蒼天紳士チャンピオン作品別感想

弱虫ペダル
RIDE.244 〜 RIDE.269


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 各巻感想

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連載中分 SPARE BIKE

弱虫ペダル 29巻


RIDE.244 峰ヶ山で一番速い男  (2013年 12号)


手嶋さん。ボクは今、全力で追いつきたい!!

燻っていた心に熱いものが灯され、坂道が駆け出す。
するとどうだろう、開いていた差があっという間に詰まってしまったではないか!!
やはり本物のクライマーは違いますな。

これが"小野田"・・・ワーオ・・・速い。

何がワーオだ。ナニ人だ。

でも、ゆずれないよ。このレースは!!

追いついてきた坂道に反応し、アタックをかける葦木場くん。
残り1kmという距離で引き離しにかかる。
まあ、彼としてみれば久々のレース。謹慎を解いてくれた新開さんや福富さんのためにも負けられないレースでありましょう。

駆けだした葦木場くん。さすがに手嶋さんにはもうそれに追いつく力は残されていない。
だが、このタイミングで坂道がやってきてくれた。任せられる男が来てくれた。
手嶋さんの走りを見て体が熱くなって足が止まらなくなったという坂道。

そりゃうれしいな。日記につけとくよ
どうだ調子は。上がってきてるか。体は。新しいバイクは。終えるか、前を。

坂道の様子を尋ねる手嶋さん。
どうでもいいが、冗談でもなく手嶋さんは本当に日記とか細かくつけてそうですよね。
主将になってからは記録という意味合いも大きいでしょうし。内容が気になる所だ。
というのはともかく、坂道は手嶋さんの質問を肯定。
強そうだけど、大きくて速い人だけどなんとかしますと言う。

"速い"?
巻島さんより、速いか?

手嶋さんの言葉を聞き、前を行く葦木場君の姿を巻島さんにダブらせる坂道。
ハハァ。この演出のための体を揺らすメトロノームダンシングか!!
イメージさえ被されば、坂道には振り返る巻島さんの姿まで思い起こすことができるぜ。
そして、意志のこもった目を取り戻し、手嶋さんの問いには否定で返す。

いいえ。そんなことはないです。なぜなら――巻島さんは世界一速くてカッコイイクライマーだからです!!

手嶋「だったら証明して来い!!そいつを!!おまえが勝って!!」
坂道「はい!!」

今泉君にされたように、手嶋さんに背中を押し出され、坂道が駆けだす。
新しいバイクが唸りをあげて加速を手伝う。
そこから生み出される勢いはゴールまでのスパートをかけていた葦木場くんを捕えるほどのものであった。

巻島さんはもっと、ずっと、速いです!!

そう告げて、葦木場くんを抜き去る坂道でありました。うむ、さすがだ。
しかし葦木場くんは巻島さんを知らないのか・・・?
卒業する3年生のデータは特に知らなくてもと思ったのだろうか?杉元まで知っているというのに。

ともかく、葦木場くんを抜き去った坂道はその勢いのままトップゴールを迎える。ショォ!!

思わず"ショ"って言っちゃった・・・

ゴールした坂道がまず思うのはそんなことであった。
うーむ、本当に巻島さんの影響はどでかいものがあったんですなぁ。
これからも厳しいとき、辛いときは巻島さんを思い出してショッショと言い出すのであろうか。それはそれで面白いっショ。

なるほど・・・これが"総北"・・・たしかに強いすね。

坂道に続いてゴールした葦木場くんはそう呟く。
ふむ、新開さんが見て来いと言った目的は見事に達成できた様子ですな。
勝利こそ得られなかったものの、収穫は大きかったと考えることができる。

ムリをしていた手嶋さんも無事にゴールすることができた。さすがにこのレースで脚がダメになったりはしなかったか。
倒れ込むほどに疲弊はしているみたいですけどね。
出し切りすぎた。カッコ悪い。ダメだなぁと述べる手嶋さん。
いやいや、新キャプテンとしての意地を見せたいいレースでしたよ。それにそれを言うならボクもダメでしたと坂道は言う。
その言葉の意味はアナウンスが教えてくれる。

くり返します。残念ながら小野田選手のコースレコードならず。
昨年の総北高校、巻島祐介選手のタイムに34秒およびませんでした。

手嶋「ははっ。やっぱすげーなあの人」
坂道「はい」

届かなかったものの、むしろそれを誇らしいと感じて笑顔を浮かべる坂道。
まあ、最初から完全な調子であれば分からなかったかもしれないんですけどね。
ここで追い抜いてしまうよりは、いつまでも目標としていてくれた方がよいと思われるので結果的にはよかったわけだ。

坂道のトップゴールに沸き返る観客と記者たち。
下馬評どおりではあるが、やはり王者が勝つと盛り上がるって話ですな。
2位に終わった葦木場くんには記者がつくこともなく、離れたところで総北を、手嶋さんを見つめている。

終わった。レース・・・
純ちゃん・・・総北――次会う時も敵同士になるね。次の、来年のインターハイでも。

寂しそうな顔をする葦木場くんでありました。ふーむ。
でもまあ、敵となって鎬を削るってのも悪い話ではないですよ?
その辺りのことは東堂さんがこの上なく熱く語ってくれると思うので、尋ねてみてはいかがでしょうか。
巻島さんのこともそこでイヤというほど知ることができるようになると思いますしね。



RIDE.245 葦木場の道  (2013年 13号)


謹慎が解けて久しぶりのレースに意気軒昂と挑んだ葦木場くん。
恩返しの意味もあり、先輩たちに必勝宣言までしていた。しかし、結果は敗北。
さすがに体力を使い果たしたのか、輪行袋に自転車を入れて電車で帰りながらレースについて想いを馳せる。

総北1年小野田。純ちゃん――負けた――オレ。
久々出してもらったレースだったのに・・・新開さん・・・
次期エースだって期待させといて・・・福富さん――
何て謝りゃいいんだ・・・オレ

さすがにかなり気落ちしている様子ですな。
そんな葦木場くんの目には電車に乗ってきたお婆さんの姿が映る。
お婆さんに席を譲るために立ち上がる葦木場くん。そこでようやく気付く。降りるべき駅を3つも過ぎていたことに。何してるのやら。

その後折り返しの電車に乗ったのか、無事駅まで迎えに来ていたらしき車に乗ることができた葦木場くん。
監督と一緒に来ていた後輩らしき子が苦言を呈する。携帯の電源をちゃんと入れておいてくださいよと。
と思ったら、電池切れてたから家に置いてきたという葦木場くん。おいおい。携帯は携帯してないと意味ないでしょ!!

プッププッ。携帯をケイタイ・・・おまえうまいこと言うなあ

な、何がおかしいのか!?携帯電話は携帯する電話なので携帯を携帯するのは何もおかしいことじゃないでしょ!?
なんとなくわかってはいたが、色々とツボのおかしい子である。
せめて携帯の形態を整えてくださいとか言われてから笑えばいいのに!笑えるかはさておき。

戦闘モードでスイッチ入った時の葦木場さんとは同一人物とは思えませんよと述べる後輩君。確かにつかみどころのない奴ですよね。
でも戦闘モードに入ってもそんなに大きく性格が変わった感じはしませんでしたけどね。

そんな話をしていると助手席の男が葦木場くんに話しかけて来る。そこに座っていたのは――福富さんだ!!

迎えに来ていたのは監督や後輩だけではない。福富さんもまたやってきていた。
車に乗る時も気まずかったという葦木場くん。とはいえレースの結果を報告しないわけにもいかない。ドキドキ。

はい・・・調子は悪くなかったです。アタマにクラシック鳴ってたし、そういう時は調子いいんで途中までは完全に勝てると思いました。
最後1km、総北1年の小野田が追いついたからカウンターでスパートかけて全力逃げきり・・・オレの得意なパターンにもちこんだんです。
でも、するりと最後。抜かれました。

優勝できませんでした。すいません福富さん
その謝罪の言葉は後ろめたさと申し訳なさからか口を開けども声になっていない。パクパク。
福富さんは――オレを救ってくれたのに――

というところで回想。
まだ葦木場くんがその真価を発揮できていなかった頃のお話。
中学の時より一気に身長が10cmは伸びた葦木場くん。しかしその大きさに筋肉量が追いついていない。
おかげで体が安定せずふらついてしまっている様子。うーむ、自転車競技には向いていない体かもしれませんな。
そんな様子なので部活の練習にはついていけず、早い段階で雑用係にされてしまっている。

今は自分でも思う。体が重い。フラつく。なんで身長伸びるんだ・・・練習で部員の誰にも追いつかない・・・
でかいのって・・・なんで縮まないんだ・・・

涙する葦木場くん。うむ、大きい子には大きい子の苦悩というのがあるものだ。非常によく分かる。
そんな葦木場くんに話しかける新開さんと福富さん。
葦木場くんは2人に思いを語る。もういっそ選手やめて、雑用のマネージャーになろうかって思うくらいだと。
ふーむ、練習についていけず、雑用係の毎日。そんな中で「最強」の洗濯係だなんて称号を頂いていちゃあなぁ・・・
微妙に可愛い顔で苦悩を語る葦木場くんに2人は語る。

福富「葦木場。進むべき道は前にしかない」
新開「おまえは何になりたい」

その問いに、戸惑いつつも返答する葦木場くん。

最強の・・・せ・・・・・・選手です

最強の洗濯係ではない。本当の最強。最強の選手となりたい。葦木場くんはそう述べる。
その葦木場くんに福富さん。顔を上げておまえにしか見ることのできない景色を見渡せと告げる。
おまえが今見ているものはおまえにしか見れないものだ。すでに人と違うものをおまえは持っている、と。
それは人と違うその長身のことを指しているのでしょうか。しかしそれは・・・

"不利"――か!?誰が決めた。おまえだ!!
強くなるためには練習しかない。練習とは持っているものを最大限に活かす訓練だ。
それを研ぎ澄ませば見えてくるはずだ。必ず。おまえだけの走りが!!

"持っているものを最大限に活かす"!!
その言葉がヒントになったのか、己の長身を活かす走り方を考えるようになった葦木場くん。
身体が重さでフラ付くのなら、むしろわざと体を揺らせばいいのではないだろうか。
それでバランスも取れるし、かえって推進力となるって話だ。

さらに新開さんと相談して体に合わせたバイクを整える。

新開「キミの好きなものは何だ」
葦木場「ピアノです」
新開「そりゃあいい。だったらそれで走れ。弾むように

ほう。面白いアドバイスをしてくれますな新開さん。独自の走りを身につけるには好きなものを取り込むのがいいって話ですね。
つまり新開さんが食べまくっているのも好きなものを取り込んだ結果ということなんでしょう。食べるの好きそうだもんなこの人。

2人があの日、葦木場くんに声をかけたのはもちろん偶然ではない。
洗濯係になってしまいそうだったのを引き留めるために声をかけたのだ。
ふうむ、福富さんは主将になる前から気遣いのできる人だったんですなぁ・・・いや、中学で既に主将経験あるか。
それだからこそ慕われる人ということなのかもしれないな。

そんな2人の激励により、葦木場くんは化けた。
洗濯係と呼ばれていたのが補欠のBチームとはいえトップに立つ。やりましたよ新開さん!!福富さん!!

この結果を受けて葦木場くんはハコガクのジャージを着て公式レースに出場する権利を得る。
身に着けた力にうかれていた葦木場くん。今なら何だってできると思ってしまった。しかし――現実は違った。

公式レース。さすがに出場している選手は補欠のBチームの連中とはわけが違う。
せっかくジャージをもらったのに、福富さんと約束したのに、勝てない。このままでは――勝てない。
状況が理解できずに頭がパンクしている葦木場くん。何も考えられないようになってしまった。
だから――全てをリセットしようとした

突然逆走を初めてしまう葦木場くん。
ははぁ。スタートからやり直そうぜとか思っちゃったんですね。混乱の極みですなぁこりゃ。
この行動はようするに敵前逃亡に他ならない。
戦って敗れたのならばまだ次があると励ますこともできる。だが、逃亡したのでは次を望むことなどできようはずもない。
真剣勝負にリセットなどあるはずがない。思わずとはいえ、そんな行動を取るようでは処罰を受けて当然である。
なるほど。その結果が無期限謹慎か・・・
普通に敗れるより箱根学園の名を貶める結果になっちゃいましたもんなぁ・・・
まあ、色々と考えさせる意味を込めて妥当な処置だったのではないでしょうか。

そして今日だって。すいません・・・2位でした。また、期待に応えられませんでした。

落ち込む葦木場くん。そこに福富さんの厳しい言葉が響く。

口ばかりだな葦木場。今日、オレはおまえから"優勝した"と聞けると思っていた。

本当にそう思っていたのだろうかね?坂道の強さを知らないわけでもないだろうし、ここはあえて厳しい態度に出ているように見える。
福富さんの考えはどうあれ、葦木場くんとしては絶望的な気分となる。
これで「謹慎」――また走れない日々になる。そうなったらどうやってオレは恩を返せばいいのか、と。

オレに恩を返すんじゃなかったのか。だったら次は勝て
葦木場。一度負けた相手には必ず負けない。それが箱根学園のエースの責務だ!!

――次。
謹慎ではない。次の機会が与えられている。恩返しをするためのその機会が!!
厳しい言葉を受けながらも、その機会を与えてくれたことが嬉しい葦木場くん。泣きながらも笑顔で福富さんの言葉に返事をする。

ふーむ。なるほどねぇ。これが謹慎の理由でありましたか。納得のいく話ではありましたな。
逃げ出したものに次はないが、戦って敗れた者には次の機会は与えられる。スポーツの世界とはそういうものだ。
葦木場くんがその辺りを理解しているかというと、あんまり理解はしていないように見える。
まあ、逃げ出すようなことはたぶんもうないでしょうし、これからは期待通りの活躍をしてくれるかもしれない。
とはいえ、坂道に勝てるぐらいになるかというと難しそうな気がしますが・・・とりあえず頑張りましょうや!!



RIDE.246 スプリンター!!!  (2013年 14号)


8月8日発売の弱虫ペダル29巻にはOAD(オリジナルアニメDVD)がついてくるぞ!!
予約締め切りは6月7日までなので注意だ。
そして公式ファンブックが5月8日に発売決定。描き下ろしまんがも収録されているとのこと。
アニメ化も進行中ですし、2013年は気合の入った年となりそうですな。

さて、本編。

クライマー用のレースの次はスプリンター用レースの番である。
総北の誇るスプリンター田所さん、鳴子、そして青八木さんの3人が出場し、鎬を削っている。
峰ヶ山の時のように箱学の選手が参加するようなサプライズはない。それゆえにこのレースは総北の独壇場となりました。仕方ないね。

1年、炎のスプリンター鳴子章吉。「ワイが勝つ!!」
3年、総北の肉弾頭田所迅。「オレだよ!!」
2年、新世代スプリンター青八木一。「獲る!!」

それぞれにやる気満々な様子を見せている。
スプリンター向けのこの湾岸クリテリウムも最終周回を迎えようとしています。
"クリテリウム"は都市型ロードレース。閉鎖した都市の道路2〜3kmを10数周回して勝負を決める。
重要なのは位置取り、コーナースピード、スプリント力というレースだ。
ふうむ、総合すると30〜40kmぐらい走るのか。それはまた大変な距離でありますなぁ。基本平坦とはいえ。

このレースにかける鳴子の意気込みは凄い。
それもそのはず。ロードレースのシーズンは春先3月から11月
つまりこのレースは今シーズン――最後のレースなんや!!

シーズン最後のレース。つまり今年行われるレースはこれが最後ということになる。ふむ、なるほど。それは力が入りますわな。

手嶋さんは事前のミーティングで"来年のインターハイを見据えた闘い方をしろ"と言っていた。
通常レースは複数人で出走した場合「エース」を決めて、そいつを勝たすために動くものである。
だが、それを全く聞く気がない連中がここにいる。スプリンターってのは全く手に負えませんよね。
ってそれはスプリンター全体にかかる話なんですか?総北の連中が特別なだけなのでは・・・
箱学の泉田君や広島のメガネスプリンターが先輩を差し置く姿はなかなか想像できない。しかしまあ、総北は総北ですからねぇ。

あの3人(バカ)は3人とも自分が勝つつもりだ!!

スプリンターはバカ!!
ふむ、そういう括りになると結構納得がいく部分があるような気が・・・いやいや。

先頭を駆け抜ける総北の肉弾頭。しかしその前に入り込む鳴子。
田所さんばかり先頭引いてたら風をモロにうけて足をつかう。
なのでゴール近くまでは順に引きましょうと提案する鳴子。青八木さんもその提案には賛成の様子。
おや、ちゃんとチームプレイできているじゃないですか。3人とも並列して全員風を受けるという発想はなかったか!!
まあその場合コーナーリングとかで不利になる人も出るから難しいか。

勝負はゴールスプリント。それまでは3人まとまって走ることになる。そしてその勝負の時はもうすぐそこまで迫っている。

無口先輩ここ数か月でメッチャ強なっとる!メッキメキや!!
脚見とってもワカる。あなどっとったら負けてまうレベルにまで強なっとる!!

適性を見つけて一気に成長したって感じですね青八木さん。
気合の入り方が違う。ビリッビリである。しかしそれは鳴子も同様である。それはそうでしょう。なぜなら――

このレースが田所さん3年間の――ワイらと走れる最後のレースなんやから

シーズン最後と言うことはもちろんそういうことになりますよね。
卒業するまでには追い越したいと考えていた鳴子としては譲れないレース。
それはこれまで面倒を見てきてもらった青八木さんにも言えることである。これは力が入る。メッキメキのビリッビリに。

そんな気合の入った総北勢にまるで追いつけない他の高校の選手たち。ちくしょオ!!
と思いきや、遅れてる集団の中に黄色い総北ジャージがありますよ。あれ?って、す、杉元ー!!

ボクを置いて加速していく!?どういうことだ。ボクだって出てるっていうのに!!仲間だというのに!!
同じ総北のジャージを着たチームメイトだというのに!!

うん、まあ時期が悪かったよね。
田所さんの最後のレースですし、面倒を見ている場合ではないからさ・・・しょうがないしょうがない。

ああ、あこがれのインターハイジャージに袖を通して公式戦で走ることになろうとは。この杉元照文、生涯の誉れです!!

ふむ。置いて行かれているのはともかく、幸せそうじゃないですか。これなら問題ないな。
しかしこのレースは3人までとか、そういう縛りはないんですね。
おかげで同じチームで出走する場合は同じジャージを着なければいけないというレギュレーションを受けることができたわけだ。

手嶋さんはミーティングで来年のインターハイを見据えて走れって言っていた。
つまり・・・こういうことですね・・・来年のインターハイの6人目はボクだってことですね!!

なるほどー確かに3年を除けば6枚目のジャージになりますものねー。ねぇよ。
まずはこのレースを時間内完走できるように頑張りましょう。

ところで杉元はスプリンターなのだろうか?いや単にクリテリウムは走りやすそうなので出ているだけなのかもしれない。
何はともあれ経験は必要だし、ひょっとしたら青八木さんのように将来才能に開花する可能性はあるし、レースに出るのはいいことだ。
箱学の偵察にも名前があげられているぐらいだし、ひょっとしたら秘めた力があるのかもしれないなぁ。ないだろうけど。

それはさておき、先頭の3人はついに最終コーナーに差し掛かる。
コーナーは突っ込みと立ち上がりが勝負となる。
ギリッギリの角度で突っ込む。突っ込みすぎたら足をひっかけてミス一発。すっころぶ。際々の勝負!!

ギリギリまで待ってギリギリまでこらえて姿勢が少し戻ったところで、ダンシングで一気に全力加速!!

最後の直線、ゴールまでのこり500mというところで加速を開始しようとする3人。ゴールスプリントだ!!
差はほとんどつかず、ゴールするまで誰が勝利するかわからない状況である。
そこでまず飛び出したのは青八木さん。のこり250mの段階で仕掛ける。

田所さんはオレを、純太を、面倒見てくれた。練習中も、どんな時だって。
折れない心"根性"を教えてくれた。自転車の闘い方を教えてくれた。だからオレは見せたいんだ。成長した証を!!

面倒見よさそうですものねぇ田所さん。社会に出ても逞しくやっていけそうだ。
後輩に対して「ボッとすんな!」「今のところは突っ込むとこだよ!!」とギャグの指導に余念がない。
あ、いやギャグの指導ではないのか・・・?セリフだけ見ているとそのように見えるから困るよ。ラーメン食いすぎだし。

それはさておき。青八木さんに続いて鳴子もゴールスプリントを開始する。

オッサン。オッサンが部からおらんくなって、卒業してしまうなんて、想像できんすわ。
いつも声でかくて、態度でかくて、ゆずるということを知らんで、カッコつけで、強くて・・・!!
せやからワイは、絶対にオッサンを超える!!

今日がその、最後のチャンスやからや!!

吠えて先行していた青八木さんに並ぶ鳴子。
田所さんの前を走る後輩2人。ゴールまではのこり80m。

ガキどもが・・・成長しやがって・・・
青八木・・・鳴子・・・受け継げよ。泥食ってでも進む、総北スプリントスピリッツ!!

今日はやけに汗が出るぜ!!

目から飛び出す大量の汗を掌で拭いながら、田所さんも最後の走りを見せようとする。

さぁて最後の仕事だ!!田所迅!!あいつらに教えてやる。勝って調子のらねェようにな。
この世には超えていかなきゃならねェ巨大な壁があることを!!
青八木。鳴子。強くなれ。もっと、もっと、もっと。総北はおまえらが引っぱるんだ!!

成長を見せようと壁を超えようとした2人。成長を願って超えるべき高い壁となろうとする田所さん。
その勝負を制したのは、田所さん。
同校3つどもえ対決を制しての優勝となりました。さすがですなぁ。
よくみると鳴子は最後ハンドル投げしてるんですな。そこまでしても勝てなかったか。

今までで一番キツイスプリントだったと振り返る田所さん。
それでも後輩にはカッコイイところを見せようと親指を立てたりするが、思いっきりイヤそうな顔をされる。

鳴子「おとなしくバトン渡すとこちゃうんすか今のは!!」
田所「オレはだなおまえらのことを思って。なァ青八木」
青八木「・・・」
田所「何とか言えー!!」

全く賑やかな奴らである。
ともかく、このレースは見事に総北が表彰台を独占。
田所さんは最後のレースで見事な有終の美を飾ったのでありました。
金城さんと感動の抱擁を交わすシーンもあり、部員は拍手でそれを見守る。そんなシーンを写真にとってるのがいるがどうするのだろう。
ちなみに杉元はちゃんと完走できた様子です。良かったね。

田所さんは鳴子と青八木さんに思い出にのこるレースになったぜと言葉を贈る。

ありざした!!

その言葉を受けて素直に頭を下げる2人。おや、最後らしく素直ですね。
と油断させておいてから、両の脇腹にそれぞれスペシャルさよならパンチを決める2人。
うむ、やはりこいつらには湿っぽい終わり方は似合いませんわな。
最後までドタバタしながら全員足をつらせるというオチ。ハハハ。
スプリンターってのはやっぱりバカという括りになってしまうのだろうか・・・?

既に時期は11月。となると3年生は受験勉強も忙しい時期である。
レースだけではなく部活に顔を出すのも難しくなってくるでありましょう。
まあ金城さんはなんとなく勉強も効率よくできそうなイメージがあるからギリギリまでいけそうな気はするが。

何にしても練習のメンツが減るのは強度的に問題である。
そう心配するところに杉元が手をあげて提案する。
知り合いの中3の子が自転車をやっているのだが、その子を連れてきてもいいですか?とのこと。
ほう・・・これは、6人目のレギュラー登場の流れになるか?

将来はわからないが、今の杉元に6人目を任せるのは不安が大きすぎる。
古賀先輩などの他の2年生も余り期待はできないし、やはり次の新入生に期待したいところですわなぁ。
全国一になった高校なんだし、新入生のレベルには期待が持てると思うが、はてさて。

なんでもいいが、鳴子の言葉遣いは独特というかなんというか。
メッキメキだのビリッビリだのギリッギリだのと。そんなに小さなツが好きなのかッッ!?
将来ムッキムキのビッキビキになってガハッガハッと笑いたいとかそういうことを考えているのだろうか。有り得る話だ。



RIDE.247 新・総北  (2013年 15号)


新生総北の5名によるカラーページ。
巻島さんはいないものの青八木さんの金髪のおかげで派手さはむしろ上がっているぜ!!
それはさておき、やはり5名しかいないのは問題である。6人目のメンバーを早く確定させたいところだが・・・?

その候補となりそうなのが、前回杉元が言っていた知り合いの子。どのような選手であろうか。
と思っていたら、さっそくのしのしと総北高校自転車競技部へやってくる学生服の男の姿があった。これが・・・!?

さすがにIHを制した全国の強豪校の部室を前にして緊張を隠せない男。
和らげるためにとりあえずお母さんが握ってくれたおにぎりを食べることとする。
ラップで包まれているとはいえポケットにおにぎりを入れておくのはどうなのだろうか。潰れるぞ。

よし。よし。OK!これならOK。せーの、いただきます!!

扉に手をかけ、そんなことを言いだす学生服の男。
食べ終えてからいただきますとはどういうことなのか。
ちゃんと食べる前に言わないからそういう間違いをやらかしちゃうんだよ!!

それはさておき、時間は少し遡って教室での坂道のシーン。
帰ってすぐ寝ちゃったから数Iの宿題ができていないと焦る坂道。
そこに声をかけてくるのは寒咲さん。なんだか日常での会話ってかなり久しぶりな気がしますな。

今回話しかけてきたのは寒咲さんが用事があるというよりも、その友達のアヤちゃんの方に用事があったかららしい。
アヤちゃん。6組テニス部の橘綾さん。寒咲さんのお友達。
初期からずっと友達として出番やセリフはあったが、フルネームが出たのはこれが初めてじゃないか・・・?
さすがに坂道もほとんど記憶していない様子。アヤちゃん自身はソコソコ話していたと言ってはいるが、まあ仕方ないな。

ていうか・・・おめでとう
私、べつに自転車詳しくないけど幹にいろいろいつもきかされてるからさ。
すごい大変なのくらいはわかる。それで優勝ってやっぱスゴイと思う。

ちょっと早口で捲し立てるアヤちゃん。照れてる照れてる。可愛らしいことですな。
あの頼りない感じの坂道が優勝したと聞き、新学期に入ったらねぎらってあげないとと思っていたらしい。
が、今までけっこう冷たくしてたから行きにくくて今日まで延び延びになっていたらしい。
気にしなくても、冷たく扱われていたこと自体ほとんど覚えてませんでしたのにね!!

今日だってやっと来たの。ああ見えて照れ屋だから、中学の時も好きな男の子にね・・・

ペラペラと喋り出す寒咲さん。なかなかに口の軽い子である。
しかしそうか、自転車バカな感じの寒咲さんも友達の恋愛を聞いたりするぐらいの経験はあるのか・・・
それが経験と言えるのかはさておき。

教室内でIHの話をしていたので、坂道と同じクラスの杉元が近づいてくる。
相変わらずマイペースに自分語りを始める杉元。ゆかいな奴である。
寒咲さんの評価はとっても働き者よ、とのこと。ふむ、マネージャー的な活動は評価されているみたいですな!!
坂道に宿題を教えたりと、関係ない所での活躍は見事なものである。

まあ、杉元はさておいても、まだ1年には今泉君や鳴子といった凄い選手がいる。
これは自転車部も安泰だねと呟くアヤちゃん。しかし寒咲さんは浮かない表情で・・・

同じように浮かない表情をしているのは今泉君。
昼休み、話があると鳴子の前にやってくる。

3年生が――巻島さんが外国行って、田所さんと金城さんが部活に来なくなって、手嶋さんとオレ達だけの練習が始まって。
おまえも感じてるだろ・・・"痛感"してるだろ。3年生の抜けた穴のでかさを!!

手嶋さんたちは十分すぎるほどに強くなってくれている。
だけど、3年生がいたときよりも練習強度が下がっているのは紛れもない事実。
今泉君たちはインターハイに出たことで理解している。インハイのすさまじさ、レベル、過酷さを。
それが肌でわかってしまっている。だから言える。このままなら――オレたちは来年勝てない
ステージでの一勝やスプリント賞や山岳賞といったカラーゼッケンの取得も危うい。と。

確かにその通りかもしれない。だが、先輩がいなくなってしまうのはどうにもならないことである。
それならば練習を積み重ねるしかないのではないだろうか。しかし、今泉君はある提案を鳴子に投げかける。

鳴子。おまえはオレと同じオールラウンダーになれ。スプリントを捨てて。

おっと・・・そう来ましたか。
3年生が帰ってこないのならば、自分たちが変わる必要があると今泉君は言うのですな。
とはいえ、スピードマンを名乗る鳴子が簡単にそれを受け入れるはずはない。憤る鳴子。しかし今泉君は冷静に語る。

今、オレたちのチームにはゴールを狙える奴が少なすぎるんだ!!
ロードレースはゴールを獲る競技だ!!
おまえが今から調整すればインハイには間に合う。平地の練習の時間を減らして山を登れ。脚質を完全に入れ替えろ。

まあ、そういう段階から変えていくしかないですわな。
現に鳴子は山での練習をインハイ前に行い、そして実際にインハイでその片鱗を見せている。

スプリンターなのに登った。普通できることじゃない。
登れる。センスがある。体も軽い。ゴールへの嗅覚も備わってる。やれ!!

ゴールを獲れる人間は凄く目立つ。そんな気はする。
のだが、やはり鳴子はスプリンターという仕事に拘りがある様子。今泉君の提案を撥ねつける。
ふうむ。面白い提案ではあると思うのだが・・・これは、どうなるかなぁ。

さて、放課後。
部室へと向かう坂道と杉元。時間は冒頭の展開へと繋がる。
そう、謎の学生服がいただきますと言いながら扉を開けようとした場面にだ。
どうやらカギが閉まっていたのを知らずに勢いよく開けようとしてドアを外してしまったらしい。どういう力やねん。

やってきたのは・・・でかい男!!でっか!!
やはりこの男が前回杉元が言っていた知り合いの子でありますかぁ。ふむ。
えーと、名前は杉元定時・・・何?杉元?
何が知り合いの子だ。弟じゃねーか!!

まさかの杉元弟。乗っている自転車も兄と同じくコルナゴっぽい。
ふうむ。ようやくコルナゴ乗りで活躍できそうな選手が出てきたという流れか・・・?

箱学に続き、総北にもでっかい子が現れた。これはでっかい子ブームが来る流れなのか!?俺得。
いや、新総北は割と小柄な連中が多いので平均的なことを考えるとでっかい子が加わるのは自然な流れかもしれないな。

あだ名はたぶん「オムスビくん」だなと決めつけられる定時くん。
声もデカくカラオケではマイクも要らなさそうな子である。
果たしてその走りはどのようなものであるか。田所さんに代わるスプリンターポジションとなるのか?
走りいかんによっては鳴子がスプリンターの席を譲って自分はオールラウンダーに移るという話もありえるかもしれないが・・・?
ともかく、実力を見てみたいところですな。
ここまできて棒にも箸にもかからない実力だったら驚きだが。
いやでもしかし、杉元の弟だし・・・う、うーむ。照兄ちゃんと一緒にレース走るのが夢とか言っているのも危ういぜ!!



RIDE.248 杉元・弟  (2013年 16号)


やってきた期待の新人は杉元・弟。
現在は東中の3年。学年で一番でかくよく食べる。素直でいい奴とのこと。
見た目の印象を外さない奴だな。杉元に似てるかどうかというのは・・・まあ、さておき。

運動部で初めてできる後輩に別の意味で期待していたのは坂道。
可愛い後輩を教える先輩の図とか、誰もが想像することですよね。わかるわかる。
ちょっとイメージ違ったな・・・とか言ってはいけない。

杉元定時。その巨体に見合った怪力は凄まじい。
駐輪場の重たいママチャリを事もなげに片腕で一台ずつ持ち上げ、鉄アレイのごとく上下する
バカめ!!実際にやろうとすると前輪が左右に動いて痛いことになるぞ!!とまるで経験者のように語ってみる。
まあ、何にしても凄い怪力であるのは間違いないですな。
コンクリートローラーも凄い速度で引いてみたりするぜ!!

自転車とはあまり関係ないが、とにかく力は凄い。そして声がデカイ。坂道としては苦手そうな後輩に思える。
しかし、せっかく後輩になるかもしれない子が来たのだし、あたたかく迎えてあげないと思い直す坂道。せんぱいとして!!

だが、その心配は杞憂に終わりそうである。
定時くんは坂道に近づき、小野田さんですか!?と自分から声をかけてくる。初めての"さん"づけに喜ぶ坂道。ハハハ。

お兄ちゃんからいろいろ聞いてボク、小野田さんの大ファンなんです

ほほう。杉元は家でそんな話をしておりますのか。
自己顕示欲の強い面倒くさい子だけど、誰かを悪く言う子ではないからなぁ。
その代わり誰かの成果に後乗りをする子ではあるのでやはり面倒くさい。

小野田さん、小さいですね!!想像してたよりうんと小さい。なのに強い。カッコイイです!!

面と向かって褒められて赤面する坂道。
どんな姿形であろうと、慕ってくれる後輩と言うのは可愛いものでありますわな。

ボク、もし総北受かって自転車部入れてもらったら、小野田さんみたいな意外性のある選手になりたいです

そう語る定時くん。意外性か・・・難しいことを言ってくれる子であるな。
頑張ろうとするなら、その巨体で坂を駆け上がるとかそういう方面でないと意外性は薄いと思うのだが。
いっそ、自転車を抱えて走ってみせてはどうだろう。意外にそっちの方が速いとか。さすがにないわな。

さて、さっそく練習に行きましょうと声をかける杉元。今日は峰ヶ山コースである。
王者の練習に参加できるぞ、よかったなと弟に言う杉元であったが・・・

オレはそれは反対ですよ

ジャージを着ながら今泉君登場。おや、なんだか厳しい表情ですな。
今泉君は部室から3本ローラーを持ってきて、これに乗れと設置する。

おまえを試す。オレたちは1日1日を惜しんで練習してる。遊びでやってるわけじゃない。
もしこれに乗れない程度なら、練習には参加させない。

ふうむ。やはり厳しいですな今泉君。
まあ、3年生が抜けた穴の大きさを実感して余裕がなくなっている時期ですしね。
間の悪い時に来てしまったということであろうか。

ともかく、定時くんは言われた通りに3本ローラーに挑戦する。乗る自転車は兄と同じコルナゴ。
それはさておき、ジャージのロゴのSUGIMOTOが気になる。特注?自己顕示欲が強いのは兄譲りなのか!?

チャンスは一度だ。失敗したらすぐ帰れ。

さらに厳しい注文をする今泉君。これはキツイ。そもそも杉元は今3本ローラー乗れているのか?

たった一度のチャンスをものにできるか――ロードレースにおいてそれは重要なポイントだ。小野田はそれをやってみせた。

確かに坂道は一発で成功させた。同じそれを期待するというのか・・・!?
意外に今泉君は誰よりも新人に対する期待が大きいのかもしれない。
練習にいい変化をもたらしてくれる存在を欲しがっているように思える。

実は一度も3本ローラーに乗ったことのない定時くん。
しかし、今泉君が貸した一度という言葉で集中力が増したのか、見事に乗りこなして見せたりする。ほほう。

というわけで、主将である手嶋さんは1回くらい様子見てやってもいいんじゃないかと今泉君を説得。
今泉君もそれを認め、ようやく定時くんも練習に参加できるようになりました。
ところで定時くんの自転車の実力の方はどうなのかね?

ええ。大丈夫です。何せ――ボクが手取り足取りロードのイロハをたたきこみましたから

え!?
なるほど・・・その結果がこれか。まるでレギュラー陣についていけない定時くんでありました。
というか、杉元と同じ速度ではなんともはや。パワーはどうみても兄よりあるのになんでまた。
ああ、なるほどフォームか。効率の悪いフォームなので力がうまく自転車に伝えられていないんですな。

ローラーに乗る才能はあっても自転車はダメだったなとため息をつく今泉君。
坂道はひょっとしたら得意分野は登りかもとフォローする。
のだが、やはりそんなことはありませんでした。登りも杉元と同じフォームで同じ速度。んぎーっ。

スポーツの世界じゃ同じ競技で兄貴より弟の方が優れてるなんてよくあることだが――
兄貴ってお手本がいて小さいころから同じメニューやってるから。今回は違う例だな。

なるほど。つまり参考にするお手本が悪かったから引きずられたという話であるか・・・なんか酷い話だ!!

とはいえ、人のいい坂道。せっかくできそうな後輩に気を使わないはずもない。
苦戦している定時くんの横について登る時の走り方を指示する。
しかし坂道も今まで人に走り方を教えたことがあるわけでもないし、口ではうまく教えられない様子。おやおや。

ムダだな。あいつに何か仮に能力があるとしても、兄貴とシンクロする能力ですよ

今泉君の言う通り、定時くんのシンクロ能力は凄まじい。
シューズの履き方、自転車の乗り方、ヘルメットの被り方、声掛けまで兄と一緒だという。何だそりゃ!!
これはこれで意外性があると言えなくはないな。
しかし、ここで手嶋さん。ある可能性に思い当たる。

仮に・・・それが本当に能力だとしたら・・・兄貴じゃなくても・・・?

ハハハ。そんなまさか。
ではなんですか手嶋さん。横に並んだ坂道とシンクロしたら坂を凄い勢いで駆け上がるとでも?
うん。ありそうだな

よもやのシンクロ能力者の登場。これは・・・練習には色々と使えそうですね!!
体格的に苦手そうな登りで坂道並の走りができるとしたら、平地ではどれだけの速度が出せるのか・・・楽しみな話である。
平地と言えば鳴子はどうしたんだ?登りの練習を嫌って別のコースに行っているんだろうか。
それよりも気になるのは他の2年生や1年生はどこに行ったんだろうかということ。辞めたのか・・・?

杉元のフォームが悪く、それとシンクロしちゃうのが問題という定時くん。
なるほど。3本ローラーの時はお手本がいないから上手く行っていたわけなんですね。
プレーン状態の定時くんの走りは素直な効率のいい走り方なのかもしれない。
しかし・・・1年近く自転車部に在籍しているのにフォームを矯正されない杉元とは一体!?
巻島さんが矯正されるのを嫌がったエピソードがあったので、杉元にも自由にさせちゃったとかそういう話だろうか。
ならば、杉元もフォームを矯正すれば伸びる可能性が・・・可能性だけはあるかもね。うん。



RIDE.249 3分間  (2013年 17号)


練習に参加したいとやってきた杉元の弟、定時くん。
しかしフォームの悪い兄とシンクロしてしまうためか平地も登りもまるでダメな走りとなっている。
坂道は頑張って指導をしようとするが、今泉君は早々に見切りをつけてしまった様子。しかしその内心は――

こういう気持ちだったのかもしれないな。
下から新しいメンツが入ってきて、その中からひと握りでも。せめて、どうにかインターハイで使えそうなヤツが出てきてくれと。
そうしたら自分たちの意思が通じるかもしれないという胸をしめつけるような「願い」にも似た感情――
そういう風に感じてましたか。金城さん、田所さん、巻島さん――

やはり今泉君も新たな戦力の可能性に期待をしていた様子。事前テストなどの厳しい条件を付加したのもその期待からでしょうな。
だからこそ、そういう期待をした分、結果が出なかったことへの落胆はかえって大きい。他の誰よりも。

オレたちのプレッシャーの中で3本ローラーに一発で乗り、恵まれた体格があった。
だけど走らせてみたらスプリントも登りもダメ。結果はオールアウトだった。

行くぞ小野田。残念だが、そいつは置いていく。つき合ってる時間はもう、ない

坂道にそう声をかける今泉君。
相手にしているのは全国である。見込みのない選手の指導に時間を費やすわけにはいかない。
まあ、正論といえば正論ですな。そういうのは選手じゃなくて指導者がやればいい話である。
つまり監督が真面目に部活に出てくればという話に繋がるのだが・・・今どこにいるんだろう、あの人。

ごちそうさまでした。

ペコリと頭を下げる定時くん。何!?いただかれた!?いや、間違えただけか。どれだけ食事のことばかり考えてるの、この子。
ともかく、小野田さんと一緒に走れて楽しかったですと定時くん。
頭を下げ続ける様子にすまないと思いつつ、何もできなくてごめんと詫び、先に行く坂道。ふむ・・・

その頃、先頭を走る今泉君に並走する手嶋さん。
手嶋さんは今泉君に指示する。あのオムスビと3分だけ走ってこい、と。3分とはまた短いな・・・!!

定時くんは体は大きくパワーもある。ローラーにのるバランス感覚も持っている。けど自転車は遅い。それは何故か。
答えはフォーム。兄である杉元のフォームを丸真似しているからである。
杉元は特別下手じゃないけど力の逃げるフォームをしている。
ここ一番でパワーが出ないとロードは置いていかれる。千切れるのはそのせいであるとのこと。
ふむ、それが分かっているなら杉元くんのフォームも改善してあげればいいのに。
これまでの練習で指導されなかったのだろうか。指導者は何をしているんだ!?本当に何をしているんだろう・・・

じゃ、フォームが改善されれば?

そう切り込む手嶋さん。そりゃフォームがよくなればパワーは自転車に伝わり、文字通り加速的に速くなるでしょう。
しかしフォームなんて簡単に直るものではない。少なくとも3分では。

そうか?おまえならできるんじゃないのか。
おまえが言ったんだ。あいつにはシンクロする能力があるって。
試してみろ。それは"可能性がある"ってことだ
そうやって連れてきたんだろ。このチーム総北におまえが!!うちのさ、超級エースクライマーを!!

ふむ・・・言われてみれば確かに。
坂道を引き込んだのは今泉君の超ファインプレーであった。つまり今泉君には青田買いの才能が、可能性が・・・!?
それにしても久しぶりに見る初期今泉君はやはり別人のような顔つきでありますなぁ。

手嶋さんの言葉に従い、定時くんの横に並ぶ今泉君。目を合わせることもなく、淡々と告げる。

でかいの。チャンスは一度だ。ダメなら帰れ。
兄貴に教わったロードのイロハ。全て忘れろ。(杉元「ん。何だいそれは?」)
あの小さなメガネの男、あいつのフォームをそっくり真似て、全力で追いつけ

定時くんの尊敬する坂道のフォームを真似る。その課題は嬉しいものである様子。
杉元もその課題なら大丈夫だよと太鼓判。なぜなら彼は人一倍のみこみが早いから!!

それに部室にあった1年生レースや合宿のビデオ。こっそり持ち帰ってダビングしたDVDを定時はくり返し見てるんだよ。

ははぁ、さすがにシンクロするにしてもそういう下地は必要でありますか。
初見で少し見ただけの走りを真似できたら可能性どころの話ではなくなる。

坂道の登りを真似するべくフォームを変える定時くん。その瞬間立ち昇るプレッシャー。ズンッ!!

小野田さん!!小野田さん。小野田さん!!

ぐるぐると真似たフォームでペダルを漕ぎ出す。
するとどうだろう、一瞬のうちに坂を駆け昇り、先行していた坂道に追いついたではないか!!
まあ、体力は中3レベルなのでその走りは続かずに並んだところで倒れてしまうわけであるが。
いや、考えてみると坂道もよくコースアウトはしていたな・・・そこも真似たというのか!?まさかッ!?

追いついた・・・!!言われた通り、一瞬だがみごとにフォームをコピーしやがった。
たった一度のチャンスを二度もモノに。偶然か・・・じゃないとすれば――

驚く今泉君。その背中を叩き、声をかける手嶋さん。

笑えよ今泉。後輩がうまくできたらほめてやるモンだ

ふむ、その通りですな。さすがに主将である。手嶋さんは教育というのがよくわかっている。
む、そう考えるとこの指示は将来の主将候補である今泉君への教育も兼ねているのか?
というわけで、指示に従い定時くんを褒める今泉君。フクザツな表情で。どきーん。これが今泉スマイル・・・!!

今泉「ムリっスー!!ムリっス。オレあんま人ほめないから!!」
手嶋「意外によかったぞ。ははは」
定時「今、ボクはほめられたの?おこられたの?兄ちゃん」
杉元「ボクにもわからない!!」

なんともはや。今泉君も将来のための指導力を今のうちに手嶋さんから学んでおく必要がありそうですな。
手嶋さんはその辺が上手いというか、笑顔が洗練されているように感じる。
考えてみると厳しめの今泉君と要所できっちり褒めてくれる手嶋さん。
ムチとアメがきっちり振り分けられていて、次の新入部員としてはありがたい環境が整っているのかもしれない。
指導者である監督が不在であるが、この2人がいれば問題ないですわな!!監督がいなくても。いなくても!!

それはそれとして。定時くんの件とは別に手嶋さんには気にかかることがある。
それはこの場にいない男――鳴子の件である。どうやら鳴子から相談を受けていた様子の手嶋さん。

今度の3連休、部活休ませてもうてええですか。
迷ってます。何が自分にとって正しいのか。進む道みたいのに。
すいません・・・ひょっとしてですけど。ワイ、スプリンターやめてもええですか

悩みを抱えた鳴子の衝撃発言。ほほう・・・!!
今日の練習に参加していないのもそういう理由か・・・ん?今って連休だっけ?
部室に来る前は皆制服姿だった気がするのだが・・・?学校内に入るには制服着用でないといけない規則があるのかもしれない。ふむ。
実はこの辺りの時系列がよくわからない。
鳴子が手嶋さんに相談したのはいつなのか。今泉君から登れと言われた日の前なのか後なのか。
前ならば、自分で考えたことだけに悩みは深いものとなりそうだが、今泉君の言葉が後押しになる可能性はある。
あの場は意固地になっただけと考えれますしねぇ。

次号は連載250回記念のセンターカラー
悩みを抱えた鳴子の取った行動とは何であるか。ふむ、気になる話ではありますな・・・!!



RIDE.250 大阪  (2013年 18号)


連載250回記念センターカラー!!

今回は物語の舞台である千葉から遠く離れた場所で展開されます。
東京から西へ国道一号線を560km。
かつての交通の要所東海道をたどり行き着くのが京都から淀川を下り、古く難波(=浪花)とよばれ天下の台所として栄え、
西に瀬戸内海、淡路島。東に生駒山地など豊かな自然に囲まれた、豊臣秀吉により城下町として整備された商人と町人文化の町。
そう、大阪である

おいおい何も変わっとらんやないかい。道頓堀にあめりか村に大阪城!!
来たで!!戻って!!この空気、このハイテンション、最高や!!ワイの生まれ育った町、大阪や!!

嬉しそうな鳴子。取りあえず1年も経ってないだろうに変わるわけないだろとツッコミ入れておくか。大阪らしく。
それはさておき、ここで回想。前回の最後の場面の話となる。
手嶋さんにスプリンターを辞めるかもしれないと言い出す鳴子。さすがにこれは穏やかではない。手嶋さんも慌てる。
チームの構成に大きく影響することだし、何より鳴子はスプリンターとして田所さんからバトンを渡されている。
それを放り出すようなことを簡単な気持ちで言うはずがない。何を悩んでる?と問いかける手嶋さん。

スカシに――スカシに言われた一言に――

おっと、やはり今泉君に言われたことで悩みだしていたんですな。
まあ、さすがに自分からスプリンターを辞めようなんて考えるはずはないか。
ともかく、そのことは口に出来ず、何も聞かずに3日間休みをくださいと頼み込む鳴子。

すいません手嶋さん!!今、全部喋って答えなげかけたらワイ、気持ち切れそうで――

ふむ。鳴子は悩むにしても全力で悩む男であるわけだな。
原点に戻って考え直すために1度大阪に戻ろうと思っている様子。
他人に相談できないほど重たい悩みをなんとか自分で答えを出そうと考える。不器用で意地っ張りな奴だ。鳴子らしくはあるがね。

というわけで、手嶋さんの許しを得て大阪へ帰ってきた鳴子。
家族ごと引っ越しては来たが、ばーちゃんの家は今も大阪にあるらしい。なるほど、泊まる所はあるわけだな。
しかし遠路はるばるカワイイ孫が帰ってきたというのに、ばーちゃんは家にいない。
代わりに近所のおばさんとその子供たちに捕まる。騒がしいことだ。

さすがに大阪までは輪行袋に入れて運んできた自転車。家に来るまでには組み立てて走ってきた様子。
その赤くて派手な自転車を見つけてハシャグおばさん。これがインターハイで活躍した自転車なんやねー。

凱旋帰国を果たした鳴子に話をいっぱい聞かせてもらおうと言い出すおばさん。

なんせ章吉くんは派手でナンボ!!昔から変わらん。浪花イチのスピードマン。"スプリンター鳴子章吉"くんやからね!!

地元の大阪で名を馳せたスプリンターである鳴子。
帰ってきたのならばその勇名は否が応でも耳にすることになる。
そのような状況でオールラウンダーへの転向を決めることなどできるのだろうか・・・?

「スプリント」を捨てて・・・アホか・・・アホかスカシ。軽々しく言うなボケ・・・
スプリンター・・・速くて派手で、最速でコーナーかけぬけて、誰よりも速く景色を抜き去って、
登りをコツコツ登る地道なクライマーとは違う、華やかで完全一発勝負の世界。
それがスプリンター・・・ワイのあこがれてきた世界。
ワイが、進むと信じとった、道。簡単に捨てられるわけないやろ

幼い頃から歩んできた道を変える。これは確かに大きな決心のいる話である。
スプリンターとして通用しないのならまだしも、チームの都合で変わろうとしている。これは確かに納得はし辛いか・・・
なまじ自身が登りも才があるところを見せてしまっただけに出来るわけないとも否定できないし、厄介なことになっている。
しかし鳴子、クライマーのことそんな風に思ってたんですね。巻島さんや山岳の登りはやたらと派手だったがなぁ・・・

悩む鳴子。それはそれとして、凱旋帰国パーティーの始まりである。
ジャージもきっちり持参してきていた鳴子。赤いピナレロ担いで派手に活躍をアピールする。よっ。赤い男!!

てな風に騒いで眠りにつく鳴子。1日目はほとんど騒いでいただけで終わりそうでありますな。
しかし眠る前に翌日のことを考える。いってみるか・・・明日・・・ワイの原点。

ここなら何かをつかめるかも知れん!!

やってきたのは自転車が思いっきり走れるレース場のような場所。
港の車進入禁止の元倉庫のまわりをぐるりと囲むアスファルト。
消火栓の標識の下をゴールと定め、自由に走ることのできる空間。
ここには大阪のスピード自慢達が集まるのである。

ここで毎日草レースして、スプリントを覚えた!!
ここがワイの原点!!ここで初めてロードに触れた!!ワイのホームコースや!!全てのはじまりの場所や!!
コースは1周600m。250mのストレートとクランクがひとつ。
海風と闘いながら、利用しながら、かけひきとカンと技術を駆使して勝利をつかみとってきた!!

かかってこい!!闘いの中から、いつだって答えは出る!!騒ぐわ!!ワイの赤い血が!!

煽り立てるように集団の前に走り出て速さを見せるける鳴子。
わざわざそうしなくても、総北のジャージを着ているだけでさすがに注目度は満点である。
先のインターハイで王者となった総北。その中に大阪から来た赤いアタマのスプリンターがいるというのも評判になっている。
つまり鳴子は既に全国で有名な存在となっているのだ!!
だからすぐに勝負をしようと申し込んでくる者も現れる。願ったり叶ったりな話ですな。

ワイは阪台付属高自転車部きってのスプリンター柿本竜大人呼んで六甲おろしの竜!!

毎度思うが、こういうのは誰が名付けているのだろうか。
有名人なら雑誌記者が適当な異名をつけたりするかもしれないが。自称で名乗ってる人とか多そうだなぁ。
まあともかく、勝負の開始である。

ここで負けるようじゃスプリンター失格。返上や!!絶対勝つ!!

大阪では負けなしという柿本と勝負を始めた鳴子。
しかしここにいる猛者は柿本だけではない。奈良のジャージを着た男がこの場にはいる。

オレは総北172番田所を一度抜いた男、奈良最速の灼熱のスプリンター。
奈良山理学園の大粒健士!!仏のカオも三度までだ。オレがひねってやろう!!

ゲー!!まさかの大粒さん!!
インターハイの2日目、弱っていた田所さんを抜いたけど坂道に追い抜かされた男ではないか!!
そんなしょうのない男だけど、1度田所さんを抜いたことを誇らしげにしているのは何だか可愛い。
というかちょっと太ったんじゃないですかね大粒さん。まさかの再登場、地味に嬉しいよ・・・

しかし、注目は大粒さん自身ではなく、その口にするセリフ。
このコースは近頃有名になっており、近県からスピード自慢のスプリンターたちが集まってきているという。
奈良・・・神戸・・・滋賀・・・そして京都からも

京都・・・京都だと・・・!?
まさか、ここであの男が登場するというのか・・・!!
と期待させておいて水田くんが出てきたらどうしましょうかね。許されない。辻さんだったら・・・ギリギリ許す!!
いやその2人はスプリンターじゃなかったな。さすがにその外し方はないか。
やはり御堂筋君の登場を期待するわけであるが、今はどのような状況になってるのかねぇ京都伏見。
石垣さんが卒業した後の京都伏見の状況は凄く気になっているのでそこの描写は早く見たいところである。
新開さんにも勝利した御堂筋君なら鳴子を負かしてスプリンターを返上させることもできるやもしれませんしね。楽しみだ。



RIDE.251 自転車異種格闘技場!!  (2013年 19号)


港のすぐそば。大阪のこの草トラックコースはワイの原点。いつだって答えは闘いの中にある!!

生じた迷いに答えを見出すには闘うのが一番と考える鳴子。うーむ、若いスポーツマンらしい解決法ですなぁ。健全だ。
というわけで、阪台付属の柿本と勝負を行うこととなりました。

勝負は3周!!この柿本いう男、コースで負けなしいうのはホンモンみたいやな。ワイの加速にキッチリついてくる。

インターハイではお目にかからなかった男だが、実力者であるのは間違いない様子。
まあ個人はともかく、メンバーの戦力が揃っていないと全国に出るのは難しいでしょうからねぇ。

この草レース場では勝負しているヤツがいた場合、内側を開けるのがルールとなっている。
なるほど。そういう規則というか暗黙の了解があるんですな。
と思ったらいきなり外側を疾走しだす勝負中の2人。せっかく内側を開けようとしてくれているのに!?

それはさておき、早くも勝負は3周目。最後の周回となる。
ここで鳴子の前に出た柿本。勝負をキめるためにアレをやる気だ!と騒ぎ立てる観客。さすがに大阪は観客も盛り上げ上手だ。

さすがやな総北、鳴子。すさまじいスプリント力とコーナーワーク。さすが全国レベル!!
けど、ここは草レース場。何でもアリの自転車異種格闘技場(バーリトゥード)や!!
見せてやろう。オレの本当のアダ名"夜の六甲おろしの竜"その真髄を!!

そう述べてハンドルに設えられていたスイッチを押す柿本。
何だ?今泉君のようにスイッチ式のシフターでもつけているのか?いや・・・これはそんなシロモノではない・・・!!
出たァァ!!夜の六甲柿本スペシャル!!

驚いとるか。無理もない!!ワイは速い。その上、光る!!
そう。まるで六甲山から見た神戸の町なみのごとく!!その価値100万$!!
大阪なのに神戸!?近い!!近い!!そんな細かいこと言いっこなしや!!

な、なるほど。柿本のスイッチはスポークのLEDを発光させるためのものだったのか!!しかも七色だと・・・?びっかー。
公式レースでは許されないかもしれない装飾だが、ここは草レース場である。このぐらいのことは許される!!

いやあ、何が飛び出すかと思ったらなぁ・・・間違いなくバカだろこの男!!
大阪なのに神戸?の部分も先んじて自分でツッコミ入れてやがるし。バカなくせに気が回るとはな!!
これにはさすがの鳴子も呆れるしか・・・

カッコエエー!!

あかん。こいつもこういう方面ではバカだった!!何を目をキラキラさせているのか。
柿本は光ったままフル加速でゴールへ向かうのだが、見とれて動き出しが遅れる鳴子。何やってるんだか。

どんな状況でも勝つ!!インハイで身につけてきたこの感覚!!
絶対勝つ!!ていうかこの場合、ワイより目立つヤツに勝たせてたまるか!!

遅ればせながらフル加速を開始する鳴子。まあ、派手一番な鳴子としてみれば譲れない点でありましょうな。
柿本は後ろからのびてくる鳴子に気づかずにゴール手前でガッツポーズ。
なんてことしているから直前で追い越されて敗北することになる。ダメな目立ち方だ!!
まあ、思ったよりも面白い奴でしたよ柿本さん。

インハイ1位、王者校のスプリントを見せつけた鳴子。
しかしこの草レース場には、それを目撃しても怯まずに挑戦してくる猛者がまだ存在している。

総北、鳴子。次はオレが相手だ!!
久しぶりだな・・・インターハイ以来だ。
奈良、山理学園灼熱のスプリンター。大粒健士!!仏のカオも三度までだ!!

正直、誰!?
勢い込んでやってきた大粒さんであったが鳴子の記憶には残っていない様子。まあ、あんまり絡んではいませんでしたしね。
読者としてはそれなりに記憶に残っている男ではあるが、この扱いは妥当だとも思えてしまう。
でも一応年上っぽいので気を使って誰?とかは口に出さない鳴子。意外と気の利く子だ。

オレが使うバイクはコレだ。

大粒さん自身には覚えがないが、その取り出したバイクが何であるかは一目でわかる。鳴子の顔色が変わる。

ヨーロッパで盛んなトラック競技!!そこで使われる名門フランス、ルック社のトラック競技専用のピストバイク!!
ギアさえ排除!!軽い!!強い!!強さは鋼鉄のよう。しなやかさはムチのよう!!
ただひたすらに平坦を速く走るためだけに造られたバイクだ!!
えぐられたチューブ(フレーム)!!トラック専用の超軽量ハンドル!!
そいつにオレのこのスプリント用に鍛えぬかれた丸太のような脚を組み合わせたらどうなるか!!
化学反応ってのは純度の高いもの同士でやると、ミラクルな結果が出るんだ!!

ほほう。ここでピストバイクが出てきましたか。
聞くところによるとブレーキすらついていないという話らしいが・・・
直線だけならともかく、コーナーもあるコースでどう走るんでしょうなぁ。最近はブレーキつきのもあるらしいけど。

来いよ総北スプリンター!!
勝負は3周だッ!!仏のカオも三度までだッ!!

何度そのセリフを繰り返すのか大粒さん。
ようやく鳴子が決めゼリフか!!とツッコミを入れてくれたので少しは静かになるかな?
今まで繰り返していたのはツッコミ待ちだったと考えればよいわけだ。ふうむ。
ったく。次から次へとおもろいヤツが出てくるわホンマ

鳴子の言う通り、スプリンターってヤツはどいつもこいつもおもろいヤツであるらしい。
振り返ってみるとまともなスプリンターってほとんど記憶にないな。鳴子、田所さん、泉田君、新開さん、メガネスプリンター・・・
そういえば待宮もスプリンターだったか。あの男もまともかというと疑問はあるしなぁ・・・うーむ。
やはり金城さんの言う通り、スプリンターはバカじゃないと務まらないということなのか・・・!?

けど全員自転車大好きなんや。それだけはビンビン伝わってくる。そらワイも同じや!!せやからワイも精一杯スプリントをやる!!
さっき純度の高さどうこう言ってたが、悪いけどワイ鳴子章吉は生まれもっての――純度100%のスプリンターや!!

そう述べてピストバイクで加速する大粒さんにはりつく鳴子。

大ツブな人!!アンタ十分速いで。ただワイが常識レベルじゃ考えられんくらい速いってだけや!!
ワイは直線に生き、派手に散る!!浪花の天才スピードマンや!!

その言葉の通り、柿本の戦い以上ののびを見せて大粒さんに勝利する鳴子。うーむ、さすがだ。
大粒さんはピストバイクだけでなく、加速用に流線型のヘルメットを用意している。すごいデザインだなコレ・・・!!
どこかの兵士みたいな恰好で加速しているが、それでも及ばない。残念な話である。
まあ、鳴子もインターハイでロケットマンになった時は似たような格好になっていたがそれでも田所さんに負けてましたしねぇ。
勝利するには多少の見た目も大事ということなのか・・・!?

コースレコードが出たんじゃないかと言われるぐらいの鳴子の走り。これを見ては挑戦者も後には続いて現れませんわな。

アカン・・・ワイ強なっとる。
前ここ走っとった時より確実に速い。筋肉使えとるのわかるし、のっとるスピードも次元がちゃう・・・
インターハイでの走りが成長させたいうんか・・・オッサンや青八木さんとの切磋が・・・

自身のスプリンターとしての成長を改めて実感する鳴子。
となれば、やはりスプリンターを捨てることなどできようはずもないですわな。
だから鳴子は思う。次の勝負でラストだと。

次の勝負でやっぱりワイが勝ったら、勝ったならワイは――スプリンターとして走る!!

そのように決意する鳴子。
しかしその鳴子に挑戦する最後の男はこれまでとは比べ物にならないぐらいの強者である。
紫色のジャージをまとった巨大な男・・・そう、御堂筋君だーッ!!!

口元から首にかけて布で覆った状態で登場する御堂筋君。か、過激派・・・!?ヘルメット姿だしなぁ。
まあ、おそらくネックウォーマーなんでしょうが、御堂筋君がつけると半端なく怖いから困る。

退屈だったから大阪まで遊びに来たら黄色いジャージのヘンなのがいるという話を聞いてやってきたという御堂筋君。
鳴子の最後の相手がよりにもよってこの男となろうとは!!
勝負は10周。全力をふりしぼっての戦いとなるぜ!!

おまえの最後や!全力でしぼれよ!プププ。

ネックウォーマーを外して舌を飛び出させる御堂筋君。目も早くも本気の形となっています。
性格は変わっていないようで安心したやら何なのやら。
最初見た時はまた歯がいかれたのかと思ったが、そうでもないみたいですな。
この走りで御堂筋君が先のインターハイの敗北でどのように変わったのかわかるかもしれない。うむ・・・注目であります。

しかし、自転車異種格闘技場とは凄いタイトルですなぁ。
柿本の自転車は光るだけだったが、この草レース場にはもっととんでもない改造をした奴がいるのかもしれない。
タイヤの側面からトゲが飛び出して横を走る自転車のタイヤをパンクさせようとするとか。
車体の下からバネが飛び出して跳ねることでコースを飛び越えるとか。
バーリトゥードというからにはこれぐらいの何でもアリが横行しているに違いない!!きっと。



RIDE.252 鳴子VS御堂筋  (2013年 20号)


異色のカードが実現。
大阪の草レース場で対決と相成った鳴子と御堂筋。
1周600mのレース場を10周の計6km勝負が始まろうとしています。

けど、ただ勝負するだけじゃあオモシロクない・・・賭けようか!?何か、大切なモンを!!

相変わらずそういう賭け事が好きですね御堂筋君。
まあ、自分を追い込むには有効な手段であるのは間違いないけども。

全国1位を取った総北のスプリンター鳴子。
そしてあの最速男の新開さんをスプリントで下した男、御堂筋。
この対決には周りの観客も沸きまくっている。そりゃあそうでしょうな。
新開さんの件を見る限りやはり御堂筋君有利という予想がされるか・・・?

エエわ・・・相手が誰であっても、これはワイの中で決めてたことや。
次の勝負で勝ったらスプリンターとして走る。負けたらスプリンターをやめるわ!!

本気の目でスプリンターの座を賭けてきた鳴子。紛れではないことは御堂筋君にも伝わる。
それを聞いてなんだか嬉しそうな様子を見せる御堂筋君。キモォ!!

アホやこいつ。本モンかけてきた!!
けど・・・そや・・・そういう・・・本気の勝負の中でしか純粋なモノは生まれない!!
ええよ!!久々や。久々に高なるわ・・・ボクが求めていたのはこういう――削り合いや!!

勝負!と行う前に、御堂筋君は同じ京都伏見の水田、山口の両名を呼び寄せる。お前らも来てたんか。

この勝負、ボクが負けたらァ、キミタチィは来年のインターハイ5人で走りや・・・
ボクは全力でぇ、黄色いジャージでも着て3日間・・・王者ソーホクゥのサポートするからァ!!

な、何を言い出すのだこの男は!?
上は黄色い総北ジャージで下は紫の京都伏見ジャージだと?そんなアンバランスが許されると思っているのか!?
いや問題はそこではない。御堂筋君はあんまり黄色とか似合わないですよね。いや、そこでもない。
試合より前の遭遇戦で来年のインターハイという大舞台の結果に関わるようなものを賭けるとは・・・!?
しかし、よく教育されているのか、水田、山口の両名はこれを了承。
インターハイ3日目の朝では生意気な口をたたいてましたのにねぇ、水田君。再教育でもされたのか?

モチロォン。そんなことしたらアタマ割れそうになって死にそなるからせーへん。ここで勝ついうことや!!

自分を追い込むにしてもやりすぎな気がするが、そういう所が純粋なんでしょうな。石垣さんもそんなこと言ってた。
まあ、万一負けてサポートに回ってもそれはそれでよし。
何故なら最後まで王者と一緒に走れるのだから最終的にゴール直前で追い越せばいい。
サポートするとは言ったがゴールを狙わないとは言っていない!!とか言って。

そういえば御堂筋君、インターハイが終わった後かなり長いこと眠ってましたよね。舌だしたままで。
あれは次の戦いに向けて体を休ませていたということらしい。
魂を運ぶ器がボロボロでは何もできないから、とのこと。

おかげで回復した。じわじわ回復。今じゃ前以上に万全や!!

というわけで、お互いの賭けるものも提示したことですし、十周勝負のスタートであります。
にゅうるんと首を突きだした御堂筋君。脚をぶるんと震わせて開始早々からいきなりの加速。
相変わらずのキモさ・・・だが速い!!
その加速のままカーブに突っ込む。あんな速度でツッコんだら――落車!!と心配する観客。しかし――

落車はしない!!あいつのコーナーは・・・全速力ツッコミからの――ダイブバンク!!

地面にダイブするかのように身体と車体を傾ける御堂筋君。
ペダルがアスファルトをこすり、顔を地面に極限まで近づけて曲がる。
このカーブの凄さが御堂筋君の本領でありましょう。
どうでもいいが全速力ツッコミとか鳴子が言うと別の意味に聞こえてしまって仕方ない。
あいつの持ち芸は・・・全速力ツッコミからの――ダイビング土下座!!とか言い換えても違和感がないから困る。

カーブで引き離される鳴子。しかしそれで終わる男でもない。

(速い!!一流!!けど、ワイが引き離される?そんなジョーダンは)
ヨシコちゃんじゃい!!おるぁああああ!!

猛烈なスプリント。直線での加速で開けられた差を詰める鳴子。
どうでもいいが、ヨシコちゃん以降だけ口にされても困るんですが。誰だよヨシコちゃん!?そいつアンタのなんなのさ。

というのはともかく、2人の勝負は早くも白熱している。
普通の選手がコースを1周している間に2周してしまうぐらいの速さ。
これにはさっきまで勝負していた柿本、大粒の2人も驚き。鳴子、オレたちの時は手抜いてたのか!!
いや、鳴子はそういう男ではない。光るのに見とれてて力が抜けたりはしてたが、手を抜いたりはしていない。

お互いに引きあっとるんや。実力を・・・闘う魂を。

そう述べながら現れたのは・・・京都伏見の3年、石垣さん!!
ま、まさか・・・まだ引退していなかったというのか石垣さん!?
総北の3年生たちはもう完全に引退した様子だというのに、未だにジャージを着て遠征にまでついていきているとは・・・
実は大学なんて勉強しなくても受かるぐらいに優秀だったとか!?
それとも実家の家業を継ぐことに決まっているから余裕があるとかそういうことなのだろうか!?留年ではないと思う。きっと。

鳴子くんとのこの勝負で次のカラをやぶるか御堂筋!!

さらなる御堂筋君の成長を見届けようという気持ちがあるんでしょうかね、石垣さんには。
ふうむ、これは勢いで京都伏見の現状の体制と今後の様子が描写されそうですな。楽しみだ。
勝負の方は・・・正直賭けたものに差がありすぎましてなぁ。
悩んで揺れているスプリンターの座についてと来年大舞台でのチームまるごとの勝利の座。天秤が片方に傾き過ぎである。
まあ、御堂筋君がどのようにカラを破るか楽しみにしましょう。
たぶん頭で叩き割り、カラを噛み破りながら出てくると思われる。いや、物理的な出方の話ではなかったか!?



弱虫ペダル 30巻


RIDE.253 削り合い  (2013年 21+22号)


本気の賭けをしてのスプリンター勝負。
鳴子と御堂筋。2人はどちらも一歩も引くこともなく鎬を削っている。
これこそ御堂筋君の望む削り合いでございます。

鳴子「せー」
御堂筋「ら!!」

掛け声をかけてお互いのハンドルをぶつけるなど激しい走行。
それにしてもセーラとは一体誰なのだろうか。一体誰なのさー。

それはさておき、直線で追いついた鳴子が加速して前に出てくる。

鳴子「遅っそ。遅いでカメー筋
御堂筋「汗だくで言うセリフちゃうよ?マメトサカァ

微妙にどちらも流行りにくそうな呼び方でありますね。やはり弱泉君を越える上手さは簡単には出ないか。
まだ鳴子が御堂筋君に向けたワカメという言葉の方がわかりやすい。
長くてフラフラ漂っているからワカメだそうな。ちょっと味の存在感でかすぎな気がしてワカメにはアレですがね。

前に出た鳴子に追いつきぶつかり合いを再開する御堂筋君。
まだ半分にも達していない4週目なのに激しいことであるな。
しかし、だというのにこの周回はさっきより速度が上がっているという2人。
鎬を削ることでとことんまで速くなっていくということなのだろうか。

ワ、カ、メエエ!!

ドギャンと加速する御堂筋君。何!?その呼び名気に入ったのか!?
まあ、何となく気合の入りそうな掛け声であるのは分からないでもない。ワカメ!!
それはさておき、鳴子は御堂筋君の走りにかなりのプレッシャーを感じている。

後ろから見とると、こいつの走りビリビリくる!!
全身の毛が逆立つような、今まで走ったどんな奴とも異質な。
迷いのない。ふり返らない。無駄なもん余計なもんをナイフか何かで削ぎ捨てるような。前進するためだけの走りや!!

確かに髪の毛は刈り捨てたりしてましたな。
さすがにイメージ図のように腕を削ぎ落すようなマネはせんだろう。手足細いけどそれはやってない・・・はず。

こいつ・・・走りが変わっとる!!夏のインターハイの時よりも、強なっとる!!

たっぷり休んで糧にしてちゃんと成長したってことなんですかね。
敗れた御堂筋君がどうなってしまったのかは気にかかる所でしたが、元気にやってたようで何よりです。

5周目に入り、少し御堂筋君が先行しだす。というわけで、御堂筋君の挑発開始。

ご自慢の脚ィ、限界ちゃうのォ?
インターハイで王者ァになって、浮かれて抱き合って、讃えあって、褒めあって、仲間が大切や言うて。
一番大事な"練習"すんの、忘れとったんちゃうの。

せやな。確かに忘れとったかもな

挑発・・・のはずだったが、あっさりと肯定してみせる鳴子。
しかしそんなことを言いながらいきなり加速して抜き返しをしてみせてくる。
クランクで御堂筋君をかわして前に出た鳴子。そしてここからようやく本領を発揮することとなるらしい。

いっちょう派手にやったるわ!!"遊び"は終わりや!!ここで――引き離したる!!

ギアを重くし、全開のスプリントを見せる鳴子。確かに言う通りに、2人の差がみるみるうちに開いていく!!

出た!!限界やなかったのか。あの加速!!本物や!!
技術、心拍、警戒心、プレッシャー!!あのトサカ単なるトサカやない!!
今まではじっくり観察しとったいうわけか。ボクを・・・このボクを・・・値踏みしとったいうことか
そして「勝てる」と、とびだしたいうことか!!

ふむ。これは御堂筋君にしてみればかなり屈辱な話でありましょうな。
その想定は当たりである。鳴子は「勝てる!!!」と考え、とびだした。
それはこれまでの積み重ねで自分が強くなっていることを理解しているからである。

練習忘れとったんやないか言うとったな。言った通りや。正直忘れとったわ。うちには態度のデカイクマおったからな。
そいつを倒す緊張感とせめぎ合いで休むヒマなかったんや!!途中からどえらい速い無口なモグラまで出てきよったしな。
あいにくや御堂筋。ワイの場合、練習やなくて実戦でインハイの時より強なっとんねん!!

確かにインハイ後はとにかく田所さんに勝つために戦いまくっていた感じがありましたものね。
しかし青八木さんはモグラか・・・確かに色白な感じもあるし分からんでもないが。モグラ・・・漢字で書くとカッコイイ土竜・・・

ともかく、本気のスプリントを見せた鳴子は確かに御堂筋君よりも速い。
残り4周あるのにぐんぐんと2人の距離は開いていく。
この様子を見てさすがの京都伏見の2人も焦りを見せている。何せ御堂筋君が負けたら来年のインハイは5人で走らないといけませんし。

何でもアリの草レース・・・誰も一対一とは言ってない!!オレ――御堂筋クンに加勢してくるわ!!

そんなことを言いだす水田君。
加勢とは微妙に生ぬるい話ですね。何でもアリなら進路妨害でもすればいいのに!!
2人そろって横向きに並んでバリケードになればよい。先に進んでいる鳴子は避けようもなくクラッシュするだろうさ!!
まあ、さすがに本当にこれやったら御堂筋君に怒られると思うけどね。頭突きで済むかどうか。
というのはさておき、加勢に出ようとした水田君を止める石垣さん。

どうやら京都伏見は相変わらずクン付けや番号呼びの慣習を徹底させている様子。
インハイ後でその辺りは変化あったのかなと思ったが・・・まあ、御堂筋君が変わってないなら変わりはしないか。
だが石垣さんはその慣習からは外れている様子。引退してる身だから自由に呼ぶさ、とのこと。ああやはり引退してましたのね。
いや、本当に引退した身だから自由なのだろうか?
なんせインハイ中でも1人その慣習を破っていた石垣さんである。御堂筋君もほとんどそこについて注意はしていなかった。
実力のある石垣さんだけは多少の慣習破りも許される!!そんな話であるのだろうか。それとも・・・?気になる所だ。

それはさておき、石垣さんは水田君を止めて語り出す。
御堂筋君はこの時を待っていたのだ、と。

挑戦してノってきて、それでも負けないフィジカルとメンタルを持ったヤツが現れるのを。ヤツは強くなりすぎた。敵がいなかった。
あいつはインハイが終わってから走り方が変わった。
1回の練習や1回のレースをよく考え、大事に走るようになった。以前からそうだったが、より研ぎ澄ませて何かを探すように。
オレにはそれが自分のカラをやぶる衝撃を待ってるように見えた。このレース、主導権をにぎってるのはあいつの方だ。
昆虫が自らのカラをやぶって強く大きくなるように、ヤツもやろうとしてるのさ。自分の、脱皮を!!

石垣さんの言葉の通り、走りながら背中をベリベリと破って新たな御堂筋君が誕生する。カラ破ったー!!
想像通りというか想像以上に厄いというか、何だろうねこの図は。
しかし、脱皮したあとの皮の方は目玉がないせいか微妙に御堂筋君とは別人に見えて困る。
むしろパッと見だと泉田君に見えないこともない。何、走っている泉田君の背中から御堂筋君が!?それはかなり怖いぞ!!寄生虫!?

求めてたのは削り合い。
「勝つ」「負ける」「負けられない」「大切なもの」そういう緊張感の中でのみ生まれてくるもの。
ボクがほしかったのは、この衝撃や!!

外部からの衝撃を受けて中身がにゅぅるんと飛び出たって話ですね。
脱皮を果たした御堂筋君。ツヤツヤした手をプルゥゥンとうならせてハンドルを握り直す。脱皮した皮も剥ぎ棄てるぜ。

さァ・・・トボか!!

脱皮したことで成虫になったことをアピールするかのようなセリフをはく御堂筋君。
何ですか?今までは幼虫だったといいたいのか?だから負けて地べたを張っていてもしょうがない。幼虫だったから!!ということか?
まあ、今泉君だってレース中に細胞入れ替えて進化したわけだし、御堂筋君がレース中に脱皮してもおかしいことはないか・・・

それにしても今回の巻頭カラーのときから気になっていたこと。
最終ページでもうかがえるのだが御堂筋君、その髪型は何なんだ?
ソフトモヒカンという奴だろうか?いや、これだけ色を変えて目立たせせていると普通にモヒカン・・・
鳴子のことをトサカ呼ばわりしてたが、自分がいっちゃんトサカやないかい!!
何ですか、成虫になって飛べる→飛べるのは鳥→トサカ→モヒカンという流れですか?納得した!!いやいや。
坊主頭を継続しているのかと思ったら意外な状態になっていましたなぁ・・・
色々削ぎ落しているはずだったのに、オシャレしだす余裕が出てきたというのはどういうことなのか。
これもインハイ後で変わった部分のひとつということなんですかね石垣さん?どうなんですか石垣さん?教えてください!!



RIDE.254 飛蝗  (2013年 23号)


見事に試合中に脱皮からの進化を果たした御堂筋君。センターカラーで色付きの脱皮場面を披露してくれます。
脱皮、変態、進化
へ・・・変態!?いや、意味は解ってますけどね。進化するためには重要な過程ですものね、変態。
どうでもいいが、進化と打つとき指が滑って新開と打ってしまう。脱皮、変態、新開。むう、これはこれでアリか!?

それはさておき本編。

さぁ・・・トボ・・・!!トボ!!
増えすぎた昆虫が自らの体を変態させて生を求めて旅に出るように。次の勝利のために。
トボ・・・!!ボクも・・・!!

バリバリと背中から昆虫の羽を生やしてそう述べる御堂筋君。
インターハイでは黒い羽根を出したりしてたが、いきなり昆虫に変態でありますか!?これが進化か・・・!!

雄叫びをあげる御堂筋君。観客がゾッとするほどのプレッシャーを発しています。
にも関わらず負けを確信したのではとか危惧しだす水田くんのトンチンカンさは天性のものか。お前も変態、じゃない進化しなさいな。

それがおまえの次の姿か!!

石垣さんが見守る中、羽を生やした御堂筋君はスタイルを確立する。
丸めていた背中をグググと伸ばし、ビキンと真っ直ぐにする。
フレームと水平になるように背筋を伸ばして走り出す御堂筋君。こ、こいつはまた異様なスタイルを・・・!!

おかしなフォームだが確かに速い。
半周近くついた差をみるみるうちに詰めていく御堂筋君。
しかし残りは3周。これだけの差をつけられて追いつくことなど出来るものなのか?

というところで石垣さんの回想。
インターハイ後も特にゴタゴタがあったりせずに練習している様子の京都伏見。
そして相変わらず石垣さんは御堂筋君をチームの誇りやと持ち上げている。
素直な気持ちなんでしょうが、そういうことを照れもせずに言えるところが石垣さんらしい。そりゃキモィでとも言われるさ。

御堂筋君は全身にテーピングをして肉体的に負荷をかけて練習を行っていた。
しかしこの肉体的負荷では次にいけないと呟く御堂筋君。
必要なのはもっと精神的なものも合わせた、身を削るようなレース。
生物は、もっと劣悪な状況に追い込まれたときのみ進化する

御堂筋。いいんだ。ふり向かなくていい。追いかけろおまえは、今見えてるその新しい姿を

顔を伏したまま走り続ける御堂筋君。
レースは残り2周。鳴子は単独で消火栓の下をくぐる。
しかし、そのすぐ後ろにまで御堂筋君は迫ってきていた。
そのプレッシャーはさっきとは全く違う。アホみたいな異質なプレッシャー!!
人類から昆虫に変態するとプレッシャーの質まで変わるという感じでしょうか。

あっさりと追い抜かれる鳴子。そして目にする異様なフォーム。アホみたいに背筋のばしてアホみたいにまっすぐになっている。

見たことない。あんなん今まで見たことないで

顔がつくぐらいの前傾フォームだって見たことないでしょうし、御堂筋君のやることにいちいち驚くこともありますまい。
まあ、抜かれたことと異様なプレッシャーに竦んで弱気になっているんでしょうけども。

残り1周。
下を向いていた顔を前に向ける御堂筋君。順位も前に出ている。
追いかける鳴子も必死。必死過ぎて鼻血が噴き出るほどである。
ふむ、変態を追いかけて鼻血を流す鳴子か。ふむ・・・いやまあ、それはさておくとしよう。

見事な進化を果たした御堂筋君。それにしても昆虫とは・・・
そういえばサブタイトルにもある通り、イメージは飛蝗――バッタなんですな。
確かに曲げた腕の感じとかバッタの脚みたいである!!顔も口を消して目を大きくして確かにバッタっぽいぞ!!

で、この背筋をまっすぐ伸ばした走りですが「やまめポジション」というものが元でしょうか。
従来の骨盤をたてて背中を丸める走りではなく、骨盤を倒して背中をまっすぐに保つポジションのことらしい。
ほほう。なかなか面白いスタイルでありますな。
絵だけ見ているとまっすぐになった分空気抵抗が減るのではないかという利点があるように見える。
つまりは仮面ライダーで言う所の「ライダー乗り」と同じ理屈である。
む、仮面ライダー・・・バッタの怪人・・・バッタ・・・
そうか、御堂筋君は進化して変身ヒーローになったのか!!
今後は人と昆虫の狭間に生きる者としての苦悩を語る役どころになるという流れですね。ふり向かずその姿を追いかけろ!!



RIDE.255 大阪の男  (2013年 24号)


進化を果たした御堂筋君に追い抜かれ窮地に立たされる鳴子。そりゃあ鼻血も出てくるさ。
のこりは1周。ほんの2分も立たないうちに決着となる。
鳴子に敗れた柿本と大粒さんはどうやら鳴子を応援する様子。
自らを破った男を讃えようという話でしょうか。まあ、スプリンター同士繋がるものがあるのは間違いないか。

ヤツこそ生粋のスプリンター!!仏の勝利は三度目だ!!

うん、相変わらず何言ってるのかわかりませんな、大粒さん。

それはさておき、大幅にリードしていたのに突然追い抜かれた鳴子は混乱中。なんでそないな前走っとんねん!!アホー筋!!
しかし、即座に頭を振って鼻血を拭き、気持ちを入れ替える。
ワイは――どんな状況でも勝つ男やねん!!

ロードレースの勝負は1回!!たった1回。結果は2つ!!勝つか負けるか。
削って、全力出して、ペダルに命かけて、かけ引きして持っとるもん全部出して「勝ち」か「負け」。
せやから燃えるんや!!

ニャァッとなんだかやたらと悪い笑顔を浮かべる鳴子。
この男もまた純粋に身を削るような勝負を望んでいるということなのか。だから悪い顔もできると!?
悪い顔と速さの因果関係はわからないが、ストレートで御堂筋君に追いつく鳴子。
しかしかなり体に負荷はかかっているらしく、余裕はない。

こいつ進化したんや!!このレースで!!この場で!!アホみたいに!!けれども!!
それがどうした!!ワイは勝つ!!やれることは全部やって勝つ!!

その宣言の通り、最後の力をふりしぼるために色々と始める鳴子。
まずボトルを捨てて軽くする。そしてジッパーを閉めて空気抵抗を減らす。ロケットマンにはならないのかい?
そして、ここでとっておきというか、なかなか面白い行動に出る鳴子。
自転車に乗ったまま尻を動かすことでシートを外し、放り捨てる!!
これぞ究極の軽量化!!どうせ腰浮かせてるんだからいらないだろうという判断なのだろうが・・・面白いことをする。

意地でも勝利しようと踏ん張る鳴子。まあ、スプリンターを継続できるかの進退がかかっておりますものねぇ。
スプリンターはワイの生き方そのもの!!プライド!!
そう叫び、ゴールまでののこり120mの直線を制しようとする鳴子。だが・・・

マメ・・・マメ・・・マメやないな・・・カメトサカ・・・

スプリンターの意地を見せようという鳴子をカメ呼ばわりし、勝利する御堂筋君。
最後は身体を立てて腕を横に伸ばしての余裕の勝利。ギリギリのところまで追い込むこともできない速さだったというのか・・・!!

成った・・・ここでぇ負けるようじゃどんなに斬新な変化でも進化とは呼べんかった。
けど勝った!勝利したァ!ボクゥは成った!!次ィの形へ!!

自らの進化を確信する御堂筋君。うーむ、厄介なこととなりましたな。

一方、破れた鳴子は傷心。ヘルメットを外し、シートの外れた自転車にボスッと座り込む。
何!?サドルもないところにどうやって座ったのだ!?
と思ったが、フレームの上に腰を乗せているんですな。さすがに円筒系の部分に乗るのはツライ。
それでその後の自転車に乗っている体勢が妙になっているわけか。三角座りしてるみたいになっとる。

負け・・・ワイの負け・・・
地元大阪で・・・走りなれたホームコースで・・・全力出して、鼻血まで出して・・・負けた。
くそぉおおぉおおおおおお!!
結局ワイ負けてばっかりやないか!!アホ!!アホ!!ワイ死ね――!!アホ脚!!アホ!!

悔し涙を流し、叫ぶ鳴子。
直前でどんな状況でも勝つ男やねんと言ってたときにツッコもうかと思ったが、ちゃんと負けてばかりという自覚はあったのね。
まあ、今回の敗北は地元ということもあるし、賭けたものも大きいし、悔しさはハンパじゃないでしょうな。
しかし思わず声をかけようとする柿本とそれを押し留める大粒さんが地味にいい感じですな。地味に。

ププ・・・ソーホクゥも羽根を1枚失ったな・・・

勝利した御堂筋君は楽しそうにそう述べる。
ちゃんと鳴子がスプリンターを辞めるという約束を守るよう念押しまでしましたしね。
鳴子の性格なら本当に辞めるだろうなと考えている御堂筋君。
しかし石垣さんは言う。鳴子くんはひょっとしたらまたレースに帰ってくるかもしれんな、と。

御堂筋・・・悔しさは人を何倍も強くするんやよ

さすがに先輩である石垣さんは含蓄のあることを言う。
まあ、御堂筋君だってインターハイで悔しさを存分に経験しているはずなんですけどね。

大阪でのスプリンター対決は御堂筋君の勝利に終わった。
まあ、元々スプリンターを辞めるかどうかを決めるために来ていたので、丁度いい契機になったと言えなくはないですかな。
レースに出ないという約束をしたわけでもないですしなぁ。

さて、一方その頃の箱根学園。部に残る1、2年が部を卒業する3年生たちに礼をしている。3年間おつかれ様でした!!

今より毎年恒例箱根学園自転車競技部。3年生の先輩方最後の追い出し親睦走行会を執り行います

泉田君の宣言により行われる3年間の締め括り。
箱学の3年生たちもこれで引退でありますか。寂しい話でありますな。
まあ、その前に追い出し会という名目で出番があったのはよい話と言えるかもしれない。
さてさてどのような内容となるのか。
って、山岳の姿が見えない気がするんだが・・・?
い、1年だから後ろの方にいるんだよね?まさかこの場に及んでも遅刻なんて流れなんてことは・・・ありそうだ。

ある意味総北以上に次年度の不安を抱えている箱学。
まだレギュラー6人にはには2人ほど足りていない状況であるが、有望な人材はいるのだろうか?
3年生が優秀すぎただけに穴を埋めることができるのかは疑問が残りますな。
というか、この3年生たちの仲が良すぎたからなぁ・・・次年度の連中の仲がどうなるのか不安でしょうがない。
この走行会である程度次のレギュラーメンバーも仲良くやるように諭してくれればよいのですが・・・
今箱学に必要なのは、福富さんのようにやたらと好かれる人徳者!!間違いないね!!



RIDE.256 箱根学園 最後の走行会  (2013年 25号)


ハコガク伝統の3年生追い出しファンライド。
毎年自転車シーズンが終わって肌寒くなったこの時期に部員全員で行われるという。

考えてもみなかったよ。1年生のあの時は。オレたちが追い出される側になるなんて。
さぁいこう。箱根学園自転車競技部ラストランだ

ついに箱根学園の3年生たちも引退の時がやってきました。
伝統、期待、様々な重圧を背負いながら走り続けた先輩方を送り出す。
その最終走行会の在校生代表を務めるのはやはり次期キャプテンの泉田君。

追い出し親睦走行会スタートします!!お願いします!!
信号順守!!コースは国道に出て海沿いを南下。河津を右折して天城原峠を越える市営駐車場までの120kmだッ!!

ファンライドを名乗るにしては長い距離の120km。たっぷり別れを惜しめるって話ですね。
そしてこの最終走行会は毎年恒例ゆえかファンの間にも知れ渡っている様子。
なので東堂さんのファンである女子が最後の雄姿を見ようとやってきていたりする。
今回はインターハイの時とは違ってノリノリで指さしポーズまで決めてくれる東堂さんでありました。ワッハッハッハ。

東堂さんは見た目はチャラけているが勝ちが求められているシーンでは常にベストコンディションを出して勝っている。
見えないところで血のにじむような努力をしているのさ、と3年の藤原さん。
まあ、このセリフは当の東堂さんが否定しちゃうんだけどね。天の与えた才だぞと。ワッハッハ。

陽気な東堂さんは置いておいて、別れを惜しむのは何も先輩と後輩の間だけではない。
中学、高校の6年間という長い時間を共に走ってきた福富さんと新開さん。その別れも惜しむべきものである。
寿一がいたから自転車が続けられたと新開さんは言う。
強くなるためには苦しいことを耐え継続しなければならない。
6年間それができたのは常にそばに強いおまえがいたからだと返す福富さん。
うーむ、相変わらずいい雰囲気を形成しますなぁこの2人は。
そこに割り込んでいったりはしないんですか荒北さん?

期待した目で見んなヨ!!ねーよ!オレにはそういうしんみりした話わ!!

え、色々とあるんじゃないんですか?自転車を始めたきっかけとかさ。
いやその辺りは山岳が話していればもう箱学の面々には知れ渡っている可能性があるか。リーゼント荒北時代の伝説を・・・!!

東堂「いや。おまえがいたからチームがまとまったのだよ」
新開「ありがとよ。練習つきあってくれて」
福富「荒北。おまえは最強の運び屋だ」
荒北「・・・っ。るっせほめんな!」

うむ、やはり仲の良い連中ですなぁコイツラ。卒業後はそれぞれ独自の道を歩むことになるのだろうか?
箱根学園に限らず、引退した選手の進路とかは色々と気になりますね。

街並みを抜けて2車線の海沿いの国道に出たところで前に出る3年生4人。
毎年ここから本格的な走行会が始まる。
ファンライドといえども、そこは箱根学園。ゴールも設定されている長いコースが用意されている。そう、これはレースだ!!

3年生4人を追うように次期レギュラーの面々が上がって来る。
泉田!黒田!葦木場!
2年生の3人。だがこれでは3年生4人には1人足りない。まさかあやつ本当に遅刻・・・?

問題ありません。すぐに!!あがれ!!真波!!

泉田君の指示を受けて後方から飛び出してくる山岳。よかった。さすがにこの場面での遅刻はなかったか。
それどころか、早くも翼を広げて厳しい表情をしている。
インターハイで敗れたことによって悔しさを糧に色々と変わっている可能性がありますなぁ。
この最終走行会でその変化の片鱗を見せることになるか・・・?こっちも負けずと脱皮したりして。

4対4で並び立つ両者。そこで口火を切るのは泉田君。

はっきりと言いましょう。この際ですから。
あなた方は――あなた方は軟弱だ!!
箱根学園の伝統に泥をぬった。格式高いインターハイのレースにおいて総合優勝をのがした!!
最強のチームをうたっておきながら2位!!箱根学園にとって2位は最下位と同義です!!
その責任をどうとるおつもりですか。来年また出場して取り返しますか。できるはずがない。
3年なのだから――卒業してしまうのだから。
ならばその責任・・・想い・・・ボクらが必ず受け継ぎます!!

ほほう。泉田君からそのような言葉が飛び出すとはねぇ。
誰よりも新開さんをはじめとする3年生たちに傾倒していた泉田君が・・・キャプテンらしくなっていますなぁ。
しかしインターハイで敗れた責任という意味では自身にもあるんじゃないかね?
まあ、だからこそ自身は責任と想いを受け継いで来年取り戻すと宣言しているわけであるか。言うじゃナァイ!

あこがれていた。追いかけ続けていたその背中。今から超えます!!

ジャージの前を締めて臨戦態勢となる泉田君。そして仲間たちに内心で声をかける。
真波!!雪広!!葦木場!!
さぁいくよ。アンディ。フランク。ファビアン!!

な・・・き、筋肉の名前が増えているだと・・・!?一体どの部位の筋肉なんだ!?
相変わらずこの男はさりげなく爆弾を放り込んでくるから困る。
自分がネタを喋っているのだと自覚していないから性質が悪い!!

ともかく、箱根学園3年生の最後のレースが始まろうとしています。
次期箱根学園の走りも見ることができますし、なかなか楽しみなレースとなりそうですな。



RIDE.257 4枚のゼッケン  (2013年 26号)


福富さん。荒北さん。東堂さん。新開さん。
超えます。今から。その背中を!!

泉田さんがジッパーを上げたァァ!!

3年生への宣戦布告と共に本気を示すジッパー上げ。どよめく残りの箱学部員。
これが箱根学園式のファンライドということですな。
身内で戦うということで強く宣戦布告することで意識を高めている!!言ってくれるよ!!

だったら――オレたちも。応えよう、それに!!

泉田くんの宣戦布告に答えるのはやはりこの人、新開さん。
ビタッと泉田くんを右手の人差指でさし、撃ち貫く。バギューン。

うあ。あれはっバギュンポーズ!新開さんの!!必ずしとめるって合図だ!!

いちいち大騒ぎする箱学の部員たち。
なるほど。こいつらには驚き役兼解説役として頑張ってもらおうという算段か。どこまでついてこられるかな?
新開さんの返礼を受け、泉田くんも改めて宣言する。

お見せしましょう。ボクらの力を!!あなたたちの最後の――このレースに勝って!!

そう述べて加速を開始する。
しかし、3年生たちは新開さんを先頭に立てて本気の構え。一気に飛ばすつもりだ!!
その速さに早くもうしろで数人遅れてしまう部員がいるという。そいつらはもうずっと追いつけそうにないですな。
まずは新開さんによる3年インハイメンバーの先制パンチが決まったという感じであります。

黒田「ちょっとだけ離された!どする塔一郎!!」
葦木場「え。ちょっとじゃないよ。ソコソコ離されたけど?ユキちゃん」

確かにソコソコ離されたけどすぐに追いつくという意味でのちょっとでしょ。
そこを突っ込んでどうする葦木場。本当にこの子は天然で困る。

天然?失礼な!!オレに天然要素などない!!

キリッ!!とキメる葦木場。そーゆーとこが天然だっつーの!!
天然の9割は自分で気づいてないって総務省の調査であんだよ!!

葦木場「ホントに!?」
黒田「あるか!!冗談だよ。気付けよ!!何の調査だよ」
葦木場「オレ・・・その頭数に入ってんのかな・・・」

ウソだっつってんだろーが。何でハラハラしてんだよ。というかお前さんは間違いなく天然なんだから諦めなさい。
というか何で漫才開始してるんだこの2人は。黒田さんも明後日に行きそうなツッコミ方するんじゃないよ。

泉田「漫才は終わったか!!雪成!!葦木場」
黒田「――まァひととおりな。塔一郎」
葦木場(漫才だったのか・・・)

これがちゃんと考えて喋る男と天然との違いですね。天然のボケは強いわ。色々と。
まあそんなことやっているうちにどんどんと3年生との距離は開いていくわけですが。

オレが引きます!!

そう言いながら先頭に出てきたのは――山岳。え?この平坦で!?

負ける訳にはいかないんで。二度同じ誤ちやるわけには。オレは必ず勝利するので!!
この足くだけても引きます。追いついてみせます。だから勝利を!!

なんだか必死な感じの山岳。昔の飄々とした感じは全くない。
ふーむ。敗北の責任を思った以上に背負ってしまっていたんですな。しかしこれはよろしくない傾向に思える。
泉田くんもそれが分かっているのか下がれと命じる。

あれ・・・あれあれ・・・総務省の調査じゃこのへんにもう1人、天然いるって話だったけどな。
飄々としてニコニコしてボーとして。先輩に気なんかつかわない自由なヤツで、そのくせ山じゃハンパなく速ぇ。
荒北さんの言葉を借りるなら"不思議チャン"が

笑顔でそのようなことを述べだす黒田さん。
ふむ、さすがに同じクライマーとして山岳のことをよく理解しているようですな。
山岳がインハイのあとからずっとキバりすぎているのに憂慮していた様子。
だから脇を突いたりして緊張をほぐしたりなんかりしてあげる黒田さん。わきゃっ。
ってどうでもいいが、さっきから葦木場は背景で何やってるんだ?別の漫画のキャラみたいな顔になってるぞ。

1年がヨ。責任背負ってんじゃねーよ。たまたま石コロありましてって言い訳こいてりゃいいんだよ。
おめーはオレを押しのけてインハイいった。あの日F組でおまえが勝った理由はガッツじゃねェ。底知れねぇ集中力だ!!
ところが今どうだ。背負ってる重みでフラつきやがって。集中力もねェ。ペダリングもクチャクチャ。
クライマーのくせに平坦引くだァ?引けって言われて「つかれるからやだ」つーのがおめーだろ!!
マジメ気取って勤労してんじゃねーよ!!背のびかソレは。早く大人になりたいアイドルか!!

黒田さんはいい人である。よく見ている。しかしツッコミが微妙にくどい欠点があるように見受けられる。
というかさすがに山岳もつかれるからやだとは言わないでしょ?似たようなことをオブラートに包んで言うかもしれんが。

平坦は平坦屋にまかせりゃいいんだよ。
このコースは海沿いの平坦のあとでヤマがある。そん時アバれりゃいい!!オレたちクライマーは!!
塔一郎が言いたかったのはそういうことだ。

この黒田さんの言葉にようやく背負っていた荷物が多少は軽くなったのか笑顔を見せる山岳。
うむ、勝負どころはさておき、普段は笑顔でいた方がいいですよね。
今は平坦。スプリンターの見せ場であるし、クライマーの山岳は後ろで休んでおいた方がいい。
"集中力は眠ってこそ上がる"山岳がレース直前まで眠るのもそれが理由である。
つまり後ろで寝ながらついてこいということだな!!いやいや。直線だとしてもそれはさすがに。

さて、ボクは今日のためにこんなものを用意した!!
ステッカーだ。ゼッケンの!!これを各自ジャージに貼るんだ!!

ヒトケタのゼッケン。
敗れた箱根学園の選手は来年インターハイではシングルゼッケンをつけることはできない。
それでもこのシングルゼッケンは先輩たちが背負ってきた憧れの番号である。つける意義は大きい。

泉田「エースナンバー葦木場!!
葦木場「アガるね!!」
泉田「2番雪成!!
黒田「ヤッベ。荒北さんの番号じゃねーかよ!!」
泉田「3番はクライマー真波!!
山岳「わあ!東堂さんと同じだ」
泉田「そしてボクはあこがれの誇り高きゼッケン4!!箱根学園最速の証4番だッ!!

胸にゼッケンを貼り付けて加速を開始する新インハイメンバーたち。
泉田くんを先頭にして加速し、離されていたはずの3年生との距離を一気に縮める。アブアブ。
どうやらここで箱根学園スプリンターによる最速対決が実現することとなりそうだ。
泉田くんは憧れの男である新開さん――箱根の直線鬼に勝つことが出来るのか!?やはり3番目の筋肉が勝利のカギとなるのか!?

新インハイメンバーの4人はどうなることかと思ったが、なかなかいい感じに纏まって来てますね。
これはやはり黒田さんの存在が大きい。ボケだらけのメンバーをひとりで切り盛りできそうなまとめ力がある!!
くどさのあるツッコミも多方面に行うには仕方ないということなのか。勢いで押さないと言うこと聞きそうにないしなぁ。

そういえば黒田さんは荒北さんリスペクトなのであろうか?微妙に表情も意識している気がしないでもない。
荒北さんはオールラウンダーだし、クライマーの黒田さんとはまた違うが、まあ尊敬するのは走りの部分とは限らないか。
荒北さんもあの面々の中でツッコミしながらまとめを行っていた感じがありますものねぇ。そりゃ尊敬もされるか・・・!!

さて、この箱学対決はどのような結果となるか。
先に走りのネタがつきるのはどちらかという対決になりそうだが・・・!?色々と期待したい。



RIDE.258 憧れの背中に  (2013年 27号)


憧れのままじゃ終われない
誰よりも尊敬してきた相手であるからこそ、この最後の闘いで勝利して想いを受け継ぎたい。
最速という名の重圧や責任、それら全てを継ぐために泉田君は闘おうとしている。

いくよ!!アンディ。フランク!!
おいで・・・ファビアン!!

ボコン。と異様な盛り上がりを見せる背中。これがファビアンか!!

泉田君の変質と同じタイミングで鬼の顔を出す新開さん。
さあ、箱根学園スプリンターの最後の闘いの開始だ!!

震える細胞。鳴りやまない鼓動。今からボクはこの人と勝負をするッ!!
遠かった背中。長かった日々。
準備はいいかい?(are you ready?)見せてくれ。キミたちの最上級のもてなしを!!アブ(ready GO)!!

日本語と英語を入り混じらせて筋肉に語り掛ける泉田君。器用なことをする。
でも最後はアブの一言でまとめてしまうんですね。さすがと言えよう。
そして新開さんもまた前回のスプリントを開始する。新たな奇声を上げながら!!

あるるるるるる!!

な・・・なんだその掛け声は!?今までそんな声あげてなかったじゃないですか!!
まさか最後の闘いに至ってまだキャラ性を高めようとし出しているというのか!?向上心ハンパねーな。

追いついた泉田君たちに新開さんがすかさずカウンターアタック。
出現した箱根の直線鬼。それに一瞬で反応して追いかける泉田君の全身マッスルスプリント。
その加速度は次元が違い、さすがに誰もついてはいけない様子。
解説要員の箱学サブメンバーもさすがにこれでは実況もできませんわな。

1年の高田城によるとレギュラーとはジャージが違うらしい。まだHAKONEジャージですがとか言っている。
何かと思ったら確かに胸のマークが箱根学園ではなくHAKONEになっていますな。
袖とかはちゃんとHAKOGAKUになっているというのに・・・まあ、箱根学園ジャージは特別ということなんでしょう。

新開さんと泉田君はこのまま海沿いの道をひた走る。
河津の交差点を右に曲がり平坦が終わったところがゴールとなる。そこまで全開サイクリングとなるわけだ。

泉田「新開さん!!アブアブ!!アブアブアブ!!」(超えます!!)
新開「泉田るるるる!!」(来いぃぃ!!)

おまえら、思っていることの方を口に出せよ。
というか新開さん、そのるるるるはどう考えても無理矢理つけているだろう。言いにくいことこのうえないるるるる。

体をぶつけるぐらいに肉薄しながら鎬を削る2人。
思わず楽しそうな笑顔を見せる新開さん。
そして少し引き離す。差が出来た!?このまま離されるのか泉田君。
いや、この日のために新たな筋肉の名前をつけて育ててきたのだ。このまま披露もせずに終われはしない!!

体中の筋肉で最も大きな筋肉。それが背筋!!
肩を通して腕を引き、臀部を介して脚を回す。全ての筋肉の源!!
厳しく、そして偉大。筋肉の父!!それがファビアン!!

なんだかよくわからんが、凄いね背筋。
その偉大な力により引き離されかけた距離を再び詰めることに成功する。

泉田ァ!!ホントにおめさんいい後輩だったよ。素直でまじめでどんな時も必ずオレに喰いついてきた。しつこいくらいに。
オレは密かにおまえが成長するのを楽しみに走ってたんだぜ?

託す相手が後輩にいる。これは何とも嬉しいことである。
自分を磨きながら後輩の成長を喜ぶこともできるわけであるのだから。
現役時代で追い越されていたら心中複雑になるかもしれないが、今ぐらいのペースで成長してくれるのはとにかく嬉しいでしょうな。

新開さん!!ああ。近づく!!
筋肉がクランクを回す度に。タイヤが地面を蹴る度に。あなたとの終わりの時が!!

5km以上の距離を争いながら駆け抜ける2人。
脚がもげそうなくらい疲労しようと緩めることは決してない。最後まで踏み続ける。
そしてついにゴールラインのように引かれている白線が見えた。あれがゴールだ。

なぜだ。なぜボクは泣いているのだろう。
そうか。これが――あこがれを超えるということ

滂沱の涙を流しながら白線を超え、両手を広げて空を仰ぐ泉田君。

成長したな。塔一郎

敗れた新開さんも認める見事な走りでありました。存分に勝利の雄叫びをあげるとよろしいでしょう。ァァアブゥウウ!!アアアア。

盛り上がった筋肉を大人しくさせ、新開さんに礼を述べる泉田君。
最後の走り、ボクはあなたの4番を胸に走りました!!と最後までリスペクトを忘れない男、泉田塔一郎。
なんともいい感じで引継ぎができたって感じですねぇ。
田所さんは最後まで壁であり続けるために勝って終わったが、こっちは超えさせての終わりとなりましたか。
いや新開さんもわざと負けたわけではないと思いますけどね。

平坦勝負を終えた2人は後は流す感じとなる様子。
まあ、これからは山に入りますからね。スプリンターの見せ場ではない。
残る6人が向かうのは伊豆最大の難所、天城原峠。
クライマーの見せ場となるここでの戦いは山神・東堂VS真波山岳
胸をかそうと鷹揚に述べる東堂さんであるが、この勝負はどのような結末となるか。なかなか読み辛いですな。楽しみです。



RIDE.259 2つの頂上  (2013年 28号)


平坦でのスプリンターの勝負は終わった。続いては山。クライマーの勝負である。

この道は山へと続いているッ!!
ひとつのループ橋を経て伊豆半島最大の屋根、天城原峠へと向かっている!!そこに山がある!!
ならば登ろう!!この道の最高点。最も空に近いところまでどちらが先に到達するか。
勝負だよ!!全力を惜しむなよ真波山岳!!

東堂さんの宣言によって始まる勝負。
いつでもしかけてくるがいい、そのことごとくをねじ伏せてみせようと強気な発言の東堂さん。ワッハッハ。

同じクライマーである黒田さんとしても東堂さんは目標であり、今すぐにでも勝負したいという想いはある。
しかしこれはレースである。残った相手に福富さんや荒北さんがいる。
最終的にレースに勝利するためには自身の役割を果たさなければならない。東堂さんもそう言っていた。
クライマーにはそういう時がある。チームの勝利のために徹しなければならん時があると。

わかりますよ。今なら!!

勝利のために残り、徹する黒田さん。
一方の山岳は東堂さんと勝負をするために山を駆ける。
ここで山岳による東堂さんの凄さの説明。
とにかく無駄がない。滑るように登るのが東堂さんの凄さである。なるほど、忍者とか言われてましたものね。

あまりにも自然で簡単そうにやるから誤解されることも多い。
まあ、確かに巻島さんのようによくわからないが速い!!というのとは違いますわな。
下手したら自分でも勝てるんじゃないかと思わせてしまうのは・・・東堂さんの人柄もあってのことか。

小さなロスを極限まで削って、コーナーワークやシフトチェンジを全部計算してやってるんだ!!
だから音もなく加速する!!気づかない内に引き離される!!
無駄なのは――口数だけだ!!

おっと、なんと的確なツッコミをするのだ山岳。まさしくその通りであるから困る。
ワッハッハと笑いながら俺のスリーピングクライムに圧倒されたかと述べる東堂さん。
このままオレの勝ちってことでいいな!!女子人気も含めて!!などとも述べだす。本当無駄口が多い!!

おまえ、今口数だけ無駄多いみたいなこと思ったな?

いい勘してますね。まあ、自覚もあるんでしょう。
荒北さん辺りには毎日のように言われている感じがしますからねぇ。要するに治す気は全くないってことであろうが。

女子人気対決はオレの勝ちってことでいいよなと満足そうな東堂さん。
まあ確かにファンブックによると女子人気はかなり高いらしいですからねぇ。
作中でもファンは出てきているし、自画自賛だけではないということですな。

ファンを大事にするがそれでもそれが第一というわけでもない東堂さん。
作中で女性ファンがつくキャラはよく見るが、こういう意識のキャラというのは余りいない気がして新鮮ですなぁ。
最初に出てきた時はファンとか実はいないんじゃないかとか疑ってしまってゴメンナサイ。

時に真波。あのメガネくん。彼とはちゃんと連絡をとっているのか。

おっと、いきなり話を変えてきましたね。
確かに山岳は坂道に対してどんな気持ちでいるのか。気になる所ではありました。

坂道はインターハイのあと、例の約束のボトルを渡すために山岳を探している。
東堂さんは約束の話を聞き、山岳を見つけて坂道と引き合わせる。
なるほど。ちゃんと例のボトルはその日に返却することができていたんですね。
2人の出会い示す縁。その象徴ともいえるボトル。今はどうしているのかと問うと――

捨てました

顔を伏せてそう答える山岳。
なるほど。やはり思い悩んでいたようですな。箱根学園が2位になったのは自分のせいであると。
しかも1位を取った坂道はあの日、箱根の山道で助けてインターハイまでやってこさせる動機を作ってしまった男である。
そんなボトル、置いとけるわけないじゃないですか。とのこと。
ふーむ、やはり責任感が強いというか、思ったよりも繊細な子であったんですなぁ。
その坂道を運んで先頭まで連れてきた荒北さんは平然としたものだというのに・・・!!
いやまあ、荒北さんが運ばなくても他の総北メンバーに付いて走れば追いついたとは思いますけどね。

悔恨の表情を見せる山岳に東堂さんはこう語りかける。

もしそうなることが先にわかっていて、彼が山で倒れていたとするならばどうする?おまえは助けないか?
否。助けてしまうな。見すごすことができないのだろ。山で困ってるヤツを。真波山岳、おまえという男は。
ならばその選択、間違いはなかったということだよ!!
時は一瞬で過去に返らない。おまえは全力を出して負けた――それだけだ。
それでも過去がおまえを苦しめるなら。簡単だよ――そのジャージをぬげばいい。
言っておいたぞオレは。自由に走れと。真波!!それがおまえに最も相応しい走り方だからだ。

まあ確かに。理屈や順位に拘ってマユをひそめて走る山岳など山岳ではない。
そういう鉄面皮キャラは福富さんの役どころでありますからなぁ。
そんなお前は女子人気のライバルとして取るに足らん!!と吠える東堂さん。
福富さん系のキャラでは女子人気の獲得が難しいと言いますか!!そうなのかもしれない。どうなのだろうか。

彼は――小野田くんは。
オレにはわかるな。すでにおまえにとって重要な存在だ。
このあと3年間目の前にいて競い合うような、更にお互いに成長し合い、高め合う存在になるよ。
だから大切にしろ。電話は毎日かけろ

毎日!?まるで心配性のオカンのようでありますな!!
うん、まあ確かに巻島さん相手に電話する時の東堂さんはそんな感じでありましたが。

正直、相手のことを"憎んで嫌って――"オレにはうらやましいのだよ。
すぐに会えていつだって自転車で対話できる場所にライバルがいるのだから

ふむ。やはり巻島さんがイギリスへ去って行った時の東堂さんのショックは計り知れないものがあったようですな。
一応インターハイで最後の試合までやった後だからまだ落ちつかせることはできたのでしょうが・・・
しかし、東堂さんは卒業してからも自転車を続けるつもりなんですかね?

ともかく、東堂さんと話したことで大分昔の調子を取り戻せつつある山岳。
ようやく登りながら笑顔がでてくるようになりました。やはり山岳はこうでないといけませんね。
そしてこれでようやく勝負になるとも言える。
本調子でもない男との戦いが最後でもアレですしね。

だが山はゆずれんがな。オレは山神東堂尽八だからな!!

さらりと勝利を決めてしまう東堂さんでありました。うーむ、貫録という奴か。
まあ山岳もまだまだインターハイの時のような様子ではありませんでしたしね。
誰よりも速く頂上に登りたいという気迫までは持って行けれなかったか。
まあ、勝利よりも大事なものを貰えたみたいだからいいんじゃないですかね。
自分らしく自由に走る。ライバルを大事にする。この先もずっと覚えていくべきことを教わったわけなのですから。

新開さんは敗れたが東堂さんは勝利した。
田所さんや巻島さんも最後の勝負は勝利している。やはり3年は高い壁なのか。
残るは4人。
運び屋とエースの2人組が残ったわけだ。
これは最後のゴールまで一気に行きそうな流れでありますね。
果たしてどのように後を託す展開となるのか。気になる所である。
黒田さんがどういう風に荒北さんをリスペクトするのかも気になる部分だ!!



RIDE.260 黒田、逆らう  (2013年 29号)


天城原峠新天城トンネル――こいつを越えればのこり2000m!!そこがゴールだ!!

新旧対決も残るは4人。
今回の闘いはエースの争いとなるまでに引っ張る役目となる2人の争い。
荒北さんと黒田さん。その関係はいかなるものであったのか。
それは黒田さんの回想で語られる。

オレは才能にあふれていた

そう自信満々に語る黒田さん。
バスケ部や野球部に助っ人として呼ばれ大活躍。その類稀な資質を見せつけていた中学生時代。
どんな競技も人より早く確実に上達することができた。
"上級生さえ超える""スポーツの天才"陰でそう呼ばれるような人物であったという。
まあ絵は下手だったみたいだが・・・スポーツとは関係ないですしね。うん、どうでもいいさ。

当然、小学生の時近所のヤツに誘われて始めた自転車もズバ抜けていた!!

ふむ。14才の頃の泉田君はなんとも幼い感じでありますな。
元々童顔っぽい部分はあったが、筋肉もついていないとなるとさらに幼く見える。
鍛えることで人って変わるものなんですね。この頃はアブアブ言うようになるとは本人も思っていなかったであろう。

まじめで無遅刻無欠席。成績もよく難しい本の話もできる泉田君。
ほう。脳まで筋肉になっているのかと思ったら意外と知的な筋肉だったんですね。
やさしくて親切で学級委員なんかもやってたが、スポーツは正直自転車以外はイマイチ。
その代り自転車にかける情熱はハンパなかったという。ほうほう。

黒田さんは狭いコートや球場で動き回る他のスポーツより自転車の方が向いていると考える。
オレの才能を爆発させるにゃカゴん中は狭すぎる!!とのこと。
なかなかの自信家ですな。まあ、それだけの実績は残しているわけですしなぁ。

そして泉田君の誘いに乗って高校は自転車の名門、箱根学園へ進むこととする黒田さん。

皆は望んだ。オレの名門、箱根学園での活躍を。
そしてオレも当然だと思った。この人が現れるまでは。

新入部員の1年生を並べ、1人1人かいでやるよとか言いながら本当にニオイをかいでいる荒北さん
なんというか、あまりにも不信で不気味な先輩という印象にしかなりませんぞ!!
しかしその嗅ぎ分けの力は凄いものがある。辞めそうなニオイとかサボりそうなニオイとかも判別できるそうな。
泉田君は努力するニオイ。見所があるヤツとの評価。ほう。本当にどんなニオイなんだ・・・?

そんな中、黒田さんのニオイを嗅いだ荒北さんは少し表情が変わる。
ズバ抜けた才能の持ち主である黒田さんへの評価。それは――

クソエリートのニオイだ
プライドのかたまったドロドロのォ・・・てめェをスーパースターだとでも勘違いして世界の中心にいるみてぇなニオイだ。くっせ!!
そのカッコイイ体であらゆる競技をこなしてきた万能マンってとこか?
辞めちまうんじゃねーの。自転車。例えば・・・バスケのが本当のオレだか言って。

なんとも鋭い指摘であるなぁ。
しかしいきなりそんなことを言われて追及されては黒田さんならずともムカつく。
思わず胸ぐらを掴む黒田さん。が、そんな黒田さんの頬に拳を・・・当てる前に寸止めする荒北さん。
さすがに場馴れしているというかなんというか。リーゼント時代の腕前は健在のようですな。

自転車てのはカコクで地味だ。才能だけじゃどうにもなんねェ。辞めたくなるしツラいのなんて毎日だ。
いろいろスポーツできるとそっちに逃げるぜ!?本当に自転車できんの?甘チャン!?

どこまでも追い込みをかけてくる荒北さん。
一応福富さんにケンカは止められているらしい荒北さん。荒事をするつもりはないらしい。態度を改める気もないようですがね。

オレはアンタみたいなヤツが一番キライだ!!
口ばっかりで人の嫌なところばかり探して、強くもないくせに暴力に頼ってるんだろ!!

まあそういう先輩はいますよね。イヤミな口だけは立派という人。
しかし荒北さんはそういう先輩とはまた違う。

いつでも勝負来いヨ。見せてやるよ。自転車しかねェ、オレの走りを

元々は野球をやっており、ケガで道を見失い、福富さんとの出会いで自転車と巡り合った荒北さん。
今の自分には自転車しかないと思って走り続けているのでしょうな。
その執念は才能をも凌駕し、黒田さんを寄せ付けない。

それがこの荒北靖友さんとの出会いだった!!

出会いの回想から、別れのレースの現在へと帰って来る黒田さん。
トンネルも抜けたことだし、いざ勝負の時でありますな。

切れ味バツグンのカミソリコーナーリング。それが荒北さんの真骨頂!!
ほぼノーブレーキ!!荷重が横Gに負けてふっとびそうなトコだけ瞬間のクリックブレーキ!!
それが超絶に上手ぇ!!しかもそれしかねェって、命がけの走りなんだ!!

走り屋っぽい感じの荒北さんらしい特徴ですな。チキンレースとか凄い得意そうだ。

けど、オレは山を捨てたァ!!徹した。そいつは、このゴールをとるためだ!!
この下りを下りきった先にある、いのわさランドの向かいの市営駐車場。そこの最初のラインに先に到達するため。
そしてもうひとつ・・・!!今日、荒北を超えるためだ!!

よい意識の仕方でありますな。
泉田君も今の黒田さんは視野が広がったと語る。
昔の黒田さんなら自分が山も最終ゴールもどうにかすると飛び出していったでありましょう。
それは自分を中心に据えたものの見方をしていた頃の黒田さんの考え方。
しかし今は自分もまわりの世界を構成するパーツの一部として見ている。
そうすることで、その時とるべき行動、するべき判断がとても正確になったという。

同時に、彼は趣味で続けていた友人とのバスケをやめ、草野球をやめました。
彼はやりますよ。考えてもみてください。自転車に集中したんです。
ボクは知ってる。昔から彼は――ポテンシャルは本来高いんです!!

ふむ。荒北さんが言ったことに自身も覚えがあると感じ、バスケや野球といった他のスポーツを切り捨てたわけですな。
そんな黒田さんが、今この最後のレースで仕掛けようとしている。
急激なカーブ。そこに突っ込む荒北さん。ついていく黒田さん。づあああ!!

なんだてめ。その脚、脚のしなりは!!まだ踏む気かよ!!

これがポテンシャルの高さという奴であろうか。
突っ込む度胸だけでなく、そこで踏み込める技術と力を持っている黒田さん。
曲がり切ったところで前に出ることに成功する!!

荒北さん――オレは本当にアンタが嫌いだった。
最初の勝負に負けて、マジで殴ってやろうと思った。
けどそれが図星だって認めるのがイヤで練習した。なのに勝てなかった。
だからオレは決心した。強くなる方法をきいた。直接。

教室まで自ら出向き、強くなる方法を教えてくださいと頭を下げる黒田さん。しかしその答えは――

ハ!!バァカ。アタマ下げりゃ何でも貰えると思うなヨ甘チャン!!
けど。一番キライな奴にまでアタマ下げて強くなりたいってのは純粋なキモチだ。いいんじゃナァイ?
捨てれたじゃねーか。プライド
盗めよ。強くなる方法なんて。オレはぁ、そうしてきた。できんだろ。おまえそゆタイプだ!!

ホント、よく理解できているんですね荒北さん。
ニオイを嗅ぎ分ける力というのは相手の本質を理解する力であるといえるのかもしれない。
相手のことを相手自身よりもよく理解する・・・なんという怖い先輩か!!
それでいてアメとムチの使い分けもなかなかのものである。
最後のアドバイスがなければ黒田さんも今こうして走り続けていることはなかったかもしれませんからなぁ。

荒北さん――今、オレは感謝の言葉しかありません。
オレはあなたから"一筋"って魂を教わりました!!

ゴールまでのこり600m。運び屋の闘いを見事に制してみせた様子の黒田さん。
その黒田さんを見ながら心の中で毒づく荒北さん。

ったく。遅っせーんだよ。黒田。今頃成長してんじゃねーよ。バァカチャンがヨ!!

そういいながら笑みを浮かべる荒北さんでありましたとさ。
うーむ、なんだかいい話でありますな。
荒北さんも何だかんだで箱根学園には欠かせない人材であったということですな。後輩指導的にも。

さて、残るは福富さんと葦木場のエース対決。
この対決は一体どのようなものとなるのか・・・
まあ、いくらなんでもここで逆走を開始したりはしないと思うが、はてさて。
エースにしてはメンタルの弱い感じの葦木場にどのような言葉を刻むのか。楽しみであります。



弱虫ペダル 31巻


RIDE.261 箱根学園のゴールライン  (2013年 30号)


運び屋対決も終わり、のこりは500m。ゴールを獲るエースの対決が始まろうとしている。最後の勝負だ!!

福富さんと葦木場の一騎打ち。
まずは黒田さんが得たリードのおかげで先行する葦木場であるが、すぐに追いつこうとする福富さん。

さすが箱根学園史上最強のエースといわれた男!!まるで重戦車!!
だが、やれる。おまえなら。葦木場ァ!!獲れよォ!!

エースを送り出し、激を飛ばす黒田さん。
それはいいのだが、福富さんを速いといいつつ重戦車と評するのはいかがなものだろうか。
重戦車って速いイメージないんですけど・・・地味に低評価なんじゃないか!?
まあ、鉄面皮なので当たりに強そうなイメージは確かにありますけどね。

2人を送り出した後、荒北さん。黒田さんが最後のカーブで前をとってきたことを評価する。
でもほめはしないよと言い出す荒北さん。うむ、照れ屋というか、相変わらず人を褒めるのには慣れてない感じですな。
しかしまあ、それでも黒田さんにしてみれば十分な評価を貰えたこと事態が嬉しいわけで。

ありがとうございます

やけにデレた感じの表情で述べる黒田さんでありましたとさ。

さて、残る2人のエース対決。
葦木場も頭の中でクラシックが鳴ってる好調状態。さすがに仲間が送り出してくれたこともあり、テンション高いですな。
恩のある福富さんに雄姿を見せるという意味もあるし、ヘタって何かはいられない。

血は躍動。肉体は歓喜。心は舞う。前に、前にって。
弾む。伝達する震動。リズムに合わせて、その指揮棒(タクト)。
思い切り振り切れ!!葦木場拓斗!!

ははぁ、タクトと拓斗がかかっているわけですな。面白いことを言う!!
それはさておき、メトロノームダンシングを開始する葦木場。
無表情で固まっている福富さんと違い、葦木場は走り出すと笑顔で表情が固まる感じである。それはそれで怖い。

すいません。勝ちます、福富さん。
"一度負けた相手には二度負けない"。それが箱根学園のエースの役目ですから!!

そう述べての加速。そしてゴール。何!?もうゴールしたのか!?

思わぬ速さでの決着に驚いたが、ともかく葦木場は福富さんを押さえて勝利した。
ついに勝てたと空を仰いで吠える葦木場。良かった良かった。
これで福富さんとしても心残りなく後を託すことができそうでありますね。

新旧メンバー8人全員ゴールしたところで、3年間本当にお疲れ様でしたと改めて礼をする新メンバー4人。
福富さんは葦木場のゼッケンを胸からはがし、本来の位置に貼り直して述べる。

もっと強くなれ。そして必ず来年のインターハイ。箱根学園の王座を獲り返せ!!

はい!!必ず!!

声を揃え、答える4人。うむ、いい感じに受け継いでいるじゃナァイ。

そして部員が全員ゴールしたところで記念撮影を行う。
バイクは福富さんの1台。もちろん主将の福富さんはそのバイクの前で中央にて映る。
その後ろに立つのは新キャプテンの泉田君。隣には新開さんの姿がある。
東堂さんはひとりだけポーズを決めてやたらと目立っている。さすがだ。
荒北さんは端で座り込んでいるし、なんとも写真撮影だけでも性格の出る連中である。ジャージの前を締めろ山岳。
というか、この写真の葦木場はさすがにデカすぎないだろうか。
少し段差のあるところに立っているとはいえこのデカさは・・・東堂さんも驚きの目立ち方だ!!

まあ、ともかく。箱根学園の送り出しファンライドはこれにて終了。
きっちりと引継ぎは終えたという感じです。
そして時は流れ――鏡の前でピカピカの制服に着替える坂道。

が・・・がんばろう。今日からボクは2年生だ

ついに学年が変わりました。
3年生たちはもう卒業し、新たな1年生がやってくる。
これからが各学校の新生チームの本格的な戦いとなるわけでありますな。
しかしこの時間が経過している間に総北はどうなっているのだろうか?主に鳴子。
スプリンターを辞めたことを告げて総北にどんな変化が訪れているのか。
その辺りも含めて2年編は色々と見所がありそうな気がします。楽しみだ。



RIDE.262 新総北 スタート!!  (2013年 31号)


2年生になった小野田坂道。
ということは、総北にも新たな1年生がやってくるというわけである。
校舎には自転車競技部インターハイ総合優勝の垂れ幕が誇らしげに下げられている。
さすがに学校としてもインターハイ優勝というのは嬉しい話なのでしょうな。
そして小野田坂道君個人総合優勝の垂れ幕も並べて下げられている。これは・・・恥ずかしい!!

そんな総北高校に現れた新入生。
オレ達が入って強くしてやろうと述べたりする不敵な男。と緊張しまくりでガチガチな男の2人組。
その2人が耳にするのは自転車のタイヤが路面をこする音。
裏門の坂を登ってアイツがやってくる。
自転車競技用のヘルメットをつけた丸いメガネの男。そう小野田坂道。ママチャリで登場である!!ちりりん。

相変わらずロードとママチャリを使い分けている坂道。
まあ、ロードは借り物であるし普段は使えないということなのかもしれないが・・・
ロードバイクに慣れた後でよくママチャリに長時間乗れるものだと感心する。

そんな坂道、垂れ幕を見て盛大に驚きずっこける。そりゃそうでしょうな。
しかも助け起こしてくれた不敵な新入生の褒め殺し。

あれは自転車界のスーパースター。この学校の2年生、小野田先輩の名前だ。
おまえもそういうヘルメットをかぶる気概があるなら覚えておけ。
インターハイで優勝した方だ!!

そりゃあ誰よりも存じておりますよ。インターハイで優勝したことは。
スーパースターという自覚はたぶん他の誰よりもないと思うけど。
このママチャリボーイがあの小野田先輩だったとしった時、不敵な男は何を思うのか。
緊張してる男の方はママチャリで裏門の激坂を登ってきた凄さに気付いている様子ですけどね。

坂道の新しいクラスは2組。今年は今泉君と同じクラスらしい。ほほう。
鳴子は3組で別のクラス。先生に頼んで同じクラスにしてもらおうとしたがニアミスだったらしい。
それは単に先生が意見を聞く気がなかったということではなかろうか。
まあ、教室内の描写はあまりないから主要メンバーが同じクラスにいないといけないってことはありませんわな。

この場面で鳴子が大阪で敗れて帰ってきたときの回想が挟まります。
といってもスプリンターを辞めるとかそういう話は出てきていない。
坂道が言うには練習中の集中力がすごく変わったということであるが・・・?

どうでもいいが今泉君が鳴子の大阪土産にちょっと反応していたのが面白い。タコヤキ好きなのかね。

ともあれ、スプリンターを辞めて"新型鳴子章吉"に変化を遂げようとしている。
夏のインターハイには完成するのでありましょうな。
今泉君と仲良く憎まれ口を叩いているのならば心配はなさそうである。

坂道たちが2年生にあがったように、3年生となった手嶋さんと青八木さん。
この部室の扉を初めてたたいた2年前のことを思い起こしている。

緊張して心臓がとびだしそうだったあの日から時がたってオレたちは最高学年になった。
これから新1年を迎え入れ、チームをもっと強くする。
正直厳しい1年になる。けれどやらなきゃならない。先輩たちがのこしてくれたもののために。
毎日毎日が1秒1秒が勝負だ!!積み上げていく!!全てはインターハイで勝つために!!

3年になり、新たな自転車部を――王者となった自転車部を盛り立てる誓いを明らかにする手嶋さん。
しかしそれでもきっとへこたれる日、心折れる日もあるのではないかと考えている。

下には相談できねェ。そういう時は、原点に帰ろう

そういって青八木さんに渡すのは勝という字が手の平側に書かれたグローブ。
必というグローブを持つ手嶋さんと合わせて必勝。
2人で必ず勝つと決めてやってきた。それが総北での2人の原点。

手嶋「2人でいればできないことはない!!いくぞ青八木!!」
青八木「わかった。純太!!」

という風に気合を入れる練習初日。
その初日から早速入部を希望してくる気合の入った新入生が2名。もちろん冒頭で出てきた2人組である。

不敵な男――鏑木一差
緊張の男――段竹竜包

相変わらず緊張しまくりで斜めになってる段竹はさておき。
不敵な男である鏑木は早速不敵なことを口にする。

総北には"1年生レース"という名物レースがあるとききました。
もし、そこで優勝したら。段竹と2人でワンツーきめたら。
王者、総北のメンバー6人の内、オレたち2人が確約ってことでもいいすか

小野田坂道を超えるために
そういう名目でやけに先走った希望を述べる鏑木。
まてまて。1年生レースは1年生だけで走るものでしょ?それで何故確約なんて話に。
総北は既に5名枠が埋まっていて、残る1人をどうしようかという話だというのに・・・

これはまさか、やはり実力で劣る手嶋さんはチームのためにレギュラーから外れるとかそういう展開なのか!?
2人でいればできないことはないというセリフは1人が外れるというフラグだとか・・・ありそうだなぁ。

まあ、鏑木たちが1年生レースを制せれない可能性もあるので何とも言えませんけどね。
杉元弟もやってくるだろうし、一筋縄ではいきますまい。

レギュラーの件はさておいても、自信のある奴が入ってくるのはいいことである。
今泉君も練習強度が上げれると喜ぶことでありましょう。
まあ、まずは本物の坂道を見てモチベーションを保てるかどうかが問題ですな!!



RIDE.263 杉元の決意  (2013年 32号)


1年生レースでワンツーを決めたらインハイレギュラー6人の内の2人として確約。
なかなかとんでもない申し出であるが、それを受ける手嶋さん。ほう。
思ったよりもあっさりとOKしたが何か考えがあるのでしょうか?

鏑木・段竹の他にも入ってくる新入生は当然いる。
杉元の弟、定時も無事に総北に入れているようでよかった。
これで一緒に走れると喜ぶ弟に、インターハイでもな!と返す兄。ほほう、目標の大きいことであるな。

いけるさ。信じて努力をつづければ。去年のインターハイを見て、肌で感じてボクはそう思った。
定時・・・おまえは宣言通り総北に合格した。
だから兄ちゃんもおまえに宣言しよう。冬のころからずっと考えてたことなんだ。
大変だと思う。正直。だけどやる!!ボクはインターハイ総北メンバーの6人目になる!!

宣言するといいながら口にはしていない。
が、それでも心の中で誓い、静かに燃える杉元。
割とマイペースな子であったのだが、いい表情するようになってるじゃナァイ。

てな感じで、混沌としてきたレギュラー争い。
鏑木、段竹の申し出が通り、言葉通りにワンツーを決めた場合、現メンバー5名のうち誰かがぬけることとなる。
その場では指摘しなかったが、さすがに青八木さんも気にかけている様子。
今の感じだと手嶋さんが真っ先にぬけることになりそうな気がしますしねぇ。

――どうなるかは予想できないさ。ピエール先生の話じゃ入学前に説明会の段階で入部の内容かなり聞かれたって。
"全国優勝"のチームだ。これから更に入部の人数もすごいことになる。経験者も多いだろう。
人数が増えれば単に実力勝負とはいかない

ふむ。手嶋さんとしてはワンツーは簡単ではないと踏んでいると?
まあ確かに全国優勝を果たし王者となったのだから、有望な選手がやってくる可能性は高いですわな。
しかしピエール先生、練習にも試合にも顔を見せないのに細かい仕事はやってますのね。

今年の1年生レースは去年の逆回り
平坦区間からダム周回に入って裏峰ヶ山を登るコース。
事前に下調べをしていたら違っていて驚かせることができるという仕組みだ!!
いや、毎年入れかわっているという部分まで調べられていたらあまり意味がないのでは?まあ、いいんですが。

定時と学校で遭遇する坂道。合格おめでとうと祝福する。
定時は事前に坂道の姿を知っているし、鏑木のように勘違いするようなこともなくていいですな。
しかし、ここで坂道がガシャポンを落としたのは何かの伏線となるのだろうか・・・!?

昼休み。部室で1人ローラーを回している男がいる。誰あろう、杉元照文である。
どうやら今泉君に言われて朝、昼と小まめに時間をとって練習している様子。

だいぶ違うだろそれで。筋肉が覚えるんだよ、負荷を。
おまえはまとめて高負荷の練習するよりこまめに上げる練習してった方が伸びる。そういう脚質だ。杉元。

なるほどね。脚質によって練習の仕方も変わるって話か。
しかし杉元、今泉君に教えを請うていたとは・・・確かに心の中の宣言は嘘ではない様子ですな。

ボクは本気なんだ
小野田にインターハイでみせられて、チームの皆の信じる姿を見て、最後のクリテリウムで手嶋さんにジャージを渡されて。
ボロボロになってあきらめなかった小野田。それでやる気出ないヤツなんかいるわけないじゃないか。

様々な刺激を受け、さらには弟も入部する。
自身は兄としてずっと弟の目標でいたい。そういう想いももちろんある。だから頑張る。
それでもやはり不安はある。少しは強くなっているのだろうか・・・

――気づいてねーのか自分で。なってるよ。一歩づつだけどな

杉元だって頑張れば成長する可能性はあるって話ですな。1年の時から頑張っていれば・・・!!
というか、やはり総北は指導してくれる人がいないんじゃないかと思えて仕方がない。
聞く気があれば教えてくれる人は多いが、能動的に指導しようとしている人が見当たらない。
まあ、レギュラーは皆自分たちを強くして大会に勝つのに本腰を入れてるだろうからしょうがないか。
引退した後とかはちゃんと指導してあげてもよかったとは思うけども。というか監督・・・

まあともかく。
杉元も手嶋さんからもらった総北ジャージに相応しい男となろうと頑張っている。
新入生たちを迎える時もジャージに袖を通している杉元。
あれ?後ろに古賀先輩らしいメガネの人がいるけど、ジャージは着てないな・・・実はもう半引退状態なのか!?
合宿にも参加してなかったし、今は総北自転車競技部の整備担当として在籍しているという可能性もありますな古賀先輩。

さて、手嶋さんから新入生に対してお言葉。

今年の目標は連覇だ!!
決してやさしい練習をするつもりはない。夏のインターハイに照準を合わせる!!
はい上がってこい!!レギュラーで走りたければ!!1年!!
強い者にはチャンスをやる!!チャンスが欲しくば強くなれ!!
忘れるな。胸にきざめ。オレたちは王者だ!!

ほう。なかなか堂に入った演説ではないですか。
やっぱり王者ってのは自信満々じゃないといけませんよねぇ。

3週間の間は2、3年と1年は別メニューで練習。
そして3週間後には1年生レースが行われる。この結果で2、3年生の練習に加われるかどうかが決まるわけだ。
その3週間後。レース当日の総北高校正門前。
これからレースに挑もうと緊張した面持ちの若者たちが顔をそろえている。
うーむさすがに今年は凄い人数ですな。見えるなかから判断しただけでも15〜6人はいる。

緊張のレース前。そこで手嶋さんに声をかけてくる男が1人。

去年の3位は返上します。強くなりたいんです。ボクも――この1年生レース走らせてください

おぉ・・・これは面白い申し出である。
1年生レースにどのような波乱の風を起こすのか。期待したい。
こういう熱血な感じというか、ダメな子が心を改めて頑張る姿というのは応援したくなるものがある。
しかしやはり成長はしきれずに――というのもよくある話。
さてはて杉元はどのような結果を見せてくれるのか。
そのジャージを着るのに相応しいぐらいの強さが身に付きだしているといいですなぁ。



RIDE.264 広い世界に  (2013年 33号)


あの日ボクは想像しただろうか。
寒咲さんに会って、今泉くんに会って、鳴子くんに出会って。
部に入部していきなりだったこのレース。その一歩がこんなにも広い世界とつながっていたなんて。

1年前のことを思い出し、感慨深そうにしている坂道。
部活動というものに縁のなかった坂道としては激動の1年でありましたなぁ。

手嶋さん。青八木さん。寒咲さん。鳴子くん。今泉くん。
思い直すと、改めて感謝の言葉しかないよ

かつてはレースに出る側だった坂道。それが送り出す側になっている。先輩になるとはこういうことか。
しかし自分が走るわけじゃないのに皆のドキドキが伝わってきて緊張したりしている。
1年たちのこの慌ただしい感じも初々しくてよろしいですな。

運動部の部活の経験のない坂道。後輩が出来るのは初めてとなる。
ならば中学の時に経験のある鳴子がアドバイスをしてくれる。
後輩が入ってきて先輩が抜ける。そうやって移ろいゆくのが部活というものである。だが――

いつまでも下のままじゃアカンで。
下見てってまとめて引っぱって、しょげとる時には励まし、上手にできたらホメたらなアカン。先輩がそうしてくれたみたいにな。
先輩にはありがとうとは言えても同じおかえしができるわけやない。
せやから先輩からもろうた恩は後輩に返すんや
そうやってつなげていくんや。感謝(きもち)を。

うむ。それこそが部活動。受け繋がれていく伝統というものでありますな。
坂道は去って行った先輩たちに色んなものを受け取ったはずである。
ならばそれを後輩たちに伝えていくのも部活の先輩の役目なのである。重大ですなぁ。

"後輩"に――感謝(きもち)を!!

と、いい感じのアドバイスをもらった坂道なのだが・・・この3週間それが果たせている様子はなかったりする。
気持ちとしては先輩らしく振舞いたいと思っている。
のだが、気負いすぎて言葉にならずに空回っている坂道。
おかげで寡黙で怖い人というイメージがついちゃっている坂道。全然先輩らしいことできてないんだー!!

一方の鳴子や今泉君はスマートに後輩たちと接している。
経験の差もあるが、どちらかというと性格の差が大きい気がしますな。
鳴子は言うまでもないし、今泉君は自分からはともかく話しかけられたなら焦らずしっかり受け答えするでしょうし。

それにしても「肩にゴミがね」が「ゴミヤロウ」に化けてしまう坂道のコミュ能力はヤバイ。
気さくに喋りたいけどそれができないという悩みは凄く分かるがさすがにこれはなぁ。
メガネで目が見えないおかげでより一層怖くなっている!!ぷあああああ!!

そんな坂道にスターターをやってみないかと勧める手嶋さん。
去年金城さんが勤めていたスタートの合図を切る役目。それを坂道が!?
重要な役割だし、キャプテンを差し置いてと断ろうとする坂道。
だが手嶋さんはいう。みんなおまえに期待しているんだよと。
そう、「1年生レースの生きる伝説」である坂道に期待しているのだ。

1年生レースで初心者ながら山を制し、瞬く間にインターハイまで駆け上がり、その頂点を。個人総合優勝を勝ち取った男。

確かに伝説呼ばわりされてもおかしくない偉業でありますな。
途中リタイアしたと言っても序盤はママチャリで走ってたりするし・・・話題には事欠かない男だ。

その伝説の原点が1年生レースである。
自分たちがその伝説の道を踏襲する。1年生たちが緊張するのも無理はないことであるか。
今泉君がいうには1年から聞かれるのは坂道の話ばかりだという。うーむ、尊敬されまくってるんだなぁ。
で、今泉君はちゃんと答えているのかね?普段はオタク趣味で夜遅くまでアニメ見てるってこととか。
真似し出したりしたら困るからさすがにボカしているか。

上げてやれ1年の意気を。おまえの気持ち伝えてこいよ。スタートまであと3分だ。

手嶋さんの後押しを受けてスターターの位置につく坂道。
そして1年の皆さんに一声。かけるのかと思いきや、一人一人の手を取ってがんばってと言い出し始めた!!
この行為にテンションあがりまくる1年生たち。まるで憧れのアイドルに握手されたかのような反応だ!!
いや、idolってのは崇拝の対象って意味だし、その反応で正しいのか。
超えようと考えているはずの鏑木も驚き固まっておりますわ。

レース開始時間は過ぎてしまったが、何にしても全員のテンションはかなり高まった。
そして全員に声をかけ終え、スタートの合図を行う坂道。

この一歩はすごく広い世界につながってるんだ。だから、がんばってね!!

そう考えながら手を振り下ろし、そして走っていく姿を見るために顔をあげる。
そんな坂道の前を通り過ぎていくのは杉元。
さすがに1年生ではないので坂道の応援はもらっていない。
しかし目指すのは1位。そして総北の6人目のメンバーの座。
この目標がある限り、テンションの高さが他の1年生たちと遜色ないのは間違いない。
果たしてどのような結果となることか・・・

いよいよ始まる新世代の1年生レース。
杉元兄弟と鏑木、段竹。今のところの注目選手はこの4人だが、さらに有望な選手がいるのだろうか?
それこそ坂道のような素人なのに凄そうな選手がいたりする可能性は・・・?
波乱が起きそうなこのレース。楽しみにするとしましょう。



RIDE.265 最初の敵  (2013年 34号)


1年生レースに飛び入り参加する杉元。
おそらく総北史上初の出来事でありましょうな。2年が1年生レースを走るなんて。
しかしその行為は好意的に受け止められている。
インターハイ6人目のメンバーとなるべく挑むというその意志が評価されている様子ですな。

"格下"のレース出て必勝の優勝宣言。カンタンそうに見えてそう生やさしいモンちゃう!!
ワカっとるんやろうな、そこらへんは。経験者やから。
ワイの目から見てこの1年生レース――杉元の敵はぎょうさんおるで!!

やはり大勢いますか。なかなか試練の道でありますな。
だからこそ勝ち取ることに意味があるのでしょうけども。

さて、レースの経験者で先輩ということもあり、序盤は先頭に立って指示を行う杉元。
市街地区間は追い越し禁止。信号も多いしローペースで行くこととなる。

レースが始まれば今より20km/hは速くなる!!

などと去年誰かが言ったようなセリフを語る杉元。
まあ、実際実力者が多いみたいだし、そのぐらいは行くでしょうなぁ。にいちゃんかっこいいー!!

さて・・・!!始まった・・・!!
1年生レース!!二度目の!!もう巻き戻すことはできない!!
60km先のゴールをひたすら目指すしかない。たのむよ。たのむ。イメージ通り動いてくれよ、脚!!
二度目の特別参加だ。去年の3位を下回ることは当然できない。目指すは1着・・・!!やるぞ。集中だ。
小野田はできた。全力の走り。今泉も鳴子も同じ2年生だ。ボクもやってみせる!!人生初のレースでの優勝!!獲ってみせる!!

当然の如く意気の高い杉元。
唯一の2年生。しかも総北ジャージを纏っての出場である。
これで優勝争いにも絡めないのではさすがに恥ずかしい。
そんな風に自分を追い込んでいる杉元に語り掛ける謎の影。

先輩ィ!!さっき先輩が言ってた20km/h。田園区間に入ったらスピード上がるって、それってちょっと遅くないですか!?

何だか不敵なことを言いだす奴がいるな。誰だ!?
鳴子が言うには、最初に動くのは性格と脚質から言って沢田ゴリ蔵やな!!とのこと。
部室でもかなりイキってたという2人。まだまだ荒削りなスプリンターだ。

ツリ目の沢田と大食らいのゴリ蔵。
スプリンターのライバルとしてお互いライバル視している様子。アダ名はゴリ蔵だけど犬好きだそうな。知らんがな。

勝手に先頭に出てペースを上げだす2人。
このレースで勝つためにはこの前半、平坦でどんだけ後ろを引き離すかにあると思っているようだ。
まあ、今年のレースは山が後半にあるし、スプリンターとしてはその判断は間違ってないか。

オレの信条はハイペース!いかなる時もハイペース!!

またおかしな奴が現れたものですね。まあ、スプリンターだもの。こういう性格でも仕方ないさ。

しかし市街地区間でペースを上げるのはよくない。
信号が切り替わり、スプリンター2人と杉元以外の後続が止まる。フェアじゃない条件で差がつくこととなる。
なので2人今すぐ止まれと叫ぶ杉元。しかし2人は言う。
後続が止まっているのは分かっている。その上で引き離すために走っているのだと。

行きましょうよこのまま・・・先輩。先輩も欲しいんでしょ。"優勝"が・・・
このまま3人でローテーションしていけばイケるでしょ・・・ゴールまで。
やりましょうよ。誰も見てない

おぉっと悪魔の囁きでありますね。
さすがに2年生である杉元がこのレースに出てきたのだから優勝を狙っていると思われて当然である。
それに杉元は去年のレースで3位。途中リタイアの坂道より上の成績である。
しかしインターハイメンバーには選ばれていない。これはどういうことか!!

どういうことかも何も、1年生レースはインターハイメンバー選出の場所じゃないってことじゃないですかね。
実際にメンバーに確定したのは合宿をやり切ったことでしょうし。
あっちは完走した坂道に対し、逆に杉元は途中リタイアでしたからなぁ。
まあ、とはいえ1年生レースでも目に見えるぐらいの結果は残した方がいいのも事実。

目立ってアピールするつもりだ!アピールしたもん勝ちなんですよ世の中!!
オレらはスプリンターだ!ここで目立つ!!そして先輩は勝ちたい!!
だとすれば、"協力"しかないでしょ!!

手を差し伸べ、先行するための協力を要請する2人。
そうかー。田園区間に入ったら20km/h上がるという言葉に対する遅くないですか?という言葉。
それは20km/hが遅いという意味じゃなく、田園区間に入る前に速度上げましょうという意味だったのかぁ。
スプリンターだしもっと速度出せるぜという意味なのかと思ったら・・・いや、それも含まれているのか・・・?

ともかく、杉元はその差し伸べる手を拒絶する。

優勝はノドから手が出る程欲しい。だけどね、断るよ。ズバリ断る。
どんなことがあってもボクはルールだけはやぶらない男だからね!!

ふむ。真面目でありますな。そしてその真面目さが揺らがないところはまさしく美徳である。
自信家だけどヘボく、うざったい部分はある。しかしこういう面があるというのは良いことですな。うむうむ。

というわけでペースを落とさせ、後続を待つ3人。
レースは予定通り田園区間に入ってからが本格スタートとなる。
ハイペースで行きたいならルール通り、追い越し可能となるここからでありますな。
しかしレースが本格的にスタートするや否や飛び出したのはスプリンターの2人ではない。
ゴリ蔵よりもハイペース。異次元だと言われる2人。

鏑木と段竹!!あの2人本当に1年か!!

やはりこの2人。レースの大本命と手嶋さんも見ている2人である。
未だ脚質はわからないが、全体的に見て他よりも高いレベルを有している感じはある。
果たして杉元はこの2人に追いつき、争うことができるのだろうか?
弟とコンビを組む流れになりそうではあるが、果たしてどうなりますかなぁ。
ついでに沢田とゴリ蔵の今後が心配である。
諦めて他の部活に移っちゃうことがないかどうか心配だ。去年も先行して負けてそんなことになった子がいたな!!
まあ、あっちは出戻りでしたけども。2人には頑張って生き残り、杉元の真面目さを学んで欲しいものである。



RIDE.266 脅威の2人  (2013年 35号)


橋を越えて田園区間に入ったところで本格レースが始まる。
始まりと同時にとびだしたのは――1年、経験者の鏑木と段竹コンビ。
その強烈な飛び出しを受けていきなりバラバラになる1年たち。掻き乱されてるなぁ。

遅れだしている1年生たちに労いの声をかける手嶋さん。いいキャプテンですなぁ。
しかしペースを乱されて足を止めてしまってる人までいるのはよろしくない状況ですな。
それなりに人数のいたレースだがいきなり足きりされちゃった感じがある。

同じように置いて行かれている沢田とゴリ蔵。
やはり2人とも派手なスプリンターである鳴子を尊敬している様子。
その鳴子に叱責されている現状はなんとも面目が立ちませんわな。
坂に至ってるならまだしも平地でこれだけ置いて行かれていてはスプリンターを名乗ることもできませんわ。おほっ。

鏑木と段竹の2人はこの3週間でもレギュラーの面々に注目されている逸材。
自分で他の1年とはレベルが違う。2、3年の練習に混ぜてくださいと言ってのけるだけのことはある。
そして鏑木は入学初日の非礼を坂道に詫びている。
うーむ、本物を知ったら幻滅しないかなとか思ったが、それよりもあげた実績の方が凄いということか。
まあ、凄いくせに普段はオーラを放っていない坂道が悪いということでいいんじゃないかと。

気にしているのだったら今度の1年生レースで走りで見せて欲しいと述べる坂道。
まさにそれは鏑木にとっては願ってもない言葉だったでありましょう。
期待に応えるためにも当初以上に気合が入っている様子の鏑木でありました。

とくとお見せしますよ。オレの走りを!ほるあああ!!

足をしならせ、さらなる加速を行う2人。
かろうじてついてきていた最後の1年グループを引き離して独走をキメる2人。さすがと言えよう。
しかしその2人を果敢に追いかける姿があった。あのジャージは――2年生、杉元先輩だ!!

あっさり決まるかと思われたレースだったが、それでもまだ食い下がる男はいた。
絶対に6人目のメンバーになると決めた男の走りはさすがにしぶとい。

そう!!なるんだ!!
走る!!今泉や鳴子、もちろん小野田にだって負けてられない!!
ボクの経験者としての全てをかけてインターハイにいく!!そのためには、このレースで1位をとるんだ!!

その気合により、坂道たちを乗せた車が追いつくまで先頭争いのポジションをキープする杉元。おぉ。
この展開にはさすがに坂道や今泉君も嬉しそうな表情である。

鏑木たちがとびだすのは読んでいた。そしてどのタイミングでとびだして、どう動けばいいのか――
レース経験の多い今泉や鳴子のこの1年間の練習の中で身についていたみたいだ!!
ありがとう、今泉!!鳴子!!
このままいくぞ。最後まで。

と、内心誓いはしたが・・・この先のダムまでのゆるやかな登り道で千切ると鏑木に宣言されてしまう杉元。
どうにかついていってはいるが、さすがに最後までいけるとは思えませんからなぁ・・・
少なくとも1人でどうにかできるコンビではない。
ならば杉元も誰かとコンビを組むべきでありましょう。やはり弟の出番であるか。今どこにいるんだ弟。

ところで鏑木と段竹のジャージに書かれているTEAM SSとは一体何なのだろうか。
チーム坂道を結成するために作った自作ジャージとかだったら嫌だな!!
まあ、Sだけだと杉元もSなのでさすがになかろうが・・・
地味に気になる所である。



RIDE.267 6人目の男  (2013年 36+37号)


夏のインターハイ。決まってるジャージは5枚。
のこり1枚を着る男。それが決まる。この1年生レースで!!

本人たちもすっかりその気でいるようですが、本当にこの1年生レースで決めちゃっていいんですか?
慣習やぶりで杉元が参加してるからどうにかなってるが、本来なら他の2、3年生も交えて決めるべきでは・・・
というか鏑木、段竹はペアでレギュラーになろうとしてるのではなかろうか。
のこり1枚を着る男だとこの2人が勝った場合どちらかしか着れないことになるのだが・・・
まあ、その辺りは勝ってから当人たちで考えてもらえばいいか。

ダムまでのゆるやかな坂を駆け上る先頭の3人。
杉元はまだまだ引き離されることもなく食らいついている。
予想外の杉元の健闘に驚く鳴子。そして今泉君は――

まだまだだな。
まだまだだよ・・・たぶんな・・・あいつの本当の力は。これからだ

笑みを浮かべてそんなことを言いだす。
クールではあるんだが思い入れがある相手にはやはり肩入れしてしまうみたいですね。よいことです。

登り坂。鏑木、段竹、杉元の順で走っていたのだが突然列を外れる杉元。
フラフラしているがどうした!?
いや、どうしたもこうしたもない。追い抜いたのだ!!
なるほど。追い越しをかけるのであれば列を外れるのは当然ですな。
一気にいかずにフラつきながら行ったから気づきにくかっただけか。

追い抜いただけに留まらずさらに差を広げようとする杉元。ここで2人を千切る気か!!
そういえば前回鏑木にそこで千切るとか言われちゃってましたな。まさか逆に千切る流れとなるとは!!

1年生レースが始まる直前、今泉君に出場の意志を伝えている杉元。
どうやら過去に同じ千葉県のレースで今泉君を見かけたことがあったらしい。
今泉君は昔から大きくて注目される名選手であった。
その名選手と同じ高校に入り同じ部活に入り――今こうして語っている。

今泉。ボクはね、もし6人目になれてインターハイ出れるとしたら精一杯走りたい。
力の限り走って、チームのために走って、最後は――いや、これはモーソーかも知れないけどね。
最後おまえを――ゴール前でお前の背中を押せたらって。思ってるんだ。今泉!!

ふうむ。確かに妄想かもしれませんが、なかなかいい夢じゃないですか。
自分が前ではなく、今泉君をアシストする位置にいるという妄想もなかなか謙虚でよろしい。しかし――

杉元「まかせたぞ!!今泉!」
今泉「わかってるよ!!照!!

名前呼びされているのはさすがに謙虚な妄想とは言えませんな。坂道ですら苗字呼びだというのに・・・
いや、考えてみればレース中、熱い展開になった時は思わず坂道の下の名を叫んでいることが何回かあった。
そういう今泉君であれば、この土壇場っぽい展開では名前で呼んでくれる可能性もあるか?
ついでに弟が入ってきて紛らわしいので名前で呼ばれるようになるという可能性もあるか。む、そっちの方が大きい!?

ボクの脚はロングライド向け。スプリントは苦手だ。
ゴール前、混戦になってスプリントに持ち込まれたら勝ち目はない。
ボクが1位を獲れるなら、途中で引き離して"逃げ切り"!!耐えて耐えて1人で逃げてうしろを完全に引き離して勝つしかない!!

その考えに従い、レースもまだ半分という段階で逃げ切りの体勢に入る杉元。
差は確かに広がっていっている。が、どうやら鏑木たちはわざと追わずに済ませている様子。
後半には厳しい峰ヶ山もあるし、ここでわざわざペースを乱す必要はないという考えみたいですな。
ヘボいヤツなら逃がしてもどうということはない。すぐにバテて落ちてくる。
実力的にも数的にも自分らが有利。いざとなったら差が数分ついても埋められると考えている。冷静な判断だ。

鳥カゴに鳥を入れたような心理だ。どんなに羽ばたいても飛びやしない。
だが、それが一気に逆転する場合がある。
鳥カゴに入れて厳重にカギを閉めたつもりが、ひとつの判断ミスで実は自分たちの方がカゴに入っていたという状況になる。
"鳥"の実力を見誤った場合だ!!

確かに杉元のスプリントはヘボい。
さっき追い抜かれた時もヘボく、抜かれた2人も大したことないと判断したはずである。
しかし本人が自負している通りその脚質はロングライド。
ロングライドは高アベレージを長時間維持できるという特徴がある
となれば加速を始めた杉元はすぐにバテることはなく、どんどんとその状態のまま先に進んでいるはずである。
つまり杉元は今、2人が想定しているよりはるかに先を走っているはずである!!

今泉君の想定通り、かなり差を広げた様子の杉元。
既にダムまでやってきている。あとは周回して峰ヶ山を登るだけ。
この差が維持できていれば確かに逃げ切りも可能になる・・・
が、何故かその逃げ切りの空気を察知する鏑木。
レース経験が豊富であるとそういうことも分かるようになったりするんですかね?
さらに総合的な判断で杉元の脚はロングライド向きではないかというのも想定しだす。やりおる。

鏑木「緊張はほぐれたか段竹ゥ!」
段竹「ああ。今の1発で、ぬけたよ緊張」
鏑木(外れた・・・!!段竹の枷が!!)

緊張しまくるのがウィークポイントである段竹。
これまで喋ってなかったから分からなかったがどうやら今までずっと緊張していたらしい。
その緊張と言う枷が外れた時、段竹の真の走りが姿を現す。
加速を開始し、あっという間にダムを駆け上がる2人。
しかしそれでもまだ追いつかない。俺たちが思ったよりはるかに速いぞあの先輩と鏑木も驚愕。

けど!!こっちがもっと速い!!
枷から解き放たれ本気出して歯をくいしばって走ってる時の段竹の走りは油断するとオレも千切れる程に速い!!
うなれ!!段竹!!

ほるぁあ!!ガルァァァ!!と野性的な雄叫びをあげて走る2人。意外と熱い。
そんな2人の胸に刻まれているのはチームSSのマーク
気にはなっていましたが、ここで手嶋さんが解説を行ってくれます。

チームSSは最初は小さなショップのチームだった。
その内いろんなショップで強いヤツ集めてチームにしようつってできたのがSSだ。
中学生から社会人まで参加する混成チームで、千葉じゃ強豪。超メジャーチーム。
ヤツらは中学のチームじゃなくて大人に混じって練習してたってことになる。
チーム名の由来はS(スピード)S(ショット)。最速で射止めるって意味だ
SSは15名限定。毎月1回入れ替えレースをやるらしい。そこでヤツらはSSにいつづけた2人だ!!

なるほど・・・これは思ったよりも凄い2人だったようですな。
こりゃレベルが違うから2、3年の練習に混ざりたいと言い出すわけですわ。

そしてついに先行していた杉元を捕えてしまう2人。

いやぁ一瞬ヒヤッとしましたよ。あと数分遅かったらオレらやられてたかもしれません!!

凄い2人に褒められるまでに成長していた杉元。
それ自体は嬉しいが、先行逃げ切りが命の杉元がここで捕らえられたとなると・・・もはや勝ち目はないか。

最速で射止める。その言葉通りに抜き去られた杉元。
さてはてこれで終わってしまうのだろうか。やはり人数差があるのは厳しいか。
こうなってくると弟は今どうしているのかが気になる。
さりげなくすぐ後ろまで来ているのであれば兄と合流してまだ戦いを続けれる可能性もあるのだが・・・
その展開に期待したいところです。



RIDE.268 きもちを強く  (2013年 38号)


"最速で射止める"それが――SPEED SHOT。チームSSの名の由来だ!!

鏑木、段竹のコンビがその力を解放し、一気に先行していた杉元に追いつき、追い越す。
せっかく作戦通りに逃げ切りの体勢を整えたというのにここで捕まるとは・・・
絶望に顔を歪め、諦めたように下を向こうとする杉元。だがそこで――

追え!!杉元!!
今すぐヤツらのケツを追え!!今追わないと完全に引き離される!!完全に引き離されたら負けは確定する!!
キツイか。できないか。そういう時はこう思え。自分はキツイ、だけど相手も絶対に同じくらいキツイ!!
気持ちの切れなかった方が勝つ!!

ワゴンから身を乗り出し、杉元の背を押し、そのように声をかけてくれる今泉君。
クールにスカシていた感じだったのに一気に感情を爆発させましたねぇ。
これには杉元も発奮。息を吹き返し、追いつくために走り始める。おぉ。
そしてなんだか暖かい視線を坂道と鳴子から向けられる今泉君。ぱああ。

まあ、寒咲さんの言う通り、何だかんだで今泉君は熱い子なんですよね。
普段はそれを現そうとはしないが、時折噴き出してしまっているのは目にしてきている。
噴き出し過ぎてレース中にヘルメット叩き付けたりしてるが、まあそれはそれだ。

別に特別に杉元に肩入れしてるつもりはない。総北が強くなればそれでいい。
仮に杉元が勝つとすれば全ては追いついてからだ。必死に追ってるがまだ本当に追いつくかどうかは――わからない!!

もとの落ち着いた状態に戻ってそう語る今泉君。まあ冷静なものの見方ですわな。

まだゴールまでは遠い。勝負が完全に決したわけではない。
1着をとるために気持ちを強く持って、体が痛くても我慢して追いかけようとする杉元。
相手は"2人"。圧倒的に不利な状況。しかしその弱気を振り払い走る杉元。今は考えるな。追いつくんだ。追いつく!!

そう!!いける!!うしろで皆も見てる!!

仲間の視線を感じながら必死の走りを見せる杉元。
しかし力を解放したチームSSの2人はやはり速い。簡単には追いつけそうもない。
だが、このレースこそ自分にとっては最後のチャンスと考えている杉元は諦めない。
キツイが相手も絶対にキツイ。そう信じて走り続ける。だが――

どうする手嶋。追うか?先頭を――それともこのまま杉元のうしろを走る?
見とかないといけないんだろ。先頭の走りを。このレースでインハイののこりの一席を決めるんだろ?

確かにそれは大事なことでありますな。
それに現実的な見方をすれば、やはり杉元は前の2人には追いつけない。そう断じる手嶋さん。
最後の登り。2人はもう裏峰ヶ山に入る頃である。追いつく目はもはやない。

手嶋さんのその言葉に従い、先頭を追うために杉元を置き去りにするワゴン。
うしろで見守ってくれるはずの仲間たちが自分を置いて行ってしまう。
この事実に再度の絶望的な表情を見せる杉元。

どういうこと・・・?そういうこと?
ま・・・まってくれ・・・よ。これが最後の・・・まってくれよ今泉!!

足を止めて叫ぶ杉元。うーむこれは・・・何とも切ない・・・
この杉元の叫びが聞こえたわけではないだろうが、今泉君は杉元のことをこう評する。もうちょっとやれると思ったがな、と。
ふむ。この言葉だけだと何だか期待外れだったみたいに聞こえちゃいますね。
実際のところはその続きの内なる声に現れているわけですが。

支えて・・・つなげていくのが総北なんだって金城さん・・・言ってたな。
もっとやれると思った・・・やれたんだ。あいつは。実力的には。
つなげていく仲間がいれば。支えられる仲間がいりゃあ・・・このレースに。

相手は2人。杉元は1人で孤独な戦いを続けていた。
支えてくれる男がいればどうなっていたかは分からない。
その今泉君の言葉に導かれるように――杉元の後ろに大きな姿が迫ってくる。

いやったーっ。やっと追いついたよー!やっぱり速いね兄ちゃん!!

杉元定時。ようやく追いついてきたか!!
兄ちゃんと一緒に走りたくてと追ってきた定時。これこそが今泉君のいう、つなげていく仲間となるのだろうか。
果たしてここから兄弟コンビの走りで追いつくことができるのだろうか?
定時の実力は未知数であるが・・・はてさて。

ようやく2対2の状況を作ることができました。しかし相手は遙かに先を行っている。
追いつくためには定時の力を解放させるしかなさそうだが、どうなりますかねぇ。
しかしチームSSに対抗するのは2人の杉元か。こっちもイニシャルSの2人組でありますな。SS対決か!!
まあ、もっと言うと杉元定時1人でSSになるわけですが。あれ?兄いらない?SSは定時1人で十分という結論になる!?
ふむ。こりゃSSを巡る戦いは激しいものとなりそうですなぁ!!



RIDE.269 鏑木の宣言  (2013年 39号)


杉元を追い抜き、独走状態となっているチームSSの2人。
既に峰ヶ山を登り切る所まで行っている。あとはゴールまで下りのみ。もはや勝負は決したと思えても仕方があるまい。

もらったこのレース!!行けるぞ段竹、インターハイに!!とはしゃぐ鏑木。
その様子にまるで子供だと評する段竹。それを肯定する鏑木。こういう時にはしゃがなくていつはしゃぐんだ!!

子供だ段竹。目の前に欲しかったオモチャを広げられて好きなだけ遊べといわれている――オレは子供だ!!

そう叫び、早くもインターハイに向けて気が昂っている鏑木。
どうやらインターハイには並々ならぬ思い入れがある様子。
2年前――広島で行われたインターハイ。それを親の出張に付き合い目撃した。
これまではレースは見るものではない。出るものだと思っていた様子。
しかし見たら度肝をぬかれた。とびあがるほどに興奮した。

すさまじいレースだった。
ていうかオレはあと2年後このレースに出れるのか。来年は確か箱根と富士だっていってたな・・・
とんでもねえヤツらが走るレース・・・
いや。"出れるのか"じゃねーな。出る!!オレは!!
強くなって。超強くなって。出んだ!!絶対!!

世の中強いヤツがうようよいる。
それを知りながらそいつらと闘いたい、そして勝ちたいと考える鏑木。

インターハイの舞台で制覇!!それがオレの目標だ!!

鏑木「やろうぜ。できるさ。段竹、おまえまで一緒にいるんだからな!!」
段竹「はしゃぎすぎだ。よせ。カオから火が出る」

相変わらず感情が変化しても表情に出ない男であるが、鏑木の言葉を嬉しくは思っているんですかね。
制覇を口にはしているが、段竹とは一緒に走ろうと考えている様子。
この辺りの考えは一体どういうものなのだろうか。自分の方が段竹より上という認識なのだろうか?さてはて。

先頭を追って走って来た手嶋さんたち。
わざと速度を下げてその車と横並びになり、手嶋さんに話しかける鏑木。
どうやらこのレースでワンツーを決めたらインハイメンバーとして2人出れるという約束の確認に来た様子。
この言葉を聞いて慌てる坂道と鳴子。そりゃあ寝耳に水といった話でしょうしね。
チームSSの2人が入ると言うことは今の5人から1人抜けるということに他ならないわけである。それはどうなのか・・・

実力の世界だ。そういうこともあるよ

さらりとそう述べる手嶋さん。うーむ、実力的な面も考えると自分が抜けるのが一番とか思ったりしやしないだろうか。心配だ。
まあ、巻島さんに託された想いもあるし、チームワークを考えると外せない人ではあるのだが・・・どうなりますか。
少なくとも坂道は実力からして絶対外されることはないでしょうな。自信持て!!

そして気の早い鏑木は坂道にインターハイでの勝負を希望する。

オレは去年もインターハイを見にいった。最後は富士のゴールでした。
正直シビれる勝負でした。言葉にできないくらいに。
全身シビれて帰り道落ち込んで。3日間眠れませんでした。
心の底から悔しかったんですよ。あの舞台にいなかった自分が。その力がオレよりはるかに勝っていると見せつけられて。
だからオレは、この夏のインターハイであなたを超えます!!超えてみせます!!

ふうむ。尊敬しながらもそれに打ち勝とうと考えるのが鏑木のキャラであるわけか。
しかし同じ学校のメンバーで勝とうと考えるのはどうなのだろうか?
それならば他校に行って勝負する流れにした方がスマートだったのではなかろうか。
まあ千葉でインターハイに出られそうなチームは他にないんじゃないかとは思えますけどね。確かに。

しかしインターハイに出られないと落ち込む坂道を励ます簡易描きの寒咲さんがやけに可愛いですな。

あなたの目標は何ですか。今年のインターハイの。2年連続個人総合優勝ですか。

そのように尋ねる鏑木。しかし坂道の答えは穏やかなものである。優勝はボクじゃなくてもいい、とのこと。

今泉くんや鳴子くん。手嶋さんや青八木さんと皆で一緒に全力で走れて。
真波くんや御堂筋くんと出し切って走れて。
最後チームの誰かが、できることなら最初にゴールしてくれて。
あとホント、これは欲ばりなんだけど。それを先輩に報告できたらなって思ってるんだ

「強くなれ」と言ってくれた巻島さんに報告がしたい。それが目標であると語る坂道。
そんな坂道の言葉を聞き、一斉にいい笑顔になる総北レギュラー陣。心が1つになった!?

今泉「欲ばりだよ!!最ッ高の欲ばりだ!!」
鳴子「ほならメッチャキバって練習せなアカンな小野田くん!!」

とても嬉しそうな様子を見せる2人。その結束力の高さに驚きの表情を見せる鏑木。
チームSSはかなり実力主義の様子ですし、こういう結束力を見せられるのには慣れてないのかもしれませんな。

オレたちは去年細い細い糸をたぐりよせて勝った。
切れそうな糸をあきらめない心で皆でつないだんだ。何がおこるのかわからないのがロードレースだ。
ゴールラインまであきらめない。泥くさいかもしれんが、それが総北のレースだ。

自分がレースを制する。団体競技のロードレースでありながらそのような野望を口にする鏑木。
まあ、圧倒的に力のあるエースであるならばそういう考えもなくはないのだろうが総北の考えは違う。
去年インターハイを制したのは皆の力が揃ったからであると信じて疑わない。よい結束力ですなぁ。

そして手嶋さんは語る。勝利を確信している様子の鏑木に対し、まだ終わっていないと。
おまえが追い抜いてうしろいにおいてきた杉元って男は、頼りないけどオレたち総北のスピリッツを受け継いでる。

もし、あいつがまだこのレースでの勝利をあきらめてないなら、来る。必ずここまで追いついて

そのように述べる手嶋さん。
鏑木はそれをオドシと取ったようだ。だが、それは違う。

違うさ。オレはそういうキセキを何度も目の当たりにしてきただけだ

手嶋さんの言葉に応えるように、定時に引かれるようにして追いついてきた杉元。
一度は立ち止まってしまった杉元であるが再びその目には光が宿っている。
レースはまだ終わっていない。ここから先の下りが勝負となる。これはどうなるか・・・面白い展開になってきましたな。

手嶋さんは杉元を置き先頭へと進んだ。
口では追いつくことは無いとか言ってましたが、内心ではキセキを信じていたのですな。
なかなか面白い流れとなりましたが、このレースを制するのは誰なのか。
仮に杉元が制したとして鏑木は大人しくインターハイの座を明け渡すのだろうか。
結局は合宿も含めてメンバー選抜の流れになるんじゃないかと思えますな。まあ、とりあえずはこのレースの結果を見守ろう!!



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