうか。



第102房 本物  (2013年 17号)


今日もニーナナの連中は昼休みをバカ騒ぎして過ごす。
若い者たちは休憩時間も遊びまわる体力があって羨ましいねぇ。

野球を楽しむ他の連中とは違い、建物の間の人目のつかない所に2人だけでいるリクとレノマさん。
この1か月はトンネル堀りに昼休みの時間を費やし遊べなかった。
今は遊ぶ気になれないといったところだろうか。うーむ、折角戻ってこれたのに交流が少なくて寂しいですな。

リクはスクワットを行い筋トレに励んでいる。
今は体力づくりぐらいしかできることはないという話であるな。しかしスクワット100回以上できるってなかなかのものだ。
鼻息がクハクハうるさいですけどね。レノマさんもイラついて思わず叩いてしまうってもんだ。

しょうがねえだろ!!
糞に紛れて脱出しようとすれば失敗。トンネル掘ったらそれも失敗。筋トレすりゃあ鼻息がうるさい。
好きでこうなってんじゃねえんだよ!!

レノマさんを殴り返すリク。おぉっと、さすがに相当イラついている様子ですな。
まあ、殴られたレノマさんは思いっきり拳で殴り返してきたりするんですが。
イラつきの余りケンカを始める2人。久しぶりに怖い顔だよレノマさん。
まあ、リクも大分成長したのかずいぶんとタフになっているみたいですけどね。

スラム。革命党の幹部が二郎の家族について報告をしている。

確かめてきた。間違いない。
二郎さんの・・・奥さんの美智子さんと息子の保くんだった。死因は2人とも焼死

なんと・・・本当に死んでいるとは・・・生きて逃がされていることを期待したかったのだがなぁ・・・
期待は破られ、さらに残酷な事実が示されることとなる。
焼け跡の現場を撮影してきたという幹部。
ほとんどが焼け落ちた瓦礫の中、遺体のあった近くの床板に記されたのは鬼道院という文字。
きっと美智子さんが革命党に伝えようと最後の力を振り絞ってメッセージを遺したのでしょう・・・
この縛られて無念の涙を流しながらメッセージを遺す美智子さんの姿があまりにも悲しくて・・・憂鬱になる。

美智子さんと保くんを自分たちが保護していればと考える幹部。
しかし、それは二郎さん自身がやらずにいたこと。
党員の中には家族を残して戦ってる者も多いし、自分だけ特別扱いはしないで欲しいという考えによるものだ。ふうむ、立派な。
まあ正直アジトに匿っていたとしてもスパイがいるこの状況では守りきれていたとは思えませんがね。

それにしてもなぜ鬼道院が今頃、このタイミングで動き出したのか。
鬼道院の犯罪データと関係があるのか・・・と疑う幹部。まあそう考えるのは自然でしょうな。

革命党に入り込んだ女スパイの報告を受ける実行犯の女秘書。
秘書は鬼道院に革命党が田中二郎の家族の死が鬼道院の手によるものと知られたこと、それを田中一郎に手紙で知らせたことを告げる。
だがそれを聞いても特に問題ないとする鬼道院。それを聞いたとしても、極楽島にいる以上何もできはしないという考えのようだ。

大切な人と共に保管する。田中二郎が日記に遺したその事実。
画像所持の可能性を持った妻子を始末できた。それだけでいい

ふむ。やはり鬼道院としてみればその証拠品こそが一番怖いわけであるか。
だがもし、その証拠が現在田中一郎の手にあるとすれば。
リクが渡したあの家族の写真にデータが含まれているとしたら・・・面白いことになりそうですな。

革命党からの手紙を今日もあぶり出しで確認する田中一郎。
この手口や何を知らされているかも鬼道院には筒抜けだったりするんだよなぁ・・・そう考えるとなんだか切ない。
そして二郎の愛した家族が鬼道院によって殺されたと知り憤る田中一郎の姿がまた切ない。

幸せな家庭を築いていた田中二郎。
田中一郎は苦しみと共に戦うと決めた時からフィアンセの文恵さんとの関わりも捨てている。今更思い返す資格はないと述べる。

兄貴。自分の家族って最高だぜ。革命家だろ。愛を知らずに人々のために戦えるかっての

ふむ。やはり革命に必要なのは愛か!!愛は大事ですよね。色々とさ。
まあ、田中一郎にももちろん愛はある。弱き者を思う愛。それに何より、弟とその家族を思う愛。これもまた家族愛でありますわな。

苦しみと共に戦うと決めた時から俺は普通の幸せを捨てた。
でもお前は違った!お前は家族を愛した。それが・・・俺は嬉しかった。
俺は・・・俺は・・・お前たちの幸せを心の支えに・・・二郎・・・美智子さん・・・保・・・
その無念。必ず晴らしてやる。
鬼道院よ!!

天に向かい声もなく吠える田中一郎。そして足を向けた先はN棟。
リクとレノマさんのケンカはまだ続いていた。息を荒くする2人。
リクのパワーではほとんどレノマさんに傷はつけれないが、タフさだけは手こずらせるのに十分な様子である。やるねぇ。
そして、こんなケンカしてたってなんの意味もねえなと切り出し、停戦となる。

八方塞がりだ。お手上げよ。

弱音を吐くレノマさん。そこに現れたのが田中一郎。
脱獄は手詰まりだが、それはそれとしてケータイを返せと迫るレノマさん。
しかし田中一郎はつかみかかるその手を払い、告げる。

俺を脱獄の仲間に加えろ

ほほう。ついにこの時が来ましたか!!いつか加わってくれるのではと期待はしていましたが・・・!!
まあ、意地っ張りなレノマさんはとりあえず反発しちゃうみたいですけどね。
しかし計画は順調なのか?と痛い所を突かれると黙るしかなくなってしまう。
トンネル作戦が失敗に終わる前のタイミングであれば自信を持って言い返せたかもしれないのにねぇ。

見せろ。極楽島の見取り図だ。
見返りに、本物の脱獄を教えてやる

さすが脱獄王の異名を持つ男の言葉は重みが違う。カッコイイ!!
これで手詰まりに思えた脱獄計画にも光明が見えたって感じでありますね。
田中一郎ならばいい方法を考え出してくれることでしょう。期待したい。

まあ、まずはダメ出しから始まりそうな気はしますけどね。
見取り図手に入れたのなら付随されてる注意書きぐらい読んでおくべきだろう、とか。
リーダー体質のレノマさんが早々にブチぎれそうな気がして怖い所である。

壁越えの手段・・・掘るのがダメなら超えるのはどうだろうか。
木工場にいるんだし、こっそりと折り畳み梯子を作るとか。
田中一郎の方は金物を加工していた感じだったし、材料はどうにか調達できるのではなかろうか。
まあ、登っている姿が気づかれずに済むかどうかは疑問の残る所であるが・・・そこは何とか脱獄王が考えてくれるってことで!!
しかし本物の脱獄と大きく出たからにはもっと凄い意見が出てきそうな気はするな。楽しみなところである。



第103房 悪夢  (2013年 18号)


本物の脱獄を教えてやる。脱獄王のこの言葉に驚くリク。
脱獄が命がけなのは誰よりも理解している田中一郎。何故急にその意志を示しだしたのか?
レノマさんはその理由を訝しみ、テメェなんざ絶対信用しねえぞと拒絶の意志を示す。あらら・・・

田中一郎の胸ぐら掴んで睨みつけるレノマさん。
リクは無理矢理その2人の間に入り込み、争いを止めようとする。何そんなにキレてんだよ

確かにリクの言う通り、レノマさんの反発の仕方は過剰に思える。
俺らを売って看守に媚びようってくれえだとは言うが、それならわざわざ加担する意味はどこにもない。
脱獄を計画していたのは知っているのだし、それをそのまま看守に話せばいいだけだ。
つまりレノマさんが反発したのにはそういう所とは別の部分にあると予想できる。

レノマ・・・お前もしかして・・・おっちゃんが大人だからか?

リクの問いかけ。どうやらこれが大正解だった様子。

どうしてもよ。俺はどうしても大人っつう奴が信じられねえんだよ
お前のおじさんのような人が俺には1人もいなかった。
何日も何か月も何年もウソをつき通し、四六時中人をだますことばかり考えているような、俺の周りはそんな大人だけだった。

同じように育ての親と言えるおじさんがいたリクとレノマさん。
だというのにこの違いは一体どうしたことなのか・・・
レノマさんが出会った大人は余りにも汚すぎた。幼少期に植えつけられた不信感はそう簡単には消えないのでしょうな・・・

でも、頼む

レノマさんの苦悩は理解はしきれなくても察することはできる。だがそれでも、なんとか譲ってはくれないかと頼むリク。

きっと。きっとおっちゃんはそんな大人じゃないと・・・俺は思ってる。
けどまだ俺も理由聞いてないから、1回話をして、一緒に確かめようよ。

真摯に頼み込むリク。そうまでされるとレノマさんも一度は拳を収めざるを得ない様子。
取りあえずは田中一郎の話を聞いてくれる気にはなったようだ。ありがとう。

改めて田中一郎と向かい合い、リクは述べる。申し入れは正直ありがたいと。

けど・・・俺たちここまで2人でいっぱい話し合ってきたんだ。だから、おっちゃんも俺たちにちゃんと話してほしいんだ。

出会って間はないが、過去の話など色々重ねてリクとレノマさんは絆を深めていった。
だから田中一郎の脱獄の理由も聞きたい。そう考えるのは当然のことでありましょう。
脱獄仲間となるからには一蓮托生。よく知らない相手を加えることなどできようはすもない。田中一郎もそれは理解している。
先にそれを言わずにいたのはムシがよすぎたと話を始める。

枷を失った

そう前置きをしてこれまでのことを話し始める田中一郎。
かつて革命党を率い、スラムを取り巻く支配体制と闘ってきたこと。
特権階級が無辜の民の幸せを食い物にするのが許せなかったということ。
だが鬼道院支配下の特機にマークされ度々ムショに送られたこと。
それでも何度も脱獄し、国家権力など人間の意志の前には無力だと証明してやったこと。

しかし俺の脱獄は封じこまれた。
リク。覚えているか、あの写真。お前が拾ってくれた時計の中。
あの2人は、死んだ。鬼道院に殺された

辛い事実を口にする田中一郎。これにはリクも憤る。
会ったこともない相手ではあるが、死の瞬間で目を合わせた男の家族であり、目の前の男の家族でもある人たちの死。
そしてその死に関わったのは因縁深い鬼道院。憤らないはずもないですわな。

弟の二郎のみならず、罪もなき2人も手にかけるとは・・・
許すまじ鬼道院!!皆の無念、俺が晴らす!!

なるほど。脱獄をする理由は復讐なわけですな。リクとしてはこの上なく納得できる理由である。相手も同じわけですしね。

そうだ。だがここからの脱獄は1人では到底叶わない。仲間が必要だ。見取り図も・・・

と述べたところで、レノマさんがものすっごく冷めた目で見ていることに気づく田中一郎
さすがにこの表情には驚いたのか熱弁が止まってしまいましたよ。

リク。帰るぞ。

背を向けて立ち去るレノマさん。
おっちゃん一生懸命話してくれたじゃんか!と言ってリクは止めようとするが・・・

一生懸命なフリなんてのは、大人の十八番じゃねえか

ふむ、まあそれはそうですな。大人になるとそういう技術がいろいろと身について困る。
一生懸命仕事しているフリしたり、一生懸命HPの更新するフリをしたり。大人になるって悲しいことなの・・・
いやいや。一般の話はさておき、田中一郎の言葉にウソは感じられないと思いますよ。
うっかり見取り図が必要だなんて口走ったおかげで警戒されちゃうのはうかつだと思ったけど。

ともかく、レノマさん。田中一郎の言葉にウソはないと理解している。
そしてその脱獄王としての経験と脱獄スキルが今後重要になるということもよく理解している。

だけど。だけど・・・どうしても、嫌なんだ

ものすごく悲しそうな顔をし、走り去る佐々木麗乃真18歳。おぉ。まるで青少年のようだ・・・!!
でもまあ、幼少期の悪夢と共に刻まれた大人への不信感。これを払拭するのは並大抵のことではないですわな。やはり。

というわけで、まさかの交渉決裂。本物の脱獄の中身を知るどころの話ではなくなってしまった。おやおや。
まあ・・・レノマさんの気持ちはわからないでもないですよ。大人って汚いものね。
しかしそんなデカイ図体して大人は汚い!!とか言われても・・・ねえ?
と言いたいところだがやはり気持ちはわかる。大人だって思うもの。大人は汚い!!と。
そして子供は気楽でいいな!!とも同時に思ったりする。これらを都合よく使い分けるのが大人ってものだ。うむ、やはり大人は汚い!!

ともかくそんな風に盗んだバイクで走り出したり壊れそうなものばかり集めてしまいそうなガラスの十代のレノマさん。
どうにかしないといけないところではあるが・・・どうにかできるのだろうか?
こういうのは時間が解決するのを待つしかない気がするのだが・・・
というかレノマさんももう数年もしたら大人の仲間入りなのだが、その点についてはどう思っているのだろうか?
大人になんかならないよ、とか言ってピーターパン症候群になってしまうのだろうか?
永遠の少年!!心はいつでも十代!!とか言い出すわけですね。あの図体で。うーむ・・・なんか共感できるなぁ・・・い、いやいや。

ともかく、思わぬところで停滞する脱獄計画。なんとか進展して頂きたいものであります。



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