蒼天紳士チャンピオン作品別感想

囚人リク
第53房 〜 第76房


囚人リク感想目次に戻る   作品別INDEXに戻る   週刊少年チャンピオン感想TOPに戻る

 各巻感想

1巻 2巻 3巻  4巻 5巻 6巻  7巻 8巻 9巻 10巻
11巻 12巻  13巻 14巻 15巻  16巻 17巻 18巻  19巻 20巻
21巻 22巻 23巻 24巻  25巻
連載中分

囚人リク 7巻


第53房 再生  (2012年 15号)


見取り図を手にしたレノマさんは絶好調でございます。
昼休みは野球を嗜み、快音を響かせる。うおーっ、ボス!さすがっスー!!
懲罰房明けとは思えない好調っぷり。そんなレノマさんが何かを発見したらしく、野球を中断してフェンスに近づく。
フェンスの向こうには帰宅しようとしている山岡の姿があった。

取引を終えた男たちがフェンス越しに会話をする。
レノマさんは見取り図が無事に手に入って嬉しい様子。爽やかな笑顔を浮かべている。
約束どおり、残りの500万を入金するようにすでに手配してあるそうな。
正直、本当に持ってくるかどうか気が気じゃなかったのだが、安心して気が抜けたって感じですかね。
嬉しそうに語るレノマさんに対し、山岡は神妙そうな様子。どうした?

あれは・・・あれは・・・ニセモノ・・・
俺が製図したニセモノだ・・・

テメエ!!ハメやがったのか!!

爽やかな笑顔から一転して怒髪天を突くレノマさん。まあ、そうなりますわな。
しかし、さすがにレノマさんもニセモノを用意されるとは考えもしなかった様子。怒ってる怒ってる。

あれは・・・ニセモノ・・・の・・・はずだった。
ニセモノのはずだった・・・

はずだった?どういうことだろうか?
レノマさんも怒りを抑え、話の続きを待つ体勢に移る。
山岡は語る。自分はレノマさんが睨んだとおり借金漬けであると。
嫁にも愛想を尽かされ、離婚を迫られている。
だからお前からこの話を持ちかけられた夜、俺は自宅で独り悩んだ。
金はほしい。でも囚人から賄賂を得るのは犯罪だ。
そんな時、ある閃きが舞い降りた。ニセモノの見取り図を渡せばいいと・・・

計画を口にする山岡。元建築家志望だった山岡は製図の描き方も心得ている。
これがうまく行けば金は手に入るし、自身は潔白でいられる。
公務員の職を剥奪されるわけにはいかない。家族とやり直すために必要な肩書きを確保するために・・・俺は保身に走った。
お前から大金を受け取った後、俺が自らお前の脱走計画を発覚させるつもりだった。

谷村に賄賂を渡してもみ消し、レノマさんを永久に独居房に沈めるつもりだったと語る山岡。
その山岡の目論みに、クソ野郎だなと返すレノマさん。

クソ野郎・・・ああ、そうだ。
そうやって同じように俺は・・・囚人のことをただのクソ野郎としか思っていなかった。

そんな山岡がなぜいきなり計画を取りやめたりしたのだろうか。

なんでだろうな・・・うまく言えそうにないが・・・
俺はクソ野郎だ。でも、最低のクソ野郎にはなりたくなかった。
俺は自分の身の丈くらいわかってるつもりだ。エラくもないかわりに極悪にもなれねぇ。中途半端な人間だ。
そんな俺にとって今回の件は一世一代の決断だった。
だがよ・・・やっぱりブルっちまった。
お前みたいな囚人なんて地獄に落ちればいいと思ってた。でも・・・
でも・・・オメェが・・・子供みてえな顔で脱獄の夢を語った時、今の俺はお前よりマシな顔してる自信がなかった。
だから・・・だからなんだ・・・

そんな顔で、どうあいつらに会えっていうんだよ!!

最低のクソ野郎になりかけたのを食い止めたのは家族の存在であった。
だから、ケジメをつけるために、所長に辞表を出してきたと山岡は言う。ああ、やはり辞めるのか・・・

別にお前に同情したわけじゃないし、残金の500万はきっちりいただいておくと山岡。
それは約束だし構わない。それより、今後の暮らしはどうするんだと尋ねるレノマさん。
おや、優しいですなレノマさん。気にかけてあげるんですか?
その質問に対し、ただがんばるだけだと答える山岡。オメエの脱獄より無謀じゃねえだろ、とのこと。それはそうだ。

まあ、そういうこったからよ。安心しろ。
あの見取り図は俺がたしかに建設会社から手に入れた正真正銘の本物だ

ニセモノではなく、本物だったと言う山岡。
自ら安定した職を辞してまで言う男の言葉だ。疑うこともありますまい。
だからこそ、長話を終えて去って行く山岡にレノマさんはサインを送る。
親指と中指を立て、残りの指は伏せた状態にしている。中指だけだと危ないサインですが、これは違う。
スラムのギャング間で使われるサインだ。
親指は「大切な人」その意味は「ファミリーを愛せよ」である。では中指は?

決まってるだろ。ファミリー以外クソファッキンだ

スラムらしいっすね。でも大切な人を愛せよというのはいい教えである。
山岡も囚人に教えられるなんてよ、とか言ってしまう。囚人どころか何十歳も年下相手に、だからなぁ。
そんな年の差を感じさせない相手だから問題ないけど。

・・・佐々木。死ぬんじゃねえぞ
やってみせろ脱獄を。この息苦しい世の中に風穴を開けてやれ!!

一応、レノマさんは3人殺しの凶悪犯という認識なはずなのだが、そのセリフはいかがなものか。
でも、ついそう言いたくなるぐらいに夢を語るレノマさんが魅力的だったのでしょうね。
当初は全く持って仲がいいとはいえない2人だった。
お互い見下し、ウサ晴らしにしたり、利用したりする関係だった。
交渉をした後も、協力関係というよりは、腹の探り合いといった関係だった。
それがいつの間にやらお互いの未来を気に掛けるような間柄になってしまうとは・・・
ただ言われたとおりに見取り図を置くだけではこの関係にはなれなかった。山岡の行動による結果である。

その山岡。仕事をやめて早い時間に帰宅。
今日は日曜日なので子供たちも家にいる。
その子供達を遠ざけ、妻と相対する山岡。行うのは土下座。謝罪の動作である。

明穂!!やり直させてくれ!!

ダアアンと音を立てて頭を下げる山岡。
だが、奥さんの反応は冷たい。振り返りもせず、料理の手も止めない。
またいつ来るかわからない借金取りに怯えて生活するなんてムリだという。最もだ。
だが、山岡は言う。借金は返した、と。やけくそで買った宝くじが当たったんだ、と。
さすがに囚人との取引のことを口にするわけにはいかないので、ムリヤリ理由をこじつける山岡であった。
しかし、奥さんは言う。それでも同じだと。あなたはまたパチンコにくるいきっと同じことをする。

今朝刑務官を辞めてきた!!

この言葉はさすがに驚きである。思わず振り返る明穂さん。

甘えも、驕りも、すべて捨てて・・・俺は再生したい
安定した収入は約束できないが・・・幸せな家庭を作りたい

山岡の真摯な表情に、崩れ落ちる明穂さん。そして、抱きしめる山岡。
見守っていた子供達も泣きながら抱きついてくる。それを受け止める山岡。
とったサインはレノマさんが示したもの。大切な人を愛せよ。その教えを受け取った形になったわけだ。

やはり借金は山岡のパチンコくるいのせいだったのか!
でもまあ、その反省はきっちりとしてくれたようですし、二度と堕ちることはないでしょう。たぶん。
これからは家族を守る大黒柱としてしっかりやっていって欲しいものであります。

それにしても、このサイン。やろうとすると指がつりそうになって困る。
山岡がやっているように、何か支えになるものがないと厳しい。
折り曲げた指が手の平につかないぐらいに曲げるようにしておくのがいいんですかね?小指たっちゃう!

それはさておき。見取り図を手に入れたレノマさん。
次回からは本格的に脱走計画を練ることができそうですね。楽しみだ。



第54房 煙突  (2012年 16号)


見取り図を手にいれ、新章突入!
というか、実際の新章に入る前の幕間のような回ですな。

今日も野球を楽しもうとする天野たち。
やれることが少ないとはいえ、毎日野球をしても楽しそうですな、こいつら。
レノマさんに今日も1発頼みますよと声をかけるが、レノマさんの姿はない。
どうやら、体がなまっているから筋トレをするそうな。
懲罰房明けですからねぇ。そりゃ体もなまっているでしょう。
昨日、あんな凄いホームランを打ったけど、どうやら飛距離に納得できていないらしい。マジかよ!!

ボスが筋トレモードに入ったら誰も近寄れない。なので天野たちはボスを置き、野球を始める。
しかし、1人で筋トレではなく、リクも連れてきているレノマさん。
2人で話をするのに怪しまれないよう、筋トレという言い訳を用いたわけですね。
でも、ちゃんと筋トレもするレノマさん。なまっているのは事実のようだ。リクも天野もやっておけ。

留守の間、何か進展があったか問うレノマさん。
リクは極楽島に脱獄のスペシャリストがいるという情報を手に入れていた。
が、その情報が霞むような収穫をレノマさんは得ていた。刑務所の見取り図を手に入れたのだ!
さすがにこれには派手に驚くリク。
しかしレノマさん。運がよかっただけだと言ってのける。

勝手に危ねえ橋を渡っちまって悪かった

結果まで出しているのに、そういって謝るレノマさん。
まあ、確かに一歩間違えたら永久に独房入りなんてこともありえたわけですからねぇ。
でも、あのタイミングでないと交渉はできなかったのだとレノマさんは言う。
看守とゆっくり2人だけで話ができるチャンス。
それと、交渉には互いの心理的立場が五分五分である必要があった
だいたいの看守は内心では囚人のボス連中にビビってる。
だからそのボスが持ちかける買収話になんて容易に乗ってはこない。
ところが、囚人を懲罰房に落とし込むと、看守は途端に警戒心を解くらしい。そのスキを狙いうったわけだ。

焦りすぎじゃない?とも思ったけど、交渉する舞台としては最善だったわけですな。
確かに山岡。レノマさんが懲罰房に入ったときはやたらと強気に見えましたわ。というかイヤミが強くなってた。
しかし、そうなると谷村看守部長はビビらない人なんですかね?
ボスの中でもかなり強いレノマさん相手に強気に出る上に、賄賂まで貰ったりしている。
何気に谷村株が上がった気がしないでもない。

勝手に動いたことを説明しようとするレノマさん。
だが、タイミングがどうこうより、もっと思ったことがある。

ただでさえ外に飛び出してえんだぞ。それをあんな狭っ苦しい所で何日も座るだけで過ごしてみろ。
我慢なんかしてられるかよ、バカヤロー

笑顔で言って見せるレノマさん。やっぱ魅力的ですなぁ。
若さゆえの危うさもあるが、それもボスとしての魅力であるのでしょう。

レノマさんは懲罰房に入れられながらも頑張っていた。
それに比べてリク。顔も知らない脱獄のスペシャリストから手口を盗み出そうと思ってはいたが、動いてはいない。

全然がんばってない!!

唇を噛み、悔しがるリク。何もなかったとしか言えずにいる。
だが、レノマさんは、よかったと言う。
リクを勝手に1人で行動させるとろくなことがないでしょうし、そう思うのは当たり前か。

何もなくて・・・よかった

脱獄計画のこともあるけど、リクに何もなくてよかった。レノマさんはそう言いたいのでしょうな。
そのセリフは、リクのおじさんがよく言っていたセリフである。
「何もない」ことない時もでも言ってくれたそうな。ふむ。

筋トレを追え、座り込んで2人でおじさんのことについて話す。
優しいおじさん。全然怒ったりしないのかというと、そうでもない。はっきり覚えていることがある。
リクが今よりさらに幼い頃のこと。
近所の年下の奴ら連れて、そこらじゃ1番高い煙突に登ったそうな。
これは怖い。でも子供ってこういうことしますよね。大人になってからは考えられないことだけど。
警察であるおじさん。説教のひとつでもしてやらんとと震えながら登る。がんばれー。
でも、到着したら絶景を楽しんだりしている。何をしているのやら。
しかし、その目に映ったのは壁。
まだ建設途中だったスラムを覆う壁を見て、めちゃくちゃ怖い顔をするおじさん。
人を差別するための壁の建設に怒っていたんでしょうな・・・

すごく正義感があり、かっこいいおじさん。だけど、少しズレているところもある。
警察なので犯人を逮捕することもある。
町中で包丁を振り回し、5人も大ケガさせたヤツを捕まえたときのこと。
その兄が報復に来た。戦車に乗って。バカが戦車に乗ってやってきやがったー!!
戦車というか、ジープにガトリングガンをつけたようなシロモノである。
それを用いて、交番を吹き飛ばしてくる。凄い威力だなおい。
とっさに地下の収納庫らしきところにリクを押し込みかばうおじさん。
銃撃が去ったころには、交番は跡形もなくなっていた。ガラーン。
でもおじさんは言うのである。よかった、何もなくて、と。なさすぎだよ!!

片側を盛大に焦がしながらも、おおらかに何もなくてよかったと言うおじさん。
リクはそんなおじさんが大好きだった。

俺も会いたかったな

青い空を見つめ、おじさんに想いを馳せるリク。そして、レノマさんも会ってみたかったという。
レノマさんにとっての月がリクであるように、リクにとっての月はおじさんである。
リクに影響を与えた人物なのだから、レノマさんが会いたいと思っても不思議はないですわな。

おじさんは鬼道院の悪事を暴こうとして殺された。
ならば、レノマさんもおじさんの追った道を辿り、鬼道院の悪事に気づくという展開があるかもしれない。
まだまだ気が早いけど、脱獄後の展開も気になりますぜ!



第55房 図面  (2012年 17号)


製図作業室。ここに刑務所の見取り図が入っている。
持ち出したりせずに入れっぱなしにしてるんですな。
まあ、工場から出るときも身体検査があるらしいし、製図を持ち出すのは無理か。
誰かに見られたりしないといいんですけどね。

レノマさんと一緒に見取り図を見ようとするリク。緊張した面持ち。
生半可な気持ちでは見られないとリクは言う。
こいつを手に入れるのにレノマさんがどれだけ頑張ったのか想像すると、そういう気持ちになれますわな。

よーく見ろ、こいつがここの見取り図だ

ほう。これが見取り図!一枚ではなく複数枚あるので、ここで見えるだけではよくわかりませんな。
ともかく、まずは自分たちが入っている324房のある階から見ていく。
そこから出て、毎朝毎夕通るエレベーターへの通路などを見ていく。
そして、次々に見取り図を読み進めて行く2人。
「こんな所に・・・なんだこれ?」「看守の詰め所かなんだだろう」
「これはなんだ?倉庫か?」「看守用のトイレじゃないか?」「違うだろ」
「この壁の裏側って通路があったのか!」「どこ
「雑居房って他にもこんなにあったのか」「ちょっとどけ。見えねぇ」

なんだか微笑ましいですね。
しかし、レノマさん。どこ?はないでしょう。なんか可愛いじゃないですか。

「これ炊場かな」「そこがトイレだろ」「炊場はたぶんここだ」「広いな!!」
「それなんだろ」「わからねえ」「図書の倉庫かな」
「なんだよこれシャワー室か!?」「あいつらは好きな時にシャワー浴びれんのかよ!くそ!」
「これも通路か?」「いや配管スペースか」

見取り図を見て空想の中で駆け回る2人。なんだかドラマの演出みたいですな。かっこいい。
今まで想像すらできなかったものが確かに見えてきている。匂いまで感じられそうだ。

こんな見取り図を・・・オメェ・・・レノマ・・・オメェスゲェよ。
おつかれさん。ありがとう!

リクの満面の笑みに、微笑を返すレノマさん。
でも、口では浮かれてんじゃねえよとか言ってしまう。内心では嬉しいんでしょうけどね!

さて、ここいらで脱獄にあたってのシミュレーションをしてみようと考える。
まずは第1関門。85階にある324房から地上に出るまでやってみよう。
まずはスタート地点。324房を出る・・・出る?どうやって出るんだ?

オメェに迫真の演技をしてもらう

んあ!?
レノマさんの提案に驚くリク。概要はこうだ。
決行は当然警備が手薄になる夜中。看守が1人で巡回に来るタイミングでリクが突然腹痛に襲われる。
リクに悲鳴をあげさせ、医務室に連れて行くために扉を開けさせようという魂胆だ。
看守は自分の巡回時間に面倒を起こしたくないという心理がある。
放置して死なせたら色々と面倒でありますからねぇ。だからこそ、そうすれば必ず・・・扉は開く!!

開きさえすればこっちのもの。看守を蹴り飛ばし、脱出を開始できるってわけだ。
エグイなレノマさん。なにがエグイって、想像の中でリクの腕をつねりあげているのがエグイ
迫真の演技をしてもらうんじゃなかったのかよ!

ともかく324房はそれでいいとして、通用門はどうするのか?
こないだの襲撃事件のようなヒューマンエラーを期待するのか?
さすがにそれを期待するのは虫がよいし、時間がかかりすぎる。
そこで考てみたレノマさん。あることに気づく。おそらく看守はマスターキー1つでほとんどの鍵を開けてる、と。
これだけの数の房、扉。それぞれの鍵を持っていたら看守もえらいことになってしまう。ジャラン。
だから、そのマスターキーをぶっ飛ばしたときに奪えば通用門も開けられるって寸法だ。

それよりも問題になるのはその先。エレベーターだ。
エレベーターは決行時に使うわけにはいかない。乗っている時に電源を落とされたら終わりだ。
フロアは地上85階。窓を破って出るわけにもいかない。その窓とておそらくすべて鉄格子付きである。

自由落下はできない。だけど、エレベーターは使えない。
となると、自分の足で降りるしかないのだが・・・
そう考えたリク。見取り図に食いつき、あるものを探す。これだ、間違いねぇ。非常階段だ

非常階段。そういったものは大抵エレベーターのすぐ近くにある。が、見たことはない。
見取り図によるとエレベーターからはかなり離れた所に階段らしきものが描かれている。
フロアには看守だっている。停電とか何かのために階段は必ずあるはずだ。

間違いねぇ。こいつはたしかに階段だ!

毎日・・・9時間・・・そんなもんねえという思い込みで見落としていたな・・・

さすがのレノマさんも、長いこといると逆に思い込みをしてしまう部分があるらしい。
そういった気づけずにいる点に思い至らせることができた。これはリクのファインプレーである。
やるじゃねえか。

でかしたぜ!

ベシッ。どっはァ。
褒めてくれたのは嬉しいけど、手加減してくださいボス。凄い吹っ飛んだぞ!

見取り図の確認は終了。作業に戻る2人。
そういえば、これ作業時間に2人で製図室に入って密談してるってことなんですよね。
私語とか禁止されてそうな環境なのに、よく2人で密室に入れたな。
あんまり長いこと話し込んでて、看守が製図室に入り込んできたらコトでしたな。危ない危ない。

作業終了。囚人は列を作り行進を開始する。ういっちに〜ういっちに〜。
その際、看守の使う鍵について観察するリク。鈴のついたキーを扱う看守。
扉を開き、囚人の列はエレベーターに向かう。でけえなこのエレベーター。
どうやら数百人はいそうな囚人を一気に乗せて運ぶことができそうなシロモノである。
こりゃたった2人が脱獄する際に動かすようなものじゃないですわな。

前後に並んで歩くリクとレノマさん。
行進中、いきなりレノマさんがリクに殴りかかる。オラア!な、何をする!?

レノマ「こいつが俺の足を踏みやがったんだよ!!」
リク「踏んでねえよ。どういうつもりだこのやろう!!」

じゃあてめえかと暴れだすレノマさん。それを見ていた谷村看守部長はお怒り。

貴様ら罰だ!!第27木工場全員、今日は85階まで階段で登れい!!

階段!?
なるほど。これがレノマさんの狙いだったのか!
下手したらまた懲罰房入りかもしれないのに・・・見事な賭けでありましたな。
とはいえ、脱獄を考えていない他の囚人にはいい迷惑である。ボスゥー!何してくれちゃってんっスかー!!
下見が出来ると嬉しそうな2人と違い、落ち込む一般囚人たち。可哀想に。
登るのに相当時間もかかるので晩飯も抜きになるそうな。キツー。
それはさておき。
階段への道に繋がる扉を開ける鍵はさっきと同じ鈴つきの鍵である。
レノマさんの予想通り、マスターキーで大半の鍵は開くようになっているようだ。

階段の真ん中には天を貫くかのように立てられたポールがある。
これに掴まって滑り落ちれば一気に一階までやってこれそうだ。
実際に見ない限り思いつかないアイディアだな・・・これは大きい。
リクの気づきにレノマさんの行動力。脱獄の準備が一気に進んだように思えますな!

なんとも爽やかな笑顔で階段を登る2人。
それはいいけど、大変そうにしている他の27の連中も労ってあげてくださいね、ボス。



第56房 犯歴  (2012年 18号)


本日は週に1度の官本貸出日。
リクに読書とアダ名されている須藤くんは官本を借りる。
ノギも暇潰しに図鑑を借りようとしている。
さらに天野。こちらは購入した私本を受け取ろうとしている。
刑務所で作業することで囚人には作業報奨金が入る。その報奨金を溜めて本を買ったりできるのだ。

購入した本は実話マックスマックス。
天野のようなリーゼントをした男が表紙に描かれている。
特集はスラムのふんどし祭だ!
ドッコイショと描かれたふんどし姿の男たちによる祭。刑務所内でもできそうだな。
しかし・・・激熱!ふんどしはカレーライス!とは一体・・・?
どう受け取ったらいいアオリなのかわからないよ・・・

天野の地元はスラムの栞町というところ。
毎年この時期になるとふんどし祭の特集を行ってくれるらしい。なるほど、この記事が見たかったのか。
菅くんも懐かしいと覗き込んでくる。
菅くんの出身は川端町だが、彫師のデリバリーで栞町に行ったことがあるらしい。その際に見たわけか。
彫師は10歳の時から始めていたという菅くん。
5年前。12歳でパクられるまで2年間独学で必死だったという。
ほう。菅くんは17歳でしたか。ほう・・・

スラムで10歳やそこらのガキが1人で生きていくのは並大抵のことではない。
ではそんなスラムでリクはどうやって生きてきたのか。
と聞かれてもな。魚釣って売ったりとか荷物運びとか・・・

普通だなオイ。

根性や優しさはとび抜けてるが、なんだかんだで普通の子供ですからねぇ。
あと、警察官のおじさんに色々面倒を見てもらってたし、生きていけなくはなかったわけだ。

天野は一体何をしていたのだろうか。答えは暴走族。族かよ。
栞町スコーピオン初代総長。天上天下唯我独尊!スラムの赤い流れ星、天野渉ったぁ俺のことよ!

それ職業じゃねーじゃねぇか。
でも、族の頭をやるだけの器量はあったんですね。なんだかんだで27ではボスに次ぐ男だけはあるわけか?

松尾は建設関係でまじめに汗を流す勤労少年だったらしい。
そのころの松尾は髪の毛が生えていた。なんで剃っちゃったんだろう。今の方が似合ってるけどさ。
本当は靴屋の親父の後を継ぎたかったという松尾。
しかしあの隕石で店は全部吹っ飛び、親父さんもすっかり元気をなくしてしまったらしい。
そんな状況で追い打ちをかけるように息子が刑務所に・・・親父さんの心中は察するに余りあるな。松尾も気にしている様子。

一体松尾は何をして刑務所に来ることになったのか。
いけすかない先輩を酒の勢いでたった1発殴ってしまった。
それで相手は骨折・・・頭がい骨、ろっ骨、大腿骨。そして全身大やけど。
なぐったときの場所が悪かったですな。
しかしそれで何年もブチ込まれることになるとは・・・やりきれませんなぁ。

菅くんが掴まった理由。
無許可で商売をしていたのを通報されたかららしい。
そんな奴はいくらでもいるんだけど、時期が悪かった。
代金を後払いにしていたのだが、それを払えない奴が警察にチクったらしい。
通常は無許可営業なんて小さい犯罪、警察は相手にしない。
しかし、ちょうど警察じゃ摘発数のノルマを達成しなきゃならない時期であったという。
ついてなかった・・・菅くんはそういうが、これもまたやりきれない話である。
スラムじゃ摘発数のノルマ稼ぎなんて格好のマトですわなぁ。
刑務所の収容人数が溢れかえるのも、警察のこういう行為が原因なんじゃないかね。

ノギは前に話したとおりのニワトリ泥棒。
全部オスだったからついてなかったとノギ。そういう問題じゃないだろ。

最後に須藤くん。
1人だけ絶対に悪いことしなさそうな彼は一体何をしたのか。
悪いことをしている意識はなかったという須藤くん。
行ったのはハッキング。警察とか防衛省のコンピューターに入り込んでただ覗いて回ってたらしい。

ハッキン・・・覗いて・・・?チカンみたいなもんか?

そりゃ発禁じゃねーか。違うよ!
侵入したというだけで捕まってしまうわけか。そりゃ厳しい。
スラム住民だと掲示板で犯罪予告をしただけでも数年ブチ込まれそうですなぁ。
まあ、スラムの人間だと犯罪予告は予告に留まらない可能性もあるからそれはしょうがないかもだが。

須藤くんはただ外のことが知りたかった。
スラムじゃ、ずっとあの壁に囲まれたままだったから

スラム全域を覆う透明の壁。
あの壁さえなきゃ俺たちもう少しマシな人生だったかもしれないよな、と松尾。
松尾の働いていたところにも、あの壁の建設の下請けの話があったらしい。
しかし、そこの親方は金はいいはずのそんな仕事を頑として引き受けなかったという。

あんなクソみてえな壁を造るために、この仕事をしてんじゃねえってな

ほほう。しぶいですなその親方!
親方の話で盛り上がる松尾たち。しかし、天野は一人うわの空といった様子。どうした?

その夜。全員が寝静まったと思われるころ。天野は寝付けずにいた。
リクは問いかける。何をやってここに来たのか、と。

スラムの壁をぶっ壊そうとしてよ・・・捕まっちまった

へぇ。そいつはやってくれるじゃないか。さすが初代総長。
いや、そういう話ではない。そうじゃねぇ・・・そうじゃねえんだ。
天野は男らしさに憧れて土木作業で食っていた。さすがに暴走族では食えないか。
シャバの職業も松尾と一緒か。と思ったが全然違う、大違いだと天野。

俺はこいつみてえなしっかりした考えもなく、ただ金を稼ぐことだけしか考えてなかった。
俺はよ・・・あの現場で働いてたんだ。
なーんも考えずに、せっせこ、せっせこと・・・

でもある日よ・・・あの透明な壁の向こう側によ、見つけちまったんだよ。
目が大きくて、せっけんの匂いがこっちまで届いてきそうなきれいな髪だった。
初めはいつもの調子だったんだけどよ・・・
でもよ・・・日が経つにつれ段々・・・なんか・・・いつもの調子で収まんなくなってる自分に気づき始めた。
どうしても。どうしても会いたい。
でも、そこには壁があった。しかも俺はそれを必死で造ってる。そんな矛盾はねえだろ

どうすりゃいいのかわかんなくて走り回った・・・走るしかなかった・・・
だからって親方や工事現場の仲間を見る目が変わるわけじゃない。
あの人たちだって生きるために必死なのは知っていたから・・・
でも・・・でも俺は段々・・・あの壁が恨めしくてしょうがなくなってきた・・・

結局さ、ムショなんかに来ちまったら会えやしねえのにな・・・
あんな巨大な壁が壊れるわけもねえのにな。

乗っていたバイクを思いっきり透明の壁にぶつける天野。
丁度その光景を、通りがかったパトカーが発見していた。
取り押さえられる天野。ふむ・・・これは確かに数年うたれるぐらいの罪にはなりそうだ。
スラムを象徴する壁を壊そうとしたわけですからねぇ。まあ、壊れなかったからそんなに刑期は長くなかったわけか。

あーあ・・・しゃべっちまった・・・

今まで誰にも話したことはなかったんでしょうな。
しかし、今日は324房の全員が聞いていた。
皆、色々なことを抱えて刑務所に入ってきたんだなぁ。

ありがとう。話してくれて。

囚人たちを月は優しく照らしてくれる。過ちを犯し、青春を置き去りにした男たちを照らしてくれる。

324房の連中はいい子が多いですねぇ。
レノマさんも、3人殺しの件は情状酌量の余地はある話でしたし。
その後のスラムでの活動はそれなりに苛烈だったかもしれませんが。
現実の刑務所とは違い、些細な事件でも刑務所に入れられ数年単位の刑期が課せられるのがこの世界である。
ともすれば、こういったいい子たちが集まる房ができてもおかしくはないってわけだ。
下手すると27木工場はそんな子ばかりのところかもしれない。だからレノマさんがいないと弱いんスね。

天野の刑期も気になるけど、脱獄をしなければいけないほどの長さではないっぽい。
いざ脱獄となった時、彼らはどう動くのか。その辺りも気になりますなぁ。



第57房 1日  (2012年 19号)


リクが刑務所に入れられて3か月が経つ。
朝日が昇る時間が変わるぐらいの時間が立ち、入った時とは大きく境遇も変わった。
324房の連中がこんなにいい子揃いとは、初めて入った時には想像もできなかったでしょうな。

入った当初よりはよくなったとはいえ、刑務所には違いない。
今日はそんな刑務所の1日の紹介となります。

AM 6:50
起床の合図と共に飛び起きる。
その前に目を覚ましていたとしても起き上がったり話したりしてはいけない。
アナウンスがあったと同時に飛び起きる。そして10分後の「点検」までいろいろと済ませないといけない。
まずは布団の片付け。折りたたんで端に積む。
中には一連の動作で空中で一気に四つ折までしつまう猛者もいる。
天野め・・・そんな特技を!と思ったら成功率は高くないらしい。何やってるのやら。
まるで箱のようにきっちりと畳む。習慣づいてくるときっちりできるように気を使うようになってしまうものだ。

そして、朝一番のトイレ。房には1つしかないから待ってる間に寝巻きから舎房着に着替える。時間はムダにしない!
その後、やっと目覚めの洗顔。さらに掃除。
そして、点検が来るのを座して待つ。

AM 7:00
点検。看守がやってきたら番号を口にする。いわゆる点呼ですな。
自分の房だけではなく、他の房すべての点検が終わるまで待たなきゃならない。

AM 7:10
朝の戦争第2ラウンド。配食。ようするに朝食の時間ですね。
おかずはみんな同じ量だが、ご飯の量は仕事の種類によって変わる
リクたち木工場など立ち仕事もある場合多めのA食。印刷工場など座り仕事なんかは少な目のB食となる。
宗教やアレルギーの理由から「豚禁」「牛禁」「魚禁」なんて別メニューもあるらしい。
まあ、リクたちスラム出身者はなんでも食べるから別メニューなんて関係ない話である。
ただ・・・レノマの分はなんだかいつも多い・・・気がする。とのこと。

こいつのガタイを見てると絶対根回ししてるとしか思えねえんだよな。
ま・・・気のせいだ・・・ということにしておこう。

たぶん気のせいではないんじゃないでしょうか。
どう考えても、これだけ大きくなるには足りない気がする。
なんせ刑務所の食事はやはり粗食であるからして。本日の朝食はうずら豆に小女子の佃煮。
トレーは3つに分けられているのに、2つしか使ってないとはどういうことか。
みそ汁はわかめ、ふ、ねぎが入っており、ご飯は麦飯(麦:白米=3:7)である。

いただきますの声と共に一斉にがっつく。
時間が限られてるから囚人ってのはメシを食うのがやたらと早い。
この後、出房するまでに食器洗い。これは当番制。
その他に、歯磨きや排便などの朝の準備が必要となる。
もしも食うのが遅いとその2つを同時にこなさないといけないことにもなる。
こいつは朝から想像以上にブルーになる行為だ。

AM 7:50
出房。2列縦隊で行進をして工場に出役する。
その前には検身場があり、検査を行う。
舎房着を脱いで素っ裸になり、あやしい物を持ち込んだりしてないか検査をする。カンカン踊りというやつだ。
舌を出して口の中に何か入れてないか腕をヒラヒラ脚をバタバタさせて何も挟んだりしてないか。
はた目には全くこっけいなもんだが、当人にはみじめ以外の何ものでもない。

毎日のようにこんな検査をさせられるとは屈辱の極みでありますな。
レノマさんもこれを毎日やっているというのだろうか・・・どんな表情でやっているのだろう。

AM 8:00
検査を通過し作業着に着替えて整列。
月曜の朝に限っては「工場三訓」を大きな声で言わされる。
・みんなで咲かそう無事故の花!
・みんなで励もう明るい工場!
・みんなで迎えよう希望の社会!
なんだよ、無事故の花って。まあ、こういう訓示は一般社会でもありそうなものだ。

続いて天突き体操
腰を落とし、その後天を突くように立ち上がって両手を空に突き上げる。
まるでヒキガエルのようだと恥ずかしがるリク。絶対にシャバの友達には見られたくない姿だ。
ヨイショーの掛け声も微妙にダサイっすね。
でも何が楽しいのか、この体操を全力で挑む奴もいる。誰だ、そんなダサイ野郎は?

ヨイショアー!!

史郎さんでした。他の囚人が恥ずかしがっている中、一人元気のいい史郎さん。
隣の工場なのにここまで聞こえてきているという。元気でいいですね!

その後、工場勤務。リクたちが働く木工場では木工工芸品を作成している。
タンス・机・イス・お盆にキーホルダー。
安い値段でシャバに提供している。そのもうけは国に納められてるらしい。
囚人にも給料のようなものが与えられる。作業報奨金ってやつだ。
その金で本やシャツやくつ下なんかを買うこともできるし、シャバの家族に送金する者もいる。
とはいっても1番時給の高い1等工でも時給は45円程度である。うーむ、なかなかの薄給。

AM 12:00
昼飯の時間である。
本日の昼食の献立は、ビビンバ山菜にカッパ漬け。パイン缶が2枚。
そしてタンメン。塩ラーメンの上に八宝菜風野菜炒めをトッピングしたものである。
このような、めん類を刑務所用語で長シャリという。
ちなみに正月三が日や運動会など特別な日にのみ出ることがある白米のみのご飯を銀シャリといい、
パン食の時や祝日の時などに出される特食と言われる甘いジュースや果物・菓子などを甘シャリという。

食堂にはテレビがある。大概決まったチャンネルである。
食後の時間は自由だが、だいたいそのテレビ番組に左右される。
ゲストがおやじだと野球でもしようかと外に出る。かわいいアイドルだとテレビに釘付けとなる。
なんてわかりやすいやつらだ・・・!!
そういえば、愛ちゃんの登場でレノマさん以外ノックアウトされてたりしたものなぁ。
27木工場の連中はとくに免疫のないヤツラが揃っていそうである。

昼休み。外に出たリクは見知った顔を見つける。おぉ・・・椿だ!出てこれたのか。
眼鏡と義眼を自弁で購入したという。報奨金が溜まってましたのかね?
椿はリクに座れよといい、隣に招き寄せる。
血みどろのケンカをした2人とは思えないぐらい、いい雰囲気の2人であります。
リクはレノマさんから椿や椿の妹のことを聞いているらしい。憎む気もなくなっているでしょうな。

食事時間も含めて休憩時間は40分間。
シャバと同じ空の下にいられるわずかなひとときである。

午後の勤務後、風呂の時間が設けられることがある。
冬は週に2回。夏は3回。囚人を一斉に入れるためにとてつもなくデカイ風呂場となる。
とはいえ、湯船がでかいわけではなく、横になるぐらいのスペースもないギチギチの入浴状態である。
囚人は刺青をしている人が多く、まるで博覧会の様相を呈している。
この辺りの刺青は全部菅くんが彫ったという。いい仕事してるねぇ。
髪を下ろした菅くんはなんだか知的というか、落ち着いて見える。当初は目付きが鋭すぎて怖かったのになぁ。

坊主頭の外国人の背中に彫られたのは"鉛筆"の文字。外人は漢字を描いたりするの好きっすね。
芯が通っていてまっすぐで男らしいシンプルな絵柄というリクエストなのでそうしたというが・・・よりにもよって。
まあ、間違ってはいないですけども。芯は通ってるね!間違いなく。傑作だ。

なんて話をしていたら、風呂場に悲鳴が響き渡る。なんだ?

シャバでテメェに殺された親分の仇討ちじゃあ!!地獄に落ちさらせやぁぁ!

どうやらヒゲソリの刃で相手の首筋を掻っ切ったらしい。
シャバでの因縁をムショにまで持ち込んでくるやつもいるらしく、安心はできないもんですな。
この男は、親分の仇を狙うためだけにこんな所に自ら入ってきたわけだ・・・怖いねぇ。

騒然とした風呂場は即刻閉鎖。お風呂タイムは中止を余儀なくされる。
そして各自の房へと行進をして帰還することになる。

PM 5:25
夕食の時間。
本日の夕食は、味付けゼンマイにピリ辛きゅうり、唐あげチリソース。和風スープに麦飯。

PM 6:00
夕食後には正座の時間がある。被害者や家族へ謝罪・反省の気持ちを見つめ直し祈りを捧げる。

黙想を終了したあとは仮就寝
9時の就寝消灯まで各々好きなことができる時間である。

朝こそ早いものの、労働時間はそんなに長くないんですな。
毎日3時間もの自由時間がとれるとは・・・!まあ、刑務所で出来ること自体限られているんでしょうけど。

ノギには妹がおり、その妹から手紙が来たという。嬉しそうだな。
松尾にも手紙が来ている。母ちゃんからの手紙だ。こちらも嬉しそう。
ただ、天野に気を使ってそういう姿はなるべく見せないようにしている様子。
天野も家族とかいなかったりするのですかねぇ。なんだか寂しそうな表情だ。

しかし、松尾の母ちゃんからの手紙には訃報が書かれていた。父が亡くなったのだ
松尾にとっては憧れであり、いつかは跡を継ぎたいと思った父が亡くなった。
自らは獄中にあり、その死に目に合うこともできなかった。松尾の悲しみはいかばかりか。

3度の飯もある。雨露しのげる屋根もある。服もただで借りられる。
刑務所はスラムよりも恵まれてるかも・・・
いや・・・家族や友達や大好きな場所に会いたい時に会いに行けるっていう・・・
そんな"当たり前"が俺たちにはない

寝食には不自由しなくても、自由がない。刑務所とはそういうところですわな。
年を取り、身寄りもない人間であるならともかく、まだ年若い彼等には獄中生活は厳しい。
リクやレノマさんとは違い、あと5年もしないうちに出れるとはいえ、さすがに長い。
2人が脱獄の計画を実行に移す場合、同じ房にいる彼らはどう思うのか・・・さらに気になるようになりましたな。

刑務所の風景が見えたところで、次週はお休み。
しかし、翌々週は表紙&巻頭カラー巨弾30Pで再開されるという。新展開が楽しみだ!!



第58房 手錠  (2012年 21号)


オレたちは拘束られない!
今週の囚人リクは表紙&巻頭カラーで登場。
表紙をでかく飾るとは・・・リクもチャンピオンの顔らしくなってきたと言えますな。
そして、見開きで描かれるカラー扉がまた凄い。絵画のような迫力がある!
さらにページをめくると、肌を大きく晒したレノマさんと史郎さんの対立構図。これもまた凄いね!色んな意味で。

ひと言断ったらんかい
火曜はいっつもワシら第26木工場がここで野球の練習する順番やろが!!

何を揉めているのかと思ったら、昼休みの場所とりで揉めていたらしい。
悪友でもある2大ボスの争いが再び始まろうとしている。これには周りの面子も大慌て。
開戦。戦いの方法は・・・腕相撲!
見開きで描かれる筋肉の祭典。そして互角の戦い。
結果は・・・土台にしていたベンチが壊れたことで無効試合。引き分けということになりました。

クソったれえい。なんじゃいこのベンチ、ペラペラやんけぇぇ!!

思いっきり公共物破壊ですがな史郎さん。看守に見つかったら懲罰ものである。
ベンチが壊れたことについて、レノマさん。そのおかげでお前は負けずにすんだと述べだす。

レノマ「この引き分けで73勝72敗5分。俺の1勝勝ち越しのままだな」
史郎「あ、アホか!勝ち越してんのは俺や!おんどれぁ、算数できひんのか!!」

本当にパワーは互角なんですねこの2人。しかしよく争っているなぁ。仲が良いというかなんというか。
睨みあう2人。その間に全員で割り込んで仲介に入る26、27の面々。まーまーまーまーまー!!
結局、今日は両工場野球中止ということで収まりました。
両工場ともボスは凄いのだが、それ以外は普通というかなんというかなキャラが多いですね。

野球は中止になったので、リクとお話の時間。
フェンス際に立つリクたちの前に見えるのは高い高い塀。
地上に降りるまでの一応のプランは立った。次は塀だ。これを乗り越えるか、トンネル掘るか。どっちかしかない。
だが、その前に建物から塀まで看守に見つからず辿り着くのは至難の技である。
運動場は野球ができるくらいだし、それなりの広さがある。
その間にカメラ、見張り、おまけに金網が立ちふさがっている。それらを越えてやっと塀まで辿り着ける。
さらに、それ以上の問題としてあるのが、この手錠
囚人は例外なくつけられている手錠であるが、脱走したことが気づかれた瞬間に電子ロックされて終わりとなる。
両腕が自由にならない状態じゃ、脱獄なんて無理にもほどがあるってもんですよね。

ガギン。

リクの手錠に音を立てて齧りつくレノマさん。
冗談だ・・・とは言ってますが、やってみないと気がすまない状態だったんでしょうな。

こんな小せえ輪っかごときに、俺たちの願いは阻まれるのか・・・

吠えるレノマさん。この悩みはかなり大きい。
電子ロックについてもそうだし、手錠したまま金網を越えようとすれば電流が走る仕掛けになっている。
やはり脱獄するにはこの手錠をどうにかする方法を考えなければいけないようだ。険しい道のりだ・・・

他の連中と離れた場所で苦悩する2人。
遠くからそれを見ている天野たち。あの2人最近なんだろ、と気になる様子。
まあ、隠してはいるけどどうしても怪しまれますよね。苦悩の様子も出ちゃうだろうし。

夜。見張りの看守が銃を装備していることについて考えるリク
。 もちろんその装備は、あの塀を越えようとする奴を撃ち落とすためのものでありましょう。
中からも外からも、撃ち落とすんだ・・・

あの同士奪還戦で撃墜された人の顔が目に焼きついて・・・

目が合っちゃったとか言ってましたからなぁ。今でも思い出してしまう光景らしい。トラウマものですよ。
つい思い出してしまい、震えだすリク。
そのついでに、その撃墜された人の同士が、今はS棟にいる脱獄のスペシャリストだと思い出す。
脱獄というおっかないことを繰り返した男。一体どんな奴なんだろうか。

翌日の昼休み。通路を進むリク。その先はS棟。
なに!?S棟って普通に行き来できる所だったのか!?
区分けされてるんだし、てっきり簡単には行けない所だと思ってたよ!

S棟はN棟とは雰囲気がかなり違う。
大人も多く、おじいさんまでいたりする。やはりN塔は未成年専用の棟なんですかねぇ。
そう考えると、N棟の人間は早々S棟に足を踏み入れたりはしないでしょうね。怖そうだ。
てなこと考えてたら、いきなり揉め事発声。

もう今日こそはガマンならんぞ!若造がぁ!それが年上に対する言葉遣いかこらあ!!

暴れだす囚人。看守を殴り倒している。
俺にも殴らせろと多数の囚人が暴徒と化している。怖い怖い。
こういうことがあるんじゃあ、看守が普段ボスにビビッてたりするのも当たり前になりますわな。
大慌てで司令室に連絡し、手錠のロックを作動してもらう。
工場の区分けなく、S棟の総員、電子手錠を遠隔操作で施錠される。
ラグビーのときは27木工場の人間だけが施錠されていた。施錠できる範囲は自在にコントロールできるのだ。
脱獄が知れたとしたら、全ての電子手錠が施錠されるかもしれない。そうなったら完全にアウトですわな。

俺たちは関係ないだろ、はずせよと騒がしいS棟。
今日のところは出直すかと引き上げようとするリク。
だが、その視界に気になる姿が映った。
施錠された電子手錠にツバを吐き、さらに両手をゴキゴキと鳴らす男。
その手はするりと手錠を外す。関節を外して抜けやすくしたというのか!?
器用な芸である。その後、自力でポキポキと指を戻して行く。うーむ、凄い。

な、何者だっ!!

慌ててその囚人の顔を見ようとするリク。
そこにいたのは・・・あの時、同士奪還戦で撃墜されたヘリの男・・・!?
まさか、生きていたというのか!?
いや、よく見ると顔の傷の位置が異なる。これは、よく似た別人ということなのか?
ひょっとしたら兄弟なのかもしれませんな。同士であり兄弟とかそういう話か。
はたまた、椿たちロン毛軍団やハゲ軍団のように、同士は同じような髪型にしている可能性はある。顔まで似せるなんて!?

この男が脱獄のスペシャリストなのだろうか。
手錠を外す技を持っているが、自分にしか使えない技に見えるんだがどうなんだろう。
そして、手錠は完全に外したら遠くから察知されたりしないのだろうか?
色々と気になることはある。でもとりあえず、リク。レノマさんと情報共有を早めにした方がいいと思うぞ。

渋いオッサンの登場で、破獄劇はさらに加速しそうな雰囲気。男臭さも増して行きそうだ!
でも、今週のアンケートで囚人リクに期待する項目に女囚の登場という内容がある。
この項目の票が多く集まったら、女囚が仲間になる可能性もあるのか・・・?
S棟以上に行き来は難しいところになるでしょうけど、どうやって扱うのか。気にはなりますな。



第59房 接触  (2012年 22+23号)


手錠という名の拘束を嘲笑うこの男、一体・・・!?
とアオリの入ったカラー絵がなんともカッコイイ。
外された手錠越しに映された月がまたいい感じを出していますわぁ。

手錠を外す場面を目撃してしまったリク。
その男は撃墜されたヘリの男に似ている。なにかつながりがあるのか?
いや、今はそんなことよりも、手錠をあっさり外したことが重要だ。でもあの人と似てたりするし・・・
2つのことを同時に考えようとしてしまって混乱するリク。ギー!!
てな風に悶えていたら、相手に発見されてしまいました。何をしているのやら。

男はリクに眼を向けはしたが、特に何かを言うでもなく手錠をつけて去って行く。
いつでも外せるって感じですね。
とりえあず、リクも頭を冷やすためにN棟に戻ることにする。

S棟には脱獄のスペシャリストがいる。そしてそのS棟には手錠をいともたやすく外してしまう奴がいた。
電子ロックをかけられて誰もが平常心を失っている中で、
淡々と・・・すずしい顔して、まるで知恵の輪で遊んでるかのように。
そしてその後、俺を見つけた時の獣のような鋭い視線。

ためしに手錠を外すのを試みてみるリク。当然ながらうまくいくはずもありません。

・・・きっと。いや!絶対そうだ。スペシャリストはあの人だ!!
・・・でも、ヘリを撃墜された人とそっくりなのは・・・

思い悩むリクの後ろに木材担いだレノマさんが登場。
って何で木材担いでるんだ?昼休みだし、時間外作業を進んでするとも思えない。
筋トレの一環で道具を使って何かしてたんでしょうか。

リクはレノマさんに、手錠を外せるような奴がいたらどうすると尋ねる。

そんな手品師みてえな奴がいたら会ってみてえもんだ。力ずくでタネ明かしさせてやる

まあ、レノマさんならそう言うでしょうな。
となると、スペシャリストのことをレノマさんに話すとややこしいことになりそうな気がする。
S棟に乗り込んでいって乱闘騒ぎにならないとも限らない。
小さいリクは見逃されても、レノマさんだとオーラがでかすぎて目立つだろうからなぁ。

ん?何か言ったか!?

しばらく黙っていようと思ったら、いきなり振り向いてくるレノマさん。
なんとも鋭い。こういう鋭敏な感覚があるから生き残ってこれたんでしょうな。

ヘリで撃墜された人とそっくりな理由もわかってないし、ちゃんとはっきりしたら教えると考えるリクでありました。

その夜。
リクは寝る前にS棟の人のことを考える。脱獄のスペシャリストは間違いなくあの人だ、と。
そして、ヘリの人とは兄弟かいとこか、いずれにしても大切な家族なんだろうと考える。

だとしたら、あれ返さなきゃ・・・

何やら考えているリク。あれとは、もしや例の墜落時のあれか?

昼。今日はテレビでアイドルがゲストに出る日なので大半はテレビ観賞。レノマさんは筋トレ。
それらを尻目にリクはトイレの一室に向かう。
どうやら、例のヘリ墜落現場で拾ったものをここに隠していたらしい。
うっかり飲み込んで、それからどうしたのかと思ったらちゃんと吐き出していたんですな。やりおる。

飲み込んだのはヘリの部品。かと思いきや、どうやら乗っていた人の遺品らしい
懐中時計のようだが、蓋を開けると時計の針は止まっている。墜落した時の時間であるか。

さて、今日もS棟に向かうリク。スペシャリストはどこかと探し回る。
その途中、凶悪犯っぽい男が足の悪くなっている爺さんを蹴りつけている場面にでくわす。
こりゃ関わるととばっちりが来そうですね。くわばらくわばら。
くわばらくわばら。なんて言いながらしっかり介入するリク。弱い者イジメはやめろ
なんて言ったりするから殴られたりします。
さらに、床に転がされゲシゲシと踏みつけられる。
でも蹴られながらも這いずって動き、爺さんを回収して退散するリクでありました。

こういうところで黙っていないのがリクの凄いところですよね。変わっていないようで何より。
さらに、レノマさんや椿といった強者の攻撃を受けてきたせいか耐久力が上がっているようにもみえる。
名も無いキャラの攻撃なんて大したダメージにもならない。

じいさんを壁際に退避させ、立ち上がるリク。その目の前に現れたのは・・・昨日の男!推定脱獄のスペシャリストだ!!

昨日のことなら忘れろ。お前の身のためだ。

そう言って立ち去ろうとする。
まあ、何のつながりもないリクが手錠の外し方を教えてくれと言った所で教えてくれるはずもないですわな。
そこでリク。まずはとっかかりとしてヘリの人の話を出す。

家族だろ?あんたとそっくりな人。ヘリが落ちる直前、俺・・・目が合ったんだ。

そう言うと、リクは時計を取り出し差し出す。あの次の日に拾ったんだ。渡さなきゃと思って、と。

時計は撃墜された時点で止まっている。
が、それより大事なものがある。時計の裏に敷かれた家族のものと思しき写真。

二郎・・・

どうやら家族で間違いないらしいですね。
写真には、男とその弟、弟の家族が映っていた。良さそうな家庭じゃないですか。
男はリクに尋ねる。あいつの最期はどうだったか、と。

とても・・・無念そうだった。

そうでしょうね。もちろんそうだっただろう。リクの話を聞き、男の表情にも暗いものが宿る。
それはそれとしても、届け物をしてくれたリクには礼を言わねばならない。ありがとよ。
そして、何か礼をさせてくれと申し出てくる。
相手が子供ということもあり、甘シャリか何かがいいかと尋ねてくるが、そういったものじゃなくていい。

俺にも・・・俺にも・・・あの、手錠の外し方を教えてくれっ!!
革命の闘士、田中一郎!!

ようやくその名前が出ましたね、田中一郎。
男は、昔の話だと言う。ということはやはり田中一郎当人であるのは間違いないんですかね。
弟の名前が二郎だし、さすがに間違いはありますまい。

それより、なぜ教わりたい。
脱獄か。仲間もいるのか?

問われる度に挙動不審になるリク。本当、こいつは腹の探り合いとかそういうのに向かないなぁ。
そういうのを担当するキャラじゃないからしょうがないんですけどね。真っ直ぐなのが特徴だし。
でも、仲間のチンコロは御法度。そういう面では信頼ができる。

だがな、命を落とすことになるぞ。遊び心ならやめておけ。

そう言われるとさすがのリクも反論する。遊びじゃねぇよ!!
遊びなんかじゃねぇ。おじさんの仇をとるんだ!!

大好きなおじさんの仇をとる。それが刑務所に入って誓った事柄である。
スラムで、家族のいない俺をいつも守ってくれた警察のおじさん。
いつものようにおじさんについて語るリク。しかし、警察という単語に引っかかりを覚えてしまう一郎。

警察なんかろくなもんじゃない

そう言い捨ててくる。おじさんだけは違うと抗弁するが、聞き入れてはもらえない。
あそこはトップが腐ってる、とのこと。

知ってるよ。煮えくり返るくらい知ってんだ!!
おじさんを殺したのは他でもない、その警視総監のクソ野郎なんだからっ!!

じゃあ、お前の仇ってのは・・・あの鬼道院か

おじさんの仇である鬼道院。その名前を口にした革命の闘士からは竦みあがるような気迫を感じた。
田中一郎と鬼道院。何か因縁があるのだろうか。
革命家なんてやってるんだから、そりゃ警察のトップとは因縁があってもおかしくないですわな。

鬼道院は、おじさんによると銃器密売などあくどいことを色々とやっているらしい。
そういったのを相手しているとなると、田中一郎もただのテロリストとは言い切れないものがある、かもしれない。
リクの仲間となるには十分な資格があると言えるかもしれませんなぁ。
レノマさんとの相性は今のところあまり良くはなさそうだが・・・はてさて。

しかし、この最終ページの鬼道院。凄く強そうなんでけど。
プロレス技とか使ってきそうな感じがある。
または実践的古武術を扱い、病院の廊下を一人で練り歩いたりしそうな雰囲気がある。とにかく強そうってことなんだぁ!!

それにしても、田中一郎と二郎は本当の兄弟なのだろうか。顔も似ているし間違いないと思うが、一つ疑問を呈したい。
田中一郎は渋すぎるぐらいにカッコイイキャラなのに、名前が平凡すぎる。麗乃真とは大違いだ。
となると、これはコードネームだったりしないだろうか。
田中という組織の幹部は数字+郎をつける命名規則があるとか。
一郎、二郎、三郎、とつながり、八郎とか百郎とかいるのかもしれない。
そして、実はあの人がチーム田中の幹部だったという驚愕の展開がくるかもしれない。
「そう、本来の呼び名は史郎ではなく・・・四郎!」「な、なんだってー!!」
うん、あるかもしれないし、ないような気もする。たぶんないな。



第60房 親父  (2012年 24号)


鬼道院の名を聞いた田中一郎に異変が生じる。
顔面に斜めに走る疵をいきなり掻き毟り始めた。ガリガリと掻き、血が滲み出る。
そして、リクに2度と俺の前でヤツの名前を口にするなといい去って行く。
革命の闘士と言われた人と鬼道院。一体どのような因縁があるのでしょうか・・・

鬼道院って一体何者なんだ・・・

今更ながらにそのことを考え出すリク。
同じ仲間のおじさんを拳銃で撃ったり、平気で無実の人間を刑務所にぶち込んだりする悪い奴。
リクが知っているのはそれだけである。何故おじさんが殺されることになったのかもわからない。
逆にその理由にリクが気づくことができれば、脱獄後の攻撃に役立つわけですが、はてさて。

しかし、田中一郎のあの疵は鬼道院がつけたものなんでしょうか。
なんとなく、手刀で田中一郎の顔を切り裂く鬼道院の姿が思い浮かんだ。スゲェ!

とにかく、今日の散策はここまで。
明日になったらまたS棟に行き、鬼道院の話を聞こうと考えるリク。
とはいえ、2度とその名前を口にするなとか言われちゃったし、どう聞いたものやら。
思い悩むリク。そのことに頭が一杯で、自分の房に戻っても上の空って感じである。
天野がシャバにいたころの話をしているが、聞いている様子もない。
まあ、天野としてみるともっと気になっている奴がいたので、リクの様子には気づかなかったみたいですけどね。

しかめっ面して辛気臭ぇ空気かもし出しているのは松尾。
こんな狭ぇ7人部屋で、せっかく1日で1番ゆっくりして笑って過ごせる時間だぞ。
1人でも調子のくるった奴がいるとどうなるんだよ、と天野は問い質しだす。

どうした?なんか悩みごとでもあんのか?

おふくろさんの手紙が届いてから松尾の様子がおかしい。そのことを天野はすぐに感じ取っていた。
カラ元気出してごまかそうとしててるのもわかっていた。
だからあえて何も言わなかったが・・・それが続くようならば、1人で抱え込ませるわけにもいかない。
俺たちに話してみろよと促す。

一つ大きく息をつき、松尾は話始める。父親の死について。
病気か何かで亡くなったのかと思ってたのだが、どうもそういう話ではないようだ。

松尾の親父は隕石で店がふっとんじまってからは元気がなくなっていた。
それでもなんとか家の隅で細々とクツ屋は続けていたという。
スラムの貧しい人たちにやっすーい料金で細々と。
でも仕上がりは抜群だった。その噂を聞きつけて特機の偉い野郎がある日家を訪ねてきた。

予約がたてこんでるだとぉ?そんなもん後回しにすればいい!ワシのブーツを先に作れ

いかにも権力を笠に着た人間の喋り方でありますね。
このハの字ヒゲのオッサンの申し出を松尾の親父は一言で返す。断る、と。

それ以来嫌がらせが始まった。材料が違法のモノだのなんだのって難癖をつけたりしてくるという。
親父のクツをはいている奴は逮捕するとまで言い出し、買ってくれたお客さんのクツまで没収したという。
裸足でウロウロしているお客さんを見て本署まで訴えにいったという親父さん。
立ち話もなんだからと奥の部屋に連れて行かれ・・・そして、骸となって戻ってきた。その体はアザだらけであったという。

なぜこうなったのか、ろくな説明もしてもらえない。
ただ、翌朝の新聞で親父さんはただの暴漢扱いにされ、死んだ事実すら書かれていなかったという。

松尾のおふくろさんは、この事実を息子に知らせるかどうか悩んだ。
でも、息子には真実をわかっておいてもらいたかった。だから手紙に残したのだという。

なぜ壁の内側で暮らしているというだけでこんなひどい扱いを受けなければならないのでしょう。
でも母さんは、もし・・・また生まれ変わることがあっても、壁の向こう側で生まれたいとは思いません。
壁のない世界で・・・またお父さんと結婚して、あなたを生んで、クツ屋さんをしながら暮らして見たい。
お母さんは大丈夫。あなたが帰ってくるのを待っています。
体には気をつけてください。お母さんより。

この手紙は・・・なんとも悲しい内容ですね。
父の件もあるが、母の言葉がなんとも染み入る。
壁の向こう側に行きたいとかではなく、壁のない生活をしたい。立派なお言葉であります。
スラムの意義ってのは大きく問われてしかるべきなのでしょうが・・・一度出来上がってしまった以上難しい話になりそうだ。

・・・スラムの俺たちにゃ・・・ちっぽけでささやかに暮らす自由はねえのかよ・・・

悔しそうな松尾。その肩に手を回し、レノマさんは言う。

だがな。そんな俺たちにも大切な人を泣いて弔う自由はある
泣け、松尾。

レノマさんの言葉を受け、盛大に涙を流す松尾。胸に飛び込み、声をあげて泣きじゃくる。
やっぱりレノマさんは大きい人ですねぇ。慕われるボスだというのもわかる。

この一件は、リクの考えに一石を投じる結果にもなった。
自分のことに夢中になりすぎて、こんな近くにいる友達の悲しみにまったく気づかなかった。
ごめん・・・ごめんよ松尾。

夜。月を見ながらリクは思う。

おじさん・・・松尾のお父さんが天国へ行ったらしいんだ。
もし会うことがあったら、いろいろお話を聞いてあげてほしいんだ。

おじさん。今、俺にはさ見えないんだけど。
天国に行ったらさ、命ととかって見えんの?大きいとか小さいとかさ。
人の命って全部一緒なんだろ?
俺・・・絶対そうだと思ってるんだ・・・

命とはなんだ。難しい話でありますね。
スラムという、そこに居るだけで差別されるという空間。
外の世界とのあまりの扱いの差を見れば、そういったことを考えてしまうのも当然でありますわなぁ。
こういった出来事を知り、リクは何を考え成長するのか。
脱獄がうまくいった後のことを考えると、大事な話だったように思えますな。
脱獄し、鬼道院を倒し、スラムの解放を訴える。こういう流れになっていきそうな気がします。
とはいえ、まずはその脱獄がうまくいくかどうかですね。田中一郎の協力をあおげるのかどうか。注目です。



囚人リク 8巻


第61房 札束  (2012年 25号)


父の死を知り悲嘆していた松尾。
しかし、ひとしきり泣いたことである程度は昇華できた模様。

おおおおおおおお。まぶしすぎるぜ!!ユリチン!!

そりゃふっ切れすぎだろ。カラ元気もいいけど、公共物壊したりしないでおきなさいよ。
あと、キャラ変えとかそういう話ではない。
なぜなら天野とキャラかぶることになっちゃうから。それは松尾も本位じゃあるまい。

それはさておき。本日も昼休みにS棟へ足を向けるリク。
どうやって鬼道院のことを教えてもらおうか、考えたが答えは出ていない様子。
とにかく田中一郎を探そうとする。が、その前に見知った顔に声をかけられた。
昨日、殴られていたところを助けたお爺ちゃんである。
昨日はありがとよ、とのこと。どういたしまして。いいってことよー。
名前を告げて去っていこうとするリク。だけど、どうにも気になっちゃったらしい。

じいちゃん、いっつも1人なのかい。

S棟は年齢幅が広そうな棟ですし、御老人が集団の輪に入るのは難しいのかもしれませんね。
おじいちゃんはもう6年ここにいるという。そして刑期はまだ10年残っている。
今の年齢を考えると生きては出られないでしょうな。
しかし、それを当然の報いだと受け止めている。一体何をして・・・?

人を殺めてしもうた
ワシの人生はもう刑務所で締めくくりじゃ。もう出たいとも思わん。

ふうむ。さすがにこの歳では未練ももうないといった感じなんですかねぇ。寂しい話だ。
身寄りもないというし、もし出れてもスラムで1人生きていけるはずもない。
ここにいればメシも出るし服や仕事もある。怒られもするが人とも関われる、とのこと。
最後のがなんとも寂しいセリフですね。
やはり人との関わりがなくなるのは耐え難いことなんでしょうか。

じゃがな、こいつだけは出してやりたい。
羽根を傷めていたんじゃがの。ようやっと治ったようじゃ。

そういいながら、懐に入れていたのはスズメである。ほほう。

しかしな・・・ここんところワシの足が調子悪くてな。外に出してやれんのだ。
・・・なあよ、リク坊。頼まれてくれんか?こいつを外へ・・・

おじいちゃんの願いを聞いて外に向かうリク。
スズメだけではなく、おじいちゃんも外へ連れ出してあげる。
だってさ、あのスズメはおじいちゃんが可愛がっていたものなんだから、おじいちゃんが返してあげないと。
そんな風に語るリク。あいかわらず人のよい子である。

おじいちゃんの懐から出されたスズメのチュン吉。自由な空へと羽ばたいていくのでありました。

そうじゃ。それでいいんじゃ。達者でな・・・チュン吉。

なんだか染みる話でありますねぇ。脱獄を夢見るリクにはなんとも言えない光景だ。
さて、おじいちゃんを連れて戻ってきたところで昼休みは終了。
今日は田中一郎に会う時間も取れませんでした。残念。
でもよかったとリクは言う。おじいちゃんが喜んでいたから、と。

その独り言を聞きつけたレノマさん。なんだかしらないが全身汗だくである。
なんだ?筋トレか。それともまた史郎さんと腕相撲でもしてたのか?

いや、今日はこいつだ。

ピコピコと親指を動かすレノマさん。その構えは・・・指相撲!?体ほてりすぎだろ!!
いやいや、指相撲はなかなか熱くなる競技ですよ。
指を動かすだけではない。周りこむようにして押さえ込んだり、押さえられたら暴れたりと熱くなれる。
子供の頃を思い出す競技である。とはいえさすがにここまで汗だくにはならねぇよ。

夜。今日もリクが考えるのは革命の闘士・田中一郎のこと。
手錠の抜け方のこと、鬼道院のこと、聞き出したいことは一杯ある。
一体あの男は何を知っているのだろうか・・・
その田中一郎は第4印刷工場で勤務。ガシャコンガシャコン。
さすがに名前は知れているだけあり、工場内でも仲間に引きこもうとする奴が現れる。
俺のチームに入れよと声をかけてくる男がいるが、その男を軽く張り飛ばす田中一郎。

衆を頼んでしか事を成せないハナタレ小僧が。知った風な口の利き方をするもんじゃない
2度と俺に話かけるな。

目力によって脅しをかける田中一郎。シブイな。

さて、場面は刑務所から一転して本土。鬼道院の方に移る。
鬼道院の前には6億もの金が入ったアタッシュケース。
だが、今月のあがりはこれですべてですと差し出している方は申し訳なさそうにしている。

先月より2000万のダウンか。
来月これ以上下げれば、貴様はあの島行きだ。

凄い表情で脅しをかける鬼道院。うーむ、いかにも悪党って感じでわかりやすいですね。

鬼道院が本棚の本を操作すると、音を立てて本棚が開く。
その奥にあるのは、高く積まれた札束や金塊。溜め込んだものであるなぁ。

この熱い札束が俺の夢を実現する。
俺は統べるのだ。このことごとくを

窓の外に見えるのは高層ビルが立ち並ぶ都市の姿。
鬼道院はこれらを全て統べようとしているという。
そんな鬼道院が野望を語る都市の上空を、スズメが鳴きながら飛んで行く。
果たして鬼道院はこの自由に空を飛ぶスズメも統べることができるというのだろうか?
刑務所を出て自由な空へと飛び去ったチュン吉は、鬼道院の前を飛ぶことができているのだろうか。気になります。

鬼道院はスラムで相当あくどい事をやっているとおじさんは言っていた。
それもこれも、巨万の富を得て、国の支配を企んでいたからなんですねぇ。
その計画はどれぐらい進んでいるのだろうか。そして実現の目はあるのだろうか。
なかなか気になるところです。計画が進む前にリクたちは脱獄できるのか?不安ではあるが楽しみでもありますな。



第62房 野望  (2012年 26号)


スラムと外の世界を隔てているのは透明で巨大な壁。
その壁一枚を隔てているだけで、子供の暮らしが大きく違う。なんとも厳しい光景である。

警視総監であり、極楽島矯正管区局長である鬼道院永周の講演会が大学で催される。
大学の名は大東京大学。ほう。新しく出来たのか?
ともかく、その大学で鬼道院が雄弁に治安を語る。

目先のヒューマニズムで家族を守れるか?恋人を守れるか?答えはNOだ
しかし今!
平和を望む人々がおだやかに暮らせる新たな社会のあり方が、世界に先駆けてこの国から構築されつつあるのです。
あの超犯罪多発地帯のスラムを隔離し、犯罪者は容赦なく迅速に刑務所へ送り込む。

それこそが1億総国民を守るという私の理想を叶える唯一の術である、未来へ繋がる偽りなき真実のヒューマニズムなのです。

その言葉で鬼道院の講演は終了する。
安易なヒューマニズムではなく、未来を見据えた大多数の国民のための治安。
そういう言い方をされると、とても魅力的に見えてきますね。
前にテレビで極楽島のことを語ったときもそうだったが、鬼道院はこういう演説が上手い。
裏の顔を知らない人間であれば、強引で強行的だが、それもまた魅力と映るかもしれない存在である。

さすがに警視総監という立場もあり、スケジュールは分刻みな鬼道院。
そんな予定の中に、料亭「信濃」での定例食事回が含まれている。
その食事会の相手とは、三村副総理
食事会などと銘打っているが、そんな優しいものではありませんな。

あの鬼道院が頭を下げ、今月の賄賂・・・いや、心づけを報告する。
どうやら、あの溜め込んだお金のうちのいくばくかかを賄賂として提供しているらしい。

現在の与党、民寿党は近々総裁選を行う様子。
この三村副総理は、最大派閥を率いる存在。であれば、次の総理の座はほぼ手中・・・
その支援を行ってきた鬼道院にとってはかなり旨味がとれそうな流れである。

三村副総理によれば、鬼道院は長年献金を行い、総理へ推し上げようとしてきたという。
その魂胆は一体なんであるか。
もちろん、賄賂を行うような人間が何の下心もないとは思えない。
さすがに三村副総理もそこまで能天気ではない様子。鬼道院の腹を問いただす。

三村様が総理になられた暁には・・・私を是非!防衛大臣の座に!!

警察と新自衛隊。この国の二大暴力機構を渡り歩こうとする鬼道院。
変わった奴だと評されるが、その願いは聞き届けられました。

食事会は終わり、退席する三村副総理。頭を下げ、見送った鬼道院。一人残って放ったセリフは――

呑気なブタめが
この俺が防衛大臣など取るに足らんポジションを本気で望むとでも思っているのか。

やっぱりそうですよねー。全てを手中に収めると宣言した男の野望がそんな小さいもののはずはない。

今の警視総監も、防衛大臣もただの通過点。
この俺が本当に手にしたいのは・・・この国の独裁政権!!

その暁には三村、貴様を真っ先に葬ってくれる。

それはそれで私怨が混じってそうで格が落ちそうな発言ですな。まあ、いいですけど。
それより気になったのが新自衛隊という言葉。
隕石落下から色々様変わりしている様子の日本。
警察がやたらと装備を強化しているように、自衛隊も強化している感じがします。
防衛大臣となった鬼道院はそれらを駆使して独裁政権を作ろうというのだろうか?どうやって?
クーデターでも起こすのだろうか。さすがにそれが易々と受け入れられるほど国民は疲弊していないと思うが・・・?

一刻も早く計画を進めたいと考えている鬼道院。
接待の後、早速メガネの秘書と共に動き出す。

車上で人権団体から抗議文書が届けられていることを聞かされるが、捨て置くことにする。
その目に映ったのは、スラムからの出稼ぎ労働者。
マイナス100の生活をたかがマイナス90にするために労働ビザを取り、足かせをはめられ、焼き印まで押されることも厭わぬ・・・

知恵なき者など虫ケラ同然。生きるに値せぬわ

さすがというかなんというか。
適役としてはこの上なく相応しい考えの持ち主である。
リクはこういった思想の持ち主と闘っていかねばならないのだ。脱獄が上手く行ったとしても困難は続きそうですなぁ。

さて、夜なのにサングラスをかけた鬼道院。
どこに向かうのかと思ったら、車はスラムへと向かう。
定期視察と称してやってきたスラム。訪れたのは怪しげな男たちのアジト。
そして、その男たちに軍資金として2000万を手渡す。
さらに明日、ライフルM16を100丁届けさせる、とのこと。

私が号令するその日まで軽挙妄動を慎め。
そして来たるべきその日こそが、私たち「新世界革命党」がこの国の歴史に名を刻む時だ。

どうやら、この男たちは革命家の集団らしい。
その革命家に軍資金と武器を提供するとは・・・鬼道院の狙いは一体!?
それはそうと、鬼道院のサングラスって変装のつもりでかけているんですよね?
そんな目立つ傷をつけておいて、サングラスだけで変装できたと思っているのか!?

スラムじゃ顔の傷くらい普通なのかもしれないけど、鬼道院の名前と顔はそれなりに有名なはず。
少なくとも、革命家を名乗る連中なら共通の敵として認識されていそうなものである。
そんなところに自ら乗り込み、手渡す鬼道院。大胆なのか何なのか。
というか、部下に任せてしまえばいいんじゃないかと思うのだが、自分で動かないと気がすまないのだろうか?
動かせる部下がいないのかもしれないが、このメガネの女秘書に任せればいいのになぁ。

新世界革命党の連中は、スラムに住む裏社会の資産家ということで一応納得しているらしい。
まあ、怪しいと思わないでもないけどって所でしょうか。
実はもうとっくに気づいてて、号令をかけにきたところで裏切る算段とか。ありえそうだが、ないだろうな。

車中にて、メガネの秘書が鬼道院に語りかける。
総監も悪いお方。ある時は革命家を利用し、ある時は徹底的に殲滅する。新東京革命党の時のように

革命家などしょせん理想偏愛主義者。
力なき正義をふりかざす阿呆など、王者を目指す俺のエサとなればいい。

そう言い捨てる鬼道院の過去の回想。
まだ警視長だったころの鬼道院。
とはいえ、その身分でありながら自らスラムに降り立ち、革命家の逮捕に動いていたという。
破れたマントをたなびかせて立つ様は、まるで世紀末の人間である。ヒャッハー。

ちょろちょろ逃げ回りおって。トップが捕まって新東京革命党も終わりだな。
なあ、革命の闘士、田中一郎よ

ここで絡みが出てきました、鬼道院と田中一郎。
高笑いする鬼道院にビンタをかます田中一郎。それがよほどプライドに触ったのか、刃物を取り出す鬼道院。
ゾギギと田中一郎の顔面に刃物を走らせ、大きな傷を作る。
なるほどね、こりゃ田中一郎も鬼道院の名を聞いて傷を疼かせるわけだ。

田中一郎は鬼道院がスラムの人間を食い物にし、私服を肥やすど外道と知っている様子。
証拠こそはないものの、これを知っているというだけでも武器となる。
うまく脱獄した暁には、それらの証拠を集めて廻ることになるのでしょうな。

お前のようなヤツが世を騒がし、我々が鎮圧する。そして俺は出世する。実にかわいい奴よ。

革命家など自分のエサにすぎないという鬼道院。
ということは、新世界革命党に軍資金を出しているのもそのためなのでしょうか?
防衛大臣に就任した後、大規模なテロを起こさせる。
それを鎮圧してみせ、その功績で権力を広げるという考えでしょうか。
ついでに、武装強化を図るための法案とかも可決させようとしそうな気がする。
いや、それくらいで済めばいいのだが――
ひょっとしたら、新世界革命党により、現政権の崩壊を目論んでいることもありえる。
現体制が崩壊し、それを鬼道院が鎮圧したとしたら・・・
崩壊の具合にもよるが、独裁政権の目は出てくるかもしれない。
外交とか考えると色々と難しいと思うけど、国内だけ考えるなら上手く行きそうな気もする。
果たして鬼道院の計画は進んでしまうのか。リクたちが刑務所にいるまま独裁政権の樹立はなるのか。
気になることが増えたって感じでありますな。



第63房 出題  (2012年 27号)


極楽島ではシャバからの手紙はすべて中身を確認される。
もちろん田中一郎の手紙も検閲されます。
なんせ脱獄を繰り返す革命の闘士だ。そのチェックの目も厳しくなる。
が、他愛もない普通の手紙ということで合格印が押されます。

果たしてこの手紙は本当に他愛も無い内容のものなのか?
たしかに、挨拶やら犬の話やらしているだけでたいした内容ではない。
だが、文章が一行空きになっているのがポイント。
こっそり地面に隠していたライターを用いて手紙を裏から温めれば・・・隠れた文章が浮かび上がる!!
ゲェー!!あぶり出しーッ!?
まさかこのような古典的というかなんというかな手段が用いられるとは!!
透かしてみたら見えたりしないものなんだろうか。チェック甘いな。

鬼道院ノ決定的ナ証拠ハイマダ掴メズ。
弱者救済のタメ総統の脱獄ヲ望ム!!

新東京革命党代表代理 笹原守

何で「の」だけひらがななんだろう。
それはさておき、田中一郎の脱獄は切望されている様子。
だが、俺はもう闘う資格を失ったのだと言い出す田中一郎。これは一体・・・?

そういえば、田中一郎は何度も脱獄を繰り返して極楽島にやってきたという。
ということは、スラム出身ではないということなんでしょうか?
軽犯罪でもスラム出身なら極楽島に追い込まれる。テロリストで入れられない理由も無い。
スラムの人間でなくとも、重犯罪者だと送り込まれる施設って話なんですかねぇ。

それにしても、田中一郎の言う闘う資格とは一体何なんだろうか。
それがわかればリクも説得の目が出てくるのだろうか。

ライターを隠し、中へと戻る田中一郎。
中では、またもや例のお爺ちゃんが虐められていた。
ヒマ潰しに、刑務所に入れられた理由を教えろと迫られていたらしい。
人を殺めたことを悔いているお爺ちゃんはあんまり話したくない様子だが・・・しかし、意外と出番あるなこの人。

そんなお爺ちゃんと男の間に割り込む田中一郎。
ナイフを持っているフリをして追い返したりする。おや、優しいことで。
その様子を偶然目撃したリク。なんだか嬉しそうだ。
田中一郎が割って入らなければ、またリクが飛び込んでいったんでしょうなぁ。

もっとぶっきらぼうな人かと思ってた。

嬉しそうなリクである。うむうむ。
それはさておき、今日こそは田中一郎と話をしないといけないリク。
前に周りこみ、土下座ができる体勢を取る。
が、ろくに話を聞かないまま立ち去ろうとする田中一郎。
ならば、その体勢のまま周りこむまでだ・・・座った体勢のままジャンプ!!
ドンドンと跳ねながら前に周り、手をつくリク。ようやくお願いの体勢になれたぞ!!

どうしてもあの手錠抜けを・・・教えてほしい

真剣な表情のリク。
他の刑務所と違って、極楽島ははるかに脱獄の難易度が高いが、それでも挑戦するのかと尋ねる田中一郎。
リクは威勢よく返事をするが、それでもダメだという。若い命をムダに散らすことはないってわけだ。

極楽島は脱獄しようとした相手を容赦なく殺しにかかるでしょうからねぇ。
捕まえれるぐらいの相手なら捕まえるでしょうが、その場合は永久に独居房なんてこともありえる。
リスクは他の刑務所とは比べ物にならないほど高いってわけだ。

ありがとう。命の心配・・・
でもさ、あきらめるとかあきらめないとか・・・俺にはもうそんなんじゃないんだ・・・
やらなきゃなんないことなんだ。

おっちゃんも何度も脱獄やってきたんだろ。
何度も・・・何かのためにやらなきゃならなかったんだろ。
田中のおっちゃん。こんなガキの俺だけど、男ならやらなきゃならないときがあるって思ってる。
鬼道院を、どうしても許せない

きっちりと土下座をしてみせるリク。あげたその表情は男の顔。
その表情に魅せられたか、田中一郎も話を聞くようになってくれました。

計画はどこまで進んでる。舎房を出るまでか?それでマスターキーを手に入れて・・・

問いかけを行う田中一郎。
エレベーターが使えないことについても言及してくる。
さすがは脱獄のスペシャリスト。リクたちが何日も頭ひねって辿り着いたことを・・・!!

エレベーターは使わないことはリクの考えではない。
非常階段を発見したのはリクだが、それ以外は全てレノマさんの活躍によるものである。
非常階段の入口の扉、鍵の位置を確かめ、見取り図を手に入れた。凄い活躍である。
特に見取り図に関してはさすがの田中一郎も驚きの表情を見せている。そりゃそうですわな。

なかなかよく働く仲間だな。
それで・・・お前は何の役に立っている

理想を信じることはお前の勝手だ。だがな・・・役立たずが動き回っても、仲間も殺すことになるだけだ。

厳しいことを言われた!!でも、その通りである。
実際、これまでの脱獄計画のほとんどはレノマさんの活躍によるものである。
リクは精神的な支えになってくれればいい。レノマさんはそう考えている。
とはいえ、リクとしてはそんな考えに甘えているわけにはいかないでしょうな。
自分が役に立っていないという自覚があるだけに、焦りが募っているのも感じられる。

・・・で、地上へ降りてからどうする。建物から出て次は壁があるぞ。
建物から壁までかなりの距離がある。その間にはいたる所に看守の目。目!
無数の目がある。さあ、それはどうする。

ぐ、ぐわっぐわからないいっ!!

確かに、そこはレノマさんも考えあぐねている部分である。リクが考えてすぐ答えがでるはずもない。
門番、巡回、監視カメラ、24時間眠らない看守の目・・・打つ手なし。

ところがだ、そのまとわりつく看守の目をなくす方法がある
1週間以内。このお題に答えられたら手錠抜けを教えてやる。
ただし、おまえひとりで見つけてこい。

田中一郎から出された難題。これはどういう答えが正しいのだろうか・・・?
数多の監視の目をかいくぐるにはどうするのか。真っ先に思いつくのは騒ぎを起こすことである。
それこそ、先のテロリストによる奪還騒ぎでも起きればヒューマンエラーも発生しうる。
とはいえ、その騒ぎの場合、最初の演技で誘い込んでマスターキーを奪うという手は使えない気がする。
まあ、監視の目をなくすというお題に対する答えにはなるかもしれないが・・・

または、刑務所内の一大イベント中に行動を起こすとかでしょうか。
刑務所内のNo.1を決める闘いであれば、看守はみんな見物に来るからそのスキがチャンスとか。
極楽島には最強の座を決めて争う場所が用意されており、優勝者は鬼道院とのシングルマッチが組まれるとか。
む、なんだか別のマンガになりそうな気がしてきた。

なんにしても、次回からは2号連続カラーでございます。
リクの出す答えを楽しみに待つことにしましょう!!



第64房 監視  (2012年 28号)


"自由"へ飛翔せよ!!
2号連続カラーの第1弾。元気なリクの姿。
なのはいいけど、何故か囚人服がオレンジ色である。
頭もオレンジになってる部分があるし、日光に当たって色が変わっているのだろうか。
それかもしかして、このツナギ・・・実はリバーシブル!?なんのために!?

疑問はさておき、本編。

田中一郎から出された看守の目をなくす方法。1週間以内という制限で出されたこの問いに苦悩するリク。
具体的なプランは後回しでいいから、とりあえずその「方法」だけを見つけてこいと言う

それもできないよいうな奴にその先のことなど何もできんよ。もってのほかだ。脱獄など。

昼休みにその課題を出され、午後の間からずーっと考えているが、答えは出ない。
看守の目をなくす。つまり目を隠すことか。
なるほど。実際に看守の目をバリィッと潰し、監視カメラもバキィッとへし折れば目はなくなるな。目がー!目がー!

んなことできるわけねえだろうがっ!

全くでありますな。それやりながら駆け抜けれるなら、正面から堂々と出てもいいくらいである。
だが、できるわけねえなんて言ってる場合じゃない。
なんとしても答えを見つけ出さなければいけないのだ。なんとしても!

翌日。工場勤務している間も答えを考えるリク。
集中して作業などできないものだから、彫刻刀で手をざっくりやってしまう。こりゃ痛い。
血が溢れてきて、作製していた品物に血が付いてしまう。
それを見た看守、リクを殴り倒す。怪我した囚人よりも品物の方が大事って話らしい。
まあ、納期がどうとか言ってましたしなぁ。囚人などよりよほど大事なのでしょうさ。
とはいえ、床に流れた血をなめて掃除しろとか言い出すのはどうかと。
床を汚すことになったのは、アナタが殴り倒したからじゃないですかー。

品物は汚すわ床は汚すわあげくの果ては、周りの気を散らせて他人の足をひっぱる・・・この役立たずが!!

・・・役立たず・・・俺は・・・俺は・・・役立たずなんかじゃ・・・

今、一番リクが気にしている言葉を言われてしまいましたね。
全く持って脱獄の役に立てていない。そんな自身を不甲斐なく思っている状況でコレは厳しい。
思わず反抗的な態度を取りそうになってしまうリク。

さっさと謝れ!!

警棒で殴りかかろうとした看守に割込み、レノマさんの蹴りがリクに炸裂する。
ゴロゴロと吹き飛ぶリク。軽いな。

看守さんのお手をわずらわせることもないかと。

これ以上、看守に責めさせているとどこまでエスカレートするかわかりませんしねぇ。
こいつには俺からよく言ってきかせますからとまとめようとするレノマさん。さすがボス。

レノマ・・・また俺をかばって・・・
ありがとう・・・でも・・・このままじゃだめなんだ!!助け舟はいらない!!

レノマ。すっこんでろ

助けを断ったリク。看守に謝罪し、言われたとおり、床に零れた血をなめて拭き取る。
レノマさんのキックで吹き飛んだ分、長い距離を掃除しないといけなくなりましたな。

レノマ・・・オメェはいっつも、ここぞって時に助けてくれるよな。ありがとう・・・
でも・・・俺!!もっとがんばらなきゃだめなんだ!!
自分だけでがんばらなきゃ!!この先、オメェを俺のドジに巻き込むわけにはいかない!!

いい心がけでありますな。
レノマさんもその辺りの察しはついているのか、なんともいい笑顔を浮かべております。

工場勤務が終わり、床についても答えを考えるリク。
一晩中考えてもいい考えは浮かびません。

おてんとさん・・・もっとのんびり動いていいんだよ。
ねぇ・・・なんでもお見通しのおてんとさんならさぁ、なんかわかるんじゃない?
やめたやめた!やっぱりいいよ。今回ばっかは俺、自分だけでやるって決めたから!

そう決意しているリク。だが、いいアイディアが浮かぶこともなく、日数だけが経過する。

おてんとさん・・・
あんたもさぁ・・・毎日毎日看守みてぇに・・・そんな所からずーっと見て・・・一体何が楽しいんだよ、ちくしょう。

リクがすさんどる!!
まあ、禄に眠れもせず、堂々巡りの考えを続けていたのではすさみもするさね。
何も思いつかないまま、残すはあと2日。
工場勤務後の入浴の時間も考えるのに費やすが、答えは浮かばない。

時間よとまれ・・・なんてな・・・

リクの呟きに応じたわけではあるまいが、いきなり風呂場が暗闇に包まれる。
これは・・・停電だ!!何も見えない!!
看守は懐中電灯を持っているが、こんな小さな明かりではなんともならない。
しばらくすると、暗闇に目が慣れたか見えるようになってくる。
が、そのころには全員手錠がロックされた状態になっている。何か悪さされるとも限りませんしねぇ。
そして点灯。不祥事らしいことは起きていないが、暗闇に紛れてある事件が起きていた。

看守さん!ずっと好きだったの!こんなチャンスを待っていたのよ!!

暗闇にまぎれてチューしようと男の看守に組み付いている男の囚人の姿があった。ワーオ。
ロックされた腕を警官の後ろに回しているので逃げにくい。早く手錠のロックをはずしてくれ・・・
災難ですな看守さん。ハハハ。いけいけー。結婚しろー。

おかしな状況に、周りの囚人から囃し立てるような歓声が飛ぶ。いい見世物ですわな。
しかし、暗くなれば看守のスキをついてこういった行動に出ることもできるのですな・・・そうか!!

何かに気づいた様子のリク。
翌日、昼休みになればさっそくS棟に向かって駆け出して行く。
向かうのはもちろん田中一郎のもとである。

房から地上まで降りるプランは立っている。そこから先、看守の目をなくす方法は・・・

極楽島の内燃力発電所を破壊して、停電を起こすことだ!

内燃力発電所?
そういわれれば、この刑務所には送電線がない。
となれば、きっと内部に発電所があるに違いない、という考えだ。
案の定、西エリアのすみっこに発電所はあった。今朝見取り図で確認してきたとリクは言う。ほう。

方法はわかんないけど・・・脱獄する夜、ここを破壊すればカメラもサーチライトも機能しない。
停電を起こし暗闇で看守もパニック。つまり目はなくなったも同然だ!どう?

・・・ずいぶんがんばったようだな。
だが、不正解だ

偶然も合わせて、ようやく辿り着いた答え。しかしそれは不正解と断じられる。な、なんでなのさ!!

これだけの規模の刑務所だ。万が一の停電に備えて蓄電施設もあるはずだ
この島に着く時、発電所のプロペラを見たか?あれを蓄電施設と見るべきだろう。
昨日の停電も復旧が早かっただろう。あれはその蓄電施設があったからだ。

なるほどねぇ。さらに田中一郎がいうには、別電源があると思われる証拠があるという。

昨日・・・まだ明かりが復旧する前に、電子手錠がロックされた。
停電状態にもかかわらず、手錠の電子ロックは正常に作動した。それはどう説明する?
つまり別電源が存在しているという証拠
極楽島の監視態勢においては絶対的なこの電子手錠。その電源が一時たりとて途切れることはありえない。
その電源を一般の電源に流用すれば、あらゆる電子機器はたやすく復旧する。
そうなれば一巻の終わりだ。

田中一郎の指摘に、二の句を告げずにいるリク。
期限は明日だと言って去って行く田中一郎。容赦ありませんな。
頑張って考えたから、ここまででOKだよなんて言ってくれそうもない。
まあ、脱獄に惜しかった、あと一歩なんて慰めはありえないわけだし、それも仕方がないか。

しかし、これが正解でないとすると、本当に何を行えばいいのやら。
暗闇に乗じて看守にチューしようとするオカマを大勢そろえるとかいうのはどうだろうか。
この部隊がいる限り、簡単に刑務所側も手錠のロックは行えなくなるぜ!!
いや、手錠が問題じゃないんだったな。問題は、看守の目をなくす、ということだった。
一体どうすればいいのやら・・・
運動場に出たところで全身に砂を被って背景と同化するとかどうだろうか。ギソウだよ。バレるに決まってるわな。
看守を殴り倒して、その服を奪うとか。
レノマさんはともかく、リクが看守役はさすがにムリがありすぎる。
でも、目を隠すという内容の答えとしてはアリかもしれない。どうなんでしょうね?



第65房 灯台  (2012年 29号)


2号連続カラーの第2弾。
サーチライトに照らされるリクとレノマさん。この事態だけは避けなければならない。
そのための看守の目をなくす方法。それは停電を起こすことだ!
と思ったら、それは不正解。
あんなに頭ひねって辿り着いた答えだったのに、自信もあったのに・・・

頭を抱えるリク。苦悩している状態だと周りの笑い声が耳障りに聞こえるもので。

笑ってんじゃねえよ。おてんとさんよぉ

太陽に当たり出したぞ!!すさんでますなぁ。
なんですか?皆が笑ってるからお日様も笑ってると思ったのかね?ルールルルルッルー。

ともかく、がっくり気落ちしながらN棟に戻ろうとするリク。
その途中、例のじいちゃんと出会う。
だけど、今日はお話をする気分にもなれない。謝りながら戻ろうとする。
そんな気落ちしたリクの背中にじいちゃんは声をかけてくる。

リク坊。何があったか知らんが・・・考えすぎはよくないよ。自分を見失っちまうでよ

ありがたい忠告であります。
しかし、状況が状況ですからねぇ。これがうまく行かないと、結局自分は何の役にも立たないままかもしれない。
しょせん、俺1人の力なんかじゃ無理なのかなぁ。苦悩するリクでありました。

そんなリクを他所に、自由時間を楽しく過ごそうとする天野たち。
考え事してるんだから、も少し静かにしてくれよと叫ぶリク。おやおや。
それを聞いた天野。リクに近づき、何イラついてんだよと尋ねる。そして――

なんなら相談に乗るぜ
力不足かもしんねえけどよ。気のいいオメーが荒れるったぁ、よっぽどのことだろうからな。
ま・・・気が向いたら話してくれよ。

そう言って、肩に拳を当てる天野。
おぉう。さすがに天野・・・何だかんだでレノマさん不在時に27を纏めていただけのことはある!
その天野に叩かれた肩がじんじんと響く。

・・・八つ当たりなんか・・・俺は・・・なんて最低なんだ!!

苛立ちよりも、後悔で泣きそうになるリク。そういうことをちゃんと反省できる子である。
しかし、そっちに囚われている時間もないわけであるが・・・

あれ?あれ?あれ?ないぞ。あれ?
リク・・・なぁリク。知らねえか?
なあ、俺の眼鏡知らないか?

す、菅くんのメガネ芸だー!!
頭に上げてメガネメガネとはまた古典的な!
気づいたところで、ストンと落とすという技も合わせてくれます。
メガネを外した見た目は凶悪犯なのに、気のいいことですなぁ。
これには思わず笑顔を見せてしまうリクでありました。あはは・・・

リクの笑顔に合わせるように笑い出す一同。
この所ずっと考え込んでいたリクは笑っている余裕もなかった。久しぶりに笑ったね、とノギは言う。

やっぱりリクはさぁ、笑ってる方がいいよ!!

そうですわな。下手な考え休むににたり。笑う角には福来る。
じいちゃんも言ってた通り、考えすぎはよくない。たまには息抜きだって必要なわけだ。

須藤「眼鏡がそんな所にあるなんて、まさに灯台下暗しだね」
菅「まったくだ」
ノギ「何それ?トーダイモトクラシー?

トーキョーデモクラシーみたいなことを言いやがって。
それにしてもノギは学がない。まあ、スラムじゃ学校にも通えないだろうししょうがない。
その割に字とかはちゃんと読めそうなんだよね。親が教えているってことなのか?
まあ、スラムにも寺小屋みたいなのがあるのかもしれない。
須藤くんや菅くんはちゃんと学がある感じですしねぇ。

改めて考え直すリク。
徹夜で考えようとしているため、夜中でも小用を足したくなり、トイレに入る。
そこで、いきなりリクの顔にサーチライトが当てられる。なんだ!?
と思ったら、鳥が飛んでいたので、それを追ってのサーチライトだったらしい。厳重であるなぁ。

サーチライトは向こうにもある。と思ったら、あれは海岸の灯台か。見分けがつかねぇな。

灯台下暗し。灯台・・・下暗し・・・監視塔も・・・下暗し・・・監視塔も・・・
つまり看守も・・・下暗し・・・看守の下?看守の・・・
そうか!!

何かに気づいたリク。看守の下を抜ければいい・・・?地下か?地下を掘るのか?
道具を使うことなく、己の手足を用いて、外へのトンネルを掘り進めるレノマさん。一晩で。
確かにそれができれば、刑務所の脱出なんて簡単な話になりそうだ!!

というのはさておき、翌日。お題のタイムリミットの日。
田中一郎は例のじいちゃんと並んで座っている。
リクという共通の知人がいるとはいえ、なんだか仲が良さそうだな。

田中一郎は、口ではなんのかんのと言っていたが、やはりリクを気にかけているようだ。
やってくるかどうか心配な様子。しかし、リク以外にも子供がS棟に来たりするんですな。

リクの登場に、思わず微笑む田中一郎。ふむ。
とはいえ、ハンパな答えを持ってきても許してくれるような人ではない。
改めて問う。看守の目をなくす方法とは何か、と。

いや・・・その前に・・・
おっちゃんずるいよ。「目をなくす」なんて言うから、見られないようにすることばっかり考えちゃった。
・・・でも答えはそうじゃない。見られたってかまわないんだ

答えは看守になりすますこと!味方を監視する看守なんかいない。
そのためには、看守の服を手に入れなきゃならない。
まず1着目。舎房から出る時に看守から奪う。
そして、俺の分を手に入れて房まで持ってきてもらう。俺は背が低いから、脱いだ寝まきをブーツにつめてあげ底にする。
それで・・・看守の目はなくなる!!
これが・・・最後の答えだ。

己の考えを述べるリク。そしてその考えの結果は・・・正解だ

田中一郎の正解宣言を受け、思わず泣き出すリク。
ここのところずっと苦悩しっぱなしでしたからねぇ。嬉しいでしょうよ、そりゃあ。
しかし、そうか。変装が正解でありましたか。
確かに定番の手法である。変装までは思いついたが、あげ底は思いつかなかったなぁ。
まあ、あげ底をしても大きさ的に不自然じゃないか?という気はしないでもない。
逆にレノマさんは看守の服を着れるのだろうか。
鍛えすぎた体がアダとなり、服が入らなかったりして。
看守には体格のいいのもいるだろうから、そいつが通りかかるのを待って舎房に招き入れればよいか。

まあ、そもそもレノマさんは有名人な気がするので変装がうまくいくかって話もある。
首周りに入墨もありますし。包帯でも巻いておくしかないかな?
まあ、手錠が外されている時点で囚人とは思われないでしょうしねぇ。
元々は、地上に降りて、壁に向かうまでの目をなくす方法だし、短時間ごまかせればいいわけだ。
壁まで辿り着いて、そこからどうするか。それはまた次の課題ですなぁ。

というわけで、答えに辿り着いたリク。
次回はついに手錠抜けの秘技を習得することになるが・・・果たしてできるのだろうか?注目です。



第66房 円環  (2012年 30号)


やったぁ・・・やったぞ・・・
俺はクリアしたんだ・・・!!お題の答えを見つけたんだ!!

全身を床に投げ出し、喜びを噛み締めるリク。
その様子を見つめる田中一郎の表情が妙に優しいものになっている。いいですねぇ。

おっと、忘れていた。
起き上がり今更ながらに告げる。自分の名前は栗田陸であると。
いきなり言い忘れたことがあると言うから何かと思えば、名前でしたか。
名前なんかなくても生きていけると田中一郎。
そういいつつ、よく答えを見つけたなと褒めながらリクと名前を呼んでくれたりする。
なんですかねぇこれは。素直じゃないってことなんでしょうか。もっとデレててもいいのよ。

リクは今回かなりのたうちまわって考えた。
今まで何も見ていなかったことや、ものの見方とか、あらためて自分の無力さも思い知った。
それに関しては田中一郎の狙い通り。
答えを出してくることには正直期待していなかった。
大事なのはそういったものの見方ができるようになれということだったのでしょう。
まあ、もし答えが出なかったら手錠抜けは教えてくれなかったでしょうけどね・・・

ただひとつ約束を破ったかもしれないとリクは言う。
1人で答えを見つけるという話だったが、1人で見つけれたわけではない。
もちろん相棒に相談したというわけではない。
だが、同房の連中は励ましてくれた
狭い房の中で、答えが見つからずイライラしてうっとうしいだろうなと自分でも思える。
そんな自分を、訳も聞かずに励ましてくれた。
だから・・・1人で答えを見つけたって、これじゃあ言えないのかもしれない。

マジメですねぇリクは。
まあ、答えを見つけるにしても何にしても集団の中で気づくものですからね。そういうのも悪くない。
田中一郎も述べてくれます。

学もない、腕力もない、ないものづくしのお前が巨大な敵と戦う術はなんだ?
大切にしろ。
それが何もないお前の最大の武器となる

まあ、そうでしょうね。
リクは力も知恵もない。あるのは揺るぎない人柄ぐらいなものである。
まさにそれを大切にすることが最大の武器となりえる。
なんせレノマさんを陥落させる程の武器ですからねぇ。有効度は相当高い。

ま、時間はかかったとはいえ、何だかんだで看守から服を奪うプランまでは考え付いたわけだ。
その点に関してはリクに功績がないわけではないですわな。

いや・・・まあ、あれはさ・・・相棒が服脱がせんの上手いんだよ。それがヒントになった。

服を脱がすのが上手い?

なんだその、誤解を招きそうな表現は。
戦っている最中にズボンをずりおろして相手を辱めてくるような人だと思われちゃうじゃないですか。
あれ、これは全然誤解じゃないな。まあ、史郎さんぐらいにしかやらないでしょう。たぶん。

さて、約束どおり手錠抜けを教えてくれることになりました。
ただ、準備がいるので実際に抜くのは明日になります。
準備というのは、手錠に小細工をするというもの。手首の関節をはずせばすむというわけではない。

舎房に戻り、今夜みんなが寝静まったことを確認した後、
流し台の裏側の奥にシンクを固定するためのL字型の部品が3か所ある。そのうちの左の角のやつを外す。
多少硬いかもしれんが、ビス止めはされてないから前後にスライドさせれば簡単にはずせる。
それがはずせたら、手錠の掌側の裏に差し込め。
部品のL字部分のカーブが手錠の裏にある溝のカーブと一致してはまるはずだ。
はまったら、それを時計回りに回せ。それで・・・

プーンと音を立てて手錠が緩む。おお!
まさかこのような解除の仕方があろうとは・・・!!よく気づいたな田中一郎。
まあ確かにこの手錠は出所時に外される。となれば鍵はあるはずだ。
そうして見つけたのが手錠の裏にある溝だった。
そこが開錠するための鍵穴とアタリをつけたわけですな。なるほどね。

ただ、手錠のロックは2段階式になっている。部品で外せるのは1段階目まで。
さすがに2段階目は複雑な構造となっているため難しい。
そこで、ロックの解除に終始するのではなく、手首の関節をはずす方に考え方を変えた。
なるほどね。施錠(ロック)の解除でなく関節(ロック)の解除に変えたわけか。ロックだねぇ。

初めは痛いが慣れれば誰にでも出来る。そう言ってリクの手を取る田中一郎。
まずは中手骨と基節骨をはずす。
そういいながら実行しようとするが、その前にちょっと質問。
初めて手錠抜けを見たときやっていた、つばをペッて吐きかけるアレはなんだったんだ?

フ・・・あれはただのまじないだ。はずしてもまた後でちゃんと元に戻りますようにってな。

ほう。田中一郎ほどの男でもそういうのを気にしたりはするんですな
。 そう聞かされたらやっておきたくなるものである。ペッペッペッ。

さて、では外していきますぞ。まず小指から。ボリ。
さすがに関節を外したときに痛みが走る。が、ここで挫けるわけにはいかない。
早く・・・相棒にも教えてえんだ

泣きそうになりながら耐えるリク。
それを受けて、田中一郎も続ける。薬指・・・中指・・・人差し指。
そして手根骨と中手骨。これで最後だ。親指の第1中節骨。これをはずす。そうすれば・・・

手錠外しの技を教わったリク。
久しぶりにらしい顔を見せて運動場にてレノマさんと相対する。見せたいものがあるんだ。
驚くなよ、というリクに、ちょっとやそっとじゃ驚かねえぞと返すレノマさん。

看守はよそで起きたケンカに気をとられている。今のうちに見せたいものを見せてしまいましょう。
つばをつけておき、まずは小指の中手骨と基節骨を・・・こうして・・・外す!ボリ。
そして薬指・・・中指・・・人差し指・・・そして手根骨と中手骨・・・そして最後は親指を・・・
いくぞ・・・

ズルン・・・と音を立て、外した指を手錠が滑り落ちて行く。
そして、カラカラと乾いた音を立て、手錠は地面に落ちた。

どうだ。

お・・・お・・・おおおおおおおおお!!!

収監以来ずっと苦しめられ続けてきた手錠が外れている。
これを目の当たりにしたレノマさんの感激はいかばかりであろうか。
9年の長きに渡ってずっと苦しめられてきたんですものねぇ。
思わず絶叫しちゃっても不思議ではない。
でも、あんまり叫ぶと看守に見つかっちゃいますよ。落ち着けー。

ちょっとやそっとのことでは驚かないと言っていたレノマさん。
関節を外している間も手錠抜けを行えるとは考えていなかった様子。
まあ、手首の関節を外して手錠を抜けるなんて常套手段ですからねぇ。これまでに試しもしたのでしょう。
だが、1段階目のロックを部品で外すところまでは思いつかなかったはず。
その2段階の仕組みで見事に手錠外しをやってのけた。この構図は上手いですなぁ。

さて、ついに手錠を抜ける方法を手に入れた。
次回は歓喜のレノマさんがまさかの行動を取るという。なんだろう?
嬉しさのあまりに歌って踊り出したりするのだろうか。
それにつられて囚人が皆で踊り出すとか。ミュージカルか!
でも現実でも囚人が集団で踊ってる映像があったりするし、可能性がないわけではない。
レノマさんの激しいダンスに期待したいところである!



第67房 箝口  (2012年 31号)


目の前で憎き手錠が外されるのを見たレノマさん。興奮するなっていうのが無理ってものですわな。
とはいえ、騒ぎすぎて看守に見つかっても話しにならん。
掲げ持ったリクを下ろし、どうやってはずしたと尋ねる。
今更そんな落ち着いた風を装われましても。

看守に見られたらマズイからと元に戻すリク。どうやって嵌めているんでしょうね。
手錠の外し方については、前回も説明があったとおり。金具で緩め、関節を外して抜く。
さらに、リクは看守の服を奪って逃走するアイディアもここぞとばかりに提案してみる。
脱獄のプロもお墨付きをくれた方法でありますよ。

正直・・・脱獄計画においてはお前をアテにしてなかった。悪かったな

レノマさんの言葉に笑顔を見せるリク。いやあ、よかった。
ようやくリクも脱獄計画で精神的な面以外で役に立つことができたわけだ。よかったよかった。

だが、ここで言っておかないといけないことはある。
この手錠外しは自分で見つけたわけではない。教わったものである。
誰に?と問われたら、S棟の人と答える。
興奮していたレノマさんが一転して無表情になっている。これは怖い。
手錠外しなんて技をどうやって聞き出したのか。
どう考えても脱獄に繋がる技である。計画を喋ったのかと問いただすのも無理はあるまい。リクも否定しない。

ボゴシとリクを殴りつけるレノマさん。まあ、そうなりますわな。
田中一郎は密告するような人間ではないが、会ったこともないレノマさんにそれはわからない。
まあ、実際のところ、喋ったというよりは言い当てられたというのが本当のとこなんですけどね。
ウソをつけないのがリクの美点であり欠点である。

今回もレノマさんに手錠の裏側なんてよく見つけたなと言われたとき、自慢気に答えればよかったのである。
少し考えれば分かることだ。思い込みを捨てて観察すれば見えてくるものがある!
とか言っておけばよかったわけだ。やだな、そんなリク。

レノマさんはリクを置いて足をS棟に向ける。むろん口封じをするためである。
それはマズイ。どうにか止めようとするリク。だが、もちろんレノマさんは簡単には止まらない。

俺たちの脱獄は、そんな気安いもんか

もちろん気安くはない。それをわかった上で、止めてほしいと頼む。

俺はお前を信じてる!
お前も俺を信じてくれた。だから・・・俺の信じるおっちゃんを、お前にも信じてほしい!

あのリクがここまで言うのだ。レノマさんも信じないわけにはいきますまい。
というわけで、どうやら拳を収めてくれたレノマさん。ふう、危ない危ない。

夜。皆が寝静まった後も、脱獄について想いを馳せる2人。
だいぶ駒が揃ってきた。
見取り図、手錠の問題、看守の目・・・
あとはさらに看守の目を眩ますためにも、当日は騒動を起こした方がいい。

スラムにいる6000人の手下を使えば、こないだの奪還線みたいなパニックぐらいなら可能だ
だが・・・その前に・・・問題は壁だ

やはり壁の問題が立ちはだかりますか。次はそこをどうするかが課題ですな。
しかし、レノマさん手下が6000人もいたんですか・・・ハンパな規模じゃないなぁ。

翌日の昼。
レノマさんは見事なホームランを打つ。すげえ、壁も楽々越えているぞ!
これが壁をどうにかするヒントに、繋がるとは思えないな。
というか、備品のボールを飛ばしちゃってますけど、看守が後で拾うのだろうか。うまくすれば意趣返しには使えるかもね。

ホームランを打って、ベースを回るのは代わりの誰かに任せる。
レノマさんはこれから行くところがある。目的地はS棟。
え?昨日の話はもう納得してくれたんじゃなかったんですか!?

オメェの信じた野郎だ。俺も信じる。だがな・・・念のためキッチリ追い込んでやる

ダメダメダメダメ!!

リクをズルズルと引きずりながらS棟に向かうレノマさん。
まあ、何であれ念には念を入れるのが大事でありますよね。
というわけで、S棟到着。オッサンだらけでどのオッサンかわからねぇな。

リクと違い、威圧感満点のレノマさんは目だってしょうがない。
なので、S棟の連中に当然のごとく絡まれるレノマさん。
しかし、眼光だけで退けてしまうレノマさん。これが6000人もの手下を持つ男の眼光か・・・!!

そんなレノマさんに恐れることなく声をかける男が1人。田中一郎当人である。
レノマさんは言葉通り、田中一郎に追い込みをかける。
シャバに残した肉親を大事に思うなら、リクから聞いたことは全部忘れろという話だ。
のっけからずいぶんと手荒い扱いでありますね。
左手で田中一郎のアゴをつかみ、ギリギリと締め上げる。

田中一郎はもちろん密告するような気は毛頭あるまい。
ただ、ガキに舐めた態度を取られたままにしておくような人間でもない。
アゴを掴んでいたレノマさんの左手を外し、足を踏み込んで後ろでに関節を決める。

目上の人間に対する言葉遣いがなっちゃいねぇな。動くな。折るぞ

と述べた田中一郎だが、レノマさんの空いた右手にはナイフが握られている。
そして、田中一郎のわき腹に突き刺そうとして手前で止めている。

なめるな。刺すぞ

5分5分か。

・・・らしいな。

と言いながらお互い解放する。な、なに分かり合ってるわけこの2人。
やはり強者たるもの、一度交戦することである程度のことがわかるって話なんですかねぇ。

レノマさんは田中一郎のことを知らなかったようだが、これである程度理解してもらえたと思う。
というか、フルネームで聞けば、あの革命の闘士だと直ぐに気づいたかもしれない。
無駄な闘いを引き起こすことになったかもしれないが、このコンタクトは後々重要な意味を持ちそう。
この2人のコンビプレーとか、考えただけでもワクワクしますやね。
壁の攻略も、この2人の頭脳を持ってすればいずれ考え付くことでありましょう。
さてさて、どういった人間関係が構築されるのか。楽しみであります。

というところなのに、次号は休載であります。そんなー。
別冊の8月号にレノマさんのギャング時代の外伝が乗るらしい。そっちの執筆の兼ね合いもあるんでしょうな。
せめて一周ずらしてくれれば、毎週読める流れになったのに。
まあ、ともかく次回は巻頭カラーであります。ド迫力のカラーに期待だ!!



囚人リク 9巻


第68房 報告  (2012年 33号)


脱獄の口止めから始まったレノマVS田中一郎。
その勝負は両者譲らず、引き分け。2人は認め合い、リクもほっと一安心。てな展開になるかと思いきや。

おっさん、なかなかやるじゃねえか。
なんてな。言うと思ったかぁ!!なめてんじゃねえぞクソジジイがぁ!!

いやあ、言ってくれると思ったんですけどねぇ。驚いた。
しかし、田中一郎が反撃してこないと手を止める辺り、さすがにレノマさんですね。
田中一郎はレノマさんの行動をこう評する。

ガキだな。思い通りにならなきゃすぐに暴力に頼る。周りの迷惑もかえりみず・・・なあ、リク。

リクに同意を求める田中一郎。その態度にレノマさん、さらに顔がビキビキ。
いつのまにか俺より仲良くなってるんじゃねぇのかと言いたげですね。

口封じの必要はない
考えてもみろ。手錠抜けを教えた俺ももはや同罪。
お前たちの脱獄計画がバレた時点で、俺も脱獄幇助で加刑だ。

言われてみれば、まあそうなりますわな。
特に手錠外しの技を持っているなんて知れたら、監視の目はきつくなるでしょうし。
レノマさんもその説明に納得が行ったか、踵を返す。
去り行くレノマさんの背に向け、田中一郎は問う。

お前はなんのために脱獄をする。
シャバに出たところで、そんな鉄砲玉のような生き方じゃ命がいくつあっても足りんぞ。
お前は、危険すぎる

少なくとも刑務所にいれば、看守は囚人を殺さないルールがあるぞ、などと述べてくる田中一郎。
それはそうでしょうが、そうやって燻ったまま歳を取りたくはないとレノマさんは考えている。

俺はなぁ。そういうことをしたり顔で言える、テメェのようなクソジジイになるまでこんな所にいたくねえんだよ。

そう述べて去っていくレノマさんでありました。
ふーむ、この2人が手を組めば怖いもの無しな感じだが、なかなか難しそうですねぇ。
レノマさんは素直に田中一郎の言うことを聞くとも思えないし。間に入るリクの手腕に期待か。
そのリク。見た目ほど悪い奴じゃぁないんだよとレノマさんのフォローを行う。フォロー?
芯は真面目でなんでも全力でやるというが、田中一郎はその全力が危なっかしいと言ってると思いますのよね。
まあ、否定的なことを口にしたが、田中一郎もレノマさんを評価していたりはする。

少々直情的で強引だが、猪突猛進・・・奴のあの突進は道を切り拓く力にもなる。
脱獄には時として蛮勇を奮う必要がある。
死をもかえりみず・・・
いいな。若さっていうのは

老成した言葉が田中一郎から漏れる。うーむ、カッコイイオッサンですねぇ。

さて、N棟に戻ったレノマさん。
中庭に行き、フェンスの電流について調べている。
チリ紙をフェンスの隙間から放り、電流が反応する箇所を調べているらしい。
へぇ、反応しない場所もあるんですな。放電する針みたいなところから離れていると反応しないのだろうか。

さて、いよいよだな。脱獄の具体的なルートを絞り込んでいくぞ。
見取り図も・・・そして手錠の外し方も手に入れたしな。
どこを走っていくか。どこを忍び足でいくか・・・次は壁・・・

早くも次の計画を考えているレノマさん。
難関の手錠外しの方法を見つけたからって、いつまでも浮かれているわけにはいかないわけですね。
そう、次に待つのはこの高い壁である。
この壁は厄介だ。よじ登るにせよ穴掘ってくぐるにせよ道具か何かが必要になる。
一体どういう方法で攻略するのか・・・

おいリク。今日はもうやめようぜ。手錠抜け、早く教えろよ。

カチャカチャと手錠を鳴らして催促するレノマさん。
ああ、やっぱり手錠外しはレノマさんの悲願だったものね。そりゃあ気にならないわけがなかったわ。

リク「だよな――!!」
レノマ「そりゃそうだろ!

ですよねー。なんだかほのぼのとした感じ。
しかし、外すには金具が必要となる。金具は房にあるので、実行するにはみんなが寝てからということになる。
つまりレノマさんはそれまで焦らされることになるわけだ。フフフ。

さて、夕方。
手錠外しを教えてもらうための課題をクリアしたリク。ようやく房でも笑顔が戻っている。
その様子を見て嬉しそうにしている天野。本当、いい奴である。
そして相変わらず女の子のことで頭がいっぱいな奴である。微笑ましい。菅くんと松尾も微笑ましいと思ってる表情だな、コレ。

レノマさんは一人、手錠をカチャカチャ言わせている。就寝まで待てねーって雰囲気だ。微笑ましい。
で、深夜。
皆が寝静まったのを見計らい、金具を用いて開錠。そして関節の外し方を伝授する。
さすがにレノマさんでも関節を外すのは痛みが伴う。あたりまえだ。
しかし、手錠が外せるという喜びはその痛みを我慢するだけの価値があるってことなんでしょうな。
見回りが来たので、残りの間接外しは布団の中で独力で行うことになります。
ふーむ。外す瞬間のレノマさんの顔は見てみたかったですなぁ。
見取り図取得の時のように、声に出さず爽やかなガッツポーズを決めてくれたかもしれないのに!!

リクは床につき、月を見ながらおじさんに報告する。

おじさん、見ててくれた?
手錠抜け教えてもらったよ。くじけそうになっちまったりもしたけどさ。
俺が手錠抜けしてみせた時のレノマの顔もさ、見ててくれた?
へへ・・・脱獄するにはまだまだやることあるんだけどね。でもさ・・・ちょっとだけ・・・
・・・ちょっとだけさ・・・今晩だけでいいからさ・・・
夢に出てきて、あん時みたいに笑ってよ。

涙するリク。
計画はうまく行っているが、それでもやはり不意に淋しさが襲ってきたりするんでしょうなぁ。
うまく行った時だからこそ、そんな御褒美が、例え夢でも欲しいということである。切ないね。

さて、次回の予告はまた妙なことが書いてある。
恋する天野15歳・・・?誰に恋するというんだろうか。
というか、この男は常時恋したがってる男だしなぁ。不思議はないけど、何が起きるかわからない。
一体どんな話になるというのだろうか。



第69房 異性  (2012年 34号)


アイドルが出る日の昼休みはTVに釘付けな27の連中。
そんな中、天野が妙に深刻そうな顔をしている。顔色も悪い。どうしたんだ?
どうやら目に焼き付けるために瞬きせず、息も止めていたらしい。何してんだか。

天野と松尾は2人でトイレに連れションってやつですね。
そこで天野。松尾に対し、キスとかしたことあんのかよーと聞き出す
うーむ、少年らしい会話ですねぇ。
勿論やったことない両者。やっぱりなぁ。
このままじゃ出所するころにはシャバの連中に出遅れていることになってしまう。
こんなんじゃイザって時にカッコつかねえじゃねえか!って話だ。だから――

なあ・・・ちょっと・・・やっとくか・・・

やっとくって・・・何をよ?

松尾「ぜってぇーやりたくねえ!なんで男同士でキスの練習なんかっっ!!」
天野「バーロー俺も好きでやってんじゃねえ!女がいねえんだからしょうがねえだろ!」

いや、しょうがなくはねぇだろ。
練習が必要だからっていくらなんでも男同士でそれはないですわ。
松尾も説得されかかってるんじゃないですよ。
唇を突き出してみる松尾の図はなんとも厳しい。ぐはぁっ!!
そんな2人のやりとりを、通りすがりの囚人が見てヒソヒソ言いながら去って行く。
やっぱりあの2人そうだったんだ・・・とか後で噂になったりするんですね。わかります。

キスはさておき、せめて女と手ぇつなぐくらいしたいよなと考える天野。

天野「あ〜〜女の手ってい・・・やわらかいんだろうな・・・」
松尾「たぶんな・・・」

なんとも寂しい会話でございますな。

さて、翌日。
第19木工場で囚人たちが勤務中。
そこに、医務局長に頼まれて書類を持ってきた愛先生が登場。なんだか久しぶりですね。
その愛先生にセクハラ気味な声をかけて看守に蹴られる囚人。何してんだか。
そんな様子を見て、第19木工場の細井看守部長はイヤミを言う。

まったく誰だ。女なんかを採用しやがったのは

かなりストレートなイヤミですね。思ったとしてもそういうこと言わなくてもいいのに。

失礼しますと去って行く愛先生。
セクハラ発言していた囚人は看守に蹴られて血が出ている。
愛先生に助けを求めるが、声が出るなら大丈夫よと治療を拒否する。
まあ、ついさっきセクハラしておいて助けを求めようとするとかムシが良すぎますわな。
とはいえ、愛先生。ここに初出勤したころは囚人を看守の攻撃から必死で守ろうとしていた。
理想に燃える新任研修医という姿でありました。しかし・・・

存外嫌気がさしてくる時期が早かったですな。
刑務所の現実は残酷だ。患者である囚人共の想像を絶する社会的常識の欠落に翻弄される毎日・・・
初めから来なくてよかったんだ。この偽善者めが

やはりストレートな発言をしてきますねぇ。細井看守部長
。 太いくせに生意気だぞ細井看守部長。まあ、言っていることはそんなに間違ってないですけども。

愛先生は本当に人の命は等しいと思っている。
だからスラムの壁の内側も、外側の人もそして刑務所にいる受刑者の人もみんな平等に助けたい。
そんなお医者さんになりたいというのが愛先生の理想であった。

・・・なりたいのに・・・

理想どおりにならないのが世の中って奴なんですかねぇ。切ない。
実際、社会的常識の欠落はよく見受けられる。移動しているだけで品のない声をかけられるのだからたまらない。
中には怪我したフリをして、手を握ろうとしてくるのもいる。
握るというか、ひょっとしたら舐めようとしてないか、この男。ウヒィ。

舐めようとした男は看守に撃退された。
平等に守りたいと思っても、こうも殴られて当然なことをされてはかばいようがないですな。
涙目になって走る愛先生。そこに天野登場。
女の手を握ってみたいという想いに駆られている天野は、つい愛先生にお願いしてしまう。
ちょっとでいいから、手をギュッと握ってもらえないか、と。

私をなめないで!!

怒られる天野。なんというか、間が悪かったですなぁ。
たった今、手をギュッと握られて舐められそうになったばかりである。そりゃなめるなと言いたくもなるさ。
他の奴等に比べれば、天野は純真である。
が、言われている愛先生にしてみればそんな区別があろうはずもないですからねぇ。うーむ、辛い。

夜。父親と電話で話をしている愛先生。
父に大丈夫かと問われたら大丈夫だよと返す。
しかし、父は大体どんな状況になっているかは推測がついている様子。

おそらく実際に働いてみた今、言葉は悪いが囚人なんて下品でわがままで話も通じず、
現実はひどくつらいものだとわかってきた頃じゃないか?
いいんだぞ。いつでも。しんどかったら帰ってきて父さんの病院で働いたらいい。

そんな父の言葉に泣き出してしまう愛先生。うーん、切ない。
理想はあった。命は平等であり、虐げられる者を救いたいという考えはあった。
しかし、実際のところ、虐げられても仕方がないと思えるような連中は確実に存在しますのよね。
スラム生まれだからというだけで虐げられるのはおかしい。
けど、やはり囚人というのは犯罪者でありますからねぇ。父の言う通りの連中が大半のはずである。
就任当初にかばったリクや天野たちのように気のいい囚人の方が稀でありましょうなぁ・・・
もう、愛先生は27と26辺りの専属でいいんじゃないですかね。
この2つは気のいい連中が多そうな感じですしね!

そんな気のいい連中の1人である天野。
昼に愛先生を怒らせてしまったことを夜になっても気に病んでいる。

女をよ・・・怒らせちまった時ってどうすりゃいいんだろ・・・
俺あよ・・・すごく謝りてえんだ・・・

そんなことを述べている天野。うーん、難しい話でありますねぇ。
しかし、そうこうしているうちに事態はヤバイ方向に動き出そうとしている。
昨日、愛先生の手を握った男が、乾燥室に愛先生を連れ込もうとしている
しかも看守にお願いして呼び出してもらうという手段を取っている・・・こ、これは・・・?

まさかの愛ちゃん先生、危うしの展開。
刑務所らしい話ではありますなぁ。少年誌的にはどうなのかという話ではありますが。
いやいや、ひょっとしたらこの男、天野と同じように夜悩み、謝罪するために呼んだのかもしれないぞ?
愛先生が乾燥室に入ると、美しく整った土下座を敢行する男の姿があったとかそういう。
まあ、さすがにそれはないでしょう。さすがにね。

愛先生のピンチに天野がどう動くかが焦点ですかね。
しかし、もし天野が救ってくれたにしても、愛先生にはトラウマな出来事になりそうだなぁ。
刑務所勤務は辞めて、スラムの出張医にでもなった方がまだ理想は叶えやすいかもしれませんが・・・うーむ。



第70房 男女  (2012年 35号)


男の欲望渦巻く刑務所に女性一人。これは大変でありますね。
怒られても囚人どもに反省の色は見られない様子。
冤罪で入れられたのばかりでもないし、一般的な囚人にモラルを求めてもしょうがないですかなぁ。

フェンスに面した通路は多数の囚人の視線を浴びながら通り抜けないといけない。嫌な場所だ。
下品な声をかけられている愛ちゃんに向けて、一人の看守が近づいてくる。なんだか安心した様子の愛ちゃん。
看守は、医務局長に今すぐ虎沢先生を連れてくるように言付けされたと伝える。
ふーむ。
なんというか、微妙にフラグが立ちそうな気配がしないでもなかった。
看守が来たときの愛ちゃんの安心した表情。
これは、上手いことすればって流れにも見えたのだが・・・どうやら看守にその気がなかった様子。しょうがないね。

看守に連れられ、フェンスで囚人と区切られていないエリアに足を踏み入れる愛ちゃん先生。
1人だったらとてもじゃないけどこんなエリアに出入りできない。看守にピッタリくっついて離れないようにする。

シン・・・と静まり返った乾燥室の前まで連れてこられた愛ちゃん。
看守は医務局長を探しに行くといって離れる。
もちろん医務局長が呼んでいるなんていうのは方便に過ぎない。
前回、囚人に愛ちゃん先生を呼び出すように頼まれていたのがこの看守である。
というわけで、主犯である囚人登場。

どうもムリお願いしてすいやせん。
死ぬくらいの重症でじゃねえと・・・痔くらいじゃ診てもらえないじゃないですか。
でも痛くて・・・こうでもして診てもらえねえと俺・・・

なるほど。そういう言い訳をしていたのですな。
いくらなんでも、金を詰まれたとはいえ、看守が医者の先生を売り渡すのはどうかと思った。
が、病棟外検診を見逃すというぐらいの行為ならば、と看守は判断したわけですな。
あくまでも、自分は医務局長の言付けだとうっかり勘違いをして愛ちゃん先生をつれてきた。
そして囚人はたまたまその場所に通りがかった。それだけのことにすればいいと看守は考えている様子。ふうむ。

さて、昨日愛ちゃん先生を怒らせてしまった天野。
野球をやる気分ではもない。どうしても謝らないと気がすまない様子。
でもなぁ。俺ぁただちょっとさ・・・ちょっとだけでいいから女の人と手を繋ぎたかっただけなんだよ・・・
女って・・・わかんねえな・・・

そんな怒んなくたって・・・と考える天野。
まあ、女性は感情的になることも多いですからなぇ。
いや、今回のは普通に間が悪かっただけですけども。タイミングが悪すぎた。

愛ちゃん先生今日はどこにいるのかな〜とうろつく天野。
その愛ちゃん先生は絶賛ピンチ中。 呼び出したくせに、しらじらしく通りがかっただけという囚人が絡んでくる。
逃げ出そうとする愛ちゃんの白衣を掴み、押し留める。
その間に、別の囚人が看守に向かって声をかける。
すぐそこでケンカがあり、刃物まで持ち出している。急いで来てくれ、とのこと。
なるほどね。こうやって看守の目を無くし、コトを運ぼうというわけだ。
看守がいなくなった様子を受け、行動を開始する囚人。まずは殴って大人しくさせるぜ。っておい。

殴られ、鼻血を噴出す愛ちゃん。そのまま乾燥室の中に連れ込まれる。
おやおや、なんともこれは・・・危うい光景でありますな。
しかし、この囚人。こんなことして後の処罰が怖くないのだろうか?
夢の中でイチャイチャするぐらい貯まってるようだし、我慢が利かなくなったのだろうか。
まあ、何も考えていないのでしょうな・・・困った話である。

そんなピンチの状況に助けが訪れる。近くをうろついていた天野だ。
愛ちゃん先生の荷物が乾燥室の前にバラまかれているのを見て足を踏み入れた様子。
にしても、純情な天野にこの光景は目の毒でありますな。
好色な囚人は、天野にオメェにもやらしてやっからと声をかける。
が、もちろんそんな誘いに乗るような天野ではなかった。ナメんなよ。

刑務所の中はテメェみてえなポコチンに目ん玉がついてるだけの野郎ばっかりじゃねえんだよ。
覚えとけ。俺は天野渉。ただのオスじゃねぇ。男よ

なかなかにカッコイイ啖呵が決まった!
オスの欲望を見せつけようとする囚人に対し、男のカッコヨサを見せる天野。いいねぇ。憧れるわぁ。
襲い掛かってくる囚人を殴り倒してみせる天野。
ほう、こうしてみると天野もそれなりに強かったりするんですな。
まあ、シャバでは族の頭を務めていたようだし、仮にも27のNo.2ですしねぇ。ボスクラスには遠く及ばないとはいえ。

しかし、油断した天野。
殴り倒したはずの相手が起き上がってきており、背中を刺されてしまう。なんてこった!
この、天野が19の奴らに刺されたという報告はすぐに松尾たちにもたらされる。
が、どうやら命には別状ないらしい。
それよりも大変なのは、天野の夢が叶ったということ。
入院することになったが、その面倒を愛ちゃん先生が診てくれることになったのだ。

そっか・・・あいつ・・・愛ちゃんの横にいるんだな・・・ちゃんと謝れたのかなぁ・・・

一安心といった感じの松尾。なんとも味のある笑みを浮かべてますなぁ。
その謝罪については、眠りながら行うことになる天野。
寝ながらもそんな発言が飛び出す辺り、やはり天野は男でありますなぁ。イチャイチャしてたオスとは違う。

というわけで、寝ている最中ではあるが、手をギュッとしてもらえた天野でありました。
よかったよかった。夢が叶いましたね!感触とか起きたときに覚えているかどうかわからないけどさ!!

27の連中だけ見ていると刑務所の連中はケンカっ早いけど気のいい奴らに見えてしまう。
が、やはり全体で見ると下劣で手におえない奴が大半なんだなと気付かされる。
そんな刑務所から脱しようとするリクとレノマさん。させじとする看守たち。
次号からは脱獄に向けての新章開幕とのこと。何が起きるのか楽しみでありますぜ!



第71房 豚舎  (2012年 36+37号)


手錠を撃破し、脱獄計画は次なるステージへ!
というわけで、新章の開幕であります。

天野は無事退院。割とヤバイ所を刺されたように見えたけど深くはなかったのかな。
刺される原因となった事件については仲間にも公言しない天野。
まあ、この手の犯罪はね。女の人としては襲われたということも知られたくはないでしょうし、いい判断だ。
というわけで、報告することも差し控えてもらうことにしました。
愛ちゃんのことを考えての行動は立派。
だけど、襲った奴等がたいした刑罰を受けずに済みそうなのが気になりますなぁ。
ウチのファミリー襲ったということでレノマさんに既にボコられている可能性はあるけど。

結局自分さえよければそれでいい・・・
そういう人もいれば、天野くんみたいな人もいる。
またケガをしたら来なさい。私はここにいるから

退院間際の愛ちゃん先生の言葉。おやおや、なんともいい雰囲気。
少なくとも貴重な信頼は勝ち得たようですな。
しかし、手は繋げれなかったと言っているが、やはり寝ている間にされただけでは記憶には残らないのか。残念。

さて、リクとレノマさんに話は戻ります。
手錠抜けのやり方を教わったレノマさん。
あとは自分でできると言っていたが・・・実はまだできていなかったりする
やはり外す骨とかその辺の知識とかがちゃんとしてないといけないんですかねぇ。
筋肉つきすぎて難しいんだよと言われてはいるが、手の部分は筋肉はあまり関係なくない?

うるせえ。こんなもんもうできたも同然だ。

ベシっとリクの頭を張り飛ばしてそう述べるレノマさん。
拳にタコができてたりすると難しくなっているかもしれませんな。
しかし、このレノマさん微妙にスネているように見えますな。なんとも可愛らしい。

というわけで、話は次の難関である壁に移ります。
ここ最近あらゆる選択肢を考えてみたというレノマさん。
1つ目は地面にトンネルを掘って壁をくぐる。
2つ目は壁を乗り越える。
3つ目は壁のさらに上・・・ヘリを外から用意する。
4つ目は房を出る時に奪った看守の服を着たまま看守のフリをして逃走。
5つ目は刑務所に出入りしているいろんな車を利用する。
6つ目は死刑囚となって刑務所から拘置所に移送されるスキをついて脱走する。
最後は死体になって搬送される。

以上の7項目がレノマさんの案であります。
最初の2つは既に検討されている。
3つめのヘリについて。持ち込むことはできようが、極楽島は地対空ミサイルが完備されている。利用は無理だ。
4つめの看守のフリをし続けられるのも建物内までだろうと予想。
また、看守を人質にとったとしても脱獄絶無を謳うこの極楽島が見逃すかどうか疑わしい。
6つめの死刑囚になるについては、まずその死刑囚になるのが問題。
刑務所で人を殺すぐらいやらないと加刑されて死刑囚にはなりませんからねぇ。そんなことはリクは許さない。
もちろんレノマさんもリクがそういうことぐらい承知しているこの案は使えない。

リクがリクらしい意見を述べ、レノマさんが微笑みを返している。
やはりリクはレノマさんにとって精神的な支えになるってことなんですかな。いい関係ですね。

しかし、スライス・デビルは看守殺しなんてやってしまっている。
レノマさんも最初はともかく、ワイヤー使う頃には殺すつもりで着ていた。
となると、沢田は死刑囚となって様子を描写される要員として使われる可能性もありますな。どうなることか。

というわけで。
複数の案が出たけど、実際に考えられるのは1つ目の「トンネル」か2つ目の「乗り越え」か5つめの「車の利用」の3つ。
しかし1つ目2つ目は規模がでかくなる。とすると1番手をつけやすいのは5番目。
出入りする車。その線で探っていくことになりました。

翌日。
炊場にいる、スラム時代の部下である森田に会いに行くレノマさんとリク。
森田は楽しそうに仲間とバレーボールに興じている。なんか可愛いなこいつら。ワハハハ。

レノマさん、森田に荷物にもぐり込んで外に出られそうな車はあるか尋ねる。
まあ、そんな尋ね方をしたら脱獄を考えているのは明白になったりするわけですが・・・
それでも言わないと聞けない話でありますからね。
レノマさんもかつての部下は信頼しているということなのでしょうか。

しかし、もぐり込むのは絶対ムリですよと森田。
ずいぶん前に、実際にミルクのタンクに入って出ようとした奴がいた。
けれども、ソッコーで見つかってしまい、今は警戒が厳重になっている。
必ず4〜5人で念入りにチェックが入るようになっているとのこと。

でも・・・2つだけあるんです。看守が嫌がってチェックが甘くなる車が

ほう。そのようなものがあるのか!?
1つは死体の搬送車。もう1つは豚の糞の搬出である。
ともに強烈に臭いそうなものでありますね。それは嫌がるわ。

俺たち炊場は料理に使う豚は解体からしますからね。豚舎の管理も任されているんですよ。
で、大量の糞はほぼ毎日近隣の農家に肥料として出荷してるんです。

ほぼ毎日か。それは利用しやすい話でありますね。
しかし豚の糞ツボにもぐり込んだりしたら、強烈な臭いが染みこみそうであるな。
壁の外に出た後、船にもぐり込む予定のはずだが、困難になりそうな気がしないでもない。

おい、俺たち2人を炊場に入れろ

ともかく見てみないことには始まらないと考えたのか、いきなり要求をし出すレノマさん。
しかし、そんなに簡単に炊場なんて入れるものであろうか?

炊場ってのは看守の飯も作ってる。毒を盛ることもやろうと思えばできるのにだ!
つまり・・・それほど炊場は看守に信用されている。だから顔がきくはずだ。2人くらいなんとかしろ。

理屈は分からないでもないですが強引ですな。
リクはともかく、レノマさんなんて危険で有名すぎて信用されにくいでしょうに。

実のところ、最近欠員が2人出ている。ちょうどよく空きはある。
でもムリですと森田。なぜなら炊場のお頭とボスじゃたぶん合わないですから・・・とのこと。

何が合わないというのだろうか?そう問いただそうとしたとき、その炊場のお頭当人が現れる。
髪を短く刈り込み、雰囲気のある男だ。レノマさんと同じくらいの大きさとはこりゃまた強そうですな。
どうやらお頭、バレーボールの試合のために森田を呼びに来ただけらしい。
が、レノマさん。せっかくやって来たのだからと捕まえ、お前に話があると言い出す。

看守に口利きしろ。俺たち2人を炊場にねじ込め。

囚人相手だからかなかなかに直接的な交渉を行うレノマさん。
断るなら腕ずくで言う事を聞かせるぜって雰囲気がある。
が、お頭。この要求をキッパリと断る。
テメェみたいな身勝手な奴に囚人の命を預かる炊場が務まるかって話ですよ。

偉そうだな。たかだか飯作って、クソ豚育てるだけじゃねえか

挑発するレノマさん。立ち去ろうとしたお頭の足が止まる。挑発が効いた?

なんつった・・・?
聞き捨てならねえな。たかだかだとォ・・・
健気にもっ!俺たちの腹ん中に入るとは知らず毎日すくすくと育ってくれている豚さんに・・・豚さんに謝れ!!

拳を震わせ涙を流し、叫んだ言葉は豚さんに謝れ・・・なんだそりゃ!!
強面の男が叫ぶ内容としてはあまりにもあまりな・・・だから面白い。
なるほど。こりゃ確かにレノマさんとは合いそうにありませんな。
一筋縄ではいかなさそうなお頭相手であるが、レノマさんはどのような交渉術を見せるのだろうか?
認められれば、レノマさんはともかくリクだけは入り込むことは可能かもしれないが・・・はてさて。

新章に入っていきなり濃いキャラが出てきたものである。続きが楽しみだ!



第72房 意地  (2012年 38号)


豚さんのために体を震わせ涙を流す、お頭。
このお頭、豚舎の職務に忠実というか・・・少し、いやめちゃくちゃ動物が大好きらしい

豚さんを侮辱する奴は、この俺が絶対に許さねぇ。

堂々と述べるお頭。そんな相手に同調できるはずもないレノマさん。

臭えよ。うさん臭えんだよ。動物のために涙流すとか純粋とかよ。汚れのない人間を装って酔ってんじゃねえよ。
ヘドが出る。クソ豚と臭えモン同士気が合うだけだろうが。

レノマさんのこの挑発を受け、お頭の怒りは頂点に。
相撲の仕切りのような構えを取るお頭。これは、戦いが始まるのか?

俺への悪口はいい。だがな・・・これ以上の豚さんへの侮辱だけはもう勘弁ならん!

お頭は本当、ブレないお人ですね。動物大好きすぎだろ。

というわけで、ケンカが始まる・・・と思いきや、そのタイミングで刑務官がやってきました。
この人はお頭のところの正担当刑務官であるらしい。
そして、この人により、炊場のお頭の名前は高木さんであると判明した。

高木さんは震えながら今起きたことを報告する。
こいつは・・・炊場をコケにしやがった。
こんな野郎に毎日・・・一生懸命うまい飯を作ろうと頑張っている炊場のみんなのことを思うと・・・
それに・・・命を・・・!命を捧げてくれる豚さんを・・・豚さんを・・・

そんな風に報告する高木さんを制する刑務官。さすがにケンカの許容はできない。
だが、ケンカでなければ問題ないとの判断をしてくれる。

炊場名物のあれでみんなの前でぶっ倒してやれ。レクリエーションの最中の事故にすればいい

高木さんの想いを汲み取ったいい判断ですね。この刑務官、なかなかいい人ではないですか。
さすがに炊場の連中は刑務官の信頼を勝ち得ているといわれているだけあるってことなのか。

というわけで、炊場名物のレクリエーションこと、相撲対決でございます
ちゃんと土俵やマワシも用意されており、大勢の観客の前で執り行われることになる。
よく見たら建物の上にまで人がいるのだが、これ全部炊場の関係者なんだろうか?多いなぁ。

脱獄するために豚の糞にまぎれて車で脱出する。そのために豚舎を仕切る炊場に入れてもらおうとした。
はずなのに、何故かその炊場のお頭ともめることになってしまった。どうしてこうなったのやら。
ムードは最悪だし、こりゃもう頼みごとができる雰囲気ではありませんね。
そんな四面楚歌な現状。
だが、レノマさん。かつての部下である森田を今後のことも考え相手方に解放。
そして、囃し立てる周りについては迫力の四股で黙らせる。さすがですな。
だが、一度静まった周りも、高木さんの美しく貫禄のある四股によって再び活気を取り戻す。オオオオオ!!

万に一つ。テメエが勝ったら、今回の暴言はきれいさっぱり忘れてやる。

大きな口をたたくだけあり、強そうな高木さんである。
この相手ではレノマさんといえども一筋縄ではいきますまい。厄介なことになってしまった。と思ったのだが――

そしてだ。俺が勝った時は覚悟できてんだろうな。身をもって思い知らせてやる。
豚さんの気持ちがわかるまで、テメェが嫌いな豚舎でこき使ってやる

なんと・・・マジかよっ!!豚舎行きが向こうから転がり込んで来やがった!
本当、思わぬ流れですね。でも納得行く流れだから凄い。
相手が嫌がるような提案をしたと思ったら、それは願ったり叶ったりだったという。皮肉な話だ。
が、この流れはレノマさんにとっては面白くはない話である。
唇を尖らせてつまらなさそうな顔をしているレノマさん。可愛らしいことですな。

レノマさんはかなりの負けず嫌いである。
が、今回ばかりは負けておかないと目的の豚舎入りが果たせない。
もちろんそんなことはレノマさん自身よくわかっている。しゃあねじゃねえかと呟いて自身を納得させようとしています。

というわけで、炊場のお頭との相撲対決が始まります。
立ち合いのブチカマシでレノマさんの額が裂け流血する。
そして、マワシをとったお頭。そのまま一気に押し出そうとする。横綱相撲っすな。
そのまま押し切られるかと思ったが、思わず踏ん張ってしまうレノマさん。こいつはいけねぇ。

俺は間違ったことが大嫌いなんだよ。
噂じゃオメェ相当な腕っぷしらしいな。俺もな、シャバじゃあ全スラム相撲で関脇までいってんだよ
相手の実力くらい1発汲組みゃあすぐわかる。
間違った噂を正してやる!俺たち炊場のネットワークでな。
明日中に第27木工場の佐々木は口だけのたいしたことねえ野郎だと誰もに知れ渡ることになる。

そんな風に挑発をする高木さん。
血管を浮き立たせ、その挑発に耐えようとするレノマさん。
俺には目的があるんだ!あの壁の向こう側へ。

そんな風に目的を見据え、必死で我慢しようとしたレノマさんでありましたが・・・らああああ!!

やっぱり!!

土俵際で逆転の投げを敢行するレノマさん。
まあ、この負けず嫌いっぷりこそがレノマさんの長所であり短所でありますからなぁ。
果たしてこの投げで決着はつくのでしょうか!?
ついたとした場合、豚舎行きの話はどうなってしまうのか。
勝負に勝ったことで向こうが和解を持ち出したところで、入れてくれるように持ち出せばいいのか?
お前との戦いで豚さんの気持ちを知るのも大事だとわかったぜ!みたいなことを言えば入れてもらえそう。
でも下手にそういうことを口にすると高木さんに仲間ができた!と思われてしまうかもしれない。
いい人だとは思うが、常時あの熱さで迫られてはかないませんわな。



第73房 豪腕  (2012年 39号)


負ければ念願の豚舎入り。
しかし、レノマさんは横綱級の負けず嫌い。
というわけで、飛び出しました逆ギレ投げ。こいつは強力だぜ!!

強力な投げではあったが、どうにか残す高木さん。
炊場のギャラリーも、今のは危なかったと内心感じている。

わざと負けるはずの予定が一転してガチンコ対決に。
再び中央で組み合う2人だが、最初に組んだときとはレノマさんの気合の入り方が違う。
足は土俵に根を張り、簡単に動きそうにない状態だ。
その手強さは、組んだ高木さんが一番よく理解している。
そして、理解したからこそ怒り出す高木さん。

最初に組んだ時と今とじゃまるで別人じゃねぇか。油断させてスキを狙うってやつか。
テメェ。こざかしい野郎だな。ますます気にくわねえぞ。

ビキビキと、眉間や下あごに渦巻き模様のような皺が浮かび上がる
ついでに背中にも浮かび上がる。お頭の背中で力が渦を巻いてやがるぜ!!

ギシギシとお互い力が篭る。
と、いきなりその膠着状態を破り、技を仕掛け出す高木さん。
左脇でレノマさんの右腕を捕らえて投げを放つ。これは・・・小手投げだ!!
体重の掛かり方によるものか、ガゴっとレノマさんの右肩が外れる
肘をやられなかっただけマシといったところだろうか。

怒りのレノマさん。相撲の最中ということも忘れて殴りかかろうとする。
が、さすがにこれは行司役の看守に止められます。パンチはダメだ!ここは土俵だぞ!!
というわけで、強烈な張り手をかます高木さん。
高木さんはルール破りとかにも厳しそうな印象がありますな。

最初のブチカマシで割れた額から流れる血で目が塞がれそうなレノマさん。
高木さんの強烈な張り手を避けることもできず、くらい続ける。
そのおかげで、顔面は腫れ、血が流れていなくても前を見ることはできない状態になっている。

リクは、レノマさんにもう負けちまえばいいじゃないか!と叫ぶ。
実際、この戦いは負けたほうがいい。負けなきゃならない戦いのはずなのである。

スラム時代とは違う。この相撲は負けちまえばいいんだった。それでよかったんだった。

そう思いながらも、ついつい体は踏ん張ってしまう。
負けて悔しい思いをしたスラム時代のことを思うと、どうしてもって感じなんですかねぇ。
まあ、スラムでは負けは本当に死に繋がる可能性が高いわけで。

体が覚えてやがんのか。負けたら、どうなっちまうのかを・・・

性格的に負けず嫌いなのは間違いないが、そうなるにも背景があるって話ですわな。
勝負の結果得られるものが何であれ、勝負事に負けたくないと思う。
厄介な性格ではあるが、レノマさんらしいともいえる。まだまだ若いってことですわな。好ましい話ですけども。

というわけで、レノマさん。
高木さんのとっておきの1発をかわし、伸ばした右腕を左脇に絡めとる。
そして、片腕だけで高木さんの体を持ち上げた!!

やっぱ負けたくねえええ!!

吠えるレノマさん。
究極の負けず嫌いによる怪力が発動した形でありますな。
次回辺りに決着がつきそうだが、どのような形になるのだろうか?
全力を出しての勝負の結果であれば、高木さんはどのような形であれ認めてくれそうだが・・・
果たして今回の結果で豚舎入りはなるのかどうか。気になります。



第74房 土俵  (2012年 40号)


負けず嫌いを爆発させたレノマさん。
意地の片腕吊り上げで巨漢の高木さんを持ち上げる。
って、持ち上げられてる高木さんの姿勢と表情が妙にシュールでありますな。
股割がしっかり行われているせいか、ぴーんと伸びきった足が美しい。

そして、土俵に叩きつけられる高木さん。
肩から落ちたような感じっぽいが、ドオオン!と派手な音を立てている。無事なのか!?

そちらも気になるが、負ける予定がつい勝ってしまったというのも気になる。
せっかくのチャンスをふいにしてしまったレノマさん。リクも半眼でみつめております。

しょうがねぇ相棒持っちまったな。どんだけ負けず嫌いなんだよ

今回は確かにダメになってしまったようだけど、それで責め立てるようなリクではありませんわな。
そういうしょうがないところも含めて、レノマさんを相棒として認めているわけだ。
まあ、自分のふがいない部分も認めてもらってるのだし、おあいこってことですわな。

リクに対し、すまんと謝り、また別の方法を考えるというレノマさん。
そして高木さんに対し口を開く。お、無事だったみたいですね高木さん。タフだな。

俺も極貧だった。食い物のありがたみは身にしみてる。豚を悪く言うつもりはなかった

ふむ。食い物のありがたさを知っているというのは間違いないでしょうね。
ついケンカ腰になっちまっただけで、豚に対して嫌な感情を抱いているわけではない。
ちゃんと食べた後にごちそうさまでしたが出来るレノマさんですもの。ありがたさは身にしみてるさ!!
しかし、勝利してから和解に繋がりそうなセリフを放つのがレノマさんのズルイところである。
最初からそう言っていればそもそも諍いにもならなかったろうに・・・負けず嫌いめ。

それはさておき、刑務官が軍配代わりの警棒を指し、勝者を告げる。勝者、炊場、高木と。え?

どうやらレノマさんが最後の投げを放つ前に足が土俵を割っていたらしい。
よって、この勝負は高木さんの勝ちということになる。おやおや。
しかし、これはまたレノマさんにとっては最善の結果になったと言えますな。
試合に負け、勝負に完勝した形でございます。なるほどーこういう手があったかー。

納得いかねえようだな。なんなら再戦してやってもいいんだぜ。

持ち上げられた高木さん。試合としては勝者となったが、忸怩たる思いはありましょう。
だが、そういうのは抑えて、外れたレノマさんの肩をはめてくれる高木さん。

しっかり働いてもらわにゃならねえからな。
お前のさっきのセリフがウソじゃねえか確かめてやる

うむ、なかなかの格でありますね。
無駄に暴れたりせず、レノマさんの言葉を受け止め、確かめようとする。いいお人だ。
この見事な態度に炊場も沸きあがっている。ワアアアア!!
そんな歓声の中、こっそりとまさかの豚舎入りを喜ぶリクとレノマさんでありました。よかったよかった。

さて、翌日。
さっそく第27木工場から炊場への転業を命ぜられる2人
そして、そのためにただちに房へ戻り私物をまとめ、転房することになる。え!?

炊場の仕事は木工場のそれとは全く異なる!
起床時間も違えば、食事の時間も違う!生活形態が違う者同士、同じ房での生活は不可能だ!

な、なるほどー。
確かに他の囚人とは食事の時間が違いそうだし、そりゃ生活形態はズレますわな。
この展開は想像していなかった。まさか、この段階で仲良くなったノギ達と別れることになるとは・・・

作戦では、このまま転房してそのまま脱獄することになっている。
そうするともう、ここでみんなとお別れなのか・・・

毎日寝食を共にすることはもうないのかもしれない。
昼間に会うぐらいのことはできるでしょうが、それでも寂しいよとノギ。
他の27の連中も、行かないでくださいよボスー!と切ない声をあげる。
やっぱりレノマさんは慕われておりますなぁ。いい光景だ。

だが、そういったものを振り切り、リク達は前へと進む。
いずれ脱獄をする際は黙って行動するしかないと思っていたのだ。
その別れが多少早まっただけ。そう考えるしかありませんわな。

思い出のある324房から25房への転房を行う。
私物を抱えているけど、何を持っているのでしょうか?
入房時に持っていたのなんて、その時の服ぐらいなものだと思うが。
レノマさんはあれですかね、購入したテレビ情報誌を持っていっているんですかね。いや、いらんか。
というか、床下のあの豪華な品々はどうするんでしょうか?気になるなぁ。

炊場は19時まで仕事である。
しかも刑務所で最も過酷な重労働が行われる場所と言われている。
そんな場所で勤務している同房の連中は一体どんな奴等なのか・・・新しい同居相手も気になりますなぁ。

ともかく、明日から豚の世話だ。
なんとか思惑通りに炊場には入れた。豚の糞に紛れて脱出する作戦のスタートラインには立てた。
とはいえ、この作戦が正解なのかどうかはわからない。
だが、あきらめず、ねばり強く機を窺えば、必ずほころびが見えてくる。そう信じぬいてやるしかない。

楽しみだ。連絡したシャバの部下がもうすでに島に一般市民として潜伏してる
脱獄後にいる逃走用の服や車を用意してな。

さすがにレノマさん。その辺りの準備は万全といった感じですな!

こうして始まる炊場での新しい生活。
まさかの転房も含めて、話は大きく転がっていった感じがありますなぁ。
そして脱獄まで後少しになってきた感じもあります。
果たして豚舎からの脱獄は見込みがあるものなのか!?
もしダメだった場合、最転房で324房に戻れる可能性はあるのだろうか?
貢物がもらえなくなった谷村看守部長が手を回して戻させるというのもありえる話だ。
一体どうなるのか。ますます楽しみな展開になってきましたなぁ。



第75房 炊場  (2012年 41号)


炊場に転属ということで転房も行ったリクとレノマさん。
さすがに炊場に係わる連中は読んでいる本も違う。
というか、月刊・豚ってなんだよ。月単位で書くことがそんなにあるのか?豚のグラビアとかあるのか・・・?

レノマさんに言わせればくだらない本しかないとのこと。
それは仕方ないかもしれないが、読んだ後に放り投げるのはやめましょう。

さて、早速メシの時間である。
炊場の連中は房では食べず、食堂で食べる。
が、その前に配膳を行うことになる。作るだけではなく配るのも炊場の仕事だ。

早速炊場の仕事を開始する2人。
しかしレノマさん・・・恐ろしいほどにかっぽう着が似合わねぇ!!
まあ、高木さんも似合っているかと言われると難しいところであるが。体格がいいからしょうがないね。
逆にリクが可愛いことになっている。

さて、配食。
別れたばかりの27の連中にいきなり再会することになるレノマさんたち。

ボスー!おおーっ、ボスだーっ!!ボスーッ、似合ってますよ!!

かっぽう着姿のレノマさん、大人気ですな。
恥辱に震えるレノマさん。まあ、愛されているってことですよ、ボス。

そして324房。ここの連中も満面の笑顔で迎えてくれる。
本当に満面の笑顔だな、おい。凄いわ。
しかし、天野は余計なことを口にしたので量を減らされる。
ダメだよ天野。レノマさんは恥ずかしがりやなんだからね!

2人が配食してくれたご飯をありがたく頂く5人。
食事はありがたい。けど、その頂く場にリクとレノマさんの姿がない。
やはり寂しい感じは拭えませんなぁ。
今後もこうやって会うことはできるけど、寝食を共にすることはできないわけだ。寂しいですねぇ。

さて、配食完了。ようやくレノマさんたちもメシにありつける。
高木さんにより炊場の連中への紹介を済ませ、食事の開始。の前に、まず合掌。そして感謝!!

豚さん・・・お魚さん・・・お野菜さん・・・いつも本当にありがとう。いただきます

なんと感謝の篭ったいただきますであることか。
口にする高木さんの目は涙に緩んでいる。炊場の連中も同様だ。
これは、さすがになんとも言えない雰囲気でありますね。
しかし、食べ始めると早い。さすがに食事に関してはエキスパートということなのか!?
迫力と共に一気に食べ終える高木さん。そして炊場の連中。
いつもは1番に食べ終えるレノマさんが遅れての終了。おーイラついてるイラついてる。
負けず嫌いのレノマさんは、こういうところでも発揮しちゃうんですなぁ。

イラついているレノマさんに対し、ごちそうさまはちゃんとしろと説教する高木さん。
説教だけでなく、実演までして見せてくれます。
よく見てろ。極楽島で1番美しいと言われる俺のごちそうさまだ

嗚呼・・・ごちそうさまでした

合掌する高木さん。その姿の美しさは後光が差しているようであったという。
ウットリとした顔でそんな高木さんを見つめる炊場の連中。
なんというか、高木さんのカリスマ性が高すぎて危ない雰囲気になってねーか!?

この人いちいち必死だな。ちょっとめんどくさいけど悪い人じゃない

というのが高木さんに対するリクの評。その通りでしょうな。
悪い人じゃないけどめんどくさい。レノマさんとは合いそうにありませんな。
そういう2人だから、空下げ――食後の食器回収後に行われる炊場の掃除でも軽くモメたりする。
うーむ、このままだといつか諍いが起きかねませんなぁ。

炊場では洗体という時間がある。
要するにシャワーを浴びる時間が毎日設けられているのだ。
食事を扱う仕事だから、常に清潔でいなければいけないってわけですね。
きつい仕事ではあるが、そういう特典もあるってわけだ。よかったね。

だが、その前にもうひと仕事が2人に課せられる。
めんどくさい話・・・と思ったが、その割り当てられる仕事を見れば文句もふっ飛ぶ。

約束どおり豚さんの世話をしてもらう。まずは糞の回収だ。

リク「豚の糞!!
レノマ「よっしゃあ!!

念願の豚舎入り。これで調査が出来るようになった。気合も入れなおすことができますね!!

てな流れで始まった炊場編。
次号からは3号連続巻頭カラーが始まるという!!
そうかぁ。豚さんがいきなりカラーで見れるってわけであるか。こりゃあいわゆる高木さん得ってやつですね。

豚舎での内容も気になるが、一番気になるのはリクたちの同房の相手。
一体誰と同房になるのか?やはり高木さんと一緒だったりするのだろうか?
すぐに脱獄するとなると、同房の相手とは親しくなったりはしないのだろうか?
色々と気になるところでありますなぁ。先が楽しみだ!



第76房 動物  (2012年 42号)


3号連続巻頭カラーの第1弾。気合充満している様子が見て取れます!カッケェ。
そして、その巻頭カラーでいきなり豚のお世話が行われる。なんだか凄ぇな。

まずは高木さんによる注意項目。
豚さんに接するにあたって、ストレスを与えることは厳禁とされている。
絶対に豚さんを怖がらせないこと。そのためにはまず・・・笑顔だ

透き通った笑顔を見せる高木さん。
こ、この笑顔は・・・作り物だとかそんなんじゃねぇ・・・
本当に豚さんへの気遣いを見せて生み出される慈愛の笑みだ・・・!!
全く、この人は毎度全力過ぎて笑わせてくれる。

作業は2人だけでやるのかと思ったら、どうやらそうでもない様子。
他の炊場の連中もやってきました。皆さん笑顔です。怒るときも笑顔です。ニコニコ。
高木さんは別の場所に移動。その間は近藤という人が面倒見てくれるそうな。
というわけで、早速作業開始。
レノマさんも言われたとおりに笑顔を作ろうとする。って怖いよ!ビキビキになってるぞ!!

まずは糞集め。
スコップで糞を集め、ドラム缶の中に詰めていく。これはなかなかの重労働だ。
パワーのあるレノマさんの活躍が見込めるところだが、レノマさんはサボり中。悪い人だ。
そんなレノマさんに懐いてみたりする豚さん。妙に可愛い。
懐かれて多少怯んだ様子を見せるレノマさんもいい感じである。

作業が一通り終了するころにはもう夜の8時半になっていた。
木工ならとっくに仮就寝の時間である。早く帰って休みたいところ。
だが、高木さんのチェックによりやり直しとなる。
って、そのチェックの仕方・・・なんだか小姑みたいですよ高木さん。新しい家族へのイビリか!?

結局、1時間ほどやり直しをした2人。
高木さんはその2人に対し、今夜寝る場所はここだと宣言する。
その場所とは・・・豚さんが寝ている部屋。豚と寝ろってか!!

騒ぐな!!彼女はお産を控えてる!!

ほ・・・ほう。
なるほど。いつ産気づくかわからないから付きっ切りで見守ってあげろというわけですか。
何かあったときはインターホンで夜勤の看守に繋がる仕組みらしい。
豚のお産で呼び出される看守というのも大変ですな。
まあ、看守も看守で動物好きな人なのかもしれませんが。

この仕事の回され方に、相撲のことを根に持っているのかと疑うレノマさん。
どうなんでしょうかね。高木さんがそんな小さな人とは思えない。
これはやはり、出産に立ち合わせ、命の素晴らしさを見せようとかそういう話ではなかろうか。
いつしかレノマさんも豚さんを尊重するような人間に・・・そんな風になれるよう高木さんは教育しているというのか!?
なったらなったで、困るけど面白いな。面白くて困る。

なにはともあれ。部屋に敷かれた藁の上で横になる2人。
夜、車の音が聞こえてきたため、窓から外を覗き見る。
どうやら食糧の搬入車が入ってきたらしい。ほう、こんな夜中に。

食材・工場の材料・印刷物・薬品・・・刑務所に出入りする車は意外と多い。
なのに手続きは厳重。手間も時間もかかる。混み合う時間を避ける業者もいるだろう。

なるほどね。納得のいく話である。
搬入した品物のチェックに看守が2人出てきた。その後ろには4人の官炊
官炊とは刑務官の食事を作る受刑者のことである。
夜勤の看守の夜食係として夜に働いている囚人もいるようだ。
そしてこの官炊たちは搬入の手伝いもしているという。ふーむ。

品物に関して1つ1つ看守たちのチェックが行われる。
おかしな物が持ち込まれないよう、ちゃんとチェックしませんとね。
まあ、それでも見逃してしまうことはある。
レノマさんが外へ注文した時計とか指輪なんかはチェック漏れの産物でありますわな。

だが、生身の人間を隠すのは待ったく別次元の話だ

大きさ、重さ、さらに密閉した空間には入れれない手間。
これらを考慮すると、人間を見つからないように運ぶのは至難な業である。
しかも、運ぶ側の人間は協力してくれるわけでもない。
隠れたなら、後は見つからないように祈るしかないという状況。これは怖い。

糞つぼは本当にチェックが甘いのか、きっちり確認しとかなきゃならない。
豚の糞の回収は朝の8時30分。土日以外糞の回収車が来るとのこと。
幸い、2人は糞を任されているから搬出の作業にも加えられるはずである。
そこで看守のチェックの甘さを確かめる。

審判だ。その結果によって俺たちの潜伏作戦が通用するかどうか決まる!

翌朝。
どうやら産気づいていた豚さん、夜のお産はなかった様子ですな。
ともあれ、さっそく朝の作業として糞の詰まったドラム缶を運び出そうとする2人。
しかし、そこに高木さん登場。お前らは搬出の作業には入らんと言ってくる。え・・・?

搬出作業は外部の人間との接触がある、責任の重い作業だ。
昨日今日入ったお前たちには任せられん

なんとまぁ。でも、ごもっともでありますな。
搬出する業者と結託して物品のやり取りとかしないとも限りませんものねぇ。
まあ、実際レノマさんの部下がやり取りしてたりするわけですが。

それはさておき。このままでは潜伏作戦は決行できない。
確認もせず、大丈夫だろうとぶっつけ本番で行くか・・・それはあまりに危険すぎる。悩むリク。
そんな悩んでいるところに、豚舎の世話係である近藤さんが説教をかましてくる。
どうやらスコップが片付けられず、小屋に置いたままだったらしい。
看守が見つけてたら大騒ぎだったらしいこのスコップ。これが閃きの元となる。

搬出作業には加われなかった2人。洗体して、調理場の方に移動。
お、ついに調理か?と思ったが、基本は皿洗いな様子。そりゃそうか。
食器を洗っていると、どうやら糞の回収車が来た様子。
来たというのはわかるが、チェックの厳しさについての詳しい判断はできない。
だから、リクは一計を案じた。

糞つぼの1つにスコップをつっ込んできた
もしも・・・看守が1つ1つ丁寧にチェックしているのなら・・・スコップを見つけて大騒ぎするはずだ。
けど本当にチェックが甘いのならスコップは見つからず、静かに搬出作業が終わるはずだ。

なかなかの機転である!
とっさにこの作戦を思いつき、決行したリク。これは誉められてしかるべきでしょう。
レノマさんも驚いたとも感心したともつかない表情をしていますな。

さて、さっそく糞つぼのチェックが行われる。
警棒でガンガンと缶を叩く看守たち。
そのうちの1つが、妙な音を立てる。これは・・・見つかったのか、スコップ?

叩くことで異物が入り込んでいないかのチェック。
果たしてどのぐらいの精度があるものなのか。
スコップが混じったくらいでハッキリとわかるぐらいに音が変わるのだろうか?
その辺りは疑問である。ひょっとしたら別の要因で音が変わっただけなのかもしれない。
が、音が違えば中を改めるとなると色々と話は面倒くさい。
スコップはまだしも、人間が入ったら音が変わったりはしないだろうか。
というか、そもそも密閉した空間に糞と一緒に入ったりできるのだろうか?ガスとか充満してそう。

糞つぼに入っての脱出作戦。
その後どうするのか?という点も踏まえて乗り越えるべき課題は多いように思える。
とはいえ、まずはこのチェックの段階がどうなるか、ですな。
リクの機転はいかされるのか否か。注目である。



  囚人リク感想目次に戻る

  囚人リク連載中分に移動

  作品別INDEXに戻る

  週刊少年チャンピオン感想TOPに戻る



HPのTOPに戻る