蒼天紳士チャンピオン作品別感想

弱虫ペダル
RIDE.321 〜 RIDE.346


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 各巻感想

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連載中分 SPARE BIKE

弱虫ペダル 38巻


RIDE.321 メッセージ  (2014年 43号)


今日、ボクはとても調子がよくて、裏門坂のタイムが10秒縮みました。
この間は峰ヶ山のレースで頑張って、優勝しました。
巻島さん!!

自身の成長や成果を真っ先に報告したいのは憧れのあの先輩。
報告し、喜んでもらい、褒めてもらいたい。
その褒められる様子を思い浮かべて嬉しそうにする坂道は可愛いが、何だか危なくもあるなぁ。

巻島さんはインターハイのあとに外国にいってしまった。
だけど知ってほしいと思ってしまう。峰ヶ山の優勝も、タイム縮めたことも、皆の凄い走りも。巻島さんに。

思いつめた結果、手紙を書くことにした坂道
思ったことを全て書いているのか、凄い枚数になってるみたいですな。ハハハ。
しかしどうやら肝心の住所を知らないらしい。
うーむ、それを知っていながら気持ちが抑えられずに書き記さずにはいられなかったと・・・乙女のようだな。

手紙を見られそうになったので鳴子と今泉君には数学のレポートだと誤魔化す。
が、どうやら手嶋さんには気付かれたようで・・・

あんま返事は期待するなよと前置きしながら"数学の答え"こと巻島さんの住所をくれる手嶋さん。
田所さんや金城さんも知らなかった巻島さんの住所。
それをピエール先生から上手く聞き出したという手嶋さん。さすがの手腕ですなぁ。

これでたっぷり解けるな。数学の問題

そのように述べる手嶋さん。
うーむ、坂道が誤魔化すために言い出したことではあるが、その隠喩はどうなのだろうか。
数字とか掛け算とかそこから導き出される答えとか色々と連想できそうな感じで・・・うむ、この話題は止めておこう。

それはさておき、手嶋さんは坂道の気持ちが分かる様子。
憧れの先輩が去って行った気持ちを同じように抱いているわけですからねぇ。
これまではその先輩たちの言うことを聞くだけで良かった手嶋さんたち。
しかし学年が上がって先輩がいなくなると、自分で全部判断して決めなきゃならなくなる。

最良の選択をしなくちゃならなくなる。想像してるか小野田。これからのことを。
1年が入ってくる。去年と同じようにインターハイに出る。その1年を従えて。
決めるんだ。自分の道は自分で。もし悩んだら、こうしろ。
考えられる選択を全部考えて悩んで、1番最初に思いついたことをやればいい!!

そのように言ってくれた手嶋さん。
その手嶋さんがいろは坂で戦っている。
これは坂道がいないから自分が戦うしかないと判断したのだろうか。
それもあるだろうが、坂道はこれはメッセージだと捉える。峰ヶ山のレースの時と同じく、前を走ることで伝える声なき言葉。

山で待ってるから追いついてこいってメッセージだ!!

それを理解し、一気に全身から吹き上がるプレッシャー。
周りを囲んでいた3人も瞬時に気付くほどのものであるという。ほほう。
そういえば未だに3人で囲んでいるんですな。
最後尾から上がる時に千切られた連中は合流してないのだろうか?
まあ、それはもう気にする必要もなさそうですな。

すいません!!今からぬきます!!

てっきり不意を狙って抜いて来るのかと思いきや、真正面から宣戦布告をする坂道。
これは不意を衝かれましたね!!む、想定していたわけではないが不意打ちにはなっちゃってるのか。

ヒメ・・・!!

ついに飛び出る坂道の歌。
去年もこれで驚異的な追い抜きを見せておりました。
勿論それは評判となっている。曰く――総北の小野田は鼻歌がまじると速くなる、と!!
前から言ってることではあるが、鼻歌って勢いじゃないだろ。

ヒメたーくるくるー想いーずぅーとくるくるーキミはヒメでいて!!たたたたん!!

何がたたたたんか。それは歌詞の一部なのか効果音なのか。とても気になったたたたん。

超絶イチオシアニメ「ラブ☆ヒメ」は大好評の内に1期目を終え、9か月の御休み期間をへて、先日待望の2期目が始まりました。
この「ヒメのくるくる片想い」は――
パワーアップして帰って来た「ラブ☆ヒメ」2期目「ラブ☆ヒメ ぺったんこ」のオープニングテーマです!!

詳しい説明をしてくれる坂道。お、おう。
分かる人にはよく分かる説明だが、そうかー。アニメとか知らない人には1期目とかは分からないかー。
でもオープニングテーマぐらいは分かって欲しかったな。
まあ、たて続けにこんなことを呟かれたのでは混乱しても仕方がないか。
というか、鼻歌はウワサになっているのに、坂道がそういう趣味があるのは知られていないのか?
取材陣も伏せてそうだなぁ。なんとなく。

ヒ、メ!!くるくるくる!!
ミ、ラ、くるくるくるあああ!!

くるくる言いながらぐるぐる回して集団を追い抜き、みるみるうちに引き離していく坂道。
うーむ、この2期目のくるくる具合はまるで坂道に向けてあつらえたかのような感じになってますな。くるくる。

というわけで、5分近く足止めを受けていた坂道でしたが、ようやく走り出すことが出来ました。
これだけ足止めしていたのならば追いつけないはずだと考える包囲していた選手たち。
だが、それはそれだけの間ずっと足をためておけたということにもなる。

始まるのかもしれない。ヤツの信じられない・・・追走劇が・・・!!

元より逃げるよりも追いかける方が得意な坂道である。
むしろ先に向けて泳がせるように走らせた方が性能を活かせないんじゃないかと思われる。
最後尾に落としてしまったのは上手い作戦じゃありませんでしたな、泉田君。

去年に引き続き、一気に追い抜いていきそうな坂道。
今泉君たちと合流するのは間違いないだろうけど、そこからどうするのか。
メッセージを受け取ったのであれば、チームを引くよりも山を駆け登ることを考えそうですが・・・どうだろうか。
何にしてもさすがにこれだけ差がついてて、他ならぬ山岳までまくるようなことはないと思うが・・・思うが・・・ううむ。
どうなるのか気になるところです。
後、長野中央の粟頭弓親の出番があるかも気になるところです。台詞あるといいね!!



RIDE.322 回れ、回れ!!  (2014年 44号)


これはメッセージだ。手嶋さんからの、先頭まで追いついてこいってメッセージだ!!

気合の入った坂道。抜きます宣言をして見事にその通り抜き去ってみせる。
うーむ、さすがに歌いだすと違いますなぁ。新OPに変わっただけだが新技ってことでいいのだろうか。

回れ。回れ!!ボクの足!!

物凄い勢いで先頭目指して駆け登る坂道。
足止めしていた山形最上の稲代文也はここから先頭まで追いつくのではないかと危惧している。
その意見に対し、5分は足止めしたのだしそれは無理だと言う者もいるが・・・長野中央の選手の意見は違う。

さっき・・・オレたちがあいつを塞いだ時、オレが一番前にいたんだ。
だから悪いと思いながらも身体をよせて鼻をねじこんだ。
普通は反射的によけるかブレーキかけちまうもんだ・・・けどあいつは全くこっちを見てなかった
まっすぐにずっと遠くを見てた。まるでずっと遠くに目標があるみたいに。

ふむ。さすがは粟頭弓親を擁する長野中央ですな。いい読みだ。
というかやっぱり集中した坂道は怖いですな。周りが見えなくなるから周りが気を遣わないといけなくなる。
ガードレールに手をぶつけても気にせず走ったような男であるしなぁ・・・ガードレールさんも気を遣ってください。

総北小野田のハナウタクライム。驚異の走りを目の当たりにする各校の選手たち。
いつの間にそんな名前がついたんだろうか。全部カタカナにすればそれなりのものに見えなくもないな。

進路を塞いで妨害しようとする選手たち。
が、それに対してやめろと止めるのは山口の山際さん。

ロードレースは紳士のスポーツじゃ
数多くいる選手の中で前年優勝者"ゼッケン1"は最もリスペクトされる存在。
山にクライマーを送り込んだわけでもないオレたちが戦略上の理由もなく前を塞ぐなんていうのは――その方がカッコ悪い。
むしろあけてやれ。前年度優勝者が全力で上がろうとしている。
だったら道を開けてやることがオレたちの「1」への敬意じゃ。

ふむ。なんだか知らないがカッコイイですな山際さん。
しかしこの紳士のスポーツという言葉は色々なものに使われている気がしますな。ある意味入った者勝ちな感じもあるか・・・

何にしても前を開けてくれたのは僥倖である。
去年のような無茶な走り方をして追い越す必要はなくなったわけですから。
そして前年度優勝者でありながら腰の低い坂道。
普段ならば舐められるところであるが、凄い速さで抜きながらやるのだから逆に凄いと思えてしまう。ハハハ。

坂道の走りを見た観客の歓声は坂を上がり始めた総北の面々にも聞こえる。
それを聞いて期待し出す鳴子。今泉君もまたその期待に同意している様子。
確信はないと言いつつ、あいつの登場は見かけによらずいつも派手だ!!とのこと。いや全く。
シチュエーションまで味方につけて派手さを演出する坂道。このエンターテイメント性は鳴子も敵いませんわな。

さらに壁の様になっている集団。
こちらに山際さんはいないが、坂道が道をあけてくださいと声をかければちゃんと開けてくれる。
ほほう・・・ここだけみると本当に紳士のスポーツのように思えますね。
前回まで数人掛かりで封じ込めしてたりしたのが嘘のようだ。

しかしその封じ込めも戦略上必要であるからすることである。
山際さんもそれが必要なことであればやるのを止めはしないでしょう。そうシンプルにはいかんのじゃ

チームで勝ちを狙いにいくのがロードレースじゃ。当然戦略上あいつを行かせたくないチームもあるはずじゃ。

集団を抜けた坂道。
だがその集団が出来ていたのには理由がある。
そう去年と同じ理由。速度をコントロールしていたチーム――京都伏見がそこにいたという理由が!!

アレェェ〜〜〜〜〜〜!?
アレ?アレ?ソーホクゥのメガネくんやないの
どうしたん?そんな顔してェ。オバケでも見たカオしてェ〜〜〜。プク、プク、プク、プク。
どしたん?急いどるん?大切なものでも失くしたか!?

今年もまた集団の先で出会う御堂筋君。坂道自身もまたとか言ってますわ。
しかし去年とは違い、御堂筋君は坂道の実力を理解している。量産型ではない。
けれど呼び方がサァカミチじゃぁなくなってるのは何故だろうか。
地味にそんなに意識してませんよアピールでもしてるのだろうか。気になるところだ。

さて、御堂筋君は素直に坂道を通してくれるだろうか?
戦略上のことを考えると総北は削りたい。
けど、それで箱根学園を自由にしていたらそれこそ危険なのではなかろうか。
箱学を削る為に坂道を行かせる。その考えもあるのではないかと思われる。
だけどそこで御堂筋君がロードレースは紳士のスポーツやから道譲るよとか言い出したら困りますな。信用し辛い!!
いやまあ坂道ならば信じるかもしれないが・・・どうなるだろうか。ううむ。



RIDE.323 京都伏見  (2014年 45号)


人の壁を抜けたら今年もまた御堂筋君でした。ビシャアッ。

今年も集団をコントロールして足きりを増やそうという作戦だろうか。
考えてみると山形最上のように選手を分けて後ろに置いているチームにはかなり有効そうな気がしますな。
選手を回収しようとすれば前に進んでいた者たちはその分待たないといけないわけですし。

ともあれ先頭に追い付くにはこの京都伏見の壁を越えて行かなければいけない。
そして御堂筋君の他にも警戒すべき選手がいる。

コモリくんもいる!!

そう、コモリ・・・じゃなくて小鞠やっちゅうのに。石さんこと石垣さんといい、坂道は京伏の選手名は覚える気がないのか!?
そんな坂道に対し小鞠。ヘルメットにかけていたサングラスを外し、回して見せる。ヒュッヒュッ
そしてまた元に戻す。え?何それ?それで終わり?このアピールに一体何の意味があったのか・・・?
坂道がやけに警戒したなってるものだから何かあるのかと思ったら・・・何だったんだよ!!
そんなやりとりしてる間も変わらぬ調子でしゃべり続けてる御堂筋君でありました。

一度無くしたモノなんて二度と手になんか入らんよ?と御堂筋君。
そのように言われたからって諦めるわけにはいかない。
六人の隙間を抜けて行こうとする坂道。だがここでその前に入って道を塞ぐ者がいた。ゼッケン112番――水田君だ!!

行かせへんよ・・・"1番クン"!!
京都伏見3年キャプテン、そして京都の隠しエース!!
去年よりはるかに強くなった京伏を引っ張る男、この水田信行がな!!
どこまで行くつもりや"1番クン"。この先の「チーム」か?それともその先!?ハハハ!!この水田信行全てお見通しや!!
オレは去年あの箱根学園2番、エースアシスト荒北靖友を止めた男!!京伏鉄の壁

何だか知らないがノリノリで喋り出す水田君。
なるほど去年よりはるかに喋るようになってますな。
しかしそんなお喋りを認める御堂筋君ではありませんでした。残念!!
キャプテンに就任したことで妙な見栄がついちゃったみたいですなぁ。

捨てな・・・余計な見栄や虚栄は。ボクゥのチームに必要なんは完璧なる兵隊!!ザクであること!!
手足もげても前に進もうとかしづく意思!!

インターハイに出場していても、つまらない個性を発揮するようならいつでも切ると述べる御堂筋君。
この辺りはやっぱり相変わらずな感じですなぁ。
む?そうか、さっきの小鞠のヒュッヒュッはそういうことか!?
お喋りは許されていないので喋らずに何かパフォーマンスをしたかったとかそういう。うん、でもやっぱり意図は伝わらないよ!!

それはさておき、最近の御堂筋君はあまりのプレッシャーの大きさに姿が大きく見えるらしい。
去年の雪辱に燃えている感じですなぁ。
石垣さんもいなくなったことですし、今年は去年以上に徹底的に締め付けてきそうな感じである。
結果、たくさん入って来た1年生も8割はやめてしまったとのこと。おやおや。
そういう部員のケアをしていたのが去年も参加していた山口君であります。お、まさかこの子にスポットが当たるとは。

今年の3月。いよいよ石垣さん達3年生が卒業する日のこと。
部室では3年生を送る会が準備されているという。
ふむ、御堂筋君は参加こそしないものの、やってはいけないとは言わなかったわけか。ふむ。

それはさておき、迎えに来た山口君のインターハイでの働きを労う石垣さん。来年もチームを頼むぞと告げる。
それに対し、オレはアシストとして精一杯やるだけですと語る山口君。いや、それが大事なことなのですよ。

ヤマ。おまえはがまんのできる男や
御堂筋はすぐれた選手や。脚も強いし勘もいい。まとめる力もある。
けどロードレースで勝つためには、オレは最後信じあえる「良心」が必要やと思っとる。
ヤマ。おまえが御堂筋の「良心」になってやれ
もしもの時、御堂筋を止めるのはおまえや!!ヤマ。

ほう。自身の役割を山口君に担わせようというのでしょうか?
石垣さんであるからこそ、御堂筋君はある程度折れてくれた部分はあるわけですが・・・山口君ではどうかな。
山口君自身も御堂筋君を止めることなんてできるのかと疑わしげな様子。
まあ確かに誰かがストッパーにならないといけない気はしますがねぇ・・・
良心という意味なら、他の部員の心のケアとかもありますが、その辺りはしっかりできている様子。
だがしかし、肝心の御堂筋君の心のケアはというと・・・厳しいでしょうなぁ・・・やっぱり。

水田君に指示して坂道を止めさせた御堂筋君。
おぅ、やっぱりサァカァミチィ呼びは忘れてなかったんだ!!
そして厄介な選手であると言うことも当然忘れてはいない。
先に行かせてと叫ぶ坂道に、こう切り出す。

行きたいかァ?どうしても!?ほなァ・・・協調しよか?

他校との協調。去年の3日目に箱根学園と行った経験は確かにある。
しかしここでの御堂筋君の申し出は素直に受けていいものであるのかどうか。

今、この時間でホンマに先頭追いつく思う?追いつくつもりなんやろ先頭に。
追いつくだけでいっぱいいっぱいや。仮に追いついたとしても何ができるか・・・
何もできんかもしれんよ?ただ追いつくだけで。
け・・・ど。ボクゥとキミィで走ったら疲れは1/2や・・・!!
そやそや。こっちからはもう1人。そや、山口くんでも出そか。彼にも回させよう。そしたら疲れは1/3や・・・!!
ボクゥも考えとったんよ。どうにかして前の方に上がれんかなァって。
ボクゥも行きたい、キミィも行きたい。利害は一致しとる。こんな都合のいい話はない。

甘くて美味そうな話をする御堂筋君。
確かに言うことは最もである。追いつくことは出来ても勝負は難しい。
去年は巻島さんがいたため、チームに追いついて引くところまでで良かった。
しかし今年のように追いついてから勝負――それも最高級のクライマーである山岳との勝負など考えられない。
御堂筋君と手を組めばあるいは・・・そう思えなくはない。
目的地行くのに特急と鈍行。値段が同じならば誰でも速い方に乗る。それも間違いのないことであります。
まあ、乗車率とかそういう話もなくはないのですが、その辺りは考えないようにしましょう。

「うん」言うたらええよ。簡単なコトや。

選択を迫られる坂道。
ふむ、どうやら御堂筋君は坂道と山岳を争わせ、2人の足を削った後で自らがゴールを頂くつもりの様子。
まあそのぐらいのことは考えますわな。悪辣というほどでもない。
こうなると受ける受けないは坂道の判断ひとつでありますが・・・どうするのか。悩む坂道。
悩んだらどうするか。やはりここでも思い出すのは手嶋さんの教えでありますな。
もし悩んだら、考えられる選択を全部考えて悩んで、一番最初に思いついたことをやればいい。その教えに従うなら・・・

ごめん。やっぱり断ります。ボクは1人でたどりつくよ!!
せっかくの申し出をごめん御堂筋くん!!

ふむ。断りましたか。
その判断は果たして吉と出るのか凶と出るのか。少なくとも御堂筋君からはバカじゃなさそうとの評価は得られました。
何にせよ、協調の話はこれで無くなったわけであります。となると御堂筋君も道を開ける理由はなくなった。

ケド、この男をふりきれたら行ってエエわ

そう言って坂道との争う相手を指名する御堂筋君。指名されたのは・・・山口くぅぅん!!え?

フェイズ11や。できるやろ。「1番」をおさえてくるんや・・・できるやろ・・・
キミィが大事に抱えとる余計なもの捨てれば

スプリンターである山口君をあえてぶつける御堂筋君。
ふむ?これはやはり山口君が石垣さんから担った責任を捨てさせるための布石でありましょうか・・・?
思わぬタイミングで思わぬ選手にスポットが当たることとなりましたなぁ。
果たして山口君は第2の石垣さんになることはできるのか?
去年破棄されて出てこなかったフェイズ11とはどのような作戦なのか?
何やら妙なことが起きそうな気がしますなぁ。



RIDE.324 真波の"羽根"  (2014年 46号)


山岳賞をかけて真波山岳と勝負する手嶋純太。
坂道が来るまではという発言なのか、本気で山岳ゼッケンを狙っているのか。
赤いゼッケンを取得すれば2日目以降は簡単にはナメられなくなるでしょうが・・・
それはそれで油断を誘うアドバンテージがなくなりそうで良くはないかな?

小野田を失ったオレたち総北が出せるクライマーはオレだけ!!
だったら――オレが山岳ゼッケンを獲る!!

山岳の前に出ていろは坂を走る手嶋さん。
去年因縁の総北対箱学。総北の見知らぬ選手が箱学真波を引っ張ってると観客も沸き返っております。
だがそこは手嶋さん。人から厳しい評価を受けるのに定評のあるお人。
今回も前に出ているのに余裕がなさそうとか、泳がされてる感じとか言われまくりである。
まあ実際、そういう面もあるんでしょうけどね。

無理して登っている手嶋さんに対し、山岳はまだまだ余裕といった風情。
一息で加速してトナリに並んできたりする。
ふうむ、この無邪気に話しかける様子。手嶋さんに少し興味を抱いたというのも本当のようですな。

向かい風の中を走る2人。風が出てきましたか・・・
今は向かい風であるが、この先にある180°のカーブを曲がれば・・・それは追い風となる!!
手袋を取る山岳。どうやら出すつもりですな・・・ウワサの"羽根"ってヤツを!!

全開だ!!ここでマージン作っとかないと追いつかれる!!もし追いつかれたら。

思いっきり加速して逃げの体勢に入る手嶋さん。
であるのだが、簡単に追いつかれ、追い越される。
その時の山岳の背中には確かに"羽根"が生えていたのだそうな・・・

オレ、生きてるって感じする。気持ちいい!!

相変わらずの調子の山岳。
でも羽根を出させ、このフレーズを引き出させたのは手嶋さんの頑張りのおかげってことなんですかね?

やはり羽根が出ると圧倒的である。というか羽根を出す前に追いつかれてましたな。
あっという間に見えなくなるほどに離される手嶋さん。厳しい。

車中でレースの状況を聞いた寒咲さんたち。手嶋さんが出たということで動揺している様子。
さすがに山岳が相手では荷が重いと誰もが感じてるみたいですなぁ。
まあこれは仕方がない。手嶋さんが甘く見られているというより、相手が悪いと考えるのが普通である。読者もそう思うぐらいだ。
それにしてもアヤちゃんの必死なフォローが何だか甲斐甲斐しい。
キャプテンだしね、言ってることがいつも気がきいてるしね、とのこと。走りとは関係ねえ!!

静まり返る車中。誰もが厳しいと諦めムード。
そんな中、ボクはあきらめてないですよと述べるのは・・・杉元!!
杉元は述べる。手嶋さんはいつもあたり前のことを言うんです、と。

知ってるんです。当たり前なんです。だけど、ボクもそうだ。知ってるだけなんです。
手嶋さんは、あの人は――そのあたり前をひとつひとつ実践してる人なんです

知ってるだけならばそれは知識である。本を読むなり、人に聞くなりで手に入る。
それを実践して身に出来るかどうか。それが重要という話ですな。
凡人らしく、やれることは当たり前のことに限られてしまう。奇をてらったやり方は出来ない。
パワーもなければヒラメキもない。だから全部の力を推進力に変えなければいけない。

大事なのは基礎だ。その上に全て立ってるんだ

丁寧な丁寧な走り。苦しくとも雑にはならず、それでいて全身の力を振り絞って走る手嶋さん。
その丁寧さこそが武器であり、その武器を振るうのが手嶋さんの持ち味である。例え瞬時に抜かれた相手であっても。

もし追いつかれたら――最悪だよ――また追いつくのに大変な思いしなくちゃならない

羽根を出され、凄い速さで引き離された。
その山岳に、無理して追いつく手嶋さん。よくやる・・・!!
早くも倒れそうな様子を見せている手嶋さんに、無理してついてこなくていいのにと述べる山岳。

いやぁ。おまえの羽根と同じようなモンさ。「無理」はオレの必殺ワザなんだ

無理をするより他にどうにかする手段がないとも言えますな。
しかしその無理が持続するのが手嶋さんである。恐ろしい。
とはいえ、山岳からもついに「全開」でいきます宣言が飛び出した。
去年の3日目で見せた走りをされたらどうにもならない感じはあるが・・・どうなんだろうか?
2人だけの戦いはやはり厳しい。早く他のクライマーも含めた展開に持ち込みたいところですな。



RIDE.325 集中力!!  (2014年 47号)


全開でいきます。その言葉の通り、笑顔で加速を開始する山岳。
その山岳についていくために集中力を研ぎ澄ます手嶋さん。ピンッと集中の糸が張られました。

速っええ!!キツい!!全身の毛穴から血が出そうだ。
耐えろ!!耐えろ!!この「全開」はオレを完全に引き離す走りだ!!
ここで離されたら終いだ!!耐えろォォ!!
速い。速ぇぇよ真波。これが真波山岳。箱根学園エースクライマー真波の全開。

加速を開始してそこまで経っていなさそうなのに、怯みまくりの手嶋さん。まあこれは仕方がないことですかな。
でもまあ、引き離されてもまた無理して追いついていくんじゃないかと思えるのがこの人の怖いところですが。

そいやこの間、ゴミバコシュート。授業中にみごとキマったのとなりの平田みててうけてたな。
平田んち、たしか姉ちゃんいるって言ってたな――

ぐらりと身体を傾けながらそんなことを考える手嶋さん。えっ!?いきなり何!?
しかも直後にはフトンに倒れ込む回想に入っている。ダイブの感覚が今の倒れ込む感覚とマッチしたのか!?
確かに疲れた日はベッドに倒れ込む瞬間がたまりませんよね。

キモチいいんだフトンは。もう動かなくてよくなる。つらいことも忘れられる。
フトン最高なんだ

張りつめていた集中の糸が、緩むどころか弾けるように切れる。
集中しなきゃ集中しなきゃと思ってるのに気付けば全然関係ないこと考えている。馴染みのある経験です。
しかしこれは単に気が抜けただけではない。
過酷な状況に脳がスイッチを切って気絶したのではないかと思われる・・・

何やってんだよ!!レース中だよ!!手嶋純太ァ!!

危うく倒れ込みそうなところで気を取り直す手嶋さん。危ないですなぁ。
3日目くらいになるとこのくらいの追い込みをかけている選手は何人もいましたが、初日でリタイアとか勘弁願いたい。

どこまでも極限に自分を追い込む手嶋さん。
その辛そうな様子を見て山岳。これくらいでも生きてるって感じられるなんていいなぁとか言い出す。
素直な気持ちなのかもしれないけど、凄い煽ってきてますなぁ。
うーむ、やっぱり手嶋さんには煽らないといけない気分にさせる何かがあったりするのだろうか。

死んでる感じしかしねぇよ!!

辛く苦しい状況を体験することで生きてる感じがする山岳。
さすがにその気持ちを共有するのは難しいことでありますなぁ。
とはいえ別に山岳もその気持ちを共有したいとは考えてない様子。
少なくとも今は手嶋さんとの走りを楽しんでいるようだ。ふむ・・・楽しませられるだけ大したものと考えるべきか・・・?

さて、クライマーを出した総北、箱学の両校はペースを押さえて走っている。
今の内にスプリンター達も足を休めておけるって話ですな。
余裕が出来たので鏑木、手嶋さんが飛び出したことは判断ミスではないかみたいなことを言いだす。

何もわかってないな鏑木。純太は自分が弱いとわかってるからとびだしたんだ。

そのように述べる青八木さん。
やっぱり鏑木に解説するのはこの人の役目になったのか?まあ、手嶋さんのことを説明するなら青八木さんが適任か。

今泉がいけば葦木場が出る。鳴子がとびだせば黒田が追う。
警戒されてるからだ。だが純太は違う。箱根学園に"手嶋なら追走を出さなくても真波で十分だ"と判断させた。

ふむ。今、箱学が一定ペースで走って動いてないのは手嶋さんがとびだしたおかげであると。
ふーむ。ちょっとよく分からないのだが、今泉君や鳴子が出ても山岳に任せておけばいい気はするのだが・・・
追走に出して削り、山岳には単独で山――そしてゴールを目指させようという考えだろうか?

さて、その手嶋さんは箱学の予想に反して頑張っている。
派手でもなく強くもない。だがとにかくしぶとい手嶋さん。
その手嶋さんの走りが段々楽しくなってきた山岳。序盤で手嶋さんが言ってた"ひとつの答え"について質問し出す。
おや、話の途中で飛び出したくせにちゃんと内容覚えてたんですな。それを今になって聞くかよ。

あの時は興味なくって!!

ハッキリ述べる山岳。正直な子だ。
まあ、社交辞令で黙って聞いてもらうより、実力で興味を抱かせて聞いてもらう方が何となく言葉に重みは出そうですけどね。
ともかく、手嶋さんはその質問に答える。その答えはシンプルなものである。

オレは自転車が好きなんだ
いつもそこにいくつく。だから乗る。追う・・・回す・・・助けあう。キセキを信じる。
レースやりだして一番になれねーからやめようと思ったこともあったけど、青八木って男と出会ってそれだけじゃないってわかった。
メガネの小野田ってヤツとデカイ今泉と赤い鳴子ってのに会って、他にもいろんなヤツの走り見て教えられた。
キツくてやめようと思っても、踏みとどまんだ。つながってんだそういういろんなモンが自転車ってので。
て似たようなコト小野田も言ってたか。
そんなオレに1コくらい「一番」があってもいいんじゃねーかって実は密かに思ってる

やはり好きでなければここまでは出来ませんよね。
さてさて、手嶋さんの言う「一番」とは何を意味しているのだろうか?
山頂までは残り4km。坂道は先頭目指して必死に回しているわけだが、手嶋さんが力尽きる前に間に合うのだろうか。
というか、山口君はこれもう置いてかれてたりするんだろうか?どうなんだ!?
こっちの対決も気になるところなんですがねぇ・・・実力差のある2人という意味では先頭の2人と似たシチュエーションですし。

それにしても山岳が前回出してもまだ先頭には出てないんですな。
今回追い抜いた選手もいるし、先に飛び出した山形最上や長野中央の選手の姿はまだ見えない。
それらの選手の活躍はちゃんと描かれることとなるのか・・・気になりますな。



RIDE.326 坂道vs京伏・山口  (2014年 48号)


山岳を追って山での勝負に挑む手嶋さん。
その手嶋さんが飛び出す前に残していったオーダーがある。
まず、指揮権は今泉君にしばらくゆずるということ。そして坂道が追いついた場合のことについてだ。
もしも坂道が包囲網を抜け、手嶋さんを追うために登ろうとしてたらこう伝えてくれ――

3分半――差が3分半の間にチームに追いつけば小野田の足なら先頭まで追いつく――行かせてくれ。
でももしそれをこえるようなら間に合わない。

あの飛び出しの最中に、しっかりそこまでオーダーを残していた手嶋さん。さすがである。
しかし3分半か。去年の巻島さんは3分の差で飛び出して追いついて見せた。
それより30秒のマージンはあるわけだが・・・どうなりますかねぇ。

その坂道は必死に先頭に追いつこうとペダルを回している。
その坂道に置いていかれるまいと必死にペダルを回しているのは山口くん。大変そうだ。

山口くんは坂道が御堂筋君の誘いを断ったことについて驚いている。
小さな体で、押しに弱そうな顔でどうしてそんなことができるんだ、と。
まあ確かに押しには弱い坂道だけど・・・御堂筋君のことはいい人だと思ってたりする子ですからねぇ。これが。

何でオレが前年度の「1」を追っとるんや、山で。
オレは、そもそもオレはスプリンターやぞ御堂筋!!

いや全く。そう叫びたくなる気持ちは分かります。
でも言うのなら今ではなく指示された時に言うべきでしたな。
言ったとしてもオーダーを取り下げてくれたかは分かりませんがね。

無茶なオーダーを出される山口くん。脳裏に浮かぶのは石垣さんの言葉。御堂筋の「良心」になってやれとの言葉。

何で皆オレにムチャぶりばっかするんや!!

泣きが入った山口くん。うん、まあそうですよね。
実際石垣さんの言葉はムチャぶりにも程があると思います。
石垣さんの役割は石垣さんにしかやれないと思いますよ、本当にさ。

御堂筋君のオーダーもムチャぶりである。ただでさえ山が苦手なスプリンターなのに坂道を登りでおさえるなんてできっこない。

オレは――1年の春、石垣さんにスカウトされて自転車始めて。

回想に入る山口くん。
中学ではバスケをやっており、自転車は高校から始めた初心者であった様子。
一番にはなれないし、前に出るのが苦手という山口くん。
そんな山口くんに対し、自転車はチームスポーツであり、カゲの功労者が生きるスポーツなんやと述べる石垣さん。
全員が前に出るのではなく、支える人がいるのも大事ってわけですな。

カゲでいい。カゲでいいと思ってきた。
去年インターハイメンバーに選ばれた時も正直戸惑った。
こんな前線で、インターハイの最前線で戦う器じゃないんや。

自分のことをよく理解している様子の山口くん。
ふうむ、御堂筋君がこの戦いを指示したのは、カゲである山口くんの本質を取り戻させようと考えたためだろうか?
石垣さんの残した言葉という抱え込んだ余計なモノを捨て、カゲに徹しろという考えであろうか・・・
実際、御堂筋君の考えるチームとしてはそのカゲの功労者が多く必要である。
水田君のように前に出たがって主張する子よりも山口くんのような子の方が扱いやすいのかもしれない。

早くも限界を迎える山口くん。このまま置いて行かれることになりそうだが・・・その前に思わず待ってくれと叫んでしまう。

「なんで御堂筋のことはねのけられるんだ」「なんでそんなに登れるんだ」「去年優勝した時の気持ちはどうだった」
「おまえもオレと同じカゲのにおいがする――カゲじゃないのか」

聞きたいことはいくつもあった。が、それらを口にすることは出来なかった山口くん。
待てと言われて素直に待ってしまう坂道に思わず笑みが漏れてしまったようだ。

いいヤツなんやな――1番。小野田

それを理解した山口くん。質問を投げるよりも素直に賛辞を述べることにした様子。協調をはねのけた判断は正しかった、と。

いい勘しとる。

笑顔でそう褒められた坂道。嬉しそうにありがとうございますと返礼。そして名を尋ねる。

山口「3年のヤマや」
坂道「ヤマさん!!

名前を聞き、失礼しますと走り去る坂道でありました。
ふむ、流れはいいのだが・・・そこは正式な名前で名乗りましょうよ山口くん。
これじゃ坂道は石さんとかヤマさんとか京伏の面々の名前を妙な覚え方することとなってしまうじゃないですか!!
ただでさえ小鞠の名前間違えて覚えているというのに。

何はともあれ、山口くんの追走はここまでのようです。お疲れ様でした。
しかし御堂筋君のフェイズ11とは結局何だったのか。1番を抑えるという作戦でそれ以外の意味はなかったのかな?
具体的な作戦もなく坂道を抑えられるとは思えないが・・・ううむ、謎だ。

というわけで、山口くんを振り切った坂道。その後は障害もなくチームに追いつく。
去年に引き続き最後尾から見事に追いついてみせたわけですな。さすがである。
だが今年はまだその先がある。チームに追いつくだけではなく、それよりも前――先頭にまで追いつかないといけない。

坂道の到着は箱学も気付いている。
ならば当初の予定通り、悠人が坂道につくのか・・・と思いきやその予定は変更となりました。

ムダ足を使う必要はない。真波と彼の差はすでに現時点で4分半
仮に今彼がここから先頭を追ったとしても残念ながら追いつかない。

手嶋さんの想定した時間より1分も遅れている坂道。
これでは仕方ない。ゆっくり休むことを勧める総北メンバーたち。
時間が経ち過ぎているし、どんなに全力で回してもせいぜい手嶋さんの背中が見えるか見えないかでありましょう。
チーム内で足を休めていた方が賢い選択と言える。

それでも行くか

笑みを浮かべながら問いかける今泉君。
その笑顔はどうせ行くつもりなんだろうと雄弁に物語っている。
さすがに1年以上この男と一緒に走っていればね。意志を曲げることは無いと理解もしますわ。

飛び出す前に軽量化ということでボトルを1本捨てて行った手嶋さん。
その手嶋さんのために今泉君は自分のボトルを外し、渡してくれと坂道に頼む。
ふむ。坂道お得意のボトル渡し約束でありますな。これはモチベーションも更に上がる。

小野田・・・純太はきっと闘ってる!!

そのように述べる青八木さん。
誰よりも手嶋さんの力になりたい人でしょうが、スプリンターの自分では今の手嶋さんを救いに行くことはできない。
ならばそれを成すことの出来る坂道に想いを託す。自然な話であります。

オレたちの想いも届けろ坂道!!

チームメイトに文字通り背中を押されて発射する坂道。
さてさて、予想よりも遅れてしまったわけですが挽回できるのかどうか・・・
他の相手ならまだしも、山岳ですからなぁ・・・普通に考えれば間に合わない。
いやまあ、坂道の走りを普通と考えたらいけないのは分かってますけどね。

とはいえ普通に追いついたりすると山岳側が情けなく思えてしまうのが実情。
となると――山岳が遅れるだけの要因が必要となりますな。
手嶋さんが張り付いているのはそのためでしょうが、それだけで遅れが生じるものかどうか?
やはり他の学校のクライマーたちの存在がここで重要となるのではないでしょうか。
そろそろ出てきてくれることに期待したいですな。



RIDE.327 雑草の走り  (2014年 49号)


手嶋さん。今から行きます!!

チームメイトの想いも背負い、先頭に追い付くために飛び出す坂道。
その走る姿を見てそれぞれの想いを抱く箱根学園の選手たち。
山岳はここにいないから、去年の坂道を知るのは泉田君一人か。
しかしその泉田君以外の面々の方が坂道を警戒している雰囲気がある。
鏑木にはニセモノだとか煽ってた銅橋からして圧力を感じてるぐらいですからねぇ。

無駄だよその走り。このタイム差では"行く"ことはできても"追いつく"ことはできない。
勝負は2人にゆだねられたな。真波とあの手嶋くん2人に。
もっとも勝負になっていればの話だが・・・!!

坂道の力を知りながらも冷静な泉田君。考えられるマッチョだ。
その頭脳が判断する。予備のボトルを持って行った・・・
つまり坂道の役目は途中でリタイアしかかってるであろう手嶋さんを救う救出係である!と。

まあ、手嶋さんのしぶとさを知らなければそういう発想になるのも無理はないですかな。
いやでもそのしぶとさを十分知ってるはずの古賀さんでも厳しそうな顔してたからなぁ・・・
実際意識がトビそうになってたわけだし、一歩間違えば救出すら間に合わない所でありましたよ。

さて、山頂の山岳ラインまで残り3km。
さすがにここまで来て坂道が追って来る気配がないようでは諦めるしかないですかな。
手嶋さんに言わせればもう残り4kmの時点で捨ててきたとのことですが。

じゃあ勝負です。3km先の、いろは坂の終点。明智平展望台の山岳ラインまで。

ようやく示されたリザルトライン。そこまで手嶋さんの意地は、根性は、集中力は持つのか。
相手に不足があるのだったら今の内に言っておけよと言い出す手嶋さん。
それに対し山岳。最初の頃に十分言いましたとのこと。うん、そうだったね。

でも今はこう思ってます!
初めてなんですよ手嶋さんみたいなタイプは。たいていの人は一、二度ひきちぎればあきらめる。
踏まれても踏まれてもあきらめない!!まるで夏の雑草!!
だからこう思ってます。本気で走っとかないともったいないって!!

華やかではないが強い夏の雑草。
ある意味適した表現であるかもしれませんな。
雑草などという草はない!!と名言で返して欲しいところであったが、まあこの小さいコマで言われてもアレですかな。

それはさておき、文字通りギアを上げる山岳
登りでギアを上げての加速。昨年のインターハイ最終日で見せたまさしく本気の走り!!
どこまでギアを上げきるのかは分からないが、ついにこれを出してきましたかぁ。

いろは坂の中でも斜度のキツイ所でギアを上げる山岳。さすがの天性のクライマーである。
だがその山岳にしっかり付いて行っている手嶋さんもやはり凄い。
観客の中にもついにその感想を抱く者が現れ出した。何と・・・!?

敵味方観客問わずに見下される特性を持つ手嶋さんが段々と認められ始めている。
嬉しいことと感じるべきなのか、手嶋さん固有のオーラが弱まっている証拠と考えるべきなのか。
まあさすがにそんな固有オーラは本人としても有難くはないから弱まっても問題はないか!!

実際のところ、かなり苦しい手嶋さん。
キツ過ぎて顔を上げることが出来ない。前を走る山岳の車輪を追うので手一杯である。

離れるな!!頼むから離れるな車輪!!
勝負どころまで――ライン際まで付いていかなきゃ自転車は勝負にならない。
脚砕けてもいい。意識トンでもいい。のこり3km。ラインをこえるまでは頼むから動いてくれ体ァ!!

必死に自身の体に懇願する手嶋さん。
まるで最終日のような走りですが実際に砕けてもらっては困りますよ。まだ1日目ですよ。
実はリタイアしたら2日目は別の選手が出られる特別措置があるとか・・・!?
古賀さんの出番が出来そうでそれはそれで面白い。
まあその場合、去年走り出せないぐらいの体調不良だったのに黙ってた田所さんの罪が大きくなってしまうわけですがね。
という済んだことはさておき――

だけど、冷静なオレがもう1人いてこういうんだ。
「インターハイ走ってるんだな」って。「手嶋純太――3年前、一度ロードをやめてあきらめたおまえが」
「インターハイの一番華やかな山岳ステージでトップ争ってんだな」って!!
一度くらいあってもいいだろ。無冠のオレに"勝ち"ってタイトルがあっても!!

そのように考えている冷静な方の手嶋さん。れ、冷静な考えなのかコレ?
むしろもっと大胆な考え方をしているように伺えるのですが・・・
冷静に考えたら別に体壊れるとこまで行かなくても行けるんじゃない?ってことでしょうか。
それなら1日目で無茶しても分かりますな。心のどこかで冷静に判断してるわけだ。リタイアまではいかない!はず!!と。

その辺りの考えはよく分からない。
ただハッキリしていることはある。どうやら坂道が来ないと分かってからの方が走りにキレがあるらしい。
それは手嶋さんも自覚していることらしいが、何ででしょうかね。
希望は捨てたなんて言ってたのに。希望がないというのに。

オレがやるしかないって思ったからか――皆の想いを背負ったからか――
"希望がない"からかもしれないな・・・希望がないなら一歩一歩進むしかねぇ。自分の足で――
それってオレがずっとやってきたことだ!!
この数km先で"努力"が――実る。そんな瞬間を体験するかもしれない

坂道が来るかもしれないという希望とは別種の希望――期待を抱いた様子の手嶋さん。
自分の足で努力を実らせる。それが本当に出来たのなら・・・嬉しさは格別でありましょうな。それはもう。

山岳「本っ当にロードって楽しいですね!!手嶋さん!!
手嶋「ああそうだな。楽しいよ真波

ようやく山岳の言葉に同意を示す手嶋さん。
登りとか限定的な場面はさておき、自転車全般を指されたのなら同意せざるを得ませんわな。
いやそれにしても、ここに来て山岳が楽しそうになっているなぁ。良いことです。

しかしその楽しそうな2人に不穏な気配。
これは・・・メカトラブルか!?
思いっきり水を差すような出来事になりそうで嫌ですなぁ。
だがこれはどっちのトラブルだろうか?山岳の方であれば坂道が追いつくフラグとなりそうであるが・・・?
実はどちらでもない第三者のメカというオチはないだろうか。
この長野中央の粟頭弓親が不運を吸い取ってやったぜ!!とかそういう。いや流石にその扱いは可哀想か?
ここまですっかり出番がないのも可哀想っちゃ可哀想ですけどね。一体今どの辺りにいるのだろうか。



RIDE.328 「チャンス」をさがせ!!  (2014年 50号)


山は大きく気高く美しい。
古来より人は山を見上げ魅了され、その頂を目指し何度も登りつづけてきた。
それは今も変わらない。人は頂へつづく道を登る。
自らの力で――黙々と――その美しさを誰よりも早く手に入れるために

黙々かどうかはさておき、誰よりも早く手に入れるために走っているのは間違いありませんな。
山岳ラインまでのこり2kmを切り、いよいよゴールが迫って来た。
ここまで来ても頑張って山岳に付いて行っている手嶋さん。
ついに、ギリギリまで1人で逃げ切っていた先頭の選手をとらえる。
今大会、山岳最右翼と言われた山形最上の3年、川原群平だ!!

ようやく出て来た川原群平。しかしあっさり追い越される。
淡い感じで妙な色気があると思えたキャラだったのだが・・・え?もう出番終わり!?え!?

ギリギリでトップを抜く。この計算された走りに驚いている観客と手嶋さん。
観客の中には天然だから野性のカンだろと述べる者もいますが・・・当たってそうですな。

さて、抜かれてしまい、追うことの出来ない川原さん。その代わりに言葉だけ残そうとしている様子。
言葉を送られる対象は、全くのノーマークだった総北5番の手嶋さん。
1番である坂道さえ押さえればと思っていたら、全くのノーマークの選手に追い越された。そのショックが大きいようですな。
それにしても山岳の方は押さえなくても大丈夫とか考えたのだろうか・・・?

インターハイには2つの相反する魔物がいるという。
ひとつは大空舞う"鳥"を"石コロ"に変えちまう魔物――
もうひとつはただの"石コロ"を空にはばたかせる魔物――
インターハイは特別なレースだ。意思。重責。緊張。思惑がまざりあう。そんな環境の中で普段通りの動きができる選手は少ない。
もし2つ目の魔物を味方にできたら――恐れるものは何もないだろう。

ふむ。手嶋さんはその2つめの魔物を味方にしたと言いたいのですかな?
石コロという程ではないが、去年の今泉君も3日目で大きく覚醒してましたが、あれに近いものでしょうか?
レース中に成長する。総北はそういう経験をしている選手がいるわけだし、今年もと考えれば違和感はない。はず。

ともあれ、手嶋さんは唯一山岳とゴールを争える位置にいる。それは確かなことである。

「チャンス」だ。「チャンス」だ。「チャンス」を探せ!!
のこり1.5km!!1500m!!真波のずっとうしろじゃ勝てない!!
抜かなきゃいけない。どこかで。途中か、ライン前か、今か!!少しのミスも見逃すな!!

集中力を高める手嶋さん。
山岳がダンシングするならば自分も負けじとダンシングで追いつこうとする。
が、タイヤを滑らせたりと危うい手嶋さん。ミスを探すつもりがミスしてどうする。どわっちょ。

そんなことをしている内に、テンションが上がってる山岳は更にギアを上げだす。
ふうむ、去年の様に最高の所まで一気に上げないのはまだ1日目だしと温存しているからだろうか?
その辺の計算はあまりできなさそうだが・・・テンションと野性のカンでやってそうだな。

チャンスじゃなくてピンチだよってな状態に陥る手嶋さん。
それでも必死に喰らい付こうとすれば喰らい付けるのだから凄い。魔物の力凄い。
そうこうしているうちに残り1kmを切ってしまったぞ!!ラインが近い!!

さがせ。「チャンス」さがせ!!
あと1km!!一生の内たったの1km!!獲る!!「一」を!!すぐそこまできてるんだ!!
脚が限界。手の平何回もつってる。握力ねェ!!
でもそんなのだいぶ前からだ!!信じろ!!自分を!!キセキを!!

必死に、がむしゃらに走る手嶋さん。
その全力の姿勢に感銘を受ける観客。ようやくその感想を抱かせるにまで至ったか・・・
いくらなんでもこの期に及んで凡庸な走りとか言い出せるはずもないですわなぁ。うむ。

いつの間にか観客も手嶋純太の名前を覚えてている様子。
ゴールまであとわずかというところでその名が口にされる。手嶋ァ!!純太ァ!!

マジか。インターハイできこえてるよ。オレの名前が。キセキかよ。パワーでるわ

気力を、パワーを貰った手嶋さん。のこり600mを必死の形相で駆け登る。いろは坂の頂上まであと僅か。
その中で、のこり500mというところで加速する山岳。そうはさせじと追う手嶋さん。
それを確認し、更にギアを上げて加速しようとする山岳。であったが・・・

えっ――しまっ・・・チェーンが!!

どうやらギアチェンジの結果、チェーンが外れてしまった様子。
ふうむ、登りでのギアチェンジ何てあまり経験ないけど、負荷がやっぱりあるんですかねぇ。
それにしたって、このタイミングでチェーンが外れるとは何という不運か・・・
メカトラブルとしては軽傷であるが、すぐに走れるようにはならないのは間違いない。つまりこれは・・・チャンスだ!!

失速した山岳を置き去りにして前に出る手嶋さん。
のこり400m。抜かれた山岳にはさすがに余裕の色は見られない。
ううむ、メカトラブルという結果ではありますが・・・これは本当に手嶋さんが山を獲りそうな流れでありますよ・・・!!

さすがに外れたチェーンを即座に治す方法があるとは思えない。
自転車を抱えて400mダッシュをする山岳の図もちょっと思いつかない。
となれば勝負は決まったも同然でありましょうが・・・そうなると坂道はどうなるのだろうか?
泉田君が考えたように、ゴールした後の手嶋さんを助ける救急係の役割なのでありましょうか?
まさかこのタイミングで追いつくなんてことはないと思うが。
いっそのこと追いついた勢いで手嶋さんを追い抜いて山岳を獲ってしまえば・・・いや。それはさすがに。いやいや。

坂道も気になるが、もっと気になるのは長野中央、アルプスの山守の名を継ぐ男、粟頭弓親
手嶋さんたちに追い抜かれた描写のあった大観寺や川原さんと違い、この男の描写はなかった。はずである。
実は気付かないうちにこっそり抜かれている描写でもあったのかもしれないが・・・
何にしてもそんな小さな扱いだと色々と可哀想な気がしてくる。盛大に名乗ったというのにさ!!
まあ、平坦でも福岡城西の大濠という存在がいますが・・・彼ですら抜かれた描写はあったからなぁ・・・
ああ、追い上げて来た坂道に抜かれる時にコメントを残す可能性はあるか!!
そのぐらいの出番は期待してあげたいところであります。



弱虫ペダル 39巻


RIDE.329 ラインまで400m  (2014年 51号)


山岳ラインまでのこり400mというところでよもやのトラブル。
これがむしろもっと早く起きていれば挽回の可能性もあっただろうが・・・ううむ。
やはり登りでのギアチェンジは負荷がかかりすぎたようですな。山岳の走りの弱点と言えましょうか。

チェーンが外れた山岳。当然失速する。その山岳を追い抜く手嶋さん。おおお!!

チャンスだ!!抜いた。抜けた。あの真波を。のこり400mで!!
なんで失速した!?いやどうでもいい!!今は目の前!!目の前!!目の前だ!!
見えた。明智平レストハウスの赤い屋根!!今日の山岳ラインがある場所だ!!もうすぐ届く!!

我慢に我慢を重ね、思いもよらぬチャンスを手に入れた手嶋さん。
さすがにこの残り距離で挽回されるようなことはありますまい。このままいけるはず・・・!!

全身の毛が逆立つ。トリハダが立つ。
今、オレは山岳ラインの一番近くにいる。あの場所に一番でたどり着こうとしてる。
夢だった「一番」。こんな感触が「一番」――!!
こんだけ登ってきたのに。"無理"してきたのに。脚がうそみてェに軽い!!

メンタルによる身体への影響は大きいですな。
そりゃきゅんっとなりますよ。いや脚がね。脚の音ですよ?きゅんきゅんッ。

たぶんこの景色オレ、一生忘れない
青八木――たぶんおまえを驚かす結果が出る。行くぜ青八木!!

涙目になってそんなことを考える手嶋さん。まさに感無量。
ゴールする前にそんなことを考えるのは不吉であるが、今までのことを考えれば仕方がありますまい。
と思ったが、やはりその行動がフラグになったのか・・・余計な言葉を耳にしてしまう。
観客の声。「かまうな」「ふり返るな」「そのまま」という言葉。
その言葉のせいでむしろ振り返ってしまう手嶋さんでありました。チラッ。

なんだろうか・・・まさかここで追い上げてくる選手が!?
よもやの粟頭弓親・・・いや、情報提供のおかげで、途中で追い抜かれていることは既に確認されている。
まあ、そこから追いついてきた可能性もなくはないが・・・それなら坂道の方が可能性ありそうだなぁ。
振り返ればあの笑顔がそこにいた!!合宿の時を思い出しそうで手嶋さん的にはそれもどうだろうか。

それはさておき、チェーンの外れた山岳。自転車を降りて、急いではめ直す。
やはり走りながら瞬時にチェーンをはめ直すような裏技は存在しなかったか。

ここでレース中のメカトラについて解説。
明確なルールはないが、できる範囲で救済されるのが自転車レースのメカトラ。
パンクの場合はニュートラルカーから予備のホイールが渡され、車のうしろに風よけになって集団まで連れ戻してくれる。

でもチェーンは自分で直すしかない!!
ほんの数十秒だけどそれが明暗を分ける場合もある。ささいな原因でおこる究極のアンラッキーだ。

ほう。そのような措置が・・・いや、待ってくれ。確かに直すのは自力だけど、風よけはチェーン外れたならあって良いのでは?
わざと外して楽しようとする選手が出ることも考慮されているのだろうか?
明確なルールがないだけにその辺りはさすがに疑問が残りますな。
とりあえず観客がメカトラ救助に駆けつけるのは有りのようですね。選手のバイクに触るチャンスだ!!なんて不謹慎なのもいそうだ。

ロードレースはフェアに闘うスポーツと言われている。
メカトラに気づいたら相手を待ってやることもあったりするらしい。ほう。
だが、それは明文化されているルールではないため、気づかない・・・もしくは気づかなかったと本人が言えば何も問われない。
なるほどねぇ。それで周りの観客は振り返らず、かまわずそのまま行けとか言ってたわけですか。

どうにかチェーンをはめ直して追走を開始する山岳。
しかしそこでロスした時間は15秒から20秒ほど。のこり400mでそれがひっくり返せる程、ロードレースは甘くない!!

珍しく焦りに満ちた山岳の表情。
しかしその表情は次の瞬間には驚きの表情に変わる。
ゴールまでのこり300mの地点に・・・その人はいた。止まっていた

手嶋・・・さん。待っ・・・てくれた・・・のか。オレ・・・を。気づいて・・・
のこり300mなのに――もう目の前に最後のラインが見えてるのに。総北が山のゼッケンを手にするチャンスなのに。
そのまま行っても誰もとがめないっていうのに――!!

まさかまさか。このようなことになるとは・・・いや、予想だにしませんでしたよ。
そりゃ山岳も問いたくなる。何でですか、と。

・・・ハ・・・我ながらバカじゃないかって思ってるよ。景色よかったんでな!!
ティーブレイクしてたんだよ!!

何とも言えない表情でそう答える手嶋さん。
うーむ、ここでの停止。チームに対しては確実にマイナスだし、自身にとっても悲願の一番を失くしかねない行為である。
だが、それが分かっていながらも止まってしまう。バカげた行為だと思いながらも止まってしまう。
悔しさと悩んだ様子が見て取れるその表情で言われたのでは・・・何も言えませんなぁ・・・

もっ回つかんでみせるさ自力で。チャンスを!!

確かに。勝てばそれで問題は無い。
それが出来るかどうかなんて考える必要はもうありますまい。とにかくもう一度チャンスを掴み!勝つ!!

山岳「全身全霊で走ります!!
手嶋「かかってこいよ真波!!

この行為により、立ち位置も大きく逆転した感じの受け答えを行う2人。
うむ、精神的立ち位置としては上に行けた感じがしますな。
自責の念もありそうなので手嶋さんとしてはその辺り微妙かもしれませんが。

思わぬメカトラ。思わぬ立ち止まり。
のこり400mで思わぬことが相次ぎました。さてさてここからのこり300mで何が起きるのか。
さすがにもう一度メカトラとかそんなことはないでしょうが・・・すんなり決まるかどうか。

手嶋さんの停止に関しては賛否両論出そうな感じですなぁ。
格好良くはあったが・・・チームスポーツである以上、その行為は疑問視されても仕方がない。
とはいえまだ初日の山である。獲られてもアドバンテージを譲るだけで勝負が決するわけではない。
さすがに手嶋さんも最後のゴールが目前であれば待たなかったでしょうしね。おそらく、ですが。

少なくとも山岳に、この人は凄いと思わせることには成功した様子。
自転車が好きという言葉が表面通りのものではないと思わせたはずであります。
そのリスペクトが今後有効に働く・・・ことになるといいが。さてさてどうなりますか。

どうでもいいが、メカトラで待ってくれる展開って今までありましたかなぁ。
落車でチェーンが外れた坂道は最下位になるまで置いて行かれていた。観客も手伝ってはくれなかった。
予選で鏑木がパンクした時、他のチームは総北を落とすチャンスだと張り切っていた。うーむ。
あ、巻島さんがパンクした時。東堂さんはちゃんと立ち止まって声をかけてくれていましたな!!
うむ、やはり東堂さんは紳士であるということですな。巻島さん相手だったからってこともありそうだが・・・まあ、良し!!



RIDE.330 2つの願い  (2014年 52号)


残り250m。改めてのラストスパート
さすがにこの距離で再度のトラブルはありますまい。最期の勝負になるのは間違いない。
全開で踏む両者。
やはりコース取りなどの巧さも考えれば山岳有利であろうか。

わずかに前に出る山岳。
しかしコースにはみ出た木の枝に突っ込むことを厭わぬ走りでインを取り抜き返す手嶋さん。
この少ない距離でしっかり抜き返して見せるとは・・・手嶋さんの成長は半端じゃないようですな。
これも川原群平がいう所の魔物って奴の仕業なのか。

山頂リザルトまで残り150m。両校の応援団も気合を入れて声援を送っている。
箱根の方は自転車部や学校の応援団なんだろうが、総北の方はなんだろう。千葉ピーナッツ・・・?
まあそれはさておいて。

感覚ねェ。しびれてる感覚もさっきなくなった。
たぶんヤバイ。ヤバイけど動いてる。ちゃんと目標に向かってオレの体。上等だよ!!あと150だ!!
行けぇ!!オレは信じてる。キセキを信じる!!

奇跡というのであれば、先のメカトラブルこそそうであったかもしれない。
しかしそれを不意にしておきながらも更なる奇跡を願う手嶋さん。
自身の頑張りが奇跡を起こすのだと信じているのであれば、頷けないこともないか?

一方の山岳はとにかく全開。
昨年のインターハイの負けを長く引きずった山岳であるだけに、任された勝負所で再び負けるわけにはいかない。

どんな時も一生に一度しかない!!結果は一度しか出ない!!だから全開!!そうでしょ東堂さん。

ここで少し回想。
東堂さんは箱根学園の山のエースナンバーである3番を山岳に譲る。
山神の称号は譲りきれなかったが、番号だけは譲ろうって話ですかね。
そのエースナンバーは、一時期沈んでいた頃の山岳には重いものであったかもしれない。
しかし従来の性格を取り戻しつつあった頃の山岳であれば・・・受け入れる。重さも13という数字のゲンの悪さもはねのける!!

はねのけます!!

必死の形相を見せる山岳。1日目でこの表情になるとはなぁ。
山岳に言わせれば"何だって簡単じゃない"ということになるわけですが、いやはや全く。
手嶋さんがここまで頑張ることも、メカトラで止まることも予想外。読者にとってすら予想外でした。

終わったと思った――でも――まだ走れる。
そして簡単じゃない。だから全力でやるんだ!!

普段は飄々とした感じで不思議ちゃん呼ばわりされる山岳。
しかし勝負に関しては譲れない熱いものを抱いていたりする。
天才的ではあるが、やはり最後はひたすらな全力が頼りとなる。その泥臭さも好感が持てる。
しかし泥臭さと全力全開なら手嶋さんに一日の長がある。

つかむんだ夢を!!今がチャンスなんだ!!たった1回の!!

高校最後のインターハイ。全力で勝負できる1日目の山岳。
これが獲れれば大きい。まさに夢のような大きさである。誰もがその名を記憶することとなりましょう。
それを手にするために走る手嶋さん。
それをはねのけるため走る山岳。
ゴールまでは残りわずか。そしてついに・・・ゴール。
同着ではない。片方が腕を上げ空を仰ぐ。片方は顔を地へと向けている。

2つの願い。しかし叶うのはどちらかひとつ。
クライマーの勝負は残酷である。たさそれゆえ、一片のくもりなく勝者は輝く

勝利して雄叫びをあげる山岳。これもなかなかに珍しい。
それだけギリギリであり、嬉しかったということなのでしょうな。
アナウンスでは箱根学園の新しい山神という言葉が出ていますが、はてさてそれは名乗っていいものかどうか。

更なる奇跡は起こせなかった手嶋さん。
しかし速報を聞いた人たちはどう思うだろうか。
その差が僅かであることを知れば侮っていたことを反省するのではなかろうか。
それぞれの反応が気になるところであります。

それにしても坂道は本当に間に合わなかったんですな。
メカトラによる立ち止まりも数十秒程度だったしなぁ。もう少し手こずっていれば間に合ったかもしれないが・・・
勝負にはならなくても追いつくことは出来るかもしれないみたいな話だったのだが・・・うーむ?
その辺りがどうなったの知りたいところですな。



RIDE.331 空を仰ぐ  (2015年 1号)


インターハイ1日目の山岳ゼッケンが決まった。
いろは坂を制したのは箱根学園、ゼッケン13番。新しい山神、真波山岳!!雄叫ぶ!!

山岳が叫ぶのは同じ箱学の部員でも初めて見るという。それはそうでしょうなぁ。
それだけこの勝負は山岳にとってもギリギリのものだったということだ。

やりましたよ東堂さん。はねのけました

空を仰ぎ報告する山岳。
やはり勝利したクライマーに空はよく似合う。山頂に一番早く駆け上がった者に似合う光景である。

一方、届かなかった手嶋さんは顔を地へと向けている。
僅かの差が正に天地の差といったところでありましょうか。
ラインの数m前までは並んでいたのに・・・かわされた。

ギリギリの瀬戸際で全部出しつくしてなおもうひと踏みできるのがすげぇな・・・才能――ってヤツか・・・
すげえよ真波。さすがに・・・こんなん相手じゃ"努力"じゃどうもこうもならんわ。

ゴールを通り過ぎたことで出しすぎた反動が出ているのか、気弱になっている手嶋さん。よろしくない。
しかしそんな手嶋さんに山岳はこう述べる。

手嶋さん。ありがとうございました!!まってくれて。

お礼言っちゃいましたか山岳。いやまあ、言いたくなるのはわからないでもないですが。
そのように言われても、礼を言われる筋合いはないと返すしかないですわなぁ。

ただ・・・どんなヤツでも真面目に自転車やってつヤツは、オレは自転車の上では平等であってほしいと思ってるだけだ
そう思ったら勝手にブレーキかけてた。てな・・・"平等"とか甘いこというから凡人だって言われんだよな。

この辺りの考え方は難しい所ですな。
そういう運不運も含めるのを平等と考えるか、排除するのを平等と考えるか。
自転車が好きだからこそトラブルによって明暗が分かれるのは好きじゃない。要するにそういうことなんでしょうかね。
なので、沈んだ様子の手嶋さんに言葉を投げかける山岳。

手嶋さん。あなたは強かった!
オレのアタックにもついてきた。何度も。このインターハイで。
フツウ待ちません。のこり300mで。すぐ直るメカトラだ。運が悪かったで片づけられる。
ついてなかった。それだけです。誰だって勝利は欲しい。目の前にある!!クライマーの勲章が!!
なのに止まった!!誰にもできないことをできる人は強い人です!!

確かに誰にでもできることではありませんわなぁ。
持ち上げられるに足るだけのことを成し遂げたと思いますよ。本当に。

その手嶋さんの健闘は速報として後続の面々に伝わる。
車中では手嶋さんが僅かな差で2位を取ったということで沸き返っている。ひょっとしなくても凄いことですよ。
しかしメカトラの話がなまじあるせいで、そのおかげで追いつけたのではとか言われるのはアレですなぁ。
それでも手嶋さんの活躍を信じて疑わず、感動の涙を流す杉元。いいヤツに成長したなぁ・・・本当。
古賀さんの驚きと喜びの入り混じった顔も何とも言えない。

そしてレース中の選手にも結果は伝えられる。
山頂を取ったことを喜ぶ箱学。ヤバイ秒差ではあるが取ったことには違いない。

よくやった真波!!いや・・・ほめるべきは彼かもしれないな。よくついていけたよ。あの平凡な走りで、手嶋くん。

泉田君に言わせれば山岳が遊んだことで手嶋さんがついていけたのだろうとのこと。
うーむ、それだと他の学校のクライマーは遊びの山岳に全員敗れたことになるわけであるが・・・いや、それはあり得るか?
この結果を見たら考えを改めてくるかと思ったのだが、相変わらずな感じですなぁ。ううむ。

しかし敗れたことを知った総北の方は手嶋さんすげーと盛り上がっている様子。
甘く見てしまっていただけにこの結果は・・・予想を遥かに超えたものでありましょうな。
鏑木もバカにしてすいませんでした!!と謝っておる。もっと謝れ。

今すぐここから飛びだしてオレがぶわーってゴール獲りたいくらいです!!

そういうのはいいから謝っておきなさいな鏑木よ。
古賀さんとの戦いを目の当たりにしておきながらその侮りは如何なものかと思いますよ。
とはいえ、登りで山岳と競るなんて確かに読者としても想像できなかったわけではありますが。

有言実行。努力の男、手嶋純太
全力を絞りきって見事な活躍を見せてくれました。チームも勢い付きました。
しかしその代償として倒れこもうとしている手嶋さん。
ここで横になったらもう起き上がれない。リタイアすることとなる。
おやおや、さすがに1日目でリタイアはまずい。高めた仲間の士気も一気に吹き飛んでしまう。
うーむ、やはり1日目で無理する必要なかったのではなかろうか・・・そのように思えてしまう。

しかしここで後ろから飛びこんできたのが坂道。
倒れそうになる手嶋さんと道路の間に身体を差し込み、倒れるのを止める。
ふうむ。ここで追いついて来ましたか!!
泉田君が言った通り、リタイアしかかっている手嶋さんの救護役としての登場となったわけでありますな。

今泉君と鳴子から預かったボトルを渡す坂道。
2本も増えてどこにセットするのだろうと思ったらジャージにボトル入るんですな。

もはや走れないくらいに消耗した手嶋さん。
だが総北は支え合うチームである。去年田所さんを復帰させ、それを体現してみせた坂道。
その坂道が一緒に走ってくれる。ならばまだまだいけるはずである。
頑張ってこの後の2日も走りぬいて欲しいものでございます。

さて、色々とありましたが結局平坦に続き、山を制した箱学。
このまま1日目のゴールも獲得するのだろうか?
山よりも平坦よりも他校への影響は大きそうな初日のトップゴール。
さてさてここはどのような争いとなりましょうか。今年は御堂筋君は狙ってくるのかどうか。注目です。



RIDE.332 支える者たち  (2015年 2+3号)


際どくはあったが、ともかく山を制した箱根学園。
これで今年のインハイ1日目の平坦と山を両方取ったわけであり、上々の結果と言える。
更に1日目のゴールまで取れれば順風満帆。今年の優勝は疑いないとまで言われそうなこととなりそうです。

止まるところを知らない箱根学園の快進撃
ゴールを目指して加速してきた後続の"本隊"が前を走るクライマー、富士川の大観寺を一気に抜き去る。
うーむ、この大観寺はちゃんと抜かれる描写があっていいですなぁ。粟頭弓親とは大違いである。
やはり決め台詞があるかどうかの差なのだろうか?キャラを印象付けるのも大変だ!!

悠人を先頭にして坂を駆け登る箱学。
総北もエースである今泉君が頑張って引っ張っている。
この辺りで既に体力配分に差がついてそうな気もするが、まあ仕方ないですな。

スプリンター新開隼人の弟はクライマー。
その存在は観客の間でも評判となっている。どことなく似てるというか顔つきは本当にそっくりですよね。
体格こそクライマーである故か華奢な感じであるが、食ってる姿は間違いなく新開の血筋!!そういうところはやはり似てるよ。

さて、前に山岳が飛びだしたときに、山を獲ってそのままゴールまで行かれるのではという危惧がされておりました。
しかしどうやら今年の1日目のコースは山岳ラインが終わってからが長い様子。
一か所の給水所をへてゴールまではまだ10km以上の距離があるのだそうな。ほほう。
リタイアしかけた手嶋さんとしては厳しいお話でありますな。

この登りで総北に敵わないかもしれないという恐怖心を与えようと考えている泉田君。
確かにクライマー不在の状態でこの登り。人数差もあり、圧倒的に有利なのは箱学と言えましょう。
しかし今の総北がその程度で折れるようなことはない。メンタルのブレやすい鏑木ですらそう思っている。

手嶋さんに熱いバイブレーションをもらった!!オレたちは絶対に退かない!!

目に見える結果こそ得ることは出来なかったがチームに与えた影響はやはり大きかった手嶋さんの活躍。
これでリタイアしていたらせっかくの気分が冷え込んでいたかもしれない。坂道の飛びだしも正しかったわけですな。うむ。

さて、給水所があるということはそこで補給の準備をしないといけない。
のであるのだが、車で先回りをしようとしていた総北サポートチームが渋滞に捕まって動けずにいる
普段は一方通行の道が2本あるのだが、片方をレースで使っている。
そのため残りの1本を交互通行にて車両を走らせているそうなのだが・・・どうも事故か何かが起きた様子。
下りの車両が降りてこず、登りの車両は動かない。完全に立ち往生って感じだ。これは困りましたな・・・

選手たちは給水所で水分や補給食をもらう前提で走ってる。皆使いきって給水所に到着する。
この暑さの中で補給食はまだしも水分が得られないのは致命的である。
一昨年の待宮もそれで走れなくなり涙しておりましたしなぁ。給水は本当大事であります。
さっきの手嶋さんの頑張りで盛り上がっているチームに水を差すわけにはいけない。
水はいるけど水を差すわけにはいけない。むう、この感想の流れが水を差してる気がしないでもないが・・・まあそれはそれ。

選手の走りを少しでもストレスなくサポートする。
そのために走ってでも物資を運ばないといけない。が、さすがにこれからだとダッシュしても選手の方が先についてしまうようだ。

だが・・・自転車なら間に合う!!選手用のスペアバイク!!

本来はマシントラブルがあった時の為に用意されているのであろう選手用のスペアバイク。
しかし今、車中にはこの自転車に乗れる男たちがいる。ならば使わない手は無い!!
サコッシュに補給を目一杯詰め込み、自転車を出す。
なるほど。自転車ならば選手と条件は同じ。間に合う可能性は高い。特に古賀さんならば・・・いや、それだけではない!!

杉元ぉ!!6人分の荷物は1人じゃ運べない。
ウォーミングアップをやってる時間はない!!全開走だ!!それでも、ついてこれるかオレに!!

走るのは古賀さんだけではない。杉元もまたスペアバイクに乗り、荷物を背負って全開で走る!!
うーむ、このスペアバイクは熱い!!
チームを、皆を支える7人目になると誓った杉元。その杉元が正に今チームのために走っている。
同じくインターハイのコースでこそないものの、同じ時間に総北のメンバーたちと同じように走っている古賀さん。
事故は望ましくないけど、こういう展開が見られたのは感無量でありますなぁ・・・
しかし事故が解消し、下り車両が突然やってきたらどうしようか・・・いや、それはさすがに考えたくはないな。

思わぬスペアバイク展開に熱くなりました。
そしていよいよインターハイ1日目の最終局面。
オールラウンダーに転向した鳴子の見せ場となりそうな雰囲気ですが、さてさてどうなりますか。



RIDE.333 箱根学園のエースアシスト  (2015年 4+5号)


速度が上がる!!ピリピリしてる!!・・・すげェ!!
始まるのか。もう、ここから!!インターハイのゴール争いが!!

山頂を獲るために出たクライマーとの合流よりも早く始まるゴール争い。
インターハイ初体験の鏑木であってもその気配は肌で感じることが出来る。
まあ鏑木の場合は事前にタイミングとか教えてても覚えないでしょうし、肌で感じてもらうのが一番ですわな。
と思ってたらオレがゴール獲りに行っていいんすか!!とか言い出したぞ。相変わらずこの子は・・・バカだ。ホワイ!?じゃない。

すっかり鏑木の面倒役が板についた様子の青八木さん。
この相手には黙ったままではいられないし、大変ですなぁ。無口解消の練習にはいいかもしれませんが。

ともあれ、初日のゴールを狙って箱学が動き出す。
まず飛び出すのはエースナンバー11をつけた葦木場。でかい!!
そしてそのでかい葦木場を引くのはゼッケン12番・・・黒田さんだ!!

1日目のフィナーレをクリスマスツリーみたいに華やかに飾ると述べる黒田さん。
それに対し、正月飾りの方が華やかだと思うよと返す葦木場。うむ、そうか。
この発言に対していつもの黒田さんのツッコミがないのは納得したからか上手いツッコミが思いつかなかったからなのか。
そういった話はさておいて回想に突入する。

黒田さんと泉田君は小さい頃からの知り合いで友人である。
しかし黒田さんは出会った頃は泉田君のことを嫌っていたという。

まじめでさ、注意ばっかオレされてさ、そのくせ要領悪いし冗談通じねーし。ドンくせーって正直思ってた。
オレは要領よくてスポーツ万能。敵わねーくせにって思ってた・・・
だけど時がたって今は立場は逆転。おまえはインターハイに選ばれ活躍。オレは選抜敗退――

コツコツ努力を重ねてきたまじめさ。それが泉田君の取り柄である。
今ではそんな泉田君のことをリスペクトしていると述べる黒田さん。
だからこそ、泉田君がクライマーからエースアシストへ転向しないかと持ちかけられたら断るようなこともない。

スプリンターやれっつったらやる。ボトル運びやれっつったらやるよ。コツコツごまかさずに努力してな。
役割あんだったらやらしてくれ塔一郎!!オレはインターハイを走りたい!!
やってみせるよ。オレは本来ポテンシャルは高い方なんだ。

先の3年生追い出しライドで荒北さんと競った時からそうなるのではないかと思っていたエースアシスト黒田さん。
正式にそうあろうと決めたのはこのタイミングだったのですな。
しかしどうやらこの役割は適任だったらしい。
今シーズンに入って葦木場・黒田の2人で出たレースは8戦8勝。
頭のいい黒田さんは敵を良く見て絶妙なタイミングで葦木場を出してくれるらしい。なるほどねぇ。
確かにアシスト役にはそういう計算が出来る人が最適なのかもしれない。
翻って前年の荒北さんはそういう計算は・・・か、感覚で出来る人だったよ、うん。

黒田(塔一郎――オレをエースアシストに選んだその采配を正解だったって言わせてやるよ!!)
泉田(たのんだよ、雪成!!)

飛びだしたために距離は空いたが、心で声を掛けあう2人。
ついでに泉田君は声にも出したりしてますけどね。アッブユキ!!ブキィィ!!妙な略し方するなや。

飛びだした箱学に対し、未だ4人で走っている総北。
山岳ラインも越えたし、仕掛けるなら今である。
狙うならエースである今泉君が出る所であるが、1人ではどんなに強くても勝つことはできない。

だから用意したよ。時間かけてな。このゴール前に最速の男を!!

その言葉と共に今泉君の前に出るのは鳴子!!鏑木もビックリな展開だ!お前が真っ先に驚くのかよ。
まあ、バカな子は置いておいて・・・泉田君はいち早く理解する。鳴子がオールラウンダーに転向したことに!!

見とけよハコガク・・・トンネルぬけて下り入ったら一瞬で追いついたる・・・!!
鳴子劇場第二幕2年生編開幕や!!

ようやく回ってきた新生鳴子の出番。
下りもあることだし、スプリンターとしての経験も大いに活かせるこの場面。活躍に期待できますな。

奇しくもクライマーから転向した男とスプリンターから転向した男の対決。
下りでは圧倒的に鳴子優位でありましょうが、この先どうなるか。
エースを発射する計算力では分が悪いが・・・まあ、そっちは今泉君が判断すればいい話か。
何にせよ今泉・鳴子のコンビでの走りがようやく見られるわけで喜ばしい限りである。
考えてみると双方共に凸凹コンビなのか。奇妙な共通点が見受けられますなぁ。ううむ。



RIDE.334 スーパーピラピラダウンヒル!!  (2015年 6号)


今年のインターハイが始まってからようやくの出番となった鳴子。
見せ場がやってきたことに心躍らせ、血をたぎらせております。

インハイ入ってひたすらここまでパワー温存。
一瞬チーム引いてそれ以外はとにかく温存!!
知らんかったわ。これ程"温存"がつらいもんやったとは!!いくで!!見さらせ。
鳴子劇場第二幕2年生編御開帳や!!!

箱学を追いかける形で飛びだす総北。
トンネルを抜けた時には3秒から4秒ほどの差がついている。
トンネル内では前との差が視覚的につかみづらい。黒田さんはそれを計算してアタックを仕掛けていた様子。さすがの計算力か。
だが計算だけで計りきれるものではない。
実際、ここで鳴子がエースをアシストしてくるとは思ってなかったでしょうしね・・・!!

トンネルを抜けたら下り坂。元スプリンターの鳴子としてはメッチャおいしい場面。
差が付けられている状況だからこそ、追いついて追い越せば目立つ!!そのように考えるのが鳴子章吉という男である。

鳴子必殺スーパーピラピラダウンヒルや!!

また妙な名前を出してきた鳴子。
デーハードヤドヤクライムもそうだったが繰り返す系が好きなのだろうか。
というか何ですねんピラピラって。そりゃ今泉君もそこが一番気になるよ。

ピラピラについては答えずに走り出す鳴子。
何故ならばその答えはすぐに分かるから。
ガードレールスレスレ・・・いや、ジャージの布1枚を当てながら走る鳴子。
ジャージの袖でバンクの限界を計るというこの正確な走り。荒削りな走法に年季が加わって正確さが刻まれた感じでしょうか。
正確な走りに定評のある今泉君ですら舌を巻く程ですし、凄さが分かろうというものです。
そして・・・ガードレールでこすれたジャージは損傷し、ピラピラと風に舞う。"ピラピラ"まさか・・・!!

"その通り"って顔してやがる!!くだらねーよ、"スーパーピラピラダウンヒル"!!

満面のドヤ顔鳴子にこいつは今泉君も苦笑い。
しかしちゃんと意味を持たせてきているのには感心しないでもない。くだらないけど。感心はしてしまう。くだらないけど。

てなわけで、相変わらずライバル意識満点な口論をしながら走る2人。
鳴子に関していえば田所さんとも同じような走りしてたし例年通りと言った感じか。

さて、もめながらきっちりと追いついて見せた総北。
その2人に話しかけるのはハコガクの人こと黒田さん。
去年出場しなかったため、まだまだ知名度としては高くない。ここから名前を売って行かないといけない人だ。
それだからなのか――自分で紹介を始めてしまう黒田さん。おやおや。

去年までクライマーとして走ってたが、今年からエース引いてる。
背負わせてもらってるゼッケンは12番!!箱根学園のエースアシストナンバー"2"だ!!
春先からのレース、この葦木場を引いて全戦全勝――どんなスキマもエースを連れて前へ出る。素早く――正確に。
ついたアダ名は黒猫!!

頭さえもぐりこめれば抜けられるぜって話ですな。
いや確かに特徴としてはそうなのかもしれないが、猫って。宅配便か!!

ああ・・・そうだ。オレはどんなに条件が悪くても"荷物"を確実にゴールに届ける、箱根最速の届け屋だ!!

鳴子のツッコミに我が意を得たりと言った返しをする黒田さん。
なるほど。エースアシストという運び屋的ポジションとしては最適なアダ名と言えるわけですなぁ。
ちなみに宅急便は商標登録されているので使えないため鳴子のツッコミも宅配便になっている様子。気遣いの出来る男だぜ鳴子。

何はともあれ、猫のような体勢で加速を開始する黒田さん。
坂を下りきったところで直角に左へと曲がる大きなカーブ。ここをカミソリのような鋭さで曲がり切ってみせる。
ほほう、この辺りのコーナーリングのセンスは荒北さん譲りって感じがしますなぁ。天性のものに加えて、でしょうが。

こんなウワサがたってる。箱根の届け屋黒猫はスピード制限を守らねぇってな!!

本当にそんなウワサがたっているのかは知らないが、宅配便を絡めてのネタは色々と出そうでいいですな。
そういう異名からキャラ立てする手法。悪くないと思います。
これからどんどん猫っぽくなっていくんじゃないかという期待も持てますな!!

しかし黒猫か。鳴子は虎だし、黒猫対赤虎みたいな対決になるのだろうか。
直接的な戦闘力では虎の圧勝だろうが・・・さてさてどうなりますかな。



RIDE.335 箱根の届け屋  (2015年 7号)


1日目のゴールを目指して飛びだすエースとそのアシスト。
二荒山神社の大鳥居を抜けて右、名瀑日光けごんの滝に落とす源、標高1269mに水をたたえる中空の湖中禅寺湖が見えてくる。
うーむ、この観光名所の説明台詞も恒例となってきましたなぁ。
レースの舞台に選ばれた地元の人が頑張って説明してたりするのだろうか。

それはさておき、コーナーで総北を引き離した黒田さん。ハ!!
ここから先は湖の北側を沿うように走る一本道。地形に合わせてアップダウンを繰り返すこととなる。

オレの得意とするステージだ!!

ただの平坦ではなく登りも含めての道。確かに元クライマーの黒田さんとしては得意な道でしょうな。
しかしアダ名が黒猫だからってゴールにすりよる猫足って表現はどうなんだろうか。すりすり。

ここで黒田さんの凄さ紹介。レースを観にいった観客の一人が脚の筋肉をさわらせてもらって時のことを語り出す。
自転車やってる人の脚か。それは凄そうな気がしますな。カッチカチなのか?

・・・いや、それがブヨブヨなんだ。柔らかいもちのような筋肉なんだ!!

予想に反して、触れればぷるんと震える筋肉。いやそれはいいが、ブヨブヨって。

オレの脚は特別!!
長時間長く変化のあるステージを走るロードの脚はしなやかで回る脚が正解だ。
長い高い負荷の練習でゆらされた脚は余計な筋肉を削ぎ落とし弾力を生む。オレの脚はそれが特別しなやかだ!!
ロードやってる脚に触ったヤツは皆こう言う。「思ったよりも細い」「意外に柔らかい」。
だがそれは先入観だ。筋肉は固い方が強いっていう先入観。
クランクを回し地面をけって進むために金属のような固さは必要じゃない。
強さを生むのは革のムチのような柔軟なしなりなんだ!!

確かに御堂筋君の脚もよくぶるんぶるん言っておりましたなぁ。
それはつまり黒田さんの筋肉は小鞠も認めるいい筋肉ということでしょうか。
しかし、しなやかなのはいいけどやっぱりブヨブヨなのはどうかなと・・・いや、表現がね。ブヨブヨって。

オレの"猫足"は自在にしなる。上質だ。速いぜ!!
ゴールに"まっしぐら"だよ!!

脚をぶるんとゆっさと揺らして走る黒田さん。ふむ、猫だけにまっしぐらって話ですかな?ハッハッハ。
宅配便といい、特定の製品を連想しそうなフレーズはどうなんでしょうかね。スポンサーにつけられれば良いのかもしれないが・・・

それはさておき、ここでようやく先行していたクライマーたちに追いつきました。
下りがあったのもありましょうが、思ったよりも先行してましたなぁ。

黒田さんは去年山岳に敗れてインターハイメンバーから外れることとなった。
それはもう1年以上前の"思い出"であるし恨んでいないとのこと。
むう、その言い回しだと当時は恨んでいたことになるのだが・・・まあ、悔しさは確実にあるだろうしその気持ちはあっても当然か。
何にせよ3年目の今はちゃんとインハイの舞台に出ることが出来ている。もう過去のことを恨みに思う必要は無い。

よくやった真波ィ!!

だからこそ、心から山岳の活躍を祝福できるという黒田さん。何とも正直な人ですな。
その直後に最後の瞬間見てたぞとさらりとウソをつく葦木場。何でやねん!!
先輩らしい言葉をかけようという想いは分からないでもないが・・・
というか山岳も普通に礼を返してるし、黒田さんがツッコまなかったらそのまま会話が流れちゃったんじゃなかろうか。
恐ろしい。天然恐ろしい。

山の勝者である箱学はお祝いモード。さて、総北の方はどうか。
とりあえず手嶋さんを支えて走る坂道に、ようやったと声をかける鳴子。
そして辛そうな様子の手嶋さんに・・・つかれした!!と声をかける。2人揃って頭を下げて。

実際手嶋さんの頑張りには頭が下がる想いであったのでしょうな。
メッチャ闘ってボロボロになった姿を見れば、頭も下げたくなる。そして心は奮い立つ。

鳴子劇場は派手が信条!!手嶋さんにあんだけ"派手"なトコみせられて燃えんわけにはいかんわ!!
お代はいらんですよ手嶋さん・・・こっちも楽しませますわ。見といてください。その特等席で!!

そう声をかけつつ、先行する箱学との距離を詰める鳴子。
やはり手嶋さんの走りによるモチベーションアップは効果が高いようですなぁ。いい感じだ。

さて、1日目のゴールを決める戦いはいよいよ本格化。
トップ争いは総北と箱学の2校に絞られた感じであるが・・・去年と同じく、このタイミングであの高校が動きを見せる。

にく?誰か今、筋肉の話をしました?

聞こえる距離にはない。というか筋肉の部分は口に出してないはずなのに反応を示すのはこの男――小鞠。
いやまあ、確かに感想でも小鞠のことは上で引き合いに出したけどさ・・・ここでそのセリフかよ!!
何となく黒田さんと泉田君と合わせて筋肉談義でもし出しそうな雰囲気がありますが・・・レース終わってからやってください。

何はともあれ動き出しそうな京都伏見。
小鞠はさっそくその走りの真価を見せてくるのだろうか。気になるところでありますな。
あと良い筋肉の表現でブヨブヨを用いるのは小鞠的にはどうなんだろうか。それも気になるところでありますな。



RIDE.336 鳴子、バージョンU  (2015年 8号)


先行する箱学の凸凹コンビに対する総北凸凹コンビ。あ、コンビと言われるのは嫌なんでしたっけ。
実際、黒田さんにインハイを沸かせた2人だよとまとめられたことに意義を唱える今泉君と鳴子。
相変わらず息ぴったしですなぁ。

知らねーよ!!どっちでもいいよ!!まとめるだろフツー!!

いや全く黒田さんの言う通りであります。まとめたぐらいで逐一反応せんでも。
ところで葦木場はさすがユキちゃん、ツッコミが早いと言ってますがどうなんだろうか。
1コマ笑顔のコマが挟まったおかげで少しツッコミが遅れたように見えなくもない。

ここまで来てチーム内で自己主張を行う総北。
去年今年のスプリンター勢といい、総北のチームワークは本当に独特ですなぁ。
ツッコミ役が出来るということは常識的な考え方が出来る黒田さん。こういうチームワークは常識の外でありましょう。

ともかく、今は黒田さん得意のアップダウンの続く1本道。
元クライマーとして一級品の登りを見せてくれます。
さすがは"登りの黒田"!!勝負をキメる時はいつも登りで仕掛けると言われるだけのことはある。よく分析してるファンだな。

来いよ。来てみろよ総北!!いつもやってるようにオレが引きちぎってやる!!ここで!!
知ってるぜ。赤い頭の鳴子。今、前引いてるおまえは――元・スプリンターだ!!

元・スプリンター相手ならば登りで仕掛けるのは有効。
それは黒田さんのみならず観客も思うことである。だからこそ・・・それは鳴子にとっておいしいシチュエーション。

ワイの大好物を知っとるか。お好み焼きとオデンの牛スジ。もうひとつは――皆がワイの凄さにびっくりする顔や!!

ハンドルを左右に振って凄い速さで登りを駆け上がる鳴子。
これぞ鳴子必殺自社開発、アームストロングクライムVerUや!!とのこと。
この登りは去年の3日目にも見ましたが、更に改良を加えてきた様子ですな。

派手好きな鳴子。しかしその派手を人前でアピールするためには地道な努力が必要であると理解している。
そして努力と同じく大事なのがひらめき。
常識では考えられないようなひらめきを元にして新たな技を開発しようとする。
今、自身が使っている部位はどこか。腕は使っている。脚はもちろん使っている。いや――

使うとると思っとるところにまだ使うてない部分あるとちゃうか!!?

そこに気付いた鳴子。そう、VerUで使うのは――つま先や!!

たかがつま先、されどつま先!!足のさきっぽ突端が常識を変える!!
実は自転車のクランクを回して推進力に変える時、有効なゾーンとそうでないゾーンが存在する!!
クランクに入れた力が有効に伝わって前向きの力に変わるのは始めの1/4!!このゾーンが重要!!
そこから先は下向きの力にも変わるから力を入れてもロスが大きい!!
その大事な1/4に最初に到達するのはつま先!!せやからワイはつま先を鍛えた!!
そうやってパワーを増幅!!更に!!ペダルを!!軸を押すように通常前下がりのつま先を上げる!!押す!!
かけたパワーをのがさんように全てを推進力に変える!!

自転車乗りならたいがい知っとると自ら前置きしながらしっかり語る鳴子。
まあ知ってはいても常識としちゃって見逃してる部分ってのはあるでしょうからねぇ。
この鍛える部位の目の付け所はやはり良いと思いますよ。

見さらせ。こいつがアームストロングクライムVerU――ツマサキススム君や!!

アームストロングクライムはいい名前だなと思ってました。
それがVerUになってごらんの有り様だよ!!
この鳴子のネーミングセンスは本当にどうにかならないのだろうか。らしいといえば凄くらしいんですけどね。
何にしても派手な走りで観客を沸かせることが出来て非常に満足そうな鳴子でありました。良かったね。

なる程。自己主張の仲間割れじゃなかったか――!!
やっぱスイッチ入れなきゃ勝負はつけらんねェってことか!!こいつらのチームワークを崩すには――!!

微妙に勘違いをしている様子の黒田さん。自己主張の部分は本物ですよ。
だから改めてこんなことを聞いてしまう。おまえら2人――エースはどっちだ!!と。
その答えはもちろん・・・双方が自分自身を指し示すという結果に・・・!!

おまえら。もしかしてコンビ組むのこのインハイが初めてか?

あっさりしっかり初コンビであることが見抜かれてしまった総北コンビ。
まあ遅かれ早かれ気付かれることではあったでしょうが・・・いやはや。

現在は前を引いて走っているがアシストのつもりは特になかった様子の鳴子。どうにも我が強い。
とはいえ去年のことを考えれば大事なことが何かは分かっていると思われる。
我を通して負けるような選択はしない。そう信じて――います、よ。うん。



RIDE.337 2人のエース  (2015年 9号)


黒田さんのエースはどっちだ発言で案の定もめ始める2人。
確かに合宿では鳴子が勝ってましたなぁ。僅差とはいえこれは説得力がある。
手嶋さんの発言に関しては口実ということで流される。それはどうなんだろうか。

――!!ビンゴだな。この2人――インハイ用の急ごしらえのコンビだ!!
いるんだ――レースにゃ。こうやってあわててコンビ組んじまうエースとアシストが。
そういうヤツらはたいてい――バラバラ――

読みが鋭いようでそうでもなかったりする黒田さん。
インハイ用のコンビというのは合ってましたが、息の合い方に関してはとんでもない2人である。
全く意図してないのに同じ言動と行動を取ることが多い2人。
ある意味バラバラとは程遠い感じであります。
毎度同じ方向ばかり向いてるからむしろぶつかっちゃってる感じですやね。

っしゃあ、ほんなら勝負やスカシ。ゴールまでにこのハコガクさんふりきって、先にゴール入った方がエースでどうや!!

突然そんなことを言いだす鳴子。乗る今泉君。
それはつまり、横に並ぶ箱学との勝負よりも自分たちだけで勝負すると言っているのに等しい。
うーむ、これはナメられてると思われても仕方がないですなぁ。

今泉「手嶋さんはほんのりオレ推しだ。オレをエースだと思ってるぞ」
鳴子「アホか。時代はいつもニュースターを求めとるんや」

ほんのりという辺りが微妙に弱気な今泉君。
対して鳴子もニュースターという辺り、これまではエースじゃなかったという態度が見受けられる。
変に一歩引くところまで一致している2人。良いことかどうかは知らないが・・・ともかく、仲良いな。

インハイのゴールまで言い争いながら走る2人。これは黒田さんも想定外な相手。
しかし基本的に自信家の黒田さん。コンビネーションに欠けてるヤツらをバラバラにするのは簡単だと述べる。
そうして繰り出す箱学のコンビネーションプレイ
まずでかい葦木場が出る。と見せかけて反対側からスルスルと気配を消して前に出る黒田さん。

今のは一瞬の葦木場のフェイクとオレの瞬発力でできてる。
葦木場はでかい。誰もが目をうばわれ引っかかる。オレたちにしかできないコンビネーション。
オレたちは春先から8戦8勝!!実戦実績が違う!!
急ごしらえのコンビをバラバラにするのは簡単だ。窮地に追いやってやればいい。そうすりゃあミスをお互いのせいにするもんだ!!

なんだかちょっと悪そうな顔というか、エジプトの壁画みたいな顔で微笑む黒田さん。
"スイッチ"がどうのこうのと、何というか丁寧に敗北フラグを立てに行っている感じがして困る。
ツッコミが丁寧すぎてくどくなるのと同じようにフラグもくどいぐらいに立てないと気が済まない性質なのだろうか。

それはさておき、手嶋さん。
ほんのり今泉君推しとされていましたが、実はエースは自分たちで決めろと2人に言っていたりする。あら。
ふうむ、譲りたくないという2人に対しての想いに応えるにはそれがいいのかもしれませんな。
実際その状態で去年結果を出しているわけでありますし。

信じてんだ。あの2人の力を。
あの2人は仲悪いしいつも言い合ってる。協力もしない。
だけど、自分たちがやるべきことが何かを一番よくわかってる2人だ

言い争ったりはするけど、それで足を引っ張り合うようなことはない。
今でも結局はチームの為に最善の道を選択している。
山でずっと引いてた今泉君の為に今は前で引いているという鳴子。なるほど、これは良い理由でありますな。
しかし、それだというのにリアクションが薄いと文句をつける鳴子。そこかよ。
まあ、今泉君が驚かなかったのにも理由はちゃんとあるんですけどね。

"当然"だと思ったからな。驚かなかった
インハイのステージでおまえならそれくらいの必殺ワザはちゃんと用意してるだろうと思ったからな!!

そのように述べる今泉君。当たり前のように信頼を口にしている。
別に照れるようなことでも何でもなく、ただ当たり前のことだから口にしている感じがまたいい感じでありますなぁ。

いい感じにまとまって走る2人。
しかしここでゴール争いに加わりそうな新たな影。これは・・・!?

去年のことを考えるならばまた京都伏見がやってきたと考えるのが妥当なところ。
しかしここであえて別のことも考えておきたい。
例えば広島呉南とか。メガネスプリンターが今年はチームを引っ張ってゴールを狙いに来るぜ!!みたいな。
思わぬ第三者が現れることに期待したいが・・・初日はまだないかな?どうかな?期待したい。



弱虫ペダル 40巻


RIDE.338 重ねる願い!!  (2015年 10号)


1日目のゴールを獲るために総北、箱学どちらも一歩も譲らず。
両者差がほとんどつかないうちに給水所へとたどり着く。
おっと、割愛されちゃったけどちゃんと間に合ったんですね古賀さんと杉元。

今年のウェルカムレース以降ずいぶんと仲良くなった感じの杉元と今泉君。
今回もいい感じにやりとりしておりますな。
そして、ゴールはオレたちが絶対獲ってやると述べたりする。
うむ、エースを争ったりはするけれど、大事なことは見失ってないという話でありますなぁ。

それにしても飲み終えたボトルを廃棄してサポートの選手が拾う流れだけど、盗まれたりしないのだろうか?
選手のファンとかだとそういうの狙ってる人とかいそうな気もするが・・・どうなんでしょうかね。

それはさておき、杉元は全力で願う。この気持ちが少しでも力になるなら、と。

獲ってくれ。まかせたぞ今泉!!

ううむ。本当に立派になりましたなぁ、杉元。去年の様子が嘘のようだ。
去年の手嶋さんはサポート役として頑張り、今年は見事にレースで活躍している。
杉元もそれにならって来年は頑張って欲しい。
古賀さんに関しては・・・今でも残念に思う。一応一度はインターハイに出られてはいるが・・・微妙な記憶があるレースですしねぇ。

メンバーに上限がある以上、泣く者がいるのはどのスポーツでも、いやスポーツに限らなくてもある話。
勝利を目指すのであるならば3年生だからという理由だけではいけない。
と分かってはいるけれども、やっぱり古賀さんの存在は惜しいなぁ・・・

などと惜しんでいたらレースに動きが見える。
1日目のゴールは総北と箱学の両校に絞られた。
そのように見える状況で、2校の補給の直後にサポートが出たのは・・・京都伏見!!

総北と箱学の後続を振り切って追ってくる京都伏見の選手。
この流れは去年もありました。まさに去年の流れをなぞるが如く。いや――

今年先頭を追ってるのは2人だ!!
京都伏見111番。エース御堂筋翔!!
同じく116番。1年岸神小鞠!!

やはりの小鞠。ここまで敵だけではなく味方にまでその力を隠してきた男が存在感を示す!!
あ、いや。存在感だけなら走る前から強烈に放っていたか。ある意味。
古賀さんも合宿で少し触れ合った――というか触れられたのだが――だけで警戒している異色の男、小鞠。

ホントに出ないんですねインターハイ。いい筋肉だったのに

あぱっ。あぱぁっと古賀さんに笑みを見せて走り去る小鞠。さすがは御堂筋君のパートナー。不気味な子やで。
しかし古賀さんに言わせるとあれは勝利を狙う目じゃないとのことであるが・・・そうなるとやはりアレかね。

先頭に早く追いつきたい・・・先頭にはいい筋肉がたくさん集まってるんでしょ?
筋肉・・・筋肉が!!

にく、にくと欲望を丸出しにしている小鞠。
まったくこの子は本当がまんのできん男やわ
マッサージャーに専念させてたのも、隠すため以上にこの性癖を抑え込むためにずっと筋肉に触れさせるためだったのかもしれない。
まあ、京都伏見だと好みの筋肉は御堂筋君のぐらいしかなかっただろうからそれで抑え込めるものではないかな?
逆にそこで餓えた結果、今我慢できない様子となっているのかもしれない・・・厄介な!!



RIDE.339 襲来  (2015年 11号)


前回の終わりから少し時間を戻してのお話。
驚愕で固まるのは総北と箱根学園の両チーム。彼等が見たのは・・・京都伏見!!

目一杯警戒していたはずだったのに――
今年も京都はゴールを狙ってくると、後ろを警戒して、しかけてくるなら給水所より手前だろうと読んでいた。
しかし気配はなくのこり200で、一瞬の緩んだ瞬間だった。
いや、彼らはその瞬間を狙っていたのかもしれない。
給水所手前の給水の準備をするために集中力がそれる、ほんの数十秒を。

来たら銅橋にチェックさせるつもりでいた泉田君。
しかし反応が遅れたため、抜かれてから追いかける流れとなってしまった。
総北も同様、鏑木にを出して止めさせようとするが・・・追いつかない。

ほらぁ・・・くぅだらないスプリント争いなんかするぅからぁ、大事なところでぇ・・・・・・捉えられんのや!!

そう告げて引き離していく御堂筋君。
ふむ、去年2日目のスプリントで脚を使った結果、3日目で限界を迎えた人のいうことは重みがありますなぁ。

ともあれ、あっさりとパスされることとなった両チーム。
給水所の古賀さんもあぱぁっと脅かされる。あぱぁっ。
そして京都伏見が向かうのは先頭集団・・・!!

先頭を走る総北、箱学。ゴールまでは残り4.5km。
鳴子特急はゴールまでの先着直通運転として走行中。お代は百億円や!!
ふむ、この辺りのやりとりを見ると久しぶりに今泉君がお金持ってることを思い出させてくれますな。
そして友達がいないことも思い出させてくれる。今泉君・・・
家に遊びにいったヤツを友達とよんでいるとのことだが、巻島さんはノーカンなのだろうか。アレは遊びではないからか?
あと寒咲さんは・・・店だから違うのか、それとも友達とはまた違うのかどうなのか。気になるところですな。

オレの基準はオレが決めると今泉君。
その考えに従えば、エースを温存せずに前に出るなんて行為も当然のように行える。
まあ去年の金城さんも必要と思った時は自ら前に出て引いてましたものね。総北のエースとしては間違いのない行動だ。
しかしそんな行動をなめられてると感じるのは黒田さん。やはり意外な展開には弱い感じですかねぇ。

デタラメだ・・・やっぱデタラメだよてめェら。
知らねェんだ・・・自分がどの位置に立ってるか・・・教えてやるよ。オレが。ワカらせてやるヨ!!

黒田さんの"スイッチ"を入れる宣言がまたもや出て来ました。
しかしまたもや不発に終わりそうな流れでありました。一体いつになったら入るんだヨ!!
スイッチだからってコメカミ辺りを実際に押すようなポーズ取らなくてもいいんじゃないかな黒田さん。加速装置でもあるのか?

ともあれ、黒田さんは吠える。そんなイチかバチかの作戦で勝てると思ってんのか、と。
そのイチバチを受けて掛け算は続く。

ニイチが2。ニシが8。ニロク12。ニハチ16。
筋肉(ニク)18!!

何言ってんだコイツは。改めてそう言うしかない小鞠の呟き。
そしてその呟きがツッコミ所とならないほどの存在感を示す御堂筋君。
なんという存在感。デカァァァァァイ!!いや、デカすぎるでしょ。いくらなんでもさ。

あまりのプレッシャーでデカく見えるといってもさすがに限度があるんではなかろうかと言いたくなるデカさである。
これはもうあれだ。デカくなったように見えると見せかけて本当にデカくなってるという流れだ。
これだけでかければ登りでは有利でしょうな。つづら折りなんて一跨ぎだよ!ヤベェな!!
本当にその流れになると漫画のジャンルそのものが変わりそうなのでさすがにないでしょうがね!!



RIDE.340 激震  (2015年 12号)


のこり3.5km。1日目ゴールラインまで最後のゴール争い。
箱根学園と総北の対決に割って入ったのは京都伏見!!

割って入るというか、まとめて押し潰してしまいそうな巨体っぷりを見せる御堂筋君。ローラーのごとくだ。
そのプレッシャーの凄さは黒田さんも怯ませる。

ワカる・・・こいつ・・・全て計算ずく。肌感でワカる・・・!!こいつは・・・勝利のことしか考えてない!!

ある意味そういう相手の方が黒田さんとしては理解がしやすいのかもしれない。
総北の2人のようにセオリー無視で来られるよりは計算してくる相手の方がやりやすそうな感じである。
まあ、御堂筋君の場合は走り方そのものが常識外だったりするのでやっぱり難しいかもしれませんが。

ここでちょっとした回想。
福富さんは去年、インターハイについてこのように振り返っている。

今年の勢力図は、優勝こそ明け渡したが、箱根学園――次いで総北。そしてその他――というものだった。
だがその図が今後もそのままとは限らない。
京都伏見の御堂筋という男――ヤツはまだ成長途中だった。勝利を求める純粋な走り。
ヤツがもし今回の敗北をバネにまたインターハイに挑んでくるなら。
来年――黒田おまえが3年になる時は三強!!箱根学園、総北、京伏。三強の時代が来ている!!
それくらいの強い覚悟でのぞまなければ箱根学園の復権はない。

1ページちょっとの間にドンバンドンと派手な音を立てながら語る福富さん。相変わらずですなぁ。
言葉の無闇な自信の溢れ方もさすがと言わざるを得ない。
その福富さんが警戒を呼びかけるのだから、そりゃあマークはしておかなければいけない相手だったでしょうな。忘れてたようだけど。

まあともかく、追いつかれたのであればそれは仕方がない。全力で止めるだけである。
今度こそスイッチを入れようとする黒田さん。しかし・・・横から不気味な男が接近してきていた。あぱッ。

やはり第一目標は黒田さんの猫足だった小鞠。
今泉君の時の様に脚・・・のみならず、レーパンの中にまで手を突っ込んでいく。ズブズブと!!

その感触に嬉しそうな声を上げる小鞠。我慢の出来ない子とは言われているが、これはもう相当なものですよ。
そりゃ黒田さんも何をすると言いたくなりますわ。本当、何しよるの。

すいません・・・ボク1年生でインターハイ初めてなもので・・・
ウワサにきく箱根学園の人見て、うれしくてついよろけて・・・しまいましたァ。

そのような言い訳を述べる小鞠。通用すると思っているのだろうか?
ラッキースケベではなく、完璧に能動的な行為。レース中でなければ通報ものですよ。いやレース中でもいかんか。
というか段々と潜り込む手が深くなっていってる気がするのですが・・・危うい!!

思わず手と声が出てしまったという小鞠。
こいつは今泉君も黒田さんも、何だこいつはとしか考えられないでしょうな。読者も言いたいぐらいですし。
御堂筋君が勝利のことしか考えていないとしたら、こいつは筋肉のことしか考えていない!!

ともかく今はゴールに集中する!!おどらされるな

そのように考える今泉君。しかし冷静になるのは少しばかり遅すぎた。
小鞠の引き起こした混乱のスキに飛びだしていた御堂筋君。
単独ゴールを狙って独走態勢に入った様子であります。おやおや。

くそ!!毎回毎回オレは御堂筋に!!

いやまったく。毎度のようにしてやられてますなぁ。
去年の3日目は見事な集中力を見せていたというのに・・・成長が巻き戻ってるぞ。
そんな今泉君とは違い・・・御堂筋君の独走を止めるために走る男が1人いた。

おまえだけは小鞠くんじゃなく――ボクゥのことから目、離さんやったようやな・・・マメトサカくぅん!!

ただ一人、御堂筋君のアタックに気付き、追いかけていたのは鳴子。
去年の冬、スプリント勝負で敗れてからずっと意識していた相手であるし、これは当然のことかもしれませんな。
さて、オールラウンダーに転向した鳴子。この登りで果たして御堂筋君とどこまでやれるのか。
新生鳴子、早速の一番の見せどころでありますな。



RIDE.341 マメトサカ  (2015年 13号)



ゴールまでのこり3km。集団から抜け出して上がってきたのは京都伏見111番、御堂筋!!
その御堂筋君に唯一ぴったりついてきてるのが――総北の赤い男、3番鳴子!!

出遅れる形となった箱根学園。
そりゃ観客にも箱根学園。はァ!?とか煽られますわ。いやそのつもりじゃないのは分かってますがそう見えなくもなくてね。

後続は見えず2人が完全に先行している形。
本当ならば御堂筋君が単独で先行している予定だったのだけど、よくついてきた鳴子。
あの小鞠が引き起こした混乱の中で目標を見失わずにいたのはまさしく大したものである。
御堂筋君としては登りのアタックでついてきたことこそ特筆すべきこととしているが、どちらかというとやっぱりそっちがデカイ。

とはいえ、鳴子がスプリンターをやめて本当にオールラウンダーになっているのは御堂筋君としても驚きである様子。
そういう大事なモンをキッチリ捨てれる男は嫌いやないよとのこと。ふむ。

アホか!!それを取りもどすためにワイはここに来とんねん!!

敗北の約束を違えるような真似は出来ない。しかしスプリンターの道を諦めるわけにもいかない。
だから取り戻す。前向きな鳴子らしい発想でありますなぁ。鳥ィもどォすじゃ鳥が吐いてるようになっちゃうぞ御堂筋君。

何にしても、このインターハイ初日のゴール前という大舞台で去年の冬のリベンジマッチとなりました。
平坦ではなく登りでの勝負。果たしてスプリンター上がりの鳴子に勝機はあるのだろうか。
少なくとも御堂筋君のダンシングにはついていけている様子。ふむ、さすがですな。
それを見てようやくマメトサカからナルコくんへと呼ばれ方が変化する。おぉ。でもしばらくしたらまた戻りそうな気がするな。

ほな・・・協調しよか?ボクゥと。ゴールまで。

いきなりそのような申し出を行ってくる御堂筋君。
しかも最後のゴールは友情の証として譲ってあげてもいいなどと言いそうになっている。
協調の話からして胡散臭いのに、友情とか使い慣れてない言葉を使っちゃいけませんなぁ。信じようにも信じられない!!
まあ、さすがにこれが通じるとは御堂筋君自身も思ってはおるまい。
なんとなく御堂筋君は会話によってテンションを上げるタイプに思えますからねぇ。これも走るのに必要なことなのでしょう。

ちなみに今年も脚にテーピングをして力をセーブしている御堂筋君。
さてさて、このとっておきをいつ解放させることが出来るか。先に見せたとなるとこの初日で果たせそうではあるが・・・どうかな。

さて、置いて行かれた今泉君たち3名。必死で先頭に追い付こうとしている。
そして追いつくために、ようやく黒田さんがスイッチを・・・入れる!!ガリィィッ。

ふりおとされんなよるああ!!

なんだか凶暴な感じになって加速し出す黒田さん。
そのうち新開さんみたいに葦木場るるるとか言い出さないか不安になりますな。
しかし別に理性を失うとかそういう話ではないらしい。
逆に冷静に――御堂筋君に追いつくために、今泉君に協調を申し出てくる。ほほう。

去年は3日目でクローズアップされた協調。今年は初日から出てきております。
確かに今は一刻も早く先頭に追い付かないといけない。話にならない。
そういう意味ではこの場の協調は悪くない提案でありますが・・・さてさてどうしますかね今泉君。



RIDE.342 スイッチ  (2015年 14号)


「協調」――!!箱根学園と。
もうゴール前3km。箱根学園は同じゴールを狙う敵チーム――だが、前には御堂筋がいる!!

確かに四の五の言っていられる状況ではない。黒田さんの提案を受け入れる今泉君。
御堂筋君の協調は毎回断られるのに、御堂筋君を追う協調は受け入れられる。
信用問題もあるが、それだけ御堂筋君が強いってことでありましょう。

というわけで3人が力を合わせて先頭の2人に追いつくために走り出す。
元クライマーの黒田さん。ここぞとばかりに登りで加速してみせる。らあああ!!

違う!!さっきまでとこの人。
殺気までの走りとは違う。何かをしたのか!?一段階プレッシャーが上がってる!!
さっき"スイッチ"つってた。こめかみに手をあてたのと何か関係があるのか!?

勿論関係ある。
それはまじない的な意味ではなく、能動的な行為。
葦木場が聞いたところによると、黒田さんの左のこめかみにはキズがあるらしい。
昔プライドに関わるようなケガをしたとのこと。ほう。
で、そのキズの治りきってないカサブタを剥がすのが"スイッチ"であるらしい。爪で。ええ・・・?

これやるといい感じに血がぬけて。スーとして。体ん中から蘇んのさ。昔の、何でも一番じゃなきゃ耐えられなかった頃のオレが。
そしたら敵喰らってやろうって気持ちがハネ上がんだ!!

ふむ。精神的なスイッチを入れるための行為でありますな。
まあ、競技者であるならばそういうものは持っていて然るべきでありましょう。
しかしそのトリガーが自傷とは・・・驚いたなぁ。そりゃ葦木場も震えますわ。そんなコトしてたのユキちゃん。

聞いた瞬間は慄いていた葦木場。
しかし今はその黒田さんの走りを見て気分がアガっている様子。
同調してプレッシャーが上がるというのは面白いですな。
天然な葦木場としてはアガるタイミングが読みづらいし、計算できる黒田さんが能動的に引き上げられるのならそれはオイシイ。

そんな箱学の2人を見て、この協調は乗らない方が正解だったかと考える今泉君。
ゴールは鳴子に任せて、自分は箱学を止めるべきだったのではないかと。

――いや。オレがのらずにこの2人が先頭に追いつく可能性がある。
ギリギリだが、もしそうなれば総北は1人!!圧倒的に不利になる!!

考えながらもしっかり引いて見せる今泉君。しかしその頭の中は黒田さんお見通し。
さすがに元エリート。似た部分があるだけに考えも読みやすいってことですかねぇ。

エリートは群れない退かない他人の言うこと聞かない。そのくせ人の倍デキる。だから勘違いすると黒田さん。
自身の経験から出ている言葉でありますな。
しかし今泉君を甘チャンと言い切るのは・・・いや、御堂筋君にまたやられてる様子を見てると言われても仕方がないか。

おまえは、強くなりたくてはい上がりたくて、一番嫌いなヤツに頭下げたことあるかよ?

その当時の行為。荒北さんに頭を下げた時のことを思い返す黒田さん。
当時は一番嫌いだったけど、今ではそうでもないんでしょ?いやまあ、当時の気持ちが重要でありますか。
その行いによって自分はエリートから脱却できたと考えていそうである。
チームはもがいて憎んであがいてそれで強くなるか。今でも憎むような相手がいるんですかね黒田さん。

前に出ようとする葦木場を制する黒田さん。
エースはゴールを獲るのが役目であり、どんなピンチでもエースアシストを信じて足をためるのが仕事とのこと。
ふうむ、一刻も早く先頭に追いつかなければならないのに拘りますねぇ。
エリートとしてのプライドは捨てたみたいなこと言ってるが、運び屋としてのプライドが生じてしまってる感じであります。

さて、先頭。御堂筋君と鳴子の勝負でありますが、一気に差を広げている御堂筋君。
しかし差を広げられても笑顔な鳴子。何か策がありそうな感じですな。
意外とノリではなくちゃんと考えていることが多い鳴子。浮かべた笑みにも意味があるものと期待します。



RIDE.343 逃げ切り!!  (2015年 15号)


1日目ゴールまでのこり2.5km。
先頭を走るのは御堂筋君と鳴子。今泉君たち3人はけっこう離されているらしい。
一瞬目を離したスキに随分と差を開けられたものですなぁ・・・
いや、あの騒動は別に一瞬というほど短いものではなかったか。

ともあれ、このまま逃げ切りゴールを決めそうな勢いの御堂筋君。
その御堂筋君曰くロードレースでゴールを獲るのは2種類の方法があるとのこと。
つまり、逃げたヤツらを後ろが捕まえて"集団ゴール"か、逃げたヤツが捕まえられんようにゴールまで逃げ切る"逃げ切りゴール"が。

後ろのハコガクゥとの差はついとる。地形と時間とタイミングを読んでつけた差!!
あとはこの差を維持すればァ、ボクゥの勝ちや!!

自慢の歯を今年も噛み鳴らして走る御堂筋君。あんまりやってるとまた割れますよ。

勝ち。勝利。結晶。誰よりも速い証。誰よりも強い証。誰よりも正しい証。
何よりも純粋なもの。それがゴール!!!

今年こそその証を手に入れるために走っている御堂筋君。
今年も3日連続1位の完全制覇を狙っているのだろうか?
小鞠という爆弾級の囮のおかげで1日目はそれが果たせそうな雰囲気でありましたが・・・まだ1人追いついている選手がいる。

警戒して後ろをチラチラ見ている走りから警戒を解いて前だけ見る走りに切り替えた御堂筋君。
それだけの差はついたと思ったのでしょうが、そのタイミングを待って加速して追いつく鳴子。
ふむ、御堂筋君の想像以上に登りで走れるようになっているということですかな。
しかし結局御堂筋君、鳴子の呼び名はマメトサカに戻っちゃうんですな。

ハンドルを当てて開戦のゴング
その音色を聞きながら御堂筋君より前へと飛びだしていく鳴子。
観客に寄れば登りはわざと先行させて足を貯めてたんだ、とのこと。
どういうことだ?追いついたのなら貯めた足使っちゃったのではないのか。どういうことだ!?
それはさておき、重要な説明が入ります。

1日目のこのコースは中禅寺湖からのつづら折りを終えて最後の登り、この両側に広がる白樺の林をぬければゴールまでは――
男体山のすそ野に広がる完全な平坦一本道だ
総北3番。ヤツは元スプリンターだ!!

よもやの平坦ゴール。
これは鳴子が飛びだしていてよかったと思える場面でありますな。
登りも出来るようになったとはいえ、スプリンターとしての矜持は持ったままでいる鳴子。
そして大阪で御堂筋君に敗れた時と似たシチュエーションに・・・燃えている。

しかも!!ゴール前っちゅうバクダンおまけ付きや!!

絶好の勝負の場面。となれば御堂筋君も出し惜しみはせずとっておき・・・足のテーピングを解く。
なるほど。レース前に行った勝負の約束。1回限りと言うその約束を早速1日目で昇華しようって話ですな。

いよいよ1日目のゴール。いや、まだもう少しかかりそうな気配はあるかね。
ともかくそんなゴールの瞬間に間に合う為に・・・無茶な飛ばし方をしてきたのは総北OB勢!!
同乗している金城さんや巻島さんがフラフラになるほどの爆走っぷり。さすがの田所さんですなー。
なにはともあれ間に合ってよかったですよ。うん。

さてさて、この偉大な先輩たちの前で勝利する姿を見せることができるのだろうか。
鳴子は御堂筋君に勝てるのか?今泉君は追いつけるのか?何故か坂道が追いついてきたりはしないだろうか!?
3日目ならさておきさすがの初日で最後はなかろう。手嶋さんも連れてますしね。
ともかく何とか今泉君には追いついてもらいたいものであります。見せ場が回ってきてない葦木場のためにもね。



RIDE.344 シビれる直線!!  (2015年 16号)


栃木県日光市。中禅寺湖の北西部標高1400mには広大な湿地が広がっている。
日光火山群の主峰、男体山の噴火の際に堰止められてできた湖が長い時間をかけて湿地化したものである。
その名を戦場ヶ原。日光の大蛇と赤城山の大百足が戦った昔の伝説によるものである。
尾瀬と並ぶ有名な大湿地は多様な動植物をはぐくみ、夏の避暑地。観光地としてもにぎわっている。
戦場ヶ原を貫く国道120号線。三本松公園駐車場特設ゲート。ここがインターハイ栃木県大会1日目のゴールである

相変わらずの細かい説明が面白い。
聖地巡礼として漫画の舞台を巡るにも便利な情報でございます。

さて、そのインターハイ1日目のゴールを目指して駆ける選手たち。
先頭を争うのは鳴子と御堂筋君。
御堂筋君は脚のテープを外し、貯めていた両脚の筋肉を解放する。ぶっるぅぅん。いい音だ。やっぱりブヨブヨなのかね?ブヨブヨ。

そんな選手たちよりも一足早くゴールに辿り着いているのは定時たち1年生。何だか久しぶりだ。
学連のバスに乗ってゴール前の応援の場所取りをしている様子。
そんな定時たちに古賀さんから大事な指示が飛ぶ。
どうやら古賀さんたちはゴールの瞬間には間に合わないようである。
となれば、渋滞に巻き込まれている寒咲さんや段竹たちも間に合わないのでありましょう。なので・・・

そこにいる1年だけで総北のゴールをサポートしろ!!

割と呑気に楽しんでいた様子の1年達。いきなりの指示に固まってしまう。おほ!?
気持ちは分からないでもないが、誰かがやらなければいけないことでありますからねぇ。やってもらわないと。
とりあえず必要なのはゴール先で選手を迎え入れる準備。氷水とタオルとボトルの用意だ。これはまあ慣れたものであろう。
しかしそれよりも大事なのは・・・応援
ゴール前の選手は出し切ってる。その中で最後の最後力にするのは仲間の応援。その声である。

勝たせろ。おまえの応援で。やれ!!おまえしかいない!!
重要な役割だ。声で背中を押すんだ。他の声にかきけされないように。

確かにこれは重要な役割。そんな役割をいきなり背負わされる定時。大丈夫だろうか?
まあでも確かに声の大きさであれば定時はそうそう他の誰かに引けを取ることはありますまい。
兄も認める。おまえならできるよと言ってくれている。ならば・・・やるしかない!!

ゴール前の応援の準備は整った。
古賀さんたちも定時たちも知らないが、総北OBという応援の隠しダネもありますし、多くの力を得ることが出来そうだ。

とはいえ、まずゴール前まで争ってる状態になっていないと話にならない。
ゴールまでのこり1km。まだまだ御堂筋君と先頭争いを行っている鳴子。
特上の舞台で、わんさかいる観客の前で強敵との争い。こいつが派手じゃなかったら何が派手かわからない。
そんな派手な場面が大好きな男、鳴子章吉。張切らないはずがない。

エエで!!御堂筋!!最高や!!燃えまくる!!やろうや!!命がけの勝負を!!

去年も目が見えなくなるぐらいに出し切った鳴子。その鳴子が述べる命がけの勝負。ハンパじゃぁない。
そういう意味でのハンパなさでいえば御堂筋君も同様であるわけで・・・もうこの2人の逃げ切りで確定か・・・

なんて観客のセリフがフラグとなって、後続3人登場。ようやく来たか!!
しかし前との差は350m。まだまだ大きい。
スイッチ入れてノリノリで走ってた黒田さんもこの差を目の当たりにするとどうにも厳しい表情となる。ザワッ。
それでも意地でエースを運ぼうとする黒田さん。
しかしそこでオレが引くよと言いだす葦木場。ついに、ようやく出番でありますか・・・!!

黒田さんと今泉君だけでは追いつけない。
のであればもうエース温存とか言っている場合ではない。
3人で力を合わせればひょっとすれば先頭に追い付く可能性もある。
もし追いついた場合、そこからどのように決着を争うこととなるのか・・・注目ですな。



RIDE.345 葦木場拓斗  (2015年 17号)


ようやく見えた先頭。しかしその差は大きい。
頑張って追いつこうとする黒田さんであったが葦木場は言う。この差は2人じゃ埋まらないと。

だけど3人なら到達できるかもしれない。
エースはゴールまで足を貯めなきゃ話にならない――けど、ゴール前にいなきゃ勝負にならない
引くよ。オレが。もう箱根学園に失うものは何もない。

そう述べてついに動く葦木場。
そりゃ追いつけないのでは勝負に参加すらできないわけですからねぇ。
それに先頭の2人はもう足を貯めるとかいう状態じゃないわけですし、ここで葦木場が力を使っても条件が悪くなりすぎるわけでもない。

今大会最も長身の202cm。長い股下からふりおろされる脚はまるで巨大なナタ!!
大きいとよく言われる今泉君と比べても20cm以上差がある葦木場。これは相当なものですなぁ。
こんな巨体が上体を揺らしながら走るのだから、側を走る人への威圧感はかなりのものと思われる。

黒田「拓斗ォ!!頭ん中クラシック鳴ってるかよ!!」
葦木場「鳴ってるよ。ベタに第九だ!!

一気に調子づいた感じの葦木場。第九以外が鳴る事も果たしてあるのだろうか。
それはさておき、葦木場が出たことでじりじりと差を詰める3人。
ゴールまでのこり1km。距離は短いが果たして追いつくことができるのかどうか。

ユキちゃんがオレを休ませてここまで運んでくれた。
クラシック鳴って心も弾んでる!!
一生出れないと思った"インターハイ"ってレースにオレは出てペダル回せてる。
しかも箱根学園の"1番"のゼッケンをつけて。最強の洗濯係だったオレが!!

背は伸びるがそれに反比例して落ちる成績。
落ち込み選手の道を諦めかけたが、道を照らしてくれた福富さんに新開さん。
その言葉に応え、結果を出した。
しかしその期待に応えられず逆走という見逃せない行為をしてしまう葦木場。

めまぐるしい3年間だった――ほめられたもんじゃない3年間だった・
メチャクチャをやったオレ。「コース逆走」「無期限レース出場停止」なのに支えてくれた皆――許してくれた

仲間達は許してくれた。そして期待をかけてくれた先輩はこう言ってくれている。ゴール前は肉体と同時にメンタルの闘いでもあると。
だから念じろ。何度も強く"自分はエースだ"と。"オレは強い"と!!

オレは強い!!

まさに福富さんを象徴する言葉。
これを自らに言い聞かせてずっとやって来た福富さんの言葉を・・・エースとして受け継ぐ葦木場。

この手足は、この体は、このゼッケンは、このチャンスはオレのもんじゃない!!
オレは――このレース。オレをエースだって言ってくれる――皆に恩返しするために走ってるんだ!!

プライドとかそういったものよりも恩返しのために走るという葦木場。
だからこそ親交の熱い手嶋さんとだって戦う決心ができたわけである。
箱根学園のエースでありながら、箱根学園の中では結構珍しいタイプであるかもしれませんな。

オレは、強いよ!!

デカイ体を左右に振らすメトロノームダンシングを使い、距離を詰める葦木場。
黒田さんも猫足をしならせて絶対に追いつくという気迫を見せる。
さてさて、距離は確かに縮まっているようですが、ゴール前までにはどうなることか・・・
箱学2人の気合が高まっている中、解説役のように一歩下がっている今泉君。
鳴子が先頭争いしているのでそこまで頑張らなくてもいいとはいえ・・・どうなんだろうかね!!

何にしても1日目で葦木場の活躍の場面があって良かった良かった。



RIDE.346 覚悟の5人  (2015年 18号)


迫るゴール。先行く2人と追いつかんとする3人の計5名が争っている。
しかしこうしてみても2人と3人の間に距離はまだ随分と残っている。
速いし勢いもあるし差も縮まっているようだが・・・どうも厳しい。なんせゴールまではあと500mしかないのだから。

ムダやよ?ハコガクゥ。そんな必死になっても。力合わせても汗出して筋肉ふるわせても。
ボクゥは最初から――「のこり500mでこの差」ここまで計算済みやったんやから!!

頑張って縮めたはずなのにそこまで既に計算済みだったと言われてしまっている3人。
葦木場が出なければ計算より駄目やったねププププとかされていたわけか。
いや、鳴子がついて来ているのは計算外と述べている。となれば4人で追いかけて来ることを想定していたはずである。
4人で来るところを3人だけで計算通りのところまで追いすがったのだから結果としては凄いと言えるのではないだろうか。
そんななぐさめを今から言ってても仕方がないか。

先頭の2人は言葉と体の双方をぶつけ合いながら進んでいる。
これだけでも速度が削れそうな気もするのだが、後ろとの距離は縮まらないのだろうか。
まあ田所さんとぶつかりながら進んでも速かったわけだしなぁ。
それにしても観客。なんだあの2人!何かすげぇ!!って。もう少し何か言うことはなかったのか?
そんな意見でいいのなら感想も全てそれで埋め尽くせるぞ。こいつら何かすげぇ!!

さておき、この段階においても鳴子の籠絡に走る御堂筋君。もしも鳴子が京都伏見にいたとしたら――
ある程度の実力を認めてオーダーを出すことはあっただろうが、さすがに"最高の友達"はなかろうて。
フワッとしたムードを作って緊張感を切らせようという作戦のようだが、さすがにそれは言葉が過剰すぎる。

逆に1mmも考えたことさえなかったという発言もどうなのだろうかと思われる。
最高の友達はさておき、味方に優れた選手がいたとしたら、御堂筋君はどう思っただろうか。気になるところですな。

のこり400mラインを通過。鳴子が前に出る。
そしてついに御堂筋君の口から真のとっておきを出しそうな言葉が漏れる。あのスタイルが出るか・・・!!

前の2人を必死に追う3人。
黒田さんは再びスイッチ入れ直して加速。スイッチの入れ直し!そういうのもあるのか!!
まあ、ようするに血を抜けばいいって話ですしね。

それはそうと、ようやくこの場面で今泉君。鳴子が大阪で誰に負けてきたのか気付く。
そしてそれがあったからこそさっきの混乱の中でも御堂筋君から目を離さず反応して追いかけられたのだと考える。うむ。
その推測は当たっているが、同じく因縁のある今泉君がしっかり目を離していたのはどういうことだろうか。
まあ、直前で小鞠に触れられていたこともあるし、御堂筋君には去年のインターハイ最終日で勝っているわけですし。
その辺りで考えると因縁の度合いは既に鳴子より低くなっているのかもしれませんな。

ということもあってか、御堂筋君との決着に去年のような拘りのない今泉君。心を決める。

行け鳴子。この追走が、もしゴール前ギリギリでオレが追いつけたら。
全力でオレがおまえの背中押してやる。今日のエースはおまえだ鳴子!!ゴールを獲れ!!

ようやく今日のエースを鳴子と認めた今泉君。遅かった気もするがまあいい。
ゴール直前でその意識が生きるかどうかはまだこれからのことでありますしね。

のこり300m。ここでゴール前の大仕掛けが登場する。
1日目ゴール前は国道120号線から広い駐車場にゴールゲートを引き入れるためにテクニカルなコーナーがある2つ!!

直線ならば後続も追いつけたかもしれない。しかし集団でコーナーでは厳しいだろうと考える御堂筋君。
しかもそのコーナーの途中で変形。変態。トボうとする。おいおいこのタイミングで・・・!?
下手すると前が見えず、曲がり切れずそのまま観客席に突っ込んでしまいそうな構えだがいいのか!?

それはそうと後続の黒田さん。御堂筋君の予想とは裏腹にコーナーがあることを喜んでいる。
ふむ、荒北さん譲りのギッリギリのコーナーリングで差を詰める考えでありましょうか。
しかしそれでどこまで詰めることができるものか・・・
むしろこの発言はフェイクで、御堂筋君のトブという発言に乗っかる可能性がある。
コーナーが2つあるのなら曲がらずに突っ切れば時間を短縮できる。
その発想から、自らをジャンプ台として葦木場に跳ばせる黒田さん。これでゴールまでショートカット可能だ!!とか。
実際にやってくれたら度胆を抜かれること間違いないと思う。
ついでに今泉君も後を追って跳んでいけば空中戦の様相も呈すことができますが。どうか。うん、ないな。



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