蒼天紳士チャンピオン作品別感想
弱虫ペダル
RIDE.217 〜 RIDE.243
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連載中分 SPARE BIKE
弱虫ペダル 26巻
RIDE.217 真波と坂道
(2012年 35号)
「登れ、小野田坂道」
・・・うん。わかった。登るよ!今泉くん!!
最後にもらった指令はなんともシンプル。とにかく登りゴールを取ること。
細かい部分は自分で考えろと言われてますし、あとは目的に向けて邁進するだけですな。
さて、インターハイ3日目最終ゴールまであと2.5km。
レースには向いていそうなぐねぐねとした道である。距離ありそうですなぁ。
車で登ろうとしたときは何で直線じゃないのかと問いたくなりそうでありますが。
先頭争いを坂道に託した今泉君。
車体はかなり限界が近い様子。さすがにフレームにヒビが入ると相当力が逃げますよね。
それでも今泉君はリタイアせずゴールまで走り続けるつもりでいるらしい。結果は残しておきたいですもんね。
なんだか笑顔な、というか穏やかな表情になっている今泉君。
任せれる相手に託せられたということでしょうかね。
そんな今泉君に話しかける福富さん。
オレたちは戦況をよみ、先行する御堂筋とおまえの動きを見極め最高のタイミングで最良のクライマーを出した。
今のは完全に独走のタイミングだった。おまえたちは、それさえもよんでいたのか!!
どうやら福富さん。画面外の見えないところで凄いことをしていたらしい。
まあ、あの先頭争いに遅れることなくついていき、その後追いついたわけですからねぇ。
そして、最良のタイミングで切り札を射出した。福富さんの働きは大きい!
と一応言っておきましょう。まあ、エースがプライドに寄らず1年を打ち出したのだから凄いっちゃ凄いはず。
いえ・・・正直ビックリしましたよ。予想できなかったっす・・・
けどあの際で・・・よく分かんないすけど・・・信じてたんです。オレは。あいつがついてきてることを。
オレがあいつに、ついてこいっつったんで、したらあいつは"わかった"つったんで。
今泉君は微妙に敬語なれしていないなぁ。
というのはさておき、総北には明確な戦略なんてものはほとんど存在しない。
レース中も金城さんのその場の判断で動くことがほとんどでしたしね。
その金城さんがいないのだから、もはやその場その場の動きで対応するしかないじゃないですか。
信じて、あずけて、任されて、全力で走る。
そういうシンプルな戦略だったみたいですよ総北は。
確かにシンプルだ。戦略と呼んでいいのかも怪しいレベルである。そんなもの一歩間違えば・・・
オレも今、それに気づいたんです。
それって、ロードレースそのもののおもしろさだったんですよね。
だから笑ってんだオレは。
行け、坂道。オレたち全員の心積んで全力で走れ!!
ジャージの前を空けて語る今泉君。久々に穏やかな表情となっていて妙に色気を感じなくもない。
インターハイに入ってから表情がどんどん険しくなっていってるなと思った。
どうやらそれは常時気を張っていた結果だったみたいですね。しばらくは穏やかな感じでいてくれるかもしれません。
ここで総北メンバー全員の状況が1コマずつ描かれる。
田所さんや巻島さんはそれぞれ新開さん、東堂さんと並び走行中。
トップ争いからは外れたが、リタイアせずにゴールを目指す組ですね。
鳴子と金城さんはリタイアし、おそらくゴールで待機中。
霊体を放出していた鳴子だが、どうやら生きてはいる様子で一安心。いや、まだ安心はできないか・・・?
レース後、頻繁に生霊が抜け出す体質になっている可能性がなきにしもあらずですし。それはそれでおいしいが。
さて、そんな総北メンバーの心を積んだ坂道。
震えを押しとどめ、目の前にいる敵である山岳にこう告げる。
ボクはキミを抜いてゴールを獲る!!
さすがにこの土壇場においては、坂道も明確な勝利を意識した走りとなるようですな。そうでないと困る。
しかして、その宣言を受けた山岳は?
因果・・・運命・・・
実はさ、オレ。ここまでキミが追いかけてくるなんて予想してなかった。
先頭だよ。インターハイの3日目だ。こんなところでキミと闘うなんて。
これだからやめられないんだ。ロードは!!
かつての合宿で、山岳と坂道は一緒に走ったことがある。
あの時、山岳は巻島さんの登りを見にきていた。だが、出会ったのは坂道だった。
あの日から、こうなることは決まってたのかもしれないね。
坂道くん。走ろう。そしてオレも、ゴールは決してゆずらない。
のんびりとお話しているようにも見えますが、勝負の意識は山岳にもあるってことですね。
ただ山岳の場合、あんまり仲間の思いを乗せてって感じのキャラではない。
と思ったが、箱根学園のキャラって全体的にそういう感じの走り方はしないんですよね。
山岳はさておき、全体的に仲の良い箱学。特に3年連中の仲はすこぶる良い。
その割に、誰かの思いを積んで――みたいな表現はほとんど見受けられない。
荒北さんは福富さんのことをよく口にしていた気はするけど。
というわけで、この戦い。仲間の思いを積んだ坂道が有利と見るにやぶさかではないって流れでしょうか。
これまでの3日間様々な場面で活躍してきた坂道。
それに対し、これまでの3日間ほとんど活躍の場面がなかった山岳。
実に対照的な活躍を見せる2人。山岳に疲労はほとんど無い。最後も福富さんに引き連れてもらってたようですし。
体力は山岳。心の支えは坂道という状況。果たして勝負の行方は?って感じだ。
ついに最後の直接対決となりましたが、どんな展開を見せてくれるのでしょうかねぇ。
ビックリネタはもうほとんど残っていないとは思うが・・・山岳にはもう1つぐらい切り札を残していて欲しいものである。
RIDE.218 闘う意思
(2012年 36+37号)
ついに迎えた山岳との勝負の時。
山岳も坂道との約束を忘れていたわけではない。だから言う。
来たね。約束の時だ。と。
坂道もまた、ボクはキミを抜くと宣言する。対決の意思が見て取れてよい状況だ。
ぐるぐると回転数を上げて迫る坂道。
山岳は坂道の全身から闘う意思というものを感じている。すごいケイデンスだ!!
だが、もちろん山岳とて負けてはいられない。
この激坂で加速を開始する山岳。
そ。それ――ッ!!それ―――!!
山岳の叫び声はこれなのでしょうか。微妙にリズムに乗りにくい声のかけ方ですね。さんそーよりはいいけど。
その山岳に対し坂道。あああああああと叫んで追いつこうとする。最近この叫び多いですな。
回れ回れ回れええええ!!みんなのために!あああああ!
苛烈な先頭争いが行われている頃。
のこり6kmの地点を巻島さんと東堂さんが走っている。
ここで耳に入ってきた先頭の情報。1位はゼッケン6番真波山岳選手。これを聞いてガッツポーズをする東堂さん。
だが、そのすぐ後ろを僅差で坂道が追っていると聞き、今度は驚愕の表情を見せる。
相変わらず働きの割にはあまり評価されていないですな坂道。
まあ、東堂さんはあんまり坂道の凄さを目の当たりにする機会はなかったですしねぇ。
この情報はさらに後方の田所さんや新開さんにも伝えられる。
ここでも意外そうにしている新開さんと嬉しそうにしている田所さんといった両校の対照的な姿が見られる。
そして、ゴールで待っている金城さんの耳にもレースの状況は入ってきた。
慌てて鳴子のもとに駆けつけ、報告を行う金城さん。
ハコガクのクライマー真波を追っているのは、
オレたちの思いを継いでジャージをゴールに運ぼうって闘っているのは小野田だ!!
あいつがたった1人で闘ってるんだ。
金城さんのこの言葉に面を上げる鳴子。ようやく生存を確認できましたね。安心安心。
逆にこれで生霊になって背中を押す荒業はしばらく使えなくなったわけだ。
まあ、ゴールで待っていれば直接出迎えれるし、そこで声援などで引っぱるとかすればよいですよね。
さて、先頭争いは継続中。
山岳の加速に引き離されずついていく坂道。
ならばコレならどお?と風に乗った加速を疲労する山岳。
例のごとく翼が広がる走法だ。それえぇ!!
山岳のその走法に対抗するように身を屈めて思いっきり踏み込みを行う坂道。
その結果――ケイデンスを上げただけで山岳の環境利用走法に並んでしまう坂道。えぇ!?
これにはさすがに山岳も閉口している。
そりゃあ、自慢の翼が突入してきた坂道にへし折られたのだもの。笑顔も消えるわな。
御堂筋君にはすぐに真似をされ、坂道には普通に追いつかれる結果となった環境利用走法。
山岳に他に技がないとすると、これは厳しい話になりそうでありますよ?
大会前から設定されていたライバルキャラなのだし、ここはもう少し何か目立った技を披露してもらいたい。
風がダメなら・・・火だ!とか言って前進燃えながら進むとか。利点は横に並ぶと熱くてたまらないところ。ダメっぽい!
そんな感じで拮抗している2人の戦いはしばらく続きそうな雰囲気。
だが、ここで弱虫ペダルそのものに恐るべき情報がもたらされる。
なんと次号から・・・渡辺航先生がW連載を始動するという!!
な・・・なにを言っているんだ・・・?分からない・・・何を言っているのか分からない!!
次号、弱虫ペダルSPARE BIKEが巻頭カラーで新連載開始だという。
そして通常の弱虫ペダルはセンターカラーでそのまま継続だという。
い、一体どういうスケジュールを組んでそんなことをしようというのか・・・!!
SPARE BIKEというタイトルも気になる。
坂道が新型の自転車を手に入れるための前フリの話となるのだろうか?
それとも外伝的な話として別のキャラに焦点が当たるのか?気になる話であります。
RIDE.219 キミを抜く
(2012年 38号)
山岳に追いつき並ぶ坂道。
しかし、今回の坂道。ただ追いついただけではない。さらに加速する!
真波くん。ボクはキミを――抜く!!
残り2kmの地点で山岳を追い抜く坂道。
抜いた後もペースは落ちていない様子。
これには山岳も驚愕の表情。翼をへし折られたショックはでかいですわな。
生え揃うまではジリジリと離されてしまうことになりそうな予感。
ゴール地点では、トップの選手がやってくるのを今か今かと待ち構えている。
ゲートを閉め、選手が入ってくるのを迎えれる体制は整った。
総北の部員や監督、マネージャーといった面々もゴールで待ち構えている。
そんな彼等の元に届いたのは坂道がトップで登ってきているというアナウンス。
インターハイであの小野田くんがトップ!
あまりのことに慌てまくる杉元。ボクは経験者ですよー!やかましいわ。
坂道の才能を見い出し、ロードの世界に引きずり込んだ寒咲さん。感慨深そう。
合宿で破れ、坂道に後を託した手嶋さん。思った以上の活躍に驚いている様子ですな。
頼んだぞ小野田。託されたんだろ皆に。つなげよ!!最後まで!!
思わず力の篭る手嶋さんでありました。
さて、同じようにアナウンスで驚愕している2人組。委員長と坂道のオカンの2人組だ。
委員長は山岳が抜かれていることの驚きだった様子。信じきってるんですなぁ、委員長。
そしてオカン。物凄く良く知った名前がトップと聞いての驚きだったのだが・・・
どうやら同姓同名ってことで納得した様子。オカン・・・
ゴールする直前も、見た目まで似てるとか言い出しそうで怖いわ。
それでいて、ゴールした直後には息子だと分かっていたと言い出しそうで怖い。
残り1700。
山岳を抜いた坂道は大勢の人々の歓声に晒される。
今泉君は先頭は静かだと言ってたけど、レースの先頭は凄く騒がしいらしい。
なるほど。今泉君はこれが嫌で坂道に先頭を譲ったのですな!いやいや。
というか、この観客たち集まりすぎじゃないかね?
自転車レースでは確かにこういったノリなんでしょうけど、あまりに近い。走りにくそうだ。
まあ、独走状態だから集まってきているわけで、さすがにデッドヒート中には寄ってこない・・・よね?
これだけ集まっていたら人垣が邪魔で抜けないですよ。
先頭のにぎやかな状態。
しかし、坂道の耳は後方から聞こえる音を捕らえていた。
きこえる!歓声でうるさいはずなのに――キミの息づかいと――車輪の音だけが――!!
振り返ったタイミングで追いついてくる山岳。ようやく羽根をもがれたショックから立ち直ったか?
坂道が集団に取り囲まれてスピードが鈍ったからなのかもしれないですな。
まってよ。走ろう・・・もっと。坂道くん。
出しきるまでさ・・・せっかくだ。でないと、もったいないだろ。
わかるだろ。勝負もチャンスも人の生も――"次"なんてないんだ!!
いきなり人の生という話まで肥大しました。
やけに生きてるという言葉を使ったり、心臓に手を当てたりする山岳であるが、何かあるんですかね?
まあ、チャンスは1回限りという考え方は悪くないと思いますけどねぇ。
せっかくだから命を振り絞ってこの生を終えるぜと言い出し兼ねない怖さを感じないでもない。
でもそのくらいやらないと坂道には勝てないんじゃないかと思わなくもない。
この舞台だからこそ輝くか!真波山岳!!
福富さんがなんだか訳知り顔で述べている。
果たしてこの予想通り山岳は輝くことができるのだろうか?
福富さんの予言が入ったのでかえって不安だなぁ。とか言っちゃったりしちゃダメですからね!!
RIDE.220 マナミノツバサ
(2012年 39号)
ゴールまで残り1700mというところで山岳に追いつかれた坂道。
その山岳を送り出した福富さんは上を見据え何を思うのか。
今泉君は問う。何故最後、自分がいかずに真波を送り出したのか、と。
疲弊していたとはいえ、エースであるあなたなら機材トラってるオレをパスできた。それでも預けた理由は――
今泉君の問いに答える福富さん。
箱根学園史上、ラストゴールを1年にあずけた例などかつてない。
山岳が優れたクライマーであったとしても、それだけならばゴールを預けたりはしなかった。
それだけならば、どんなに疲弊していたとしても自らペダルを踏んだだろう。
行かせた理由。それはヤツが勝つ男だからだ。
今泉君と似たような疑問を過去に抱いていたのが荒北さん。
まあ、実際この3日目においても不思議ちゃん呼ばわりしていたわけですからねぇ。
IHのメンバーを決める予選で山岳は勝利した。
しかし、全体のことを考え、メンバーは黒田さんがいいと抗弁する荒北さん。
あいつの方が話ワカるし練習じゃ登れてる。泉田君とも仲が良い。
山岳はまだ1年だし、必ず出さなければいけないというわけではない!という理論だ。
なるほど。荒北さんの言うことも一理ある。
なんだかんだで今年の箱根学園は仲の良いチームである。特に3年周りは凄い。
泉田君も新開さんは格別すぎるが、他の先輩たちをそれぞれ尊敬している感じ。
その中において、山岳はやはり異分子な感じがしてならない。
実力はあるが話が通じるかどうかわからない相手である。そりゃフシギちゃんと言われますわな。
真波か。正直・・・女子の人気を二分しちまうという点においては問題があ――
東堂さんは黙っていてください。
新開さんの意見は、トーナメントで決まったしルール的にはフェアなのでいいんじゃないか、とのこと。
ふむ。これで賛成2反対1といった状態になりましたな。東堂さんの意見は反映されません。
だが、今回のインハイの最後は富士の登り。最後はクライマーがものをいうことになる。
もしも、何かあって最後にあのフシギちゃんが1人残って、本当に箱根学園の旗をあずけられるのかという話だ。
荒北さんは豪放磊落な感じというか、ぶっきらぼうで荒々しい感じの人である。
が、なんのかんのいいながら全体のことを気にかけて動いている人でもある。
運び屋の異名を取るだけのことはあり、サポート気質なのかもしれない。
これだけ口調の荒いサポート気質な人というのも珍しい気がするが、それはそれで面白いですな。
荒北さんの意見を聞き、思うところのある福富さん。
確かにこの男、未知数――
どこまで期待していいのかわからない部分が大きすぎる。賭けに出ていいものかどうか。
それを確かめるために、福富さんは山岳を誘い一緒に走る。
山岳は、勝負前は軽く眠って集中力を上げるようにしている。
なるほど。それでよく遅刻するわけですね・・・たぶん、それだけが原因じゃないと思うけど。
おかげでリフレッシュしてます。いつでもいいですよ!
ここからですか。もうちょい先ですか。やりましょう勝負!!
誘われたというだけだが、山岳は勝負する気まんまんでいるらしい。
勝負事の絡まない練習だとそれほどでもないが、こういう場面ではやる気になるタイプの人間のようだ。
ん、それって荒北さんと似たタイプってことなんじゃ・・・?
勝負開始。
速い。が、これくらならば黒田さんと同格。福富さんでもおさえることができる。
走りながら福富さんは山岳に問う。
今日は風がない。得意の羽根は出せないか!と。
出せますよ。羽根。風なくっても。
"頂上に近づけば"って条件ありますけど。正確には"出ちゃう"って感じですけど。
何!?風がなくても羽根を出せるだと!?
これは意外な話が飛び出してきました。てっきり風を受けて広がるものなのかと思っていたら・・・
福富さんは見る。頂上付近でのその山岳の加速を。
そして決定した。インハイの6人目は真波山岳とすることを。
しかし、決定はしたものの、ひとつだけ疑問があった。インハイを何のために走るのか。それを問いたい。
オレ。すげー坂好きなんです。それは山の頂上までつづいているからです。
オレは、誰よりも、どんな時でも、頂上の景色を最初に見たいんです。
純白の――誰にも触れられてないそれを、オレのものにしたいんです。
山岳の強さとはそれであったか。
欲するもの――それは人をつき動かす!
おまえの目の中にゆるぎない根底を見た。最後の勝負では全てを使い切る。
残るのは心の中にある「欲」!!
「勝ちたい」――それよりもシンプルな「頂への渇望」
ゆけ真波。おまえが欲する頂は、すぐ目の前だ!!
誰よりも先に頂上に至ろうと欲する男、真波山岳。頂上を目前にして、駆け出そうとする。
回転数を上げると共に・・・ギアを上げる!
鳴子曰く、登りの基本はギアを落とすことにあるという。
ギアを落とし、ケイデンスの回転で登る。その方が楽に登れるとのこと。
だが、山岳はギアを上げた。
楽に走るよりも速度を上げる走りってことなんですかね。ダンシングも開始したようですし。
そういえば坂道もウェルカムレースで似たようなことやってた気がしますな。
しかし、山岳。一度だけではなく、連続してギアをどんどんとあげていく。これは重い!
ごめん坂道くん。オレ頂が近づくと。心逸っちゃってギアが自然と上がっちゃうんだ!!
ギアを上げ、加速する山岳。
その背中には羽根が生えているように見え・・・ギアが上がるたびに枚数が増えていく!!
見えるよ。最後のゲートが!!
ここにきて、ついに山岳の本領が発揮された!
そうかぁ。羽根が増えるという発想がありましたか。それは盲点でしたな。
1枚の羽根が突き破られたのなら、何枚も生やせばいいじゃないって話ですな。これが三本の矢理論か!!
しかし、山岳。誰よりも速く、最初に頂に至りたいと言っているのだが、何となく危うい気がする。
野試合ならそれもいいが、レースだとどうなのだろうか。
なんせ、観客とか部員とかリタイアした選手が一杯頂で待ち構えているのだぞ!!
ゴールが見えた、と思ったら何だか一杯人がいる!全然最初じゃなかった!
と気付いて山岳のテンションが駄々下がりになるという展開がひょっとしたらあるかもしれない。
いや、今更そんな展開を出されても困るわけですけどね。
RIDE.221 真波、登る
(2012年 40号)
頂上は間近。先頭に立った山岳はそれを肌で感じている。
いつもそうなんだ。どんなに先のカーブが見えなくたって、
山頂の向こう側の空気が流れ込んでくる。新鮮で少し冷やりとしてて、その空気を感じると、心逸るんだ。
早く。早く頂上に――て。だから、思わずギアが上がっちゃうんだ!!
確かに、足に負担は掛かるがギアを上げれば速度は出る。
心が逸れば、負担なんてへっちゃらになるって理屈ですね。
思わずジッパーを上げてしまった!と同じ話である。いや、同じ思わずでもなんだか違う気が・・・
ボクは回して登る。真波くんはギアを上げて登るのか!!
ロードレーサーのギアの数は10枚。
今の山岳は5段目。つまり、ここから最大5段階速くなる可能性があるのだ!!
これは・・・わかりやすい指針が出されましたね!
実際にそこまで上げることができるかはわからない。
でも可能性としてそれがあるというだけで脅威は段違いに上がってくる。いいシチュエーションだ。
しかし、5段目の現在からして既に追いつくことができない坂道。ひゃあ速え。
来ない!ついてこれない坂道くん。
しょうがない。いつだってそうなんだ。
頂にいくことと勝負するってことは両立しないんだ。今までだってそうだったから。
少し寂しそうにする山岳。だけど、意を決し登ろうとする。頂へ!
やはり山岳は勝負することより頂に誰よりも速く到達することが最上の望みであるらしい。
しかし、今までだってそうだった、というのは気になるセリフですな。
ということは、やはり回想の福富さんとの勝負の結果も――勝負にならなかったってことなのか?福富さん・・・
重って!!ギア。ギア重って。けど、気持ちいい!!
微妙に脳内麻薬が分泌しすぎてトリップしているんじゃないかって表情を見せる山岳。
しかし、まだ1.5kmはあるというのにずっとダンシングして駆け抜けるつもりなのだろうか。
ギアも上げちゃったことだし、そのままいきそうな気がするな。
集中して走ってると、変なの思い出す。
といいつつ、軽く回想シーン。
変なのと言われて思い出されたのは、東堂さんとの会話。貴様ー!!東堂さんを変なの扱いするかー!!
まあ、されてもしょうがない気はしますけどね。
それはさておき。
2日目の夜と思しき時に、東堂さんは山岳に述べる。明日はオレが山頂を獲る、と。
巻島をつかれさせ、金城を追い落としたらコースクライマーであるオレが最後は獲る。
ミーティングではそのように決まっている。
だが、実際のところ、巻島さんを疲れさせることができる人なんて限られているのではないだろうか。
それができる人は?てな話をしたら、東堂さんが真っ先に名乗りを上げてくるのは間違いない。それ尽八、尽八やります!
というわけで、東堂さんは山岳に問う。仮に何らかのイレギュラーがあって、おまえが行くことになったらどうする?と。
山岳としてはとても燃える展開である。嬉しい話でありましょう。
だが、あんまり勝手に走ると怒られちゃいますかねーと言う山岳。
インターハイはチーム戦であると一応自覚していたらしい。
なるほど。これまで山岳が目立ってなかったのはチーム戦というのを自覚して抑えていたからなんですね。
人数が減ったので、御堂筋君と勝手にルール作って勝負したりしだしたわけだ。いや、それはやはりどうなのか。
東堂さんは、同じクライマーとしてアドバイスをしてくれます。
おまえが1人、箱根学園のジャージと歴史、プライドを背負いゴールに向けて走る状況になったのなら、
その時は自由に走れ。チームのことは全て忘れていい。
それがおまえのクライマーセンスを引き出す、最良の策だ。
なんだかんだで同じクライマーである東堂さんは山岳のことをしっかり理解している様子。
レギュラー話をしているとき、荒北さんにもその辺りを説明してあげればよかったのに。
まあ、それよりも女子の人気の方が大事だったということなのでしょう。仕方ないね。
東堂さん。
「仮に」「仮に」って言ってたけど、本当はこうなることもシチュエーションに入ってたんでしょ?
すげぇや!!あの人のアタマの中どうなってんの!!
普段は女子の話ばっかりしてるのに、こと自転車ってなると戦略的で理知的!!かなぁないや!少しほれそう!!
単に巻島さんと消耗しあうことになる可能性が高いと思えたからって話はありますけどね。
実際、自分がダメになった場合、託すのは同じクライマーである山岳だし、前もって告げておくのは理解できる。
どうでもいいが、あの人のアタマの中どうなってんの!は褒め言葉にも罵倒にも使えますなぁ。
そのうちネタに使うこともあるだろうし、覚えておくことにしましょう。
いけよ山岳!
「自由」自由に!!自由に走りますよオレ!!
ジャージの前をはだけ、なびかせながら走る山岳。
ゴールまで残り1.5km。先頭は入れかわり、引き離されているというアナウンスがゴールに響く。
慌てる杉元。だが、手嶋さんは坂道の奮闘を信じている。
オレは知ってる!あいつがクライマーとしての力を発揮すんのは、追いかけてる時だよ!!
それはその通りですな。
先頭に立って逃げ切るタイプではなく、追いかけて刺しきるスタイルが坂道である。
だが、ここにきてようやくとはいえラスボスっぽい風格を見せてきた山岳。
それに対抗するのに、坂道には何か手立てがあるのだろうか。
まあ、坂道はまだダンシングもしていないですしね。追いつくことができれば、それで刺し返すことは可能かもしれない。
まずは追いつくまでをどうするかという話になるが・・・どうするんでしょうね。
面白い発想が飛び出すことに期待したいところであります。
RIDE.222 シフトアップ
(2012年 41号)
いつも頂には誰もついてこなかった。
坂道くん。実はオレさ――もしかして、キミなら――て思ってたんだ。
でも、さよならだ!!
わかってる。山頂を獲ること、自由に走ること、その代償は少しの孤独。
少しの孤独という割に、えらく寂しそうな少年時代のカットが入る。
山岳派子供の頃を寂しく過ごしていたというのでしょうか。
そういえば、御堂筋君は昔いじめられっ子だった。
弱虫ペダル的な話で考えると、実は山岳にもそういう過去が・・・!?ありやなしや?
自転車を始める前からフシギちゃんだったかどうかは気になりますね。
頂上に向かいながら、どんどんギアを上げていく山岳。
なーな!!と、7段目まで一気に上げている。
その走りを見て、すごいキレイとの感想を述べる女子がいるが、そうなのか?
まあ、ひょっとしたら観客にも羽根が見えているのかもしれませんな。それならキレイに見えるだろう。
のこり3段。上げるかァ。
シフターに手をかけた時、スタート前に福富さんに言われたことを思い出す。
最後の2段はあげるなよ。勝利を勝ち得るためには理性も必要だ、とのこと。
これは「足にきちゃうから上げるな」という意味である。
さすがの山岳も重すぎるギアで登りきるのは大変なようですな。
けど、ここインハイでしょ?ラストステージでしょ?
だったら上げとかないともったいないでしょ!!8段目!!
ガシャンとギアを上げて加速する山岳。
まあ、山岳に理性的な走りなんて似合わないってことですよね。それはそれでいいんじゃないでしょうか。
さて、先頭争いからは脱落した状態で並走している福富さんに今泉君。
その2人後方から追いついてくる影があった。
東堂さんに巻島さんである。
さすがにエースクライマー同士。なんだかんだで追いついてきたか。
とはいえ、ここから先頭に追いつくのはムリだと東堂さん。それは残念だ。
福富さんが山岳を出したことは、予想通りだという東堂さん。
しかし、8段目までにしておけという福富さんの忠告は無駄だと感じている。
あれは両刀の剣だ。速いが足へのダメージが大きすぎる。あれは、飛べばくだけるガラスの羽根だ。
意外と詩的な表現を行う福富さん。意外意外。
というのはさておき、言葉を返す東堂さん。
クライマーって生きもののことを、まだ少しわかっとらんのだな。
登るしか、能がないのだよ。
それが唯一のプライドだ。登って自己証明する。そういう輩の頂上に対する渇望は他者とは比べられん。
特にヤツはそれが強い。何があったかは知らんがな。
この前フリは・・・何かあったと言っているかのようでありますよ?
近いうちに山岳の過去が語られることになりそうな雰囲気である。
ともかく、東堂さんは言った。自由に走れ、と。輝けるステージで全てを出しきれと言ったのだ。
ヤツはもっとギアを上げるだろう。
だが心配するな。それで負けましたなんて言う程、あの男、やさしい男ではない!!
優しいかどうかはさておき、根性と執念はありそうに見える。
とにかく頂への渇望が凄いと言うのは見て取れます。
だからこそ、坂道が追いついてきても、気を取られることはない。
ごめん。オレもうキミとは決別したんだ。
一生懸命歌いながら追いついてきたのに、一方的にお別れ宣言するとは酷いじゃないか!!
という話でもないが、というか、わざわざ宣言することもないですわな。
というか、いうか、だ。
何で坂道は普通に追いついてきているんだ!?歌か!?やはりその歌に秘密があるのか!?
山岳はギアを上げて軽快に速度を上げている。
足への負担はかかるが、速度が上がる理由は一応されているので納得できる。
しかし、坂道はどういう理屈で追いついてきたのだ!?いや、理屈はいいから何か言ってくれ!それで納得するから!
とりあえず、追う時が速いんだという手嶋さんの言葉で納得しておくことにします。
山頂が欲しい。
9段目!!
山頂は誰にも渡さない!!
10段目――!!
禁じられていた残りの2段。それを一気に開放しようという山岳。これは危ないフラグだ!!
軽快に走ってきた山岳だが、さすがにこのタイミングで上げるのは暴走気味ではないだろうか。
なんといっても、切り札がなくなってしまう。
10段まで上げてしまえば、もう坂道に追いつかれても手立てがなくなるのだからして。
だが、ガラスの羽根という表現は気になる。
坂道は山岳の羽根を一度引きちぎることに成功した。
だがガラスの羽根となればどうだろうか。ヘルメットがあるとはいえ、穴あきだ。ガラスに突っ込むのは怖い。
砕けたガラスの羽根の破片が飛び散ったら、ゴール前は惨憺たる有様になるだろう。
これは坂道、山岳がクラッシュして、後方4人によるゴール争いの可能性も出て来たで!!ないだろうけど。
RIDE.223 ラストギア
(2012年 42号)
すでに脚カッチカチ。ギアもめっちゃ重たい!!
けど・・・もう一丁いくかァ。
ここなら――イケるでしょ。10段目!!
インターハイラストステージの山頂が待ってるんだから!!
山岳のような男でも、インターハイの山頂は別格として捉えてしまうものなのだろうか。
不思議ちゃんでもそういうところは変わらないのだなと安心する。
勢いに任せ、ラストギア――10段目に上げる山岳。この10段目は危うい。
なぜならば、これまで登りで10段目まで上げた過去2回。そのどちらも、むしろ失速している。
重すぎるギアを回す力がないためでしょうな。
けど、この"感覚"。
握力底つきかけてるけど、今日なら――イケるって気がしてるんだ!!
"感覚"はイケると言っている。
だが肉体は、脚は――"感覚"とは逆に悲鳴をあげている!!
そりゃあそうか!?ここに来るまでに何回も全開にしてる。
でも、イケるでしょ。
"感覚"がイケるっていってんだから!!
出ろォ!!羽根ってヤツ!!
掛け声と共に疾走をしようとする山岳。
その背からは羽根が勢いよく飛び出し・・・たかと思いきや、同時にボロボロに舞い散ってしまう。
そうか、羽根は意識して出しているんじゃなく、出てしまうものだったんですね。
その羽根がボロボロの状態となっている。これは分かりやすいイメージだ。
うごかない。踏めない!?
限界ってヤツ――?
気付けば風景が一変している。
草木が枯れて見える。花がしおれて土は荒んでる。
さっきまで色鮮やかだった景色が、灰色で重たく暗い。空までも――
やはり登りで10段目は厳しすぎたのか。
体が限界を伝えようとしているようだ。
御堂筋君は限界を感じたとき、風景が黄色く見えた。幸せの色であった。
山岳は風景が荒廃して見えるらしい。幸せの色には見えないな。空が灰色だから幸せだ、とか歪んだ話はあるまい。
限界――いや!!!のまれるな!!
灰色の世界は脳がつくり出してるだけの幻!!
体の悲鳴を感じとって注意を喚起させるために見せている世界。それはそうだ。
今までやったことのないことをやろうとしているのだから、すごく当たり前のことなんだ。
変化。未体験。恐怖心。人は、できなかった記憶を振り払って進んできた。
今までだってそうしてきた。"歩く"ことだって、できたってことなんだ。
その積み重ねが"走る"ってことなんだ。自然にできたわけじゃない。やり遂げてきたんだ!!
ペダルを回して進むってことでさえ、やり遂げてきたんだ!!
跳ね除け。逆らって先を見ろ。真波山岳。
イケるはずだ!!オレが今イケるって感じてるんだから!!
信じていけ!!苦痛をのりこえて次のステージにいく"力"は自分の中にある!!
なんと・・・
この土壇場で、ここまで理論的に考えれるとは・・・真波山岳、不思議な男である。
確かに人間は成長するにつれ、四つん這いから立って歩き、走ることもできるようになっている。
最初は倒れまくりながらも、いつしか二輪に慣れ、自転車を乗りこなせるようになる。
であるならば、いつしか最も重いギアを乗りこなすことだってできるはず。
今までやれなくても、できる時はあるはず。そう山岳は信じている。
なかなか純粋な想いですねぇ。挫折とかしてなさそうな人間の考え方だ。
実際、山岳は強すぎて孤独を感じるような人間だし、挫折とかは経験なさそうだなぁ・・・
その天才性ゆえか、今回も困難を乗り越えてしまう山岳。
苦境に立たされても、それを乗り越える。まさに才能の成せる技と言えましょう。
いっけ、回れえええ!!行けぇぇ!!
背中からは、ボロボロになりようもない、輝く羽根がまっすぐに飛び出してくる。
これは・・・光の羽根・・・光の羽根だ!!
決してガラスの羽根が反射して輝いているわけではない!たぶん。
一瞬失速し、超加速を行う山岳。
そして、ついにラストゴールまであと1km。
山岳はこのまま単独で山頂まで登りつめるのだろうか!?
早い段階で切り札を出しきってしまった山岳。
この状態で、もし追いつかれることがあったとしたら、どんな表情をするだろうか?
普通の羽根から光の羽根にまで進化したのに追いつかれるなんて・・・
もうこうなれば、虹色の羽根でも出すしかない!とか言い出すかもしれないな。うん、まだ進化の段階は残ってる。
坂道もまあ、なんらかの方法で追いついてくると思いますので、争う方法を考えておいた方がいいですね、山岳。
RIDE.224 のこり、1km
(2012年 43号)
残り1kmのゲートをくぐり疾走する山岳。
その速さはこれまで見たことがないほどのものだという。
よく見てろ。こいつがロードレースだ・・・
ゴール前まで生き残る選手てのは必ずこういう極限の中で強くなるんだ!!
先導車の運転手である名もなきおじさんが雰囲気のあるセリフを吐く。
くっ、名もなきモブのくせに知ったようなことを!!
実は実績のある人なのかもしれませんけどね。そう思うことにしておきましょう。
さすがにゴールが近くなったので両側に柵が張られ、観客が入れないようになっている。
抜くのに観客が邪魔ってことはなくなりそうだ。
あぁ・・・!!進む・・・!!速く・・・!!気持ちいい!!
緑も、空も、華やいで見える!!
あ・・・でも正確には脚もウデも背筋も痛いから、痛た華やいでるって感じだ!!
走りながら考えてるせいか、なんだかよくわからない言葉を作り出す山岳。
それは痛た気持ちいいみたいなものですか?
わざわざ華やいでいるの方にくっつけるとはよくわからんことをする。感性が痛々しいように聞こえるぜ!!
ともかく。この段階で後続を大きく引き離している山岳。
これはもう、今年の優勝はやはり王者、箱根学園で決まりだと確信する観客。
ところかわって、後方。
妖怪が捕獲されていました。違った。御堂筋君だった。ん、じゃあ違わないのか。
コースアウトして倒れた御堂筋君。救護車に回収されております。
ベッドに寝かされ、頂上の救護テントに運ばれていく。
その間、車からアナウンスされている実況で現在の状況を知る御堂筋君。
マァナミが先頭――のこりィ1kmォ・・・後続は総北・・・
ブタ泉はフレームがアレやから、てことは・・・追っとるのは、サァカミチ。
結局、あの時の勝負が全てを分けたいうわけか。
御堂筋君と、山岳、そして坂道が争った勝負。
結局3人横並びという結果になったわけだが、あそこで勝負をつけれなかったのが痛い。
追走で先頭に追いつくあの段階でマァナミを潰しておかんといかんというボクの策略は正しかった。
潰せんかったけどもな・・・・・・
仮に、あの戦いを御堂筋君が制していたとしても、結局リタイアしたんじゃ無効じゃないかね?
まあ、潰すっていうのが精神的に敗北感を植えつけるということなら正解かもしれんけど。
そういうのよりも、頂上を取りたいという欲の方が強そうだからなぁ、山岳。
先頭の山岳を追う坂道。がんばっているが追いつけない。
このままなら確定やな、とは御堂筋君のお言葉。ベロン。
坂道も残り1kmのゲートをくぐった。
しかし山岳はまだ先におり、姿が見えない。
ツークリックダンシングを行い、加速しているが、それでも追いつかない。
カーブがあけるたびに、山岳の姿が見えないか確かめるが――見えない!!
残り800m。坂道はまだ追いつきたいんだと考えている。
そして、そのカーブを曲がったところで・・・ようやく、見えた!!
本当に小さくだが、山岳の背中が見える。まあ、追いついたといえる距離ではないですな。
たいていの選手がそうなんだ。最後マメみたいに小さく背中が見えても、その差にがく然として足が止まるんだ。
176番もそうだろう。見なよ、カオをふせて苦しそうだ。
というのが物知り顔の観客の評。
しかし、坂道は基本的にその辺りが一般とは異なりますからねぇ。
苦しそうにカオを伏せたということは・・・
見えたよ真波くん!!
出た、坂道スマイル!!
追いつかなきゃ追いつかんきゃと苦しそうに登っていた坂道であったが、ここに来てようやくの笑顔!
そう、この笑顔が怖いのである。御堂筋君もそれを認めている。
マァナミ、気をつけや。
あの男、けんめいなって走るより、笑うた時の方が速いで。
よくわかっておりますなぁ、御堂筋君。
車に積まれたときも出しっぱなしにしていた下を格納し、御堂筋君もまた笑う!
これは車に乗っていた人も一安心でありましょう。
パッと見、生きているかどうかもよくわからない状態でしたものねぇ。
足をアイシングしたりジャージ脱がせる前に、まずやるべきことがあるでしょう!
開いたままの目が怖いから、閉じさせてあげるとかさ。なんか違うな。
相変わらず、インパクトは十分なお人でありますな、御堂筋君。
そういえば、リタイア組は一足早く頂上で待っている流れになるのか。
レースが決まる瞬間、リタイアした選手たちが出てきて待ち構える流れになりそうですな。
RIDE.225 まっすぐに
(2012年 44号)
後方より迫り来るその気配を察知して驚きの表情を見せる山岳。
そりゃあそうでしょうね。完全に置き去りにしたはずなんですから。
まあ、姿が見えたといっても両者の間はかなり離れている。
が、追いかけている相手の背中が見えたというだけで嬉しくなってくるのが小野田坂道という男であります。
あれ!?ほんの少しだけど足が、足が軽くなった。
心が浮き立てば体も調子に乗るってものですよね。
先が見えないよりは見えていたほうが目標にはできる。わからないでもない。
回る!回る!不思議だ。心臓も痛くて足もギシギシいってるのに、足が回るよ!真波くん!!
調子が上がってきた坂道。
前回までは結構必死な顔つきだったのですが、今はかなり笑顔場面が多くなっている。
すこし山岳の背中が大きく見えたと思ったらまた足が軽くなる。
なるほど。追いかける方が早いという仕組みはここから来ているのですね。
追いつきたいという想いが一番の原動力になっているわけか。
近づいてる!!
キミとは決別したはずだ。トップギアに入れて――なのになぜ――!!
困惑する山岳。そりゃあそうだ。
山岳自身色々と規格外な男であるが、その男をして困惑させる坂道。凄まじい。
ギアはトップのまま。オレの速度はかわらない――てことは、キミが追い上げてきてるのか!!
見える!背中が!近づいてる!嬉しい!真波くん!!
本当に、セリフだけ聞くと危ない人のように聞こえちゃいますね。
笑顔でこんなこと考えながら迫ってくるんですよ。そりゃ山岳も困惑するわ。
道の両脇に設置されている敷居。
そのカベにぶつかりながら走行する坂道。
やっぱり坂道はコース取りが下手なんですね。でも速い。
最短距離をまっすぐ突き抜けようとするから速いってことなんでしょうか。
でも当たったことを意に介してないのはなんだか危ない。酸素足りてるか?
手が当たってしびれてるけど、まあいいか!で済ませる坂道。怖い子だ。
追いつく。追いつくんだ。真波くんのところに早く・・・早く!!まっすぐにいくんだ!!
非常に純粋な走りでありますね。下手といえば下手であるが、迫力は感じられる。何かすげぇ!!
S字コーナーがあってもコースのカベを破って直線を抜けそうな迫力が・・・いやさすがにそれはないか。
そして、いつしか山岳のすぐ後ろまで追いついている坂道でありました。
まっすぐ来ているとはいえ、ここまで迫ってくるとは・・・
山岳はここでようやく気づく。
CSPで出会った時の、あの時のような走り。
笑ってる。楽しんでる。その方が格段に速い。本当は――キミはそうやって速くなるのか!!
そういうことのようですな。
坂道の頭の中ではさっきから「恋のヒメヒメぺったんこ」がリピート再生されている。
心と体の調子がよくなったので歌もスムーズに歌えるって話らしい。
さすが田所さんの体調を復帰させた歌である。不思議な不思議な呪文であるのかどうなのか。
最終ゴールまで残り500m。
その土壇場の場所で追いついた坂道。果たしてどうなるのか!?
うーむ。思ったよりも早いタイミングで追いついてきましたね。
もう少し先、それこそあと100mぐらいのところで追いつくのかと思ったが・・・予想を越えてきおったか。
しかし、坂道。追いついたことによってなんだか苦しそうな表情を見せる。
追いつくまでは早いが、追いついてからはそこまででもなくなるのが坂道である。
果たして前に出ることが出来るものなのかどうか。ゴール直前まで並走して最後で差し込むしかないか?
坂道は楽しんで走った方が速い。
責任とかを背負って走る柄ではないってことですね。そういう意味では山岳に近い。
まあ、まだ1年生ですしね。そういう重責を背負う立場の人間ではないですわな。
無責任とも取れるが、そういったものは一朝一夕で身に付くものじゃないですものね。
慣れ親しんだ、速く走れる方法。ようするに笑顔を忘れずにいるってのが大事ってわけだ。
この勝負、最後に笑ってゴールすることになるのはどちらになるかの勝負になりそうでありますが、果たしてどうなるか。
年内に決着がつくかどうかも気になるところである。
弱虫ペダル 27巻
RIDE.226 約束の道
(2012年 45号)
ゴールにて選手たちの到着を今か今かと待ち構えている手嶋さんたち。
残り1kmの時点でアナウンスが途切れたせいでやきもきしちゃってますな。
あきらめんな。あきらめんな小野田!!
オレが証言する!!おまえの追い上げは一級品だ!!
手嶋さんは坂道に笑顔で張り付かれた経験がある人ですからねぇ。そりゃあそう思うわさ。
そしてその考えは正しかった。
残りゴールまで500mというところで山岳と並ぶ坂道。
坂道「追い、ついたよ。真波くん」
山岳「・・・すごいや」
山岳も、もう素直にそう言うしかないって感じですな。穏やかな表情になっとる。
ボロボロだけど。体バラバラになりそうだけど。やる?勝負。
ここから500m先、このつづらの先、道の終わりにある大きなゲート・・・
そこを先にくぐった方が勝ち――だ。
ようやく、ようやく最後の勝負という感じの発言になりましたね。
この最後の勝負によって長かったインターハイの結果が出る。
うん。やる。競争しよう。真波くん。
笑顔で答える坂道。その答えに笑顔で返す山岳。
夏の空、そこに一番近い場所まで駆け上がろうとする2人。決戦です。
まずは山岳が動き出す。
カーブの立ち上がりで激しくこぎ出し、差をつける。
山頂へはいつも孤独だと思っていた。
でも今日は違う。キミがいる!!
なんだかんだで勝負できることについては嬉しく思っているんですな。それでよい。
動けよ。もてよ。脚ィィ!!
限界まで。脈打て心臓ォ!!
ドップンと脈打つ心臓。それに合わせてますます加速する。
が、やはり坂道は凄い。そんな山岳にケイデンスを上げることで追いついてしまう。
カーブでは厳しいかもしれないが、直線で追いついてしまうのが坂道の走りだ。すごいや。
坂道「ああああああ」
山岳「そおおれぇぇぇ!!」
残り350m。ゴールまでつづら2本。
ゴールの方からも選手が見え出してくる距離である。
楽しみに待つメガネの委員長。そして坂道の母が目にしたものは・・・!!
うーん。どんな反応を示してくれるのか、楽しみなような不安なような。
だいぶ決着の時が近づいてきました。
さすがに必死の形相を見せる2人。
うん?坂道は笑ってた方が速いのではなかったかね?
基本、追い上げる時は速いけど、追いつくと安心しちゃうのか速度が落ちる坂道。
ただし、その分張り付きの力は凄く、引き離させてくれない。
一度くらいついたらどこまでも付いて回る男である。スッポンか!!
その特性もあるし、これまでの展開からしても、ゴール直前僅差の闘いになるのは予想できる。
さて、それまでにどのようなドラマが展開されるのか。
予告では山岳の過去、自転車との出会いが描かれるようである。ふうむ。楽しみな話ですな。
RIDE.227 届け、想い
(2012年 46号)
残り350m。
ついにゴールで待つ三角メガネの委員長や坂道の母から目視できる距離までやってきた。
見えましたよおばさま。選手・・・
あれが(うちの・・・じゃなくて)さんがくくんです!!
いつもボーとしてて遅刻ばっかりして授業中も居眠りしてて、プリントも――
限界まで、脈打てぇぇ!!
委員長の解説とは大違いの形相とセリフでございますな。
まあ、普段は確かに委員長の言う通りの奴なんですけども。
すごい伝わってくるよ。あなたの鼓動――
というわけで、回想シーン!!
山岳の回想はどこかで来ると思ったが、委員長視点で来ましたか。
どうやら委員長の家は山岳のお隣さんだったらしい。子供の頃からの仲か。
ちなみに委員長の名前は宮原さん。ようやく名前が出てきたかぁ〜。
子供の頃の山岳は体が弱く、学校や球技大会を休んだりしている。
退屈しのぎにゲームをしているが、別にゲームが好きというわけではない。
ほら、剣で刺されてもさ、これ。痛くないんだよね。
剣で刺された痛みってどういうのだろ。
わかる?委員長ってさ、ふだんから生きてるって感じる?
宮原さんは子供の頃から委員長なんですな。
というのはさておき。やはり山岳は昔、体が弱かったらしい。
それで事あるごとに生きてるとか言い出してたわけなんですかね。
病気がちでずっと家に閉じこもっているからおかしな考え方になるのかもしれない。
そう考えた宮原さん。山岳をサイクリングに連れ出す。
自転車はふつうの運動と違って、休んでても進むから負荷が少ない。今の山岳にはうってつけだろうという考えだ。
わざわざコースまでやってきた2人。
自転車はなんでも好きなものがレンタルされています。
複数ある中、山岳が選んだのはロードタイプ。
初めて乗るロードなのでフラフラし、倒れながら走る山岳。でも楽しそう。
これ・・・フツーの自転車と違う!!すごい・・・これ。
笑顔を浮かべて走る山岳。
しかし、坂で大きく失速。苦しそうに息を荒げている。
が、宮原さんが止まろうとするのを制する山岳。
いってそのまま!追いつくから。必ず追いつくから。
あるんだ・・・つかめそうなんだ・・・オレが、求めてた痛みが。
左胸を押さえて、そんなことを述べる山岳。
そうか、このクセは子供の頃からずっとだったんですなぁ。
結局コース1周の間、宮原さんに追いつくことはできなかった山岳。
ロードに乗っていても、乗りこなせないうちは、まあこんなもんですかね。
それとも宮原さんが思ったよりも速いのか。しれっとした顔して回しているのかもしれぬ。
何にせよ、これが山岳と自転車の出会いだったというわけだ。
つまり、宮原委員長は山岳と自転車の間を繋ぐ仲人だったというわけだ!!えー。
結局――一緒に行ったサイクリングはその一回だけだったね。
すっかり自転車を・・・自転車の方を好きになったあなたは体も丈夫になって。
隣の部屋からいなくなり、遠い世界に行ってしまった。
しかし、大きくなっても山岳は宮原さんに対して言う。勝負しようよ、と。
だってオレ、委員長にだけ勝ったことないんだ。
あの日の委員長、どんなにペダルふんでも追いつかなかった。超速かった。たぶん世界一。
子供の、初心者の視点から見るとそう感じられても無理はないんでしょうな。
でも、だからこそ、勝負はせずに思い出のままにとっておくのもいいんじゃないでしょうか。
思い出の中の委員長は常に山岳の前を走っている。
ふむ、こう書くと何となく美しく思えなくもないですな。
ねェ、さんがく。もし勝負したら、私2秒で置いていかれるわよ。
ねェ、わかってる?私のこと見てるようで全然見てないんだから。そんなに遠くに行っちゃって。
オニギリだって渡せないくらい遠くに行っちゃって。だけどちゃんと届いてるよ。
あなたが言ってた、生きてるって感じ。
だからさんがく。私も届けるわメッセージ。
勝ってさんがく!!負けたらおこるから!!
身を乗り出し、声援を送る宮原さん。
必死の形相だった山岳の目や耳に届いたのだろうか。いや、届いた。
一瞬笑顔を浮かべ、そのまま通り過ぎていく山岳でありました。おやおや、いい感じじゃないですか。
一方、その山岳を追う坂道。
坂道の母は、目の前を息子が凄い速度で通り過ぎようとしているのを目撃する。
さかみち?同姓同名じゃないわ。何でそこにいるの?あなた何やってるの?
けれど、一生懸命やっているのなら、がんばりなさい坂道!!
はい!!
よ・・・ようやく母がレースをやっていることを認識してくれたぞ!!
いや、まだ認識はしていないのか。分からないけどとにかく頑張れとしか言ってないや。
まあでも、今度はちゃんと分かってもらえるように説明できるんじゃないかなぁ。たぶん。
母の声援を受け、坂道がダンシングを開始する。
イベントはこれで出尽くした感はありますが、この先の展開はどうなるのか。
まだゴールで待つ仲間たちの声援を届けるパートが待っているか。
そういう名前のある仲間の数では、坂道の方が山岳をかなり上回っている。
ここにきて、山岳が箱学では余り信用されていないというのがマイナス要素となるわけだ。逆転の目はそこになるか?
しかし、山岳は早いうちに自転車に目覚めていてよかったですね。
痛みを自覚することで生きていることを感じる。分かる理論だ。
これが行き過ぎるとギャンブル狂になったりしてエクストリームなことになったりする。
または格闘技なんかに目覚めちゃってたら大変なことになっていただろう。
わざわざ攻撃を受けながら戦うような選手になっていたかもしれない。プロレスラーには向いてるか?
子供の頃の出会いってのは大事なんだなと思える話でありました。
RIDE.228 ただ、ゴールへ
(2012年 47号)
予想だにしていなかった息子の活躍の場面を目撃した母。
驚きこそあったものの、そこまで不思議と思ったりはしていない様子。
まかされたのね。何かとても大切なことを。坂道。
旅館にいたにぎやかな赤い男の子?
まじめな顔の部長さん?
それとも携帯の写真でみせてもらった目の細いお友達?
いいえ、皆にかしら。
それならそれを裏切らないように走りなさい。きっとあなたを信じてのことなのだから。
息子にそう心で語りかける母。
なんだかんだで、坂道のことを信頼しているんですねぇ。
うちの息子がそんなことを任されるはずがない!なんて思ったりはしない。
息子の話を余り聞かない人だけど、理解はしているわけだ。なんだか複雑な人だな。
一生懸命走ってたわ。あの坂道が。たくましくなった。
嬉しそうでありますね、お母さん。
それはそうか。息子がたくましく成長するのを見て喜ばしく思わないはずもない。母さん嬉しいな。
そんな母から声援を受けた坂道。
だけど、一瞬のすれ違いだったこともあり、母とは認識できていなかった様子。
似たような声がしたから返事しただけだそうな。そうか。
母さん。もし見てたら――
「あぶないからすぐおりなさい!!アキバじゃなくて富士山にまで自転車で来て!!」
とか言うのかな。
そんな認識でありましたか。
息子の話を聞かない母であるが、息子の方も母のことを理解しきってはいない様子ですね。
大会後はちゃんとお話をするのがいいと思いますよ。
残りは200m。
つづら1本曲がったらあとはゴールという状況。まさにクライマックスですな。
狭い道でのつづら折り。
山岳ですら曲がりきれずにフェンスに当たりながら曲がっている。
それでもやはりカーブではテクニックの差がでるのか山岳が先行する。残り180m。
棒みたいだ足が。筋肉が痛い。ヒザから下が外れそうだ。
回れ。回れ。回ってくれ。
ゴールまでのほんのわずかな距離の間だけ回ってくれ。
胸が痛い。心臓、ゴールまで動いて。
さすがの坂道もかなりギリギリの状態になっている様子。
山岳が痛みを感じているのと動揺に、坂道だって限界の痛みを感じている。
それでも――後を託してくれた仲間達の想いが共にある。
その想いがあるから耐えられる。ゴールまで!!
残り150m。残りはほぼ直線というところで再び並んだ2人。まだ勝負はわからない。
簡単じゃない。何だって。だから全力でやるんだ!!
普段はボーっとしてて、練習とかも全力な感じがしない山岳。
でも本気を出すときは全力でやりますよという話ですな。
残り100m。2人の目にもゴールは見えた。
だからこそ、この距離。最後の勝負が始まる。
2人同時に立ち上がり、ゴールスプリントが開始される!!
山岳「獲るよオレが」
坂道「ボクが獲る」
ついに決着が目前となりました。
さすがにここでハプニングが起きるとは考えにくい。どちらかの勝利となりましょう。
しかし、最終ゴールも同着だった場合はどうなるんでしょうか?
3位で先に入ってきたチームの勝利とかそんな変則的な判定になったりするのだろうか?気になる。
ゴールが見えたことだし、ゴールで待つ仲間達の姿が気になるところですな。
坂道には多くの仲間がいるが、山岳には山岳自身を応援してくれる人は少ない。
さて、その辺りが最終的な勝敗を分けることになるのかどうか。注目です。
RIDE.229 ラストスプリント
(2012年 48号)
残り100mを切り、ゴールは目前。
同じタイミングで坂道と山岳の2人が立ち上がる。そう、これが本当のラストスプリントだ!!
ゴールまで60m。もう後はこの直線を走ればゴールという段階。
もはや新たな手が飛び出してくるということもない。ただ全力で突っ走るのみである。
山岳「山頂を!!」
坂道「ジャージを!!」
坂道&山岳「獲る!!!!」
過去にないほどの接戦を繰り広げている今年のインターハイ。
最後の瞬間までどちらが勝つかはわからない状況だ。
盛り上がる観客。その喧騒から離れ、テント内のアナウンスで状況を知っている男たちがいた。
荒北さんと泉田くんである。あ、2人ともちゃんとリタイアしてたんだ!!
後ろに下がっただけでまだ走ってるのかと思ったよ。
まあ、確かにリタイアするなら鳴子みたいに毎度コースアウトして倒れなければいけないって理由はないわな。
ゴール前の現状を知り、つい笑ってしまう荒北さん。
真波と小野田チャン・・・あいつらがゴール争ってるだって。
オレが集団から引っぱりあげて運んだ2人じゃねェかよ。
やっぱよ。福ちゃん。オレはとんでもねーもん運んできちまったのか。
2人を集団から引っぱりあげてきたとき、荒北さんには2人に言いかけてやめた言葉がある。
「おまえらどこまで行くつもりだ」という言葉。
まさか先頭で、ゴールまでたァな・・・
小野田チャンだけ途中に置いてきゃよかったかな。
いや全くその通り。
共闘を持ちかけられた相手であるし、その時は脅威とも思ってなかったというのもあるだろうが・・・
やはり敵校の人間をわざわざ先頭まで連れて行くことはありませんでしたな。
最初は前を走ったりしてたが、途中からはずっと荒北さんが運んでたわけですし。
まあ、それも結果論という奴なのかもしれませんがね。
それにしても、箱学と総北は同じテントなのか?医療用のテントだから一緒なのだろうか?
そういえば御堂筋君はまだ車で運ばれている最中なのだろうか?
全力出して鼻血出せと叫ぶ鳴子自身が頭から血を噴出しているじゃないですか。ぴゅー。
テントにて金城さん、鳴子、荒北さん、泉田くんが勝負の行方を見守っている。
リタイアせずにレース中の田所さんと新開さん。
いつまでも続く坂にスプリンターの2人は辟易している様子。大変ですな。
でもなんだか2人、仲のよろしくて結構なことですな。
1人では辛いだけかもしれないが、話しながら登れる相手がいるってのはいいことだ。
というか、新開さんはまだ食ってんのか。
総北、箱学の残る4人は3位争いを行っている。
割れたフレームで必死に進み、巻島さんを運ぶ今泉君。
同じく、クライマーである東堂さんを運ぶ福富さん。
東堂さんと巻島さんの2人の争いにより、インターハイの3位が決定する。
1位争いにはもう関われないものの、これはこれで大事な戦いである。
表彰台に立つために、今一度この2人の戦いが繰り広げられることとなりました。ほほう。
巻島「行けショ・・・小野田ァ・・・おまえのやり方で突破しろ!!」
東堂「羽ばたけよ。山頂へ。真波ィ!!」
福富「オレは史上最強のチームを作った!!掴め真波!!おまえならできるはずだ!!」
各チームメイトの想いを乗せて。
ゴールで待つ各高校の部員たちの声援を受けて。
ついに長かった戦いのゴールが決まろうとしている。
際どい差ではあるが、確かにゴール前で差が出来ている。
果たして先にゴールに辿り着くのはどちらなのか!?
次号、巻頭カラーで長かったインターハイも決着を迎える!!ついにだ!!
やぁ。年内で決着がつきそうで安心したやら何なのやら。
RIDE.230 空を仰ぎし者
(2012年 49号)
長かったIHのゴールももはや目前。
勝つのは総北か箱学か。坂道か山岳か。最後の瞬間までわからない。
両校の面々ももう全力で応援するしかないという状況だ。
こんな時でも手嶋さんと青八木さんは息がそろってますな。
空耳が。皆さんの声がきこえる。
でもすいません。ふり返って答えることができません。
もうほとんど力のこってないから。
ボクにできることはひとつしかないです。
ジャージを。皆さんに託されたこのジャージを。
精一杯ゴールに届けることしかできないんです。
それでいいんじゃないでしょうか。
いや、それこそがまさしく今坂道のやるべきことでありますわな。
むしろここでふり返られても困る。
山頂は、オレの生きてる証。絶対に獲る!!獲るんだ!!
山岳にとっては人生の意義とも言える山頂獲り。
決して譲らぬ信念を持って駆ける。
そしてついに、車輪はゴールへと辿り着く。
多くの高校。多くの選手が参加したレース。
リタイアした者たち。未だ走り続けている者たち。
様々な選手がいましたが・・・ついにその決着が着こうとしている!!
ほぼ同時に駆け抜けた2人。
だが同着ではない。どちらが先であったか、それは走った当人たちがよく理解している。
勝者である一方の両腕が上がる。空へ向けて。そう。
3日目、最初にゴールラインに到着したのは、176番、小野田坂道選手!!
総北高校インターハイ総合優勝ォォ!!
実に長かったIHの3日間。
どうなるかとも思いましたが、本当に総北が制してしまうとは。
金城さんが走れなくなった辺りは、来年以降に夢を繋ぐ展開もあるかなとか思ってたんですがねぇ。
思い返してみれば、総北はこの3日間トラブルだらけでしたなぁ。
落車、体調不良、ケガ、マシントラブル・・・よく優勝できたもんだよ、本当に。
サイレントな見開きが多かったので、増ページの決着ではあるが、感想としては書くことが少なかったりする。
そんな中でも、いくらか読み取れる情報もあったりする。
呉南は集団と一緒に走ってるんだなぁ、とか。京伏の残り2人も一緒なんだな、とか。
3位の高校を決める争いはなかなか激しそうな気がします。
この集団から抜け出て3位入賞を果たす高校は果たしてどこなのだろうか!?
そっちに注目してみるのも意外と盛り上がれるかもしれませんな。
それにしても坂道のバンザイはなんだか凄く違和感を感じる。
なんだろう。上げ方に問題があるのだろうか?
まあ、坂道はあんまりバンザイとかそういうのに慣れてなさそうですからなぁ。
今後も活躍していって、どんどんと回数をこなしていくことになるのかもしれませんけどね。
というわけで、決着でございます。
次号はその決着を受けての描写がされる様子。
表彰式の様子や全体の順位発表など気になるところでありますな。
RIDE.231 WINNER
(2012年 50号)
突き上げた腕は勝利の証!!
というわけで、センターカラーで決着の様子が描かれています。
しかし、やはり坂道のバンザイは不思議な違和感を感じてしまう。なんなんだろう、これは。
届いた――ボクたちのジャージ。
総合優勝を果たした総北高校。
見事にゴールを決めて見せた坂道のもとに駆け寄る。
おっと、競技中は姿を見せなかった監督の姿もありますな。
バンザイを終えて、再びハンドルを握る坂道。
もうペダルを回してはいないが、慣性でいくらか進んでいる。それは山岳も同様であった。
並走する2人。そして山岳が口を開く。
出しきったよ。もう、何ものこってない。
おめでとう。勝ちだ。キミの。
そう言って、握手を――しようと思ったのだが、腕を上げる元気も残っていなかった。
それは坂道も同様である。勢いでバンザイはできたが、そこで使い果たした様子ですな。
というわけで、倒れこむようにしてお互いの肩を当てる2人。こういうハイタッチもありかもね。
キミと走れてよかった。
山岳にとっては山頂は生きる証。それを取れなかったのは相当無念と思われたが・・・
それでも、最終的には一緒に走れた喜びというのを感じることができたってことなんでしょうかね。
限界を迎えた2人のもとに、それぞれの高校のメンバーが駆け寄る。
感激の余り、うまく言葉が出てこない手嶋さん。
とりあえず坂道のシューズや手袋を取って楽な格好にさせてあげようとします。
本当によくやったァ!小野田ァ!!
手嶋さんに抱きつかれた際、坂道の目に飛び込んできたのは青い空。
あ・・・空。今日ってこんなに晴れてたんですね。
まっすぐ前だけを見て走ってきた坂道。空を見上げる余裕もなかったのでしょう。
緊張から解放されて思わずこういった感想が出てきたのかな。
その手とグローブは力が入りすぎてボロボロになっている。
なので寒咲さんはその手をぎゅっと握ってあげます。おや、ヒロインっぽい。
そんな風に、総合優勝の感激に浸っている間に、後続が続々とゴールを果たしてくる。
最終日の3位はやはりこの男。東堂尽八。山神。箱根学園。
そして4位でゴールをくぐるのは、こちらも王者。不動のエース、昨日ステージの覇者、福富寿一選手!!
これで、2・3・4位連続で箱学がゲットしたことになる。さすがに強い。
というか実績のある選手は紹介も長くてアナウンスもやりやすそうですなぁ。
今泉くんに送り出されて、3位取りに出たはずの巻島さん。
どうやらすっかり脚がオワッていたらしく、その今泉くんと並んでゴール。
最後に東堂さんと勝負するのかとも思ったが、もうその余裕はありませんでしたか。
3位は取れなかった。でも、それはまあいいやと思える。あいつが最っ高のモン獲ってくれたんだ!!
ヘルメットを投げ捨て、自転車に乗ったまま坂道のもとに駆け寄る2人。
巻島さんは抱きつき、そして今泉君は高い高いをしてくれる。何故?
でもまあ、嬉しそうだからいいか。
そして坂道は巻島さんに語る。本当は、途中苦しかったです、と。
苦しくて、途中何度も止まろうって思いました。
でも、その度に巻島さんや今泉くんや皆さんの声と顔を思い出してなんとか、なんとかふみとどまったんですよ・・・
それだけを告げて、力尽きる坂道。うむ。簡単じゃなかったことくらいは皆わかってますよ。
だからこそその健闘を讃え、感謝しているのだ。
ありがとよ。坂道。
テントで結果を知った鳴子と金城さんも感激している。
感激のあまり、小野田!しか言えていない金城さん。鳴子も似たようなものである。
駆けつけることも忘れ、とにかく泣いて叫んで血を噴出してと忙しい。まあ、しょうがないよね。
というわけで、インターハイ3日目の上位結果が今回で判明しました。
しかし、まだ気になる部分はある。
そう、学校としての3位はどこが獲るのか?という部分だ。
来年のゼッケンが30番台になるのは果たしてどの高校なのか。
次回は表彰式。ここで3位高校も含めて総合的な結果が発表されそうな予感。楽しみだ!!
RIDE.232 15cmの高みへ
(2012年 51号)
各選手が次々とゴールしていくなか、進められる表彰式の準備。
田所さんもちゃんと坂を登りきった様子でゴールの山頂で休んでいます。
途中で諦めて車で運んでもらったわけではない!はず。たぶん。
田所さんは手島さんや青八木さん、寒咲さんを裏方としてよく支えてくれたと誉める。
さらに杉元くんについてもちゃんと誉めてくれたりする。
嬉しそうな杉元くんがなんだかいい感じである。ようやく嬉しいことが起きてよかったね。
総北の中でも後輩への気遣いという面では田所さんに勝る人はおるまい。
レースでの活躍以上に輝いている。それはそれでどうかとも思うが。
1位を取った坂道は記者たちに囲まれている。それはそうだ。
無名の選手がインターハイで1位を取った。これは記事になる。記者も群がるさね。
今頃記者たちはどんな二つ名をつけようかと悩んでいるに違いない。どんな名になるのかな?
田所さんは金城さんに連絡をつけようとしている。
ああ、金城さんと鳴子は山中湖の救護所にいるんだ。
ゴールしたのにずっとテント内にいると思ったら、山頂の救護所じゃなかったのね。なるほどなー。
あいつがよ、一番この景色を見たかったはずだからよ。表彰式・・・
なんとか電話つないで声だけでも届けてやろうと思ったんだが。
一番練習して一番気ぃ張って引っぱってきたからな。
――オレたちはよ、3年間。あの表彰式のたった15cm。あれ登るために全力でやってきたんだからよ。
6人全員で登れりゃあ最高だったけどなァ。
そんな風に考えている田所さんでありました。
さて、2位に終わった箱根学園。
荒北さんを除く3年生の3人がテントに会しているが、全員難しい表情である。
まあ、福富さんはいつもと変わらない表情ですけどね。いつも通り難しい顔だ。
というわけで、後輩たちはもうすぐ表彰式だと伝えることができずにテントの前で右往左往。
そんな所に現れた山岳。躊躇うことなくテント内に入っていく。
どこへ行っていた真波。
福富さんの問い。それに山岳はこう答える。
涙がたくさん出たので、おさまるまで景色見てました。
負けました。ゴール寸前。彼にわずかにリードゆるしました。
せっかく福富さんが最強のチームをつくってくれたのに、オレが勝つことができなかったせいで台無しにしました。
皆さんの走りも・・・
頭を垂れる山岳。
その山岳の前に立つ福富さんは語る。
オレたちが2位――その意味わかるか。王者は勝ててこそ王者だ。
言い訳は通用しない。その中で戦ってきた。
今年はもう終わった。箱根学園がやるべきことは、次のインターハイで勝利する他ない。
そしてもう、次のインターハイにオレたちはいない。
福富「真波おまえに来年その地位をうばいかえそうという強い意志はあるか!!」
山岳「はい!!」
気合を込めて、肯定の返事をする山岳。
その意志を聞き届けた福富さん。山岳の肩を叩き、最後の表彰式に向かうこととする。
努力。チームワーク。ボロボロになりながらオレたちをしのいだ総北の連中に見事だと惜しみない拍手を送ってやろう。
そう語る福富さん。もうとっくに気持ちの整理はついていたみたいですね。
それは他の2人、東堂さんや新開さんにも言えることである。
って新開さんはまだパワーバー持ち歩いているのかよ!!
自転車乗ってるんじゃないんだから、もっとちゃんとしたもの食べればいいのに。好きで食ってるのか・・・!?
まあともかく、山岳も今更ながらにいい感じにチームに溶け込めたんじゃないでしょうか。
もっと早くに・・・という気持ちもなくはないが、まあ来年以降に期待ですな。
さて、表彰式。
総合優勝を果たした総北は壇上に上がろうとしている。
そこにいるのは4人。金城さんと鳴子の姿がない。連絡もとれない。
そのことを残念に思いながら壇上に立とうとする田所さん。
だが、そのタイミングで審判車に乗って山頂にやってくる金城さんと鳴子。
これには思わず田所さん、司会のマイクを奪って叫んでしまう。一日目に続き、派手なオッサンやな。
大会の人が気を回してくれたらしいとのこと。よかったよかった。
よかったけど、監督たちは気を回してくれなかったのだろうか・・・?
意外と表彰式までの時間が短くて往復するのは間に合わなかったという話しなのか。どうなのか。
メッチャとばしてたとか言ってるしなぁ。まあ、何にしても間に合ってよかった。
というわけで、ジャージを着た6人が勢ぞろいし横並びになる。
そしてせーので一斉に壇上に上がった。たった15cmの最高の高みへ!!
優勝者である坂道には優勝カップと花束が渡されている。
その2つを高々と掲げる坂道。他の5人も手を繋ぎながら高々と掲げる。
笑顔を浮かべている総北の面々。
その中でただひとり、巻島さんだけは感動のあまりか涙を流していた。ま、巻島さーん!!うおっ。
優勝の紙ふぶきが舞う表彰式。
山岳はその様子を見て一人静かに来年で雪辱を晴らすことを胸に誓うのであった。
ユルユルしていた山岳もずいぶんと熱くなったものである。よいことだ。
そして、山頂の救護テントに運ばれたはずだが表彰式を見にきていない男もいる。
ゼッケンを2つつけたその男は――18時間目を覚まさなかった。
というわけで、表彰式の様子でありました。
次号からは新章突入とのこと。それは楽しみだ。楽しみなのだが――他の高校の結果は!?
リストでもいいから、全体の順位が知りたいよ!!単行本のオマケまで待たされたりして。
長いIHの戦いを制した総北であるが、新章では何を行うのでしょうかねぇ。
実業団を相手するとかそういう展開になるのでしょうか?
簡単に時間が飛んだりはしないと思うがはてさて。
RIDE.233 IH スペシャルステージ
(2012年 52号)
いきなり冒頭で坂道を問い詰める母。
かくしごと・・・いや、してないしてない。ちゃんと説明してましたがな!!
あなた自転車で富士山まで行ったわねー!!
まあ、確かに箱根から富士山まで自転車で行きましたわな。
坂道はどういう風に説明したのかは知らないが・・・理解されていないのは間違いない様子。
というか、なぜか坂道と同様に正座して説教されている今泉君と鳴子の姿がおかしい。
今泉君に鳴子、鳴るに子ども文章に大吉で鳴子章吉の鳴子がフォローに入る。
小野田くんはめっちゃスゴイことしたんですよ、と。
年に1度のビッグレース、インターハイで総合優勝したんです!!
いんたーはいって何かしら!?
い、いかん。基本的な単語からしてまず伝わっていない!!これは手強い。
というわけで、鳴子。もっとわかりやすい方法で伝えるように頭を切り替える。
全国で1番早く富士山に登った男になった。
そう伝えると、それはすごいわと感心してくれる。それで伝わるのか!?
いや、もっといい方法がありました。知識のない母親でもよく理解できる凄さ。そう、雑誌に載ったということだ!!
写真つきで2ページに渡り雑誌に掲載されている坂道。
これは母親からしてみれば大騒ぎするような光景でありましょうな。騒いでる騒いでる。
ゴール直後手をあげたのはおぼえていないという坂道。ふーむ。クライマーの本能みたいなもんなのかねぇ。
というか、クロモリにはこだわりがあったのか?記事の内容が気になる。
よかったわーあの時カメラ掛川さんの車の中に忘れてたから写真とれなかったのよねー。坂道の。
母のこの発言で、あの場に母がいたことにいまさらながら気付かされる坂道。
レースが終わって3日以上経ってようやく知らされる事実でありました。これこそ隠し事ですよ!!
表彰式まで見ておいてこの理解力。坂道母のマイペースっぷりは本当に侮れない。
それでいて、マトモな顔をするときはマトモなことを言い出すから侮れない。
練習に向かう坂道に、これからも気をつけて自転車がんばりなさいと言う。
さらに、今泉君と鳴子にも、坂道のことをお願いする。ふむ、大事なことでありますな。
そういえば、何で2人はジャージを着ているのかと思ったら、練習前に迎えに来ていたわけなんですな。
家を出た坂道はジャージに着替え、3年の先輩たちが待つ場所へと走っていくのでありました。
昨日のミーティングで話した通りだ。
今日のメニューは、オレたち総北のインターハイの最高の高みまで連れていってくれた立て役者、小野田に順ずる。
好きなコースを走れ!!
ほほう。そういう話になりましたか。いい御褒美ですな。
というわけで、前から行きたかった場所に向かおうとする坂道。
そこに行ったら少し歩くことになるという。え、それってまさか・・・
ボクはずっと皆さんと行ってみたかったんです。皆さんとアキバへ。
やっぱり・・・か。
鳴子はある程度予想していたみたいだが、3年生たちにとっては見事な不意打ちだった様子。
今泉君的にはアキバはどうなんですかね?
黄色いジャージという目立つ姿でアキバを闊歩する6人。
いや、アキバなら逆にそれほど目立たないのか!?そんなことはないか。
ピッチリとしたジャージ姿で一般の店に入るのは恥ずかしいと言われることがある。
が、むしろこういう店であるならば逆に恥ずかしい気持ちなんてなくなるかもしれなくもなかったり!どうなんだろう。
店に入って金城さんにボーズキャラのグッズを勧める坂道。
そうかー金城さんのヘアスタイルはキャラ付けのためだったんだー。あらぬ疑いをかけられるな。
田所さんは恋のヒメヒメぺったんこを視聴。
合わせて歌えちゃうことに愕然としている。ハハハ。
巻島さんにはクモのストラップ。これは本当にいやしキャラなのか・・・?
疑問に思わないでもないが、嬉しそうに解説されてもそれはそれで困る。
この、暴走気味に解説をいきなり始める辺りは本格的なオタクっぽいですやね、坂道。
凄く楽しそうにしている坂道とつかれきった様子の3年生たち。うーむ、対照的。
だが、坂道としては坂道なりに感謝の気持ちを伝えたかったらしい。
あの・・・さしでがましいかもしれませんが。あの・・・さ、さき程の先輩方へのあれは、ボクからのプレゼントです!!
じ、自転車のせてもらって、インターハイまで連れていってもらって、ありがとうございました!!
1人じゃくじけていたし、1人じゃできなかったと思います。
ボク・・・可能性・・・ホントにありがとうございました。
ふむ。そのように言われてしまうとな。このプレゼントも大事にするしかないでしょう。
って巻島さんのプレゼントはやけに多いぞ!!
カオパターンが6までしかないのに何故10コも送ったし。シークレットも込みということか!?
いやまあ、感謝の気持ちが溢れているってことなんでしょうが・・・まあ、気持ちはありがたいか。
しかし、田所さんのプレゼントはやはりあのCDなのだろうか?
なんだかんだで付き合いのいい田所さんだし、貰ったものはちゃんと聞かないとと考えるかもしれないなぁ。ガハハ。
そんな田所さんにメイドさんがアキバの案内チラシを渡してくれます。
盛大に照れながら受け取る田所さん。何で英語やねん。言い切れてないし!
田所「なんだ今のは・・・"コスプレ"ってヤツか」
金城「ああ!!そうだな!!」
坂道「アキバの案内をしてるんです。メイド姿でアキバのチラシをくばってるんですよ」
金城「ホウ・・・さすがだな・・・小野田・・・」
金城さん、何でそんなやたらと力強い返事をしているんですか?メイドに興味があるんですか?
実はそういうのが好きだったりするのかもしれない金城さん。意外な趣味が発覚!?
そういう喫茶店もあるんですよと紹介したら、ホウ・・・さすがだな。と乗ってくるかもしれない!!
そういえば、この面々クリートのままでアキバを歩き回っているんですな。大変そうだ。
てな風に、アキバを練り歩く一同の中、一人物思いにふける人物がいた。巻島さんである。
感謝――か。
オレもこのチームには感謝してもしきれないショ。いいチームだった。特に今年は・・・
・・・けどもう、オレは。サヨナラだ。
3年生はもう次のインターハイに出ることはない。
が、金城さんや田所さんは練習にまだまだ顔を出すつもりでいる。
面倒見のいい田所さんとしては鍛えたい相手がいっぱいいるでしょうしねぇ。
しかし、巻島さんはその2人とは違った様子を見せている。なんだろう、一体?
金持ちの家なだけに、部活が終わったら家業を継がないといけないとかあったりするのだろうか?気になるな。
その巻島さんの離脱の理由を聞かされているっぽいのは2年の手嶋さんと青八木さん。
オレたちが強くなんなきゃならねェんだ!!と気合を入れています。
まあ、巻島さんの理由はさておき、3年生が抜けた穴はこの2人が埋めないといけないのは確かですものね。
強くならなきゃいけないのは間違いない。
のだが、話の流れからしてそこまで先の話をしているわけではないようだが・・・?
一体どんな話を聞かされたのか。気になりますねぇ。
さて、次号は本編に代わり『2012 ジャパンカップサイクルロードレース』のレポートマンガを特別掲載とのこと。
本編はその次の号で大増ページで再開とのことでございます。楽しみだ!!
RIDE.234 ニューマシン
(2013年 1号)
快晴の空を仰ぐ寒咲さん。
サイクルショップKANZAKIにて店員として若い身空で働いている様子。
まあ、自転車好きな子ですし、趣味と実益を兼ねているとはいえるか。
その開店時間早々にやってきたのは今泉君。愉快なTシャツを着た今泉君。USAGIか。
どうやらバスに乗ってやってきた様子。
1話の時みたいに車で送ってもらうという選択肢はなかったんですかな?まあいいんですけども。
今泉君がわざわざバスに乗ってきたのは理由がある。
愛車を修理してもらっており、その修理されたバイクを受け取りにやってきたからである。
IHの時にいってしまったフレームを直し、変速機やホイールも一新されたニューマシン。
これが今泉君の新しいバイクだ!!
修理・改造を行った寒咲兄の言葉によると、今回の変速機は電動化されているとのこと。
今まで物理的にワイヤーで引っぱって行っていた変則を、電気信号でモーターがやる。
"スイッチ"でギアを変える感覚になるらしい。ほう。
ワイヤーとどっちがいいってワケではないが、今泉君は変速を多くやって体をマネジメントするタイプである。
追い込まれたギリギリでも確実にシフトできる。これは大きなアドバンテージになる、とのこと。
その言葉が示すとおり、変速の感触がダイレクトに伝わる。
脚の動きにバイクが誤差なく反応しており、しかも軽い。これは良い。
すげぇ・・・!!軽いタッチでギアが変わるなんて変な感覚だ・・・!!けどこのバイク進む!!気持ちいい!!
ニューマシンに乗り換えたときの躍動感はいつになっても気持ちのいいものですよね。
走りながら、今泉君は金城さんに言われた成長しろという言葉を思い出す。
その言葉を受け、IHで走った3日間。いろんな経験をした3日間でありました。
御堂筋君に凹まされ、リタイアしかけた。金城さんに励まされ、それは回避できた。
御堂筋君の敵じゃなかったと気付いてヘルメットを叩きつけた。金城さんに励まされて、どうにか走り続けた。
急成長により御堂筋君とも渡り合えるようになり、ついに破ることに成功した。
うん、こうして並べてみると御堂筋君との絡みばかりじゃないですか!!
そして金城さんに結構救われてたんだなというのも感じられる。さすがに主将といったところか。
あれが終わってからオレが感じてることは、前より確実に強くなってるってことですよ!!
まだ強くなりますよ、オレは!!
来年もインターハイに出る。全国から集まる強いヤツをけちらす!!オレが!!総北のエースとして!!
メンタル部分が強いところで安定していれば今泉君は強いと思う。
常に強気でオレが先頭にと言っている時が強い。
が、ヘタレると一気に落下するのが今泉君である。エースとしては、その辺りの調整がこれからの課題でしょうな。
さて、今泉君に続いて坂道が店にやってきます。
こちらは今泉君と違って自転車に乗ってきている格好もジャージだ。
おかげで総北の選手であることが客にも一目で分かる。目立つものねこのジャージ。
IHの最後の場面を見ていたという客。興奮しながら凄かったねーと語る。
思いっきり当事者相手にそんなことを語られましても困りますわなぁ。
坂道の顔が知れ渡るにはまだ時間がかかるか・・・目立つメガネしてるのに。
坂道が店にやってきたのは寒咲兄に呼び出されたからである。
その用事とは、IHを走った例のクロモリ。借り物であるその自転車を返せというもの。
そりゃあ、元々借り物ですものね。返せと言われたら素直に返さざるを得ない。
ある意味プレミアがつきそうなシロモノであるしね。
とはいえ、さすがに愕然とする坂道。人のいい男であってもこれはさすがに・・・って感じか。
だが、さすがに足を完全に取りあげるようなことはしません。
その代わり、こいつに乗れ。
寒咲さんが両手に担いでいるのは新しいバイクである。
カーボンモジュール成形。フレームは全て炭素繊維でできている。
ヨーロッパの名門スイスBMC社製。今までのクロモリに比べて重量は半分というシロモノだ!!
アルミを飛び越えて一気にカーボンまで行きましたか。
クライマーにとって軽さはキモとなるという。これは凄いパワーアップになりそうですなぁ。
ところで自転車持ってる寒咲さんは結構可愛い感じがする。
この子は制服姿よりもエプロンで自転車持ってる方が可愛さが際立つのか?それもまた良し。
寒咲兄は坂道にもう一歩先に行け。その欲求にそいつなら確実に応えてくれるという。
その言葉に従い、乗ってみる坂道。
なんだ、これ・・・軽い・・・!!3cmくらい浮いて走ってる感じだ!!すごい、進む!!
楽に遠くに速く移動し、ここって時に回せるバイクである。
このバイクであればIHの時よりもっと回せるかもしれない!!
マジですか!?
IHのトップをとった男がさらに強力な足を手に入れたということになるのですかい!?
もはや敵なしってことになるんじゃないですかね、これは・・・
まあ、来年以降は過剰にマークされる存在にはなると思うが、それでもこれは・・・
ところで、このBMC。単行本1巻の表紙で坂道が乗っていた黄色いアレなんですね。
この時からこの自転車に乗り換えることは決まっていたんでしょうなぁ。そう考えるとなかなか感慨深い。
そのBMCを駆って今泉君と鳴子と合流する坂道。総北1年3人組の揃い踏みだ。
今泉君は新フレームに電動コンポ。坂道はニューバイク。
ではでは、残る鳴子には何かあるのだろうか?もちろんあります。
鳴子の乗るバイクのホイールは太く大きい。ブレーキ音も聞いたことのない風切り音を立てている。
山ではホイールの軽さが重要――そんなこと言うたのは巻島さんやったか。
平坦ではホイールの風の抵抗が重要。前からうけた風をいなして推進力に変える。
これがスプリンター究極のホイール。カーボンディスクホイールや!!
カーボンアルミリムと素材が違うのでブレーキも変えてある。なのでブレーキ音が違うとのこと。ほう。
時折このタイプのホイールは見かけますよね。文字がハッキリ見えてなんだかカッコイイ。
そうか、これはスプリンター向けのホイールだったのかぁ。
って調べてみたんですが、鳴子のこれはカーボンディープホイールじゃないですかね?
カーボンディスクホイールは完全にスポークが見えなくなるようなタイプのものらしい。
DVDのラベル面が目一杯とられている感じといえばいいでしょうか。
まあ、似たような言葉なので言い間違えてしまったということもあるんでしょう。
ともかく、ここに来てマシンのパワーアップを果たした3人。
優勝した高校がここまで強くなるとは・・・他の高校に気の毒になってきますな。
まあ、3年生が抜けた穴が埋まるかどうかは分からないという懸念はありますが。
決して自転車部の名門というわけではない総北に有力な新人がやってくるのかどうか・・・気になるところ。
とはいえ、それはまだ先の話。今はまだ3年生の面々が在籍している時期です。
なのだが、そのうちの1人である巻島さんが用意しているのは退部届。
図書室で1人電話に出ている巻島さん。相手は兄らしい。
会話の内容に、荷物をまとめたとある。これは一体どういうことなのか・・・?どこかへ行ってしまうのか?
巻島さんの家は結構な金持ちでありましたからねぇ。
ひょっとしたら高校の卒業後は巻島さんもセレブな生き方をすることになるのかもしれない。
そのための修行に海外に出るとかそういう話だったりするのかな・・・?
でも、正直社交的な巻島さんとか想像もつかないっショ。
だんすぱーてーで女性に気さくに声をかけて踊る姿とか・・・まるで想像できない!!
ニューマシンが続々登場したワクワク感から一転して不穏な空気に。
果たしてどのような展開になりますことか・・・
弱虫ペダル 28巻
RIDE.235 最後の峰ヶ山
(2013年 2+3号)
巻島祐介、旅立ちの時。
巻島さんの退部届が監督のもとに届けられた。
もちろんそのことは金城さんの知るところとなり、田所さんにも打ち明けられる。
激しく動揺の色を見せている田所さん、何故、どうしてといった感じでしょうか。
さすがに監督や金城さんは理由を聞いているのでしょうな。
退部届を出し、最後に部室を見て回る巻島さん。
目に留まるのはIH優勝記念のカップ。
そこに括り付けられた布には、レギュラーの面々が思い思いに寄せ書きした言葉が綴られている。
坂道「ありがとうございます」
今泉「やったぜ」
鳴子「派手一番!!」
金城「感謝だ」
田所「天下統一!!」
巻島「↑バカ」
コメントと名前が同じ大きさな鳴子もあれであるが、やはり田所さんが凄い。何だよ天下統一って!!
そりゃあバカと言われても仕方がありますまい。
どうでもいいが、この回想時の今泉君の頭が細すぎて不安になってくる。
優しい気分になったのか巻島さん。バカの文字を消し、ちゃんとしたメッセージを残す。
巻島「登り一筋」
ふむ。らしい言葉でありますな。でも、バカの字は別に消さなくてもよかったと思いますよ。
ツッコミが合って生きるボケな気がしますし!後から見ればツッコンだ跡が見て取れるから問題ないか。
さて・・・最後の峰ヶ山登ってくるかァ。
部室を見回るだけでは足りなかったみたいですね。
これが最後と、何度も自主練習で登った思い出の山を登ろうとする。
巻島さんが山に向かおうとしている頃、鳴子は田所さんから携帯で連絡を受ける。
どうやら巻島さんが退部したことを聞かされたみたいですね。今泉君は側にいるが坂道は別のコースを走っている。
どうやら巻島さんは海外の大学に進学するらしい。
なるほど。海外の大学は9月から始まる。
高校の単位を前倒しにして終わらせて、9月にはもう大学生になるって流れなわけですね。そりゃ大急ぎだわ。
あいつ・・・イギリスに兄貴が行ってて、独立してるらいいんだけどそれ手伝いながら向こうで生活すんだそうだ。
なるほどねぇ。もう先々のこととか色々と決まってたんですなぁ。
む、逆に田所さんの将来とかが地味に心配になってきた。し、進学とかしますの・・・?
どうすんすか、3年生の有志校集まって追い出しレースいうのあるんでしょ!?出れんやないすか!
てか巻島さん、どうすんすか自転車!!
焦る鳴子。
そうかーそういうレースもあったりするんですなぁ。
それなら人気の3年生達の勇姿がまだ見れる機会があったりするのかぁ。
でも、その中に巻島さんがいないという話になると・・・割と淋しいものがある。
逆にその話がないと、まあしょうがないかなで済まされそうな卒業話。
止める理由とかも思いつかないし、自転車はどこでも出来そうな気はしますからねぇ・・・
さて、坂道。部室に戻ってきたところで巻島さんと出会う。
巻島さんは坂道のニューバイクが似合っていると誉める。黄色いジャージと御揃いでいい感じですよね。
坂道が言うには、まだ性能を発揮できていないとのこと。まだなのか・・・!!
つま先をクランクのトルクかけるところで前にスライドさせるイメージで回せ。軽いフレームはその方が進むショ。
さすがに巻島さん。いいアドバイスを送ってくれる。礼を言う坂道。
その坂道に巻島さん。今から1本峰ヶ山に行くんだが、つきあうか?と尋ねる。
それに対し、ちょうど峰ヶ山登って来たばかりなのでまた今度でいいですか?と返す坂道。
そうやってすれ違って、お別れになる――のかと思いきや、妙な胸騒ぎに引かれて振り返る坂道。
あのっ。やっぱり一緒にいっていいですか。
ニブいんだか鋭いんだか知らないが、直感に従って行動できるのは好ましいことである。
お互い後悔のない様にしておきたいですし、この行動はよかったですなぁ。
2人で楽しそうに山を登る。
抜きつ抜かれつ。苦しそうにしながらも、実に楽しそうな笑顔も浮かべる。
巻島「(なぁ坂道ィ!!)自転車は楽しいかァ!?」
坂道「はい!!」
そんな声を交わしつつ登りきった2人。
どうやら最後は巻島さんが先んじた様子。
登りなれた山で、体力も全快の巻島さんだし、さすがに上回るか。坂道が新しいバイクに慣れてないのもあるだろうし。
というか、巻島さんのスタイルは並走しづらい。コワイ。抜きにくい!!
坂道たち1年生は最近いつも話している。"3年卒業までにはブチ抜いたる"って。
なので坂道もそれまでに追い抜きたいと考えていますと口にする。
またその時は勝負してもらえますか?
オレはいつでもおまえと走ってるショ。そう思えば勝負なんざいつでもできる。
つづら折りの登りのカーブで。果てなくつづく1本道で。草おいしげる田舎道で。
来年も。そのつぎも。オレはおまえの前を走ってる。だから抜け。強くなれ。
オレたちの総北を、たのむぜ坂道。
坂道の頭に手を置き、静かにそう語る巻島さんでありました。
そういえば苗字でなく名前で呼ぶのはこれが初めてなんでしたっけか。
クライマー同士が登りのエースの引継ぎを行っている頃、別の引継ぎも行われようとしていた。
金城さんの前に立つのは2年生の手嶋さんと青八木さん。
そして金城さんは手嶋さんに話しかける。
総北高校自転車競技部。次のキャプテンはおまえだ。2年、手嶋純太!!
走れ!!1秒でも多く!!来年のインターハイはもう始まってる!!
そう、力強く述べる金城さんに、手嶋さんもまた力強い返事で応えるのでありました。
次期主将は手嶋さんかぁ。まあ、妥当なところでありますね。
年齢と人望。作戦立案能力。どれも申し分ない。自転車の実力に関しては・・・きっと成長するハズ。
まあ、強力な1年生がまた3人まとめて入ってきたりしない限りはレギュラーの座は大丈夫ですよ。きっと。
しかし、もう主将の引継ぎが行われるのか。そうなると他の高校が気になりますな。
やはり箱学は泉田君が主将になるのだろうか?
メンタル弱い面が気にかかるが・・・憧れるキャラから憧れられる側のキャラに回れるかどうかが課題ですな。
京都伏見はどうなるのか?水田くんは・・・想像がつかない・・・
やはりここは年齢差を物ともしない御堂筋君への引継ぎになるかな。石垣さんのやりとりでまた話が作れそうな感じ。
広島は割と親密に、かつ熱血風に引継ぎが行われるかもしれない。意外と。
てな風に、未来に思いを馳せる前に、重大発表がある様子。
次号は『ペダル3倍祭』が開催!!
新作SPARE BIKEと本編一挙2話掲載という豪華っぷり。
そしてそこで「弱ペダ」史上最大の衝撃の重大発表があるとのこと。い、一体何が来るというのだ・・・?
嬉しい発表なのかどうなのか不思議と身構えてしまう。
ここは予想を控えめにして楽しみに待つ構えを取るとしましょう。
RIDE.236 新生総北
(2013年 4+5号)
TVアニメ化決定!!
シンプルに力強く、重大発表の内容が明かされました。
いやあ、来るか来るかと思ったら、本当に来ましたねぇ。
詳細は順次発表とのことなので、放送時間や放送局などはまだ不明です。
というわけで、TVアニメ化決定記念のペダル3倍祭開始!!
本編2話+SPARE BIKEの計3話が載っているぞ!!
金城さんから次のキャプテンはお前だと指名されたのは2年の手嶋さん。
第2世代総北の活動はここから始動する。
前回は事前に引き渡しがされた場面だったのかと思いましたが、実は全員が揃った状態だったらしい。
これからは完全に一線を退き、見守る立場となる3年生たち。
最後に感謝の言葉を後輩たちに贈ります。パチパチパチパチ。
オレたちはマジで幸せ者だよ。マジで最高だったぜ。あたぁ、たのむぜ。
キャプテン手嶋純太!!副キャプテン青八木一!!
凛々しい表情の2人が指名されて全員の前に出る。そして挨拶。
総北は優勝した。王者、箱根学園をやぶった。同時に背負った。
インターハイ優勝チームの重圧。責任。プレッシャーを。
次のインターハイ・・・いや、その前のレースから全てのチームにマークされるだろう。
それをはねのけ勝たなければならない。絶対に。どんな状況でも。
なぜならばオレたちは、来年のインターハイでシングルゼッケンをつけて走る"王者"だからだ!!
そう。これからは総北こそが王者を名乗ることとなる。狙われる側の立場となるわけだ。
その重圧を受けて走らねばならない。となればあれですな。
"オレたちは強い"これを常に口にしないといけないわけなんですな。王者の義務として!!
未来予想ではシングルゼッケンのさらにエースナンバーである1は坂道がつけることになっている様子。
まあ、本当に1位を獲得した男ですからねえ。これは当然と言えるでしょうさ。
それはさておき。新キャプテンと副キャプテン。2人と共に走る1年生3人組。
さっそく手嶋さんは1年生たちに声をかけてきます。来いよ。インハイでどれくらい強くなったか確かめてやるよ、と。
鳴子「おもろい!"勝負"いうことですかパーマ先輩!」
手嶋「きこえなかったか。そう言った。この道のドンツキの信号のとこまで勝負だ!!」
前に出て加速を開始する手嶋さんと青八木さん。
コースは平坦道の15km。策士である手嶋さんはどのような手を使ってくるのだろうか。警戒する今泉君。
青八木さんが前に出て本格的な加速を開始。この先頭交代のスムーズさ。2人走りは健在か!
だが、注目するべき点はそこではなかった。走りの様子を見て鳴子と今泉君は同時に気づく。
策略なんかない!!あの人たちは力ワザでオレたちを引き離すつもりだ!!
"あの人たちは力がないから策略でくるはずだ"そうよんだオレたちの完全にウラをかいてきた!!フル加速するぞ!!
アホか。気づかんかった。気にも留めんかった。今更や!!
よう見たらあの人ら、あの人らの脚、合宿の時と全然ちゃう!!メッチャ練習しとる脚やんけ!!
インターハイまでは自分のことで必死だった1年生たち。
脱落した2年生たちが休むことなく練習していたことなど気にも留めていなかったでしょう。
まあ、実際のところ、ここまで成長しているとは誰も思いますまい。
休まず練習してたのは1年も2年も同じはずなのに、メッチャ練習している脚になっているという。
なんですか?合宿前まではそんなに練習してなかったんですか?
いや、たぶん肉体が本格的に出来上がったのがこの時期だったのでしょう。
2年時はまだ未成熟だった身体が、ようやく才能に目覚めようとしている。特に青八木さん。
あいつはスプリンターとしての才能を開花させつつある!!
金城さんのその言葉の通り、青八木さんの筋肉がもりもりと増大していっている。
脚の太さ!背中の筋肉の起こり。まさしくスプリンターの体つきである。たくましくなったなぁ・・・
その健脚を見せつけ、最後まで鳴子や今泉君に追いつかせることなく設定したゴールにたどり着く2年生たち。
よもやの敗北。せっかく平坦スペシャルのディープホイールにしたというのに早速敗北するとは・・・鳴子も立つ瀬がない。
あ、ちゃんと表記がディープホイールになってる。やはり前回のディスクホイールは間違いであったか。
鳴子と今泉君を挑発しつつ、手嶋さんは言う。
まだ足りない・・・!!オレたちは――総北はもっと強くなる!!第2世代総北だ!!
新キャプテンとしての格と矜持を見事に見せつけた手嶋さんでありました。いいスタートだ。
「自分たちより格下だ」という一瞬の油断をつかれての敗北。悔しいでしょうが、それもロードレースである。
しかし、鳴子や今泉君が敗れたのは油断によるものだと言える。
が、一人。元々平坦はそこまで速くないとはいえ、大きく遅れている男がいた。坂道だ。
後をゆっくりと走ってついてきていたはずの3年生よりもさらに後ろを走っている。不安になる状態だ。
追いつけない。追いつかない。がんばらなくちゃいけないのに。弱気じゃダメだ!弱気じゃダメだ!
頭を振るが、浮かんでくるのは去って行った巻島さんのこと。
強くなって巻島さんと勝負する。それを目標に頑張ろうとした矢先にその目標がいなくなってしまう。
想いをぶつける先がなくなり、空回りする坂道。弱気になっちゃいけないと思っても、それはやはり難しいようで――
巻島さん――ボクは――どうやって強くなればいいんですか。
沈み込む坂道でありました。うーむ、重症ですなこりゃあ。
というところで3倍祭りの1本目終了。続いて2本目の本編に移ります。
RIDE.237 巻島が残したもの
(2013年 4+5号)
やはり沈んだままの坂道。
巻島さんの名札の外されたロッカー。メーカーのステッカーが張ったまま残っているのがまたなんとも寂しい。
なんでだろう・・・このところ、たたかれた背中の感触がやけにリアルに思い出させる。
幻覚が浮かぶほどに思いつめた様子の坂道。危ういですなぁ。
巻島さんに総北を頼まれたのだし、絶対にくじけちゃダメなんだと考え、走り出す。
過去は振り払って前に進むんだ!!
そう考えるものの、想いが空回った状態では自転車が進むはずもない。文字通り空回っているわけだからな!!
というわけで、勢いが制御できずにコースアウトする坂道。危ない。
が、落車するときは毎回絶妙に草むらにダイブするようになっているらしい。防衛本能のなせる技か?
いや、それならそもそも落車をするなという話である。
鳴子たちには新しい自転車にまだ慣れていないのだと説明する坂道。
だが、沈んだ表情は手嶋さんには隠せない。よく見てますからね、この新キャプテンは。
さて、練習再開。
坂の練習。キョリ200mの2段坂。短いキョリの坂でございます。
これならスプリントで一気にいけると張り切る鳴子。負けじと並ぶ今泉君。
坂。登り。これはクライマーの出番。見せ所。
巻島さんが去った今、坂道は総北唯一のクライマーである。それがまた、自身が頑張らないとという気持ちにさせる。
が、ダメ。力が入らない。
心のギアが掛け違っていてはどれだけ力を込めたって空回るだけってことであります。
強く想うだけでは答えてくれない。身体ってのは正直なものですな。
そんな風に悩む坂道の横に並走してくれる手嶋さん。
青八木さんに指示を出し、他の面々は先に行かせて、2人で話せる機会を作る。ゆっくり登ろう。天気もいいんだ。
そう切り出しながら、巻島さんの思い出話を始める手嶋さん。
巻島さんはああ見えて優しかった。取っ付き辛いというか、話すのが苦手な巻島さん。
だけどいつだって親身になって接してくれる。いい人だ。
でもクライマーとしてのアドバイスは役に立ちません。その登り方は貴方しかできませんってばよ。
――巻島さん。まだボクは――まだボクは教わることがたくさんあったんです!!なのになんで!!
技術的にそんなに教わる部分ってありましたかね?精神的な話でしょうか?
いやまあ、コース取りとか覚えることは色々とありそうではありますが。
つらかったら休めよ。今詰め込んだって、力にはならないよ。
いつか話したろ。高みにいく時は自分の立ち位置を知る。そういうのが大切なんだ。
自分の立ち位置考えて、相手にはこう思われている。こう見えてる。だったらこうしようって。
そうすりゃ突破できんじゃないかってアイデアひねんだ。
オレは弱い。
立ち位置の話をするということで、一番己自身を認識していると感じさせる言葉が出てきました。
王者としては問題がありそうな言葉だが、把握できているというのは大事なことだ。
今泉や鳴子は強い。インハイで3年生とも互角に戦った。オレは今や青八木にもスプリントじゃ敵わない。
キャプテンなのに1番弱い。メンタルだって強くない。
だがそれを知ってる。やるべきことはそれを補うためのひとつひとつの努力だ。そこに突破口がある。そう信じてる。
休んだっていい。悩んだっていい。小野田。それさえ進むってことなんだ。信じろよ。光は必ず射す。
巻島さんに魂もらったんだろ。おまえも。
よい話ですなぁ。
坂道にはこうやって親身になってくれる相手がまだまだ必要なのである。
強さはさておき、メンタル面では一番不安定な子であるのは間違いない・・・今泉君も微妙に不安定か。
ともかく。手嶋さんによって勇気づけられた坂道。
それはさておき、気になる言葉を最後に言ってますね。おまえも、という言い方は・・・?
所変わって、空港。
今ついに、巻島さんが日本を飛び出しロンドンに向かおうとしている所である。
そこに友の船出を祝おうと電話をかけてくる東堂さん。相変わらず仲のいいことだ。
見送りは断ったので1人でいる巻島さん。語る間はある。
今年は負けたが来年は勝たせてもらうよ、巻ちゃん。
オレが卒業しても黒田、真波を筆頭に箱根学園には強いクライマーがまだウヨウヨしている!!
卒業しても母校の戦いは続くので俺たちの戦いは終わらないぜっていいたいのでしょうか。それもまた絆ですな。
しかし、総北は慢性的なクライマー不足に悩まされている。
坂道が入ってきて巻島さんが大いに喜んでいたくらいですしねぇ。
東堂さんも心配している。いくら強いとは言え1人では勝てんな、と。
巻島「いやぁ・・・いるっショ。クライマー。うちにも」
東堂「ほう!!強いのか。センスはあるか」
巻島「からっきしだ!!」
力強く言い切る巻島さん。しかし、直後にこう付け加える。
けど総北には合ってんじゃねェのか。ああいうタイプ。
才能ねェ。センスもねェ。だから努力で登る男だ!!
まるで主人公のようですね。
そのように言われているのは、キャプテンである手嶋さん。
そう、巻島さんの魂を受け継いだのは坂道だけではない。手嶋さんもまたクライマーとしての使命を受け取ったのだ!!
なかなか面白い展開になってきました。
2人走りと策士面ぐらいしか特徴のなかった2年生であったが、ここに来て特色が出てきた。
青八木さんは田所さんに代わりスプリンターに。手嶋さんは巻島さんに代わりクライマーにという風にだ。
そうと定めれば、努力して立派なクライマーになってくれることでしょう。疑いようもない。
頼もしい話ではあるが、やはり現状レギュラーが5人では足りないのではなかろうか?
後1人。金城さんに代わるエースが必要になる。が、さすがにそれは望みすぎか。
来年にやってくる新1年生に期待ですかね。古賀先輩や杉元の成長に期待は・・・さすがに、ちょっと・・・ねぇ?
RIDE.238 心焦がすもの
(2013年 6号)
激坂として1話から話題となっていた総北高校裏門に至る登り道。
そこを1人で黙々と登っているのは新たにキャプテンとなった手嶋さん。
キャプテンを拝命し、さらに新たなクライマーとなる役目を授かったのだ。練習するしかあるまい。
巻島さんは言っていた。登りはごまかしが効かないと。平坦のように風よけを得て走ったりすることはできない。
手嶋さんにとっては苦手の分野だ。知恵や技術でどうにもなるものじゃない分野なのである。
だから登れ。「ひたすら。脚が止まるまで」
その言葉に従い手嶋さんは走り続ける。1秒でも1cmでも近づくために。
なる――オレは!!たとえそれが不可能でも。
ギリギリまで、ギリギリまで近づけることはできるはずだ!!
強くなるんだ!!
月が見えるぐらい夜遅くまで登りを繰り返す手嶋さん。
巻島さんは速い時だとこの坂を6分台で登ったというが、手嶋さんは未だに最高で8分台。
まあ、すぐに追いつけるんだったらセンスがないとかは言われませんわな。この差を努力でどれだけ埋めていけるか。
教室にいる手嶋さんに声をかけてきたのは別クラス――1組の生徒である東戸さん。
彼は中学時代から手嶋さんとは知り合いで、今はバレー部に在籍しているらしい。
新たにキャプテンとなった手嶋さんを気遣ってやってきたようだ。
まあ、なんせ全国を取った部を受け継ぐのですからねぇ。プレッシャーが半端じゃないのは傍からも伺える。
自身も練習をしないといけないが、キャプテンである以上やるべきことは多いですものねぇ。
そんな手嶋さんに気晴らしをしないかと声をかける東戸さん。
カラオケ。練習帰りに。
おめーが主将になったってきいたからさ、企画したんだよ。
久しぶりに聞かせてくれよ手嶋メドレー。
ヒラケンからのマキハラからのクワタ。まさかのヒロミ・ゴー。超似てんだよなー!!
そ、そうなのか。
手嶋さんは技術のある人だとは思っていたが、カラオケも得意でありましたか。
きっと真似るために繰り返し聞いたり歌ったりと練習を重ねたんでしょうなぁ・・・想像できてしまう。
中3以来か、おまえとカラオケ。
オレらと一緒に自転車やってた連中も集めたぜ。祝いたがってる。
そうか、東戸さんは昔の自転車仲間だったんですな。千葉南中と書かれた同じジャージを着て肩を組む5人の男子たち。
手嶋さんはその中でもかなりの自転車好きであったが、それでも一度は心折れてやめかけた経験がある。
その手嶋さんが復帰し、今では全国トップとなった高校の主将である。同期としては誇らしくあるし祝いたくもなりますわな。
気の回る東戸さんは、手嶋さんが前から気になると言っていた女子バの岩瀬ちゃんも誘っておいてくれたそうな。
ふうむ。持つべきものは友人ということでありますな。なんと気の利くお人であることか・・・!!
しかし、ふと目を閉じた手嶋さんの脳裏に浮かんだのは、あの日の光景。
その光景が浮かんでしまっては他のことをする気持ちにはなれそうにもない。やっぱり時間がないやと笑顔で断ることにする。
その返事に残念だなと去っていく東戸さん。
まあ、気の利く人ですし、手嶋さんの笑顔で大体察してくれたでありましょう。東戸さんも笑顔だ。
悪い・・・東戸。行きてぇよオレ。けど、目つぶって思い浮かんじまったのがインハイの小野田だからな。
やっぱオレ、インハイに心もってかれちまってるよ。
立つ。もう一度。オレたちは王者だ!!灼熱の3日間を走りきり、あの台の上に!!
次のインハイに向けて早くも心の準備は万端となっている手嶋さん。
総北の新体制も徐々に出来上がりつつあるみたいですな。
坂道もまだ巻島さんのことは引きずっているようであるが、少しづつマシになっていっている様子。
手応えを感じ始めている手嶋さんに純太と下の名前で呼びかけるのは副キャプテンの青八木さん。
スプリントという得意分野を開花させた青八木さんは、もう手嶋さんと同じ練習をすることはない。
独自の才能を生かすため、田所さんとスプリント勝負を行っている。
その結果――1度ではあるが、勝利した。あの田所さんに。スプリント勝負で。
これは嬉しいでしょうなぁ。興奮する手嶋さん。尊敬する相手を追い抜けるというのは嬉しいものである。
今泉、鳴子、小野田、青八木。オレたちの第2世代総北は――確実に1歩1歩進みつつある!!
新たな王者として着々と体制を築きつつある総北。
一方、王者の位置から陥落した箱根学園。ここでも新体制に向けてキャプテンの引継ぎが行われていた。
箱根学園自転車競技部の次のキャプテンは泉田塔一郎。これはまあ、予想通りでありますな。
インハイの苦い経験を知る男である。来年は一層の念を込めての走りが期待できる。
メンタル面での不安はあるが、頼られ、憧れられる立場に回ることでその辺りの変化も出てくるかもしれない。
髪型の地味な変化と共に精神面の前進に期待でありますな。
次の箱根学園は泉田を含めた2年生3人を中心に舵を取ってもらう。
そう告げる福富さん。
泉田君以外の2人、そのうちの1人は副キャプテンを拝命したクライマーの黒田雪成さん。
黒田さんは選抜で山岳に敗れたことでインハイに出ることはできなかった。
だがセンスがあるのは東堂さんも認める所の人である。来年の活躍に期待できます。人柄もよさそうですしな。
ちなみに泉田君とは家が近く、小学校の時から一緒に練習してた仲らしい。
箱根学園は来年も仲の良い3年生が率いていくチームとなりそうですな。今のうちにリーゼントの不良でも引き込んでおいたらどうかね?
そして3人目。新開さんが見所あると推薦する男。む、スプリンターか?
千葉県千葉南中出身。親の転勤でこっちに来た。今度の総北の主将の手嶋くんとは中学で同じ部活だった――らしい。
2年、葦木場。ハコガク史上最も長身、2m2cm!!
新開「葦木場。どうだった手嶋くんは」
葦木場「彼・・・・・・ですか。上手いヤツですよ。カラオケが」
ここでもカラオケ押しか!!どれだけ上手かったんだ手嶋さん。
まあそれはそれとして。
箱根学園も新体制が整いつつある。泉田君と黒田さんはまあ実力は既に見せているし、期待が出来る。山岳もいる。
しかしこの葦木場くんはどうなのだろうか。長身というのは自転車で優位に働くものなのだろうか?
風の抵抗や自身の重さによる登りの厳しさなどが枷になりそうな気はするが・・・
まあ、御堂筋君も大きかったしなぁ。並んだ相手にプレッシャーをかけることができるという点ではいいか。うむ。
とりあえず、どんな走りをするのか。どんな性格なのか。期待するとしましょう。
RIDE.239 3人目の男
(2013年 7号)
手嶋さんのカラオケ伝説はどこまで掘り下げられるのか!
それはさておいて、葦木場は確かにでかい。
簡単には当たらないように設計されている高さの場所にでも頭をぶつけてしまうでかさである。
色々と日常生活で不便していることが容易に想像できてしまうなぁ。
だからといってバイクを文字通りの意味で棚上げしてしまうのはどうなのだろうか。
取れなくなるというか、バランス失って簡単に落ちて来るんじゃなかろうか。
感じ的に新開さんの上に落ちてきそうなのだが、そんな涼しい顔をしていていいのか!?
それはともかく。新開さんは葦木場くんに手嶋さんが出るレースに出てみないかと勧める。
その目的は手嶋さんとの戦いだけではない。ある男を体験し、できるならその男に勝ってこいというもの。
その男とは一体・・・
次世代を担う新・箱根学園にバトンを渡した福富さんたち。
卒業する3年生4人と、新キャプテンの泉田くんとでミーティングを行っています。
振り返るのは先のインターハイでの戦い。
オレ達のやり方は間違っていなかった。
荒北と泉田がヤツらを引き離し、新開が山中湖の平坦を引き、ヤツらに先んじてクライマーを発射させた。
東堂が最右翼の巻島をおさえ、真波――そしてオレを残した。
こちらはほぼ予定通り・・・だが総北――ヤツらはトラブルが続いた。
エース金城の不調。戦線からの離脱。まさかの経験のない1年生へのエースのスイッチ。状況は圧倒的に我々に有利だった。
けど、負けたァ!!
吠える荒北さん。さすがに最後のインターハイで負けた悔しさは簡単には拭い去れるものではないか。
でも、割と一番大きな原因は、坂道を集団から先頭に運んだ荒北さんにあるような気はしないでもなかったりするのですが・・・
インターハイの格、重さが山岳にはわかっていなかったと荒北さんは言う。
しかし福富さんの意見は違う。ヤツは全力を出した。その重さもわかった上で、出せる最高の力で走ったはずだ、と。
負けたのはオレたちが――いや、オレの予想が甘かったからだ。
176番。総北1年、小野田。走りはドシロート。
闘争心のかけらもないような顔で、内側に秘めていたのは最後まで諦めない不屈の精神力だった。
そしてそれは、箱根学園随一のクライマー真波を喰らう程だった。
闘争心のかけらもないと言われながら、背景にピックアップされている絵は闘志剥き出しな場面ばかりなのはどういうことなのか。
オレがよめなかった――真波は「危険」だと言っていたがな。
それもそのはずだ。ヤツは総北があのレースの中で造り上げた"意外性"だったからだ。
狙って造れるものではない。だが盤石な王者であるオレたちを切り崩すために唯一できる方法だった。
確かに金城さんはそんなことを言いながら坂道を登用していましたな。
今泉君にもレース中に成長しろと言っていましたし。かなり賭けの要素が強いが、それに勝ったのだから問題はない。
坂道の才能を見出し、育て、続けさせたことが一番のファインプレーだったといえるかもしれませんな。
というわけで、箱根学園がこの先一番警戒しないといけないのは間違いなく小野田坂道という男となっている。
なので、次の世代の箱根学園のメンバーに見せておかなければいけない。カレの走りを。
その話し合いから決まったのが、葦木場くんのレースへの出場要請だったわけですね。
出場するレースは峰ヶ山ヒルクライムレース。巻島さんが優勝していたあのレースですな。
毎年恒例のレースだが、今年はかなり報道陣が多い。
それもそのはず。今年はインターハイを制した男が出場することになっているのだ。俄然注目も集まろうというものである。
黄色いジャージを着て先頭に立つのは小野田坂道。インターハイ個人総合トップの男。
観客も坂道に注目しております。やっぱなんかオーラ違くない!とか言っているのもいたりします。
うーん、所詮素人の見立てなどそんなもんか。名が売れればその効果で違って見えるなど、流されやすいにもほどがある!!
実際の所、現在の坂道は巻島さんの件もあり、好調には程遠い。
それ以外にも、託されたものや、王者と言う位置、注目されている事実に慣れていない坂道。メンタルがグラグラだ。
記者の言葉にもまともに返事が出来ていない様子。
まあ、坂道が記者にとフランクに話す未来は全く想像できないから、今のメンタル以外でも対応は変わらないか。
困ったらオレは強いと言っておけばいいんですよ。それで大体なんとかなる!
てな風に気楽には考えられない現状。とにかく勝たないとという意識が頭を占めている。
勝つ。勝つ。勝つんだボクが――勝つって、何だろう。
ここにいる全員をおしのけること――!?誰にも負けないこと!?――!!
ムリだ・・・インターハイは先輩やみんながいたから走れたんだ。練習だって力が入らないのに。ボク1人の力じゃ!!
思い悩む坂道。その坂道を隣に立った男が背を叩き励ます。支え合ってこそチーム総北だ!!と。
なぁーんて。金城さんならそういうのかな。ゆっくりでいいんじゃないか?
全部背負い込むなよ。小野田。
そう言ってくれるのは手嶋さんである。おぉ、頼れる新キャプテンだ。
ちなみに坂道の後ろには今泉君の姿もある。どうやら緊張しすぎて仲間の存在すら感じれなくなっていた様子。それはいかがなものかと。
レースで出場できるのは各高校3人。総北で出るのは坂道、今泉君、手嶋さんの3名となっている。
クライマーの2人と登れる今泉君か。ベストなメンバーと言っていいんじゃないでしょうか。
まあ、手嶋さんはクライマーに成り立てなので、そんなに注目されても困るわけですが。
その辺を理解しているのか、マイペースで登ればいいと言う手嶋さんでありました。
手嶋さんの言葉で多少は緊張がほぐれたのか、笑顔を見せる坂道。
そして集団の後方ではその様子をうかがっている男が存在する。葦木場くんだ。
体を曲げていた状態ではわからなかったが、バイクに腰かけて体を伸ばすとその長身が明らかになる。で・・・でかすぎ!!
今泉君はでかいと言われてもそんな感じはしないのに、葦木場くんはハッキリわかるほどにでかい。頭ひとつなんて差じゃねぇ!!
しかし、ヒルクライムのレースなのだが、葦木場くんは坂道に勝てるのだろうか?
新開さんの紹介だしスプリンターかと思ったのだが・・・
というか、新生の箱根学園には既に山岳と黒田さんというクライマーがいるしなぁ。実はどっちもこなせるエースタイプなのかもしれない。
どのような走りを見せてくれるのか、楽しみである。
箱根学園はあと2人誰か出してきているのかな?その点も楽しみだ。
RIDE.240 メトロノーム
(2013年 8号)
峰ヶ山ヒルクライムレースに新開さんの指示で出場する葦木場。
2mを越す長身の見せる走りはどんなものであろうか。
レース!!音楽が鳴ってる。クラシックだ。心はやる交響曲だ。
やっと出られる。ありがとうございます新開さん。
勝ちます。絶対にその小野田って男に。
前半部分の言っていることはよくわからないが、勝つ気まんまんなのはわかった。
しかし微妙に危ないというか怪しいというか、不遜な感じの笑い方をする奴である。
さて、峰ヶ山ヒルクライムスタート。
全行程は16km。各選手、秋晴れのめぐまれた日差しの中を色鮮やかなジャージで走り出していく。
地方のレースなのでインターハイでは聞けなかった高校の名前も出ております。
柏東や幕張京葉は予選でも少し聞いたが、鴨川や市原といった所は初めて聞く。
果たしてこれらの高校がこのレースで目立つことはあるのだろうか!?注目すべき点であるな。
勝者はいろいろな意味で注目される。ましてや王者となった身としては当然注目を浴びて然るべきである。
というわけで、先頭を走る総北には応援の声がかけられます。
せーの、今泉くーん!
巨大な垂れ幕や団扇を手にした女性が道の端で黄色い声を上げて応援しております。
な、なんか懐かしいな親衛隊。というか、前よりもかなり数が増えている!!これが王者効果か!!
手嶋さんは応援は力になるしいいじゃないかという。いやそれは分かりますが限度が・・・
考えてみると、一番応援が欲しかったインターハイには来てなかったんですな、親衛隊。
それはそれとして、声援は今泉君だけに飛ぶわけではなかった。
小野田くんカワイイ!!
てな具合に坂道にも黄色い声が飛ぶ。
カワイイか。女の感性はわかりませんね、と今泉君。まあ確かに理解しがたいところはあったりしますな。
でも坂道がカワイイ系のというのは間違いないのでその声があがってもいいんじゃないですかね?
福富さんや金城さんがカワイイとか言われたらさすがに何!?となるけど。御堂筋君はキモカワイイ路線なら分からなくもなし。
応援が力となっているのかはわからないが、とにかく坂道の緊張はだいぶほぐれている様子。
手嶋さんは坂道にペースは大丈夫かと声をかけ、なるべくついてこいと言う。さてさてどうなるか。
まだレースの序盤。各校とも流している状態なのか、固まって進んでいる。
そんな集団の中で長身ゆえに上の方に抜きんでている男がいる。もちろん葦木場のことだ。
他の選手から見ればサドルが目の高さにあるという。どんなでかさだ!!
それがさらに立つというのだから、一緒に走っている者の感じる迫力はとんでもないものとなりそうだ。
中学時代の葦木場を知る富津西の原田さんはこう述べる。
わざわざ千葉の大会まで来たのは総北の偵察なんかじゃない。勝ちにいくはずだ。そういう男だこいつは!!
どいてくれ。オレ先頭に用事あるんだ。久々のレースでオレ、超ご機嫌なんだッ!!アタマのクラシック鳴り止まなァい!!
でかい体をリズミカルにゆすりながらのダンシングで加速する葦木場。
その様はまるでメトロノーム。メトロノームダンシング!!
第九だ。ベートーベンの交響曲第九番。通称"合唱付き"。ベタだオレ。年末でもないのに。笑える!!
何が笑えるのか知らないが、まあ、走ってると歌いたくなったりはしますよね。
頭で音楽が再生されるのもまああるんじゃないかな、うん。
それにしても葦木場はただでかいだけではない。手足の長さもまた異様である。その手の長さは一般人の脚ほどもあるという。
その巨体を左右に揺らし加速する。なかなかに周りからすれば怖い走りだ。ぐぁんっ。
レース・・・レース・・・レース走ってるオレ。
嬉しそうに走りながら笑みを浮かべる葦木場。
山岳の先輩なんだよなと考えると分かるような気がする笑顔だ。
そんな葦木場は福富さんからこのような通告を受けている。
おまえは無期限謹慎だ。レースには出さない。今年のインターハイも来なくていい、と。
ああ、そうか。それで葦木場はインターハイで坂道を見ていないのか。それで見るためにこのレースに送り込まれていたんですな。
いや、それはそれとして。何をしたのだろうかこの男。
福富さんが無期限謹慎を言い渡すなんて相当なものだと思うのだが・・・ジャージ掴んだ程度の話ではないということか!?
走り方が危うすぎるのがヒントかもしれない。関係ないかもしれない。
ともかく、レースに謹慎が解けてレースに出れたのがたいそう嬉しい様子。
絶対1位獲りますよ。1位こそ、正義だ!!
オーケストラの指揮者のように大仰に手を振ってみせる葦木場。その目はどこを見ているのか・・・
さすが箱根学園である。この男もまた只者ではなかった!!変人的な意味で。まあ、楽しそうなのはいいと思いますけどね。
今泉君はこのレースに箱根学園の選手が出場していることを知っている。
そしてそれは手嶋さんも同様である。
葦木場。手嶋さんと同じチームで走っていた男。
1位を正義と信じ、勝ちに来る男。その男が早くも仕掛けて来ようとしている!!
なかなかに愉快な奴ではあるが、過去にどのようなことをしでかしたのでしょうかね、葦木場。
今の所キャラが掴み切れていないので扱いに困る。
中学生時代は手嶋さんの引退を必死で止めようとしたり、いいヤツな感じだった。
しかし、今の様子を見ると笑顔が怪しく、微妙に不遜な感じの態度に思えるヤツとなっている。
そして何かやらかしたという過去・・・うーむ、気になるなぁ。
事前に待宮のボトルを2つとも破損させておきました!!とかそういうことをしでかしたとか?いやさすがにそこは拾ってはこないか。
RIDE.241 中学のチームメイト
(2013年 9号)
峰ヶ山をまとまってかけ走る総北。
さすがに全国優勝のチームなだけにその走りは圧巻。
しかしその総北を追い上げている選手が1人いる。箱根学園のジャージを着た男、葦木場だ!!
アタマの中で第九を鳴らし、でかい体を左右に揺らすメトロノームダンシングで加速する。
その結果、あっという間に総北の3人に追いつくことに成功しました。
うーむ、やはり迫力ありますなぁ。ていうか本当にデケェ!傾いているせいで余計に怖いな。
こいつが2年葦木場――でかい・・・オレよりでかい!!
そういえば今泉君も結構大きいって話なんでしたっけ。
鳴子や今回のレースのスタート時もそんなことを言っていた。
しかしどうにも大きいイメージがないのは何故なんだろうか。
よく並ぶ他の1年2人が小柄なせいだろうか。
おかげでオレより、とかいきなり言われてもピンと来ません。でも今泉君らしい発言だとは思う。
続いて今泉君が驚きながらフレームについての解説をしてくれます。
フレームはクツと同じように体の大きさに合ったサイズがあるんだ。
でもどんなにフレームが大きくてもタイヤの大きさだけは700c。変わらない!!
この人のフレーム・・・錯覚でタイヤが小さく見える!!まるで小径車にでも乗ってるようだ!!
こんなでかいサイズのフレーム見たことない!!
実はタイヤは小さめにして錯覚を強めていますとかそういう技法を使ってるかもよ?無意味だけど!!
それはさておき、葦木場くん。お目当ての相手に並び、尋ねる。お前が小野田か!!と今泉君に。こっちですこっち。
指摘された葦木場くん。どうするのかと思ったら・・・やり直したー!!
そして何事もなかったかのように話を続ける。なんて動じない奴だ!!
まあ、こうされてしまうと改めてツッコミを入れるわけにもいかないですしねぇ。上手い手ではある。
が、葦木場劇場はまだ始まったばかりである。
小野田はメガネの彼であると分かった。ならば隣にいるのは1年――赤いマメツブの鳴子!!
どや顔で間違えたー!!
赤くもないしマメツブ感もないのにどうして間違えるんだろうか。わざとか!?もしくは天然か。
坂道がシンパシーを感じるということは天然要素が強いということなのだろうか。面倒な人だ。
しょうがないので今泉君。手を上げてひとつツッコませてもらってもいいですかと尋ねる。
ん?ああいいぞ・・・いやいやダメだ!!
オレにツッコまれる要素などない!!
な、何を言っているのだこの人は・・・!!唇を噛んでそんなこと言われても・・・困る!!
非常に絡みづらい人である。箱根学園でも微妙に浮いている雰囲気があったが、こういう性格であったか!!
ツッコミ体質の人には色々と厳しい相手でありますな。
新開さんは割と流してくれそうな人だから普通に話せれたわけか・・・なんだか納得だ!!
割とツッコミ体質の泉田君は新キャプテンとして大変かもしれませんな。
ダメとは言われたが、さすがに存在を無視されたままではいられない今泉君。
ちょっとムキになって己の存在を誇示する。総北にはもう1人1年生がいるんですよ。と。
葦木場「知っている。箱根学園の情報網をなめるな」
今泉「それがオレです!!」
葦木場「サラサラ髪のコルナゴ乗り、杉元照文!!」
なん・・・だと・・・?
さすがは箱根学園の情報網。控えもいいところの杉元くんの情報まで入手していたのか!サラサラ髪とかどうでもいいとこまで!!
というかどうみてもコルナゴじゃないし!
視覚情報から情報の選別とかできないのかこの人は!!やはりわざとなのかもしれない。
今泉君はからかうといい反応してくれるからなぁ。それも箱根学園の情報網にあるのかもしれない。からかうと面白いぞ、と。
という話はさておき。総北のメンバーの先頭を走っていた手嶋さんが葦木場くんに声をかける。元気にしてたか。と。
2人は中学時代は純ちゃん、シキバと呼び合う仲であった。
長い指を活かしてピアノを弾くのを得意としていた葦木場くん。
その音色に合わせてヒラケンの曲を手嶋さんが歌ってみたりと楽しそう。
手嶋さんの誘いを受け、葦木場くんもロードを始める。
ロードを見て楽器みたい。いい音鳴るかな。という感想がなかなか独特ですな。
実際乗ってみて、まさに楽器だよという感想を得れたみたいだし、満足満足。
手嶋さんはいつか世界で走ろうとか考えていると葦木場くんに語る。やるならトコトンだ。
こんな大きな話をしてみるが、葦木場くんは笑わない。応援すると言ってくれます。
だから手嶋さんは天下を取ると頑張る。そしてその時はおまえも一緒に――と。
そんな風に考えていたのに、なぜか高校は別々になった2人。
手嶋さんが一度夢を諦めかけたのと関係しているのでしょうか?まあ、引越しとか色々あったのかもしれませんが。
今回の出走リストに葦木場くんの名前を発見し、箱根学園に入っているのを知って驚愕した手嶋さん。
それとは逆に葦木場くん。手嶋さんが総北のキャプテンだと聞いて――ふさわしいと思った。
純ちゃんならね、それくらいの器って思ってるから。
あら、なんだかいい子ではありませんか。やはり中学時代の友情は本物だったんですな。
しかし、今はお互いの立場が違ってしまっている。
手嶋さんは総北キャプテン。いわば支柱である。だから闘わなければならない。
手嶋「葦木場、おまえと箱根学園と」
葦木場「オレも・・・箱根学園の次期・・・エースだから」
次期エース!!
なんと。葦木場くんはエースポジションだったのか。
スプリンターの新開さんに勧められてヒルクライムのレースに出る。
まあ、両方の条件を満たすならそりゃどちらもこなせるエースポジションしかないわな。確かに。
しかし次期エースが天然とは・・・大丈夫なのか箱根学園!?
まあ、総北だって優勝の立役者が天然入っている子だしなぁ。
あ、箱根学園にはもう一人フシギちゃん呼ばわりされている天然がいたか。むう。
早くも新キャプテンとなった泉田君の苦労が忍ばれるような気がしてきました。まあ、頑張ってもらいましょう。
RIDE.242 葦木場VS総北
(2013年 10号)
箱根学園2年、葦木場。この男こそ次期――来年のエース!!
身長がでかいせいで足のつけ根からヒザまでが異様に長い。
クランクを回すたびに風切り音がするくらいである。
いや、さっきまでは音はしていなかった。つまり――今、本気のペダリングに入ったということだ!!
一気に総北より前に出る葦木場くん。本気になったということかプレッシャーが増大しています。
ただでさえデカイのにプレッシャーが増大することでさらにでかく見えるというのか!?
純ちゃん。純ちゃんが作ったチーム、本当は壊したくない。本当は入りたいくらいだ。
だけど、オレは箱根学園の先輩方に恩がある。
その人たちに「勝つ」って言ってここに来てるんだ!!
そのように述べる葦木場くん。恩とは一体何であろうか?
レースへの出場禁止の件やそれを解かれたことに関係するのだろうか?
福富さんの判断で出場禁止になったのではなく、それぐらいしないと世間が納得しないぐらいのことをやらかしたのかもしれない。
そうすると恩というのは、先輩方の尽力により公式に出場禁止が解かれるようになったとかそういことか?
うーむ。本当、何をやらかしたのだろうか。
今回レースに出場していない田所さんや鳴子たちは記者の車に乗せてもらい、レースを見学しながら移動。
さすがに王者は特別な待遇をされておりますなぁ。
まあ、記者としてもコメントをもらいながら観戦できるのだし、願ったり叶ったりでありましょう。
車に乗りながら金城さんは坂道の不調について考える。さすがに金城さんも坂道が不調なのは気付いているか。
戦闘力のあるニューバイクになって、まだその力の30%くらいしか引き出せていない。
何、そんなに出せていないのか!!それだとさすがの坂道でも厳しいか。
まあ、原因は精神的支柱だった巻島さんの途中退部という精神的なものですからねぇ。
きっかけがあれば一気に力を引き出せるようになっていくのでしょうが・・・はてさて。
進まなければ振り落とされる!!
金城さんの言う通り、早めに立ち直らないと色々と面倒なことになりそうですな。
精神的な退廃は酷くなる恐れがありますし。
金城さんは述べる。このレース、出走リストにあった箱根学園の2年生が勝つこともあると思っている、と。
オレはこのレース、新世代総北の今後の浮沈を決定づけるレースになりうると考えています。
その重みのある言葉を受け、記者さんたちは車の速度を上げる。
総北の勝ちは揺るがないと呑気していたんでしょうな。
まあ、新世代に移行しての初めての公式レースですし、重要なのは当然と言えるわけでして。
それでも箱根学園がいなければ何の問題もなかったんじゃないかなと思えるのがアレですが。30%坂道でも普通に勝てそうで困る。
さて、メトロノームダンシングで一気に加速する葦木場くん。
それについていけているのは唯一人。手嶋さんである。
速い!!手嶋さん!!
オレたちが反応できなかったのに一瞬で反応してついていってる。
オレが知ってる手嶋さんだったらもう――なんだ!!合宿の時とは比べものにならない。
この人こんなに速かったのか!!
もう――なんだ!!とか言われても知りませんよ。こっちがなんだと言いたい!
いや、そこで切る文章ではないのだろうけど、なんとなく気になった。
それはさておき、今泉君。手嶋さんは速かったのではなく速くなったんじゃないですかね。
実際、合宿ではあれが精一杯だったのだろうが、今はそのときよりも強くなっている。
まあ、今泉君も相当インターハイで鍛えられているはずなのだが・・・やはり先頭に立たないと力が出ないのか?
身体を揺らしながら走る葦木場くんに並ぶ手嶋さん。
これだけ体揺らしながら走る男のすぐ横に並ぶとは・・・怖くないのか!?
逆に寄せられると相手との接触を気にして身体が揺らせなくて困るという話なのかもしれない。
なるほど。メトロノームダンシング封じか!!
まあ、並んだのが手嶋さんじゃなかったら吹っ飛ばしてもいいやとぶつかってきた可能性はあるがね!!
出場禁止になった理由は参加者を吹き飛ばして大量に病院送りにしたとかだったりして。
オレたちは王者だ。峰ヶ山のタイトルは譲らないと主張する手嶋さん。その姿を見て感動する葦木場くん。
すごい。やっぱり純ちゃんはすごい。
今年のCSPの合宿に行った偵察の先輩が、"2年の手嶋は大したことない"って言ってた。
言えなかったけど、オレはそんなことないって思ってた!!あとでそいつら反省会だ!!
先輩に反省会を開くように申し出るというのか!!強気ですなぁ。
まあ、合宿のときの様子だとそう言われても仕方がないんじゃないかと思いますしねぇ。
今現在も割と余裕残してそうな葦木場くんと違い、早くも汗かきまくりの手嶋さんなわけですし。
頂上まで残り4km。
ここでやってきました、峰ヶ山名物"壁坂"!!
中学時代は2人でこの坂を登ったが、どちらも途中で足をついてしまい悔しがったものだという。
そんな激坂を失速してしまうこともなく駆け上がる2人。
すごい。今頭の中でオレ、ベートーベンの"運命"鳴ってる!!
ベートーベン好きですな。まあ、言葉的にもいい選曲だとは思うが。
葦木場くんの走りは確かにエース級である。ついていく手嶋さんは早くも足がピクついている。
しかし簡単に負けるようなことがあってはならない。自身を叱咤する手嶋さん。
オレは総北のキャプテンなんだ!!ここで引き離されるわけにゃいかねーんだよ!!
決して登りのセンスがあるわけではない手嶋さん。巻島さんにもからっきしだと言われてましたな。
そんな人が新世代の総北の、王者の名を背負ったチームのキャプテンとなった。
ならばその看板を汚すようなマネはできない。その思いが大きく力となっているのを感じる。
そういった意気込みは後ろで見ていた今泉君にも伝わった様子。
熱さで身震いし、走りに魅きつけられておりますわ。
そして魅せられたのはもう一人。そう、坂道もまたその走りに熱くさせられていた・・・!!
やはりクライマーに理解させるにはクライマーの走りが一番ということなのだろうか。
手嶋さんもまた巻島さんの意志を継いだものですし、魅せられるのは順当なのかもしれない。
しかし、努力したとは言われているが――実際努力はしているが――そこまで強くなったりするものだろうか?
他の面々がさぼっていたならともかく、今泉君たちもレースで努力や成長もしてますのに。
これはやはり努力以外の要素もあったと考えるべきでしょうな。
青八木さんがスプリンターの才能に目覚めたように、何かきっかけがあって爆発的に成長したと。
手嶋さんとしては責任感が一番の成長の元だったのかもしれない。
かかった重圧をバネに成長できるタイプの人だったのでしょう。会社員としても優秀なタイプだ!!
それか、一度肉離れをしたことで脚が強くなったのかもしれない。
今回もピクピクいってるし、このレースで再度の肉離れパワーアップあるかもしれないな!!
新キャプテンの手嶋さんの肉が離れて成長するかどうか。これはまさに今後の浮沈を占うレースって話ですね、金城さん!!
うん、そういう意味で言ってたわけじゃないのは知っている。
RIDE.243 手嶋、魂の走り
(2013年 11号)
葦木場。おまえはいつもオレをかいかぶってくれる。
「すごい、純ちゃん」「ふさわしい」
嬉しいけど、そんなことはない。オレは弱い!!
ハンドルにしがみついて今にも止まりそうな足を、飛び出しそうな心臓をおさえつけてここを走ってるんだ。
正直、おまえとは格が違う。
けど、葦木場。オレは負けない。オレは――総北のキャプテンだからだ!!
オレは弱い!!新しく王者となったチームキャプテンの言葉は先代王者チームのキャプテンとは真逆であった。これは面白い。
まあ、実力が及んでいないのは事実ですからねぇ。認めるのも大事なことである。
傍目の観客からしても、先を行く葦木場くんの方が余裕があるように見えるらしい。
どうでもいいが、総北ファンと述べる女の子がいるのだが、やはり評判になったからファンになったのだろうか?
前から自転車には興味持ってました!!昔からのファンです!と言ってくれるのだろうか。地味に気になる。まあ、どうでもいいけども。
相変わらず脳内でベートベンの運命をかき鳴らしながら走る葦木場くん。
今まで気づかなかったが、右目の下にあるそれは黒子ではなくハートマークのペイントなのか?
場面によっては単なる丸になっていることもあって気付かなかったが・・・いい趣味してますな。
本当にハート型の黒子なのかもしれないのでなんとも言えませんが。
激坂であっても体を揺らしてのメトロノームダンシングで駆け上がる葦木場くん。
追う手嶋さんは既に足が限界に達しようとしている。だが――
もがけ純太。おまえは「登れ」って、巻島さんに託されてここ来てんだろ!!
責任感。新たな総北のキャプテンとしての責任感。巻島さんに託された新たなクライマーとしての責任感。
それらが手嶋さんの力となっている。ムリをしてでも追いすがる原動力となっている。
この熱い走りに車中で騒ぐ田所さんと鳴子。すごいでパーマ先輩!!
つかハコガク出とったんすか。でっか!!
何!?鳴子・・・ついさっき金城さんが出走リストにある箱根学園の選手がトップになることも有り得るって言ってたばかりじゃないか!
忘れっぽいのか実はあんまり人の話を聞いていないのか。
まあ、それはいい。
手嶋さんのパートナーである青八木さんはレースの前に葦木場くんについて聞かされている。
2人で天下とろうって約束した相手であるが――残念ながら今日は敵だ、と。
箱根学園2年葦木場。仲間との闘い――純太――覚悟を決めたのか。「キャプテン」として・・・・・・!!
だけど、純太――もう限界が近いんじゃないのか!!
オレにはわかると付け加える青八木さん。さすがによく理解しておりますな。
だがその限界を迎えそうな体にムチをうって走る手嶋さん。まだ喰らいつくぅ!!のこり1.5km!!
すんません手嶋さん・・・ワイ正直、大したことないって思てバカにしてましたわ。
見てくださいオッサン。あのガッツの走りに、手ふるえてますわ。
そんなこと考えてたのか鳴子。
まあ、考えてみると合宿で見せたのは策略家としての凄さだったからなぁ。
ハンデのついていた1年達に敗れたわけだし、大したことないと思われても仕方がないのかもしれない。
逆に今熱くなっているのは強さはそれほどでもない男が頑張っているからかえって熱くなれるという感情もあると思えるわけで・・・
最初から強い男の走りだったらこうはならないでしょうからねぇ。ううむ。
このままゴールまでいくんじゃねェか!と吠える田所さん。
しかし金城さんは冷静に無理だと答える。
以前巻島も言っていた。手嶋のヒルクライムには才能もセンスもない。
登りに関してヤツは凡人だ。凡人には限界がある。
なんすかそれ金城さんスカして!!クールな喋り方しおってからに!!
口を動かさずに喋るとかまるで福富さんみたいやで!!
というか、センスがあると限界がないのだろうか?それはちょっと凄すぎるのじゃなかろうか。
総北は負けるゆうんすか!!あのノッポのハコガクに!!
吠える鳴子。うむ、やはり鳴子はこうやって焦って吠えてる姿が似合うなぁ。あんまりそれが似合っててもどうかとは思うが。
ともかく、金城さんはその鳴子の言葉を否定する。
いや。そうとは限らない。
おまえが感動したように、手嶋の走りは伝わっているからだ。
確実に、オレたちによりも強く、うしろを走るあの2人に!!手嶋のアツい震動(バイブレーション)が!!
なかなか珍しい表現ですな。アツいバイブレーション。
熱さで血が滾って震えるというのはわかる話だが。ふむ・・・
言葉の表現はさておき、今泉君は確かに手嶋さんの走りを見てアツさに震えている。なんでついていけるんだ!!
そしてその思いは坂道も同様であった。
今泉くん。ボクは今、全力で手嶋さんに追いつきたい。
アツさが伝播したのか、居ても立っても居られない様子の坂道。
今泉君はレース開始の直前に手嶋さんからこう言われていた。
もしも小野田がこのレースの中で"出たい"と言ったら、そっと背中を押してやってくれ、と。
その言葉に従う時が来たらしい。
気持ちをおさえることはない。受け止めてくれるはずだ。手嶋さんなら!!
おまえがいきたいと思ったなら、まっすぐに行け!小野田坂道!!
精神的に背中を押すだけでなく、物理的に背中を押し出してやる今泉君。
それを受けて得意のハイケイデンスクライムを開始する坂道。ぐるぐるぐるぐる。
手嶋の走りは平凡だ。だが、だからこそまわりの人間を揺らす。震えは"力"になる。力は必ずチームメイトに伝播する!!
手嶋・・・・それがおまえのキャプテンとしての走りか!!
一気に走り、先頭を走る2人に追いつこうとする坂道。嬉しそうな顔だ。
まあ、それを見た手嶋さんも嬉しそうな顔をしているわけですが。
巻島さんがいなくなったことで燻っていた坂道の心にようやく火がついたみたいですね。よかったよかった。
しかし、まわりの人間を揺らすのが手嶋さんの力であるか。
自身を揺らさないといけない葦木場くんとはそういう点が違うって話ですな。
でも葦木場くんは葦木場くんで手嶋さんに揺らされている気がしないでもない。
手嶋さんの走りはアツすぎて敵も揺らしてしまうのだろうか?それはそれで厄介だな!!
まあ、坂道が完全にその力を取り戻したのなら恐れる相手は早々いないでしょうしね。
この勝負はまだ終わらない!と金城さんは言うが、ある意味もうもらったも同然ですぜ!!変なことが起きなければ。
RIDE.244 峰ヶ山で一番速い男
(2013年 12号)
手嶋さん。ボクは今、全力で追いつきたい!!
燻っていた心に熱いものが灯され、坂道が駆け出す。
するとどうだろう、開いていた差があっという間に詰まってしまったではないか!!
やはり本物のクライマーは違いますな。
これが"小野田"・・・ワーオ・・・速い。
何がワーオだ。ナニ人だ。
でも、ゆずれないよ。このレースは!!
追いついてきた坂道に反応し、アタックをかける葦木場くん。
残り1kmという距離で引き離しにかかる。
まあ、彼としてみれば久々のレース。謹慎を解いてくれた新開さんや福富さんのためにも負けられないレースでありましょう。
駆けだした葦木場くん。さすがに手嶋さんにはもうそれに追いつく力は残されていない。
だが、このタイミングで坂道がやってきてくれた。任せられる男が来てくれた。
手嶋さんの走りを見て体が熱くなって足が止まらなくなったという坂道。
そりゃうれしいな。日記につけとくよ。
どうだ調子は。上がってきてるか。体は。新しいバイクは。終えるか、前を。
坂道の様子を尋ねる手嶋さん。
どうでもいいが、冗談でもなく手嶋さんは本当に日記とか細かくつけてそうですよね。
主将になってからは記録という意味合いも大きいでしょうし。内容が気になる所だ。
というのはともかく、坂道は手嶋さんの質問を肯定。
強そうだけど、大きくて速い人だけどなんとかしますと言う。
"速い"?
巻島さんより、速いか?
手嶋さんの言葉を聞き、前を行く葦木場君の姿を巻島さんにダブらせる坂道。
ハハァ。この演出のための体を揺らすメトロノームダンシングか!!
イメージさえ被されば、坂道には振り返る巻島さんの姿まで思い起こすことができるぜ。
そして、意志のこもった目を取り戻し、手嶋さんの問いには否定で返す。
いいえ。そんなことはないです。なぜなら――巻島さんは世界一速くてカッコイイクライマーだからです!!
手嶋「だったら証明して来い!!そいつを!!おまえが勝って!!」
坂道「はい!!」
今泉君にされたように、手嶋さんに背中を押し出され、坂道が駆けだす。
新しいバイクが唸りをあげて加速を手伝う。
そこから生み出される勢いはゴールまでのスパートをかけていた葦木場くんを捕えるほどのものであった。
巻島さんはもっと、ずっと、速いです!!
そう告げて、葦木場くんを抜き去る坂道でありました。うむ、さすがだ。
しかし葦木場くんは巻島さんを知らないのか・・・?
卒業する3年生のデータは特に知らなくてもと思ったのだろうか?杉元まで知っているというのに。
ともかく、葦木場くんを抜き去った坂道はその勢いのままトップゴールを迎える。ショォ!!
思わず"ショ"って言っちゃった・・・
ゴールした坂道がまず思うのはそんなことであった。
うーむ、本当に巻島さんの影響はどでかいものがあったんですなぁ。
これからも厳しいとき、辛いときは巻島さんを思い出してショッショと言い出すのであろうか。それはそれで面白いっショ。
なるほど・・・これが"総北"・・・たしかに強いすね。
坂道に続いてゴールした葦木場くんはそう呟く。
ふむ、新開さんが見て来いと言った目的は見事に達成できた様子ですな。
勝利こそ得られなかったものの、収穫は大きかったと考えることができる。
ムリをしていた手嶋さんも無事にゴールすることができた。さすがにこのレースで脚がダメになったりはしなかったか。
倒れ込むほどに疲弊はしているみたいですけどね。
出し切りすぎた。カッコ悪い。ダメだなぁと述べる手嶋さん。
いやいや、新キャプテンとしての意地を見せたいいレースでしたよ。それにそれを言うならボクもダメでしたと坂道は言う。
その言葉の意味はアナウンスが教えてくれる。
くり返します。残念ながら小野田選手のコースレコードならず。
昨年の総北高校、巻島祐介選手のタイムに34秒およびませんでした。
手嶋「ははっ。やっぱすげーなあの人」
坂道「はい」
届かなかったものの、むしろそれを誇らしいと感じて笑顔を浮かべる坂道。
まあ、最初から完全な調子であれば分からなかったかもしれないんですけどね。
ここで追い抜いてしまうよりは、いつまでも目標としていてくれた方がよいと思われるので結果的にはよかったわけだ。
坂道のトップゴールに沸き返る観客と記者たち。
下馬評どおりではあるが、やはり王者が勝つと盛り上がるって話ですな。
2位に終わった葦木場くんには記者がつくこともなく、離れたところで総北を、手嶋さんを見つめている。
終わった。レース・・・
純ちゃん・・・総北――次会う時も敵同士になるね。次の、来年のインターハイでも。
寂しそうな顔をする葦木場くんでありました。ふーむ。
でもまあ、敵となって鎬を削るってのも悪い話ではないですよ?
その辺りのことは東堂さんがこの上なく熱く語ってくれると思うので、尋ねてみてはいかがでしょうか。
巻島さんのこともそこでイヤというほど知ることができるようになると思いますしね。
RIDE.245 葦木場の道
(2013年 13号)
謹慎が解けて久しぶりのレースに意気軒昂と挑んだ葦木場くん。
恩返しの意味もあり、先輩たちに必勝宣言までしていた。しかし、結果は敗北。
さすがに体力を使い果たしたのか、輪行袋に自転車を入れて電車で帰りながらレースについて想いを馳せる。
総北1年小野田。純ちゃん――負けた――オレ。
久々出してもらったレースだったのに・・・新開さん・・・
次期エースだって期待させといて・・・福富さん――
何て謝りゃいいんだ・・・オレ。
さすがにかなり気落ちしている様子ですな。
そんな葦木場くんの目には電車に乗ってきたお婆さんの姿が映る。
お婆さんに席を譲るために立ち上がる葦木場くん。そこでようやく気付く。降りるべき駅を3つも過ぎていたことに。何してるのやら。
その後折り返しの電車に乗ったのか、無事駅まで迎えに来ていたらしき車に乗ることができた葦木場くん。
監督と一緒に来ていた後輩らしき子が苦言を呈する。携帯の電源をちゃんと入れておいてくださいよと。
と思ったら、電池切れてたから家に置いてきたという葦木場くん。おいおい。携帯は携帯してないと意味ないでしょ!!
プッププッ。携帯をケイタイ・・・おまえうまいこと言うなあ。
な、何がおかしいのか!?携帯電話は携帯する電話なので携帯を携帯するのは何もおかしいことじゃないでしょ!?
なんとなくわかってはいたが、色々とツボのおかしい子である。
せめて携帯の形態を整えてくださいとか言われてから笑えばいいのに!笑えるかはさておき。
戦闘モードでスイッチ入った時の葦木場さんとは同一人物とは思えませんよと述べる後輩君。確かにつかみどころのない奴ですよね。
でも戦闘モードに入ってもそんなに大きく性格が変わった感じはしませんでしたけどね。
そんな話をしていると助手席の男が葦木場くんに話しかけて来る。そこに座っていたのは――福富さんだ!!
迎えに来ていたのは監督や後輩だけではない。福富さんもまたやってきていた。
車に乗る時も気まずかったという葦木場くん。とはいえレースの結果を報告しないわけにもいかない。ドキドキ。
はい・・・調子は悪くなかったです。アタマにクラシック鳴ってたし、そういう時は調子いいんで途中までは完全に勝てると思いました。
最後1km、総北1年の小野田が追いついたからカウンターでスパートかけて全力逃げきり・・・オレの得意なパターンにもちこんだんです。
でも、するりと最後。抜かれました。
優勝できませんでした。すいません福富さん。
その謝罪の言葉は後ろめたさと申し訳なさからか口を開けども声になっていない。パクパク。
福富さんは――オレを救ってくれたのに――
というところで回想。
まだ葦木場くんがその真価を発揮できていなかった頃のお話。
中学の時より一気に身長が10cmは伸びた葦木場くん。しかしその大きさに筋肉量が追いついていない。
おかげで体が安定せずふらついてしまっている様子。うーむ、自転車競技には向いていない体かもしれませんな。
そんな様子なので部活の練習にはついていけず、早い段階で雑用係にされてしまっている。
今は自分でも思う。体が重い。フラつく。なんで身長伸びるんだ・・・練習で部員の誰にも追いつかない・・・
でかいのって・・・なんで縮まないんだ・・・
涙する葦木場くん。うむ、大きい子には大きい子の苦悩というのがあるものだ。非常によく分かる。
そんな葦木場くんに話しかける新開さんと福富さん。
葦木場くんは2人に思いを語る。もういっそ選手やめて、雑用のマネージャーになろうかって思うくらいだと。
ふーむ、練習についていけず、雑用係の毎日。そんな中で「最強」の洗濯係だなんて称号を頂いていちゃあなぁ・・・
微妙に可愛い顔で苦悩を語る葦木場くんに2人は語る。
福富「葦木場。進むべき道は前にしかない」
新開「おまえは何になりたい」
その問いに、戸惑いつつも返答する葦木場くん。
最強の・・・せ・・・・・・選手です。
最強の洗濯係ではない。本当の最強。最強の選手となりたい。葦木場くんはそう述べる。
その葦木場くんに福富さん。顔を上げておまえにしか見ることのできない景色を見渡せと告げる。
おまえが今見ているものはおまえにしか見れないものだ。すでに人と違うものをおまえは持っている、と。
それは人と違うその長身のことを指しているのでしょうか。しかしそれは・・・
"不利"――か!?誰が決めた。おまえだ!!
強くなるためには練習しかない。練習とは持っているものを最大限に活かす訓練だ。
それを研ぎ澄ませば見えてくるはずだ。必ず。おまえだけの走りが!!
"持っているものを最大限に活かす"!!
その言葉がヒントになったのか、己の長身を活かす走り方を考えるようになった葦木場くん。
身体が重さでフラ付くのなら、むしろわざと体を揺らせばいいのではないだろうか。
それでバランスも取れるし、かえって推進力となるって話だ。
さらに新開さんと相談して体に合わせたバイクを整える。
新開「キミの好きなものは何だ」
葦木場「ピアノです」
新開「そりゃあいい。だったらそれで走れ。弾むように」
ほう。面白いアドバイスをしてくれますな新開さん。独自の走りを身につけるには好きなものを取り込むのがいいって話ですね。
つまり新開さんが食べまくっているのも好きなものを取り込んだ結果ということなんでしょう。食べるの好きそうだもんなこの人。
2人があの日、葦木場くんに声をかけたのはもちろん偶然ではない。
洗濯係になってしまいそうだったのを引き留めるために声をかけたのだ。
ふうむ、福富さんは主将になる前から気遣いのできる人だったんですなぁ・・・いや、中学で既に主将経験あるか。
それだからこそ慕われる人ということなのかもしれないな。
そんな2人の激励により、葦木場くんは化けた。
洗濯係と呼ばれていたのが補欠のBチームとはいえトップに立つ。やりましたよ新開さん!!福富さん!!
この結果を受けて葦木場くんはハコガクのジャージを着て公式レースに出場する権利を得る。
身に着けた力にうかれていた葦木場くん。今なら何だってできると思ってしまった。しかし――現実は違った。
公式レース。さすがに出場している選手は補欠のBチームの連中とはわけが違う。
せっかくジャージをもらったのに、福富さんと約束したのに、勝てない。このままでは――勝てない。
状況が理解できずに頭がパンクしている葦木場くん。何も考えられないようになってしまった。
だから――全てをリセットしようとした。
突然逆走を初めてしまう葦木場くん。
ははぁ。スタートからやり直そうぜとか思っちゃったんですね。混乱の極みですなぁこりゃ。
この行動はようするに敵前逃亡に他ならない。
戦って敗れたのならばまだ次があると励ますこともできる。だが、逃亡したのでは次を望むことなどできようはずもない。
真剣勝負にリセットなどあるはずがない。思わずとはいえ、そんな行動を取るようでは処罰を受けて当然である。
なるほど。その結果が無期限謹慎か・・・
普通に敗れるより箱根学園の名を貶める結果になっちゃいましたもんなぁ・・・
まあ、色々と考えさせる意味を込めて妥当な処置だったのではないでしょうか。
そして今日だって。すいません・・・2位でした。また、期待に応えられませんでした。
落ち込む葦木場くん。そこに福富さんの厳しい言葉が響く。
口ばかりだな葦木場。今日、オレはおまえから"優勝した"と聞けると思っていた。
本当にそう思っていたのだろうかね?坂道の強さを知らないわけでもないだろうし、ここはあえて厳しい態度に出ているように見える。
福富さんの考えはどうあれ、葦木場くんとしては絶望的な気分となる。
これで「謹慎」――また走れない日々になる。そうなったらどうやってオレは恩を返せばいいのか、と。
オレに恩を返すんじゃなかったのか。だったら次は勝て。
葦木場。一度負けた相手には必ず負けない。それが箱根学園のエースの責務だ!!
――次。
謹慎ではない。次の機会が与えられている。恩返しをするためのその機会が!!
厳しい言葉を受けながらも、その機会を与えてくれたことが嬉しい葦木場くん。泣きながらも笑顔で福富さんの言葉に返事をする。
ふーむ。なるほどねぇ。これが謹慎の理由でありましたか。納得のいく話ではありましたな。
逃げ出したものに次はないが、戦って敗れた者には次の機会は与えられる。スポーツの世界とはそういうものだ。
葦木場くんがその辺りを理解しているかというと、あんまり理解はしていないように見える。
まあ、逃げ出すようなことはたぶんもうないでしょうし、これからは期待通りの活躍をしてくれるかもしれない。
とはいえ、坂道に勝てるぐらいになるかというと難しそうな気がしますが・・・とりあえず頑張りましょうや!!
RIDE.246 スプリンター!!!
(2013年 14号)
8月8日発売の弱虫ペダル29巻にはOAD(オリジナルアニメDVD)がついてくるぞ!!
予約締め切りは6月7日までなので注意だ。
そして公式ファンブックが5月8日に発売決定。描き下ろしまんがも収録されているとのこと。
アニメ化も進行中ですし、2013年は気合の入った年となりそうですな。
さて、本編。
クライマー用のレースの次はスプリンター用レースの番である。
総北の誇るスプリンター田所さん、鳴子、そして青八木さんの3人が出場し、鎬を削っている。
峰ヶ山の時のように箱学の選手が参加するようなサプライズはない。それゆえにこのレースは総北の独壇場となりました。仕方ないね。
1年、炎のスプリンター鳴子章吉。「ワイが勝つ!!」
3年、総北の肉弾頭田所迅。「オレだよ!!」
2年、新世代スプリンター青八木一。「獲る!!」
それぞれにやる気満々な様子を見せている。
スプリンター向けのこの湾岸クリテリウムも最終周回を迎えようとしています。
"クリテリウム"は都市型ロードレース。閉鎖した都市の道路2〜3kmを10数周回して勝負を決める。
重要なのは位置取り、コーナースピード、スプリント力というレースだ。
ふうむ、総合すると30〜40kmぐらい走るのか。それはまた大変な距離でありますなぁ。基本平坦とはいえ。
このレースにかける鳴子の意気込みは凄い。
それもそのはず。ロードレースのシーズンは春先3月から11月。
つまりこのレースは今シーズン――最後のレースなんや!!
シーズン最後のレース。つまり今年行われるレースはこれが最後ということになる。ふむ、なるほど。それは力が入りますわな。
手嶋さんは事前のミーティングで"来年のインターハイを見据えた闘い方をしろ"と言っていた。
通常レースは複数人で出走した場合「エース」を決めて、そいつを勝たすために動くものである。
だが、それを全く聞く気がない連中がここにいる。スプリンターってのは全く手に負えませんよね。
ってそれはスプリンター全体にかかる話なんですか?総北の連中が特別なだけなのでは・・・
箱学の泉田君や広島のメガネスプリンターが先輩を差し置く姿はなかなか想像できない。しかしまあ、総北は総北ですからねぇ。
あの3人(バカ)は3人とも自分が勝つつもりだ!!
スプリンターはバカ!!
ふむ、そういう括りになると結構納得がいく部分があるような気が・・・いやいや。
先頭を駆け抜ける総北の肉弾頭。しかしその前に入り込む鳴子。
田所さんばかり先頭引いてたら風をモロにうけて足をつかう。
なのでゴール近くまでは順に引きましょうと提案する鳴子。青八木さんもその提案には賛成の様子。
おや、ちゃんとチームプレイできているじゃないですか。3人とも並列して全員風を受けるという発想はなかったか!!
まあその場合コーナーリングとかで不利になる人も出るから難しいか。
勝負はゴールスプリント。それまでは3人まとまって走ることになる。そしてその勝負の時はもうすぐそこまで迫っている。
無口先輩ここ数か月でメッチャ強なっとる!メッキメキや!!
脚見とってもワカる。あなどっとったら負けてまうレベルにまで強なっとる!!
適性を見つけて一気に成長したって感じですね青八木さん。
気合の入り方が違う。ビリッビリである。しかしそれは鳴子も同様である。それはそうでしょう。なぜなら――
このレースが田所さん3年間の――ワイらと走れる最後のレースなんやから。
シーズン最後と言うことはもちろんそういうことになりますよね。
卒業するまでには追い越したいと考えていた鳴子としては譲れないレース。
それはこれまで面倒を見てきてもらった青八木さんにも言えることである。これは力が入る。メッキメキのビリッビリに。
そんな気合の入った総北勢にまるで追いつけない他の高校の選手たち。ちくしょオ!!
と思いきや、遅れてる集団の中に黄色い総北ジャージがありますよ。あれ?って、す、杉元ー!!
ボクを置いて加速していく!?どういうことだ。ボクだって出てるっていうのに!!仲間だというのに!!
同じ総北のジャージを着たチームメイトだというのに!!
うん、まあ時期が悪かったよね。
田所さんの最後のレースですし、面倒を見ている場合ではないからさ・・・しょうがないしょうがない。
ああ、あこがれのインターハイジャージに袖を通して公式戦で走ることになろうとは。この杉元照文、生涯の誉れです!!
ふむ。置いて行かれているのはともかく、幸せそうじゃないですか。これなら問題ないな。
しかしこのレースは3人までとか、そういう縛りはないんですね。
おかげで同じチームで出走する場合は同じジャージを着なければいけないというレギュレーションを受けることができたわけだ。
手嶋さんはミーティングで来年のインターハイを見据えて走れって言っていた。
つまり・・・こういうことですね・・・来年のインターハイの6人目はボクだってことですね!!
なるほどー確かに3年を除けば6枚目のジャージになりますものねー。ねぇよ。
まずはこのレースを時間内完走できるように頑張りましょう。
ところで杉元はスプリンターなのだろうか?いや単にクリテリウムは走りやすそうなので出ているだけなのかもしれない。
何はともあれ経験は必要だし、ひょっとしたら青八木さんのように将来才能に開花する可能性はあるし、レースに出るのはいいことだ。
箱学の偵察にも名前があげられているぐらいだし、ひょっとしたら秘めた力があるのかもしれないなぁ。ないだろうけど。
それはさておき、先頭の3人はついに最終コーナーに差し掛かる。
コーナーは突っ込みと立ち上がりが勝負となる。
ギリッギリの角度で突っ込む。突っ込みすぎたら足をひっかけてミス一発。すっころぶ。際々の勝負!!
ギリギリまで待ってギリギリまでこらえて姿勢が少し戻ったところで、ダンシングで一気に全力加速!!
最後の直線、ゴールまでのこり500mというところで加速を開始しようとする3人。ゴールスプリントだ!!
差はほとんどつかず、ゴールするまで誰が勝利するかわからない状況である。
そこでまず飛び出したのは青八木さん。のこり250mの段階で仕掛ける。
田所さんはオレを、純太を、面倒見てくれた。練習中も、どんな時だって。
折れない心"根性"を教えてくれた。自転車の闘い方を教えてくれた。だからオレは見せたいんだ。成長した証を!!
面倒見よさそうですものねぇ田所さん。社会に出ても逞しくやっていけそうだ。
後輩に対して「ボッとすんな!」「今のところは突っ込むとこだよ!!」とギャグの指導に余念がない。
あ、いやギャグの指導ではないのか・・・?セリフだけ見ているとそのように見えるから困るよ。ラーメン食いすぎだし。
それはさておき。青八木さんに続いて鳴子もゴールスプリントを開始する。
オッサン。オッサンが部からおらんくなって、卒業してしまうなんて、想像できんすわ。
いつも声でかくて、態度でかくて、ゆずるということを知らんで、カッコつけで、強くて・・・!!
せやからワイは、絶対にオッサンを超える!!
今日がその、最後のチャンスやからや!!
吠えて先行していた青八木さんに並ぶ鳴子。
田所さんの前を走る後輩2人。ゴールまではのこり80m。
ガキどもが・・・成長しやがって・・・
青八木・・・鳴子・・・受け継げよ。泥食ってでも進む、総北スプリントスピリッツ!!
今日はやけに汗が出るぜ!!
目から飛び出す大量の汗を掌で拭いながら、田所さんも最後の走りを見せようとする。
さぁて最後の仕事だ!!田所迅!!あいつらに教えてやる。勝って調子のらねェようにな。
この世には超えていかなきゃならねェ巨大な壁があることを!!
青八木。鳴子。強くなれ。もっと、もっと、もっと。総北はおまえらが引っぱるんだ!!
成長を見せようと壁を超えようとした2人。成長を願って超えるべき高い壁となろうとする田所さん。
その勝負を制したのは、田所さん。
同校3つどもえ対決を制しての優勝となりました。さすがですなぁ。
よくみると鳴子は最後ハンドル投げしてるんですな。そこまでしても勝てなかったか。
今までで一番キツイスプリントだったと振り返る田所さん。
それでも後輩にはカッコイイところを見せようと親指を立てたりするが、思いっきりイヤそうな顔をされる。
鳴子「おとなしくバトン渡すとこちゃうんすか今のは!!」
田所「オレはだなおまえらのことを思って。なァ青八木」
青八木「・・・」
田所「何とか言えー!!」
全く賑やかな奴らである。
ともかく、このレースは見事に総北が表彰台を独占。
田所さんは最後のレースで見事な有終の美を飾ったのでありました。
金城さんと感動の抱擁を交わすシーンもあり、部員は拍手でそれを見守る。そんなシーンを写真にとってるのがいるがどうするのだろう。
ちなみに杉元はちゃんと完走できた様子です。良かったね。
田所さんは鳴子と青八木さんに思い出にのこるレースになったぜと言葉を贈る。
ありざした!!
その言葉を受けて素直に頭を下げる2人。おや、最後らしく素直ですね。
と油断させておいてから、両の脇腹にそれぞれスペシャルさよならパンチを決める2人。
うむ、やはりこいつらには湿っぽい終わり方は似合いませんわな。
最後までドタバタしながら全員足をつらせるというオチ。ハハハ。
スプリンターってのはやっぱりバカという括りになってしまうのだろうか・・・?
既に時期は11月。となると3年生は受験勉強も忙しい時期である。
レースだけではなく部活に顔を出すのも難しくなってくるでありましょう。
まあ金城さんはなんとなく勉強も効率よくできそうなイメージがあるからギリギリまでいけそうな気はするが。
何にしても練習のメンツが減るのは強度的に問題である。
そう心配するところに杉元が手をあげて提案する。
知り合いの中3の子が自転車をやっているのだが、その子を連れてきてもいいですか?とのこと。
ほう・・・これは、6人目のレギュラー登場の流れになるか?
将来はわからないが、今の杉元に6人目を任せるのは不安が大きすぎる。
古賀先輩などの他の2年生も余り期待はできないし、やはり次の新入生に期待したいところですわなぁ。
全国一になった高校なんだし、新入生のレベルには期待が持てると思うが、はてさて。
なんでもいいが、鳴子の言葉遣いは独特というかなんというか。
メッキメキだのビリッビリだのギリッギリだのと。そんなに小さなツが好きなのかッッ!?
将来ムッキムキのビッキビキになってガハッガハッと笑いたいとかそういうことを考えているのだろうか。有り得る話だ。
RIDE.247 新・総北
(2013年 15号)
新生総北の5名によるカラーページ。
巻島さんはいないものの青八木さんの金髪のおかげで派手さはむしろ上がっているぜ!!
それはさておき、やはり5名しかいないのは問題である。6人目のメンバーを早く確定させたいところだが・・・?
その候補となりそうなのが、前回杉元が言っていた知り合いの子。どのような選手であろうか。
と思っていたら、さっそくのしのしと総北高校自転車競技部へやってくる学生服の男の姿があった。これが・・・!?
さすがにIHを制した全国の強豪校の部室を前にして緊張を隠せない男。
和らげるためにとりあえずお母さんが握ってくれたおにぎりを食べることとする。
ラップで包まれているとはいえポケットにおにぎりを入れておくのはどうなのだろうか。潰れるぞ。
よし。よし。OK!これならOK。せーの、いただきます!!
扉に手をかけ、そんなことを言いだす学生服の男。
食べ終えてからいただきますとはどういうことなのか。
ちゃんと食べる前に言わないからそういう間違いをやらかしちゃうんだよ!!
それはさておき、時間は少し遡って教室での坂道のシーン。
帰ってすぐ寝ちゃったから数Iの宿題ができていないと焦る坂道。
そこに声をかけてくるのは寒咲さん。なんだか日常での会話ってかなり久しぶりな気がしますな。
今回話しかけてきたのは寒咲さんが用事があるというよりも、その友達のアヤちゃんの方に用事があったかららしい。
アヤちゃん。6組テニス部の橘綾さん。寒咲さんのお友達。
初期からずっと友達として出番やセリフはあったが、フルネームが出たのはこれが初めてじゃないか・・・?
さすがに坂道もほとんど記憶していない様子。アヤちゃん自身はソコソコ話していたと言ってはいるが、まあ仕方ないな。
ていうか・・・おめでとう。
私、べつに自転車詳しくないけど幹にいろいろいつもきかされてるからさ。
すごい大変なのくらいはわかる。それで優勝ってやっぱスゴイと思う。
ちょっと早口で捲し立てるアヤちゃん。照れてる照れてる。可愛らしいことですな。
あの頼りない感じの坂道が優勝したと聞き、新学期に入ったらねぎらってあげないとと思っていたらしい。
が、今までけっこう冷たくしてたから行きにくくて今日まで延び延びになっていたらしい。
気にしなくても、冷たく扱われていたこと自体ほとんど覚えてませんでしたのにね!!
今日だってやっと来たの。ああ見えて照れ屋だから、中学の時も好きな男の子にね・・・
ペラペラと喋り出す寒咲さん。なかなかに口の軽い子である。
しかしそうか、自転車バカな感じの寒咲さんも友達の恋愛を聞いたりするぐらいの経験はあるのか・・・
それが経験と言えるのかはさておき。
教室内でIHの話をしていたので、坂道と同じクラスの杉元が近づいてくる。
相変わらずマイペースに自分語りを始める杉元。ゆかいな奴である。
寒咲さんの評価はとっても働き者よ、とのこと。ふむ、マネージャー的な活動は評価されているみたいですな!!
坂道に宿題を教えたりと、関係ない所での活躍は見事なものである。
まあ、杉元はさておいても、まだ1年には今泉君や鳴子といった凄い選手がいる。
これは自転車部も安泰だねと呟くアヤちゃん。しかし寒咲さんは浮かない表情で・・・
同じように浮かない表情をしているのは今泉君。
昼休み、話があると鳴子の前にやってくる。
3年生が――巻島さんが外国行って、田所さんと金城さんが部活に来なくなって、手嶋さんとオレ達だけの練習が始まって。
おまえも感じてるだろ・・・"痛感"してるだろ。3年生の抜けた穴のでかさを!!
手嶋さんたちは十分すぎるほどに強くなってくれている。
だけど、3年生がいたときよりも練習強度が下がっているのは紛れもない事実。
今泉君たちはインターハイに出たことで理解している。インハイのすさまじさ、レベル、過酷さを。
それが肌でわかってしまっている。だから言える。このままなら――オレたちは来年勝てない。
ステージでの一勝やスプリント賞や山岳賞といったカラーゼッケンの取得も危うい。と。
確かにその通りかもしれない。だが、先輩がいなくなってしまうのはどうにもならないことである。
それならば練習を積み重ねるしかないのではないだろうか。しかし、今泉君はある提案を鳴子に投げかける。
鳴子。おまえはオレと同じオールラウンダーになれ。スプリントを捨てて。
おっと・・・そう来ましたか。
3年生が帰ってこないのならば、自分たちが変わる必要があると今泉君は言うのですな。
とはいえ、スピードマンを名乗る鳴子が簡単にそれを受け入れるはずはない。憤る鳴子。しかし今泉君は冷静に語る。
今、オレたちのチームにはゴールを狙える奴が少なすぎるんだ!!
ロードレースはゴールを獲る競技だ!!
おまえが今から調整すればインハイには間に合う。平地の練習の時間を減らして山を登れ。脚質を完全に入れ替えろ。
まあ、そういう段階から変えていくしかないですわな。
現に鳴子は山での練習をインハイ前に行い、そして実際にインハイでその片鱗を見せている。
スプリンターなのに登った。普通できることじゃない。
登れる。センスがある。体も軽い。ゴールへの嗅覚も備わってる。やれ!!
ゴールを獲れる人間は凄く目立つ。そんな気はする。
のだが、やはり鳴子はスプリンターという仕事に拘りがある様子。今泉君の提案を撥ねつける。
ふうむ。面白い提案ではあると思うのだが・・・これは、どうなるかなぁ。
さて、放課後。
部室へと向かう坂道と杉元。時間は冒頭の展開へと繋がる。
そう、謎の学生服がいただきますと言いながら扉を開けようとした場面にだ。
どうやらカギが閉まっていたのを知らずに勢いよく開けようとしてドアを外してしまったらしい。どういう力やねん。
やってきたのは・・・でかい男!!でっか!!
やはりこの男が前回杉元が言っていた知り合いの子でありますかぁ。ふむ。
えーと、名前は杉元定時・・・何?杉元?
何が知り合いの子だ。弟じゃねーか!!
まさかの杉元弟。乗っている自転車も兄と同じくコルナゴっぽい。
ふうむ。ようやくコルナゴ乗りで活躍できそうな選手が出てきたという流れか・・・?
箱学に続き、総北にもでっかい子が現れた。これはでっかい子ブームが来る流れなのか!?俺得。
いや、新総北は割と小柄な連中が多いので平均的なことを考えるとでっかい子が加わるのは自然な流れかもしれないな。
あだ名はたぶん「オムスビくん」だなと決めつけられる定時くん。
声もデカくカラオケではマイクも要らなさそうな子である。
果たしてその走りはどのようなものであるか。田所さんに代わるスプリンターポジションとなるのか?
走りいかんによっては鳴子がスプリンターの席を譲って自分はオールラウンダーに移るという話もありえるかもしれないが・・・?
ともかく、実力を見てみたいところですな。
ここまできて棒にも箸にもかからない実力だったら驚きだが。
いやでもしかし、杉元の弟だし・・・う、うーむ。照兄ちゃんと一緒にレース走るのが夢とか言っているのも危ういぜ!!
RIDE.248 杉元・弟
(2013年 16号)
やってきた期待の新人は杉元・弟。
現在は東中の3年。学年で一番でかくよく食べる。素直でいい奴とのこと。
見た目の印象を外さない奴だな。杉元に似てるかどうかというのは・・・まあ、さておき。
運動部で初めてできる後輩に別の意味で期待していたのは坂道。
可愛い後輩を教える先輩の図とか、誰もが想像することですよね。わかるわかる。
ちょっとイメージ違ったな・・・とか言ってはいけない。
杉元定時。その巨体に見合った怪力は凄まじい。
駐輪場の重たいママチャリを事もなげに片腕で一台ずつ持ち上げ、鉄アレイのごとく上下する。
バカめ!!実際にやろうとすると前輪が左右に動いて痛いことになるぞ!!とまるで経験者のように語ってみる。
まあ、何にしても凄い怪力であるのは間違いないですな。
コンクリートローラーも凄い速度で引いてみたりするぜ!!
自転車とはあまり関係ないが、とにかく力は凄い。そして声がデカイ。坂道としては苦手そうな後輩に思える。
しかし、せっかく後輩になるかもしれない子が来たのだし、あたたかく迎えてあげないと思い直す坂道。せんぱいとして!!
だが、その心配は杞憂に終わりそうである。
定時くんは坂道に近づき、小野田さんですか!?と自分から声をかけてくる。初めての"さん"づけに喜ぶ坂道。ハハハ。
お兄ちゃんからいろいろ聞いてボク、小野田さんの大ファンなんです。
ほほう。杉元は家でそんな話をしておりますのか。
自己顕示欲の強い面倒くさい子だけど、誰かを悪く言う子ではないからなぁ。
その代わり誰かの成果に後乗りをする子ではあるのでやはり面倒くさい。
小野田さん、小さいですね!!想像してたよりうんと小さい。なのに強い。カッコイイです!!
面と向かって褒められて赤面する坂道。
どんな姿形であろうと、慕ってくれる後輩と言うのは可愛いものでありますわな。
ボク、もし総北受かって自転車部入れてもらったら、小野田さんみたいな意外性のある選手になりたいです。
そう語る定時くん。意外性か・・・難しいことを言ってくれる子であるな。
頑張ろうとするなら、その巨体で坂を駆け上がるとかそういう方面でないと意外性は薄いと思うのだが。
いっそ、自転車を抱えて走ってみせてはどうだろう。意外にそっちの方が速いとか。さすがにないわな。
さて、さっそく練習に行きましょうと声をかける杉元。今日は峰ヶ山コースである。
王者の練習に参加できるぞ、よかったなと弟に言う杉元であったが・・・
オレはそれは反対ですよ。
ジャージを着ながら今泉君登場。おや、なんだか厳しい表情ですな。
今泉君は部室から3本ローラーを持ってきて、これに乗れと設置する。
おまえを試す。オレたちは1日1日を惜しんで練習してる。遊びでやってるわけじゃない。
もしこれに乗れない程度なら、練習には参加させない。
ふうむ。やはり厳しいですな今泉君。
まあ、3年生が抜けた穴の大きさを実感して余裕がなくなっている時期ですしね。
間の悪い時に来てしまったということであろうか。
ともかく、定時くんは言われた通りに3本ローラーに挑戦する。乗る自転車は兄と同じコルナゴ。
それはさておき、ジャージのロゴのSUGIMOTOが気になる。特注?自己顕示欲が強いのは兄譲りなのか!?
チャンスは一度だ。失敗したらすぐ帰れ。
さらに厳しい注文をする今泉君。これはキツイ。そもそも杉元は今3本ローラー乗れているのか?
たった一度のチャンスをものにできるか――ロードレースにおいてそれは重要なポイントだ。小野田はそれをやってみせた。
確かに坂道は一発で成功させた。同じそれを期待するというのか・・・!?
意外に今泉君は誰よりも新人に対する期待が大きいのかもしれない。
練習にいい変化をもたらしてくれる存在を欲しがっているように思える。
実は一度も3本ローラーに乗ったことのない定時くん。
しかし、今泉君が貸した一度という言葉で集中力が増したのか、見事に乗りこなして見せたりする。ほほう。
というわけで、主将である手嶋さんは1回くらい様子見てやってもいいんじゃないかと今泉君を説得。
今泉君もそれを認め、ようやく定時くんも練習に参加できるようになりました。
ところで定時くんの自転車の実力の方はどうなのかね?
ええ。大丈夫です。何せ――ボクが手取り足取りロードのイロハをたたきこみましたから。
え!?
なるほど・・・その結果がこれか。まるでレギュラー陣についていけない定時くんでありました。
というか、杉元と同じ速度ではなんともはや。パワーはどうみても兄よりあるのになんでまた。
ああ、なるほどフォームか。効率の悪いフォームなので力がうまく自転車に伝えられていないんですな。
ローラーに乗る才能はあっても自転車はダメだったなとため息をつく今泉君。
坂道はひょっとしたら得意分野は登りかもとフォローする。
のだが、やはりそんなことはありませんでした。登りも杉元と同じフォームで同じ速度。んぎーっ。
スポーツの世界じゃ同じ競技で兄貴より弟の方が優れてるなんてよくあることだが――
兄貴ってお手本がいて小さいころから同じメニューやってるから。今回は違う例だな。
なるほど。つまり参考にするお手本が悪かったから引きずられたという話であるか・・・なんか酷い話だ!!
とはいえ、人のいい坂道。せっかくできそうな後輩に気を使わないはずもない。
苦戦している定時くんの横について登る時の走り方を指示する。
しかし坂道も今まで人に走り方を教えたことがあるわけでもないし、口ではうまく教えられない様子。おやおや。
ムダだな。あいつに何か仮に能力があるとしても、兄貴とシンクロする能力ですよ。
今泉君の言う通り、定時くんのシンクロ能力は凄まじい。
シューズの履き方、自転車の乗り方、ヘルメットの被り方、声掛けまで兄と一緒だという。何だそりゃ!!
これはこれで意外性があると言えなくはないな。
しかし、ここで手嶋さん。ある可能性に思い当たる。
仮に・・・それが本当に能力だとしたら・・・兄貴じゃなくても・・・?
ハハハ。そんなまさか。
ではなんですか手嶋さん。横に並んだ坂道とシンクロしたら坂を凄い勢いで駆け上がるとでも?
うん。ありそうだな。
よもやのシンクロ能力者の登場。これは・・・練習には色々と使えそうですね!!
体格的に苦手そうな登りで坂道並の走りができるとしたら、平地ではどれだけの速度が出せるのか・・・楽しみな話である。
平地と言えば鳴子はどうしたんだ?登りの練習を嫌って別のコースに行っているんだろうか。
それよりも気になるのは他の2年生や1年生はどこに行ったんだろうかということ。辞めたのか・・・?
杉元のフォームが悪く、それとシンクロしちゃうのが問題という定時くん。
なるほど。3本ローラーの時はお手本がいないから上手く行っていたわけなんですね。
プレーン状態の定時くんの走りは素直な効率のいい走り方なのかもしれない。
しかし・・・1年近く自転車部に在籍しているのにフォームを矯正されない杉元とは一体!?
巻島さんが矯正されるのを嫌がったエピソードがあったので、杉元にも自由にさせちゃったとかそういう話だろうか。
ならば、杉元もフォームを矯正すれば伸びる可能性が・・・可能性だけはあるかもね。うん。
RIDE.249 3分間
(2013年 17号)
練習に参加したいとやってきた杉元の弟、定時くん。
しかしフォームの悪い兄とシンクロしてしまうためか平地も登りもまるでダメな走りとなっている。
坂道は頑張って指導をしようとするが、今泉君は早々に見切りをつけてしまった様子。しかしその内心は――
こういう気持ちだったのかもしれないな。
下から新しいメンツが入ってきて、その中からひと握りでも。せめて、どうにかインターハイで使えそうなヤツが出てきてくれと。
そうしたら自分たちの意思が通じるかもしれないという胸をしめつけるような「願い」にも似た感情――
そういう風に感じてましたか。金城さん、田所さん、巻島さん――
やはり今泉君も新たな戦力の可能性に期待をしていた様子。事前テストなどの厳しい条件を付加したのもその期待からでしょうな。
だからこそ、そういう期待をした分、結果が出なかったことへの落胆はかえって大きい。他の誰よりも。
オレたちのプレッシャーの中で3本ローラーに一発で乗り、恵まれた体格があった。
だけど走らせてみたらスプリントも登りもダメ。結果はオールアウトだった。
行くぞ小野田。残念だが、そいつは置いていく。つき合ってる時間はもう、ない。
坂道にそう声をかける今泉君。
相手にしているのは全国である。見込みのない選手の指導に時間を費やすわけにはいかない。
まあ、正論といえば正論ですな。そういうのは選手じゃなくて指導者がやればいい話である。
つまり監督が真面目に部活に出てくればという話に繋がるのだが・・・今どこにいるんだろう、あの人。
ごちそうさまでした。
ペコリと頭を下げる定時くん。何!?いただかれた!?いや、間違えただけか。どれだけ食事のことばかり考えてるの、この子。
ともかく、小野田さんと一緒に走れて楽しかったですと定時くん。
頭を下げ続ける様子にすまないと思いつつ、何もできなくてごめんと詫び、先に行く坂道。ふむ・・・
その頃、先頭を走る今泉君に並走する手嶋さん。
手嶋さんは今泉君に指示する。あのオムスビと3分だけ走ってこい、と。3分とはまた短いな・・・!!
定時くんは体は大きくパワーもある。ローラーにのるバランス感覚も持っている。けど自転車は遅い。それは何故か。
答えはフォーム。兄である杉元のフォームを丸真似しているからである。
杉元は特別下手じゃないけど力の逃げるフォームをしている。
ここ一番でパワーが出ないとロードは置いていかれる。千切れるのはそのせいであるとのこと。
ふむ、それが分かっているなら杉元くんのフォームも改善してあげればいいのに。
これまでの練習で指導されなかったのだろうか。指導者は何をしているんだ!?本当に何をしているんだろう・・・
じゃ、フォームが改善されれば?
そう切り込む手嶋さん。そりゃフォームがよくなればパワーは自転車に伝わり、文字通り加速的に速くなるでしょう。
しかしフォームなんて簡単に直るものではない。少なくとも3分では。
そうか?おまえならできるんじゃないのか。
おまえが言ったんだ。あいつにはシンクロする能力があるって。
試してみろ。それは"可能性がある"ってことだ。
そうやって連れてきたんだろ。このチーム総北におまえが!!うちのさ、超級エースクライマーを!!
ふむ・・・言われてみれば確かに。
坂道を引き込んだのは今泉君の超ファインプレーであった。つまり今泉君には青田買いの才能が、可能性が・・・!?
それにしても久しぶりに見る初期今泉君はやはり別人のような顔つきでありますなぁ。
手嶋さんの言葉に従い、定時くんの横に並ぶ今泉君。目を合わせることもなく、淡々と告げる。
でかいの。チャンスは一度だ。ダメなら帰れ。
兄貴に教わったロードのイロハ。全て忘れろ。(杉元「ん。何だいそれは?」)
あの小さなメガネの男、あいつのフォームをそっくり真似て、全力で追いつけ。
定時くんの尊敬する坂道のフォームを真似る。その課題は嬉しいものである様子。
杉元もその課題なら大丈夫だよと太鼓判。なぜなら彼は人一倍のみこみが早いから!!
それに部室にあった1年生レースや合宿のビデオ。こっそり持ち帰ってダビングしたDVDを定時はくり返し見てるんだよ。
ははぁ、さすがにシンクロするにしてもそういう下地は必要でありますか。
初見で少し見ただけの走りを真似できたら可能性どころの話ではなくなる。
坂道の登りを真似するべくフォームを変える定時くん。その瞬間立ち昇るプレッシャー。ズンッ!!
小野田さん!!小野田さん。小野田さん!!
ぐるぐると真似たフォームでペダルを漕ぎ出す。
するとどうだろう、一瞬のうちに坂を駆け昇り、先行していた坂道に追いついたではないか!!
まあ、体力は中3レベルなのでその走りは続かずに並んだところで倒れてしまうわけであるが。
いや、考えてみると坂道もよくコースアウトはしていたな・・・そこも真似たというのか!?まさかッ!?
追いついた・・・!!言われた通り、一瞬だがみごとにフォームをコピーしやがった。
たった一度のチャンスを二度もモノに。偶然か・・・じゃないとすれば――
驚く今泉君。その背中を叩き、声をかける手嶋さん。
笑えよ今泉。後輩がうまくできたらほめてやるモンだ。
ふむ、その通りですな。さすがに主将である。手嶋さんは教育というのがよくわかっている。
む、そう考えるとこの指示は将来の主将候補である今泉君への教育も兼ねているのか?
というわけで、指示に従い定時くんを褒める今泉君。フクザツな表情で。どきーん。これが今泉スマイル・・・!!
今泉「ムリっスー!!ムリっス。オレあんま人ほめないから!!」
手嶋「意外によかったぞ。ははは」
定時「今、ボクはほめられたの?おこられたの?兄ちゃん」
杉元「ボクにもわからない!!」
なんともはや。今泉君も将来のための指導力を今のうちに手嶋さんから学んでおく必要がありそうですな。
手嶋さんはその辺が上手いというか、笑顔が洗練されているように感じる。
考えてみると厳しめの今泉君と要所できっちり褒めてくれる手嶋さん。
ムチとアメがきっちり振り分けられていて、次の新入部員としてはありがたい環境が整っているのかもしれない。
指導者である監督が不在であるが、この2人がいれば問題ないですわな!!監督がいなくても。いなくても!!
それはそれとして。定時くんの件とは別に手嶋さんには気にかかることがある。
それはこの場にいない男――鳴子の件である。どうやら鳴子から相談を受けていた様子の手嶋さん。
今度の3連休、部活休ませてもうてええですか。
迷ってます。何が自分にとって正しいのか。進む道みたいのに。
すいません・・・ひょっとしてですけど。ワイ、スプリンターやめてもええですか。
悩みを抱えた鳴子の衝撃発言。ほほう・・・!!
今日の練習に参加していないのもそういう理由か・・・ん?今って連休だっけ?
部室に来る前は皆制服姿だった気がするのだが・・・?学校内に入るには制服着用でないといけない規則があるのかもしれない。ふむ。
実はこの辺りの時系列がよくわからない。
鳴子が手嶋さんに相談したのはいつなのか。今泉君から登れと言われた日の前なのか後なのか。
前ならば、自分で考えたことだけに悩みは深いものとなりそうだが、今泉君の言葉が後押しになる可能性はある。
あの場は意固地になっただけと考えれますしねぇ。
次号は連載250回記念のセンターカラー。
悩みを抱えた鳴子の取った行動とは何であるか。ふむ、気になる話ではありますな・・・!!
RIDE.250 大阪
(2013年 18号)
連載250回記念センターカラー!!
今回は物語の舞台である千葉から遠く離れた場所で展開されます。
東京から西へ国道一号線を560km。
かつての交通の要所東海道をたどり行き着くのが京都から淀川を下り、古く難波(=浪花)とよばれ天下の台所として栄え、
西に瀬戸内海、淡路島。東に生駒山地など豊かな自然に囲まれた、豊臣秀吉により城下町として整備された商人と町人文化の町。
そう、大阪である。
おいおい何も変わっとらんやないかい。道頓堀にあめりか村に大阪城!!
来たで!!戻って!!この空気、このハイテンション、最高や!!ワイの生まれ育った町、大阪や!!
嬉しそうな鳴子。取りあえず1年も経ってないだろうに変わるわけないだろとツッコミ入れておくか。大阪らしく。
それはさておき、ここで回想。前回の最後の場面の話となる。
手嶋さんにスプリンターを辞めるかもしれないと言い出す鳴子。さすがにこれは穏やかではない。手嶋さんも慌てる。
チームの構成に大きく影響することだし、何より鳴子はスプリンターとして田所さんからバトンを渡されている。
それを放り出すようなことを簡単な気持ちで言うはずがない。何を悩んでる?と問いかける手嶋さん。
スカシに――スカシに言われた一言に――
おっと、やはり今泉君に言われたことで悩みだしていたんですな。
まあ、さすがに自分からスプリンターを辞めようなんて考えるはずはないか。
ともかく、そのことは口に出来ず、何も聞かずに3日間休みをくださいと頼み込む鳴子。
すいません手嶋さん!!今、全部喋って答えなげかけたらワイ、気持ち切れそうで――
ふむ。鳴子は悩むにしても全力で悩む男であるわけだな。
原点に戻って考え直すために1度大阪に戻ろうと思っている様子。
他人に相談できないほど重たい悩みをなんとか自分で答えを出そうと考える。不器用で意地っ張りな奴だ。鳴子らしくはあるがね。
というわけで、手嶋さんの許しを得て大阪へ帰ってきた鳴子。
家族ごと引っ越しては来たが、ばーちゃんの家は今も大阪にあるらしい。なるほど、泊まる所はあるわけだな。
しかし遠路はるばるカワイイ孫が帰ってきたというのに、ばーちゃんは家にいない。
代わりに近所のおばさんとその子供たちに捕まる。騒がしいことだ。
さすがに大阪までは輪行袋に入れて運んできた自転車。家に来るまでには組み立てて走ってきた様子。
その赤くて派手な自転車を見つけてハシャグおばさん。これがインターハイで活躍した自転車なんやねー。
凱旋帰国を果たした鳴子に話をいっぱい聞かせてもらおうと言い出すおばさん。
なんせ章吉くんは派手でナンボ!!昔から変わらん。浪花イチのスピードマン。"スプリンター鳴子章吉"くんやからね!!
地元の大阪で名を馳せたスプリンターである鳴子。
帰ってきたのならばその勇名は否が応でも耳にすることになる。
そのような状況でオールラウンダーへの転向を決めることなどできるのだろうか・・・?
「スプリント」を捨てて・・・アホか・・・アホかスカシ。軽々しく言うなボケ・・・
スプリンター・・・速くて派手で、最速でコーナーかけぬけて、誰よりも速く景色を抜き去って、
登りをコツコツ登る地味なクライマーとは違う、華やかで完全一発勝負の世界。
それがスプリンター・・・ワイのあこがれてきた世界。
ワイが、進むと信じとった、道。簡単に捨てられるわけないやろ。
幼い頃から歩んできた道を変える。これは確かに大きな決心のいる話である。
スプリンターとして通用しないのならまだしも、チームの都合で変わろうとしている。これは確かに納得はし辛いか・・・
なまじ自身が登りも才があるところを見せてしまっただけに出来るわけないとも否定できないし、厄介なことになっている。
しかし鳴子、クライマーのことそんな風に思ってたんですね。巻島さんや山岳の登りはやたらと派手だったがなぁ・・・
悩む鳴子。それはそれとして、凱旋帰国パーティーの始まりである。
ジャージもきっちり持参してきていた鳴子。赤いピナレロ担いで派手に活躍をアピールする。よっ。赤い男!!
てな風に騒いで眠りにつく鳴子。1日目はほとんど騒いでいただけで終わりそうでありますな。
しかし眠る前に翌日のことを考える。いってみるか・・・明日・・・ワイの原点。
ここなら何かをつかめるかも知れん!!
やってきたのは自転車が思いっきり走れるレース場のような場所。
港の車進入禁止の元倉庫のまわりをぐるりと囲むアスファルト。
消火栓の標識の下をゴールと定め、自由に走ることのできる空間。
ここには大阪のスピード自慢達が集まるのである。
ここで毎日草レースして、スプリントを覚えた!!
ここがワイの原点!!ここで初めてロードに触れた!!ワイのホームコースや!!全てのはじまりの場所や!!
コースは1周600m。250mのストレートとクランクがひとつ。
海風と闘いながら、利用しながら、かけひきとカンと技術を駆使して勝利をつかみとってきた!!
かかってこい!!闘いの中から、いつだって答えは出る!!騒ぐわ!!ワイの赤い血が!!
煽り立てるように集団の前に走り出て速さを見せるける鳴子。
わざわざそうしなくても、総北のジャージを着ているだけでさすがに注目度は満点である。
先のインターハイで王者となった総北。その中に大阪から来た赤いアタマのスプリンターがいるというのも評判になっている。
つまり鳴子は既に全国で有名な存在となっているのだ!!
だからすぐに勝負をしようと申し込んでくる者も現れる。願ったり叶ったりな話ですな。
ワイは阪台付属高自転車部きってのスプリンター柿本竜大。人呼んで六甲おろしの竜!!
毎度思うが、こういうのは誰が名付けているのだろうか。
有名人なら雑誌記者が適当な異名をつけたりするかもしれないが。自称で名乗ってる人とか多そうだなぁ。
まあともかく、勝負の開始である。
ここで負けるようじゃスプリンター失格。返上や!!絶対勝つ!!
大阪では負けなしという柿本と勝負を始めた鳴子。
しかしここにいる猛者は柿本だけではない。奈良のジャージを着た男がこの場にはいる。
オレは総北172番田所を一度抜いた男、奈良最速の灼熱のスプリンター。
奈良山理学園の大粒健士!!仏のカオも三度までだ。オレがひねってやろう!!
ゲー!!まさかの大粒さん!!
インターハイの2日目、弱っていた田所さんを抜いたけど坂道に追い抜かされた男ではないか!!
そんなしょうのない男だけど、1度田所さんを抜いたことを誇らしげにしているのは何だか可愛い。
というかちょっと太ったんじゃないですかね大粒さん。まさかの再登場、地味に嬉しいよ・・・
しかし、注目は大粒さん自身ではなく、その口にするセリフ。
このコースは近頃有名になっており、近県からスピード自慢のスプリンターたちが集まってきているという。
奈良・・・神戸・・・滋賀・・・そして京都からも。
京都・・・京都だと・・・!?
まさか、ここであの男が登場するというのか・・・!!
と期待させておいて水田くんが出てきたらどうしましょうかね。許されない。辻さんだったら・・・ギリギリ許す!!
いやその2人はスプリンターじゃなかったな。さすがにその外し方はないか。
やはり御堂筋君の登場を期待するわけであるが、今はどのような状況になってるのかねぇ京都伏見。
石垣さんが卒業した後の京都伏見の状況は凄く気になっているのでそこの描写は早く見たいところである。
新開さんにも勝利した御堂筋君なら鳴子を負かしてスプリンターを返上させることもできるやもしれませんしね。楽しみだ。
RIDE.251 自転車異種格闘技場!!
(2013年 19号)
港のすぐそば。大阪のこの草トラックコースはワイの原点。いつだって答えは闘いの中にある!!
生じた迷いに答えを見出すには闘うのが一番と考える鳴子。うーむ、若いスポーツマンらしい解決法ですなぁ。健全だ。
というわけで、阪台付属の柿本と勝負を行うこととなりました。
勝負は3周!!この柿本いう男、コースで負けなしいうのはホンモンみたいやな。ワイの加速にキッチリついてくる。
インターハイではお目にかからなかった男だが、実力者であるのは間違いない様子。
まあ個人はともかく、メンバーの戦力が揃っていないと全国に出るのは難しいでしょうからねぇ。
この草レース場では勝負しているヤツがいた場合、内側を開けるのがルールとなっている。
なるほど。そういう規則というか暗黙の了解があるんですな。
と思ったらいきなり外側を疾走しだす勝負中の2人。せっかく内側を開けようとしてくれているのに!?
それはさておき、早くも勝負は3周目。最後の周回となる。
ここで鳴子の前に出た柿本。勝負をキめるためにアレをやる気だ!と騒ぎ立てる観客。さすがに大阪は観客も盛り上げ上手だ。
さすがやな総北、鳴子。すさまじいスプリント力とコーナーワーク。さすが全国レベル!!
けど、ここは草レース場。何でもアリの自転車異種格闘技場(バーリトゥード)や!!
見せてやろう。オレの本当のアダ名"夜の六甲おろしの竜"その真髄を!!
そう述べてハンドルに設えられていたスイッチを押す柿本。
何だ?今泉君のようにスイッチ式のシフターでもつけているのか?いや・・・これはそんなシロモノではない・・・!!
出たァァ!!夜の六甲柿本スペシャル!!
驚いとるか。無理もない!!ワイは速い。その上、光る!!
そう。まるで六甲山から見た神戸の町なみのごとく!!その価値100万$!!
大阪なのに神戸!?近い!!近い!!そんな細かいこと言いっこなしや!!
な、なるほど。柿本のスイッチはスポークのLEDを発光させるためのものだったのか!!しかも七色だと・・・?びっかー。
公式レースでは許されないかもしれない装飾だが、ここは草レース場である。このぐらいのことは許される!!
いやあ、何が飛び出すかと思ったらなぁ・・・間違いなくバカだろこの男!!
大阪なのに神戸?の部分も先んじて自分でツッコミ入れてやがるし。バカなくせに気が回るとはな!!
これにはさすがの鳴子も呆れるしか・・・
カッコエエー!!
あかん。こいつもこういう方面ではバカだった!!何を目をキラキラさせているのか。
柿本は光ったままフル加速でゴールへ向かうのだが、見とれて動き出しが遅れる鳴子。何やってるんだか。
どんな状況でも勝つ!!インハイで身につけてきたこの感覚!!
絶対勝つ!!ていうかこの場合、ワイより目立つヤツに勝たせてたまるか!!
遅ればせながらフル加速を開始する鳴子。まあ、派手一番な鳴子としてみれば譲れない点でありましょうな。
柿本は後ろからのびてくる鳴子に気づかずにゴール手前でガッツポーズ。
なんてことしているから直前で追い越されて敗北することになる。ダメな目立ち方だ!!
まあ、思ったよりも面白い奴でしたよ柿本さん。
インハイ1位、王者校のスプリントを見せつけた鳴子。
しかしこの草レース場には、それを目撃しても怯まずに挑戦してくる猛者がまだ存在している。
総北、鳴子。次はオレが相手だ!!
久しぶりだな・・・インターハイ以来だ。
奈良、山理学園灼熱のスプリンター。大粒健士!!仏のカオも三度までだ!!
正直、誰!?
勢い込んでやってきた大粒さんであったが鳴子の記憶には残っていない様子。まあ、あんまり絡んではいませんでしたしね。
読者としてはそれなりに記憶に残っている男ではあるが、この扱いは妥当だとも思えてしまう。
でも一応年上っぽいので気を使って誰?とかは口に出さない鳴子。意外と気の利く子だ。
オレが使うバイクはコレだ。
大粒さん自身には覚えがないが、その取り出したバイクが何であるかは一目でわかる。鳴子の顔色が変わる。
ヨーロッパで盛んなトラック競技!!そこで使われる名門フランス、ルック社のトラック競技専用のピストバイク!!
ギアさえ排除!!軽い!!強い!!強さは鋼鉄のよう。しなやかさはムチのよう!!
ただひたすらに平坦を速く走るためだけに造られたバイクだ!!
えぐられたチューブ(フレーム)!!トラック専用の超軽量ハンドル!!
そいつにオレのこのスプリント用に鍛えぬかれた丸太のような脚を組み合わせたらどうなるか!!
化学反応ってのは純度の高いもの同士でやると、ミラクルな結果が出るんだ!!
ほほう。ここでピストバイクが出てきましたか。
聞くところによるとブレーキすらついていないという話らしいが・・・
直線だけならともかく、コーナーもあるコースでどう走るんでしょうなぁ。最近はブレーキつきのもあるらしいけど。
来いよ総北スプリンター!!
勝負は3周だッ!!仏のカオも三度までだッ!!
何度そのセリフを繰り返すのか大粒さん。
ようやく鳴子が決めゼリフか!!とツッコミを入れてくれたので少しは静かになるかな?
今まで繰り返していたのはツッコミ待ちだったと考えればよいわけだ。ふうむ。
ったく。次から次へとおもろいヤツが出てくるわホンマ。
鳴子の言う通り、スプリンターってヤツはどいつもこいつもおもろいヤツであるらしい。
振り返ってみるとまともなスプリンターってほとんど記憶にないな。鳴子、田所さん、泉田君、新開さん、メガネスプリンター・・・
そういえば待宮もスプリンターだったか。あの男もまともかというと疑問はあるしなぁ・・・うーむ。
やはり金城さんの言う通り、スプリンターはバカじゃないと務まらないということなのか・・・!?
けど全員自転車大好きなんや。それだけはビンビン伝わってくる。そらワイも同じや!!せやからワイも精一杯スプリントをやる!!
さっき純度の高さどうこう言ってたが、悪いけどワイ鳴子章吉は生まれもっての――純度100%のスプリンターや!!
そう述べてピストバイクで加速する大粒さんにはりつく鳴子。
大ツブな人!!アンタ十分速いで。ただワイが常識レベルじゃ考えられんくらい速いってだけや!!
ワイは直線に生き、派手に散る!!浪花の天才スピードマンや!!
その言葉の通り、柿本の戦い以上ののびを見せて大粒さんに勝利する鳴子。うーむ、さすがだ。
大粒さんはピストバイクだけでなく、加速用に流線型のヘルメットを用意している。すごいデザインだなコレ・・・!!
どこかの兵士みたいな恰好で加速しているが、それでも及ばない。残念な話である。
まあ、鳴子もインターハイでロケットマンになった時は似たような格好になっていたがそれでも田所さんに負けてましたしねぇ。
勝利するには多少の見た目も大事ということなのか・・・!?
コースレコードが出たんじゃないかと言われるぐらいの鳴子の走り。これを見ては挑戦者も後には続いて現れませんわな。
アカン・・・ワイ強なっとる。
前ここ走っとった時より確実に速い。筋肉使えとるのわかるし、のっとるスピードも次元がちゃう・・・
インターハイでの走りが成長させたいうんか・・・オッサンや青八木さんとの切磋が・・・
自身のスプリンターとしての成長を改めて実感する鳴子。
となれば、やはりスプリンターを捨てることなどできようはずもないですわな。
だから鳴子は思う。次の勝負でラストだと。
次の勝負でやっぱりワイが勝ったら、勝ったならワイは――スプリンターとして走る!!
そのように決意する鳴子。
しかしその鳴子に挑戦する最後の男はこれまでとは比べ物にならないぐらいの強者である。
紫色のジャージをまとった巨大な男・・・そう、御堂筋君だーッ!!!
口元から首にかけて布で覆った状態で登場する御堂筋君。か、過激派・・・!?ヘルメット姿だしなぁ。
まあ、おそらくネックウォーマーなんでしょうが、御堂筋君がつけると半端なく怖いから困る。
退屈だったから大阪まで遊びに来たら黄色いジャージのヘンなのがいるという話を聞いてやってきたという御堂筋君。
鳴子の最後の相手がよりにもよってこの男となろうとは!!
勝負は10周。全力をふりしぼっての戦いとなるぜ!!
おまえの最後や!全力でしぼれよ!プププ。
ネックウォーマーを外して舌を飛び出させる御堂筋君。目も早くも本気の形となっています。
性格は変わっていないようで安心したやら何なのやら。
最初見た時はまた歯がいかれたのかと思ったが、そうでもないみたいですな。
この走りで御堂筋君が先のインターハイの敗北でどのように変わったのかわかるかもしれない。うむ・・・注目であります。
しかし、自転車異種格闘技場とは凄いタイトルですなぁ。
柿本の自転車は光るだけだったが、この草レース場にはもっととんでもない改造をした奴がいるのかもしれない。
タイヤの側面からトゲが飛び出して横を走る自転車のタイヤをパンクさせようとするとか。
車体の下からバネが飛び出して跳ねることでコースを飛び越えるとか。
バーリトゥードというからにはこれぐらいの何でもアリが横行しているに違いない!!きっと。
RIDE.252 鳴子VS御堂筋
(2013年 20号)
異色のカードが実現。
大阪の草レース場で対決と相成った鳴子と御堂筋。
1周600mのレース場を10周の計6km勝負が始まろうとしています。
けど、ただ勝負するだけじゃあオモシロクない・・・賭けようか!?何か、大切なモンを!!
相変わらずそういう賭け事が好きですね御堂筋君。
まあ、自分を追い込むには有効な手段であるのは間違いないけども。
全国1位を取った総北のスプリンター鳴子。
そしてあの最速男の新開さんをスプリントで下した男、御堂筋。
この対決には周りの観客も沸きまくっている。そりゃあそうでしょうな。
新開さんの件を見る限りやはり御堂筋君有利という予想がされるか・・・?
エエわ・・・相手が誰であっても、これはワイの中で決めてたことや。
次の勝負で勝ったらスプリンターとして走る。負けたらスプリンターをやめるわ!!
本気の目でスプリンターの座を賭けてきた鳴子。紛れではないことは御堂筋君にも伝わる。
それを聞いてなんだか嬉しそうな様子を見せる御堂筋君。キモォ!!
アホやこいつ。本モンかけてきた!!
けど・・・そや・・・そういう・・・本気の勝負の中でしか純粋なモノは生まれない!!
ええよ!!久々や。久々に高なるわ・・・ボクが求めていたのはこういう――削り合いや!!
勝負!と行う前に、御堂筋君は同じ京都伏見の水田、山口の両名を呼び寄せる。お前らも来てたんか。
この勝負、ボクが負けたらァ、キミタチィは来年のインターハイ5人で走りや・・・
ボクは全力でぇ、黄色いジャージでも着て3日間・・・王者ソーホクゥのサポートするからァ!!
な、何を言い出すのだこの男は!?
上は黄色い総北ジャージで下は紫の京都伏見ジャージだと?そんなアンバランスが許されると思っているのか!?
いや問題はそこではない。御堂筋君はあんまり黄色とか似合わないですよね。いや、そこでもない。
試合より前の遭遇戦で来年のインターハイという大舞台の結果に関わるようなものを賭けるとは・・・!?
しかし、よく教育されているのか、水田、山口の両名はこれを了承。
インターハイ3日目の朝では生意気な口をたたいてましたのにねぇ、水田君。再教育でもされたのか?
モチロォン。そんなことしたらアタマ割れそうになって死にそなるからせーへん。ここで勝ついうことや!!
自分を追い込むにしてもやりすぎな気がするが、そういう所が純粋なんでしょうな。石垣さんもそんなこと言ってた。
まあ、万一負けてサポートに回ってもそれはそれでよし。
何故なら最後まで王者と一緒に走れるのだから最終的にゴール直前で追い越せばいい。
サポートするとは言ったがゴールを狙わないとは言っていない!!とか言って。
そういえば御堂筋君、インターハイが終わった後かなり長いこと眠ってましたよね。舌だしたままで。
あれは次の戦いに向けて体を休ませていたということらしい。
魂を運ぶ器がボロボロでは何もできないから、とのこと。
おかげで回復した。じわじわ回復。今じゃ前以上に万全や!!
というわけで、お互いの賭けるものも提示したことですし、十周勝負のスタートであります。
にゅうるんと首を突きだした御堂筋君。脚をぶるんと震わせて開始早々からいきなりの加速。
相変わらずのキモさ・・・だが速い!!
その加速のままカーブに突っ込む。あんな速度でツッコんだら――落車!!と心配する観客。しかし――
落車はしない!!あいつのコーナーは・・・全速力ツッコミからの――ダイブバンク!!
地面にダイブするかのように身体と車体を傾ける御堂筋君。
ペダルがアスファルトをこすり、顔を地面に極限まで近づけて曲がる。
このカーブの凄さが御堂筋君の本領でありましょう。
どうでもいいが全速力ツッコミとか鳴子が言うと別の意味に聞こえてしまって仕方ない。
あいつの持ち芸は・・・全速力ツッコミからの――ダイビング土下座!!とか言い換えても違和感がないから困る。
カーブで引き離される鳴子。しかしそれで終わる男でもない。
(速い!!一流!!けど、ワイが引き離される?そんなジョーダンは)
ヨシコちゃんじゃい!!おるぁああああ!!
猛烈なスプリント。直線での加速で開けられた差を詰める鳴子。
どうでもいいが、ヨシコちゃん以降だけ口にされても困るんですが。誰だよヨシコちゃん!?そいつアンタのなんなのさ。
というのはともかく、2人の勝負は早くも白熱している。
普通の選手がコースを1周している間に2周してしまうぐらいの速さ。
これにはさっきまで勝負していた柿本、大粒の2人も驚き。鳴子、オレたちの時は手抜いてたのか!!
いや、鳴子はそういう男ではない。光るのに見とれてて力が抜けたりはしてたが、手を抜いたりはしていない。
お互いに引きあっとるんや。実力を・・・闘う魂を。
そう述べながら現れたのは・・・京都伏見の3年、石垣さん!!
ま、まさか・・・まだ引退していなかったというのか石垣さん!?
総北の3年生たちはもう完全に引退した様子だというのに、未だにジャージを着て遠征にまでついていきているとは・・・
実は大学なんて勉強しなくても受かるぐらいに優秀だったとか!?
それとも実家の家業を継ぐことに決まっているから余裕があるとかそういうことなのだろうか!?留年ではないと思う。きっと。
鳴子くんとのこの勝負で次のカラをやぶるか御堂筋!!
さらなる御堂筋君の成長を見届けようという気持ちがあるんでしょうかね、石垣さんには。
ふうむ、これは勢いで京都伏見の現状の体制と今後の様子が描写されそうですな。楽しみだ。
勝負の方は・・・正直賭けたものに差がありすぎましてなぁ。
悩んで揺れているスプリンターの座についてと来年大舞台でのチームまるごとの勝利の座。天秤が片方に傾き過ぎである。
まあ、御堂筋君がどのようにカラを破るか楽しみにしましょう。
たぶん頭で叩き割り、カラを噛み破りながら出てくると思われる。いや、物理的な出方の話ではなかったか!?
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